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特開2025-14255ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物、ポリウレタンフォーム製造用反応液セット、ポリウレタンフォーム、及びポリウレタンフォームの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014255
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物、ポリウレタンフォーム製造用反応液セット、ポリウレタンフォーム、及びポリウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20250123BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20250123BHJP
【FI】
C08G18/00 L
C08G18/00 H
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116671
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000113517
【氏名又は名称】BASF INOACポリウレタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栄作
(72)【発明者】
【氏名】大島 悠生
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DC25
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF12
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4J034DF22
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4J034DP19
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4J034DQ18
4J034EA11
4J034EA12
4J034GA05
4J034GA06
4J034GA23
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB06
4J034HB08
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB03
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4J034KD12
4J034KE02
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4J034MA18
4J034NA02
4J034NA03
4J034NA06
4J034NA08
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB01
4J034QB15
4J034QB16
4J034QC01
4J034RA06
4J034RA15
(57)【要約】
【課題】ポリウレタンフォームの外観を良好にするとともに、ポリウレタンフォームの熱伝導率を低減できる技術を提供する。
【解決手段】ポリオールと、ハイドロハロオレフィンと、アルカノールアミドと、を含む、ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールと、ハイドロハロオレフィンと、アルカノールアミドと、を含む、ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物。
【請求項2】
前記アルカノールアミドは、アルカノールアミンとカルボン酸がアミド結合した化合物であって、
前記カルボン酸は、炭素数1-30の飽和又は不飽和カルボン酸である、請求項1に記載のポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物と、イソシアネート成分と、を備えた、ポリウレタンフォーム製造用反応液セット。
【請求項4】
請求項3に記載のポリウレタンフォーム製造用反応液セットから得られた、ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物と、イソシアネート成分と、を混合する、ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物、ポリウレタンフォーム製造用反応液セット、ポリウレタンフォーム、及びポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2は、硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物を開示する。特許文献1の及び特許文献2のポリオール組成物は、発泡剤として1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを用いている。特許文献1のポリオール組成物は、相溶化剤としてエチルジグリコールアセテートを用いている。特許文献2のポリオール組成物は、相溶化剤としてγ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、メトキシプロピルアセテートを用いている。そして、これらの相溶化剤を用いることで、発泡剤として1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン用いていてもポリウレタンフォームの物性の低下を抑制できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-74886号公報
【特許文献2】特開2016-74887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載の技術は、ポリウレタンフォームの外観を良好にするとともに、ポリウレタンフォームの熱伝導率を低減する点において不十分である。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ポリウレタンフォームの外観を良好にするとともに、ポリウレタンフォームの熱伝導率を低減できる技術を提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕
