IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 宝酒造株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025141310
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】アルコール飲料
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20250919BHJP
   C12G 3/07 20060101ALI20250919BHJP
   C12G 3/06 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
C12G3/04
C12G3/07
C12G3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024041188
(22)【出願日】2024-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】302026508
【氏名又は名称】宝酒造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100135839
【弁理士】
【氏名又は名称】大南 匡史
(72)【発明者】
【氏名】西村(今西) 悠香
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏佑
(72)【発明者】
【氏名】大▲崎▼ 学
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115LG01
4B115LG02
4B115LH03
4B115LH11
4B115LH12
4B115LP01
4B115LP02
4B115MA02
4B115MA03
(57)【要約】
【課題】のど越しやクセがあり、酒感が十分あり、味の厚みやボディー感があり複雑味のあるアルコール飲料を提供する。
【解決手段】安息香酸エステルを含有し、前記安息香酸エステルの濃度が0.01μg/L以上200μg/L以下であるアルコール飲料が提供される。安息香酸メチル、安息香酸エチル、及び安息香酸イソアミルからなる群より選択された少なくとも1つであることが好ましい。アルコール濃度が0.5v/v%以上25v/v%以下であることが好ましく、発泡性を有することが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安息香酸エステルを含有し、前記安息香酸エステルの濃度が0.01μg/L以上200μg/L以下である、アルコール飲料。
【請求項2】
前記安息香酸エステルが、安息香酸メチル、安息香酸エチル、及び安息香酸イソアミルからなる群より選択された少なくとも1つである、請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項3】
前記安息香酸メチルの濃度が0.01μg/L以上100μg/L以下である、請求項2に記載のアルコール飲料。
【請求項4】
前記安息香酸エチルの濃度が0.01μg/L以上100μg/L以下である、請求項2に記載のアルコール飲料。
【請求項5】
前記安息香酸イソアミルの濃度が0.01μg/L以上100μg/L以下である、請求項2に記載のアルコール飲料。
【請求項6】
前記安息香酸エステルが、安息香酸メチル及び安息香酸エチルであり、
前記安息香酸メチルの濃度が0.01μg/L以上100μg/L以下であり、
前記安息香酸エチルの濃度が0.01μg/L以上100μg/L以下である、請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項7】
樽貯蔵熟成焼酎を含有する、請求項1~6のいずれかに記載のアルコール飲料。
【請求項8】
アルコール濃度が0.5v/v%以上25v/v%以下である、請求項1~6のいずれかに記載のアルコール飲料。
【請求項9】
アルコール濃度が0.5v/v%以上25v/v%以下である、請求項7に記載のアルコール飲料。
【請求項10】
発泡性を有する、請求項1~6のいずれかに記載のアルコール飲料。
【請求項11】
発泡性を有する、請求項7に記載のアルコール飲料。
【請求項12】
ガスボリュームが、1.3以上3.2以下である、請求項10に記載のアルコール飲料。
【請求項13】
