(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025142267
(43)【公開日】2025-09-30
(54)【発明の名称】ズームレンズおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 15/16 20060101AFI20250919BHJP
G02B 15/12 20060101ALI20250919BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20250919BHJP
G02B 15/20 20060101ALN20250919BHJP
【FI】
G02B15/16
G02B15/12
G02B13/18
G02B15/20
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025125311
(22)【出願日】2025-07-28
(62)【分割の表示】P 2021093426の分割
【原出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】大出 隆史
(57)【要約】
【課題】エクステンダー群を挿入可能であって、小型で高性能なズームレンズを提供する。
【解決手段】物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、負の屈折力の第4レンズ群、正の屈折力の第5レンズ群を有し、ズーミングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化するズームレンズであって、光路に挿抜されることでズームレンズの焦点距離を変化させるエクステンダー群を更に有し、第1レンズ群の焦点距離f1、ズームレンズの望遠端における焦点距離ft、望遠端における無限遠合焦時の最も像側の最終レンズ群から最終レンズ群に隣接するレンズ群までの光軸上での距離D、望遠端における無限遠合焦時の最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上での距離TL、第3レンズ群の焦点距離f3、第4レンズの焦点距離f4は、所定の条件式を満足する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、負の屈折力の第4レンズ群、エクステンダー群、正の屈折力の第5レンズ群からなり、ズーミングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化するズームレンズであって、
前記エクステンダー群が光路に挿抜されることで前記ズームレンズの焦点距離は変化し、
前記第2レンズ群は、少なくとも4枚のレンズを有し、
前記エクステンダー群は、接合レンズを有し、
前記第1レンズ群の焦点距離をf1、前記ズームレンズの望遠端における焦点距離をft、望遠端における無限遠合焦時の前記第5レンズ群から前記第4レンズ群までの光軸上での距離をD、望遠端における無限遠合焦時の最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上での距離をTL、前記第3レンズ群の焦点距離をf3、前記第4レンズ群の焦点距離をf4とするとき、
0.60<f1/ft<1.50
-3.90<f1/f2<-1.00
0.10<D/TL<0.30
-5.00<f3/f4<-1.00
なる条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
ズーミングに際して前記第5レンズ群は不動であることを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
-0.50<f4/ft<-0.05
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記第5レンズ群は、少なくとも一枚の正レンズと少なくとも一枚の負レンズからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記第5レンズ群は、正レンズ及び負レンズが接合されてなる接合レンズと、該接合レンズの像側に配置された負レンズとからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項6】
0.10<f5/ft<2.00
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項7】
フォーカシングに際して前記第4レンズ群が移動することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項8】
