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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014188
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】スロットル装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 9/10 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
F02D9/10 Z
F02D9/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116513
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 賢一
(72)【発明者】
【氏名】藤村 俊行
【テーマコード(参考)】
3G065
【Fターム(参考)】
3G065CA27
3G065HA16
3G065HA19
3G065HA21
(57)【要約】
【課題】スロットル装置のバイパス通路を開閉する弁体を動かすモータのシャフトの周りからモータのハウジングに水分が侵入するのを効果的に抑制する。
【解決手段】スロットル装置(1)であって、スロットルバルブ(14)を有する主通路(7)と前記スロットルバルブを迂回するバイパス通路(70)とが形成されたボデー部材(2、50、60)と、前記バイパス通路を開閉する弁体(110)と、シャフト(127)を介して前記弁体を移動させるアクチュエータ(108)と、前記ボデー部材に形成された収容部(58)内に配置され前記アクチュエータを収容するハウジング(112)と、前記ハウジングに形成され前記シャフトが挿通される挿通孔(125)と、前記収容部の圧力変動を抑制する圧力変動抑制手段(200、68、210)とを備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットル装置であって、
スロットルバルブを有する主通路と前記スロットルバルブを迂回するバイパス通路とが形成されたボデー部材と、
前記バイパス通路を開閉する弁体と、
シャフトを介して前記弁体を移動させるアクチュエータと、
前記ボデー部材に形成された収容部内に配置され前記アクチュエータを収容するハウジングと、
前記ハウジングに形成され前記シャフトが挿通される挿通孔と、
前記収容部の圧力変動を抑制する圧力変動抑制手段とを備えるスロットル装置。
【請求項2】
請求項1のスロットル装置であって、
前記圧力変動抑制手段は前記バイパス通路に面して配置されたダイヤフラムを備えるスロットル装置。
【請求項3】
請求項2のスロットル装置であって、
前記ボデー部材は、前記主通路を形成する第1ボデー部材と、前記収容部を形成する第2ボデー部材とを備え、前記第1ボデー部材と前記第2ボデー部材の間に前記バイパス通路が形成されており、前記ダイヤフラムは前記バイパス通路に面する前記第2ボデー部材の肉盗み部に配置されており、
前記圧力変動抑制手段は前記肉盗み部と前記収容部とを連通する連通孔を備えるスロットル装置。
【請求項4】
請求項1のスロットル装置であって、
前記挿通孔の周囲には前記弁体が開き方向に移動したときに前記弁体または前記ハウジングに接して前記挿通孔をシールするシール部材を備えており、
前記アクチュエータはステップモータを備えており、
前記弁体と前記ハウジングの間には前記弁体または前記ハウジングと当接することにより前記弁体の全開位置を規定するストッパ部材を備えており、
前記弁体が開き方向に移動したときには前記ストッパ部材が前記弁体または前記ハウジングと当接する前に前記シール部材が前記弁体または前記ハウジングに接して前記挿通孔をシールするスロットル装置。
【請求項5】
スロットル装置であって、
スロットルバルブを有する主通路と前記スロットルバルブを迂回するバイパス通路とが形成されたボデー部材と、
前記バイパス通路を開閉する弁体と、
シャフトを介して前記弁体を移動させるステップモータと、
前記ボデー部材に形成された収容部内に配置され前記ステップモータを収容するハウジングと、