ガスボリュームが、1.3以上3.2以下である、請求項11に記載のアルコール飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルコール飲料に関し、さらに詳細には、安息香酸エステルを特定量含有するアルコール飲料に関する。本発明のアルコール飲料は、のど越しやクセがあり、酒感が十分あり、味の厚みやボディー感があり複雑味が付与された高品質のものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、酒類や醸造アルコールなどのアルコール原料に果実、果汁、糖類、酸味料、香料、水等を加えたアルコール飲料が普及しており、特に、チューハイ類に代表される、アルコール濃度が1~9v/v%程度の種々のアルコール飲料が開発されている。一般に、現在市場に流通しているアルコール飲料は、各種原料を混合した後、缶、瓶、PETボトルなどの各種容器に充填し、その後、加熱殺菌処理を行うことにより製造されている。
【0003】
チューハイは、アルコール飲料にカーボネーションを施すことにより炭酸ガスを含有させた「発泡性アルコール飲料」の代表例でもある。缶入りチューハイは、一般に、所定量の原料用アルコール、水、果汁、糖類、および食品添加物等を調合した後、カーボネーションを行って炭酸ガスを含有させ、容器に充填、密封後に加熱殺菌処理することにより製造されている。
【0004】
近年、チューハイにおいては、種々の商品が上市されている。例えば、果実らしさを出すために、果実を低温で凍結粉砕した原料を使用した商品、原料に用いる果実の摘果後の経過日数を短くした商品、果汁の使用量を多くした商品等が例示される。果実らしさを特徴とするものや、すっきりした飲み易さを特徴としている商品がある中で、のど越しやクセがあり、酒感が十分あり、味の厚みやボディー感があり複雑味があるといった、幅広い特性を兼ね備えた酒質の商品は、あまりないのが現状である。
【0005】
飲料において、のど越しを付与する方法については、種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、炭酸飲料において、1-オクテン-3-オールの含有量を所定範囲内とすることにより、のど越し感が向上することが開示されている。
【0006】
チューハイ等のアルコール飲料に、酒感を付与する技術について、種々の提案がなされている。例えば、特許文献2には、飲料の1,2,3-トリアセトキシプロパン含有量を7~1300ppmに調整することにより、アルコールを含有していない、あるいはアルコール含有量が少ないにもかかわらず、酒らしい好ましい風味を有する飲料が記載されている。特許文献3には、ボルネオール及びオクタナールを含有させることを特徴とする、容器詰アルコール飲料の香味改善方法が記載され、酒感が増強されたアルコール飲料が開示されている。
【0007】
チューハイ等のアルコール飲料において、香味の厚みを付与する技術について、種々の提案がなされている。例えば、特許文献4には、ボルネオールとデカナールとの含有量が所定範囲に特定され、低果汁であっても、果汁の味の厚み、及び、果汁のフレッシュ感が増強した低果汁含有飲料が記載されている。特許文献5には、果汁の含有量が低い飲料においてエリオシトリンの含有量を特定範囲にすることで、果汁の味の厚みを向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-068195号公報
【特許文献2】特開2017-212932号公報
【特許文献3】特開2023-034086号公報
【特許文献4】特開2019-135990号公報
【特許文献5】特開2023-127229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、のど越しやクセがあり、酒感が十分あり、味の厚みやボディー感があり複雑味があるといった特徴を併せ持つアルコール飲料については、十分に検討されているとは言い難い。そこで本発明は、前記した従来技術が抱える問題点を踏まえ、のど越しやクセがあり、酒感が十分あり、味の厚みやボディー感があり複雑味のあるアルコール飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記した課題を解決するために、のど越しやクセがあり、酒感が十分あり、味の厚みやボディー感があり複雑味のある特徴を有するこれまでにないアルコール飲料を開発すべく検討を重ねた。そして、多岐に渡る酒類の香味成分の分析、柑橘の特徴成分の分析、果実の発酵物の香気成分について検討を繰り返した。その結果、アルコール飲料に安息香酸エステルを特定量含有させることにより、のど越しやクセがあり、酒感が十分あり、味の厚みやボディー感があり複雑味のあるアルコール飲料が得られることを見出した。上記した課題を解決するために提供される本発明は、以下のとおりである。
