(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025142795
(43)【公開日】2025-10-01
(54)【発明の名称】把持装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20250924BHJP
【FI】
B25J15/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024042356
(22)【出願日】2024-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】丸井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直彦
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS04
3C707BS12
3C707DS01
3C707ES03
3C707ES04
3C707ET08
3C707EU03
3C707EU11
3C707EU16
3C707EV03
3C707EV04
3C707EV10
3C707EV27
3C707HS14
3C707HS19
3C707HS27
3C707KS03
3C707KS04
3C707KT01
3C707LT12
3C707NS07
3C707NS09
3C707NS17
3C707NS24
3C707NS26
(57)【要約】
【課題】段取り替え時に把持する対象のワークの高さが異なる場合でも、簡単に爪の根元から揺動回転軸までの長さを変更することができる把持装置を提供する。
【解決手段】本開示の把持装置6は、ワークWを把持または解放する複数の爪部24と、開閉方向に爪部24を移動させる把持部22と、爪部24で把持されたワークWを開閉方向に平行な回転軸心X1回りに回転させる回転伝達機構32とを備えている。回転伝達機構32は、各爪部24に取り付けられて爪部24とともに開閉方向に移動し、爪部24に対して回転軸心X1回りに回転可能な回転部34と、回転部34を回転駆動させる第2駆動源36と、回転部34に連結されて回転部34とともに開閉方向に移動し、第2駆動源36の動力を回転部34に伝達する動力伝達機構と、開閉方向に伸縮可能で、且つ、第2駆動源36の回転を動力伝達機構35に伝達する伸縮回転機構37とを有している。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持または解放する複数の爪部と、
前記ワークを把持する把持方向および前記ワークを離す解放方向に前記爪部を移動させる把持部と、
前記爪部で把持された前記ワークを把持方向および解放方向に平行な回転軸心回りに回転させる回転伝達機構と、
を備え、
前記把持部は、前記爪部が取り付けられて把持方向および解放方向に移動する把持機構と、前記把持機構を把持方向および解放方向に移動させる第1駆動源とを有し、
前記回転伝達機構は、
複数の前記爪部の各々に取り付けられて前記爪部とともに把持方向および解放方向に移動し、前記爪部に対して前記回転軸心回りに回転可能な回転部と、
前記回転部を前記回転軸心回りに回転駆動させる第2駆動源と、
少なくとも一つの前記回転部に連結されて前記回転部とともに把持方向および解放方向に移動し、前記第2駆動源の動力を前記回転部に伝達する動力伝達機構と、
前記把持方向および解放方向に伸縮可能で、且つ、前記第2駆動源の回転を前記動力伝達機構に伝達する伸縮回転機構と、を有している把持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の把持装置において、前記回転伝達機構と前記爪部が一体化されてサブアッシーを構成し、
前記サブアッシーが、前記把持部に取り付けられている把持装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の把持装置において、前記伸縮回転機構が、
前記第2駆動源の出力軸に連結される第1の回転軸と、
前記動力伝達機構の入口回転体に連結される第2の回転軸と、
前記第1の回転軸の回転を前記第2の回転軸に伝達するとともに、前記第1の回転軸に対して前記第2の回転軸を前記把持方向および解放方向に移動可能に支持する伸縮回転構造体と、を有している把持装置。
【請求項4】
請求項3に記載の把持装置において、前記伸縮回転構造体が、
前記第1の回転軸および前記第2の回転軸の一方の軸端部に設けられた筒状の外側部材と、
前記第1の回転軸および前記第2の回転軸の他方の軸端部に設けられて、前記外側部材の中空孔に挿通された内側部材と、
前記外側部材と前記内側部材との間に介在されて、前記外側部材の回転を前記内側部材に伝達するとともに、前記第1の回転軸に設けられた部材に対して前記第2の回転軸に設けられた部材を前記把持方向および解放方向に移動可能に支持する転動体と、
を有している把持装置。
【請求項5】
請求項3に記載の把持装置において、前記伸縮回転構造体が、
前記第1の回転軸および前記第2の回転軸の一方に設けられて、前記把持機構の開閉幅よりも軸方向寸法が長い第1の歯車と、
前記第1の回転軸および前記第2の回転軸の他方に設けられ、前記第1の歯車と噛み合って、前記第1の歯車の回転が伝達されるとともに、前記第1の歯車に対して前記把持方向および解放方向に移動可能な第2の歯車と、
を有している把持装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の把持装置において、前記第2駆動源がモータである把持装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の把持装置において、前記動力伝達機構が、帯状の無端動力伝達部材を有している把持装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載の把持装置において、前記動力伝達機構が、両端部に傘歯車が設けられたロッドを有している把持装置。
【請求項9】
請求項1または2に記載の把持装置において、前記動力伝達機構が、複数の平歯車を有している把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品、電子部品等のワークを把持する把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多関節ロボット等の先端に設置されたハンドにおいて、爪を直線方向に開閉することでワークを把持し、爪で把持した状態でワークの姿勢を変更するものがある(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5617512号公報