前記ハウジングに形成され前記シャフトが挿通される挿通孔と、
前記挿通孔の周囲には前記弁体が開き方向に移動したときに前記弁体または前記ハウジングに接して前記挿通孔をシールするシール部材と、
前記弁体と前記ハウジングの間には前記弁体または前記ハウジングと当接することにより前記弁体の全開位置を規定するストッパ部材とを備えており、
前記弁体が開き方向に移動したときには前記ストッパ部材が前記弁体または前記ハウジングと当接する前に前記シール部材が前記弁体または前記ハウジングに接して前記挿通孔をシールするスロットル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術はスロットル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンを備えた船舶、自動二輪車、原付自転車などの乗り物は、通常、エンジンへの吸気量を制御するスロットル装置を備えている。スロットル装置には、スロットルバルブが配置される主通路(ボア)の他、アイドリング用にスロットルバルブを迂回するバイパス通路が設けられることがある。バイパス通路には、通常、アイドリング回転数の制御のためのバルブが設けられる。
【0003】
【特許文献1】特開2022-167201号公報
【特許文献2】特開2020-060269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バイパス通路を開閉する弁体をモータで動かす場合、モータのハウジングから突き出すシャフトの周りが完全には密閉できないことがあり、その場合、湿気を含んだ空気が侵入して巻き線等のモータ部品に錆を生じることがある。特にエンジンの停止時はエンジンの発熱やモータの発熱が止まるため、ハウジングの内部に負圧が発生し空気が引き込まれやすい上、ハウジングの内部で水分が結露しやすい。さらに、船舶に搭載されるスロットル装置の場合、湿度や塩分濃度の高い空気が侵入する可能性が非常に高く、錆びの問題が深刻になりうる。
【0005】
モータのハウジングから突き出すシャフトの周りのシールに関しては様々な方法が提案されている。例えば、特開2022-167201には、コイルケースへの水分の侵入を防ぐためにコイルケースから突き出すシャフトの周りを常に蛇腹状のカバーで覆うことが開示されている。しかし、ハウジングの内部に圧力変化が生じると蛇腹が大きく変形し、亀裂を生じる可能性が高いため、十分なシール機能を期待することはできない。仮にシール機能が維持できた場合でも、圧力変化に打ち勝つ大きな駆動力を得るには強力なモータを用いる必要があり、コストが増大する。
【0006】
特開2020-060269には、コイルケースから流路に突き出すシャフトの周りにシール部材を配置し、電磁弁が開いたときに弁体をシール部材に着座させることが開示されている。しかし、この構造をステップモータに適用した場合、弁体が全開位置に至る前に脱調を生じる可能性が高いため、十分なシール機能を期待することはできない。
【0007】
そこで、以上の課題の少なくとも一つを解決し、スロットル装置のモータのシャフトの周りからハウジングへの水分の侵入を効果的に抑制することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの態様は、スロットル装置であって、スロットルバルブを有する主通路と前記スロットルバルブを迂回するバイパス通路とが形成されたボデー部材と、前記バイパス通路を開閉する弁体と、シャフトを介して前記弁体を移動させるアクチュエータと、前記ボデー部材に形成された収容部内に配置され前記アクチュエータを収容するハウジングと、前記ハウジングに形成され前記シャフトが挿通される挿通孔と、前記収容部の圧力変動を抑制する圧力変動抑制手段とを備える。
【0009】
実施形態によっては、前記圧力変動抑制手段は前記バイパス通路に面して配置されたダイヤフラムを備える。
【0010】
実施形態によっては、前記ボデー部材は、前記主通路を形成する第1ボデー部材と、前記収容部を形成する第2ボデー部材とを備え、前記第1ボデー部材と前記第2ボデー部材の間に前記バイパス通路が形成されており、前記ダイヤフラムは前記バイパス通路に面する前記第2ボデー部材の肉盗み部に配置されており、前記圧力変動抑制手段は前記肉盗み部と前記収容部とを連通する連通孔を備える。
