(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025142471
(43)【公開日】2025-10-01
(54)【発明の名称】半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
H10D 89/00 20250101AFI20250924BHJP
H05K 10/00 20060101ALN20250924BHJP
【FI】
H01L27/04 F
H01L27/04 U
H05K10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024041836
(22)【出願日】2024-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】皆川 拓也
【テーマコード(参考)】
5F038
【Fターム(参考)】
5F038DF04
5F038DF05
5F038DF11
5F038DF20
(57)【要約】
【課題】信号の劣化を抑制できる半導体集積回路を提供する。
【解決手段】半導体集積回路は、複数の回路ブロックと、単一の経路から分岐しそれぞれが前記複数の回路ブロックのうち少なくとも1つを通過する複数の分岐経路と、前記複数の回路ブロックの各々に印加される電源電圧の変動を検出する検出回路と、前記複数の分岐経路のうち、前記電源電圧の変動が最も小さい前記回路ブロックを通過する前記分岐経路を選択する制御回路と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回路ブロックと、
単一の経路から分岐しそれぞれが前記複数の回路ブロックのうち少なくとも1つを通過する複数の分岐経路と、
前記複数の回路ブロックの各々に印加される電源電圧の変動を検出する検出回路と、
前記複数の分岐経路のうち、前記電源電圧の変動が最も小さい前記回路ブロックを通過する前記分岐経路を選択する制御回路と、を備えることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
前記複数の分岐経路の各々に設けられ、前記選択された分岐経路以外の他の前記分岐経路を遮断するゲーティング回路を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記複数の分岐経路が分岐する分岐部と前記回路ブロックとの間に前記複数のゲーティング回路が位置することを特徴とする請求項2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記ゲーティング回路は、前記他の分岐経路を通るクロック信号を遮断することを特徴とする請求項2に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記ゲーティング回路は、
前記クロック信号に応じてイネーブル信号をラッチするラッチ回路と、
前記ラッチ回路から出力される信号と前記クロック信号との論理積を出力するAND回路と、を有することを特徴とする請求項4に記載の半導体集積回路。
【請求項6】
1つの前記分岐経路は複数の前記回路ブロックを通過し、
前記制御回路は、前記1つの分岐経路における複数の前記回路ブロックのうち、前記電源電圧の変動が最も大きい前記回路ブロックの前記電源電圧の変動に基づいて前記分岐経路を選択することを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項7】
前記電源電圧の変動は、前記電源電圧の降下量であることを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項8】
前記制御回路は、前記選択された分岐経路が通過する前記回路ブロックの前記電源電圧が所定の閾値電圧以上である場合、前記選択された分岐経路の選択を継続し、前記選択された分岐経路が通過する前記回路ブロックの前記電源電圧が前記閾値電圧より小さい場合、前記選択中の分岐経路以外の他の前記分岐経路を選択する処理を実行することを特徴とする請求項7に記載の半導体集積回路。
【請求項9】
前記閾値電圧は変更可能であることを特徴とする請求項8に記載の半導体集積回路。
【請求項10】
前記電源電圧を印加する電源が前記回路ブロックごとに異なることを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項11】
前記検出回路は、第1の入力端子及び第2の入力端子を有するコンパレータと、参照電圧を切り換え可能な切換回路と、を含み、
前記第1の入力端子には、前記参照電圧が印加され、
前記第2の入力端子には、前記電源電圧が印加される請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項12】
前記検出回路及び前記制御回路は、連続して動作することを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項13】
前記検出回路及び前記制御回路は、所定期間ごとに動作することを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の半導体集積回路を含む光電変換装置と、
