(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025141799
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】有機化合物及び有機発光素子
(51)【国際特許分類】
C07D 403/04 20060101AFI20250919BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20250919BHJP
C07D 471/04 20060101ALI20250919BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20250919BHJP
H10K 85/30 20230101ALI20250919BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20250919BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20250919BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20250919BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20250919BHJP
H10K 59/65 20230101ALI20250919BHJP
H10K 71/13 20230101ALI20250919BHJP
H10K 71/12 20230101ALI20250919BHJP
H10K 59/95 20230101ALI20250919BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20250919BHJP
H10K 101/40 20230101ALN20250919BHJP
【FI】
C07D403/04 CSP
C09K11/06 690
C07D471/04 104Z
H10K59/12
H10K85/30
H10K85/60
H10K50/12
H10K50/15
H10K50/16
H10K59/65
H10K71/13
H10K71/12
H10K59/95
G09F9/30 365
G09F9/30 338
H10K101:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024230588
(22)【出願日】2024-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2024038939
(32)【優先日】2024-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】田中 紅音
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB04
3K107BB08
3K107CC04
3K107CC45
3K107DD53
3K107DD59
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3K107DD67
3K107DD68
3K107DD69
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3K107DD71
3K107DD74
3K107EE03
3K107EE61
3K107EE65
3K107EE68
3K107FF14
3K107FF20
5C094AA07
5C094AA43
5C094BA03
5C094BA29
5C094CA19
5C094FB01
5C094GB10
5C094HA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外部量子効率が優れた有機発光素子を構成するための有用な有機化合物の提供。
【解決手段】下記式(1)で表される有機化合物。
A-B(1)
式(1)において、Aは式(2)で表され、Bは式(3)で表される。式(2)において、Xのうちの一つはBと結合する炭素原子であり、Xのうちの他は、窒素原子等である。式(3)において、R
1乃至R
3は、水素原子、アルキル基等であり、nは1又は2であり、mおよびpは0以上2以下の整数である。*は、Aへの結合位置を示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする有機化合物。
A-B (1)
(一般式(1)において、Aは下記一般式(2)で表され、Bは下記一般式(3)で表される。)
【化1】
(一般式(2)において、Xのうちの一つはBと結合する炭素原子であり、Xのうちの他は、それぞれ独立して、C-Rまたは窒素原子である。Rは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のシクロアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロアリール基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換のヘテロアリールオキシ基、置換または無置換のシリル基、置換または無置換のアルコキシカルボニル基、置換または無置換のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる。隣り合うR同士は結合して環を形成してもよい。)
【化2】
(一般式(3)において、R
1乃至R
3は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のシクロアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロアリール基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換のヘテロアリールオキシ基、置換または無置換のシリル基、置換または無置換のアルコキシカルボニル基、置換または無置換のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる。
nは1又は2であり、mおよびpはそれぞれ0以上2以下の整数である。
*は、前記Aへの結合位置を示す。)
【請求項2】
前記Aは、下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項1に記載の有機化合物。
【化3】
(一般式(4)において、*は、前記Bへの結合位置を示す。)
【請求項3】
前記Aは、下記一般式(5)または(5a)で表されることを特徴とする請求項2に記載の有機化合物。
【化4】
(一般式(5)において、Xは、C-Rである。
一般式(5a)において、Xは、C-Rである。
Yは、O、S、NR’又はCR’’R’’’である。R’、R’’、R’’’は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のシクロアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロアリール基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換のヘテロアリールオキシ基、置換または無置換のシリル基、置換または無置換のアルコキシカルボニル基、置換または無置換のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる。)
【請求項4】
前記Bは、下記一般式(6)で表されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機化合物。
【化5】
(一般式(6)において、mとpの合計は1以上の整数である。)
【請求項5】
前記Aは、下記一般式(7)で表されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機化合物。
【化6】
(一般式(7)において、*は、Bへの結合位置を示す。)
【請求項6】
下記式(55)乃至(57)の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機化合物。
【化7】
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の有機化合物と、有機金属錯体とを含有することを特徴とする発光性組成物。
【請求項8】
前記有機金属錯体の前記有機化合物に対する濃度が、5質量%以上10質量%以下であることを特徴とする請求項7に記載の発光性組成物。
【請求項9】
さらに、有機溶剤を含有することを特徴とする請求項7に記載の発光性組成物。
【請求項10】
前記有機溶剤の含有量は、発光性組成物全質量を基準として、85質量%以上95質量%以下であることを特徴とする請求項9に記載の発光性組成物。
【請求項11】
第一電極と第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間に配置されている有機化合物層を有する有機発光素子であって、
前記有機化合物層の少なくとも一層は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機化合物を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項12】
前記有機化合物を有する層は発光層であり、前記発光層は、有機金属錯体をさらに有し、
前記有機化合物の最低励起三重項エネルギーは、前記有機金属錯体の最低励起三重項エネルギー以上であることを特徴とする請求項11に記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記第一電極と前記発光層の間に第一電荷輸送層を有し、前記第二電極と前記発光層の間に第二電荷輸送層を有することを特徴とする請求項12に記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記第一電荷輸送層のうち前記第一電極と接する層の最低励起三重項エネルギーは、前記有機化合物の最低励起三重項エネルギーよりも大きく、かつ、前記第二電荷輸送層のうち前記第二電極と接する層の最低励起三重項エネルギーは、前記有機化合物の最低励起三重項エネルギーよりも大きいことを特徴とする請求項13に記載の有機発光素子。
【請求項15】
複数の画素を有し、前記複数の画素の少なくとも一つが、請求項11に記載の有機発光素子と、前記有機発光素子に接続されたトランジスタと、を有することを特徴とする表示装置。
【請求項16】
複数のレンズを有する光学部と、前記光学部を通過した光を受光する撮像素子と、前記撮像素子が撮像した画像を表示する表示部と、を有し、
前記表示部は請求項11に記載の有機発光素子を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項17】
請求項11に記載の有機発光素子を有する表示部と、前記表示部が設けられた筐体と、前記筐体に設けられ、外部と通信する通信部と、を有することを特徴とする電子機器。
【請求項18】
請求項11に記載の有機発光素子を有する光源と、前記光源が発する光を透過する光拡散部または光学フィルタと、を有することを特徴とする照明装置。
【請求項19】
請求項11に記載の有機発光素子を有する灯具と、前記灯具が設けられた機体と、を有することを特徴とする移動体。
【請求項20】
感光体と、前記感光体を露光する露光光源と、を有し、
前記露光光源は、請求項11に記載の有機発光素子を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項21】
請求項7に記載の発光性組成物を基材に付与する工程を含むことを特徴とする有機発光素子の製造方法。
