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特開2025-14157光源、測定装置、および、光源の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014157
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】光源、測定装置、および、光源の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/02345 20210101AFI20250123BHJP
   G01S 7/484 20060101ALI20250123BHJP
   H01S 5/0236 20210101ALI20250123BHJP
   H01S 5/183 20060101ALI20250123BHJP
   G01S 17/931 20200101ALN20250123BHJP
【FI】
H01S5/02345
G01S7/484
H01S5/0236
H01S5/183
G01S17/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116439
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽根 秀倫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 義朗
【テーマコード(参考)】
5F173
5J084
【Fターム(参考)】
5F173AC52
5F173MA10
5F173MC18
5F173MD23
5F173MD59
5F173MD65
5F173MD82
5F173MD84
5F173MF04
5F173MF40
5J084AA05
5J084AB01
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA07
5J084BA36
5J084BA38
5J084BB04
5J084CA03
5J084DA05
5J084EA31
(57)【要約】
【課題】面発光素子のカソードが、接合部を介して、導電性部材に短絡することを抑制する。
【解決手段】光源は、面発光素子が配置された発光チップであって、面発光素子のカソードに電気的に接続される第1の表面と、面発光素子のアノードに電気的に接続される第2の表面とを有する発光チップと、第1の導電パターンと第2の導電パターンとが形成された基板と、発光チップの第1の表面と第1の導電パターンとを接合する導電性の接合部と、発光チップの第2の表面と第2の導電パターンとを電気的に接続するワイヤと、を備える。光源は、さらに、接合部の外周側に配置され、接合部の外周面の少なくとも一部を覆っている非導電性の保護部を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面発光素子が配置された発光チップであって、前記面発光素子のカソードに電気的に接続される第1の表面と、前記面発光素子のアノードに電気的に接続される第2の表面とを有する発光チップと、
第1の導電パターンと第2の導電パターンとが形成された基板と、
前記発光チップの前記第1の表面と前記第1の導電パターンとを接合する導電性の接合部と、
前記発光チップの前記第2の表面と前記第2の導電パターンとを電気的に接続するワイヤと、を備える光源であって、
前記接合部の外周側に配置され、前記接合部の外周面の少なくとも一部を覆っている非導電性の保護部を備える、光源。
【請求項2】
請求項1に記載の光源であって、
前記発光チップの前記第2の表面の周縁部には、前記ワイヤが電気的に接続させる接続部が設けられており、
前記保護部は、前記接合部における前記接続部側の外周面を覆っている、光源。
【請求項3】
請求項1に記載の光源であって、
前記保護部は、前記接合部の外周面の全周を覆っている、光源。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の光源であって、
前記発光チップに直交する方向視で、前記接合部の外周面の少なくとも一部は、前記発光チップの外縁よりも内側に位置し、
前記保護部は、前記発光チップと前記基板との間に挟まれている支持部分を有している、光源。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の光源であって、
前記保護部は、前記接合部の外周面に接触しており、かつ、前記保護部の露出面の面積は、前記保護部と前記接合部との接触面積よりも大きい、光源。
【請求項6】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の光源を備える投光器と、
前記投光器から出力され、測定対象にて反射した光を受光する受光器と、を備える
測定装置。
【請求項7】
面発光素子が配置された発光チップであって、前記面発光素子のカソードに電気的に接続される第1の表面と、前記面発光素子のアノードに電気的に接続される第2の表面とを有する発光チップと、第1の導電パターンと第2の導電パターンとが形成された基板とを備える光源の製造方法であって、