前記光電変換装置に対応した光学装置、
前記光電変換装置を制御する制御装置、
前記光電変換装置から出力された信号を処理する処理装置、
前記光電変換装置で得られた情報を表示する表示装置、
前記光電変換装置で得られた情報を記憶する記憶装置、及び
前記光電変換装置で得られた情報に基づいて動作する機械装置、の少なくともいずれかと、を備えることを特徴とする機器。
【請求項15】
前記処理装置は、前記光電変換装置から被写体までの距離情報を取得することを特徴とする請求項14に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トランジスタ等の半導体素子を基板に集積して形成した半導体集積回路がある。このような半導体集積回路として、例えば、特許文献1には、温度や電圧の変化によって駆動能力が変化することを抑制する半導体装置が記載されている。この半導体装置は、温度又は電圧に応動して所定信号を出力する検出回路と、夫々に異なる特性を有する複数の出力回路と、検出回路の出力信号に応じて出力回路を切換えるための信号を生成する切換回路とを備える。
【0003】
特許文献2には、半導体チップ製造後における不所望な電圧降下に起因する誤動作を回避することができる半導体集積回路が記載されている。この半導体集積回路は、複数の回路ブロックと、複数の回路ブロックに電力を供給する第1及び第2電源配線と、第1電源配線からの電力供給を第2電源配線からの電力供給に変更可能な切り換え手段とを備える。そして、半導体集積回路は、回路ブロックに電圧降下が生じている場合、第1電源配線からの電力供給を第2電源配線からの電力供給に変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-249739号公報
【特許文献2】特許第4364556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の半導体装置及び特許文献2の半導体集積回路において、電源の電圧変動によって電源ノイズが発生した際に、この電源ノイズが信号を劣化させるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、信号の劣化を抑制できる半導体集積回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書の一開示によれば、複数の回路ブロックと、単一の経路から分岐しそれぞれが前記複数の回路ブロックのうち少なくとも1つを通過する複数の分岐経路と、前記複数の回路ブロックの各々に印加される電源電圧の変動を検出する検出回路と、前記複数の分岐経路のうち、前記電源電圧の変動が最も小さい前記回路ブロックを通過する前記分岐経路を選択する制御回路と、を備える半導体集積回路が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、信号の劣化を抑制できる半導体集積回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る半導体集積回路のブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係る検出回路の回路図である。
【
図3】第1実施形態に係る各回路ブロックに印加される電圧値の一例を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る半導体集積回路の動作を示すフローチャートである。
【
図5】第2実施形態に係る半導体集積回路のブロック図である。
【
図6】第2実施形態に係るゲーティング回路の回路図である。
【
図7】第2実施形態に係る半導体集積回路の動作を示すフローチャートである。
【
図8】第3実施形態に係る機器のブロック図である。
【
図9】第4実施形態に係る機器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る半導体集積回路のブロック図である。
【0011】
図1において、半導体集積回路1は、基板10と、複数の回路ブロックB1~B5と、経路Lと、信号出力回路20と、複数の検出回路30と、制御回路40と、切換回路50と、信号入力回路60と、電源81~83とを備える。
【0012】
基板10は、好適にはシリコンなどの半導体材料から構成されるが、ガラスなどの絶縁材料から構成されてもよい。信号出力回路20はクロック信号、映像信号などのデジタル信号を出力可能であるが、アナログ信号を出力してもよい。
【0013】
回路ブロックB1~B5は、信号出力回路20から出力された信号を処理する回路であり、それぞれが様々な半導体素子から構成され得る。回路ブロックB1~B5は回路機能毎に区分され、基板10上に配置されている。回路ブロックB1~B3はさらに回路ブロック群B0として纏められて配置されている。回路ブロック群B0、回路ブロックB4、B5のそれぞれには、独立した電源から電源配線を介して電源電圧が供給される。回路ブロック群B0の回路ブロックB1~B3には電源81から電力が供給され、回路ブロックB4には電源82から電力が供給され、回路ブロックB5には電源83から電力が供給される。これにより、回路ブロック群B0、回路ブロックB4、B5は、互いに電源電圧の変動の影響を受け難い構成となっている。
