(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025141871
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】磁場装置および対象物処理方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/42 20060101AFI20250919BHJP
C12N 1/04 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
C12M1/42
C12N1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025036849
(22)【出願日】2025-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2024039994
(32)【優先日】2024-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024115000
(32)【優先日】2024-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024118402
(32)【優先日】2024-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024125598
(32)【優先日】2024-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024199046
(32)【優先日】2024-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】518087753
【氏名又は名称】tantore株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004107
【氏名又は名称】弁理士法人Kighs
(72)【発明者】
【氏名】中河原 毅
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB01
4B029BB03
4B029BB07
4B029BB11
4B029BB12
4B029BB20
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4B029GA08
4B029GB10
4B029HA10
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065CA60
(57)【要約】
【課題】所定の微生物や植物の成長や発酵等を好適に促進可能とし、所定の細胞の増殖を好適に抑制可能な磁場装置および対象物処理方法を提供すること。
【解決手段】磁場装置1は、電源5から供給される電流によって磁場発生部100(例えば、第1コイル2および第2コイル3)が発生した0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の磁場内の少なくとも一部に所定の対象物を配置可能に構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場発生手段と、
前記磁場発生手段を電源に接続可能な接続手段と、を備え、
前記磁場発生手段は、前記接続手段を介して前記電源から供給される電流によって、0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の磁場を発生可能に構成され、
前記磁場発生手段が発生した前記範囲内の磁束密度の磁場内の少なくとも一部に、共生微生物、当該共生微生物と共生する共生植物、メタン菌、麹菌、酵母菌、または藻類のうち1または複数を含む対象物を配置可能に構成される、
ことを特徴とする磁場装置。
【請求項2】
前記共生微生物は、菌根菌、根粒菌、放線菌または乳酸菌である、ことを特徴とする請求項1に記載の磁場装置。
【請求項3】
磁場発生手段と、
前記磁場発生手段を電源に接続可能な接続手段と、を備え、
前記磁場発生手段は、前記接続手段を介して前記電源から供給される電流によって、0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の磁場を発生可能に構成され、
前記磁場発生手段が発生した前記範囲内の磁束密度の磁場内の少なくとも一部に、がん細胞を含む対象物を配置可能に構成され、
前記対象物を前記磁場に曝露することによって当該対象物に含まれる前記がん細胞の増殖を抑制する、ことを特徴とする磁場装置。
【請求項4】
前記磁場発生手段は、前記接続手段を介して前記電源から供給される交流電流によって、0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の交流磁場を発生可能に構成される、
ことを特徴とする請求項1または3に記載の磁場装置。
【請求項5】
前記交流電流は、その周波数が500Hz以下である、
ことを特徴とする請求項4記載の磁場装置。
【請求項6】
前記磁場発生手段が発生した磁場内の所定位置における磁束密度を測定可能な磁束密度測定手段と、
前記磁束密度測定手段より測定された磁束密度に基づいて、前記範囲内の磁束密度であって前記対象物に応じて設定された所定の磁束密度となるよう前記磁場発生手段による磁場の発生を制御する磁場制御手段と、を備えている、
ことを特徴とする請求項1または3に記載の磁場装置。
【請求項7】
対象物および流動可能な媒体を収容可能な収容手段であって、前記磁場発生手段が発生した前記範囲内の磁束密度の磁場内に少なくとも一部が配置される磁場処理部と、磁場が印加されない位置に配置される無処理部と、を含む収容手段を備え、
前記磁場処理部と前記無処理部との間で前記対象物および前記媒体を循環可能に構成される、
ことを特徴とする請求項1または3に記載の磁場装置。
【請求項8】
前記磁場発生手段は、
第1コイルと、
前記第1コイルから少なくとも所定距離離間した位置に設けられた第2コイルとを備え、かつ、
前記接続手段を介して前記電源から供給される500Hz以下の周波数の交流電流によって、前記第1コイルと前記第2コイルとの間に0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の磁場を発生可能に構成される、
ことを特徴とする請求項1または3記載の磁場装置。
【請求項9】
前記第1コイルと前記第2コイルとの間には、コイル径の円を両端とし当該両端の円の離間距離が前記所定距離である大円柱領域に包含される所定の小円柱領域に、少なくとも前記範囲内の均一的な磁束密度の磁場領域を発生可能であり、
前記小円柱領域は、前記大円柱領域の中心を含む領域であって、前記コイル径の1/3の径の円を両端とし当該両端の円の離間距離が前記所定距離の1/2の離間距離の領域である、
ことを特徴とする請求項8記載の磁場装置。
【請求項10】
前記第1コイルまたは前記第2コイルの少なくとも一方の位置を前記第1コイルおよび前記第2コイルの軸方向に移動可能な軸方向移動手段、を備えている、
ことを特徴とする請求項8記載の磁場装置。
【請求項11】
前記第1コイルおよび前記第2コイルの位置を前記第1コイルおよび前記第2コイルの軸方向に対して交差する方向に移動可能な交差方向移動手段、を備えている、
ことを特徴とする請求項8記載の磁場装置。
【請求項12】
磁場発生手段が発生可能な0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の磁場の少なくとも一部に、共生微生物、当該共生微生物と共生する共生植物、メタン菌、麹菌、酵母菌、または藻類のうち1または複数を含む対象物を配置する配置工程と、
前記磁場発生手段に電流を供給することにより発生した前記範囲内の磁束密度の磁場に前記配置工程により配置された前記対象物を曝露する磁場処理工程と、を備えている、
ことを特徴とする対象物処理方法。
【請求項13】
磁場発生手段が発生可能な0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の磁場の少なくとも一部に、がん細胞(ヒトのがん細胞を除く)を含む対象物を配置する配置工程と、
前記磁場発生手段に電流を供給することにより発生した前記範囲内の磁束密度の磁場に前記対象物を曝露する磁場処理工程と、を備え、
前記磁場処理工程による曝露によって前記対象物に含まれる前記がん細胞の増殖を抑制する、
ことを特徴とする対象物処理方法。
【請求項14】
前記対象物に対し磁場をかけない無処理工程、をさらに備え、
前記磁場処理工程と前記無処理工程とを交互に少なくとも1回ずつ行う、
ことを特徴とする請求項12または13に記載の対象物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の微生物や植物の成長や発酵等を好適に促進可能とし、所定の細胞の増殖を好適に抑制可能な磁場装置および対象物処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つの対向するコイルに挟まれるように栽培対象物を配置し、これら2つのコイルに対し、25kHzの単一周波数の交流電流であって、当該栽培対象物が曝露される磁束密度が50mT(マイクロテスラ)の磁束密度となる交流電流を流すことによって、当該栽培対象物の成長を促進する成長促進装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、醸造発酵やメタン発酵などの微生物反応装置において、主発酵の前に培養槽を設けて、該培養槽内で対数増殖がほぼ完了した反応微生物に2テスラ以上の強磁界を一定期間印加せしめてから主反応槽に移送する微生物反応装置の活性化システムが記載されている。
【0004】
非特許文献1には、胚性癌腫細胞P19の増殖・分化に対する磁界の効果を調べたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6154579号公報
【特許文献2】特開2004-180659号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】電気学会研究会資料、2008年、MBE-08-40、p.25-28
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載される成長促進装置は、植物やしいたけ等の腐生性きのこ(腐生菌)を栽培対象物とするものであり、所定の樹木の根に菌根を形成して当該樹木と共生する菌根性きのこ(菌根菌)の栽培に適用することができない。また、磁場の周波数が高すぎると対象物に悪影響を及ぼすため、対象物によっては、当該成長促進装置を適用した場合に逆効果が生じるおそれがある。
【0008】
また、特許文献2に記載される微生物反応装置の活性化システムは、強磁界を発生させるため設備費や電力にコストがかかるという問題がある。また、当該システムにおいては、メタン菌を強磁界に印加することで菌が弱ってしまうおそれもある。
【0009】
その他の微生物(例えば、麹菌や酵母菌や藻類等)についても、実用化の観点から、これらの微生物を効率的に成長させることが求められているものの、これらを効率的に増殖可能な条件は未だ確立されていない。
【0010】
非特許文献1には、P19細胞の増殖速度が高くなり、分化が促進されたことが記載されているものの、磁界の印加によりがん細胞の増殖が抑制されることはよく知られていない。
【0011】
本発明は、上記例示した事情に鑑みてなされたものであり、所定の微生物や植物の成長や発酵等を好適に促進可能とし、所定の細胞の増殖を好適に抑制可能な磁場装置および対象物処理方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために請求項1記載の磁場装置は、磁場発生手段と、前記磁場発生手段を電源に接続可能な接続手段と、を備え、前記磁場発生手段は、前記接続手段を介して前記電源から供給される電流によって、0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の磁場を発生可能に構成され、前記磁場発生手段が発生した前記範囲内の磁束密度の磁場内の少なくとも一部に、共生微生物、当該共生微生物と共生する共生植物、メタン菌、麹菌、酵母菌、または藻類のうち1または複数を含む対象物を配置可能に構成される。
【0013】
請求項2記載の磁場装置は、請求項1記載の磁場装置において、前記共生微生物は、菌根菌、根粒菌、放線菌または乳酸菌である。
【0014】
請求項3記載の磁場装置は、磁場発生手段と、前記磁場発生手段を電源に接続可能な接続手段と、を備え、前記磁場発生手段は、前記接続手段を介して前記電源から供給される電流によって、0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の磁場を発生可能に構成され、前記磁場発生手段が発生した前記範囲内の磁束密度の磁場内の少なくとも一部に、がん細胞を含む対象物を配置可能に構成され、前記対象物を前記磁場に曝露することによって当該対象物に含まれる前記がん細胞の増殖を抑制する。
【0015】
請求項4記載の磁場装置は、請求項1または3に記載の磁場装置において、前記磁場発生手段は、前記接続手段を介して前記電源から供給される交流電流によって、0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の交流磁場を発生可能に構成される。
