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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014135
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】クランプ装置のツメ
(51)【国際特許分類】
   B23B 13/12 20060101AFI20250123BHJP
   B23B 13/02 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B23B13/12 Z
B23B13/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116393
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000127042
【氏名又は名称】株式会社アルプスツール
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 拓郎
【テーマコード(参考)】
3C045
【Fターム(参考)】
3C045FC05
(57)【要約】
【課題】棒材のセンタリング機能に優れ、把持できる棒材の材料径の範囲を広く設定することができると共に、曲げ剛性の低い、例えば、線径の細い棒材であっても、棒材を曲げることなく把持することのできるクランプ装置のツメを提供する。
【解決手段】加工機に棒材を供給すると共に、当該棒材を回転支承する棒材供給機に備わるクランプ装置のツメであって、互いに近接離間可能となるように配置される第一のクランプ部材と第二のクランプ部材と、を備え、前記第一のクランプ部材は、離間して配置される第一の爪部と第二の爪部を備え、前記第二のクランプ部材は、前記第一の爪部と前記第二の爪部の間に噛み合い可能に配置される内側爪部を備え、前記第二のクランプ部材は、第一の補助爪部と第二の補助爪部を備えることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機に棒材を供給すると共に、当該棒材を回転支承する棒材供給機に備わるクランプ装置のツメであって、
互いに近接離間可能となるように配置される第一のクランプ部材と第二のクランプ部材と、を備え、
前記第一のクランプ部材は、離間して配置される第一の爪部と第二の爪部を備え、
前記第二のクランプ部材は、前記第一の爪部と前記第二の爪部の間に噛み合い可能に配置される内側爪部を備え、
前記第二のクランプ部材は、第一の補助爪部と第二の補助爪部を備えることを特徴とするクランプ装置のツメ。
【請求項2】
請求項1に記載のクランプ装置のツメにおいて、
前記第一の補助爪部は、前記第一の爪部と前記近接離間可能な方向に対向する位置に形成され、
前記第二の補助爪部は、前記第二の爪部と前記近接離間可能な方向に対向する位置に形成されることを特徴とするクランプ装置のツメ。
【請求項3】
請求項1に記載のクランプ装置のツメにおいて、
前記第一の爪部は、略V字形に形成される第一の把持面を備え、
前記第二の爪部は、略V字形に形成される第二の把持面を備え、
前記内側爪部は、略V字形に形成される内側把持面を備えることを特徴とするクランプ装置のツメ。
【請求項4】
請求項3に記載のクランプ装置のツメにおいて、
前記第一の補助爪部は、前記内側把持面と連続する第一の補助把持面を備え、
前記第二の補助爪部は、前記内側把持面と連続する第二の補助把持面を備えることを特徴とするクランプ装置のツメ。
【請求項5】
請求項1に記載のクランプ装置のツメにおいて、
前記第一のクランプ部材は、前記内側爪部との干渉を避ける逃げ孔が形成されることを特徴とするクランプ装置のツメ。
【請求項6】
請求項1に記載のクランプ装置のツメにおいて、
前記第二のクランプ部材は、前記第一の爪部との干渉を避ける第一の逃げ部及び前記第二の爪部との干渉を避ける第二の逃げ部が形成されることを特徴とするクランプ装置のツメ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動旋盤等の加工機に棒材を送る材料供給機に用いられ、棒材供給機に供給された棒材を把持するためのクランプ装置のツメに関する。