ポリオールと、ハイドロハロオレフィンと、アルカノールアミドと、を含む、ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物。
〔2〕
前記アルカノールアミドは、アルカノールアミンとカルボン酸がアミド結合した化合物であって、
前記カルボン酸は、炭素数1-30の飽和又は不飽和カルボン酸である、〔1〕に記載のポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物。
〔3〕
〔1〕又〔2〕に記載のポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物と、イソシアネート成分と、を備えた、ポリウレタンフォーム製造用反応液セット。
〔4〕
〔3〕に記載のポリウレタンフォーム製造用反応液セットから得られた、ポリウレタンフォーム。
〔5〕
〔1〕又〔2〕に記載のポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物と、イソシアネート成分と、を混合する、ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、ポリウレタンフォームの外観を良好にするとともに、ポリウレタンフォームの熱伝導率を低減できる技術を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。また、本明細書において、各数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0008】
1. ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物
ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(以下、ポリオール組成物とも称する)は、ポリオールと、発泡剤と、界面活性剤と、を含む。発泡剤は、ハイドロハロオレフィンを含む。界面活性剤は、アルカノールアミドを含む。
【0009】
(1)ポリオール
ポリオールは、特に限定されない。各種のポリオールは単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。ポリオールの数平均分子量、官能基数、水酸基価は特に限定されない。ポリオールとしては、数平均分子量350-3000、官能基数が2-8、水酸基価(OHV)が150mgKOH/g-500mgKOH/gであるポリオールが好ましい。
【0010】
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、主鎖が炭素-炭素結合系ポリオールが例示される。これらの中でも、耐加水分解性の観点から、ポリエーテルポリオールが用いられることが好ましい。
ポリエーテルポリオールは、例えば、ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンポリオール、ポリマーポリオール、ポリオキシテトラメチレングリコールが挙げられる。
ポリエステルポリオールは、例えば、脂肪族系又は芳香族系の重縮合系ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールが挙げられる。
主鎖が炭素-炭素結合系ポリオールは、例えば、ポリブタジエンポリオール、イソプレンポリオール等のポリオレフィン系ポリオール、植物由来ポリオール、アクリルポリオールが挙げられる。
【0011】
(1.1)ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールとして、以下の開始剤(化合物)の1種又は2種以上に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド等の1種又は2種以上を付加せしめて得られるポリエーテルポリオール、又はポリテトラメチレンエーテルグリコールが例示される。以下の開始剤の中でも、ポリウレタンフォームに適度な硬さを付与し、耐燃焼性を向上する観点から、開始剤の少なくとも1種として4官能以上8官能以下のアルコールが用いられることが好ましい。
【0012】
(1.1.1)開始剤
(1.1.1.1)多価アルコール、及び多価アルコールのアルキレンオキシド付加物
多価アルコールの例:
〔2官能アルコール〕エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール
〔3官能アルコール〕グリセリン、トリメチロールプロパン
〔4官能アルコール〕ペンタエリスリトール
〔6官能アルコール〕ソルビトール
〔8官能アルコール〕ショ糖
(1.1.1.2)多価フェノール類のアルキレンオキシド付加物
多価フェノール類のアルキレンオキシド付加物の例:ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物
(1.1.1.3)多価ヒドロキシ化合物
多価ヒドロキシ化合物の例:りん酸、ベンゼンりん酸、ポリりん酸(例えばトリポリりん酸およびテトラポリりん酸)等
(1.1.1.4)フェノール-アニリン-ホルムアルデヒド三元縮合生成物
(1.1.1.5)アニリン-ホルムアルデヒド縮合生成物
(1.1.1.6)ポリアミン類
ポリアミン類の例:エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メチレンビスオルソクロルアニリン、4,4-および2,4’-ジフェニルメタンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン等
(1.1.1.7)アルカノールアミン類
アルカノールアミン類の例:トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等
【0013】
(1.1.2)ポリマーポリオール
ポリマーポリオールは、既述のポリエーテルポリオールに、アクリロニトリル、スチレン、アルキルメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させたポリオールである。
【0014】
(1.2)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールは、少なくとも2個のヒドロキシ基を有する化合物の1種又は2種以上と、少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物の1種又は2種以上との縮合により得られるポリエステルポリオール、又はカプロラクトン、メチルバレロラクトン等の環状エステルの開環重合体類である。