【0011】
実施形態によっては、前記挿通孔の周囲には前記弁体が開き方向に移動したときに前記弁体または前記ハウジングに接して前記挿通孔をシールするシール部材を備えており、前記アクチュエータはステップモータを備えており、前記弁体と前記ハウジングの間には前記弁体または前記ハウジングと当接することにより前記弁体の全開位置を規定するストッパ部材を備えており、前記弁体が開き方向に移動したときには前記ストッパ部材が前記弁体または前記ハウジングと当接する前に前記シール部材が前記弁体または前記ハウジングに接して前記挿通孔をシールする。
【0012】
別の態様は、スロットル装置であって、スロットルバルブを有する主通路と前記スロットルバルブを迂回するバイパス通路とが形成されたボデー部材と、前記バイパス通路を開閉する弁体と、シャフトを介して前記弁体を移動させるステップモータと、前記ボデー部材に形成された収容部内に配置され前記ステップモータを収容するハウジングと、前記ハウジングに形成され前記シャフトが挿通される挿通孔とを備える。スロットル装置はさらに、前記挿通孔の周囲には前記弁体が開き方向に移動したときに前記弁体または前記ハウジングに接して前記挿通孔をシールするシール部材と、前記弁体と前記ハウジングの間には前記弁体または前記ハウジングと当接することにより前記弁体の全開位置を規定するストッパ部材とを備えており、前記弁体が開き方向に移動したときには前記ストッパ部材が前記弁体または前記ハウジングと当接する前に前記シール部材が前記弁体または前記ハウジングに接して前記挿通孔をシールする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一つの実施形態としてのスロットル装置を主通路(ボア)の中心線とスロットルシャフトの中心線を通る平面で切断した断面図である。
図2】スロットル装置を主通路(ボア)の中心線を通りスロットルシャフトの中心線に垂直な平面で切断し図1の下側から見た断面図である。
図3】スロットル装置のスロットルボデーからIDUボデーを分解した斜視図である。
図4】スロットルボデーを図1の上側から見た平面図である。
図5】IDUボデーの下側の斜視図である。
図6】スロットル装置をISCバルブの中心線を通りバイパス通路に沿った平面で切断した断面図である。
図7】ISCバルブのステップモータと弁体の斜視図である。
図8】他の実施形態としての外付けの圧力変化抑制装置を模式的に示す図である。
図9】弁体が閉じ位置にあるときのISCバルブを模式的に示す図である。
図10】弁体が開き方向に移動してリップシールに接したときのISCバルブを模式的に示す図である。
図11】弁体がストッパ部材に接して全開位置に来たときのISCバルブを模式的に示す図である。
図12】別の実施形態として弁体に取り付けられたリップシールを示す図である。
図13】さらに別の実施形態としてモータハウジングに取り付けられたOリングを示す図である。
図14】さらに別の実施形態として弁体に取り付けられたOリングを示す図である。
図15】さらに別の実施形態としてモータハウジングに取り付けられた弾性蛇腹を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術の種々の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
エンジンを備えた船舶(船外機や船内機)、自動二輪車、原付自転車などの乗り物や輸送機械は、通常、エンジンに連通する吸気管に設けられエンジンへの吸気量を制御する図1に示したようなスロットル装置1を備える。図1図3の上下方向は一つの実施形態として船舶に搭載されるスロットル装置1の上下方向と一致するように描かれている。
【0016】
[スロットルボデーとスロットルバルブ]
図1に示すように、スロットル装置1は金属(例えばアルミニウム合金)製のスロットルボデー2を有し、スロットルボデー2は概して円筒状の貫通する主通路7(ボア)を形成するボア形成部6を有する。主通路7の上流側は大気に連通され、エアクリーナを設けることができる。主通路7の下流側はインテークマニホールドなどの吸気配管を介してエンジンに接続される。大気から吸入された空気はスロットル装置1の主通路7を通りエンジンに取り込まれる。