【0016】
請求項5記載の磁場装置は、請求項4記載の磁場装置において、前記交流電流は、その周波数が500Hz以下である。
【0017】
請求項6記載の磁場装置は、請求項1または3に記載の磁場装置において、前記磁場発生手段が発生した磁場内の所定位置における磁束密度を測定可能な磁束密度測定手段と、前記磁束密度測定手段より測定された磁束密度に基づいて、前記範囲内の磁束密度であって前記対象物に応じて設定された所定の磁束密度となるよう前記磁場発生手段による磁場の発生を制御する磁場制御手段と、を備えている。
【0018】
請求項7記載の磁場装置は、請求項1または3に記載の磁場装置において、対象物および流動可能な媒体を収容可能な収容手段であって、前記磁場発生手段が発生した前記範囲内の磁束密度の磁場内に少なくとも一部が配置される磁場処理部と、磁場が印加されない位置に配置される無処理部と、を含む収容手段を備え、前記磁場処理部と前記無処理部との間で前記対象物および前記媒体を循環可能に構成される。
【0019】
請求項8記載の磁場装置は、請求項1または3に記載の磁場装置において、前記磁場発生手段は、第1コイルと、前記第1コイルから少なくとも所定距離離間した位置に設けられた第2コイルとを備え、かつ、前記接続手段を介して前記電源から供給される500Hz以下の周波数の交流電流によって、前記第1コイルと前記第2コイルとの間に0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の磁場を発生可能に構成される。
【0020】
請求項9記載の磁場装置は、請求項8記載の磁場装置において、前記第1コイルと前記第2コイルとの間には、コイル径の円を両端とし当該両端の円の離間距離が前記所定距離である大円柱領域に包含される所定の小円柱領域に、少なくとも前記範囲内の均一的な磁束密度の磁場領域を発生可能であり、前記小円柱領域は、前記大円柱領域の中心を含む領域であって、前記コイル径の1/3の径の円を両端とし当該両端の円の離間距離が前記所定距離の1/2の離間距離の領域である。
【0021】
請求項10記載の磁場装置は、請求項8記載の磁場装置において、前記第1コイルまたは前記第2コイルの少なくとも一方の位置を前記第1コイルおよび前記第2コイルの軸方向に移動可能な軸方向移動手段、を備えている。
【0022】
請求項11記載の磁場装置は、請求項8記載の磁場装置において、前記第1コイルおよび前記第2コイルの位置を前記第1コイルおよび前記第2コイルの軸方向に対して交差する方向に移動可能な交差方向移動手段、を備えている。
【0023】
請求項12記載の対象物処理方法は、磁場発生手段が発生可能な0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の磁場の少なくとも一部に、共生微生物、当該共生微生物と共生する共生植物、メタン菌、麹菌、酵母菌、または藻類のうち1または複数を含む対象物を配置する配置工程と、前記磁場発生手段に電流を供給することにより発生した前記範囲内の磁束密度の磁場に前記配置工程により配置された前記対象物を曝露する磁場処理工程と、を備えている。
【0024】
請求項13記載の対象物処理方法は、磁場発生手段が発生可能な0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の磁場の少なくとも一部に、がん細胞(ヒトのがん細胞を除く)を含む対象物を配置する配置工程と、前記磁場発生手段に電流を供給することにより発生した前記範囲内の磁束密度の磁場に前記対象物を曝露する磁場処理工程と、を備え、前記磁場処理工程による曝露によって前記対象物に含まれる前記がん細胞の増殖を抑制する。
【0025】
請求項14記載の対象物処理方法は、請求項12または13に記載の対象物処理方法において、前記対象物に対し交流磁場をかけない無処理工程、をさらに備え、前記磁場処理工程と前記無処理工程とを交互に少なくとも1回ずつ行う。
【発明の効果】
【0026】
請求項1記載の磁場装置によれば、電源から供給される電流によって磁場発生手段が発生した0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の磁場内の少なくとも一部に、共生微生物、当該共生微生物と共生する共生植物、メタン菌、麹菌、酵母菌、または藻類のうち1または複数を含む対象物を配置可能に構成されるので、当該範囲内の磁束密度の磁場を対象物に印加する(当該範囲内の磁束密度の磁場に対象物を曝露する)ことによって、対象物の成長や発酵等を効率よく促進させることができる。
【0027】
請求項2記載の磁場装置によれば、請求項1記載の磁場装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。すなわち、対象物として利用する共生微生物は、菌根菌、根粒菌、放線菌または乳酸菌であるので、これら共生微生物と当該共生微生物と共生する共生植物とを組合せた場合に、共生微生物と共生植物の共生による効果を効率よく向上させることができる。
【0028】
請求項3記載の磁場装置によれば、電源から供給される電流によって磁場発生手段が発生した0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の磁場内の少なくとも一部に、がん細胞を含む対象物を配置可能に構成され、当該範囲内の磁束密度の磁場に対象物を曝露する(当該範囲内の磁束密度の磁場を対象物に印加する)ことによって当該対象物に含まれるがん細胞の増殖を抑制することができる。
【0029】
請求項4記載の磁場装置によれば、請求項1または3に記載の磁場装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。すなわち、対象物に対し、0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の交流磁場を印加することができる。
【0030】
請求項5記載の磁場装置によれば、請求項4記載の磁場装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。すなわち、対象物に印加する交流磁場が500Hz以下の比較的低い周波数の交流電流によって発生したものであるので、対象物への悪影響を抑制できる。
【0031】
請求項6記載の磁場装置によれば、請求項1または3に記載の磁場装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。すなわち、磁場発生手段が発生した磁場内の所定位置での磁束密度が磁束密度測定手段により測定され、その測定結果に基づいて、磁場発生手段が発生する磁場が対象物に応じて設定された所定の磁束密度となるよう磁場制御手段によって制御されるので、対象物に安定な磁場を一定の期間に亘ってかけ続けることができる。
【0032】
請求項7記載の磁場装置によれば、請求項1または3に記載の磁場装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。すなわち、収容手段に収容された対象物および流動可能な媒体が、磁場発生手段が発生した0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の磁場内の少なくとも一部が配置される磁場処理部と、磁場が印加されない位置に配置される無処理部との間で循環可能に構成されるので、当該循環によって対象物に対して磁場を間欠的に印加することができる。
【0033】
請求項8記載の磁場装置によれば、請求項1または3に記載の磁場装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。すなわち、交流電源から供給される500Hz以下の周波数の交流電流によって第1コイルと第2コイルとの間に0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の磁場領域を発生可能に構成されるので、当該磁場内の少なくとも一部に配置された対象物について所定の効果(例えば、成長や発酵等の促進、増殖の抑制など)を効率的に得ることができる。また、対象物に印加する交流磁場が500Hz以下の比較的低い周波数の交流電流によって発生したものであるので、対象物への悪影響を抑制できる。
【0034】
請求項9記載の磁場装置によれば、請求項8記載の磁場装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。すなわち、第1コイルと第2コイルとの間には、コイル径の円を両端とし当該両端の円の離間距離が所定距離である大円柱領域に包含される所定の小円柱領域に0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の均一的な磁束密度の磁場領域を発生できるので、小円柱領域の範囲内に対象物を配置することによって、対象物に対し、当該範囲内の均一的な交流磁場を安定的に印加させることができる。このとき、小円柱領域は、大円柱領域の中心を含む領域であって、コイル径の1/3の径の円を両端とし当該両端の円の離間距離が前記所定距離の1/2の離間距離の領域であるので、対象物を小円柱領域の範囲内に配置させ易い。
【0035】
請求項10記載の磁場装置によれば、請求項8記載の磁場装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。すなわち、第1コイルまたは第2コイルの少なくとも一方の位置をこれらの各コイルの軸方向に移動可能な軸方向移動手段を備えているので、第1コイルおよび第2コイルの位置を各々設定することができる。これにより、第1コイルと第2コイルとのコイル間距離を変更することなく、対象物に対する両コイルの軸方向の位置を変更することができるし、第1コイルと第2コイルとの間の距離を変更することもできる。
【0036】
請求項11記載の磁場装置によれば、請求項8記載の磁場装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。すなわち、第1コイルおよび第2コイルの位置をこれらの各コイルの軸方向に対して交差する方向に移動可能な交差方向移動手段を備えているので、第1コイルおよび第2コイルをその軸方向に対して交差する方向に移動させることができる。これにより、対象物に対して交流磁場をかけたい位置を交差方向に変更させたい場合にその対応が容易となる。
【0037】
請求項12記載の対象物処理方法によれば、共生微生物、当該共生微生物と共生する共生植物、メタン菌、麹菌、酵母菌、または藻類のうち1または複数を含む対象物が、配置工程によって、磁場発生手段が発生可能な0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の磁場の少なくとも一部に配置され、当該対象物が、磁場処理工程によって、前記範囲内の磁束密度の磁場に曝露される(当該範囲内の磁束密度の磁場が対象物に印加される)ので、対象物の成長や発酵等を効率よく促進させることができる。
【0038】
請求項13記載の対象物処理方法によれば、がん細胞(ヒトのがん細胞を除く)を含む対象物が、配置工程によって、磁場発生手段が発生可能な0.05mT以上かつ0.5mT以下の範囲内の磁束密度の磁場の少なくとも一部に配置され、当該対象物が、磁場処理工程によって、前記範囲内の磁束密度の磁場に曝露される(当該範囲内の磁束密度の磁場が対象物に印加される)ことによって当該対象物に含まれるがん細胞の増殖を抑制することができる。
【0039】
請求項14記載の対象物処理方法によれば、請求項12または13に記載の対象物処理方法の奏する効果に加え、次の効果を奏する。すなわち、対象物に対し交流磁場をかけない無処理工程をさらに備え、磁場処理工程と無処理工程とを交互に少なくとも1回ずつ行うので、対象物の成長や発酵等を好適に促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】(a)は、本実施形態の磁場装置の一例の構成を説明するためのブロック図であり、(b)は、第1コイルと第2コイルとの間に発生可能な均一的な磁束密度の磁場領域を説明するための模式図である。
【
図4】出力制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】(a)~(c)は、それぞれ、
図5に示す磁場装置の上面図、正面図、および側面図である。
【
図7】本実施形態の対象物処理方法の一例を示す工程図である。
【
図8】倍率略600倍の顕微鏡で観察した実施例5の菌根形成の様子を示す図である。
【
図9】倍率略600倍の顕微鏡で観察した比較例1の菌根形成の様子を示す図である。
【
図10】磁場装置を有機性廃棄物処理施設に適用した場合の適用例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1(a)は、本実施形態の磁場装置1の一例の構成を説明するためのブロック図であり、
図1(b)は、第1コイル2と第2コイル3との間に発生可能な均一的な磁束密度の磁場領域を説明するための模式図である。
【0042】
図1(a)に示すように、磁場装置1は、磁場を発生可能な磁場発生部100と、磁場発生部100を電源5に接続可能な導線4とを備える。
図1(a)に示す本実施形態の磁場装置1において、磁場発生部100は、第1コイル2と、第1コイル2から少なくとも所定距離離間した位置に設けられた第2コイル3とから構成される、交流磁場(変動磁場)を発生可能な交流磁場発生部である。
【0043】
