(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025142850
(43)【公開日】2025-10-01
(54)【発明の名称】ガス発生器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/264 20060101AFI20250924BHJP
【FI】
B60R21/264
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024042435
(22)【出願日】2024-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藪内 涼太郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 友也
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054DD14
3D054DD17
3D054FF17
(57)【要約】
【課題】仕切り部材とハウジングとを溶接する溶接部におけるシール性の向上が図られたガス発生器を提供する。
【解決手段】ガス発生器は1A、周壁部10を有するハウジングと、仕切り部材50と、点火器とを備える。仕切り部材50は、周壁部10に内挿されることでハウジングの内部の空間を周壁部10の軸方向に仕切り、周壁部10の内周面に沿って延在する環状壁部51と、環状壁部51の軸方向の一端を閉塞する隔壁部52とを有する。環状壁部51は、周壁部10の内周面に当接した当接部51aと、周壁部10の内周面から離間して位置することで周壁部10の内周面との間に間隙Gが設けられた離間部51bとを含む。環状壁部51と周壁部10とを溶接する溶接部90が、環状壁部51のうちの離間部51bを含む部分に設けられることにより、溶接部90のうちの少なくとも一部は、間隙Gに面する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端部および他端部が閉塞された筒状の周壁部を有し、ガス発生剤が収容されたガス発生剤収容室およびフィルタが配置されたフィルタ室を内部に含むハウジングと、
前記ガス発生剤収容室が前記一端部側に位置するとともに前記フィルタ室が前記他端部側に位置するように、前記周壁部に内挿されることで前記ハウジングの内部の空間を前記周壁部の軸方向に仕切る仕切り部材と、
前記周壁部の前記一端部に組付けられた点火器とを備え、
前記仕切り部材は、前記周壁部の内周面に沿って延在する環状壁部と、前記環状壁部の軸方向の一端を閉塞する隔壁部とを有し、
前記仕切り部材は、前記環状壁部と前記周壁部とが溶接されることで前記ハウジングに固定され、
前記環状壁部は、前記周壁部の前記内周面に当接した当接部と、前記周壁部の前記内周面から離間して位置することで前記周壁部の前記内周面との間に間隙が設けられた離間部とを含み、
前記環状壁部と前記周壁部とを溶接する溶接部が、前記環状壁部のうちの前記離間部を含む部分に設けられることにより、前記溶接部のうちの少なくとも一部が、前記間隙に面している、ガス発生器。
【請求項2】
前記当接部と前記離間部とが、前記軸方向において隣り合うように位置している、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記離間部が、前記一端部側から前記他端部側に向かうにつれて前記周壁部の前記内周面から遠ざかるように傾斜する傾斜部分と、当該傾斜部分の前記他端部側に位置する端部から連続し、前記周壁部の前記内周面と略平行な方向に沿って延在する部分とを含み、
前記当接部が、前記傾斜部分の前記一端部側に位置する端部に連続して設けられている、請求項2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記当接部が、第1当接部と、当該第1当接部よりも前記軸方向において前記他端部側に位置する第2当接部とを含み、
前記離間部が、前記軸方向において前記第1当接部と前記第2当接部とに挟まれるように位置している、請求項2に記載のガス発生器。
【請求項5】
前記当接部と前記離間部とが、前記周壁部の周方向において隣り合うように位置している、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記間隙が、前記ガス発生剤収容室または前記フィルタ室に連通している、請求項1から5のいずれか1項に記載のガス発生器。
【請求項7】
環状壁部および当該環状壁部の軸方向の一端を閉塞する隔壁部を有する仕切り部材を、ハウジングの筒状の周壁部に内挿する工程と、
前記仕切り部材を前記ハウジングに固定するために、前記仕切り部材が前記周壁部に内挿された状態において前記環状壁部を前記周壁部に溶接する工程とを備え、
前記仕切り部材が前記周壁部に内挿された状態において、前記環状壁部は、前記周壁部の内周面に当接することとなる当接部と、前記周壁部の前記内周面から離間して位置することで前記周壁部の前記内周面との間に間隙が設けられることとなる離間部とを含み、
前記環状壁部を前記周壁部に溶接する工程において、前記環状壁部と前記周壁部とを溶接する溶接部のうちの少なくとも一部が前記間隙に面することとなるように、前記溶接部が、前記環状壁部のうちの前記離間部を含む部分に設けられる、ガス発生器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に装備される乗員保護装置としてのエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器およびその製造方法に関し、特に、サイドエアバッグ装置等に好適に組み込まれる外形が長尺円柱状のいわゆるシリンダ型ガス発生器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の乗員の保護の観点から、乗員保護装置であるエアバッグ装置が普及している。エアバッグ装置は、車両等衝突時に生じる衝撃から乗員を保護する目的で装備されるものであり、車両等衝突時に瞬時にエアバッグを膨張および展開させることにより、エアバッグがクッションとなって乗員の体を受け止めるものである。
【0003】
ガス発生器は、このエアバッグ装置に組み込まれ、車両等衝突時にコントロールユニットからの通電によって点火器を着火し、点火器において生じる火炎によりガス発生剤を燃焼させて多量のガスを瞬時に発生させ、これによりエアバッグを膨張および展開させる機器である。
【0004】
ガス発生器には、車両等に対する設置位置や出力等の仕様に基づき、種々の構成のものが存在している。その一つに、シリンダ型ガス発生器と称されるものがある。シリンダ型ガス発生器は、その外形が長尺円柱状であり、サイドエアバッグ装置やカーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置、シートクッションエアバッグ装置等に好適に組み込まれる。
【0005】
通常、シリンダ型ガス発生器においては、ハウジングの軸方向の一端部に点火器が組付けられるとともに当該一端部側にガス発生剤が収容されたガス発生剤収容室が設けられ、ハウジングの軸方向の他端部側にフィルタが収容されたフィルタ室が設けられ、当該フィルタ室を規定する部分のハウジングの周壁部にガス噴出口が設けられる。
【0006】
このように構成されたシリンダ型ガス発生器においては、ガス発生剤収容室にて発生したガスがハウジングの軸方向に沿ってフィルタ室に流入することでフィルタの内部を通過し、フィルタを通過した後のガスがガス噴出口を介して外部に噴出される。
【0007】
シリンダ型ガス発生器においては、ハウジングの内部の空間を軸方向においてガス発生剤収容室とフィルタ室とに仕切るための仕切り部材が、ハウジングの内部の空間に設置されることがある。
【0008】
