(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025141969
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】エネルギー送達システム
(51)【国際特許分類】
H02J 15/00 20060101AFI20250919BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
H02J15/00 F
H02J15/00 D
H02J7/00 302C
H02J15/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2025102569
(22)【出願日】2025-06-18
(62)【分割の表示】P 2022507473の分割
【原出願日】2020-08-04
(31)【優先権主張番号】62/882,817
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/760,762
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519237030
【氏名又は名称】ライテック・ラボラトリーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・エル・マイヤーズ
(72)【発明者】
【氏名】アレクセイ・ティコンスキー
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ピー・ノバク
(57)【要約】
【課題】異なる化学組成または物理構造の多数のエネルギー貯蔵源/システムを、各システムの異なる性能特性に応じてシステムからエネルギーを出力するように構成されている1つの共通制御システムと組み合わせ、そのため、組み合わされたシステムの様々な動作特性を最適化することができる、エネルギー送達システムを提供する。
【解決手段】制御システムは、各エネルギー貯蔵システムの別個の可変インピーダンス回路網を利用して、たとえば各エネルギー貯蔵システムのサイクル寿命、放電深度、温度、送達電力、および/または認知安全性を最適化するために、各エネルギー貯蔵システムの相対出力電流または放電速度を調整するように構成されている。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のエネルギー貯蔵システムと、
第2のエネルギー貯蔵システムと、
前記第1のエネルギー貯蔵システムと出力端子との間に結合された第1の可変インピーダンス回路網であって、第1の調整可能なインピーダンスを有する、第1の可変インピーダンス回路網と、
前記第2のエネルギー貯蔵システムと前記出力端子との間に結合された第2の可変インピーダンス回路網であって、第2の調整可能なインピーダンスを有する、第2の可変インピーダンス回路網と、
(1)前記第1の調整可能なインピーダンスを調整して、前記第1のエネルギー貯蔵システムによって前記出力端子に送達される第1の電流のレベルを変更するように前記第1の可変インピーダンス回路網に信号伝達すること、および(2)前記第2の調整可能なインピーダンスを調整して、前記第2のエネルギー貯蔵システムによって前記出力端子に送達される第2の電流のレベルを変更するように前記第2の可変インピーダンス回路網に信号伝達することを選択的に行うように構成された制御システムと
を備える、エネルギー送達システム。
【請求項2】
前記第1の可変インピーダンス回路網が、前記制御システムの制御の下で、所定の範囲にわたって、前記第1の可変インピーダンス回路網の実効抵抗を調整するように構成された複数の切替え可能な抵抗性素子を備える、請求項1に記載のエネルギー送達システム。
【請求項3】
前記第1の可変インピーダンス回路網が、前記制御システムの制御の下で、所定の範囲にわたって、前記第1の可変インピーダンス回路網内に存在するいくつかの順方向ダイオード電圧降下を調整するように構成された複数の切替え可能なダイオードを備える、請求項1に記載のエネルギー送達システム。
【請求項4】
前記第1のエネルギー貯蔵システムが、前記第2のエネルギー貯蔵システムとは実質的に異なる、請求項1に記載のエネルギー送達システム。
【請求項5】
前記第1のエネルギー貯蔵システムが、第1のVI特性曲線により構成され、前記第2のエネルギー貯蔵システムが、第2のVI特性曲線により構成され、前記第1のVI特性曲線が、前記第2のVI特性曲線とは異なり、前記第1のVI特性曲線が、所定の充電状態において前記第2のVI特性曲線をクロスオーバーする、請求項4に記載のエネルギー送達システム。
【請求項6】
前記制御システムは、前記第1のVI特性曲線が前記第2のVI特性曲線をクロスオーバーするところを調整するように、前記第1の可変インピーダンス回路網および前記第2の可変インピーダンス回路網のうちの少なくとも一方に信号伝達するように構成されている、請求項5に記載のエネルギー送達システム。
【請求項7】
前記第1のエネルギー貯蔵システムは、第1の化学組成をそれぞれが有する複数の電池セルの第1の電池セルスタックを備え、前記第2のエネルギー貯蔵システムは、第2の化学組成をそれぞれが有する複数の電池セルの第2の電池セルスタックを備え、前記第1の化学組成が、前記第2の化学組成とは異なり、前記第1の電池セルスタックが、前記出力端子に対して前記第2の電池セルスタックに並列に結合されている、請求項4に記載のエネルギー送達システム。
【請求項8】
前記第1の電池セルスタックが、第1の数の電池セルを含み、前記第2の電池セルスタックが、第2の数の電池セルを含み、前記第1の数が、前記第2の数とは異なる、請求項7に記載のエネルギー送達システム。
【請求項9】
前記第1のエネルギー貯蔵システムが、化学エネルギー貯蔵システム、運動エネルギー貯蔵システム、および電位エネルギー貯蔵システムからなる第1のグループから選択され、前記第2のエネルギー貯蔵システムが、化学エネルギー貯蔵システム、運動エネルギー貯蔵システム、および電位エネルギー貯蔵システムからなる第2のグループから選択される、請求項4に記載のエネルギー送達システム。
【請求項10】
前記制御システムが、前記第1のエネルギー貯蔵システムおよび前記第2のエネルギー貯蔵システムによって前記出力端子に供給される電流の相対的割合を制御するように、前記第1の可変インピーダンス回路網および前記第2の可変インピーダンス回路網のうちの少なくとも一方に信号伝達するように構成されている、請求項5に記載のエネルギー送達システム。
【請求項11】
前記制御システムが、前記第1のエネルギー貯蔵システムおよび前記第2のエネルギー貯蔵システムから収集されたパラメトリックデータに応じて、前記第1の可変インピーダンス回路網および前記第2の可変インピーダンス回路網に選択的に信号伝達するように構成されており、前記パラメトリックデータが、前記第1のエネルギー貯蔵システムによる前記第1の電流の前記送達、および前記第2のエネルギー貯蔵システムによる前記第2の電流の前記送達に関連する電圧および電流の測定結果を含む、請求項7に記載のエネルギー送達システム。
【請求項12】
前記第1のエネルギー貯蔵システムに関連する第1の電圧を測定し、前記第1の電圧を前記制御システムに伝達するように構成されている第1のアナログフロントエンドと、
前記第2のエネルギー貯蔵システムに関連する第2の電圧を測定し、前記第2の電圧を前記制御システムに伝達するように構成されている第2のアナログフロントエンドと、
前記第1のエネルギー貯蔵システムに結合されている第1のセンス抵抗器と、
前記第1のセンス抵抗器に結合されている第1の燃料ゲージ回路であって、前記第1のセンス抵抗器によって感知される前記第1の電流に応じて第1の情報を決定し、前記第1の情報を前記制御システムに伝達するように構成されている、第1の燃料ゲージ回路と、
第2のセンス抵抗器に結合されている第2の燃料ゲージ回路であって、前記第2のセンス抵抗器によって感知される前記第2の電流に応じて第2の情報を決定し、前記第2の情報を前記制御システムに伝達するように構成されている、第2の燃料ゲージ回路と
をさらに備え、
前記制御システムが、前記第1の電圧、前記第2の電圧、前記第1の情報、および前記第2の情報に応じて、前記第1の可変インピーダンス回路網および前記第2の可変インピーダンス回路網に選択的に信号伝達するように構成されている、
請求項1に記載のエネルギー送達システム。
【請求項13】
エネルギーを負荷に送達するための方法であって、
第1のエネルギー貯蔵システムによる前記負荷への第1の電流の供給に関する電圧および電流の情報を含む第1のパラメトリックデータを収集するステップと、
第2のエネルギー貯蔵システムによる前記負荷への第2の電流の供給に関する電圧および電流の情報を含む第2のパラメトリックデータを収集するステップと、
前記収集された第1のパラメトリックデータおよび前記収集された第2のパラメトリックデータに応じて、第1の可変インピーダンス回路網により前記第1の電流を調整するステップであって、前記第1の可変インピーダンス回路網が、前記第1のエネルギー貯蔵システムと前記負荷との間に結合されている、ステップと、
前記収集された第1のパラメトリックデータおよび前記収集された第2のパラメトリックデータに応じて、第2の可変インピーダンス回路網により前記第2の電流を調整するステップであって、前記第2の可変インピーダンス回路網が、前記第2のエネルギー貯蔵システムと前記負荷との間に結合され、前記第1のエネルギー貯蔵システムおよび前記第2のエネルギー貯蔵システムが、前記負荷に対して並列に結合され、前記第1のエネルギー貯蔵システムが、前記第2のエネルギー貯蔵システムとは異なる化学組成または物理構造を有する、ステップと
を含む、方法。
【請求項14】
前記第1の電流を前記調整するステップが、前記第1のパラメトリックデータを収集した制御システムから受け取られた第1の制御信号に応答して行われ、前記第2の電流を前記調整するステップが、前記第2のパラメトリックデータも収集した前記制御システムから受け取られた第2の制御信号に応答して行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の可変インピーダンス回路網が、前記第1の制御信号に応答して前記第1の可変インピーダンス回路網の実効抵抗を調整するように構成された複数の切替え可能な抵抗性素子を備え、前記第2の可変インピーダンス回路網が、前記第2の制御信号に応答して前記第2の可変インピーダンス回路網の実効抵抗を調整するように構成された複数の切替え可能な抵抗性素子を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の可変インピーダンス回路網が、前記第1の制御信号に応答して、前記第1の可変インピーダンス回路網内に存在するいくつかの順方向ダイオード電圧降下を調整するように構成された複数の切替え可能なダイオードを備え、前記第2の可変インピーダンス回路網が、前記第2の制御信号に応答して、前記第2の可変インピーダンス回路網内に存在するいくつかの順方向ダイオード電圧降下を調整するように構成された複数の切替え可能なダイオードを備える、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のエネルギー貯蔵システムが、第1のVI特性曲線により構成され、前記第2のエネルギー貯蔵システムが、第2のVI特性曲線により構成され、前記第1のVI特性曲線が、前記第2のVI特性曲線とは異なり、前記第1のVI特性曲線が、所定の充電状態において前記第2のVI特性曲線をクロスオーバーし、前記制御システムは、前記第1のVI特性曲線が前記第2のVI特性曲線をクロスオーバーするところを調整するように、前記第1の可変インピーダンス回路網および前記第2の可変インピーダンス回路網のうちの少なくとも一方に信号伝達するように構成されている、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のエネルギー貯蔵システムは、第1の化学組成をそれぞれが有する複数の電池セルの第1の電池セルスタックを備え、前記第2のエネルギー貯蔵システムは、第2の化学組成をそれぞれが有する複数の電池セルの第2の電池セルスタックを備え、前記第1の化学組成が、前記第2の化学組成とは異なる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のエネルギー貯蔵システムが、化学エネルギー貯蔵システム、運動エネルギー貯蔵システム、および電位エネルギー貯蔵システムからなる第1のグループから選択され、前記第2のエネルギー貯蔵システムが、化学エネルギー貯蔵システム、運動エネルギー貯蔵システム、および電位エネルギー貯蔵システムからなる第2のグループから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記制御システムが、前記第1の電流および前記第2の電流によって出力端子に供給される電流の相対的割合を制御するように、前記第1の可変インピーダンス回路網および前記第2の可変インピーダンス回路網のうちの少なくとも一方に信号伝達するように構成されている、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月22日に出願された国際出願第PCT/US2017/068301号の国内段階出願である、2020年4月30日に出願された米国特許出願第16/760,762号の一部継続出願であり、これらはともに、参照によって本明細書によって組み込まれている。本出願はまた、2019年8月5日に出願された米国仮特許出願第62/882,817号の優先権を主張するものであり、この米国仮出願は、参照によって本明細書によって組み込まれている。
