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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014194
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】アイリス制御システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/75 20230101AFI20250123BHJP
   H04N 23/667 20230101ALI20250123BHJP
【FI】
H04N23/75
H04N23/667
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116525
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】竹林 康夫
(72)【発明者】
【氏名】新保 直之
(72)【発明者】
【氏名】林 豊彦
【テーマコード(参考)】
5C122
【Fターム(参考)】
5C122DA03
5C122DA11
5C122EA12
5C122EA67
5C122FA07
5C122FA18
5C122FF03
5C122FF23
5C122HA87
(57)【要約】
【課題】トリガ撮像に使用されるカメラのレンズのアイリス制御を適切に実施することが可能なアイリス制御システムを提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係るアイリス制御システムは、外部から与えられるトリガ信号に従ってトリガ撮像を行うFAカメラ32と、所定の動画フレーム間隔の映像信号である動画信号を取得する動画信号取得部と、動画信号取得部により得られた動画信号に基づいてアイリス制御信号を生成し、当該アイリス制御信号をFAカメラのレンズ33に適用させるアイリス制御装置38とを備える。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から与えられるトリガ信号に従ってトリガ撮像を行うトリガ撮像カメラと、
所定の動画フレーム間隔の映像信号である動画信号を取得する動画信号取得部と、
前記動画信号取得部により得られた動画信号に基づいてアイリス制御信号を生成し、当該アイリス制御信号を前記トリガ撮像カメラのレンズに適用させるアイリス制御装置とを備えたことを特徴とするアイリス制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載のアイリス制御システムにおいて、
前記トリガ撮像カメラから出力される映像信号を一時的に記憶するメモリを用いて、前記トリガ撮像カメラからの映像信号を前記動画フレーム間隔の動画信号に変換する処理により、前記動画信号取得部を実現し、
前記アイリス制御装置は、前記トリガ撮像カメラからの映像信号を前記動画信号取得部により変換した動画信号に基づいて前記アイリス制御信号を生成し、当該アイリス制御信号を前記トリガ撮像カメラのレンズに適用させることを特徴とするアイリス制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載のアイリス制御システムにおいて、
前記トリガ撮像カメラは、前記トリガ信号に従ってトリガ撮像を行うトリガ撮像モードと、前記動画フレーム間隔で動画撮像を行う動画撮像モードとを切り替え可能に有しており、
前記トリガ撮像カメラを動画撮像モードで動作させることで前記動画信号取得部を実現し、
前記アイリス制御装置は、前記トリガ撮像カメラが動画撮像モードからトリガ撮像モードに切り替わる直前の動画信号に基づいて生成された前記アイリス制御信号を、トリガ撮像モード中の前記トリガ撮像カメラのレンズに適用させることを特徴とするアイリス制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載のアイリス制御システムにおいて、
前記動画フレーム間隔で動画撮像を行う動画撮像カメラを更に備え、
前記動画撮像カメラにより前記動画信号取得部を実現し、
前記アイリス制御装置は、前記動画撮像カメラにより得られた動画信号に基づいて生成された前記アイリス制御信号を、前記トリガ撮像カメラのレンズに適用させることを特徴とするアイリス制御システム。
