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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014180
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/25 20180101AFI20250123BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20250123BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20250123BHJP
【FI】
F21S41/25
F21S41/148
F21W102:155
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116503
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】本宮 大士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕亮
(57)【要約】
【課題】 大型化を抑制しつつエネルギー効率を向上し得る車両用前照灯を提供する。
【解決手段】 車両用前照灯1は、ロービームの配光パターンPLを形成する第1光L1を出射する第1光源31a,31b,31cと、第1光源31a,31b,31cより左側に配置され、側方配光パターンPSを形成する第2光L2を出射する第2光源32と、後方側に凸状に湾曲する入射面62と、第1光L1及び第2光L2が出射する出射面63とを有する投影レンズ60と、を備え、投影レンズ60を上方から見る場合、入射面62に向かう第2光L2の光軸LA2は、入射面62のうち当該入射面62における頂点62tより左側の領域と交わり、頂点62tは、入射面62の左右両端62eを結ぶ線分65の中心65cを通り当該線分65と垂直な第1基準面64より右側に位置する。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロービームの配光パターンを形成する第1光を出射する第1光源と、
前記第1光源を基準とする左右方向の一方側に配置され、少なくとも一部が前記ロービームの配光パターンの側方に位置する側方配光パターンを形成する第2光を出射する第2光源と、
前記第1光源及び前記第2光源より前方に配置され、水平断面において後方側に凸状に湾曲し前記第1光及び前記第2光が入射する入射面と、前記入射面から入射する前記第1光及び前記第2光が出射する出射面とを有する投影レンズと、
を備え、
前記投影レンズを上方から見る場合、前記入射面に向かう前記第2光の光軸は、前記入射面のうち当該入射面における頂点より前記第2光源側の領域と交わり、
前記頂点は、前記入射面の左右両端を結ぶ線分の中心を通り当該線分と垂直な第1基準面より前記第2光源側と反対側に位置する
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記出射面は、水平断面において前方側に凸状に湾曲し、
前記側方配光パターンの少なくとも一部は、前記ロービームの配光パターンにおける前記一方側と反対側に位置し、
前記投影レンズを上方から見る場合、前記出射面の左右両端を結ぶ線分の中心から前記ロービームの配光パターンのカットオフラインにおけるエルボー点に向かう半直線は、前方に向かうに従って、前記出射面の左右両端を結ぶ線分の中心を通り当該線分と垂直な第2基準面から前記一方側に離れるように前記第2基準面に対して傾く
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記出射面は、水平断面において前方側に凸状に湾曲し、
左右方向において、前記出射面の曲率は、当該出射面の外縁に近づくほど小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記入射面における前記頂点は、前記投影レンズの光軸上に位置する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用前照灯。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用前照灯として、ロービームを出射するヘッドランプと、車両の側方に照射される光を出射するコーナリングランプとを備えるものがあり、下記特許文献1には、このような車両用前照灯が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-4882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の車両用前照灯では、ヘッドランプとコーナリングランプとが別体である。ロービームを出射するヘッドランプ及びコーナリングランプの構成として、光源と、光源から出射する光が透過する投影レンズと、を備える構成が知られている。また、投影レンズとして、一般的に、左右対称の両凸レンズが用いられる。この投影レンズでは、水平断面において、入射面が後方側に凸状に湾曲し、出射面が前方側に凸状に湾曲し、投影レンズの中心軸は、入射面の左右両端を結ぶ線分の中心を通り当該線分と垂直な基準面上に位置する。上記特許文献1の車両用前照灯において、ヘッドランプ及びコーナリングランプの構成をそれぞれ上記の構成にする場合、ヘッドランプとコーナリングランプとで投影レンズが個別に設けられることになる。このため、車両用前照灯が全体として大型化する傾向にあり、当該大型化を抑制したいとの要請がある。
【0005】
この要請に対しては、例えば、ヘッドランプとコーナリングランプとで投影レンズを共有することが考えられる。この場合、例えば、ヘッドランプ用光源を基準とする左右方向の一方側にコーナリングランプ用光源を配置させる。そして、ヘッドランプ用投影レンズの入射面におけるコーナリングランプ用光源側に、コーナリングランプ用光源からの光を入射させ、当該光をヘッドランプ用投影レンズの出射面から出射させることが考えられる。この場合、コーナリングランプ用光源からの光の多くは、入射面におけるコーナリングランプ用光源側において投影レンズの中心軸に近づくように斜めに入射する。このように光が斜めに入射する場合、投影レンズ内を伝搬して出射面に到達する光の当該出射面への入射角が大きくなることがある。出射面への入射角が大きくなると、光が出射面で全反射し易くなるため、コーナリングランプ用光源からの光にロス光が生じる場合がある。このため、このようなロス光を低減してエネルギー効率を向上したいとの要請がある。
