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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025142793
(43)【公開日】2025-10-01
(54)【発明の名称】把持装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20250924BHJP
【FI】
B25J15/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024042354
(22)【出願日】2024-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】丸井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕之
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS12
3C707DS01
3C707ES03
3C707ES04
3C707ET08
3C707EU03
3C707EU07
3C707EU11
3C707EU16
3C707EV02
3C707EV04
3C707EV10
3C707EV27
3C707HS14
3C707HS19
3C707HS27
3C707KS03
3C707KS04
3C707KT01
3C707LT12
3C707MT01
3C707MT09
3C707MT10
3C707NS02
3C707NS09
3C707NS17
3C707NS26
(57)【要約】
【課題】段取り替え時に把持する対象のワークの高さが異なる場合でも、簡単に爪の根元から揺動回転軸までの長さを変更することができる把持装置を提供する。
【解決手段】本開示の把持装置6は、ワークWを把持または解放する複数の爪部24と、開閉方向に爪部24を移動させる把持部22と、爪部24で把持されたワークWを開閉方向に平行な回転軸心回りに回転させる回転機構32とを備えている。把持部22は、爪部24が取り付けられて開閉方向に移動する把持機構26と、把持機構26を開閉方向に移動させる第1駆動源28とを有している。回転機構32は、複数の爪部24の各々に取り付けられて爪部24に対して回転軸心回りに回転可能な回転部34と、少なくとも一つの爪部24に取り付けられて回転部34を回転軸心回りに回転駆動させる第2駆動源36とを有している。回転機構32は、爪部24とともに開閉方向に移動する。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持または解放する複数の爪部と、
前記ワークを把持する把持方向および前記ワークを離す解放方向に前記爪部を移動させる把持部と、
前記爪部で把持された前記ワークを把持方向および解放方向に平行な回転軸心回りに回転させる回転機構と、
を備え、
前記把持部は、前記爪部が取り付けられて把持方向および解放方向に移動する把持機構と、前記把持機構を把持方向および解放方向に移動させる第1駆動源とを有し、
前記回転機構は、
複数の前記爪部の各々に取り付けられて前記爪部とともに把持方向および解放方向に移動し、前記爪部に対して前記回転軸心回りに回転可能な回転部と、
少なくとも一つの前記爪部に取り付けられて前記爪部とともに把持方向および解放方向に移動し、前記回転部を前記回転軸心回りに回転駆動させる第2駆動源と、
を有している把持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の把持装置において、前記第2駆動源がモータである把持装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の把持装置において、前記回転機構は、さらに、前記第2駆動源の動力を前記回転部に伝達する動力伝達機構を有し、
前記第2駆動源の回転軸が、前記回転部の回転軸に直交している把持装置。
【請求項4】
請求項3に記載の把持装置において、前記動力伝達機構が傘歯車である把持装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の把持装置において、前記回転機構は、さらに、前記第2駆動源の動力を前記回転部に伝達する動力伝達機構を有し、