【0002】
本発明は、一般に、電子装置のためのエネルギー源に関し、特に、エネルギー貯蔵システムまたはエネルギー貯蔵源からエネルギーを送達するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
この項目は、本開示の例示的な実施形態に関連し得る当技術分野の様々な態様を紹介することを意図している。この議論は、本開示の特定の態様をより良く理解しやすくするためのフレームワークを提供するのに役立つと思われる。したがって、この項目は、この観点で読むべきであり、必ずしも従来技術を認めるものとして読むべきとは限らないことを理解すべきである。
【0004】
技術的な利便性を可能にするために電力を供給することができるエネルギー装置に対する依存度は、これまでになく増している。主に、電力は、連続的に動作する回路網グリッドから生じる。しかしながら、電力グリッドが利用できない遠隔場所または障害物に起因して、電力を非グリッドの源から供給する必要がある。エネルギーは、化学エネルギー貯蔵部、位置エネルギー貯蔵部、または運動エネルギー貯蔵部を含むこれらの源を使用して非グリッドの装置およびシステムから引き出され、また既存の電気グリッドフレームワークと互換性をもつように送達または変換され、電気的仕事を完了することができる。化学エネルギー貯蔵システムの例としては、リチウム電池、ニッケル電池、フローセル電池、および鉛酸電池が挙げられるが、これらに限定するものではない。位置エネルギー貯蔵システムの例としては、リチウムキャパシタ、スーパーキャパシタ、および電気二重層キャパシタ(「Electric Double-Layer Capacitor、ELDC」)などのパラメトリック装置が挙げられるが、これらに限定するものではない。運動エネルギー貯蔵システムの例としては、フライホイールなどの回転質量システム、および機械的/電気的変換処理により結合される他の機械的装置が挙げられるが、これらに限定するものではない。本開示全体を通して、これらの用語は、電圧を印加する、電流を供給する、および/または仕事を行うように電気エネルギーをそれぞれが送達することのできるエネルギー送達装置との関係において、交換可能に使用されてもよい。
【0005】
電池、キャパシタ、または他のエネルギー貯蔵システムの性能特性は、一般に、装置の構造によって決定され、電気化学的貯蔵装置の場合には、それらの化学組成によって決定される。そのような特性には、体積エネルギー密度(単位体積当たりのワット時)、重量エネルギー密度(単位質量当たりのワット時)、電力密度(すなわち、装置からエネルギーが引き出され得る速度)、充電/放電サイクル寿命、動作温度範囲、電極電圧、経年化に対する全体的な安定性などが含まれるが、これらに限定するものではない。その上、電池の場合には、いくつかの化学組成は、故障状態の間、より安定的であり、そのため、熱暴走に対して、より抵抗性のある電池を生み出し、したがって、他の化学的組成物よりも「安全(safer)」であると考えられる。たとえば、リチウムイオン電池は、最も一般的に使用されている電気化学的エネルギー貯蔵装置の一つである。加えて、特定の原材料の市場価格が変動することに起因して、貯蔵されたエネルギーのワット時当たりの単価について検討した場合、異なる組成の電池セル間に著しい価格差が存在する可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際特許出願第PCT/US2017/068301号
【特許文献2】米国特許出願第16/760,762号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】R. Raoら、「Battery Modeling for Energy-Aware System Design」、Computer、36巻、第12号、77~87頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電池セル(本明細書においては「エネルギーセル(energy cells)」とも呼ぶ)は、通常、直列および/または並列の組合せで結合されて、電池セルスタック(本明細書においては「セルスタック( cell stack)」または「電池スタック(battery stack)」とも呼ぶ)を形成し、適切な制御システムと組み合わされたとき、最新の電池ベースのエネルギー貯蔵/送達システムの基礎を形成する。しかしながら、(たとえば、複数の化学組成に基づく電池セルを含む)互いに異なる多数のエネルギー貯蔵源またはシステムを安全に組み合わせることができるエネルギー送達システムは、いまだに提供されておらず、したがって、その必要性がある。そのようなエネルギー貯蔵/送達システムは、電気的性能の利点のみならず、コスト、安全性、および/または寿命の利点を有する可能性もあり得る。たとえば、異なる化学組成のセルを慎重に組み合わせることによって、あるエネルギー貯蔵システムは、価格、安全性、ならびに/またはカレンダ寿命およびサイクル寿命の延長に向けて化学的に最適化されるセルで構成され得、別のエネルギー貯蔵システムは、いくつかの異なってはいるが、別の形で重要なパラメータに向けて最適化されるセルで構成され得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、エネルギー送達システムを提供する。当該エネルギー送達システムは、第1のエネルギー貯蔵システムと、第2のエネルギー貯蔵システムと、第1のエネルギー貯蔵システムと出力端子との間に結合された第1の可変インピーダンス回路網であって、第1の調整可能なインピーダンスを有する、第1の可変インピーダンス回路網と、第2のエネルギー貯蔵システムと出力端子との間に結合された第2の可変インピーダンス回路網であって、第2の調整可能なインピーダンスを有する、第2の可変インピーダンス回路網と、(1)第1の調整可能なインピーダンスを調整して、第1のエネルギー貯蔵システムによって出力端子に送達される第1の電流のレベルを変更するように第1の可変インピーダンス回路網に信号伝達すること、および(2)第2の調整可能なインピーダンスを調整して、第2のエネルギー貯蔵システムによって出力端子に送達される第2の電流のレベルを変更するように第2の可変インピーダンス回路網に信号伝達することを選択的に行うように構成された制御システムとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】例示的な電池セルの充電状態に応じた直流内部抵抗(「DCIR(direct current internal resistance)」)および開回路電圧のプロットである。
【
図3】直流負荷条件下の電池セルの一モデルの概略図である。
【
図4】例示的な単一の電池セルの異なるレベルの電池電流を各曲線が表す、電圧対充電状態の特性曲線族のグラフである。
【
図5】直列に結合された多数の電池セルの一モデルの概略図である。
【
図6】直列に結合された多数の電池セルの簡略化された一モデルの概略図である。
【
図7】例示的な電池セルスタックについて異なるセルスタック電流レベルで各曲線をとった、電圧対充電状態の特性曲線族のグラフである。
【
図8】可変インピーダンス回路網とともに結合された電池セルスタックの一モデルの概略図である。
【
図9】可変インピーダンス回路網が、直列に結合された複数の切替え可能なダイオードを含む回路ブロック図である。
【
図10】直列に結合された複数の切替え可能なダイオードを導入した結果として、例示的な電池セルスタックの電圧対充電状態の特性曲線族に対する影響の例を実証するグラフである。
【
図11】可変インピーダンス回路網が、並列に結合された複数の切替え可能な抵抗性素子を含む回路ブロック図である。
【
図12】抵抗性素子を導入した結果として、例示的な電池セルスタックの電圧対充電状態の特性曲線族に対する影響の例を実証するグラフである。
【
図13】エネルギー送達システムのブロック図である。
【
図14】本開示の実施形態により構成されたエネルギー送達システムのブロック図である。
【
図15】
図14のエネルギー送達システムの一モデルの概略図である。
【
図16】複数の切替え可能なダイオードが、可変インピーダンス回路網内で直列に結合されている、
図14のエネルギー送達システムの一モデルの概略図である。
【
図17】本開示の実施形態により構成されたフローチャート図である。
【
図18】本開示の実施形態により構成されたエネルギー送達システムのブロック図である。
【
図19】本開示の実施形態により構成されたエネルギー送達システムのブロック図である。
【
図20】異なる化学組成を有する2つの電池セルスタックの例示的な放電中の電圧対充電状態の特性曲線族のグラフである。
【
図21】2つの異なる電池セルスタックの放電のプロットである。
【
図22】本開示の実施形態により構成されたエネルギー送達システムのブロック図である。
【
図23】異なる化学組成を有する2つの異なる電池セルスタックの電圧対充電状態の特性曲線族のグラフである。
【
図24】2つの異なる電池セルスタックの放電のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に説明する特定の実施形態は、例示によって示されたものであり、本発明の実施形態の限定として示されたものでないことが理解されるであろう。本発明の主要な特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態に用いることができる。
【0012】
本開示の実施形態について、電気化学的貯蔵システム(たとえば、電池技術)に関して説明するが、それは、他のタイプのエネルギー貯蔵および機械装置と比較して、そのエネルギー密度が向上したこと、ならびに展開される用途および使用法がより高まっていることによるものである。しかしながら、本開示の実施形態は、エネルギー貯蔵システムのための電池セルの利用に限定するものでなく、本明細書に説明する本開示の様々な実施形態は、限定するものではないが、位置エネルギー貯蔵システムおよび運動エネルギー貯蔵システムを含む、本明細書に開示されるエネルギー貯蔵システムなど、任意のタイプのエネルギー貯蔵システムの利用に適用できる。
【0013】