広角端から望遠端へのズーミングに際して、前記第2レンズ群が像側へ移動することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のズームレンズと、該ズームレンズによって形成された像を受光する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズおよび撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には、望遠端側の焦点距離を伸ばすための倍率変換光学群(エクステンダー群)を挿抜可能な光学系(望遠レンズ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5409841号公報
【特許文献2】特開2019-120771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2に開示された光学系では、小型化を目的として絞りよりも像側にエクステンダーが設けられている。この場合、絞りよりも像側のレンズ群間隔を広く確保する必要があるため、フォーカスレンズ群を絞りよりも物体側に配置する必要がある。フォーカスレンズ群を絞りよりも物体側に配置すると、フォーカスレンズ群の径が望遠端におけるFno光束径により決定されるために大径化して重くなり、高速駆動を実現できない。
【0005】
そこで本発明は、エクステンダー群を挿入可能であって、小型で高性能なズームレンズおよび撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としてのズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、負の屈折力の第4レンズ群、エクステンダー群、正の屈折力の第5レンズ群からなり、ズーミングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化するズームレンズであって、前記エクステンダー群が光路に挿抜されることで前記ズームレンズの焦点距離は変化し、前記第2レンズ群は、少なくとも4枚のレンズを有し、前記エクステンダー群は、接合レンズを有し、前記第1レンズ群において最も物体側に配置されたレンズは、正の屈折力を有し、前記第1レンズ群の焦点距離f1、前記ズームレンズの望遠端における焦点距離ft、望遠端における無限遠合焦時の前記第5レンズ群から前記第4レンズ群までの光軸上での距離D、望遠端における無限遠合焦時の最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上での距離TL、前記第3レンズ群の焦点距離f3、前記第4レンズ群の焦点距離f4は、所定の条件式を満足する。
【0007】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エクステンダー群を挿入可能であって、小型で高性能なズームレンズおよび撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施例1における(a)広角端、(b)中間ズーム位置、(c)望遠橋での収差図である。
【
図4】実施例2における(a)広角端、(b)中間ズーム位置、(c)望遠橋での収差図である。
【
図6】実施例3における(a)広角端、(b)中間ズーム位置、(c)望遠橋での収差図である。
【
図8】実施例4における(a)広角端、(b)中間ズーム位置、(c)望遠橋での収差図である。
【
図10】実施例5における(a)広角端、(b)中間ズーム位置、(c)望遠橋での収差図である。
【
図11】実施例6における広角端での断面図である。
【
図12】実施例6における(a)広角端、(b)中間ズーム位置、(c)望遠橋での収差図である。
【
図13】実施例1-2における広角端での断面図である。
【
図14】実施例3-2における広角端での断面図である。
【
図15】実施例4-2における広角端での断面図である。
【
図16】実施例5-2における広角端での断面図である。
【
図17】実施例6-2における広角端での断面図である。
【
図18】各実施例における光学系を備えた撮像装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1、
図3、
図5、
図7、
図9、および
図11はそれぞれ、実施例1~6の光学系(ズームレンズ)1a~1fの広角端での無限遠合焦時の断面図である。各実施例の光学系は、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、放送用カメラ、銀塩フィルム用カメラ、監視用カメラ等の撮像装置に用いられる撮像光学系である。
【0012】
各断面図において、左方が物体側(拡大共役面側)で、右方が像側(縮小共役面側)である。各実施例の光学系は、物体側か像側へ順に、第1レンズ群B1、第2レンズ群B2、第3レンズ群B3、第4レンズ群B4、および第5レンズ群B5により構成されている。各実施例において、レンズ群とは、変倍(ズーミング)に際して一体的に移動する又は不動のレンズのまとまりである。各実施例の光学系では、広角端から望遠端へのズーミングに際して、隣り合うレンズ群間の間隔が変化する。広角端と望遠端は、ズーミングに際して移動するレンズ群が、機構上、光軸OAに沿った方向(光軸方向)に移動可能な範囲の両端に位置したときのズーム状態である。なお、レンズ群は1枚のレンズにより構成されていてもよいし、複数枚のレンズにより構成されていてもよい。また、レンズ群は絞り(開口絞り)SPを含んでいてもよい。