前記発光チップの前記第1の表面と前記基板の前記第1の導電パターンとの間に導電性の第1の接合材を塗布し、前記第1の接合材の周囲の少なくとも一部に非導電性の第2の接合材を塗布する工程と、
前記発光チップの前記第2の表面と前記第2の導電パターンとを、ワイヤによって電気的に接続する工程と、
前記第1の接合材と前記第2の接合材とを硬化させて、前記発光チップの前記第1の表面と前記基板との間に形成される導電性の接合部と、前記接合部の外周面の少なくとも一部を覆う保護部とを形成する工程と、
を含む、光源の製造方法。
【請求項8】
面発光素子が配置された発光チップであって、前記面発光素子のカソードに電気的に接続される第1の表面と、前記面発光素子のアノードに電気的に接続される第2の表面とを有する発光チップと、
第1の導電パターンと第2の導電パターンとが形成された基板と、
前記発光チップの前記第1の表面と前記第1の導電パターンとを接合する導電性の接合部と、
前記発光チップの前記第2の表面と前記第2の導電パターンとを電気的に接続するワイヤと、を備える光源であって、
前記発光チップに直交する第1の方向視で、前記接合部の外周面の少なくとも一部は、前記発光チップの外縁よりも内側に位置し、
前記ワイヤと前記第2の表面との接続部は、前記接合部の外周面よりも内側に位置している、光源。
【請求項9】
請求項8に記載の光源であって、
前記第1の方向視で、前記発光チップの発光領域の周縁は、前記接合部の外周面よりも内側に位置しており、
前記発光領域の周縁と前記接合部の外周面との結ぶ仮想直線が、前記第1の方向に対して傾斜する傾斜角度は、45度以上である、光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、光源、測定装置、および、光源の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AD(Autonomous Driving:自動運転)やADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)の進展に伴い、車両の走行時における周囲環境の把握や自己位置推定に用いる測定装置の一つとして、LiDAR(Light Detection And Ranging)の開発研究が進められている。LiDARは、測定対象にレーザ光を投光(照射)する投光器と、レーザ光が測定対象に反射して戻ってくる反射光を受光する受光器とを備える。LiDARは、投光器がレーザ光を出射したタイミングと受光器が反射光を受光したタイミングとの差に基づき測定対象までの距離を測定することにより測定対象に関する情報を出力する。投光器は、光源と、光源が発した光が透過する投光レンズとを備える(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-105613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、投光器に備えられる光源として、面発光素子が配置された発光チップを備える光源を利用することを検討した。この光源は、発光チップと基板と導電性の接合部とワイヤとを有している。発光チップは、面発光素子のカソードに電気的に接続される第1の表面と、面発光素子のアノードに電気的に接続される第2の表面とを有している。基板には、第1の導電パターンと第2の導電パターンとが形成されている。接合部は、発光チップの第1の表面と第1の導電パターンとを接合する。ワイヤは、発光チップの第2の表面と第2の導電パターンとを電気的に接続している。
【0005】
このような光源では、面発光素子のカソードが、導電性を有する接合部を介して、例えばワイヤや面発光素子のアノードなどの導電性部材に短絡するおそれがある。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示される光源は、面発光素子が配置された発光チップであって、前記面発光素子のカソードに電気的に接続される第1の表面と、前記面発光素子のアノードに電気的に接続される第2の表面とを有する発光チップと、第1の導電パターンと第2の導電パターンとが形成された基板と、前記発光チップの前記第1の表面と前記第1の導電パターンとを接合する導電性の接合部と、前記発光チップの前記第2の表面と前記第2の導電パターンとを電気的に接続するワイヤと、を備える光源であって、前記接合部の外周側に配置され、前記接合部の外周面の少なくとも一部を覆っている非導電性の保護部を備える。
【0009】
本光源によれば、導電性の接合部の外周側に保護部が配置されていない構成に比べて、面発光素子のカソードが、接合部を介して、例えば面発光素子のアノードなどの導電性部材に短絡することを抑制することができる。
【0010】