【請求項22】
前記発光性組成物を基材に付与する工程は、前記発光性組成物を塗布法又は印刷法によって基材に付与する工程であることを特徴とする請求項21に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項23】
前記塗布法は、スピンコート法、キャスト法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法またはスリットコーター法であることを特徴とする請求項22に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項24】
前記印刷法は、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法またはインクジェット法であることを特徴とする請求項22に記載の有機発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物及び有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(以下、「有機発光素子」と称する場合がある。)は、第1電極及び第2電極の一対の電極と、これらの一対の電極間に配置される有機化合物層とを有する電子素子である。有機発光素子は、一対の電極から電子及び正孔を有機化合物層へと注入することで、有機化合物層中の発光性を持つ有機化合物を基底状態から励起状態へと活性化し、この励起状態から基底状態に戻る際に余剰となるエネルギーを光として放出するものである。有機発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子、あるいは有機EL素子とも呼ばれる。
有機発光素子の各種特性向上のため、有機化合物層を構成する化合物に様々な工夫がなされている。特許文献1に記載の化合物1は、ヘテロアリール基を含む特定のカルバゾール誘導体であり、その化合物を構成成分として含む有機発光素子は印加電圧や外部量子効率を改善させることが開示されている。
【0003】
【化1】
有機発光素子は、有機化合物層や無機化合物層、電極などの各種の機能層を形成するための化合物を、高真空下で基板に加熱蒸着する、いわゆる蒸着法による製造が主流である。一方、近年では、材料利用効率、製造コストなどの観点から印刷法も検討されている。特許文献2には、印刷法で有機化合物層を構成する化合物に対して、メタ位で直鎖状に連結するオリゴフェニレン構造を結合させた化合物が記載されており、有機溶剤への溶解性を向上させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/157574号
【特許文献2】特開2016-88927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1及び2に記載された化合物の各種特性を調査した。その結果、特許文献1に記載の化合物1は、いまだ外部量子効率が満足すべきレベルに至っていないことが分かった。また、特許文献2に記載の化合物は有機溶剤への溶解性は可溶という特徴はあるものの、外部量子効率に課題があることが分かった。
したがって、本発明の目的は、外部量子効率が優れた有機発光素子を構成するための有用な有機化合物を提供することにある。また、本発明の別の目的は、有機溶剤への溶解性にも優れた有機化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の有機化合物は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
A-B (1)
(一般式(1)において、Aは下記一般式(2)で表され、Bは下記一般式(3)で表される。)
【0007】
【化2】
(一般式(2)において、Xのうちの一つはBと結合する炭素原子であり、Xのうちの他は、それぞれ独立して、C-Rまたは窒素原子である。Rは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のシクロアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロアリール基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換のヘテロアリールオキシ基、置換または無置換のシリル基、置換または無置換のアルコキシカルボニル基、置換または無置換のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる。隣り合うR同士は結合して環を形成してもよい。)
【0008】
【化3】
(一般式(3)において、R
1乃至R
3は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のシクロアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロアリール基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換のヘテロアリールオキシ基、置換または無置換のシリル基、置換または無置換のアルコキシカルボニル基、置換または無置換のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる。
nは1又は2であり、mおよびpはそれぞれ0以上2以下の整数である。
*は、前記Aへの結合位置を示す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外部量子効率が優れた有機発光素子の電荷輸送材料として有用な有機化合物を提供することができる。また、本発明によれば、有機溶剤への溶解性にも優れた有機化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)本発明の一実施形態に係る表示装置の画素の一例を表す概略断面図である。(b)本発明の一実施形態に係る有機発光素子を用いた表示装置の一例の概略断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。
【
図3】(a)本発明の一実施形態に係る撮像装置の一例を表す模式図である。(b)本発明の一実施形態に係る電子機器の一例を表す模式図である。
【
図4】(a)本発明の一実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。(b)折り曲げ可能な表示装置の一例を表す模式図である。
【
図5】(a)本発明の一実施形態に係る照明装置の一例を示す模式図である。(b)本発明の一実施形態に係る車両用灯具を有する移動体の一例を示す模式図である。
【
図6】(a)本発明の一実施形態に係るウェアラブルデバイスの一例を示す模式図である。(b)本発明の一実施形態に係るウェアラブルデバイスの他の例を示す模式図である。
【
図7】(a)本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例を表す模式図である。(b)(c)本発明の一実施形態に係る画像形成装置の露光光源の一例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱しない限り、その形態及び詳細を様々に変更しうることは当業者に容易に理解される。すなわち、本発明は、以下の説明により限定して解釈されることはない。
【0012】
本発明者らが鋭意検討したところ、下記一般式(2)で表されるユニットは、優れた電子輸送能を示すものの、このユニットのみを含む化合物は、有機薄膜の結晶化によるトラップサイト形成により、有機発光素子の外部量子効率が低下する事が判明した。一方で、一般式(2)で表されるユニットに、特定のオリゴフェニレン骨格、即ち、下記一般式(3)で表されるユニットを導入した化合物、特に、特定の部位に導入した化合物は、外部量子効率が向上することを見出した。
【0013】
本発明に係る化合物は、下記一般式(1)で表され、一般式(2)で表されるユニットと、一般式(3)で表されるユニットとを含むことを特徴とし、好ましくは、特定の位置に一般式(3)で表されるユニットを有する。このような骨格を持つことで、有機薄膜の結晶化によるトラップサイトの形成を抑制できるだけでなく、好ましくは特定の位置に結合させることで分子配向を制御し、有機発光素子の外部量子効率を向上させられるものと推察する。
【0014】
≪有機化合物≫
本実施形態の有機化合物は、下記一般式(1)で表される。
A-B (1)
【0015】
<A>
一般式(1)中、Aは下記一般式(2)で表される。
【0016】
【0017】
[X]
一般式(2)において、Xのうちの一つはBと結合する炭素原子であり、Xのうちの他は、それぞれ独立して、C-Rまたは窒素原子である。Xのうちの他は、好ましくはC-Rである。
【0018】
Rは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のシクロアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロアリール基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換のヘテロアリールオキシ基、置換または無置換のシリル基、置換または無置換のアルコキシカルボニル基、置換または無置換のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる。隣り合うR同士は結合して環を形成してもよい。
【0019】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。なかでも、熱的安定性の観点から、フッ素原子が好ましい。
【0020】
アルキル基としては、炭素数1以上30以下、好ましくは炭素数1以上6以下の、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられる。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ヘキシル基などが挙げられる。
【0021】
シクロアルキル基としては、炭素数3以上12以下、好ましくは炭素数3以上6以下の、単環又は複環のシクロアルキル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、具体的には、シクロプロピル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0022】
アルコキシ基としては、炭素数1以上20以下、好ましくは炭素数1以上6以下のアルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、2-エチル-オクチルオキシ基などが挙げられる。
【0023】
アリール基としては、炭素数6以上30以下のアリール基が挙げられ、単環であっても、縮合環であってもよい。アリール基としては、具体的には、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、フェナンスレニル基、アントラセニル基などが挙げられる。
【0024】
ヘテロアリール基としては、環を構成する原子数が3以上15以下のヘテロアリール基が挙げられ、単環であっても、縮合環であってもよい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、及びゲルマニウム原子などが挙げられ、これらの複数の原子が含まれていてもよい。ヘテロアリール基としては、具体的には、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾリル基、ジベンゾチエニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリ基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントロリル基などが挙げられる。