【背景技術】
【0002】
棒材供給機は、細長い棒材を自動旋盤等の加工機に連続的に送り込むとともに、加工機の稼働中にあっては、棒材を回転支承するものである。
【0003】
一般に、棒材供給機は、棒材を軸方向に押し出すフィードロッドを備え、フィードロッドの先端には、棒材の後端を把持するフィンガーチャックが回転可能に設けられる。また、棒材供給機は、棒材の後端をフィンガーチャックで把持する際に棒材の芯出しを行うクランプ装置を備える。
【0004】
従来、このような棒材供給機に設けられるクランプ装置として種々の構造が知られているが、例えば特許文献1に記載されるように、棒材供給機に導入された棒材を一対の爪片で上下方向から挟む棒材供給機のクランプ装置であって、上下方向に延設されたスライドレールと、該スライドレールに回転自在に取り付けられるクランクレバと、前記スライドレールに直線案内され、前記クランクレバの回転中心の上下に配設される一対のスライダと、前記クランクレバの回転中心の両側に回転自在に連結されると共に前記一対のスライダそれぞれに回転自在に連結される一対のリンクと、前記クランクレバを回転運動させる駆動源とを備え、前記一対の爪片が前記一対のスライダそれぞれに結合されることを特徴とする棒材供給機のクランプ装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-320204公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、この種のクランプ装置に使用される一対の爪片として、例えば、図9及び図10に示すように、第一のクランプ部材101及び第二のクランプ部材102からなるクランプ装置のツメが知られている。第一のクランプ部材101は、略V字形に形成された第一の外側爪部110及び第二の外側爪部120を備え、第二のクランプ部材102は、略V字形に形成された内側爪部140を備える。内側爪部140は、図10視におけるY方向に沿って、第一の外側爪部110と第二の外側爪部120との間に位置するように配置される。
【0007】
このような従来のクランプ装置のツメによれば、略V字形に形成された第一の外側爪部110及び第二の外側爪部120、並びに、内側爪部140によって、棒材Bの側面を複数の箇所で拘束することができ、棒材Bの中心軸と交差する方向(図9視におけるX方向及びZ方向)について棒材Bの位置決め(以下センタリングという。)を精度よく行うことができる。
【0008】
また、従来のクランプ装置のツメは、図11及び図12に示すように、第一の外側爪部110及び第二の外側爪部120、並びに、内側爪部140が図12視におけるY方向に沿って噛み合うように配置されている。このため、第一のクランプ部材101と第二のクランプ部材102とを互いに接近させることができ、細い材料径の棒材Bであっても把持することができる。
【0009】
しかしながら、このような従来のクランプ装置のツメを用いて棒材Bを把持する場合、第一の外側爪部110及び第二の外側爪部120、並びに、内側爪部140によって棒材Bにかかる作用点は、Y方向にずれた場所に位置する。このため、従来のクランプ装置のツメを用いて曲げ剛性の低い、例えば、線径の細い棒材Bを把持するような場合には、図12に示すように、把持する際に棒材Bを曲げてしまうおそれがあった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであって、棒材のセンタリング機能に優れたクランプ装置のツメであって、把持できる棒材の材料径の範囲を細いものから太いものまで広く設定することができると共に、曲げ剛性の低い棒材であっても、棒材を曲げることなく把持することのできるクランプ装置のツメを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記課題を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0012】