仕切り部材は、たとえば、ハウジングの内周面に沿って延在する環状壁部と、環状壁部の軸方向の一端を閉塞する隔壁部とを有する。このように構成された仕切り部材は、環状壁部とハウジングとが溶接されることでハウジングに固定される。
【0009】
このような仕切り部材を具備したシリンダ型ガス発生器が開示された文献としては、たとえば特開2022-144932号公報(特許文献1)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、仕切り部材を具備するシリンダ型ガス発生器においては、仕切り部材の環状壁部がハウジングに溶接されるに当たり、ハウジングと溶接部との間の界面および/または環状壁部と溶接部との間の界面にガスが閉じ込められることにより、当該界面にブローホールが発生することがある。このようにブローホールが発生した場合には、溶接部におけるシール性を確保することが難しくなってしまう。
【0012】
したがって、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、仕切り部材とハウジングとを溶接する溶接部におけるシール性の向上が図られたガス発生器およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に基づくガス発生器は、ハウジングと、仕切り部材と、点火器とを備えている。上記ハウジングは、軸方向の一端部および他端部が閉塞された筒状の周壁部を有し、ガス発生剤が収容されたガス発生剤収容室およびフィルタが配置されたフィルタ室を内部に含んでいる。上記仕切り部材は、上記ガス発生剤収容室が上記一端部側に位置するとともに上記フィルタ室が上記他端部側に位置するように、上記周壁部に内挿されることで上記ハウジングの内部の空間を上記周壁部の軸方向に仕切る。上記点火器は、上記周壁部の上記一端部に組付けられている。上記仕切り部材は、環状壁部と、隔壁部とを有している。上記環状壁部は、上記周壁部の内周面に沿って延在している。上記隔壁部は、上記環状壁部の軸方向の一端を閉塞している。上記仕切り部材は、上記環状壁部と上記周壁部とが溶接されることで上記ハウジングに固定されている。上記環状壁部は、上記周壁部の上記内周面に当接した当接部と、上記周壁部の上記内周面から離間して位置することで上記周壁部の上記内周面との間に間隙が設けられた離間部とを含んでいる。上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記環状壁部と上記周壁部とを溶接する溶接部が、上記環状壁部のうちの上記離間部を含む部分に設けられることにより、上記溶接部のうちの少なくとも一部が、上記間隙に面している。
【0014】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記当接部と上記離間部とが、上記軸方向において隣り合うように位置していてもよい。
【0015】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記離間部が、上記一端部側から上記他端部側に向かうにつれて上記周壁部の上記内周面から遠ざかるように傾斜する傾斜部分と、当該傾斜部分の上記他端部側に位置する端部から連続し、上記周壁部の上記内周面と略平行な方向に沿って延在する部分とを含んでいてもよい。その場合には、上記当接部が、上記傾斜部分の上記一端部側に位置する端部に連続して設けられていてもよい。
【0016】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記当接部が、第1当接部と、当該第1当接部よりも上記軸方向において上記他端部側に位置する第2当接部とを含んでいてもよい。その場合には、上記離間部が、上記軸方向において上記第1当接部と上記第2当接部とに挟まれるように位置していてもよい。
【0017】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記当接部と上記離間部とが、上記周壁部の周方向において隣り合うように位置していてもよい。
【0018】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記間隙が、上記ガス発生剤収容室または上記フィルタ室に連通していてもよい。
【0019】
本発明に基づくガス発生器の製造方法は、環状壁部および当該環状壁部の軸方向の一端を閉塞する隔壁部を有する仕切り部材を、ハウジングの筒状の周壁部に内挿する工程と、上記仕切り部材を上記ハウジングに固定するために、上記仕切り部材が上記周壁部に内挿された状態において上記環状壁部を上記周壁部に溶接する工程とを備える。上記仕切り部材が上記周壁部に内挿された状態において、上記環状壁部は、上記周壁部の内周面に当接することとなる当接部と、上記周壁部の上記内周面から離間して位置することで上記周壁部の上記内周面との間に間隙が設けられることとなる離間部とを含む。上記本発明に基づくガス発生器の製造方法にあっては、上記環状壁部を上記周壁部に溶接する工程において、上記環状壁部と上記周壁部とを溶接する溶接部のうちの少なくとも一部が上記間隙に面することとなるように、上記溶接部が、上記環状壁部のうちの上記離間部を含む部分に設けられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、仕切り部材とハウジングとを溶接する溶接部におけるシール性の向上が図られたガス発生器およびその製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器の概略図である。
【
図2】
図1に示すシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図である。
【
図3】
図1に示すシリンダ型ガス発生器の閉塞部材近傍の拡大断面図である。
【
図4】
図1に示すシリンダ型ガス発生器の仕切り部材近傍の拡大断面図である。
【
図5】周壁部に内挿する前の状態の仕切り部材の模式図である。
【
図6】
図1に示すシリンダ型ガス発生器における仕切り部材の周壁部への組付手順を示すフロー図である。
【
図7】
図1に示すシリンダ型ガス発生器における仕切り部材の周壁部への組付手順を説明するための模式断面図である。
【
図8】
図1に示すシリンダ型ガス発生器における仕切り部材の周壁部への組付手順を説明するための模式断面図である。
【
図9】第1検証試験を説明するための模式断面図である。
【
図12】第1変形例に係るシリンダ型ガス発生器の仕切り部材近傍の拡大断面図である。
【
図13】第2変形例に係るシリンダ型ガス発生器の仕切り部材近傍の拡大断面図である。
【
図14】第3変形例に係るシリンダ型ガス発生器の仕切り部材近傍の拡大断面図である。
【
図15】第4変形例に係るシリンダ型ガス発生器の仕切り部材近傍の拡大断面図である。
【
図16】第5変形例に係るシリンダ型ガス発生器の仕切り部材近傍の拡大断面図である。
【
図17】第6変形例に係るシリンダ型ガス発生器の仕切り部材近傍の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、サイドエアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器に本発明を適用した場合を例示するものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0023】
(実施の形態)
<A.シリンダ型ガス発生器の構成>
図1は、実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器の概略図である。
図2は、
図1に示すシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図である。
図3は、