磁場装置1は、導線4を介して電源5から供給される電流によって、磁場発生部100に所定の磁束密度の磁場(磁界)を発生させることができる。電源5は、直流電源であっても交流電源であってもよい。また、電源5から磁場装置1に供給される電流は、磁場発生部100の種類に応じた直流電流または交流電流である。
【0044】
磁場装置1によれば、磁場発生部100が発生した磁場(交流磁場または定常磁場)内に生物細胞または生物細胞による構成物を少なくとも含む対象物(以下、単に「対象物」とも称す)を配置することによって、当該対象物に所定の作用(例えば、対象物の成長(生長)や発酵等の促進や、対象物に含まれるガン細胞等の特定の生物細胞の増殖の抑制など)をもたらすことができる。
【0045】
磁場発生部100は、対象物に対して印加可能な所定範囲の磁束密度の磁場を少なくとも発生可能に構成される。磁場装置1は、例えば、0.05mT以上かつ5mT以下(すなわち、0.05mT~5mT)の範囲内の磁場を対象物に印加可能に構成される。なお、以下の説明においては、「X以上かつY以下」の範囲を「X~Y」の範囲として記載する。磁場装置1が対象物に印加する磁場の磁束密度は、0.05mT~1mTの範囲内であることが好ましく、0.05mT~0.5mTの範囲内であることがより好ましく、0.05mT~0.2mTの範囲内であることがさらに好ましく、0.05mT~0.1mTの範囲内であることがさらに好ましい。
【0046】
磁場装置1は、
図1(a)に示すように、テスラメータ6と、制御装置7とをさらに備える構成としてもよい。テスラメータ6は、磁場発生部100が発生する磁場の磁束密度を測定可能に設置される。制御装置7は、例えば、パーソナルコンピュータである。制御装置7は、磁場装置1または電源5の外部に設けられる構成としてもよく、磁場装置1または電源5の一部として設けられる構成としてもよい。
【0047】
制御装置7は、非図示のハードウェア構成として、CPU等の演算処理装置と、ROMやRAMやハードドライブディスク等の記憶装置と、入出力装置などを備え、記憶装置に予め格納されている制御プログラム(ソフトウェア)を演算処理装置で実行することにより得られた演算結果を入出力装置から制御信号として出力可能に構成される。
【0048】
制御装置7は、テスラメータ6から入力された磁束密度の測定結果に応じて、磁場発生部100が発生する磁場が、対象物に供する所定の好ましい磁束密度の範囲(例えば、0.05mT~5mT)内で対象物に応じて設定された所定の設定値となるよう、電源5から出力される電流、または、磁場発生部100に入力される電流の電圧値(出力レベル)を調整する。
【0049】
本実施形態の磁場装置1においては、電源5として交流電源を用いる。磁場発生部100として機能する第1コイル2と第2コイル3には、導線4を介して電源5から交流電流が供給される。これにより、磁場装置1は、第1コイル2と第2コイル3との間に交流磁場(変動磁場)を発生させることができる。
【0050】
第1コイル2および第2コイル3がヘルムホルツコイルとして機能する場合、第1コイル2と第2コイル3との間に発生する交流磁場内に均一的な磁束密度の磁場領域(以下、「均一磁場領域」とも称す)を発生させることができる。磁場装置1が、均一磁場領域を発生可能な磁場発生部100(例えば、ヘルムホルツコイルとして機能するコイル2,3)を備える構成である場合、均一磁場領域の少なくとも一部に対象物が配置されることが好ましい。
【0051】
磁場発生部100が、均一磁場領域を含む磁場を発生可能な構成である場合、均一磁場領域の磁束密度は、対象物に印加する磁場の磁束密度として、例えば、0.05mT~5mTの範囲を適用できる。均一磁場領域の磁束密度は、0.05mT~1mTの範囲内であることが好ましく、0.05mT~0.5mTの範囲内であることがより好ましく、0.05mT~0.2mTの範囲内であることがさらに好ましく、0.05mT~0.1mTの範囲内であることがさらに好ましい。
【0052】
第1コイル2および第2コイル3は、同一または略同一の形状に構成される。本実施形態では、一例として、円環状のリングコイルを第1コイル2および第2コイル3として例示する。第1コイル2および第2コイル3は、円環状のリングコイルに限らず、外形が円以外の形状(例えば、四角形等の多角形)である空芯コイルであってもよい。
【0053】
第1コイル2および第2コイル3の大きさ(例えば、コイル径)および巻き数は、対象物に適用するための所定範囲の磁束密度(例えば、0.05mT~5mT)の均一磁場領域を発生可能であれば特に限定されない。第1コイル2および第2コイル3が円環状のリングコイルである場合、利用可能なコイルとして、例えば、コイル径(直径)が100~2500mmであり、巻き数が50~500回であるコイルを例示できる。
【0054】
第1コイル2および第2コイル3は、互いに対向するように(すなわち、平行または略平行に)配置される。第1コイル2および第2コイル3は、各軸(コイルの中心軸)が同軸または略同軸となるよう配置されることが好ましいが、これらのコイル間に均一磁場領域を形成可能な範囲内であれば、第1コイル2および第2コイル3の各軸が離間した配置であってもよい。円環状の第1コイル2および第2コイル3を同軸上に配置することにより、これらのコイル2,3をヘルムホルツコイルとして機能させることができる。
【0055】
第1コイル2と第2コイル3との離間距離(以下、「コイル間距離」とも称す)は、対象物に適用するための所定範囲の磁束密度(例えば、0.05mT~5mT)の均一磁場領域を発生可能なものであれば特に限定されない。コイル間距離としては、例えば、50~1000mmのコイル間距離を採用できる。なお、「コイル間距離」は、第1コイル2における軸方向(巻き方向)の中心と、第2コイル3における軸方向の中心との距離である。
【0056】
第1コイル2および第2コイル3は、各コイル2,3上における所定の一点と、当該所定の一点に対向する他点との距離がコイル間距離以上の大きさであることが好ましく、当該距離がコイル間距離の略2倍であることがより好ましい。また、所定の一点、および、当該所定の一点に対向する他点は、第1コイル2または第2コイル3の中心を通る線分上にあることが好ましい。例えば、本実施形態のように第1コイル2および第2コイル3が円環状のリングコイルである場合、コイル径がコイル間距離以上の大きさであることが好ましく、コイル径がコイル間距離の略2倍の大きさであることが好ましい。
【0057】
なお、各コイル2,3上における所定の一点と、当該所定の一点に対向する他点との距離が複数存在する場合、それら複数の距離のうち基準とする1の距離が、これらのコイル2,3のコイル間距離(離間距離)以上の大きさである構成としてもよい。例えば、コイル2,3が長方形の外形に構成される空芯コイルである場合、その長辺に相当する距離をコイル間距離としてもよく、複数の距離のうち最長となる斜辺に相当する距離をコイル間距離としてもよい。
【0058】
互いに対向する第1コイル2および第2コイル3の配置は、
図1(a)に示すような上下方向(垂直方向)に限らず、水平方向であっても、各軸(コイルの中心軸)が垂直方向に対して角度を有する向き(すなわち、斜め方向)であってもよい。対象物に適した第1コイル2および第2コイル3の配置を適用できる。例えば、細胞の成長によって重力方向に伸長する対象物(例えば、植物の根)の場合、対象物に対して垂直磁束を適用することが好ましい。重力方向に伸長する対象物に対して垂直磁束を適用することで、当該対象物に対する曝露均一性を高め易くなるため、対象物に磁場を印加した(対象物を磁場に曝露した)ことによる結果物の量産に適している。よって、この場合には、上下方向に配置された第1コイル2と第2コイル3との間に発生する垂直磁束を対象物に適用することが好ましい。
【0059】
導線4は、電源5と磁場装置1(
図1(a)に示す例においては、磁場発生部100である第1コイル2および第2コイル3)とを接続する接続手段として機能する。導線4は、磁場装置1および電源5のそれぞれに対し固定的に接続される構成としてもよく、磁場装置1に対し固定的に接続される一方で、プラグ等の脱着手段(図示せず)によって電源5に対して脱着可能に接続される構成としてもよい。また、磁場装置1が、導線4を脱着可能に接続されるコンセント等の配線用差込接続部を備え、当該配線用差込接続部が、電源5と磁場装置1とを接続する接続手段として機能する構成としてもよい。
【0060】
交流電源である電源5から第1コイル2および第2コイル3に同相の交流電流を供給することによって、これらのコイル2,3間に交流磁場を発生させることができる。磁場発生部100がコイル2,3のような交流磁場発生部である場合、交流電源である電源5から磁場装置1(より詳細には、交流磁場発生部である磁場発生部100)に供給される交流電流は、その周波数が、5kHz以下であることが好ましく、10Hz~1KHzであることがより好ましく、30Hz~800Hzであることがさらに好ましく、30Hz~500Hzであることがさらに好ましく、50~300Hzであることがさらに好ましく、50~100Hzであることがさらに好ましく、50~80Hzであることがさらに好ましい。
【0061】
図1(a)に示す本実施形態の磁場装置1は、電源5から供給される交流電流によってコイル2,3間に均一磁場領域を発生可能に構成される。第1コイル2と第2コイル3との間に発生する均一磁場領域は、その磁束密度が、0.05mT~5mTであることが好ましく、0.05mT~1mTであることがより好ましく、0.05mT~0.5mTの範囲内であることがさらに好ましく、0.05mT~0.2mTであることがさらに好ましく、0.05mT~0.1mTの範囲内であることがさらに好ましい。
【0062】
テスラメータ6は、コイル2,3間に発生する磁場を測定可能に構成される。磁場発生部100が、第1コイル2および第2コイル3のように均一磁場領域を含む磁場を発生可能な構成である場合、テスラメータ6は、均一磁場領域の磁束密度を測定可能に設置することが好ましい。例えば、テスラメータ6は、コイル2,3間の中心付近の磁束密度を測定可能に設置される。
【0063】
制御装置7は、テスラメータ6から入力された磁束密度の測定結果に応じて、均一磁場領域が、対象物に供する所定の好ましい磁束密度の範囲(例えば、0.05mT~5mT)内で対象物に応じて設定された所定の設定値となるよう、電源5から出力される交流電流、または、コイル2,3に入力される交流電流の電圧値(出力レベル)を調整する。
【0064】
第1コイル2と第2コイル3との間には、
図1(b)に示すように、そのコイル径R1の円を両端とし、当該両端の円の離間距離がコイル間距離L1である円柱領域(以下、「大円柱領域」とも称す)V1の磁場領域を発生させることができる。磁場装置1は、大円柱領域V1内の一部に均一磁場領域を発生させることができる。均一磁場領域は、大円柱領域V1に対する容積比率が33~50%であることが好ましい。
【0065】
均一磁場領域は、小円柱領域V2を少なくとも含む。小円柱領域V2は、大円柱領域V1に包含される領域であって、大円柱領域V1の中心C(すなわち、コイル2,3間の中心)を含む領域である。なお、
図1(b)では、小円柱領域V2の中心が大円柱領域V1の中心Cに一致する場合を例示するが、小円柱領域V2の中心が中心Cに一致しない構成であってもよい。
【0066】
小円柱領域V2は、コイル径R1の1/3の径R2の円を両端とし、当該両端の円の離間距離L2がコイル間距離L1の1/2である円柱領域であり、大円柱領域V1の相似形状である。小円柱領域V2は、大円柱領域V1の相似形状であるので、第1コイル2および第2コイル3のコイル径およびコイル間距離をN(N>1)倍にすることによって、小円柱領域V2の容積をNの3乗倍(例えば、N=2であるときに8倍)に増やすことができる。
【0067】
例えば、コイル径が300mmである第1コイル2および第2コイル3を使用し、第1コイル2と第2コイル3とのコイル間距離を150mmに設定した場合、第1コイル2と第2コイル3との間には、コイル2,3による大円柱領域V1の中心Cを含む位置に、直径100mmの円を両端とし当該両端の円の距離が75mmである小円柱領域V2の均一磁場領域が形成される。
【0068】
一方で、コイル径が600mmであるコイル2,3を使用し、これらコイル2,3のコイル間距離を300mmに設定した場合、これらコイル2,3の間には、コイル2,3による大円柱領域V1の中心Cを含む位置に、直径200mmの円を両端とし当該両端の円の距離が150mmである小円柱領域V2の均一磁場領域が形成される。
【0069】
図1(a)に示すように、対象物は、例えば、収容容器10に収容された状態で磁場装置1の磁場発生部100(具体的には、コイル2,3)間に配置できる。対象物を含む収容容器10は、
図1(a)に示すように、地面に直に接地させた状態で磁場発生部100(
図1(a)に示す例では、コイル2,3間)に配置する構成としてもよく、磁場発生部100(コイル2,3)に対する垂直方向の位置を調整可能に載置台19(例えば、
図6参照)等に載置される構成としてもよい。
図1(a)には、1の磁場発生部100(具体的には、1組のコイル2,3)に対して1つの収容容器10を配置する場合を例示したが、1の磁場発生部100(1組のコイル2,3)に対し複数の収容容器を配置する構成としてもよい。なお、対象物を収容容器10に収容することなく磁場発生部100(例えば、コイル2,3間)に配置してもよい。
【0070】