(2)上記光源において、前記発光チップの前記第2の表面の周縁部には、前記ワイヤが電気的に接続させる接続部が設けられており、前記保護部は、前記接合部における前記接続部側の外周面を覆っている構成としてもよい。本光源によれば、接合部とワイヤとの間に保護部が介在するため、面発光素子のカソードが接合部を介してワイヤに短絡することを抑制することができる。
【0011】
(3)上記光源において、前記保護部は、前記接合部の外周面の全周を覆っている構成としてもよい。本光源によれば、面発光素子のカソードが、接合部を介して、導電性部材に短絡することを、効果的に抑制することができる。
【0012】
(4)上記光源において、前記発光チップに直交する方向視で、前記接合部の外周面の少なくとも一部は、前記発光チップの外縁よりも内側に位置し、前記保護部は、前記発光チップと前記基板との間に挟まれている支持部分を有している構成としてもよい。本光源では、接合部の不存在により発光チップと基板との間に形成された隙間に保護部の支持部分が介在している。このため、本光源によれば、支持部分が介在しない構成に比べて、例えば発光チップへの荷重付与によって発光チップが損傷することを抑制することができる。
【0013】
(5)上記光源において、前記保護部は、前記接合部の外周面に接触しており、かつ、前記保護部の露出面の面積は、前記保護部と前記接合部との接触面積よりも大きい構成としてもよい。本光源によれば、導電路として機能する接合部の外周面に保護部が接触している。また、保護部の露出面の面積は、保護部と接合部との接触面積よりも大きい。このため、接合部で生じた熱を、保護部を介して効果的に放出することができる。
【0014】
(6)上記光源を備える投光器と、前記投光器から出力され、測定対象にて反射した光を受光する受光器と、を備える測定装置としてもよい。本構成によれば、面発光素子のカソードが、接合部を介して、例えば面発光素子のアノードなどの導電性部材に短絡することを抑制することができる。
【0015】
(7)本明細書に開示される光源の製造方法は、面発光素子が配置された発光チップであって、前記面発光素子のカソードに電気的に接続される第1の表面と、前記面発光素子のアノードに電気的に接続される第2の表面とを有する発光チップと、第1の導電パターンと第2の導電パターンとが形成された基板とを備える光源の製造方法であって、前記発光チップの前記第1の表面と前記基板の前記第1の導電パターンとの間に導電性の第1の接合材を塗布し、前記第1の接合材の周囲の少なくとも一部に非導電性の第2の接合材を塗布する工程と、前記発光チップの前記第2の表面と前記第2の導電パターンとを、ワイヤによって電気的に接続する工程と、前記第1の接合材と前記第2の接合材とを硬化させて、前記発光チップの前記第1の表面と前記基板との間に形成される導電性の接合部と、前記接合部の外周面の少なくとも一部を覆う保護部とを形成する工程と、を含む。本製造方法によれば、面発光素子のカソードが、接合部を介して、例えば面発光素子のアノードなどの導電性部材に短絡することを抑制しつつ、光源を製造することができる。
【0016】
(8)本明細書に開示される光源は、面発光素子が配置された発光チップであって、前記面発光素子のカソードに電気的に接続される第1の表面と、前記面発光素子のアノードに電気的に接続される第2の表面とを有する発光チップと、第1の導電パターンと第2の導電パターンとが形成された基板と、前記発光チップの前記第1の表面と前記第1の導電パターンとを接合する導電性の接合部と、前記発光チップの前記第2の表面と前記第2の導電パターンとを電気的に接続するワイヤと、を備える光源であって、前記発光チップに直交する第1の方向視で、前記接合部の外周面の少なくとも一部は、前記発光チップの外縁よりも内側に位置し、前記ワイヤと前記第2の表面との接続部は、前記接合部の外周面よりも内側に位置している。本光源によれば、例えば、ワイヤと発光チップとの接合部が接合部の外周面よりも外側に位置する構成に比べて、例えば発光チップの接続部への荷重付与によって発光チップが損傷することを抑制することができる。
【0017】
(9)上記光源において、前記第1の方向視で、前記発光チップの発光領域の周縁は、前記接合部の外周面よりも内側に位置しており、前記発光領域の周縁と前記接合部の外周面との結ぶ仮想直線が、前記第1の方向に対して傾斜する傾斜角度は、45度以上である構成としてもよい。本光源によれば、発光領域で生じた熱を、接合部によって効果的に外部に放出することができる。
【0018】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、光源、その光源を備える測定装置、光源の製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態における測定装置10の構成を概略的に示すブロック図
図2】光源22の上面構成を示す説明図
図3図2のIII-IIIの位置における光源22の断面構成を示す説明図
図4】光源22の製造工程の一部を示すフローチャート
図5】第2実施形態における光源22aの上面構成を示す説明図
図6図5のVI-VIの位置における光源22の断面構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.第1実施形態:
A-1.測定装置10の構成:
図1は、本第1実施形態における測定装置10の構成を概略的に示すブロック図である。図1に示すように、測定装置10は、出射光L1(例えば光ビーム(レーザ光))を測定対象Wに照射する投光器20と、出射光L1が測定対象Wに反射して戻ってくる反射光L2(戻り光)を受光する受光器30とを備え、フラッシュLiDARとして機能する。測定装置10は、投光器20が出射光L1を発したタイミングと受光器30が反射光L2を受光したタイミングとの差(レーザ光の飛行時間 以下、「TOF」(Time of Flight)という)を測定して測定対象Wに関する情報を取得する。
【0021】
測定装置10は、例えば、ADやADASが実装される車両(図示しない)に搭載される。測定装置10は、例えば、車両の走行中において、人や他の車両等の物体の検出を補助するとともに、車両の運転者や車両の周囲に存在する者の安全確保、車両の運転中に周囲に存在する物体に与える損傷を低減するために有用な各種の情報を他の装置やユーザに提供する。
【0022】
投光器20は、光源22と投光光学系24と投光制御装置26と電流源28とを有している。
【0023】
光源22は、一つまたは複数の発光素子(図示しない)、もしくは一つまたは複数の発光素子アレイ(例えば、発光素子が線状(一次元的)や面状(二次元的)に配置されたもの)を有する発光源を含む。後述するように、本実施形態では、発光素子は、面発光素子110である。光源22の構成については後で説明する。
【0024】
電流源28は、投光制御装置26から入力される制御信号に応じた電流を、光源22を構成する発光素子に供給する。電流源28は、例えば、発光素子に流す電流をオンオフするための周期的な方形波の電流を発光素子に供給する。
【0025】
投光制御装置26は、電流源28の制御信号を生成して電流源28に入力することにより、電流源28から発光素子に供給される電流(駆動電流)を制御する。投光制御装置26は、発光素子が発光したタイミング(発光素子が光を発したタイミング。以下、「投光タイミング」という)を示す信号をTOF測定装置40に入力する。投光制御装置26は、例えば、発光素子に流す電流のオンオフを周期的に繰り返す制御を行うことにより、発光素子を周期的に繰り返し発光させる。
【0026】
投光光学系24は、例えば、光源22が発した光に光学的な作用(屈折、散乱、回折等)を与えることにより出射光L1の配光を調節する。投光光学系24は、例えば、コリメートレンズ等の各種レンズ、反射鏡(ミラー)等の光学部品を用いて構成される。
【0027】
受光器30は、受光部32と受光光学系34とを有している。
【0028】
受光光学系34は、投光器20からの出射光L1が測定対象W等で反射して戻ってくる反射光L2を受光部32に集光する。受光光学系34は、例えば、集光レンズ等の各種レンズ、波長フィルタ等の各種フィルタ、反射鏡(ミラー)等の光学部品を用いて構成される。
【0029】
受光部32は、一つまたは複数の受光素子(図示しない)、もしくは一つまたは複数の受光素子アレイ(例えば、受光素子が線状(一次元的)や面状(二次元的)に配置されたもの)を有する受光源である。受光素子は、例えば、フォトダイオード、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)、バランス型光検出器等である。受光部32は、受光光学系34から入射する反射光L2を光電変換することにより、反射光L2の強度に応じた電流(以下、「受光電流」という)を生成する。受光部32は、受光部32を構成する受光素子が反射光L2を受光したタイミング(以下、「受光タイミング」という)を示す信号や、受光素子が生成した受光電流をTOF測定装置40に入力する。
【0030】
測定装置10は、さらに、TOF測定装置40とコントローラ42と通信I/F(Inter face)50とを備えている。
【0031】
TOF測定装置40は、投光制御装置26から入力される投光タイミングを示す信号と受光部32から入力される受光タイミングを示す信号とに基づきTOFを求める。TOF測定装置40は、例えば、TDC(Time to Digital Converter)回路を搭載した時間測定IC(集積回路:Integrated Circuit)を有している。TOF測定装置40は、求めたTOFと受光部32から入力された受光電流とをコントローラ42に入力する。
【0032】
コントローラ42は、プロセッサ(CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)等)を有している。コントローラ42は、TOF測定装置40から入力される受光電流やTOFに基づき、測定対象Wの検出や測距等の各種測定に用いる情報を生成する。当該情報は、例えば、時間相関単一光子計数法(Time Correlated Signal Photon Counting)で用いるヒストグラム(histogram)、測定対象Wの各点(ポイント)までの距離、ポイントクラウド(点群情報:point cloud)等である。また、コントローラ42は、投光制御装置26や受光部32を制御する。コントローラ42は、例えば、投光制御装置26や受光部32を制御することにより、ヒストグラムの生成にかかる処理が高速化もしくは最適化されるように、前述した投光タイミングや受光タイミングを制御する。コントローラ42によって生成された情報は、通信I/F50を介して当該情報を利用する装置(以下、「各種利用装置60」という)に提供(送信)される。