図1に示すシリンダ型ガス発生器の閉塞部材近傍の拡大断面図である。
図4は、
図1に示すシリンダ型ガス発生器の仕切り部材近傍の拡大断面図である。
図5は、周壁部に内挿する前の状態の仕切り部材の模式図である。詳細には、
図5(A)は、仕切り部材をその軸方向における環状壁部側からみた模式図である。
図5(B)は、
図5(A)に中に示すVB-VB線に沿った模式断面図である。まず、
図1から
図5を参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aの構成について説明する。
【0024】
図1から
図5に示すように、シリンダ型ガス発生器1Aは、長尺円柱状の外形を有しており、軸方向に位置する一端および他端が閉塞された長尺略円筒状のハウジングを有している。ハウジングは、周壁部10と、ホルダ組立体20と、閉塞部材30と、仕切り部材50とを含んでおり、このうちの周壁部10、ホルダ組立体20および閉塞部材30がハウジングの外殻を規定している。
【0025】
ハウジングの外殻を規定する周壁部10、ホルダ組立体20および閉塞部材30の内部には、内部構成部品としての点火器40、ガス発生剤60、オートイグニッション剤61、コイルバネ70およびフィルタ80等が収容されており、これらに加えて内部構成部品でもある上述した仕切り部材50が配置されている。また、ハウジングの内部には、上述した内部構成部品のうちのガス発生剤60、オートイグニッション剤61およびコイルバネ70が収容されたガス発生剤収容室S1と、フィルタ80が収容されたフィルタ室S2とが位置している。
【0026】
周壁部10は、軸方向の両端に開口が形成された長尺円筒状の部材からなる。周壁部10の軸方向の一端部は、ホルダ組立体20によって閉塞されており、周壁部10の軸方向の他端部は、閉塞部材30によって閉塞されている。
【0027】
周壁部10は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されていてもよいし、SPCEに代表される圧延鋼板をプレス加工することで円筒状に成形したプレス成形品にて構成されていてもよい。また、周壁部10は、STKMに代表される電縫管にて構成されていてもよい。
【0028】
特に、周壁部10を圧延鋼板のプレス成形品や電縫管にて構成した場合には、ステンレス鋼や鉄鋼等の金属製の部材を用いた場合に比べて安価にかつ容易に周壁部10を形成することができるとともに、大幅な軽量化が可能になる。
【0029】
ホルダ組立体20は、周壁部10の軸方向の一方の開口端を閉塞するように周壁部10に固定されている。
【0030】
詳細には、周壁部10の上記一方の開口端にホルダ組立体20が内挿された状態で、当該ホルダ組立体20に向けて周壁部10の所定位置が径方向内側に向けて縮径させられるとともに、当該ホルダ組立体20に向けて周壁部10の他の所定位置が径方向内側に向けて縮径させられることにより、ホルダ組立体20は、周壁部10に対してかしめ固定されている。なお、ホルダ組立体20は、周壁部10との接触部またはその近傍においてたとえば溶接等によって周壁部10に固定されてもよい。
【0031】
図1および
図2に示すように、ホルダ組立体20は、金属製の第1ホルダ20Aと、樹脂製の第2ホルダ20Bと、樹脂製の第3ホルダ20Cとを含んでいる。ホルダ組立体20は、全体として見た場合に、周壁部10の軸方向と平行な方向に沿って延びる中空部を有する略筒状の部材からなる。
【0032】
第1ホルダ20Aは、その中央部に軸方向に沿って延びる貫通部を有する偏平な略円盤状の部材にて構成されており、筒状の第1胴部21と、第1胴部21の外周面から外側に向けて突出する環状突部22とを含んでいる。環状突部22は、第1胴部21のガス発生剤収容室S1側の端部に設けられている。
【0033】
第1ホルダ20Aは、点火器40を受け入れるために、その軸方向のガス発生剤収容室S1側の端部に凹状形状の第1収容部21aを有している。この第1収容部21aは、第1ホルダ20Aに設けられた貫通部に通じており、ホルダ組立体20の上述した中空部の一部を規定している。また、第1ホルダ20Aのガス発生剤収容室S1側の端部には、第1収容部21aを取り囲むようにかしめ部21bが設けられている。かしめ部21bは、点火器40を第1ホルダ20Aにかしめ固定するための部位である。
【0034】
第1ホルダ20Aと点火器40との間には、Oリング等からなるシール部材28が介装されている。これにより、第1ホルダ20Aと点火器40との間の隙間がシール部材28によって埋め込まれることで当該隙間が封止されている。
【0035】
第2ホルダ20Bは、その中央部に軸方向に沿って延びる概ね貫通孔形状の第2収容部23aを有する略円筒状の部材にて構成されており、筒状の第2胴部23と、第2収容部23aの軸方向の一端を覆うように設けられた蓋部26とを含んでいる。第2ホルダ20Bは、第1ホルダ20Aから見てガス発生剤収容室S1側に配置されており、当該第1ホルダ20Aに隣接して位置している。
【0036】
第2収容部23aには、点火器40の点火部42が収容されている。すなわち、第2ホルダ20Bは、第1ホルダ20Aによって保持された点火器40の点火部42の周囲を取り囲むように位置しており、これにより第2ホルダ20Bの第2胴部23のうちの第1ホルダ20A寄りの部分が、点火部42の周面を取り囲むように位置している。点火部42については、後において詳述する。
【0037】
蓋部26は、点火部42から所定距離だけ離れて位置するように、第2胴部23の第1ホルダ20A側とは反対側の軸方向端部に設けられている。蓋部26には、複数の開口部26aが設けられており、周壁部10の軸方向に沿って見た場合におけるこれら複数の開口部26aの各々の最大外形寸法は、ガス発生剤60の最小外形寸法よりも小さく構成されている。
【0038】
これにより、点火部42から見て点火器40の基部41側とは反対側に位置する部分の第2収容部23aが点火部42から所定距離だけ離れた位置において蓋部26によって実質的に閉じられることになり、ガス発生剤60が第2収容部23aに侵入することが防止されるとともに、ガス発生剤60が点火部42から距離をもって配置されるように隔てられることになる。基部41については、後において詳述する。
【0039】
このように、第2ホルダ20Bは、点火部42と周壁部10との間の隙間を埋めることにより、シリンダ型ガス発生器1Aの作動時において点火部42にて発生する熱粒子の進行方向に指向性を与える指向性付与部材として機能するものであり、特に、第2ホルダ20Bのうちの第2胴部23が、当該機能を有している。
【0040】
第3ホルダ20Cは、その中央部に軸方向に沿って延びる貫通孔形状の第3収容部27aを有する略円筒状の部材にて構成されており、筒状の第3胴部27を含んでいる。第3ホルダ20Cは、第1ホルダ20Aから見てガス発生剤収容室S1側とは反対側に配置されており、当該第1ホルダ20Aに隣接して位置している。
【0041】
第3収容部27aには、点火器40の一対の端子ピン43が収容されている。第3収容部27aは、ハーネスの接続コネクタを受け入れるための部位を構成している。端子ピン43については、後において詳述する。
【0042】
ここで、第2ホルダ20Bの第2胴部23のうち、第1かしめ部11が圧接触することで径方向内側に向けて圧縮させられる部分の内周面であってかつ点火部42の外周面に面する部分には、複数の突起部24が設けられている。これら複数の突起部24は、第2ホルダ20Bの軸方向に沿って見た場合に、第2胴部23の周方向に沿って点列状に位置するとともに、点火部42側に向けて突出している。第1かしめ部11については、後において詳述する。
【0043】
第2ホルダ20Bの内径(すなわち、第2収容部23aの直径)は、点火部42の直径よりも僅かに大きく構成されている。複数の突起部24は、第2ホルダ20Bの第2胴部23に点火部42が内挿された状態において、それらの先端が点火部42の外周面に比較的弱い力にて圧接触するようにその突出量が調整されている。
