(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025142543
(43)【公開日】2025-10-01
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/19 20060101AFI20250924BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20250924BHJP
【FI】
B41J2/19
B41J2/175 121
B41J2/175 503
B41J2/175 171
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024041966
(22)【出願日】2024-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】浅田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼濱 郁彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 真祐
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EB16
2C056EB33
2C056EE18
2C056FA13
2C056KB04
2C056KB08
2C056KB16
2C056KB26
2C056KB33
2C056KB37
(57)【要約】
【課題】リザーバタンクと圧力生成手段とを接続する空気配管へインクや気泡が溢れ出たことを、これらが空気配管に設けられたエアフィルタに到達する前に検知可能とする。
【解決手段】供給タンク911(第1リザーバタンク)とエアフィルタFaとの間における圧力伝達配管934(第1空気配管)内のインクあるいは気泡を検知するセンサSaが具備されている。したがって、供給タンク911と圧力生成部93(圧力生成手段)とを接続する圧力伝達配管934へインクや気泡が溢れ出たことを、これらが圧力伝達配管934に設けられたエアフィルタFaに到達する前に検知することが可能となっている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを貯留する第1リザーバタンクと、
前記第1リザーバタンクのうちインクの液面より下側の部分である第1インク貯留部に接続されて前記第1インク貯留部と連通するインク貯留室を有し、前記インク貯留室に貯留されるインクをノズルから吐出する記録ヘッドと、
第1圧力を生成する第1圧力生成手段と、
前記第1リザーバタンクのうちインクの液面より上側の第1空間と前記第1圧力生成手段とを接続して、前記第1圧力生成手段が生成した前記第1圧力を前記第1空間に付与する第1空気配管と、
前記第1リザーバタンクと前記第1圧力生成手段との間で前記第1空気配管に設けられて、前記第1空気配管内の空気から異物を除去する第1エアフィルタと、
前記第1リザーバタンクと前記第1エアフィルタとの間における前記第1空気配管内のインクあるいは気泡を検知するセンサと
を備えた印刷装置。
【請求項2】
前記センサと前記第1エアフィルタとの間で前記第1空気配管に取り付けられたエアバッファをさらに備えた請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記エアバッファの容積は、前記第1リザーバタンクの容積より小さい請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記センサがインクあるいは気泡を検知するとユーザに報知を行う報知部をさらに備える請求項1ないし3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
インクを貯留する第2リザーバタンクと、
第2圧力を生成する第2圧力生成手段と、
前記第2リザーバタンクのうちインクの液面より上側の第2空間と前記第2圧力生成手段とを接続して、前記第2圧力生成手段が生成した前記第2圧力を前記第2空間に付与する第2空気配管と、
前記第1圧力生成手段および前記第2圧力生成手段を制御する制御部と
をさらに備え、
前記記録ヘッドの前記インク貯留室は、前記第2リザーバタンクのうちインクの液面より下側の部分である第2インク貯留部に接続されて前記第2インク貯留部と連通し、
前記制御部は、前記センサがインクあるいは気泡を検知すると、前記第1圧力および前記第2圧力が同一の非常時圧力となるように、前記第1圧力生成手段および前記第2圧力生成手段を制御する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第1リザーバタンクおよび前記第2リザーバタンクは、前記記録ヘッドより上側に配置され、
前記非常時圧力は、前記第1リザーバタンクと前記記録ヘッドとの高さの差によって生じるインクの水頭圧と、前記第2リザーバタンクと前記記録ヘッドとの高さの差によって生じるインクの水頭圧との差に抗して、前記ノズルからのインクの流出を防止する圧力である請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記第1リザーバタンクと前記第2リザーバタンクとの間でインクを送る循環ポンプをさらに備え、
前記制御部は、前記センサがインクあるいは気泡を検知すると、前記循環ポンプを停止させる請求項5に記載の印刷装置。
【請求項8】
インクを貯留するメインタンクと、
前記メインタンクと前記第1リザーバタンクとの間でインクを送る第1ポンプと、
前記メインタンクと前記第2リザーバタンクとの間でインクを送る第2ポンプと
を備え、
前記制御部は、前記センサがインクあるいは気泡を検知すると、前記第1ポンプおよび前記第2ポンプを停止する請求項5に記載の印刷装置。
【請求項9】
インクを貯留する第1リザーバタンクのうちインクの液面より上側の第1空間と第1圧力を生成する第1圧力生成手段とを接続する第1空気配管を介して、前記第1圧力生成手段が生成した前記第1圧力を前記第1空間に付与する工程と、
前記第1リザーバタンクのうちインクの液面より下側の部分である第1インク貯留部に接続されて前記第1インク貯留部と連通するインク貯留室を有する記録ヘッドが、前記インク貯留室に貯留されるインクをノズルから吐出する工程と、
前記第1リザーバタンクと前記第1圧力生成手段との間で前記第1空気配管に設けられて、前記第1空気配管内の空気から異物を除去する第1エアフィルタと、前記第1リザーバタンクとの間における前記第1空気配管内のインクあるいは気泡をセンサにより検知する工程と
を備えた印刷制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクを吐出する記録ヘッドと連通するリザーバタンクからのインクや気泡のオーバーフローに対応する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に示されるインクジェット方式の印刷装置では、インクを吐出する記録ヘッドと、記録ヘッドに連通するリザーバタンクとが具備されており、記録ヘッドとリザーバタンクとの間でインクが送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5777581号公報
