(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025141577
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】情報処理装置、インクジェット記録装置、情報処理方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20250919BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20250919BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J29/38 202
B41J29/38 206
B41J29/00 H
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024041585
(22)【出願日】2024-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】山縣 辰広
(72)【発明者】
【氏名】土屋 興宜
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕充
(72)【発明者】
【氏名】山田 顕季
(72)【発明者】
【氏名】香川 英嗣
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
【Fターム(参考)】
2C056EB12
2C056EB44
2C056EC07
2C056EC26
2C056EC31
2C056EC36
2C056EC72
2C056EC79
2C056FA13
2C056HA30
2C056HA32
2C061AP07
2C061AQ05
2C061AR01
2C061AR03
2C061AS02
2C061CK04
2C061HK05
2C061HK08
2C061HK19
2C061HN04
2C061HN08
2C061HN15
(57)【要約】
【課題】排紙部に後処理工程機構を装着すると、紙ジャムが発生しやすい。
【解決手段】情報処理装置は、記録媒体に画像を記録するとともに、前記画像が記録された記録媒体に後処理工程を実行する後処理工程機構を、前記記録媒体が排紙される排紙部に装着可能なインクジェット記録装置を制御する情報処理装置であって、前記画像を記録するための設定である記録設定を記憶する記憶手段と、前記記録設定を設定する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記後処理工程機構が装着されている場合、第1記録設定よりも前記記録媒体のカールが低減された状態で排紙する第2記録設定を記録設定として設定可能である。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を記録するとともに、前記画像が記録された記録媒体に後処理工程を実行する後処理工程機構を、前記記録媒体が排紙される排紙部に装着可能なインクジェット記録装置を制御する情報処理装置であって、
前記画像を記録するための設定である記録設定を記憶する記憶手段と、
前記記録設定を設定する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記後処理工程機構が装着されている場合、第1記録設定よりも前記記録媒体のカールが低減された状態で排紙する第2記録設定を記録設定として設定可能であることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記後処理工程機構が装着されている場合、前記第2記録設定への変更をユーザが選択するユーザインターフェースを表示して、前記ユーザから前記第2記録設定への変更を受け付ける
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記後処理工程機構が実行する処理として、シフトソート、ステイプル、および、パンチのいずれかを受け付ける
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第2記録設定において、前記第1記録設定よりも記録デューティーを下げるように設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記記録デューティーを下げるよう設定する場合、前記画像の記録濃度が下がる旨を表示する
ことを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第2記録設定は、前記第1記録設定よりも記録時間が長い設定である
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記記録時間を長く設定する場合、前記画像の記録中の待機時間を調整する
ことを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記記録時間を長く設定する場合、前記画像の記録速度を調整する
ことを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記制御手段は、記録媒体のジャムの発生の有無を示す発生情報を保存し、前記発生情報に基づいてジャムの発生を判定し、当該判定に基づいて、前記第2記録設定を受け付けるユーザインターフェースを表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記制御手段は、記録媒体のジャムの発生の有無を示す発生情報を保存し、記録動作中にジャムが発生した場合、前記発生情報に基づいて前記第2記録設定を設定して、再度、記録動作を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項11】
請求項1に記載の情報処理装置と、
前記画像が記録された前記記録媒体が排紙されるとともに、前記記録媒体に後処理工程を行う後処理工程機構が装着される排紙手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項12】
記録媒体に画像を記録するとともに、前記画像が記録された記録媒体に後処理工程を実行する後処理工程機構を、前記記録媒体が排紙される排紙部に装着可能なインクジェット記録装置を制御する情報処理装置であって、
前記画像を記録するための設定である記録設定を記憶する記憶工程と、
前記記録設定を設定する制御工程と、を備え、
前記制御工程では、前記後処理工程機構が装着されている場合、第1記録設定よりも前記記録媒体のカールが低減された状態で排紙する第2記録設定を記録設定として設定可能であることを特徴とする情報処理方法。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1ないし10の何れか1項に記載の情報処理装置の制御手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、インクジェット記録装置、情報処理方法、および、プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタなどの記録装置を使用する際に、印刷後のホチキス止めなどの後処理工程に手間がかかる場合がある。この問題を解決するために、後処理工程機能が搭載された機構を独立して配置し、自動で後処理を実施することで生産性を向上させることができる。一方で、後処理工程の機構が独立していると配置スペースが大きくなることが課題となる。そこで、記録媒体が排紙される排紙部に小型の後処理工程機構を挿入することで、スペースの拡大なく後処理工程を実現する記録装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、排紙部に後処理工程機構を装着すると、排紙口の高さが狭くなってしまい結果として紙ジャム(紙詰まりともいう)が発生しやすくなってしまうという課題がある。
【0005】
本発明は、以上のような状況を鑑み、後処理工程機構を排紙部に装着しても紙ジャムを低減するための情報処理装置、インクジェット記録装置、情報処理方法、および、プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため、例えば本発明の情報処理装置は以下の構成を備える。すなわち、
記録媒体に画像を記録するとともに、前記画像が記録された記録媒体に後処理工程を実行する後処理工程機構を、前記記録媒体が排紙される排紙部に装着可能なインクジェット記録装置を制御する情報処理装置であって、
前記画像を記録するための設定である記録設定を記憶する記憶手段と、
前記記録設定を設定する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記後処理工程機構が装着されている場合、第1記録設定よりも前記記録媒体のカールが低減された状態で排紙する第2記録設定を記録設定として設定可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、後処理工程機構が排紙部に装着された場合でも、紙ジャムを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】記録システムの制御系の全体構成を示すブロック図。