【0014】
回路ブロックB1~B3は、回路ブロックB4、B5よりも信号出力回路20側、すなわち分岐経路L1~L3の上流側に配置されている。回路ブロックB1~B3は、分岐経路L1~L3が延在する延在方向に交差する交差方向に並んで配置されている。回路ブロックB4、B5は、回路ブロックB1~B3よりも信号入力回路60側、すなわち分岐経路L1、L3の下流側に配置されている。
【0015】
分岐経路L1、L2、L3、単一の経路La、Lbは、アルミ、銅などの導電材料により構成されている。単一の経路Laは信号出力回路20の出力ノードに接続され、この経路Laは分岐部Gにおいて3つの分岐経路L1~L3に分岐している。分岐経路L1は、回路ブロックB1、B4を介して切換回路50まで延在している。分岐経路L2は、回路ブロックB2を介して切換回路50まで延在し、分岐経路L3は、回路ブロックB3、B5を介して切換回路50まで延在している。
【0016】
単一の経路Lbは、一端が切換回路50に接続され、他端が信号入力回路60に接続されている。経路Lbは、切換回路50から出力された信号を信号入力回路60に伝送する。
【0017】
検出回路30は、回路ブロックB1~B5のそれぞれの電源電圧の変動、例えば電圧降下を検出可能である。検出回路30は後述するように閾値電圧(参照電圧)との比較を行うコンパレータなどを含み得る。
【0018】
制御回路40は、検出回路30からの検出信号に基づいて、複数の分岐経路L1~L3のうち、電源電圧の変動(電源電圧の降下量)が最も小さい回路ブロックを通過する分岐経路を選択し、選択結果を表す選択信号を切換回路50に出力する。制御回路40は、切換信号Sgを後述の抵抗切換回路R1に出力しており、制御回路40は、検出信号が反転した際の閾値電圧を電源電圧として検出することが可能である。
【0019】
切換回路50は、制御回路40からの選択信号に基づいて分岐経路L1~L3のいずれかを経路Lbを介して信号入力回路60に電気的に接続する。また、切換回路50は、選択されない分岐経路を信号入力回路60から電気的に接続しない。信号出力回路20から出力された信号が、選択された分岐経路を介して信号入力回路60に出力される。
【0020】
信号入力回路60は、信号出力回路20から出力された信号を入力する回路である。信号入力回路60は、切換回路50により選択された分岐経路を介して信号出力回路20に電気的に接続される。
【0021】
図2は検出回路30の一例を示す。検出回路30は、コンパレータ31、抵抗切換回路R1、抵抗器R2を含む。コンパレータ31は差動増幅回路などから構成され、コンパレータ31の非反転入力端子は電源配線W2に接続されている。電源配線W2は上述の回路ブロックBのそれぞれに含まれる電源配線を示しており、電源配線W2の電源電圧は回路ブロックBの動作により変動し得る。コンパレータ31の反転入力端子は抵抗切換回路R1を介して電源配線W1に接続されている。電源配線W1には参照用の電源電圧が印加され、例えば電源配線W1の電源電圧は電源配線W2の電源電圧と同じであってもよい。この場合、電源配線W1、W2には共通の電源から電源電圧が供給され得る。但し、電源配線W1の電源電圧が電源配線W2の電源電圧の変動によって影響を受けないように、電源配線W1、W2は互いに分離して配置されることが望ましい。
【0022】
抵抗切換回路R1は、複数の抵抗素子と、複数の抵抗素子を切り換えるマルチプレクサとを備える。マルチプレクサは、制御回路40から出力される切換信号Sgに応じて、抵抗素子を切り換えることにより、抵抗切換回路R1の抵抗値を変更可能である。抵抗切換回路R1、抵抗器R2により分圧された電圧が閾値電圧としてコンパレータ31の反転入力端子に印加される。抵抗切換回路R1において変更可能な抵抗値のステップ数が多いほど、閾値電圧は高精度に検出され得る。
【0023】
コンパレータ31は、閾値電圧と電源電圧とを比較し、ハイレベルまたはローレベルの信号を制御回路40に出力する。電源電圧が閾値電圧以上である場合(電源電圧≧閾値電圧)、コンパレータ31はハイレベルの信号を出力する。一方、電源電圧が閾値電圧よりも小さい場合(電源電圧<閾値電圧)、コンパレータ31はローレベルの信号を出力する。閾値電圧の初期値は例えば0.8Vに設定される。選択済みの分岐経路の電源電圧が閾値電圧0.8Vよりも小さくなった場合に、制御回路40は選択動作を開始し得る。制御回路40は、検出回路30は閾値電圧を最小値から最大値まで変化させ、出力信号が反転した際における閾値電圧を電源電圧として検出することができる。
【0024】
次に、半導体集積回路1の動作について説明する。
図3は、本実施形態に係る半導体集積回路1の各回路ブロックB1~B5において検出された電源電圧を分岐経路L1~L3のそれぞれについて示している。例えば、
図3は、分岐経路L1における回路ブロックB1、B4、分岐経路L2における回路ブロックB2、分岐経路L3における回路ブロックB3、B5のそれぞれの電源電圧を示している。また、
図3の上段に示された閾値電圧は検出回路30の閾値電圧の初期値(0.8V)を示している。後述するように、閾値電圧の初期値は、電源電圧の検出に先立って、電源電圧降下の有無を判断するために用いられ得る。