【0025】
アリールオキシ基としては、アリール部分の炭素数が6以上30以下のアリールオキシ基が挙げられる。アリールオキシ基としては、具体的には、フェノキシ基、ナフトキシ基などが挙げられる。
【0026】
ヘテロアリールオキシ基としては、ヘテロアリール部分の環を構成する原子数が3以上15以下のヘテロアリールオキシ基が挙げられ、単環であっても、縮合環であってもよい。ヘテロ原子としては、ヘテロアリール基のヘテロ原子と同様のものが挙げられる。ヘテロアリールオキシ基としては、具体的には、ピリジルオキシ基、ピリミジルオキシ基、ピラジルオキシ基、トリアジルオキシ基、ベンゾフリルオキシ基、ジベンゾフリルオキシ基、ベンゾチエニルオキシ基、ジベンゾチエニルオキシ基、ピリルオキシ基、インドリルオキシ基、N-メチルカルバゾリルオキシ基などが挙げられる。
【0027】
シリル基は、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基が、ケイ素原子に置換した基であることが好ましい。シリル基としては、トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基などが挙げられる。なかでも、炭素数1以上6以下のアルキル基、又は炭素数6以上10以下のアリール基が置換したシリル基が好ましい。具体的には、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
【0028】
アルコキシカルボニル基としては、炭素数2以上20以下のアルコキシカルボニル基が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0029】
アシル基としては、炭素数1以上20以下のアシル基が挙げられる。アシル基としては、具体的には、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
【0030】
アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、シリル基、アルコキシカルボニル基、アシル基が有してもよい置換基としては、重水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、シリル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、シアノ基等が挙げられる。有してもよい置換基としてのハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、シリル基、アルコキシカルボニル基、アシル基の具体例としては、上記各基について説明したものと同様のものが挙げられる。
【0031】
Aは、下記一般式(4)で表されることが好ましく、下記一般式(5)または(5a)で表されることがより好ましく、下記一般式(7)で表されることがさらに好ましい。
【0032】
【化5】
一般式(4)において、*は、Bへの結合位置を示す。
【0033】
【化6】
一般式(5)において、Xは、C-Rである。*は、Bへの結合位置を示す。
【0034】
一般式(5a)において、Xは、C-Rである。*は、Bへの結合位置を示す。
【0035】
[Y]
一般式(5a)において、Yは、酸素原子、硫黄原子、N-R’、C―R’’R’’’である。中でも、Yが酸素原子または硫黄原子であれば、電子移動性が高くなるため、より本実施形態の効果を奏することができる。
【0036】
R’、R’’、R’’’は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のシクロアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロアリール基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換のヘテロアリールオキシ基、置換または無置換のシリル基、置換または無置換のアルコキシカルボニル基、置換または無置換のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる。
【0037】
アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、シリル基、アルコキシカルボニル基、アシル基としては、上記Xについて説明したものと同様のものが挙げられる。
【0038】
【化7】
一般式(7)において、*は、Bへの結合位置を示す。
【0039】
<B>
一般式(1)中、Bは下記一般式(3)で表される。一般式(3)において、*は、Aへの結合位置を示す。
【0040】
【0041】
[R1乃至R3]
一般式(3)において、R1乃至R3は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のシクロアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロアリール基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換のヘテロアリールオキシ基、置換または無置換のシリル基、置換または無置換のアルコキシカルボニル基、置換または無置換のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる。
【0042】
ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、シリル基、アルコキシカルボニル基、アシル基としては、上記Xについて説明したものと同様のものが挙げられる。
【0043】
アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、シリル基、アルコキシカルボニル基、アシル基が有してもよい置換基としては、上記Xについて説明したものと同様のものが挙げられる。
【0044】
[n,m,p]
nは1又は2であり、mおよびpはそれぞれ0以上2以下の整数である。n、m、pをこの範囲とすることで、本実施形態の有機化合物が有機化合物層中で密に充填され、電荷輸送能を十分に保ち、外部量子効率を高めることができる。さらに高い外部量子効率を望むためには、mは1または2であることがより好ましい。また、mとpの合計は1以上の整数であってよく、その場合、mが0以上の整数でありpが1以上の整数であってもよく、mが1以上の整数でありpが0以上の整数であってもよい。
【0045】
Bは、下記一般式(6)で表されることが好ましい。
【0046】
【化9】
一般式(6)において、mとpの合計は1以上の整数である。
【0047】
<具体例>
以下に化合物の具体例を示す。勿論、本発明においては、一般式(1)の定義に包含されるものであれば、以下の具体例に限定されない。下記例示化合物のうちでも、例示化合物55乃至57が特に好ましい。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
<合成方法>
本実施形態の有機化合物は、公知の方法に基づいて合成することができる。例示化合物5の場合を例にとり、合成スキームの一例を以下に示す。
【0052】
【0053】
【0054】
≪有機発光素子(有機電界発光素子)≫
本実施形態に係る有機発光素子、は、一対の電極である第一電極と第二電極と、これら電極間に配置される有機化合物層と、を少なくとも有する。本実施形態の有機発光素子において、有機化合物層は発光層を有していれば単層であってもよいし複数層からなる積層体であってもよい。一対の電極は陽極と陰極であってよい。
【0055】
ここで有機化合物層が複数層からなる積層体である場合、有機化合物層は、発光層を有してよい。有機化合物層は、発光層の他に、ホール注入層、ホール輸送層、電子ブロッキング層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等を有してもよい。また発光層は、単層であってもよいし、複数の層からなる積層体であってもよい。ホール輸送層、電子輸送層は、電荷輸送層とも称される。
【0056】
本実施形態の有機発光素子において、有機化合物層の少なくとも一層に本実施形態の有機化合物が含有されている。本実施形態の有機化合物は、好ましくは発光層に含有される。第一電極と発光層との間の輸送層をまとめて、第一電荷輸送層ということができる。第二電極と発光層との間の輸送層をまとめて、第二電荷輸送層ということができる。すなわち、発光層は、第一電荷輸送層と接し、第二電荷輸送層と接しているということができる。第一電荷輸送層のうち第一電極と接する層の最低励起三重項エネルギーは、本実施形態の有機化合物の最低励起三重項エネルギーよりも大きいことが好ましい。また、第二電荷輸送層のうち第二電極と接する層の最低励起三重項エネルギーは、本実施形態の有機化合物の最低励起三重項エネルギーよりも大きいことが好ましい。電荷輸送層の最低励起三重項エネルギーは、その層の構成材料の最低励起三重項エネルギーで見積もることができる。電荷輸送層が複数の材料で構成される場合には、質量比が大きい化合物の最低励起三重項エネルギーであってよい。
【0057】
本実施形態の有機化合物が発光層に含まれる場合、発光層は、本実施形態に係る有機化合物のみからなる層であってもよいし、本実施形態の有機化合物の他に、有機金属錯体と、他の有機化合物とを有する層であってもよい。本実施形態の有機化合物の最低励起三重項エネルギーは、有機金属錯体の最低励起三重項エネルギー以上であることが好ましく、有機金属錯体の最低励起三重項エネルギーより大きいことがさらに好ましい。他の有機化合物は、最低励起三重項エネルギーが、有機金属錯体の最低励起三重エネルギー以上、本実施形態の有機化合物の最低励起三重項エネルギー以下であってよい。ここで、発光層が、本実施形態の有機化合物と、有機金属錯体と、他の有機化合物を有する層である場合、本実施形態の有機化合物は発光層のホストであってよい。また有機金属錯体は、ゲストまたはドーパントであってよい。他の有機化合物は、アシスト材料であってよい。ここで、ホストとは、発光層を構成する化合物の中で質量比が最も大きい化合物である。また、ゲストまたはドーパントとは、発光層を構成する化合物の中で質量比がホストよりも小さい化合物であって、主たる発光を担う化合物である。またアシスト材料とは、発光層を構成する化合物の中で質量比がホストよりも小さく、ゲストの発光を補助する化合物である。なお、アシスト材料は、第2のホストとも呼ばれている。
【0058】
ここで、有機金属錯体を発光層のゲストとして用いる場合、ゲストの濃度は、ホストの質量に対して0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0059】
本発明者らは種々の検討を行い、本実施形態に係る有機化合物を発光層のホストとして用いると、効率が高いことを見出した。この発光層は単層でも複層でも良いし、他の発光色を有する発光材料を含むことで本実施形態の発光色と混色させることも可能である。複層とは複数の発光層が積層している状態を意味する。この場合、有機発光素子の発光色は単層の発光色と同じ色相に限られない。より具体的には白色でもよいし、中間色でもよい。白色の場合、各発光層で赤色、青色、緑色を発光することで白色とする場合もあるし、補色関係にある発光色の組み合わせによる白色とする場合もある。
【0060】
本実施形態に係る有機化合物は、有機発光素子を構成する発光層以外の有機化合物層の構成材料としても使用することができる。具体的には、電子輸送層、電子注入層、ホール輸送層、ホール注入層、ホールブロッキング層等の構成材料として用いてもよい。
【0061】
<他の化合物>