【0011】
本発明の1つの様相は、安息香酸エステルを含有し、前記安息香酸エステルの濃度が0.01μg/L以上200μg/L以下である、アルコール飲料である。
【0012】
本様相のアルコール飲料は、安息香酸エステルを含有し、その濃度が特定範囲内である。本様相のアルコール飲料は、のど越しやクセがあり、酒感が十分あり、味の厚みやボディー感があり複雑味を有する。
【0013】
好ましくは、前記安息香酸エステルが、安息香酸メチル、安息香酸エチル、及び安息香酸イソアミルからなる群より選択された少なくとも1つである。
【0014】
好ましくは、前記安息香酸メチルの濃度が0.01μg/L以上100μg/L以下である。
【0015】
好ましくは、前記安息香酸エチルの濃度が0.01μg/L以上100μg/L以下である。
【0016】
好ましくは、前記安息香酸イソアミルの濃度が0.01μg/L以上100μg/L以下である。
【0017】
好ましくは、前記安息香酸エステルが、安息香酸メチル及び安息香酸エチルであり、前記安息香酸メチルの濃度が0.01μg/L以上100μg/L以下であり、前記安息香酸エチルの濃度が0.01μg/L以上100μg/L以下である。
【0018】
好ましくは、樽貯蔵熟成焼酎を含有する。
【0019】
好ましくは、アルコール濃度が0.5v/v%以上25v/v%以下である。
【0020】
好ましくは、発泡性を有する。
【0021】
好ましくは、ガスボリュームが、1.3以上3.2以下である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、のど越しやクセがあり、酒感が十分あり、味の厚みやボディー感があり複雑味のあるアルコール飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について具体的に説明する。なお、本明細書においては、「アルコール濃度」とはエチルアルコール(エタノール)の濃度をいう。すなわち、本明細書において「アルコール」と記載した場合は、特に断らない限りエチルアルコール(エタノール)を指す。
【0024】
本発明における「アルコール飲料」とは、アルコール原料に、必要に応じて果実の果汁、水、香料、糖類、甘味料、酸味料等の食品添加物、その他の原料を混合して製造されるものであり、いわゆるチューハイ、カクテル、フィズ、ワインクーラー等のスピリッツ類、リキュール類等を指す。
【0025】
本発明のアルコール飲料は、安息香酸エステルを含有する。安息香酸エステルとしては、安息香酸のアルキルエステルが挙げられ、例えば、炭素数1~6の直鎖又は分岐アルキル基を有する安息香酸アルキルエステルが挙げられる。安息香酸エステルの具体例としては、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸イソプロピル、安息香酸アリル、安息香酸イソブチル、安息香酸イソアミル、安息香酸ヘキシル、安息香酸シス-3-ヘキセニル、安息香酸リナリル、安息香酸プレニル、安息香酸ゲラニル、安息香酸ベンジル、安息香酸フェニルエチル、等が挙げられる。本発明のアルコール飲料に含有させる安息香酸エステルは、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0026】
本発明のアルコール飲料における安息香酸エステルの濃度は0.01μg/L以上200μg/L(0.01~200μg/L)であり、好ましくは0.1~100μg/L、より好ましくは0.2~20μg/Lである。安息香酸エステルの濃度が0.01μg/L未満であると、前記した効果が感じられないおそれがある。一方、安息香酸エステルの濃度が200μg/L超であると、安息香酸エステルそのものの香りが強くなり、飲みにくくなるおそれがある。安息香酸エステルを上記特定量配合することにより、のど越しやクセがあり、酒感が十分あり、味の厚みやボディー感があり複雑味のある酒質のアルコール飲料とすることができる。
【0027】
好ましい実施形態では、前記安息香酸エステルが、安息香酸メチル、安息香酸エチル、及び安息香酸イソアミルからなる群より選択された少なくとも1つである。好ましい実施形態では、前記安息香酸エステルが、安息香酸メチル及び安息香酸エチルからなる群より選択された少なくとも1つである。より好ましくは、前記安息香酸エステルは、安息香酸メチル及び安息香酸エチルから構成される。
【0028】
