IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱鉛筆株式会社の特許一覧 ▶ ストーリア株式会社の特許一覧

特開2025-1419情報処理システム、筆記具および電子機器
<>
  • 特開-情報処理システム、筆記具および電子機器 図1
  • 特開-情報処理システム、筆記具および電子機器 図2
  • 特開-情報処理システム、筆記具および電子機器 図3
  • 特開-情報処理システム、筆記具および電子機器 図4
  • 特開-情報処理システム、筆記具および電子機器 図5
  • 特開-情報処理システム、筆記具および電子機器 図6
  • 特開-情報処理システム、筆記具および電子機器 図7
  • 特開-情報処理システム、筆記具および電子機器 図8
  • 特開-情報処理システム、筆記具および電子機器 図9
  • 特開-情報処理システム、筆記具および電子機器 図10
  • 特開-情報処理システム、筆記具および電子機器 図11
  • 特開-情報処理システム、筆記具および電子機器 図12
  • 特開-情報処理システム、筆記具および電子機器 図13
  • 特開-情報処理システム、筆記具および電子機器 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001419
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】情報処理システム、筆記具および電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/0487 20130101AFI20241225BHJP
   B43K 23/12 20060101ALI20241225BHJP
   B43K 29/08 20060101ALI20241225BHJP
   B43K 7/00 20060101ALI20241225BHJP
   G06F 3/0484 20220101ALI20241225BHJP
【FI】
G06F3/0487
B43K23/12
B43K29/08 Z
B43K7/00
G06F3/0484
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101005
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522435698
【氏名又は名称】ストーリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】福田 昂正
(72)【発明者】
【氏名】阪上 正史
(72)【発明者】
【氏名】田谷 圭司
【テーマコード(参考)】
2C350
5E555
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350GA11
5E555AA25
5E555AA28
5E555AA57
5E555BA02
5E555BA04
5E555BA38
5E555BB02
5E555BB04
5E555BB38
5E555BC04
5E555BC14
5E555CA03
5E555CA12
5E555CA41
5E555CA44
5E555CB14
5E555CB76
5E555DA13
5E555DA23
5E555DA24
5E555DB18
5E555DB24
5E555DB53
5E555DB56
5E555DB57
5E555DC09
5E555DC13
5E555DD06
5E555DD08
5E555EA02
5E555EA04
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】ユーザにとって簡易な操作で筆記具と電子機器との間の通信を開始することを可能とする情報処理システム等を提供する。
【解決手段】情報処理システムは、通信機能を有する筆記具と、筆記具と通信を行う電子機器と、を備える情報処理システムであって、筆記具は、動作を検出するセンサと、センサによって検出された動作が所定の動作であるか否かを判定する判定部と、電子機器に所定の信号を送信する送信部と、を有し、センサによって検出された動作が所定の動作であると判定された場合、送信部は、ユーザによる操作なく第1の動作を電子機器で実行させるための所定の信号を電子機器へ送信する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信機能を有する筆記具と、前記筆記具と通信を行う電子機器と、を備える情報処理システムであって、
前記筆記具は、
動作を検出するセンサと、
前記センサによって検出された動作が所定の動作であるか否かを判定する判定部と、
前記電子機器に所定の信号を送信する送信部と、を有し、
前記センサによって検出された動作が前記所定の動作であると判定された場合、前記送信部は、ユーザによる操作なく第1の動作を前記電子機器で実行させるための所定の信号を前記電子機器へ送信する、情報処理システム。
【請求項2】
通信機能を有する筆記具と、前記筆記具と通信を行う電子機器と、を備える情報処理システムであって、
前記筆記具は、
動作を検出するセンサと、
前記センサからの信号を前記電子機器に送信する送信部と、を有し、
前記電子機器は、
前記送信部から送信された信号を受信する受信部と、
前記受信部によって受信した信号に基づき前記筆記具の動作が所定の動作であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって前記筆記具の動作が所定の動作であると判定された場合、ユーザによる操作なく第1の動作を前記電子機器で実行させる制御を行う制御部と、を有する、情報処理システム。
【請求項3】
前記第1の動作は、前記電子機器で実行される第2の動作よりも優先して実行される、請求項1または請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記第1の動作は、前記電子機器で第2の動作として実行されるディスプレイへの表示に重畳して別の表示を行う動作である、請求項1または請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記第1の動作は、前記電子機器で第2の動作として実行されるディスプレイへの表示動作を阻止する動作である、請求項1または請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項6】
電子機器と通信を行う筆記具であって、
動作を検出するセンサと、
前記センサによって検出された動作が所定の動作であるか否かを判定する判定部と、
前記電子機器に所定の信号を送信する送信部と、を有し、
前記判定部によって前記センサによって検出された動作が前記所定の動作であると判定された場合、前記送信部は、ユーザによる操作なく第1の動作を前記電子機器で実行させるための所定の信号を前記電子機器へ送信する、筆記具。