【
図2】画像データ変換処理の流れを示したブロック図。
【
図4】印刷設定および後処理工程を設定するためのUIを示した図。
【
図5】片面印刷時のカール状態を模式的に表した図。
【
図6】排紙トレイにおける記録媒体の変形を説明する図。
【
図7】後処理工程機構が装着された排紙部近傍の図。
【
図10】第一の実施形態の印刷処理を示すフローチャートの図。
【
図13】紙ジャム対策用の設定のためのUIを示した図。
【
図14】第二の実施形態の印刷動作のフローチャートを示す図。
【
図15】第二の実施形態の紙ジャム対策用の設定のためのUIを示した図。
【
図17】第三の実施形態の印刷処理を示すフローチャートの図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(第一の実施形態)
図1は、本実施形態の記録システムの制御系の全体構成を説明するブロック図である。
図1に示すように、記録システムは、画像処理装置101と、記録装置108と、後処理工程機構116とを備える。画像処理装置101および記録装置108は、ネットワーク118によって、互いに情報を送受信可能に接続されている。
【0011】
画像処理装置101は、ユーザなどの指示に基づいて、記録装置108で記録するための画像のデータを生成して、記録装置108へ送信する。画像処理装置101は、ホストPC(Personal Computer)およびタブレットPCなどのコンピュータである。画像処理装置101は、CPU102、RAM103、HDD104、ディスプレイI/F105、入力I/F106、データ転送I/F107を有する。
【0012】
CPU102は、Central Processing Unitの略であり、中央演算処理装置とも呼ばれるプロセッサーである。画像処理装置101は、CPU102に加えて、または、CPU102に代えて、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及び、QPU(Quantum Processing Unit)などの他のプロセッサーを有してもよい。CPU102は、HDD104に保持されるプログラム読み出して、ワークエリアとしてのRAM103にプログラムを展開して、各種処理を実行する。また、CPU102は、入力I/F106、および、タッチパネル(不図示)を介してユーザより受信したコマンドに従って、各種の処理を実行する。例えば、CPU102は、コマンドに従って、HDD104に保持されるプログラムを実行して、記録装置108が記録可能な画像データを生成し、これを記録装置108に転送する。CPU102が実行する各種処理の一部または全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及び、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの1または複数の回路で実現されてもよい。
【0013】
RAM103は、Random Access Memoryの略であり、データを高速で読み出しおよび書き込み可能なメモリである。RAM103は、CPU102が読み出したプログラムを一時的に保持するとともに、プログラムの実行に必要なデータ、および、プログラムの処理結果としてのデータなどを一時的に保持する。
【0014】
HDD104は、Hard Disk Driveの略であり、電源の供給がなくてもデータを保持可能な不揮発性の記憶装置である。HDD104は、プログラム、プログラムの実行に必要なデータ、および、プログラムの処理結果としてのデータなどを格納する。
【0015】
ディスプレイI/F105は、液晶表示装置、および、有機EL(Electro Luminescence)表示装置などの画像を表示する表示装置と接続されるインターフェースである。ディスプレイI/F105は、CPU102が出力した画像を表示装置へ出力する。
【0016】
入力I/F106は、ユーザがコマンドおよびデータなどを入力するためのキーボード、マウスなどの入力装置と接続されるインターフェースである。
【0017】
データ転送I/F107は、ネットワーク118と接続されるインターフェースである。データ転送I/F107は、CPU102などが出力したデータを、ネットワーク118を介して、外部の装置である記録装置108などへ出力する。また、データ転送I/F107は、ネットワーク118を介して、外部の装置が送信したデータを受信してCPU102などへ出力する。
【0018】
画像処理装置101は、上述の構成により、データ転送I/F107を介して記録装置108から受信した画像データに対し、HDD104に記憶されているプログラムに従って所定の処理を行う。画像処理装置101は、プログラムの処理結果および様々な情報をディスプレイI/F105を介して不図示のディスプレイに表示する。
【0019】
記録装置108は、画像処理装置101が送信した画像データに基づいて、紙などの記録媒体に画像を記録(印刷ともいう)する。記録装置108は、例えば、インクジェット記録装置であり、インクジェットプリンタとも呼ばれる。記録装置108は、画像が記録された記録媒体に後処理工程を実行する後処理工程機構を装着可能に構成されている。記録装置108は、CPU111、RAM112、ROM113、画像処理アクセラレータ109、データ転送I/F110、記録ヘッドコントローラ114、記録ヘッド115、および、データバッファ119を有する。CPU111、RAM112、ROM113、画像処理アクセラレータ109、データ転送I/F110、および、記録ヘッドコントローラ114、記録ヘッド115、および、データバッファ119の少なくとも一部は、コンピュータであり、情報処理装置の一例である。
【0020】
CPU111は、制御手段の一例であり、中央演算処理装置とも呼ばれるプロセッサーである。記録装置108は、CPU111に加えて、または、CPU111に代えて、MPU、GPU、及び、QPUなどの他のプロセッサーを有してもよい。CPU111は、ROM113に保持されるプログラム読み出して、ワークエリアとしてのRAM112にプログラムを展開して、各種処理を実行する。例えば、CPU111は、ユーザからのコマンドに従って、ROM113に保持されるプログラムを実行して、画像処理装置101が送信した画像データに基づいて記録媒体に画像を記録するように記録装置108を制御する。CPU111は、後処理工程機構を直接的または間接的に制御する。CPU111が実行する各種処理の一部または全部は、ASIC、及び、FPGAなどの1または複数の回路で実現されてもよい。
【0021】
RAM112は、記憶手段の一例であり、Random Access Memoryの略であり、データを高速で読み出しおよび書き込み可能なメモリである。RAM112は、CPU111が読み出したプログラムを一時的に保持するとともに、プログラムの実行に必要なデータ、および、プログラムの処理結果としてのデータなどを一時的に保持する。
【0022】
ROM113は、Read Only Memoryの略であり、電源の供給がなくてもデータを保持可能な不揮発性メモリである。ROM113は、プログラム、プログラムの実行に必要なデータなどを格納する。
【0023】
画像処理アクセラレータ109は、画像処理を高速に実行する。画像処理アクセラレータ109は、CPU111よりも高速に画像処理を実行可能なハードウェアである。画像処理アクセラレータ109は、例えば、GPUであってよい。画像処理アクセラレータ109は、CPU111が画像処理に必要なパラメータとデータをRAM112の所定のアドレスに書き込むことにより起動され、上記パラメータとデータを読み込んだ後、上記データに対し所定の画像処理を実行する。但し、画像処理アクセラレータ109は必須な要素ではなく、同等の処理はCPU111で実行することができる。
【0024】
データ転送I/F110は、ネットワーク118と接続されるインターフェースである。データ転送I/F110は、画像処理装置101が出力した画像データなどのデータを、ネットワーク118を介して、受信する。
【0025】
記録ヘッドコントローラ114は、CPU111などからの指示に基づいて、記録ヘッド115をコントロールして、画像を記録する。
【0026】
記録ヘッド115は、記録ヘッドコントローラ114のコントロールに基づいて、記録媒体へインクを吐出して、画像を記録する。記録ヘッド115は、4色の顔料からなるインクを吐出する。4色は、例えば、KCMY(ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー)である。記録ヘッド115は、複数のノズルを有する複数のノズル列115k、115c、115m、115yを有する。各ノズルの吐出量は、例えば、4[pL]である。
【0027】
データバッファ119は、データを一時的に記憶する。データバッファ119は、例えば、画像処理装置101が送信した画像データを一時的に記憶する。
【0028】
