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特開2025-14166予測保守システム、及び、予測保守方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014166
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】予測保守システム、及び、予測保守方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20250123BHJP
   G06Q 20/18 20120101ALI20250123BHJP
【FI】
G06Q10/20
G06Q20/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116457
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立チャネルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石黒 潤
【テーマコード(参考)】
5L020
5L049
5L055
【Fターム(参考)】
5L020AA39
5L049CC15
5L055AA39
(57)【要約】
【課題】 障害が発生すると予測された時期に合わせて保守部品の入手を可能とし、いったん確保した保守部品がその後に不要になった際も有効活用する。
【解決手段】 自動取引装置の故障予測を行い、故障が予測された自動取引装置の保守部品につき、その地域の保守拠点に在庫が存在する場合は、その保守部品をその保守拠点にて確保する在庫部品確保処理と、故障が予測された自動取引装置の保守部品につき、その地域の保守拠点に在庫がなく他の保守拠点で使用しない在庫が存在する場合は、他の保守拠点に在庫する保守部品を、その地域の保守拠点に故障予測の期日に入手できるように融通する拠点間融通処理と、故障が予測された自動取引装置の保守部品につき、いずれの地域の保守拠点にも在庫がない場合は、故障予測の期日に入手できるように不足分を発注する発注予約処理とを行うことを特徴とする予測保守システムとした。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動取引装置の故障予測を行う故障予測装置と、
複数の地域毎に設けられその地域に設置された前記自動取引装置の保守を行う保守拠点に対して、故障復旧に必要な部品を事前に用意する保守部品管理発注装置と、
を有する、予測保守システムであって、
前記保守部品管理発注装置は、
前記故障が予測された自動取引装置の保守部品につき、その地域の前記保守拠点に在庫が存在する場合は、その保守部品をその保守拠点にて確保する在庫部品確保処理と、
前記故障が予測された自動取引装置の保守部品につき、その地域の前記保守拠点に在庫がなく他の保守拠点で使用しない在庫が存在する場合は、前記他の保守拠点に在庫する保守部品を、前記その地域の保守拠点に前記故障予測の期日に入手できるように融通する拠点間融通処理と、
前記故障が予測された自動取引装置の保守部品につき、いずれの地域の前記保守拠点にも在庫がない場合は、前記故障予測の期日に入手できるように不足分を発注する発注予約処理と、
を行うことを特徴とする、予測保守システム。
【請求項2】
請求項1に記載の予測保守システムであって、
前記保守部品管理発注装置は、
前記故障が予測された自動取引装置毎に、故障の発生予測日と予測障害種別と予測復旧処理と必要部品・個数と手配状況を管理するATM障害予測管理テーブルと、
前記保守拠点毎の保守部品の在庫が記録された在庫テーブルと、
を有することを特徴とする、予測保守システム。
【請求項3】
請求項2に記載の予測保守システムであって、
前記保守部品毎にその発注納期と拠点間融通納期が記録された部品マスターテーブルを有し、
前記拠点間融通処理、及び、前記発注予約処理は、前記部品マスターテーブルを参照し、前記故障が予測された自動取引装置の故障予測日から逆算して指示することを特徴とする、予測保守システム。
【請求項4】
請求項3に記載の予測保守システムであって、
前記拠点間融通処理は、前記故障が予測された自動取引装置の保守部品が、その地域の保守拠点に在庫せず他の複数の保守拠点で使用しない在庫が存在する場合は、在庫数が最大の保守拠点、又はその保守部品の将来の使用可能性が低い保守拠点、またはその他に同時に融通する保守部品がある保守拠点のいずれかから融通することを特徴とする、予測保守システム。
【請求項5】
請求項4に記載の予測保守システムであって、
前記保守部品管理発注装置は、前記保守拠点毎にその保管倉庫の空き容量が記録された拠点テーブルを有し、
前記部品マスターテーブルは、各部品の梱包サイズが記録されており、
前記拠点間融通処理、及び、前記発注予約処理は、準備する前記保守部品の梱包サイズが前記保管倉庫の空容量未満の場合は、直ちに指示することを特徴とする、予測保守システム。
【請求項6】
自動取引装置の故障予測を行い、複数の地域毎に設けられその地域に設置された前記自動取引装置の保守を行う保守拠点に対して、故障復旧に必要な部品を事前に用意する予測保守方法であって、
前記故障が予測された自動取引装置の保守部品につき、その地域の前記保守拠点に在庫が存在する場合は、その保守部品をその保守拠点にて確保し、
前記故障が予測された自動取引装置の保守部品につき、その地域の前記保守拠点に在庫がなく他の保守拠点で使用しない在庫が存在する場合は、前記他の保守拠点に在庫する保守部品を、前記その地域の保守拠点に前記故障予測の期日に入手できるように融通し、
前記故障が予測された自動取引装置の保守部品につき、いずれの地域の前記保守拠点にも在庫がない場合は、前記故障予測の期日に入手できるように不足分を発注することを特徴とする、予測保守方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動取引装置等の市中の各所で稼働している装置の予測保守に関する。