【請求項7】
前記センサは、前記筆記具に加わる加速度を検出する加速度センサ、前記筆記具に加わる角速度を検出する角速度センサ、筆記のときに前記筆記具に加わる圧力を検出する圧力センサ、および筆記具の芯を出すノックや回転を検知するセンサ、のうちの少なくとも一つを有する、請求項6記載の筆記具。
【請求項8】
磁石を収容し、軸筒に着脱可能なキャップをさらに有し、
前記センサとして、前記軸筒に収容され、前記磁石が発する磁場を検出する磁場センサを有し、
前記判定部は、前記磁場センサが検出した磁場に基づいて、前記所定の動作として、前記キャップが前記軸筒から取り外されたか否かを判定し、
前記送信部は、前記キャップが前記軸筒から取り外された場合に、前記所定の信号を送信する、請求項6記載の筆記具。
【請求項9】
前記所定の信号は、BLE(Bluetooth Low Energy)ビーコン信号である、請求項6記載の筆記具。
【請求項10】
筆記具と通信を行う電子機器であって、
前記筆記具から送信される信号を受信する受信部と、
所定の動作を実行する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記筆記具から所定の動作が行われた際に送信される所定の信号を前記受信部で受信した場合、ユーザによる操作なく第1の動作を実行する、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、筆記具および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
通信機能および情報処理機能を有する筆記具が知られている。このような筆記具は、ユーザの操作に応じてデータをユーザの通信端末に送信し、データに基づいて通信端末に所定の処理を実行させる。特許文献1には、筆記具に実装されるボタンまたはスイッチをユーザが操作したことを契機として筆記具の角速度を情報処理端末に送信する筆記具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-209566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザは、筆記具を通信端末と通信させるために筆記具のボタンまたはスイッチを操作することを煩雑に感じることがある。
【0005】
本発明は上述の課題を解決するためになされたものであり、ユーザにとって簡易な操作で筆記具と電子機器との間の通信を開始することを可能とする情報処理システム、筆記具および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る情報処理システムは、通信機能を有する筆記具と、筆記具と通信を行う電子機器と、を備える情報処理システムであって、筆記具は、動作を検出するセンサと、センサによって検出された動作が所定の動作であるか否かを判定する判定部と、電子機器に所定の信号を送信する送信部と、を有し、センサによって検出された動作が所定の動作であると判定された場合、送信部は、ユーザによる操作なく第1の動作を電子機器で実行させるための所定の信号を電子機器へ送信する。
【0007】
本発明の実施形態に係る情報処理システムは、通信機能を有する筆記具と、筆記具と通信を行う電子機器と、を備える情報処理システムであって、筆記具は、動作を検出するセンサと、センサからの信号を電子機器に送信する送信部と、を有し、電子機器は、送信部から送信された信号を受信する受信部と、受信部によって受信した信号に基づき筆記具の動作が所定の動作であるか否かを判定する判定部と、判定部によって筆記具の動作が所定の動作であると判定された場合、ユーザによる操作なく第1の動作を電子機器で実行させる制御を行う制御部と、を有する。
【0008】
第1の動作は、電子機器で実行される第2の動作よりも優先して実行されることが好ましい。
【0009】
第1の動作は、電子機器で第2の動作として実行されるディスプレイへの表示に重畳して別の表示を行う動作であることが好ましい。
【0010】
第1の動作は、電子機器で第2の動作として実行されるディスプレイへの表示動作を阻止する動作であることが好ましい。
【0011】
本発明の実施形態に係る筆記具は、電子機器と通信を行う筆記具であって、動作を検出するセンサと、センサによって検出された動作が所定の動作であるか否かを判定する判定部と、電子機器に所定の信号を送信する送信部と、を有し、判定部によってセンサによって検出された動作が所定の動作であると判定された場合、送信部は、ユーザによる操作なく第1の動作を電子機器で実行させるための所定の信号を電子機器へ送信する。
【0012】
センサは、筆記具に加わる加速度を検出する加速度センサ、筆記具に加わる角速度を検出する角速度センサ、筆記のときに筆記具に加わる圧力を検出する圧力センサ、および筆記具の芯を出すノックや回転を検知するセンサ、のうちの少なくとも一つを有することが好ましい。
【0013】
筆記具は、磁石を収容し、軸筒に着脱可能なキャップをさらに有し、センサとして、軸筒に収容され、磁石が発する磁場を検出する磁場センサを有し、判定部は、磁場センサが検出した磁場に基づいて、所定の動作として、キャップが軸筒から取り外されたか否かを判定し、送信部は、キャップが軸筒から取り外された場合に、所定の信号を送信することが好ましい。
【0014】
所定の信号は、BLE(Bluetooth Low Energy)(登録商標)ビーコン信号であることが好ましい。
【0015】
本発明の実施形態に係る電子機器は、筆記具と通信を行う電子機器であって、筆記具から送信される信号を受信する受信部と、所定の動作を実行する制御部と、を備え、制御部は、筆記具から所定の動作が行われた際に送信される所定の信号を受信部で受信した場合、ユーザによる操作なく第1の動作を実行する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る情報処理システム、筆記具および電子機器は、ユーザにとって簡易な操作で筆記具と電子機器との間の通信を開始することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】通信システム1の概略構成の例を示す模式図である。
図2】通信端末2の例示的な機能ブロック図である。
図3】筆記具3の斜視図である。
図4】筆記具3の断面図である。
図5】(A)および(B)は、固定具44の斜視図である。
図6】筆記具3の斜視図である。
図7】筆記具3の断面図である。
図8】軸筒4の例示的な機能ブロック図である。
図9】通知画面G1の例を示す図である。
図10】アプリケーション画面G2の例を示す図である。
図11】筆記具3の状態遷移の例を示す図である。
図12】接続処理の流れの例を示すシーケンス図である。
図13】ポイント管理画面G3の例を示す図である。