後処理工程機構116は、画像が記録された記録媒体に後工程処理を実行する。後処理工程機構116は、データ転送I/F117を有する。後処理工程機構116は、記録装置108に着脱可能に設置されている。後処理工程機構116は、例えば、記録装置108が画像を記録した記録媒体を排紙する部材に接続されている。後処理工程機構116が記録装置108に設置されている状態では、データ転送I/F117が記録装置108とコマンドなどのデータを送受信可能に接続される。後処理工程機構116は、記録装置108に装着されている状態では、データ転送I/F117を介して受信した記録装置108のCPU111などの指示に基づいて、後工程処理を実行する。後工程処理は、画像が記録された複数の記録媒体をまとめるステイプル処理、記録媒体にパンチの穴をあける穴あけ処理、および、シフトソートするソート処理などのいずれかを含む。
【0029】
<画像処理の流れ>
図2は、本実施形態の記録システムにおける画像データ変換処理の流れを示したブロック図である。以下、記録装置108について画像データ変換処理について述べる。
【0030】
本実施形態の記録装置108は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクを用いて記録を行う。記録ヘッド115は、これら4色のインクを吐出するノズル列を有する。
図2に示すように、記録システムにおける各画像処理は、画像処理装置101と、記録装置108とによって実行されるものとする。
【0031】
画像処理装置101のオペレーティングシステムで動作するプログラムは、アプリケーションおよびプリンタドライバなどを含む。アプリケーションおよびプリンタドライバは、CPU102によって実行される。アプリケーションは、たとえば、文書作成用、および、イラスト作成用のアプリケーションなどを含む。
【0032】
アプリケーション処理J01では、アプリケーションを実行するCPU102が、記録装置108で記録(プリント)すべき画像に対応した画像データを生成する。CPU102は、アプリケーション処理J01で生成された画像データを、プリンタドライバに渡す。
【0033】
プリンタ送付用画像データ生成処理J02では、CPU102が、プリンタドライバを実行して、画像データを生成して、記録装置108に送信する。具体的には、CPU102は、画像データとして、PDL(page-description language)フォーマットの画像データを生成する。以下、PDLフォーマットの画像データのことを、PDLデータという。PDLは、ページ記述言語である。PDLの例として、Adobe(登録商標)社の「PDF」などが知られている。PDLは、ビットマップだけでなく、線、文字などのベクターデータを記載できる画像フォーマットとして広く使用されている。CPU102は、プリンタドライバを実行することにより、アプリケーションから渡された画像データから、PDLフォーマットのプリンタ送付用画像データを生成する。CPU102は、プリンタドライバを実行することにより、画像処理装置101のユーザインターフェース(UI)を通じて設定されたプリントに関する設定情報などのヘッダ部を付加して、プリンタ送付用画像データを生成する。CPU102は、プリンタ送付用画像データを、画像処理装置101のデータ転送I/F107を制御して、ネットワーク118を介して、記録装置108のデータ転送I/F110へ送信する。記録装置108は、受信した画像データをデータバッファ119に格納する。
【0034】
画像データ解析処理J03では、記録装置108のCPU111(画像処理部)が、画像処理装置101が送信した画像データを解析する。CPU111は、PDLデータを、データバッファ119から順次読み出す。CPU111は、PDLデータに含まれる描画コマンドを解釈し、PDLデータをビットマップと同様の形態のラスター画像データに展開する。CPU111は、展開したラスター画像データを、データバッファ119に格納する。CPU111は、解析して展開したラスター画像データに対して、引き続き画像処理を実行する。
【0035】
CPU111は、機種間の色合わせを行う色変換処理である前段処理J04、色分解処理である後段処理J05、ガンマ補正処理J06、2値量子化であるハーフトーニング処理J07、および記録データ生成処理J08を実行する。ここで、各処理を簡単に説明する。
【0036】
前段処理J04では、CPU111は、機種間で異なる色を合わせるための色合わせ処理を実行する。
【0037】
後段処理J05では、CPU111が、前段処理J04で得られた8bitデータR、G、Bを、このRGBデータが表す色を再現するインクの組み合わせに対応した色分解データ(ここでは、8bitデータC、M、Y、K)に変換する色分解処理を実行する。具体的には、CPU111は、RGBデータとインクに対応したCMYKデータとが1対1に対応付けられた変換テーブル(例えば、3次元LUT(ルックアップテーブル))を用いる。CPU111は、変換テーブルを参照して、RGBデータをCMYKデータに変換する。例えば、3次元LUTにおいては、それぞれが8bit(0~255)で表現されるR、G、Bの値のそれぞれが、8bit(0~255)で表現されるCMYKの値に予め対応付けられている。CPU111は、変換テーブルに基づいて、(R,G,B)=(0~255,0~255,0~255)の画像データを、(C,M,Y,K)=(0~255,0~255,0~255,0~255)の画像データへと変換する。例えば、CPU111は、(R,G,B)=(0,0,0)を、(C,M,Y,K)=(0,0,0,255)に変換する。CPU111は、(R,G,B)=(255,255,255)を、(C,M,Y,K)=(0,0,0,0)に変換する。CPU111は、(R,G,B)=(0,128,0)を、(C,M,Y,K)=(128,0,128,0)に変換する。
【0038】
本実施形態では、複数の変換テーブルが予め設定されてROM113に格納されている。例えば、変換テーブルは少なくとも2種類設けられている。CPU111は、所定の条件に応じて、使用する変換テーブルを切り換える。詳細については後述する。
【0039】
ガンマ補正処理J06では、CPU111が、色分解処理である後段処理J05により得られた色分解データの各インク色データに階調値変換を実行する。具体的には、CPU111は、記録装置108の各色インクの階調特性に応じた1次元LUTを用いることにより、記録装置108の階調特性に、色分解データを線形的に対応付けられるように変換する。
【0040】
ハーフトーニング処理J07では、CPU111が、8ビットの色分解データC、M、Y、Kのそれぞれを、1ビットのデータに変換する量子化処理を実行する。本実施形態では、CPU111は、2値のディザ法を用いて、256階調の8ビットデータを2階調の1ビットデータに変換する。
【0041】
記録データ作成処理J08では、CPU111が、1ビットのドットデータを内容とする記録イメージデータに記録制御情報を加えた記録データを作成する。CPU111は、生成した記録データをデータバッファ119に格納する。
【0042】
駆動処理J09では、CPU111が、データバッファ119に格納した2値の記録データを順次読み出して、記録ヘッドコントローラ114に渡す。記録ヘッドコントローラ114は、各色の1bitデータを記録ヘッド115の駆動パルスに変換して出力する。これにより、記録ヘッド115は、所定のタイミングでインクを吐出する。
【0043】
<記録装置の詳細>
図3は、本実施形態の記録装置108の全体構成を詳細に表した図である。以下、記録装置108についてより具体的に説明する。以下の説明において、xyz方向は、
図3の左下の矢印に示すxyz方向を示す。
【0044】
記録装置108は、複合機であり、画像の記録動作と画像の読取動作とに関する様々な処理を実行する。記録装置108は、プリント部2とスキャナ部3とを備える。記録装置108は、プリント部2とスキャナ部3とを個別にあるいは連動させることで種々の動作を実行する。
図3は、記録装置108が記録動作も読取動作も行っていない待機状態にあるときを示す。なお、本実施形態の記録装置108は、プリント部2とスキャナ部3とを併せ持った複合機であるが、スキャナ部3を備えない形態であってもよい。
【0045】
スキャナ部3は、ADF(オートドキュメントフィーダ)とFBS(フラットベッドスキャナ)とを備えている。ADFは、原稿を自動給紙する。FBSは、自動給紙される原稿と、ユーザによってFBSの原稿台に置かれた原稿とを読み取る(スキャン)。
【0046】
プリント部2は、筐体4、第1カセット5A、第2カセット5B、第1給紙ユニット6A、第2給紙ユニット6B、1または複数の搬送ローラ7、1または複数のピンチローラ7a、1または複数の拍車7b、フラッパ11、排紙ローラ12、排紙トレイ13、ガイド18、インナーガイド19を有する。
【0047】
筐体4は、プリント部2の各部材を収容して保持する。
【0048】
第1カセット5Aおよび第2カセット5Bは、筐体4の鉛直方向下方の底部に着脱が脳に設置されている。第1カセット5Aおよび第2カセット5Bは、カットシートなどの記録媒体Sを収容する。第1カセット5Aは、A4サイズまでの比較的小さな記録媒体を平積みで収容する。第2カセット5Bは、A3サイズまでの比較的大きな記録媒体を平積みで収容する。