本実施形態に係る有機発光素子を製造する場合、必要に応じて従来公知の低分子系及び高分子系のホール注入性化合物あるいはホール輸送性化合物、ホストとなる化合物、発光性化合物、電子注入性化合物あるいは電子輸送性化合物等を一緒に使用することができる。以下にこれらの化合物例を挙げる。
【0062】
ホール注入輸送性材料としては、陽極からのホールの注入を容易にして、かつ注入されたホールを発光層へ輸送できるようにホール移動度が高い材料が好ましい。また有機発光素子中において結晶化等の膜質の劣化を低減するために、ガラス転移点温度が高い材料が好ましい。ホール注入輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、アリールカルバゾール誘導体、フェニレンジアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリアリールアミン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体、PEDOT-PSSなどの導電性高分子やそれらの共重合体あるいは混合物などが挙げられる。さらに上記のホール注入輸送性材料は、電子ブロッキング層にも好適に使用される。以下に、ホール注入輸送性材料として用いられる化合物の具体例を示すが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0063】
【0064】
【0065】
主に発光機能に関わる有機金属錯体は、三重項励起状態から発光することのできる化合物であり、三重項励起状態から発光する限り特に限定されないが、イリジウム,白金,オスミウム,金,銅,レニウム及びルテニウムから選択される少なくとも一つの金属と配位子とを含む有機金属錯体であることが好ましい。前記配位子は、オルトメタル結合を有することが好ましい。燐光量子収率が高く、発光素子の外部量子効率をより向上させることができるという点で、イリジウム,オスミウム及び白金から選ばれる金属原子を含有する金属錯体が好ましく、イリジウム錯体、オスミウム錯体、白金錯体等の金属錯体、特にオルトメタル化錯体がより好ましく、イリジウム錯体及び白金錯体がさらに好ましく、オルトメタル化イリジウム錯体が特に好ましい。以下に、有機金属錯体として用いられる化合物の具体例を示すが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0066】
【0067】
発光層に含まれるアシスト材料としては、芳香族炭化水素化合物もしくはその誘導体の他、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、トリアジン誘導体、トリス(8-キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機ベリリウム錯体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体などの高分子やそれらの共重合体あるいは混合物などが挙げられる。以下に、発光層に含まれるアシスト材料として用いられる化合物の具体例を示すが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0068】
【0069】
【0070】
電子輸送性材料としては、陰極から注入された電子を発光層へ輸送することができるものから任意に選ぶことができ、ホール輸送性材料のホール移動度とのバランス等を考慮して選択される。電子輸送性能を有する材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機アルミニウム錯体、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、クリセン誘導体、アントラセン誘導体等)が挙げられる。さらに上記の電子輸送性材料は、ホールブロッキング層にも好適に使用される。以下に、電子輸送性材料として用いられる化合物の具体例を示すが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0071】
【0072】
電子注入性材料としては、陰極からの電子注入が容易に可能なものから任意に選ぶことができ、正孔注入性とのバランス等を考慮して選択される。有機化合物としてn型ドーパント及び還元性ドーパントも含まれる。例えば、フッ化リチウム等のアルカリ金属を含む化合物、リチウムキノリノール等のリチウム錯体、ベンゾイミダゾリデン誘導体、イミダゾリデン誘導体、フルバレン誘導体、アクリジン誘導体が挙げられる。
【0073】
<有機発光素子の構成>
有機発光素子は、基板の上に、第一電極、有機化合物層、第二電極を形成して設けられる。基板の上に絶縁層を設けてもよい。第二電極の上には、保護層、カラーフィルタ、マイクロレンズ等を設けてよい。カラーフィルタを設ける場合は、保護層との間に平坦化層を設けてよい。平坦化層はアクリル樹脂等で構成することができる。カラーフィルタとマイクロレンズとの間において、平坦化層を設ける場合も同様である。第一電極、第二電極はいずれかが陽極で、他方が陰極であってよい。
【0074】
[基板]
基板は、石英、ガラス、シリコンウエハ、樹脂、金属等が挙げられる。また、基板上には、トランジスタなどのスイッチング素子や配線を備え、その上に絶縁層を備えてもよい。絶縁層としては、第一電極との間に配線が形成可能なように、コンタクトホールを形成可能で、かつ接続しない配線との絶縁を確保できれば、材料は問わない。例えば、ポリイミド等の樹脂、酸化シリコン、窒化シリコンなどを用いることができる。
【0075】
[電極]
電極は、一対の電極を用いることができる。一対の電極は、陽極と陰極であってよい。有機発光素子が発光する方向に電界を印加する場合に、電位が高い電極が陽極であり、他方が陰極である。また、発光層にホールを供給する電極が陽極であり、電子を供給する電極が陰極であるということもできる。
【0076】
陽極の構成材料としては仕事関数がなるべく大きいものがよい。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン等の金属単体やこれらを含む混合物、あるいはこれらを組み合わせた合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が使用できる。またポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーも使用できる。
【0077】
これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また、陽極は一層で構成されていてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
【0078】
反射電極として用いる場合には、例えばクロム、アルミニウム、銀、チタン、タングステン、モリブデン、又はこれらの合金、積層したものなどを用いることができる。上記の材料にて、電極としての役割を有さない、反射膜として機能することも可能である。また、透明電極として用いる場合には、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛などの酸化物透明導電層などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。電極の形成には、フォトリソグラフィ技術を用いることができる。
【0079】
一方、陰極の構成材料としては仕事関数の小さなものがよい。例えばリチウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロム等の金属単体またはこれらを含む混合物が挙げられる。あるいはこれら金属単体を組み合わせた合金も使用することができる。例えばマグネシウム-銀、アルミニウム-リチウム、アルミニウム-マグネシウム、銀-銅、亜鉛-銀等が使用できる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また陰極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。中でも銀を用いることが好ましく、銀の凝集を低減するため、銀合金とすることがさらに好ましい。銀の凝集が低減できれば、合金の比率は問わない。例えば、銀:他の金属が、1:1、3:1等であってよい。
【0080】
陰極は、ITOなどの酸化物導電層を使用してトップエミッション素子としてもよいし、アルミニウム(Al)などの反射電極を使用してボトムエミッション素子としてもよいし、特に限定されない。陰極の形成方法としては、特に限定されないが、直流及び交流スパッタリング法などを用いると、膜のカバレッジがよく、抵抗を下げやすいためより好ましい。
【0081】
[有機化合物層]
有機化合物層は、単層で形成されても、複数層で形成されてもよい。複数層を有する場合には、その機能によって、ホール注入層、ホール輸送層、電子ブロッキング層、発光層、ホールブロッキング層、電子輸送層、電子注入層と呼ばれてよい。有機化合物層は、主に有機化合物で構成されるが、無機原子、無機化合物を含んでいてもよい。例えば、銅、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、イリジウム、白金、モリブデン、亜鉛等を有してよい。有機化合物層は、第一電極と第二電極との間に配置されてよく、第一電極及び第二電極に接して配されてよい。
【0082】
有機発光素子中の各層の厚さは、通常、1nm以上10μm以下であることが好ましい。特に有機化合物層の発光層の膜厚は有効な発光特性を得るために10nm以上100nm以下が好ましい。
【0083】
[保護層]
第二電極の上に、保護層を設けてもよい。例えば、第二電極上に吸湿剤を設けたガラスを接着することで、有機化合物層に対する水等の浸入を低減し、表示不良の発生を低減することができる。また、別の実施形態としては、第二電極上に窒化ケイ素等のパッシベーション膜を設け、有機化合物層に対する水等の浸入を低減してもよい。例えば、第二電極を形成後に真空を破らずに別のチャンバーに搬送し、CVD法で厚さ2μmの窒化ケイ素膜を形成することで、保護層としてもよい。CVD法の成膜の後で原子堆積法(ALD法)を用いた保護層を設けてもよい。ALD法による膜の材料は限定されないが、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等であってよい。ALD法で形成した膜の上に、さらにCVD法で窒化ケイ素を形成してよい。ALD法による膜は、CVD法で形成した膜よりも小さい膜厚であってよい。具体的には、50%以下、さらには、10%以下であってよい。
【0084】
[カラーフィルタ]
保護層の上にカラーフィルタを設けてもよい。例えば、有機発光素子のサイズを考慮したカラーフィルタを別の基板上に設け、それと有機発光素子を設けた基板と貼り合わせてもよいし、上記で示した保護層上にフォトリソグラフィ技術を用いて、カラーフィルタをパターニングしてもよい。カラーフィルタは、高分子で構成されてよい。
【0085】
[平坦化層]
カラーフィルタと保護層との間に平坦化層を有してもよい。平坦化層は、下の層の凹凸を低減する目的で設けられる。目的を制限せずに、材質樹脂層と呼ばれる場合もある。平坦化層は有機化合物で構成されてよく、低分子であっても、高分子であってもよいが、高分子であることが好ましい。
【0086】
平坦化層は、カラーフィルタの上下に設けられてもよく、その構成材料は同じであっても異なってもよい。具体的には、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。
【0087】
[マイクロレンズ]