【0006】
そこで本発明は、大型化を抑制しつつエネルギー効率を向上し得る車両用前照灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的の達成のため、本発明の車両用前照灯は、ロービームの配光パターンを形成する第1光を出射する第1光源と、前記第1光源を基準とする左右方向の一方側に配置され、少なくとも一部が前記ロービームの配光パターンの側方に位置する側方配光パターンを形成する第2光を出射する第2光源と、前記第1光源及び前記第2光源より前方に配置され、水平断面において後方側に凸状に湾曲し前記第1光及び前記第2光が入射する入射面と、前記入射面から入射する前記第1光及び前記第2光が出射する出射面とを有する投影レンズと、を備え、前記投影レンズを上方から見る場合、前記入射面に向かう前記第2光の光軸は、前記入射面のうち当該入射面における頂点より前記第2光源側の領域と交わり、前記頂点は、前記入射面の左右両端を結ぶ線分の中心を通り当該線分と垂直な第1基準面より前記第2光源側と反対側に位置することを特徴とする。
【0008】
この車両用前照灯によれば、第1光及び第2光を1つの投影レンズから出射するため、第1光を出射する投影レンズと第2光を出射する投影レンズとを個別に備える場合と比べて、車両用前照灯の大型化を抑制し得る。また、この車両用前照灯では、上記のように、投影レンズを上方から見る場合、入射面に向かう第2光の光軸は、入射面のうち当該入射面における頂点より第2光源側の領域と交わる。このため、この車両用前照灯では、第2光の多くは、入射面のうち当該入射面における頂点より第2光源側の領域に入射する。一般的に、入射面の頂点が第1基準面上に位置する状態から第1基準面と垂直な方向に移動すると、入射面における頂点より第1基準面側の領域の左右方向の幅が長くなる。このため、入射面における当該領域と第1基準面となす角の平均が大きくなって90°に近づく傾向にある。この車両用前照灯では、入射面の頂点は、第1基準面より第2光源側と反対側に位置する。このため、この車両用前照灯によれば、入射面の頂点が第1基準面上に位置する場合と比べて、第2光の入射面への入射角が大きくなって当該第2光の入射面での屈折角も大きくなり得る。このため、この車両用前照灯によれば、上記の場合と比べて、入射面から出射面に向かう第2光の伝搬方向を第1基準面に沿うようにし得る。一般的に、第1基準面は前後方向に延在するため、出射面に向かう光の伝搬方向が第1基準面に沿うようにすると、出射面への光の入射角が小さくなる傾向にある。このため、この車両用前照灯によれば、上記の場合と比べて、第2光の出射面への入射角を小さくし得、第2光が出射面で全反射し難くし得、エネルギー効率を向上し得る。
【0009】
前記出射面は、水平断面において前方側に凸状に湾曲し、前記側方配光パターンの少なくとも一部は、前記ロービームの配光パターンにおける前記一方側と反対側に位置し、前記投影レンズを上方から見る場合、前記出射面の左右両端を結ぶ線分の中心から前記ロービームの配光パターンのカットオフラインにおけるエルボー点に向かう半直線は、前方に向かうに従って、前記出射面の左右両端を結ぶ線分の中心を通り当該線分と垂直な第2基準面から前記一方側に離れるように前記第2基準面に対して傾いてもよい。
【0010】
この車両用前照灯では、上記の半直線が上記の第2基準面上に位置する場合と比べて、出射面の向きが左右両端を結ぶ線分の中心から側方配光パターンに向かう方向に近づくようにし得る。このため、この車両用前照灯によれば、上記の場合と比べて、第2光の出射面への入射角を小さくし得、第2光が出射面で全反射し難くし得、エネルギー効率を向上し得る。
【0011】
前記出射面は、水平断面において前方側に凸状に湾曲し、左右方向において、前記出射面の曲率は、当該出射面の外縁に近づくほど小さくてもよい。
【0012】
前記入射面における前記頂点は、前記投影レンズの光軸上に位置してもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、大型化を抑制しつつエネルギー効率を向上し得る車両用前照灯を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態における車両用前照灯を示す平面図である。
図2】灯具ユニットの分解斜視図である。
図3】灯具ユニットの鉛直断面図である。
図4】光源部の平面図である。
図5】ヒートシンク及び光源部が取り外された状態の灯具ユニットの平面図である。
図6】投影レンズの水平断面図である。
図7図5において投影レンズを含む部位を拡大して示す図である。
図8図3の一部を拡大し、第1光源から出射する第1光及び第2光源から出射する第2光の光路例を示す図である。
図9図5において、第1光源から出射する第1光及び第2光源から出射する第2光の光路例を示す図である。
図10】ロービームの配光パターン及び側方配光パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る車両用前照灯の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができる。また、本発明は、以下に例示する実施形態における構成要素を適宜組み合わせてもよい。なお、以下で参照する図面では、理解を容易にするために、各部材の寸法を変えて示す場合がある。また、図面では、見易さのため、同様の構成要素については一部にのみ参照符号が付され、一部参照符号が省略される場合がある。
【0016】
図1は、本発明の実施形態における車両用前照灯を示す平面図である。車両用前照灯は、一般的に車両の前方の左右方向のそれぞれに備えられるものである。本明細書において「右」とは車両の前進方向において右側を意味し、「左」とは車両の前進方向において左側を意味する。左右の車両用前照灯のそれぞれは、概ね同様の構成とされる。このため、以下では、一方の車両用前照灯について説明する。
【0017】
