(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025141502
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】露光装置および露光方法
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20250919BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20250919BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G03F7/20 505
H01L21/68 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024041466
(22)【出願日】2024-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】永井 妥由
【テーマコード(参考)】
2H197
5F131
【Fターム(参考)】
2H197AA22
2H197CA07
2H197CD12
2H197DA03
2H197DA09
2H197DC06
2H197EA11
2H197EA19
2H197EB16
2H197EB23
2H197HA02
2H197HA03
2H197HA04
2H197HA05
2H197HA08
2H197HA10
5F131AA02
5F131BA13
5F131CA07
5F131CA18
5F131DA33
5F131EA02
5F131EA22
5F131EA23
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5F131KA14
5F131KA72
5F131KB07
5F131KB12
5F131KB32
5F131KB53
5F131KB54
5F131KB55
5F131KB56
(57)【要約】 (修正有)
【課題】多層配線基板を製造する場合に、各層間におけるパターンのずれを軽減しつつ、最外層に形成されるパターンと設計上のパターンとの差異を小さくすることができる技術を提供する。
【解決手段】露光装置は、基準マークが形成された基板Wを保持するステージ2と、基板Wに形成された基準マークの位置を検出する基準マーク検出部711と、基準マーク検出部711によって検出された基準マークの位置と設計上の基準マークの位置との間のずれ量、および、基板Wに形成すべき残りの層の数である残余層数に応じて、設計上のパターンを示すパターンデータD1を補正する補正量を算出する補正量算出部713と、補正量に応じてパターンデータD1を補正する補正部715と、補正部によって補正されたパターンデータにしたがって、露光を行う露光ユニットと、を備える。補正部量算出部715は、残余層数が小さくなるほど、補正量を小さくする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光装置であって、
基準マークが形成された基板を保持する基板保持部と、
前記基板に形成された前記基準マークの位置を検出する基準マーク検出部と、
前記基準マーク検出部によって検出された前記基準マークの位置と設計上の前記基準マークの位置との間のずれ量、および、前記基板に形成すべき残りの層の数である残余層数に応じて、設計上のパターンを示すパターンデータを補正する補正量を算出する補正量算出部と、
前記補正量に応じて前記パターンデータを補正する補正部と、
前記補正部によって補正された前記パターンデータにしたがって、露光を行う露光部と、
を備え、
前記補正量算出部は、前記残余層数が小さくなるほど、前記補正量を小さくする、露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の露光装置であって、
前記基準マークは、前記基板に形成された表層のパターンである、露光装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の露光装置であって、
前記補正量算出部は、前記残りの層ごとの前記補正量を算出する、露光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の露光装置であって、
前記補正量算出部は、最外層の補正量があらかじめ設定された補正量に近づくように、前記最外層に近づくにつれて、前記補正量を一定割合で小さくする、露光装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の露光装置であって、
