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特開2025-141824多層セラミックコンデンサ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025141824
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】多層セラミックコンデンサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20250919BHJP
【FI】
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
H01G4/30 201C
H01G4/30 201D
H01G4/30 311D
H01G4/30 311Z
H01G4/30 517
H01G4/30 513
H01G4/30 516
H01G4/30 515
H01G4/30 512
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2025028064
(22)【出願日】2025-02-25
(31)【優先権主張番号】18/605,891
(32)【優先日】2024-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523209782
【氏名又は名称】ヤゲオ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】YAGEO CORPORATION
【住所又は居所原語表記】No. 16, West 3rd St., N.E.P.Z., Kaohsiung City 811, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100207217
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 智夫
(72)【発明者】
【氏名】藤本 正之
(72)【発明者】
【氏名】呉 明駿
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC04
5E001AC09
5E001AC10
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE05
5E001AJ01
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC35
5E082EE18
5E082EE19
5E082EE23
5E082FF05
5E082FG26
(57)【要約】
【課題】多層セラミックコンデンサ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】多層セラミックコンデンサは、第1端面及び第2端面を有し、複数の誘電体層、及び複数の内電極層を含む多層セラミック煉瓦と、第1端面上に設けられる第1端子電極と、第2端面上に設けられる第2端子電極と、を備え、内電極層のそれぞれは、内層と、内層と誘電体層のうちの1つとの間に位置する第1インジウム隔離層と、を含み、誘電体層は、複数の第2インジウム隔離層を含む。これにより、多層セラミックコンデンサの平均故障間隔を改善し、多層セラミックコンデンサの耐用年数を延長させることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリウム及びチタンを含む複数のペロブスカイト酸化物と、ホウ素ケイ酸塩ガラスとを含む複数の誘電体層と、前記複数の誘電体層と相互にスタックされる複数の内電極層と、を含み、互いに対向する第1端面及び第2端面を有する多層セラミック煉瓦と、
前記第1端面上に設けられ、且つ前記複数の内電極層の一部に電気的に接続される第1端子電極と、
前記第2端面上に設けられ、且つ前記複数の内電極層の他の一部に電気的に接続される第2端子電極と、
を備え、
前記複数の内電極層のそれぞれは、
材質がニッケルを含む内層と、
前記内層と前記複数の誘電体層のうちの1つとの間に位置し、厚さが1nm~19nmである第1インジウム隔離層と、
を含み、