収容容器10のうち、磁場発生部100が発生する磁場内に位置する領域について磁場を印加することができる。
図1(a)に示すように、磁場発生部100が第1コイル2および第2コイル3から構成される場合、収容容器10のうち、コイル2,3間に位置する領域に交流磁場を印加できる。特に、コイル2,3間に発生する均一磁場領域に対象物を配置することによって、対象物に対し、所定範囲(例えば、0.05mT~5mT)内の磁束密度を有する均一的な磁場(より詳細には、均一的な交流磁場)を印加することができる。よって、対象物は、コイル2,3間に発生する均一磁場領域の少なくとも一部に配置されることが好ましく、大円柱領域V1の中心C付近に少なくとも配置されることがより好ましい。
【0071】
収容容器10は、樹脂やガラス等の適宜の材料から構成されるものを採用できる。対象物に光を当てる必要がある場合、透明または半透明の収容容器10を用いることが好ましい。一方、光を当ててはならない対象物を使用する場合には、遮光性を有する収容容器10を用いる構成としてもよい。
【0072】
図2(a)および
図2(b)は、収容容器10の一例を示す模式図である。なお、
図2(b)においては、図面に対する理解を容易にする目的で、磁場発生部100(本実施形態では、第1コイル2および第2コイル3)を合わせて図示している。
【0073】
収容容器10は、例えば、
図2(a)に示すような円筒状の形状を有する。なお、収容容器10の形状は、円筒状に限らず、底面(両端の面)が多角形や楕円などの柱状体や箱状体等、対象物に応じた適宜の形状を採用できる。収容容器10の底面は、平面であることに限らず、船底形状などの非平面としてもよい。
【0074】
収容容器10は、対象物を出し入れ可能に構成されることが好ましい。よって、例えば、収容容器10は、上面等の一部が開口された本体部11を少なくとも備える。収容容器10は、本体部11の開口を覆う蓋部12をさらに備える構成としてもよい。蓋部12は、収容容器10を密閉可能であることが好ましく、これにより、害虫や雑菌や不純物等が混入して対象物が損傷されることを抑制できる。
【0075】
蓋部12は、本体部11に対して脱着可能であることが好ましく、これにより、収容容器10内の対象物に水分や餌などを適宜付与することができるし、対象物を必要に応じて収容容器10から取り出すこともできる。
【0076】
収容容器10の内外に空気等の気体を循環させる必要がある場合、本体部11または蓋部12に1または複数の通気孔(図示せず)を設けてもよい。この場合、通気孔から収容容器10内に雑菌等が混入しないように、通気性を有するが雑菌の進入を抑制可能なシート(図示せず)を貼付することが好ましい。
【0077】
対象物に対して1の収容容器10を使い続ける必要は必ずしもなく、対象物が成長して大きくなった場合には、より大きな収容容器10に移し変えてもよい。対象物が大きくなるにつれて、当該対象物に適した大きさ(すなわち、より大きな)収容容器10に当該対象物を順次移し替えていくことが好ましい。
【0078】
収容容器10(収容容器10を用いない場合は対象物)の周囲にアルミシート等の金属シートを覆う構成としてもよく、それによって、コケや藻等の繁殖を抑制できる。また、収容容器10(収容容器10を用いない場合は対象物)の周囲に磁性メッシュを配置してもよく、それによって、コイル2,3間に発生した均一磁場領域を広げ、対象物に対し、所定範囲(例えば、0.05mT~5mT)内の磁束密度を有する交流磁場を効率的に印加することが可能となる。
【0079】
収容容器10としては、
図2(b)に示すように、磁場発生部100(本実施形態では、第1コイル2および第2コイル3)が発生した磁場(例えば、コイル2,3間の均一磁場領域)内にその少なくとも一部を配置可能な磁場処理部15と、磁場(本実施形態では、交流磁場)が印加されない位置(例えば、コイル2,3の外)に配置される無処理部16とを備え、磁場処理部15と無処理部16とがパイプ等の連通部17によって連通される構成を採用できる。
【0080】
磁場処理部15と無処理部16との間に2本の連通部17を設けた場合、収容容器10内に流動可能な媒体(例えば、水)が注入された場合に、一方の連通部17が磁場処理部15から無処理部16への媒体の流動を可能にし、他方の連通部17が無処理部16から磁場処理部15への媒体の流動を可能にするため、磁場処理部15と無処理部16との間で媒体を循環させることができる。連通部17は、磁場処理部15または無処理部16の少なくとも一方に対して脱着可能であることが好ましい。
【0081】
図2(b)に示す収容容器10によれば、対象物が流動可能な媒体に混入された状態で収容容器10に収容される構成において、対象物が媒体内を移動する、または、媒体が対象物を流動させることによって、磁場処理部15と無処理部16との間で対象物を循環させることができる。
【0082】
対象物が磁場処理部15に位置する場合には、当該対象物を磁場(例えば、磁束密度が均一的である均一磁場領域の交流磁場)に曝露させることができる一方で、対象物が無処理部16に位置する場合には、当該対象物に磁場をかけない(印加しない)ようにすることができる。よって、磁場処理部15と無処理部16との間で対象物を循環させることによって、対象物に対して磁場を間欠的に印加できる。
【0083】
したがって、
図2(b)に示す収容容器10は、魚類やメタン菌等、水(淡水または海水)や有機性廃棄物からなるスラリー等の流動可能な媒体中で飼育や発酵等に供される対象物に磁場を印加する場合に有用である。ポンプ(図示せず)や水流発生装置(図示せず)等を用いることにより、磁場処理部15と無処理部16との間を対象物が循環する速度を調整可能に構成できる。対象物の循環速度の調整によって、対象物に対する磁場の印加時間を調整できる。
【0084】
図3は、交流電源である電源5の一例を示すブロック図である。交流電源である電源5としては、例えば、
図3(a)に示すような交流電源装置51を採用できる。交流電源装置51は、交流電流発生装置52と、増幅装置53とを備える。交流電流発生装置52および増幅装置53は、直流電流または交流電流を出力可能な電源(図示せず)から供給される電力によって駆動する。
【0085】
交流電流発生装置52は、信号源を発振可能な信号発振回路を含み、所定の周波数範囲(例えば、5kHz以下の範囲)の中の任意の周波数の交流電流を発生する。交流電流発生装置52から出力される交流電流の周波数は、制御装置7により制御される。交流電流発生装置52による出力信号の波形は、特に限定されず、正弦波、矩形波、三角波、またはのこぎり波等の各種波形を例示できる。交流電流発生装置52から出力される交流電流は、制御装置7によって任意の電流値および電圧値に設定される。増幅装置53は、交流電流発生装置52から入力された交流電流の電圧を増幅して磁場発生部100(例えば、第1コイル2および第2コイル)に供給する。なお、交流電流発生装置52と増幅装置53との間に変圧器を介在させる構成としてもよい。
【0086】
また、交流電源である電源5としては、例えば、
図3(b)に示すような交流電源装置55を採用することもできる。交流電源装置55は、100Vである50Hzまたは60Hzの商用電源54との接続または遮断を切り替え可能なスイッチ56と、変圧器57と、スイッチ58と、スライダック59とを備える。
【0087】
変圧器57は、100Vの商用電源54を10Vに減圧する。スイッチ58は、スライダック59に送出する電流の電圧を、商用電源54からの100V、または、変圧器57により減圧された10Vのいずれかに切り替える。スライダック59は、例えば、100Vまたは10Vの入力電圧を所定範囲の増幅率(例えば、0~130%の範囲の増幅率)で変圧して磁場発生部100(例えば、第1コイル2および第2コイル)に供給する。なお、交流電源装置55は、変圧器57およびスイッチ58を省略した構成、すなわち、スイッチ56とスライダック59とから構成としてもよい。
【0088】
交流電源である電源5(例えば、交流電源装置51、交流電源装置55)の出力は、制御装置7によって制御される構成としてもよい。よって、例えば、磁場発生部100としてのコイル2,3間に発生する均一磁場領域の磁束密度をテスラメータ6により測定可能な構成において、制御装置7が、その測定結果(テスラメータ6から入力された磁束密度の測定結果)に基づいて、均一磁場領域の磁束密度が適切な値となるよう、電源5からの交流電流の出力レベル(電圧値)を調整する構成を採用できる。当該構成によれば、均一磁場領域の磁束密度を安定に保つことができるので、対象物に均一で安定な交流磁場を一定の期間に亘ってかけ続けることが可能となる。
【0089】
図4を参照して、制御装置7が実行する電源5の出力制御処理について説明する。
図4は、出力制御処理の一例を示すフローチャートである。制御装置7の演算処理装置は、
図4に示す出力制御処理を所定の実行間隔(例えば、100ms)毎に繰り返し実行する。制御装置7は、当該出力制御処理において、まず、テスラメータ6による磁束密度の測定値が、所定の設定値を含む所定範囲内(例えば、所定の設定値を中心とする±0.5%の範囲内)にあるか否かを判定する(S11)。なお、S11の判定の基準となる「所定の設定値」は、対象物に供する磁場(例えば、コイル2,3間の均一磁場領域)として好ましい磁束密度の範囲(例えば、0.05mT~5mTの範囲)内で設定された所定の値である。
【0090】
磁束密度の測定値が当該範囲内にあると制御装置7が判定した場合(S11:Yes)、そのまま当該出力制御装置を終了する。一方、磁束密度の測定値が当該範囲外にあると制御装置7が判定した場合(S11:No)、制御装置7は、対象物に供する磁場(例えば、均一磁場領域)の磁束密度が所定の設定値となるよう、電源5から出力される電流の出力レベル(電圧値)を調整し(S12)、その後、当該出力制御装置を終了する。例えば、制御装置7は、S12において、交流電流発生装置52またはスライダック59を制御し、それによって、電源5である交流電源装置51または交流電源装置55から出力される交流電流の出力レベルを調整する。
【0091】
次に、
図5および
図6を参照して、磁場装置1の一例を具体的に説明する。
図5は、磁場装置1の一具体例を概略的に示す斜視図であり、
図6(a)~(c)は、それぞれ、
図5に示す磁場装置1の上面図、正面図、および側面図である。なお、図面に対する理解を容易にする目的で、
図5および
図6においては、導線4や配線等の図示を省略するとともに、
図6においては、磁場装置1に設置される収容容器10および収容容器10を載置する載置台19を二点鎖線で図示している。また、必要に応じて、内部の構成を破線で図示している。
【0092】
図5により例示される磁場装置1は、第1コイル2と、第2コイル3と、これらのコイル2,3を支持する支持部材21と、支持部材21を垂直方向に支持するベースフレーム22とを備える。なお、第1コイル2および第2コイル3は、磁場発生部100の一具体例である。支持部材21は、第1コイル2および第2コイル3を取付可能な第1支持部材23と、第1支持部材23を回動可能に支持する第2支持部材24とを含む。
【0093】
第1コイル2は、絶縁性を有する第1コイルカバー25により覆われ、取付部材27によって第1支持部材23の一端側に取り付け可能に構成される。第2コイル3は、絶縁性を有する第2コイルカバー26により覆われ、取付部材27によって第1支持部材23の他端側に取り付け可能に構成される。
【0094】
第1コイルカバー25および第2コイルカバー26は、コイル2,3と同様の円環状である必要は必ずしもなく、中央の開口が正方形など円以外の形状としてもよく、中央に開口のない円板状としてもよい。第1コイルカバー25および第2コイルカバー26の一方が円環状に構成され、他方が円盤状である構成としてもよい。第1コイルカバー25または第2コイルカバー26の一方を中央に開口のある形状(例えば、円環状)とすることによって、収容容器10を当該開口に挿通させる構成など、当該開口による空間の活用が可能となる。
【0095】
取付部材27は、第1コイルカバー25または第2コイルカバー26を固定的に取り付けるためのコイル側取付部28と、第1支持部材23に挿通可能な挿通部29とを備える。挿通部29は、第1支持部材23の長手方向に沿って移動可能である。これにより、挿通部29の位置を移動させることにより、第1コイルカバー25(第1コイル2)および第2コイルカバー26(第2コイル3)の各位置を各々独立して変更できる。
【0096】
このように、磁場装置1は、第1コイル2および第2コイル3の少なくとも一方の位置を、第1支持部材23の長手方向(すなわち、コイルの軸方向)に移動可能に構成されるので、第1コイル2および第2コイル3の位置を各々設定することができる。
【0097】
これにより、第1コイル2と第2コイル3とのコイル間距離を変更することなく、対象物に対する両コイル2,3の軸方向の位置を変更することができる。よって、例えば、対象物が収容容器10内を移動可能な生物(例えば、魚類)である場合に、両コイル2,3の軸方向の位置を変更することによって、収容容器10内における当該生物が多くいる位置(例えば、収容容器10における下層側)を狙って交流磁場を印加することが可能となる。この場合、コイル間距離を変更しないようにすることによって、コイル2,3間の磁束密度(特に、均一磁場領域の磁束密度)を均質化できる。
【0098】