本開示の実施形態は、異なる化学組成または物理構造の多数のエネルギー貯蔵源/システムを、各システムの異なる性能特性に応じてシステムからエネルギーを送達するように構成された1つの共通制御システムと組み合わせ、そのため、組み合わされたシステムの様々な動作特性を最適化することができる、エネルギー送達システムを提供するものである。本開示の特定の実施形態によれば、並列に結合され、共通負荷に結合されている2つ以上の電池または他のエネルギー貯蔵システムを組み合わせるエネルギー送達システムが提供される。結合されたエネルギー貯蔵システムはそれぞれ、明らかに異なる化学組成、構造、または動作方法の電池セルを含んでいる。本開示の実施形態によれば、制御システムは、各エネルギー貯蔵システムの別個の可変インピーダンス回路網を利用して、たとえば各エネルギー貯蔵システムのサイクル寿命、放電深度、温度、送達電力、および/または認知安全性を最適化するために各エネルギー貯蔵システムの相対出力電流または放電速度を調整するように構成されている。たとえば、本開示の実施形態によれば、エネルギー送達システムは、異なる電池化学組成をそれぞれが有する2つ以上の電池セルスタックを含んでいてもよい。そのような多数の化学システムは、エネルギー送達システムを提供するために、共通制御システムの制御の下で、2つ以上の電池スタックを形成するように直列/並列接続されたセルの2つ以上の個々のグループを含んでいてもよい。そのような非限定的な例においては、各電池スタックは、セルの化学組成によって決定される独自の異なる性能特性をその中に有することができる。結合された負荷に出力電力を送達することになる電池システムを作り出すために、2つ以上の別個の電池スタックを並列に結合してもよい。本開示の特定の実施形態によれば、各電池スタックの直列セルカウントは、各スタックの合計スタック電圧が最適に一致するようにあらかじめ決定されていてもよい。本開示の特定の実施形態によれば、各電池スタックの並列セルカウントは、最終使用用途が必要とする各電池スタックのワット時の容量を最適化するようにあらかじめ決定されていてもよい。
【0014】
リチウムイオン電池セルは、一般に、エネルギー能力または電力能力に関係する2つのクラスに分けることができる。リチウムイオン「エネルギーセル(energy cell)」については、最大化された体積エネルギー密度または重量エネルギー密度を有すると説明されており、リチウムイオン貯蔵を最大化する内部化学組成を有するが、3C(ここでは、「C」は、電池容量を示す)を上回る大電流を送達することができるそれらの能力を制限する高い内部インピーダンスを有する。そのようなエネルギーセルは、ノート型コンピュータおよび携帯電話などの用途に利用され、この場合、エネルギーは、数時間または数日の期間にわたってゆっくりと引き出される。リチウムイオン「電力セル(power cell)」については、最大化された電流送達能力を有すると説明されており、内部インピーダンスを最小限にして、妨害のないリチウムイオンの質量移行を可能にする、したがって、セル端子電圧をそのカットオフ限界まで低下させることなく非常に大きいパルス電流または連続電流を送達可能にする内部化学組成を有する。電力セルは、8Cよりも大きく最大で50Cまでの放電速度を有することができる。通常、電力セルは、エネルギーセルと比較して、より厚い電流コレクタを有する。これらの内部構造および化学的相違により、結果的に、エネルギーセルと比較して、エネルギー貯蔵容量およびサイクル寿命能力は、より低くなる。電力セルは、通常、コードレスドリル、および他の工具などの用途に使用され、この場合、高いエネルギー量が短い時間期間にわたって送達されなくてはならず、貯蔵されたエネルギーがすべて、1時間以内などの放電時間にわたって引き出される。各セルの分類(電力またはエネルギー)の中に、様々なエネルギー密度および様々な内部抵抗値を含む広範囲のセル部の数が存在し得る。
【0015】
リチウムイオン電池は、広範囲の化学組成および構造技法に利用でき、それぞれ、次の表(表1)にリスト化されているサイクル寿命、コスト、安全性、およびエネルギー密度に関係する性能の特定の相対的利点および不利点を伴う。
【表1】
【0016】
リスト化されている電池タイプはそれぞれ、他のものとは実質的に異なる化学組成を有すると言えよう。仮に設計者に、5000回の充電および放電サイクルの所要のサイクル寿命を伴うエネルギー貯蔵システムを設計するように課題が与えられた場合、この表から、リン酸鉄リチウム(「lithium iron phosphate、LFP」)またはリチウムチタン酸化物(「lithium titanium oxide、LTO」)はより適切な選択になる一方、リチウムニッケルマンガンコバルト(「lithium nickel manganese cobalt、NMC」)は、そのサイクル寿命が相対的により短いことに起因して適切な選択にならないことは明らかである。また、LFPおよびLTOは、利用可能な2つの最高コストの選択であるので、システムなどの相対コストが、より高くなることも明らかである。また、これらの2つのセルタイプのエネルギー密度は相対的により低いので、ワット時の任意の所与のシステム容量を達成するには、より多くのセルが必要になる。
【0017】
様々なエネルギー貯蔵源/エネルギー貯蔵システムの異なる相対特性に関する前述の例示的な情報を解釈すると、可能なエネルギー貯蔵性能要件の大きいサブセットの場合、単一のエネルギー送達システムへと構成され得る2つ以上のセル化学的性質の組合せが存在し、それにより、システムの少なくともいくつかの特性は、たった一つの化学的性質のセルのみを使用して達成できるものよりも増強されることになる。
【0018】
本開示の実施形態の利点を実証するために、次に、LFPが約60%とNMCが約40%とのワット時容量比率で組み合わされた、LFPセルを含んでいる第1の電池スタックおよびNMCセルを含んでいる第2の電池スタックのエネルギー貯蔵システムを含む例示的なエネルギー送達システムについて説明し、このエネルギー送達システムは、LFPの相対的により長い寿命および増強された安全性特性を生かしているが、NMCの相対コストが抑えられていることおよびエネルギー密度特性がより高いことに起因して、より低いコストポイントおよびより小さいサイズで構成されている。本開示の例示的な実施形態によれば、システムの性能および特性は、セルの化学的性質および使用されるセルタイプ、ならびにそれらが組み合わせられる比率を調整することによって、さらに構成できる場合がある。本明細書において以降、説明する例示的な実施形態は、本開示の様々な実施形態により、リチウムイオン電池の異なる化学組成にそれぞれが基づいているエネルギー貯蔵素子の2つのスタックに基づいているシステムを提供するが、電池セルの第1のスタックおよびELDCの第2のスタックに基づいているシステムなどの他のエネルギー貯蔵システムを利用することもあり得、それにより、ピークパルス電力について最適化可能になり、電池を単独で使用して可能であることよりも高速な再充電を可能にすることができるようになる。本開示の実施形態によれば、(異なる化学的性質またはエネルギー貯蔵技術により構成された(たとえば、任意の位置エネルギー貯蔵システム、化学エネルギー貯蔵システム、および/または運動エネルギー貯蔵システムから選択された)そのようなシステムのうちの少なくとも2つ以上を含む)3つ以上のエネルギー貯蔵システムが、エネルギー送達システムの全体的なシステム性能および/または特性をさらにカスタマイズするために含められてもよい。
【0019】
電池セルは、
図1に示されている電子回路網としてモデル化され得る(たとえば、本明細書に参照によって本明細書によって組み込まれているR. Raoら、「Battery Modeling for Energy-Aware System Design」、Computer、36巻、第12号、77~87頁、2003年12月参照)。一般的に受け入れられているモデルは、開回路電圧(本明細書においては、「OCV」または「V
oc」のいずれかと呼ぶ)を表す理想電圧源の均等物、電流(I
s)が中を流れる内部直列抵抗(R
s)、ならびに直列および/または並列接続された抵抗器とキャパシタとの組合せの反応性構成要素(R
nC
n)を含み、ここで、I
nは、反応性構成要素の中を流れる電流である。モデルは、セルインピーダンスの全反応性構成要素に寄与する多数(すなわちn個、ただしn
≧1)のRC素子を含んでもよいことに留意されたい。
【0020】
直流(「DC」)負荷条件下の電池端子の電圧(「Vbatt」)は、次の方程式により表される。
Vbatt=Voc-RsIs-ΣRnIn
【0021】
電池の内部直列抵抗(Rs+ΣRn)は、直流内部抵抗(「DCIR」)と呼ぶこともある。DCIRは、電池の充電状態(「SOC」)に応じて変化する。
【0022】
図2は、典型的なNMC電池セルのSOCに応じた電池セルDCIRとOCVとの両方を示すグラフを例示している。充電状態が高いほど、V
oc電圧は高くなり、DCIRは低くなる。DCIRは、低充電状態で増加し、特にSOCがおよそ30パーセント(30%)を下回ると増加する。
【0023】
時間ベースの成分は、急激な負荷の変化ならびに充電および/または放電サイクル中の過渡応答およびファラデー寄与の主要因となり得ることに留意されたい。電流が時間とともに変化しないDC負荷条件下の電池セルの振舞い全体を考慮するとき、抵抗性素子は加算され得、容量性素子は無視され得、したがって、モデルは、
Vbatt=Voc-RbattIbatt
に簡略化され得る。
【0024】
この簡略化されたセルモデルは、
図3に示されている。結果として、V
battは、異なるI
batt電流値でとられた様々な電流における電圧対SOC曲線(本明細書においては、VI特性曲線とも呼ぶ)族によって特徴付けることができる。典型的な単一のNMCセルのこのVI特性曲線族は、
図4に示されている。(
図4、および電圧対SOC曲線のグラフを示す他の図においては、各線は、C、すなわち電池の定格容量に関係する異なる電流値における電圧を表している。)
【0025】
図5を参照すると、多数(n個)の同一の電池セルが直列に結合されているとき、モデルは、
V
batt=n(V
oc-R
battI
batt)
と表すことができ、ここで、nは、直列の電池セルの数である。簡略化されたモデルが
図6に示されている。
【0026】
図7を参照すると、先に説明した単一の電池セルの例と同様に、そのような直列接続されたセルシステム(この非限定的な例においては、11個のセルが直列に接続されている、先に説明した典型的なNMCセルの電池スタック)について、例示的なVI特性曲線族を生成することができる。
【0027】
図8を参照すると、電池スタックは、可変インピーダンス回路(本明細書においては、「Z
var」または「Z
variable」のいずれかと呼ぶ)に結合され得る。Z
varという用語は、切替え可能な素子の回路網として構成され得る回路の可変インピーダンスを表す(したがって、本明細書においては、可変インピーダンス回路を「可変インピーダンス回路網」とも呼ぶことになる)。任意の所与の出力電流値の場合、Z
varという用語は、そのように備えられた各エネルギー源(たとえば、電池セルスタック)が、Z
varの値を調整することによって、その通常の特性電圧曲線の位置(つまり、Z
var=0のときに観察される放電曲線)に対して、そのV
batt出力特性曲線の位置を下方に移動させることを可能にする。
【0028】
本開示の実施形態は、可変インピーダンス回路および/または回路網の中で任意の適切な回路機構を利用するように構成され得る。国際特許出願第PCT/US2017/068301号(本明細書においては以降、「PCT/US2017/068301」と呼ぶ)には、本明細書に説明する本開示の様々な実施形態による可変インピーダンス回路網内で利用することができる切替え可能な素子を含む回路機構の例示的な実装形態について開示されている。
図9に示されているように、PCT/US2017/068301に開示されている第1の実装形態(PCT/US2017/068301からの
図6が、
図9として与えられている)は、いくつかの直列接続された切替え可能なダイオード回路610a…610cを利用しており、それらは、システム600をリアルタイムで監視していることができる制御システム602によって行われる制御アルゴリズムに従って、選択的に、回路に挿入されてもまたは回路から除去されてもよい(切替え用素子、たとえば、FETを使用して)。