【特許文献2】特開2007-160773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような印刷装置では、記録ヘッドにおけるインクのメニスカス形状を適切化するために、リザーバタンクに与えられる圧力(負圧)が制御される。具体的には、圧力生成手段とリザーバタンクとが空気配管によって連通されて、圧力生成手段によって生成された圧力が空気配管を介してリザーバタンクに付与される。また、リザーバタンクへの異物の混入を防ぐために、空気配管にはエアフィルタが設けられる。
【0005】
ところで、印刷装置の故障等によって、リザーバタンクから空気配管にインクが溢れ出る場合がある。あるいは、特許文献2で指摘されるように、インクには空気が混入しうる。このような空気の混入によって、リザーバタンク内でインクが泡立つと、リザーバタンクから空気配管に気泡が溢れ出る場合がある。こうして空気配管に溢れ出たインクや気泡がエアフィルタに到達して、エアフィルタが濡れてしまうと、圧力生成手段で生成した圧力がリザーバタンクに付与されなくなる。その結果、記録ヘッドからインクが流出して、印刷装置の内部や、印刷装置が設置されるフロアがインクで汚されるおそれがあった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、リザーバタンクと圧力生成手段とを接続する空気配管へインクや気泡が溢れ出たことを、これらが空気配管に設けられたエアフィルタに到達する前に検知可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る印刷装置は、インクを貯留する第1リザーバタンクと、第1リザーバタンクのうちインクの液面より下側の部分である第1インク貯留部に接続されて第1インク貯留部と連通するインク貯留室を有し、インク貯留室に貯留されるインクをノズルから吐出する記録ヘッドと、第1圧力を生成する第1圧力生成手段と、第1リザーバタンクのうちインクの液面より上側の第1空間と第1圧力生成手段とを接続して、第1圧力生成手段が生成した第1圧力を第1空間に付与する第1空気配管と、第1リザーバタンクと第1圧力生成手段との間で第1空気配管に設けられて、第1空気配管内の空気から異物を除去する第1エアフィルタと、第1リザーバタンクと第1エアフィルタとの間における第1空気配管内のインクあるいは気泡を検知するセンサとを備える。
【0008】
本発明に係る印刷制御方法は、インクを貯留する第1リザーバタンクのうちインクの液面より上側の第1空間と第1圧力を生成する第1圧力生成手段とを接続する第1空気配管を介して、第1圧力生成手段が生成した第1圧力を第1空間に付与する工程と、第1リザーバタンクのうちインクの液面より下側の部分である第1インク貯留部に接続されて第1インク貯留部と連通するインク貯留室を有する記録ヘッドが、インク貯留室に貯留されるインクをノズルから吐出する工程と、第1リザーバタンクと第1圧力生成手段との間で第1空気配管に設けられて、第1空気配管内の空気から異物を除去する第1エアフィルタと、第1リザーバタンクとの間における第1空気配管内のインクあるいは気泡をセンサにより検知する工程とを備える。
【0009】
このように構成された本発明(印刷装置および印刷制御方法)では、第1リザーバタンクと第1エアフィルタとの間における第1空気配管内のインクあるいは気泡を検知するセンサが具備されている。したがって、リザーバタンクと圧力生成手段とを接続する空気配管へインクや気泡が溢れ出たことを、これらが空気配管に設けられたエアフィルタに到達する前に検知することが可能となっている。
【0010】
また、センサと第1エアフィルタとの間で第1空気配管に取り付けられたエアバッファをさらに備えるように、印刷装置を構成してもよい。これによって、センサに到達したインクや気泡の進行をエアバッファによって遅らせて、これらがエアフィルタに到達するのを抑えることができる。
【0011】
また、エアバッファの容積は、第1リザーバタンクの容積より小さいように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、エアバッファを設けることで印刷装置が大型化するのを抑えることができる。
【0012】
また、センサがインクあるいは気泡を検知するとユーザに報知を行う報知部をさらに備えるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、インクあるいは気泡が空気配管へ溢れ出たことに対してユーザが必要な対応を取ることができる。
【0013】
また、インクを貯留する第2リザーバタンクと、第2圧力を生成する第2圧力生成手段と、第2リザーバタンクのうちインクの液面より上側の第2空間と第2圧力生成手段とを接続して、第2圧力生成手段が生成した第2圧力を第2空間に付与する第2空気配管と、第1圧力生成手段および第2圧力生成手段を制御する制御部とをさらに備え、記録ヘッドのインク貯留室は、第2リザーバタンクのうちインクの液面より下側の部分である第2インク貯留部に接続されて第2インク貯留部と連通し、制御部は、センサがインクあるいは気泡を検知すると、第1圧力および第2圧力が同一の非常時圧力となるように、第1圧力生成手段および第2圧力生成手段を制御するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、インクあるいは気泡が空気配管へ溢れ出たことをセンサが検知すると、第1リザーバタンクと第2リザーバタンクとの間におけるインクの流れを停止させて、リザーバタンクからインクあるいは気泡がそれ以上に溢れ出るのを抑えることができる。
【0014】
また、第1リザーバタンクおよび第2リザーバタンクは、記録ヘッドより上側に配置され、非常時圧力は、第1リザーバタンクと記録ヘッドとの高さの差によって生じるインクの水頭圧と、第2リザーバタンクと記録ヘッドとの高さの差によって生じるインクの水頭圧との差に抗して、ノズルからのインクの流出を防止する圧力であるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、記録ヘッドのノズルからのインクの流出を防止して、印刷装置の内部や、印刷装置が設置されるフロアがインクで汚されるのを回避できる。
【0015】
また、第1リザーバタンクと第2リザーバタンクとの間でインクを送る循環ポンプをさらに備え、制御部は、センサがインクあるいは気泡を検知すると、循環ポンプを停止させるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、インクあるいは気泡が空気配管へ溢れ出たことをセンサが検知すると、第1リザーバタンクと第2リザーバタンクとの間におけるインクの流れを停止させて、リザーバタンクからインクあるいは気泡がそれ以上に溢れるのを抑えることができる。
【0016】