また、第1コイル2と第2コイル3とのコイル間距離を変更できる。これにより、コイル間距離を適宜調整し、コイル2,3間の均一磁場領域を最適化できる。また、例えば、磁場装置1が第1および第2コイル2,3を着脱可能な構成において、複数種類のコイル径のコイル2,3の中から適宜のコイル径のコイル2,3を利用する場合に、そのコイル径に適したコイル間距離を都度設定できる。
【0099】
なお、第1支持部材23に対する挿通部29(取付部材27)の移動は、手動で行う構成としてもよく、電動式の昇降装置(図示せず)等を用いて行う構成としてもよい。電動式の昇降装置を用いて取付部材27を移動させる場合、パーソナルコンピュータ等の制御装置を用いて取付部材27の移動量を制御する構成としてもよい。
【0100】
本実施形態の磁場装置1において、第1支持部材23には回転軸31が固設される。回転軸31の他端側は、第2支持部材24に対して回転可能に取り付けられる。なお、
図6においては、回転軸31が第1支持部材23における長手方向の略中央部に設けられる場合を例示したが、この形態に限られるものではなく、第1支持部材23の一端側に偏って回転軸31が設けられる構成としてもよい。
【0101】
これにより、第1支持部材23を第2支持部材24に対して回転させることができるので、第1支持部材23に支持される第1コイルカバー25(第1コイル2)および第2コイルカバー26(第2コイル3)を、その位置関係を保ったまま回転軸31周りに回転させることができる。よって、互いに対向するコイル2,3の配置方向を垂直方向に限らず、水平方向や斜め方向などに自在に変更できる。
【0102】
なお、第2支持部材24に対する第1支持部材23の回転は、手動で行う構成としてもよく、電動モータ(図示せず)等を用いて電気的に行う構成としてもよい。電動モータを用いて第1支持部材23を回転させる場合、パーソナルコンピュータ等の制御装置を用いて第2支持部材24に対する第1支持部材23の回転量を制御する構成としてもよい。
【0103】
ベースフレーム22の底側には、キャスター32が配設され、磁場装置1の全体を水平方向に移動させることができる。これにより、第1コイル2および第2コイル3の位置を各コイル2,3の軸に対して交差する方向(以下、当該方向を「交差方向」とも称す)に移動させることができるので、収容容器10内に収容された対象物をコイル2,3間の均一磁場領域に適切に配置させることを可能にする。
【0104】
また、対象物に対して磁場をかけたい位置を交差方向に変更させたい場合に、キャスター32によって磁場装置1を所望の交差方向に移動できるので対応が容易である。また、対象物が重量物である場合に、対象物を移動させることなく磁場装置1を対象物の方に移動させ、コイル2,3間に対象物を配置することができる。
【0105】
なお、キャスター32は、手動で動作可能な構成としてもよく、電動モータ(図示せず)等を用いて電気的に動作可能な構成としてもよい。電動モータを用いてキャスター32を動作させる場合、パーソナルコンピュータ等の制御装置を用いてキャスター32の移動方向および移動量を制御する構成としてもよい。
【0106】
次に、
図7を参照して、磁場装置1を用いて行う対象物処理方法について説明する。
図7(a)および
図7(b)は、いずれも、本実施形態の対象物処理方法の一例を示す工程図である。
【0107】
図7(a)に示すように、対象物処理方法は、配置工程と、配置工程の次に行う磁場処理工程とを備える。配置工程は、磁場処理方法は、第1コイル2と第2コイル3との間に対象物を配置する工程である。対象物は、収容容器10に収容された状態でコイル2,3間に配置される構成としてもよく、収容容器10に収容されることなくコイル2,3間に直接配置される構成としてもよい。
【0108】
磁場処理工程は、電源5から供給された電流によって磁場発生部100に発生した所定範囲の磁束密度(例えば、0.05mT~5mT)の磁場に対象物を曝露する工程である。磁場発生部100がヘルムホルツコイルとして機能する第1コイル2および第2コイル3により構成される場合、磁場処理工程は、電源5から供給された所定周波数の交流電流によってコイル2,3間に発生した交流磁場(例えば、0.05mT~5mT以下の範囲内の磁束密度を有する均一磁場領域)に対象物を曝露する工程である。磁場装置1に供給される交流電流の周波数を5kHz以下の比較的低い周波数とすることによって、対象物への悪影響を抑制できる。
【0109】
磁場処理工程において、対象物に対する磁場の印加時間は、当該対象物の成長や発酵等の促進を目的とする場合、10分~20時間であることが好ましく、20分~6時間であることがより好ましく、30分~3時間であることがさらに好ましい。一方、対象物に含まれる特定の生物細胞(例えば、ガン細胞等)の増殖の抑制を目的とする場合、対象物に対する磁場の印加時間は、少なくとも24時間であることが好ましい。
【0110】
図7(b)に示すように、対象物処理方法は、上述した配置工程および磁場処理工程に加え、磁場処理工程の次に行う無処理工程と、無処理工程の次に行う2回目の磁場処理工程とを備える。
【0111】
無処理工程は、対象物に磁場を印加しない(磁場をかけない)工程である。無処理工程は、コイル2,3等の磁場発生部100への電流の供給を遮断する(すなわち、磁場発生部100に磁場を発生させない)ことによって達成する構成としてもよく、磁場発生部100が発生する磁場内に配置されている対象物を当該磁場のかからない位置(例えば、コイル2,3の外)に移動させることによって達成する構成としてもよい。後者の構成においては、対象物を人為的に移動させることに限らず、収容容器10内に収容された対象物自らの動き、または、対象物とともに収容容器10に収容された媒体の流動によって、対象物を磁場のかからない位置に移動させる構成としてもよい。
【0112】
よって、
図7(b)に示す対象物処理方法は、磁場処理工程と無処理工程とを交互に行い、対象物に対して間欠的に磁場(例えば、交流磁場)を印加する方法である。対象物に対して磁場を間欠的に印加する対象物処理方法は、特に、対象物の成長や発酵等を促進させる目的において好適である。
【0113】
なお、
図7(b)においては、無処理工程を挟んで2回の磁場処理工程を行う対象物処理方法を例示したが、対象物処理方法は、2回目の磁場処理工程の後、さらに無処理工程を挟んで3回目の磁場処理工程を行う等、磁場処理工程と無処理工程とを交互に少なくとも1回ずつ行う構成とすることができる。
【0114】
図7(b)に示すように、無処理工程を介在させることによって磁場処理工程を間欠的に行う構成においては、対象物の成長や発酵等の促進を目的とする場合、当該対象物に対する1日あたりの磁場の印加時間は、10分~20時間/日であることが好ましく、20分~6時間/日であることがより好ましく、30分~3時間/日であることがさらに好ましい。
【0115】
1日に1回の上記印加時間の磁場処理工程を行う構成において、磁場処理工程と無処理工程を隔日で行う構成としてもよく、1日の磁場処理工程の後に数日の無処理工程を行う構成としてもよい。また、1日あたりに上記印加時間の磁場処理工程を行うことを前提とし、1日に1回または複数回の無処理工程を介在させる構成としてもよい。例えば、30分~3時間の磁場処理工程と、30分~3時間の無処理工程とを繰り返す構成としてもよい。
【0116】
磁場処理工程を間欠的に複数回行う構成において、磁場や均一磁場領域の強度(磁束密度)は、全ての磁場処理工程において同一の強度である必要は必ずしもなく、一部の磁場処理工程において他とは異なる強度としてもよい。
【0117】
対象物に含まれる特定の生物細胞(例えば、ガン細胞等)の増殖の抑制を目的とする場合に、磁場処理工程による総印加時間(例えば、24時間)の中で、当該総印加時間に対する数%(例えば、0.5%)程度の無処理工程を1回または複数回介在させる構成としてもよい。
【0118】
磁場装置1に適用する対象物は、生物細胞または生物細胞による構成物を少なくとも含むものであればよい。なお、生物細胞(構成物の生物細胞を含む)は、植物細胞または動物細胞のいずれも採用できる。また、微生物や菌の細胞も生物細胞に含まれる。生物細胞は、iPS細胞のような人工的に作成された多機能性幹細胞や、iPS細胞から作成された骨格筋幹細胞などを含む。また、生物細胞は、ガン細胞のような異常細胞を含む。生物細胞による構成物としては、菌類や細菌類や藻類等の微生物、植物、魚類等の動物などを例示できる。藻類としては、例えば、ユーグレナ藻、珪藻などを例示できる。
【0119】
細菌類としては、例えば、根粒菌、放線菌(希少放線菌を含む)、乳酸菌などを例示できる。根粒菌としては、例えば、マメ科植物等の植物の根または茎に根粒または茎粒を形成し得る細菌を利用できる。放線菌としては、例えば、フランキア(Frankia)属の放線菌や、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、モンゴル自生の薬用植物Comarum salesowianumから分離されたActinocatenispora属の各種放線菌などを利用できる。乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属等の乳酸桿菌や、スプレプトコッカス(Streptococcus)属等の乳酸球菌などの各種乳酸菌を利用できる。
【0120】
菌類としては、例えば、菌根菌(例えば、菌根性きのこ)、メタン菌等の嫌気性微生物、麹菌、酵母菌などを例示できる。菌根菌としては、黒トリュフ(アジアクロセイヨウショウロ)や白トリュフ(ホンセイヨウショウロ)等のトリュフ、松茸、ポルチーニ茸、ホンシメジ等の外生菌根菌などを例示できる。なお、菌根菌は、外生菌根菌に限らず、アーバスキュラー菌根菌、内外性菌根菌、エリコイド菌根菌、アーブトイド菌根菌、モノトロポイド菌根菌、ラン菌根菌等、いずれの種類の菌根菌も利用可能である。
【0121】
メタン菌としては、メタン発酵に利用される菌を利用可能であり、例えば、メタノバクテリウム(Methanobacterium)属菌、メタノコッカス(Methanococcus)属菌、メタノザルチナ(Methanosarcina)属菌、メタノシータ(Methanosaeta)属菌、メタノハロフィルス(Methanohalophillus)属菌等などを例示できる。メタン発酵に利用するメタン菌は、1種類としてもよく、2種類以上の混合物としてもよい。
【0122】
麹菌としては、例えば、黄麹菌、黒麹菌、白麹菌等を例示できる。酵母菌としては、パン酵母、ビール酵母、清酒酵母、醤油酵母、ワイン酵母、トルラ酵母、食用酵母、飼料酵母、石油酵母などを例示できる。
【0123】
上記例示した微生物のうち、所定の植物または自身とは異なる微生物(以下、「他の微生物」とも称す)と共生可能な微生物については、共生相手となり得る植物または他の微生物とともに、その組合せを対象物として磁場装置1に適用させてもよい。
【0124】
なお、「共生」とは、複数種の生物が相互関係を持ちながら同所的(同じ場所)に生活する現象である。動物、植物、微生物(菌類、細菌類、藻類等)のいずれも共生可能な生物として利用し得る。共生は、双方の生物の利害に基づいて、相利共生、片利共生、寄生、片害共生、競争等に分類し得る。相利共生は、双方の生物が利益を得る共生である。片利共生は、一方の生物のみが利益を得る共生である。寄生は、一方の生物のみが利益を得て、他方の生物が害を被る共生である。片害共生は、一方の生物のみが該を被る共生である。競争は、双方の生物が害を被る共生である。これらいずれの関係性の共生においても磁場装置1を適用し得る。
【0125】
共生により生物が獲得する「利益」には、生存能力、適応力等が含まれる。例えば、菌根菌(例えば、黒トリュフ)と、当該菌根菌と共生する所定の植物(例えば、コナラ)は、互いに利益を与え合う(補完し合う)相利共生の関係にあり、菌根菌は、菌根が吸収した水分や養分(例えば、リン酸等のリン源等)を共生植物に与え、共生植物は、当該植物の光合成産物(例えば、エネルギー源としての炭水化物等)を、菌根を介して菌根菌に与える。また、菌根菌は、共生植物に対し、病害虫抵抗性や環境ストレス耐性等の適応力を付与する。
【0126】
根粒菌と、当該根粒菌と共生する所定の植物(例えば、例えば、エダマメやダイズやインゲン等のマメ科植物等)もまた相利共生の関係にある。根粒菌とその共生植物が共生する例においては、根粒菌は、当該根粒菌によって共生植物に形成された根粒または茎粒内で窒素固定を行い、共生植物へアンモニア等の窒素源を与える。一方、共生植物は、当該植物の光合成産物を根粒菌に与える。また、根粒菌は、共生植物に対し、病害虫抵抗性や環境ストレス耐性等の適応力を付与する。
【0127】
共生により生物が被る「害」には、例えば、死滅、病害、養分等の奪取等が含まれる。また、共生は、その形態(例えば、一方の生物に対して他方の生物が生息する位置)に応じて分類し得る。具体的に、一方の生物の表面や消化管や体表のくぼみ部分に他方の生物が生息する共生である体外共生、一方の生物の内部に他方の生物が生息する共生である体内共生、一方の生物の細胞外に他方の生物が生息する細胞外共生、一方の生物の細胞内に他方の生物が生息する細胞内共生などに分類し得る。これらいずれの形態の共生においても磁場装置1を適用し得る。
【0128】
以下の説明において、所定の微生物と、植物または他の微生物とが共生の関係にある場合に、前者の微生物(すなわち、植物または他の微生物と共生関係を築くことができる所定の微生物)を「共生微生物」とも称し、当該共生微生物と共生する植物または他の微生物を「共生植物」とも称する。
【0129】