前記複数の誘電体層は、それぞれ前記複数のペロブスカイト酸化物の複数の結晶粒界に位置する複数の第2インジウム隔離層を含む、多層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記複数のペロブスカイト酸化物の総重量を100wt%とする場合、前記ホウ素ケイ酸塩ガラスの重量を0.01wt%~5wt%とする請求項1に記載の多層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記ホウ素ケイ酸塩ガラスは、三酸化二ホウ素、三酸化二アルミニウム及び二酸化ケイ素を含む請求項1に記載の多層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記複数の内電極層は、インジウムを添加したニッケルペーストで焼結して形成され、且つ前記ニッケルペーストのインジウム添加量は、0.01mol%~5mol%である請求項1に記載の多層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記第1インジウム隔離層の第1インジウム含有量は、前記複数の第2インジウム隔離層のそれぞれの第2インジウム含有量よりも大きい請求項1に記載の多層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
前記複数のペロブスカイト酸化物のチタン含有量及び前記複数の第2インジウム隔離層の第2インジウム含有量の合計を100mol%とする場合、前記第2インジウム含有量を10-20mol%~10-2mol%とする請求項1に記載の多層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
前記第1インジウム隔離層は、インジウム、バリウム及びチタンを含む請求項1に記載の多層セラミックコンデンサ。
【請求項8】
前記複数の第2インジウム隔離層は、インジウム、バリウム及びチタンを含む請求項1に記載の多層セラミックコンデンサ。
【請求項9】
前記複数の内電極層のそれぞれの厚さと前記複数の誘電体層のそれぞれの厚さとの比は、0.4~0.6である請求項1に記載の多層セラミックコンデンサ。
【請求項10】
多層セラミックコンデンサの製造方法であって、
バリウム及びチタンを含む複数のペロブスカイト酸化物と、ホウ素ケイ酸塩ガラスとを含む複数の誘電体層を形成する工程と、
複数の内電極層を形成する工程と、
前記複数の内電極層と前記複数の誘電体層とを交互に積層して、積層体を形成する工程と、
低温焼成除去工程と高温焼結工程とを含む焼結プロセスを行い、前記積層体を多層セラミック煉瓦として形成する工程と、
前記多層セラミック煉瓦の両端にそれぞれ第1端子電極及び第2端子電極を形成して、多層セラミックコンデンサを得る工程と、
を備える多層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項11】
前記複数のペロブスカイト酸化物の総重量を100wt%とする場合、前記ホウ素ケイ酸塩ガラスの重量を0.01wt%~5wt%とする請求項10に記載の多層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項12】
前記ホウ素ケイ酸塩ガラスは、三酸化二ホウ素、三酸化二アルミニウム及び二酸化ケイ素を含む請求項10に記載の多層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項13】
前記複数の内電極層は、インジウムを添加したニッケルペーストで焼結して形成され、且つ前記ニッケルペーストのインジウム添加量は、0.01mol%~5mol%である請求項10に記載の多層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項14】
前記焼結プロセスを行った後、第1インジウム隔離層を前記複数の内電極層のうちのいずれかとそれに対応する前記複数の誘電体層のうちの1つとの間の界面に形成し、且つ複数の第2インジウム隔離層を前記複数のペロブスカイト酸化物の複数の結晶粒界に形成し、また前記第1インジウム隔離層と前記複数の第2インジウム隔離層とが同時に生成される請求項10に記載の多層セラミックコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ及びその製造方法に関し、特に多層セラミックコンデンサ及びその製造方法に関する。
【従来技術】
【0002】
多層セラミックコンデンサ(Multi-layer ceramic capacitor;MLCC)は、セラミックコンデンサの一種であり、且つセラミックコンデンサの電気容量は、製品の表面積及びセラミックフィルムの積層数に比例する。多層セラミックコンデンサは、表面接着技術(Surface mount technology;SMT)によって設けられてもよく、且つ多層セラミックコンデンサは、ウェハを形成しやすく、体積が小さいため、コンデンサ業界の主流製品となり、各種の電子機器に応用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ペロブスカイト酸化物化合物は、多層セラミックコンデンサの誘電体層の材料として、多層セラミックコンデンサのコストを低減させ、且つ多層セラミックコンデンサの効果を向上させることができる。従って、ペロブスカイト酸化物化合物は、多層セラミックコンデンサに広く応用されている。しかしながら、多層セラミックコンデンサにおける内電極層の積層数の増加に伴い、誘電体層の厚さが減少するため、内電極層の間の絶縁抵抗が減少し、多層セラミックコンデンサの信頼性及び高温負荷寿命が低減する。