図14】状態表示画面G3の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0019】
(通信システム)
図1は、本発明の実施形態に係る通信システム1の概略構成を示す模式図である。通信システム1は情報処理システムの一例である。通信システム1は、通信端末2および筆記具3を有する。
【0020】
(通信端末)
図2は、通信端末2の例示的な機能ブロック図である。通信端末2は電子機器の一例である。通信端末2は、筆記具3のユーザが所持する携帯電話機、スマートフォン、PC(Personal Computer)、タブレット端末、携帯ゲーム機等の情報処理装置である。通信端末2は、筆記具3と通信を行い、所定の動作を実行する。通信端末2は、記憶部21、通信部22、表示部23、操作部24、音声出力部25、振動部26および処理部27を有する。
【0021】
記憶部21は、プログラムおよびデータを記憶するための構成であり、例えば半導体メモリを備える。記憶部21は、プログラムとして、処理部27による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム等を記憶する。プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)等のコンピュータ読取可能かつ非一時的な可搬型記憶媒体から記憶部21にインストールされる。
【0022】
通信部22は、通信端末2を他の装置と通信可能にするための構成であり、通信インタフェース回路を備える。通信インタフェース回路は、BLE(Bluetooth Low Energy)(登録商標)等の近距離無線通信方式のインタフェース回路である。通信部22は、処理部27から供給されたデータを他の装置に送信するとともに、他の装置から送信されたデータを処理部27に供給する。
【0023】
表示部23は、画像を表示するための構成であり、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイを備える。表示部23は、処理部27から供給された表示データに基づいて画像を表示する。
【0024】
操作部24は、通信端末2に対する操作を受け付けるための構成であり、ボタン、キーボード、キーパッド、マウス等を備える。操作部24は、表示部23と一体化したタッチパネルを備えてもよい。操作部24は、受け付けた操作に応じた操作信号を生成して処理部27に供給する。
【0025】
音声出力部25は、音声を出力するための構成であり、スピーカを備える。音声出力部25は、処理部27から供給された電気信号である音声信号に基づいて、音声を出力する。
【0026】
振動部26は、通信端末2を振動させるための構成であり、バイブレータを備える。バイブレータは、偏心回転質量方式、リニア共振アクチュエータ方式等の任意の方式のものであってよい。振動部26は、処理部27から供給された振動に基づいて通信端末2を振動させる。
【0027】
処理部27は、通信端末2の動作を統括的に制御する構成であり、一つまたは複数のプロセッサおよびその周辺回路を備える。処理部27は、例えばCPU(Central Processing Unit)を備える。処理部27は、DSP(Digital Signal Processor)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を備えてもよい。処理部27は、記憶部21に記憶されているプログラムに基づいて通信端末2の各種処理が適切な手順で実行されるように、各構成の動作を制御するとともに、各種の処理を実行する。
【0028】
処理部27は、受信部271および制御部272を機能ブロックとして有する。これらの各部は、処理部27がプログラムを実行することによって実現される機能モジュールである。これらの各部は、専用の処理回路として通信端末2に実装されてもよい。
【0029】
受信部271は、筆記具3から所定の信号を受信する。所定の信号は、筆記具3において所定の動作が検出されたときに送信される。所定の動作は、筆記中の動作を含む。所定の動作は、例えば、筆記を開始するための動作、筆記を開始してから途中で一時的に筆記を中断するときの動作、筆記具3が把持されているが筆記がされていないときの動作を含んでもよい。
【0030】
制御部272は、所定の信号が受信された場合、ユーザによる操作なく所定の情報処理を実行する。すなわち、通信端末2は、筆記具3から所定の信号が送信されたことに応じて、所定の情報処理を実行する。所定の情報処理は、例えば、筆記具3を用いた学習を支援するために学習時間を計測する処理である。この場合、通信端末2は、あらかじめインストールされた時計アプリケーションプログラムを実行する。
【0031】
(筆記具)
筆記具3は通信端末2と通信を行う通信機能を有する。筆記具3は、所定の動作を検出したことに応じて、通信端末2との通信を開始するための所定の信号を通信端末2に送信する。例えば、所定の動作は、筆記を開始するための動作である。例えば、筆記を開始するための動作は、筆記具3のキャップを取り外す動作である。
【0032】
図3は筆記具3の斜視図であり、図4は筆記具3の断面図である。図4は、図3のIV-IV断面における断面図である。筆記具3は、軸筒4およびキャップ5を有する。以下では、軸筒4の、筆記時に紙等の媒体に接触する側の端部を軸筒4の先端と称し、先端とは反対側の端部を軸筒4の後端と称することがある。また、軸筒4の軸方向に沿って、先端が位置する方向を筆記具3または軸筒4の前方と称し、前方とは反対の方向を筆記具3または軸筒4の後方と称することがある。
【0033】
軸筒4は、略円筒形状を有する。軸筒4は、軸方向に沿って一定の断面形状を有する筒状部4aと、筒状部4aの前方に形成され、軸方向に沿って前方に向かうに伴って断面が小さくなるテーパ状部4bとを有する。筒状部4aの後端には、筒状部4aの断面形状が円形状でなくなるように切欠き4cが形成される。
【0034】
軸筒4は、筆記体41、センサ42、スイッチ43、固定具44、通知部45および充電部46を収容する。また、軸筒4は、前方に第1基板B1を、後方に第2基板B2をそれぞれ収容する。センサ42およびスイッチ43は第1基板B1に、通知部45および充電部46は第2基板B2にそれぞれ配置される。第1基板B1および第2基板B2は、二次電池である電源Pから電流を供給される。
【0035】
筆記体41は、媒体に筆記するための部材である。図3に示す例では、筆記体41はインクを収容し、インクを媒体に転写するボールペンリフィルである。図3に示すように、筆記体41の中心軸は軸筒4の中心軸と一致しない。すなわち、筆記体41は軸筒4に対して偏心して配置される。これにより、軸筒4の内部に第1基板B1等の部材を収容する空間が確保される。
【0036】