【0015】
(1.2.1)少なくとも2個のヒドロキシ基を有する化合物の例
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール1,3-および1,4-ブタンジオール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール
【0016】
(1.2.2)少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物の例
マロン酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ヘメリット酸
【0017】
(1.3)ポリカーボネートジオール
ポリカーボネートポリオールとしては、例えばブタンジオールやヘキサンジオール等の低分子ポリオールと、プロピレンカーボネートやジエチルカーボネート等の低分子カーボネートとのエステル交換反応よって得られるもの等が挙げられる。
【0018】
(1.4)ポリオレフィン系ポリオール
ポリオレフィン系ポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオールが例示される。
【0019】
(1.5)植物由来ポリオール
ポリオールとして、上記のポリオールに加え、植物由来ポリオールを含んでもよい。植物由来ポリオールとしては、例えば、ひまし油系ポリオール、大豆油系ポリオール、パーム油系ポリオール、パーム核油系ポリオール、ヤシ油系ポリオール、カシュー油系ポリオール、オリーブ油系ポリオール、綿実油系ポリオール、サフラワー油系ポリオール、ごま油系ポリオール、ひまわり油系ポリオール、アマニ油系ポリオール等が挙げられる。植物由来のポリオール類は、1分子中の水酸基の官能基数が通常2-3である。
ひまし油系ポリオールとしては、ひまし油、ひまし油とポリオールとの反応物、ひまし油脂肪酸とポリオールとのエステル化反応物等を挙げることができる。ひまし油又はひまし油脂肪酸と反応させるポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどの2価のポリオール、あるいはグリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ソルビトール等の3価以上のポリオールなどを挙げることができる。
大豆油系ポリオールとしては、大豆油に由来するポリオール、例えば、大豆油とポリオールとの反応物、大豆油脂肪酸とポリオールとのエステル化反応物等が挙げられる。大豆油又は大豆油脂肪酸と反応させるポリオールとしては、上記ひまし油の場合と同様のものを用いることができる。パーム油系ポリオール、カシュー油系ポリオール等についても、大豆油系ポリオールの場合と同様である。なお、植物由来ポリオールとして例示した各種のポリオールは、単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0020】
(2)発泡剤
発泡剤は、ハイドロハロオレフィンを含む。発泡剤は、好ましくはハイドロハロオレフィンと、水、炭素数4-8のアルカンからなる群より選ばれる1種以上とを含み、より好ましくはハイドロハロオレフィンと水とを含む。
【0021】
ハイドロハロオレフィンとしては、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)等を挙げることができる。
ハイドロフルオロオレフィンとしては、例えば、炭素数3-6のフルオロアルケンを挙げることができる。ハイドロクロロフルオロオレフィンとしては、例えば、炭素数3-6のクロロフルオロアルケンを挙げることができる。
より具体的には、トリフルオロプロペン、HFO-1234等のテトラフルオロプロペン、HFO-1225等のペンタフルオロプロペン、HFO-1233等のクロロトリフルオロプロペン、HCFO-1242zf等のクロロジフルオロプロペン、及びHCFO-1224yd等のクロロテトラフルオロプロペン等が挙げられる。より具体的には、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロブト-2-エン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yez)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd)、及び1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エン等が挙げられる。これらの中ではHFO-1233zdが好ましい。
これらのハイドロハロオレフィンは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
ハイドロハロオレフィンの含有量は、熱伝導率を低減する観点から、ポリオール100質量部に対して5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上が更に好ましい。他方、ハイドロハロオレフィンの含有量は、コストの面や触媒の失活を抑制する観点から、60質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、45質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、ハイドロハロオレフィンの含有量は、ポリオール100質量部に対して5質量部以上60質量部以下が好ましく、10質量部以上50質量部以下がより好ましく、20質量部以上45質量部以下が更に好ましい。
【0023】
水の含有量は特に限定されない。水の含有量は、低密度化の観点から、ポリオール100質量部に対して0質量部より多いことが好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上が更に好ましい。他方、水の含有量は、熱伝導率を低減する観点から、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、水の含有量は、ポリオール100質量部に対して0質量部より多く、20質量部以下が好ましく、0.5質量部以上10質量部以下がより好ましく、1.0質量部以上5質量部以下が更に好ましい。
【0024】