【請求項5】
請求項4に記載のアイリス制御システムにおいて、
前記トリガ撮像カメラおよび前記動画撮像カメラは、同じ移動体に搭載されることを特徴とするアイリス制御システム。
【請求項6】
請求項5に記載のアイリス制御システムにおいて、
前記動画撮像カメラは、前記トリガ撮像カメラよりも前記移動体の前方側に配置され、
前記トリガ撮像カメラは、前記移動体が所定の撮像対象区間を走行中にトリガ撮像を行い、
前記アイリス制御装置は、前記動画撮像カメラが前記撮像対象区間を抜ける直前に生成された前記アイリス制御信号を、前記トリガ撮像カメラが前記撮像対象区間を抜けるまで前記トリガ撮像カメラに適用させ続けることを特徴とするアイリス制御システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガ信号に従ってトリガ撮像を行うカメラのレンズのアイリス制御を行うアイリス制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、列車に搭載したカメラで走行中に撮像した映像を用いて、列車の線路沿いの設備などを検査する検査システムが開発されている(例えば、特許文献1)。このような検査システムでは一般に、トリガ信号に従ってトリガ撮像を行うトリガ撮像カメラが使用される。以下では、トリガ撮像カメラを表す用語として「FA(Factory Automation)カメラ」を用いるが、「産業用カメラ」や「マシンビジョンカメラ」などと称される場合もある。
【0003】
図1には、FAカメラを用いた検査システムの概要を示してある。図1の検査システムでは、列車10の走行中に車輪回転信号発生器15から発生される車輪回転信号がトリガ信号発生器16に入力され、トリガ信号発生器16が車輪回転信号に基づいてトリガ信号を発生し、FAカメラ12がトリガ信号に従ってトリガ撮像を行い、得られた映像信号を録画装置17に記憶する。FAカメラ12は、例えば、列車10が走行する線路に隣接する別の線路11を撮像するように、撮像範囲14が設定される。なお、FAカメラ12は、アイリス制御信号を出力する機能を持たないため、FAカメラ12のレンズ13のアイリスを制御することができない。
【0004】
一般的なFAカメラは、外部から供給されるトリガ信号の間隔で映像を取得する機能を有しているため、一定の間隔または任意の間隔で撮像したいというニーズに適している。しかしながら、FAカメラではアイリス制御を行えないので、屋外環境下でトリガ撮像を行う場合、日照変化に応じた適切な映像レベルでの撮像が困難である。その結果、例えば、昼間は良好な画質の映像(映像レベル適正)が得られるものの、夕方以降は暗い画質の映像(映像レベル低)となる懸念がある。
【0005】
一方、監視用途で使用される監視カメラは、所定のフレーム間隔で動画撮像を行う機能を有すると共に、日照変化や照明照度に応じてレンズの絞りを制御するためのアイリス制御用出力が備わっている。そこで、FAカメラに代えて監視カメラを使用して検査システムを構築する場合について検討する。
【0006】
図2には、監視カメラを用いた検査システムの概要を示してある。図2の検査システムでは、列車10の走行中に監視カメラ18が動画撮像を行い、その映像信号を録画装置17に記憶する。監視カメラ18は、例えば、列車10が走行する線路に隣接する別の線路11を撮像するように、撮像範囲14が設定される。また、監視カメラ18は、動画撮像により得られた映像信号に基づいてアイリス制御信号19を生成し、監視カメラ18のオートアイリスレンズ20に与えることで、日照変化や照明照度に応じたアイリス制御を行うことができる。
【0007】
監視カメラは、例えば、連続する所定フレーム周期(例えば、30fps)の映像信号の輝度レベルに応じたアイリス制御信号(DC電圧信号)を生成してレンズへ供給し、アイリス制御信号に従ってレンズのアイリス(絞り)を調整する。すなわち、映像レベルが高いとアイリスを絞り、映像レベルが低いとアイリスを開く制御によって、映像レベルが一定になるようフィードバックループを構成する。このようなアイリス制御により、屋外環境下で動画撮像を行う場合に、適切な映像レベルの映像を取得することが可能となる。
【0008】