【0044】
そのため、第2胴部23に対する点火部42の圧入の際ならびに圧入後の状態においては、複数の突起部24のみが点火部42の外周面に当接することになり、これら複数の突起部24が設けられた部分以外の部分においては、点火部42の外周面と第2胴部23の内周面との間に間隙部が形成されることになる。
【0045】
これにより、第2胴部23に対する点火部42の圧入の際ならびに圧入後の状態において、点火部42と第2胴部23とが対向する領域において、その大部分が上記間隙部によって隔てられることになり、点火部42に対しては複数の突起部24の先端部のみが圧接触することになる。そのため、第2胴部23に対して点火部42を圧入しつつも、これによる点火部42の変形を最小限に抑制することが可能になる。
【0046】
第1ホルダ20Aは、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。
【0047】
第2ホルダ20Bおよび第3ホルダ20Cの材質としては、特にこれが制限されるものではないが、たとえば6ナイロン、66ナイロン、および、これらにガラスフィラーが充填されたもの等に代表されるようなナイロン系樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等を好適に用いることができる。また、第2ホルダ20Bと第3ホルダ20Cとは、同種の材料にて構成されていてもよいし、異種の材料によって構成されていてもよい。
【0048】
図1および
図3に示すように、閉塞部材30は、略円盤状の部材からなる。閉塞部材30は、周壁部10の軸方向の他方の開口端を閉塞するように周壁部10に固定されている。詳細には、閉塞部材30は、周壁部10のホルダ組立体20が固定された側とは反対側に位置する開口端(すなわち、
図1における左側の開口端)に内挿されることで当該閉塞部材30の軸方向の一端面がフィルタ80に当て留めされた状態で、当該閉塞部材30の軸方向の他端面の近傍に向けて周壁部10の所定位置が径方向内側に向けて縮径させられることにより、周壁部10に対してかしめ固定されている。
【0049】
これらかしめ固定は、周壁部10を径方向内側に向けて略均等に縮径させる八方かしめと呼ばれるかしめ固定である。この八方かしめを行なうことにより、周壁部10には、ホルダ組立体20を固定するための第1かしめ部11および第2かしめ部12と、閉塞部材30を固定するための第3かしめ部13とが設けられることになる。これにより、周壁部10とホルダ組立体20および閉塞部材30とがそれぞれ直接接触することになり、これらの間に隙間が生じることが防止されている。
【0050】
ここで、本実施の形態においては、周壁部10の軸方向の一対の端面のうちの閉塞部材30が位置する側の端面と、閉塞部材30の軸方向の一対の端面のうちの当該周壁部10の端面が位置する側の端面との間の、周壁部10の軸方向における距離であるかしめ長さL1(
図3参照)が、相当程度に長く構成されている。これに伴い、周壁部10は、第3かしめ部13よりも上記周壁部10の端面側に位置する部分に、軸方向に沿って相当程度の長さだけ延在するストレート部10bを有している。
【0051】
このように構成することにより、第3かしめ部13による周壁部10に対する閉塞部材30の固定強度を向上させることができる。なお、かしめ長さL1が相当程度に長く構成されることによる上記固定強度の向上の効果は、後述する第2検証試験によって確認されている。
【0052】
また、このように構成することにより、シリンダ型ガス発生器1Aの製造時における取り扱いが容易になり、シリンダ型ガス発生器1Aの製造効率の向上を図ることができる。
【0053】
すなわち、かしめ長さL1が相当程度に長く構成されない場合には、周壁部に第3かしめ部が設けられることにより、第3かしめ部よりも上記周壁部の端面側に位置する部分の周壁部が、第3かしめ部から遠ざかるにつれて外径寸法が大きくなるように拡径した形状となる。その結果、上記周壁部の端面における外径は、周壁部のその余の部分における外径よりも大きくなってしまう。
【0054】
この点、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、かしめ長さL1が相当程度に長く構成されていることにより、上記周壁部10の端面における外径が、周壁部10のその余の部分における外径よりも大きくなることが防止される。
【0055】
その結果、シリンダ型ガス発生器1Aにおける周壁部10の外径が、軸方向の大部分において一様となるように構成され、かつ、かしめ長さLaが相当程度に長く構成されない場合に比べて周壁部10の軸方向に沿って見た場合の最大外形寸法が小さく構成される。そのため、製造時における取り扱いが容易になり、製造効率の向上が図られたシリンダ型ガス発生器1Aとすることができる。
【0056】
なお、周壁部10に対する閉塞部材30の組付構造は、上述した組付構造に限定されるものではなく、他の組付構造を採用することとしてもよい。また、周壁部10と閉塞部材30とを別体とはせずに、有底筒状の形状を有する一つの部材にてこれを構成することとしてもよい。
【0057】
閉塞部材30は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。
【0058】
図1および
図2に示すように、点火器40は、ホルダ組立体20によって支持されることで周壁部10の軸方向の一端部に組付けられている。点火器40は、ハウジングの内部の空間に面するように設置されている。
【0059】
点火器40は、火炎を発生させることでガス発生剤60を燃焼させるためのものであり、スクイブとも称される。点火器40は、基部41と、点火部42と、一対の端子ピン43とを含んでいる。基部41は、点火部42および一対の端子ピン43を保持する部位であり、当該基部41には、一対の端子ピン43のうちの少なくとも一方が挿通されている。一対の端子ピン43は、シリンダ型ガス発生器1Aを外部に設けられた車両等のコントロールユニット(不図示)に電気的に接続するためのものである。
【0060】
点火部42は、その内部に、作動時において着火して燃焼することで火炎を発生する点火薬と、この点火薬を着火させるための抵抗体(ブリッジワイヤ)とを含んでいる。一対の端子ピン43は、点火薬を着火させるために点火部42に接続されている。
【0061】
より詳細には、点火部42は、カップ状に形成されたスクイブカップを含んでおり、このスクイブカップ内に挿入された一対の端子ピン43の先端を連結するように上述した抵抗体が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に近接するようにスクイブカップ内に点火薬が装填された構成を有している。また、点火部42内には、必要に応じて伝火薬が装填されていてもよい。
【0062】
抵抗体としては、一般にニクロム線やプラチナおよびタングステンを含む合金製の抵抗線等が用いられ、点火薬としては、一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が用いられる。また、伝火薬としては、B/KNO3、B/NaNO3、Sr(NO3)2等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物や、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、B/5-アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物等が用いられる。
【0063】