有機発光素子は、その光出射側にマイクロレンズ等の光学部材を有してよい。マイクロレンズは、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等で構成されうる。マイクロレンズは、有機発光素子から取り出す光量の増加、取り出す光の方向の制御を目的としてよい。マイクロレンズは、半球の形状を有してよい。半球の形状を有する場合、当該半球に接する接線のうち、絶縁層と平行になる接線があり、その接線と半球との接点がマイクロレンズの頂点である。マイクロレンズの頂点は、任意の断面図においても同様に決定することができる。つまり、断面図におけるマイクロレンズの半円に接する接線のうち、絶縁層と平行になる接線があり、その接線と半円との接点がマイクロレンズの頂点である。
【0088】
また、マイクロレンズの中点を定義することもできる。マイクロレンズの断面において、円弧の形状が終了する点から別の円弧の形状が終了する点までの線分を仮想し、当該線分の中点がマイクロレンズの中点と呼ぶことができる。頂点、中点を判別する断面は、絶縁層に垂直な断面であってよい。
【0089】
[対向基板]
平坦化層の上には、対向基板を有してよい。対向基板は、前述の基板と対応する位置に設けられるため、対向基板と呼ばれる。対向基板の構成材料は、前述の基板と同じであってよい。対向基板は、前述の基板を第一基板とした場合、第二基板であってよい。
【0090】
[画素回路]
有機発光素子を有する有機発光装置は、有機発光素子に接続されている画素回路を有してよい。画素回路は、第一の発光素子、第二の発光素子をそれぞれ独立に発光制御するアクティブマトリックス型であってよい。アクティブマトリックス型の回路は電圧プログラミングであっても、電流プログラミングであってもよい。駆動回路は、画素毎に画素回路を有する。画素回路は、発光素子、発光素子の発光輝度を制御するトランジスタ、発光タイミングを制御するトランジスタ、発光輝度を制御するトランジスタのゲート電圧を保持する容量、発光素子を介さずにGNDに接続するためのトランジスタを有してよい。
【0091】
発光装置は、表示領域と、表示領域の周囲に配されている周辺領域とを有する。表示領域には画素回路を有し、周辺領域には表示制御回路を有する。画素回路を構成するトランジスタの移動度は、表示制御回路を構成するトランジスタの移動度よりも小さくてよい。画素回路を構成するトランジスタの電流電圧特性の傾きは、表示制御回路を構成するトランジスタの電流電圧特性の傾きよりも小さくてよい。電流電圧特性の傾きは、いわゆるVg-Ig特性により測定できる。画素回路を構成するトランジスタは、第一の発光素子など、発光素子に接続されているトランジスタである。
【0092】
[画素]
有機発光素子を有する有機発光装置は、複数の画素を有してよい。画素は互いに他と異なる色を発光する副画素を有する。副画素は、例えば、それぞれRGBの発光色を有してよい。
【0093】
画素は、画素開口とも呼ばれる領域が発光する。この領域は第一領域と同じである。画素開口は15μm以下であってよく、5μm以上であってよい。より具体的には、11μm、9.5μm、7.4μm、6.4μm等であってよい。副画素間は、10μm以下であってよく、具体的には、8μm、7.4μm、6.4μmであってよい。
【0094】
画素は、平面図において、公知の配置形態をとりうる。例えば、ストライプ配置、デルタ配置、ペンタイル配置、ベイヤー配置であってよい。副画素の平面図における形状は、公知のいずれの形状をとってもよい。例えば、長方形、ひし形等の四角形、六角形、等である。もちろん、正確な図形ではなく、長方形に近い形をしていれば、長方形に含まれる。副画素の形状と、画素配列と、を組み合わせて用いることができる。
【0095】
≪発光性組成物≫
本実施形態の発光性組成物は、本実施形態の有機化合物と、有機金属錯体とを含有する。有機金属錯体の濃度は、本実施形態の有機化合物の質量に対して0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。発光性組成物には、必要に応じて、電荷輸送材料、樹脂、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの種々の添加剤を含有させることができる。なかでも、樹脂や、電荷輸送材料(例えば、電子輸送材料)を含有させることが好ましい。樹脂は、バインダとしての樹脂であることが好ましい。具体的には、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、及び尿素樹脂などが挙げられる。樹脂は、単独重合体でも、共重合体でもよく、また、1種又は2種以上の樹脂を用いることができる。電子輸送性材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、1,3-ビス[2-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾ-5-イル]ベンゼンなどが挙げられる。電子輸送性材料としては、市販のもの(例えば、商品名「OXD-7」、Lumnescence Technology製)などを用いることもできる。発光性組成物中の電子輸送性材料の含有量(ppm)は、発光性組成物全質量を基準として、10ppm以上5,000ppm以下であることが好ましい。
【0096】
また、発光性組成物は、液体状であってもよい。液体状の発光性組成物とするためには、有機溶剤を含有させる。有機溶剤は、本実施形態の有機化合物を溶解又は分散させることができるものであれば特に限定されない。なかでも、1気圧下で70℃以上300℃以下の沸点を有する有機溶剤を用いることが好ましい。液体状の発光性組成物中の有機溶剤の含有量は、発光性組成物全質量を基準として、85質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0097】
有機溶剤としては、具体的には、トルエン、o-キシレン、p-キシレン、メシチレン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アニソール、4-メチルアニソール、フェニルシクロヘキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、N-メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノンなどが挙げられる。有機溶剤は、発光性組成物における各種材料の相溶性、液体の粘度や表面張力などの各種の特性を調整するために、1種又は2種以上を用いることができる。
【0098】
≪有機発光素子の製造方法≫
本実施形態の有機発光素子の製造方法は、本実施形態の発光性組成物を基材に付与する工程を含む。発光性組成物を基材に付与する工程は、発光性組成物を塗布法又は印刷法によって基材に付与する工程であってよい。
【0099】
以下、有機化合物層(ホール注入層、ホール輸送層、電子阻止層、発光層、ホール阻止層、電子輸送層、電子注入層など)を有する有機発光素子の製造方法を説明する。有機発光素子は、発光性組成物を基材に付与して有機化合物層を形成する工程を含む製造方法により製造される。
【0100】
有機化合物層を形成する方法としては、例えば、ドライプロセスやウェットプロセスが挙げられる。ドライプロセスとしては、例えば、真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング法、及びプラズマ法などが挙げられる。ウェットプロセスとしては、例えば、スピンコート法、キャスト法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、及びスリットコーター法などの塗布法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法などの印刷法といった公知の方法が挙げられる。なかでも、数ナノメートルという膜厚での薄膜形成における膜均一性と大面積画素形成を両立できる観点から、真空蒸着法、イオン化蒸着法、スプレーコート法、スリットコーター法、及びインクジェット法を用いることが好ましく、なかでも、有機溶剤への溶解性が高いものは、スプレーコート法、スリットコーター法、及びインクジェット法を用いることができる。
【0101】
ここで更にウェットプロセスの詳しい方法について説明する。ウェットプロセスとしては、液体状の発光性組成物を公知の方法によって基材に付与する方法であり、有機化合物層を形成した後に、有機溶剤を乾燥させることにより形成される。乾燥条件は、有機化合物層などの構成材料に応じて適宜設定することができる。空気又は不活性ガス(窒素、アルゴンなど)雰囲気下で乾燥することが好ましい。乾燥のための加熱温度は、100℃以上250℃以下であることが好ましく、110℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。乾燥のための加熱時間は、5分以上60分以下であることが好ましい。また、乾燥のための加熱の際の圧力としては、常圧下(1気圧)であっても、又は、減圧下(100Paから0.1MPa)であってもよい。乾燥工程における各種条件(温度、圧力及び時間)は、有機化合物層などから有機溶剤を除去することができるように設定すればよい。
【0102】
液体状の発光性組成物を用いてウェットプロセスによって有機化合物層を形成する場合、組成を適切に決定することが好ましい。発光性組成物中の有機溶剤の含有量(質量%)は、有機化合物層を構成する固体成分の含有量の合計に対する質量比率で、10.0倍以上100.0倍以下であることが好ましい。有機化合物層を構成する固体成分としては、本実施形態の有機化合物、有機金属錯体などが挙げられる。
【0103】
液体状の発光性組成物をインクジェット法で基材に付与して有機化合物層を形成する場合、その物性を適切に制御することが好ましい。25℃における液体の発光性組成物の表面張力は、15mN/m以上75mN/mであることが好ましく、25mN/m以上45mN/mであることがさらに好ましい。液体状の発光性組成物の表面張力は、発光性組成物中の有機溶剤の種類や含有量を適宜決定することで、調整できる。また、25℃における液体の発光性組成物の粘度は、0.1mPa・s以上20.0mPa・s以下であることが好ましく、0.5mPa・s以上10.0mPa・s以下であることがより好ましい。粘度を上記の範囲にすることで、インクジェット方式で吐出する際の液体吐出ヘッドにおける目詰まりや吐出不良を抑制することができる。
【0104】
≪有機発光素子の用途≫
本実施形態に係る有機発光素子は、表示装置や照明装置の構成部材として用いることができる。他にも、電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライト、白色光源にカラーフィルタを有する発光装置等の用途がある。
【0105】
表示装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの画像情報を入力する画像入力部を有し、入力された情報を処理する情報処理部を有し、入力された画像を表示部に表示する画像情報処理装置でもよい。表示装置は、複数の画素を有し、複数の画素の少なくとも一つが、本実施形態の有機発光素子と、有機発光素子に接続されたトランジスタ等の能動素子と、を有してよい。このとき、基板はシリコンなどの半導体基板であり、トランジスタは基板に形成されたMOSFETであってもよい。画像表示装置は、画像情報を入力するための入力部と、画像を出力するための表示部と、を有し、表示部が、本実施形態の表示装置を有する。
【0106】
また、撮像装置やインクジェットプリンタが有する表示部は、タッチパネル機能を有していてもよい。このタッチパネル機能の駆動方式は、赤外線方式でも、静電容量方式でも、抵抗膜方式であっても、電磁誘導方式であってもよく、特に限定されない。また表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