【0017】
図1図2に示すように、主通路7の内部にはスロットルシャフト9に支持されて主通路7を開閉するバタフライ式の円板状のスロットルバルブ14が配置される。スロットルバルブ14はスロットルシャフト9にねじ15などで固定される。スロットルシャフト9はスロットルボデー2に回転可能に保持され、主通路7を直径方向に横切る。スロットルバルブ14はスロットルシャフト9の回転により閉位置(図2に示す位置)と開位置(図示しない)の間を回動し、主通路7を通る吸気量を制御する。スロットルシャフト9はスロットルバルブ14の両側でスロットルボデー2に形成されたシャフト挿通孔10、11に挿通され、軸受19、20により回転可能に保持される。各シャフト挿通孔10、11は、スロットルシャフト9と各シャフト挿通孔10、11の壁面の間に配置されたリップシールなどの弾性シール部材12、13によりシールされる。
【0018】
[スロットルレバー]
図1に示すように、スロットルシャフト9は一方の端がスロットルボデー2から突出し、その突出部にスロットルレバー17が結合される。スロットルレバー17は、例えば、操縦者が操作するスロットルハンドルにケーブルなどの伝達部材を介して接続される。スロットルレバー17とスロットルボデー2との間には捩りコイルばねからなるリターンスプリング18が介装される。リターンスプリング18はスロットルレバー17を介してスロットルバルブ14を閉じ方向へ付勢する。スロットルレバー17はスロットルボデー2の外側に固定されたストッパ21(図3参照)により閉じ方向への回動が規制される。
【0019】
[インテークデバイスユニット]
図1に示すように、スロットル装置1は、スロットルボデー2に装着されるインテークデバイスユニット(IDU)3を備える。IDU3は、吸気制御に必要なバルブ、各種センサなどのデバイス(以下「吸気デバイス」)を樹脂製のIDUボデー50に組み付けて一つのモジュールとしたものである。IDUボデー50はコネクタ差し込み部97を有し、このコネクタ差し込み部97には吸気デバイスを外部の電子制御ユニット(ECU)と電気的に接続するための外部コネクタが差し込まれる。ECUはセンサやスイッチなどの各種検出装置から出力信号を受け取り、モータなどのアクチュエータに制御信号を送る。
【0020】
図3に示すように、スロットルボデー2は、IDU3を結合するための合わせ面26aを有するフランジ状のIDU結合部26を有する。合わせ面26aは、例えば、スロットルシャフト9(すなわちスロットルバルブ14の回転軸線)に直交する向きに形成される。IDUボデー50はスロットルボデー2のIDU結合部26の合わせ面26aに結合される合わせ面50aを有する。IDU3の着脱を可能とするために、例えば、スロットルボデー2のIDU結合部26の外周には複数のボス部44が形成され、これに対応するようにIDUボデー50の外周にもボス部62が形成される。IDUボデー50の各ボス部62の挿通孔62aに通した締結用ボルト(図示しない)をスロットルボデー2の対応するボス部44のねじ孔44aにねじ込むことにより、スロットルボデー2にIDUボデー50が結合される。
【0021】
前記の吸気デバイスはこの合わせ面50aの反対側から窪んだ収容部58にスロットルボデー2とは反対側から組み付けられる。IDUボデー50にIDUカバー60(図1図6参照)が溶着、接着、ボルト締結、スナップフィットなどの適切な方法で結合されることにより、吸気デバイスが配置されたIDUボデー50の収容部58が閉鎖される。IDU3の内部空間は、適切な結合方法を選択することにより、または必要に応じてIDUボデー50とIDUカバー60の間に弾性シール部材を配置することにより、外部に対してシールされる。
【0022】
[バイパス通路]