衝突を検知した際には、端子ピン43を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の熱粒子は、点火薬を収納しているスクイブカップを開裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器40が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には一般に2ミリ秒以下である。
【0064】
点火器40は、点火部42がハウジングの内部に向けて突出して位置するようにホルダ組立体20に組付けられる。そのため、点火器40の作動時においては、点火薬が着火されることによってスクイブカップに開裂が生じ、当該開裂に伴ってスクイブカップが開くことになる。
【0065】
図1、
図4および
図5に示すように、周壁部10には、仕切り部材50が内挿されている。仕切り部材50は、ガス発生剤収容室S1が周壁部10の軸方向の一端部側に位置するとともにフィルタ室S2が周壁部10の軸方向の他端部側に位置するように、ハウジングの内部の空間を周壁部10の軸方向に仕切るための部材である。
【0066】
仕切り部材50は、周壁部10の内周面に沿って延在する略筒板状の環状壁部51と、環状壁部51の軸方向の一端を閉塞する略平板状の隔壁部52とを有している。環状壁部51は、隔壁部52の周縁からガス発生剤収容室S1側に向けて立設されている。仕切り部材50は、その隔壁部52のフィルタ室S2側の主面がフィルタ80に当接するように配置されている。
【0067】
仕切り部材50の材質は、特にこれが制限されるものではないが、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。
【0068】
隔壁部52のフィルタ80に当接する主面には、スコア52aが設けられている。スコア52aは、ガス発生剤60の燃焼によるガス発生剤収容室S1の内圧上昇に伴って隔壁部52が破断して開口部が形成されるようにするためのものであり、たとえば放射状に互いに交差するように設けられた複数の溝にて構成される。スコア52aは、フィルタ80のうちの空洞部81に対向する部分に設けられている。
【0069】
仕切り部材50は、周壁部10に内挿された状態で当該周壁部10に接合されることで組付けられている。なお、仕切り部材50近傍の構成については、後において詳述する。
【0070】
ハウジングの内部の空間のうち、ホルダ組立体20と仕切り部材50とによって挟まれた空間(すなわちガス発生剤収容室S1)には、ガス発生剤60と、オートイグニッション剤61と、コイルバネ70とが配置されている。
【0071】
コイルバネ70は、ガス発生剤収容室S1のうちの仕切り部材50が位置する側に配置されており、ガス発生剤60は、ホルダ組立体20およびコイルバネ70の間に配置されている。また、オートイグニッション剤61は、仕切り部材50の隔壁部52に当接するように、当該隔壁部52およびコイルバネ70の間に配置されている。
【0072】
ガス発生剤60は、点火器40が作動することによって生じた熱粒子によって着火されて燃焼することでガスを発生させる薬剤である。ガス発生剤60としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、ガス発生剤60は、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体として構成される。
【0073】
燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5-アミノテトラゾール等が好適に利用される。
【0074】
酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅、塩基性炭酸銅等の塩基性金属塩、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。
【0075】
添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては、窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0076】
ガス発生剤60の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、シリンダ型ガス発生器1Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤60の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤60の形状の他にもガス発生剤60の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
【0077】
コイルバネ70は、成形体からなるガス発生剤60が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する目的で設けられるものであり、金属線材を曲げ加工することによって形成されたバネ部71およびその両端に位置する一対の押圧部72を有している。
【0078】
バネ部71は、金属線材が螺旋状に巻き回された略筒状の部位からなる。一方、一対の押圧部72は、その一方がバネ部71の一端に設けられており、他方がバネ部71の他端に設けられている。一対の押圧部72は、たとえば金属線材が所定の間隔をもって略平行に配置されるか、あるいは、金属線材が所定の間隔をもって渦巻き状に配置されることにより、全体として略円板状の形状を有するように構成されている。この一対の押圧部72の一方は、ガス発生剤60に接触しており、他方は、オートイグニッション剤61に接触している。
【0079】
コイルバネ70は、オートイグニッション剤61とガス発生剤60とによって挟み込まれることにより、圧縮された状態とされている。そのため、ガス発生剤60は、コイルバネ70によってホルダ組立体20側に向けて弾性付勢されることになり、これによってガス発生剤60がガス発生剤収容室S1の内部において移動してしまうことが防止されている。このように構成することにより、成形体からなるガス発生剤60が振動等によって粉砕されてしまうことが未然に防止できることになる。
【0080】
また、コイルバネ70の組付け時において、コイルバネ70がオートイグニッション剤61とガス発生剤60とによって挟み込まれて圧縮することにより、ハウジングの内部に収容される各種の構成部品の寸法ばらつきが当該コイルバネ70によって吸収できることにもなる。
【0081】
オートイグニッション剤61は、偏平略円柱状に成形されたペレットからなる。オートイグニッション剤61は、コイルバネ70から見てガス発生剤60が位置する側とは反対側(すなわちフィルタ80側)に配置されており、仕切り部材50の隔壁部52とコイルバネ70とによって挟み込まれて保持されている。これにより、オートイグニッション剤61は、コイルバネ70によってガス発生剤60と隔てられている。
【0082】
オートイグニッション剤61は、点火器40の作動に依らずに自動発火する薬剤である。より詳細には、オートイグニッション剤61は、ガス発生剤60よりも低い温度で自然発火するものであり、シリンダ型ガス発生器1Aが組み込まれたエアバッグ装置が装備された車両等において万が一火災等が発生した場合に、シリンダ型ガス発生器1Aが外部から加熱されることによって異常動作が誘発されないようにするためのものである。
【0083】
図1に示すように、ハウジングの内部の空間のうち、閉塞部材30と仕切り部材50とによって挟まれた空間(すなわちフィルタ室S2)には、フィルタ80が配置されている。フィルタ80は、周壁部10の軸方向と平行な方向に沿って延びる空洞部81を有する円筒状の部材からなり、その軸方向の一方の端面が閉塞部材30に当接しており、その軸方向の他方の端面が仕切り部材50の隔壁部52に当接している。