【0049】
第1給紙ユニット6Aは、第1カセット5Aの近傍に設けられている。第2給紙ユニット6Bは、第2カセット5Bの近傍に設けられている。第1給紙ユニット6Aおよび第2給紙ユニット6Bは、収容されている記録媒体を1枚ずつ分離して給送する。記録動作が行われる際には、給紙ユニット6A、6Bのいずれか一方が、カセット5A、5Bのいずれか一方のカセットから選択的に記録媒体Sを給紙する。
【0050】
搬送ローラ7、排紙ローラ12、ピンチローラ7a、拍車7b、フラッパ11、排紙ローラ12、排紙トレイ13、ガイド18、および、インナーガイド19は、記録媒体Sを所定の方向に搬送するための搬送機構である。以下の説明における上流および下流は、記録媒体Sの搬送経路における上流および下流を示す。
【0051】
複数の搬送ローラ7は、記録ヘッド8およびプラテン9の上流側および下流側であって、搬送経路に沿って配されている。搬送ローラ7は、搬送モータによって回転駆動される駆動ローラである。
【0052】
ピンチローラ7aは、給紙ユニット6A、6Bのそれぞれの下流に配されている。ピンチローラ7aは、給紙ユニット6A、6Bから給紙される記録媒体Sを搬送ローラ7と共にニップする。ピンチローラ7aは、搬送ローラ7の回転によって回転する従動ローラである。
【0053】
複数の拍車7bは、記録ヘッド8およびプラテン9の下流側であって、搬送経路に沿って配される。拍車7bは、搬送ローラ7または排紙ローラ12と共に記録媒体Sを挟持して搬送する。
【0054】
フラッパ11は、記録媒体Sの両面に画像を記録する両面記録動作の際に、記録媒体Sが搬送される方向を切り替えるための部材である。
【0055】
ガイド18は、記録媒体Sの搬送経路に沿って設けられている。ガイド18は、搬送ローラ7などによって搬送される記録媒体Sを搬送経路に沿って案内する。
【0056】
インナーガイド19は、ピンチローラ7aの近傍に配され、y方向に延在する部材で湾曲した側面を有する。インナーガイド19は、当該側面に沿って記録媒体Sを案内する。
【0057】
排紙ローラ12は、搬送ローラ7の下流側であって、搬送経路の下流に配されている。排紙ローラ12は、排紙モータによって駆動される駆動ローラである。排紙ローラ12は、搬送経路に沿って搬送された記録媒体Sを排紙トレイ13へ排紙する。
【0058】
排紙トレイ13には、記録動作が完了し排紙ローラ12によって排紙された記録媒体Sが積載される。排紙トレイ13は、排紙部の一例である。
【0059】
プリント部2は、記録ヘッド8、プラテン9、インクタンクユニット14、インク供給ユニット15、および、メンテナンスユニット16を更に有する。
【0060】
本実施形態の記録ヘッド8は、フルラインタイプのカラーインクジェット記録ヘッドである。記録ヘッド8は、記録データに従ってインクを吐出する複数の吐出口を有する。複数の吐出口は、y方向に沿って記録媒体Sの幅に相当する分だけ配列されている。記録ヘッド8が待機位置にあるとき、記録ヘッド8の吐出口面8aは、
図3に示すように鉛直下方(-z方向)を向き、キャップユニット10によってキャップされている。記録動作を行う際は、CPU111によって、吐出口面8aがプラテン9と対向するように記録ヘッド8の向きが変更される。
【0061】
プラテン9は、y方向に延在する平板によって構成され、搬送経路の途中に配されている。プラテン9は、記録動作中において、記録ヘッド8の吐出口面8aと対向し、記録ヘッド8によって記録動作が行われる記録媒体Sを背面から支持する。
【0062】
インクタンクユニット14は、記録ヘッド8へ供給される4色のインクをそれぞれ貯留する。
【0063】
インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14と記録ヘッド8を接続する流路の途中に設けられ、記録ヘッド8内のインクの圧力及び流量を適切な範囲に調整する。本実施形態は、循環型のインク供給系を採用している。したがって、インク供給ユニット15は記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力と、記録ヘッド8から回収されるインクの流量とを適切な範囲に調整する。
【0064】
メンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17とを備える。メンテナンスユニット16は、所定のタイミングで、キャップユニット10およびワイピングユニット17を動作させて、記録ヘッド8の吐出性能を維持及び回復するためのメンテナンスを実行する。キャップユニット10は、所定のタイミングで動作して、吐出口面8aをキャップする。ワイピングユニット17は、記録ヘッド8の吐出口面8aをクリーニングする。
【0065】
<後処理工程機構について>
後処理工程機構は、記録装置108の排紙トレイまたは排紙トレイの近傍に装着することが可能である。それによって、ユーザは、フットプリントを広げることなく、後処理工程機能を使うことが可能になる。
図7は、後処理工程機構704が装着された
図3の排紙部近傍の図である。
【0066】
後処理工程機構704は、排紙トレイ701に沿った状態で装着され、センサ702によって装着されているか否かを判断することができる。ここで、後処理工程機構について説明する。後処理工程機構の機能は、シフトソート機能、パンチ機能、および、ステイプル機能を含む。
【0067】
シフトソート機能は、フィニッシング後に部数毎に紙束が分離可能となるように、部数毎に紙束をずらす機構である。詳細は後述するが、印字後、記録媒体Sのメディア印字面側に水分が付与され、メディアの水素結合が切断されて膨潤することによって、印字面側が凸となるように記録媒体Sが反り返る。排紙後に反り返った状態で排紙トレイ上にある先行の記録媒体Sの上に、後続の記録媒体Sが排紙される。ソートなしの場合には、左右の排紙位置はそろっているので、記録媒体Sどうしがぶつかっても紙ジャムが発生することはない。ところがシフトソートすると、排紙後に下側が凸に反り返った先行の記録媒体Sに対して、シフトした位置で後続の記録媒体Sが突入することになり、記録媒体Sどうしがぶつかってしまう。この記録媒体Sの衝突によって、ジャムが発生しやすくなってしまう。
【0068】
ステイプル機能は、自動で記録媒体Sをホチキス留めする機能である。会議資料および提案資料などで、複数枚の記録媒体Sをホチキス止めした資料作成が必要なとき、ステイプル機能は、資料作成にかかる時間を大幅に削減することができる。ステイプル機能を適用する場合、記録媒体Sの束のズレがそのまま固定されてしまい、見た目が美しくないので、より高い整列性が要求される。また、ステイプラのより狭い開口内に複数枚の記録媒体Sを挟む必要があり、より少ないカール量でもジャムが発生しやすくなる。
【0069】
パンチ機能は、印刷した記録媒体Sにパンチ穴をあける機能である。あけられたパンチ穴は、リング等で記録媒体Sを束にしてファイリングするための穴である。ファイリングする時のズレ量が大きいと、ファイリング後の記録媒体Sの整列性が悪くなるため、より高い整列性が要求される。また、パンチャーのより狭い開口内に複数枚の記録媒体Sを挟む必要があり、より少ないカール量でもジャムが発生しやすくなる。
【0070】
<印刷設定について>
図4(a)は、記録装置に印刷設定を設定するためにユーザが操作する印刷設定UI401を示す。印刷設定は、記録設定ともいう。
図4(b)は、後処理工程を設定するための後処理工程選択UI407を示す。UIは、ユーザインターフェース(User Interface)の略である。
【0071】
図4(a)に示すように、ユーザが記録装置108に印刷設定を指示する際に操作する印刷設定UI401には以下の選択が可能となっている。例えば、ユーザは、印刷設定UI401を介して、印刷用紙種類選択402、印刷品位設定403、カラーモード404、片面両面設定405などの設定を選択する。ここで、印刷用紙の設定は、例えば普通紙、薄紙、はがきなどの記録媒体を設定することである。印刷品位の設定は、きれい、標準、下書きなど印刷品位または速度が異なる印刷を設定することである。カラーモードの設定は、カラー印刷およびモノクロ印刷のいずれかを設定することである。片面両面の設定は、片面印刷、および、両面印刷のいずれかを指定することである。
【0072】
<後処理設定について>
図4(a)に示すように、印刷設定UI401は、後処理設定ボタン406を含む。後処理設定ボタン406は、センサ702により後処理工程機構が装着していると判断された場合のみ選択することが可能となる。ユーザが後処理設定ボタン406を選択すると、
図4(b)に示すような後処理工程選択UI407が表示される。表示された後処理工程選択UI407は、シフトソートチェックボックス408、パンチ機能チェックボックス409、ステイプル機能チェックボックス410を含む。ユーザは、後処理工程選択UI407を介して、所望の後処理工程を選択する。後処理工程機構は、当該選択指示に従って後処理工程を実行する。
【0073】
<カールの発生原理>
図5は、片面印刷時の記録媒体のカール状態を模式的に表した図である。