本願発明に係るクランプ装置のツメは、加工機に棒材を供給すると共に、当該棒材を回転支承する棒材供給機に備わるクランプ装置のツメであって、互いに近接離間可能となるように配置される第一のクランプ部材と第二のクランプ部材と、を備え、前記第一のクランプ部材は、離間して配置される第一の爪部と第二の爪部を備え、前記第二のクランプ部材は、前記第一の爪部と前記第二の爪部の間に噛み合い可能に配置される内側爪部を備え、前記第二のクランプ部材は、第一の補助爪部と第二の補助爪部を備えることを特徴とする。
【0013】
本願発明に係るクランプ装置のツメにおいて、前記第一の補助爪部は、前記第一の爪部と前記近接離間可能な方向に対向する位置に形成され、前記第二の補助爪部は、前記第二の爪部と前記近接離間可能な方向に対向する位置に形成されると好適である。
【0014】
本願発明に係るクランプ装置のツメにおいて、前記第一の爪部は、略V字形に形成される第一の把持面を備え、前記第二の爪部は、略V字形に形成される第二の把持面を備え、前記内側爪部は、略V字形に形成される内側把持面を備えると好適である。
【0015】
本願発明に係るクランプ装置のツメにおいて、前記第一の補助爪部は、前記内側把持面と連続する第一の補助把持面を備え、前記第二の補助爪部は、前記内側把持面と連続する第二の補助把持面を備えると好適である。
【0016】
本願発明に係るクランプ装置のツメにおいて、前記第一のクランプ部材は、前記内側爪部との干渉を避ける逃げ孔が形成されると好適である。
【0017】
本願発明に係るクランプ装置のツメにおいて、前記第二のクランプ部材は、前記第一の爪部との干渉を避ける第一の逃げ部及び前記第二の爪部との干渉を避ける第二の逃げ部が形成されると好適である。
【0018】
上記発明の概要は、本発明に必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るクランプ装置のツメによれば、棒材を精度よくセンタリングさせると共に、把持できる棒材の材料径の範囲を広く設定することができ、曲げ剛性の低い棒材であっても、棒材を曲げることなく把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る棒材供給機の模式図。
図2】本発明の実施形態に係るクランプ装置のツメを示す斜視図。
図3】本発明の実施形態に係るクランプ装置のツメを示すY方向から見た図。
図4】本発明の実施形態に係るクランプ装置のツメを示すZ方向から見た図。
図5】本発明の実施形態に係るクランプ装置のツメであって、線径の太い棒材を把持した状態を示すY方向から見た図。
図6】本発明の実施形態に係るクランプ装置のツメであって、線径の太い棒材を把持する際の作用点の位置を示すZ方向から見た図。
図7】本発明の実施形態に係るクランプ装置のツメであって、線径の細い棒材を把持した状態を示すY方向から見た図。
図8】本発明の実施形態に係るクランプ装置のツメであって、線径の細い棒材を把持する際の作用点の位置を示すZ方向から見た図。
図9】従来のクランプ装置のツメを示すY方向から見た図。
図10】従来のクランプ装置のツメを示すZ方向から見た図。
図11】従来のクランプ装置のツメであって、線径の細い棒材を把持した状態を示すY方向から見た図。
図12】従来のクランプ装置のツメであって、線径の細い棒材を把持した際に曲げてしまった状態のZ方向にカットした断面を示すイメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る棒材供給機の模式図であり、図2は、本発明の実施形態に係るクランプ装置のツメを示す斜視図であり、図3は、本発明の実施形態に係るクランプ装置のツメを示すY方向から見た正面図であり、図4は、本発明の実施形態に係るクランプ装置のツメを示すZ方向から見た平面図である。ここで、図2図3および図4において矢印Xは図示しないクランプ装置Sに装着されたクランプ装置のツメCの左右方向を示すものとし、左方向をX1方向で示し、右方向をX2方向で示す。また、図2及び図4において矢印Yは棒材Bの中心軸方向を示すものとし、前方をY1方向で示し、後方をY2方向で示す。また、図2及び図3において矢印Zは図示しないクランプ装置Sに装着されたクランプ装置のツメCの上下方向を示すものとし、上方をZ1方向で示し、下方をZ2方向で示す。なお、後述する図5乃至図8及び、従来のクランプ装置を示す図9乃至図12においてもこれらの矢印表示は同様とする。なお、本明細書において棒材Bの中心軸方向とは、棒材供給機M1に供給された状態の棒材Bについての中心軸方向と定義する。