本実施形態の車両用前照灯1は、筐体10と灯具ユニットLUとを主な構成として備える。なお、図1において、筐体10は水平断面にて示されている。筐体10は、ランプハウジング11及び光透過性を有するフロントカバー12を有する。ランプハウジング11の前方は開口しており、当該開口を塞ぐようにフロントカバー12がランプハウジング11に固定される。ランプハウジング11及びフロントカバー12によって形成される空間内に灯具ユニットLUが収容される。
【0018】
図2は、灯具ユニットLUの分解斜視図であり、灯具ユニットLUを前方斜め上方から見る分解斜視図である。図3は、灯具ユニットLUの鉛直断面図であり、後述する投影レンズ60の光軸に沿う鉛直断面図である。図2図3に示すように、本実施形態の灯具ユニットLUは、ヒートシンク20と、光源部30と、リフレクタ40と、投影レンズ60と、シェード70と、スロープ部75と、ホルダ80と、第1サブリフレクタ90と、第2サブリフレクタ88と、を主な構成として備える。
【0019】
図1図2に示すように、本実施形態のヒートシンク20は、メイン部21と、一対の側壁部22と、後壁部23と、フィン24とを含む。メイン部21は、概ね水平方向に延在する板状の部材であり、側壁部22は、メイン部21の左右方向の両縁から下方に延在する板状の部材であり、後壁部23は、メイン部21の後縁から下方に延在する板状の部材である。本実施形態では、後壁部23は2つに分割されている。メイン部21と側壁部22とは一体であり、メイン部21と後壁部23とは、一体である。なお、二つの部材が一体であるとは、二つの部材を接続する接続部が非形成であることである。本実施形態では、メイン部21、側壁部22、及び後壁部23は、金属板に折り曲げ加工することで形成される。
【0020】
メイン部21には、厚み方向である上下方向に貫通する第1貫通孔2h1、第2貫通孔2h2、2つのねじ用孔2h3、及び2つのピン用孔2h4を有する。本実施形態では、第1貫通孔2h1は、左右方向に長尺である。第1貫通孔2h1の前縁は左側から右側に向かって後方に近づくように傾斜する直線状であり、後縁は後方側に凸状に湾曲する弧状である。
【0021】
本実形態のフィン24は、第1貫通孔2h1を規定する面のうち、前縁を規定する面からメイン部21より上方まで延在する板状部材である。なお、上下方向において、第1貫通孔2h1の一部は、フィン24と重なっていない。本実施形態では、フィン24は、板状のメイン部21に打ち抜き加工及び折り曲げ加工することで形成される。
【0022】
ヒートシンク20を構成する材料として、例えばアルミニウム等の金属が挙げられる。
【0023】
図4は、光源部30の平面図である。図2図4に示すように、本実施形態の光源部30は、3つの第1光源31a,31b,31cと、第2光源32と、回路基板33とを有する。回路基板33は、ヒートシンク20における、メイン部21の下面に載置される。回路基板33は、メイン部21のねじ用孔2h3に対応する位置に貫通孔3h1を有し、ピン用孔2h4に対応する位置に貫通孔3h2を有する。
【0024】
第1光源31a,31b,31c及び第2光源32は、回路基板33の下面に搭載され、回路基板33から電力が供給されることで白色の光を出射する。本実施形態では、第1光源31a,31b,31c及び第2光源32は、LED(Light Emitting Diode)であり、下方に向かって光を出射する。第1光源31bは第1光源31aより左側かつ前方に配置され、第1光源31cは第1光源31bより左側かつ前方に配置される。第1光源31a,31b,31cは、ロービーム用の光源であり、ロービームの配光パターンを形成する第1光を出射する。第2光源32は、第1光源31cより左側かつ前方に配置され、少なくとも一部がロービームの配光パターンの側方に位置する側方配光パターンを形成する第2光を出射する。本実施形態では、これら第1光源31a,31b,31c及び第2光源32は、後方側に凸状に湾曲する弧に沿うように並んでいる。なお、第2光源32は、第1光源31a,31b,31cを基準とする左側に配置されていればよく、第1光源31a,31b,31c及び第2光源32の種類、数は、制限されるものではない。また、配光パターンとは、例えば、車両の前方に位置する鉛直な面に照射される光により描かれる光のパターンであり、光の外形の他に、光の強度分布を含む。
【0025】
図5は、ヒートシンク20及び光源部30が取り外された状態の灯具ユニットLUの平面図であり、当該状態の灯具ユニットLUを上方から見る図である。なお、図5において、光源部30は破線で示されている。図3図5に示すように、本実施形態のリフレクタ40は、固定部41と本体部50とを備える。本実施形態の固定部41は、水平方向に延在する板状部材である。固定部41の上面には、メイン部21の2つのねじ用孔2h3のそれぞれに対応する位置に上方に向かって突出するボス42と、メイン部21の2つのピン用孔2h4のそれぞれに対応する位置に上方に向かって突出する位置決めピン43とが固定部41と一体に設けられている。それぞれのボス42には、先端面からボス42に沿ってねじ孔42hが設けられている。また、固定部41の上面には、4つの突起44が固定部41と一体に設けられている。4つの突起44の先端面は、概ね同じ水平面上に位置し、1つの突起44は左右方向に長尺な棒状であり、他の3つの突起44は、円形状である。
【0026】
図2に示すように、ボス42は回路基板33の貫通孔3h1に挿入され、位置決めピン43は回路基板33の貫通孔3h2及びヒートシンク20のメイン部21におけるピン用孔2h4に挿入され、回路基板33の下面が4つの突起44の先端面に当接する。そして、ねじ95がメイン部21のねじ用孔2h3に挿入され、ねじ孔42hに締結されることで、メイン部21が固定部41に固定される。また、回路基板33は、メイン部21と4つの突起44とに挟み込まれ、固定部41に固定される。こうして、ヒートシンク20と光源部30とが固定部41に固定される。
【0027】
図3図5に戻って、本実施形態の本体部50は、固定部41の前端から前方斜め下方に向かって延在する板状部材であり、光源部30の下方に位置する。本体部50の上面は、3つの第1反射面51a,51b,51cと、第2反射面52と、を含む。第1反射面51aは、第1光源31aの下方に位置し下方に向かって凹状に湾曲する曲面であり、第1光源31aからの第1光を前方に向かって反射する。第1反射面51bは、第1光源31bの下方に位置し下方に向かって凹状に湾曲する曲面であり、第1光源31bからの第1光を前方に向かって反射する。第1反射面51cは、第1光源31cの下方に位置し下方に向かって凹状に湾曲する曲面であり、第1光源31cからの第1光を前方に向かって反射する。第2反射面52は、第2光源32の下方に位置し下方に向かって凹状に湾曲する曲面であり、第2光源32からの第2光を前方に向かって反射する。第2光源32は第1光源31a,31b,31cより左側に位置するため、第2反射面52も第1光源31a,31b,31cより左側に位置する。