しかしながら、監視カメラは、外部から供給されるトリガ信号の間隔で映像を取得する機能を有していないため、一定の間隔または任意の間隔で撮像することに不向きである。このため、線路を所定区間にわたって撮像する場合に、区切りのよい線路画像を得ることが難しく、部分的に重複した線路画像や飛び飛びの線路画像になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平7-35969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、FAカメラは、屋内の照明環境が整った場所で使用するという前提で製品化されていたので、レンズのアイリスを制御する仕組みが省かれていた。また、FAカメラの特徴と言える外部からのトリガ信号を受けてそのタイミングで撮像するトリガ撮像機能の場合、映像信号が動画のようには連続しないので、そのままではアイリス制御信号の生成に利用することできなかった。
【0011】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、トリガ撮像に使用されるカメラのレンズのアイリス制御を適切に実施することが可能なアイリス制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様に係るアイリス制御システムは、以下のように構成される。すなわち、本発明に係るアイリス制御システムは、外部から与えられるトリガ信号に従ってトリガ撮像を行うトリガ撮像カメラと、所定の動画フレーム間隔の映像信号である動画信号を取得する動画信号取得部と、前記動画信号取得部により得られた動画信号に基づいてアイリス制御信号を生成し、当該アイリス制御信号を前記トリガ撮像カメラのレンズに適用させるアイリス制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0013】
上記アイリス制御システムは、一例として、前記トリガ撮像カメラから出力される映像信号を一時的に記憶するメモリを用いて、前記トリガ撮像カメラからの映像信号を前記動画フレーム間隔の動画信号に変換する処理により、前記動画信号取得部を実現し、前記アイリス制御装置は、前記トリガ撮像カメラからの映像信号を前記動画信号取得部により変換した動画信号に基づいて前記アイリス制御信号を生成し、当該アイリス制御信号を前記トリガ撮像カメラのレンズに適用させるように構成され得る。
【0014】
上記アイリス制御システムは、別の例として、前記トリガ撮像カメラは、前記トリガ信号に従ってトリガ撮像を行うトリガ撮像モードと、前記動画フレーム間隔で動画撮像を行う動画撮像モードとを切り替え可能に有しており、前記トリガ撮像カメラを動画撮像モードで動作させることで前記動画信号取得部を実現し、前記アイリス制御装置は、前記トリガ撮像カメラが動画撮像モードからトリガ撮像モードに切り替わる直前の動画信号に基づいて生成された前記アイリス制御信号を、トリガ撮像モード中の前記トリガ撮像カメラのレンズに適用させるように構成され得る。
【0015】
上記アイリス制御システムは、更に別の例として、前記動画フレーム間隔で動画撮像を行う動画撮像カメラを更に備え、前記動画撮像カメラにより前記動画信号取得部を実現し、前記アイリス制御装置は、前記動画撮像カメラにより得られた動画信号に基づいて生成された前記アイリス制御信号を、前記トリガ撮像カメラのレンズに適用させるように構成され得る。
【0016】
ここで、前記第1のカメラおよび前記第2のカメラは、同じ移動体に搭載され得る。また、前記動画撮像カメラは、前記トリガ撮像カメラよりも前記移動体の前方側に配置され、前記トリガ撮像カメラは、前記移動体が所定の撮像対象区間を走行中にトリガ撮像を行い、前記アイリス制御装置は、前記動画撮像カメラが前記撮像対象区間を抜ける直前に生成された前記アイリス制御信号を、前記トリガ撮像カメラが前記撮像対象区間を抜けるまで前記トリガ撮像カメラに適用させ続けるように構成され得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、トリガ撮像に使用されるカメラのレンズのアイリス制御を適切に実施することが可能なアイリス制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】FAカメラを用いた検査システムの概要を示す図である。