前記第2駆動源の回転軸が、前記回転部の回転軸に平行にオフセットされている把持装置。
【請求項6】
請求項5に記載の把持装置において、前記動力伝達機構が、帯状の無端動力伝達部材である把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品、電子部品等のワークを把持する把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多関節ロボット等の先端に設置されたハンドにおいて、爪を直線方向に開閉することでワークを把持し、爪で把持した状態でワークの姿勢を変更するものがある(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5617512号公報
【特許文献2】特許6029561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のハンドは、爪の開閉方向に延びるシャフトに回転可能にナットが設けられ、このナットを介して爪に回転を伝達することで、ワークを把持したまま爪を揺動させている。特許文献2のハンドは、爪の開閉方向に延びるボールねじにナットが螺合され、このナットを介して爪に回転を伝達することで、ワークを把持したまま爪を揺動させている。このように、特許文献1および2のハンドでは、ワークを把持する機構と、把持したワークの姿勢を変更する機構とが一体になっている。そのため、例えば、段取り替え時に把持する対象のワークの高さが異なる場合、爪の根元から揺動回転軸までの長さを簡単に変更することができなかった。
【0005】
本発明の目的は、段取り替え時に把持する対象のワークの高さが異なる場合でも、簡単に爪の根元から揺動回転軸までの長さを変更することができる把持装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の把持装置は、ワークを把持または解放する複数の爪部と、前記ワークを把持する把持方向および前記ワークを離す解放方向に前記爪部を移動させる把持部と、前記爪部で把持された前記ワークを把持方向および解放方向に平行な回転軸心回りに回転させる回転機構とを備えている。前記把持部は、前記爪部が取り付けられて把持方向および解放方向に移動する把持機構と、前記把持機構を把持方向および解放方向に移動させる第1駆動源とを有している。前記回転機構は、複数の前記爪部の各々に取り付けられて前記爪部に対して前記回転軸心回りに回転可能な回転部と、少なくとも一つの前記爪部に取り付けられて前記回転部を前記回転軸心回りに回転駆動させる第2駆動源とを有している。前記回転機構は、前記爪部とともに把持方向および解放方向に移動する。
【0007】
この構成によれば、把持部の把持機構に取り付けられた爪部の先端に、回転機構の回転部が別途設けられており、回転部が、爪部の把持方向および解放方向に平行な回転軸心回りにワークを回転させる。把持機構は第1駆動源の動力で移動し、回転部は第2駆動源の動力で回転する。つまり、把持機構と回転部は独立して設けられている。これにより、段取り替え時に把持する対象のワークの高さが異なる場合であっても、爪部およびこれに支持された回転機構の交換で済み、把持部を変更する必要はない。その結果、爪部の根元から回転軸までの長さを簡単に変更することができる。
【0008】
本発明において、前記第2駆動源がモータであってもよい。この構成によれば、ワークの姿勢を任意の傾きに容易に変更することができる。
【0009】
本発明において、前記回転機構は、さらに、前記第2駆動源の動力を前記回転部に伝達する動力伝達機構を有し、前記第2駆動源の回転軸が前記回転部の回転軸に直交していてもよい。この場合、前記動力伝達機構は、例えば、傘歯車である。この構成によれば、把持方向または解放方向に第2駆動源が突出する突出量を小さくできる。
【0010】
本発明において、前記回転機構は、さらに、前記第2駆動源の動力を前記回転部に伝達する動力伝達機構を有し、前記第2駆動源の回転軸が、前記回転部の回転軸に平行にオフセットされていてもよい。この構成によれば、第2駆動源を把持方向または解放方向の内側に配置することができるので、把持方向または解放方向に第2駆動源が突出する量を小さくできる。
【0011】