【0025】
図4は、本実施形態に係る半導体集積回路1の動作を示すフローチャートである。以下、
図3を併せて参照しながら、半導体集積回路1の動作を説明する。
【0026】
半導体集積回路1の動作開始時において、制御回路40は分岐経路L1を選択していると仮定する。まず、ステップS1において、検出回路30は、選択中の分岐経路L1における回路ブロックB1、B4のいずれかの電源電圧と閾値電圧の初期値(0.8V)とを比較する。選択中の分岐経路L1におけるすべての回路ブロックB1、B4の電源電圧が閾値電圧の初期値以上である場合(ステップS2でNO)、制御回路40は分岐経路L1を継続して選択する(ステップS1~S2)。一方、選択中の分岐経路L1における回路ブロックB1、B4のいずれかの電源電圧が閾値電圧の初期値よりも低くなった場合(ステップS2でYES)、半導体集積回路1はステップS3以降の選択処理を実行する。例えば、
図3において、回路ブロックB1の電源電圧(0.9V)は閾値電圧の初期値(0.8V)以上であるが、回路ブロックB4の電源電圧(0.7V)は閾値電圧の初期値(0.8V)よりも低い。このように、1つの分岐経路L1における複数の回路ブロックB1、B4のいずれかにおいて電源電圧が閾値より低くなった場合には、制御回路40は分岐経路L1において電源電圧の変動が生じたと判断し、選択動作を開始する。
【0027】
ステップS3において、制御回路40は、他の分岐経路L2、L3のそれぞれにおいて電源電圧と閾値電圧の初期値と比較する。すなわち、制御回路40は分岐経路L2の回路ブロックB2、及び分岐経路L3の回路ブロックB3、B5のそれぞれの電源電圧と閾値電圧の初期値とを比較する。すべての分岐経路L1~L3において、電源電圧が閾値電圧の初期値よりも低い場合(ステップS4でYES)、制御回路40は、選択中の分岐経路L1を含むすべての分岐経路において、電源電圧の変動が最も小さい分岐経路を選択する(ステップS5)。ここで、電源電圧は、検出回路30が閾値電圧を最小値から最大値まで変化させることにより、検出され得る。すなわち、制御回路40は、コンパレータ31の出力信号が反転した際の閾値電圧を電源電圧として検出することができる。
【0028】
一方、電源電圧が閾値電圧の初期値以上である分岐経路が存在する場合(ステップS4でNO)、制御回路40は次の処理を行う。すなわち、制御回路40は、選択中の分岐経路L1と電源電圧が閾値電圧の初期値よりも低い分岐経路とを除いた他の分岐経路の中から、電源電圧の変動が最も小さい分岐経路を選択する(ステップS6)。例えば、
図3に示すように、分岐経路L3において、回路ブロックB3の電源電圧(0.9V)は閾値電圧の初期値(0.8V)以上であるが、回路ブロックB5の電源電圧(0.65V)閾値電圧(0.8V)よりも低い。このため、分岐経路L3と選択中のL1を除いて、電源電圧の変動が最小の分岐経路を選択する。ここでは、分岐経路L1、L3を除いた分岐経路は分岐経路L2のみであるため、分岐経路L2が選択される。
【0029】
次に、制御回路40は、選択した分岐経路を示す経路情報を切換回路50に出力する(ステップS7。ここでは、制御回路40は、選択した分岐経路L2を示す経路情報を切換回路50に出力する。
【0030】
次に、切換回路50は、経路情報に基づいて分岐経路を選択する(ステップS8)。ここでは、切換回路50は、分岐経路を選択中の分岐経路L1から分岐経路L2に切り換え、信号は分岐経路L2を介して信号入力回路60に出力される。この後、半導体集積回路1はステップS1の処理に戻り、ステップS1~S8の処理を繰り返し実行する。なお、ステップS1~S8のループは連続して実行されてもよく、所定期間ごとに実行されてもよい。
【0031】
以上のように、本実施形態に係る半導体集積回路によれば、回路ブロックにおける電源電圧の変動が生じた場合、電源電圧の変動が最小となる分岐経路を選択することにより、電源電圧の変動に起因する信号劣化を抑制できる。
【0032】
さらに、本実施形態によれば、制御回路40は、1つの分岐経路が通過する複数の回路ブロックのうち、最も大きい電源電圧変動に基づいて分岐経路を選択している。例えば、1つの分岐経路上の複数の回路ブロックのうちの1つの回路ブロックのみにおいて電源電圧変動が生じた場合、信号経路を介して他の回路ブロックにおいてノイズが混入する可能性がある。このため、分岐経路において最も大きい電源電圧変動に着目することにより、ノイズ発生を効果的に抑制した選択することが可能となる。
【0033】
また、半導体集積回路1によれば、制御回路40は、選択中の分岐経路の回路ブロックの電源電圧が予め定められた閾値電圧以上である場合、選択中の分岐経路の選択を継続する。例えば、他の分岐経路の電源電圧変動が選択中の分岐経路の電源電圧変動よりも小さいとしても、選択を変更する処理を実施しないので、電源電圧の検出に要する電力および時間を削減することが可能となる。
【0034】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る半導体集積回路1Aについて説明する。