【特許文献2】特許6029561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のハンドは、爪の開閉方向に延びるシャフトに回転可能にナットが設けられ、このナットを介して爪に回転を伝達することで、ワークを把持したまま爪を揺動させている。特許文献2のハンドは、爪の開閉方向に延びるボールねじにナットが螺合され、このナットを介して爪に回転を伝達することで、ワークを把持したまま爪を揺動させている。このように、特許文献1および2のハンドでは、ワークを把持する機構と、把持したワークの姿勢を変更する機構とが一体になっている。そのため、例えば、段取り替え時に把持する対象のワークの高さが異なる場合、爪の根元から揺動回転軸までの長さを簡単に変更することができなかった。
【0005】
本発明の目的は、段取り替え時に把持する対象のワークの高さが異なる場合でも、簡単に爪の根元から揺動回転軸までの長さを変更することができる把持装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の把持装置は、
ワークを把持または解放する複数の爪部と、
前記ワークを把持する把持方向および前記ワークを離す解放方向に前記爪部を移動させる把持部と、
前記爪部で把持された前記ワークを把持方向および解放方向に平行な回転軸心回りに回転させる回転伝達機構と、
を備え、
前記把持部は、前記爪部が取り付けられて把持方向および解放方向に移動する把持機構と、前記把持機構を把持方向および解放方向に移動させる第1駆動源とを有し、
前記回転伝達機構は、
複数の前記爪部の各々に取り付けられて前記爪部とともに把持方向および解放方向に移動し、前記爪部に対して前記回転軸心回りに回転可能な回転部と、
前記回転部を前記回転軸心回りに回転駆動させる第2駆動源と、
少なくとも一つの前記回転部に連結されて前記回転部とともに把持方向および解放方向に移動し、前記第2駆動源の動力を前記回転部に伝達する動力伝達機構と、
前記把持方向および解放方向に伸縮可能で、且つ、前記第2駆動源の回転を前記動力伝達機構に伝達する伸縮回転機構と、を有している。
【0007】
この構成によれば、把持部の把持機構に取り付けられた爪部の先端に、回転伝達機構の回転部が別途設けられており、回転部が、爪部の把持方向および解放方向に平行な回転軸心回りにワークを回転させる。把持機構は第1駆動源の動力で移動し、回転部は第2駆動源の動力で回転する。つまり、把持機構と回転部は独立して設けられている。これにより、段取り替え時に把持する対象のワークの高さが異なる場合であっても、爪部およびこれに支持された回転伝達機構の交換で済み、把持部を変更する必要はない。その結果、爪部の根元から回転軸までの長さを簡単に変更することができる。
【0008】
また、第2駆動源が、把持部の把持機構とともに把持方向および解放方向に移動しない。そのため、把持方向および解放方向に対する負荷が小さくなるから、把持機構が高速に動作可能となる。さらに、把持部全体ではなく回転部のみを回転させるので、回転対象がワークと回転部のみとなり、回転対象の重量および慣性モーメントが小さくなる。その結果、回転部の高速回転および第2駆動源の低トルク化が可能となり、第2駆動源の小型化、軽量化を図ることができる。
【0009】
本発明において、前記回転伝達機構と前記爪部が一体化されてサブアッシーを構成し、前記サブアッシーが前記把持部に取り付けられていてもよい。具体的には、回転部、爪部、動力伝達機構、伸縮回転機構および第2駆動源が一体化されている。この構成によれば、回転伝達機構を有する爪部を既存の把持部に適用できる。特に、把持機構のサイズ、爪部の長さに対応しやすいので、汎用性が高い。
【0010】
本発明において、前記伸縮回転機構が、前記第2駆動源の出力軸に連結される第1の回転軸と、前記動力伝達機構の入口回転体に連結される第2の回転軸と、前記第1の回転軸の回転を前記第2の回転軸に伝達するとともに、前記第1の回転軸に対して前記第2の回転軸を前記把持方向および解放方向に移動可能に支持する伸縮回転構造体とを有していてもよい。
【0011】
この場合、前記伸縮回転構造体が、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸の一方の軸端部に設けられた筒状の外側部材と、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸の他方の軸端部に設けられて前記外側部材の中空孔に挿通された内側部材と、前記外側部材と前記内側部材との間に介在されて、前記外側部材の回転を前記内側部材に伝達するとともに、前記第1の回転軸に設けられた部材に対して前記第2の回転軸に設けられた部材を前記把持方向および解放方向に移動可能に支持する転動体とを有していてもよい。この構成によれば、回転方向に対しては回転トルクを確実に伝達することができ、伸縮方向に対しては抵抗が小さくスムーズに移動可能である。
【0012】
また、これに代えて、前記伸縮回転構造体が、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸の一方に設けられて前記把持機構の開閉幅よりも軸方向寸法が長い第1の歯車と、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸の他方に設けられ、前記第1の歯車と噛み合って、前記第1の歯車の回転が伝達されるとともに、前記第1の歯車に対して前記把持方向および解放方向に移動可能な第2の歯車とを有していてもよい。この構成によれば、少ない部品点数で、回転方向に対しては回転トルクを確実に伝達することができ、伸縮方向に移動可能である。
【0013】
本発明において、前記第2駆動源がモータであってもよい。この構成によれば、ワークの姿勢を任意の傾きに容易に変更することができる。
【0014】
本発明において、前記動力伝達機構が、帯状の無端動力伝達部材を有していてもよい。帯状の無端動力伝達部材は、例えば、タイミングベルト、ドライブチェーンである。この構成によれば、第2駆動源から回転部までの長さを容易に変更できるので、第2駆動源の配置の自由度が高くなる。
【0015】
本発明において、前記動力伝達機構が、両端部に傘歯車が設けられたロッドを有していてもよい。この構成によれば、第2駆動源から回転部までの長さを容易に変更できるので、第2駆動源の配置の自由度が高くなる。
【0016】
本発明において、前記動力伝達機構が、前記動力伝達機構が、複数の平歯車を有していてもよい。この構成によれば、平歯車の径や数を変更することで、回転部の回転数や回転部までの距離を調整できるので、第2駆動源の容量、配置等の自由度が高くなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の把持装置によれば、段取り替え時に把持する対象のワークの高さが異なる場合であっても、爪部の根元から回転軸までの長さを簡単に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る把持装置を備えたピッキングシステムを示す斜視図である。
【
図2B】
図2Aの同把持装置をIIB方向から見た側面図である。
【
図4A】同把持装置の伸縮回転機構を示す斜視図である。
【
図5】同把持装置の伸縮回転機構の変形例を示す正面図である。
【
図6】同把持装置の第1変形例を示す正面図である。
【
図7】同把持装置の第2変形例を示す正面図である。
【
図8A】同把持装置の第3変形例を示す正面図である。