前記補正量算出部は、第1層と、第1層より外側の第2層とが形成された前記基板についての前記ずれ量が、前記第2層の前記パターンを露光するために算出された前記補正量から乖離している場合、残りの層についての前記補正量を、前記ずれ量に応じて再計算する、露光装置。
【請求項6】
露光方法であって、
a) 基板に形成された基準マークの位置と設計上の前記基準マークの位置との間のずれ量、および、前記基板に形成すべき残りの層の数である残余層数に応じて、設計上のパターンを示すパターンデータを補正する補正量を算出する工程と、
b) 前記補正量に応じて補正して補正された前記パターンデータにしたがって、露光を行う工程と、
を含み、
前記工程a)は、前記残余層数が小さくなるほど、前記補正量を小さくする、露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、露光装置および露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に樹脂層と配線層とを多層に積み重ねた多層配線構造が形成された多層配線基板が知られている。このような多層配線基板では、製造過程において基板が伸縮することにより、各層に描画される配線パターンがずれてしまう場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1では、被露光基板に設けられた複数の基準マークの設計上の位置である第1の位置を示す座標データと、複数の基準マークの各々の実際の位置である第2の位置を示す座標データを取得し、第1の位置及び第2の位置に基づいて被露光基板の歪みの大きさを示す物理量を導出し、かつ複数の基準マークの各々毎に、第1の位置及び第2の位置のずれに対する補正量を導出する。そして、導出した補正量の各々から、上記物理量が大きくなるほど多い量を低減し、低減した補正量に基づいて描画パターンを示す座標データを補正する。
【0004】
描画パターンを描画する際に、層毎に、基板の歪みの大きさを示す物理量が大きくなる程、補正量を低減させることにより、層を重ねるごとに蓄積される歪みが低減されるため、上位層に描画される描画パターンの形状が設計上の描画パターンの形状から乖離することによって電子部品の実装の精度が低下することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、基板の歪みの大きさを示す物理量に応じて補正量を低減したとしても、層毎のパターンのずれの蓄積を回避することは困難であった。このため、最外層のパターンと設計上のパターンとの差異が大きくなるおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、多層配線基板を製造する場合に、各層間におけるパターンのずれを軽減しつつ、最外層に形成されるパターンと設計上のパターンとの差異を小さくすることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1態様は、露光装置であって、基準マークが形成された基板を保持する基板保持部と、前記基板に形成された前記基準マークの位置を検出する基準マーク検出部と、前記基準マーク検出部によって検出された前記基準マークの位置と設計上の前記基準マークの位置との間のずれ量、および、前記基板に形成すべき残りの層の数である残余層数に応じて、露光すべき設計上のパターンを示すパターンデータを補正する補正量を算出する補正量算出部と、前記補正量に応じて前記パターンデータを補正する補正部と、前記補正部によって補正されたパターンデータにしたがって、露光を行う露光部と、を備え、前記補正量算出部は、前記残余層数が小さくなるほど、前記補正量を小さくする。
【0009】
第2態様は、第1態様の露光装置であって、前記基準マークは、前記基板に形成された表層のパターンである。
【0010】
第3態様は、第1態様または第2態様の露光装置であって、前記補正量算出部は、前記残りの層ごとの前記補正量を算出する。
【0011】
第4態様は、第3態様の露光装置であって、前記補正量算出部は、最外層の補正量があらかじめ設定された補正量に近づくように、前記最外層に近づくにつれて、前記補正量を一定割合で小さくする。
【0012】