センサ42は、軸筒4の動作を検出するための構成である。センサ42は、磁場センサ421、慣性センサ422および圧力センサ423を備える。磁場センサ421は、磁場を検出するセンサであり、例えばホールセンサである。慣性センサ422は、軸筒4に加わる3軸の加速度および角速度を検出するセンサであり、例えば加速度センサおよびジャイロセンサを含む。なお、ジャイロセンサは角速度センサの一例である。圧力センサ423は、筆記時に媒体から筆記体41に加わる圧力を検出するためのセンサであり、抵抗膜式の圧力センサである。圧力センサ423は、圧力を検出する検出面が筆記体41の軸方向と直交するように配置される。センサ42は、定期または不定期に軸筒4の動作に関する情報を生成する。
【0037】
上述した例に限られず、筆記具3がノックボタンの押下によって筆記体41を軸筒4から露出させるノック式の場合、センサ42は、筆記具3の筆記体41を出すノックボタンの動作を検出するセンサを備えてもよい。また、筆記具3が軸筒4の筒状部4aを捻るように軸回転させることで筆記体41を軸筒4から露出させる回転式の場合、筒状部4aの回転を検出するセンサを備えてしてもよい。これらの場合、センサ42は、その検出対象に応じてボタンセンサ、磁場センサ、光学センサ等の任意のセンサを備えてよい。センサ42は、上述した各種のセンサのうち少なくとも一つを備える。
【0038】
スイッチ43は、ユーザの操作を受け付けるための構成であり、例えばタクタイルスイッチを備える。スイッチ43は軸筒4の外部から押下可能となるように配置される。
【0039】
固定具44は、筆記体41に加わる圧力を圧力センサ423に伝達する部材である。固定具44は、樹脂または金属により形成される。
【0040】
図5(A)および(B)は、固定具44の斜視図である。図5(A)は固定具44を前方から見た斜視図であり、図5(B)は固定具44を後方から見た斜視図である。固定具44は、略四角柱形状を有する第1部分441と略円柱形状を有する第2部分442とが、第1部分441が第2部分442よりも前方に位置するように軸筒4の軸方向にずれて結合した形状を有する。第1部分441の前方の底面443は、筆記体41の後端に接触する。第2部分442の後方の底面444は、圧力センサ423の検出面に接触する。図5(A)および(B)に示すように、第1部分441の軸線A1と第2部分442の軸線A2とは平行でありかつ一致しない。すなわち、底面443の中心C1と底面444の中心C2とは軸方向から見てずれている。
【0041】
抵抗膜式である圧力センサ423によって圧力を適切に検出するためには検出面の面積を大きくする必要がある。一方、上述したように、軸筒4の内部に部材を収容する空間を確保するためには、筆記体41は軸筒4に対して偏心して配置される必要がある。仮に筆記体41の後端が固定具44を介さずに検出面に当接するように筆記体41と圧力センサ423とを配置した場合、筆記体41の後端は検出面の端部に当接する。この場合、抵抗膜式である圧力センサ423が圧力を適切に検出できなくなる可能性がある。固定具44は、筆記体41に加わる圧力を圧力センサ423が適切に検出できるように、第1部分441の軸線A1が筆記体41の軸線と略一致し、かつ第2部分442の軸線A2が検出面の略中央を通過するように配置される。このようにすることで、軸筒4の内部に部材を収容する空間を確保しながら、筆記体41に加わる圧力を適切に検出することが可能となる。
【0042】
また、固定具44の後方の底面444は、圧力センサ423の検出面の方向に突出している。これにより、圧力センサ423に加わる圧力が大きくなり、圧力センサ423が適切に圧力を検出することが可能となる。図5(B)に示す例では底面444は円錐台形状に形成されているが、このような例に限られず、底面444は円錐形状、半球形状等の、検出面の方向に突出する任意の形状に形成されてよい。
【0043】
図3および図4に戻り、通知部45は、点滅により通知を出力するための構成であり、例えばLED(Light Emitting Diode)を備える。通知部45は、軸筒4の後端付近に配置される。通知部45は、通信端末2と筆記具3との通信に関する通信に関する通知を出力する。例えば、通知部45は、通信端末2から所定の信号が送信されたことに応じて点灯する。このような例に限られず、通知部45は音声により通知を出力するスピーカまたは振動により通知を出力するバイブレータ等でもよい。
【0044】
充電部46は、電源Pを充電するための構成である。充電部46は、端子を接続するための接続部と、接続部から電源Pに電流を供給して電源Pを充電するための電源回路を備える。接続部は、USB-C(Universal Serial Bus Type C)等の規格に従う端子を接続可能に形成される。
【0045】
キャップ5は、軸筒4の先端および後端に着脱可能である。キャップ5は、筒体51、磁石52および装飾部材53を有する。
【0046】
筒体51は、一方に底面が形成された円筒形状を有する。筒体51の内径は軸筒4の筒状部4aの外径と略同一である。筒体51の内部に軸筒4の先端または後端が収容されることにより、キャップ5が軸筒4の先端または後端に装着される。
【0047】
筒体51の側面には、開口部511が形成される。開口部511は、キャップ5が軸筒4の先端に装着されたときに軸筒4のテーパ状部4bと重ならないような位置に形成される。すなわち、開口部511は、キャップ5が軸筒4の先端に装着されたときに軸筒4の筒状部4aとテーパ状部4bとの境界よりも後方に形成される。これにより、開口部511が透光性の樹脂等で覆われていなくても、キャップ5が軸筒4の先端に装着されたときの筒体51の内部の気密性が向上し、筆記体41のインクの乾燥が防止される。
【0048】
磁石52は、アルニコ磁石、フェライト磁石等の永久磁石である。磁石52は、筒体51の側面に沿って形成された凹部512に収容される。磁石52がキャップ5に収容されることにより、キャップ5が軸筒4の先端に装着されたときには磁石52と軸筒4の前方に配置された磁場センサ421との距離が近くなり、軸筒4の後端に装着されたときには磁石52と磁場センサ421との距離が遠くなる。したがって、磁場センサ421によって検出された磁場に基づいてキャップ5が軸筒4の先端に装着されているか否かが判定可能となる。
【0049】
装飾部材53は、磁石52が収容された凹部512を覆うように筒体51に装着される。図3および図4に示す例では、装飾部材53は、筒体51との間で物を把持可能なクリップである。このような例に限られず、装飾部材53は天冠でもよい。装飾部材53が凹部512を覆うことにより、磁石52が凹部512から脱落することが防止されるとともに、外部から凹部512および磁石52が視認されることによる外観品質の低下が防止される。
【0050】
図6はキャップ5が軸筒4の先端から取り外されて後端に装着された状態における筆記具3の斜視図であり、図7は筆記具3の断面図である。図7図6のVII-VII断面における断面図である。