【0033】
各種利用装置60は、例えば、ポイントクラウドによる環境地図の作成、スキャンマッチングアルゴリズム(NDT(Normal Distributions Transform)、ICP(Iterative Closest Point)等)を用いた自己位置推定(SLAM(Simultaneous Localization and Mapping))等を行う。
【0034】
A-2.光源22の構成:
図2は、光源22の上面構成を示す説明図であり、図3は、図2のIII-IIIの位置における光源22の断面構成を示す説明図である。図2および図3には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向といい、X軸正方向を右方向といい、X軸負方向を左方向といい、Y軸正方向を前方向といい、Y軸負方向を後方向というものとする。なお、後述の図5以降についても同様である。
【0035】
図2および図3に示すように、光源22は、発光チップ100と、基板200と、導電性の接合部300と、ワイヤ250とを有している。
【0036】
発光チップ100は、複数の面発光素子110が二次元的に基板(半導体基板、セラミック基板等)に配置された面発光素子アレイである。面発光素子110は、面発光タイプのレーザ発光素子であり、例えば、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)である。すなわち、発光チップ100は、複数のVCSELが配置されたVCSELアレイである。投光器20の光源として面発光素子アレイを用いることで、省スペースで信頼性の高い高速ビームスキャンが可能な投光器20を実現することが可能である。
【0037】
発光チップ100の上面101は、発光領域103と一対の接続領域105とを含んでいる。上面101は、第2の表面の一例である。発光領域103は、複数の面発光素子110が配置された領域であり、複数の面発光素子110により発光する領域である。発光領域103は、左右方向において上面101の中央部に位置している。一対の接続領域105は、左右方向において上面101の両端部に配置されている。各接続領域105は、複数の面発光素子110のアノードに電気的に接続されている。発光チップ100の下面102は、複数の面発光素子110のカソードに電気的に接続されている。下面102は、第1の表面の一例である。
【0038】
基板200には、第1の導電パターン210と一対の第2の導電パターン220とが形成されている。第1の導電パターン210は、左右方向において基板200上の中央部に配置されている。一対の第2の導電パターン220は、左右方向において基板200上の両端部に配置されている。
【0039】
接合部300は、導電性を有する接合部であり、導電性材料により形成されている。導電性材料は、例えば金属(焼結銀、金スズ(Au-Sn)ハンダ、スズ銀銅(Sn-Ag-Cu)ハンダなど)でもよいし、金属(例えば銀)フィラーを含有した樹脂でもよい。
【0040】
接合部300は、発光チップ100と基板200の第1の導電パターン210とを接合するとともに、発光チップ100の下面102と第1の導電パターン210とを電気的に接続している。具体的には、接合部300の上面が、発光チップ100の下面102に面接触した状態で接合されている。接合部300の下面は、第1の導電パターン210の上面に面接触した状態で接合されている。これにより、複数の面発光素子110のカソードが、接合部300を介して、第1の導電パターン210に電気的に接続されている。
【0041】
ワイヤ250は、発光チップ100の接続領域105と基板200上の第2の導電パターン220とを電気的に接続している。ワイヤ250の一端部が発光チップ100の接続領域105に接合されており、ワイヤ250の他端部が第2の導電パターン220に接合されている。本実施形態では、左側の接続領域105と左側の第2の導電パターン220とが、前後方向に間隔を開けて配置された複数本のワイヤ250によって電気的に接続されている。また、右側の接続領域105と右側の第2の導電パターン220とが、前後方向に間隔を開けて配置された複数本のワイヤ250によって電気的に接続されている。ワイヤ250は、例えば金製である。
【0042】
A-3.面発光素子110のカソードと導電性部材との短絡を抑制するための構成:
本実施形態では、光源22は、面発光素子110のカソードが、接合部300を介して、導電性部材に短絡することを抑制するための構成を有している。導電性部材は、例えばワイヤ250、第2の導電パターン220や発光チップ100の周囲に位置する他の導電性部材等である。