【
図9】同把持装置の第4変形例を示す正面図である。
【
図10】同把持装置の爪部を拡大して示す正面図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係る把持装置を備えた別のピッキングシステムを示す側面図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る把持装置を示す斜視図である。
【
図13】従来の把持装置を備えたピッキングシステムを示す斜視図である。
【
図14】同ピッキングシステムでワークの表裏を反転させる反転工程を示す斜視図である。
【
図15】従来の把持装置を備えた別のピッキングシステムを示す側面図である。
【
図16】同ピッキングシステムの把持装置を拡大して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明において、
図1は本発明の第1実施形態に係る把持装置を備えたピッキングシステムSYを示す斜視図である。
【0020】
[第1実施形態]
[システム全体]
図1に示すように、ピッキングシステムSYは、第1のコンベア2により搬送されたワークWを、ロボット4および把持装置の一種であるハンド6によってピックアップして次工程の第2のコンベア3に供給する。詳細には、ピッキングシステムSYは、ワークWを搬送する第1のコンベア2と、第1のコンベア2から第2のコンベア3にワークWを搬送するロボット4と、ロボット4のアーム10の先端に取り付けられたハンド6とを備えている。本発明のハンド6は、ワークWを第2のコンベア3に置く際、ワークWの向きを揃える。
【0021】
本実施形態では、ワークWは、矩形の板状の部材である。ただし、ワークWは、これに限定されず、例えば、機械部品、電子部品、プラスチック部品、薬品、医療品、食料品、雑貨類等であってもよい。以下の説明において、ワークW上の「F」は表面を表し「B」は裏面を表す。
【0022】
第1のコンベア2、第2のコンベア3、ロボット4およびハンド6は、制御装置12により同期制御される。具体的には、第1のコンベア2上のワークWの位置および姿勢がワーク検出手段(図示せず)により検出され、検出された位置にロボット4のアーム10が移動し、検出された姿勢に応じた角度でハンド6がワークWを把持する。さらに、ワークWの向きを揃えた後、ロボット4のアーム10が第2のコンベア3に移動し、ハンド6がワークWを離す。以降、この動作が繰り返される。
【0023】
[ロボット]
本実施形態のロボット4は、複数のアーム10を有し、複数の回転軸周りにアーム10が回動する多関節ロボットである。ロボット4は、第1のコンベア2と、第2のコンベア3との間を往復旋回する。本実施形態のロボット4は、床面に固定された基体部20と、3つの第1~3のアーム10A,10B,10Cとを有している。
【0024】
基部20は、その軸心AX1が鉛直方向に延びる円柱形状の部材である。基部20は、床面に対して、第1の回転軸心AX1回りに旋回自在に連結されている。本実施形態では、第1の回転軸心AX1は、基部20の軸心AX1に一致している。
【0025】
第1のアーム10Aは、直線状に延びる棒状の部材で、基端部10Aaが基体部20の上部に、水平方向の第2の回転軸心AX2回りに旋回自在に連結されている。第2のアーム10Bは、直線状に延びる棒状の部材で、基端部10Baが、第1のアーム10Aの先端部10Abに、水平方向の第3の回転軸心AX3回りに旋回自在に連結されている。第2のアーム10Bは、第1のアーム10Aの先端部10Abに対して水平方向の第4の回転軸心AX4回りに回動自在である。
【0026】
第3のアーム10Cは、直線状に延びる棒状の部材で、第2のアーム10Bの先端部10Bbに水平方向の第5の回転軸心AX5回りに旋回自在に連結されている。第3のアーム10Cは、第2のアーム10Bの先端部10Bbに対して鉛直方向の第6の回転軸心AX6回りに回動自在である。第3のアーム10Cの下端10Caに、前記ハンド6が取り付けられている。
【0027】
基部20および各アーム10A,10B,10Cは、アクチュエータ(図示せず)により駆動される。アクチュエータは、例えば、電動モータであるが、これに限定されない。本実施形態では、ロボット4は、床面に固定されているが、固定されていなくてもよい。また、ロボット4は、本実施形態の構造に限定されず、任意の作業用ロボットを適用できる。
【0028】
[ハンド]
図2Aおよび
図2Bを用いてハンド6の構成を説明する。上述のように、ハンド6は、ワークWを把持する把持装置の一種である。ハンド6は、第1のコンベア2(
図1)上のワークWをピックアップし、第2のコンベア3(
図1)上にワークWを置く。
図2Aに示すように、ハンド6は、ワークWを把持または解放する複数の爪部24と、ワークWを把持する把持方向D1およびワークWを離す解放方向に爪部24を移動させる把持部22とを有している。
【0029】
把持部22は、爪部24が取り付けられて把持方向D1および解放方向D2に移動する把持機構26と、把持機構26を把持方向D1および解放方向D2に移動させる第1駆動源28とを有している。詳細には、把持部22は箱型の把持部本体30を有しており、把持部本体30の内部に第1駆動源28が収納されている。
【0030】
把持機構26は、把持部本体30から突出するように設けられ、第1駆動源28の動力により、把持部本体30に対して把持方向D1および解放方向D2に相対移動する。本実施形態では、把持機構26は2つ設けられている。把持機構26の数はこれに限定されず、例えば、3つ以上であってもよい。
【0031】
本実施形態では、把持機構26が閉じることで(閉方向に移動することで)、ワークWが爪部24で把持される。すなわち、本実施形態では、ワークWを把持する把持方向D1が閉方向で、ワークWを離す解放方向D2が開方向である。以下の説明において、把持方向D1を閉方向D1といい、解放方向D2を開方向といい、「把持方向および解放方向」を「開閉方向」という。
【0032】
第1駆動源28は、例えば、圧縮空気により駆動されるエアシリンダである。ただし、第1駆動源28は、これに限定されず、油圧アクチュエータ、電動モータ等であってもよい。本実施形態では、1つの第1駆動源28で2つの把持機構26を駆動している。ただし、各把持機構26に第1駆動源28を設けてもよい。
【0033】
ハンド6は、さらに、ワークWを回転させる回転伝達機構32を備えている。回転伝達機構32は、爪部24で把持されたワークWを開閉方向に平行な回転軸心X1回りに回転させる。回転伝達機構32は、爪部24に対して回転軸心X1回りに回転可能な回転部34と、回転部34を回転軸心X1回りに回転駆動させる第2駆動源36とを有している。
【0034】
回転伝達機構32は、さらに、第2駆動源36の動力を回転部34に伝達する動力伝達機構35と、第2駆動源36の回転を動力伝達機構35に伝達する伸縮回転機構37とを有している。つまり、第2駆動源36の回転は、伸縮回転機構37および動力伝達機構35を介して回転部34に伝達される。
【0035】