【0013】
絞りSPは、開放Fナンバー(Fno)の光束を決定(制限)する。IPは像面(縮小共役面)であり、各実施例の光学系をデジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラ用の撮像光学系として用いる際には、像面IPにCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子(光電変換素子)の撮像面が配置される。各実施例の光学系を銀塩フィルム用カメラ用の撮像光学系として用いる際には、像面IPにはフィルムの感光面が配置される。
【0014】
各実施例の光学系では、広角端から望遠端へのズーミングに際して、各断面図に実線矢印で示されるように各レンズ群を移動させる。また、無限遠物体から最至近距離物体へのフォーカシングに際して、矢印focusで示されるように第4レンズ群(フォーカスレンズ群)B4を移動させる。
【0015】
図2、
図4、
図6、
図8、
図10、および
図12はそれぞれ、実施例1~6の光学系1a~1fの縦収差図である。各収差図において、(A)は広角端かつ無限遠合焦時の縦収差図、(B)は中間ズーム位置かつ無限遠合焦時の縦収差図、(B)は望遠端かつ無限遠合焦時の縦収差図をそれぞれ示す。
【0016】
球面収差図において、FnoはFナンバーであり、球面収差図にはd線(波長587.6nm)、g線(波長435.8nm)、C線(波長656.3nm)、F線(486.1nm)のそれぞれに対する球面収差量を示す。非点収差図において、Sはサジタル像面における非点収差量、Mはメリディオナル像面における非点収差量を示す。歪曲収差図において、d線に対する歪曲収差量を示す。色収差図において、g線、C線、F線のそれぞれにおける色収差量を示す。ωは半画角(度)である。
【0017】
次に、各実施例の光学系(ズームレンズ)における特徴的な構成について説明する。各実施例の光学系は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群B1、負の屈折力の第2レンズ群B2、正の屈折力の第3レンズ群B3、負の屈折力の第4レンズ群B4、正の屈折力の第5レンズ群B5を有する。また、ズーミングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する。また各実施例の光学系は、光路に挿抜されることでズームレンズの焦点距離を変化させる倍率変換光学群(エクステンダー群EXT)を有する。
【0018】
各実施例において、第1レンズ群B1は、以下の条件式(1)を満足する。
【0019】
0.60<f1/ft<1.50 ・・・(1)
条件式(1)において、f1は第1レンズ群B1の焦点距離、ftは光学系の望遠端における焦点距離である。条件式(1)の上限値を上回ると、第1レンズ群B1のパワー(屈折力)が弱くなってしまう。その結果、望遠端における光学系の小型化を実現することができないか、または望遠端での焦点距離を長焦点化することができない。一方、条件式(1)の下限値を下回ると、第1レンズ群B1のパワーが強くなりすぎる。これは、望遠端の長焦点距離化に対しては有効であるが、その際にパワーが強くなりすぎることで望遠端における球面収差発生量の増大、変倍領域全域における歪曲収差および倍率色収差の増大を引き起こす。
【0020】
また各実施例において、第1レンズ群B1および第2レンズ群B2は、以下の条件式(2)を満足する。
【0021】
-3.90<f1/f2<-0.10 ・・・(2)
条件式(2)において、f2は第2レンズ群B2の焦点距離である。条件式(2)の上限値を上回ると、第2レンズ群B2のパワーが弱くなりすぎ、所定の変倍量を達成するための移動量が増加して光学系が長くなる。一方、条件式(2)の下限値を下回ると、第2レンズ群B2のパワーが強くなりすぎ、所定の変倍量を達成するための移動量は短くできるが広角端における倍率色収差を抑制できないことや、望遠端における球面収差および軸上色収差を抑制できない。
【0022】
また各実施例の光学系は、以下の条件式(3)、(4)を満足する。
【0023】
0.10<D/TL<0.30 ・・・(3)
-5.00<f3/f4<-1.00 ・・・(4)
条件式(3)において、Dは望遠端における無限遠合焦時の最も像側の最終レンズ群(第5レンズ群B5)から最終レンズ群に隣接するレンズ群(第4レンズ群B4)までの光軸上での距離である。TLは望遠端における無限遠合焦時の最も物体側のレンズ面から像面IPまでの光軸上での距離である。条件式(4)において、f3は第3レンズ群B3の焦点距離、f4は第4レンズ群B4の焦点距離である。
【0024】