共生微生物としては、例えば、菌根菌等の菌類や、根粒菌、放線菌(希少放線菌を含む)、乳酸菌等の細菌などを例示できる。共生植物としては、所定の微生物(共生微生物)と共生可能な植物または微生物(他の微生物)を例示できる。例えば、共生微生物が菌根菌である場合、当該菌根菌(外生菌根菌、アーバスキュラー菌根菌、内外性菌根菌、エリコイド菌根菌、アーブトイド菌根菌、モノトロポイド菌根菌、ラン菌根菌等)により根に菌根が形成され得る植物を共生植物として利用できる。菌根菌と共生可能な共生植物としては、例えば、コナラ等のブナ科植物、アカマツ等のマツ科植物、ジュニパーベリーが球果(杜松果)として形成される西洋杜松等のヒノキ科植物、ブルーベリー(ヌマスノキ)等のツツジ科植物、コチョウラン等のラン科植物などを例示できる。
【0130】
また、共生微生物が根粒菌である場合、当該根粒菌により根粒等が形成され得る植物(例えば、エダマメやダイズ等のマメ科植物など)等を共生植物として利用できる。また、共生微生物が放線菌である場合、放線菌により根粒等が形成され得る植物や、モンゴル自生の薬用植物Comarum salesowianumなどを共生植物として利用できる。また、共生微生物が乳酸菌である場合、乳酸菌と共生可能な各種植物や酵母等を共生植物として利用できる。なお、磁場装置1に適用可能な共生微生物および共生植物は、上記の例示に限定されず、植物または他の微生物と共生関係を築き得る各種の微生物を共生微生物として利用し得るとともに、そのような共生微生物と共生可能である各種の植物または微生物(他の微生物)を共生植物として利用し得る。
【0131】
共生微生物と共生植物のうち少なくとも一方が利益を獲得する共生の関係にある場合、それら共生微生物および共生植物の組合せ(すなわち、共生微生物と当該共生微生物と同所的に配置された共生微生物)を対象物として磁場装置1を適用することにより、共生が促進され、共生微生物および共生植物の少なくとも一方の成長や増殖等を効率的に促進させ得る。よって、例えば、菌根菌とコナラ等の共生植物のように共生微生物と共生植物が相利共生の関係にある場合には、それら共生微生物および共生植物の組合せに対して磁場装置1を適用することにより、共生微生物および共生植物を効率的に成長や増殖等させることができる。また、共生微生物と共生植物のうち少なくとも一方が害を被る共生の関係にある場合には、それら共生微生物および共生植物の組合せを対象物として磁場装置1を適用することにより、共生による害の程度をコントロールさせ得る。
【0132】
なお、共生微生物として利用可能な微生物(例えば、菌根菌、根粒菌、放線菌、乳酸菌等)を、対応する共生植物と組合せることなく単独の対象物として、磁場装置1に適用する対象物としてもよい。これにより、共生植物との共生に(共生植物と組合せるために)必要な共生微生物を効率的に増やすことができる。
【0133】
植物としては、例えば、上述した共生植物として機能する植物、野菜、アカジソ等のシソ類などを例示できる。植物には、その種や苗が含まれる。魚類としては、ウナギ、サケ、ナマコ、ウニ、ブリ、マグロ等を例示できる。魚類には、稚魚、魚卵、魚卵を有する魚類が含まれる。
【0134】
収容容器10には、必要に応じて、培地や媒体が対象物とともに投入される。培地および媒体は、対象物に利用可能なものであれば特に限定されない。培地としては、例えば、植物を植生するための土壌や、微生物等を培養するための固体または液体の培地などを例示できる。
【0135】
媒体は、流動可能なものを採用してもよく、流動不可能なものを採用してもよい。流動可能な媒体としては、例えば、水や、スラリー化された有機性物質などを例示できる。対象物が魚類である場合、流動可能な媒体としての水は、対象とする魚類の生息条件に応じて淡水または海水のいずれも利用できる。
【0136】
対象物がメタン発酵に利用されるメタン菌である場合、流動可能な媒体として、粉砕機で粉砕されスラリー化した有機性廃棄物を利用できる。この場合、有機性廃棄物としては、有機物を含む廃棄物であれば特に限定されないが、例えば、生ごみ、糞尿、下水汚泥、食品加工残渣、食品工業や製紙工業や畜産業などの産業において生じる有機性廃水を例示できる。
【0137】
以下、対象物を磁場装置1に適用した具体例について説明する。
【0138】
<菌根菌およびその共生植物>
菌根菌(共生微生物)として、黒トリュフ(アジアクロセイヨウショウロ菌)を使用し、菌根菌と共生する樹木であるコナラを共生植物として使用した。
【0139】
黒トリュフの胞子が根内に接種されたコナラの苗木を、培地としての土壌とともに収容容器10に収容し、その収容容器10を磁場装置1の第1コイル2と第2コイル3との間に配置した。収容容器10は、土壌表面にコケが発生することを抑制するため、その周囲をアルミシートで覆った。
【0140】
磁場装置1は、第1コイル2および第2コイル3としてコイル径(Φ)が300mmであるコイルを使用し、第1コイル2と第2コイル3とのコイル間距離を150mmに設定した。
【0141】
収容容器10は、対象物としての黒トリュフの胞子およびコナラがコイル2,3間に発生する均一磁場領域内の少なくとも一部に位置するよう配置した。より詳細には、共生植物の地上部分と根の両方に磁場をかけることが好ましいので、土壌の表面を均一磁場領域内に配置した。さらに詳細には、共生植物は地上部分と根の両方に効率的に交流磁場が印加されるよう、土壌の表面をコイル2,3間の略中央に配置した。
【0142】
磁場装置1に配置された収容容器10内の対象物(黒トリュフおよびコナラ)に対し、以下の7種類の条件で交流磁場をかけた(実施例1~7)。交流磁場をかける期間であるかかけない期間であるかにかかわらず、環境(温度:20℃、湿度:50~60%、土壌ph値:6.5~7.0、照明の照度:1万ルクス)を一定に保った。いずれの実施例の場合も、2週間に一度、対象物を含む収容容器10の重量を測定し、収容容器10の蓋部12を開け、減った重量分の潅水(10cc程度)を行った。
【0143】
実施例1:50Hz、200mVの交流電流を第1コイル2および第2コイル3に供給し、対象物に0.1mTの交流磁場を1日1時間、連続3日間かけた後、第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を60Hz、100mVとして、対象物に0.05mTの交流磁場を1日1時間、連続30日かけ、さらにその後、第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を80Hz、100mVとして、対象物に0.05mTの交流磁場を1日1時間、連続30日かけた。
【0144】
実施例2:80Hz、200mVの交流電流を第1コイル2および第2コイル3に供給し、対象物に0.1mTの交流磁場を1日1時間、連続3日間かけた後、第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を60Hz、200mVとして、対象物に0.05mTの交流磁場を1日1時間、連続30日かけ、さらにその後、第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を300Hz、200mVとして、対象物に0.1mTの交流磁場を1日1時間、連続30日かけた。
【0145】
実施例3:50Hz、200mVの交流電流を第1コイル2および第2コイル3に供給し、対象物に0.1mTの交流磁場を1日1時間、連続30日間かけた。
【0146】
実施例4:50Hz、200mVの交流電流を第1コイル2および第2コイル3に供給し、対象物に0.1mTの交流磁場を1日20時間、隔日で15日間かけた後、第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を500Hz、200mVとして、対象物に0.1mTの交流磁場を1日1時間、連続30日かけた。
【0147】
実施例5:80Hz、200mVの交流電流を第1コイル2および第2コイル3に供給し、対象物に0.1mTの交流磁場を1日20時間、隔日で30日間かけた後、第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を100Hz、200mVとして、対象物に0.1mTの交流磁場を1日1時間、連続30日かけた。
【0148】
実施例6:50Hz、200mVの交流電流を第1コイル2および第2コイル3に供給し、対象物に0.3mTの交流磁場を1日1時間、連続3日間かけた後、第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を60Hz、100mVとして、対象物に0.05mTの交流磁場を1日1時間、連続30日かけ、さらにその後、第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を80Hz、100mVとして、対象物に0.05mTの交流磁場を1日1時間、連続30日かけた。
【0149】
実施例7:80Hz、200mVの交流電流を第1コイル2および第2コイル3に供給し、対象物に0.2mTの交流磁場を1日20時間、隔日で30日間かけた後、第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を100Hz、200mVとして、対象物に0.1mTの交流磁場を1日1時間、連続30日かけた。
【0150】
比較例1として、対象物(黒トリュフおよびコナラ)を含む収容容器10を磁場装置1に配置することなく、実施例1~7と同じ環境(温度:20℃、湿度:50~60%、土壌ph値:6.5~7.0、照明の照度:1万ルクス)下においた。潅水は、2週間に一度、実施例1~7と同様に行った。
【0151】
実施例1~7および比較例1について、コナラの様子および黒トリュフ(菌根菌)の成長具合を観察したところ、実施例1~7のいずれについても、比較例1に比べて、コナラの成長が著しく、根の成長も促進されていた。
【0152】
また、顕微鏡(倍率略600倍)で菌根菌による菌根形成の様子を観察した。
図8は、倍率略600倍の顕微鏡で観察した実施例5の菌根形成の様子を示す図であり、
図9は、同倍率の顕微鏡で観察した比較例1の菌根形成の様子を示す図である。
図8,9から明らかなように、比較例1の場合に比べて、実施例5において菌根形成が促進されていた。また、実施例1~4,6,7のいずれについても同様に、比較例1に比べて、菌根形成が促進されていた。実施例1~7における菌根密度(根全体に対する菌根の比率)は、比較例1に比べて略2倍程度大きいことが確認された。
【0153】
この結果は、交流磁場の影響による共生植物(コナラ)自体の成長と菌根菌(黒トリュフ)の菌糸体の成長の相互作用によって、菌根形成が促進されたためと考えらえる。また、交流磁場の影響によって菌根菌の細胞分裂が活性化されたことや、交流磁場の影響によって土中の窒素固定や亜硝酸塩の生成が促進されて栄養分が増加したことや、交流磁場の影響によって共生植物中の窒素量が増えたことで光合成が活発になったこと等のいずれかまたは複数の要因が、関連していると考えられる。
【0154】
<根粒菌およびその共生植物>
マメ科植物の一種であるエダマメを共生植物として使用した。エダマメの苗木を、培地としての土壌とともに収容容器10に収容し、その収容容器10を磁場装置1の第1コイル2と第2コイル3との間に配置した。
【0155】
磁場装置1は、第1コイル2および第2コイル3としてコイル径(Φ)が300mmであるコイルを使用し、第1コイル2と第2コイル3とのコイル間距離を150mmに設定した。
【0156】
収容容器10は、共生植物であるエダマメの地上部分と根(特に、根粒菌による根粒)の両方に効率的に磁場が印加されるよう、土壌の表面をコイル2,3間の略中央(すなわち、均一磁場領域内)に配置した。
【0157】
磁場装置1に配置された収容容器10内の対象物(エダマメおよび根粒菌)に対し、以下の3種類の条件で交流磁場をかけた(実施例8~10)。交流磁場をかける期間であるかかけない期間であるかにかかわらず、環境(温度:20℃、湿度:50~60%、土壌ph値:6.5~7.0、照明の照度:1万ルクス)を一定に保った。いずれの実施例の場合も、2週間に一度、対象物を含む収容容器10の重量を測定し、収容容器10の蓋部12を開け、減った重量分の潅水(10cc程度)を行った。
【0158】
実施例8:50Hz、200mVの交流電流を第1コイル2および第2コイル3に供給し、対象物に0.1mTの交流磁場を1日1時間、連続3日間かけた後、第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を60Hz、100mVとして、対象物に0.05mTの交流磁場を1日1時間、連続30日かけ、さらにその後、第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を80Hz、100mVとして、対象物に0.05mTの交流磁場を1日1時間、連続30日かけた。
【0159】
実施例9:50Hz、200mVの交流電流を第1コイル2および第2コイル3に供給し、対象物に0.1mTの交流磁場を1日1時間、連続30日間かけた。
【0160】
実施例10:50Hz、200mVの交流電流を第1コイル2および第2コイル3に供給し、対象物に0.25mTの交流磁場を1日1時間、連続3日間かけた後、第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を60Hz、100mVとして、対象物に0.05mTの交流磁場を1日1時間、連続30日かけ、さらにその後、第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を80Hz、100mVとして、対象物に0.05mTの交流磁場を1日1時間、連続30日かけた。