図9に示されている実施形態は、3つの直列接続された切替え可能なダイオード回路610a~610cを示しているが、より多くのまたはより少ないそのような切替え可能なダイオード回路が、正確なシステム構成および最終用途の要件に応じて利用されてもよい。
図9に示されている残りの素子については、簡単にするためにこれ以上説明しないが、PCT/US2017/068301を見直すことによって参照できることに留意されたい。
【0029】
図10は、いくつかの直列接続されたダイオード(この場合には、5個の理想ダイオード)が回路内に導入されたときの特性曲線の位置に対する影響を示している。特性曲線はそれぞれ、インピーダンス挿入なし(すなわち、Z
variable=0)に対して同じ量だけ下方にシフトしている(電圧が下がっている)ことに注意されたい。この非限定的な例においては、Z
variable=5*Vfであり、ここで、Vfは、理想ダイオードの順方向電圧である。電池電流は、このシフトのレベルにまったく影響を及ぼさず、すなわち、各電流レベルの曲線は、同じ量だけシフトすることに留意されたい。直列接続された切替え可能なダイオードを使用するこの実施形態の可変的性質は、任意の数のダイオード(すなわち、ゼロ個のダイオードから、最大数の実装ダイオードまで)を任意のときに回路に追加または回路から除去することができるということから生じる。したがって、実装された電池セルスタックに関連するVI特性曲線は、そのような可変インピーダンス回路網により構成されたエネルギー送達システムの動作中、任意のときに上方にまたは下方にシフトさせることができる。
【0030】
図11は、PCT/US2017/068301に開示されている切替え可能な素子を含む回路機構の第2の例示的な実装形態を提供する(PCT/US2017/068301からの
図7が、
図11として与えられている)。この例示的な実装形態においては、切替え可能な素子を含む回路機構は、切替え可能な抵抗性素子750a~750dの並列接続として構成されている。各切替え可能な抵抗性素子は、制御システム702によって行われる制御アルゴリズムに従って、選択的に、回路に挿入されてもまたは回路から除去されてもよく(切替え用素子、たとえば、FETを使用して)、切替え可能な抵抗器回路網の総インピーダンスは、所与のときにオンまたはオフに切り替えられる切替え可能な抵抗性素子の数によって決定される。
図9に関して説明したのとほとんど同じやり方で、そのような回路機構において抵抗を加算または減算すると、結果的に、電池セルスタックのVI特性曲線の位置のシフトがもたらされることになる。
図11に示されている残りの素子については、簡単にするためにこれ以上説明しないが、PCT/US2017/068301を見直すことによって参照できることに留意されたい。
【0031】
図12は、0オームの値に設定された(すなわち、Z
variable=0)切替え可能な抵抗性素子を含む回路機構による特性曲線と、1オームの値に設定された(すなわち、Z
variable=1オーム)切替え可能な抵抗性素子を含む回路機構による曲線との比較を示している。分かり得るように、結果として得られる特性シフトは、切替え可能なダイオードが実装されているときの例示的な実装形態に関して実証されたものとは性質が異なる。すべての曲線を
図10に示されているのと等しい量だけ下方向にシフトさせているのではなく、各曲線の下方向シフトの大きさは、各曲線によって表される電流に比例する。これにより、結果的に、固定された電圧値によってすべての曲線が下方向にシフトするのではなく、様々な特性曲線が「離れて広がる(spreading apart)」ことになる。抵抗器にわたる電圧降下は、電流×抵抗であるが、理想ダイオードにわたる電圧降下は、電流に依存しない固定電圧である。そのため、切替え可能な抵抗性素子の回路網の場合には、VI特性曲線に対する影響は、電流に依存する(たとえば、0の電流は、結果的に0の電圧降下をもたらし、1倍の電流は、結果的に1倍の電圧降下をもたらし、2倍の電流は、結果的に2倍の電圧降下をもたらす、など)。このことは、各特定の電流レベルにおけるVI特性曲線が、抵抗に応じて「広がる(spread)」ことになり、挿入される抵抗が高いほど、結果的に、より多く広がることになることを意味する。切替え可能なダイオードの場合には、順方向電圧降下は、電流の大きさにかかわらず、固定される。そのため、VI特性曲線はすべて、回路へと切り替えられるダイオードの数(すなわち、スイッチによって短絡されないダイオードの数)だけ下方向にシフトする。ダイオードに存在する電流の大きさにかかわらず、1つのダイオードは、同じ量(たとえば、Vf=0.75V)だけ曲線をすべて下方にシフトさせ、2つのダイオードは、1.5Vだけ曲線を下方にシフトさせ、5つのダイオードは、3.75Vだけ曲線を下方にシフトさせる、などになる。
【0032】
図13を参照すると、システム1300が示されており、ここでは、電池スタック1301が、複数の直列接続された電池セルを含み、可変インピーダンス回路網1302が、V
o Positive端子で電圧を呈する。電池スタック1301内の各セルでは、その電圧がアナログフロントエンド測定装置(「analog front end measurement device、AFE」)1303によって監視される。AFE1303はまた、温度データを収集し、収集されたデータを制御システム(たとえば、マイクロコントローラ「MCU」)1304に送達してもよい。電池スタック1301は、センス抵抗器(Rsense)1305を介してV
o Negativeに結合され得る。センス抵抗器1305の各側は、燃料ゲージ集積回路(「IC」)1306に結合されて、電流がセンス抵抗器1305に存在するときはいつでも、電池電流(i
o)の値を表す電圧を燃料ゲージIC1306に提供することができる。燃料ゲージIC1306は、電池スタック1301の充電状態(「SOC」)に関する情報をMCU1304と通信することができる。MCU1304は、可変インピーダンス回路網1302に結合され、可変インピーダンス回路網1302を制御する。MCU1304は、所定の方式でシステム1300の動作状態を制御する(たとえば、最適化する)ように構成された1つまたは複数の制御アルゴリズムを行うことができる。たとえば、制御システム1304によって動作する制御アルゴリズムは、電池スタック1301の状態を決定し可変インピーダンス回路網1302を操作して、このパラメータを決定するVI特性曲線の位置を調整することによってシステム1300のV
o Positive端子に呈される電圧を制御する(たとえば、調整または修正する)ように構成され得る。MCU1304は、データおよび/または情報を外部のホストシステムに(たとえば、通信リンクまたはバス1307を介して)伝達するように構成され得る。
【0033】
図14を参照すると、本開示の実施形態により構成されたエネルギー送達システム1400が示されている。エネルギー送達システム1400においては、第1の電池セルスタック1401aが、第2の電池セルスタック1401bに並列に結合されており、ここでは、電池セルスタック1401aおよび1401bはそれぞれ、同様の制御回路および監視用回路に結合され得る。電池セルスタック1401a、1401bは、共通制御システム(たとえば、マイクロコントローラ「MCU」)1404に結合され得、それにより、各電池スタックからのパラメトリック情報が(たとえば、同時に)収集され、可変インピーダンス回路網1402a、1402bのうちのいずれかまたは両方の動作を制御するように制御アルゴリズムが行われ得る。電池スタック1401a内の各セルの電圧は、アナログフロントエンド測定装置(「AFE」)1403aによって監視され得る。AFE1403aはまた、温度データを収集し、収集されたデータを制御システム1404に送達してもよい。電池スタック1401aは、センス抵抗器(Rsense)1405aを介してV
o Negativeに結合され得る。センス抵抗器1405aの各側は、燃料ゲージ集積回路(「IC」)1406aに結合されて、電流がセンス抵抗器1405aに存在するときはいつでも、電池電流(i
1)の値を表す電圧を燃料ゲージIC1406aに提供することができる。燃料ゲージIC1406aは、電池スタック1401aの充電状態(「SOC」)に関する情報を制御システム1404と通信することができる。電池スタック1401b内の各セルの電圧は、AFE1403bによって監視され得る。AFE1403bはまた、温度データを収集し、収集されたデータを制御システム1304に送達してもよい。電池スタック1401bは、センス抵抗器(Rsense)1405bを介してV
o Negativeに結合され得る。センス抵抗器1405bの各側は、燃料ゲージIC1406bに結合されて、電流がセンス抵抗器1405bに存在するときはいつでも、電池電流の(i
2)値を表す電圧を燃料ゲージIC1406bに提供することができる。燃料ゲージIC1406bは、電池スタック1401bのSOCに関する情報を制御システム1304と通信することができる。本質的には、燃料ゲージIC1406a、1406bは、瞬間電流、さらには電池温度を測定し、次いで、測定したデータまたはデジタル的に送達されてきたデータから、平均電流、瞬間充電状態、電池スタックが経験した充電/放電サイクルの回数、電池スタックの抵抗、および他のパラメータを計算するように構成され得る。
【0034】
本開示の特定の実施形態によれば、Vo Positive出力端子は、可変インピーダンス回路網1402a、1402b間で共通であることに留意されたい。結果として、本開示の実施形態によれば、可変インピーダンス回路網1402a、1402bは、システム1300内で行われるように端子Vo Positiveに呈される出力電圧を制御するのではなく、制御システム1404からの信号による選択的な制御の下で、各可変インピーダンス回路網1402a、1402bの中を流れ出力端子に送達される電流のレベルを制御するように構成され得る。制御システム1404による可変インピーダンス回路網1402a、1402bの選択的制御は、電池スタック1401a、1401bがそれぞれ、エネルギー送達システム1400の所定の性能基準に従って、所定の出力電流範囲に維持されるように行うことができる。
【0035】
制御システム1404は、データおよび/または情報を外部のホストシステムに(たとえば、通信リンクまたはバス1407を介して)伝達するように構成され得る。様々な構成要素間の内部通信および/または制御システム1404からの外部通信は、ワイヤードであっても、またはワイヤレスであってもよい。利用可能な通信プロトコルには、SMB、I2C、RS232、TTL、Serial、USB、CAN、Networkなどが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0036】
非限定的な例においては、可変インピーダンス回路網1402a、1402bは、
図11のシステム700において利用される切替え可能な抵抗性素子750a…750dの構成など、複数の切替え可能な抵抗性素子を含んでいてもよい。各スイッチ710a…710dは、所定の制御アルゴリズムに従って、制御システム1404によって個々に開くこともまたは閉じることもできる。抵抗器750a…750dは、同じ抵抗値により構成することも、または異なる抵抗値により構成することもできる。それらの対応するスイッチ710a…710dによって並列に結合されている抵抗器750a…750dの数を改変することによって、可変インピーダンス回路網1402a、1402bのうちのいずれかまたは両方の実効抵抗は、所定の範囲にわたって(たとえば、所定の最小抵抗値から所定の最大抵抗値まで)調整することができる。
【0037】
エネルギー送達システム1400は、
図15に示されている簡略化されたモデルによって表すことができ、それは、方程式、
V
o Positive=V
1-R
1*i
1-i
1*Variable R1
V
o Positive=V
2-R
2*i
2-i
2*Variable R2
i
1+i
2=i出力
によって記述することができる。
【0038】