図5(a)は、印刷前の記録媒体を示す。
図5(b)は、印刷後のカールした状態の記録媒体を示す。
【0074】
インクジェット記録装置は水性のインクが用いられることが多い。そのため、
図5(a)に示すように、用紙(記録媒体)の片面にだけインクを吐出して、画像が片面にだけ印刷されると、水分(インクの溶媒成分)が用紙の繊維に浸透する。これにより、用紙の表面側が膨潤するので、用紙の表面側が盛り上がるようにカールしてしまう。その後、用紙の繊維内部に浸透した水分が蒸発し、表面側が印刷前よりも収縮する。その結果、
図5(b)に示すように、印刷面である表面が内側となるように用紙がカールする。
【0075】
さらにカールの発生メカニズムについて詳細に説明する。用紙に水分が付与されると、用紙のセルロース繊維間に形成されている水素結合が一度切断される。すなわち、水分の付与により、セルロースの膨潤が生じるとともに化学的な現象が生じている。この時、インクの浸透は用紙の深さ方向に均一ではなく、深い部分ほどインク量は少なくなっている。インクに浸かった部分、すなわち水と接触した部分の繊維は膨潤する。これにより、水分を付与した面が反対側に反ってカールするマイナスカールが起こる。ところが、一度、吸収したセルロース中の水分は次第に蒸発し、セルロースの収縮が始まるとともに、一旦切れた水素結合の再結合が起こる。その際に水素結合が切れた位置で再結合せず、別の位置で再結合するために用紙は水分を付与した面の方向に次第に反ってカールするプラスカールが起こる。
【0076】
裏面が表面側に反り、表面側に凹になる状態をプラスカール、表面が裏面側に反り、表面側が凸になる状態をマイナスカールという。特にプラスカールが、普通紙などにインクジェット記録をした場合に問題となる。プラスカールが発生すると排紙された記録媒体の不整合や紙ジャムが発生する場合がある。
【0077】
<カールとジャム>
さらに、カールが生じた記録媒体が排紙される過程で紙ジャムを起こす現象について詳細に説明する。
【0078】
インクジェット方式による記録では、画像の記録デューティー、またはインクの打ち込み量(付与量)に応じて、記録媒体に発生するカールの量が変動する。特に、インクの付与量が多い場合に、記録後に発生する記録媒体のカールが大きくなる傾向がある。また、低温、低湿度の場合にも同様に、カールが大きくなる。そのため、記録媒体のカールが大きい状態のまま搬送を継続し、記録装置の排紙トレイへ記録媒体を排紙すると、搬送路内でカールが規制されていた状態から、規制が開放された状態になるため、記録媒体のカールが大きくなる。あるいは、記録媒体のカールの状態が安定していない状態で、排紙トレイへ記録媒体を排紙すると、その後、記録媒体が大きく変形する場合もあり得る。
【0079】
図6は、排紙トレイにおける記録媒体の変形を説明する図である。
図6(a)は、排紙トレイに排紙された記録媒体の状態を示す図である。
図6(b)は、先に排紙トレイに載置された記録媒体がカールし浮き上がった状態のまま、後続の記録媒体が排紙されてくる状態を模式的に示す図である。
【0080】
図6(a)に示すように記録媒体がカールしていない場合、先行の記録媒体が排紙トレイに載置された状態でも、排紙口603から排紙される後続の記録媒体が先行の記録媒体と接触することはない。
【0081】
図6(b)に示すように排紙トレイ601に載置された先行の記録媒体がカールし浮き上がっている状態で、後続の記録媒体が排紙口603から排紙されると、後続の記録媒体が先行の記録媒体と接触する。この結果、後続の記録媒体は上方へ押しあげられて、変形するため紙ジャムが発生する。
【0082】
先行の記録媒体のカールは時間経過とともに低減し、排紙されてくる位置よりも低い高さまでカールが収まった状態であれば、後続の記録媒体が先行の記録媒体に接することなく排紙が行われるため、紙ジャムは発生しない。
【0083】
<後処理工程機構と紙ジャム>
ここで、
図7を用いて後処理工程機構がある場合の紙ジャムについて説明する。高さHは、後処理工程機構704の装着前の排紙口703の下端から排紙トレイ701までの高さを示している。高さH’は、後処理工程機構704の装着後の排紙口703の下端から後処理工程機構704の排紙位置の高さを示している。
図7からわかるように、後処理工程機構704を装着することで排紙部の積載可能な高さH’が狭くなっていることが分かる。一方で、前述してきたとおり、印刷することでカールは発生する。後処理工程機構704を装着した場合は、積載の高さH’が狭くなることから後処理工程機構704を装着しない場合よりもカール量をより低減して、紙ジャムが発生しにくい状態にする必要がある。
【0084】
<打ち込み量とカール>
紙面の単位面積あたりに付与する水分量が多くなると、それにつれて紙面内への水分の浸透深さも深くなる。紙面内深さ方向に水素結合が切れ、カールに参加する繊維が増えることから、打ち込み量に応じてカールの度合いも強くなることが知られている。
【0085】
以下に、インク打ち込み量とカール量の関係を詳細に説明する。
図8は、インク打ち込み量とカールの関係を示す図である。
【0086】
図8(a)は、用紙がカールし易い方向を示す図である。前述のように記録媒体である紙には繊維の方向(紙の目ともいう)がある。ここで、本実施形態の紙が縦方向に沿った繊維の流れで構成されるとする。この場合、紙は横方向にカールし易くなる。特に、インク打ち込み量が少ないときは(例えば、3.0ng/dpi)、縦方向カールと横方向カールの発生状態がほぼ同等である。一方、インク打ち込み量が多くなると(例えば、20.0ng/dpi)、縦方向カールよりも横方向カールの方が発生し易くなる。
【0087】
図8(b)は、インクの打ち込み量と初期カール(カール)の発生量との関係を以下の方法により調べた結果を示す図である。
【0088】
記録装置としてインクジェット記録装置を使用し、普通紙にインク量一定でベタ印字し、記録装置から排紙された直後からカール量を測定した。カール量の測定は、印字が終わったときの時間を0とし、排紙後、印字面を下にふせて、紙の端の上に反ったバックカールの最大高さ(H)を4点測定し、その平均値を求め評価した。
【0089】
図8(c)から明らかなように、インク打ち込み量が少ない領域ではカール量はインク打ち込み量の増加に伴って大きくなることがわかる。一方、インク打ち込み量が大きくなると、カール量はほぼ一定値となる。
【0090】
このような挙動を示す理由は、カールの発生は、紙の伸び(引っ張り)の表裏差で決まるものである。したがって、インク打ち込み量が少ないうちは、紙伸びが大きく、カール量が徐々に大きくなる。一方、インク打ち込み量が一定量を超えると、紙の内部にまで浸透する水分量が増加し、逆に紙の伸び(引っ張り)の表裏差が小さくなり、カール量が変化しなくなる。
【0091】
<速度とカール>
以下に、印刷後の経過時間とカール量の関係を詳細に説明する。
図9は、印刷時間とカール量との関係を示す図である。
【0092】
図9(a)は、印刷後の経過時間とカール量の関係を示す図である。横軸は、インクが付与されてからの経過時間を、縦軸はカール量をそれぞれ模式的に示した図である。初期カール量は、印刷直後のインク水分と反応して紙繊維が膨潤することにより、印刷表面が盛り上がるようにカールする量のことである。最終的なカール量は、用紙内部の水分が蒸発し、表面が縮小することで印刷表面が内側になるようにカールする量のことである。
【0093】
カール量の測定は前述の方法と同様に、普通紙にインク量一定でベタ印字し、プリンタから排紙された直後からの変化量を測定した。
【0094】
図9(a)から明らかなように、インクが付与された直後の初期カール量は多く、時間とともに初期カール量は低下してくる。一方で、最終的なカール量は時間とともに増加する傾向にあることがわかる。このような挙動を示す理由は、印刷直後は用紙の表面側の膨潤により表面側が盛り上がるようにカールが生じることによる。その後、用紙内部に浸透した水分が蒸発し、表面側が印刷前よりも収縮することで印刷面が内側となるように用紙がカールするためである。
【0095】
この不具合に対し、先行の記録媒体の初期カール量の最大値が、記録装置内部の排紙トレイの排紙口の位置より低くなる時間まで排紙を遅らせることで、後続の記録媒体の接触による紙ジャムを抑制する方法があげられる。さらに、最終的なカール量が、後述する予め定められたカール許容量より増加する前に排紙する方がよい。換言すれば、初期のカール量および最終的なカール量がカール許容量以下となっている時間帯に排紙することが好ましい。
【0096】
図9(b)は、印刷速度とカール発生量との関係を以下の方法により調べた結果を示す図である。印刷速度は記録速度ともいう。横軸は、インクが付与されてからの経過時間を、縦軸はカール量をそれぞれ模式的に示した図である。なお、横軸の下に記載の吐出直後および排紙後は、ドラフトモードにおけるものである。
【0097】
さらに、本実施形態における印刷速度が60[ips]の標準モード、30[ips]のドラフトモードで印刷された場合に生じるカール量が示されている。標準モードの場合、初期カール量が、60[ips]の矢印で示すようにカール許容量を超えていることがわかる。60[ips]の矢印は、標準モードにおける排紙時を示す。