この場合、前記動力伝達機構は、帯状の無端動力伝達部材であってもよい。帯状の無端動力伝達部材は、例えば、タイミングベルトである。この構成によれば、第2駆動源を回転部から離して配置できるので、第2駆動源の配置の自由度が高くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の把持装置によれば、段取り替え時に把持する対象のワークの高さが異なる場合であっても、爪部の根元から回転軸までの長さを簡単に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る把持装置を備えたピッキングシステムを示す斜視図である。
図2A】同把持装置を示す正面図である。
図2B図2Aの同把持装置をIIB方向から見た側面図である。
図3】同把持装置を示す縦断面図である。
図4A】同把持装置の第1変形例を示す正面図である。
図4B】同把持装置を図4AのIVB方向から見た側面図である。
図5】同把持装置の第2変形例を示す正面図である。
図6】同把持装置の第3変形例を示す正面図である。
図7】同把持装置の第4変形例を示す正面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る把持装置を示す斜視図である。
図9】従来の把持装置を備えたピッキングシステムを示す斜視図である。
図10】同ピッキングシステムでワークの表裏を反転させる反転工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明において、図1は本発明の第1実施形態に係る把持装置を備えたピッキングシステムSYを示す斜視図である。
【0015】
[第1実施形態]
[システム全体]
図1に示すように、ピッキングシステムSYは、第1のコンベア2により搬送されたワークWを、ロボット4および把持装置の一種であるハンド6によってピックアップして次工程の第2のコンベア3に供給する。詳細には、ピッキングシステムSYは、ワークWを搬送する第1のコンベア2と、第1のコンベア2から第2のコンベア3にワークWを搬送するロボット4と、ロボット4のアーム10の先端に取り付けられたハンド6とを備えている。本発明のハンド6は、ワークWを第2のコンベア3に置く際、ワークWの向きを揃える。
【0016】
本実施形態では、ワークWは、矩形の板状の部材である。ただし、ワークWは、これに限定されず、例えば、機械部品、電子部品、プラスチック部品、薬品、医療品、食料品、雑貨類等であってもよい。以下の説明において、ワークW上の「F」は表面を表し「B」は裏面を表す。
【0017】
第1のコンベア2、第2のコンベア3、ロボット4およびハンド6は、制御装置12により同期制御される。具体的には、第1のコンベア2上のワークWの位置および姿勢がワーク検出手段(図示せず)により検出され、検出された位置にロボット4のアーム10が移動し、検出された姿勢に応じた角度でハンド6がワークWを把持する。さらに、ワークWの向きを揃えた後、ロボット4のアーム10が第2のコンベア3に移動し、ハンド6がワークWを離す。以降、この動作が繰り返される。
【0018】
[ロボット]
本実施形態のロボット4は、複数のアーム10を有し、複数の回転軸周りにアーム10が回動する多関節ロボットである。ロボット4は、第1のコンベア2と、第2のコンベア3との間を往復旋回する。本実施形態のロボット4は、床面に固定された基体部20と、3つの第1~3のアーム10A,10B,10Cとを有している。
【0019】
基部20は、その軸心AX1が鉛直方向に延びる円柱形状の部材である。基部20は、床面に対して、第1の回転軸心AX1回りに旋回自在に連結されている。本実施形態では、第1の回転軸心AX1は、基部20の軸心AX1に一致している。
【0020】
第1のアーム10Aは、直線状に延びる棒状の部材で、基端部10Aaが基体部20の上部に、水平方向の第2の回転軸心AX2回りに旋回自在に連結されている。第2のアーム10Bは、直線状に延びる棒状の部材で、基端部10Baが、第1のアーム10Aの先端部10Abに、水平方向の第3の回転軸心AX3回りに旋回自在に連結されている。第2のアーム10Bは、第1のアーム10Aの先端部10Abに対して水平方向の第4の回転軸心AX4回りに回動自在である。
【0021】