エネルギー送達システム1400が、(たとえば、材料および/または化学組成が異なっているために)動作パラメータの異なる組を有する、ここでは、セルスタック1401aがセルスタック1401bに対してより高いサイクル寿命により構成されたセルを含み、セルスタック1401bがセルスタック1401a対してより低いサイクル寿命により構成されたセルを含むが、より高い相対エネルギー密度のセルを含んでもよい、電池セルスタックを含んでいる本開示の例示的な実施形態について考える。2つのセルスタックのエネルギー容量は、ほぼ同じであると仮定する。本開示の実施形態によれば、放電中、より高い相対サイクル寿命を有するセルスタック(すなわち、セルスタック1401a)がエネルギーの大部分を送達することが、エネルギー送達システム1400の動作にとって有利である場合があり得る。たとえば、本開示の実施形態によれば、制御システム1404は、セルスタック1401aのより長いサイクル寿命を活用するために、放電中、セルスタック1401aから引き出される電流は、セルスタック1401bから引き出される電流の2倍になるように、すなわち、言い換えれば、セルスタック1401aから引き出される周期的エネルギーは、セルスタック1401bから引き出される周期的エネルギーの2倍になるように構成され得る。そのような例示的な動作シナリオの下で、方程式は、次のように、
i1=2*i2(i1は、つねにi2の2倍である)
Vo Positive=V1-R1*2*i2-2*i2*Variable R1、および
Vo Positive=V2-R2*i2-i2*Variable R2
書き換えることができる。
【0039】
値V
1、V
2、R
1、およびR
2は、セルスタック1401a、1401bにおいて利用される電池セルのタイプに関連するセル特性化曲線(
図2に示したものなど)から知ることができ、したがって、i
1=2*i
2の条件を維持するようにVariable R1およびVariable R2の値について方程式を解き、したがって、適切な値により可変インピーダンス回路網1402a、1402bを構成することは自明である。
【0040】
エネルギー送達システム1400はまた、
図16に示されている簡略化されたモデルによって表すことができ、ここでは、可変インピーダンス回路網1402a、1402bはそれぞれ、
図9のシステム600において利用される切替え可能なダイオード610a…610cの構成など、複数の切替え可能なダイオードを含む。切替え可能なダイオード610a…610cはそれぞれ、ダイオードの周りのあらゆる電流をバイパスすることができるスイッチ(たとえば、FET)と結合される。スイッチは、制御システム1404から受け取られた制御信号(たとえば、
図9の制御信号621a…621cと同様の)に従って、開くことも、または閉じることもできる。ダイオードはそれぞれ、同じまたは異なる順方向電圧降下(Vf)値により構成され得る。関連のスイッチが開かれ、したがってそれらの関連する可変インピーダンス回路網1402a、1402bに対して順方向電圧降下に寄与するダイオードの数と、関連スイッチが閉じられ、したがってそれらの関連する可変インピーダンス回路網1402a、1402bに対して順方向電圧降下に寄与しないダイオードの数は、制御システム1404によって調整可能であり、そのため、電圧降下の和は、可変である。
【0041】
図15に関して説明した例と同様に、このシステムは、方程式、
V
o Positive=V
1-V
var1-i
1*R
1
V
o Positive=V
2-V
var2-i
2*R
2
i
1+ i
2=i出力
によって記述することができる。
【0042】
この場合も、先の例にあるように、エネルギー送達システム1400が、たとえば、ここでは、セルスタック1401aがセルスタック1401bに対して非常に高いサイクル寿命により構成されたセルを含み、セルスタック1401bがセルスタック1401aに対してより低いサイクル寿命により構成されたセルを含むが、より高い相対エネルギー密度を含んでもよい、2つの異なる電池セルを含むことについて考える。2つのセルスタックのエネルギー容量は、ほぼ同じであると仮定する。また、先の例と同様に、i1=2*i2が望ましく、したがって、方程式が次のように、
i1+i2=i 出力
i1=2*i2(i1は、つねにi2の2倍である)
Vo Positive=V1-Vvar1-2*i2*R1
Vo Positive=V2-Vvar2-i2*R2
書き換えられるエネルギー送達システム1400について考える。
【0043】
この場合も、値V
1、V
2、R
1、およびR
2は、
図3に示されているものなどのセル特性化曲線からわかり、したがって、i
1=2*i
2の条件を維持するようにV
var1およびV
var2の正確な値について方程式を解き、適切な値により各インピーダンス回路網におけるアクティブダイオードの数を構成することは自明である。
【0044】
値V
1、V
2、R
1、およびR
2は、セルスタック1401a、1401bにおいて利用される電池セルのタイプに関連するセル特性化曲線(
図2に示されているものなど)から知ることができ、したがって、i
1=2*i
2の条件を維持するようにV
var1およびV
var2の値について方程式を解き、したがって、適切な値により各可変インピーダンス回路網1402a、1402bにおけるアクティブダイオードの数を構成することは自明である。各ダイオードのVfの値は、半導体技術および装置タイプに応じて固定された特性値であるので、可変インピーダンス回路網1402a、1402bのそれぞれの正確な値は、精密に調整することはできず、むしろVf値の何らかの固定された倍数であることに注意することが重要である。
【0045】
本開示の実施形態によれば、エネルギー送達システム1400の実装形態は、可変インピーダンス回路網1402a、1402bが、切替え可能な抵抗性素子、切替え可能なダイオード、またはそれらの組合せを利用している状態で実装されているかどうかにかかわらず、可変インピーダンス回路網1402a、1402b内で抵抗性素子またはダイオードの切替えを制御するために、場合により
図15または
図16のいずれかに関して説明した数式を具現化する、制御システム1404内でプログラミングされた制御アルゴリズムを利用してもよい。加えて、本開示の実施形態によれば、電池セル固有値V
1、V
2、R
1、およびR
2は、それらの個々のセル特性化曲線から決定されてもよい。そのような値は、セルの充電状態、温度、および経年によりきわめて可変であるので、そのような値を、ルックアップテーブルなど、何らかの適切なデータベースに組み込んで、特徴付けられたデータを取り込み、経年特性を推定するためにモデルを作成してもよい。
【0046】
本開示の実施形態によれば、制御システム1404は、逐次近似に基づく制御アルゴリズムを利用してもよい。たとえば、エネルギー送達システム1400が初期化され、いずかのエネルギーの放電が開始する前に、可変インピーダンス回路網1402a、1402bの初期状態が(たとえば、記述方程式を解くことによって)構成されてもよい。次いで、一旦、放電が開始すると、制御システム1404は、連続的な方程式処理を行うのではなく、各セルスタック1401a、1401bの電圧、電流、およびSOCなどのエネルギー送達システム1400の動的に変化する動作条件が測定されるパラメトリック測定ステップの中を繰り返してループしてもよく、その後に、各セルスタック1401a、1401bの出力電流または他の選択されたパラメータが、互いに対して、および目標とされた性能に対して比較される比較ステップが続き、次いで、可変インピーダンス回路網1402a、1402bが、制御されたパラメータを調整ごとに所望の振舞いに向かって動かすように調整される補正ステップが(たとえば、小さい個別のステップで)行われる。電池パラメータが、可変インピーダンス回路網1402a、1402bのうちのいずれかに対する各調整後に安定するのを可能にするために、遅延がループに追加されてもよい。たとえば、
図14に関して説明したエネルギー送達システム1400の先の例を用いると、制御システム1404は、i
1とi
2を等しくする、もしくはi
1をi
2の固定割合にする、またはセルスタック1401aのSOCが25%を上回るときだけは、i
1がi
2の固定割合にし、セルスタック1401aのSOCが25%を下回るときは、異なる固定割合にするように絶えず維持する、あるいはセルスタックの温度間の差が何らかの閾値に達したときはいつでも、最高温度のセルスタックの電流を最低温度のセルスタックの電流の10%に減少させるように構成されてもよい。前述の例は、可能な制御アルゴリズムにおける可能な変形形態に限定されない。
【0047】
図17は、本開示の実施形態によるエネルギー送達システム1400の制御システム1404内で行われる例示的な制御アルゴリズムを含む処理1700のフローチャートを示している。さらに説明するように、処理1700はまた、
図18、
図19、および
図22に関して説明するシステム1800の制御システム1804内で行ってもよい。
【0048】
エネルギー送達システム1400は、初期化され得る(開始)。処理ブロック1701(機械状態にアクセスする)においては、エネルギー送達システム1400の状態が決定され得る。たとえば、(たとえば、AFE1403a、1403bを介した電池スタック1401a、1401b内でのセルの)電圧、(たとえば、センス抵抗器1405a、1405bによって感知される)電流、(たとえば、AFE1403a、1403bを介した電池スタック1401a、1401b内でのセルの)温度が測定され得、このデータは、制御システム1404によって収集され得る。このデータを使用して、処理ブロック1702において、エネルギー送達システム1400は放電の準備ができているかどうかについての決定を行うことができる。そうでない場合には、処理ブロック1710において、何らかの補正アクションをとることができる。
【0049】
たとえば、セルスタック1401a、1401bのうちの一方または両方が完全に充電されていないことを収集されたデータによって判定された場合には、充電用電流が、外部のエネルギー源から印加されてもよい(たとえば、
図9および
図11の充電器603、703をそれぞれ参照)。セルスタック1401a、1401bのうちの一方または両方における1つまたは複数のセルが熱すぎることを収集されたデータによって判定された場合、冷却用システム(図示せず)がアクティブ化され得る。手動インターロックが係合されている場合、エネルギー送達システム1400は、それがクリアされるのを待つように構成されていてもよい。補正アクションが開始された後、処理1700は、処理ブロック1701に戻ることができ、制御システム1404内で処理1700が、負荷(図示せず)へのエネルギー送達システム1400のエネルギー放電準備ができていることを判定するまで、このループは継続的に行われ得る。
【0050】
一旦、制御システム1404内で処理1700が、エネルギー送達システム1400の放電準備ができていることを判定すると、両方の可変インピーダンス回路網1402a、1402bは、所定の初期値に設定され得る。これらの初期値は、リアルタイムに制御システム1404内で行われる方程式(たとえば、
図15および
図16に関して説明する方程式を参照)から決定されても、処理ブロック1701において測定されたSOC、セルスタック電圧、温度などのパラメータに基づく所定の初期値の所定のルックアップテーブルから設定されても、および/またはセルスタック1401a、1401bに関連するVI特性曲線に基づく所定のルックアップテーブルから設定されてもよい。
【0051】