図5は、本実施形態に係る半導体集積回路1Aの構成例を示すブロック図である。本実施形態に係る半導体集積回路1Aは、選択されない信号経路を遮断するゲーティング回路を備える点において第1実施形態に係る半導体集積回路1とは相違する。なお、本実施形態では、第1実施形態に係る半導体集積回路1と同じ構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は適宜省略する。
【0035】
ゲーティング回路70は分岐経路L1~L3の上流側、すなわち分岐部Gと回路ブロックB1~B3の入力部との間にそれぞれ位置している。ゲーティング回路70は選択された分岐経路以外の他の分岐経路を遮断するものである。ゲーティング回路70は、選択されない信号経路における回路ブロックB1~B3へ信号入力を遮断し、消費電力を効果的に削減することができる。
【0036】
図6はゲーティング回路70の一例を示す図である。ここでは、ゲーティング回路70はクロック信号などのデジタル信号をゲーティングする回路を示している。ゲーティング回路70は、ラッチ回路71、AND回路72を有する。ラッチ回路71はDタイプラッチ回路であり、入力端子CK、入力端子D、出力端子Qを備える。入力端子CKには信号出力回路20からのクロック信号CLKが入力され、入力端子Dには制御回路40からイネーブル信号D1が入力される。出力端子Qは、AND回路72の一方の入力端子に接続され、AND回路72の他方の入力端子にはクロック信号CLKが入力される。AND回路72の出力端子は分岐経路L1~L3のいずれかに接続される。
【0037】
ラッチ回路71は、クロック信号CLKがハイレベルの場合、入力したイネーブル信号D1をAND回路72に出力し、クロック信号CLKがローレベルの場合、直前のイネーブル信号D1の出力を維持する。AND回路72は、ラッチ回路71から出力される信号とクロック信号CLKとの論理積を出力する。例えば、AND回路72は、イネーブル信号D1がハイレベルの場合にはクロック信号CLKを回路ブロックB1~B3に出力し、イネーブル信号D1がローレベルの場合にはクロック信号CLKを回路ブロックB1~B3出力しない。ラッチ回路71は制御回路40からのイネーブル信号D1に応じて、分岐経路L1~L3を選択的に導通または遮断することが可能である。
【0038】
図7は、本実施形態に係る半導体集積回路1Aの動作例を示すフローチャートである。以下、第1実施形態と異なる動作を中心に説明する。
【0039】
半導体集積回路1Aの動作開始時において、制御回路40は分岐経路L1を選択していると仮定する。このとき、制御回路40は、分岐経路L1のゲーティング回路70のみにハイレベルのイネーブル信号D1を出力し、分岐経路L1のゲーティング回路70は導通状態となる。制御回路40は他の分岐経路L2、L3のゲーティング回路70にはローレベルのイネーブル信号D1を出力し、分岐経路L2、L3のゲーティング回路70は遮断状態となる。
【0040】
ステップS1~S8までの処理は第1実施形態におけるステップS1~S8と同様である。ステップS1~S8において、分岐経路L1~L3のなかで電源電圧の変動量が最小となる分岐経路L2が選択されたとする。ステップS8の後のステップS9において、制御回路40は、分岐経路L2のゲーティング回路70を導通状態とし、他の分岐経路L1、L3のゲーティング回路70を遮断状態とする。これにより、選択されていない分岐経路L1、L3における回路ブロックB1、B3、B4、B5は非動作状態となり、消費電力を低減することが可能となる。
【0041】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による機器について、
図8を用いて説明する。
図8は、本実施形態に係る機器のブロック図である。
【0042】
上記第1乃至第2実施形態で述べた半導体集積回路1、1Aを含む光電変換装置は、種々の撮像システムに適用可能である。適用可能な撮像システムの例としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、監視カメラ、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星などが挙げられる。また、レンズなどに対応した光学装置と撮像装置とを備えるカメラモジュールも、撮像システムに含まれる。
図8には、これらのうちの一例として、デジタルスチルカメラのブロック図を例示している。
【0043】
図8に例示した撮像システム200は、撮像装置201、被写体の光学像を撮像装置201に結像させるレンズ202、レンズ202を通過する光量を可変にするための絞り204、レンズ202の保護のためのバリア206を有する。レンズ202及び絞り204は、撮像装置201に光を集光する光学系である。撮像装置201は、第1乃至第2実施形態のいずれかで説明した半導体集積回路1、1Aを含む光電変換装置であって、レンズ202により結像された光学像を画像データに変換する。
【0044】
撮像システム200は、また、撮像装置201より出力される出力信号の処理を行う信号処理部208を有する。信号処理部208は、撮像装置201が出力するデジタル信号から画像データの生成を行う。また、信号処理部208は必要に応じて各種の補正、圧縮を行って画像データを出力する動作を行う。撮像装置201は、信号処理部208で処理されるデジタル信号を生成するAD変換部を備えうる。AD変換部は、撮像装置201の光電変換部が形成された半導体層(半導体基板)に形成されていてもよいし、撮像装置201の光電変換部が形成された半導体層とは別の半導体基板に形成されていてもよい。また、信号処理部208が撮像装置201と同一の半導体基板に形成されていてもよい。