【0028】
このため、リフレクタ40における第1反射面51a,51b,51cを含む部位は、第1光を前方へ反射する第1リフレクタ40aであり、リフレクタ40における第2反射面52を含む部位は、第2光を前方へ反射する第2リフレクタ40bであり、第2リフレクタ40bは第1光源31a,31b,31cより左側に位置する。つまり、リフレクタ40は、上記の第1リフレクタ40aと第2リフレクタ40bとを含み、第2リフレクタ40bは第1光源31a,31b,31cより左側に配置される。また、これら第1リフレクタ40aと第2リフレクタ40bとが一体であると理解できる。
【0029】
本実施形態では、第1反射面51aは回転楕円曲面を基調とし、楕円曲面の第1焦点は、第1光源31aまたは第1光源31aの近傍に位置する。また、第1反射面51bは、左右に並ぶ2つの回転楕円曲面を基調とし、2つの楕円曲面を接続した曲面であり、それぞれの第1焦点は、第1光源31bまたは第1光源31bの近傍に位置する。また、第1反射面51cは、第1反射面51bと同様に、左右に並ぶ2つの回転楕円曲面を基調とした曲面であり、それぞれの第1焦点は、第1光源31cまたは第1光源31cの近傍に位置する。また、第2反射面52は、第1反射面51bと同様に、左右に並ぶ2つの回転楕円曲面を基調とした曲面であり、それぞれの第1焦点は、第2光源32または第2光源32の近傍に位置する。なお、第1反射面51a,51b,51c及び第2反射面52は、制限されるものではない。例えば、第1反射面51aは、第1反射面51bと同様に、左右に並ぶ2つの回転楕円曲面を基調とした曲面であってもよく、第1反射面51b,51c及び第2反射面52は、第1反射面51aと同様に、1つの回転楕円曲面を基調とした曲面であってもよい。
【0030】
また、本実施形態では、3つの第1反射面51a,51b,51c及び第2反射面52は、第1光源31a,31b,31c及び第2光源32と同様に、後方側に凸状に湾曲する弧に沿うように並んでいる。また、第1反射面51aの外縁における左側の一部は、第1反射面51bの外縁における右側の一部を兼ねる。このため、第1反射面51aの外縁の一部が第1反射面51bの外縁の一部を兼ねない場合と比べて、第1反射面51aと第1反射面51bとを近づけ得る。また、第1反射面51bの外縁における左側の一部は、第1反射面51cの外縁における右側の一部を兼ね、第1反射面51cの外縁における左側の一部は、第2反射面52の外縁における右側の一部を兼ねる。このため、第1反射面51bの外縁の一部が第1反射面51cの外縁の一部を兼ねない場合と比べて、第1反射面51bと第1反射面51cとを近づけ得、第1反射面51cの外縁の一部が第2反射面52の外縁の一部を兼ねない場合と比べて、第1反射面51cと第2反射面52とを近づけ得る。なお、第1反射面51aの外縁の一部は第1反射面51bの外縁の一部を兼ねなくてもよく、第1反射面51bの外縁の一部は第1反射面51cの外縁の一部を兼ねなくてもよく、第1反射面51cの外縁の一部は第2反射面52の外縁の一部を兼ねなくてもよい。
【0031】
また、図1に示すように、本実施形態では、第1反射面51a,51b,51c及び第2反射面52は、上下方向においてヒートシンク20のメイン部21における第1貫通孔2h1と重なり外部に露出する。なお、第1反射面51a,51b,51c及び第2反射面52は、第1貫通孔2h1と重ならなくてもよい。
【0032】
図6は、投影レンズ60の水平断面図である。図2図3図5図6に示すように、本実施形態の投影レンズ60は、透過する光の発散角を変化させるレンズ本体部61とレンズ本体部61の外周に設けられるフランジ状の固定部69とを有し、リフレクタ40より前方に配置される。
【0033】
本実施形態では、レンズ本体部61は、外形が左右方向に長尺な概ね矩形状の両凸非球面レンズであり、後方側に位置する入射面62は鉛直断面及び水平断面において後方側に凸状に湾曲し、前方側に位置する出射面63は鉛直断面及び水平断面において前方側に凸状に湾曲する。入射面62の左右両端62eは、固定部69の後面より前方に位置する。入射面62には、第1反射面51a,51b,51cで反射された第1光源31a,31b,31cからの第1光、及び第2反射面52で反射された第2光源32からの第2光が入射し、入射面62から入射する第1光及び第2光が出射面63から出射する。つまり、レンズ本体部61は、第1リフレクタ40aで反射された第1光源31a,31b,31cからの第1光が透過し当該第1光の発散角を変化させる第1レンズ本体部と、第2リフレクタ40bで反射された第2光源32からの第2光が透過し当該第2光の発散角を変化させる第2レンズ本体部とを含む。また、第1レンズ本体部と第2レンズ本体部とが一体であると理解できる。このため、投影レンズ60は、第1リフレクタ40aで反射された第1光L1が透過する第1投影レンズ60aと、第2リフレクタ40bで反射された第2光L2が透過する第2投影レンズ60bとが一体にされた構成であると理解できる。
【0034】
図7は、図6において投影レンズ60を含む部位を拡大して示す図である。なお、図7では、後述するホルダ80のレンズ保持部81の記載が省略されている。本実施形態では、図7に示すように、投影レンズ60を上方から見る場合、第2反射面52で反射し入射面62に向かう第2光の光軸LA2は、第1基準面64より第2光源32側である左側に位置し、入射面に向かうに従って第1基準面64に近づく。第1基準面64は、入射面62の左右両端62e,62eを結ぶ線分65の中心65cを通り当該線分65と垂直な面である。そして、光軸LA2は、入射面62のうち当該入射面62における頂点62tより左側の領域と交わる。また、頂点62tは、第1基準面64より右側に位置する。
【0035】