安息香酸メチル(Methyl Benzoate)はCAS登録番号93-58-3の物質であり、食品分野においては、焼酎やワインから検出された報告がある。安息香酸エチル(Ethyl Benzoate)はCAS登録番号93-89-0の物質であり、食品分野においては、香料、風味料エキス、溶剤等に使用される物質として知られている。安息香酸イソアミル(Isoamyl benzoate)はCAS登録番号94-46-2の物質である。
【0029】
上記実施形態における安息香酸メチルの濃度は、好ましくは0.01μg/L以上100μg/L以下(0.01~100μg/L)、より好ましくは0.05~50μg/L、さらに好ましくは0.1~10μg/Lである。安息香酸メチルの濃度が0.01μg/L未満であると、前記した効果が感じられないおそれがある。一方、安息香酸メチルの濃度が100μg/L超であると、安息香酸メチルそのものの香りが強く飲みにくくなるおそれがある。安息香酸メチルを上記特定量配合することにより、のど越しやクセがあり、酒感が十分あり、味の厚みやボディー感があり複雑味のある酒質のアルコール飲料とすることができる。
【0030】
上記実施形態における安息香酸エチルの濃度は、好ましくは0.01μg/L以上100μg/L以下(0.01~100μg/L)、より好ましくは0.05~50μg/L、さらに好ましくは0.1~10μg/Lである。安息香酸エチルの濃度が0.01μg/L未満であると、前記した効果が感じられないおそれがある。一方、安息香酸エチルの濃度が100μg/L超であると、安息香酸エチルそのものの香りが強く飲みにくくなるおそれがある。安息香酸エチルを上記特定量配合することにより、のど越しやクセがあり、酒感が十分あり、味の厚みやボディー感があり複雑味のある酒質のアルコール飲料とすることができる。
【0031】
上記実施形態における安息香酸イソアミルの濃度は、好ましくは0.01μg/L以上100μg/L以下(0.01~100μg/L)、より好ましくは0.05~50μg/L、さらに好ましくは0.1~10μg/Lである。安息香酸イソアミルの濃度が0.01μg/L未満であると、前記した効果が感じられないおそれがある。一方、安息香酸イソアミルの濃度が100μg/L超であると、安息香酸イソアミルそのものの香りが強く飲みにくくなるおそれがある。安息香酸イソアミルを上記特定量配合することにより、のど越しやクセがあり、酒感が十分あり、味の厚みやボディー感があり複雑味のある酒質のアルコール飲料とすることができる。
【0032】
本発明のアルコール飲料に所定濃度の安息香酸エステルを含有させる方法としては、香料等の精製された安息香酸エステルを添加することができる。
【0033】
安息香酸エステルの濃度は、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)によって測定することができる。
【0034】
前述したように、本発明における「アルコール飲料」とは、アルコール原料に、必要に応じて果実の果汁、水、香料、糖類、甘味料、酸味料等の食品添加物、その他の原料を混合して製造されるものであり、いわゆるチューハイ、カクテル、フィズ、ワインクーラー等のスピリッツ類、リキュール類等が挙げられる。アルコール原料としては特に限定はなく、例えば、醸造アルコール、スピリッツ類(ラム、ウオッカ、ジン等)、リキュール類、ウイスキー、ブランデー又は焼酎(連続式蒸留しょうちゅう、単式蒸留しょうちゅう等)等が挙げられ、さらには清酒、ワイン、ビール等の醸造酒類でもよい。これらのアルコール原料については、それぞれ単独又は併用して用いることができるが、その香味を生かすようなアルコール原料を選択することが好ましい。
【0035】
本発明では、アルコール原料の1つとして、樽貯蔵熟成焼酎を用いることが好ましい。ここで、樽貯蔵熟成焼酎とは、アルコールや焼酎(連続式蒸留しょうちゅう、単式蒸留しょうちゅう等)を、木製の容器(樽)にて貯蔵・熟成したものをいう。樽の木材の種類、貯蔵期間、貯蔵時のアルコール度数については、特に限定はなく、所望の酒質のアルコール飲料となるように適宜、採用すればよい。
【0036】
本発明のアルコール飲料のアルコール濃度としては、0.5v/v%以上25v/v%以下(0.5~25v/v%)であることが好ましい。その他、アルコール濃度を3v/v%以上20v/v%以下、5v/v%以上15v/v%以下、等にすることもできる。
【0037】
好ましい実施形態では、前記アルコール飲料が発泡性を有する発泡性アルコール飲料である。また、好ましい実施形態では、前記発泡性アルコール飲料のガスボリュームが1.3以上3.2以下(1.3~3.2)である。ガスボリュームが1.3未満であると香り立ちが悪くなるおそれがあり、3.2超であると果実の味わいを感じにくくなるおそれがある。
【0038】