【0051】
図6および図7に示すように、開口部511は、キャップ5が軸筒4の後端に装着されたときに開口部511を介して通知部45が外部から視認可能となるような位置に形成される。図7に示すように、キャップ5の筒体51の内部は、切欠き4cが形成された軸筒4の後端に係合可能となるように、軸筒4の後端に相補的な形状を有する。軸筒4の後端の断面形状は切欠き4cにより非円形状となっているため、筒体51は、軸筒4の後端に係合した状態では、軸筒4に対して周方向に回動することが規制される。したがって、キャップ5が軸筒4の後端に装着された状態では、通知部45が常に開口部511を介して視認可能となる。
【0052】
図8は、軸筒4の機能ブロック図である。軸筒4は、さらに記憶部47、通信部48および処理部49を有する。記憶部47、通信部48および処理部49は、第1基板B1に配置されるが、図4および図7では図示が省略されている。記憶部47、通信部48および処理部49は、第2基板B1に配置されてもよい。
【0053】
記憶部47は、プログラムおよびデータを記憶するための構成であり、例えば半導体メモリを備える。記憶部47は、プログラムとして、処理部49による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム等を記憶する。プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)等のコンピュータ読取可能かつ非一時的な可搬型記憶媒体から記憶部47にインストールされる。
【0054】
通信部48は、筆記具3を他の装置と通信可能にするための構成であり、通信インタフェース回路を備える。通信インタフェース回路は、BLE(Bluetooth Low Energy)(登録商標)等の近距離無線通信方式のインタフェース回路である。通信部48は、処理部49から供給されたデータを他の装置に送信するとともに、他の装置から送信されたデータを処理部49に供給する。
【0055】
処理部49は、筆記具3の動作を統括的に制御する構成であり、一つまたは複数のプロセッサおよびその周辺回路を備える。処理部49は、例えばCPU(Central Processing Unit)を備える。処理部49は、DSP(Digital Signal Processor)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を備えてもよい。処理部49は、記憶部47に記憶されているプログラムに基づいて筆記具3の各種処理が適切な手順で実行されるように、各構成の動作を制御するとともに、各種の処理を実行する。例えば、処理部49は、センサ42から動作に関する情報を取得し、スイッチ43からスイッチ43が操作されているか否かを示す情報を取得し、通知部45に通知を出力させるための信号を供給する。
【0056】
処理部49は、取得部491、判定部492、送信部493および通知制御部494を有する。これらの各部は、処理部49がプログラムを実行することによって実現される機能モジュールである。これらの各部は、専用の処理回路として軸筒4に実装されてもよい。
【0057】
(通信端末の動作および画面表示)
通信端末2の制御部272は、筆記具3から所定の信号が送信されたことに応じて、第1の動作および第2の動作を実行する。第1の動作は、筆記具3から所定の信号が送信されたことに応じて、第2の動作に優先して実行される動作である。例えば、第1の動作は、ユーザによる操作なく実行される動作である。第2の動作は、筆記具3から所定の信号が送信されたか否かにかかわらず実行される動作である。例えば、第2の動作は、ユーザによる操作部24に対する操作に応じて実行される動作である。
【0058】
第1の動作が第2の動作に優先するとは、第1の動作が実行されるときに第2の動作が中断されること、または第1の動作が実行されるときに第2の動作がこれに並行して実行されることをいう。すなわち、第1の動作が第2の動作に優先するとは、第2の動作によって第1の動作が中断されないことをいう。例えば、第2の動作がオペレーティングシステムプログラムまたはアプリケーションプログラムによる、表示部23に画像を表示する動作である場合に、第1の動作はその画像に重畳してバナー通知を表示する動作であってよい。
【0059】
図9は、第1および第2の動作が上述した動作である場合において、通信端末2の表示部23に表示される通知画面G1の例を示す図である。通知画面G1は、筆記具3の使用が開始され、筆記具3から所定の信号が送信されたことに応じて表示される。
【0060】
通知画面G1は、ホーム画面G12およびバナー通知G11を含む。バナー通知G11は、ホーム画面G12に重畳して表示される。すなわち、バナー通知G11を表示する第1の動作は、ホーム画面G12を表示する第2の動作よりも優先して実行されている。バナー通知G11は、あらかじめ通信端末2に記憶されている筆記具3に対応するアプリケーションプログラムの名称G13および筆記具3が使用されたことを示すメッセージG14を含む。図8に示す例では、アプリケーションプログラムの名称G13として「学習タイマー」が表示されている。ユーザは、バナー通知G11を選択する操作により、通信端末2にバナー通知G11に表示されている名称G13のアプリケーションプログラムを実行させることができる。
【0061】
図9に示す例ではバナー通知G11はホーム画面G12に重畳されるものとしたが、このような例に限られない。バナー通知G11は、筆記具3から所定の信号が送信されたときにオペレーティングシステムプログラムまたはアプリケーションプログラムによって表示部23に表示されている任意の画面に重畳されてよい。
【0062】
図10は、通信端末2に表示されるアプリケーション画面G2の例を示す図である。アプリケーション画面G2は、通知画面G1においてバナー通知G11が選択された場合に表示される。選択は、操作部24に対する操作によって行われ、操作部24がタッチパネルを備える場合には、タッチパネルをタップする操作によって行われる。アプリケーション画面G2は、通信端末2に対して筆記具3に対応するアプリケーションプログラムを実行させる操作がされた場合に表示されてもよい。
【0063】
図10に示すアプリケーション画面G2は、タイマー表示G21および開始オブジェクトG22を含む。ユーザが開始オブジェクトG22を選択(例えば、画面タップ)すると、タイマー表示G21に示された時間の計時が開始される。タイマー表示G21に示された時間が経過すると、通信端末2は音声、振動等により時間が経過したことをユーザに通知する。
【0064】
図9および図10に示す例では、第2の動作が表示部23にホーム画面G12を表示する動作であり、第1の動作はホーム画面G12に重畳してバナー通知G11を表示する動作であるものとした。第1の動作および第2の動作は、上述した例に限られない。例えば、第1の動作および第2の動作の他の例として、次に述べるものが挙げられる。