図2】監視カメラを用いた検査システムの概要を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るアイリス制御システムを含む検査システムの概要を示す図である。
図4】[方法A]に係るアイリス制御信号装置の構成例を示す図である。
図5】[方法A]に係るタイミングチャート例を示す図である。
図6】[方法B]に係るアイリス制御信号装置の構成例を示す図である。
図7】[方法B]に係るタイミングチャート例を示す図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るアイリス制御システムのタイミングチャート例を示す図である。
図9】本発明の第3実施形態に係るアイリス制御システムのタイミングチャート例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一態様に係るアイリス制御システムは、例えば図3に示すように、外部から与えられるトリガ信号に従ってトリガ撮像を行うFAカメラ32と、所定の動画フレーム間隔の映像信号である動画信号を取得する動画信号取得部と、動画信号取得部により得られた動画信号に基づいてアイリス制御信号を生成し、当該アイリス制御信号をFAカメラのレンズ33に適用させるアイリス制御装置38とを備える。以下、本提案に係るアイリス制御システムについて、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
図3には、本発明の第1実施形態に係るアイリス制御システムを含む検査システムの概要を示してある。図3の検査システムでは、列車30の走行中に車輪回転信号発生器35から発生される車輪回転信号がトリガ信号発生器36に入力され、トリガ信号発生器36が車輪回転信号に基づいてトリガ信号を発生し、FAカメラ32がトリガ信号に従ってトリガ撮像を行い、得られた映像信号を録画装置37に記憶する。FAカメラ32は、例えば、列車30が走行する線路に隣接する別の線路31を撮像するように、撮像範囲34が設定される。
【0021】
車輪回転信号発生器35から発生される車輪回転信号は、車輪周囲長による距離情報を含むパルス信号である。例えば、車輪回転信号発生器35が300パルス/回転のパルス信号を発生する場合、1パルスは車輪周囲長の1/300の移動距離に相当する。つまり、車輪周囲長の1/300の移動距離毎にパルス信号が出力されることになる。このパルス信号を所定カウント値までカウントする毎にトリガ信号を発生させることで、車輪周囲長/300×所定カウント値に相当する移動距離を列車30が走行する毎に線路画像を撮像するシステムを構築できる。また、このときのFAカメラ32の撮像視野と移動距離とが一致するように所定カウント値を設定することで、区切りのよい線路画像(つまり、重複や飛びが無い線路画像)を得ることができる。
【0022】
FAカメラ32から出力される映像信号は、録画装置37だけでなくアイリス制御装置38にも供給される。アイリス制御装置38は、FAカメラ32からの映像信号に基づいてアイリス制御信号39を生成し、FAカメラ32のオートアイリスレンズ33に与えることで、日照変化や照明照度に応じたアイリス制御の下でトリガ撮像を実施させる。以下では、FAカメラ32とは別にアイリス制御装置38を設けた構成を例にして説明するが、FAカメラ32がアイリス制御装置38を内蔵した構成としてもよい。本例では、[方法A]または[方法B]の2通りの方法で、フードバックループ動作に適合したアイリス制御を実現する。以下、それぞれの方法について具体的に説明する。
【0023】
[方法A]について
[方法A]では、FAカメラから出力される映像信号を一時的に記憶するメモリを用いて、FAカメラからの映像信号を動画フレーム間隔の映像信号である動画信号に変換し、変換後の動画信号に基づいてアイリス制御信号を生成してFAカメラのレンズに適用させる。以下、[方法A]の詳細について、図4および図5を参照して説明する。
【0024】