また、インクを貯留するメインタンクと、メインタンクと第1リザーバタンクとの間でインクを送る第1ポンプと、メインタンクと第2リザーバタンクとの間でインクを送る第2ポンプとを備え、制御部は、センサがインクあるいは気泡を検知すると、第1ポンプおよび第2ポンプを停止するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、インクあるいは気泡が空気配管へ溢れ出たことをセンサが検知すると、メインタンクと第1・第2リザーバタンクとの間におけるインクの流れを停止させて、リザーバタンクからインクあるいは気泡がそれ以上に溢れるのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、リザーバタンクと圧力生成手段とを接続する空気配管へインクや気泡が溢れ出たことを、これらが空気配管に設けられたエアフィルタに到達する前に検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る印刷装置を模式的に示す正面図。
【
図2】ヘッドユニットが備える吐出ヘッドの底面を模式的に示す図。
【
図3】吐出ヘッドと当該吐出ヘッドにインクを循環的に供給するインク循環機構を模式的に示す図。
【
図4】
図3のインク循環機構を制御するために印刷装置が具備する電気的構成を示すブロック図。
【
図5】吐出ヘッドおよびインク循環機構の外観構成を部分的に示す斜視図。
【
図6】
図3のインク循環機構で実行可能な複数のモードを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明に係る印刷装置を模式的に示す正面図である。
図1では、水平方向Xおよび鉛直方向Zが示されている。また、互いに逆側を向く水平方向Xの一方側X1および他方側X2が示されている。印刷装置3は、筐体31と、筐体31内に配置されたカラー印刷部32と、筐体31内においてカラー印刷部32の上方に配置された白印刷部33と、筐体31内に配置された複数のローラによって印刷媒体Mを搬送する搬送部4とを備える。
【0020】
カラー印刷部32は、搬送部4によって搬送される印刷媒体Mの上方において、印刷媒体Mの進行方向(他方側X2から一方側X1へ向かう方向)に配列された複数(6個)のヘッドユニット321を有する。複数のヘッドユニット321は、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向するノズルを有し、互いに異なる色のカラーインクをインクジェット方式でノズルから吐出する。ここで、カラーインクとは、白色以外のインクを意味し、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック等のインクを含む。こうして、カラー印刷部32の複数のヘッドユニット321は、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方からカラーインクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1にカラー画像を印刷する。
【0021】
また、白印刷部33は、搬送部4によって搬送される印刷媒体Mの上方に配置された単一のヘッドユニット331を有する。ヘッドユニット331は、その下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向するノズルを有し、白インクをインクジェット方式でノズルから吐出する。こうして、白印刷部33のヘッドユニット331は、その下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から白インクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1に白画像を印刷する。
【0022】
筐体31の他方側X2の側壁には搬入口311が開口する一方、筐体31の一方側X1の側壁には搬出口312が開口している。そして、搬送部4は、上記のカラー印刷部32および白印刷部33を経由しつつ、搬入口311から搬出口312へ印刷媒体Mを搬送する。
【0023】
この搬送部4は、カラー印刷部32の下側に設けられた搬入部41と、カラー印刷部32の一方側X1に設けられた上昇搬送部42と、カラー印刷部32の上側に設けられた上方搬送部43と、カラー印刷部32の他方側X2に設けられた下降搬送部44とを有する。搬入部41は、搬入口311から搬入された印刷媒体Mをローラ411によって一方側X1に搬送し、上昇搬送部42は、搬入部41によって搬送されてきた印刷媒体Mをローラ421によって上側に搬送し、上方搬送部43は、上昇搬送部42によって搬送されてきた印刷媒体Mをローラ431によって他方側X2へ搬送し、下降搬送部44は、上方搬送部43によって搬送されてきた印刷媒体Mをローラ441によって下側に搬送する。
【0024】
さらに、搬送部4は、カラー印刷部32に対向する印刷媒体Mを下方から支持するカラー搬送部45を有し、下降搬送部44を通過した印刷媒体Mはカラー搬送部45に進入する。このカラー搬送部45は、他方側X2から一方側X1へ配列された複数のローラ451を有し、各ローラ451が印刷媒体Mの裏面M2に下方から接触する。こうして、カラー搬送部45によって支持される印刷媒体Mの表面M1は上方を向き、カラー印刷部32の各ヘッドユニット321は、この表面M1に上方から対向しつつカラーインクを吐出する。
【0025】
また、搬送部4は、印刷媒体Mの進行方向においてカラー搬送部45と下降搬送部44との間に配置されたローラ461、462、463を有する。ローラ461は、印刷媒体Mを駆動する駆動ローラである。ローラ462、463は印刷媒体Mに従動して回転する従動ローラである。
【0026】
さらに、搬送部4は、カラー搬送部45から一方側X1に搬送されてきた印刷媒体Mを二回上下反転させる反転搬送部47を有する。この反転搬送部47は、駆動ローラ471を含む複数のローラ471~477を有し、これらローラ471~477が印刷媒体Mの裏面M2に接触しつつ、印刷媒体Mを二回上下反転させる。つまり、反転搬送部47は、カラー搬送部45から搬送された印刷媒体Mを、ローラ471、472によって下方向に向けて搬送し、さらに印刷媒体Mの進行方向をローラ472によって他方側X2に変更して搬送することにより、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを上下反転させる。続いて、反転搬送部47は、複数のローラ473によって印刷媒体Mを一方側X1から他方側X2に向けて搬送し、次いで、ローラ474~476によって印刷媒体Mを上方向に向けて搬送する。さらに、反転搬送部47は、ローラ476によって印刷媒体Mの進行方向を一方側X1に変更することによって、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを再び上下反転させるとともに、ローラ477によって印刷媒体Mを他方側X2から一方側X1に向けて搬送する。
【0027】
また、搬送部4は、白印刷部33に対向する印刷媒体Mを下方から支持する白搬送部48を有し、反転搬送部47によって二回上下反転された印刷媒体Mは白搬送部48に進入する。この白搬送部48は、印刷媒体Mの裏面M2に下側から接触するローラ481を有する。こうして、白搬送部48によって支持される印刷媒体Mの表面M1は上方を向き、白印刷部33のヘッドユニット331は、この表面M1に上方から対向しつつ白インクを吐出する。