図6に示すように、スロットルボデー2にIDUボデー50を結合することにより、スロットルバルブ14を迂回するバイパス通路70が形成される。バイパス通路70はスロットルバルブ14の上流側で主通路7から分岐し、スロットルバルブ14の下流側で再び主通路7に合流する。具体的には、スロットルボデー2のIDU結合部26には合わせ面26aから深く窪んだ通路溝37(図3も参照)が形成される。通路溝37からは入口孔28と出口孔30がそれぞれボア形成部6を貫通して主通路7の壁面に開口する。これにより、主通路7を流れる吸気の一部が入口孔28からバイパス通路70を通じて出口孔30から主通路7に流出することができる(図1図2も参照)。
【0023】
[ISCバルブ]
図6に示すように、スロットル装置1にはバイパス通路70を通過する吸気量を調節するアイドルスピードコントロール(ISC)バルブ51が設けられる。ISCバルブ51は主としてエンジンのアイドル時にECUにより制御される。ISCバルブ51はIDUボデー50の収容部58に取り付けられる。ISCバルブ51は、全閉位置(図6の破線)と全開位置(実線)の間で直線的に移動してバイパス通路70を開閉する弁体110と、シャフト127を介してこの弁体110を移動させるアクチュエータとを備える。アクチュエータは例えばステップモータ108とすることができるが、別の実施形態として、DCモータ、ブラシレスモータなど、ステップモータ以外のモータとすることもできる。スロットルボデー2には通路溝37の底部(出口孔30の流入部)に弁体110が着座する弁座33を有する。弁体110は弁座33に対向する先細り形状のシール面133を有する。
【0024】
ステップモータ108はモータハウジング112を有し、図示しないが、モータハウジング112の内部に巻き線を有するステータと磁石を有するロータとを備える。ステータは巻き線を保持するための樹脂製のボビンを有する。ボビンはモータハウジング112の側面に設けられた開口から突出する端子支持部120を一体的に備え、インサート成形によりこの端子支持部120で端子117を保持する(図7参照)。ステップモータ108の端子117はコネクタ差し込み部97の端子に接続された端子板に電気的に接触する。モータハウジング112にはシャフト127が軸受(図示しない)を介して回転可能に支持され、ロータはこのシャフト127に結合される。
【0025】
ステップモータ108はIDUボデー50に形成されたモータ嵌合部72(図3も参照)に嵌合される。モータハウジング112とモータ嵌合部72の壁面との間にはOリング63(図7も参照)が配置される。これによりIDU3の内部空間がバイパス通路70に対してシールされる。
【0026】
[ねじ軸部とナットの螺合]
図6に示すように、シャフト127はモータハウジング112の挿通孔125から外へ突出し、その突出部にはねじ軸部129が形成される。弁体110の凹孔254にはねじ孔を有するナット136が圧入される。ナット136にはシャフト127のねじ軸部129が螺合される。弁体110は、ISCバルブ51の軸方向に延びる溝134a(図7参照)と線状突起76の組み合わせにより、弁体110をIDUボデー50に対してスライド可能としつつ回り止めがなされる。具体的には、モータ嵌合部72の内周面に線状突起76が形成され、これに対応して弁体110のフランジ部134の外周面には溝134aが形成される。これにより、ステップモータ108が回転すると、シャフト127とナット136の螺合作用を介して弁体110が軸方向に移動する。弁体110が進出すると出口孔30が閉じられ、後退すると出口孔30が開かれる。
【0027】
図示しない他の実施形態として、ISCバルブ51のアクチュエータはシャフト127自体が進退することにより弁体110を移動させるアクチュエータとすることもできる。例えば、ねじ軸とナットをハウジングの内部に備えたモータや、電磁ソレノイドなどモータ以外のアクチュエータを用いることができる。
【0028】
[スプリング]
図6に示すように、モータ嵌合部72は合わせ面50aからスロットルボデー2の通路溝37の中へ突き出す筒状の突出部74を有する。スロットルボデー2の通路溝37の端にはモータ嵌合部72の突出部74を受け入れるための円形拡大部32(図3参照)が形成される。筒状の突出部74の端部には内向きに張り出すフランジ部75が形成される。弁体110はこの内向きのフランジ部75が形成する開口部を通して通路溝37の中へ突き出す。弁体110のフランジ部134とモータ嵌合部72の底部の内向きのフランジ部75との間にはコイルばねからなるスプリング138が介装される。スプリング138の一方の端部は、弁体110のフランジ部134に環状に形成された環状凹部134bに嵌合する。