図4には、[方法A]に係るアイリス制御装置38(A)の構成例を示してある。図4のアイリス制御装置38(A)は、映像レベル保持部41と、アイリス制御信号生成部42とを有する。映像レベル保持部41は、FAカメラ32から出力される映像信号を一時的に記憶することが可能なメモリを用いて構成される。映像レベル保持部41は、トリガ信号間隔毎に入力される映像信号を次の映像信号が入力されるまで保持しつつ、その映像信号をトリガ信号間隔より短い動画フレーム間隔毎に繰り返し出力する。これにより、動画フレーム間隔の映像信号である動画信号を取得する動画信号取得部を代替的に実現することができる。アイリス制御信号生成部42は、映像レベル保持部41(動画信号取得部)から出力される動画信号に基づいて、アイリス制御信号を生成する。アイリス制御装置38(A)は、上記のようにして生成したアイリス制御信号をFAカメラ32のレンズに与えてアイリスを制御する。
【0025】
図5には、[方法A]に係るタイミングチャート例を示してある。図5に示すように、列車から撮像対象の線路を撮像して線路画像を取得する検査システムにおいて、車輪回転信号発生器または別の距離計測装置等から得られる距離信号に基づく撮像用トリガ信号が、FAカメラ32へと与えられる。FAカメラ32は、トリガ信号に従ってトリガ撮像を行うことで、一定距離毎(トリガ信号間隔毎)に線路を撮像した線路画像の映像信号を取得する。アイリス制御装置38(A)は、FAカメラ32から出力される取得映像信号のフレーム間隔(つまり、トリガ信号の間隔)が動画像(例えば、30fps)のフレーム間隔より大きい場合に、映像レベル保持部41を利用して取得映像信号を動画フレーム間隔毎に繰り返し出力することで、動画像に相当するアイリス制御用動画信号に変換する。このアイリス制御用動画信号を基に、アイリス制御信号生成部42によりアイリス制御用信号を生成してFAカメラ32のレンズに与える。
【0026】
以上のように、[方法A]では、FAカメラ32から出力されるトリガ信号間隔の映像信号を一時的に記憶するメモリ(映像レベル保持部41)を用いて、FAカメラ32からの映像信号を所定の動画フレーム間隔の映像信号に変換する処理により、動画信号取得部を実現する。アイリス制御装置38(A)は、FAカメラ32からの映像信号を変換した動画信号に基づいてアイリス制御信号を生成し、そのアイリス制御信号をFAカメラ32のレンズに適用させる。これにより、トリガ撮像を行うFAカメラ32のレンズのアイリスを、日照変化や照明照度に対応して適応的に制御することが可能となる
【0027】
ここで、上記の説明は、トリガ映像のフレーム間隔が動画像(例えば、30fps)のフレーム間隔より大きい場合についてのものであるが、トリガ映像のフレーム間隔が動画像のフレーム間隔より小さくなる場合もあり得る。この場合には、トリガ映像の映像信号を繰り返し出力してアイリス制御用動画信号に変換するのではなく、トリガ映像の映像信号を間引くことによってアイリス制御用動画信号に変換すればよい。
【0028】
[方法B]について
[方法B]では、トリガ信号に従ってトリガ撮像を行うトリガ撮像モードと,動画フレーム間隔で動画撮像を行う動画撮像モードとを切り替え可能に有するFAカメラを使用するものであり、動画撮像モードからトリガ撮像モードに切り替わる直前の動画信号に基づいて生成されたアイリス制御信号を、トリガ撮像モード中のFAカメラのレンズに適用させる。以下の説明では、FAカメラが、所定の撮像対象区間でトリガ撮像を行い、その他の区間では動画撮像を行うように、不図示の制御装置から出力される撮像モード切替信号によって制御されるものとする。以下、[方法B]の詳細について、図6および図7を参照して説明する。
【0029】
図6には、[方法B]に係るアイリス制御装置38(B)の構成例を示してある。図4のアイリス制御装置38(B)は、アイリス制御信号生成部51と、アイリス制御信号保持部52とを有する。アイリス制御信号生成部51は、撮像モードを切り替え可能なFAカメラ32’から出力される映像信号に基づいて、アイリス制御信号を生成する。アイリス制御信号保持部52は、アイリス制御信号生成部51により生成されたアイリス制御信号を一時的に記憶することが可能なメモリである。アイリス制御装置38(B)は、FAカメラ32’が動画撮像モードの間は、アイリス制御信号生成部51により生成されるアイリス制御信号を出力し、FAカメラ32’のレンズに与えてアイリスを制御する。また、アイリス制御装置38(B)は、FAカメラ32’がトリガ撮像モードに切り替わる際に、その直前のアイリス制御信号をアイリス制御信号保持部52に記憶しておき、トリガ撮像モードの間(動画撮像モードに戻るまで)は、アイリス制御信号保持部52に記憶したアイリス制御信号を出力し、FAカメラ32’のレンズに与えてアイリスを制御する。