【背景技術】
【0002】
現金の入出金や各種取引を行う自動取引装置(ATM)は、市中の各所に配置されて稼働しており、社会インフラの一つとして重要な役割を果たしている。したがって、このような装置に何らかの不具合が生じた場合には、迅速に対処してその機能の停止を、極力、抑えることが重要である。
【0003】
また、将来の起こりうる不具合や故障に備えて、保守用の部品を予め用意しておくことによって、不具合等の発生時に迅速に対応が可能となる。従来、この種の発明としては、例えば特開2018-173793号公報(特許文献1)に記載のものがあった。
【0004】
特許文献1には、製品の障害情報を基にメンテナンス作業の対象製品を特定し、前記メンテナンス作業の対象製品が有する部品の障害の発生を予測し、前記障害の発生が予測された部品に対して前記発生が予測された障害に応じてメンテナンス作業の優先度を決定し、前記障害の発生が予測された部品の入手可能時期と前記優先度とに応じて前記特定された対象製品のメンテナンス作業のスケジュールを調整する処理部を備える情報処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-173793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
AIによる予測技術を用いて、稼働中の装置の現状の稼働情報に基づいて将来の発生しうる異常や故障、及びその時期などを予測し、事前のそのための保守部品を確保しておくことによって、異常発生時には迅速に対処が可能となる。
【0007】
近年はAI等による予測技術の精度が上がってきてはいるものの、保守用部品を事前に確実に確保するためには、より安全側で障害予測を行う必要がある。そのため、そのような安全側での障害予測に基づいて保守部品を確保しておくと、実際には障害がおこらず、確保した部品が不要となることも予想される。
【0008】
特に、直近の予測だけでなく、長期的(数か月先)な予測については、直近の予測に比べて予測精度は下がるため、実際には障害がおこらないケースも増えてくる可能性がある。このような長期予測で障害発生を予測して保守部品を発注したものの、その後の予測で障害発生無しと修正されたような場合は、その保守部品の発注自体をキャンセルしたいケースもある。
また、設置されたATMの保守作業等を管轄する保守拠点では、保守部品を保管する必要があるが、必ずしも保管スペースが十分にあるわけではないので、長期間にわたって保守部品を保管するのは避けたいという事情もある。
したがって、できるだけ障害が発生すると予測された時期に合わせて保守部品を入手できるようにすることが望ましい。また、上述のように障害予測をより安全側で実施すると、実際には障害がおこらず、確保した部品が不要となるケースが増えてくることも予想されるため、確保した部品については有効活用できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため本発明は、自動取引装置の故障予測を行う故障予測装置と、複数の地域毎に設けられその地域に設置された自動取引装置の保守を行う保守拠点に対して、故障復旧に必要な部品を事前に用意する保守部品管理発注装置と、を有し、保守部品管理発注装置は、故障が予測された自動取引装置の保守部品につき、その地域の保守拠点に在庫が存在する場合は、その保守部品をその保守拠点にて確保する在庫部品確保処理と、故障が予測された自動取引装置の保守部品につき、その地域の保守拠点に在庫がなく他の保守拠点で使用しない在庫が存在する場合は、他の保守拠点に在庫する保守部品を、その地域の保守拠点に故障予測の期日に入手できるように融通する拠点間融通処理と、故障が予測された自動取引装置の保守部品につき、いずれの地域の保守拠点にも在庫がない場合は、故障予測の期日に入手できるように不足分を発注する発注予約処理とを行うことを特徴とする予測保守システムとした。
【発明の効果】
【0010】
障害が発生すると予測された時期に合わせて保守部品の入手が可能である。また、いったん確保した保守部品がその後に不要になった際も有効活用ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例における保守管理体制を示す図である。
図2】本発明の実施例における予測保守システム10の全体構成を示す図である。
図3】本発明の実施例における障害予測装置200の構成を示す図である。
図4】本発明の実施例における動作ログデータの内容を示す図である。
図5】本発明の実施例における障害・保守記録のデータの内容を示す図である。
図6】本発明の実施例における保守部品管理発注装置300の構成を示す図である。
図7】本発明の実施例における障害予測管理テーブル301の内容を示す図である。
図8】本発明の実施例におけるATMマスターテーブル302の内容を示す図である。
図9】本発明の実施例における部品マスターテーブル303の内容を示す図である。
図10】本発明の実施例における在庫管理テーブル304の内容を示す図である。
図11】本発明の実施例における発注テーブル305の内容を示す図である。
図12】本発明の実施例における部品確保テーブル306の内容を示す図である。
図13】本発明の実施例における予測保守システムの全体処理を示すフローチャートである。
図14】本発明の実施例における在庫部品確保処理の詳細を示すフローチャートである。
図15】本発明の実施例における拠点間融通処理の詳細を示すフローチャートである。
図16】本発明の実施例における発注予約処理の詳細を示すフローチャートである。
図17】本発明の実施例における各種テーブル内容の推移を説明するための図である。
図18】本発明の実施例における各種テーブル内容の推移を説明するための図である。
図19】本発明の実施例における各種テーブル内容の推移を説明するための図である。