【0084】
フィルタ80は、ガス発生剤60が燃焼することによって発生したガスがこのフィルタ80中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれるスラグ(残渣)等を除去する除去手段としても機能する。上述したように円筒状の部材からなるフィルタ80を利用することにより、作動時においてフィルタ室S2を流動するガスに対する流動抵抗が低く抑えられることになり、効率的なガスの流動が実現可能となる。
【0085】
フィルタ80としては、好適にはステンレス鋼や鉄鋼等からなる金属線材または金属網材の集合体にて構成されたものが利用できる。具体的には、メリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体、またはこれらをプレスにより押し固めたもの等が利用できる。
【0086】
また、フィルタ80として、孔あき金属板を巻き回したもの等を利用することもできる。この場合、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用できる。
【0087】
フィルタ室S2を規定する部分の周壁部10には、ガス噴出口14が周方向および軸方向に沿って複数設けられている。これら複数のガス噴出口14は、フィルタ80を通過した後のガスをハウジングの外部に導出するためのものである。
【0088】
<B.シリンダ型ガス発生器の動作>
次に、
図1を参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aの作動時における動作について説明する。
【0089】
図1を参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aが搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからの通電によって点火器40が作動する。
【0090】
点火器40が作動すると、点火薬またはこれに加えて伝火薬が燃焼することによって点火部42内の圧力が上昇し、これによって点火部42のスクイブカップが開裂し、点火薬またはこれに加えて伝火薬が燃焼することで発生した熱粒子が点火部42の外部へと流出する。ガス発生剤60に達した熱粒子は、ガス発生剤60を燃焼させ、これによりガス発生剤収容室S1内において多量のガスが発生する。
【0091】
これに伴い、ガス発生剤収容室S1の圧力が上昇し、当該ガス発生剤収容室S1の内圧が所定の圧力にまで達することにより、仕切り部材50のうちのスコア52aが設けられた部分に破断が生じる。これにより、フィルタ80の空洞部81に対向する部分において仕切り部材50に開口部が形成されることになり、ガス発生剤収容室S1とフィルタ室S2とが当該開口部を介して連通した状態となる。
【0092】
これに伴い、ガス発生剤収容室S1において発生したガスが、仕切り部材50に形成された開口部を介してフィルタ室S2へと流入する。フィルタ室S2に流れ込んだガスは、フィルタ80の空洞部81を軸方向に沿って流動した後に径方向に向けて向きを変え、フィルタ80の内部を通流する。その際に、フィルタ80によって熱が奪われてガスが冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ80によって除去される。
【0093】
そして、フィルタ80を通流した後のガスは、周壁部10に設けられたガス噴出口14を介してハウジングの外部へと噴出される。噴出されたガスは、シリンダ型ガス発生器1Aに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、エアバッグを膨張および展開する。なお、オートイグニッション剤61は、ガス発生剤60の燃焼時において共に燃焼することになる。
【0094】
<C.仕切り部材近傍の詳細な構成>
図1、
図4および
図5に示すように、仕切り部材50は、上述したように環状壁部51と隔壁部52とを有している。
【0095】
環状壁部51は、周壁部10の内周面に当接した当接部51aと、周壁部10の内周面から離間して位置することで周壁部10の内周面との間に間隙Gが設けられた離間部51bとを含んでいる。当接部51aは、周壁部10の周方向と平行な方向に沿って延在している。
【0096】
本実施の形態においては、当接部51aと離間部51bとが、周壁部10の軸方向において隣り合うように位置している。詳細には、離間部51bは、隔壁部52に連続して設けられており、当接部51aは、上記軸方向における離間部51bの一対の端部のうちの隔壁部52側とは反対側の端部に連続して設けられている。このように構成されたシリンダ型ガス発生器1Aにあっては、間隙Gがフィルタ室S2に連通している。
【0097】
離間部51bは、周壁部10の軸方向の一端部側から他端部側に向かうにつれて(すなわち、ホルダ組立体20が位置する側から閉塞部材30が位置する側に向かうにつれて)周壁部10の内周面から遠ざかるように傾斜する傾斜部分としての第1部分51b1と、第1部分51b1の上記他端部側に位置する端部から連続し、周壁部10の内周面と略平行な方向に沿って延在する部分としての第2部分51b2とを含んでいる。当接部51aは、第1部分51b1の一端部側に位置する端部に連続して設けられている。
【0098】
このように構成された仕切り部材50は、周壁部10の内部に圧入されるとともに、環状壁部51と周壁部10とが溶接によって接合されることにより、周壁部10に固定されている。環状壁部51と周壁部10との溶接には、レーザ溶接が用いられる。なお、この溶接は、特にレーザ溶接に限定されず、たとえば電子ビーム溶接あるいは抵抗溶接等も好適に利用できる。
【0099】
環状壁部51と周壁部10とを溶接する溶接部90は、周壁部10の周方向に沿って延在して設けられている。溶接部90は、周壁部10をその厚み方向において貫通するとともに、環状壁部51をその厚み方向において貫通している。
【0100】
溶接部90は、環状壁部51のうちの離間部51bの一部と、当該離間部51bの一部に相対する部分の周壁部10とに設けられている。このように構成することにより、周壁部10と離間部51bとの間の間隙Gの少なくとも一部が、溶接部90によって埋め込まれている。そのため、間隙Gが溶接部90によって封止されることになり、当該部分におけるシール性が確保されている。
【0101】
また、上述の如く溶接部90が環状壁部51のうちの離間部51bの一部と、当該離間部51bの一部に相対する部分の周壁部10とに設けられることにより、溶接部90のうちの少なくとも一部が間隙Gに面している。このように構成することにより、仕切り部材とハウジングとを溶接する溶接部におけるブローホールの発生が抑制されることでシール性の向上が図られたシリンダ型ガス発生器1Aとすることができるが、この点については後において詳述する。
【0102】
<D.仕切り部材の周壁部への組付手順>
図6は、
図1に示すシリンダ型ガス発生器における仕切り部材の周壁部への組付手順を示すフロー図である。
図7および
図8は、
図1に示すシリンダ型ガス発生器における仕切り部材の周壁部への組付手順を説明するための模式断面図である。次に、
図6から
図8と、前述の
図5とを参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aにおける仕切り部材50の周壁部10への組付手順について説明する。
【0103】
仕切り部材50をハウジングの周壁部10に組付けるに際しては、
図5および
図6に示すように、まず、工程ST1において、周壁部と仕切り部材とが準備される。より詳細には、環状壁部51および当該環状壁部51の軸方向の一端を閉塞する隔壁部52を有する仕切り部材50と、ハウジングの筒状の周壁部10とが準備される。
【0104】