【0030】
図7には、[方法B]に係るタイミングチャート例を示してある。図7に示すように、列車から撮像対象の線路を撮像して線路画像を取得する検査システムにおいて、車輪回転信号発生器または別の距離計測装置等から得られる距離信号に基づく撮像モード切替信号および撮像用トリガ信号が、FAカメラ32’へと与えられる。撮像モード切替信号は、アイリス制御装置38(B)へも分配供給される。なお、撮像モード切替信号の生成は、距離信号に基づいて自動的に生成する方式に限定されず、例えば、列車が撮像対象区間に到達したことを検知する別のセンサ装置からの信号に基づいて生成する方式や、作業員等の手動操作に応じて生成する方式としてもよい。
【0031】
列車が撮像対象区間に到達する前は、FAカメラ32’は動画撮像モードである。この場合、アイリス制御装置38(B)は、FAカメラ32’から出力される動画像(例えば、30fps)の取得映像信号に基づいてアイリス制御用信号を生成し、FAカメラ32’のレンズに与えて動的にアイリスを制御する。その後、列車が撮像対象区間に到達してFAカメラ32’がトリガ撮像モードに切り替わる際に、アイリス制御装置38(B)は、その直前のアイリス制御信号を記憶する。そして、列車が撮像対象区間の走行中(トリガ撮像モードの期間)は、アイリス制御装置38(B)は、記憶しておいたアイリス制御信号をFAカメラ32’のレンズに与えてアイリスを制御する。つまり、トリガ撮像モードの間は、その直前のアイリスに固定されるようにする。その後、列車が撮像対象区間を過ぎるとFAカメラ32’は動画撮像モードに戻る。これに伴い、アイリス制御装置38(B)は、FAカメラ32’から出力される動画像の取得映像信号に基づいてアイリス制御用信号を生成し、FAカメラ32’のレンズに与えて動的なアイリスを再開する。
【0032】
図7に示すように、FAカメラ32’の撮像モードを切り替えて撮像する場合の取得映像信号は、動画像(動画撮像の映像信号)とトリガ映像(トリガ撮像の映像信号)とが混在するが、トリガ映像のフレーム間隔が動画像(例えば、30fps)のフレーム間隔より大きい場合には、アイリス制御には適さない映像となる。そこで、トリガ撮像モードによるトリガ映像の撮像中は、その直前の動画撮像時の最終的なアイリスに固定されるように、トリガ撮像が開始される直前のアイリス制御信号をメモリに記憶しておく。これにより、通常は監視カメラ同様の動画像の映像信号に基づいてFAカメラ32’のレンズのアイリスを制御し、撮像対象区間でトリガ撮像する期間はその直前の状態にFAカメラ32’のレンズのアイリスを固定させることができる。したがって、トリガ撮像を行う際のFAカメラ32’のレンズのアイリスを、日照変化や照明照度に対応して適応的に制御することが可能となる。
【0033】
以上のように、[方法B]では、トリガ信号に従ってトリガ撮像を行うトリガ撮像モードと、所定の動画フレーム間隔で動画撮像を行う動画撮像モードとを切り替え可能に有するFAカメラ32’を使用する。つまり、FAカメラ32’を動画撮像モードで動作させることで動画信号取得部を実現する。アイリス制御装置38(B)は、FAカメラ32’が動画撮像モードからトリガ撮像モードに切り替わる直前の動画信号に基づいて生成されたアイリス制御信号を、トリガ撮像モード中のFAカメラ32’のレンズに適用させる。これにより、トリガ撮像を行うFAカメラ32’のレンズのアイリスを、日照変化や照明照度に対応して適応的に制御することが可能となる。
【0034】
図8には、本発明の第2実施形態に係るアイリス制御システムのタイミングチャート例を示してある。上述した第1実施形態では、カメラ1台を用いて撮像対象区間の撮影を行っているが、第2実施形態では、カメラ2台を使用して撮像対象区間の撮影を行う。本例では、所定の動画フレーム間隔で動画撮像を行う監視カメラ61と、トリガ信号に従ってトリガ撮像を行うFAカメラ62とを使用する。以下では、監視カメラ61がアイリス制御装置38を内蔵した構成を例にして説明するが、監視カメラ61やFAカメラ62とは別にアイリス制御装置38を設けた構成としてもよい。
【0035】