また、本実施形態では、出射面63の左右両端63e,63eを結ぶ線分66の中心66cからロービームの配光パターンのカットオフラインにおけるエルボー点に向かう半直線67は、前方に向かうに従って、第2基準面68から左側に離れるように第2基準面68に対して傾く。第2基準面68は、線分66の中心66cを通り当該線分66と垂直な面である。なお、半直線67と第2基準面68との関係は制限されるものではない。例えば、半直線67が第2基準面68上に位置してもよい。
【0036】
また、本実施形態では、左右方向において、出射面63の曲率は、当該出射面63の外縁に近づくほど小さい。しかし、出射面63の曲率は、制限されるものではない。例えば、左右方向において、出射面63の曲率は、一定であってもよい。
【0037】
また、本実施形態では、投影レンズ60の光軸60cは、半直線67と概ね平行であり、この光軸60c上に入射面62における頂点62tが位置する。また、投影レンズ60の後方側の焦点は、第1反射面51aの楕円曲面の第2焦点または当該第2焦点の近傍に位置している。なお、光軸60cは半直線67と非平行であってもよく、頂点62tは光軸60c上に位置しなくてもよい。また、投影レンズ60の後方側の焦点は、制限されるものではない。なお、図5図7において、図が煩雑になることを抑制するために、光軸60cの位置を左右方向に僅かにずらしてある。
【0038】
また、本実施形態では、第1反射面51aで反射し入射面62に向かう第1光の光軸LA1aは、概ね光軸60cと一致し、頂点62tを通る。また、第1反射面51bで反射し入射面62に向かう第1光の光軸LA1bは、第1基準面64より右側に位置し、第1反射面51cで反射し入射面62に向かう第1光の光軸LA1cは、第1基準面64より左側に位置し、入射面62に向かうに従って第1基準面64に近づく。そして、これら光軸LA1b,LA1cは、入射面62のうち当該入射面62における頂点62tより左側の領域と交わる。なお、光軸LA1a,LA1b,LA1cと入射面62との関係は、制限されるものではない。例えば、光軸LA1aは、光軸60cと一致しなくてもよい。
【0039】
本実施形態では、固定部69の外形は概ね左右方向に長尺な矩形状であり、固定部69は2つのピン用孔69hを有する。投影レンズ60を構成する材料としては、例えば樹脂、ガラス等が挙げられ、本実施形態では、レンズ本体部61と固定部69とが一体である。
【0040】
図3図5に示すように、本実施形態のシェード70は、リフレクタ40と投影レンズ60との間に配置され、前後及び左右方向に延在する板状部材である。シェード70は、リフレクタ40の前端より上方かつヒートシンク20のメイン部21より下方に位置し、後方側に凸状に湾曲する弧に沿うように湾曲している。シェード70の上面70sは、前方に向かって上方側に傾斜する。また、上面70sの前縁71は、右側から左側に向かって上方側に傾く段差部72を有し、前縁71における段差部72以外の部位は、概ね水平方向と平行である。前縁71における段差部72または段差部72の近傍には、第1反射面51aの楕円曲面の第2焦点が位置している。また、前縁71における段差部72より左側の部位または当該部位の近傍には、第1反射面51b,51c及び第2反射面52のそれぞれの楕円曲面の第2焦点が位置している。なお、第1反射面51cの楕円曲面の第2焦点は、第1反射面51bの第2焦点より左側に位置し、第2反射面52の楕円曲面の第2焦点は、第1反射面51cの第2焦点より左側に位置する。
【0041】
シェード70の上面70sには、第1反射面51a,51b,51cで反射された第1光源31a,31b,31cからの第1光の一部及び第2反射面52で反射された第2光源32からの第2光の一部が照射され、これら光を遮る。つまり、シェード70は、第1リフレクタ40aで反射された第1光源31a,31b,31cからの第1光の一部を遮る第1シェード70aと、第2リフレクタ40bで反射された第2光源32からの第2光の一部を遮る第2シェード70bとを含む。また、第1シェード70aと第2シェード70bとが一体であると理解できる。
【0042】
本実施形態では、シェード70の上面70sのうち第1光源31aからの第1光が照射される領域と第1光源31bからの第1光が照射される領域とが重なり、第1光源31bからの第1光が照射される領域と第1光源31cからの第1光が照射される領域とが重なり、第1光源31aからの第1光が照射される領域と第2光源32からの第2光が照射される領域とが重なる。本実施形態のシェード70は、上面70sが光を反射する反射面とされ、当該上面70sが第1光の一部及び第2光の一部を反射することで当該第1光の一部及び第2光の一部を遮る。
【0043】
本実施形態のスロープ部75は、リフレクタ40とシェード70とを接続する板状部材である。スロープ部75は、リフレクタ40の前端から前方斜め上方に向かって延在し、シェード70の後端に接続する。このため、スロープ部75の上面76は、前方に向かって上方側に傾斜する。本実施形態では、上面76は、第1光源31a,31b,31cからの第1光の他の一部を後述する第1サブリフレクタ90に向けて反射する反射面である。
【0044】
前述のように、リフレクタ40は第1リフレクタ40aと第2リフレクタ40bとを含み、シェード70は第1シェード70aと第2シェード70bとを含む。このため、スロープ部75は、第1リフレクタ40aと第1シェード70aとを接続する第1スロープ部75aと、第2リフレクタ40bと第2シェード70bとを接続する第2スロープ部75bとを含む。また、第1スロープ部75aと第2スロープ部75bとが一体であると理解できる。
【0045】
図2図3図5に示すように、本実施形態のホルダ80は、レンズ保持部81と接続部85とを有し、投影レンズ60を保持する。
【0046】
本実施形態のレンズ保持部81は、シェード70より前方に配置され、上下及び左右方向に延在する板状部材である。レンズ保持部81の概ね左右方向に長尺な矩形状である。レンズ保持部81は、厚み方向に貫通する貫通孔81hを有し、貫通孔81hは投影レンズ60のレンズ本体部61に対応する矩形状である。レンズ保持部81の前面には、投影レンズ60の固定部69の2つのピン用孔69hのそれぞれに対応する位置に前方に向かって突出するピン82がレンズ保持部81と一体に設けられる。また、レンズ保持部81の前面における貫通孔81hの周囲には、前方に向かって突出する複数の台座部83がレンズ保持部81と一体に設けられる。ピン82は、投影レンズ60の固定部69のピン用孔69hに挿入され、固定部69は台座部83に前方側から当接する。固定部69が例えばレーザ溶着等により台座部83に固定されて投影レンズ60がホルダ80に支持される。投影レンズ60がホルダ80に支持された状態において、レンズ本体部61における固定部69より後方側の部位が、レンズ保持部81の貫通孔81hに挿入される。