図20】本発明の他の実施例における保守部品管理発注装置300Aの構成を示す図である。
図21】本発明の他の実施例における拠点管理テーブル307の内容を示す図である。
図22】本発明の他の実施例における部品マスターテーブル303Aの内容を示す図である。
図23】本発明の他の実施例における拠点間融通処理の詳細を示すフローチャートである。
図24】本発明の他の実施例における発注予約処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。なお、各図面を通して、同等の構成要素には同一の符号を付してあるが、図面の構成や記載の都合上、同等の構成要素に異なる符号を付したものもある。
【0013】
まず、本発明の実施例における保守管理体制を図1を用いて説明する。図1において、地域(エリア)100は、エリアA(101)とエリアB(102)とエリアC(103)とエリアD(104)とから構成されており、それぞれのエリア内には、銀行営業店や商業施設・店舗等に備えられた自動取引装置(ATM)として、ATM123(111)、ATM345(112)、ATM567(113)、ATM789(114)が点在している。
【0014】
また、それらのATMの保守管理等を行うため、保守員等が常駐し保守用部品を保管する保守拠点が、それぞれのエリアに拠点A(121)、拠点B(122)、拠点C(123)、拠点D(124)として存在している。
【0015】
さらに、それらの保守拠点を統括し、エリア100内の保守の全体的な管理を行う保守センタ130が設置されている。本発明の予測保守システムは、各ATMや保守拠点から収集した情報を保守センタ130に設置されたコンピュータや記憶装置等を用いて演算処理することで実現される。なお、保守センタ130は、前述の各保守拠点がその機能・役割を兼ねる場合もある。
【実施例0016】
(1)全体構成
図2は本実施例の予測保守システム10の全体構成を示すものであり、障害予測装置200と保守部品管理発注装置300とから構成されている。また、予測保守システム10は保守センタ130内に設置されている。
まず、障害予測装置200では、各ATMにおいてその動作及び内部状態の詳細が記録された情報(動作ログデータ)を収集する。また、各拠点における過去の障害情報やその復旧情報(いつ、どのような障害が発生し、どのような保守作業を行うことによって復旧することができたか等の情報)を障害予測装置200へ入力して学習することによって、障害予測の機械学習モデルを構築する。
【0017】
次に、構築された機械学習モデルによって、新たに順次収集した各ATMの動作ログデータを用いて、各ATMにて今後起こりうる障害の予測と、その障害を復旧するための処置・必要保守部品の予測を行い、それらを障害予測データとして保守部品管理発注装置300へ入力する。
そして、保守部品管理発注装置300では、取得した障害予測データに基づき、各拠点に対して保有している保守部品の確保指令や、各拠点間での保守部品の融通指令、保守部品ベンダーへの新規発注指令を行うための情報処理を行い、適切なタイミングでそれらを実行する。
(2)障害予測装置
図3に障害予測装置200の構成を示す。本障害予測装置200はATM動作ログ記憶部201とATM障害・保守記録記憶部202と学習モデル構築部203と障害予測処理部204とから構成されている。
【0018】
ATM動作ログ記憶部201は、各エリアに設置されたATM210から、日々の動作状況に関するデータ(動作ログデータ)を収集して記憶する。図4はこの動作ログデータの例であり、ATM210を識別するATMID400と、その動作イベントの発生日時410と、その動作に係るATM210の操作種別420と、その際の障害検知の有無430と、障害内容440と、その際にATM210から出力される複数のエラーコードに対するその有無450と、その際のATM210内部の各種センサが検知した値460と、を有している。
【0019】
ATM障害・保守記録記憶部202は、各ATM210において過去に発生した障害の内容や、その際にどのような保守作業を行ったか、また、どのような保守部品を使用したかといった保守記録220を記憶する。
【0020】
図5はこの障害・保守記録のデータの例であり、ATM210を識別するATMID500と、障害の発生日時510と、その障害の内容520と、その際の復旧作業内容530と、その際に使用した保守部品の種別と個数540と、有している。
【0021】
学習モデル構築部203は、上述のATM動作ログ記憶部201とATM障害・保守記録記憶部202に記憶されたデータを学習用データとして使用し、機械学習モデルを構築する。すなわち、ATM210の動作ログデータに基づき、将来、いつどのような障害が発生しうるか、また、その障害発生時にはどのような保守作業を行うべきか、どのような保守部品がどの程度の数量、必要となるか等を予測する機械学習モデルを構築する。
【0022】
構築された機械学習モデルは、障害予測処理部204へ記憶される。なおこの機械学習モデルの構築は、定期的に行ってモデルを更新していくようにしてもよいし、予測性能の劣化が認められた際に行うようにしてもよい。
【0023】
障害予測処理部204では、上述したATM210の動作ログデータを受信し、機械学習モデルにて障害予測を行い、障害予測データとして保守部品管理発注装置300へ出力する。
(3)保守部品管理発注装置
図6に保守部品管理発注装置300の構成を示す。保守部品管理発注装置300は、障害予測管理テーブル301と、ATMマスターテーブル302と、部品マスターテーブル303と、在庫管理テーブル304と、発注テーブル305と、部品確保テーブル306と、演算処理部320と、から構成されている。なお、上述の各構成は、同一のコンピュータにて実現してもよいし、各テーブルを別の記憶装置にて実現してもよい。
【0024】