本発明のアルコール飲料は、例えば、所定量のアルコール原料、水、果汁、糖類、樽貯蔵熟成焼酎、香料等を調合することにより製造することができる。所望の安息香酸エステル濃度を実現するために、香料等として精製された安息香酸エステルを用いることができる。缶入りチューハイとする場合には、調合後、カーボネーションを行って炭酸ガスを含有させ、容器に充填、密封後に加熱殺菌処理を行うことにより製造することができる。
【0039】
以下に、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0040】
本実施例では、安息香酸エチル濃度の好適な範囲について検討した。
濃度10.0mg/Lの安息香酸エチル水溶液を作製した。表1に示す配合となるように、果糖ぶどう糖液糖、安息香酸エチル水溶液、レモン果汁、香料、酸味料、及び脱イオン水を混合し、調合液を調製した。
【0041】
【表1】
【0042】
安息香酸エチル水溶液の配合量は、下記の7種とした。括弧書きで、各調合液における安息香酸エチルの濃度を示した。
【0043】
・実験例1-1:0.0001mL(濃度:0.001μg/L)
・実験例1-2:0.001mL(濃度:0.01μg/L)
・実験例1-3:0.01mL(濃度:0.1μg/L)
・実験例1-4:0.1mL(濃度:1μg/L)
・実験例1-5:1mL(濃度:10μg/L)
・実験例1-6:10mL(濃度:100μg/L)
・実験例1-7:50mL(濃度:500μg/L)
【0044】
これらの調合液を冷却し、常法によりカーボネーターを用いて炭酸ガスを圧入して吸収させた後、壜に密封後、加熱殺菌処理を行い、7種のアルコール飲料を調製した。
【0045】
得られたアルコール飲料(実験例1-1~実験例1-7)について、10名の専門のパネリストにより官能評価試験を行った。評価は下記の5段階で行った。評点は10名のパネリストの平均値とした。
5:「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」が顕著にある
4:「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」がしっかりある
3:「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」がある
2:「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」があまりない
1:「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」がない、もしくは、香味がくどく、美味しくない
【0046】
結果を表2に示す。すなわち、安息香酸エチル濃度が0.01~100μg/Lである実験例1-2、実験例1-3、実験例1-4、実験例1-5、実験例1-6において、「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」がある、という評価であった(評価:3.8~4.3)。特に、安息香酸エチル濃度が0.1~10μg/Lである実験例1-3、実験例1-4、実験例1-5の評価が高かった(評価:4.0~4.3)。一方、安息香酸エチル濃度が0.001μg/Lである実験例1-1では、「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」があまりない、という評価であった(評価:2.2)。また、安息香酸エチル濃度が500μg/Lである実験例1-7では、香味がくどく、美味しくない、という評価であった(評価:1.2)。
【0047】
【表2】
【実施例0048】
本実施例では、安息香酸メチル濃度の好適な範囲について検討した。
濃度10.0mg/Lの安息香酸メチル水溶液を作製した。表3に示す配合となるように、果糖ぶどう糖液糖、安息香酸メチル水溶液、レモン果汁、香料、酸味料、及び脱イオン水を混合し、調合液を調製した。
【0049】
【表3】
【0050】
安息香酸メチル水溶液の配合量は、下記の7種とした。括弧書きで、各調合液における安息香酸メチル濃度を示した。
【0051】
・実験例2-1:0.0001mL(濃度:0.001μg/L)
・実験例2-2:0.001mL(濃度:0.01μg/L)
・実験例2-3:0.01mL(濃度:0.1μg/L)
・実験例2-4:0.1mL(濃度:1μg/L)
・実験例2-5:1mL(濃度:10μg/L)
・実験例2-6:10mL(濃度:100μg/L)
・実験例2-7:50mL(濃度:500μg/L)
【0052】