第3のアーム10Cは、直線状に延びる棒状の部材で、第2のアーム10Bの先端部10Bbに水平方向の第5の回転軸心AX5回りに旋回自在に連結されている。第3のアーム10Cは、第2のアーム10Bの先端部10Bbに対して鉛直方向の第6の回転軸心AX6回りに回動自在である。第3のアーム10Cの下端10Caに、前記ハンド6が取り付けられている。
【0022】
基部20および各アームのアーム10A,10B,10Cは、アクチュエータ(図示せず)により駆動される。アクチュエータは、例えば、電動モータであるが、これに限定されない。本実施形態では、ロボット4は、床面に固定されているが、固定されていなくてもよい。また、ロボット4は、本実施形態の構造に限定されず、任意の作業用ロボットを適用できる。
【0023】
[ハンド]
図2Aおよび図2Bを用いてハンド6の構成を説明する。上述のように、ハンド6は、ワークWを把持する把持装置の一種である。ハンド6は、第1のコンベア2(図1)上のワークWをピックアップし、第2のコンベア3(図1)でワークWを置く。図2Aに示すように、ハンド6は、ワークWを把持または解放する複数の爪部24と、ワークWを把持する把持方向D1およびワークWを離す解放方向に爪部24を移動させる把持部22とを有している。
【0024】
把持部22は、爪部24が取り付けられて把持方向D1および解放方向D2に移動する把持機構26と、把持機構26を把持方向D1および解放方向D2に移動させる第1駆動源28とを有している。詳細には、把持部22は箱型の把持部本体30を有しており、把持部本体30の内部に第1駆動源28が収納されている。
【0025】
把持機構26は、把持部本体30から突出するように設けられ、第1駆動源28の動力により、把持部本体30に対して把持方向D1および解放方向D2に相対移動する。本実施形態では、把持機構26は2つ設けられている。把持機構26の数はこれに限定されず、例えば、3つ以上であってもよい。
【0026】
本実施形態では、把持機構26が閉じることで(閉方向に移動することで)、ワークWが爪部24で把持される。すなわち、本実施形態では、ワークWを把持する把持方向D1が閉方向で、ワークWを離す解放方向D2が開方向である。以下の説明において、把持方向D1を閉方向D1といい、解放方向D2を開方向といい、「把持方向および解放方向」を「開閉方向」という。
【0027】
第1駆動源28は、例えば、圧縮空気により駆動されるエアシリンダである。ただし、第1駆動源28は、これに限定されず、油圧モータ、電動モータ等であってもよい。本実施形態では、1つの第1駆動源28で2つの把持機構26を駆動している。ただし、各把持機構26に第1駆動源28を設けてもよい。
【0028】
ハンド6は、さらに、ワークWを回転させる回転機構32を備えている。回転機構32は、爪部24で把持されたワークWを開閉方向に平行な回転軸心X1回りに回転させる。回転機構32は、爪部24に対して回転軸心X1回りに回転可能な回転部34と、回転部34を回転軸心X1回りに回転駆動させる第2駆動源36とを有している。
【0029】
回転部34は、複数の爪部24の各々に取り付けられ、爪部24とともに開閉方向に移動する。第2駆動源36は、少なくとも一つの爪部24に取り付けられ、爪部24とともに開閉方向に移動する。このように、回転機構32は、爪部24とともに開閉方向に移動する。
【0030】
第2駆動源36は、例えば、ばねを用いて機械的に回転させる構造、エアシリンダのような空気圧を利用した構造、油圧アクチュエータのような油圧を利用した構造、モータのような電気を利用した構造等を用いることができる。また、第1駆動源28が空気圧を利用した構造で、第2駆動源36が電気を利用した構造というように、第1駆動源28と第2駆動源36の構造が異なっていてもよい。本実施形態では、2つの爪部24の一方にのみ第2駆動源36が取り付けられているが、両方に取り付けられてもよい。
【0031】
本実施形態では、回転部34は、爪部24の先端に設けられている。図3に示すように、回転部34は、円盤状の回転部本体38と、回転部本体38の端面から開方向に延びる軸体40とを有している。回転部本体38の中心線と軸体40の中心軸は一致している。また、本実施形態の一対の回転部34,34は、中心軸が一致している。
【0032】