図7は障害予測管理テーブル301の一例であって、障害予測装置200から受信した障害予測データを記憶するものである。予測障害ID3011は、予測した複数の障害を識別する情報である。ATMID3012は、その障害が予測されたATM210を識別する情報である。発生予測3013は、その予測した障害の発生日(発生予想日)である。なお、本障害予測管理テーブル301は、この発生予測3013の早い順にソートされている。
【0025】
予測障害3014は、予測された障害の内容である。予測復旧処理3015は、その障害を復旧するための処理内容を予測した結果である。必要部品3016、必要個数3017は、それぞれ予測復旧処理3015で必要となる部品、及びその個数である。
【0026】
手配状況3018は、必要部品3016と必要個数3017がその拠点において確保されているか否か、確保されていない場合は発注の手配ができているか否かなどの状況を示すものであり、障害予測管理テーブル301を作成した初期状態では、基本的には全て「未」となっている。
【0027】
図8はATMマスターテーブル302の一例を示すものであって、ATM210を識別するATMID3021、そのATM210が設置されている店舗等を示す設置場所3022、そのATM210の保守管理等を行う管轄拠点番号3023とその拠点名3024と、を有している。
【0028】
図9は部品マスターテーブル303の一例を示すものであって、保守部品を識別する部品ID3031とその部品名3032、その部品の単価3033、その部品を新規に発注した場合に入手するまでに要するリードタイムを示す標準納期3034、その部品を他の拠点から融通するために梱包や発送時間など含めて必要となる期間を示す拠点間配送納期3035と、を有している。
【0029】
図10は在庫管理テーブル304の一例を示すものであって、拠点番号3041とその拠点名3042おいて保有在庫のある部品番号3043(図9の部品ID3031に対応)とその部品名3044、その在庫個数3045、その拠点におけるその部品の使用頻度3046を有する。使用頻度3046とは、過去の保守作業等において、その拠点において使用した頻度の大小を示すものであって、「大」とあるものは、今後も使用される可能性が高いことを示す。
【0030】
図11は発注テーブル305の一例を示すものであって、発注番号3051、発注部品の識別番号3052(図9の部品ID3031に対応)と発注個数3053、発注を行う予定日3054、その部品が納入される予定納期3055、納品先である拠点を示す保管先倉庫3056と拠点間で保守部品を融通する場合の融通元となる拠点を示す保管元倉庫3057(これらの値は、図8の管轄拠点3023に相当する)、保守部品の購入金金額でもある発注金額3058、備考欄3059を有する。
【0031】
図12は部品確保テーブル306の一例を示すものであって、対象となる拠点3061とその拠点名3062、その拠点で確保すべき部品の部品番号(識別ID)3063とその部品名3064及びその個数である確保数3065、そしてその確保した部品の使用用途3066(図7の予測障害ID3011に対応する)を有する。
(4)処理フロー
図13は本実施例における予測保守システムの全体処理フローであり、主に障害予測装置200による障害予測処理(ステップS1310)と、保守部品管理発注装置300による保守部品管理発注処理(ステップS1320)とから構成されている。
(4-1)障害予測処理(ステップS1310)
障害予測装置200は、前述のように各ATM210からの動作ログデータ(図4)と各拠点における障害復旧データ(図5)を用いて、予測モデルを作成・更新する(ステップS1311)。予測モデルの更新は、例えば、1カ月に1回といったように定期的に実施してもよいし、別途の手段等で予測モデルの性能劣化を検知した際に実施するようにしてもよい。
【0032】
次に、作成した予測モデルを用いて、所定のタイミングで障害予測を行い、障害予測データ(図7に相当)を作成する(ステップS1312)。障害予測データの作成は、毎日実施してもよいし、1週間に1回といったように所定の間隔を空けて実施してもよいが、頻度が高いほど予測に使用する動作ログデータの蓄積量が多くなるため、予測の精度が向上する可能性がある。
(4-2)保守部品管理発注処理(ステップS1320)
保守部品管理発注装置300は、障害予測データ(図7)と各拠点の部品在庫情報(図10)等に基づき、各拠点における在庫部品の確保処理を行う(ステップS1321)。次に、同じく障害予測データと部品在庫情報(図10)等に基づき、各拠点間での在庫部品の融通予約処理を行う(ステップS1322)。そして、上述のいずれの処理においても準備できる見込みのない部品についての発注予約処理を行う(ステップS1323)。
【0033】
さらに、以上の処理によって作成(更新)された発注テーブル(図11)に基づき、発注予定日3054になるとその発注(融通)内容を処理する(ステップS1324)。なお、この発注処理は、保守センタ130の係員等が目視で発注テーブルの内容を参照し、発注(融通)の手配を行うようにしてもよい。
【0034】
次に、上述した在庫部品確保処理(ステップS1321)と拠点間融通処理(ステップS1322)と発注予約処理(ステップS1323)の各処理につき、別のフローチャートを用いて詳細に説明する。
(4-2-1)在庫部品確保処理(ステップS1321)
図14は在庫部品確保処理の詳細を示すフローチャートである。図7に示す障害予測管理テーブル301における予測障害ID(3011)を「i」とし、初期値として「i=1」を設定する(ステップS1401)。そして、予測障害ID(3011)が「1」の予測障害につき、その手配状況3018を確認し、手配ができていない状況(未、XX個不足)であるかを確認する(ステップS1402)。
【0035】
手配ができていれば(ステップS1402でNO)、「i」に「1」を加算し(ステップS1403)、次の予測障害IDについて同様の処理を行う。