【0023】
本実施形態の棒材供給機M1は、一例として、自動旋盤と称される棒材加工機(以下「加工機M2」と称する。)に材料を供給するものであって、図1に示すように、加工機M2に隣接して配置される。
【0024】
棒材供給機M1は、加工機M2に材料としての棒材Bを供給する本体5を備える。
【0025】
本体5は、外部から供給される棒材Bを保持する棒材支持装置7と、棒材Bを加工機M2に送出する棒材送出部6と、を備える。棒材支持装置7に保持された棒材Bは、後端部を棒材送出部6によって把持され、加工機M2に送出される。また、本体は、棒材送出部6が棒材Bを把持する際に棒材Bのセンタリングを行うクランプ装置Sを備える。
【0026】
一方、加工機M2は、棒材Bが通過可能な筒状の主軸4を備え、この主軸4には、棒材Bの先端部を把持するチャック4aが設けられている。棒材供給機M1から送出された棒材Bは、チャック4aによって把持された状態で回転され、図示しない所定の切削工具によって加工される。
【0027】
棒材送出部6は、棒材支持装置7に受け入れられた棒材Bを加工機M2へと搬送するための押し具8を備えている。
【0028】
押し具8は、一例として、棒材支持装置7の長手方向に沿って進退自由に移動可能であって断面が円形状のスライダ8aと、このスライダ8aの前方に配置されて棒材Bを押し出すプッシュロッド8bと、このプッシュロッド8bの前方に軸受を介して配置され、棒材Bの後端部を把持するフィンガーチャック8cと、を備える。
【0029】
クランプ装置Sは、一例として、本体5に固定されたスライドレールと、スライドレールに案内され互いに近接離間可能な一対のスライドブロックと、を備える。一対のスライドブロックは、一例として、棒材Bの中心軸を対称軸として線対称に移動可能に配置される。また、一対のスライドブロックには、棒材Bを把持するための一対のクランプ装置のツメCが装着される。
【0030】
一対のクランプ装置のツメCは、棒材支持装置7に供給された棒材Bの後端付近を一時的に挟持する。これにより、クランプ装置のツメCに挟まれた棒材Bは、フィンガーチャック8cとのセンタリングが行われる。
【0031】
このような一対のクランプ装置のツメCによる挟持動作を行うためのクランプ装置Sの構造として、例えば、複数の歯車を用いた構造や、複数のリンクを用いた構造等の種々の構造が知られているが、これらの構造は、従来から公知であるためその説明を省略するものとする。
【0032】
棒材Bのフィンガーチャック8cとのセンタリングが完了した後、プッシュロッド8bを棒材Bに向かって前進させ、棒材Bの後端部をフィンガーチャック8cによって把持する。フィンガーチャック8cが棒材Bを把持すると、クランプ装置Sによる棒材Bの挟持は解かれる。
【0033】
フィンガーチャック8cにより後端部を把持された棒材Bは、スライダ8aの移動によるプッシュロッド8bの押出動作によって、棒材Bの先端部が加工機M2のチャック4aによって把持され、図示しないストッパに突き当てられるまで加工機M2側へと送出される。
【0034】
また、図1に示すように、棒材支持装置7の前方には、棒材Bを回転可能に支持する棒材支持ユニット9が設けられ、この棒材支持ユニット9によって棒材Bの振れ回りが防止される。
【0035】
次に、本実施形態に係るクランプ装置のツメCについて説明を行う。
【0036】
図2に示すように、本実施形態に係るクランプ装置のツメCは、第一のクランプ部材1と第二のクランプ部材2を備える。第一のクランプ部材1と第二のクランプ部材2は、棒材供給機M1に供給された棒材Bを挟んでX方向両側に配置される。
【0037】
第一のクランプ部材1は、図3に示すように、Y方向から見てX2方向に開く略V字形に形成された第一の爪部10及び第二の爪部20を備える。また、第一のクランプ部材1には、第一の爪部10及び第二の爪部20の下方に、図示しないスライドブロックへの取付けに用いられる貫通孔が形成される。
【0038】