【0028】
また、搬送部4は、上方搬送部43より上方に設けられた搬出部49を有する。搬出部49は、水平方向Xの他方側X2から一方側X1へ配列された複数のローラ491を有する。この搬出部49は、白搬送部48により搬送されてきた印刷媒体Mを、複数のローラ491によって一方側X1へと搬送することで、筐体31の搬出口312から搬出する。
【0029】
上記のように、印刷装置3のカラー印刷部32および白印刷部33は、ヘッドユニット321、331を有する。続いては、ヘッドユニット321、331が有する吐出ヘッドHと当該吐出ヘッドHに対してインクを循環的に供給するインク循環機構9について説明する。なお、吐出ヘッドHやインク循環機構9の基本的構成は、白インクを吐出するヘッドユニット321およびカラーインクを吐出するヘッドユニット331のそれぞれについて共通する。そのため、ここでは、白インクを吐出するヘッドユニット331に関する構成について説明する。
【0030】
図2はヘッドユニット321、323が備える吐出ヘッドHの底面を模式的に示す図であり、
図3は吐出ヘッドHと当該吐出ヘッドHにインクを循環的に供給するインク循環機構9を模式的に示す図であり、
図4は
図3のインク循環機構9を制御するために印刷装置3が具備する電気的構成を示すブロック図である。
図2では、水平方向Xおよび鉛直方向Zの他に、水平方向Xに直交する水平方向Yが示されている。
【0031】
図4に示すように、印刷装置3は、制御部10を有する。制御部10は例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサである。また、印刷装置3は、UI(User Interface)11を備える。UI11は、ディスプレイやスピーカ等の出力機器を有し、ディスプレイへの画像表示やスピーカによる音声出力によって、作業者に報知を行う。
【0032】
図2に示すように、ヘッドユニット331では、同一の色のインク(白インク)を吐出する複数の吐出ヘッドHが水平方向Yに一列に配列されており、各吐出ヘッドHは底面視において矩形を有する。なお、吐出ヘッドHの形状は
図2の例に限られず、平行四辺形でもよい。さらに、複数の吐出ヘッドHの配列態様も
図2の例に限られず、複数の吐出ヘッドHは千鳥状に配列されてもよい。
【0033】
図3に示すように、吐出ヘッドHはハウジングHaを有し、ハウジングHaの底面では、複数のノズルHnが水平方向Yに千鳥状に配列されて開口する。ハウジングHaの内部には、複数のノズルHnにそれぞれ連通する複数のキャビティHbと、複数のキャビティHbに連通するインク供給室Hcとが設けられており、インク供給室Hcから供給されたインクがキャビティHbに貯留される。また、各キャビティHbには圧電素子Dが設けられており、圧電素子Dが駆動信号(電気信号)に応じて変位することで、キャビティHb内のインクに圧力変動を与える。この圧力変動によって、キャビティHbからインクが押し出されて、当該キャビティHbに連通するノズルHnからインクが吐出される。また、吐出ヘッドHの上部では、インク流入口Hdと、インク流出口Heとがそれぞれ開口し、インクは、インク循環機構9からインク流入口Hdを介してインク供給室Hcに流入し、インク供給室Hcからインク流出口Heを介してインク循環機構9へ向けて流出する。
【0034】
インク循環機構9は、吐出ヘッドHのインク供給室Hcにインクを供給するインク供給機構9aと、吐出ヘッドHのインク供給室Hcからインクを回収するインク回収機構9bと、インク回収機構9bからインク供給機構9aへインクを戻すインクリターン機構9cとを含む。
【0035】
インク供給機構9aは、吐出ヘッドHのインク供給室Hcにインクを供給するインク供給部91と、このインク供給部91に対して付与する供給圧力を生成する圧力生成部93とを含む。インク供給部91は、吐出ヘッドHへ供給するインクを貯留する供給タンク911と、供給タンク911から供給されるインクを吐出ヘッドHのインク供給室Hcへ送液する供給配管912とを含む。供給タンク911は、吐出ヘッドHより上方に配置される。供給タンク911のうち、気液界面L1(すなわち、インクの液面)より下側のインク貯留部911Lにインクが貯留され、気液界面L1より上側の空間911Gには空気が存在する。
【0036】
インク回収機構9bは、吐出ヘッドHのインク供給室Hcからインクを回収するインク回収部92と、このインク回収部92に対して付与する圧力を生成する圧力生成部94とを含む。インク回収部92は、吐出ヘッドHから回収したインクを貯留する回収タンク921と、吐出ヘッドHのインク供給室Hcから回収したインクを回収タンク921へ送液する回収配管922とを含む。回収タンク921は、吐出ヘッドHより上方に配置される。回収タンク921のうち、気液界面L2(すなわち、インクの液面)より下側のインク貯留部921Lにインクが貯留され、気液界面L2より上側の空間921Gには空気が存在する。
【0037】
インクリターン機構9cは、回収タンク921と供給タンク911とを接続するリターン配管951を有する。リターン配管951は、回収タンク921のインク貯留部921Lと、供給タンク911のインク貯留部911Lとを接続して連通させる。さらに、インクリターン機構9cは、リターン配管951の途中に介在する循環ポンプ952を有する。循環ポンプ952は、制御部10の制御に応じて動作する。制御部10が循環ポンプ952に送液指令を送信すると、循環ポンプ952がリターン配管951内のインクを回収タンク921から供給タンク911へ向けて駆動する。これによって、回収タンク921のインク貯留部921Lから供給タンク911のインク貯留部911Lへインクが送液される。つまり、インクリターン機構9cは、循環ポンプ952によって、回収タンク921から供給タンク911に到る第1経路Caに沿ってインクを送ることができる。また、制御部10が停止指令を循環ポンプ952に送信すると、循環ポンプ952が停止する。これによって、回収タンク921から供給タンク911へのインクの送液が停止する。
【0038】
上述の通り、インク供給機構9aは、供給タンク911に圧力P1(負圧)を与える圧力生成部93を有する。この圧力生成部93は、圧力タンク931と、圧力タンク931を排気して圧力タンク931に圧力P1を生成する排気ポンプ932とを有する。排気ポンプ932はダイヤフラムポンプであり吸気口Giから吸引した空気を排気口Goから排出する。これによって、吸気口Giから排気口Goに向かう排気方向Dgに空気を排気する。排気ポンプ932の排気口Goは大気に開放されている。一方、排気ポンプ932の吸気口Giは、圧力タンク931に接続されている。また、圧力生成部93は、圧力タンク931と排気ポンプ932の吸気口Giとを接続する樹脂製の排気配管933を有し、排気配管933によって圧力タンク931と吸気口Giとが連通される。
【0039】