【0043】
具体的には、光源22は、保護部310を有している。保護部310は、非導電性を有する接合部であり、非導電性材料により形成されている。非導電性材料は、例えば樹脂である。また、非導電性材料は、放熱性を高めるために、樹脂よりも熱伝導性が高い材料(例えば酸化アルミニウム(Al)や窒化アルミニウム(AlN)などのセラミックス材料)により形成されたフィラーを樹脂に混合した混合材料でもよい。
【0044】
保護部310は、接合部300の外周面S1を全周にわたって覆っている。すなわち、接合部300の外周面S1は、全周にわたって外部に露出していない。
【0045】
保護部310は、支持部分312と、突出部314とを有している。
【0046】
支持部分312は、保護部310のうち、発光チップ100と第1の導電パターン210(基板200)との間に挟まれている部分である。具体的には、本実施形態では、上下方向視で、接合部300の輪郭線は、全周にわたって、発光チップ100の輪郭線よりも内側に位置している(図2参照)。このため、発光チップ100の下面102の周縁部は、上下方向において第1の導電パターン210から離間している。保護部310の支持部分312は、発光チップ100の下面102の周縁部と第1の導電パターン210との間の隙間に配置されている。支持部分312の上面は、発光チップ100の下面102の周縁部に接触しており、支持部分312の下面は、第1の導電パターン210に接触している。このように、支持部分312は、発光チップ100の下面102の周縁部を支持している。支持部分312は、接合部300の全周にわたって配置している。また、支持部分312は、全周にわたって、接合部300の外周面S1に接触している。上下方向視は、発光チップに直交する方向視の一例である。
【0047】
突出部314は、保護部310のうち、上下方向視で発光チップ100よりも外側に突出している部分である。突出部314の露出面S2の面積は、接合部300(支持部分312)と接合部300と接触面積(外周面S1の面積)よりも大きい。具体的には、突出部314は、発光チップ100の外周面S1を全周にわたって覆っている。このため、発光チップ100の周縁部が突出部314によって保護されている。突出部314の露出面S2は、基板200に近づくにつれて外周側に広がるように傾斜しているテーパ面である。このように、突出部314の露出面S2が広く確保されているため、保護部310による放熱性が高い。
【0048】
A-4.光源22の製造方法:
図4は、光源22の製造工程の一部を示すフローチャートである。図4に示すように、第1の導電パターン210と第2の導電パターン220とが形成された基板200を準備する(S110)。
【0049】
次に、発光チップ100の下面102と基板200の第1の導電パターン210との間に第1の接合材を塗布し、第1の接合材の周囲に第2の接合材を塗布する(S120)。第1の接合材は、導電性を有する接合材料(例えば導電性材料を含有した接着性を有する樹脂ペーストや、ハンダ)により形成されており、硬化すると上記接合部300を形成する。第2の接合材は、非導電性を有する接合材料(例えば導電性材料を含有しない接着性を有する樹脂ペースト)により形成されており、硬化すると上記保護部310を形成する。
【0050】
例えば発光チップ100と第1の導電パターン210とを、ハンダである第1の接合材によってハンダ付けし、その後に、第2の接合材を第1の接合材の周囲に塗布してもよい。また、接着性を有する第1の接合材と第2の接合材とを第1の導電パターン210上に塗布し、その後に、第1の接合材および第2の接合材の上に発光チップ100を配置してもよい。なお、第1の導電パターン210に塗布する順序は、第1の接合材と第2の接合材とのどちらが先でもよい。第1の接合材の周囲に第2の接合材が配置されていることにより、第1の接合材が発光チップ100よりも外側にはみ出したり、発光チップ100の外周面側に這い上がったりすることを抑制することができる。
【0051】
次に、第1の接合材と第2の接合材とを硬化させて、発光チップ100の下面102と基板200(第1の導電パターン210)との間に形成される導電性の接合部300と、接合部300の外周面S1を覆う保護部310とを形成する(S130)。
【0052】
次に、発光チップ100の上面101(接続領域105)と第2の導電パターン220とを、ワイヤ250によって電気的に接続する(S140)。ここで、仮に、導電性を有する第1の接合材(硬化している場合は接合部300)の周囲に、非導電性を有する第2の接合材(硬化している場合は保護部310)が存在しない場合、ワイヤ250の接続時に、ワイヤ250が第1の接合材に接触して短絡するおそれがある。しかし、本実施形態では、第1の接合材の周囲に第2の接合材が配置されており、第1の接合材の外周面S1における接続領域105側が外部に露出していない。このため、ワイヤ250の接続時におけるワイヤ250と第1の接合材との短絡を抑制することができる。なお、第1の接合材と第2の接合材との少なくとも一方の硬化時期は、上記S140の工程前でもよいし、S140の工程後でもよいし、S140の工程中でもよい。その後、所定の後処理を行うことにより、光源22の製造が完了する。