【0029】
[スロットルポジションセンサ]
図1に示すように、スロットル装置1にはスロットルバルブ14の向き(角度)を検出するためのスロットルポジションセンサを設けることも可能である。スロットルポジションセンサはIDUボデー50の収容部58に取り付けられる。スロットルポジションセンサは、例えば、スロットルシャフト9の端部に固定されたセンサロータ143を備え、配線基板55の表面に配置された抵抗板でセンサロータ143のブラシの位置を電気的に検知するように構成されたものである。IDUボデー50にはスロットルシャフト9の端部を受け入れるための貫通部64が形成される。このようにIDUの内部空間はこのスロットルボデー2に連通するが、前述のようにスロットルシャフト9の周りに配置されたシール部材12で主通路7に対してシールされる。
【0030】
[圧力センサ]
スロットル装置1には主通路7を流れる吸気の圧力を測定するための圧力センサ(図示しない)を設けることも可能である。圧力センサはIDUボデー50の収容部58に配置され、例えば、配線基板55に取り付けられる。図5に示すように、IDUボデー50の収容部58の底面には合わせ面50aまで貫通する貫通部78が形成され、圧力センサの本体部はこの貫通部78に配置される。圧力センサの本体部と貫通部78との間にはシール部材(図示しない)が配置される。図1に示すように、スロットルボデー2には合わせ面26aからボア形成部6を貫通して主通路7の(スロットルバルブ14の下流側における)壁面に開口する連通孔38が形成される。連通孔38はIDUボデー50とスロットルボデー2の間を縫うように形成された連通路40(図3図5も参照)を通して貫通部78と連通される。このように圧力センサの検出部はスロットルボデー2の主通路7と連通した空間内に配置されるが、圧力センサの本体部の周囲にシール部材が配置されているためIDU3の内部空間は主通路7に連通していない。
【0031】
[温度センサ]
スロットル装置1には主通路7を流れる吸気の温度を検出する温度センサ(図示しない)を設けることも可能である。温度センサはIDUボデー50の収容部58に取り付けられる。図5に示すように、IDUボデー50には合わせ面50aから突出する先端の閉じた筒部81が形成され、この筒部81に温度センサの検出部が挿入される。図2図3に示すように、スロットルボデー2には合わせ面26aからボア形成部6を貫通して主通路7の(スロットルバルブ14の上流側における)壁面に開口する温度センサ挿通用の貫通孔42が形成され、IDUボデー50の筒部81はこの貫通孔42内に嵌合される。このように温度センサの検出部は主通路7の壁面より内側に位置するが、筒部81の先端が閉じているためIDU3の内部空間は主通路7に連通していない。
【0032】
[ガスケット]
図6に示すように、スロットルボデー2の合わせ面26aやIDUボデー50の合わせ面50aは、ガスケット180など、それらに開口する孔や凹部を取り囲む形状に形成された1つ以上の弾性シール部材でシールすることができる。ガスケット180は、例えば、IDUボデー50に形成した嵌合溝90(図5参照)に装着することができる。このようなガスケット180により、IDUボデー50をスロットルボデー2に結合すると、IDUボデー50の合わせ面50aとスロットルボデー2の合わせ面26aに開口する孔や凹部が、スロットル装置1の外部に対して、あるいは他の孔や凹部に対してシールされる。
【0033】
[圧力変化抑制手段]
IDUボデー50の収容部58が各種シール部材で密閉されていると、特にISCバルブ51のステップモータ108の発熱・放熱によって生じる温度差により、モータハウジング112の内部やこれに連通する収容部58の内部の圧力が変動しようとする。特に、モータハウジング112の内部に負圧が生じ、湿気を含んだ空気が引き込まれると、ステップモータ108の部品に錆を生じる可能性がある。そこで、スロットル装置1にはこのような圧力変化を抑制する手段を設けることができる。圧力変化を抑制するには、例えば、IDU3の内部またはこれに連通する空間の体積変化を許容するような構成とすることができる。