排気ポンプ932は、制御部10の制御に応じて動作する。制御部10が排気ポンプ932に排気指令を出力すると、排気ポンプ932が排気方向Dgに排気を行う。したがって、圧力タンク931から排気配管933に空気が流出して、大気へと排気される。これによって、圧力タンク931に圧力P1が生成される。また、制御部10が排気ポンプ932に停止指令を送信すると、排気ポンプ932が排気を停止する。なお、排気ポンプ932はダイヤフラムポンプである。そのため、排気ポンプ932が停止すると、ダイヤフラムポンプに内蔵される逆止弁によって排気方向Dgと逆方向の空気の流れは遮断され、圧力タンク931内の圧力P1は維持される。
【0040】
また、圧力生成部93は、圧力タンク931と供給タンク911の空間911Gとを接続する圧力伝達配管934と、圧力タンク931と供給タンク911との間で圧力伝達配管934に設けられた電磁弁Vaとを有する。圧力伝達配管934は、圧力タンク931と供給タンク911の空間911Gとを連通させる。また、電磁弁Vaは制御部10の制御に応じて動作する。制御部10が電磁弁Vaに開指令を送信すると、電磁弁Vaが開いて、圧力タンク931と供給タンク911の空間911Gとが圧力伝達配管934を介して連通する。よって、圧力タンク931に生成された圧力P1が、圧力伝達配管934を介して、供給タンク911の空間911Gに付与される。その結果、圧力P1が気液界面L1に加わる。制御部10が電磁弁Vaに閉指令を送信すると、電磁弁Vaが閉じて、圧力タンク931と供給タンク911とが互いに遮断される。
【0041】
また、圧力生成部93は、圧力タンク931と大気とを接続する大気開放配管935と、大気開放配管935の途中に介在する大気開放電磁弁936と、大気開放電磁弁936と圧力タンク931との間に介在するように大気開放配管935に設けられたエアフィルタ937とを有する。大気開放電磁弁936が閉じた状態では、圧力タンク931は大気から遮断され、圧力タンク931の圧力P1が維持される。一方、大気開放電磁弁936が開くと、圧力タンク931が大気開放配管935によって大気に連通される。そのため、大気開放配管935を介して大気から圧力タンク931に空気が流入して、圧力タンク931内の圧力P1が上昇する。この際、圧力タンク931と大気開放電磁弁936との間のエアフィルタ937が、圧力タンク931に流入する前の空気から異物を除去する。
【0042】
上述の通り、インク回収機構9bは、回収タンク921に圧力P2(負圧)を与える圧力生成部94を有する。この圧力生成部94は、圧力タンク941と、圧力タンク941を排気して圧力タンク941に圧力P2を生成する排気ポンプ942とを有する。排気ポンプ942はダイヤフラムポンプであり吸気口Giから吸引した空気を排気口Goから排出する。これによって、吸気口Giから排気口Goに向かう排気方向Dgに空気を排気する。排気ポンプ942の排気口Goは大気に開放されている。一方、排気ポンプ942の吸気口Giは、圧力タンク941に接続されている。また、圧力生成部94は、圧力タンク941と排気ポンプ942の吸気口Giとを接続する樹脂製の排気配管943を有し、排気配管943によって圧力タンク941と吸気口Giとが連通される。
【0043】
排気ポンプ942は、制御部10の制御に応じて動作する。制御部10が排気ポンプ942に排気指令を出力すると、排気ポンプ942が排気方向Dgに排気を行う。したがって、圧力タンク941から排気配管943に空気が流出して、大気へと排気される。これによって、圧力タンク941に圧力P2が生成される。また、制御部10が排気ポンプ942に停止指令を送信すると、排気ポンプ942が排気を停止する。なお、排気ポンプ942はダイヤフラムポンプである。そのため、排気ポンプ942が停止すると、ダイヤフラムポンプに内蔵される逆止弁によって排気方向Dgと逆方向の空気の流れは遮断され、圧力タンク941内の圧力P2は維持される。
【0044】
また、圧力生成部94は、圧力タンク941と回収タンク921の空間921Gとを接続する圧力伝達配管944と、圧力タンク941と回収タンク921との間で圧力伝達配管944に設けられた電磁弁Vbとを有する。圧力伝達配管944は、圧力タンク941と回収タンク921の空間921Gとを連通させる。また、電磁弁Vbは制御部10の制御に応じて動作する。制御部10が電磁弁Vbに開指令を送信すると、電磁弁Vbが開いて、圧力タンク941と回収タンク921の空間921Gとが圧力伝達配管944を介して連通する。よって、圧力タンク941に生成された圧力P2が、圧力伝達配管944を介して、回収タンク921の空間921Gに付与される。その結果、圧力P2が気液界面L2に加わる。制御部10が電磁弁Vbに閉指令を送信すると、電磁弁Vbが閉じて、圧力タンク941と回収タンク921とが互いに遮断される。
【0045】
また、圧力生成部94は、圧力タンク941と大気とを接続する大気開放配管945と、大気開放配管945の途中に介在する大気開放電磁弁946と、大気開放電磁弁946と圧力タンク941との間に介在するように大気開放配管945に設けられたエアフィルタ947とを有する。大気開放電磁弁946が閉じた状態では、圧力タンク941は大気から遮断され、圧力タンク941の圧力P2が維持される。一方、大気開放電磁弁946が開くと、圧力タンク941が大気開放配管945によって大気に連通される。そのため、大気開放配管945を介して大気から圧力タンク941に空気が流入して、圧力タンク941内の圧力P2が上昇する。この際、圧力タンク941と大気開放電磁弁946との間のエアフィルタ947が、圧力タンク941に流入する前の空気から異物を除去する。
【0046】
このように、圧力生成部93によって供給タンク911の気液界面L1に圧力P1が付与され、圧力生成部94によって回収タンク921の気液界面L2に圧力P2が付与される。この際、回収タンク921に付与される圧力P2は、供給タンク911に付与する圧力P1より低い。この圧力P2と圧力P1との差によって、供給タンク911から吐出ヘッドHのインク供給室Hcを介して回収タンク921に到る第2経路Cbに沿ってインクが流れる。また、第2経路Cbに沿って回収タンク921に流入したインクは、第1経路Caに沿って循環ポンプ952により供給タンク911に戻される。こうして、供給タンク911から吐出ヘッドHを介して回収タンク921に到達した後に供給タンク911に戻る循環経路(第2経路Cb+第1経路Ca)でインクが循環する。
【0047】
なお、インク循環機構9は、供給タンク911と回収タンク921とを接続するバイパス配管953と、供給タンク911と回収タンク921との間でバイパス配管953に取り付けられた電磁弁Vcとを有する。バイパス配管953は、供給タンク911の空間911Gと回収タンク921の空間921Gとを連通させる。電磁弁Vcは、制御部10の制御に応じて動作する。制御部10が電磁弁Vcに閉指令を送信すると、電磁弁Vcが閉じる。これによって、供給タンク911の空間911Gと回収タンク921の空間921Gとが互いに遮断される。上述のように、互いに異なる圧力P1と圧力P2を生成して、第2経路Cbに沿ってインクを送液する場合には、制御部10は、電磁弁Vcを閉じる。一方、制御部10が電磁弁Vcに開指令を送信すると、電磁弁Vcが開く。これによって、気液界面L1および気液界面L2それぞれには同じ圧力P3が付与され、第2経路Cbに沿ったインクの送液が停止する。