第5態様は、第3態様または第4態様の露光装置であって、前記補正量算出部は、第1層と、第1層より外側の第2層とが形成された前記基板についての前記ずれ量が、前記第2層の前記パターンを露光するために算出された前記補正量から乖離している場合、残りの層についての前記補正量を、前記ずれ量に応じて再計算する。
【0013】
第6態様は、露光方法であって、a)基板に形成された基準マークの位置と設計上の前記基準マークの位置との間のずれ量、および、前記基板に形成すべき残りの層の数である残余層数に応じて、露光すべき設計上のパターンを示すパターンデータを補正する補正量を算出する工程と、b)前記補正量に応じて補正して補正された前記パターンデータにしたがって、露光を行う工程と、を含み、前記工程a)は、前記残余層数が小さくなるほど、前記補正量を小さくする。
【発明の効果】
【0014】
第1態様から第5態様の露光装置によれば、残りの層の数が小さくなるほどパターンデータの補正量を小さくするため、最外層に近づくにつれて、形成されるパターンの大きさを設計上の大きさに近づけることができる。これにより、層間のパターンのずれを低減しつつ、最外層に形成されるパターンと設計上のパターンとの差異を小さくすることができる。
【0015】
第2態様の露光装置によれば、基板の表層のパターンを基準にして、次の層のパターンデータが補正される。このため、層間のパターンのずれを小さくすることができる。
【0016】
第4態様の露光装置によれば、層間のパターンのずれをさらに小さくすることができる。
【0017】
第5態様の露光装置によれば、乖離した場合でも、基準マークのずれ量に応じて残りの補正量を再計算することによって、層間のパターンのずれを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る露光装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】露光装置において露光される基板Wを概念的に示す上面図である。
【
図3】
図1に示される制御部の構成を示すブロック図である。
【
図4】露光装置を用いた基板Wの露光方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図4に示される露光プロセスによって得られる多層配線基板の断面を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。
【0020】
<1. 実施形態>
図1は、実施形態に係る露光装置100の構成を示す斜視図である。露光装置100は、基板Wを処理する基板処理装置であって、レジストなどの感光性材料を含む感光層W1が形成された基板Wの上面に光を照射して、パターンを描画する装置である。基板Wは、例えば、半導体基板、プリント基板、カラーフィルタ用基板、液晶表示装置やプラズマ表示装置に用いられるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板、または、光ディスク用基板である。
【0021】
露光装置100は、基台1と、ステージ2と、ステージ移動機構3と、ガントリー4と、露光ユニット5と、撮影部6と、制御部7とを備える。基台1は、上面視において、矩形状を有する。基台1は、ステージ2と、ステージ移動機構3と、ガントリー4とを下方から支持している。露光ユニット5および撮影部6は、ガントリー4に支持されている。
【0022】
ステージ2は、基板Wを保持する。基板Wを支持する支持面としての上面2Sを有する。上面2Sを上側から視た上面視において、上面2Sは四角形状(ここでは、長方形状)である。上面2Sは、X方向およびY方向と平行な水平面である。基板Wは、上面2Sに、水平姿勢にて載置される。上面2Sには、複数の吸引孔が形成されている。ステージ2は、この吸引孔に負圧(吸引圧)を付与することによって、基板Wを上面2Sに固定することが可能である。なお、上面2Sに基板Wの周囲を把持するチャックが設けられていて、当該チャックによって基板Wが上面2Sに固定されてもよい。
【0023】
ステージ移動機構3は、ステージ2を主走査方向(Y方向)、副走査方向(X方向)、および回転方向(Z軸まわりの回転方向(θ方向))に移動させる。ステージ移動機構3は、支持プレート31と、副走査機構32と、ベースプレート33と、主走査機構と、回転機構35とを有する。
【0024】