環状壁部51は、後述するように仕切り部材50が周壁部10に内挿された状態において、周壁部10の内周面に当接することとなる当接部51aと、周壁部10の内周面から離間して位置することで周壁部10の内周面との間に間隙Gが設けられることとなる離間部51bとを含む(
図8参照)。
【0105】
また、仕切り部材50の開口面を規定する部分の環状壁部51の外径は、周壁部10の内径と同一かそれよりもわずかに大きくなるように構成される。
【0106】
次に、
図6および
図7に示すように、工程ST2において、仕切り部材が周壁部に内挿される。
【0107】
より詳細には、まず、仕切り部材50が、その開口面が周壁部10とは反対側に位置し、かつ、環状壁部51の中心軸が周壁部10の中心軸と概ね重なるように位置決めされる。次に、このように位置決めされた仕切り部材50が、周壁部10の内部に圧入される。
【0108】
次に、
図6および
図8に示すように、工程ST3において、仕切り部材が周壁部に内挿された状態において、環状壁部が周壁部に溶接される。これにより、仕切り部材がハウジングに固定される。
【0109】
より詳細には、仕切り部材50が周壁部10に内挿された状態において、周壁部10の外周面の所定の部分に向けて、レーザ溶接機のトーチ100からレーザLAが照射される。
【0110】
また、この照射と同時に、周壁部10は、その中心軸CLを回転中心として、
図8中に示す矢印DR方向に向けて回転される。これにより、環状壁部51と周壁部10とを溶接する溶接部90が、周壁部10の周方向に沿って延在して設けられる。なお、周壁部10が回転する代わりに、トーチ100が周壁部10の周方向に沿って移動しながらレーザLAを照射することとしてもよい。
【0111】
このレーザ溶接は、溶接部90が、環状壁部51のうちの離間部51bを含む部分に設けられることとなるように、その溶接条件が適宜調整される。当該照射条件としては、たとえば、溶接電流や溶接電圧、通電時間、周壁部10の外周面上における照射位置等が挙げられる。なお、溶接部90が設けられることとなる部分の周壁部10と、これに相対する部分の離間部51bとの間に位置する部分の間隙Gのクリアランスは、0.25mm以下であることが好ましい。
【0112】
本実施の形態においては、溶接部90が環状壁部51のうちの離間部51bの一部と、当該離間部51bの一部に相対する部分の周壁部10とに設けられる。これにより、溶接部90のうちの少なくとも一部が間隙Gに面することとなる。
【0113】
以上において説明した工程ST1~ST3を経ることにより、仕切り部材50の周壁部10への組付けが完了する。
【0114】
なお、以上においては説明したシリンダ型ガス発生器1Aの製造方法においては、レーザ溶接によって溶接部90が設けられる場合を例示したが、溶接部90は、他の溶接方法、たとえば、電子ビーム溶接あるいは抵抗溶接等によって設けられてもよい。
【0115】
<E.小括>
以上において説明した本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aおよびその製造方法にあっては、上述したように、環状壁部51と周壁部10とを溶接する溶接部90が、環状壁部51のうちの離間部51bに設けられる。これにより、溶接部90のうちの少なくとも一部が、離間部51bと周壁部10の内周面との間に設けられた間隙Gに面している。
【0116】
このように構成することにより、環状壁部51が周壁部10に溶接されるに当たって溶接部90およびその近傍にて発生するガスを、間隙Gを含む空間に向けて逃がすことが可能になる。
【0117】
そのため、このガスが周壁部10と溶接部90との間の界面および/または環状壁部51と溶接部90との間の界面に閉じ込められることで溶接部90あるいはその近傍にブローホールが発生してしまうことを効果的に抑制でき、ひいては、溶接部90におけるシール性の向上を図ることができる。
【0118】
したがって、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aおよびその製造方法とすることにより、仕切り部材とハウジングとを溶接する溶接部におけるシール性の向上が図られたシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0119】
なお、以上において説明したシリンダ型ガス発生器1Aにおけるシール性向上の効果は、後述する第1検証試験によって確認されている。
【0120】
また、上述した本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、溶接部90が設けられる部分の環状壁部51の全てが、離間部51bにて構成される場合を例示したが、溶接部90が、当接部51aと離間部51bとの双方に跨がるように設けられてもよい。換言すれば、溶接部90が環状壁部51のうちの離間部51bを含む部分に設けられることにより、溶接部90のうちの少なくとも一部が間隙Gに面していればよい。
【0121】
(第1検証試験)
第1検証試験においては、上述した実施の形態における仕切り部材50と構成の一部が異なる仕切り部材50Xを準備し、当該仕切り部材50Xを用いて、仕切り部材50Xの離間部51bと周壁部10との間のクリアランスCの大きさと、溶接部90におけるシール性との間の関係について調べた。
図9は、第1検証試験を説明するための模式断面図である。
図10は、第1検証試験の結果を示す表である。
【0122】
本検証試験において用いた仕切り部材50Xは、仕切り部材50と比較した場合に、離間部51bの構成が相違している。より詳細には、仕切り部材50においては、上述したように離間部51bが傾斜部分としての第1部分51b1と、周壁部10の内周面と略平行な方向に沿って延在する部分としての第2部分51b2とを含んでいる一方で、仕切り部材50Xにおいては、離間部51bが周壁部10の内周面と略平行な方向に沿って延在する部分としての第2部分51b2のみによって構成されている。
【0123】
本検証試験においては、上述したクリアランスCの大きさが異なる仕切り部材50Xを7種類、5サンプルずつ準備した。そして、溶接部90が設けられる部分の環状壁部51の全てが離間部51bにて構成されるように、仕切り部材50Xの環状壁部51と周壁部10とを溶接した。また、クリアランスCの大きさが0mmであるとは、仕切り部材50Xの環状壁部51が離間部51bを含まない(すなわち、環状壁部51の全てが当接部51aにて構成される)ことを意味する。
【0124】
次に、各サンプルについてヘリウムガス漏れ試験を行ない、ヘリウムガス漏れの有無を確認した。ヘリウムガス漏れ試験を行うに当たっては、まず、周壁部10に仕切り部材50Xを固定することにより、周壁部10の内部の空間を2つに仕切った。次に、周壁部10と仕切り部材50Xとからなるワークを、大気圧下の空間内に配置した。次に、周壁部10の一対の端部のうちの一方をチャックした。次に、上記周壁部10の2つの空間のうちのチャックされた側の空間内を排気した。次に、上記周壁部10の2つの空間のうちのチャックされていない側の空間側と、周壁部10の外側に位置する空間側とから、溶接部90に向けてヘリウムガスを吹き付けた。次に、溶接部90およびその近傍から上記周壁部10の2つの空間のうちのチャックされた側の空間に向けて漏れ出たガスを質量分析管に通し、漏れ出たガス中に含まれるヘリウムガスの分圧を測定した。このようにして測定されたヘリウムガスの分圧の値が所定の値よりも大きい場合には、溶接部90およびその近傍におけるヘリウムガス漏れが有ると判断した。
【0125】
なお、本検証試験においては、5つのサンプルのうちの少なくとも1つのサンプルにてヘリウムガス漏れが有った場合、当該種類の仕切り部材50Xのヘリウムガス漏れ試験の結果を不合格(NG)とし、5つのサンプルのいずれにおいてもヘリウムガス漏れがなかった場合、当該種類の仕切り部材50Xのヘリウムガス漏れ試験の結果を合格(OK)とした。