一旦、可変インピーダンス回路網1402a、1402bの初期値が設定されると、処理1700は、たとえばエネルギー送達システム1400に(たとえば、Vo Positive端子およびVo Negative端子に)負荷回路を結合すると同時に、負荷電流の放電が開始するのを待つことができる。これは、処理1700が処理ブロック1701に戻ってループすることを含めることができる。一旦、処理ブロック1704において放電電流が検出されると、処理ブロック1705は、電池セルスタック1401a、1401b、可変インピーダンス回路網1402a、1402b、および/またはシステム1400の他の部分からパラメータ(「パラメトリックデータ(parametric data)」とも呼ぶ)(AFE1403a、1403b、および電流センサ1405a、1405bを利用して、たとえば、電圧、電流、温度、SOC、充電/放電サイクル、抵抗、インピーダンスなど)を収集する。処理ブロック1706においては、このデータを分析して、放電の継続が許容され得るかどうかを判定することができる。たとえば、放電を終了することができるパラメータとしては、安全限界を下回るセルスタック電圧、安全限界を上回るセルスタック電流、安全限界外のセルスタック温度、手動安全インターロックの係合、および/または制御システムもしくは測定システムにおける任意の他の障害などが含まれる。処理ブロック1706において、放電が安全に継続できないことが判定された場合には、処理1700は、処理ブロック1710に進んで、適切なアクションをとってもよい。
【0052】
処理ブロック1706において、放電が安全に継続できると判定された場合には、処理ブロック1707において、可変インピーダンス回路網1402a、1402bのうちのいずれかまたは両方の調整が必要であるかどうかを判定することができる。たとえば、本開示の非限定的な実施形態によれば、制御システム1404において行われる制御アルゴリズムは、動作の(たとえば、電流センサ1405a、1405bによって所定の時間期間にわたって測定される)平均電流をセルスタック1401a、1401bの両方で等しいように維持するように構成され得る。その結果、直近に収集されたパラメトリックデータが、セルスタック1402aにおける平均電流がセルスタック1401bにおける平均電流よりも高いことを示す場合には、制御システム1404によって行われる制御アルゴリズムは、補正を加えるために2つの可能性のあるアクションのうちの一方をとるように構成され得る。MCU1404が、可変インピーダンス回路網1402a内のスイッチに、その合計インピーダンスの値を増加させるように信号伝達すること、または制御システム1404が、可変インピーダンス回路網1402b内のスイッチに、その合計インピーダンスの値を減少させるように信号伝達することのいずれかが可能になる。どちらの選択肢も受け入れ可能とすることができるが、制御システム1404は、任意の1つまたは複数の所定の因子に応じて、これらの補正アクションのうちの一方を他方の補正アクションよりも優先するように構成され得る。たとえば、可変インピーダンス回路網1402aは、その最小インピーダンス値付近にすでに設定されていることがあり得、この場合には、制御システム1404は、代わりに可変インピーダンス回路網1402bのインピーダンス値を減少させるように構成されていてもよい。制御システム1404は可変インピーダンス回路網1402a、1402bの両方の状態を知るように構成されているので、制御システム1404は、最も適切なアクションを選定するように構成され得る。一旦、処理ブロック1707内で補正アクションが決定されると、処理ブロック1708において、制御システム1404は、アクションを実施する(すなわち、新規インピーダンス設定を適用する)ように、可変インピーダンス回路網1402a、1402bのうちの一方または両方に1つまたは複数の制御信号を送信する。一旦、新規設定が適用されると、処理1700は、電池セルスタック電流(i1、i2)のうちの一方または両方が、これらの新規設定の下で、安定するのを可能にするために、遅延ルーチン(処理ブロック1709)を実施するように構成され得る。一旦、この遅延が期限切れになると、処理1700は、処理ブロック1705に戻ることができる。処理ブロック1707に関して説明した前述のアルゴリズムが、例示であり、本開示の実施形態に対して限定するものではないことに留意されたい。
【0053】
本開示の実施形態は、次の例によってさらに示されているが、これらの例は、現在開示されている主題を示すために記載されており、限定と解釈すべきではない。諸例では、本システムの実施形態は、本システムの実施形態が利用され得る様々な環境を例示する様々な条件の下で、1つまたは複数の情報を伝え、公開することができることを確認するために実施された検証について説明する。
【0054】
図18を参照すると、本開示の実施形態により構成されたエネルギー送達システム1800が示されている。エネルギー送達システム1800においては、第1の電池セルスタック1801aが、第2の電池セルスタック1801bに並列に結合されており、ここでは、それぞれの電池セルスタックは、同様の制御回路および監視用回路に結合され得る。電池セルスタック1801a、1801bは、共通制御システム(たとえば、マイクロコントローラ「MCU」)1804に結合され得、それにより、各電池スタックからのパラメトリック情報が、(たとえば、同時に)収集され、可変インピーダンス回路網1802a、1802bのうちのいずれかまたは両方の動作を制御するように制御アルゴリズムが行われ得る。電池スタック1801a内の各セルの電圧は、アナログフロントエンド測定装置(「AFE」)1803aによって監視され得る。また、AFE1803aは、温度データを収集し、収集されたデータを制御システム1804に送達してもよい。電池スタック1801aは、センス抵抗器(Rsense)1805aを介してV
o Negativeに結合され得る。センス抵抗器1805aの各側は、燃料ゲージ集積回路(「IC」)1806aに結合されて、電流がセンス抵抗器1805aに存在するときはいつでも、電池電流(i
1)の値を表す電圧を燃料ゲージIC1806aに提供することができる。燃料ゲージIC1806aは、電池スタック1801aの充電状態(「SOC」)に関する情報を制御システム1804と通信することができる。電池スタック1801b内の各セルの電圧は、AFE1803bによって監視され得る。また、AFE1803bは、温度データを収集し、収集されたデータを制御システム1804に送達してもよい。電池スタック1801bは、センス抵抗器(Rsense)1805bを介してV
o Negativeに結合され得る。センス抵抗器1805bの各側は、燃料ゲージIC1806bに結合されて、電流がセンス抵抗器1805bに存在するときはいつでも、電池電流(i
2)の値を表す電圧を燃料ゲージIC1806bに提供することができる。燃料ゲージIC1806bは、電池スタック1801bのSOCに関する情報を制御システム1804と通信することができる。制御システム1804は、データおよび/または情報を外部のホストシステムに(たとえば、通信リンクまたはバス1807を介して)伝達するように構成され得る。様々な構成要素間の内部通信および/または制御システム1804からの外部通信は、ワイヤードであっても、またはワイヤレスであってもよい。利用可能な通信プロトコルには、SMB、I2C、RS232、TTL、Serial、USB、CAN、Networkなどが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0055】
各可変インピーダンス回路網1802a、1802bは、たとえば
図16に関して説明したバイパス用スイッチとともにいくつかのダイオードを含んでいる。ダイオードおよび対応するスイッチの数は、各可変インピーダンス回路網1802a、1802bにおいて同じであるように示されているが、実際の数は、この2つの間で同じであっても、または異なっていてもよい。各可変インピーダンス回路網1802a、1802bに存在するダイオードの数は、各電池セルスタック1801a、1801bのハイサイドから出力端子V
o Positiveまでの最大電圧降下を確定し、この最大電圧降下は、すべてのダイオードの順方向電圧(Vf)降下の和である。本開示の特定の実施形態によれば、ダイオードのうちの1つまたは複数は、各ダイオードにより異なる順方向電圧降下が達成されるように、異なるパラメトリック特性を有することができる。各可変インピーダンス回路網1802a、1802bにおけるアクティブなダイオードの数およびバイパスされるダイオードの数は、各電池スタック1801a、1801bの特性曲線において所定の大きさの下方向のシフトをもたらすように、したがって、エネルギー送達システム1800における各電池スタック1801a、1801bの負荷電流寄与に影響を与えるように、制御システム1804によって制御され得る。
【0056】
図18は、各電池スタック1801a、1801bと出力端子V
o Positiveとの間に各可変インピーダンス回路網1802a、1802b内のダイオードのすべてのフル順方向電圧降下が実現されるように、可変インピーダンス回路網1802a、1802bの両方においてスイッチが開いている状態のエネルギー送達システム1800を示している。
図18は、デュアル電池スタックエネルギー送達システムについて開示しているが、本開示の実施形態は、様々な直列および/または並列の組合せで結合され、制御システム1804によって監視され制御される3つ以上の電池スタックにより構成されていてもよい。
【0057】
エネルギー送達システム1800の例示的な実施形態によれば、電池スタック1801aは、相対的に高いサイクル寿命の電池化学的性質により構成された電池セル(たとえば、LFPまたはLTO)を含んでおり、それにより、その端子電圧およびVI特性曲線は、たとえば
図20における例示的なVI特性曲線により示されているNMC電池セルを含んだ電池スタック1801bのものと重なる。LFPスタック1801aは、13個のセルを含み、典型的なフル充電電圧は44V~46.8Vの間(3.6V/セル)である。NMC電池スタック1801bは、11個のセルを含み、典型的なフル充電電圧は43.3V~46.2Vの間(4.0V/セル)である。LFP電池スタックとNMC電池スタックはともに、フル充電で同じ電圧に充電されることがあり得、または代わりに、電池スタックのうちの一方の電圧が他方の電池スタックの電圧よりも高く維持され得るように、最大充電電圧が調節されることもあり得る。この実施形態においては、LFP電池スタック1801aおよびNMC電池スタック1801bは、アンペア時で同様の化学的容量(chemical capacity)を有するように構成されている。
【0058】
図19を参照すると、デフォルトの動作モードにおいては、システム1800は、可変インピーダンス回路網1802a、1802bの両方の中でダイオードスイッチのすべてが閉じられ、ダイオードをバイパスするように構成され得、それにより、各電池スタック1801a、1801bのVI特性曲線は、可変インピーダンス回路網1802aおよび1802bからのいかなる影響もなしにV
o Positive端子で呈されることになる。2つのVI特性曲線族が充電状態のほとんどの条件下で互いの上に存在するので、対象の負荷電流範囲内で、電池スタック1801a、1801bは、放電中、すべての時点で、それらのVI特性曲線によって確定されるそれらのスタック電圧に基づいて負荷を共有することになる。いかなる所与の瞬間でも、各電池スタックにおける電流は、LFPスタック1801aにおける電流i
1およびNMCスタック1801bにおける電流i
2が、電池端子上の等しい電圧に対応するそれぞれのVI特性曲線に存在するようになる。VI特性曲線の位置の差が大きいほど、スタック1801a、1801b間の電流格差は大きくなる。
図20に示されている充電状態に応じた電池スタック電圧を参照すると、並列に結合されたLFP電池スタック1801aおよびNMC電池スタック1801bの例示的な放電から、一定の負荷点においては、初期には、NMC電池スタック1801bは、最初の約10%の放電深度については、より高い端子電圧を有することが分かり得る。残りの放電深度の間は、LFP電池スタック1801aは、より高い端子電圧を有し、放電中の電流占有率が比例的により大きくなる。
【0059】
図21は、100Wの定電力での
図19において構成されたシステム1800の例示的な放電のグラフを示している(可変インピーダンス回路網1802a、1802bの両方の中のダイオードスイッチは、すべて閉じられて、両方ともZ