監視カメラ61とFAカメラ62は、同じ列車上に互いに近接して配置される。つまり、監視カメラ61とFAカメラ62が実質的に同じ画角で撮像を行うように配置される。監視カメラ61は、動画像(例えば、30fps)の映像信号である動画信号を生成すると共に、その動画信号に基づいてアイリス制御信号を生成して自身のレンズに与えることで、監視カメラ61のレンズのアイリスを日照変化や照明照度に対応して適応的に制御する。また、監視カメラ61が生成したアイリス制御信号は、FAカメラ62のレンズにも分配供給される。これにより、監視カメラ61のレンズのアイリス制御に連動して、FAカメラ62のレンズのアイリス制御が同様に実施される。
【0036】
以上のように、第2実施形態では、所定の動画フレーム間隔で動画撮像を行う監視カメラ61と、トリガ信号に従ってトリガ撮像を行うFAカメラ62とを使用する。つまり、監視カメラ61により動画信号取得部を実現する。アイリス制御装置38は、監視カメラ61により得られた動画信号に基づいて生成されたアイリス制御信号を、FAカメラ62のレンズに適用させる。これにより、トリガ撮像を行うFAカメラ62のレンズのアイリスを、日照変化や照明照度に対応して適応的に制御することが可能となる。
【0037】
図9には、本発明の第3実施形態に係るアイリス制御システムのタイミングチャート例を示してある。第3実施形態では、トンネルのようにアイリス制御信号が大きく変化する区間を撮像対象区間として含む場合に適したアイリス制御方式を説明する。上述した第2実施形態では、2台のカメラを同じ列車上に互いに近接して配置したが、第3実施形態では、2台のカメラを同じ列車上の離れた位置に配置する。本例では、所定の動画フレーム間隔で動画撮像を行う監視カメラ71と、トリガ信号に従ってトリガ撮像を行うFAカメラ72とを使用する。以下では、監視カメラ71がアイリス制御装置38を内蔵した構成を例にして説明するが、監視カメラ71やFAカメラ72とは別にアイリス制御装置38を設けた構成としてもよい。
【0038】
トンネルのようにアイリス制御信号が大きく変化する区間を撮像対象区間として含む場合、図9に示すように、監視カメラ71をFAカメラ72よりも列車の前方側の位置(進行方向側の先行する位置)に配置する。これにより、監視カメラ71が先にトンネルに入り、遅れてFAカメラ72がトンネルに入ることになる。監視カメラ71は、屋外の明部ではアイリスを絞るアイリス制御信号を生成するが、暗部となるトンネルに入るとアイリスを開けるアイリス制御信号を生成し、自身のレンズに与えてアイリスを制御する。また、監視カメラ71が生成したアイリス制御信号は、FAカメラ72のレンズにも分配供給される。これにより、監視カメラ71のレンズのアイリス制御に連動して、FAカメラ72のレンズのアイリス制御が同様に実施される。
【0039】
FAカメラ72のレンズは、FAカメラ72がトンネルに入る前の時点で、アイリスを開けるアイリス制御信号を監視カメラ71から受け取る。このため、FAカメラ72のレンズは、FAカメラ72がトンネルに入った時点で、トンネル暗部を撮像するに適したアイリス制御がなされていることになるので、トンネル入口から適正なアイリスによる明瞭な撮像が可能となる。なお、ここで問題となるのが、トンネル出口でのアイリス制御である。監視カメラ71がFAカメラ72より先にトンネルから出るため、監視カメラ71のアイリス制御信号を受け取ってアイリス制御を行うFAカメラ72は、トンネルを出る前の時点で、アイリスを絞るアイリス制御信号を受け取ってしまう。このため、そのままでは、FAカメラ72がトンネルから出る前の時点で、レンズのアイリスを絞る動作を行ってしまうという問題がある。
【0040】
このような問題を回避するために、監視カメラ71がトンネルを抜ける直前に生成されたアイリス制御信号を、FAカメラ72がトンネルを抜けるまで、FAカメラ72に適用させ続けるようにすればよい。より具体的には、監視カメラ71がトンネル外にあり、且つ、FAカメラ72がトンネル内にあるという条件を満たす場合に、FAカメラ72のアイリス制御信号を監視カメラ71がトンネルを出る直前のアイリス制御信号で固定する処理を行えばよい。監視カメラ71やFAカメラ72が撮像対象区間にあるか否かは、例えば、通常の列車運行に利用されるキロ程管理のシステムから位置情報を受信して判定してもよいし、撮像対象区間の前後に設置した車両検知装置からの信号に基づいて判定してもよい。
【0041】