これらの調合液を冷却し、常法によりカーボネーターを用いて炭酸ガスを圧入して吸収させた後、壜に密封後、加熱殺菌処理を行い、7種のアルコール飲料を調製した。
【0053】
得られたアルコール飲料(実験例2-1~実験例2-7)について、10名の専門のパネリストにより官能評価試験を行った。評価は、実施例1と同様の5段階(1~5)で行い、10名のパネリストの平均値を評点とした。
【0054】
結果を表4に示す。すなわち、安息香酸メチル濃度が0.01~100μg/Lである実験例2-2、実験例2-3、実験例2-4、実験例2-5、実験例2-6において、「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」がある、という評価であった(評価3.7~4.2)。特に、安息香酸メチル濃度が0.1~10μg/Lである実験例2-3、実験例2-4、実験例2-5の評価が高かった(評価4.0~4.2)。一方、安息香酸メチル濃度が0.001μg/Lである実験例2-1では、「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」があまりない、という評価であった(評価2.2)。また、安息香酸メチル濃度が500μg/Lである実験例2-7では、香味がくどく、美味しくない、という評価であった(評価1.2)。
【0055】
【表4】
【実施例0056】
本実施例では、アルコール度数5%のレモンチューハイを調製して評価を行った。
表5に示す配合となるように、60v/v%醸造アルコール、樽貯蔵熟成焼酎、レモン果汁、安息香酸エチル香料(100ppm)、安息香酸メチル香料(100ppm)、果糖ぶどう糖液糖、香料、酸味料、及び脱イオン水を混合し、調合液を調製した(実験例3-1)。対照として、実験例3-1の配合において、樽貯蔵熟成焼酎と安息香酸エチル香料と安息香酸メチル香料を用いないで調合液を調製した(実験例3-2)。これらの調合液を冷却し、常法によりカーボネーターを用いて炭酸ガスを圧入して吸収させた後、壜に密封後、加熱殺菌処理を行い、レモンチューハイを調製した。
【0057】
各レモンチューハイの安息香酸エチル濃度および安息香酸メチル濃度を、GC-MSを用いて常法により測定した。その結果、実験例3-1のレモンチューハイの安息香酸エチル濃度は1.5μg/Lであり、安息香酸メチル濃度は0.3μg/Lであった。一方、実験例3-2のレモンチューハイの安息香酸エチル濃度と安息香酸メチル濃度は、いずれも0.0μg/L(検出限界以下)であった。
【0058】
各レモンチューハイについて、10名の専門のパネリストにより官能評価試験を行った。評価は、実施例1と同様の5段階(1~5)で行い、10名のパネリストの平均値を評点とした。その結果、安息香酸エチル香料と安息香酸メチル香料と樽貯蔵熟成焼酎を用いた実験例3-1のレモンチューハイは、評点が4.7点であり、「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」が顕著にある酒質であり高評価であった。一方、安息香酸エチル香料と安息香酸メチル香料と樽貯蔵熟成焼酎を用いない実験例3-2は、評点が2.3点であり、「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」があまりないという評価であった。
【0059】
【表5】
【実施例0060】
本実施例では、アルコール度数5%のユズチューハイを作製して評価を行った。
表6に示す配合となるように、60v/v%醸造アルコール、樽貯蔵熟成焼酎、ユズ果汁、安息香酸エチル香料(100ppm)、安息香酸メチル香料(100ppm)、果糖ぶどう糖液糖、香料、酸味料、及び脱イオン水を混合し、調合液を調製した(実験例4-1)。対照として、実験例4-1の配合において、樽貯蔵熟成焼酎と安息香酸エチル香料と安息香酸メチル香料を用いないで調合液を調製した(実験例4-2)。これらの調合液を冷却し、常法によりカーボネーターを用いて炭酸ガスを圧入して吸収させた後、壜に密封後、加熱殺菌処理を行い、ユズチューハイを調製した。
【0061】
各ユズチューハイの安息香酸エチル濃度および安息香酸メチル濃度を、GC-MSを用いて常法により測定した。その結果、実験例4-1のユズチューハイの安息香酸エチル濃度は0.7μg/Lであり、安息香酸メチル濃度は0.2μg/Lであった。一方、実験例4-2のユズチューハイの安息香酸エチル濃度と安息香酸メチル濃度は、いずれも0.0μg/L(検出限界以下)であった。
【0062】
各ユズチューハイについて、10名の専門のパネリストにより官能評価試験を行った。評価は、実施例1と同様の5段階(1~5)で行い、10名のパネリストの平均値を評点とした。
【0063】