【0098】
例えば、標準モードで印刷速度を変えずに印刷を継続した場合、印刷サンプルのインク打ち込み量によっては、排紙時に初期カール量がカール許容量を超えているので、先行の記録媒体に後続の記録媒体が接触し紙ジャムを発生させてしまう。
【0099】
先行の記録媒体の初期カール量は時間経過とともに低減し、排紙されてくる位置よりも低い高さまで初期のカールが収まった状態であれば、後続の記録媒体が先行の記録媒体に接することなく排紙が行われるため、紙ジャムは発生しない。
【0100】
印刷速度を下げることで、印字開始から排紙までの時間をより長くとることができ、排紙後の初期カール量を抑えることができる。換言すれば、印刷速度の遅いドラフトモードでは、30[ips]の矢印で示すように、排紙された時には、初期カール量がカール許容量を下回る。
【0101】
したがって、印刷速度は、前述の印刷速度とカール発生量との関係から設定することが好ましい。
【0102】
<後工程機能設定時の印刷動作>
以上を踏まえて、後処理工程機構の装着、及び、後処理工程の設定時のカール低減について、実施動作の例を説明する。
【0103】
前述のとおり、後処理工程機構の装着により排紙口が狭くなるので、紙ジャムが発生し易くなる。したがって、後処理工程機構が未装着の状態よりも後処理工程機構が装着された状態の方が、印刷後のカール量を低減させる必要がある。例えば、カール量を低減させる方法として、CPU111は、記録デューティーを下げてもよい。記録デューティーは、例えば、記録媒体に記録される画像の密度であってよい。この場合、CPU111は、記録デューティーを下げることによって、記録濃度が下がることを警告するUIを表示してもよい。カール量を低減させる方法として、CPU111は、前述のとおり印刷速度(記録速度ともいう)を低下させるように調整する方法および印刷時間(記録時間ともいう)を長くするように調整方法がある。この時、印刷速度および印刷時間は、印刷中(記録中ともいう)の待機時間の変更、キャリッジ走査速度の変更、および、印字パスの増加のいずれかによって調整することができる。カール量を低減させるために印刷時間を長くする場合、CPU111は、印刷中の待機時間を長くするように調整してもよい。カール量を低減させる方法は、前述のとおりインクの付与量を低減させることでも可能である。後処理工程の設定をした場合に、これらの方法を実行することでカール量を低減することができる。またこれらの方法を組み合わせても紙ジャムを低減できる。
【0104】
以上を踏まえ、後処理工程を適用した際の記録装置108の動作について説明する。
図10は、記録装置108の印刷処理を示すフローチャートの図である。
【0105】
ステップS102では、CPU111は、後処理工程機構が装着されたか否かを判定する。例えば、CPU111は、
図7に示すセンサ702からの検知信号に基づいて判定してよい。
【0106】
ステップS103では、CPU111は、RAM112にて保持している後処理工程機構の装着フラグを設定する。ここで、装着フラグのONは後処理工程機構が装着されていることを示し、OFFは後処理工程が装着されていないことを示す。したがって、CPU111は、センサ702からの検知信号に基づいて後処理工程機構が装着されていると判定した場合、装着フラグをONに設定する。一方、CPU111は、後処理工程機構が装着されていないと判定した場合、装着フラグをOFFに設定する。なお、装着フラグがONの場合、ユーザが印刷設定UI401で後処理設定ボタン406を選択可能となる。
【0107】
ステップS104では、CPU111は、印刷設定UI401を表示させて、ユーザから印刷設定の指示を受け付ける。ここで、装着フラグがONの場合、CPU111は、後処理設定ボタン406を印刷設定UI401上に表示させる。CPU111は、ユーザが後処理設定ボタン406を選択した場合、後処理工程選択UI407に表示を切り替える。CPU111は、当該後処理工程選択UI407でユーザが選択した後処理工程の選択指示を受け付ける。CPU111は、受け付けた印刷設定をRAM112に保存する。
【0108】
ステップS105では、CPU111は、ステップS104で取得した印刷設定に従って、ROM113の印刷動作テーブル1110を参照し該当する印刷動作プログラムを読み出して、RAM112に展開する。これにより、CPU111は、ユーザの印刷設定に沿った印刷動作を実行する。
図11は、印刷動作テーブル1110の図である。印刷動作テーブル1110は、後処理および印刷設定の組み合わせに紐づけられた印刷動作を示す印刷番号を含む。印刷設定は、カール対策の強度、印刷品質、および、両面設定などを含む。CPU111は、印刷動作テーブル1110が示す印刷番号に基づいて、所望の印字動作プログラムを読み出して印刷動作を行う。
【0109】
ステップS106では、CPU111は、印刷設定を受け付ける。例えば、CPU111は、通常の印刷設定とともに、後処理設定としてカールを低減するための印刷設定の代替候補を表示して、後処理設定として代替候補の印刷設定を受け付けるための画面を表示する。以下、印刷設定の代替候補について説明する。代替候補の印刷設定は、記録媒体のカールが低減された状態で排紙される設定であり、第2記録設定の一例である。代替候補の印刷設定以外の通常の印刷設定は、第1記録設定の一例である。
【0110】
<印刷設定と印刷インク量>
代替印刷候補の設定に関して、印刷設定と印刷時間について
図11を用いて説明する。
【0111】
図11に示すように、カール対策の強度が「1」、印刷品質「標準」、両面設定「なし」の印刷モードの印刷番号は「A-00」である。カール対策の強度が「1」、印刷品質「下書き」、両面設定「なし」の印刷モードの印刷番号は「A-01」である。
【0112】
印刷番号A-00の印刷動作のインク付与量よりも、印刷番号A-01の印刷動作のインク付与量の方が少なく設定されている場合、印刷番号A-01の印刷動作の方がカール量を抑えることができる。例えば、印刷番号A-00の場合、10.0ng/600dpiのインク付与量で印刷し、印刷番号A-01の場合、5.0ng/600dpiのインク付与量で印刷するように設定すればよい。
【0113】
カール対策の強度「2」、印刷品質「標準」、両面設定「なし」の印刷モードの印刷番号は「B-00」、カール対策の強度「2」、印刷品質「下書き」、両面設定「なし」の印刷モードの印刷番号は「B-01」である。印刷番号A-00の印刷動作のインク付与量よりも、印刷番号B-00の印刷動作のインク付与量の方が少なく設定されている場合、カール対策の強度「1」に設定されている印刷番号A-00よりも印刷番号B-00の方がカール量を抑えることができる。例えば印刷番号B-00のインク付与量は、8.0ng/600dpiである。印刷番号A-01の印刷動作のインク付与量よりも、印刷番号B-01の印刷動作のインク付与量の方が少なく設定されている場合、カール対策強度「1」の印刷番号A-01よりも印刷番号B-01の方がカール量を抑えることができる。例えば印刷番号B-01のインク付与量は、3.0ng/600dpiである。
【0114】
ここで、両面印刷時のカールについて説明する。
図12は、両面印刷時の記録媒体のカールを説明する図である。
図12(a)は、表裏でインク量の差がない場合のカールを説明する図である。
図12(b)は、表裏でインク量の差がある場合のカールを説明する図である。
図12(c)は、表裏のインク量の差とカール量との関係を示す図である。
図12(c)において、横軸は表裏のインク量の差[ng/dpi]を示し、縦軸はカール量[mm]を示す。
【0115】
図12(a)に示すように、表裏でインク量の差が小さい場合、記録媒体の表裏でセルロースの膨潤の差が小さいので、カール量は小さくなる。一方、
図12(b)に示すように、表裏でインク量の差が大きい場合、記録媒体の表裏でセルロースの膨潤の差が大きいので、カール量は大きくなる。
図12(c)に示すように、記録媒体の表裏でインク量の差が大きくなると、カール量は大きくなるが、インク量の差がある値以上となると、カール量はほとんど変化しない。すなわち、表裏のインク量の差が大きければ、カール量が大きくなるということは、両面印刷の方が、片面印刷よりもカール量が小さくなる。したがって、両面印刷の方が片面印刷よりも、紙ジャムが発生しにくい。
【0116】
<印刷設定と印刷速度>
印刷番号A-00の印刷時間はt(秒)、印刷番号A-01の印刷時間はs(秒)、印刷番号B-00の印刷時間はt’(秒)、 印刷番号B-01の印刷時間はs’(秒)で設定されている。
【0117】
t’(秒)>t(秒)とする。印刷速度の調整は、前述の通り、印刷中の待機時間やキャリッジ走査速度の調整あるいは、印字パスを増やすことによってできる。カール対策の強度を上げる設定にすると、印刷速度を低下し、カール量を抑えることができ、整列性を優先することができる。
【0118】
図10に戻って、上述したように、ステップS106では、CPU111が、整列性を優先する印刷設定への変更を推奨する変更推奨UI1301を表示する。整列性を優先する印刷設定は、紙ジャムの発生を低減した状態で排紙する設定の一例である。