炭素数4-8のアルカンとしては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン等の環状アルカン、n-ペンタン、イソペンタン等の鎖状アルカンを挙げることができる。これらの中ではシクロペンタンが好ましい。これらの炭素数4-8のアルカンは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(3)界面活性剤
界面活性剤は、アルカノールアミドを含む。界面活性剤としてアルカノールアミドを用いることで、ハイドロハロオレフィンとポリオールとの相溶性を改善でき、ポリオール組成物の保存安定性を向上できると推測される。また、ハイドロハロオレフィンとポリオールとの相溶性を改善するための化合物として、アルカノールアミドを用いた場合には、ポリウレタンフォームの熱伝導率を好適に低減し得る。さらに、ハイドロハロオレフィンを配合すると、ポリオール組成物と、イソシアネート成分との混合性が悪くなり、その影響によって、ポリウレタンフォームの表面にボイドが発生して、外観が悪くなる懸念があった。他方、アルカノールアミドを用いた場合には、ハイドロハロオレフィンを配合しても、ポリウレタンフォームの外見を良好にできる。
【0026】
アルカノールアミドとしては、アルカノールアミンとカルボン酸がアミド結合した化合物が挙げられる。カルボン酸は、炭素数1-30の飽和又は不飽和カルボン酸であることが好ましい。カルボン酸の炭素数は、より好ましくは6-25であり、更に好ましくは10-20である。カルボン酸は、脂肪酸であるとよい。例えば、カルボン酸は、オレイン酸(18:1)、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、ペンタデシル酸(15:0)、パルミチン酸(16:0)、パルミトレイン酸(16:1)、マルガリン酸(17:0)、ステアリン酸(18:0)、バクセン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)、及びエレオステアリン酸(18:3)からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。なお、上記化学名の後ろの括弧内の数字は前者がカルボン酸の炭素数、後者が二重結合の数を示す。例えば、アルカノールアミンは、ジエタノールアミン、イソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、及び2-アミノエチル-エタノールアミンからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0027】
ポリオール組成物における、界面活性剤の配合量は、特に限定されない。界面活性剤の配合量は、ポリウレタンフォームの熱伝導率低減の観点から、ポリオール100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上が更に好ましい。他方、ポリウレタンフォームの諸物性を保持する観点、及び製造コストの観点から、18質量部以下が好ましく、12質量部以下がより好ましく、6質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、界面活性剤の配合量は、0.1質量部以上18質量部以下が好ましく、0.5質量部以上12質量部以下がより好ましく、1質量部以上6質量部以下が更に好ましい。
【0028】
(4)触媒(任意成分)
ポリオール組成物には、触媒が含まれていてもよい。従来公知の触媒を特に限定なく採用できる。各種の触媒は単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
触媒として、アミン触媒を用いることができる。アミン触媒の具体例を示す。
N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン等のモノアミン類、ピリジン、N-メチルモルフォリン、N-エチルモルフォリン等の環状モノアミン類、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、メチレン-ビス(ジメチルシクロヘキシルアミン)、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン等のジアミン類、N,N,N’,N’,N"-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’,N"-ペンタメチルジプロピレントリアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)-フェノール等のトリアミン類、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル-3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルエーテル、4,4’-オキシジメチレンジモルフォリン等のエーテルジアミン類、トリエチレンジアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,N’-ジエチルピペラジン、N,N-ジメチルアミノエチルモルフォリン、1-メチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ブトキシ-2-メチルイミダゾール等の環状ポリアミン類、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N,N’-トリメチルアミノプロピルエタノールアミン、2-(2-ジメチルアミノ-エトキシ)エタノール、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N-トリメチル-1,3-ジアミノ-2-プロパノール、N-メチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン等のアルカノールアミン類等が挙げられる。
ポリオール組成物における、アミン触媒の合計の配合量は、特に限定されない。アミン触媒の合計の配合量は、ポリウレタンの生成反応を十分に促進させる観点から、ポリオール100質量部に対して0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が更に好ましい。他方、ポリウレタンフォームの諸物性を保持する観点、及び製造コストの観点から、8質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、アミン触媒の合計の配合量は、ポリオール100質量部に対して0.05質量部以上8質量部以下が好ましく、ポリオール100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下がより好ましく、0.5質量部以上3質量部以下が更に好ましい。