【0107】
次に、図面を参照しながら本実施形態に係る表示装置について説明する。
図1は、有機発光素子とこの有機発光素子に接続されるトランジスタとを有する表示装置の例を示す断面模式図である。トランジスタは、能動素子の一例である。トランジスタは薄膜トランジスタ(TFT)であってもよい。
【0108】
図1(a)は、本実施形態に係る表示装置の構成要素である画素の一例の断面模式図である。画素は、副画素10を有している。副画素はその発光により、10R、10G、10Bに分けられている。発光色は、発光層から発光される波長で区別されても、副画素から出射する光がカラーフィルタ等により、選択的に透過または色変換が行われてもよい。それぞれの副画素10は、層間絶縁層1の上に第一電極2である反射電極、第一電極2の端を覆う絶縁層3、第一電極2と絶縁層3とを覆う有機化合物層4、第二電極5である透明電極、保護層6、カラーフィルタ7を有している。
【0109】
層間絶縁層1は、その下層または内部にトランジスタ、容量素子が配されていてよい。トランジスタと第一電極2は不図示のコンタクトホール等を介して電気的に接続されていてよい。
【0110】
絶縁層3は、バンク、画素分離膜とも呼ばれる。第一電極2の端を覆っており、第一電極2を囲って配されている。絶縁層3の配されていない部分が、有機化合物層4と接し、発光領域となる。
【0111】
有機化合物層4は、正孔注入層41、正孔輸送層42、発光層43、正孔ブロック層44、電子輸送層45を有する。
【0112】
第二電極5は、透明電極であっても、反射電極であっても、半透過電極であってもよい。
【0113】
保護層6は、有機化合物層4に水分が浸透することを低減する。保護層6は、一層のように図示されているが、複数層であってよい。層ごとに無機化合物層、有機化合物層があってよい。
【0114】
カラーフィルタ7は、その色により7R、7G、7Bに分けられる。カラーフィルタ7は、不図示の平坦化膜上に形成されてよい。また、カラーフィルタ7上に不図示の樹脂保護層を有してよい。また、カラーフィルタ7は、保護層6上に形成されてよい。またはガラス基板等の対向基板上に設けられた後に、貼り合わせられてよい。
【0115】
図1(b)の表示装置100は、有機発光素子26と、トランジスタの一例であるTFT18と、を有する。ガラス、シリコン等の基板11とその上部に絶縁層12が設けられている。絶縁層12の上には、TFT18等の能動素子が配されており、能動素子のゲート電極13と、ゲート絶縁膜14と、半導体層15と、が設けられている。TFT18は、ドレイン電極16とソース電極17とを有している。TFT18の上部には絶縁膜19が設けられている。絶縁膜19に設けられたコンタクトホール20を介して有機発光素子26を構成する陽極21とソース電極17とが接続されている。
【0116】
なお、有機発光素子26に含まれる電極(陽極21、陰極23)とTFT18に含まれる電極(ソース電極17、ドレイン電極16)との電気接続の方式は、
図1(b)に示される態様に限られるものではない。つまり陽極21又は陰極23のうちいずれか一方とTFT18のソース電極17またはドレイン電極16のいずれか一方とが電気接続されていればよい。
【0117】
図1(b)の表示装置100では有機化合物層22を1つの層の如く図示をしているが、有機化合物層22は、複数層であってもよい。陰極23の上には有機発光素子26の劣化を低減するための第一の保護層24や第二の保護層25が設けられている。
【0118】
図1(b)の表示装置100ではスイッチング素子としてトランジスタを使用しているが、これに代えてMIM素子等の他のスイッチング素子を用いてもよい。
【0119】
また
図1(b)の表示装置100に使用されるトランジスタは、基板の絶縁性表面上に活性層を有する薄膜トランジスタに限らず、単結晶シリコンウエハを用いたトランジスタでもよい。活性層として、単結晶シリコン、アモルファスシリコン、微結晶シリコンなどの非単結晶シリコン、インジウム亜鉛酸化物、インジウムガリウム亜鉛酸化物等の非単結晶酸化物半導体が挙げられる。なお、薄膜トランジスタはTFT素子とも呼ばれる。
【0120】
図1(b)の表示装置100に含まれるトランジスタは、Si基板等の基板内に形成されていてもよい。ここで基板内に形成されるとは、Si基板等の基板自体を加工してトランジスタを作製することを意味する。つまり、基板内にトランジスタを有することは、基板とトランジスタとが一体に形成されていると見ることもできる。
【0121】
本実施形態に係る有機発光素子はスイッチング素子の一例であるTFTにより発光輝度が制御され、有機発光素子を複数面内に設けることでそれぞれの発光輝度により画像を表示することができる。なお、本実施形態に係るスイッチング素子は、TFTに限られず、低温ポリシリコンで形成されているトランジスタ、Si基板等の基板上に形成されたアクティブマトリクスドライバーであってもよい。基板上とは、その基板内ということもできる。基板内にトランジスタを設けるか、TFTを用いるかは、表示部の大きさによって選択され、例えば0.5インチ程度の大きさであれば、Si基板上に有機発光素子を設けることが好ましい。
【0122】
図2は、本実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。表示装置1000は、上部カバー1001と、下部カバー1009と、の間に、タッチパネル1003、表示パネル1005、フレーム1006、回路基板1007、バッテリー1008を有してよい。タッチパネル1003および表示パネル1005は、フレキシブルプリント回路FPC1002、1004が接続されている。回路基板1007には、トランジスタがプリントされている。バッテリー1008は、表示装置が携帯機器でなければ、設けなくてもよいし、携帯機器であっても、別の位置に設けてもよい。
【0123】
本実施形態に係る表示装置は、赤色、緑色、青色を有するカラーフィルタを有してよい。カラーフィルタは、当該赤色、緑色、青色がデルタ配列で配置されてよい。
【0124】
本実施形態に係る表示装置は、携帯端末の表示部に用いられてもよい。その際には、表示機能と操作機能との双方を有してもよい。携帯端末としては、スマートフォン等の携帯電話、タブレット、ヘッドマウントディスプレイ等が挙げられる。
【0125】
本実施形態に係る表示装置は、複数のレンズを有する光学部と、当該光学部を通過した光を受光する撮像素子とを有する撮像装置の表示部に用いられてよい。撮像装置は、撮像素子が取得した情報を表示する表示部を有してよい。また、表示部は、撮像装置の外部に露出した表示部であっても、ファインダ内に配置された表示部であってもよい。撮像装置は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラであってよい。
【0126】
図3(a)は、本実施形態に係る撮像装置の一例を表す模式図である。撮像装置1100は、ビューファインダ1101、背面ディスプレイ1102、操作部1103、筐体1104を有してよい。ビューファインダ1101は、本実施形態に係る表示装置を有してよい。その場合、表示装置は、撮像する画像のみならず、環境情報、撮像指示等を表示してよい。環境情報には、外光の強度、外光の向き、被写体の動く速度、被写体が遮蔽物に遮蔽される可能性等であってよい。
【0127】
撮像に好適なタイミングはわずかな時間なので、少しでも早く情報を表示した方がよい。したがって、本実施形態の有機発光素子を用いた表示装置を用いるのが好ましい。有機発光素子は応答速度が速いからである。有機発光素子を用いた表示装置は、表示速度が求められ、これらの装置は、液晶表示装置よりも好適に用いることができる。
【0128】
撮像装置1100は、不図示の光学部を有する。光学部は複数のレンズを有し、筐体1104内に収容されている撮像素子に結像する。複数のレンズは、その相対位置を調整することで、焦点を調整することができる。この操作を自動で行うこともできる。撮像装置は光電変換装置と呼ばれてもよい。光電変換装置は逐次撮像するのではなく、前画像からの差分を検出する方法、常に記録されている画像から切り出す方法等を撮像の方法として含むことができる。
【0129】
図3(b)は、本実施形態に係る電子機器の一例を表す模式図である。電子機器1200は、表示部1201と、操作部1202と、筐体1203を有する。筐体1203には、回路、当該回路を有するプリント基板、バッテリー、通信部を有してよい。操作部1202は、ボタンであってもよいし、タッチパネル方式の反応部であってもよい。操作部1202は、指紋を認識してロックの解除等を行う、生体認識部であってもよい。通信部を有する電子機器は通信機器ということもできる。電子機器1200は、レンズと、撮像素子とを備えることでカメラ機能をさらに有してよい。カメラ機能により撮像された画像が表示部1201に映される。電子機器1200としては、スマートフォン、ノートパソコン等が挙げられる。
【0130】
図4は、本実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。
図4(a)は、テレビモニタやPCモニタ等の表示装置である。表示装置1300は、額縁1301を有し表示部1302を有する。表示部1302には、本実施形態に係る発光素子が用いられてよい。表示装置1300は、額縁1301と、表示部1302を支える土台1303を有している。土台1303は、
図4(a)の形態に限られない。額縁1301の下辺が土台を兼ねてもよい。また、額縁1301および表示部1302は、曲がっていてもよい。その曲率半径は、5000mm以上6000mm以下であってよい。
【0131】
図4(b)は本実施形態に係る表示装置の他の例を表す模式図である。
図4(b)の表示装置1310は、折り曲げ可能に構成されており、いわゆるフォルダブルな表示装置である。表示装置1310は、第一表示部1311、第二表示部1312、筐体1313、屈曲点1314を有する。第一表示部1311と第二表示部1312とは、本実施形態に係る発光素子を有してよい。第一表示部1311と第二表示部1312とは、つなぎ目のない1枚の表示装置であってよい。第一表示部1311と第二表示部1312とは、屈曲点で分けることができる。第一表示部1311、第二表示部1312は、それぞれ異なる画像を表示してもよいし、第一および第二表示部とで一つの画像を表示してもよい。
【0132】
図5(a)は、本実施形態に係る照明装置の一例を表す模式図である。照明装置1400は、筐体1401と、光源1402と、回路基板1403と、光源1402が発する光を透過する光学フィルタ1404と光拡散部1405と、を有してよい。光源1402は、本実施形態に係る有機発光素子を有してよい。光学フィルタ1404は光源の演色性を向上させるフィルタであってよい。光拡散部1405は、ライトアップ等、光源の光を効果的に拡散し、広い範囲に光を届けることができる。光学フィルタ1404、光拡散部1405は、照明の光出射側に設けられてよい。必要に応じて、最外部にカバーを設けてもよい。
【0133】
照明装置は例えば室内を照明する装置である。照明装置は白色、昼白色、その他青から赤のいずれの色を発光するものであってよい。それらを調光する調光回路や発光色を調色する調色回路を有してよい。照明装置は本実施形態の有機発光素子とそれに接続される電源回路を有してよい。電源回路は、交流電圧を直流電圧に変換する回路である。照明装置はインバータ回路を有してよい。また、白とは色温度が4200Kで昼白色とは色温度が5000Kである。照明装置はカラーフィルタを有してもよい。
【0134】
また、本実施形態に係る照明装置は、放熱部を有していてもよい。放熱部は装置内の熱を装置外へ放出するものであり、比熱の高い金属、液体シリコン等が挙げられる。
【0135】