条件式(3)の上限値を上回ると、エクステンダー群を内蔵する空気間隔を広くとりすぎることになる。この場合、主な結像機能を有する第1レンズ群B1から第4レンズ群B4までの距離が短くなりすぎ、各レンズ群のパワーを強くする必要があり、諸収差をとりにくくなるか、諸収差を良好に抑制するために各レンズ群のレンズ枚数が多くなりコストアップしてしまう。
【0025】
一方、条件式(3)の下限値を下回ると、エクステンダー群を内蔵する空気間隔を狭くしすぎることになり、エクステンダー群に要求されるサイズが小さくなりすぎ、エクステンダー群の収差を抑制することができない。または、エクステンダー群の収差を良好に抑制するために非球面レンズを使用する必要がでてコストアップするという。
【0026】
条件式(4)の上限値を上回ると、第4レンズ群B4に対して第3レンズ群B3のパワーが強くなりすぎる。第3レンズ群B3のパワーが強いと、後続の第4レンズ群B4に入射する光束を圧縮でき第4レンズ群B4を軽量化できるという利点がある。しかし、条件式(4)の上限値を超えると、第3レンズ群B3のパワーが強くなりすぎることで、広角端における球面収差および軸上色収差が大きくなりすぎる。また、第3レンズ群B3でこれを抑制しようとする場合、レンズ枚数が多く必要となり、光学系の重量が増加することやコストアップとなる。
【0027】
一方、条件式(4)の下限値を下回ると、第4レンズ群B4に対して第3レンズ群B3のパワーが弱くなりすぎる。第3レンズ群B3のパワーが弱くなりすぎると、後続の第4レンズ群B4に入射する光束を圧縮できないため、フォーカスレンズ群としての第4レンズ群B4が大径化する。第4レンズ群B4の大径化に伴い、重量が増加し高速駆動ができなくなる。また、光束を集光しにくくなることにより、光学系が長くなる。これを防ぐために最終レンズ群としての第5レンズ群B5にパワーをつけて集光しようとする場合、軸外光線の光線角度も急峻に変化させてしまうことから、倍率色収差が増大してしまう。
【0028】
各実施例の光学系において、最終レンズ群(第5レンズ群B5)は固定されている(ズーミングに際して不動である)。これは、最終レンズ群の直前の空間に内蔵エクステンダー挿抜機構を設ける場合、内蔵エクステンダーをまたいで同一カムで群を構成することが困難であるためである。
【0029】
好ましくは、各実施例の光学系は、以下の条件式(5)を満足する。
【0030】
-0.50<f4/ft<-0.05 ・・・(5)
条件式(5)の下限値を下回ると、第4レンズ群B4のパワーが弱くなりすぎる。フォーカスレンズ群である第4レンズ群B4のパワーが弱くなると、合焦時の移動距離を大きく確保する必要があることから、光学系が大型化するか、または合焦範囲が狭くなる。一方、条件式(5)の上限値を上回ると、第4レンズ群B4のパワーが強くなりすぎる。第4レンズ群B4のパワーが強くなると、合焦時の群移動距離を短くできるという利点があるが、合焦時の収差変動を抑制するために第4レンズ群B4の枚数を多くする必要があり、第4レンズ群B4の重量が増加する。
【0031】
また好ましくは、各実施例の光学系は、以下の条件式(6)を満足する。
【0032】
0.10<f5/ft<2.00 ・・・(6)
条件式(6)において、f5は第5レンズ群B5の焦点距離である。条件式(6)の上限値を上回ると、第5レンズ群B5のパワーが弱くなりすぎる。第5レンズ群B5は、第4レンズ群B4から射出される光束をセンサ面上(像面IP上)に、像面サイズを合わせつつ結像させる役割を持ち、さらに第1レンズ群B1で抑制しきれなかった歪曲収差を打ち消す機能も有する。第5レンズ群B5のパワーが弱くなりすぎると、歪曲収差を打ち消せなくなる。一方、条件式(6)の下限値を下回ると、第5レンズ群B5のパワーが強くなりすぎる。第5レンズ群B5のパワーが強くなりすぎると、発生する歪曲量が大きくなり、第1レンズ群B1で発生する歪曲収差を打ち消しても、第5レンズ群B5内で歪曲収差が発生してしまう。
【0033】
より好ましくは、条件式(1)~(6)の数値範囲は、以下の条件式(1a)~(6b)を満足するように設定される。
【0034】
0.61<f1/ft<1.20 ・・・(1a)
-3.80<f1/f2<-1.00 ・・・(2a)
0.12<D/TL<0.25 ・・・(3a)
-3.50<f3/f4<-1.03 ・・・(4a)
-0.30<f4/ft<-0.06 ・・・(5a)
0.15<f5/ft<1.00 ・・・(6a)
更に好ましくは、条件式(1)~(6)の数値範囲は、以下の条件式(1b)~(6b)を満足するように設定される。
【0035】
0.62<f1/ft<1.00 ・・・(1b)
-3.70<f1/f2<-2.00 ・・・(2b)
0.15<D/TL<0.20 ・・・(3b)
-2.00<f3/f4<-1.06 ・・・(4b)
-0.20<f4/ft<-0.07 ・・・(5b)
0.20<f5/ft<0.80 ・・・(6b)
次に、各実施例の光学系について説明する。
【実施例0036】
まず、