本実施形態の第2駆動源36はモータである。第2駆動源36は、モータに限定されず、例えば、ばねを用いて機械的に回転させる構造、エアシリンダのような空気圧を利用した構造、油圧アクチュエータのような油圧を利用した構造等を用いることができる。第2駆動源36としてモータが用いられる場合、空圧や油圧と比較してワークWの姿勢を任意の傾きに容易に変更することができる。
【0036】
また、第1駆動源28が空気圧を利用した構造で、第2駆動源36が電気を利用した構造というように、第1駆動源28と第2駆動源36の構造が異なっていてもよく、同じ構造であってもよい。さらに、本実施形態では、2つの爪部24の一方にのみ第2駆動源36の動力が供給されているが、両方に供給されてもよい。
【0037】
第2駆動源36は、把持部22の把持部本体30に固定されており、把持機構26とともに開閉方向に移動しない。また、第2駆動源36が把持部22の把持機構26とともに開閉方向に移動しないので、開閉方向に対する負荷が小さくなる。そのため、把持機構26が高速に動作可能となる。また、第2駆動源36の動力で回転させる対象が、ワークWと回転部34のみとであるから、慣性モーメントが小さくなり高速回転が可能となる。
【0038】
回転部34は、複数の爪部24の各々に取り付けられ、爪部24とともに開閉方向に移動する。本実施形態では、回転部34は、爪部24の先端に設けられている。
図3に示すように、回転部34は、円盤状の回転部本体38と、回転部本体38の端面から開方向に延びる軸体40とを有している。回転部本体38の中心線と軸体40の中心軸は一致している。また、本実施形態の一対の回転部34,34は、中心軸が一致している。
【0039】
本実施形態の回転部34は、金属製である。ただし、回転部34の材質は、これに限定されず、例えば、樹脂製であってもよい。また、回転部34の回転部本体38の閉方向を向く把持面34aに、ゴムシート、ゴム製の凹凸等を設けてもよい。これにより、ワークWを把持する際、あるいは把持したワークWを回転させる際に、ワークWが滑るのを防ぐことができる。
【0040】
爪部24の先端部に、開閉方向を向く貫通孔24aが設けられている。本実施形態では、この貫通孔24aに、転がり軸受42を介して回転部34の軸体40が挿通されている。これにより、回転部34が爪部24に回転自在に支持されている。貫通孔24aの軸心は、回転部34の中心軸に一致する。つまり、貫通孔24aの軸心が、回転部34の回転軸心X1に一致する。本実施形態では、転がり軸受42が用いられているが、転がり軸受以外の軸受であってもよく、滑り軸受であってもよい。
【0041】
図2Aに示すように、一方の回転部34の軸体40の先端に、動力伝達機構35が接続されている。動力伝達機構35は、回転部34に連結されて、回転部34とともに把持方向D1および解放方向D2に移動する。第2駆動源36が接続されない他方の回転部34の軸体40の先端には、抜け止め部材45が取り付けられている。抜け止め部材45は、例えば、ナットである。本実施形態では、動力伝達機構35は一方の回転部34に連結されているが、動力伝達機構35は、少なくとも一つの回転部34に連結されていればよく、複数の回転部34に連結されてもよい。また、本実施形態では、動力伝達機構35として、帯状の無端動力伝達部材50、詳細には、タイミングベルトが用いられている。無端動力伝達部材50は、ドライブチェーンであってもよい。
【0042】
タイミングベルト50は、伸縮回転機構37と回転部34の間に設けられている。爪部24の開閉方向の外側を向く面に、一次側プーリ52aと二次側プーリ52bが配置されている。これら一次側プーリ52aと二次側プーリ52bにタイミングベルト50が掛け渡されている。二次側プーリ52bは、回転部34の回転軸X1と同軸に配置され、回転部34の軸体40に連結されている。
【0043】
一次側プーリ52aは、伸縮回転機構37に連結されている。伸縮回転機構37は、第2駆動源36と動力伝達機構35の間に配置され、把持方向D1および解放方向D2に伸縮可能である。つまり、伸縮回転機構37は、第2駆動源36の回転を動力伝達機構35に伝達するとともに、第2駆動源36に対して把持方向D1および解放方向D2に移動する。
【0044】
詳細には、伸縮回転機構37は、第2駆動源36の出力軸36aに連結される第1の回転軸44と、動力伝達機構35の一次側プーリ52aに連結される第2の回転軸46と、第1の回転軸44と第2の回転軸46との間に設けられた伸縮回転構造体48とを有している。つまり、本実施形態では、動力伝達機構35の一次側プーリ52aが、第2の回転軸46が連結される動力伝達機構35の入口回転体を構成する。
【0045】
図4Bに示すように、伸縮回転構造体48は、第1の回転軸44の回転を第2の回転軸46に伝達するとともに、第1の回転軸44に対して第2の回転軸46を把持方向D1および解放方向D2に移動可能に支持する。
【0046】
詳細には、
図4Aに示すように、伸縮回転構造体48は、筒状の外側部材54と、外側部材54の中空孔54cに挿通された内側部材56と、外側部材54と内側部材56との間に介在された転動体58とを有している。本実施形態では、転動体58は、周方向に並んだ8個の球である。ただし、転動体58の形状、数は、これに限定されない。
【0047】
本実施形態では、外側部材54は、一端側(
図4Cの左端側)が閉塞されて他端側が開口した有底の円筒状であり、一端側の底部54aに第1の回転軸44の軸端部が連結されている。本実施形態では、第1の回転軸44と外側部材54は、不可分一体に形成されている。換言すれば、第1の回転軸44の軸端部に、外側部材54が設けられている。つまり、第1の回転軸44の一端部が第2駆動源36の回転軸36aに接続され、他端部が外側部材54に接続されている。したがって、外側部材54は、把持部22(
図2A)に対して、第2駆動源36の回転軸36aの軸心X2回りに回転可能である。
【0048】
図4Cに示すように、外側部材54の内周面に、軸方向に延びる溝54bが形成されている。溝54bは、周方向に並んで複数設けられている。本実施形態では、溝54bは、転動体58と同数、すなわち、8つ設けられている。
【0049】
図4Aに示すように、本実施形態では、内側部材56は、円柱形状であり、一端面(
図4Cの右端面)に第2の回転軸46の軸端部が連結されている。本実施形態では、第2の回転軸46と内側部材56は、不可分一体に形成されている。換言すれば、第2の回転軸46の軸端部に、内側部材56が設けられている。内側部材56における軸方向中間部の外径面に、周方向に延びる円周溝56aが形成されている。
【0050】
図4Cに示すように、内側部材56の外径は、外側部材54の内径よりも若干小さく、第2の回転軸46の外径よりも大きく設定されている。外側部材54の内径面と、内側部材56の外径面との間に、転動体58が配置されている。つまり、外側部材54の回転が、転動体58を介して内側部材56に伝達される。換言すれば、内側部材56は、転動体58を介して回転自在に外側部材54に接続されている。
【0051】