支持プレート31は、ステージ2の下側に配置されており、ステージ2を回転可能に支持している。ベースプレート33は、支持プレート31よりも下側に配置されており、支持プレート31および副走査機構32を支持している。副走査機構32は、ベースプレート33に対して支持プレート31を副走査方向であるX方向に移動させる。主走査機構34は、基台1に対してベースプレート33を主走査方向であるY方向に移動させる。ベースプレート33がY方向に移動することにより、ステージ2がY方向へ移動する。副走査機構32および主走査機構34は、例えば、リニアモータとガイドとを含むリニアモータ機構、あるいは、回転モータとボールねじとガイドとを含むボールねじ機構により構成される。回転機構35は、支持プレート31上に設けられ、ステージ2をZ方向に延びる回転軸A1まわりに回転させる。副走査機構32、主走査機構34および回転機構35は、制御部7からの制御指令に基づいて動作する。
【0025】
ガントリー4は、下部が基台1に固定された一対の脚部41,41と、一対の脚部41,41の上部に固定された梁部43とを有する。一対の脚部41,41は、X方向に間隔をあけて配置されている。ステージ2は、X方向における一対の脚部41,41の間をY方向に移動する。露光ユニット5および撮影部6は、ガントリー4の梁部43に取り付けられている。
【0026】
露光ユニット5は、1個または複数個の露光ヘッド51を有する。本例では、5個の露光ヘッド51がX方向に沿って配列されている。各露光ヘッド51は、空間光変調器510を有する。空間光変調器510は、描画パターンに対応するストリップデータに基づいて、レーザ光を空間的に変調する。
【0027】
露光ユニット5は、光照射部53を有する。光照射部53は、露光ヘッド51にレーザ光を照射する。露光ヘッド51は、ガントリー4における梁部43の-Y側の側部に固定されている。光照射部53は、ガントリー4の梁部43内の空洞部に配置されている。光照射部53は、レーザ駆動部531と、レーザ光源533(光源)と、照明光学系535とを有する。レーザ駆動部531の作動により、レーザ光源533は、レーザ光を照明光学系535に出射する。照明光学系535は、レーザ光源533から入射したレーザ光の倍率変更、および、光量分布の均一化などを行う。照明光学系535から出射されたレーザ光は、各露光ヘッド51の空間光変調器510に照射される。
【0028】
空間光変調器510は、光照射部53から照射されたレーザ光をチャンネル単位で空間的に変調して、パターンの描画に寄与させる必要光と、パターンの描画に寄与させない不要光とを、互いに異なる方向に反射させる。なお、光を空間変調させるとは、光の空間分布(振幅、位相、および偏光等)を変化させることを意味する。露光ヘッド51は、変調されたレーザ光を、露光ヘッド51の直下で移動する基板Wに対して落射する。これによって、未処理の基板Wに描画パターンが露光される。空間光変調器510は、具体的には、回折型変調素子の一種であるGLV(Grating Light Valve、米国シリコンライトマシーンズ社の登録商標)である。なお、空間光変調器510は、DMD(Digital Mirror Device)などであってもよい。
【0029】
撮影部6は、基板Wに形成された複数の基準マークを含む画像を撮影する。撮影部6は、複数(ここでは2台)のカメラ61と、カメラ移動部63とを有する。各カメラ61は、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を有する。各カメラ61は、撮像によって得られた画像データを制御部7へ送信する。カメラ移動部63は、各カメラ61をX方向に移動させる。カメラ移動部63は、リニアモータ機構あるいはボールネジ機構などの駆動機構により構成される。カメラ移動部63は、制御部7によって制御される。カメラ移動部63は、ガントリー4における梁部43の+Y側の側部に固定されている。このため、各カメラ61は、ガントリー4に対して+Y側に離れた位置で、X方向に移動される。
【0030】
図2は、露光装置100において露光される基板Wを概念的に示す上面図である。
図2に示されるように、露光ユニット5は、空間光変調器510によって空間変調されたレーザ光が照射される。基板Wに照射されるレーザ光の断面形状は、矩形状である。
図2に示される照射領域R1は、レーザ光が照射されている矩形状の領域を示している。5個の露光ヘッド51を駆動した場合、
図2に示されるように、X方向において等間隔に5個の照射領域R1が同時に露光される。空間光変調器510によるレーザ光の空間変調により、照射領域R1の長軸方向(ここでは、X方向)における光の強度分布が、描画すべきパターンの位置および形状に応じて変更される。
