(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025142714
(43)【公開日】2025-10-01
(54)【発明の名称】燻製チョコレート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G   1/00        20250101AFI20250924BHJP        
   A23G   1/30        20060101ALI20250924BHJP        
【FI】
A23G1/00 
A23G1/30 
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024042226
(22)【出願日】2024-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】516067782
【氏名又は名称】株式会社リオ
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋  昌義
(72)【発明者】
【氏名】市川  正秀
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GG06
4B014GG14
4B014GL10
4B014GP01
4B014GP12
4B014GP14
4B014GP27
(57)【要約】
【課題】本発明は、燻製成分濃度を高く調整することのできる燻製チョコレート及びその製造方法、これに用いられる燻製室温固形油脂及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
  本発明の一観点に係る燻製室温固形油脂の製造方法は、室温固形油脂を加熱溶解して溶解した室温固形油脂とするステップ、溶解した室温固形油脂を液体燻製法により燻製して燻製室温固形油脂とするステップ、を備え、また、本発明の他の一観点に係る燻製チョコレートの製造方法は、主原料及び燻製室温固形油脂を加熱溶解して混合することによって溶解した燻製チョコレートとするステップ、溶解した燻製チョコレートを冷やして固めるステップ、を有する。
【選択図】  
図1
         
       
【特許請求の範囲】
【請求項1】
  室温固形油脂を加熱溶解して溶解した室温固形油脂とするステップ、
  前記溶解した室温固形油脂を液体燻製法により燻製して燻製室温固形油脂とするステップ、を備える燻製室温固形油脂の製造方法。
【請求項2】
  溶解した状態で液体燻製法によって燻製されて製造された燻製室温固形油脂。
【請求項3】
  主原料及び燻製室温固形油脂を含有する燻製チョコレート。
【請求項4】
  主原料及び燻製室温固形油脂を加熱溶解して混合することによって溶解した燻製チョコレートとするステップ、
  前記溶解した燻製チョコレートを冷やして固めるステップ、を有する燻製チョコレートの製造方法。
            
            
            
         
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、燻製チョコレート及びその製造方法に関し、更に、燻製室温固形油脂及びその製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
  チョコレートは、カカオマスやココアパウダー等のカカオ成分、更には、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエーパウダーなどの粉乳類、砂糖、乳糖、麦芽糖、果糖などの糖類を主原料とし、更にココアバター等の室温固形油脂を添加して製造される。
【0003】
  チョコレートに燻製成分を含有させた燻製チョコレートは、より嗜好性が高いものであり、多数の種類及びその製造が試みられている。例えば、下記特許文献1には、燻製成分を含むホワイトチョコレート及びその製造方法に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
  上記のように、チョコレート中に燻製成分を含ませる方法としては、燻製成分である燻煙をチョコレートそのものに接触させることがあげられる。より具体的に説明すると、いわゆる燻煙を用いる冷燻法や温燻法(燻煙粒子に電荷を与える方法を含む)等によって行っている。
【0006】
  一方で、燻製対象がチョコレートである場合、チョコレートが溶け出さない程度の低温に抑える必要があり、燻製温度の自由度が低く、また、表面的な燻製ゆえに燻香が弱く、香りの定着性が困難であるといった課題がある。具体的には、上記冷燻法等では、一般的に30℃以上になるとチョコレート原料の溶解が起こり保形性がなくなるので、30℃未満の冷燻法での燻香しか付与することができず、また、チョコレート原料の表面部分にしか燻煙を接触させられず、内部には燻製成分が届かないため味にムラが生じること、またこれを解消するためにテンパリングや成型などの加工を行うと、燻香が弱くなってしまうといった課題がある。また、燻香の調整すなわち燻製成分の調整も難しいといった課題がある。