【0053】
A-5.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の光源22では、非導電性の保護部310が、導電性の接合部300の外周面S1を覆っている(図2および図3参照)。このため、接合部300の外周側に保護部310が配置されていない構成に比べて、面発光素子110のカソードが、接合部300を介して、例えば面発光素子110のアノードなどの導電性部材に短絡することを抑制することができる。しかも、本実施形態では、保護部310は、接合部300の外周面S1を全周にわたって覆っている。このため、面発光素子110のカソードが、接合部300を介して、導電性部材に短絡することを効果的に抑制することができる。
【0054】
仮に、図3に示す光源22において、支持部分312が存在しない構成とすると、発光チップ100の下面102の周縁部が基板200から宙に浮いた状態となる。その結果、発光チップ100の周縁部分に荷重が付与されると発光チップ100が損傷しやすくなる。これに対して、本実施形態では、保護部310は、発光チップ100と第1の導電パターン210(基板200)との間に挟まれている支持部分312を有している。これにより、本実施形態によれば、支持部分312が存在しない構成に比べて、例えば発光チップ100への荷重付与によって発光チップ100が損傷することを抑制することができる。
【0055】
本実施形態では、導電路として機能する接合部300の外周面S1に保護部310が接触している。また、突出部314の露出面S2の面積は、接合部300と接合部300と接触面積(外周面S1の面積)よりも大きい。これにより、本実施形態によれば、接合部300で生じた熱を、保護部310を介して効果的に放出することができる。
【0056】
B.第2実施形態:
図5は、本第2実施形態における光源22aの上面構成を示す説明図であり、図6は、図5のVI-VIの位置における光源22の断面構成を示す説明図である。以下では、第2実施形態の測定装置10の構成のうち、上述した第1実施形態の測定装置10と同一の構成については、その説明を適宜省略する。
【0057】
B-1.面発光素子110のカソードと導電性部材との短絡を抑制するための構成:
本第2実施形態では、光源22aが、上記第1実施形態の光源22とは構成が異なる。具体的には、光源22aは、光源22に対して保護部310を備えない点で異なる。しかし、本第2実施形態も、光源22aは、面発光素子110のカソードが、接合部300を介して、導電性部材に短絡することを抑制するための構成を有している。
【0058】
光源22aは、さらに、次の第1の条件を満たしている。
<第1の条件>
上下方向視で、接合部300の外周面S1は、発光チップ100の外縁よりも内側に位置し(図5参照)、ワイヤ250と発光チップ100の上面101(接続領域105)との接続部252は、接合部300の外周面S1よりも内側に位置している。
具体的には、図6に示すように、発光チップ100の中心軸Cから接合部300の外周面S1までの第1の距離D1は、中心軸Cから発光チップ100の外周面までの第2の距離D2よりも短い。また、中心軸Cから接続部252までの第3の距離D3は、第1の距離D1よりも短い。
【0059】
光源22aは、さらに、次の第2の条件を満たしている。
<第2の条件>
上下方向視で、発光チップ100の発光領域103の周縁は、接合部300の外周面S1よりも内側に位置しており、発光領域103の周縁と接合部300の外周面S1との結ぶ仮想直線Lが、上下方向に対して傾斜する傾斜角度θは、45度以上である。
具体的には、図6に示すように、中心軸Cから発光領域103の周縁までの第4の距離D4は、第1の距離D1よりも短い。中心軸Cに対する上記仮想直線Lの傾斜角度θは、45度以上である。
【0060】
B-2.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の光源22aでは、上下方向視で、接合部300の外周面S1は、発光チップ100の外縁よりも内側に位置している(図5参照 第1の条件)。このため、例えば接合部300が発光チップ100の外側に張り出した構成に比べて、面発光素子110のカソードが、接合部300を介して、導電性部材に短絡することを抑制することができる。しかも、本実施形態では、上下方向視で第1の導電パターン210の外縁も、発光チップ100の外縁よりも内側に位置している(図6参照)。
【0061】
本実施形態では、ワイヤ250と発光チップ100の上面101との接続部252は、接合部300の外周面S1よりも内側に位置している(第1の条件)。本実施形態によれば、例えば、接続部252が接合部300の外周面S1よりも外側に位置する構成に比べて、例えば発光チップ100の接続部252への荷重付与によって発光チップ100が損傷することを抑制することができる。
【0062】