【0004】
また、誘電体層の厚さが減少すると、周知の多層セラミックコンデンサの平均故障間隔(Mean time to failure;MTTF)が減少し、さらに多層セラミックコンデンサの耐用年数が短縮される。
【0005】
これによって、周知の多層セラミックコンデンサの欠陥を克服できるコンデンサの製造方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、バリウム及びチタンを含む複数のペロブスカイト酸化物と、ホウ素ケイ酸塩ガラスとを含む複数の誘電体層と、誘電体層と相互にスタックされる複数の内電極層と、を含み、互いに対向する第1端面及び第2端面を有する多層セラミック煉瓦と、第1端面上に設けられ、且つ内電極層の一部に電気的に接続される第1端子電極と、第2端面上に設けられ、且つ内電極層の他の一部に電気的に接続される第2端子電極と、を備え、前記複数の内電極層のそれぞれは、材質がニッケルを含む内層と、内層と誘電体層のうちの1つとの間に位置し、厚さが1nm~19nmである第1インジウム隔離層と、を含み、誘電体層は、それぞれペロブスカイト酸化物の複数の結晶粒界に位置する複数の第2インジウム隔離層を含む多層セラミックコンデンサを提供する。
【0007】
前の段落に記載の多層セラミックコンデンサによれば、ペロブスカイト酸化物の総重量を100wt%とする場合、ホウ素ケイ酸塩ガラスの重量を0.01wt%~5wt%としてもよい。
【0008】
前の段落に記載の多層セラミックコンデンサによれば、ホウ素ケイ酸塩ガラスは、三酸化二ホウ素、三酸化二アルミニウム及び二酸化ケイ素を含んでもよい。
【0009】
前の段落に記載の多層セラミックコンデンサによれば、内電極層は、インジウムを添加したニッケルペーストで焼結して形成され、且つニッケルペーストのインジウム添加量は、0.01mol%~5mol%であってもよい。
【0010】
前の段落に記載の多層セラミックコンデンサによれば、第1インジウム隔離層の第1インジウム含有量は、第2インジウム隔離層の各々の第2インジウム含有量よりも大きくてもよい。
【0011】
前の段落に記載の多層セラミックコンデンサによれば、ペロブスカイト酸化物のチタン含有量と第2インジウム隔離層の第2インジウム含有量との合計を100mol%とする場合、第2インジウム含有量を10-20mol%~10-2mol%としてもよい。
【0012】
前の段落に記載の多層セラミックコンデンサによれば、第1インジウム隔離層は、インジウム、バリウム及びチタンを含んでもよい。
【0013】
前の段落に記載の多層セラミックコンデンサによれば、第2インジウム隔離層は、インジウム、バリウム及びチタンを含んでもよい。
【0014】
前の段落に記載の多層セラミックコンデンサによれば、内電極層の各々の厚さと誘電体層の各々の厚さとの比は、0.4~0.6であってもよい。
【0015】
本発明の他の態様は、バリウム及びチタンを含む複数のペロブスカイト酸化物と、ホウ素ケイ酸塩ガラスとを含む複数の誘電体層を形成する工程と、複数の内電極層を形成する工程と、内電極層と誘電体層とを交互に積層して、積層体を形成する工程と、低温焼成除去工程と高温焼結工程とを含む焼結プロセスを行い、積層体を多層セラミック煉瓦として形成する工程と、多層セラミック煉瓦の両端にそれぞれ第1端子電極及び第2端子電極を形成して、多層セラミックコンデンサを得る工程と、を備える多層セラミックコンデンサの製造方法を提供する。
【0016】
前の段落に記載の多層セラミックコンデンサの製造方法によれば、ペロブスカイト酸化物の総重量を100wt%とする場合、ホウ素ケイ酸塩ガラスの重量を0.01wt%~5wt%としてもよい。
【0017】
前の段落に記載の多層セラミックコンデンサの製造方法によれば、ホウ素ケイ酸塩ガラスは、三酸化二ホウ素、三酸化二アルミニウム及び二酸化ケイ素を含んでもよい。
【0018】
前の段落に記載の多層セラミックコンデンサの製造方法によれば、内電極層は、インジウムを添加したニッケルペーストで焼結して形成され、且つニッケルペーストのインジウム添加量は、0.01mol%~5mol%であってもよい。
【0019】
前の段落に記載の多層セラミックコンデンサの製造方法によれば、焼結プロセス後、第1インジウム隔離層を内電極層のうちのいずれかとそれに対応する誘電体層のうちの1つとの間の界面に形成してもよく、且つ複数の第2インジウム隔離層をペロブスカイト酸化物の複数の結晶粒界に形成してもよく、また第1インジウム隔離層及び第2インジウム隔離層が同時に生成されてもよい。