【0007】
  そこで、本発明は、上記課題に鑑み、燻製成分濃度を高く調整することのできる燻製チョコレート及びその製造方法、これに用いられる燻製室温固形油脂及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
  本発明者は、上記課題について検討を行っていたところ、チョコレートに使用される室温固形油脂等の室温固形油脂(室温において固形を維持できる油脂であって、熱によって容易に溶解できるものをいう。具体的な定義は後述。)を加熱溶解し、溶解した状態で液体燻製法により燻煙に接触させることで燻製室温固形油脂を製造できること、更にこれを用いることでチョコレートを製造した後に燻製する場合に比べ格段に強い燻製風味を有するチョコレート(燻製チョコレート)を製造すること、その燻香の強さを調整できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
  すなわち、本発明の一観点に係る燻製室温固形油脂の製造方法は、室温固形油脂を加熱溶解して溶解した室温固形油脂とするステップ、溶解した室温固形油脂を液体燻製法により燻製して燻製室温固形油脂とするステップ、を備えるものである。
【0010】
  また、本発明の他の一観点に係る燻製室温固形油脂は、溶解した状態で液体燻製法によって燻製されて製造されたものである。
【0011】
  また、本発明の他の一観点に係る燻製チョコレートは、主原料及び燻製室温固形油脂を含有するものである。
【0012】
  また、本発明の他の一観点に係る燻製チョコレートの製造方法は、主原料及び燻製室温固形油脂を加熱溶解して混合することによって溶解した燻製チョコレートとするステップ、溶解した燻製チョコレートを冷やして固めるステップ、を有するものである。
【発明の効果】
【0013】
  以上、本発明によって、燻製成分濃度を高く調整することのできる燻製チョコレート及びその製造方法、これに用いられる燻製室温固形油脂及びその製造方法を提供することができる。特に、本発明によって提供される燻製チョコレートは、非常に強い燻香が付与されているだけでなく、嗜好性が非常に高まり、大変美味となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
            【
図1】実施形態において用いる液体燻煙装置の概略を示す図である。
 
          
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
  以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例において言及する具体的な例示にのみ限定されるわけではない。
【0016】
(燻製チョコレート)
  本実施形態に係る燻製チョコレート(以下「本燻製チョコレート」という。)は、主原料及び燻製室温固形油脂と、を含有するものである。
【0017】
  また、本燻製チョコレートの製造方法は、上記の構成を有する限りにおいて限定されるわけではないが、(S2-1)主原料及び燻製室温固形油脂を加熱溶解して混合することによって溶解した燻製チョコレートとするステップ、(S2-2)溶解した燻製チョコレートを冷やして固めるステップ、を有するものである。
【0018】
  本燻製チョコレートは、上記の記載から明らかなように、まず燻製室温固形油脂を製造しておき、燻製室温固形油脂と他の主原料を混合することで、燻製成分濃度を内部において均一かつ高く調整することができるようになる。燻製室温固形油脂は後述の記載からも明らかであるが、溶解した状態で液体燻製法を用いて製造することができるため、チョコレートが溶け出さない程度までの低い温度にしなければならないといった上記公知技術の制限はなく、むしろ溶解した状態で効率的に燻製するため、従来よりも非常に高い燻製成分を含ませることが可能となり、また主原料と練り合わせる原料を燻製したものとすることで、チョコレート内部において均一に燻製成分を分散させることが可能となる。
【0019】
  本燻製チョコレートにおける「チョコレート」とは、各国法制上の規定によって定義が異なることがあるが、本明細書では、主原料と燻製室温固形油脂を含むものに限られる。ここで本明細書において「主原料」とは、燻製室温固形油脂以外の原料であって、一般にチョコレートとして消費者に認識されるために必要な原料をいう。ただし、主原料から燻製室温固形油脂を除外しているのは、燻製室温固形油脂がチョコレートにおいて主要なものではない、という意味ではなく、本燻製チョコレートの説明を行うにあたり、燻製室温固形油脂とそれ以外の原料とを区別して説明することが簡便であるために単に文言上区別したに過ぎない。なお、燻製されていない室温固形油脂については、主原料に含んで解釈される。