【0034】
[ダイヤフラムと連通孔]
図6に示すように、一つの実施形態として、バイパス通路70に面するようにダイヤフラム200を配置することができる。ダイヤフラム200は弾性を有する膜であり、弾性材料(エラストマー)で形成することができる。ダイヤフラム200は、例えば、IDUボデー50の合わせ面50aから窪むように形成された肉盗み部68(図5も参照)に配置することができる。肉盗み部68は通常、材料コスト低減などの目的で設けられるものであり、例えば、IDUボデー50においてスロットルボデー2の通路溝37の一部(円形拡大部32を除く部分)に対応する領域に形成される。ダイヤフラム200は、例えば、外周枠202を肉盗み部68の壁面に固定することにより取り付けることができる。IDUボデー50には収容部58から肉盗み部68まで貫通する連通孔210(あるいは大きな連通空間)が形成される。これにより、肉盗み部68とダイヤフラム200により形成された小さな空間220が収容部58と連通する。
【0035】
図示しない別の実施形態として、ダイヤフラムは主通路7に面するように配置することも可能である。この場合もダイヤフラムはその周辺部を接着、溶着など適切な方法で周囲の構造に固定することにより取り付けることができる。また、IDUボデー50やスロットルボデー2を貫通する連通孔が適宜設けられる。要するに、主通路7やバイパス通路70に連通する空間と収容部58に連通する空間とが部分的にダイヤフラムで区画されていれば良い。
【0036】
図示しない別の実施形態として、IDUカバー60により閉鎖された収容部58を区画するようにダイヤフラムを配置し、区画された2つの空間のうちモータハウジング112が配置されていない方の空間を連通孔により外部(大気)と連通させることも可能である。図示しないさらに別の実施形態として、収容部58を形成するIDUボデー50またはIDUカバー60の一部をダイヤフラムで構成することも可能である。この最後の実施形態の場合、連通孔は不要となる。
【0037】
[外付けの圧力変化抑制装置]
図8に示すように、別の実施形態として、IDUボデー50の収容部58と連通する容積変化可能な容器230をIDUボデー50の外部に設けることも可能である。そのような容器としては、蛇腹232などの伸縮構造を有する容器が挙げられる。このような容積変化可能な容器は、IDUボデー50を貫通する孔に接続管234でつなぐことにより連通させることもできるし、IDUボデー50を貫通する孔を直接覆うような容器とすることにより連通させることもできる。
【0038】
[ストッパと弾性シール部材]
図9図11に示すように、モータハウジング112のシャフト127が挿通される挿通孔125の周囲には、弁体110が開き方向(図の上方)に移動したときに弁体110に接して挿通孔125をシールする弾性シール部材が配置される。弾性シール部材は、例えば、環状ないし筒状のものである。弾性シール部材は、例えば、弾性材料(エラストマー)で形成されたリップシール300とすることができる。弁体110とモータハウジング112の間には、弁体110と当接することにより弁体110の全開位置を規定するストッパ部材302が設けられる。弁体110が開き方向に移動したときにはストッパ部材302が弁体110と当接する前にリップシール300が弁体110に接して挿通孔125の周りをシールする(図10)。ストッパ部材302は剛性を有するものとする一方で、リップシール300は材料的または構造的に剛性の小さいものとする。ストッパ部材302はリング状であっても良いし、あるいは挿通孔125の周りに離散的に配置された点状または弧状の複数のストッパ部材であっても良い。図12に示すように、別の実施形態として、リップシール304を弁体110に取り付けることもできる。
【0039】