【発明の効果】
【0020】
これにより、本発明の多層セラミックコンデンサ及び多層セラミックコンデンサの製造方法は、多層セラミックコンデンサの平均故障間隔を改善し、且つ多層セラミックコンデンサの耐用年数を延長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の上記及びその他の目的、特徴、利点及び実施例をより明確にわかりやすくするために、図面の説明は、以下のとおりである。
図1】本発明の一実施形態による多層セラミックコンデンサの斜視模式図である。
図2図1の実施形態による多層セラミックコンデンサの断面線A-Aに沿う断面模式図である。
図3図1の実施形態による多層セラミックコンデンサの断面線B-Bに沿う断面模式図である。
図4】本発明の他の実施形態による多層セラミックコンデンサの製造方法の工程フローチャートである。
図5】実験例1の多層セラミックコンデンサの走査透過型電子顕微鏡の環状暗視野画像である。
図6図5の実験例1のインジウムのLαエネルギー分散X放射線画像である。
図7】実験例2の多層セラミックコンデンサの走査透過型電子顕微鏡の明視野画像である。
図8図7の実験例2のインジウムのLαエネルギー分散X放射線画像である。
図9図8におけるチタン酸バリウムのペロブスカイト酸化物の拡大図である。
図10図9のチタン酸バリウムのペロブスカイト酸化物のインジウムのLαエネルギー分散X放射線画像である。
図11】ニッケル多層セラミックコンデンサ及びニッケル-インジウム多層セラミックコンデンサにおける平均故障間隔に対する誘電体層の総厚さのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の各実施形態をより詳細に検討する。しかし、この実施形態は、様々な発明概念の応用であり、様々な異なる特定の範囲内で具体的に実行することができる。特定の実施形態は、説明のみを目的とし、開示される範囲に限定されない。さらに、図面を簡略化するために、周知の構造と要素のいくつかは、図面で簡単に図示されている。
【0023】
また、記述における「第1」、「第2」などの用語は、同じ技術における素子や動作を区別するための記述に過ぎず、プログラム順序や配列順序を表すためのものではない。
【0024】
本発明に記載の2つの素子間の空間関係は、図面に描かれた方位だけでなく、図面に示されていない方位、例えば逆さまの方位にも適用される。また、本発明でいう2つの部材間の「接続」、「電気的接続」などの記述は、2つの部材の直接接続や直接電気的接続に限定されるものではなく、必要に応じて間接的接続や間接的電気的接続も含んでもよい。
【0025】
本発明では、「金属」内電極層を有する多層セラミックコンデンサは、「金属」多層セラミックコンデンサ(Metal MLCC)、例えばニッケル多層セラミックコンデンサ(Ni MLCC)又はニッケル-インジウム多層セラミックコンデンサ(Ni-In MLCC)として表される。具体的には、「ニッケル多層セラミックコンデンサ」は、多層セラミックコンデンサがニッケルを含む金属内電極層を有することを表す。同様に、「ニッケル-インジウム多層セラミックコンデンサ」は、多層セラミックコンデンサがニッケル及びインジウムを含む金属内電極層を有することを表す。
【0026】
図1図3を参照されたい。図1図3は、それぞれ本発明の一実施形態による多層セラミックコンデンサ100の斜視模式図、及び図1の実施形態による多層セラミックコンデンサ100の断面線A-Aに沿う及び断面線B-Bに沿う断面模式図である。多層セラミックコンデンサ100は、多層セラミック煉瓦200、第1端子電極300及び第2端子電極400を含む。
【0027】
例えば、多層セラミック煉瓦200は、直方体又は立方体であってもよい。しかし、多層セラミック煉瓦200の形状は、製品の需要に応じて設計することができ、本発明は、これに限定されない。多層セラミック煉瓦200は、第1端面202及び第2端面204を有し、第1端面202と第2端面204とは、互いに対向する。図1図3から分かるように、多層セラミック煉瓦200は、直方体であるため、第1表面205、第2表面206、第3表面207及び第4表面208をさらに含んでもよく、第1表面205と第2表面206とは、互いに対向し、且つ第3表面207と第4表面208とは、互いに対向する。第1端面202、第2端面204、第3表面207及び第4表面208は、いずれも第1表面205と第2表面206との間に位置する。第3表面207及び第4表面208は、第1端面202と第2端面204との間に位置する。
【0028】