【0036】
手配ができていない状況であれば(ステップS1402でYES)、その予測障害に係るATMID(3012)の所在する拠点を図8に示すATMマスターテーブル302から認識し、さらに必要部品3016と必要個数3017がその拠点に在庫するか、図10に示す在庫管理テーブル304を参照して確認する(ステップS1404)。
【0037】
在庫があれば(ステップS1405でYES)、その拠点でその部品を確保すべく、部品確保テーブル(図12)にその内容を記録し(ステップS1406)、障害予測管理テーブル301の手配状況3018と在庫管理テーブル304の在庫数3045を更新する。在庫がなければ(ステップS1405でNO)、「i」に「1」を加算し(ステップS1403)、次の予測障害IDについて同様の処理を行う。
【0038】
そして、全ての予測障害IDについて上述の処理が完了したかを確認し、完了していなければ(ステップS1408でNO)、「i」に「1」を加算し(ステップS1403)、次の予測障害IDについて同様の処理を行う。完了していれば(ステップS1408でYES)、部品確保テーブル(図12)に記録された内容に従い、各拠点に対してその部品の確保を指令する(ステップS1409)。
(4-2-2)拠点間融通処理(ステップS1322)
図15は拠点間融通処理の詳細を示すフローチャートである。図14のフローと同様に、予測障害ID(3011)を「i」とし、初期値として「i=1」を設定する(ステップS1501)。そして、予測障害ID(3011)が「1」の予測障害につき、その手配状況3018を確認し、手配ができていない状況(未、XX個不足)であるかを確認する(ステップS1502)。
【0039】
手配ができていれば(ステップS1502でNO)、「i」に「1」を加算し(ステップS1503)、次の予測障害IDについて同様の処理を行う。
【0040】
手配ができていない状況であれば(ステップS1502でYES)、その予測障害に係るATMID(3012)の所在する拠点を図8に示すATMマスターテーブル302から認識し、さらに必要部品3016と必要個数3017が他の拠点に在庫するか、図10に示す在庫管理テーブル304を参照して確認する(ステップS1504)。在庫がなければ(ステップS1505でNO)、「i」に「1」を加算し(ステップS1503)、次の予測障害IDについて同様の処理を行う。
【0041】
在庫があれば(ステップS1505でYES)、さらに他の複数の拠点において在庫があるかを確認し、複数拠点に在庫があれば(ステップS1506でYES)、その複数の拠点のうちのどこから融通させるか、融通元を決定する(ステップS1507)。
【0042】
ここで、融通元の決定にあたっては、以下のような判定基準を用いる。すなわち、(1)同一部品の在庫数が大きい方の拠点から融通する、(2)その部品の過去の使用頻度が大のフラグ(図10の在庫管理テーブル304における使用頻度3046)があれば、その拠点からは融通しない(将来も使用可能性が高いため)、(3)その他にも同時に融通できる部品がある拠点から融通する。なお、これらの判定基準は適宜、組み合わせたり、優先順位を設定して適用することができる。また、発注テーブル305の予定納期3055と発注数3053、障害予測管理テーブル301の発生予測日3013とを比較し、予測日以前に部品の在庫数が増えることを考慮しても良い。
【0043】
融通元が決定された後、もしくは、1か所の拠点のみに在庫があれば(ステップS1506でNO)、図9に示す部品マスターテーブル303の拠点間配送納期3035を参照し、障害予測管理テーブル301の障害発生予測日3013に融通部品が到着するように逆算して発注(配送手配)日を決定し、図11の発注テーブル305に記録(もしくは更新)する(ステップS1508)。また、上記の処理に従って、障害予測管理テーブル301の手配状況3018と在庫管理テーブル304の在庫数3045を更新する(ステップS1509)。
【0044】
そして、全ての予測障害IDについて上述の処理が完了したかを確認し、完了していなければ(ステップS1510でNO)、「i」に「1」を加算し(ステップS1503)、次の予測障害IDについて同様の処理を行う。完了していれば(ステップS1510でYES)、拠点間融通予約処理は終了する。
(4-2-3)発注予約処理(ステップS1323)
図16は発注予約処理の詳細を示すフローチャートである。図14のフローと同様に、予測障害ID(3011)を「i」とし、初期値として「i=1」を設定する(ステップS1601)。そして、予測障害ID(3011)が「1」の予測障害につき、その手配状況3018を確認し、手配ができていない状況(未、XX個不足)であるかを確認する(ステップS1602)。
【0045】
手配ができていれば(ステップS1602でNO)、「i」に「1」を加算し(ステップS1603)、次の予測障害IDについて同様の処理を行う。
【0046】
手配ができていない状況であれば(ステップS1602でYES)、その予測障害に係るATMID(3012)の所在する拠点を図8に示すATMマスターテーブル302から認識し、さらに必要部品3016と必要個数3017を確認し、図9に示す部品マスターテーブル303の標準納期3034を参照し、障害予測管理テーブル301の障害発生予測日3013に融通部品が到着するように逆算して発注日を決定し、図11の発注テーブル305に記録(もしくは更新)する(ステップS1604)。また、上記の処理に従って、障害予測管理テーブル301の手配状況3018を更新する(ステップS1605)。
【0047】
そして、全ての予測障害IDについて上述の処理が完了したかを確認し、完了していなければ(ステップS1606でNO)、「i」に「1」を加算し(ステップS1603)、次の予測障害IDについて同様の処理を行う。完了していれば(ステップS1606でYES)、発注予約処理は終了する。