【0045】
撮像システム200は、更に、画像データを一時的に記憶するためのメモリ部210、外部コンピュータ等と通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)212を有する。更に撮像システム200は、撮像データの記録又は読み出しを行うための半導体メモリ等の記録媒体214、記録媒体214に記録又は読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)216を有する。なお、記録媒体214は、撮像システム200に内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。
【0046】
更に撮像システム200は、各種演算とデジタルスチルカメラ全体を制御する全体制御・演算部218、撮像装置201と信号処理部208に各種タイミング信号を出力するタイミング発生部220、機械装置を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、撮像システム200は少なくとも撮像装置201と、撮像装置201から出力された出力信号を処理する信号処理部208とを有すればよい。
【0047】
撮像装置201は、撮像信号を信号処理部208に出力する。信号処理部208は、撮像装置201から出力される撮像信号に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。信号処理部208は、撮像信号を用いて、画像を生成する。機械装置は、光電変換装置の信号を受けて動作する可動部(たとえばロボットアーム)である。
【0048】
このように、本実施形態によれば、第1乃至第2実施形態による半導体集積回路1、1Aを含む光電変換装置を適用した撮像システムを実現することができる。
【0049】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による機器について、
図9を用いて説明する。
図9は、本実施形態に係る機器のブロック図である。
【0050】
図9(a)は、車載カメラに関する撮像システムの一例を示したものである。撮像システム300は、撮像装置310を有する。撮像装置310は、上記第1乃至第2実施形態のいずれかに記載の半導体集積回路1、1Aを含む光電変換装置である。撮像システム300は、撮像装置310により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部312と、撮像システム300により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差取得部314を有する。また、撮像システム300は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離取得部316と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部318と、を有する。ここで、視差取得部314や距離取得部316は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部318はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0051】
撮像システム300は車両情報取得装置320と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、撮像システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU330が接続されている。また、撮像システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置340とも接続されている。例えば、衝突判定部318の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU330はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置340は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
【0052】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を撮像システム300で撮像する。
図9(b)に、車両前方(撮像範囲350)を撮像する場合の撮像システムを示した。車両情報取得装置320が、撮像システム300ないしは撮像装置310に指示を送る。このような構成により、測距の精度をより向上させることができる。
【0053】
上記では、他の車両と衝突しないように制御する例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。更に、撮像システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0054】