以上のように、第3実施形態では、所定の動画フレーム間隔で動画撮像を行う監視カメラ71と、トリガ信号に従ってトリガ撮像を行うFAカメラ72とを使用する。つまり、監視カメラ71により動画信号取得部を実現する。監視カメラ71は、FAカメラ72よりも列車の前方側に配置される。アイリス制御装置38は、監視カメラ71により得られた動画信号に基づいて生成されたアイリス制御信号を、FAカメラ72のレンズに適用させる。アイリス制御装置38は更に、監視カメラ71が撮像対象区間(例えば、トンネル)を抜ける直前に生成されたアイリス制御信号を、FAカメラ72が撮像対象区間を抜けるまでFAカメラ72に適用させ続ける。これにより、トリガ撮像を行うFAカメラ72のレンズのアイリスを、日照変化や照明照度に対応して適応的に制御することが可能となる。
【0042】
なお、図5図7図9の例では、説明を分かり易くするために、線路画像を連続的に並べた図としているが、これらは例示に過ぎない。また、線路画像の映像信号そのものを使用してアイリス制御信号を生成するのではなく、映像信号を輝度情報信号に変換したものを使用してアイリス制御信号を生成するなど、他の方法によりアイリス制御信号を生成することも可能である。
【0043】
また、これまでの説明は、移動する列車から地上の線路を撮像して検査するシステムに本発明を適用する場合に関するものであるが、これは例示に過ぎない。例えば、地上にカメラを設置して走行する車両の外観を撮像して検査するシステムなど、他のシステムにもトリガ撮像を行うFAカメラは有用であり、本発明はそれらシステムにも適用することが可能である。
【0044】
また、本発明は、スマートメンテナンス分野や、長距離構造物・長尺物体のメンテナンス・点検分野などに適用することができる。例えば、屋外の建築物、橋梁、道路、線路、列車車両などの保守・点検のために経年変化を画像管理するスマートメンテナンス分野などに本発明を適用することで、一定距離間隔で高効率に対象物を撮像して画像管理する画像システムを構築することができる。近年、公共建築物の老朽化に対して、TBM(Time Based Maintenance;時間管理メンテナンス)ではなく、CBM(Condition Based Maintenance;状態管理メンテナンス)の必要性が増しており、特に、CBMに必要な対象物の状態撮像システムは必須の老朽化有無検査手段であるところ、本発明により高効率な撮像の実現が可能となる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これら実施形態は例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、その他の様々な実施形態をとることが可能であると共に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等の種々の変形を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0046】
また、本発明は、上記の説明で挙げたような装置や、これら装置で構成されたシステムとして提供することが可能なだけでなく、これら装置により実行される方法、これら装置の機能をプロセッサにより実現させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、トリガ信号に従ってトリガ撮像を行うカメラのレンズのアイリス制御を行うアイリス制御システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
10:列車、 11:線路、 12:FAカメラ、 13:レンズ、 14:撮像範囲、 15:車輪回転信号発生器、 16:トリガ信号発生器、 17:録画装置、 18:監視カメラ、 19:アイリス制御信号、 20:レンズ、 30:列車、 31:線路、 32:FAカメラ、 33:レンズ、 34:撮像範囲、35:車輪回転信号発生器、 36:トリガ信号発生器、 37:録画装置、 38:アイリス制御装置、 39:アイリス制御信号、 41:映像レベル保持部、 42:アイリス制御信号生成部、 51:アイリス制御信号生成部、 52:アイリス制御信号保持部、 61:監視カメラ、 62:FAカメラ、 71:監視カメラ、 72:FAカメラ

図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9