【0048】
また、インク循環機構9はメインタンク96を有する。このメインタンク96は、供給タンク911および回収タンク921より多量のインクを貯留することができる。インク循環機構9は、メインタンク96と供給タンク911とを接続する配管961と、メインタンク96と回収タンク921とを接続する配管962とを備える。つまり、メインタンク96は、配管961を介して供給タンク911と連通し、配管962を介して回収タンク921と連通する。
【0049】
さらに、インク循環機構9は、メインタンク96と供給タンク911との間で配管961に取り付けられた回収ポンプ963と、メインタンク96と回収タンク921との間で配管962に取り付けられた供給ポンプ964とを備える。したがって、回収ポンプ963によって、供給タンク911からメインタンク96へインクを回収し、供給ポンプ964によってメインタンク96から回収タンク921にインクを供給できる。
【0050】
回収ポンプ963および供給ポンプ964のそれぞれは、制御部10の制御に応じて動作する。制御部10が送液指令を回収ポンプ963に送信すると、回収ポンプ963は、供給タンク911からメインタンク96にインクを送液する。制御部10が停止指令を回収ポンプ963に送信すると、回収ポンプ963は、供給タンク911からメインタンク96へのインクの送液を停止する。
制御部10が送液指令を供給ポンプ964に送信すると、供給ポンプ964は、メインタンク96から回収タンク921にインクを送液する。制御部10が停止指令を供給ポンプ964に送信すると、供給ポンプ964は、メインタンク96から回収タンク921へのインクの送液を停止する。
【0051】
かかる構成では、回収ポンプ963および供給ポンプ964がインクを送液することで、供給タンク911からメインタンク96を介して回収タンク921に到る第3経路Ccに沿ってインクが流れる。また、第3経路Ccに沿って回収タンク921に流入したインクは、第1経路Caに沿って循環ポンプ952により供給タンク911に戻される。こうして、供給タンク911からメインタンク96を介して回収タンク921に到達した後に供給タンク911に戻る循環経路(第3経路Cc+第1経路Ca)でインクが循環する。
【0052】
また、インク供給機構9aは、電磁弁Vaと供給タンク911との間で圧力伝達配管934に設けられたエアフィルタFaを有する。エアフィルタFaは、圧力伝達配管934内を流れる空気から異物を除去する。また、インク供給機構9aは、エアフィルタFaと供給タンク911との間で圧力伝達配管934に設けられたセンサSaを有する。センサSaは、供給タンク911から圧力伝達配管934に溢れ出たインクあるいは気泡を検知する。センサSaの検知結果は制御部10に送信される。かかるセンサSaとしては、例えば静電容量センサあるいは光学センサを用いることができる。さらに、インク供給機構9aは、センサSaとエアフィルタFaとの間で圧力伝達配管934に設けられたエアバッファ97aを有する。エアバッファ97aは、供給タンク911の容積より小さな容積を有し、センサSaからエアフィルタFaへ向かう空気をバッファする。このエアバッファ97aは、センサSaからエアフィルタFaに到る空気の経路を圧力伝達配管934のみで接続した場合と比較して、エアが当該経路を進行する速度を低下させる機能を有する。
【0053】
インク回収機構9bは、電磁弁Vbと回収タンク921との間で圧力伝達配管944に設けられたエアフィルタFbを有する。エアフィルタFbは、圧力伝達配管944内を流れる空気から異物を除去する。また、インク回収機構9bは、エアフィルタFbと回収タンク921との間で圧力伝達配管944に設けられたセンサSbを有する。センサSbは、回収タンク921から圧力伝達配管944に溢れ出たインクあるいは気泡を検知する。センサSbの検知結果は制御部10に送信される。かかるセンサSbとしては、例えば静電容量センサあるいは光学センサを用いることができる。さらに、インク回収機構9bは、センサSbとエアフィルタFbとの間で圧力伝達配管944に設けられたエアバッファ97bを有する。エアバッファ97bは、回収タンク921の容積より小さな容積を有し、センサSbからエアフィルタFbへ向かう空気をバッファする。このエアバッファ97bは、センサSbからエアフィルタFbに到るエアの経路を圧力伝達配管944のみで接続した場合と比較して、空気が当該経路を進行する速度を低下させる機能を有する。
【0054】
図5は吐出ヘッドおよびインク循環機構の外観構成を部分的に示す斜視図である。
図5では、互いに逆を向く水平方向Xの(+X)側と(-X)側と、互いに逆を向く水平方向Yの(+Y)側と(-Y)側とが示されている。
【0055】
図5に示すように、供給タンク911は、縦型供給タンク911Vと横型供給タンク911Hとを有する。縦型供給タンク911Vは、鉛直方向Zに長尺な直方体形状のタンクである。横型供給タンク911Hは、水平方向Yに長尺な円筒形状のタンクであり、縦型供給タンク911Vの水平方向Yの(-Y)側の側面から、水平方向Yに平行に延設されている。上述の
図3では、縦型供給タンク911Vおよび横型供給タンク911Hのうち、縦型供給タンク911Vが示されている。
【0056】
同様に、回収タンク921は、縦型回収タンク921Vと横型回収タンク921Hとを有する。縦型回収タンク921Vは、鉛直方向Zに長尺な直方体形状のタンクである。横型回収タンク921Hは、水平方向Yに長尺な円筒形状のタンクであり、縦型回収タンク921Vの水平方向Yの(-Y)側の側壁から、水平方向Yに平行に延設されている。上述の
図3では、縦型回収タンク921Vおよび横型回収タンク921Hのうち、縦型回収タンク921Vが示されている。
【0057】
縦型供給タンク911Vと縦型回収タンク921Vとは水平方向Xに隙間なく隣接する。また、横型供給タンク911Hと横型回収タンク921Hとは水平方向Xに間隔を空けて隣接する。
【0058】
水平方向Yに配列される複数の吐出ヘッドHは、横型供給タンク911Hおよび横型回収タンク921Hの鉛直方向Zの下側に配置される。特に、各吐出ヘッドHは、横型供給タンク911Hに鉛直方向Zの下側から対向する。そして、横型供給タンク911Hと吐出ヘッドHとが供給配管912によって接続され、横型回収タンク921Hと吐出ヘッドHとが回収配管922によって接続される。また、縦型供給タンク911Vが圧力伝達配管934によって圧力タンク931に接続され、縦型回収タンク921Vが圧力伝達配管944によって回収タンク921に接続される。
【0059】