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態である。
【0055】
複数の分岐経路L1~L3は、信号出力回路20から3つに分岐する例について説明したが、これに限定されず、2つ又は4つ以上に分岐されてもよい。
【0056】
各回路ブロックBは、別の電源から電力が供給される例について説明したが、これに限定されず、例えば、共通の電源から電力が供給されてもよい。
【0057】
ゲーティング回路70は、ラッチ回路71と、AND回路72とを有する例について説明したが、これに限定されず、クロック信号CLKの出力を導通又は遮断できれば回路構成は限定されない。
【0058】
制御回路40は、電圧降下に基づいて分岐経路を判定する例について説明したが、これに限定されず、電圧上昇も含めた電圧変動に基づいて分岐経路を判定してもよい。
【0059】
上記実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
複数の回路ブロックと、
単一の経路から分岐しそれぞれが前記複数の回路ブロックのうち少なくとも1つを通過する複数の分岐経路と、
前記複数の回路ブロックの各々に印加される電源電圧の変動を検出する検出回路と、
前記複数の分岐経路のうち、前記電源電圧の変動が最も小さい前記回路ブロックを通過する前記分岐経路を選択する制御回路と、を備えることを特徴とする半導体集積回路。
(構成2)
前記複数の分岐経路の各々に設けられ、前記選択された分岐経路以外の他の前記分岐経路を遮断するゲーティング回路を備えることを特徴とする構成1に記載の半導体集積回路。
(構成3)
前記複数の分岐経路が分岐する分岐部と前記回路ブロックとの間に前記複数のゲーティング回路が位置することを特徴とする構成2に記載の半導体集積回路。
(構成4)
前記ゲーティング回路は、前記他の分岐経路を通るクロック信号を遮断することを特徴とする構成2又は3に記載の半導体集積回路。
(構成5)
前記ゲーティング回路は、
前記クロック信号に応じてイネーブル信号をラッチするラッチ回路と、
前記ラッチ回路から出力される信号と前記クロック信号との論理積を出力するAND回路と、を有することを特徴とする構成2乃至4のいずれかに記載の半導体集積回路。
(構成6)
1つの前記分岐経路は複数の前記回路ブロックを通過し、
前記制御回路は、前記1つの分岐経路における複数の前記回路ブロックのうち、前記電源電圧の変動が最も大きい前記回路ブロックの前記電源電圧の変動に基づいて前記分岐経路を選択することを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載の半導体集積回路。
(構成7)
前記電源電圧の変動は、前記電源電圧の降下量であることを特徴とする構成1乃至6のいずれかに記載の半導体集積回路。
(構成8)
前記制御回路は、前記選択された分岐経路が通過する前記回路ブロックの前記電源電圧が所定の閾値電圧以上である場合、前記選択された分岐経路の選択を継続し、前記選択された分岐経路が通過する前記回路ブロックの前記電源電圧が前記閾値電圧より小さい場合、前記選択中の分岐経路以外の他の前記分岐経路を選択する処理を実行することを特徴とする構成1乃至7のいずれかに記載の半導体集積回路。
(構成9)
前記閾値電圧は変更可能であることを特徴とする構成8に記載の半導体集積回路。
(構成10)
前記電源電圧を印加する電源が前記回路ブロックごとに異なることを特徴とする構成1乃至9のいずれかに記載の半導体集積回路。
(構成11)
前記検出回路は、第1の入力端子及び第2の入力端子を有するコンパレータと、参照電圧を切り換え可能な切換回路と、を含み、
前記第1の入力端子には、前記参照電圧が印加され、
前記第2の入力端子には、前記電源電圧が印加される構成1乃至10のいずれかに記載の半導体集積回路。
(構成12)
前記検出回路及び前記制御回路は、連続して動作することを特徴とする構成1乃至11のいずれかに記載の半導体集積回路。
(構成13)
前記検出回路及び前記制御回路は、所定期間ごとに動作することを特徴とする構成1乃至11のいずれかに記載の半導体集積回路。
(構成14)
構成1乃至13のいずれか1項に記載の半導体集積回路を含む光電変換装置と、
前記光電変換装置に対応した光学装置、
前記光電変換装置を制御する制御装置、
前記光電変換装置から出力された信号を処理する処理装置、
前記光電変換装置で得られた情報を表示する表示装置、
前記光電変換装置で得られた情報を記憶する記憶装置、及び
前記光電変換装置で得られた情報に基づいて動作する機械装置、の少なくともいずれかと、を備えることを特徴とする機器。
(構成15)
前記処理装置は、前記光電変換装置から被写体までの距離情報を取得することを特徴とする構成14に記載の機器。
【符号の説明】
【0060】
1、1A…半導体集積回路
20…信号出力回路
30…検出回路
40…制御回路
50…切換回路
60…信号入力回路
70…ゲーティング回路
81、82、83…電源
31…コンパレータ
B1~B5…回路ブロック
G…分岐部
La…単一の経路
L1~L3…分岐経路
R1…切換回路
R2…抵抗器