【0065】
(1)第2の動作は、メッセージのやり取りを行うメッセージアプリケーションプログラムを実行する動作であってよい。この場合、これに優先して実行される第1の動作は、メッセージアプリケーションプログラムの機能であるメッセージ受信等の通知を阻止する動作であってよい。メッセージ受信等の通知は、表示部23への画像の表示、音声出力部25からの音声の出力または振動部26による振動の発生によりなされる。すなわち、第1の動作が実行されている場合、メッセージアプリケーションプログラムによる音声、画像または振動による通知が行われない。
(2)第2の動作は、音声通話をする電話アプリケーションプログラムを実行する動作であってよい。この場合、これに優先して実行される第1の動作は、電話アプリケーションプログラムの機能である通話音声の出力または着信等の通知を阻止する動作である。すなわち、第1の動作が実行されている場合、通話音声の出力が行われない。また、第1の動作が実行されている場合、音声、画面表示または振動による通知が行われない。
(3)第2の動作として任意のアプリケーションプログラムが実行されている場合、これに優先して実行される第1の動作は、所定の音楽などの音声を出力する動作である。
(4)第2の動作として任意のアプリケーションプログラムが実行されている場合、これに優先して実行される第1の動作は、所定の匂いを出力する動作である。匂いを出力する動作は、通信端末2の通信部22と通信する外部機器によって行われてもよく、匂いを出力する機能を有する通信端末2によって行われてもよい。
(5)第2の動作として任意のアプリケーションプログラムが実行されている場合、これに優先して実行される第1の動作は、通信端末2の表示部23に所定の画像(静止画像または動画像)を出力する動作である。所定の画像は、例えば現在は第1の動作が優先されている状態であることを示すものが挙げられる。
上記の第1の動作は、例えば勉強中や筆記動作中の集中力を妨げない動作、または集中力を高める効果をもたらす動作が望ましい。
【0066】
筆記具3から所定の信号が送信されたことに応じて通信端末2で優先して実行される第1の動作は、例えば、制御部272が自動的にアプリケーションプログラムを起動することによって実現される。これにより、通信端末2で実行される別のアプリケーションプログラムによる第2の動作および通信端末2のオペレーティングシステムプログラムで実行される第2の動作をユーザの操作によらず制御することができる。第1の動作は、通信端末2に記憶されたオペレーティングシステムによって実現されてもよい。
【0067】
通信端末2において自動的に起動するアプリケーションプログラムは、例えば、通信端末2で実行される第2の動作(例えば、ユーザの集中力を妨げるような音声、画像または振動による通知等)を阻止する制限機能を有するプログラムである。通信端末2において自動的に起動するアプリケーションプログラムは、集中を高める目的のタイマー機能、音楽を再生する機能、匂いを発する機能等のうちの少なくとも1つを有するものでもよい。
【0068】
(筆記具の状態遷移)
図11は、筆記具3の状態遷移の例を示す図である。筆記具3は、通信部48の電源がオフになっているオフ状態S1、通信部48の電源がオンになり通信端末2との通信が可能であるオン状態S2および通信部48の消費電力を抑えるためのスリープ状態S3のいずれかをとる。
【0069】
筆記具3がオフ状態S1にある場合において、センサ42によって検出された筆記具3の動作が筆記具3の使用が開始されたことを示す所定の動作である場合、またはスイッチ43が操作された場合、筆記具3はオン状態S2に遷移する(遷移T12)。例えば、筆記具3は、電源Pから記憶部47および処理部49への給電が開始されることによりオン状態S2に遷移する。このとき、筆記具3は通信端末2との通信を開始するための接続処理を実行する。接続処理の詳細は後述する。
【0070】
筆記具3の使用が開始されたことを示す所定の動作は、例えばキャップ5が軸筒4の先端から取り外されることである。この場合、取得部491は、磁石52が発する磁場に関する情報を磁場センサ421から取得する。判定部492は、取得した情報が示す磁場の強度が閾値より大きい値から閾値以下の値に変化した場合に、キャップ5が軸筒4の先端から取り外されたと判定する。閾値は、例えば、キャップ5が軸筒4の先端に装着されている状態で磁場センサ421が検出する磁場の強度と、キャップ5が軸筒4の後端に装着されている状態で磁場センサ421が検出する磁場の強度との間の値に設定される。
【0071】
スイッチ43の操作は、例えば所定時間(例えば、2秒間)だけ継続してスイッチ43を押下する操作である。この場合、判定部492は、スイッチ43に電流を供給することによりスイッチ43が導通しているか否かを判定する。判定部492は、スイッチ43が所定時間以上継続して導通している場合に、所定時間だけ継続してスイッチ43を押下する操作がされたと判定する。
【0072】
筆記具3がオン状態S2にある場合において、筆記具3の動作が筆記具3の使用が一時的に中断されたことを示す所定の動作である場合、筆記具3はスリープ状態S3に遷移する(遷移T23)。例えば、筆記具3は、電源Pから記憶部47に対する給電が継続されたまま処理部49に対する給電が停止されることによりスリープ状態S3に遷移する。
【0073】
筆記具3の使用が一時的に中断されたことを示す所定の動作は、例えばキャップ5が軸筒4の先端に装着されることである。この場合、取得部491は、磁場センサ421から磁石52が発する磁場に関する情報を取得する。判定部492は、取得した情報が示す磁場の強度が閾値以下の値から閾値より大きい値に変化した場合に、キャップ5が軸筒4の先端に装着され、筆記具3の使用が一時的に中断されたと判定する。
【0074】
筆記具3がオン状態S2にある場合において、筆記具3の使用が終了したことを示す所定の動作が検出された場合、筆記具3は通信端末2との通信を切断するとともに通信部48を停止させ、オフ状態S1に遷移する(遷移T21)。例えば、筆記具3は、電源Pから記憶部47および処理部49への給電が停止されることによりオフ状態S1に遷移する。
【0075】
筆記具3の使用が終了したことを示す所定の動作は、所定時間(例えば、10分間)だけ筆記具3が動かないことである。この場合、取得部491は、筆記具3に加わる加速度および角速度の情報を慣性センサ422から取得する。また、取得部491は、筆記体41に加わる圧力の情報を圧力センサ423から取得する。判定部492は、取得した情報が示す加速度、角速度および圧力の大きさが所定時間だけ継続して閾値以下である場合に、所定時間だけ筆記具3が動いておらず、筆記具の使用が終了したと判定する。
【0076】