【0047】
本実施形態の接続部85は、レンズ保持部81とシェード70とを接続する板状部材であり、レンズ保持部81の後面における貫通孔81hより下方から後方に延在する下板部86と、下板部86の後端から上方斜め後方に向かって延在しシェード70の前端に接続される後板部87とを有する。本実施形態では、後板部87のうち、リフレクタ40の第1反射面51aの前方に位置しシェード70における第1光源31aからの第1光を遮る部位に接続する部位は、後方に向かって凹状に湾曲した第2サブリフレクタ88とされる。このため、第2サブリフレクタ88はシェード70より前方かつ下方に位置し、第2サブリフレクタ88の前面89は、後方に向かって凹状に湾曲した曲面である。そして、この前面89は、後述する第1サブリフレクタ90で反する光を投影レンズ60に向けて反射する。
【0048】
本実施形態の第1サブリフレクタ90は、第1光源31a,31b,31c及び第2光源32より前方かつシェード70より上方に位置する板状部材であり、ヒートシンク20のメイン部21の下面に配置される。本実施形態では、第1サブリフレクタ90の下面91は、リフレクタ40の第1反射面51a,51b及びスロープ部75で反射された第1光の一部を第2サブリフレクタ88に向けて反射する。なお、第1サブリフレクタ90は、第1反射面51a,51b,51cの少なくとも1つで反射された第1光の一部を第2サブリフレクタ88に向けて反射すればよく、例えば、第1反射面51aで反射された第1光の一部のみを第2サブリフレクタ88に向けて反射してもよい。第1サブリフレクタ90を構成する材料としては、例えばアルミニウム等の金属が挙げられる。
【0049】
本実施形態では、上記のように、リフレクタ40とシェード70とはスロープ部75を介して接続し、シェード70にホルダ80が接続しており、ホルダ80の一部が第2サブリフレクタ88とされている。これらリフレクタ40、シェード70、スロープ部75、ホルダ80は一体であり、図3に示すように、これら部材によって1つのユニット部材UPが構成されている。本実施形態では、ユニット部材UPは、本体部UP1と、光反射膜UP2とから成る。光反射膜UP2は、本体部UP1のうち、リフレクタ40、シェード70、スロープ部75、及びホルダ80の接続部85から成る部位の上面に設けられる。本体部UP1を構成する材料としては、例えば、樹脂等が挙げられ、光反射膜UP2としては、例えばアルミニウム等の金属蒸着膜が挙げられる。また、本実施形態では、投影レンズ60の光軸60cに沿う鉛直断面において、リフレクタ40、シェード70、スロープ部75、及びホルダ80は連続している。
【0050】
次に、本実施形態の車両用前照灯1の動作について説明する。図8は、図3の一部を拡大し、第1光源31a,31b,31cから出射する第1光及び第2光源32から出射する第2光の光路例を示す図である。図9は、図5において、第1光源31a,31b,31cから出射する第1光及び第2光源32から出射する第2光の光路例を示す図である。なお、図8図9に示す光の反射角や屈折角等は僅かにずれている場合がある。
【0051】
本実施形態の車両用前照灯1では、第1光源31a,31b,31cから下方に向けて第1光L1を出射することで、ロービームの配光パターンが形成され、第2光源32から下方に向けて第2光L2を出射することで、側方配光パターンが形成される。
【0052】
まず、ロービームの配光パターンの形成について説明する。図8図9に示すように、第1光源31a,31b,31cからの第1光L1のそれぞれは、主にリフレクタ40の第1反射面51a,51b,51cで前方へ向けて反射される。第1反射面51a,51b,51cで反射された第1光L1において、一部はシェード70で遮られずに投影レンズ60の入射面62に直接入射し、他の一部は、シェード70の上面に照射され、別の他の一部は、第1サブリフレクタ90の下面91に照射される。入射面62に直接入射した第1光L1は、出射面63から出射する。シェード70の上面70sにおける第1光L1が照射される領域は、当該上面70sの前縁71における段差部72を含む部位に連続して接してる。そして、シェード70の上面70sは、第1光L1が投影レンズ60に入射しないように反射して当該第1光L1を遮る。このため、第1光L1が形成する配光パターンにカットオフラインが形成され、当該配光パターンがロービームの配光パターンとなる。つまり、シェード70は、ロービームの配光パターンのカットオフラインを形成しており、ロービームの配光パターンのカットオフラインは前縁71に対応する形状となる。このようにしてロービームの配光パターンが第1光L1によって形成され、このロービームの配光パターンを有する光が灯具ユニットLUから出射し、フロントカバー12を介して前方に照射される。上記のように、投影レンズ60の後方焦点は、シェード70の上面の前縁71またはその近傍に位置していため、前方に投影されるロービームの配光パターンは、投影レンズ60によって反転される配光パターンである。
【0053】
第1サブリフレクタ90の下面91に照射される第1光L1は、第2サブリフレクタ88の前面89に向けて反射され、前面89は第1サブリフレクタ90の下面91で反射された第1光L1を投影レンズ60に向けて反射する。前面89で反射された第1光L1は投影レンズ60を透過し前方に照射され、当該第1光L1によって形成される配光パターンがロービームの配光パターンに付加される。第2サブリフレクタ88は、シェード70より前方かつ下方に位置し、第2サブリフレクタ88の前面89おける第1光L1が照射される領域は、シェード70の上面70sの前縁71と離隔し当該前縁71より下方に位置する。このため、第2サブリフレクタ88の前面89で反射された第1光L1によって形成される配光パターンは、ロービームの配光パターンより上方に位置するオーバーヘッドサイン用の配光パターンとなる。
【0054】