第一の爪部10と第二の爪部20は、図4に示すように、Y方向に離間して配置され、第一の爪部10と第二の爪部20の間には、凹部30が形成される。
【0039】
凹部30は、後述する第二のクランプ部材2の内側爪部40が噛み合うように設定される。このため、凹部30のY方向の寸法L1は、内側爪部40のY方向の寸法L2より大きくなるように形成される。
【0040】
なお、凹部30と内側爪部40が噛み合う状態において、凹部30と後述する第二のクランプ部材2の内側下片部42との干渉を避けるため、第一のクランプ部材1には、図2に示すように、X方向に貫通する逃げ孔31が形成されても構わない。
【0041】
第一の爪部10は、図3に示すように、略V字形の一方の片を構成し上方に配置される第一の上片部11と、略V字形の他方の片を構成し下方に配置される第一の下片部12とを備える。また、第一の下片部12は、第一の上片部11に対してX2方向に大きく形成されると好適である。
【0042】
本実施形態において、第一の上片部11と第一の下片部12とによって構成され、略V字形にX2方向に開く面は、第一の把持面15と称する。第一の把持面15は、棒材Bを把持する際に、棒材Bの側面と接触する。また、第一の把持面15は、後述する第二のクランプ部材2の第一の補助把持面51と対向するように配置される。
【0043】
また、第一の把持面15が成す角度α1は、略V字形の頂点を通る水平面に対して上下対称に形成されると好適である。また、角度α1は、一例として、120度であると好適である。
【0044】
また、第一の上片部11及び第一の下片部12のY2方向の側面には、図4に示すように、第一の把持面15に向かって先端が細くなるように第一の斜面14が形成されても構わない。このとき、第一の把持面15のY方向の幅W1は、第一の補助把持面51と対向するのに十分な寸法に形成される。
【0045】
第二の爪部20は、図3に示すように、略V字形の一方の片を構成し上方に配置される第二の上片部21と、略V字形の他方の片を構成し下方に配置される第二の下片部22を備える。また、第二の下片部22は、第二の上片部21に対してX2方向に大きく形成されると好適である。
【0046】
本実施形態において、第二の上片部21と第二の下片部22とによって構成され、略V字形にX2方向に開く面は、第二の把持面25と称する。第二の把持面25は、棒材Bを把持する際に、棒材Bの側面と接触する。また、第二の把持面25は、後述する第二のクランプ部材2の第二の補助把持面61と対向するように配置される。
【0047】
また、第二の把持面25が成す略V字形の角度は、第一の把持面15が成す略V字形の角度α1と同等であると好適である。
【0048】
また、第二の上片部21及び第二の下片部22のY1方向の側面には、図4に示すように、第二の把持面25に向かって先端が細くなるように第二の斜面24が形成されても構わない。第二の把持面25のY方向の幅寸法は、第二の補助把持面61と対向するのに十分な寸法に形成され、第一の把持面15のY方向の幅W1と同等に形成されると好適である。
【0049】
第二のクランプ部材2は、図3及び図4に示すように、Y方向から見てX1方向に開く略V字形に形成された内側爪部40と、内側爪部40のY2方向の側面に配置される第一の補助爪部50と、内側爪部40のY1方向の側面に配置される第二の補助爪部60と、を備える。また、第二のクランプ部材2には、内側爪部40の下方に、図示しないスライドブロックへの取付けに用いられる貫通孔が形成される。
【0050】
内側爪部40は、略V字形の一方の片を構成し上方に配置される内側上片部41と、略V字形の他方の片を構成し下方に配置される内側下片部42とを備える。また、内側下片部42は、内側上片部41に対してX1方向に大きく形成されると好適である。
【0051】
本実施形態において、内側上片部41と内側下片部42とによって構成され、略V字形にX1方向を向く面は、内側把持面43と称する。内側把持面43は、棒材Bを把持する際に、棒材Bの側面と接触する。また、内側上片部41及び内側下片部42は、図4に示すように、複数の谷部44を備え、棒材Bを把持する際に、内側把持面43と棒材Bの側面との接触面積が小さくなるように設定しても構わない。これにより、内側把持面43と棒材Bとの接触部の面圧が大きくなり、内側把持面43と棒材Bとの滑りを防止して確実に棒材Bを把持することができる。