図5(b)は、本実施形態に係る移動体の一例である自動車の模式図である。当該自動車は灯具の一例であるテールランプを有する。自動車1500は、テールランプ1501を有し、ブレーキ操作等を行った際に、テールランプを点灯する形態であってよい。
【0136】
テールランプ1501は、本実施形態に係る有機発光素子を有してよい。テールランプ1501は、有機発光素子を保護する保護部材を有してよい。保護部材はある程度高い強度を有し、透明であれば材料は問わないが、ポリカーボネート等で構成されることが好ましい。ポリカーボネートにフランジカルボン酸誘導体、アクリロニトリル誘導体等を混ぜてよい。
【0137】
自動車1500は、車体1503、それに取り付けられている窓1502を有してよい。窓1502は、自動車の前後を確認するための窓でなければ、透明なディスプレイであってもよい。当該透明なディスプレイは、本実施形態に係る有機発光素子を有してよい。この場合、有機発光素子が有する電極等の構成材料は透明な部材で構成される。
【0138】
本実施形態に係る移動体は、船舶、航空機、ドローン等であってよい。移動体は、機体と当該機体に設けられた灯具を有してよい。灯具は、機体の位置を知らせるための発光をしてよい。灯具は本実施形態に係る有機発光素子を有する。
【0139】
図6を参照して、上述の各実施形態の表示装置の適用例について説明する。表示装置は、例えばスマートグラス、HMD、スマートコンタクトのようなウェアラブルデバイスとして装着可能なシステムに適用できる。このような適用例に使用される撮像表示装置は、可視光を光電変換可能な撮像装置と、可視光を発光可能な表示装置とを有する。
【0140】
図6(a)は、本発明の一実施形態に係るウェアラブルデバイスの一例を示す模式図である。
図6(a)を用いて、1つの適用例に係る眼鏡1600(スマートグラス)を説明する。眼鏡1600のレンズ1601の表面側に、CMOSセンサやSPADのような撮像装置1602が設けられている。また、レンズ1601の裏面側には、上述した各実施形態の表示装置が設けられている。
【0141】
眼鏡1600は、制御装置1603をさらに備える。制御装置1603は、撮像装置1602と表示装置に電力を供給する電源として機能する。また、制御装置1603は、撮像装置1602と表示装置の動作を制御する。レンズ1601には、撮像装置1602に光を集光するための光学系が形成されている。
【0142】
図6(b)は、本発明の一実施形態に係るウェアラブルデバイスの他の例を示す模式図である。
図6(b)を用いて、1つの適用例に係る眼鏡1610(スマートグラス)を説明する。眼鏡1610は、制御装置1612を有しており、制御装置1612に、
図6(a)の撮像装置1602に相当する撮像装置と、表示装置が搭載される。レンズ1611には、制御装置1612内の撮像装置と、表示装置からの発光を投影するための光学系が形成されており、レンズ1611には画像が投影される。制御装置1612は、撮像装置および表示装置に電力を供給する電源として機能するとともに、撮像装置および表示装置の動作を制御する。
【0143】
制御装置1612は、装着者の視線を検知する視線検知部を有してもよい。視線の検知は赤外線を用いてよい。赤外発光部は、表示画像を注視しているユーザーの眼球に対して、赤外光を発する。発せられた赤外光の眼球からの反射光を、受光素子を有する撮像部が検出することで眼球の撮像画像が得られる。平面視における赤外発光部から表示部への光を低減する低減手段を有することで、画像品位の低下を低減する。赤外光の撮像により得られた眼球の撮像画像から表示画像に対するユーザーの視線を検出する。眼球の撮像画像を用いた視線検出には任意の公知の手法が適用できる。一例として、角膜での照射光の反射によるプルキニエ像に基づく視線検出方法を用いることができる。より具体的には、瞳孔角膜反射法に基づく視線検出処理が行われる。瞳孔角膜反射法を用いて、眼球の撮像画像に含まれる瞳孔の像とプルキニエ像とに基づいて、眼球の向き(回転角度)を表す視線ベクトルが算出されることにより、ユーザーの視線が検出される。
【0144】
本発明の一実施形態に係る表示装置は、受光素子を有する撮像装置を有し、撮像装置からのユーザーの視線情報に基づいて表示装置の表示画像を制御してよい。具体的には、表示装置は、視線情報に基づいて、ユーザーが注視する第一の視界領域と、第一の視界領域以外の第二の視界領域とを決定する。第一の視界領域、第二の視界領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。表示装置の表示領域において、第一の視界領域の表示解像度を第二の視界領域の表示解像度よりも高く制御してよい。つまり、第二の視界領域の解像度を第一の視界領域よりも低くしてよい。
【0145】
また、表示領域は、第一の表示領域、第一の表示領域とは異なる第二の表示領域とを有し、視線情報に基づいて、第一の表示領域および第二の表示領域から優先度が高い領域が決定される。第一の視界領域、第二の視界領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。優先度の高い領域の解像度を、優先度が高い領域以外の領域の解像度よりも高く制御してよい。つまり優先度が相対的に低い領域の解像度を低くしてよい。
【0146】
なお、第一の視界領域や優先度が高い領域の決定には、AIを用いてもよい。AIは、眼球の画像と当該画像の眼球が実際に視ていた方向とを教師データとして、眼球の画像から視線の角度、視線の先の目的物までの距離を推定するよう構成されたモデルであってよい。AIプログラムは、表示装置が有しても、撮像装置が有しても、外部装置が有してもよい。外部装置が有する場合は、通信を介して、表示装置に伝えられる。
【0147】
視認検知に基づいて表示制御する場合、外部を撮像する撮像装置を更に有するスマートグラスに好ましく適用できる。スマートグラスは、撮像した外部情報をリアルタイムで表示することができる。
【0148】
図7(a)は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例を示す模式図である。画像形成装置40は電子写真方式の画像形成装置であり、感光体27、露光光源28、帯電部30、現像部31、転写器32、搬送ローラー33、定着器35を有する。露光光源28から光29が照射され、感光体27の表面に静電潜像が形成される。この露光光源28が本実施形態に係る有機発光素子を有する。現像部31はトナー等を有する。帯電部30は感光体27を帯電させる。転写器32は現像された画像を記録媒体34に転写する。搬送ローラー33は記録媒体34を搬送する。記録媒体34は例えば紙である。定着器35は記録媒体34に形成された画像を定着させる。
【0149】
図7(b)および
図7(c)は、露光光源28を示す図であり、発光部36が長尺状の基板に複数配置されている様子を示す模式図である。矢印37は、感光体の軸に平行な方向であり、有機発光素子が配列されている列方向を表す。この列方向は、感光体27が回転する軸の方向と同じである。この方向は感光体27の長軸方向と呼ぶこともできる。
図7(b)は発光部36を感光体27の長軸方向に沿って配置した形態である。
図7(c)は、
図7(b)とは異なる形態であり、第一の列と第二の列のそれぞれにおいて発光部36が列方向に交互に配置されている形態である。第一の列と第二の列は行方向に異なる位置に配置されている。第一の列は、複数の発光部36が間隔をあけて配置されている。第二の列は、第一の列の発光部36同士の間隔に対応する位置に発光部36を有する。すなわち、行方向にも、複数の発光部36が間隔をあけて配置されている。
図7(c)の配置は、たとえば格子状に配置されている状態、千鳥格子に配置されている状態、あるいは市松模様と言い換えることもできる。
【0150】
以上説明した通り、本実施形態に係る有機発光素子を用いた装置を用いることにより、良好な画質で、長時間表示にも安定な表示が可能になる。また、本実施形態に係る有機発光素子を用いた装置を用いることにより、高効率で高輝度な光出力による屋外での良好な視認性と省電力表示の両立が可能になる。
【実施例0151】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「パーセント」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
【0152】
≪実施例1(例示化合物5の合成)≫
<中間体の合成>
【化21】
【0153】
出発物質1を0.49g(2.0mmol、1.0eq)、出発物質2を0.76g(1.1eq.)、炭酸ナトリウム0.62g(3.0eq.)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.06g(0.03eq.)を、100mL三口丸底フラスコに量り取り、減圧脱気/Ar置換を5回行った。十分に減圧脱気および窒素置換を行った後、窒素雰囲気下でトルエン20mL、エタノール5.0mLおよび水3.0mLを加え、74℃で8時間還流・撹拌した後に、加熱をやめ、反応液を室温に戻した。トルエンで3回抽出を行った後、有機溶媒層をまとめて、無水硫酸ナトリウムを加え、しばらく放置した。硫酸ナトリウムを濾去し、溶液を減圧濃縮した。得られたオイルを溶離液にトルエンを用いてシリカゲルショートカラムクロマトグラフィーに通じ、目的物を含むフラクションを回収・減圧濃縮した。得られたオイルを溶離液にヘプタン-トルエンを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーに通じ、中間体を含むフラクションを回収・減圧濃縮した。中間体であることはMALDI-MSで確認した(m/z=471.20)。
【0154】
合成に用いた出発物質1及び出発物質2の構造式、中間体の構造式、収量及び同定データを表1(表1-1)に示す。
【0155】
【0156】
合成した中間体(0.75g、1.6mmol)、出発物質3(0.38g、1.0eq)、Pd(dba)2(7.0mg、0.02eq)、NaOt-bu(0.23g、1.5eq)、およびP(t-bu)3・HBF4(0.037g、0.08eq)を、100mL三口丸底フラスコに量り取り、減圧脱気/Ar置換を5回行った。十分に減圧脱気および窒素置換を行った後、窒素雰囲気下でp-キシレン20mLを加え、180℃で8時間還流・撹拌した後に、加熱をやめ、反応液を室温に戻した。トルエンで3回抽出を行った後、有機溶媒層をまとめて、無水硫酸ナトリウムを加え、しばらく放置した。硫酸ナトリウムを濾去し、溶液を減圧濃縮した。得られたオイルを溶離液にトルエンを用いてシリカゲルショートカラムクロマトグラフィーに通じ、目的物を含むフラクションを回収・減圧濃縮した。得られたオイルを溶離液にヘプタン-トルエンを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーに通じ、最終生成物を含むフラクションを回収・減圧濃縮した。前記最終生成物であることをMALDI-MSで確認した(m/z=675.27)。
【0157】
合成に用いた中間体及び出発物質3の構造式、最終生成物の構造式、収量及び同定データを表2(表2-1)に示す。
【0158】
≪実施例2(例示化合物、比較例化合物の合成)≫
<中間体の合成>
表1(表1-1乃至表1-4)に示す例示化合物、比較例化合物について、実施例1と同様の方法で中間体を合成した。合成に用いた出発物質1及び出発物質2の構造式、中間体の構造式、収量及び同定データを表1(表1-1乃至表1-4)に示す。
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
<例示化合物、比較例化合物の合成>
例示化合物、比較例化合物を、実施例1と同様の方法で合成した。合成に用いた中間体及び出発物質3の構造式、最終生成物の構造式、収量及び同定データを表2(表2-1乃至表2-4)に示す。