【0029】
触媒として、金属触媒(有機金属触媒)を用いることができる。金属触媒の具体例を示す。
ジブチルチンオキサイド、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジオクテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンオレイルマレート、ジブチルチンジブチルマレート、ジブチルチンアセチルアセテート、1,1,3、3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサン、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、オクチル酸ビスマス、ビスマスバーサテイト等の有機金属化合物等が挙げられる。
ポリオール組成物における、金属触媒の合計の配合量は、特に限定されない。金属触媒の合計の配合量は、例えば、ポリオール100質量部に対して0.01質量部以上0.50質量部以下とすることができる。
【0030】
触媒として、イソシアネート三量化触媒を適宜用いてもよい。イソシアネート三量化触媒を用いる場合において、ポリオール組成物における、イソシアネート三量化触媒の合計の配合量は、特に限定されない。イソシアネート三量化触媒の合計の配合量は、例えば、ポリオール100質量部に対して0.01質量部以上0.50質量部以下とすることができる。
【0031】
(5)その他の成分(任意成分)
ポリオール組成物には、その他の成分として、難燃剤、整泡剤、着色剤、酸化防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。
難燃剤は、ポリウレタンフォームの製造において公知のものを用いることができる。例えば、トリス(2,3-ジクロロプロピル)フォスフォネート、水酸化アルミニウム、金属/アミン複合体、アンモニウムポリフォスフェート、フォスフィン、ネオペンチル臭化ポリエーテル、ジブロモプロパノール及びジブロモネオペンチルグリコール等が挙げられる。
整泡剤は、ポリウレタンフォームの製造において公知のものを用いることができる。整泡剤としては、例えば、シロキサン-ポリアルキレンオキサイド共重合体等のシリコーン系整泡剤が挙げられる。
着色剤及び酸化防止剤も、ポリウレタンフォームの製造において公知のものを用いることができ、特に限定されない。
これらの添加剤の含有量は、ポリウレタン樹脂の泡化反応及び樹脂化反応に影響を及ぼさない範囲内において、得られるポリウレタンフォームの所望の物性に応じて適宜調整することができる。添加剤の合計の配合量は、例えば、ポリオール100質量部に対して1質量部以上30質量部以下とすることができる。
【0032】
2. ポリウレタンフォーム製造用反応液セット
上記ポリオール組成物を用いて、2液型ポリウレタンフォーム製造用反応液セットを構成してもよい。ポリウレタンフォーム製造用反応液セットは、例えば、A液として上記ポリオール組成物と、B液としてイソシアネート成分と、を備えている。
【0033】
(2.1)イソシアネート成分
イソシアネート成分は、特に限定されない。イソシアネート成分としては、芳香族系イソシアネート、脂環式イソシアネート、及び脂肪族系イソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が好適に採用される。脂肪族系イソシアネートの1種類以上と、芳香族系イソシアネートの1種類以上を併用してもよい。
また、イソシアネート成分は、1分子中に2個のイソシアネート基を有する2官能のイソシアネート、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する3官能以上のイソシアネートのいずれであってもよく、単独であるいは複数組み合わせて使用してもよい。
例えば、2官能のイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート等の芳香族系イソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンイソシアネート等の脂肪族系イソシアネートを挙げることができる。
また、3官能以上のイソシアネートとしては、1-メチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、1,3,5-トリメチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、ビフェニル-2,4,4’-トリイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4,4’-トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン-4,6,4’-トリイソシアネート、4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’テトライソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4"-トリイソシアネート、ポリメリックMDI等を挙げることができる。
なお、その他ウレタンプレポリマーやカルボジイミド変性イソシアネート、イソシアヌレート変性イソシアネート、ビュレット変性イソシアネートも使用することができる。
【0034】
ポリウレタンフォーム製造用反応液セットは、ポリオール組成物(A液)とイソシアネート成分(B液)とを所定の混合割合で混合して使用できる。
ポリオール組成物とイソシアネート成分の混合割合は、特に限定されない。ポリオール組成物とイソシアネート成分の混合割合は、イソシアネートインデックスに応じて規定できる。イソシアネートインデックスは80以上300以下が好ましく、105以上115以下がより好ましい。イソシアネートインデックス(INDEX)は、ポリオール組成物中に含まれる活性水素基1モルに対するイソシアネート成分のモル数を100倍した値であり、[(イソシアネート成分のイソシアネート当量/ポリオール組成物中の活性水素の当量)×100]で計算される。
【0035】
3. ポリウレタンフォームの製造方法