【0031】
制御部7は、ステージ2を主走査方向(Y方向)に移動させることにより、基板Wを主走査方向に移動させる。この基板Wの主走査移動により、基板Wに対して照射領域R1が主走査方向(
図2では+Y方向)に移動する。すると、基板W上にレーザ光で露光された主走査方向に延びる帯状の露光済領域R3が形成される。5個の露光ヘッド51を駆動した場合、
図2に示されるように、X方向において等間隔に5個の露光済領域R3が形成される。照射領域R1の主走査方向に移動することによって、基板Wの露光すべき領域の一端から他端までレーザ光が照射される。
【0032】
基板Wの主走査移動が完了すると、制御部7は、ステージ2を副走査方向(X方向)に露光済領域R3の幅分だけ移動させることにより、基板Wを副走査方向に移動させる。この基板Wの副走査移動により、基板Wに対して照射領域R1が副走査方向(
図2では+X方向)にずれる。そして、再び制御部7が、ステージ2を主走査方向に移動させることにより、未露光の領域が露光される。このように、基板Wの主走査移動と副走査移動とを交互に繰り返されることにより、基板Wの露光すべき領域の全面に対して、レーザ光が照射される。
【0033】
図3は、
図1に示される制御部7の構成を示すブロック図である。制御部7は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ71と、プロセッサ71と電気的に接続されたメモリ73とを有するコンピュータである。メモリ73は、ROM(Read-Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの主記憶装置、および、HDDまたはSSDなどの補助記憶装置などを有する。なお、制御部7の機能の一部は、専用回路(例えば特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)など)によって実現されてもよい。
【0034】
メモリ73は、コンピュータプログラムPを記憶している。コンピュータプログラムPは、磁気媒体、光ディスクまたは半導体メモリなどの非一過性の記録媒体を介して制御部7に提供されてもよい。また、コンピュータプログラムPは、インターネットなどのネットワークを介して制御部7に提供されてもよい。また、メモリ73は、パターンデータD1を記憶している。パターンデータD1は、基板Wに描画するべき設計上のパターンを示すデータである。なお、多層配線基板を製造する場合、メモリ73には、層毎のパターンデータD1が保存される。
【0035】
制御部7には、ディスプレイ75および入力デバイス76が接続される。ディスプレイ75は、各種情報を表示する装置であって、例えば液晶ディスプレイである。入力デバイス76は、例えばマウス、キーボード、スイッチまたはボタンなどである。なお、ディスプレイ75にタッチパネルが組み込まれることにより、ディスプレイ75が入力デバイス76と一体化されたタッチパネルディスプレイとして構成されていてもよい。
【0036】
制御部7は、露光装置100内の各要素と電気的に接続されている。例えば、制御部7は、副走査機構32、主走査機構34、空間光変調器510、レーザ駆動部531、2台のカメラ61、カメラ移動部63と電気的に接続されている。そして、プロセッサ71がコンピュータプログラムPを実行することにより、制御部7に接続された各要素の動作が制御される。これにより、露光装置100において基板Wにレーザ光を照射してパターンを描画するための各処理が順次実行される。
【0037】
図3に示される、基準マーク検出部711と、補正量算出部713と、補正部715とは、プロセッサ71がコンピュータプログラムPを実行することによって実現される機能ブロックである。基準マーク検出部711は、撮影部6のカメラ61によって得られた基板Wの画像を用いて、基板Wに形成された複数の基準マークの位置を検出する。基準マークは、基板Wに形成された特定の形状を有するものであって、画像上で識別することが可能なものである。基準マークは、具体的には、基板Wに形成された表層(表面をなす層)の回路パターンである。
【0038】
本実施形態では、基準マーク検出部711は、基準マークとして、基板Wの表層が有する回路パターンの一部を検出する。例えば2層目の回路パターンを露光する場合には、1層目の回路パターンの一部が基準マークとして検出される。また、3層目の回路パターンを形成する場合には、2層目の回路パターンの一部が基準マークとして検出される。
【0039】