図10は、本実施形態におけるロービームの配光パターン及び側方配光パターンを示す図である。図10において、Sは水平線を示し、Vは車両の左右方向の中心を通る鉛直線を示し、車両の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に投影されるロービームの配光パターンPLが太線で示される。リフレクタ40の第1反射面51a,51b,51c及びシェード70は、第1光L1の配光パターンがこのようなロービームの配光パターンPLとなるような形状とされる。本実施形態のロービームの配光パターンPLは、車両が左側通行である国や地域におけるものである。また、ロービームの配光パターンPLのカットオフラインCLは、シェード70の上面の前縁71の形状に対応しており、カットオフラインCLには、段差部72に対応する段差部CLaが形成されている。段差部CLaは、水平線Sより下方かつ鉛直線V上またはその近傍に位置するエルボー点EPから左側に向かって上方に傾斜する線から成る。カットオフラインCLにおける段差部CLa以外の部位は、概ね水平方向に延在する。また、ロービームの配光パターンPLには、第2サブリフレクタ88の前面89で反射された第1光L1によって形成されるオーバーヘッドサイン用の配光パターンOHが付加される。オーバーヘッドサイン用の配光パターンOHは、ロービームの配光パターンPLより上方に位置し、カットオフラインCLと離隔している。
【0055】
次に、側方配光パターンの形成について説明する。図8図9に示すように、第2光源32からの第2光L2は、主にリフレクタ40の第2反射面52で前方へ向けて反射される。第2反射面52で反射された第1光L1において、一部はシェード70で遮られずに投影レンズ60の入射面62に直接入射し、他の一部は、シェード70の上面に照射される。第2反射面52から入射面62に向かう第2光L2の光軸LA2は、入射面62における頂点62tより第2光源32側の領域と交わるため、当該第2光L2の多くは、当該領域に入射する。入射面62に直接入射した第2光L2は、出射面63から出射する。シェード70の上面70sにおける第2光L2が照射される領域は、当該上面70sの前縁71における段差部72より左側の部位に連続して接してる。そして、シェード70の上面70sは、第2光L2が投影レンズ60に入射しないように反射して当該第2光L2を遮る。このため、第2光L2が形成する配光パターンに、前縁71に対応する形状の上縁が形成される。このようにして上縁が前縁71に対応する形状にされた配光パターンが第2光L2によって形成され、この配光パターンを有する光が灯具ユニットLUから出射し、フロントカバー12を介して前方に照射される。ここで、第2光L2の光軸LA2は、第1反射面51a,51b,51cから入射面62に向かうそれぞれの第1光L1の光軸LA1a,LA1b,LA1cより左側に位置している。このため、第2光L2によって形成される配光パターンの少なくとも一部は、ロービームの配光パターンPLの右側に位置する。こうして、図10に示すように、第2光L2によって、少なくとも一部がロービームの配光パターンの右側に位置する側方配光パターンPSが形成される。また、上記のように、シェード70の上面のうち、第1光源31cからの第1光L1が照射される領域と第2光源32からの第2光L2が照射される領域とが重なり、シェード70の上面70sの前縁71における段差部72以外の部位は、概ね水平方向と平行である。このため、側方配光パターンPSの上縁UEとカットオフラインCLにおけるエルボー点EPより右側の部位とが概ね一致するが、一致しなくてもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の車両用前照灯1は、第1光源31a,31b,31cと、第2光源32と、投影レンズ60と、を備える。第1光源31a,31b,31cは、ロービームの配光パターンPLを形成する第1光L1を出射する。第2光源32は、第1光源31a,31b,31cより左側に配置され、少なくとも一部がロービームの配光パターンPLの側方に位置する側方配光パターンPSを形成する第2光を出射する。投影レンズ60は、水平断面において後方側に凸状に湾曲し第1光L1及び第2光L2が入射する入射面62と、入射面62から入射する第1光L1及び第2光L2が出射する出射面63とを有する。本実施形態の車両用前照灯1によれば、第1光L1及び第2光L2を1つの投影レンズ60から出射するため、第1光L1を出射する投影レンズと第2光L2を出射する投影レンズとを個別に備える場合と比べて、車両用前照灯1の大型化を抑制し得る。
【0057】
また、本実施形態の車両用前照灯1では、投影レンズを上方から見る場合、入射面62に向かう第2光L2の光軸LA2は、入射面62のうち当該入射面62における頂点62tより左側の領域と交わる。このため、本実施形態の車両用前照灯1では、第2光L2の多くは、入射面62のうち当該入射面62における頂点62tより左側の領域に入射する。一般的に、入射面62の頂点62tが、入射面62の左右両端62eを結ぶ線分65の中心65cを通り当該線分65と垂直な第1基準面64上に位置する状態から第1基準面64と垂直な方向に移動すると、頂点62tより第1基準面64側の領域の左右方向の幅が長くなる。このため、入射面62における当該領域と第1基準面64となす角の平均が大きくなって90°に近づく傾向にある。本実施形態の車両用前照灯1では、頂点62tは、第1基準面64より右側に位置する。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、頂点62tが第1基準面64上に位置する場合と比べて、第2光L2の入射面62への入射角が大きくなって当該第2光L2の入射面62での屈折角も大きくなり得る。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、上記の場合と比べて、入射面62から出射面63に向かう第2光L2の伝搬方向を第1基準面64に沿うようにし得る。一般的に、第1基準面64は前後方向に延在するため、出射面63に向かう光の伝搬方向が第1基準面64に沿うようにすると、出射面63への光の入射角が小さくなる傾向にある。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、上記の場合と比べて、第2光L2の出射面への入射角を小さくし得、第2光L2が出射面63で全反射し難くし得、エネルギー効率を向上し得る。
【0058】