var=0になり、それにより、電池スタック電圧は、出力負荷に直接結合されるようになる)。各電池スタック1801a、1801bは、44Vの開始電圧まで充電される。放電持続時間は、約1.8時間である。電池スタック1801a、1801bはそれぞれ、各電池スタックのVI特性曲線に基づいて放電し、電流を平衡させることができる。
図20の電圧曲線と一致して、負荷をエネルギー送達システム1800に結合すると、
図21は、電流i
1がLFPスタック1801aにおいて上昇し、電圧がNMCスタック1801bの電圧を下回って急速に降下することを示している。このことは、フル充電状態付近のLFP化学的性質の開回路電圧曲線が急勾配であること、および軽負荷VI曲線からより高い電流VI曲線に動作点がシフトすることに起因する。NMCスタック1801bは、間もなく、LFPスタック1801aに対してわずかに高い端子電圧を達成し、負荷電流のかなりの大部分を送達する。約0.18時間の放電の後、NMC電圧は、その減少したSOCに起因して低下し、そのスタック電圧は、LFPスタック1801aの範囲へと垂下し始める。放電のこの時点で、LFPスタック1801aは、より高い割合の電流を送達し始める。この時点から、LFPスタック1801aは、NMCスタック1801bよりも高い電圧および大きい電流を維持し、それにより、LFPスタック1801aは、NMCスタック1801bよりも速くSOCが降下し、最終的に消耗される。LFPスタック1801aのSOCは、約1.4時間の期間にわたって100%から約5%までゆっくりと動く。放電イベントにおけるこの時点で、LFPスタック1801aは、エネルギーがほぼ消耗され、それにより、その端子電圧は、NMC電池スタック1801bの端子電圧を下回って降下することになる。次いで、NMC電池スタック1801bが、放電の最後の数分間、その電流占有率をほぼ100%まで増加して、引き継ぐ。
【0060】
図22は、システム1800の処理ブロック1707~1708の動作の例示的な実施形態を示しており、その目的は、エネルギー放電をNMCスタック1801bからLFPスタック1801aへとバイアスして、放電の開始からLFPスタック1801aにおけるエネルギーが完全に消耗されるまで、LFP電流i
1がNMC電流i
2よりもつねに高くなるようにシステム1800を構成することである。この例示的な実施形態においては、LFPスタック1801aの可変インピーダンス回路網1802a内のダイオードスイッチは閉じられて、LFPスタック1801aについてZ
var=0が生成され、NMCスタック1801bについての可変インピーダンス回路網1802b内のダイオードスイッチは開いて、Z
varの最大値(Z
var=3*Vf)が生成される。
図23に示されているグラフから分かり得るように、LFPのVI特性曲線は、先の例(
図20参照)のままであるが、このとき、NMCのVI特性曲線は、3*Vfに等しい量だけ下方向にシフトしている。
【0061】
予想されるように、
図22に示されているエネルギー送達システム1800の構成に基づいて、NMCスタック1801bの電圧曲線は、Z
varの寄与に起因して、LFPスタック1801aよりも低くオフセットされることになる。シフトされた電圧曲線は、
図23に示されている。LFP電圧は、SOC範囲のほとんど全体にわたってNMC電圧よりも高く、その関連のZ
varによって生じるNMC電圧のこの下方向シフトは、放電のほとんどの間、LFPスタック1801aへの顕著な電流バイアスに変換される。
【0062】
図24は、100Wの定電力での
図22において構成されたシステム1800の例示的な放電のグラフを示している。各電池スタック1801a、1801bは、44Vの開始電圧まで充電される。放電持続時間は、約1.8時間である。この例においては、可変インピーダンス回路網1802a内のダイオードスイッチは、閉じられて、Z
var=0になり、LFP電池スタック電圧は、出力負荷V
o Positiveに直接結合され、一方、可変インピーダンス回路網1802b内のダイオードスイッチは、開いたままであり、それにより、NMCスタック電圧は、3*Vfだけ下方向にオフセットされることになる。電池スタック1801a、1801bのそれぞれの動作点は、エネルギー送達システム1800の出力電流が
図20および
図21の例よりもはるかに多くLFPスタック1801aに向かってバイアスされるように、それらのそれぞれのVI特性曲線上の点になる。
図24に示されている放電を
図21に示されている放電と対比させると、NMCのVI特性曲線の位置がより低いことに起因して、初期には、NMCスタック1801bは、負荷電流の約20%を送達することが分かり得る。システム動作点が、様々な電池スタックの変化するSOCに従ってVI特性曲線を介して遷移するにつれて、NMC電流(i
2)が、初期には、LFP電流(i
1)を上回って上昇して、その後短時間に突然反転する、電流の「反転(inversion)」は見られない。LFPスタック1801aは、LFPスタック1801aがほぼ消耗されるそのようなときまで、総放電電流のより高い比率を維持する。LFPスタック1801aのSOCは、約1.4時間の期間にわたって100%から約5%までゆっくりと遷移する。放電イベントにおけるこの時点で、LFP電池スタック1801aは、エネルギーがほぼ消耗されており、この場合などの低充電状態では、LFPのVI特性曲線は、はるかにより高いNMCのSOCにおいて、対応するNMCのVI特性曲線を下回って降下し、したがって、NMCスタック1801bが、放電終了まで総出力のその比率を着実に増加して、引き継ぐ。
【0063】
各可変インピーダンス回路網1802a、1802bを調整し、それにより、対応するVI特性曲線の位置も調整すると、特定の目的に合うように、および特定の性能特性を最適化するように、異なる電池スタック間の電流共有をシフトさせ、放電電流を一方のスタックまたは他方のスタックに向かってバイアスすることができる。たとえば、サイクル寿命が相対的に高い電池スタックに向かって放電電流をバイアスし、サイクル寿命が相対的に低いスタックから放電電流をバイアスすると、何百もの中程度の持続時間の放電イベントの場合には、より高いサイクル寿命の電池スタックは、他の電池スタックの何倍ものサイクルエネルギーを送達することになる。
【0064】
エネルギー貯蔵システムの総放電深度は、負荷持続時間によって決まることになる。電池スタックは、総貯蔵エネルギーの40%~70%が送達される部分放電しか完了しないことが多い。
図24における例で実証されるように、1.3時間続く部分放電の場合、高サイクル寿命のLFP電池スタック1801aは、そのエネルギーの95%を放電し(0.95サイクルを完了し)、NMCスタック1801bは、そのエネルギーのおよそ40%しか放電していない(0.40サイクルしか完了していない)。この同じ放電が1000回行われた場合、NMC電池スタック1801bが400サイクルしか完了していないのと比較して、LFP電池スタック1801aは、950サイクルを完了したと考えられることになる。
【0065】
本開示の様々な実施形態によれば、エネルギー送達システム1400および1800は、同様に構成され得、それによって、制御システム、AFE、燃料ゲージIC、およびセンス抵抗器は、それらが結合されるエネルギー貯蔵システムのタイプ、および可変インピーダンス回路網内で利用される構成のタイプに応じて、どちらかのシステムに行われ得る修正を除いて、実質的に同様の方式で動作する。
【0066】
デジタル通信リンク1407、1807は、制御システム1404、1804からホストシステム(図示せず)に特定のデータを送信するように構成され得る。1400、1800などのエネルギー送達システムは、コンピュータ、電動自転車またはスクータ、電気自動車などのより大型のシステムに埋め込むことができる。したがって、これらのより大型のシステムは、それらの埋め込まれたエネルギー送達システムに対するホストと見なされ、安全な動作のためにそれらのサポート用エネルギー送達システムの最新の状態に依存し得るモータ制御部、およびユーザインターフェースまたはオペレータインターフェースなどの他のシステムを有することがある。電気自動車の場合には、そのようなホストシステムは、電池温度が何らかの閾値を超えた場合、または利用可能なエネルギーが何らかの閾値よりも低くなった場合、モータの速度を低減し得るモータ制御システムとすることが可能になる。デジタル通信リンク1407、1807は、エネルギー送達システム1400、1800の状態についての即時記述(instantaneous description)を駆動機器へと上流に送達するように構成され得る。
【0067】
本開示の実施形態によれば、エネルギー送達システム1400、1800に関して開示されている燃料ゲージは、集積回路として実装されてよく、この集積回路は、MCU1404、1804とは別個のパッケージ内にあってよいが、その機能部はMCU1404、1804内に集積化可能でもある。燃料ゲージは、直接測定によってか、またはMCU1404、1804によって燃料ゲージに中継されるAFEからのデジタルデータのパケットとしてかのいずれかで、電池温度情報および電池セル電圧情報を受け取るように構成されていてもよく、および/または、電流センス抵抗器にわたって現れるアナログ電圧を測定し、これらの測定結果を連続的にデジタルドメインまたはアナログドメインのいずれかで数学的に統合するクーロンカウンタとして構成されたアナログ/デジタル変換器を含んでいてもよい。センス抵抗器にわたって発生するこの電圧は、電池セルスタックに流入する、または電池セルスタックから流出する電流を直接的に表現したものであり、ここでは、負の電圧は、電池セルスタックから流出する電流(放電)を表し、正の電圧は、電池セルスタックに流入する電流(充電)を表している。これらの電流を経時的に数学的に統合することによって、電池セルスタックに含まれている正味の電荷変化を決定することができ、いかなる所与のときでも正味の電池電荷変化と既知の開始SOCとを加算することによって、現在のSOCを決定することができる。また、燃料ゲージは、単に、正味の電荷変化と現在のSOCとの合計だけでなく、センス抵抗器内の瞬間電流、何らかの平均時間期間(数秒または数十秒など)にわたるセンス抵抗器内の平均電流、充電および放電サイクルの総数(電池セルスタックの使用開始日から始まる各方向に通された総電荷によって決定される)、および電池セルの抵抗などの他のパラメータを、個々のセルおよび/またはすべてのセルの合計ともに、コンピュータ計算するように、デジタルハードウェアおよびプログラミングされた命令を含むように構成されていてもよい。
【0068】
本開示の実施形態によれば、エネルギー送達システム1400および1800に関して開示されている電池スタックは、共通制御システムによって管理される逆流防止装置を含んでもよい。そのような逆流防止装置の機能は、一方の電池スタックからもう一方の電池スタックへのエネルギーの望ましくない伝達を防止することである。そのような逆流防止装置の動作については、PCT/US2017/068301に記載されている。
【0069】
本開示の代替の実施形態によれば、可変インピーダンス回路網は、いくつかの直列接続された抵抗器、次いで、並列に接続される関連のスイッチにより構成され得る。そのような可変インピーダンス回路網により構成されたエネルギー送達システムは、別個の電池スタックのVI特性曲線を同様の方式で操作することができる機能を提供し、電池スタックまたはエネルギー貯蔵システム間の放電電流をバイアスする際に同様の結果を達成することができる。
【0070】
本開示のさらなる別の実施形態においては、可変インピーダンス回路網は、直列に接続された抵抗器よりも電流依存の電圧降下に細かい分解能を提供するために、並列に接続された抵抗器により構成され得る。電圧段階において増加した分解能は、エネルギー送達システム1400、1800の出力電圧をさらに調節するために使用することができる。
【0071】