筆記具3がスリープ状態S3にある場合において、筆記具3の動作が筆記具3の使用が開始されたことを示す所定の動作である場合、筆記具3はオン状態S2に遷移する(遷移T32)。例えば、筆記具3は、電源Pから処理部49への給電が再開されることによりオフ状態S1に遷移する。筆記具3の使用が開始されたことを示す所定の動作は、キャップ5が軸筒4の先端から取り外されることである。
【0077】
筆記具3がスリープ状態S3にある場合において、筆記具3の動作が筆記具3の使用が終了したことを示す所定の動作である場合、筆記具3はオフ状態S1に遷移する(遷移T31)。例えば、筆記具3は、電源Pから記憶部47への給電が停止されることによりオフ状態S1に遷移する。筆記具3の使用が終了したことを示す所定の動作は、所定時間だけ筆記具3が動かないことである。
【0078】
(接続処理)
図12は、通信システム1によって実行される接続処理の流れの例を示すシーケンス図である。接続処理は、遷移T12において実行される。接続処理は、通信端末2および筆記具3の処理部が各装置の他の構成と協働することにより実現される。
【0079】
最初に、筆記具3の送信部493は、ビーコン信号を送信する(ステップS101)。ビーコン信号は、所定の信号の一例である。すなわち、所定の信号は、筆記具3の動作が筆記に関わる動作であると判定された場合にユーザによる操作なく送信される。ビーコン信号は、例えばBLE(Bluetooth Low Energy)(登録商標)アドバタイズパケットを用いたBLEビーコン信号である。ビーコン信号には、筆記具3を識別する情報が含まれる。
【0080】
次に、通信端末2は、ビーコン信号を受信したことに応じて筆記具3の使用が開始されたことを示す通知を表示する(ステップS102)。通信端末2の受信部271は、あらかじめ記憶された筆記具3を識別する情報がビーコン信号の所定のフレーム位置に含まれている場合に、筆記具3からビーコン信号を受信したと判定する。制御部272は、通知画面G1を表示することにより、筆記具3の使用が開始されたことを示す通知を表示する。この通知はユーザによる操作なく表示される。
【0081】
次に、制御部272は、ユーザの操作に応じてアプリケーションプログラムを実行する(ステップS103)。制御部272は、通知画面G1のバナー通知G12を選択(例えば、画面タップ)するユーザの操作に応じて、筆記具3に対応するアプリケーションプログラムを実行してアプリケーション画面G2を表示する。また、制御部272は、バナー通知G12を選択するユーザの操作に応じて、ユーザの操作を受け付けたことを示す操作信号を筆記具3に送信する。
【0082】
筆記具3の通知制御部494は、操作信号を受信したことに応じて、通知部45を制御する(ステップS104)。通知制御部494は、通信部48を介して操作信号を受信する。通知制御部494は、通知部45に電流を供給して通知部45が所定の間隔で点滅するように制御する。以上で、接続処理が終了する。
【0083】
以上説明したように、筆記具3は、筆記具3の動作が所定の動作である場合に、ユーザによる通信端末2および筆記具3に対する操作を介することなく、通信端末2にビーコン信号を送信する。すなわち、ユーザは筆記具3に筆記具を使用するための所定の動作をさせること以外に筆記具3および通信端末2を操作する必要がない。したがって、筆記具3は、ユーザにとって簡易な操作で通信端末2と通信することを可能とする。
【0084】
また、筆記具3の動作が筆記に関わる動作である場合、通信端末2でユーザによる操作なく第1の動作を実行させるための所定の信号を筆記具3から通信端末2へ送信するため、通信端末2において実行されている第2の動作に優先して第1の動作が実行される。したがって、ユーザは、筆記具3で筆記に関わる動作を行っているとき、通信端末2で実行される第2の動作に集中力を奪われるなどの影響を受けにくくなり、筆記に関わる動作に集中しやすくなる。
【0085】
また、筆記具3は、キャップ5に形成された凹部512に磁石52を収容する。このようにすることで、製造過程でインサート成形を用いることなく、キャップ5の成形後に磁石52をキャップ5に収容することが可能になる。インサート成形により磁石52がキャップ5に収容される場合、製造コストの増加や成形時の高温による磁石52の磁力低下が生じる可能性がある。筆記具3は、凹部512に磁石52を収容することにより、キャップ5の製造コストを抑えるとともに磁石52の磁力低下を防止することを可能とする。
【0086】
また、筆記具3は、磁場センサ421が検出した磁場に基づいてキャップ5が軸筒4の先端から取り外されたか否かを判定し、キャップ5が軸筒4の先端から取り外された場合にビーコン信号を送信する。キャップ5に収容された磁石52が発する磁場に基づく判定は精度が高いため、筆記具3は、簡易な操作で筆記具3が通信端末2と確実に通信を開始することを可能とする。
【0087】
(変形例)
通信システム1には、次に述べるような変形例が適用されてもよい。
【0088】
上述した説明では、筆記具3の使用が開始されたことを示す所定の動作はキャップ5が軸筒4の先端から取り外されたことであるものとしたが、このような例に限られない。筆記具3の使用が開始されたことを示す所定の動作は、筆記具3が継続して動いていることでもよい。この場合、遷移T12において、取得部491は、軸筒4に加わる加速度および角速度の情報を慣性センサ422から取得する。また、取得部491は、筆記体41に加わる圧力の情報を圧力センサ423から取得する。判定部492は、取得した情報が示す加速度、角速度および圧力の大きさが所定の条件を満たす場合に、筆記具3が継続して動いていると判定する。所定の条件は、例えば、一定時間以上継続して加速度、角速度または圧力が閾値を超えていることである。このようにしても、筆記具3は、ユーザにとって簡易な操作で通信端末2と通信することを可能とする。
【0089】
上述した説明では、磁場センサ421は軸筒4の前方に収容されるものとしたが、このような例に限られない。磁場センサ421は軸筒4の後方に収容されてもよい。例えば、磁場センサ421は、軸筒4の後方に収容される第2基板B2に配置されてもよい。この場合、遷移T12において、筆記具3は、筆記具3の使用が開始されたことを示す所定の動作として、キャップ5が軸筒4の後端に装着されたか否かを判定する。例えば、判定部492は、磁場センサ421から取得された情報が示す磁場の強度が閾値以下の値から閾値より大きい値に変化した場合に、キャップ5が軸筒4の先端から取り外されて軸筒4の後端に装着されたと判定する。
【0090】
上述した説明では、磁石52が収容される凹部512は筒体51の側面に沿って形成されるものとしたが、このような例に限られない。凹部512は、筒体51の底面の内側または外側に形成されてもよい。このようにしても、筆記具3は、キャップ5の製造コストを抑えるとともに磁石52の磁力低下を防止することを可能とする。なお、上述した説明にかかわらず、磁石52はインサート成形によりキャップ5に収容されてもよい。