なお、入射面62の後方側への膨らみを小さくすることで、つまり入射面62の頂点62tの位置を出射面63に近づけることで、入射面62と第1基準面64とのなす角を小さくし得る。しかし、この場合、投影レンズ60の後方側の焦点が投影レンズ60から遠くなり、第1光源31a,31b,31c及び第2光源32と投影レンズ60との距離が大きく成り得る。しかし、本実施形態の車両用前照灯1によれば、頂点62tの位置を出射面63に近づけなくても第2光L2が出射面63で全反射し難くし得、車両用前照灯1の大型化を抑制し得る。
【0059】
本実施形態の車両用前照灯1では、出射面63は、水平断面において前方側に凸状に湾曲する。側方配光パターンPSの少なくとも一部は、ロービームの配光パターンPLにおける右側に位置する。また、投影レンズ60を上方から見る場合、出射面63の左右両端を結ぶ線分66の中心66cからロービームの配光パターンPLのカットオフラインCLにおけるエルボー点EPに向かう半直線67は、前方に向かうに従って、線分66の中心66cを通り当該線分66と垂直な第2基準面68から左側に離れるように第2基準面68に対して傾いている。本実施形態の車両用前照灯1では、半直線67が第2基準面68上に位置する場合と比べて、出射面63の向きが中心66cから側方配光パターンに向かう方向に近づくようにし得る。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、上記の場合と比べて、第2光L2の出射面63への入射角を小さくし得、第2光L2が出射面63で全反射し難くし得、エネルギー効率を向上し得る。
【0060】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
例えば、上記実施形態では、鉛直断面及び水平断面において後方側に凸状に湾曲する入射面62を例に説明した。しかし、入射面62は鉛直断面において直線状であってもよい。また、上記実施形態では、鉛直断面及び水平断面において前方側に凸状に湾曲する出射面63を例に説明した。しかし、出射面63は鉛直断面において直線状であってもよく、水平断面において直線状であってもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、リフレクタ40、シェード70、スロープ部75、及びホルダ80が一体であり、ホルダ80の一部が第2サブリフレクタ88であった。しかし、これら部材は別体であってもよく、ホルダ80と第2サブリフレクタ88とが別体であってもよく、車両用前照灯1は、スロープ部75を備えなくてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、第1光源31a,31b,31cより左側に配置される第2光源32を例に説明した。しかし、第2光源32は、第1光源31a,31b,31cを基準とする左右方向の一方側に配置さればよい。例えば、第2光源32は、第1光源31a,31b,31cより右側に配置されてもよい。この場合、第2リフレクタ40bは第1光源31a,31b,31cより右側に配置され、投影レンズ60を上方から見る場合、入射面62に向かう第2光L2の光軸LA2は、入射面62における頂点62tより右側の領域と交わり、入射面62の頂点62tは、第1基準面64より左側に位置する。
【0064】
また、上記実施形態では、第1光源31a,31b,31cの下方に配置される第1リフレクタ40a、及び第2光源32の下方に配置される第2リフレクタ40bを含むリフレクタ40を例に説明した。しかし、第1光L1でロービームの配光パターンPLを形成でき、第2光L2で側方配光パターンPSを形成できる限りにおいて、リフレクタ40は、制限されない。例えば、第1光源31a,31b,31cが上方へ向けて第1光L1を出射し、第2光源32が上方へ向けて第2光L2を出射し、第1リフレクタ40aが第1光源31a,31b,31cの上方に配置され、第2リフレクタ40bが第2光源32の上方に配置されてもよい。また、車両用前照灯1は、リフレクタ40を備えなくてもよく、シェード70を備えなくてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、第1サブリフレクタ90及び第2サブリフレクタ88を備える車両用前照灯1を例に説明した。しかし、車両用前照灯1は、第1サブリフレクタ90及び第2サブリフレクタ88を備えなくてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、第1光L1及び第2光L2を反射することで当該第1光L1及び第2光L2を遮るシェード70を例に説明した。しかし、シェード70は、第1光L1及び第2光L2を吸収することで当該第1光L1及び第2光L2を遮ってもよい。このような構成によれば、第1光L1及び第2光L2が迷光になることを抑制し得る。
【0067】
また、上記実施形態では、一部がロービームの配光パターンPLの右側に位置する側方配光パターンPSを例に説明した。しかし、側方配光パターンPSは、少なくとも一部がロービームの配光パターンPLの側方に位置すればよい。例えば、側方配光パターンPSの一部がロービームの配光パターンPLの左側に位置してもよく、この場合、例えば、第2光源32は、第1光源31a,31b,31cより右側に配置される。つまり、第2光源32は、第1光源31a,31b,31cを基準とする側方配光パターンPSが位置する側と反対側に位置する。また、側方配光パターンPSの全部がロービームの配光パターンPLの右側または左側に位置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、大型化を抑制しつつエネルギー効率を向上し得る車両用前照灯が提供され、自動車等の車両用前照灯などの分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1・・・車両用前照灯
20・・・ヒートシンク
31a,31b,31c・・・第1光源
32・・・第2光源
40・・・リフレクタ
60・・・投影レンズ
62・・・入射面
62t・・・頂点
63・・・出射面
64・・・第1基準面
65,66・・・線分
65c,66c・・・中心
67・・・半直線
68・・・第2基準面
70・・・シェード

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10