詳細には、転動体58は、内側部材56の円周溝56aと、外側部材54の溝54bとの間に配置されている。転動体58は、外側部材54の各溝54bに沿って軸方向(開閉方向)に移動可能である。つまり、内側部材56は、把持部22(
図2A)に対して、第2駆動源36の回転軸36aの軸心X2回りに回転可能であるとともに、開閉方向に平行な方向に移動可能である。
【0052】
第2の回転軸46の他方の端部は、回転伝達機構32の動力伝達部材35に接続されている。つまり、第2の回転軸46の一端部が内側部材56に接続され、回転伝達機構32の動力伝達機構35の入口回転体(一次側プーリ)52aに接続されている。
【0053】
第1および第2の回転軸44,46、外側部材54および内側部材56は、金属製であってもよく、樹脂製であってもよい。また、外側部材54と内側部材56との隙間にグリースなどの潤滑剤を封入してもよい。その場合、グリースが外部に漏れないように、外側部材54の開口端部にシール部材を設けてもよい。
【0054】
このような伸縮回転機構37を設けることにより、
図2Aにおいて、第1回転軸44および外側部材54が第2駆動源36の回転軸36aの軸心X2回りに回転し、転動体58(
図4A)を介して第2の回転軸46および内側部材56が回転する。さらに、第2の回転軸46および内側部材56は、把持機構26の開閉に伴って把持機構26の開閉方向に平行な方向に移動する。これにより、把持機構26が開閉しても、爪部24の先端の回転部34に回転動力が伝達できる。
【0055】
本実施形態では、第1の回転軸44の軸端部に外側部材54が設けられ、第2の回転軸46の軸端部に内側部材56が設けられているが、第1の回転軸44の軸端部に内側部材56が設けられ、第2の回転軸46の軸端部に外側部材54が設けられてもよい。
【0056】
本実施形態では、回転伝達機構32と爪部24が一体化されてサブアッシーを構成している。具体的には、回転部34、爪部24、動力伝達機構35、伸縮回転機構37および第2駆動源36が一体化されている。この一体化されたサブアッシーが、把持部22に取り付けられている。これにより、本実施形態の回転伝達機構32を有する爪部24を、既存の把持部にも適用できる。特に、把持機構26のサイズ、爪部24の長さに対応しやすいので、汎用性が高い。
【0057】
換言すれば、本実施形態では、回転伝達機構32と爪部24が、一体化されたモジュールを構成している。具体的には、回転部34、爪部24、タイミングベルト50、各プーリ52a,52b、第1および第2回転軸44,46、外側部材54、内側部材56、転動体58および第2駆動源36がモジュール化されている。
【0058】
把持装置6がワークWを把持する際、第1駆動源28が駆動して、把持機構26および、これに固定された爪部24を把持方向D1に移動させる。このとき、把持部本体30に固定された第2駆動源36と、第2駆動源36に連結された伸縮回転機構37の第1の回転軸44および外側部材54は、把持方向D1に移動しない。
【0059】
一方、伸縮回転機構37において、転動体58を介して外側部材54と開閉方向に移動自在に連結された内側部材56および第2の回転軸46は把持方向D1に移動する。さらに、第2の回転軸46に連結された回転伝達機構32、および回転伝達機構32に連結された回転部34も把持方向D1に移動する。
【0060】
把持装置6がワークWを把持した状態で第2駆動源36が駆動すると、
図4Cの第1回転軸44および外側部材54が回転する。外側部材54が回転すると、転動体58を介して内側部材56および第2回転軸46が回転する。
【0061】
第2回転軸46が回転すると、
図2Aの上流側プーリ52aが回転し、この回転がタイミングベルト50を介して下流側プーリ52bに伝達されて下流側プーリ52bが回転する。下流側プーリ52bが回転すると、これに連結された一方の回転部34が回転し、この回転がワークWを介して他方の回転部34にも伝わり、他方の回転部34も回転する。つまり、ワークWが回転軸心X1周りに回転する。これにより、ワークWの姿勢を変更できる。
【0062】
把持装置6がワークWを解放する際、第1駆動源28が駆動して、把持機構26および、これに固定された爪部24を解放方向D2に移動させる。このとき、ワークWを把持するときと同様に、第2駆動源36、伸縮回転機構37の第1の回転軸44および外側部材54は解放方向D2に移動せず、伸縮回転機構37の内側部材56および第2の回転軸46および回転部34は解放方向D2に移動する。
【0063】
一般的に2つ爪部24を有する把持装置6は、把持するワークWの大きさに応じて、把持部22自体のサイズ、開閉ストローク、爪部24の長さ等を変更する必要がある。
図13は、従来のピッキングシステムSY1を示す。このピッキングシステムSY1の把持装置100は、本実施形態の把持装置(ハンド)6から回転伝達機構32を省略した構造である。
【0064】
従来の把持装置100では、把持したワークWの姿勢を変更するためには、ロボット4の各アーム10A,10B,10Cを動作させる必要がある。特にワークWの表裏を反転させる場合には、仮置台102を用意して、仮置台102にワークWを一度置いてから持ち替える工程が必要であった。
図14にワークWの表裏を反転させる工程を示す。
【0065】
図14の(a)第1工程では、第1のコンベア2でワークWはランダムな姿勢で流れてくる。そのワークWをカメラなどで姿勢と表裏を判別して、ロボット4(
図13)に設置した把持装置100で把持する。つぎに、
図14の(b)第2工程では、把持したワークWを仮置台102に一度置く。つづいて、
図14の(c)第3工程では、把持装置100の姿勢を変更して、反対方向から把持装置100でワークWを把持し直す。最後に、
図14の(d)第4工程では、把持し直したワークWを第2のコンベア3に向きを揃えて置く。
【0066】
ここで、第1のコンベア2上のワークWに対して、上方からではなく水平方向からアプローチすれば、第2および第3工程のようなワークWを把持し直す必要がない場合もある。ただし、この場合、ロボット4と第1のコンベア2との間に大きなスペースが必要となる。また、ワークWの向きによっては、水平方向からアプローチすると、把持できないこともある。
【0067】
[作用効果]
上述の本実施形態の構成によれば、
図2Aに示すように、把持部22の把持機構26に取り付けられた爪部24の先端に、回転伝達機構32の回転部34が別途設けられており、回転部34が、爪部24の把持方向D1および解放方向D2に平行な回転軸心X1回りにワークWを回転させる。把持機構26は第1駆動源28の動力で移動し、回転部34は第2駆動源36の動力で回転する。つまり、把持機構26と回転部34は独立して設けられている。これにより、段取り替え時に把持する対象のワークWの高さが異なる場合であっても、爪部24およびこれに支持された回転伝達機構32の交換で済み、把持部22を変更する必要はない。その結果、爪部24の根元から第2駆動源36の回転軸までの長さを簡単に変更することができる。
【0068】