【0020】
  ここで「主原料」としては、上記の通り、一般的にチョコレートとして認識されるために必要な原料であり、例えば、ココアマスやココアパウダーといったカカオ成分、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエーパウダー等の粉乳類、砂糖、乳糖、麦芽糖、果糖等の糖類、バニラ、ハーブエキス等の香料等を例示することができるがこれに限定されない。また、上記の通り、燻製室温固形油脂は除かれるが、燻製されていない室温固形油脂は主原料に含まれる。室温固形油脂については下記のとおりである。
【0021】
  また、本燻製チョコレートにおいて「室温固形油脂」とは、室温(具体的には20℃程度)において固形状態を維持できる油脂のことをいい、チョコレートに練りこまれた場合でも、そのチョコレートの形状を維持できる程度の硬さを有するものをいう。また、室温固形油脂は、加温によって溶解できるものであることも重要である。溶解された状態で流体好ましくは液体となることで、液体燻製法が適用可能となり、燻製成分を高く含有させることができるようになる。室温固形油脂の具体的な例については限定されるわけではないが、典型的にはココアバターであり、場合によって、パーム油脂、ヤシ油脂等の植物性油脂も該当する。特にココアバターの場合、固形状態においては十分な硬さを備えておりいわゆるスナップ性に優れる一方、口の中で所定の温度を超えた場合にすぐに溶解された状態となり滑らかな口触りを実現することができる観点から好ましい。なお、大豆油、菜種油、ヒマワリ油等は、植物性油脂であっても室温において液体状であるため該当しないのが一般的であるが、室温において固形状態を維持できる程度に加工(硬化、エステル交換、分別等)された場合は、この室温固形油脂となりうる。また、動物性油脂についても上記室温固形油脂に含まれうるが、固形状態における硬さと溶解された状態の滑らかさの観点からはやはり室温固形油脂としては植物性油脂の方が好適ではある。
【0022】
  また「燻製室温固形油脂」とは、燻製された室温固形油脂をいい、本燻製チョコレートにおける重要な要素となる。燻製された室温固形油脂を用いることで、他の原料と溶解するだけで簡便に燻製チョコレートを製造することができる。特に、燻製室温固形油脂に含まれる燻製成分の量を高くすることで燻香の高い燻製チョコレートとすることができ、また、この燻製室温固形油脂内の燻製成分量を調節することで、所望の燻製成分量の燻製チョコレートを製造することができる。
【0023】
  また、燻製室温固形油脂は、上記の特定を有する限りにおいて限定されるわけではないが、(S1-1)室温固形油脂を加熱溶解して溶解した室温固形油脂とするステップ、(S1-2)溶解した室温固形油脂を液体燻製法により燻製して燻製室温固形油脂とするステップ、により製造することが可能である。
【0024】
  本燻製チョコレートは、上記の通り、まず燻製室温固形油脂を製造し、その後この製造された燻製室温固形油脂と主原料とを用いて燻製チョコレートを製造する。以下この流れに沿って説明する。
【0025】
  まず、燻製室温固形油脂を製造するため、(S1-1)室温固形油脂を加熱溶解して溶解した室温固形油脂とするステップを実行する。本ステップによると、室温固形油脂を加熱溶解することで流動性の高い流体、具体的には液体とすることができ、これを次のステップで燻製することになる。室温固形油脂は、室温(具体的には20℃程度)において固形状となっているため、室温以上の温度にすることが好ましい。溶解する温度については、その室温固形油脂の溶解温度により適宜調整可能である。より具体的に、ココアバターを例に説明すると、一般に室温固形油脂の融点は33.8℃であるが、26℃以上になると急に溶け出す一方、また60℃になると変質する恐れがあるため、室温固形油脂がココアバターである場合、溶解温度は25℃以上60℃未満であることが好ましく、より好ましくは34℃以上45℃未満である。
【0026】
  また、燻製室温固形油脂を製造するため、(S1-2)溶解した室温固形油脂を液体燻製法により燻製して燻製室温固形油脂とするステップが重要である。このステップでは、燻製チョコレートになった場合にどの程度の燻製成分を含ませるかを考慮したうえで室温固形油脂に対する燻製成分量を調整することが好ましい。具体的には、燻製チョコレート全量に対してどの程度の燻製成分を含ませるかを考慮し、その分の燻製成分を室温固形油脂に含ませておくことが好ましい。本ステップは液体状の室温固形油脂に対する燻製であるためこの調整が容易である。
【0027】
  「液体燻製法」とは、加温して溶解した液体状の室温固形油脂に対して燻製を行う方法であって、この限りにおいて限定されるわけではないが、具体的には、例えば特許第4783463号公報に記載された方法に示されるように、液体状の室温固形油脂に対して燻煙を含む空気を泡などで供給し、接触させることができるものである限りにおいて限定されない。より具体的に上記特許技術につき説明すると、例えば、