補正量算出部713は、基板Wにまだ形成されていない残りの層ごとの補正量を算出する。具体的には、補正量算出部713は、基準マーク検出部711によって検出された複数の基準マークの位置と、設計上の複数の基準マークの位置とのずれ量を算出する。そして、補正量算出部713は、算出されたずれ量と、残りの層の数(以下、「残余層数」と称する。)とに基づいて、残りの層ごとの補正量を算出する。また、補正量算出部713は、残余数が小さくなるほど、補正量を小さくする。
【0040】
補正部715は、補正量算出部713によって算出された補正量に応じて、パターンデータD1を補正する。制御部7は、補正部715によって補正されたパターンデータD1である補正データにしたがって露光ユニット5を制御する。これにより、露光ユニット5は、補正されたパターンを基板W(より詳細には、感光層W1)に描画する。露光ユニット5および制御部7は、「露光部」の一例である。
【0041】
補正量算出部713は、補正量として、パターンデータD1を伸縮させる比率である補正伸縮率を算出する。例えば、補正伸縮率が-0.1%であった場合、補正部715は、パターンデータD1のスケールを0.1%だけ縮めた補正データを生成する。補正伸縮率が+0.1%である場合、補正部715は、パターンデータD1を0.1%だけ伸ばした補正データを生成する。
【0042】
また、補正量算出部713は、補正量を算出するため、上記ずれ量として「伸縮率」を算出する。伸縮率とは、具体的には、設計上の基準マーク間の距離である設計距離Daに対する検出された複数の基準マークから基準マーク間の距離である実測距離Dbの伸び率をいう。実測距離Dbが設計距離Daに対して大きい場合、伸縮率Srは正の値として算出される。実測距離Dbが設計距離Daに対して小さい場合、伸縮率は負の値として算出される。伸縮率Srは、例えば次式により算出される。
【0043】
Sr=(Db-Da)/Da×100
【0044】
<露光装置を用いた露光プロセス>
図4は、露光装置100を用いた基板Wの露光方法を示すフローチャートである。
図4に示される露光方法は、多層回路基板を製造するための露光方法の一例である。
【0045】
多層回路基板における最外層の回路パターンに部品を取り付けるためには、最外層の回路パターンのスケールが、設計上のスケールとほぼ一致していることが望ましい。このため、露光装置100では、まず、ユーザからの入力に基づいて、最外層の補正伸縮率が設定される(ステップS1)。例えば最外層の補正伸縮率を0%とした場合、最外層の回路パターンを露光するに当たっては、伸縮補正がされていない元のパターンデータD1がそのまま使用されて、露光が行われることとなる。この場合、パターンデータD1の寸法通りにパターンが描画されるため、設計上と同じスケールの回路パターンを有する最外層を、基板Wに形成できる。ただし、最外層の補正伸縮率は0%に限定されるものではない。例えばパターンデータD1と同じスケールでパターンを描画したとしても、実際に形成された回路パターンが設計上のパターンに対して伸縮してしまう可能性がある。このような回路パターンの伸縮を見越して、あらかじめ最外層の補正伸縮率が0%とは異なる値に設定されてもよい。
【0046】
ステップS1の後、露光装置100は、最下層である1層目のパターンを露光する(ステップS2)。パターンを露光するに当たっては、まず、基板Wの位置を調整するアライメントが行われる。アライメントは、基板Wにあらかじめ形成されている不図示のアライメントマークを用いて行われる。アライメントマークは、位置を特定することが容易な形状(例えば十字状)を有する。アライメントマークは、例えば基板Wの四隅に形成される。
【0047】
最下層のパターンを露光する段階では、基板Wには、回路パターンが形成されていない。すなわち、複数の基準マークとして利用できる回路パターンが存在しない。このため、補正されていないパターンデータD1をそのまま用いて、1層目のパターンが露光される。
【0048】
なお、1層目のパターンを露光するに当たって、アライメントマークから基板Wの伸縮率が求められ、その伸縮率に応じてパターンデータD1が補正されてもよい。この場合、基準マーク検出部711が、撮影部6によって撮像された複数のアライメントマークを含む画像を用いて複数のアライメントマークを検出し、検出された複数のアライメントマークの位置と、設計上の複数のアライメントマークの位置とのずれ量から、基板Wの伸縮率を算出してもよい。そして、補正部715が、算出された伸縮率に応じてパターンデータD1を補正してもよい。補正されたパターンデータを用いて露光を行うことにより、1層目のパターンを基板の伸縮に合わせて露光することができる。