本実施形態の回転部34は、金属製である。ただし、回転部34の材質は、これに限定されず、例えば、樹脂製であってもよい。また、回転部34の回転部本体38の閉方向を向く把持面34aに、ゴムシート、ゴム製の凹凸等を設けてもよい。これにより、ワークWを把持する際、あるいは把持したワークWを回転させる際に、ワークWが滑るのを防ぐことができる。
【0033】
爪部24の先端部に、開閉方向を向く貫通孔24aが設けられている。本実施形態では、この貫通孔24aに、転がり軸受42を介して回転部34の軸体40が挿通されている。これにより、回転部34が爪部24に回転自在に支持されている。貫通孔24aの軸心は、回転部34の中心軸に一致する。つまり、貫通孔24aの軸心が、回転部34の回転軸心X1に一致する。本実施形態では、転がり軸受42が用いられているが、転がり軸受以外の軸受であってもよく、滑り軸受であってもよい。
【0034】
一方の回転部34の軸体40の先端に、第2駆動源36が接続されている。本実施形態では、第2駆動源36の回転軸心RAと回転部34の回転軸心X1は一致している。第2駆動源36が接続されない他方の回転部34の軸体40の先端には、抜け止め部材45が取り付けられている。抜け止め部材45は、例えば、ナットである。
【0035】
ハンド6がワークWを把持した状態で第2駆動源36が駆動すると、一方の回転部34が回転し、この回転がワークWを介して他方の回転部34にも伝わり、他方の回転部34も回転する。つまり、ワークWが回転軸心X1周りに回転する。
【0036】
一般的に2つ爪部24を有する把持装置6は、把持するワークWの大きさに応じて、把持部22自体のサイズ、開閉ストローク、爪部24の長さ等を変更する必要がある。図9は、従来のピッキングシステムSY1を示す。このピッキングシステムSY1の把持装置100は、本実施形態の把持装置(ハンド)6から回転機構32を省略した構造である。
【0037】
従来の把持装置100では、把持したワークWの姿勢を変更するためには、ロボット4の各アーム10A,10B,10Cを動作させる必要がある。特にワークWの表裏を反転させる場合には、仮置台102を用意して、仮置台102にワークWを一度置いてから持ち替える工程が必要であった。図9にワークWの表裏を反転させる工程を示す。
【0038】
図10の(a)第1工程では、第1のコンベア2でワークWはランダムな姿勢で流れてくる。そのワークWをカメラなどで姿勢と表裏を判別して、ロボット4(図9)に設置した把持装置100で把持する。つぎに、図10の(b)第2工程では、把持したワークWを仮置台102に一度置く。つづいて、図10の(c)第3工程では、把持装置100の姿勢を変更して、反対方向から把持装置100でワークWを把持し直す。最後に、図10の(d)第4工程では、把持し直したワークWを第2のコンベア3に向きを揃えて置く。
【0039】
ここで、第1のコンベア2上のワークWに対して、上方からではなく水平方向からアプローチすれば、第2および第3工程のようなワークWを把持し直す必要がない場合もある。ただし、この場合、ロボット4と第1のコンベア2との間に大きなスペースが必要となる。また、ワークWの向きによっては、水平方向からアプローチすると、把持できないこともある。
【0040】
[作用効果]
上述の本実施形態の構成によれば、図2Aに示すように、ワークWを回転させるための回転部34および第2駆動源36を把持機構26の第1駆動源28と別体にすることで、段取り替え時に容易に付け替えることが可能となる。その結果、把持する対象のワークWの高さが異なる場合であっても、爪部24とともに回転機構32を交換することで、容易に対応できる。
【0041】
具体的には、図1に示すワークWを把持した後、回転部34によりワークWを回転させることで、把持し直すことなくワークWの表裏を反転することができる。これにより、図10に示す(b)第2工程と(c)第3工程が省略可能となり、搬送時間を短縮できる。また、ワークWの姿勢を変更するための仮置き台102も不要となり、省スペース化も実現できる。
【0042】
さらに、図9に示す従来構造の場合、ワークWの表裏を反転させるためにワークWを把持し直す際に、多関節ロボット4の各アーム10A,10B,10Cが大きく動く必要がある。そのため、ロボット4の動作に時間がかかってしまううえに、周辺物との干渉を考慮しなければならない。本実施形態によれば、把持し直すことなくワークWの表裏を反転することができるので、これらの課題を解決できる。また、図2Aに示す爪部24の先端に設置した回転部34でワークWを回転させるので、把持機構26を含む爪部24全体を回転させるよりも慣性モーメントが小さくなる。そのため、ワークWをより高速に回転させることができる。