本実施形態では、発光チップ100の発光領域103の周縁は、接合部300の外周面S1よりも内側に位置しており、発光領域103の周縁と接合部300の外周面S1との結ぶ仮想直線Lが、上下方向に対して傾斜する傾斜角度θは、45度以上である(第2の条件)。発光領域103で生じた熱が発光チップ100の下面102に向かって拡散する放射角度は、中心軸Cに対して45度以下である。このため、本実施形態によれば、例えば上記傾斜角度θが45度未満である構成に比べて、発光領域103で生じた熱を、接合部300によって効果的に外部に放出することができる。
【0063】
C.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0064】
上記実施形態における測定装置10、光源22,22aの構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、光源として、複数の面発光素子110が配置された光源22,22aを例示したが、光源は、1つの面発光素子が配置された構成でもよい。
【0065】
上記実施形態では、発光チップ100の上面101には、左右に配置された一対の接続領域105が配置されていたが、左右のいずれか一方だけに接続領域105が配置された構成でもよい。また、上記実施形態では、基板200には、一対の第2の導電パターン220が形成されていたが、一対の第2の導電パターン220のいずれか一方だけが配置された構成でもよい。上記実施形態では、接続領域105と第2の導電パターン220とが複数本のワイヤ250によって電気的に接続されていたが、接続領域105と第2の導電パターン220とが1本のワイヤ250によって電気的に接続されていてもよい。
【0066】
上記第1の実施形態では、保護部310は、発光チップ100と基板200(第1の導電パターン210)とを接合する接合機能を有していたが、その接合機能を有しなくてもよい。例えば、保護部310は、基板200上に固定配置されており、発光チップ100に接合していなくてもよい。この構成において、保護部310は、発光チップ100に接触していることが好ましいが、発光チップ100に接触しておらず、接合部300の外周面S1の下側部分だけを覆う構成でもよい。保護部310が接合部300の外周面S1の一部でも覆っていれば、面発光素子110のカソードが、接合部300を介して、ワイヤ250等の導電性部材に短絡することを抑制することができる。
【0067】
上記第1の実施形態において、保護部310は、接合部300の外周面S1を全周にわたって覆っていたが、保護部310は、接合部300の外周面S1の少なくとも一部を覆っていればよい。例えば、保護部310は、接合部300の外周面S1における接続領域105側のみ覆っている構成でもよい。これにより、面発光素子110のカソードが、接合部300を介して、ワイヤ250に短絡することを効果的に抑制することができる。
【0068】
上記第1の実施形態において、上下方向視で、接合部300の輪郭線の少なくとも一部が、発光チップ100の輪郭線よりも外側に位置していてもよい。また、上記第1の実施形態において、保護部310は、支持部分312と突出部314とのいずれか一方を有しない構成でもよい。また、支持部分312と突出部314との少なくとも一方は、接合部300の周囲の一部分だけに配置されてもよい。
【0069】
上記第1の実施形態において、保護部310は、接合部300に接触していない構成でもよい。但し、保護部310が接合部300に接触している構成であれば、通電により接合部300で生じた熱を、保護部310を介して外部に放出する放熱性を向上させることができる。上記第1の実施形態において、突出部314の露出面S2の面積は、接合部300と接合部300と接触面積以下でもよい。また、突出部314の露出面S2は、テーパ面に限らず、上下方向に沿った平面でもよいし、曲面でもよい。
【0070】
上記第2の実施形態において、上記第1の条件と第2の条件とのいずれか一方を満たさない構成でもよい。また、上下方向視で第1の導電パターン210の外縁は、発光チップ100の外縁よりも外側に位置していてもよい。
【0071】
上記実施形態において、各部材の形成材料は、あくまで一例であり、他の材料により形成されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10:測定装置 20:投光器 22,22a:光源 24:投光光学系 26:投光制御装置 28:電流源 30:受光器 32:受光部 34:受光光学系 40:TOF測定装置 42:コントローラ 50:通信I/F 60:利用装置 100:発光チップ 101:上面 102:下面 103:発光領域 105:接続領域 110:面発光素子 200:基板 210:第1の導電パターン 220:第2の導電パターン 250:ワイヤ 252:接続部 300:接合部 310:保護部 312:支持部分 314:突出部 C:中心軸 L1:出射光 L2:反射光 L:仮想直線 S1:外周面 S2:露出面 W:測定対象
図1
図2
図3
図4
図5
図6