多層セラミック煉瓦200は、複数の誘電体層210及び複数の内電極層220を含む。誘電体層210と内電極層220とは、相互にスタックされる。多層セラミック煉瓦200の製造過程において、誘電体層210のグリーンシート(Green sheet)と内電極層220のペースト層とを相互にスタックしてスタック構造を形成し、続いてスタック構造を焼結してもよい。誘電体層210は、ペロブスカイト酸化物(図示せず)及びホウ素ケイ酸塩ガラスのグリーンシートを焼結して形成されたセラミック層であるため、誘電体層210のそれぞれは、多くのペロブスカイト酸化物と、ホウ素ケイ酸塩ガラスとを含む。ペロブスカイト酸化物は、バリウム及びチタンを含む。いくつかの実施例では、誘電体層210は、チタン酸バリウム(Barium titanate;BaTiO3)のペロブスカイト酸化物で製造される。
【0029】
ホウ素ケイ酸塩ガラスは、三酸化二ホウ素(Boron trioxide、B23)、三酸化二アルミニウム(Aluminium oxide;Al23)及び二酸化ケイ素(Silicon dioxide;SiO2)を含んでもよい。いくつかの実施例では、ペロブスカイト酸化物の総重量を100wt%とする場合、ホウ素ケイ酸塩ガラスの重量を0.01wt%~5wt%としてもよい。例えば、ホウ素ケイ酸塩ガラスの重量を0.05wt%、0.1wt%、0.2wt%、0.3wt%、0.4wt%、0.5wt%、0.6wt%、0.7wt%、0.8wt%、0.9wt%、1wt%、1.5wt%、2wt%、2.5wt%、3wt%、3.5wt%、4wt%又は4.5wt%としてもよい。ホウ素ケイ酸塩ガラスの重量が上記範囲にある場合、多層セラミックコンデンサ100の平均故障間隔を改善することができ、これにより、多層セラミックコンデンサ100の耐用年数を延長させることができる。
【0030】
図2に示すように、内電極層220は、2つの部分に分けられてもよい。内電極層220の一部は、多層セラミック煉瓦200の第1端面202から第2端面204に向かって延在し、且つ第2端面204と仕切られる。内電極層220の他の一部は、第2端面204から第1端面202に向かって延在し、且つ第1端面202と仕切られる。多層セラミック煉瓦200における前記2つの部分は、交互に配列され、且つ誘電体層210は、内電極層220の隣接する両者の間に位置する。内電極層220は、多層セラミック煉瓦200の第1表面205及び第2表面206にほぼ平行である。
【0031】
図2及び図3から分かるように、内電極層220のそれぞれは、内層222及び第1インジウム隔離層224を含む。内層222の材質は、ニッケルを含む。例えば、ニッケルは、内層222の主要成分であってもよい。内電極層220のそれぞれの第1インジウム隔離層224は、内層222と、内層222に隣接する誘電体層210との間に位置する。これにより、内電極層220のそれぞれの第1インジウム隔離層224は、内層222を外周の誘電体層210と仕切る。
【0032】
第1インジウム隔離層224の厚さは、1nm~100nmである。例えば、第1インジウム隔離層224の厚さは、3nm、5nm、8nm、10nm、12nm、15nm、18nm、19nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm又は90nmであってもよい。第1インジウム隔離層224の厚さが上記範囲にある場合、多層セラミックコンデンサ100の平均故障間隔を改善することができ、これにより、多層セラミックコンデンサ100の耐用年数を延長させることができる。図2を参照されたい。内電極層220のそれぞれの厚さh1と誘電体層210のそれぞれの厚さh2との比は、0.4~0.6であってもよい。比が上記範囲にある場合、多層セラミックコンデンサ100の平均故障間隔を改善することができ、これにより、多層セラミックコンデンサ100の耐用年数を延長させることができる。図2を参照されたい。いくつかの実施例では、誘電体層210の総厚さHの範囲は、0.5μm~8.4μmである。例えば、誘電体層210の総厚さHは、1.2μm、3.2μm、5μm又は6.8μmであってもよい。
【0033】
内電極層220は、インジウムを添加したニッケルペーストで焼結して形成されてもよい。これにより、第1インジウム隔離層224は、インジウム金属の凝集金属相層であってもよく、且つニッケルからなる内層222と誘電体層210のセラミック体との間にある。誘電体層210は、チタン酸バリウムで製造されてもよく、且つ第1インジウム隔離層224は、インジウム、バリウム及びチタンを含んでもよい。ニッケルペーストのインジウム添加量は、0.01mol%~5mol%であってもよい。例えば、ニッケルペーストのインジウム添加量は、0.05mol%、0.1mol%、0.2mol%、0.3mol%、0.4mol%、0.5mol%、0.6mol%、0.7mol%、0.8mol%、0.9mol%、1mol%、1.5mol%、2mol%、2.5mol%、3mol%、3.5mol%、4mol%又は4.5mol%であってもよい。ニッケルペーストのインジウム添加量が上記範囲にある場合、多層セラミックコンデンサ100の平均故障間隔を改善することができ、これにより、多層セラミックコンデンサ100の耐用年数を延長させることができる。