【0049】
ステップS2の後、基板Wは、露光装置100から搬出され、不図示の処理装置において1層目の回路パターンを形成するための処理が施される。具体的には、基板Wに対して、現像、エッチング、剥離等の化学処理が行われる。これにより、露光したパターンに対応する1層目の回路パターンが基板Wに形成される。また、次の層(ここでは、2層目)を形成するための処理が行われる。具体的には、基板Wに対して、プリプレグ層の積層、導通ビアの形成、フィルドビアメッキ、粗化処理、そして、感光層W1の形成が行われる。このようにして1層目が形成された基板Wは、再び露光装置100に搬入される。
【0050】
基板Wが露光装置100に戻されると、露光装置100は、基板Wのアライメントを行う。ここでは、基準マーク検出部711は、撮影部6によって取得された画像を用いて、基板Wに形成された表層(1層目)の回路パターンを、複数の基準マークとして検出する。そして、検出された複数の基準マークの位置を用いて、基板Wがアライメントされる。これにより、表層の回路パターンの位置を基準として、次の層(2層目)の露光を行うことが可能となる。アライメントが完了すると、補正量算出部713は、1層目の伸縮量を算出する(ステップS3)。すなわち、補正量算出部713は、基準マーク検出部711によって検出された複数の基準マーク(回路パターンの複数部分)の位置から、1層目の伸縮率を算出する。さらに、補正量算出部713は、残りの層ごとの補正伸縮率を算出する(ステップS4)。
【0051】
上述したように、補正量算出部713は、算出された1層目の伸縮率(ずれ量)と、残りの層の数(残余層数)とに応じて、残りの層の補正伸縮率を算出する。このとき、補正量算出部713は、残余層数が小さくなるほど、補正伸縮率の大きさ(補正量)を小さくする。すなわち、補正量算出部713は、最外層へ向かうにつれて、補正伸縮率の大きさが小さくなるように、より好ましくは、一定の割合で補正伸縮率の大きさが小さくなるように、残りの層ごとに補正伸縮量を算出する。
【0052】
表1は、補正伸縮率の算出例を示す図である。表1に示される例では、ステップS3において算出された1層目の伸縮率が-0.1%であり、ステップS1において設定された最外層(6層目)の補正伸縮率が0%である。このため、2層目~5層目の伸縮率は、順に、-0.08%、-0.06%、-0.04%、-0.02%としている。すなわち、1層ごとに、補正伸縮率の大きさを0.02%ずつ小さくしている。このように、最外層の補正伸縮率があらかじめ設定された補正伸縮率となるように、一定割合で補正伸縮率の大きさ(補正量)を小さくしてくことにより、層間における回路パターンの大きさの違いを小さくすることができるため、層間の回路パターンのずれを小さくすることができる。
【0053】
【0054】
図4に戻って、露光装置100は、ステップS4によって算出された補正伸縮率を用いて、2層目のパターンの露光を行う(ステップS5)。例えば、表1では、2層目の補正伸縮率は、-0.08%なっている。このため、補正部715は、パターンデータD1を-0.08%だけ伸縮させた補正データを生成する。そして、制御部7は、補正データにしたがって、露光を行うことにより、2層目のパターンを露光する。これにより、設計上のパターンからスケールが-0.08%だけ収縮されたパターンが、基板Wの感光層W1に描画される。
【0055】
ステップS5の後、基板Wは、露光装置100から搬出され、不図示の処理装置において2層目の回路を形成するための処理が施される。そして、次の層(ここでは、3層目)を形成するための処理が行われた後、基板Wが露光装置100へ搬入される。
【0056】
基板Wが露光装置100に戻されると、基板Wのアライメントが行われ、その後、補正量算出部713が、基板Wの表層(表面をなす層)である2層目の伸縮率を算出する(ステップS6)。ステップS6は、ステップS3の処理と同様に行われる。すなわち、基板Wに形成されている2層目の回路パターンを複数の基準マークとして基板Wのアライメントとが行われる。また、検出された複数の基準マークの位置から2層目の伸縮率が算出される。
【0057】