【0161】
比較例2として、対象物(エダマメおよび根粒菌)を含む収容容器10を磁場装置1に配置することなく、実施例8~10と同じ環境(温度:20℃、湿度:50~60%、土壌ph値:6.5~7.0、照明の照度:1万ルクス)下においた。潅水は、2週間に一度、実施例8~10と同様に行った。
【0162】
実施例8~10および比較例2について、エダマメおよび根粒の様子を観察したところ、実施例8~10のいずれについても、比較例2に比べて、著しいエダマメの成長が確認された。また、いずれの実施例8~10におけるエダマメの根粒も比較例2に比べて成長し、その数も増加していることが確認された。
【0163】
実施例8~10におけるエダマメの著しい成長は、交流磁場の影響による共生植物(エダマメ)自体の成長に加えて、交流磁場の影響によるエダマメの根粒(根粒菌)の成長が相乗したためと考えられる。また、交流磁場の影響によって土中の窒素固定が促進されてエダマメの栄養分が増加したことや、交流磁場の影響によって共生植物中の窒素量が増えたことで光合成が活発になったこと等のいずれかまたは複数の要因が、関連していると考えられる。
【0164】
<骨格筋幹細胞>
iPS細胞から作成したヒトの骨格筋幹細胞を培地とともに収容容器10に収容し、その収容容器10を磁場装置1の第1コイル2と第2コイル3との間に配置した。収容容器10は、その中心がコイル2,3間に発生する均一磁場領域内の少なくとも一部に位置するよう配置した。
【0165】
磁場装置1は、第1コイル2および第2コイル3としてコイル径(Φ)が300mmであるコイルを使用し、第1コイル2と第2コイル3とのコイル間距離を150mmに設定した。
【0166】
実施例11:第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を80Hz、100mVとして、所定条件下で、対象物に0.1mTの交流磁場を1日1時間、連続3日間かけて培養を行った。
【0167】
比較例3として、対象物を含む収容容器10を磁場装置1に配置しないこと以外は、実施例11と同条件で培養を行った。
【0168】
実施例11において、比較例3に比べて骨格筋幹細胞の増殖が促進されていた。この結果は、骨格筋幹細胞の増殖が交流磁場の影響によって促進されたことを示す。これは、骨格筋幹細胞の細胞分裂が交流磁場の影響によって活性化されたためと考えられる。
【0169】
<がん細胞>
マウスのがん細胞を培地とともに収容容器10に収容し、その収容容器10を磁場装置1の第1コイル2と第2コイル3との間に配置した。収容容器10は、その中心がコイル2,3間に発生する均一磁場領域内の少なくとも一部に位置するよう配置した。
【0170】
磁場装置1は、第1コイル2および第2コイル3としてコイル径(Φ)が300mmであるコイルを使用し、第1コイル2と第2コイル3とのコイル間距離を150mmに設定した。磁場装置1に配置された収容容器10内の対象物に対し、以下の3種類の条件で交流磁場をかけた(実施例12~14)。
【0171】
実施例12:第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を80Hz、100mVとして、所定条件下で、対象物に0.1mTの交流磁場を24時間以上かけ続けた。
【0172】
実施例13:第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を80Hz、100mVとして、所定条件下で、対象物に0.05mTの交流磁場を24時間以上かけ続けた。
【0173】
実施例14:第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を80Hz、100mVとして、所定条件下で、対象物に0.15mTの交流磁場を24時間以上かけ続けた。
【0174】
比較例4として、対象物を含む収容容器10を磁場装置1に配置しないこと以外は、実施例12~14と同条件で培養を行った。
【0175】
実施例12~14において、比較例4とは異なりがん細胞に増殖はみられなかった。この結果は、交流磁場を一定時間以上かけ続けたことによってがん細胞の増殖が抑制されたことを示す。
【0176】
<魚類>
ウナギの卵を媒体としての淡水とともに収容容器10に収容し、その収容容器10を磁場装置1の第1コイル2と第2コイル3との間に配置した。収容容器10は、その中心がコイル2,3間に発生する均一磁場領域内の少なくとも一部に位置するよう配置した。収容容器10の周囲には磁性メッシュを配置した。
【0177】
磁場装置1は、第1コイル2および第2コイル3としてコイル径(Φ)が600mmであるコイルを使用し、第1コイル2と第2コイル3とのコイル間距離を300mmに設定した。
【0178】
実施例15:第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を80Hz、100mVとして、所定条件下で、対象物に0.1mTの交流磁場を1日1時間、連続30日間かけた。比較例5として、対象物を含む収容容器10を磁場装置1に配置しないこと以外は、実施例15と同条件とした。実施例15において、比較例5に比べてウナギの卵の孵化率の増加がみられた。この結果は、ウナギの卵の孵化が交流磁場の影響によって促進されたことを示す。これは、受精卵の細胞分裂が交流磁場の影響によって活性化されたためと考えられる。
【0179】
また、ウナギの稚魚を媒体としての淡水とともに収容容器10に収容し、その収容容器10を磁場装置1の第1コイル2と第2コイル3との間に配置した。収容容器10は、その中心がコイル2,3間に発生する均一磁場領域内の少なくとも一部に位置するよう配置した。収容容器10の周囲には磁性メッシュを配置した。磁場装置1は、上記のウナギの卵の場合と同様のものを使用した。
【0180】
実施例16:第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を80Hz、100mVとして、所定条件下で、対象物に0.1mTの交流磁場を1日1時間、連続30日間かけた。
【0181】
比較例6として、対象物を含む収容容器10を磁場装置1に配置しないこと以外は、実施例16と同条件とした。
【0182】
実施例16において、比較例6に比べてウナギの稚魚の成長が促進されていた。この結果は、ウナギの稚魚の成長が交流磁場の影響によって促進されたことを示す。これは、磁場が当てられたことによるストレスによって、タンパク質が増え、それによって、細胞の増殖が活性化されたためと考えられる。
【0183】
<メタン菌>
粉砕機による破砕によってスラリー化された有機性廃棄物とともにメタン菌を収容容器10に収容し、その収容容器10を磁場装置1の第1コイル2と第2コイル3との間に配置した。収容容器10は、その中心がコイル2,3間に発生する均一磁場領域内の少なくとも一部に位置するよう配置した。
【0184】
磁場装置1は、第1コイル2および第2コイル3としてコイル径(Φ)が600mmであるコイルを使用し、第1コイル2と第2コイル3とのコイル間距離を300mmに設定した。磁場装置1に配置された収容容器10内の対象物に対し、以下の2種類の条件で交流磁場をかけた(実施例17,18)。
【0185】
実施例17:第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を80Hz、100mVとして、所定条件下で、対象物に0.1mTの交流磁場を1日1時間、連続10日間かけた。
【0186】
実施例18:第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を80Hz、100mVとして、所定条件下で、対象物に0.2mTの交流磁場を1日1時間、連続10日間かけた。
【0187】
比較例7として、対象物を含む収容容器10を磁場装置1に配置しないこと以外は、実施例17,18と同条件とした。
【0188】
実施例17,18において、比較例7に比べてメタン発酵の促進が確認された。この結果は、交流磁場の影響によってメタン菌の増殖(培養)が促進されたことを示す。これは、メタン菌の細胞分裂が交流磁場の影響によって活性化されたためと考えられる。
【0189】
<麹菌>
黄麹菌の胞子を接種した液体培地を収容容器10に収容し、37℃、100rpmで27時間振とう培養した後、収容容器10を磁場装置1の第1コイル2と第2コイル3との間に配置した。収容容器10は、その中心がコイル2,3間に発生する均一磁場領域内の少なくとも一部に位置するよう配置した。
【0190】
磁場装置1は、第1コイル2および第2コイル3としてコイル径(Φ)が600mmであるコイルを使用し、第1コイル2と第2コイル3とのコイル間距離を300mmに設定した。磁場装置1に配置された収容容器10内の対象物に対し、以下の3種類の条件で交流磁場をかけた(実施例19~21)。
【0191】
実施例19:第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を80Hz、100mVとして、対象物に0.05mTの交流磁場を1時間かけ、磁場から外した後、所定条件で4時間振とう培養した。その後、振とう速度を上げて17時間さらに振とう培養した。
【0192】
実施例20:振とう培養前にコイル2,3により対象物に印加した磁場の磁束密度を0.1mTとした以外は、実施例19と同様の培養を行った。
【0193】
実施例21:振とう培養前にコイル2,3により対象物に印加した磁場の磁束密度を0.2mTとした以外は、実施例19と同様の培養を行った。
【0194】
比較例8として、対象物を含む収容容器10を、磁場装置1に配置しないこと以外は、実施例19~21と同条件で培養を行った。
【0195】
比較例8においては粒状の菌体が多数みられた一方で、実施例19~21においては菌体の塊が確認された。この結果は、黄麹菌の細胞分裂が交流磁場の影響によって活性化されたことを示す。これは、黄麹菌胞子が発芽して菌糸を伸ばすタイミングで磁界処理に供したことから、菌糸の細胞壁多糖の生合成が交流磁場の影響によって活性化されたことや、細胞表層の接着因子が交流磁場の影響を受けたことや、交流磁場の影響によって菌糸同士が絡まったこと等のいずれかまたは複数の要因が、関連していると考えられる。
【0196】
<酵母菌>
ビール酵母の胞子を接種した液体培地を収容容器10に収容し、その収容容器10を磁場装置1の第1コイル2と第2コイル3との間に配置した。収容容器10は、その中心がコイル2,3間に発生する均一磁場領域内の少なくとも一部に位置するよう配置した。
【0197】
磁場装置1は、第1コイル2および第2コイル3としてコイル径(Φ)が600mmであるコイルを使用し、第1コイル2と第2コイル3とのコイル間距離を300mmに設定した。磁場装置1に配置された収容容器10内の対象物に対し、以下の3種類の条件で交流磁場をかけた(実施例22~24)。
【0198】
実施例22:第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を80Hz、100mVとして、所定の環境下で、対象物に0.05mTの交流磁場を1日1時間、連続3日間かけて培養を行った。
【0199】
実施例23:第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を80Hz、100mVとして、所定の環境下で、対象物に0.1mTの交流磁場を1日1時間、連続3日間かけて培養を行った。
【0200】
実施例24:第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を80Hz、100mVとして、所定の環境下で、対象物に0.15mTの交流磁場を1日1時間、連続3日間かけて培養を行った。
【0201】
比較例9として、対象物を含む収容容器10を磁場装置1に配置しないこと以外は、実施例22~24と同条件で培養を行った。
【0202】
実施例22~24において、比較例9に比べてビール酵母の増殖が促進されていた。この結果は、ビール酵母の増殖が交流磁場の影響によって促進されたことを示す。これは、ビール酵母の細胞分裂が交流磁場の影響によって活性化されたためと考えられる。
【0203】
<藻類>
ユーグレナ藻を媒体としての淡水とともに収容容器10に収容し、その収容容器10を磁場装置1の第1コイル2と第2コイル3との間に配置した。収容容器10は、その中心がコイル2,3間に発生する均一磁場領域内の少なくとも一部に位置するよう配置した。
【0204】
磁場装置1は、第1コイル2および第2コイル3としてコイル径(Φ)が600mmであるコイルを使用し、第1コイル2と第2コイル3とのコイル間距離を300mmに設定した。磁場装置1に配置された収容容器10内の対象物に対し、以下の2種類の条件で交流磁場をかけた(実施例25~26)。
【0205】
実施例25:第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を80Hz、100mVとして、所定条件下で、対象物に0.1mTの交流磁場を1日1時間、連続3日間かけて培養を行った。
【0206】
実施例26:第1コイル2および第2コイル3に供給する交流電流を80Hz、100mVとして、所定条件下で、対象物に0.2mTの交流磁場を1日1時間、連続3日間かけて培養を行った。
【0207】