供給タンク911に接続される圧力伝達配管934は、縦型供給タンク911Vの(+Y)側に設けられる。この圧力伝達配管934は、取付配管71、縦配管72、分岐配管73、横配管74、接続配管75および接続配管76を含む。取付配管71の取付端711は、縦型供給タンク911Vの(+Y)側の側面に取り付けられて、供給タンク911内の空間911Gに連通する。取付配管71は、取付端711から(+Y)側に突出して、鉛直方向Zの下側に屈曲する。取付配管71の下端712には、縦配管72の上端721が接続される。縦配管72は、取付配管71の下端から鉛直方向Zの斜め下側に延設される。縦配管72の下端722には、分岐配管73の上端731が接続される。分岐配管73は鉛直方向Zの下側に延設され、分岐配管73の下端732に後述する排出配管81および排液部82が接続される。分岐配管73は、上端731と下端732との間で(+X)側を向く分岐開口を有し、横配管74の(-X)側の端が分岐配管73の分岐開口に接続される。横配管74の(+X)側の端742に、エアバッファ97aの下端971が接続される。また、エアバッファ97aの上端972に、接続配管75の下端751が接続される。接続配管75は、下端751から斜め上側に延設されて、接続配管75の上端752にエアフィルタFaの一端が接続される。また、エアフィルタFaの他端に接続配管76の下端761が接続される。つまり、エアフィルタFaは、接続配管75の上端752と、接続配管76の下端761との間に配置される。接続配管76はその下端761から延設されて電磁弁Vaに接続される。
【0060】
つまり、圧力タンク931で生成された圧力P1は、接続配管76、エアフィルタFa、接続配管75、エアバッファ97a、横配管74、分岐配管73、縦配管72および取付配管71をこの順に介して、供給タンク911の空間911Gに付与される。圧力伝達配管944は、取付端711の取付先が縦型回収タンク921Vである点と、接続配管76の接続先が電磁弁Vbである点とを除いて、圧力伝達配管934と共通の構成を有する。
【0061】
また、印刷装置3は、分岐配管73の下端732から下方に延設された排出配管81と、排出配管81の下端に取り付けられた排液部82とを有する。排液部82は下方開口部と該下方開口部を閉塞する栓とを有する(いずれも不図示)。したがって、縦型供給タンク911Vから溢れたインクあるいは気泡は、取付配管71、縦配管72、分岐配管73、排出配管81を介して排液部82に到達する。排液部82は、当該排液部82に到達したインクあるいは気泡を貯留する。そして、作業者が排液部82の栓を開く操作を行うと、インクあるいは気泡が排液部82から下側に排出される。なお、縦型回収タンク921Vにつても排出配管81および排液部82が同様に構成されている
【0062】
エアバッファ97aは、エアバッファ本体973と、エアバッファ本体973の一端(下端)に取り付けられた取付部974と、エアバッファ本体973の他端(上端)に取り付けられた取付部975とを有する。エアバッファ本体973は、鉛直方向Zに延設された配管である。エアバッファ本体973の内径は、横配管74の内径および接続配管75の内径より大きい。ここで、配管74の内径と接続配管75の内径とは等しいが、これらは異なっていてもよい。取付部974は、エアバッファ本体973の下端から下側に突出する。この取付部974の下端部は、(-X)側に屈曲し、取付部974の(-X)側の端が上述したエアバッファ97aの下端971に相当する。取付部975は、エアバッファ本体973の上端から上側に突出し、取付部975の上端が上述したエアバッファ97aの上端972に相当する。
【0063】
図6は
図3のインク循環機構で実行可能な複数のモードを示す図である。
図6の各モードは制御部10の制御によって実行される。
図6では、ノーマルモード、第1非常モードおよび第2非常モードが示されている。
【0064】
ノーマルモードは、印刷装置3の動作が正常である場合に実行される。例えば、吐出ヘッドHのノズルHnから印刷媒体Mにインクを吐出する印刷動作の実行時には、ノーマルモードが実行される。ノーマルモードでは、電磁弁Vaおよび電磁弁Vbが開かれ、電磁弁Vcが閉じられる。排気ポンプ932は圧力タンク931に圧力P1を生成し、この圧力P1は供給タンク911のインク貯留部911Lに付与される。排気ポンプ942は圧力タンク941に圧力P2を生成し、この圧力P2は回収タンク921のインク貯留部921Lに付与される。その結果、圧力P1と圧力P2との圧力差によって、第2経路Cbに沿ってインクが送られる。また、循環ポンプ952は起動されており(ON)、第1経路Caに沿ってインクを送られる。さらに、回収ポンプ963および配管962が起動されており(ON)、第3経路Ccに沿ってインクが送られる。
【0065】
第1非常モードでは、排気ポンプ932、排気ポンプ942、循環ポンプ952、回収ポンプ963および供給ポンプ964はいずれも停止される。電磁弁Vaが閉じられて圧力タンク931と供給タンク911とが互いに遮断され、電磁弁Vbが閉じられて圧力タンク941と回収タンク921とが互いに遮断される。そして、電磁弁Vcが開かれて、供給タンク911の空間911Gと回収タンク921の空間921Gとが連通される。その結果、気液界面L1および気液界面L2それぞれには同じ圧力P3が付与され、第2経路Cbに沿ったインクの送液が停止する。
【0066】
第2非常モードは、電磁弁Vaおよび電磁弁Vbが開かれ、電磁弁Vcが閉じられる。排気ポンプ932は圧力タンク931に圧力P4(負圧)を生成し、排気ポンプ942は圧力タンク941に圧力P4を生成する。そのため、供給タンク911内の気液界面L1と回収タンク921内の気液界面L2とには同一の圧力P4が付与され、第2経路Cbに沿ったインクの送液が停止する。なお、圧力P4(非常時圧力)は、供給タンク911と吐出ヘッドHとの高さの差によって生じるインクの水頭圧と、回収タンク921と吐出ヘッドHとの高さの差によって生じるインクの水頭圧との差に抗して、ノズルHnからのインクの流出を防止する圧力である。また、循環ポンプ952、回収ポンプ963および供給ポンプ964はいずれも停止される。したがって、第1経路Caに沿ったインク送液が停止し、第3経路Ccに沿ったインクの送液が停止する。
【0067】
ところで、上述の通り、供給タンク911とエアフィルタFaとの間では、圧力伝達配管934に対してセンサSaが設けられている。また、回収タンク921とエアフィルタFbとの間では、圧力伝達配管944に対してセンサSbが設けられている。これに対して、制御部10は、ノーマルモードと第2非常モードとの間におけるモードの切り換えをセンサSaおよびセンサSbの検知結果に基づき行う。
【0068】
つまり、ノーマルモードの実行時において、制御部10はセンサSaおよびセンサSbそれぞれの検知結果を監視する。そして、センサSaおよびセンサSbの少なくとも一方がインクあるいは気泡を検知すると、制御部10は第2非常モードを実行する。さらに、制御部10は、UI11に警告を報知させる。
【0069】
以上に説明する実施形態では、供給タンク911(第1リザーバタンク)とエアフィルタFaとの間における圧力伝達配管934(第1空気配管)内のインクあるいは気泡を検知するセンサSaが具備されている。したがって、供給タンク911と圧力生成部93(圧力生成手段)とを接続する圧力伝達配管934へインクや気泡が溢れ出たことを、これらが圧力伝達配管934に設けられたエアフィルタFaに到達する前に検知することが可能となっている。
【0070】
同様に、回収タンク921(第1リザーバタンク)とエアフィルタFb(第1エアフィルタ)との間における圧力伝達配管944(第1空気配管内)のインクあるいは気泡を検知するセンサSbが具備されている。したがって、回収タンク921と圧力生成部94(圧力生成手段)とを接続する圧力伝達配管944へインクや気泡が溢れ出たことを、これらが圧力伝達配管944に設けられたエアフィルタFbに到達する前に検知することが可能となっている。