その結果、息香酸エチル香料と安息香酸メチル香料と樽貯蔵熟成焼酎を用いた実験例4-1のユズチューハイは、評点が4.7点であり、「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」が顕著にある酒質であり高評価であった。一方、安息香酸エチル香料と安息香酸メチル香料と樽貯蔵熟成焼酎を用いない実験例4-2は、評点が2.4点であり、「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」があまりないという評価であった。
【0064】
【表6】
【実施例0065】
本実施例では、アルコール度数15%のレモンリキュールを調製した。
表7に示す配合となるように、60v/v%醸造アルコール、樽貯蔵熟成焼酎、レモン果汁、安息香酸エチル香料(100ppm)、安息香酸メチル香料(100ppm)、果糖ぶどう糖液糖、香料、酸味料、及び脱イオン水を混合し、調合液を調製した(実験例5-1)。対照として、実験例5-1の配合において、樽貯蔵熟成焼酎と安息香酸エチル香料と安息香酸メチル香料を用いないで調合液を調製した(実験例5-2)。これらの調合液を冷却し、壜に密封後、加熱殺菌処理を行い、レモンリキュールを調製した。
【0066】
各レモンリキュールの安息香酸エチル濃度および安息香酸メチル濃度を、GC-MSを用いて常法により測定した。その結果、実験例5-1のレモンリキュールの安息香酸エチル濃度は8.1μg/Lであり、安息香酸メチル濃度は1.5μg/Lであった。一方、実験例5-2のレモンリキュールの安息香酸エチル濃度と安息香酸メチル濃度は、いずれも0.0μg/L(検出限界以下)であった。
【0067】
各レモンリキュールについて、10名の専門のパネリストにより官能評価試験を行った。評価は、実施例1と同様の5段階(1~5)で行い、10名のパネリストの平均値を評点とした。
【0068】
その結果、安息香酸エチル香料と安息香酸メチル香料と樽貯蔵熟成焼酎を用いた実験例5-1のレモンリキュールは、評点が4.8点であり、「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」が顕著にある酒質であり高評価であった。一方、安息香酸エチル香料と安息香酸メチル香料と樽貯蔵熟成焼酎を用いない実験例5-2のレモンリキュールは、評点が2.3点であり、「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」があまりないという評価であった。
【0069】
【表7】
【実施例0070】
本実施例では、アルコール度数25%のユズリキュールを調製した。
表8に示す配合となるように、60v/v%醸造アルコール、樽貯蔵熟成焼酎、ユズ果汁、安息香酸エチル香料(100ppm)、安息香酸メチル香料(100ppm)、果糖ぶどう糖液糖、香料、酸味料、及び脱イオン水を混合し、調合液を調製した(実験例6-1)。対照として、実験例6-1の配合において、樽貯蔵熟成焼酎と安息香酸エチル香料と安息香酸メチル香料を用いないで調合液を調製した(実験例6-2)。これらの調合液を冷却し、壜に密封後、加熱殺菌処理を行い、ユズリキュールを調製した。
【0071】
各ユズリキュールの安息香酸エチル濃度および安息香酸メチル濃度を、GC-MSを用いて常法により測定した。その結果、実験例6-1のユズリキュールの安息香酸エチル濃度は3.6μg/Lであり、安息香酸メチル濃度は1.1μg/Lであった。一方、実験例6-2のユズリキュールの安息香酸エチル濃度と安息香酸メチル濃度は、いずれも0.0μg/L(検出限界以下)であった。
【0072】
各ユズリキュールについて、10名の専門のパネリストにより官能評価試験を行った。評価は、実施例1と同様の5段階(1~5)で行い、10名のパネリストの平均値を評点とした。
【0073】
その結果、安息香酸エチル香料と安息香酸メチル香料と樽貯蔵熟成焼酎を用いた実験例6-1のユズリキュールは、評点が4.8点であり、「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」が顕著にある酒質であり高評価であった。一方、安息香酸エチル香料と安息香酸メチル香料と樽貯蔵熟成焼酎を用いない実験例6-2のユズリキュールは、評点が2.4点であり、「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」があまりないという評価であった。
【0074】
【表8】
【実施例0075】
本実施例では、アルコール度数7.2%のレモンチューハイを調製した。