【0034】
インジウム金属を添加することにより、内電極層220の材質は、高還元雰囲気中で焼結することができる。例えば、内電極層220の材質は、高い水素含有量の雰囲気中で焼結することができる。従って、多層セラミックコンデンサ100は、高い動作温度で安定した信頼性を有することができ、例えば動作温度は、105℃又は125℃であってもよい。また、第1インジウム隔離層224は、ショットキーバリア(Schottky barrier)を内層222と誘電体層210との間に提供することができ、且つショットキーバリアは、多層セラミックコンデンサ100のリーク電流を抑制することができる。これにより、多層セラミックコンデンサ100は、長い高温負荷寿命及び高い信頼性を有する。
【0035】
図1を参照されたい。第1端子電極300は、少なくとも多層セラミック煉瓦200の第1端面202に設けられ、且つ第1端面202から延在する内電極層220に電気的に接続される。第2端子電極400は、少なくとも多層セラミック煉瓦200の第2端面204に設けられ、且つ第2端面204から延在する内電極層220に電気的に接続される。図1及び図2から分かるように、第1端子電極300は、第1端面202を被覆し、且つ第1表面205、第2表面206、第3表面207及び第4表面208は、第1端面202に隣接する。第2端子電極400は、第2端面204を被覆し、且つ第1表面205、第2表面206、第3表面207及び第4表面208は、第2端面204に隣接する。
【0036】
第1端子電極300及び第2端子電極400は、いずれも単層構造又は多層構造であってもよい。第1端子電極300及び第2端子電極400は、いずれも順にスタックされる三層構造を有してもよく、三層構造の第1層の材質は、銅、銀又は銀パラジウム合金であってもよく、三層構造の第2層の材質は、ニッケルであってもよく、且つ三層構造の第3層の材質は、錫であってもよい。本発明の多層セラミックコンデンサ100は、電気自動車の自動運転技術に使用されてもよいが、これに限定されない。
【0037】
図4は、本発明の他の実施形態による多層セラミックコンデンサ100の製造方法Mの工程フローチャートである。図2及び図4を参照されたい。製造方法Mの工程410に示すように、複数の誘電体層210を形成する。製造方法Mの工程420に示すように、複数の内電極層220を形成する。製造方法Mの工程430に示すように、内電極層220と誘電体層210とを交互に積層して、積層体を形成する。
【0038】
続いて、図2及び図4を参照されたい。製造方法Mの工程440に示すように、焼結プロセスを行い、積層体を多層セラミック煉瓦200として形成する。焼結プロセスは、低温焼成除去工程及び高温焼結工程を含む。低温焼成除去工程の温度は、300℃であってもよく、且つ高温焼結工程の温度は、1200℃であってもよい。
【0039】
また、図2及び図4を参照されたい。製造方法Mの工程450及び工程460に示すように、第1端子電極300及び第2端子電極400をそれぞれ多層セラミック煉瓦200の両端に形成して、多層セラミックコンデンサ100を得る。
【0040】
以下の具体的な実施例を用いてさらに本発明を例示して説明し、それによって、当業者が過度な解読を必要とせずに本発明を完全に利用し、実施することができることに有利である。これらの実施例を本発明の範囲の制限と見なすべきではないが、どのように本発明の材料及び方法を実施するかを説明するためのものである。
【0041】
<実験例1>
【0042】
実験例1では、チタン酸バリウムのペロブスカイト粉末と添加剤とをボールミルし、添加剤は、3mol%の酸化ジスプロシウム(Dysprosium oxide;Dy23)、0.1mol%の酸化マグネシウム(Magnesium oxide;MgO)及び0.03wt%のホウ素ケイ酸塩ガラス粉末であってもよかった。上記原料を均一に混合して乾燥して原料粉末を得、原料粉末と有機溶剤を粉砕して原料ペーストを得た。原料ペーストをプラスチックフィルム上にキャストし、乾燥させてセラミックグリーンシートを得た。0.05wt%の酸化インジウム(In23)粉末を添加したニッケルペーストを3ローラミキサー(Three-roller mixer)で均一に混合し、次にグリーンシート上に内層として印刷した。複数のニッケル印刷シートをスタックして切断して、ニッケル-インジウム多層セラミックコンデンサウェハのグリーンシートを取得した。有機接着剤を300℃で焼成した後、酸素分圧が1×10-13Paの条件において、ニッケル-インジウム多層セラミックコンデンサを1200℃で2時間焼成した後、低温下で再酸化した。還元雰囲気下の焼結過程において、酸化インジウムは、金属インジウムに変換され、ニッケル-インジウム合金を形成した。最後に、780℃で20分間加熱して銅端子電極を形成した。