【0071】
また、センサSaとエアフィルタFaとの間で圧力伝達配管934に取り付けられたエアバッファ97aが具備されている。これによって、センサSaに到達したインクや気泡の進行をエアバッファ97aによって遅らせて、これらがエアフィルタFaに到達するのを抑えることができる。
【0072】
このエアバッファ97aの容積は、供給タンク911の容積より小さい。かかる構成では、エアバッファ97aを設けることで印刷装置3が大型化するのを抑えることができる。
【0073】
また、センサSbとエアフィルタFbとの間で圧力伝達配管944に取り付けられたエアバッファ97bが具備されている。これによって、センサSbに到達したインクや気泡の進行をエアバッファ97bによって遅らせて、これらがエアフィルタFbに到達するのを抑えることができる。
【0074】
また、エアバッファ97bの容積は、回収タンク921の容積より小さい。かかる構成では、エアバッファ97bを設けることで印刷装置3が大型化するのを抑えることができる。
【0075】
また、センサSaあるいはセンサSbがインクあるいは気泡を検知すると、UI11がユーザに報知を行う。かかる構成では、インクあるいは気泡が圧力伝達配管934あるいは圧力伝達配管944へ溢れ出たことに対してユーザが必要な対応を取ることができる。例えば、ユーザは、排液部82からインクあるいは気泡を抜く作業を実行できる。
【0076】
また、制御部10は、センサSaあるいはセンサSbがインクあるいは気泡を検知すると、同一の圧力P4(非常時圧力)を供給タンク911の気液界面L1および回収タンク921の気液界面L2に付与する。かかる構成では、インクあるいは気泡が圧力伝達配管934、944へ溢れ出たことをセンサSa、Sbが検知すると、回収タンク921と供給タンク911との間におけるインクの流れを停止させて、回収タンク921あるいは供給タンク911からインクあるいは気泡がそれ以上に溢れ出るのを抑えることができる。
【0077】
また、供給タンク911および回収タンク921は、吐出ヘッドH(記録ヘッド)より上側に配置される。これに対して、圧力P4(非常時圧力)は、供給タンク911と吐出ヘッドHとの高さの差によって生じるインクの水頭圧と、回収タンク921と吐出ヘッドHとの高さの差によって生じるインクの水頭圧との差に抗して、ノズルHnからのインクの流出を防止する圧力である。かかる構成では、吐出ヘッドHのノズルHnからのインクの流出を防止して、印刷装置3の内部や、印刷装置3が設置されるフロアがインクで汚されるのを回避できる。
【0078】
また、回収タンク921と供給タンク911との間でインクを送る循環ポンプ952が具備されている。これに対して、制御部10は、センサSaあるいはセンサSbがインクあるいは気泡を検知すると、循環ポンプ952を停止させる。かかる構成では、インクあるいは気泡が圧力伝達配管934あるいは圧力伝達配管944へ溢れ出たことをセンサSaあるいはセンサSbが検知すると、回収タンク921と供給タンク911との間におけるインクの流れを停止させて、回収タンク921あるいは供給タンク911からインクあるいは気泡がそれ以上に溢れるのを抑えることができる。
【0079】
また、インクを貯留するメインタンク96と、メインタンク96と供給タンク911との間でインクを送る回収ポンプ963と、メインタンク96と回収タンク921との間でインクを送る供給ポンプ964とが具備されている。これに対して、制御部10は、センサSaあるいはセンサSbがインクあるいは気泡を検知すると、回収ポンプ963および供給ポンプ964を停止する。かかる構成では、インクあるいは気泡が圧力伝達配管934あるいは圧力伝達配管944へ溢れ出たことをセンサSaあるいはセンサSbが検知すると、メインタンク96と供給タンク911との間のインクの流れおよびメインタンク96と回収タンク921との間のインクの流れを停止させて、回収タンク921あるいは供給タンク911からインクあるいは気泡がそれ以上に溢れるのを抑えることができる。
【0080】
以上に説明した実施形態では、供給タンク911および回収タンク921のそれぞれが本発明の「第1リザーバタンク」あるいは「第2リザーバタンク」の一例に相当し、吐出ヘッドHが本発明の「記録ヘッド」の一例に相当し、圧力生成部93および圧力生成部94のそれぞれが本発明の「第1圧力生成手段」あるいは「第2圧力生成手段」の一例に相当し、圧力伝達配管934および圧力伝達配管944のそれぞれが本発明の「第1空気配管」あるいは「第2空気配管」の一例に相当し、エアフィルタFaおよびエアフィルタFbのそれぞれが本発明の「第1エアフィルタ」あるいは「第2エアフィルタ」の一例に相当し、センサSa、Sbのそれぞれが本発明の「センサ」の一例に相当し、エアバッファ97a、97bのそれぞれが本発明の「エアバッファ」の一例に相当し、UI11が本発明の「報知部」の一例に相当し、循環ポンプ952が本発明の「循環ポンプ」の一例に相当し、回収ポンプ963および供給ポンプ964のそれぞれが本発明の「第1ポンプ」あるいは「第2ポンプ」の一例に相当する。
【0081】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、センサSaあるいはセンサSbがインクあるいは気泡を検知した際に実行されるモードは、第2非常モードに限られず、第1非常モードであってもよい。
【0082】
また、エアバッファ97a、97bのエアバッファ本体973の具体的構成は、上記の配管である必要ない。つまり、センサSa、SbからエアフィルタFa、Fbに到るエアの経路を圧力伝達配管934、944のみで接続した場合と比較して、空気が当該経路を進行する速度を低下させる機能を有するものであれば、エアバッファとして使用できる。
図7Aおよび
図7Bはエアバッファの変形例を模式的に示す図である。
図7Aでは、エアバッファ本体973は、円筒形を有するタンクである。このタンクの内径は、横配管74の内径および接続配管75の内径より大きい。また、
図7Bでは、エアバッファ本体973は螺旋状の配管である。つまり、螺旋状に配管を構成することで、配管の長さを確保して、エアバッファ本体973の容積を大きくしている。
【0083】
また、排気ポンプ932および排気ポンプ942の具体的な種類はダイヤフラムポンプに限られない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、インクを吐出する記録ヘッドと連通するリザーバタンクからのインクや気泡のオーバーフローに対応する技術の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
11…UI
911…供給タンク
921…回収タンク
93…圧力生成部
934…圧力伝達配管
94…圧力生成部
944…圧力伝達配管
952…循環ポンプ
963…回収ポンプ
964…供給ポンプ
97a…エアバッファ
Fa…エアフィルタ
Fb…エアフィルタ
H…吐出ヘッド
Sa…センサ