図13は、紙ジャム対策用の印刷設定への変更をユーザが選択するためのUIを示した図である。
図13(a)は、変更推奨UI1301の一例を示す図である。
図13(a)に示すように、変更推奨UI1301は、変更の要否の選択を要求するメッセージと、代替候補への変更を指示するためのボタン1302と、代替候補へ変更しないことを指示するためのボタン1303と、を有する。なお、変更の要否の選択を要求するメッセージは、代替候補の印刷設定へと変更を促すものであってもよい。
【0119】
S107では、CPU111は、変更推奨UI1301を表示した状態で、代替候補に変更するか否かを判定する。ユーザが変更するボタン1302を押下すると、CPU111は、代替候補に変更すると判定して、ステップS108へ進む。一方、ユーザが変更しないボタン1303を押下すると、CPU111は、ステップS104の印刷設定を維持してステップS109へ進む。
【0120】
S108では、CPU111は、印刷設定を代替の印刷設定に再設定する。なお、CPU111は、ユーザの印刷設定の確認のために、印刷品位が下書きに選択された状態で、
図4の印刷設定UI401を表示して、ユーザに代替の印刷設定を選択させてもよい。また、CPU111は、
図13(b)に示すカールを低減して排紙するための代替候補の印刷設定を示す印刷設定UI1305を表示して、ユーザから代替の印刷設定への変更を受け付けてもよい。
図13(b)は代替候補の印刷設定を受け付けるUIである。印刷設定UI1305は、下書きモードを選択するラジオボタン1306、モノクロモードを選択するラジオボタン1307、両面モードを選択するラジオボタン1308、印刷設定を変更しないことを選択するラジオボタン1309、および、OKボタン1310を含む。ユーザがラジオボタンを選択して、OKボタン1310を押下すると、CPU111は、選択したラジオボタンに基づいて、代替候補の印刷設定に再設定する。例えば、
図13(b)に示すように、ユーザが両面モードを選択した場合、CPU111は、カール対策強度が強く(例えば、「2」)、その他の設定がユーザの設定と同じ印刷設定を印刷動作テーブル1110から選択する。CPU111は、当該印刷設定を代替の印刷設定として再設定する。
【0121】
S109では、CPU111は、設定された印刷設定をもとに、動作プログラムを実行して、記録媒体に画像を印刷する。
【0122】
以上は、整列性を優先する印刷設定として、下書きモードの場合について説明したが、カールを低減した状態で排紙するための代替の印刷設定としては下書きモードに限られず、エコモード、ドラフトモード、モノクロモードなどインク量が少なくカールを抑制できるモードであれば、整列性の高い印刷が可能なので、代替の印刷設定としてよい。なお、これらの印刷速度の低下量およびインク量の低減量は、後処理工程の種類および種類の組み合わせによって変化させても良い。例えば、後処理工程のうち、ステイプル処理が最も整列性を求めるのであれば、シフトソート処理を実行する場合よりも、速度をさらに低下すること、および、インク付与量をさらに低減するなどしてもよい。例えば、CPU111は、シフトソート処理を適用する場合は、
図11のカール対策強度を「1」にする。一方、CPU111は、最も整列性が求められるステイプル処理の場合は
図11のカール対策強度を「2」にしてよい。
【0123】
本実施形態は、上述の構成によって、後処理工程を設定した場合でも、紙ジャムの発生率を軽減することができる。
【0124】
具体的には、第一の実施形態の記録装置108のCPU111は、後処理工程機構が排紙トレイ13に装着されている場合、カールを抑制できる印刷設定に再設定可能に構成されている。これにより、第一の実施形態は、非装着時に比べて排紙位置の高さH’が狭くなっている場合でも、排紙されるときにカールを抑制できるので、先行の記録媒体が排紙口703から出ることを抑制できる。この結果、第一の実施形態は、後処理工程機構が排紙トレイ13に装着されている場合でも、先行の記録媒体に後続の記録媒体が接触することを抑制できるので、紙ジャムを抑制できる。
【0125】
第一の実施形態は、ユーザにUI1301、1305を表示して、ユーザがカールを抑制する設定を選択した場合に、カールを抑制する印刷設定に切り替えて印刷動作を実行するので、ユーザの希望する印刷動作を実現できる。
【0126】
(第二の実施形態)
第一の実施形態では、後処理工程機構を装着して、後処理設定をしたユーザに対して、カール量が小さい推奨印刷設定モードをUI表示する例を説明した。本実施形態ではユーザが繰り返し印刷する中で紙ジャムを発生させた後のUI表示例について説明する。
【0127】
以下では、第一の実施形態と同様な構成については、説明を割愛し、実際の動作について説明する。
【0128】
<ジャム発生する度にジャム回避優先印刷モードを表示する>
実際の流れについて、
図14を用いて説明する。
図14は、第二の実施形態の印刷動作のフローチャートを示す図である。本実施形態では、記録媒体の紙ジャムの発生の有無を示す発生情報テーブルを保存し、発生情報テーブルに基づいて紙ジャムの発生を判定する。本実施形態では、当該判定結果に基づいて、カールを抑制する印刷設定を受け付けるUIを表示する。第一の実施形態と同様に、後処理工程機構を装着する工程と後処理工程機構の装着をセンサ検知する工程は同様である。それ以降の処理について説明する。
【0129】
まず、ステップS201では、CPU111は、印刷設定UI401を表示して、ユーザからの印刷設定の指示を受け付ける。ここで、ユーザが後処理設定ボタン406を押下した場合、CPU111は、後処理工程選択UI407を表示して、ユーザから後処理工程の設定を受け付けてもよい。
【0130】
ステップS202では、CPU111は、直近の印刷において紙ジャムが発生したか否かを判定する。
図16は、紙ジャムの発生情報テーブル161である。発生情報テーブル161は、紙ジャムが発生に関する情報を示すテーブルである。発生情報テーブル161は、印刷番号と、および、印刷番号に紐づけられた発生フラグおよび発生日時とを含む。発生フラグは、当該印刷番号の印刷動作において、紙ジャムの発生の有無を示す。発生フラグが「1」であれば発生したことを示し、「0」であれば発生していないことを示す。なお、発生フラグが一度発生しても、その後の同じ印刷番号の印刷動作において、紙ジャムが発生していなければ、CPU111は、発生フラグを「0」にしてもよい。発生日時は、紙ジャムが発生した直近の日時を示す。CPU111は、例えば、印刷動作ごとに、対応する印刷番号の発生フラグおよび発生日時を更新して保存してよい。CPU111は、発生情報テーブル161に基づいて紙ジャムが発生していないと判定した場合、ステップS204へ進む。一方、CPU111は、紙ジャムが発生していると判定した場合、ステップS203へ進む。
【0131】
ステップS203では、CPU111は、紙ジャムの発生を抑えるために推奨する印刷設定を含む
図15に示す印刷設定UI1505を表示する。
図15は、第二の実施形態の紙ジャム対策用の設定のためのUIを示した図である。換言すれば、CPU111は、紙ジャムの発生の判定結果に基づいて、印刷設定UI1505を表示する。ここで、
図11に示すカール対策用の印刷動作テーブル1110は、予めROM113に保持されている。
図11の印刷動作テーブル1110は、第一の実施形態のステップS106で説明した内容と同様である。CPU111は、印刷動作テーブル1110を参照して、推奨する印刷設定をUIに表示する。例えば、CPU111は、ステップS201でユーザからカール対策強度が「1」の印刷設定を受け付けている場合、印刷動作テーブル1110に基づいてカール対策強度が「2」の代替候補の印刷設定を含む
図15に示す印刷設定UI1505を表示する。CPU111は、印刷設定UI1505を介して、ユーザから代替候補の印刷設定を受け付ける。CPU111は、受け付けた代替候補の印刷設定を新たな印刷設定として再設定する。なお、CPU111は、印刷動作テーブル1110の印刷番号に基づいて、印刷設定を再設定すればよい。
【0132】
ステップS204では、CPU111は、
図4の印刷設定UI401および
図15の印刷設定UI1501によって設定された印刷設定に基づいて、印刷動作プログラムを読み出して、印刷動作を行う。ここで、CPU111は、ステップS203において、紙ジャムの発生を抑える印刷設定に再設定している場合、当該再設定された印刷設定によって印刷動作を行う。
【0133】
このように、本実施形態は、直近の印刷で紙ジャムが発生している場合、CPU111が、印刷設定を変更することで、紙ジャムに対して対策がなされるため、ユーザが使用する印刷環境および印刷設定に応じて、紙ジャムが発生した次回の印刷以降の紙ジャム発生率を下げることができる。
【0134】
(第三の実施形態)
上述の実施形態では、カール量が小さい印刷設定を紙ジャムが発生する前にユーザによって設定する例を説明した。本実施形態では、印刷動作中に紙ジャムが発生した場合にカール量を抑制する印刷設定に再設定する例について説明する。
【0135】
以下では、上述の実施形態と同様な構成については、説明を割愛し、実際の動作について説明する。