図1で示す液体燻煙装置1を用いることが好適であり、具体的には(A)給煙口21及び排煙口22を備えた蓋2の給煙口21に可撓性を有する給煙管3を接続し、更にこの給煙管3に多数の微小径噴煙孔41を備えた噴煙室4を接続し、(B)この噴煙室4を収容容器5に配置し、(C)収容容器5に加温して液体状となった室温固形油脂Lを充填し、(D)上記蓋2の裏面側(収容容器側)にパッキン6を配置し、パッキン6を用いて蓋2と収容容器5とを組み合わせて閉じた空間を形成し、(E)燻煙室7内に燻材Sを配置して燃焼させて給煙管3を介して噴煙室4から収容容器5内に燻煙を供給する一方、排煙口22から排煙管8を介して収容容器5内の空気を排気するとともに、蓋2の給煙口21に燻煙を供給して噴煙室4の多数の微小径噴煙孔41から液体状の室温固形油脂Lに微小気泡の燻煙を噴出させて燻煙する方法をいう。なお、上記方法において、(C)収容容器5に加温して液体状となった室温固形油脂Lを投入するステップは、室温で固形状態となっている室温固形油脂Lを投入した後、収容容器5自体を加温して室温固形油脂を溶解させることとしてもよい。
 
【0028】
  また本ステップにおいて、燻製する際には燻煙を発生させることが好ましいが、この燻煙を発生させるためには燻材を用いることが一般的である。燻材としては、限定されるわけではないが、例えば木製チップであることが好ましく、木製チップとしては、例えばサクラチップ、ヒノキチップ、リンゴチップ、ブナチップ、ナラチップ、クルミチップ、ヒッコリーチップ、ウィスキーオークチップ、メープルチップなどを用いることができるがこれに限定されない。また、燻材としては、上記のほか、カカオの殻やバニラの房等のチョコレート原料を用いたチョコレート原料チップとすることも好ましい。
【0029】
  なお、本ステップで製造した燻製室温固形油脂は、その溶解した状態のまま次の本燻製チョコレートの製造ステップに移ってもよいが、室温まで放置し固形状態の燻製室温固形油脂としてもよい。
【0030】
  また、本燻製チョコレートの製造方法は、上記の通り、(S2-1)主原料及び燻製室温固形油脂を加熱溶解して混合することによって溶解した燻製チョコレートとするステップを有する。本ステップによると、燻製室温固形油脂を原料に用いることで、当初の原料ですでに燻製成分を含むものとすることができ、チョコレートとした状態で燻製せずとも燻製チョコレートとすることができる。この燻製成分の量は、主原料の量を考慮して調整させることができる。
【0031】
  また本ステップにおいて、主原料の種類及びその量、更には、これらと燻製室温固形油脂との割合については適宜調整可能であり限定されるものではないが、例えば口当たりを滑らかにしたい場合、燻製チョコレート全量を100重量%とした場合、燻製室温固形油脂は5重量%以上、好ましくは10重量%以上含むことが好ましく、更に好ましくは20重量%以上であるが、本燻製チョコレートは少量でも十分な燻製成分を含ませることが可能である。また、燻製室温固形油脂の燻製成分が多すぎると判断した場合は、燻製室温固形油脂の量を少なくする一方、適宜燻製していない室温固形油脂を添加することでその量のバランスを得ることが可能となる。
【0032】
  また、本ステップにおいて、加熱溶解する温度としては、上記室温固形油脂の場合と同様、上記室温固形油脂や主原料が溶解する温度以上であれば特に限定されない。また、加温手段としては直接的に熱を加えることとしてもよいが、主原料及び燻製室温固形油脂を物理的に攪拌しこの撹拌により生じる摩擦熱による加温であってもよい。
【0033】
  また、本燻製チョコレートの製造方法は、(S2-2)溶解した燻製チョコレートを冷やして固めるステップを有する。このステップは、溶解した燻製チョコレートを固めることで普段製品として流通する固形状のチョコレートとするために必要なステップである。このステップ自体は特に冷熱を供給するというより、そのまま放置し室温に下げる処理であってもよいが、例えば型等に溶解した燻製チョコレートを投入し、成型することが好ましい。これにより見た目もきれいな燻製チョコレートとなる。なお、チョコレートを冷やし固める動作において、一度温度を降温した後再び上昇させてからさらに冷却して固化するいわゆるテンパリングを行うことは好ましい処理である。
【0034】
  以上、本実施形態によると、燻製成分濃度を高く調整することのできる燻製チョコレート及びその製造方法、これに用いられる燻製室温固形油脂及びその製造方法を提供することができる。特に、本実施形態の燻製チョコレートは、溶解した燻製室温固形油脂を混合するため、内部まで均一かつ十分な燻香を付与することができる。また、本実施形態では、単一の原料を燻製しているため、燻香の調整が容易で、その液体の含有量により燻香が定量化できるので、燻香の強弱が容易である。
【0035】