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
≪実施例3(発光性組成物の調製)≫
表3に示す各成分を、以下に示す割合で混合し、25℃で24時間撹拌した。その後、ポアサイズ0.2μmフィルタでろ過することで発光性組成物を調製した。
有機金属錯体:0.25質量パーセント
ホスト :4.75質量パーセント
有機溶剤 :95.0質量パーセント
【0169】
【0170】
≪実施例4(素子の作製、評価)≫
<素子101の作製>
以下の手順により、基板上に陽極、ホール注入層、発光層、電子輸送層、陰極を順次製膜することで、有機電界発光素子101を作製した。
【0171】
透明導電性支持基板(ITO基板)としては、ガラス基板上に、陽極としてITOをスパッタ法にて膜厚100nmで製膜したものを用いた。ITO基板を、純水、次いでイソプロパノールで洗浄し、UV-オゾン処理を行った後、スピンコート法にてホール注入層を製膜した。製膜条件は以下の通りである。
塗布液:ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸水溶液(PEDOT;PSS水溶液、Aldrich製、導電率1×10-5S/cm、化合物の濃度2.8質量%)
スピンコート条件:3,000rpm、60秒間
アニール条件:200℃、1時間
膜厚:40nm
【0172】
次に、スピンコート法にて発光層を製膜した。製膜条件は以下の通りである。
塗布液:発光性組成物No.1
スピンコート条件:2,000rpm、60秒間
アニール条件:110℃、10分間
膜厚:45nm
【0173】
最後に、抵抗加熱による真空蒸着法にて電子輸送層及び電極層を製膜した。この際、対向する電極面積は3mm2になるようにした。製膜条件は以下の通りである。
真空度:1×10-5Pa
電子輸送層:TPBi(50nm)
金属電極層:LiF(0.5nm)、Al(90nm)
【0174】
その後、素子が水分の吸着によって劣化が起こらないように、乾燥空気雰囲気下で保護用ガラス板をかぶせ、アクリル樹脂系接着材で封止した。
【0175】
<素子102乃至114、201および202の作製>
発光層の製膜において、塗布液を表4に示す発光性組成物に変更した以外は、素子101と同様にして、素子102乃至114、201および202を作製した。
【0176】
<素子115の作製>
以下の手順により、基板上に陽極、ホール注入層、発光層、電子輸送層、陰極を順次製膜することで、素子115を作製した。
【0177】
素子101と同様にして透明導電性支持基板を用意し、素子101と同様にしてホール注入層を製膜した。
【0178】
次に、真空蒸着法にて発光層を製膜した。製膜条件は以下の通りである。
真空度:1×10-5Pa
発光層:有機金属錯体D-8:例示化合物5=5:95(質量比)(45nm)
【0179】
その後、素子101と同様にして、電子輸送層及び電極層を製膜し封止した。
【0180】
<素子203、204の作製>
発光層中の例示化合物5を、それぞれ比較例化合物1、比較例化合物2に変更した以外は素子115と同様にして素子を作製した。
【0181】
<評価>
作製した各素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして300cd/m2時の外部量子効率を測定し、素子201の測定結果との比率を算出した。評価結果は表4に示す。
【0182】
【0183】
表4の結果より、実施例の素子101乃至114の外部量子効率の評価は、比較例の素子201及び素子202に比べて相対的に優れていることがわかった。
【0184】
また、実施例の素子101乃至114の中でも、Aが一般式(4)で表される化合物をホストとして用いた素子103乃至114の外部量子効率の評価は、他に比べて優れていることが分かった。さらに、素子103乃至114の中でも、Aが一般式(5)または(5a)で表される化合物をホストとして用いた素子106乃至114の外部量子効率の評価は、他に比べて優れていることが分かった。さらに、素子106乃至114の中でも、Bが一般式(6)で表される化合物をホストとして用いた素子110及至114の外部量子効率の評価は、他に比べて優れていることが分かった。さらに、素子110及至114の中でも、Aが一般式(7)で表される化合物をホストとして用いた素子112及至114の外部量子効率の評価は、他に比べて優れていることが分かった。
【0185】
また、実施例の素子115の外部量子効率の評価は、比較例の素子203及び204に比べて相対的に優れていることが分かった。
【0186】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、請求項を添付する。
【0187】
≪含まれる構成≫
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
下記一般式(1)で表されることを特徴とする有機化合物。
A-B (1)
(一般式(1)において、Aは一般式(2)で表され、Bは一般式(3)で表される。)
(一般式(2)において、Xのうちの一つはBと結合する炭素原子であり、Xのうちの他は、それぞれ独立して、C-Rまたは窒素原子である。Rは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のシクロアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロアリール基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換のヘテロアリールオキシ基、置換または無置換のシリル基、置換または無置換のアルコキシカルボニル基、置換または無置換のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる。隣り合うR同士は結合して環を形成してもよい。)
(一般式(3)において、R1乃至R3は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のシクロアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロアリール基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換のヘテロアリールオキシ基、置換または無置換のシリル基、置換または無置換のアルコキシカルボニル基、置換または無置換のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる。
nは1又は2であり、mおよびpはそれぞれ0以上2以下の整数である。
*は、前記Aへの結合位置を示す。)
(構成2)
前記Aは、一般式(4)で表されることを特徴とする構成1に記載の有機化合物。
(構成3)
前記Aは、一般式(5)または(5a)で表されることを特徴とする構成2に記載の有機化合物。
(構成4)
前記Bは、一般式(6)で表されることを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の有機化合物。
(構成5)
前記Aは、一般式(7)で表されることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の有機化合物。
(構成6)
式(55)乃至(57)の少なくとも1種であることを特徴とする構成1乃至7のいずれかに記載の有機化合物。
【0188】
(構成7)
構成1乃至6のいずれかに記載の有機化合物と、有機金属錯体とを含有することを特徴とする発光性組成物。
(構成8)
前記有機金属錯体の前記有機化合物に対する濃度が、5質量%以上10質量%以下であることを特徴とする構成7に記載の発光性組成物。
(構成9)
さらに、有機溶剤を含有することを特徴とする構成7または8に記載の発光性組成物。
(構成10)
前記有機溶剤の含有量は、発光性組成物全質量を基準として、85質量%以上95質量%以下であることを特徴とする構成9に記載の発光性組成物。
【0189】
(構成11)
第一電極と第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間に配置されている有機化合物層を有する有機発光素子であって、
前記有機化合物層の少なくとも一層は、構成1乃至6のいずれかに記載の有機化合物を有することを特徴とする有機発光素子。
(構成12)
前記有機化合物を有する層は発光層であり、前記発光層は、有機金属錯体をさらに有し、
前記有機化合物の最低励起三重項エネルギーは、前記有機金属錯体の最低励起三重項エネルギー以上であることを特徴とする構成11に記載の有機発光素子。
(構成13)
前記第一電極と前記発光層の間に第一電荷輸送層を有し、前記第二電極と前記発光層の間に第二電荷輸送層を有することを特徴とする構成12に記載の有機発光素子。
(構成14)
前記第一電荷輸送層のうち前記第一電極と接する層の最低励起三重項エネルギーは、前記有機化合物の最低励起三重項エネルギーよりも大きく、かつ、前記第二電荷輸送層のうち前記第二電極と接する層の最低励起三重項エネルギーは、前記有機化合物の最低励起三重項エネルギーよりも大きいことを特徴とする構成13に記載の有機発光素子。
【0190】
(構成15)
複数の画素を有し、前記複数の画素の少なくとも一つが、構成11乃至14のいずれかに記載の有機発光素子と、前記有機発光素子に接続されたトランジスタと、を有することを特徴とする表示装置。
(構成16)
複数のレンズを有する光学部と、前記光学部を通過した光を受光する撮像素子と、前記撮像素子が撮像した画像を表示する表示部と、を有し、
前記表示部は構成11乃至14のいずれかに記載の有機発光素子を有することを特徴とする撮像装置。
(構成17)
構成11乃至14のいずれかに記載の有機発光素子を有する表示部と、前記表示部が設けられた筐体と、前記筐体に設けられ、外部と通信する通信部と、を有することを特徴とする電子機器。
(構成18)
構成11乃至14のいずれかに記載の有機発光素子を有する光源と、前記光源が発する光を透過する光拡散部または光学フィルタと、を有することを特徴とする照明装置。
(構成19)
構成1乃至14のいずれか1に記載の有機発光素子を有する灯具と、前記灯具が設けられた機体と、を有することを特徴とする移動体。
(構成20)
感光体と、前記感光体を露光する露光光源と、を有し、
前記露光光源は、構成11乃至14のいずれかに記載の有機発光素子を有することを特徴とする画像形成装置。
【0191】
(構成21)
構成7乃至10のいずれかに記載の発光性組成物を基材に付与する工程を含むことを特徴とする有機発光素子の製造方法。
(構成22)
前記発光性組成物を基材に付与する工程は、前記発光性組成物を塗布法又は印刷法によって基材に付与する工程であることを特徴とする構成21に記載の有機発光素子の製造方法。
(構成23)
前記塗布法は、スピンコート法、キャスト法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法またはスリットコーター法であることを特徴とする構成22に記載の有機発光素子の製造方法。
(構成24)
前記印刷法は、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法またはインクジェット法であることを特徴とする構成22または23に記載の有機発光素子の製造方法。
1:層間絶縁層、2:第一電極、3:絶縁層、4:有機化合物層、5:第二電極、6:保護層、7:カラーフィルタ、10:副画素、11:基板、12:絶縁層、13:ゲート電極、14:ゲート絶縁膜、15:半導体層、16:ドレイン電極、17:ソース電極、18:TFT、19:絶縁膜、20:コンタクトホール、21:陽極、22:有機化合物層、23:陰極、24:第一の保護層、25:第二の保護層、26:有機発光素子、100:表示装置