また、第2駆動源36が、把持部22の把持機構26とともに開閉方向に移動しない。そのため、開閉方向に対する負荷が小さくなるから、把持機構26が高速に動作可能となる。さらに、把持部22全体ではなく回転部34のみを回転させるので、回転対象がワークWと回転部34のみとなり、回転対象の重量および慣性モーメントが小さくなる。その結果、回転部34の高速回転および第2駆動源36の低トルク化が可能となり、第2駆動源36の小型化、軽量化を図ることができる。
【0069】
上記構成によれば、
図1に示すワークWを把持した後、回転部34によりワークWを回転させることで、把持し直すことなくワークWの表裏を反転することができる。これにより、
図14に示す(b)第2工程と(c)第3工程が省略可能となり、搬送時間を短縮できる。また、ワークWの姿勢を変更するための仮置き台102も不要となり、省スペース化も実現できる。
【0070】
さらに、
図13に示す従来構造の場合、ワークWの表裏を反転させるためにワークWを把持し直す際に、多関節ロボット4の各アーム10A,10B,10Cが大きく動く必要がある。そのため、ロボット4の動作に時間がかかってしまううえに、周辺物との干渉を考慮しなければならない。本実施形態によれば、把持し直すことなくワークWの表裏を反転することができるので、これらの課題を解決できる。また、
図2Aに示す爪部24の先端に設置した回転部34でワークWを回転させるので、把持機構26を含む爪部24全体を回転させるよりも慣性モーメントが小さくなる。そのため、ワークWをより高速に回転させることができる。
【0071】
本実施形態において、回転伝達機構32と爪部24が一体化されてサブアッシーを構成し、このサブアッシーが把持部22に取り付けられている。具体的には、回転部34、爪部24、動力伝達機構35、伸縮回転機構37および第2駆動源36が一体化されている。この構成によれば、回転伝達機構32を有する爪部24を既存の把持部に適用できる。特に、把持機構26のサイズ、爪部24の長さに対応しやすいので、汎用性が高い。
【0072】
本実施形態において、伸縮回転機構37が、第2駆動源36の出力軸36aに連結される第1の回転軸44と、動力伝達機構35の入口回転体52aに連結される第2の回転軸46と、第1の回転軸44の回転を第2の回転軸46に伝達する伸縮回転構造体48とを有している。伸縮回転構造体48は、第1の回転軸44に対して第2の回転軸46を開閉方向に移動可能に支持する。具体的には、伸縮回転構造体48は、第1の回転軸の軸端部に設けられた筒状の外側部材54と、第2の回転軸46の軸端部に設けられて外側部材54の中空孔に挿通された内側部材56と、外側部材54と内側部材56との間に介在された転動体58とを有している。転動体58は、外側部材54の回転を内側部材56に伝達するとともに、外側部材54に対して内側部材56を開閉方向に移動可能に支持する。この構成によれば、回転方向に対しては回転トルクを確実に伝達することができ、伸縮方向に対しては抵抗が小さくスムーズに移動可能である。
【0073】
本実施形態において、第2駆動源36が電動モータである。第2駆動源36を電動モータで構成することにより、ワークWの姿勢を任意の傾きに容易に変更することができる。ワークWの表裏を反転するだけでなく、ワークWの傾きを自由に変えられるので、例えば、ワークWが平板ではなく傾いて運ばれてくる場合や、把持用の切り欠きがある場合のような、爪部24の角度がワークWに対して所定の角度に傾斜していた方がよい場合にも対応可能となる。さらに、ワークWを把持した後、所定の角度でワークWを設置しないといけない場合にも対応しやすい。
【0074】
本実施形態において、動力伝達機構35がタイミングベルト50を有している。この構成によれば、第2駆動源36から回転部34までの長さを容易に変更できるので、第2駆動源36の配置の自由度が高くなる。
【0075】
図5は、伸縮回転機構37Aの伸縮回転構造体48Aの変形例を示す。
図5に示す伸縮回転機構37Aの伸縮回転構造体48Aは、第1の回転軸44に設けられた軸方向寸法が長い第1の歯車60と、第2の回転軸46に設けられた第1の回転軸44より軸方向寸法が短い第2の歯車62とを有している。
【0076】
第1の歯車60の軸方向寸法は、把持機構26(
図2A)の開閉幅、すなわち開閉方向の移動量よりも長く設定されている。第1の回転軸44および第1の歯車60は、把持部本体30(
図2A)に対して、第2駆動源36の回転軸回りに回転可能である。また、第1の回転軸44および第1の歯車60は、開閉方向に移動しない。
【0077】
第2の歯車62が第1の歯車60と噛み合うことで、第2の歯車62および第2の回転軸46に第1の歯車60の回転が伝達されるとともに、第2の歯車62および第2の回転軸46が開閉方向(軸方向)に移動可能である。
【0078】
この構成によれば、第2駆動源36の回転により第1の回転軸44および第1の歯車60が回転軸回りに回転し、両歯車60,62の噛合いによって第2の歯車62および第2の回転軸46が回転する。また、第2の歯車62および第2の回転軸46は、
図2Aの把持機構26の開閉に伴って、第1および第2の歯車60,62の噛合いにより開閉方向に平行な方向に移動する。したがって、把持機構26が開閉しても、爪部24の先端の回転部34に回転動力を伝達できる。このように、
図5の変形例によれば、少ない部品点数で、回転方向に対しては回転トルクを確実に伝達することができ、伸縮方向に移動可能である。
【0079】
図5では、第1の回転軸44に軸方向寸法が長い第1の歯車60が設けられ、第2の回転軸46に第2の歯車62が設けられているが、第2の回転軸46に軸方向寸法が長い第1の歯車60が設けられ、第1の回転軸44に第2の歯車62が設けられてもよい。
【0080】
図6は、本実施形態の第1変形例に係る把持装置(ハンド)6Aを示す。第1変形例では、動力伝達機構35が、両端部に傘歯車64が設けられたロッド65を有している。傘歯車64は、“すぐば歯車”であってもよく、“はすば歯車”であってもよい。
【0081】
ロッド65が、第2駆動源36の回転軸心X2と回転部34の回転軸心X1との間を、両軸心X1,X2と直交する方向に延びている。傘歯車64は、第2駆動源36側の一次側傘歯車64aと、回転部34側の二次側傘歯車64bとを有している。
【0082】
伸縮回転機構37の第2の回転軸46の先端に駆動側傘歯車66が設けられ、駆動側傘歯車66と一次側傘歯車64aが噛み合っている。駆動側傘歯車66は、第2駆動源36の回転軸X2と同軸に配置され、伸縮回転機構37を介して第2駆動源36の回転が伝達されている。つまり、第1変形例では、一次側傘歯車64aが、伸縮回転機構37の第2の回転軸46が連結される動力伝達機構35の入口回転体を構成する。
【0083】
回転部34の軸体40の先端に従動側傘歯車68が設けられ、従動側傘歯車68と二次側傘歯車64bが噛み合っている。従動側傘歯車68は、回転部34の回転軸X1と同軸に配置され、回転伝達機構32を介して第2駆動源36の回転が伝達されている。これにより、第2駆動源36の動力が回転部34に伝達される。
【0084】
第1変形例では、動力伝達機構35として両端部に傘歯車64が設けられたロッド65を用いることで、第2駆動源36から回転部34までの長さを容易に変更できるので、第2駆動源36の配置の自由度が高くなる。