  また他の方法として燻煙発生機により木製チップを燃やした燻煙を、コンチェでコンチング中のチョコレートの上面に導入して、チョコレート原料と燻煙を接触させる方法があるが、燻煙がチョコレートの上面にしか接触させられないため、ほとんどの燻煙はチョコレートに接触せず、チョコレートの燻香が弱いうえ燻香の定量性が困難である。
【実施例0036】
  ここで、実際に燻製室温固形油脂及び燻製チョコレートを製造し、本発明の効果について確認した。以下具体的に説明する。
【0037】
(燻製ココアバター)
  まず、室温固形油脂としてココアバターを加熱用タンクに投入した後湯煎加熱し、ココアバターの温度を45℃まで昇温して溶解した。なお、本実施例ではココアバターを湯煎して液化をしているが、加温方法は直火・電熱器及び電磁波による加温などによって液化してもよく、加温方法の制限又は限定をするものではない。
【0038】
  次に、特許第4783463号の液体燻製技術を用いて約40分燻製した。具体的には、(A)給煙口及び排煙口を備えた蓋の給煙口に可撓性を有する給煙管を接続し、更にこの給煙管に多数の微小径噴煙孔を備えた噴煙室を接続し、(B)この噴煙室を収容容器に配置し、(C)収容容器に加温して液体状となったココアバターを投入し、(D)上記蓋の裏面側(収容容器側)にパッキンを配置し、パッキンを用いて蓋と収容容器とを組み合わせて閉じた空間を形成し、(E)排煙口から収容容器内の空気を排気するとともに、蓋の給煙口に燻煙を供給して噴煙室の多数の微小径噴煙孔から液体状となったココアバターに微小気泡の燻煙を噴出させて上記の時間燻煙した。なお、燻煙発生に用いた木製チップはサクラチップとした。なお、液体燻製は特許第4783463号の液体燻製技術としているが、液体燻製技術はこれに制限又は限定を意味するものではない。また燻煙発生に用いたチップはサクラチップとしているが、燻煙発生に用いる燻材は木製チップに制限又は限定をしない。
【0039】
  この結果、燻製されたココアバターを得ることができた。ココアバターについては、燻製がなされており、官能検査によって、しっかりと燻製されていることを確認した。
【0040】
  また、この燻製の客観的な測定を行うべく、ガスクロマトグラフィーを用いてこの燻製ココアバターについての測定を行った。本測定は、燻製により著しく変化する3つのリテンションタイムを特定及び観測し、全体的な燻香の数値化(ピーク強度観測)を行うことで確認した。なお、装置を使った燻香の数値化は安定した製造に非常に重要な事項であるが、複数人のパネラー(確認者)を用いた官能検査でも構わない。下記に、実施例で用いたガスクロマトグラフィーの条件及び3つのリテンションタイム及びそのピーク値について示す。
【0041】
(ガスクロマトグラフィー条件)
メーカー        :ジーエルサイエンス株式会社
機種            :GC4000plus
データ処理ソフト:OpenLAB  CDS  EZ  Chrom  Edition
                  GC―4000条件
カラム          :InertCap  Pure-WAX
                  (0.25mm×30m.df=0.25μm)
カラム温度      :40℃(5min)―5℃/min―250℃(13min)
注入口温度      :250℃
注入口圧力      :He  80kPa
スプリット比    :スプリットレス
インサート      :スプリットレス用
検出器          :FID
検出器温度      :260℃
レンジ          :10~0
水素流量        :35mL/min
Air流量      :250mL/min
メイクアップ流量:N2  30mL/min
【0042】
(観測リテンションタイム)
(1)15.5min  ピーク強度:13000μVolts
(2)18.1min  ピーク強度:  5000μVolts
(3)20.4min  ピーク強度:30000μVolts
【0043】
  以上の結果、非常に強い燻香を有する燻製ココアバターを製造することができることを確認した。具体的には、燻製していないココアバターでは、上記リテンションタイムは観測できないが、本実施例における燻製ココアバターではしっかりと上記リテンションタイムが観測でき、しかもそのピーク強度は5000μVolts程度は生じており、十分に燻製されていることを確認した。
【0044】
(燻製チョコレート)
  次に、溶解した燻製ココアバター10%と溶解したカカオマス60%を混合したものに砂糖30%を少しづつ投入することで溶解したチョコレートを製造し、更にこれを室温まで冷却し、固化した燻製チョコレートを得た。この燻製チョコレートに対して使用した燻製ココアバターも、上記と同様のガスクロマトグラフィーを行ったところ、同様のリテンションタイムにおけるピークを確認することができたうえ、出来上がった燻製チョコレートの燻香も十分に高く、官能試験においても十分に燻製されていることを確認した。
【0045】
  以上、本発明の効果を確認することができた。