【0048】
なお、障害予測装置200による障害予測処理(ステップS1310)を定期的に実施した結果、例えば、前回の予測処理とは異なる結果となって、予定していた保守部品が不要となった場合は、発注手配前であればその発注予約を取り消して、それに応じて各種テーブルも更新するようにすればよい。また、発注手配後であれば、その部品については将来の保守用の在庫として確保しておけばよい。
(5)保守部品管理発注処理の例
上述した処理フローに基づき、保守部品管理発注処理の事例につき、各テーブルの内容の推移を中心に説明する。ここで、障害予測装置200にて障害予測処理が完了した時点(以下、初期状態と称する)で、障害予測管理テーブル301は図7に示す内容になっているものとする。ATMマスターテーブル302及び部品マスターテーブル303は、それぞれ図8及び図9に示す内容とする。在庫管理テーブル304は図10に示す内容を初期状態とする。なお、図11に示す発注テーブル、及び、図12に示す部品確保テーブル306は、初期状態では全て空欄になっている。
(5-1)在庫部品確保処理
(5-1-1)予測障害ID=1について
図7に示した障害予測管理テーブル301の予約障害ID(3011)が「1」について検討を行う。
【0049】
ATMID(3012)=ATM789の保守拠点は拠点Dであり、また、保守部品としては部品3が2個と、部品2が24個必要であることがわかる。在庫管理テーブル304を参照すると、拠点Dにおいて部品3は在庫なし、部品2は40個の在庫があることがわかる。よって、拠点Dにおいて部品2につき24個を確保することを決定する。
【0050】
以上により、予約障害ID=1に対応する部品2ついては確保できたので、テーブルの手配状況を「未」から「確保完」へ更新する。また、在庫管理テーブル304の拠点Dにおける部品2の在庫数を「40」から「40-24=16」へ更新する。さらに、部品確保テーブル306に対して、拠点Dにおいて部品2を24個確保するように更新する。
(5-1-2)予測障害ID=2について
ATM567の保守拠点は拠点Cであり、保守部品としては部品1が2個、部品2が36個必要である。在庫管理テーブル304を参照すると、いずれの部品も拠点Cには在庫がなく、確保できないと判定される。また、障害予測管理テーブル301、在庫管理テーブル304、部品確保テーブル306はいずれも更新されない。
(5-1-3)予測障害ID=3について
ATM123の保守拠点は拠点Aであり、予測復旧処理としては(1)モジュール交換と(2)基板交換が必要である。モジュール交換のためには、部品1が2個と、部品2が36個必要であり、在庫管理テーブル304を参照すると、いずれの部品も拠点Aに在庫が有るのでそれらを確保するように決定する。
【0051】
基板交換には部品4が4個と、部品2が40個必要である。在庫管理テーブル304を参照すると、拠点Aに部品4は在庫がなく、部品2は65個の在庫があったが、上述の(1)モジュール交換用に36個確保済みなので、65-36=29個の在庫となっている。したがって、必要個数40個中、29個を確保する。すなわち、11個不足することになる。
【0052】
以上により、障害予測管理テーブル301については、モジュール交換用の部品1及び部品2はいずれも確保できたので、それぞれテーブルの手配状況を「未」から「確保完」へ更新する。また、基板交換用の部品4については確保できていないので、手配状況の更新はないが、部品2については必要個数40個中、29個確保して11個不足するので、手配状況を「未」から「11個不足」へ更新する。
【0053】
また、在庫管理テーブル304の拠点Aにおける部品1の在庫数を「3」から「1」へ、部品2の在庫数を「65」から「0」へ更新する。さらに、部品確保テーブル306に対して、拠点Aにおいて部品1を2個、部品2を36個(モジュール交換用)、部品2を29個(基板交換用)確保するように更新する。
(5-1-4)予測障害ID=4について
ATM789の保守拠点は拠点Dであり、保守用部品としては部品4が2個と、部品2が20個必要である。在庫管理テーブル304を参照すると、拠点Dにおいて部品4は在庫なし、部品2は当初40個在庫したものの上述の処理にて16個の在庫となっている(4個不足)。
【0054】
したがって、拠点Dにおいて部品2につき16個確保すると決定し、障害予測管理テーブル301の部品2の手配状況を「未」から「4個不足」へ更新する。また、在庫管理テーブル304の拠点Dにおける部品2の在庫数を「16」から「0」へ更新するとともに、部品確保テーブル306の拠点Dにおいて部品2を16個確保するように更新する。
【0055】
以上の部品確保処理が完了すると、障害予測管理テーブル301、在庫管理テーブル304、部品確保テーブル306は、図17に示す障害予測管理テーブル301A、在庫管理テーブル304A、部品確保テーブル306Aの内容へ更新される。
(5-2)拠点間融通処理
(5-2-1)予測障害ID=1について
図17に示す障害予測管理テーブル301Aによれば、予測障害ID=1では拠点4において部品3が2個、拠点4で確保できていないため、他の拠点から融通できないか検討する。在庫管理テーブル304Aによれば、部品3は拠点1と拠点2のいずれにも必要個数の在庫があることがわかる。よって、どちらの拠点から融通させるかを検討する。
【0056】
ここで、拠点1では部品3の使用頻度が「大」となっているので、拠点1からの融通はしないこととし、拠点2から融通させることに決定する。そして、図9の部品マスターテーブル303の拠点間配送納期3035を参照し、納期として10日要すること確認し、障害予測日(発生予測3013)の2023年1月10日に到着するように、納期の10日間を逆算した2022年12月31に配送を手配するように予約する。なお、発生予測日の当日でなく、余裕をみてその1日~1週間程度前に到着するように配送を手配するようにしてもよい。
【0057】