【0136】
図17は、第三の実施形態の印刷処理を示すフローチャートの図である。
図17を用いて第三の実施形態の印刷処理について説明する。上述の実施形態と同様に、後処理工程機構を装着する工程と後処理工程機構の装着をセンサ検知する工程は同様である。それ以降の処理について説明する。
【0137】
ステップS171では、CPU111は、ユーザから印刷設定を受け付ける。例えば、CPU111は、印刷設定UI401を表示して、ユーザから印刷設定の指示を受け付けてよい。ここで、ユーザが後処理設定ボタン406を押下した場合、CPU111は、後処理工程選択UI407を表示して、ユーザから後処理工程の設定を受け付けてもよい。なお、本実施形態においても、
図11に示す印刷動作テーブル1110は、ROM113に記憶されている。
【0138】
ステップS172では、CPU111は、ユーザから受け付けた印刷設定に基づいて、印刷動作プログラムを読み出して印刷動作を行い、記録媒体に画像を記録する。
【0139】
ステップS173では、CPU111は、印刷動作中に紙ジャムが発生しているか否かを判定する。CPU111は、印刷動作中に紙ジャムが発生していないと判定した場合、印刷処理を終了する。CPU111は、印刷動作中に紙ジャムが発生したと判定すると、ステップS173へ進む。
【0140】
ステップS174では、CPU111は、ユーザから受け付けた印刷設定を代替の印刷設定に再設定する。ここで、代替の印刷設定は、例えばユーザから受け付けた印刷設定よりもカール量を抑制できる印刷設定である。したがって、CPU111は、
図11に示す印刷動作テーブル1110を参照して、代替の印刷設定を選択して再設定してよい。例えば、CPU111は、ユーザから受け付けた印刷設定よりもカール抑制の強度が強い「2」の印刷設定のうち、それ以外は同じ設定の印刷設定を代替の印刷設定として選択して再設定してもよい。また、CPU111は、
図16に示す発生情報テーブル161に基づいて、紙ジャムが発生していない印刷設定を代替に印刷設定として選択して再設定してもよい。更に、CPU111は、第一の実施形態の
図13(b)に示す印刷設定UI1305、および、第二の実施形態の
図15に示す印刷設定UI1505を表示して、ユーザから代替の印刷設定を受け付けてもよい。
【0141】
ステップS175では、CPU111は、再設定された代替の印刷設定に基づいて、再度、印刷動作プログラムを読み出して、印刷動作を行う。なお、CPU111は、紙ジャムが解消されたことをセンサまたはユーザから受け付けた後、印刷動作を再開してもよい。
【0142】
上述したように、本実施形態は、紙ジャムが発生した場合、カール量を抑制する印刷設定に変更した後、再度印刷動作を開始するので、繰り返し紙ジャムが発生することを抑制できる。
【0143】
(その他の実施形態)
上述の各実施形態は、組み合わせてもよい。実施形態を組み合わせた場合、各実施形態の処理をユーザが選択可能にし、CPU111は、ユーザの選択に基づいて処理を実行すればよい。
【0144】
本実施形態はシリアルヘッドを例に説明をしてきたがラインヘッドであってもよい。またラインヘッドの場合は、1度に紙面上に付与するインク量が多くなるため、カール量も大きくなることが想定される。したがって、本実施形態は、より高い効果を得ることができる。
【0145】
上述の実施形態では、ユーザが代替印刷設定を選択して、当該選択に基づいてCPU111が印刷設定を再設定する例を挙げて説明したが、印刷設定の再設定はこれに限られない。例えば、CPU111は、再設定条件を満たしたと判定した場合、カールを抑制する印刷設定に自動で再設定してもよい。CPU111は、後処理工程が設定された場合、および、後処理工程機構が設置された場合、再設定条件を満たしたと判定してもよい。なお、カールを抑制する印刷設定は、上述したように、速度をさらに低下すること、インク付与量をさらに低減すること、および、これらの組合せであってよい。
【0146】
上述の実施形態では、記録装置108のCPU111が印刷設定および印刷設定の再設定を処理するとして説明したが、当該処理の主体はCPU111に限られない。例えば、画像処理装置101のCPU102が印刷設定および印刷設定の再設定を処理してもよい。この場合、CPU102は、各ユーザインターフェースを画像処理装置101の表示装置に表示させればよい。
【0147】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0148】
本明細書の開示は、以下の情報処理装置、インクジェット記録装置、情報処理方法、および、プログラムを含む。
(項目1)
記録媒体に画像を記録するとともに、前記画像が記録された記録媒体に後処理工程を実行する後処理工程機構を、前記記録媒体が排紙される排紙部に装着可能なインクジェット記録装置を制御する情報処理装置であって、
前記画像を記録するための設定である記録設定を記憶する記憶手段と、
前記記録設定を設定する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記後処理工程機構が装着されている場合、第1記録設定よりも前記記録媒体のカールが低減された状態で排紙する第2記録設定を記録設定として設定可能であることを特徴とする情報処理装置。
(項目2)
前記制御手段は、前記後処理工程機構が装着されている場合、前記第2記録設定への変更をユーザが選択するユーザインターフェースを表示して、前記ユーザから前記第2記録設定への変更を受け付ける
ことを特徴とする項目1に記載の情報処理装置。
(項目3)
前記制御手段は、前記後処理工程機構が実行する処理として、シフトソート、ステイプル、および、パンチのいずれかを受け付ける
ことを特徴とする項目1または項目2に記載の情報処理装置。
(項目4)
前記制御手段は、前記第2記録設定において、前記第1記録設定よりも記録デューティーを下げるように設定する
ことを特徴とする項目1ないし項目3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
(項目5)
前記制御手段は、前記記録デューティーを下げるよう設定する場合、前記画像の記録濃度が下がる旨を表示する
ことを特徴とする項目4に記載の情報処理装置。
(項目6)
前記第2記録設定は、前記第1記録設定よりも記録時間が長い設定である
ことを特徴とする項目1ないし項目5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
(項目7)
前記制御手段は、前記記録時間を長く設定する場合、前記画像の記録中の待機時間を調整する
ことを特徴とする項目6に記載の情報処理装置。
(項目8)
前記制御手段は、前記記録時間を長く設定する場合、前記画像の記録速度を調整する
ことを特徴とする項目6または項目7に記載の情報処理装置。
(項目9)
前記制御手段は、記録媒体のジャムの発生の有無を示す発生情報を保存し、前記発生情報に基づいてジャムの発生を判定し、当該判定に基づいて、前記第2記録設定を受け付けるユーザインターフェースを表示する
ことを特徴とする項目1ないし項目8のいずれか1項に記載の情報処理装置。
(項目10)
前記制御手段は、記録媒体のジャムの発生の有無を示す発生情報を保存し、記録動作中にジャムが発生した場合、前記発生情報に基づいて前記第2記録設定を設定して、再度、記録動作を行う
ことを特徴とする項目1ないし項目9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
(項目11)
項目1ないし項目10のいずれか1項に記載の情報処理装置と、
前記画像が記録された前記記録媒体が排紙されるとともに、前記記録媒体に後処理工程を行う後処理工程機構が装着される排紙手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
(項目12)
記録媒体に画像を記録するとともに、前記画像が記録された記録媒体に後処理工程を実行する後処理工程機構を、前記記録媒体が排紙される排紙部に装着可能なインクジェット記録装置を制御する情報処理装置であって、
前記画像を記録するための設定である記録設定を記憶する記憶工程と、
前記記録設定を設定する制御工程と、を備え、
前記制御工程では、前記後処理工程機構が装着されている場合、第1記録設定よりも前記記録媒体のカールが低減された状態で排紙する第2記録設定を記録設定として設定可能であることを特徴とする情報処理方法。
(項目13)
コンピュータを、項目1ないし10のいずれか1項目に記載の情報処理装置の制御手段として機能させるためのプログラム。
【0149】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0150】
108・・・記録装置、 116・・・後処理工程機構、 102・・・CPU、 111・・・CPU、 112・・・RAM、 113・・・ROM、 13、601、701・・・排紙トレイ、 702・・・センサ、 401、1305、1501、1505・・・印刷設定UI、 407・・・後処理工程選択UI、 1110・・・印刷動作テーブル、 1301・・・変更推奨UI、 161・・・発生情報テーブル。