本開示の代替の実施形態によれば、可変インピーダンス回路網のうちのいずれかまたはすべてにおける切替え可能なダイオードのうちの1つまたは複数を、並列な切替え可能な抵抗器の回路網と置き換えてもよい。そのような構成下で、制御システムは、直列ダイオードを「粗い(coarse)」調整用に利用し、並列抵抗器を「細かい(fine)」調整として利用してもよい。それにもかかわらず、本開示の実施形態は、切替え可能なダイオード、切替え可能な抵抗器、またはその両方の組合せを含んでいる可変インピーダンス回路網のうちの1つまたは複数により実装されてもよい。
【0072】
本明細書に説明した本開示の諸実施形態は、無停電電源(「uninterruptable power supply、UPS」)システム、および体積エネルギー貯蔵量を最大化するのに高エネルギー密度が必要なエネルギー貯蔵システムにおいて利用することができる。また、これらには、特に反復的な深い放電条件においては、高いサイクル寿命が必要である。エネルギー貯蔵システムは、1日に1回、フル充電/放電サイクルを受けるように構成され得る。しかしながら、システムの放電深度は、負荷需要に基づいて変わることになる。負荷需要が低いと、エネルギー貯蔵システムによって送達される所要のエネルギーは低減することになり、高サイクルカウント用に設計されている電池スタックをまずは枯渇させ、電力密度用に設計されている電池スタックを枯渇させない。
【0073】
本明細書に説明した本開示の諸実施形態は、長いサイクル寿命、長い実行時間が優先され、さらには、過渡的な高い電流負荷への定期的需要が存在する、車両用途に利用可能である。
【0074】
当業者に理解されるように、本発明の態様(たとえば、制御システム1404、1804、および処理1700)は、システム、方法、および/またはプログラム製品として具現化され得る。したがって、本発明の態様(たとえば、制御システム1404、1804、AFE、燃料ゲージ、可変インピーダンス回路網)は、完全にハードウェアの実施形態、(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)完全にソフトウェアの実施形態、または本明細書においては全体的にすべて「回路(circuit)」、「回路機構(circuitry)」、「モジュール(module)」、または「システム(system)」と呼ぶことがあるソフトウェアの態様とハードウェアの態様とを組み合わせた実施形態の形態をとることができる。さらには、本発明の態様(たとえば、処理1700)は、コンピュータ可読プログラムコードが具現化さている1つまたは複数のコンピュータ可読記憶媒体において具現化されたプログラム製品の形態をとることもできる。(ただし、1つまたは複数のコンピュータ可読媒体の任意の組合せが利用されてもよい。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体であっても、またはコンピュータ可読記憶媒体であってもよい)。
【0075】
また、回路ブロック図の各ブロックおよび/または処理1700において表される機能、ならびに回路ブロック図におけるブロックの組合せおよび/または処理1700において表される機能は、指定された機能もしくは行為を行う専用のハードウェアベースのシステム、または専用のハードウェアとコンピュータ命令との組合せによって実装され得ることも留意されるであろう。たとえば、モジュール(たとえば、制御システム1404、1804、AFE、燃料ゲージ、可変インピーダンス回路網)は、カスタムのVLSI回路またはゲートアレイ、論理チップなどの既製の半導体、トランジスタ、コントローラ、または他の個別の構成要素を備えるハードウェア回路として実装されてもよい。また、モジュール(たとえば、制御システム1404、1804、AFE、燃料ゲージ、可変インピーダンス回路網)は、フィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブルアレイ論理部、またはプログラマブル論理装置などのプログラマブルハードウェア装置において実装されてもよい。
【0076】
本明細書において使用される見出しは、構成上の目的にすぎず、本明細書の範囲を限定するために使用すべきことを意味するものではない。本出願全体を通して使用されるとき、「~してもよい(may)」という単語は、強制的な意味(すなわち、~しなくてはならない(must)の意味)ではなく、許容的な意味(すなわち、~する可能性を有する(having the potential to)の意味)で使用されている。同様に、「include(含む)」、「including」、「includes」、「contain(含んでいる)」、「containing」、および「contains」という単語は、includingを意味するが、これに限定するものではない。
【0077】
様々なユニット、回路、回路機構、または他の構成要素(たとえば、制御システム1404、1804、AFE、燃料ゲージ、可変インピーダンス回路網)について、タスクまたは複数のタスクを行うように「構成されている(configured)」と説明することがある。そのような文脈においては、「~するように構成されている(configured to)」は、動作中にそのタスクまたはそれらの複数のタスクを行うこと「の能力がある回路機構を有する」ことを全体的に意味する構造を広範囲に述べたものである。したがって、ユニット/回路/構成要素は、ユニット/回路/構成要素が、現在、オンになっていない場合でも、タスクを行うように構成することができる。概して、「~するように構成されている」に対応する構造を形成する回路機構は、ハードウェア回路および/またはソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)を含んでもよい。同様に、様々なユニット/回路/構成要素について、説明の便宜上、タスクまたは複数のタスクを行うと説明することがある。そのような説明は、「~するように構成されている」という語句を含むと解釈すべきである。1つまたは複数のタスクを行うように構成されているユニット/回路/構成要素を列挙することは、そのユニット/回路/構成要素について35 U.S.C. §112、段落6の解釈を引き合いに出さないことを明示的に意図している。
【0078】
別段の定めがない限り、本明細書において使用されるすべての技術的および科学的用語は、現在、開示されている主題が属する当技術分野の技術者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0079】
本明細書において使用されるとき、「およそ(about)」および「約(approximately)」という用語は、数値範囲の端点に対して、所与の値が端点を「少し上回っても(a little above)」または「少し下回っても(a little below)」よいことを定めることによって、柔軟性をもたらすように使用される。
【0080】
本明細書における説明においては、フローチャート式の技法について、一連の逐次アクションで説明する場合がある。アクションの順序、およびアクションを行うパーティは、教示の範囲から逸脱することなく自由に変更してもよい。アクションは、いくつかのやり方で、追加、削除、または改変しもよい。同様に、アクションは、順番を並べ替えても、またはループしてもよい。さらには、処理、方法、またはアルゴリズムなどは、逐次的な順番で説明される場合があるが、そのような処理、方法、アルゴリズム、またはそれらの任意の組合せは、代わりの順番で行われるように動作可能であってもよい。さらには、処理、方法、またはアルゴリズムの中でのいくつかのアクションが、少なくともある時点の間、同時に行われてもよい(たとえば、並行して行われるアクションが、全体的に、部分的に、またはそれらの任意の組合せで行うこともできる)。
【0081】
それとは反対に明示されていない限り、「または(or)」は、包括的orを示し、排他的orを示さない。たとえば、条件AまたはBは、次の、Aが真(または存在する)およびBが偽(または存在しない)、Aが偽(または存在しない)およびBが真(または存在する)、AとBの両方が真(または存在する)、のうちのいずれか1つによって満たされる。
【0082】
本明細書において使用されるとき、「および/または(and/or)」という用語、および2つの単語間の「/」という文字の使用は、実体をリスト化する文脈で使用される場合、実体が単独でまたは組合せで存在することを示す。したがって、たとえば、「A、B、C、および/またはD(A, B, C, and/or D)」という語句は、A、B、C、およびDを個々に含むだけでなく、Aと、Bと、Cと、Dとの任意のならびにすべての組合せおよび副組合せも含む。
【0083】
また、本明細書において説明する要素および資源について説明するために、「a」または「an」の使用が用いられている。これは、単に便宜上、本発明の範囲の一般的な意味を与えるためにのみ行われている。この記載は、別の形で意味することが明らかでない限り、1つ、または少なくとも1つを含むように読むべきであり、単数形は、複数形も含み、またはその逆も同様である。たとえば、本明細書において単一の装置について説明する場合、単一の装置の代わりに複数の装置が使用されてもよい。同様に、1つよりも多い装置について本明細書において説明する場合、単一の装置をその1つの装置の代わりに用いてもよい。
【0084】
本明細書において説明していない範囲で、特定の材料、処理行為、および回路に関する多くの詳細は、従来のものであり、コンピューティング、エレクトロニクス、およびソフトウェアの技術分野内での教本および他の情報源に見出すことができる。
【符号の説明】
【0085】
600 システム
602 制御システム
610a~610c 切替え可能なダイオード回路
621a~621c 制御信号
702 制御システム
710a~710d スイッチ
750a~750d 切替え可能な抵抗性素子、抵抗器
1300 システム
1301 電池スタック
1302 可変インピーダンス回路網
1303 アナログフロントエンド測定装置、AFE
1304 制御システム、マイクロコントローラ、MCU
1305 センス抵抗器(Rsense)
1306 燃料ゲージ集積回路、IC
1307 通信リンクまたはバス
1400 エネルギー送達システム
1401a 第1の電池セルスタック
1401b 第2の電池セルスタック
1402a、1402b 可変インピーダンス回路網
1403a、1403b AFE
1404 共通制御システム、マイクロコントローラ、MCU
1405a、1405b センス抵抗器(Rsense)
1406a、1406b 燃料ゲージ集積回路、IC
1700 処理
1800 エネルギー送達システム
1801a 第1の電池セルスタック
1801b 第2の電池セルスタック
1802a、1802b 可変インピーダンス回路網
1803a、1803b アナログフロントエンド測定装置、AFE
1804 共通制御システム、マイクロコントローラ、MCU
1805a、1805b センス抵抗器(Rsense)
1806a、1806b 燃料ゲージ集積回路、IC
1807 通信リンクまたはバス
【手続補正書】
【提出日】2025-07-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のエネルギー貯蔵システムと、
第2のエネルギー貯蔵システムと、
前記第1のエネルギー貯蔵システムと出力端子との間に結合された第1の可変インピーダンス回路網であって、第1の調整可能なインピーダンスを有する、第1の可変インピーダンス回路網と、
前記第2のエネルギー貯蔵システムと前記出力端子との間に結合された第2の可変インピーダンス回路網であって、第2の調整可能なインピーダンスを有する、第2の可変インピーダンス回路網と、
(1)前記第1の調整可能なインピーダンスを調整して、前記第1のエネルギー貯蔵システムによって前記出力端子に送達される第1の電流のレベルを変更するように前記第1の可変インピーダンス回路網に信号伝達すること、および(2)前記第2の調整可能なインピーダンスを調整して、前記第2のエネルギー貯蔵システムによって前記出力端子に送達される第2の電流のレベルを変更するように前記第2の可変インピーダンス回路網に信号伝達することを選択的に行うように構成された制御システムと
を備える、エネルギー送達システム。
【外国語明細書】