以上の処理に伴い、発注テーブル305に上述の発注予約内容を記録する。また、障害予測管理テーブル301Aの部品3について、手配状況を「未」から「融通予約済み」へ更新する。さらに、在庫管理テーブル304Aの拠点2の部品3の在庫数を「2」から「0」へ更新する。
(5-2-2)予測障害ID=2について
障害予測管理テーブル301Aによれば、予測障害ID=2では拠点3において部品1が2個と、部品2が36個必要であり、これらが他の拠点から融通できないか検討する。
【0058】
部品1については拠点1に1個在庫があるので、拠点1から1個のみ融通し(1個不足)、部品2は他拠点にも在庫がなく融通不可能と判断する。部品マスターテーブル303より、部品1の拠点間配送納期は7日と確認し、障害予測日(発生予測3013)の2023年2月1日に到着するように、納期の7日間を逆算した2023年1月23日に配送を手配するように予約する。
【0059】
以上の処理に伴い、発注テーブル305に上述の発注予約内容を記録する。また、障害予測管理テーブル301の部品1について、手配状況を「未」から「1個不足」へ更新する。さらに、在庫管理テーブル304Aの拠点1の部品1の在庫数を「1」から「0」へ更新する。
(5-2-3)予測障害ID=3について
拠点1において入手の手配ができていない部品4を4個と、部品2を11個、他拠点から融通できないか検討する。
【0060】
在庫管理テーブル304によれば、部品4は拠点3から融通可能であり、部品2は他のいずれの拠点にも在庫がなく融通不可能であると判断する。部品マスターテーブル303より、部品4の拠点間配送納期は5日と確認し、障害予測日(発生予測3013)の2023年2月20日に到着するように、納期の5日間を逆算した2023年2月15日に配送を手配するように予約する。
【0061】
以上の処理に伴い、発注テーブル305に上述の発注予約内容を記録する。また、障害予測管理テーブル301の部品4について、手配状況を「未」から「融通予約済」へ更新する。さらに、在庫管理テーブルの拠点3の部品4の在庫数を「4」から「0」へ更新する。
(5-2-4)予測障害ID=4について
拠点4において入手の手配ができていない部品4を2個と、部品2を4個、他の拠点から融通できないか検討する。在庫管理テーブル304によれば、どちらの部品も、いずれの拠点にも在庫がなく融通不可能と判断する。
【0062】
以上の拠点間融通処理が完了すると、障害予測管理テーブル301A、在庫管理テーブル304Aは、図18に示すように、障害予測管理テーブル301B、在庫管理テーブル304Bの内容へ更新される。また、発注テーブル305Bが作成される。
(5-3)発注予約処理
(5-3-1)予測障害ID=2について
拠点3において入手の手配ができていない部品1を1個と、部品2を36個発注する。発生予測日(2023年2月1日)から逆算し、部品マスターテーブル303の納期を参照して発注日を計算する。そして、部品1は2022年12月20日に発注し、部品2は2023年1月1日に発注するように予約を手配するよう決定する。
【0063】
以上により、障害予測管理テーブル301Bの部品1、2について、それぞれ手配状況を「未」から「発注予約済」へ更新する。また、発注テーブル305Bに、上記の部品1、2の発注予約を記録する。
(5-3-2)予測障害ID=3について
同様にして、部品2を11個発注する。発注予定日は2023年1月20日とする。障害予測管理テーブル301Bの部品1について、手配状況を「11個不足」から「発注予約済」へ更新する。発注テーブル305Bに、上述の部品1の発注予約を記録する。
(5-3-3)予測障害ID=4について
同様にして、部品4を2個と、部品2を4個発注する。発注予定日はそれぞれ2023年1月1日及び2023年2月1日とする。障害予測管理テーブル301Bの部品4について、手配状況を「未」から「発注予約済」へ更新し、部品2ついて、手配状況を「4個不足」から「発注予約済」へ更新する。発注テーブル305Bに、上述の部品4及び部品2の発注予約を記録する。
【0064】
以上の拠点間融通処理が完了すると、障害予測管理テーブル301B、発注テーブル305Bは、図19に示す障害予測管理テーブル301C、発注テーブル305Cの内容へ更新される。
(6)本実施例の効果
上述した本実施例によれば、障害予測装置200によって障害発生の時期とその内容、及びそれを復旧するために必要となる保守部品と数量を予測し、保守部品管理発注装置によって保守部品が必要となる時期に合わせて保守部品が入手できるように発注のタイミングを調整し、保守拠点間で保守部品を融通し合うことができるため、適切な時期に滞りなく必要となる保守部品を各拠点にて入手することが可能となる。
【0065】
また、各拠点間で保守部品を融通し合うことによって、保守部品の在庫の有効活用が可能となる。さらに、各拠点において必要となる時期に入手できるように発注タイミングを調整するため、保守部品の保管スペースを不必要に圧迫することがなくなるといった効果が期待できる。
【実施例0066】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
【0067】
前述の第1実施例においては、保守部品の保管スペースを不必要に圧迫することがないよう、障害発生が予測される時期に合わせて保守部品が到着するように配送を手配していたが、障害発生予測日当日に到着するようにした場合、万が一、配送中のトラブル等によって保守部品の到着が遅れたり、保守部品の製造元の都合等によりリードタイムが予想外に延びた場合など、必要な時期に保守部品の入手が遅れ、保守作業自体が遅延する可能性もある。
【0068】
そこで本実施例では、各拠点における保守部品の保管スペースの空き容量が十分に確保されている場合は、直ちに発注処理を行い、前倒しで保守部品をその拠点で確保するようにしている。
【0069】