比較例10として、対象物を含む収容容器10を磁場装置1に配置しないこと以外は、実施例25,26と同条件で培養を行った。
【0208】
実施例25,26において、比較例10に比べてユーグレナ藻の増殖が促進されていた。この結果は、ユーグレナ藻の増殖が交流磁場の影響によって促進されたことを示す。これは、ユーグレナ藻の細胞分裂が交流磁場の影響によって活性化されたためと考えられる。
【0209】
次に、本実施形態の磁場装置1を用いた処理施設の一例について例示する。
図10は、磁場装置1を有機性廃棄物処理施設に適用した場合の適用例を示す模式図である。
図10においては、図面に対する理解を容易にする目的で、導線4等の図示を省略している。
【0210】
図10(a)は、第1の例を示す図である。この例では、磁場装置1に配置される収容容器10を発酵槽45として利用する。発酵槽45には、有機性発酵液の原料として、粉砕機による破砕によってスラリー化された有機性廃棄物、および、メタン菌が投入される。
【0211】
発酵槽45は、その少なくとも一部(例えば、中心)が磁場発生部100が発生する磁場の少なくとも一部に位置するよう配置される。磁場発生部100がコイル2,3からなるヘルムホルツコイルである場合、発酵槽45は、その中心がコイル2,3間に発生する均一磁場領域内の少なくとも一部に位置するよう配置されることが好ましい。
【0212】
磁場発生部100に電流を供給して磁場を発生させ、その磁場の磁束密度を所定範囲(例えば、0.05mT~5mT)内で設定された所定の設定値に調整する。磁場発生部100がコイル2,3のような交流磁場発生部である場合、当該交流磁場発生部に対し、5kH以下の交流電流を供給し、前記設定値の磁束密度を有する交流磁場を発生させる。これにより、発酵槽45の内容物(以下、「有機性発酵液」とも称す)の少なくとも一部を前記所定範囲内の磁束密度の磁場に曝露することができる。
【0213】
有機性発酵液に磁場(交流磁場または定常磁場)を所定時間印加すると、発酵槽45内(特に、磁場が印加された箇所や均一磁場領域内に位置する箇所)のメタン菌の増殖が促進され、その結果、メタン発酵によるバイオガス(例えば、メタンガスや二酸化炭素など)の発生が促進される。交流磁場等の磁場の印加は、所定時間の印加を1回だけ行う構成としてもよく、所定時間の印加を間欠的に行う構成としてもよいが、所定時間の印加を間欠的に行う構成とすることが好ましい。なお、温度、水分量、およびPH値等は、適切な所定の範囲に都度設定される。
【0214】
図10(b)は、第2の例を示す図である。この例では、発酵槽45と、磁場装置1に配置される収容容器10とが別々に設けられる。有機性発酵液の原料(すなわち、破砕によってスラリー化された有機性廃棄物およびメタン菌)は、発酵槽45と収容容器10にそれぞれ投入される。
【0215】
収容容器10は、その少なくとも一部(例えば、中心)が磁場発生部100が発生する磁場の少なくとも一部に位置するよう配置される。磁場発生部100がコイル2,3からなるヘルムホルツコイルである場合、収容容器10は、その中心がコイル2,3間に発生する均一磁場領域内の少なくとも一部に位置するよう配置されることが好ましい。
【0216】
上述した第1の例と同様、磁場発生部100(例えば、コイル2,3)に電流を供給して、所定範囲(例えば、0.05mT~5mT)内で設定された所定の設定値の磁束密度を有する磁場(交流磁場または定常磁場)を発生させることにより、収容容器10内の有機性発酵液の少なくとも一部を前記所定範囲内の磁束密度の磁場に曝露することができる。
【0217】
有機性発酵液に磁場(交流磁場または定常磁場)を所定時間印加すると、収容容器10内(特に、磁場が印加された箇所や均一磁場領域内に位置する箇所)のメタン菌の増殖が促進される。交流磁場等の磁場の印加は、所定時間の印加を1回だけ行う構成としてもよく、所定時間の印加を間欠的に行う構成としてもよいが、所定時間の印加を間欠的に行う構成とすることが好ましい。
【0218】
その後、収容容器10内の有機性発酵液を発酵槽45に投入する。磁場装置1によってメタン菌が増殖(培養)された有機性発酵液が発酵槽45の有機性発酵液に混合されることによって、発酵槽45内のメタン発酵が促進される。これにより、発酵槽45におけるバイオガスの発生が促進される。なお、温度、水分量、およびPH値等は、適切な所定の範囲に都度設定される。発酵槽45および収容容器10に攪拌手段を設ける構成としてもよい。
【0219】
図10(c)は、第3の例を示す図である。この例では、発酵槽45と、磁場装置1に配置される収容容器10とが連通管41,42を介して接続する。なお、この例において、発酵槽45は対象物を収容可能な収容容器の一部として機能する。
図10(c)における収容容器10および発酵槽45は、それぞれ、磁場処理部15および無処理部16(いずれも
図2(b)参照)に対応する。また、連通管41,42は、連通部17(
図2(b)参照)に対応する。
【0220】
有機性発酵液の原料(すなわち、破砕によってスラリー化された有機性廃棄物およびメタン菌)は、発酵槽45に投入される。有機性発酵液の原料を発酵槽45と収容容器10にそれぞれ投入してもよい。
【0221】
連通管41,42の一方の管は、発酵槽45内の有機性発酵液を収容容器10へ移送するための管(以下、「流出管」とも称す)として機能し、他方の管は、収容容器10内の有機性発酵液を発酵槽45へ移送するための管(以下、「返送管」とも称す)として機能する。
【0222】
メタン菌は、発酵槽45の下層(内容物の中央より下)側に多く存在することが多いので、流出管は、発酵槽45の下層側に設けることが好ましい。
図10(c)に示す例においては、連通管41,42のうち、発酵槽45のより下層側に位置する連通管41を流出管として機能させることが好ましい。
【0223】
返送管は、流出管より上側に設けることが好ましく、発酵槽45の上層側に設けることがより好ましい。発酵槽45の上層側に返送管を設けることにより、発酵槽45内の有機性発酵液を攪拌し、それによって、発酵槽45内における発酵速度が局所的に偏ることを抑制できる。
【0224】
連通管41,42には非図示のポンプが接続され、流出管において有機性発酵液を発酵槽45から収容容器10へ移送させ、返送管において有機性発酵液を収容容器10から発酵槽45へ移送する。なお、ポンプを設けることなく、自然流によって有機性発酵液が発酵槽45と収容容器10との間を循環する構成としてもよい。
【0225】
収容容器10は、その少なくとも一部(例えば、中心)が磁場発生部100が発生する磁場の少なくとも一部に位置するよう配置される。磁場発生部100がコイル2,3からなるヘルムホルツコイルである場合、収容容器10は、その中心がコイル2,3間に発生する均一磁場領域内の少なくとも一部に位置するよう配置されることが好ましい。
【0226】
上述した第1または第2の例と同様、磁場発生部100(例えば、コイル2,3)に電流を供給して、所定範囲(例えば、0.05mT~5mT)内で設定された所定の設定値の磁束密度を有する磁場(交流磁場または定常磁場)を発生させることにより、収容容器10内の有機性発酵液の少なくとも一部を前記所定範囲内の磁束密度の磁場に曝露することができる。磁場の印加は、所定時間の印加を1回だけ行う構成としてもよく、所定時間の印加を間欠的に行う構成としてもよいが、所定時間の印加を間欠的に行う構成とすることが好ましい。
【0227】
有機性発酵液に磁場(交流磁場または定常磁場)を所定時間印加すると、収容容器10内(特に、磁場が印加された箇所や均一磁場領域内に位置する箇所)のメタン菌の増殖が促進される。磁場装置1によってメタン菌が増殖された有機性発酵液が返送管によって発酵槽45に戻されるので、発酵槽45内のメタン発酵もまた促進される。これにより、発酵槽45におけるバイオガスの発生が促進される。なお、温度、水分量、およびPH値等は、適切な所定の範囲に都度設定される。発酵槽45および収容容器10に攪拌手段を設ける構成としてもよい。
【0228】
図10(a)~(c)の各例において、発酵槽45内のメタン発酵により生成したバイオガスは適宜回収される。回収したバイオガスは、発電機や発動機等の燃料として利用される。メタン発酵の残渣もまた適宜回収される。回収した残渣は、脱水することにより再利用してもよい。
【0229】
以上、説明したように、本実施形態の磁場装置1によれば、電源5から供給される電流によって磁場発生部100(例えば、第1コイル2および第2コイル3)が発生した0.05mT以上かつ5mT以下(例えば、0.05mT以上かつ0.5mT以下)の範囲内の磁束密度の磁場内の少なくとも一部に、共生微生物、当該共生微生物と共生する共生植物、メタン菌、麹菌、酵母菌、または藻類のうち1または複数を含む対象物を配置可能に構成されるので、当該範囲内の磁束密度の磁場を対象物に印加する(当該範囲内の磁束密度の磁場に対象物を曝露する)ことによって、対象物の成長や発酵等を効率よく促進させることができる。
【0230】
また、本実施形態の磁場装置1によれば、電源5から供給される電流によって磁場発生部100が発生した0.05mT以上かつ5mT以下(例えば、0.05mT以上かつ0.5mT以下)の範囲内の磁束密度の磁場内の少なくとも一部に、がん細胞を含む対象物を配置可能に構成され、当該範囲内の磁束密度の磁場に対象物を曝露する(当該範囲内の磁束密度の磁場を対象物に印加する)ことによって当該対象物に含まれるがん細胞の増殖を抑制することができる。
【0231】
磁場発生部100として、コイル2,3のような交流磁場(変動磁場)を発生可能な交流磁場発生部を用いる場合、対象物に印加する交流磁場を5KHz以下(例えば、500Hz以下)の比較的低い周波数の交流電流によって発生したものとすることにより、対象物への悪影響を抑制できる。
【0232】
<変形例>
上記実施形態においては、磁場発生部100として、交流磁場を発生可能な交流磁場発生部(より詳細には、第1コイル2および第2コイル3)を例示したが、磁場発生部100は、交流磁場発生部である必要は必ずしもなく、定常磁場を発生可能な定常磁場発生部である構成としてもよい。磁場発生部100として利用可能な定常磁場発生部は、例えば、超電導電磁石等、定常磁場を発生可能な各種態様のものを利用可能である。よって、超電導電磁石等の定常磁場発生部により発生する磁場の磁束密度を、対象物に適用するための所定範囲の磁束密度(例えば、0.05mT~5mT)の定常磁場内に対象物を配置し、当該対象物を前記所定範囲内の磁束密度の磁場に曝露させる構成としてもよい。
【0233】
上記実施形態においては、交流磁場(変動磁場)を発生可能な磁場発生部100(交流磁場発生部)として、第1コイル2および第2コイル3から構成されるヘルムホルツコイルを例示したが、交流磁場発生部は、ヘルムホルツコイルである必要は必ずしもなく、交流磁場を発生可能な各種態様のものを利用可能である。例えば、その一辺の一部が途切れたギャップを有する矩形枠状(略コの字状)の鉄心に導線を巻いて形成されたコイルを、交流電流の供給によって前記ギャップ間に交流磁場を発生させる交流磁場発生部として利用できる。
【0234】
上記実施形態においては、第1コイル2または第2コイル3が第1支持部材23の長手方向に移動可能な磁場装置1を例示したが(
図5参照)、第1コイル2および第2コイル3を、天井や天井側において垂直方向に対して交差する方向に延びる保持部材(例えば、床側から上方に延びる棒状部材の上端側において当該棒状部材に交差する向きに突出する部材)等からワイヤーや鎖等の紐状部材を用いて吊り下げ、紐状部材に吊られた第1コイル2および第2コイル3の吊り下げ位置をウインチ等の巻き上げ装置を用いて変更する構成としてもよい。
【0235】
この場合、第1コイル2および第2コイル3の吊り下げ位置が同時に変更可能な構成としてもよく、第1コイル2および第2コイル3の吊り下げ位置が各々独立して変更可能な構成としてもよい。また、巻き上げ装置は、手動式のものとしてもよく、電動式のものとしてもよい。
【0236】
また、コイル2,3を吊り上げる紐状部材は、紐状部材におけるコイル2,3側とは反対側の端部が天井等に設けられたレール上を移動可能な構成としてもよい。これにより、第1コイル2および第2コイル3をレールに沿って交差方向(各コイル2,3の軸に対して交差する方向)に移動させることができる。
【0237】
以上、上記実施形態及び変形例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、実施形態又は各変形例は、それぞれ、実施形態又は各変形例が有する構成の一部または複数部分を、その実施形態又は変形例に追加し或いはその実施形態又は各変形例の構成の一部または複数部分と交換等することにより、その実施形態又は各変形例を変形して構成するようにしても良い。また、上記実施形態又は各変形例で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【符号の説明】
【0238】
1 磁場装置
2 第1コイル(磁場発生手段)
3 第2コイル(磁場発生手段)
4 導線(接続手段)
5 電源(電源、交流電源)
6 テスラメータ(磁束密度測定手段)
7 制御装置(磁場制御手段)
10 収容容器(収容手段)
15 磁場処理部
16 無処理部
23 第1支持部材(軸方向移動手段の一部)
27 取付部材(軸方向移動手段の一部)
32 キャスター(交差方向移動手段)
51 交流電源装置(交流電源)
55 交流電源装置(交流電源)
100 磁場発生部(磁場発生手段)
V1 大円柱領域
V2 小円柱領域