【0091】
上述した説明では、筆記具3の動作が筆記具3の使用が開始されたことを示す所定の動作である場合に、送信部493はBLEビーコン信号を送信するものとしたが、このような例に限られない。筆記具3は、BLEとは異なる他の通信規格に従う信号を送信してもよい。
【0092】
上述した説明では、接続処理のステップS104において、通知制御部494は操作信号を受信したことに応じて通知部45を制御するものとしたが、このような例に限られない。例えば、通知制御部494は、ビーコン信号を送信したことに応じて通知部45を制御して通知を出力してもよい。
【0093】
上述した説明では、筆記具3に対応するアプリケーションプログラムは計時のためのアプリケーションプログラムであるものとしたが、このような例に限られない。筆記具3に対応するアプリケーションプログラムは任意のアプリケーションプログラムであってよい。例えば、筆記具3に対応するアプリケーションプログラムは、日ごとに学習の有無を記録するカレンダーアプリケーションプログラムであってもよい。
【0094】
また、筆記具3に対応するアプリケーションプログラムは、筆記具3または通信端末2で取得された情報に基づきポイントをユーザに付与するポイント管理アプリケーションプログラムであってもよい。ポイント管理アプリケーションプログラムは、通信端末2で実行される第2の動作よりも優先される第1の動作として実行されてもよいし、第2の動作のバックグラウンドで実行されてもよい。
【0095】
例えば、ポイント管理アプリケーションプログラムは、筆記具3のセンサによって検知した情報、またはセンサで検知した情報を受信した通信端末2において情報処理した結果から筆記動作に関わる項目の度数をカウントし、そのカウントに基づきユーザにポイントを付与する処理を実行する。例えば、筆記具3または通信端末2で取得される情報のうち、筆記具3の加速度データ、キャップ5の開け閉じの回数、筆圧を検知するセンサの圧力データ、筆記具3の回転を感知するセンサのデータ、筆記具3のノックの回数などのうち一部もしくは複数の、一定の閾値を超えるものをカウントするようにしてもよい。
【0096】
図13は、処理部27がポイント管理アプリケーションプログラムを実行することによって表示部23に表示されるポイント管理画面G3の例を示す図である。ポイント管理画面G3は、ユーザが取得したポイントの合計などを表示する合計ポイント表示G31、および筆記動作に関わる項目ごとに達成度合いを示すグラフや、それに対応した取得ポイントを表示する達成度表示G32を含む。例えば、達成度表示G32には、予め初期設定された目標やユーザが設定した目標に対する達成度合いが棒グラフやメダルなどのグラフィック、ポイント数などが表示される。タブの選択によって、1日ごと、1週間毎、全期間のポイント取得状況を切り替えて表示するようにしてもよい。
【0097】
ユーザ毎の取得したポイントは、通信端末2で記憶および管理されてもよいし、通信端末2とネットワークを介して接続された外部の管理サーバで記憶および管理されてもよい。ポイント管理アプリケーションプログラムによって取得したポイントは、例えば、デジタルデータ、物品、サービスと交換すること、または寄付することが可能である。
【0098】
また、筆記具3に対応するアプリケーションプログラムは、筆記具3の状態を通信端末2の表示部23に表示する状態表示アプリケーションプログラムであってもよい。
【0099】
図14は、処理部27が状態表示アプリケーションプログラムを実行することによって表示部23に表示される状態表示画面G4の例を示す図である。状態表示画面G4は、筆記具3の電池残量G41、筆記具3を模したイラストG42、アプリ初期化ボタンG43、接続設定ボタンG44を含む。
【0100】
イラストG42は、筆記具3の傾きまたは角度の情報を表示する。例えば、筆記具3の傾きまたは角度は、イラストG42を連動して傾斜することにより表示される。傾きおよび角度は、筆記具3が備える加速度センサが重力加速度の方向を検知することにより求めることができる。筆記具3の傾きおよび角度に加えて、通信端末2と筆記具3とが通信できているか否かを示す情報がアイコン等を用いて表示されてもよく、筆圧が検知されているか否かを示す情報が表示されてもよい。
【0101】
アプリ初期化ボタンG43は、状態表示アプリケーションプログラムに設定されている情報や条件を初期化するためのオブジェクトである。接続設定ボタンG44は、筆記具3と通信端末2との通信の接続および解除を行うためのオブジェクトである。状態表示画面G4が示す、筆記具3の状態を示す情報は上述したものに限られない。
【0102】
状態表示アプリケーションプログラムが実行されている間、制御部272は、通信部22を介して、所定の頻度で筆記具3の状態の情報を取得する。例えば、制御部272は、電池残量を1分に1回~1秒間に500回程度の頻度で、筆圧、傾き、角度等のセンサ42によって検知される情報は、1秒間に1回~1秒間に500回程度の頻度で取得される。頻度は、電池残量や電力消費を考慮して自動的に設定されてもよい。
【0103】
なお、上記説明した加速度センサ、圧力センサ、ホールセンサなどの動作を検出するセンサは動作検出装置に含まれていてもよい。この動作検出装置により、これまでに記載した身体の運動、動作関する情報を取得することで、同様の効果をもたらす。
【0104】
この動作検出装置は、筆記具に取り付け可能なアタッチメント型にしてもよく、この場合、動作検出装置を筆記具と見なすことも可能である。
【0105】
また、上記では、判定部492が筆記具3に設けられている場合を説明したが、判定部492は通信端末2に設けられていてもよい。この場合、筆記具3はセンサからの信号を通信端末2に送信し、通信端末2は筆記具3から送信された信号を受信し、通信端末2の判定部は、その受信した信号に基づき筆記具3の動作が所定の動作であるか否かを判定する。そして、通信端末2の判定部によって筆記具3の動作が所定の動作であると判定された場合、通信端末2の制御部はユーザによる操作なく第1の動作を実行する制御を行う。
【0106】
以上説明したように、本実施形態によれば、ユーザにとって簡易な操作で通信を開始することを可能とする筆記具3、通信システム1および通信端末2が提供される。
【0107】
当業者は、本発明の範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0108】
3 筆記具
4 軸筒
421 磁場センサ
422 慣性センサ
423 圧力センサ
491 取得部
492 判定部
493 送信部
494 通知制御部
5 キャップ
512 凹部
52 磁石
53 装飾部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14