【0043】
続いて、140℃及び40V(すなわち定格電圧よりも4倍高い電圧)の条件において、高加速寿命試験(Highly accelerated life test;HALT)を行った。実験例1のパラメータ及び平均故障間隔を以下の表1に示した。
【0044】
【表1】
【0045】
図5は、実験例1の多層セラミックコンデンサ100aの走査透過型電子顕微鏡の環状暗視野画像である。図6は、図5の実験例1のインジウムのLαエネルギー分散X放射線画像である。図5及び図6から分かるように、内電極層220は、インジウムを添加したニッケルペーストで焼結して形成された。これにより、多層セラミックコンデンサ100aは、ニッケル-インジウム多層セラミックコンデンサと呼ばれてもよい。多層セラミックコンデンサ100aの構造と多層セラミックコンデンサ100の構造とは、ほぼ同じである。多層セラミックコンデンサ100aと多層セラミックコンデンサ100との違いは、多層セラミックコンデンサ100aに内電極層220の第1インジウム隔離層224もあり、多層セラミックコンデンサ100aの誘電体層210が複数の第2インジウム隔離層214を含むことである。
【0046】
具体的には、図5及び図6から分かるように、誘電体層210は、複数のペロブスカイト酸化物212を含み、且つ第2インジウム隔離層214は、それぞれペロブスカイト酸化物212の複数の結晶粒界212aに形成されてもよい。つまり、内電極層220の材質中のインジウム金属は、内電極層220とそれに対応する誘電体層210との間の界面を隔離するだけではなく、拡散して誘電体層210に入り且つ誘電体層210のペロブスカイト酸化物212の結晶粒界212aにバリアされた。
【0047】
図5及び図6を参照されたい。結晶粒子(すなわちチタン酸バリウムの結晶粒子)は、コアシェル構造と理解されてもよく、結晶粒子のコア領域は、チタン酸バリウムであり、且つ結晶粒子のシェル領域は、インジウム金属を有する結晶粒界212a(すなわち第2インジウム隔離層214)及びインジウム金属を有する第1インジウム隔離層224である。言い換えれば、インジウム金属は、コアシェル構造のシェル領域においてバリアを形成した。具体的には、拡散したインジウム(+3)は、ペロブスカイト酸化物212のチタン(+4)の位置を占め且つ受容体として機能し、且つ還元雰囲気下での焼結中に酸素空孔が形成された際に生じた自由電子を捕捉することができる。従って、結晶粒界を含むチタン酸バリウム結晶粒子のコアシェル構造のシェル領域に位置するインジウム隔離は、抵抗率を増加させ、リーク電流を低減させ、多層セラミックコンデンサ100aの平均故障間隔を改善した。
【0048】
ニッケルは、内電極層220のうちのいずれかとそれに対応する誘電体層210のうちの1つとの間の界面でホウ素ケイ酸塩ガラスと液相を形成し、且つ拡散してチタン酸バリウム結晶粒子のコアシェル構造のシェル領域に入ることができる。ホウ素ケイ酸塩ガラスの共ドーピング量は、ニッケルペーストのインジウム添加量に比例して増加する。第1インジウム隔離層224及び第2インジウム隔離層214は、誘電体層210の総厚さに応じて協働して動作する。
【0049】
第1インジウム隔離層224の第1インジウム含有量は、第2インジウム隔離層214のそれぞれの第2インジウム含有量よりも大きくてもよい。ペロブスカイト酸化物212のチタン含有量と第2インジウム隔離層214の第2インジウム含有量との合計を100mol%とする場合、第2インジウム含有量を10-20mol%~10-2mol%としてもよい。第2インジウム隔離層214は、インジウム、バリウム及びチタンを含んでもよい。
【0050】
前記焼結プロセス後、第1インジウム隔離層224を内電極層220のうちのいずれかとそれに対応する誘電体層210のうちの1つとの間の界面に形成してもよく、且つ複数の第2インジウム隔離層214をペロブスカイト酸化物212の複数の結晶粒界212aに形成してもよく、また第1インジウム隔離層224と第2インジウム隔離層214とが同時に生成されてもよい。
【0051】
<実験例2~実験例6>
【0052】
実験例1の多層セラミックコンデンサの製造方法は、実験例2~実験例6の多層セラミックコンデンサ(以下、実験例2~実験例6と略称する)の製造方法と類似した。実験例2~実験例6では、酸化インジウムの添加量は、多層セラミックコンデンサの誘電体層の総厚さに応じて変化した。ホウ素ケイ酸塩ガラス粉末の添加量は、インジウムの誘電体層における結晶物拡散を促進するために、酸化インジウムの添加量に基本的に比例した。
【0053】
<実験例7~実験例14>
【0054】