【0043】
図4Aおよび図4Bは、本実施形態の第1変形例に係る把持装置(ハンド)6Aを示す。第1変形例では、回転部34を回転させる第2駆動源36Aが電動モータで構成されている。この例では、電動モータ36Aが回転部34に直結されている。具体的には、電動モータ36Aの回転軸RAが、回転部34が回転軸心X1と一致している。図示の例では、電動モータ36Aは2つ爪部24,24の一方に設置し、他方の回転部34はそれに従動するように構成されているが、2つ爪部24,24の両方に電動モータ36Aを設置してもよい。
【0044】
第2駆動源36Aが電動モータで構成することにより、ワークWの姿勢を任意の傾きに容易に変更することができる。ワークWの表裏を反転するだけでなく、ワークWの傾きを自由に変えられるので、例えば、ワークWが平板ではなく傾いて運ばれてくる場合や、把持用の切り欠きがある場合のような、爪部24の角度がワークWに対して所定の角度に傾斜していた方がよい場合にも対応可能となる。さらに、ワークWを把持した後、所定の角度でワークWを設置しないといけない場合にも対応しやすい。
【0045】
図5は、本実施形態の第2変形例に係る把持装置(ハンド)6Bを示す。第2変形例では、回転機構32が、第2駆動源36Aの動力を回転部34に伝達する動力伝達機構50を有しており、第2駆動源36Aの回転軸RAが、回転部34の回転軸X1に直交している。図5の例では、動力伝達機構50として、傘歯車50Aが用いられている。傘歯車50Aは、“すぐば歯車”であってもよく、“はすば歯車”であってもよい。また、動力伝達機構50は、傘歯車以外の歯車であってもよい。
【0046】
図5の例では、第2駆動源36Aとして電動モータが用いられている。ただし、第2駆動源36Aは電動モータに限定されない。第2駆動源36Aは、モータホルダ52を介して、爪部24の開閉方向の外側を向く面に取り付けられている。
【0047】
傘歯車50Aが、第2駆動源36Aと回転部34の間に設けられている。傘歯車50Aは、一次側ギヤ50Aaと二次側ギヤ50Abとを有し、両ギヤ50Aa,50Abが噛み合っている。一次側ギヤ50Aaは、第2駆動源36Aの回転軸RAと同軸に配置され、第2駆動源36Aに連結されている。二次側ギヤ50Abは、回転部34の回転軸X1と同軸に配置され、回転部34に連結されている。これにより、第2駆動源36Aの動力が、傘歯車50Aを介して回転部34に伝達される。
【0048】
第2変形例では、動力伝達機構50として傘歯車50Aを用いることで、電動モータ36Aの回転軸RAと回転部34の回転軸X1が平行になるように電動モータ36Aを設置する必要がない。そのため、電動モータ36Aが、爪部24から開閉方向に突出するのを抑制できる。
【0049】
図6は、本実施形態の第3変形例に係る把持装置(ハンド)6Cを示す。第3変形例では、第2変形例と同様に、回転機構32が、第2駆動源36Aの動力を回転部34に伝達する動力伝達機構50を有しており、第2駆動源36Aの回転軸RAが、回転部34の回転軸X1と平行にオフセットされている。図6の例では、動力伝達機構50として、帯状の無端動力伝達部材50B、詳細には、タイミングベルトが用いられている。無端動力伝達部材50Bは、ドライブチェーンであってもよい。
【0050】
図6の例では、第2駆動源36Aとして電動モータが用いられている。ただし、第2駆動源36Aは電動モータに限定されない。第2駆動源36Aは、モータホルダ52を介して、爪部24の開閉方向の内側を向く面に取り付けられている。すなわち、第2駆動源36Aは、爪部24の内側に配置され、爪部24から開閉方向外側に突出しない。
【0051】
タイミングベルト50Bが、第2駆動源36Aと回転部34の間に設けられている。爪部24の開閉方向の内側を向く面に、一次側プーリ54aと二次側プーリ54bが配置されている。一次側プーリ54aは、第2駆動源36Aの回転軸RAと同軸に配置され、第2駆動源36Aに連結されている。二次側プーリ54bは、回転部34の回転軸X1と同軸に配置され、回転部34に連結されている。一次側プーリ54aと二次側プーリ54bにタイミングベルト50Bが掛け渡されている。これにより、第2駆動源36Aの動力が、タイミングベルト50Bを介して回転部34に伝達される。