表9に示す配合となるように、60v/v%醸造アルコール、レモン果汁、果糖ぶどう糖液糖、レモン香料、安息香酸エチル香料(10000ppm)、安息香酸メチル香料(10000ppm)、酸味料、及び脱イオン水を混合し、調合液を調製した(実験例7-1)。対照として、実験例7-1の配合において、安息香酸エチル香料と安息香酸メチル香料を用いないで調合液を調製した(実験例7-2)。これらの調合液を冷却し、常法によりカーボネーターを用いて炭酸ガスを圧入して吸収させた後、壜に密封後、加熱殺菌処理を行い、レモンチューハイを調製した。
【0076】
実験例7-1のレモンチューハイの安息香酸エチル濃度は50μg/L、安息香酸メチル濃度は50μg/Lと計算された。一方、実験例7-2のレモンチューハイの安息香酸エチル濃度と安息香酸メチル濃度は、いずれも0.0μg/L(検出限界以下、GC-MS)であった。
【0077】
各レモンチューハイについて、10名の専門のパネリストにより官能評価試験を行った。評価は、実施例1と同様の5段階(1~5)で行い、10名のパネリストの平均値を評点とした。
【0078】
その結果、安息香酸エチル香料と安息香酸メチル香料を用いた実験例7-1のレモンチューハイは、評点が4.3点であり、「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」がある酒質であり高評価であった。一方、安息香酸エチル香料と安息香酸メチル香料を用いない実験例7-2のレモンチューハイは、評点が2.4点であり、「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」があまりないという評価であった。
【0079】
【表9】
【実施例0080】
本実施例では、アルコール度数7.2%のユズチューハイを調製した。
表10に示す配合となるように、60v/v%醸造アルコール、ユズ果汁、果糖ぶどう糖液糖、ユズ香料、安息香酸エチル香料(10000ppm)、安息香酸メチル香料(10000ppm)、酸味料、及び脱イオン水を混合し、調合液を調製した(実験例8-1)。対照として、実験例8-1の配合において、安息香酸エチル香料と安息香酸メチル香料を用いないで調合液を調製した(実験例8-2)。これらの調合液を冷却し、常法によりカーボネーターを用いて炭酸ガスを圧入して吸収させた後、壜に密封後、加熱殺菌処理を行い、ユズチューハイを調製した。
【0081】
実験例8-1のユズチューハイの安息香酸エチル濃度は100μg/L、安息香酸メチル濃度は100μg/Lと計算された。一方、実験例8-2のユズチューハイの安息香酸エチル濃度と安息香酸メチル濃度は、いずれも0.0μg/L(検出限界以下、GC-MS)であった。
【0082】
各ユズチューハイについて、10名の専門のパネリストにより官能評価試験を行った。評価は、実施例1と同様の5段階(1~5)で行い、10名のパネリストの平均値を評点とした。
【0083】
その結果、安息香酸エチル香料と安息香酸メチル香料を用いた実験例8-1のユズチューハイは、評点が4.4点であり、「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」がある酒質であり高評価であった。一方、安息香酸エチル香料と安息香酸メチル香料を用いない実験例8-2のユズチューハイは、評点が2.3点であり、「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」があまりないという評価であった。
【0084】
【表10】
【実施例0085】
本実施例では、実施例1と同様の方法で、安息香酸イソアミルの効果を確認した。その結果、1~100μg/Lの範囲において、評点が3.6点以上の評価を得た。すなわち、安息香酸イソアミルについても、「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」を付与する効果があることがわかった。
【実施例0086】
本実施例では、表10に示す配合において、安息香酸エチル(香料;10000ppm)と安息香酸メチル(香料;10000ppm)に替えて、安息香酸イソアミル(香料;10000ppm)を用いて、ユズチューハイを調製した。すなわち、安息香酸イソアミルが100μg/Lであるユズチューハイを調製した(実施例10)。実施例10のユズチューハイについて、10名の専門のパネリストにより官能評価試験を行った。評価は、実施例1と同様の5段階(1~5)で行い、10名のパネリストの平均値を評点とした。その結果、安息香酸イソアミルを用いたユズチューハイは、評点が4.3点であり、「のど越し、クセ、酒感、味の厚み、ボディー感、複雑味」がある酒質であり高評価であった。