図20は本発明の第2の実施例における保守部品管理発注装置300Aの構成を示す図である。図6に示した第1実施例における保守部品管理発注装置300との相違点は、拠点管理テーブル307が追加されている点と、部品マスターテーブル303に部品の梱包サイズに関する情報が追加された点である。
【0070】
図21に拠点管理テーブル307の例を示す。各拠点の拠点ID3071と、その拠点名3072と、使用予定の保守部品等を格納保管する倉庫の空きスペースを示す、倉庫空き容量3073を有している。また、倉庫空き容量3073は、倉庫の空き具合に応じて随時更新される。
【0071】
図22に部品マスターテーブル303Aの例を示す。図6の部品マスターテーブル303に対して、その部品を梱包した際の容量を示す梱包サイズ3036が追加されている。
【0072】
例えば、部品ID=1のモジュールについて見ると、梱包サイズ3036は「20」であり、拠点ID=1の拠点Aでは倉庫空き容量3073が「25」であるため、モジュール部品は1個であれば倉庫に格納可能であるが、2個以上は格納不可能であることがわかる。
【0073】
図23は本実施例における拠点間融通予約処理のフローを説明するフローチャートである。図15に示した第1実施例における拠点間融通予約処理のフローとの相違点は、保管倉庫の空き容量に応じて処理を変えているステップS2318以降の処理であり、それ以前の処理(ステップS2311~S2317)については図15と同一であるため、説明は省略する。
【0074】
図23のステップS2318において、その拠点で融通される部品の種類と数量につき、図22の部品マスターテーブル303Aの梱包サイズ3036を参照し、保管に必要となるスペースを計算する。そして、その拠点の空きスペースを、図21の拠点管理テーブル307の倉庫空き容量3073を参照して確認する。
【0075】
その結果、保管倉庫に空スペースがあると判定した場合(ステップS2318でYES)は、発注タイミングの調整はせずに直ちに発注(配送)を手配する(ステップS2319)。そして、それに応じて拠点管理テーブル304の倉庫空き容量3073を更新し(ステップS2320)、障害予測管理テーブル301の手配状況3018も「未」から「融通手配済み」へ更新すると共に在庫管理テーブル304も更新する(ステップS2322)。
【0076】
保管倉庫に空スペースがないと判定した場合(ステップS2318でNO)は、第1実施例(図5)のステップS1508、S1509と同様に、部品マスターテーブル303Aの拠点間配送納期3035を参照し、障害予測日に到着するように発注(配送)を予約すべく、発注テーブル305Cを更新する(ステップS2321)。そして、それに応じて障害予測管理テーブル301と在庫管理テーブル304を更新する(ステップS2322)。
【0077】
そして、全ての予測障害IDについて上述の処理が完了したかを確認し、完了していなければ(ステップS2324でNO)、「i」に「1」を加算し(ステップS2313)、次の予測障害IDについて同様の処理を行う。完了していれば(ステップS2324でYES)、拠点間融通予約処理は終了する。
【0078】
図24は本実施例における発注予約処理のフローを説明するフローチャートである。図16に示した第1実施例における発注予約処理のフローとの相違点は、保管倉庫の空き容量に応じて処理を変えているステップS2415以降の処理である。
【0079】
すなわち、図24のステップS2415において、その拠点で融通される部品の種類と数量につき、図22の部品マスターテーブル303Aの梱包サイズ3036を参照し、保管に必要となるスペースを計算する。そして、その拠点の空きスペースを、図21の拠点管理テーブル307の倉庫空き容量3073を参照して確認する。
【0080】
その結果、保管倉庫に空スペースがあると判定した場合(ステップS2415でYES)は、発注タイミングの調整はせずに直ちに発注を手配する(ステップS2416)。そして、それに応じて拠点管理テーブル304の倉庫空き容量3073を更新し(ステップS2417)、障害予測管理テーブル301の手配状況3018も「未」から「発注手配済み」へ更新する(ステップS2419)。
【0081】
保管倉庫に空スペースがないと判定した場合(ステップS2415でNO)は、第1実施例(図6)のステップS1604、S1605と同様に、部品マスターテーブル303Aの標準納期3035を参照し、障害予測日に到着するように発注を予約すべく、発注テーブル305Cを更新する(ステップS2418)。そして、それに応じて障害予測管理テーブル301を更新する(ステップS2419)。
【0082】
そして、全ての予測障害IDについて上述の処理が完了したかを確認し、完了していなければ(ステップS2420でNO)、「i」に「1」を加算し(ステップS2413)、次の予測障害IDについて同様の処理を行う。完了していれば(ステップS2420でYES)、発注予約処理は終了する。
【0083】
以上説明したように本実施例によれば、各拠点における保守部品の保管スペースの空き容量が十分に確保されている場合は、直ちに発注処理を行い、前倒しで保守部品をその拠点で確保するようにしているので、配送中のトラブル等によって保守部品の配送に想定外の時間を要したり、保守部品の製造元の都合等によりリードタイムが予想外に延びた場合などにおいても、必要な時期に保守部品を確実に入手することができる。
【符号の説明】
【0084】
10:予測保守システム
100:地域(エリア)
111:ATM123
112:ATM345
113:ATM567
114:ATM789
121:拠点A
122:拠点B
123:拠点C
124:拠点D
130:保守センタ
200:障害予測装置
300:保守部品管理発注装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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