図1を参照して、実施例1における光学系1aについて説明する。本実施例の光学系1aは、望遠ズームレンズである。
図1に示されるように、光学系1aは、物体側から像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群B1、負の屈折力の第2レンズ群B2、正の屈折力の第3レンズ群B3、負の屈折力の第4レンズ群B4、および正の屈折力の第5レンズ群B5から構成される。第4レンズ群B4と第5レンズ群B5との間には、倍率変換光学群(エクステンダー群)を挿抜可能な空間が設けられている。ズーミングに際して、第2レンズ群B2および第4レンズ群B4が移動する。主に第2レンズ群B2が変倍機能を有し、第4レンズ群B4は変倍時に移動する合焦位置を補正する機能を有する。
【0037】
第1レンズ群B1は、望遠端での光学系の全系の圧縮に寄与している。第1レンズ群B1は、ズーミングに際して固定され(不動であり)、防塵防滴性能を高めるように構成されており、悪天候における堅牢性が高まっている。第1レンズ群B1は、正の屈折力の第1レンズ、正の屈折力の第2レンズ、正の屈折力の第3レンズ、および負の屈折力の第4レンズからなる。第3レンズおよび第4レンズは、接合レンズである。第1レンズおよび第2レンズに強い集光作用を持たせ、更に第2レンズと第3レンズとの空気間隔を広げることで、第3レンズを小径化している。第1レンズおよび第2レンズの集光レンズを一枚に削減しようとすると、望遠端における球面収差が大きくなってしまう。また、第3レンズと第4レンズとの接合レンズは、合成焦点距離が負パワーであり、望遠端において第1レンズと第2レンズで発生した球面収差を打ち消す機能を有し、全ズーム領域において第1レンズと第2レンズとで発生した歪曲収差を打ち消す機能も有する。
【0038】
第2レンズ群B2は、広角端から望遠端にかけて物体側(拡大共役方向)から像側(縮小共役方向)へ移動することで、主な結像性能を広角端では第3レンズ群B3、望遠端では第1レンズ群B1に持たせるようにしている。第2レンズ群B2のレンズ径は広角端の軸外マージナル光線、もしくは望遠端における軸上マージナル光線によって決定される。その際、広角端の軸外マージナル光線は、第1レンズ群B1で十分収束されているため、第2レンズ群B2の大径化は引き起こさない。望遠端における軸上マージナル光線は、第2レンズ群B2が縮小共役面方向に移動することにより十分収束した状態となり、第2レンズ群B2の大径化は引き起こさない。
【0039】
しかしながら、第2レンズ群B2が正の屈折力の場合、広角端から望遠端へのズーミングに際して縮小共役面側から拡大共役面側に移動する。この際、第2レンズ群B2のレンズ径は望遠端における軸上マージナル光線高さにより決定されるために大径化し、高重量化してしまう。また、第2レンズ群B2内における第4レンズとして、正の屈折力の凸レンズが一枚配されている。これにより、負の屈折力の第2レンズ群B2で像面を揃えやすくなる。また、第2レンズ群B2内において負の屈折力のレンズは3枚配されている。これにより、広角端における軸外光線を緩やかに曲げることで諸収差を抑制することができる。なお第2レンズ群B2は、少なくとも4枚のレンズを有することが好ましい。
【0040】
第3レンズ群B3は、広角端での光学系の全系の圧縮に寄与しており。軸上色収差を抑制するために低分散凸レンズが用いられている。本実施例では、第3レンズ群B3はズーミングに際して移動しないが、ズーミングに際して移動することで収差変動を抑制してもよい。
【0041】
第4レンズ群は、ズーミングに際して移動する変倍レンズ群であり、合焦に際して無限遠から至近端にかけて拡大共役方向から縮小共役方向へ移動し光束をセンサ面上に結像させるフォーカスレンズ群でもある。本実施例では、フォーカスレンズ群には接合レンズを配しており、レンズ群のパワーを強くしても色収差を抑制しやすい構成となっている。
【0042】
第5レンズ群B5は、第4レンズ群B4から射出された光を撮像センサ面上に結像させるフィールドレンズである。本実施例では、最も縮小共役面側に負レンズを配すことで、撮像センサへの入射角条件を満足することが可能である。また、第5レンズ群B5内において負レンズとその直前に配される正レンズとの空気間隔を空けることで、正レンズに入射される軸外光線高さを高くし負レンズで発生する歪曲収差をキャンセルしている。この際、正レンズを接合レンズとし、空気間で色毎に光線が分離しないようにしている。すなわち最終レンズ群(第5レンズ群B5)は、正レンズ及び負レンズが接合されてなる接合レンズと、接合レンズの像側に配置された負レンズとからなる。また、第5レンズ群B5は、第1レンズ群B1で抑制しきれない歪曲収差を打ち消す役割も担っている。
【0043】
図13は、
図1の光学系1aにエクステンダー群EXTを挿入した状態における、広角端での無限遠合焦時の断面図である。
図1の光学系1aの第4レンズ群B4と第5レンズ群B5との間にエクステンダー群EXTを挿入することにより、焦点距離は約1.4倍になり、より望遠の光学系を実現することができる。