【0052】
第3変形例では、動力伝達機構50としてタイミングベルト50Bを用いることで、第2駆動源36Aの配置の自由度が高くなる。これにより、図6のように、第2駆動源36Aを爪部24から開閉方向外側に突出しないように配置できる。
【0053】
図7は、本実施形態の第4変形例に係る把持装置(ハンド)6Dを示す。第4変形例では、各把持機構26Aが、平行リンク機構からなっている。つまり、第1駆動源28を含む把持部本体30と爪部24が、平行リンク機構26Aを介して連結されており、第1駆動源28の動力により爪部24が開閉する。
【0054】
図7の例では、第2駆動源36Aとして電動モータが用いられている。ただし、第2駆動源36Aは電動モータに限定されない。また、第2駆動源36Aの動力は、傘歯車50Aを介して回転部34に伝達されている。つまり、第2駆動源36Aの回転軸心RAが、回転部34の回転軸心X1に直交している。ただし、第2駆動源36Aの動力は、傘歯車以外の動力伝達機構により回転部34に伝達されてもよい。
【0055】
第2駆動源36Aは、モータホルダ52を介して、爪部24の開閉方向の外側を向く面に取り付けられている。傘歯車50Aが、第2駆動源36Aと回転部34の間に設けられている。傘歯車50Aの配置は、図5の第2変形例と同じであるから、詳細な説明を省略する。
【0056】
第4変形例によれば、把持機構として平行リンク機構26Aが用いられているので、爪部24の先端は開閉方向だけでなく、開閉方向に垂直な方向にも動作する。そのため、上記実施形態のように、回転部34および第2駆動源36Aが把持部22と別構造とすることで、シンプルな機構を実現できる。
【0057】
[第2実施形態]
図8は、本発明の第2実施形態に係る把持装置(ハンド)6Eを示す。第2実施形態のハンド6Eは、3つ爪部24を有し、各爪部24の先端に回転部34が設けられている。図8では、3つの爪部24は、周方向に120°ずつ間隔をあけて、すなわち等間隔に配置されているが、等間隔に配置されていなくてもよい。
【0058】
図8では、第2駆動源36Aとして電動モータが用いられている。ただし、第2駆動源36Aは電動モータに限定されない。図8の例では、3つ爪部24のうちの一つに第2駆動源36Aが設置され、他の2つの爪部24には設置されていない。ただし、第2駆動源36Aは、すべての爪部24に設置されてもよく、また、3つの爪部24内の2つの爪部24に設置されてもよい。
【0059】
また、第2駆動源36Aの動力は、傘歯車50Aを介して回転部34に伝達されている。つまり、第2駆動源36Aの回転軸心RAが、回転部34の回転軸心X1に直交している。ただし、第2駆動源36Aの動力は、傘歯車以外の動力伝達機構により回転部34に伝達されてもよい。第2実施形態では、回転部34の回転部本体38Aは、第1実施形態のような円盤状ではなく、ワークWを三方から挟むように円滑な球体である。
【0060】
第2駆動源36Aは、モータホルダ52を介して、爪部24の開閉方向の外側を向く面に取り付けられている。傘歯車50Aが、第2駆動源36Aと回転部34の間に設けられている。傘歯車50Aの配置は、図5の第2変形例と同じであるから、詳細な説明を省略する。その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0061】
第2実施形態おいても、第2実施形態と同様に、段取り替え時に把持する対象のワークWの高さが異なる場合であっても、爪部24の根元から回転軸X1までの長さを簡単に変更することができる。
【0062】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
6,6A,6B,6C,6D,6E ハンド(把持装置)
22 把持部
24 爪部
26,26A 把持機構
28 第1駆動源
32 回転機構
34 回転部
36 第2駆動源
36A モータ(第2駆動源)
50,50A,50B 動力伝達機構
50A 傘歯車
50B タイミングベルト(無端動力伝達部材)
W ワーク
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10