【0052】
また、内側把持面43が成す角度α2は、略V字形の頂点を通る水平面に対して上下対称に形成されると好適である。また、角度α2は、一例として、第一の把持面15が成す角度α1と同等であると好適である。
【0053】
また、本実施形態において、内側爪部40のY方向の寸法L2は、凹部30のY方向の寸法L1よりも小さくなるように形成され、第一のクランプ部材1の凹部30に噛み合うように設定される。寸法L1及び寸法L2は、内側爪部40と凹部30とが噛み合った状態において、内側爪部40のY方向の両側面と凹部30のY方向の両側面との間に適切な隙間が形成されるように設定されると好適である。
【0054】
第一の補助爪部50は、図3に示すように、Y方向から見てX1方向に開く略V字形に形成され、内側把持面43と連続する第一の補助把持面51を備える。
【0055】
第一の補助把持面51は、図4に示すように、第一のクランプ部材1の第一の把持面15と対向するように配置され、曲げ剛性の低い、例えば、線径の細い棒材Bを把持する際に、棒材Bの側面と接触する。第一の補助把持面51のY方向の幅W2は、内側爪部40と凹部30とが噛み合った状態において、内側爪部40のY2方向の側面と凹部30のY1方向の側面との隙間より大きく形成され、第一の把持面15と対向するのに十分な寸法に設定される。このように、第一の補助把持面51と第一の把持面15とを対向させることにより、曲げ剛性の低い、例えば、線径の細い棒材Bを把持する際に、第一の補助把持面51と棒材Bとの作用点及び第一の把持面15と棒材Bとの作用点をY方向に一致させることができる。
【0056】
第一の補助爪部50の上下方向には、内側爪部40のY2方向の側面と一致する逃げ部52が形成される。このような逃げ部52を有することによって、内側爪部40は、第一のクランプ部材1の第一の上片部11及び第一の下片部12と干渉することなく凹部30と噛み合うことができる。
【0057】
第二の補助爪部60は、図3に示すように、Y方向から見てX1方向に開く略V字形に形成され、内側把持面43と連続する第二の補助把持面61を備える。
【0058】
第二の補助把持面61は、図4に示すように、第一のクランプ部材1の第二の把持面25と対向するように配置され、曲げ剛性の低い、例えば、線径の細い棒材Bを把持する際に、棒材Bの側面と接触する。第二の補助把持面61のY方向の幅寸法は、第一の補助把持面51のY方向の幅W2と同等に設定される。すなわち、第二の補助把持面61のY方向の幅寸法は、内側爪部40と凹部30とが噛み合った状態において、内側爪部40のY1方向の側面と凹部30のY2方向の側面との隙間より大きく形成され、第二の把持面25と対向するのに十分な寸法に設定される。このように、第二の補助把持面61と第二の把持面25とを対向させることにより、曲げ剛性の低い、例えば、線径の細い棒材Bを把持する際に、第二の補助把持面61と棒材Bとの作用点及び第二の把持面25と棒材Bとの作用点をY方向に一致させることができる。
【0059】
第二の補助爪部60の上下方向には、内側爪部40のY1方向の側面と一致する逃げ部62が形成される。このような逃げ部62を有することによって、内側爪部40は、第一のクランプ部材1の第二の上片部21及び第二の下片部22と干渉することなく凹部30と噛み合うことができる。
【0060】
次に、本実施形態に係るクランプ装置のツメCを用いて棒材Bを把持した際の効果について説明を行う。
【0061】
図5は、本発明の実施形態に係るクランプ装置のツメであって、線径の太い棒材Bを把持した状態を示すY方向から見た図であり、図6は、本発明の実施形態に係るクランプ装置のツメであって、線径の太い棒材を把持する際の作用点の位置を示すZ方向から見た図であり、図7は、本発明の実施形態に係るクランプ装置のツメであって、線径の細い棒材Bを把持した状態を示すY方向から見た図であり、図8は、本発明の実施形態に係るクランプ装置のツメであって、線径の細い棒材を把持する際の作用点の位置を示すZ方向から見た図である。なお、図6及び図8に示す白抜き矢印の表示は、棒材Bに作用する力を示す。
【0062】