【0085】
図7は、本実施形態の第2変形例に係る把持装置(ハンド)6Bを示す。第2変形例では、動力伝達機構35が、複数の平歯車69を有している。第2変形例では、平歯車69は、第2駆動源36側の一次側平歯車69aと、回転部34側の二次側平歯車69bとを有している。ただし、平歯車69は、3つ以上であってもよい。第2変形例では、一次側平歯車69aが二次側平歯車69bよりも大径であるが、同径であってもよく、あるいは、二次側平歯車69bが一次側平歯車69aよりも大径であってもよい。
【0086】
一次側平歯車69aは、伸縮回転機構37の第2の回転軸46の先端に設けられている。一次側平歯車69aは第2駆動源36の回転軸X2と同軸に配置され、第2駆動源36の回転が伸縮回転機構37を介して一次側平歯車69aに伝達されている。つまり、第1変形例では、一次側平歯車69aが、伸縮回転機構37の第2の回転軸46が連結される動力伝達機構35の入口回転体を構成する。
【0087】
一次側平歯車69aと二次側平歯車69bは噛み合っており、一次側平歯車69aが回転すると、二次側平歯車69bも回転する。二次側平歯車69bは、回転部34の軸体40の先端に設けられている。二次側平歯車69bは回転部34の回転軸X1と同軸に配置され、回転伝達機構32を介して第2駆動源36の回転が伝達されている。これにより、第2駆動源36の動力が回転部34に伝達される。
【0088】
第2変形例によれば、平歯車69の径や数を変更することで、回転部34の回転数や回転部34までの距離を調整できるので、第2駆動源36の容量、配置等の自由度が高くなる。
【0089】
図8Aおよび
図8Bは、本実施形態の第3変形例に係る把持装置(ハンド)6Cを示す。
図1に示すピッキングシステムSYでは、第3変形例の把持装置6Cが装着されている。
図2Aおよび
図2Bの例では、第2駆動源36の出力軸36aと、伸縮回転機構37の第1の回転軸44が直結され、伸縮回転機構37が第2駆動源36の回転軸心X2と同軸に配置されていたが、第3変形例では、第2駆動源36の出力軸36aと伸縮回転機構37の第1の回転軸44がベルト70および一対のプーリ72,72を介して連結されている。つまり、第2駆動源36の回転軸心X2と伸縮回転機構37の回転軸心X3は一致していない。
【0090】
詳細には、一方のプーリ72が第2駆動源36の出力軸36aに設けられ、他方のプーリ72が伸縮回転機構37の第1の回転軸44に設けられ、両プーリ72,72にベルト70が掛け渡されている。これにより、第2駆動源36の回転が伸縮回転機構37に伝達されている。その他の構造は、
図2Aおよび
図2Bの例と同じである。
【0091】
第3変形例によれば、
図2Aおよび
図2Bのように伸縮回転機構37と第2駆動源36が同軸上に設置される構成に比べて、把持部22の把持部本体30の開閉方向の寸法を小さくできる。これにより、把持装置6Cが周辺物に干渉するのを抑制できる。第3変形例では、プーリ72とベルト70の組合せにより第2駆動源36と伸縮回転機構37が連結されているが、スプロケットとチェーンの組合せでもよく、複数の歯車を組合せた構成であってもよい。
【0092】
図9は、本実施形態の第4変形例に係る把持装置(ハンド)6Dを示す。第4変形例の把持装置6Dでは、回転部34Aの把持面74が傾斜している点で、
図2Aの例と相違している。このような傾斜した把持面74を有する把持装置6Dは、ボルトのような円柱形状のワークWを把持するのに有利である。
図9の第4変形例のその他の構成は、
図2Aの例と同じである。以下に、
図2Aの例との相違点について詳細に説明する。
【0093】
図10は、第4変形例の把持装置6Dの爪部24を拡大して示す。以下の説明において、爪部24が延びる方向を「長手方向DR1」、爪部24が開閉する方向を「開閉方向DR2」とする。また、長手方向DR1と開閉方向DR2の両方に直交する方向「直交方向DR3」という。
【0094】
把持面74は、その長手方向DR1の基端側(
図10の上側)の端部74aから長手方向DR1の先端側(
図10の下側)に向かって開方向に傾斜して延びる第1の傾斜面75と、長手方向DR1の先端側(
図10の下側)の端部74bから長手方向DR1の基端側(
図10の上側)に向かって開方向に傾斜して延びる第2の傾斜面76とを有している。第1の傾斜面75の先端側端部と、第2の傾斜面76の基端側端部は連結部77で連なっている。
【0095】
つまり、
図10に示すように、直交方向DR3から見て、傾斜面74の端縁(直交方向の端縁)は、開方向に凹んだV字状である。これら1対の回転部34A,34Aの4つの面75,75,76,76が、把持の対象となる円筒形のワークWに接触する接平面を構成する。また、以下の説明において、基端側の端部74aを「基端側の角部74a」、先端側の端部74bを「先端側の角部74b」と呼ぶことがある。
【0096】
直交方向DR3から見て、第2の傾斜面76を先端側(
図10の下側)に延長した先端側の仮想線V1と、コンベア2の水平な搬送面2aとのなす角度を先端側角度αとする。また、直交方向DR3から見て、第1の傾斜面75を基端側(
図10の上側)に延長した基端側の仮想線V2と搬送面2aに平行な平行線LNとのなす角度を基端側角度βとする。さらに、第1の傾斜面75と第2の傾斜面76とのなす角度を傾斜角度γとする。この例では、先端側角度αが基端側角度βよりも小さく設定されている。つまり、α<βに設定されている。
【0097】
さらに、本実施形態では、先端側角度αが25°以上で30°以下(25°≦α≦30°)に設定されている。一方、基端側角度βは50°よりも大きく60°よりも小さく(50°<β<60°)設定されている。
【0098】
回転部34Aの基端側の端部74aおよび先端側の端部74b、すなわち回転部34Aの基端側および先端側の角部74a、74bは、丸味を帯びている。換言すれば、回転部34Aの基端側およびの角部74a、74bはR形状を有している。これにより、回転部34Aの角部74a、74bにより、ワークWに傷がつくのを防ぐことができる。この例では、基端側の角部74aおよび先端側の角部74bの両方にR形状が設けられているが、先端側の角部74bにのみR形状が設けられてもよい。
【0099】
また、先端側の角部74bを構成しワークWと接さない面78(
図10では回転部34Aの下面78)は、爪部24の長手方向DR1がコンベア2の水平な搬送面2aに対して直交する状態の時に、搬送面2aと平行になるように構成されている。あるいは、搬送面22aに対して先端側の角部52bが下端となるように、回転部34Aの下面58を傾斜させてもよい。これにより、回転部34Aの下面58とコンベア2との干渉を防ぐことができる。
【0100】