実験例1の多層セラミックコンデンサの製造方法は、実験例7~実験例14の多層セラミックコンデンサ(以下、実験例7~実験例14と略称する)の製造方法と類似した。実験例7~実験例14では、多層セラミックコンデンサの誘電体層の総厚さは、同じであり、且つホウ素ケイ酸塩ガラス粉末の添加量の範囲は、0.01wt%~5wt%であるが、酸化インジウムの添加量は、異なる。
【0055】
<比較例1~比較例2>
【0056】
実験例1の多層セラミックコンデンサの製造方法は、比較例1~比較例2の多層セラミックコンデンサの製造方法と類似した。比較例1では、酸化インジウムを添加していなかった。比較例2では、ホウ素ケイ酸塩ガラス粉末を添加していなかった。
【0057】
図7は、実験例2の多層セラミックコンデンサ100bの走査透過型電子顕微鏡の明視野画像である。図8は、図7の実験例2のインジウムのLαエネルギー分散X放射線画像である。図7及び図8から分かるように、多層セラミックコンデンサ100bは、ニッケル-インジウム多層セラミックコンデンサである。図8に示すように、インジウム隔離(すなわち第1インジウム隔離層224及び第2インジウム隔離層214)は、内層222と誘電体層210との間の界面に位置し、且つペロブスカイト酸化物212の結晶粒界212aに位置する。
【0058】
図9は、図8におけるチタン酸バリウムのペロブスカイト酸化物の拡大図である。図10は、図9のチタン酸バリウムのペロブスカイト酸化物のインジウムのLαエネルギー分散X放射線画像である。図9に示すように、インジウムは、コアシェル構造のシェル領域に拡散し且つ隔離される。インジウムは、インジウム隔離が結晶粒界を含むシェル領域に位置するため、チタン酸バリウム中のチタンの位置を占め且つ受容体機能が誘電体層のコア領域に拡張されることができる。誘電体層厚さが増加した場合、シェル領域のインジウム隔離も効果を有する。
【0059】
表1の結果から、比較例1~比較例2の多層セラミックコンデンサの平均故障間隔に比べて、本発明の多層セラミックコンデンサは、特定の含有量のホウ素ケイ酸塩ガラス粉末及び酸化インジウムを有し、平均故障間隔を改善することができることを示す。
【0060】
図11は、ニッケル多層セラミックコンデンサ及びニッケル-インジウム多層セラミックコンデンサにおける誘電体層の総厚さの、平均故障間隔に対するグラフ1100である。図11に示すように、誘電体層の総厚さの増加に伴い、ニッケル-インジウム多層セラミックコンデンサの平均故障間隔が増加し、これにより、ニッケル-インジウム多層セラミックコンデンサの耐用年数を延長させることができる。また、ニッケル多層セラミックコンデンサに比べて、ニッケル-インジウム多層セラミックコンデンサの平均故障間隔がより優れる。
【0061】
以上のように、本発明の利点の1つは、以下のとおりである。多層セラミックコンデンサの内電極層は、ニッケル内層と、ニッケル内層と誘電体層との間に位置するインジウム隔離層を含む。インジウム隔離層は、ニッケル内層と誘電体層との間にショットキーバリアを提供することができ、且つショットキーバリアは、リーク電流を抑制することができる。また、インジウム金属を添加するため、多層セラミック煉瓦は、高還元雰囲気中で焼結することができる。従って、多層セラミックコンデンサは、高い動作温度で安定した信頼性を有することができる。これにより、多層セラミックコンデンサの高温負荷寿命を延長させ、且つ多層セラミックコンデンサの信頼性を向上させることができる。周知の多層セラミックコンデンサに比べて、本発明の多層セラミックコンデンサの平均故障間隔が改善されるため、多層セラミックコンデンサの耐用年数が延長される。
【0062】
本発明は、上記のように実施形態で開示されたが、上記の実施形態は、本発明を限定するためのものではなく、いかなる当業者であれば、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、様々な変更及び仕上げを行うことができるので、本発明の保護範囲は、後に添付される特許請求の範囲によって規定されるものを基準とすべきである。
【符号の説明】
【0063】
100、100a、100b:多層セラミックコンデンサ
200:多層セラミック煉瓦
202:第1端面
204:第2端面
205:第1表面
206:第2表面
207:第3表面
208:第4表面
210:誘電体層
212:ペロブスカイト酸化物
212a:結晶粒界
214:第2インジウム隔離層
220:内電極層
222:内層
224:第1インジウム隔離層
300:第1端子電極
400:第2端子電極
410、420、430、440、450、460:工程
1100:グラフ
H:総厚さ
h1、h2:厚さ
M:製造方法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【外国語明細書】