ポリウレタンフォームの製造方法は特に限定されない。ポリウレタンフォームの製造方法は、例えば、上記ポリオール組成物(A液)と、イソシアネート成分(B液)と、を混合する。
ポリウレタンフォームを製造するにあたって、A液とB液を混合する手法は特に限定されない。例えば、A液とB液は、小型ミキサーや、一般のウレタンフォームを製造する際に使用する、注入発泡用の低圧、または高圧発泡機、スラブ発泡用の低圧、または高圧発泡機、連続ライン用の低圧、または高圧発泡機、吹き付け工事用のスプレー発泡機等を用いて混合できる。ポリウレタンフォームを発泡成形する場合には、A液とB液を混合した所定量の混合液を、所定の液温にてモールドに注入すればよい。
【0036】
4. ポリウレタンフォーム
ポリウレタンフォームは、ポリウレタンフォーム製造用反応液セットから得られる。なお、ポリウレタンフォーム製造用反応液セットは、現場発泡に用いられてもよく、製造工場内でA液とB液を混合してポリウレタンフォームを製造する際に用いられてもよい。
【0037】
ポリウレタンフォームは、軟質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォームのいずれであってもよい。ポリウレタンフォームは、断熱性の観点から、硬質ポリウレタンフォームであることが好ましい。なお、本開示においてポリウレタンフォームとは、ポリイソシアヌレートフォームを含むものとする。
【0038】
得られるポリウレタンフォームの物性は、用途等に応じて適宜設定できる。ポリウレタンフォームは、以下の物性を備えることが好ましい。
(4.1)見かけ全体密度
見かけ全体密度(JIS K7222:2005準拠)は、20kg/m-120kg/mが好ましく、25kg/m-80kg/mがより好ましく、30kg/m-60kg/mが更に好ましい。
(4.2)熱伝導率
熱伝導率(JIS A 1412-2:1999準拠)は、0.0290W/mK以下が好ましく、0.0250W/mK以下がより好ましく、0.0230W/mK以下が更に好ましく、0.0201W/mK以下が特に好ましい。熱伝導率の下限値は特に限定されない。熱伝導率は、通常、0.018W/mK以上である。
【0039】
ポリウレタンフォームの用途は特に限定されない。ポリウレタンフォームは、上記のような物性を備えるから、断熱材として有効である。それ以外にも、ポリウレタンフォームは、梱包材、充填材、緩衝材として好適である。
【実施例0040】
1. ポリオール組成物(A液)の製造
表1の割合で配合したポリオール組成物を調製した。実施例1は、界面活性剤としてアルカノールアミドを含むポリオール組成物の例である。比較例1,2は、相溶化剤として酢酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル又は6-ヘキサノラクトンを含むポリオール組成物の例である。比較例3は、界面活性剤及び相溶化剤を含まない(ブランク)のポリオール組成物の例である。
【0041】
各原料の詳細は以下の通りである。
・ポリエーテルポリオール1:スクロースを開始剤としたポリエーテルポリオール、分子量650、水酸基価450mgKOH/g
・ポリエーテルポリオール2:トルエンジアミンを開始剤としたポリエーテルポリオール、分子量561、水酸基価400mgKOH/g
・難燃剤:トリス(2,3-ジクロロプロピル)フォスフォネート(TCPP)
・整泡剤:シリコーン系界面活性剤、SZ1677、東レ・ダウコーニング社製
・アミン触媒:N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン
・アルカノールアミド:N,N-ジエタノールオレイン酸アミド、カルボン酸の炭素数18
・酢酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル
・6-ヘキサノラクトン
・水
・ハイドロハロオレフィン:ハイドロフルオロオレフィン HFO-1233zd、Solstice LBA、Honeywell社製
【0042】
【表1】
【0043】
イソシアネート成分(B液)として、以下の原料を用いた。
・イソシアネート成分:ポリメリックMDI、フォームライト200B、BASF INOAC ポリウレタン社製
【0044】
上記のポリオール組成物(A液)と、上記のイソシアネート成分(B液)とを混合して、モールド発泡によってポリウレタンフォームを得た。A液とB液は、表2に記載の比率(A液/B液、質量比)で混合した。モールド発泡用の型として、サイズ300mm×300mm×50mmの型枠を用いた。
【0045】
2. 評価方法
(1)熱伝導率
JIS A1412-2:1999にしたがい、モールド発泡によって得られた300mm×300mm×50mmのポリウレタンフォームを、200mm×200mm×25mmのサイズに切り出した。その後、熱伝導率測定機「AUTO-Λ HC-074」英弘精機株式会社製を使用して熱伝導率を測定した。なお、熱伝導率の測定は、モールド発泡によってポリウレタンフォームを得てから1週間後に行った。
【0046】
(2)外観
ポリウレタンフォームの見かけ全体密度は、JIS K7222:2005に準拠して測定した。
【0047】
ポリウレタンフォームの外観を目視にて以下の基準で評価した。
「良」:表面にボイド等が少なく、表面性が良好である。
「可」:表面にボイド等が観察されるが、実用可能である。
「不良」:表面にボイド等が、多数観察され、表面性が不良である。
【0048】
3. 結果
結果を表1に併記する。実施例1の熱伝導率は、比較例3(ブランク)より低かった。これに対して、比較例1,2の熱伝導率は、比較例3(ブランク)より高かった。アルカノールアミドを用いた場合に、熱伝導率を低減できることが示唆された。
【0049】
実施例1の外観の評価は「良」であった。これに対して、比較例3の外観の評価は「不良」であった。これは、比較例3のポリオール組成物は、アルカノールアミドも相溶化剤も含まないため、HFO-1233zdを含むポリオール組成物と、イソシアネート成分との混合性が悪いことに起因すると考えられる。本実施例によれば、アルカノールアミドを用いた場合に、ポリオール組成物とイソシアネート成分との混合性を改善して、ポリウレタンフォームの外観を向上できることが示唆された。
【0050】
以上の実施例によれば、ポリウレタンフォームの外観を良好にするとともに、ポリウレタンフォームの熱伝導率を低減できる技術を提供できる。
【0051】
本開示は上記で詳述した実施例に限定されず、本開示の範囲で様々な変形又は変更が可能である。