図10に二点鎖線で示すように、回転部34Aの第1の傾斜面75および第2の傾斜面76に摺動部材79が取り付けられてもよい。摺動部材79は、摺動性が高く、ワークWよりも硬度の低い素材からなるのが好ましい。摺動部材79は、例えば、高い摺動性を得るために、表面の摩擦係数が0.2以下に設定される。摺動部材79の材質は、例えば、ポリオキシメチレン(POM)、モノマーキャストナイロン(MCナイロン)等である。ただし、摺動部材79の材質は、これに限定されない。摺動部材79を設けることにより、ワークWが傷つくのを防ぐことができる。また、摩擦係数が0.2以下に設定されることで、ワークWが傾斜面75,76に沿って動きやすくなり、コンベア2に対して僅かに傾いた円筒形状のワークWを、4つの面75,76が接平面となる安定した位置で把持することができる。
【0101】
摺動部材79は、第1および第2の傾斜面75,76のうちの一方のみに取り付けられてもよい。その場合、ワークWを傷つけ易い先端側の第2の傾斜面76にのみ摺動部材79を取り付けてもよい。また、摺動部材79は、傾斜面75,76に着脱可能に取り付けられてもよい。一例として、傾斜面75,76に係合溝を設け、この係合溝に摺動部材79が着脱可能に取り付けられてもよい。ただし、摺動部材79の取付方法はこれに限定されない。摺動部材79のみを交換可能とすることで、爪部24全体を交換するよりも安価で済み、メンテナンス費用を抑えることができる。
【0102】
上述のように、高い摺動性を得るために摺動部材79の表面の摩擦係数は0.2以下に設定されるのが好ましいが、例えば、摺動部材79の表面の摩擦係数を回転部34Aにおける傾斜面75,76以外の表面の摩擦係数より小さく設定してもよい。また、摺動部材79を取り付けるのに代えて、各傾斜面75,76にコーティング、研磨等の表面処理を施すことで摩擦係数を小さくしてもよい。
【0103】
ピッキングシステムにおいて、例えば、製造ラインの生産品の型番変更によって、変更前に投入されていたものとは異なる形状のワークWが投入される場合や、異なる形状のワークWがコンベア2に同時に投入される場合がある。異なる形状のワークWは、類似形状である場合が多く、例えば、同じねじ径で長さが異なるボルトや、ピン等が段取り替えで投入、または同時に投入される。
【0104】
ボルトは、頭部の外径が軸部の外径よりも大きいので、水平な搬送面2aに対して僅かな角度で傾いた状態で載置されている。しかしながら、第1駆動源28として圧縮空気等を使用した場合、自動で動作角度を調整することができず、また、手動の調整には時間がかかる。第1駆動源28として電動モータを用いれば角度動作を調整できるが、コストが嵩むうえに制御も複雑になる。そのため、第1駆動源28の動作角度を変更することなく搬送面2aに対して傾いたワークWと水平のワークWをピックアップできることが望まれる。
【0105】
第4変形例のハンド6Dでは、搬送面2aに対して傾いて置かれたボルト形状のワークWに対して上方から径方向にピックアップする場合、ワークWを回転部34Aの先端側の角部74bですくい上げながらピックアップする。このとき、このとき、先端側角度αが小さいので、搬送面2aに対して傾いたワークWも容易にピックアップできる。
【0106】
また、基端側角度βが適切な大きさに設定されているので、円筒形状のワークWが4つの傾斜面75,76に倣いやすくなる。その結果、円筒形状のワークWを水平に安定した姿勢でピックアップできる。
【0107】
図1は、ワークWの表裏を反転させる工程を含むピッキングシステムSYに対して、本実施形態の把持装置6を適用した例を示したが、その他の適用例について
図11を用いて説明する。
図11は、多関節ロボット4Aを用いて容器82内にバラ積みされているワークWから把持対象のワークWaを把持して取り出す工程を示している。
【0108】
図15は、回転伝達機構32を備えない従来の把持装置100を用いて容器82内にバラ積みされているワークWから把持対象のワークWaを把持して取り出す工程を示している。このような工程において、把持対象のワークWaに対して、爪部24の姿勢が制限される場合がある。この場合、把持対象のワークWaの位置、姿勢によって、
図16に示すように、把持対象のワークWaにアプローチする際に爪部24、把持部22、ロボット4等が、容器82やその周辺物に干渉してしまう恐れがある。
【0109】
これに対して、
図11に示すように実施形態の把持装置6を適用した例では、爪部24の先端でワークWを回転させることができるので、把持対象のワークWaにアプローチする角度の自由度が高くなる。これにより、爪部24や把持部22、ロボット4等が容器82やその周辺物に干渉するのを回避できる。また、容器82の隅にあり、従来のロボットでは把持できないようなワークWも把持できる。
【0110】
[第2実施形態]
図12は、本発明の第2実施形態に係る把持装置(ハンド)6Eを示す。第2実施形態のハンド6Eは、3つ爪部24を有し、各爪部24の先端に回転部34が設けられている。
図12では、3つの爪部24は、周方向に120°ずつ間隔をあけて、すなわち等間隔に配置されているが、等間隔に配置されていなくてもよい。第2実施形態では、回転部34の回転部本体38Aは、第1実施形態のような円盤状ではなく、ワークWを三方から挟むように円滑な球体である。
【0111】
図12の例では、3つ爪部24のうちの一つに第2駆動源36の動力が伝達され、他の2つの爪部24には伝達されていない。ただし、すべての爪部24に動力が伝達されるように第2駆動源36が設置されてもよく、また、3つの爪部24内の2つの爪部24に動力が伝達されるように第2駆動源36が設置されてもよい。
【0112】
図12では、回転部34の回転軸心X1と伸縮回転機構37の回転軸心X3は平行であるが、第2駆動源36の回転軸心X1と回転部34の回転軸心X1は平行ではない。本実施形態では、第2駆動源36の出力軸36aと伸縮回転機構37の第1の回転軸44は、傘歯車80を介して連結されている。
【0113】
詳細には、第2駆動源36の回転軸36aに駆動源側の傘歯車80aが設けられ、伸縮回転機構37の第1の回転軸44に機構側の傘歯車80bが設けられ、両歯車80a,80bが噛み合っている。これにより、第2駆動源36の動力は、傘歯車80を介して伸縮回転機構37に伝達されている。その他の構成は、
図2Aおよび
図2Bの第1実施形態と同じである。
【0114】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、段取り替え時に把持する対象のワークWの高さが異なる場合であっても、爪部24の根元から回転軸X1までの長さを簡単に変更することができる。
【0115】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
6,6A,6B,6C,6D,6E ハンド(把持装置)
22 把持部
24 爪部
26,26A 把持機構
28 第1駆動源
32 回転伝達機構
34,34A 回転部
35 動力伝達機構
36 第2駆動源(モータ)
37,37A 伸縮回転機構
44 第1の回転軸
46 第2の回転軸
48,48A 伸縮回転構造体
50 タイミングベルト(無端動力伝達部材)
52a 一次側プーリ(動力伝達機構の入口回転体)
54 外側部材
56 内側部材
58 転動体
60 第1の歯車
62 第2の歯車
64 傘歯車
64a 一次側傘歯車(動力伝達機構の入口回転体)
65 ロッド
69 平歯車
W ワーク