続いて、補正量算出部713は、ステップS6によって算出された2層目の伸縮率が、第1補正伸縮率が示す2層目の補正伸縮率と乖離しているか否かを判定する(ステップS7)。具体的には、2層目を露光するために用いた補正伸縮率と、実際の伸縮率との差が、所定の閾値を超えているか否かを判定する。ステップS7において、乖離していると判定された場合、補正量算出部713は、残りの層である3層目以降の層ごとの伸縮補正量を再計算する(ステップS8)。
【0058】
例えば表1に示される例では、2層目の補正伸縮率が-0.08%であり、実際に形成された2層目の伸縮率が-0.02%である。これらの差は、所定の閾値(ここでは、0.02%)を超えているため、3層目以降の補正伸縮率が再計算されている。この再計算に当たっては、実際に形成された2層目の伸縮率が用いられる。具体的には、まず、次の層である3層目の補正伸縮率が、2層目の伸縮率(-0.02%)と、先に算出された3層目の補正伸縮率(-0.06%)とに基づいて決定される。ここでは、3層目の補正伸縮率を、2層目の伸縮率(-0.02%)と、3層目の補正伸縮率の間の値である中間値(-0.04%)とされている。そして、残りの層(4層目および5層目)については、ステップS3と同様に、最外層に近づくにつれて露光伸縮率が一定の割合で小さくなるように、各層の補正伸縮率が算出される。具体的には、4層目~6層目の補正伸縮率は、順に-0.027%、-0.014%、0%である。すなわち、1層ごとに補正伸縮率の大きさを0.13%ずつ小さくしている。
【0059】
このように、実際に形成された表層の伸縮率(ずれ量)が、その表層の露光時に用いた補正伸縮率(補正量)と乖離した場合でも、表層の伸縮率に応じて補正伸縮率を再計算することにより、層間の位置ずれを小さくすることができる。
【0060】
ステップS7において乖離していないと判定された場合、あるいは、ステップS8により補正伸縮率が再計算された後、露光装置100は、補正伸縮率を用いて次の層である第3層の露光を行う(ステップS9)。すなわち、ステップS5と同様に、補正部715が、3層目の補正伸縮率でパターンデータD1を補正した補正データを生成する。そして、制御部7は、補正データを用いて露光ユニット5を制御することにより、3層目のパターンを描画する。
【0061】
露光装置100は、ステップS9を完了すると、すべての層についての露光が完了したか否かを判定する(ステップS10)。すべての層について露光が完了している場合、露光装置100は処理を終了する。一方、未露光の層が存在する場合には、ステップS6に戻って、露光装置100における処理が継続される。このように、露光装置100は、ステップS6~ステップS9を繰り返し行うことによって、すべての層の露光を順次行う。
【0062】
図5は、
図4に示される露光プロセスによって得られる多層配線基板W3を概念的に示す図である。上述したように、露光装置100は、残余層数が小さくなるほど(すなわち、最外層に近づくほど)、補正伸縮率の大きさが小さくなるように、残りの各層の補正伸縮率を算出する。このため、
図5に示されるように、各層に形成される回路パターンp1~p6のスケールは、最外層に近づくにつれて徐々に大きくなる。このように回路パターンのスケールを徐々に大きくすることにより、層間における回路パターンのずれを小さくすることができる。また、最外層のパターンの補正伸縮率を、あらかじめ設置された値にすることで、最外層の回路パターンに対する各種部品の取付けを適切に行うことができる。
【0063】
また、表層の回路パターンを基準マークとして表層の伸縮率を算出し、その伸縮率に応じて残りの層の補正伸縮量(補正量)を算出する。このため、表層の回路パターンを基準として、次の層のパターンデータを補正することができる。したがって、層間における回路パターンのずれをさらに小さくすることができる。
【0064】
なお、上述したように、基準マーク検出部711は、基準マークとして、表層の回路パターンではなく、アライメントマークを検出してもよい。この場合、ステップS5およびステップS9において、複数のアライメントマークが検出され、検出された複数のアライメントマークの位置と、設計上のアライメントマークの位置とのずれ量から伸縮率が算出されるとよい。
【0065】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0066】
2 : ステージ(基板保持部)
5 : 露光ユニット(露光部)
7 : 制御部(露光部)
100 : 露光装置
711 : 基準マーク検出部
713 : 補正量算出部
715 : 補正部
D1 : パターンデータ
p1~p6 : 回路パターン(基準マーク)
W : 基板