図13図15に示すように、別の実施形態として、弾性シール部材は、例えば、弾性材料で形成されたOリング306、308や、弾性材料で形成された蛇腹(弾性蛇腹)310などの形態とすることが可能である。この場合も、弾性シール部材は図13のOリング306のようにモータハウジング112に取り付けることもできるし、図14のOリング308のように弁体110に取り付けることもできる。図示しないが、ストッパ部材はモータハウジング112ではなく弁体110に形成してもよい。
【0040】
リップシール300は弁体110が閉じ位置にあるときは何らシールせず、弁体110が開き方向に移動しリップシール300に接して初めてシール機能を発揮する。しかしながら、エンジン停止時には弁体110が全開位置に保持されるため、ステップモータ108の発熱が治まってモータハウジング112が負圧になっても挿通孔125の周囲がシールされており、湿気を含んだ空気がモータハウジング112に引き込まれることがない。仮に弁体110の位置にかかわらず常に蛇腹でシャフト周りをカバーした場合、密閉された収容部内が圧力変動すると挿通孔125の周囲の隙間を通じて蛇腹にも負荷がかかり、亀裂が生じる可能性が高い。仮に蛇腹に亀裂が生じなくても、圧力変化に打ち勝って弁体110を動かすにはステップモータ108を強力にする必要があり、コストが高くなる。しかしながら、前述のようなダイヤフラム200が設けられている場合、ストッパ部材302を省略することも可能であるが、ストッパ部材302も設けられていた方が効果的である。逆に、ストッパ部材302が設けられている場合、ダイヤフラム200を省略することも可能であるが、ダイヤフラム200も設けられていた方が効果的である。
【0041】
弁体110がストッパ部材302に当接した状態でステップモータ108を開方向に回転させて脱調を生じさせることにより、弁体110の全開位置を基準としてISCバルブ51の初期化を行なうことができる。仮にストッパ部材302がなくゴムシートなどの弾性シール部材のみで全開位置を受ける場合、次のような問題が生じうる。まず、弾性シール部材の弾性材料が硬い(弾性率が大きい)場合、ステップモータ108が脱調しても弾性シール部材がほとんど追従せず、シール機能が発揮されないことがある。弾性シール部材に負けることなく弁体110を全開位置まで移動させられるようにするには、例えばステップモータ108を強力にする必要があり、コストが高くなる。逆に弾性シール部材の弾性材料が軟らかい場合、エンジン停止時に弁体が全開位置に長時間留まる際、弾性シール部材が大きく変形した状態に保持されることになり、材料がへたって復元力を失ってしまう。これに対し、上記の実施形態のようにストッパ部材302で全開位置を規定することで、弾性シール部材をリップシール300などの形態として十分に軟らかくしてもリップシール300が限界まで圧縮されないためへたることがない。また、全開位置でISCバルブ51の初期化を行う際、脱調により弁体110が閉じ方向にわずかに戻ってもリップシール300が追従してシール機能が失われない。
【0042】
以上、様々な実施形態を説明したが、本技術はこれらの実施形態に限定されるものではなく、当業者であれば様々な変更、改良、追加、省略が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 スロットル装置
2 スロットルボデー
6 ボア形成部
7 主通路(ボア)
9 スロットルシャフト
12、13 弾性シール部材
14 スロットルバルブ
26 IDU結合部
26a 合わせ面
28 入口孔
30 出口孔
33 弁座
37 通路溝
42 貫通孔
50 IDUボデー
50a 合わせ面
51 ISCバルブ
58 収容部
60 IDUカバー
68 肉盗み部
70 バイパス通路
72 モータ嵌合部
75 フランジ部
108 ステップモータ
110 弁体
112 モータハウジング
125 挿通孔
127 シャフト
129 ねじ軸部
133 シール面
136 ナット
138 スプリング
180 ガスケット
200 ダイヤフラム
202 外周枠
210 連通孔
220 空間
230 容器
232 蛇腹
234 接続管
300、304 リップシール
302 ストッパ部材
306、308 Oリング
310 蛇腹
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15