第一の把持面15及び第二の把持面25、並びに、内側把持面43は、略V字形の頂点を通る水平面に対して上下対称に形成されている。このため、図5及び図7に示すように、第一の把持面15及び第二の把持面25、並びに、内側把持面43によって把持された棒材Bの中心軸は、略V字形の頂点の高さと一致するようにセンタリングが行われる。
【0063】
また、本実施形態に係るクランプ装置のツメCは、第一の下片部12及び第二の下片部22が第一の上片部11及び第二の上片部21よりもX2方向に長く形成され、内側下片部42が内側上片部41よりもX1方向に長く形成されている。このため、棒材Bをクランプ装置のツメCによって把持する際、第一の下片部12及び第二の下片部22並びに内側下片部42によって、棒材Bを下方からすくい上げるように把持することができ、容易にセンタリングすることが可能となる。
【0064】
本実施形態に係るクランプ装置のツメCを用いて線径の太い棒材Bを把持する場合、図5に示すように、棒材Bは、X1方向の側面を第一の把持面15及び第二の把持面25によって、X2方向の側面を内側把持面43によって把持される。このとき、棒材Bの側面は、第一の補助把持面51及び第二の補助把持面61とは接触しない。また、このとき、図6に示すように、棒材BにX1方向からかかる力の作用点とX2方向からかかる力の作用点がY方向にずれた位置となるが、線径の太い棒材Bは、曲げ剛性が高いため、クランプ装置のツメCによる把持によって屈曲されることはない。
【0065】
また、本実施形態に係るクランプ装置のツメCを用いて曲げ剛性の低い、例えば、線径の細い棒材Bを把持する場合、図7に示すように、棒材Bは、X1方向の側面を第一の把持面15及び第二の把持面25によって、X2方向の側面を第一の補助把持面51及び第二の補助把持面61よって把持される。このとき、図8に示すように、棒材BにX1方向からかかる力の作用点とX2方向からかかる力の作用点が、Y方向において同じ位置となるため、棒材Bにはせん断力及び曲げモーメントがかからない。したがって、本実施形態に係るクランプ装置のツメCによれば、曲げ剛性の低い、例えば、線径の細い棒材Bを把持した場合であっても、棒材Bが屈曲されることはない。
【0066】
また、本実施形態に係るクランプ装置のツメCを用いて曲げ剛性の低い、例えば、線径の細い棒材Bを把持する場合、図7に示すように、内側爪部40が凹部30に噛合うが、第一のクランプ部材1には逃げ孔31が形成されているため、内側下片部42は凹部30と干渉することがない。また、第二のクランプ部材2には第一の逃げ部52及び第二の逃げ部62が形成されているため、第一の爪部10及び第二の爪部20は、それぞれ第一の補助爪部50及び第二の補助爪部60と干渉することがない。なお、第一の補助把持面51及び第二の補助把持面61の大きさ並びに第一の逃げ部52及び第二の逃げ部62の範囲は、把持する対象となる曲げ剛性の低い棒材Bの線径に対応するように、適宜設定して構わない。
【0067】
なお、上記では、クランプ装置Sは、棒材Bを第一のクランプ部材1及び第二のクランプ部材2によって、X方向から把持する場合について説明を行ったが、棒材Bを把持する方向はこれに限らず、クランプ装置Sは、棒材BをZ方向、その他の棒材Bの中心軸と交差する方向から把持するような構成であっても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0068】
1 第一のクランプ部材、 2 第二のクランプ部材、 10 第一の爪部、 11 第一の上片部、 12 第一の下片部、 14 第一の斜面、 15 第一の把持面、 20 第二の爪部、 21 第二の上片部、 22 第二の下片部、 24 第二の斜面、 25 第二の把持面、 30 凹部、 31 逃げ孔、 40 内側爪部、 41 内側上片部、 42 内側下片部、 43 内側把持面、 44 谷部、 50 第一の補助爪、 51 第一の補助把持面、 52 第一の逃げ部、 60 第二の補助爪、 61 第二の補助把持面、 62 第二の逃げ部、 C クランプ装置のツメ、 S クランプ装置。
図1
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図12