【0126】
図10に示す本検証試験の結果から、クリアランスCが0.025mm以上である場合には、ヘリウムガス漏れがなく、シール性に優れたシリンダ型ガス発生器とすることができることが確認された。また、本検証試験の結果から、クリアランスCが存在している限り、その大きさに関わらず、シール性に優れたシリンダ型ガス発生器とすることができることが推察される。
【0127】
なお、上述した実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aにおいて用いられた仕切り部材50に代えて、本検証試験において用いられた仕切り部材50Xを用いることができる。このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果が得られることになり、仕切り部材とハウジングとを溶接する溶接部におけるシール性の向上が図られたシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0128】
(第2検証試験)
第2検証試験においては、周壁部10におけるかしめ長さL1が相当程度に長く構成されることと、第3かしめ部13による周壁部10に対する閉塞部材30の固定強度との関係について調べた。
図11は、第2検証試験の結果を示す表である。
図11中に示すかしめ長さL1および距離L2は、
図3中に示している。
【0129】
本検証試験においては、周壁部10におけるかしめ長さL1のみが異なるシリンダ型ガス発生器を5種類、3サンプルずつ準備した。かしめ長さL1とは、上述したように、周壁部10の軸方向の一対の端面のうちの閉塞部材30が位置する側の端面と、閉塞部材30の軸方向の一対の端面のうちの上記周壁部10の端面が位置する側の端面との間の、周壁部10の軸方向における距離である。第3かしめ部13の谷底部分と、閉塞部材30の軸方向の一対の端面のうちの上記周壁部10の端面が位置する側の端面との間の、周壁部10の軸方向における距離L2は、シリンダ型ガス発生器の全種類において同一とした。
【0130】
本検証試験において準備したシリンダ型ガス発生器の周壁部10は、材質が機械構造用炭素鋼鋼管であり、外径が17.4mmであり、厚みが1.0mmであった。また、第3かしめ部13の谷底部分における周壁部10の外径は、16.15mmであった。なお、かしめ長さL1が7.5mm以上であるシリンダ型ガス発生器においては、周壁部10がストレート部10bを有していたものの、かしめ長さL1が6.5mm以上であるシリンダ型ガス発生器においては、周壁部10がストレート部10bを有していなかった。
【0131】
本検証試験においては、各サンプルをハイドロバースト試験機にかけることにより、閉塞部材30の抜け落ちの有無を確認した。
【0132】
より詳細には、各サンプルをハイドロバースト試験機にかけることにより、各サンプルにおいて、閉塞部材30の抜け落ちが生じるか、あるいは、第3かしめ部13以外の部分の周壁部10において破断が生じるか、を確認した。前者の場合には、第3かしめ部13による周壁部10に対する閉塞部材30の固定強度が、周壁部10を構成する部材の母材強度よりも低いと判断し、ハイドロバースト試験の結果を不合格(NG)とした。後者の場合には、第3かしめ部13による周壁部10に対する閉塞部材30の固定強度が、周壁部10を構成する部材の母材強度よりも高いと判断し、ハイドロバースト試験の結果を合格(OK)とした。
【0133】
図11に示す本検証試験の結果から、かしめ長さL1が7.5mm以上である場合には、閉塞部材30の抜け落ちが生じず、第3かしめ部13による閉塞部材30の固定強度が十分に確保されたシリンダ型ガス発生器とすることができることが確認された。
【0134】
(第1変形例)
図12は、第1変形例に係るシリンダ型ガス発生器の仕切り部材近傍の拡大断面図である。以下、
図12を参照して、上述した実施の形態に基づいた第1変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A1について説明する。なお、
図12においては、周壁部10、仕切り部材50および溶接部90のみを図示している(後述する
図13から
図15についても同様である)。
【0135】
図12に示すように、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A1は、上述した実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aと比較した場合に、仕切り部材50の構成のみが相違している。より詳細には、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A1においては、仕切り部材50の環状壁部51の離間部51bが、傾斜部分としての第1部分51b1のみによって構成されている。
【0136】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果が得られることになり、仕切り部材とハウジングとを溶接する溶接部におけるシール性の向上が図られたシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0137】
(第2変形例)
図13は、第2変形例に係るシリンダ型ガス発生器の仕切り部材近傍の拡大断面図である。以下、
図13を参照して、上述した実施の形態に基づいた第2変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A2について説明する。
【0138】
図13に示すように、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A2は、上述した実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aと比較した場合に、仕切り部材50の構成のみが相違している。
【0139】
より詳細には、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A2においては、仕切り部材50の環状壁部51の離間部51bが、第1離間部51b11と第2離間部51b12とを含んでいる。第1離間部51b11および第2離間部51b12は、いずれも、周壁部10の内周面と略平行な方向に沿って延在する第2部分51b2のみによって構成されている。
【0140】
第1離間部51b11、当接部51aおよび第2離間部51b12は、隔壁部52に近い側から周壁部10の軸方向においてこの順で連続して設けられている。溶接部90は、第2離間部51b12の一部と、当該第2離間部51b12の一部に相対する部分の周壁部10とに設けられている。
【0141】
このように構成されたシリンダ型ガス発生器1A2にあっては、周壁部10の内周面と第2離間部51b12との間に設けられた間隙Gが、ガス発生剤収容室S1に連通している。
【0142】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果が得られることになり、仕切り部材とハウジングとを溶接する溶接部におけるシール性の向上が図られたシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0143】
なお、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A2においては、溶接部90が、第2離間部51b12の一部と、当該第2離間部51b12の一部に相対する部分の周壁部10とに設けられる場合を例示したが、溶接部90が、第1離間部51b11の一部と、当該第1離間部51b11の一部に相対する部分の周壁部10とに設けられてもよい。
【0144】
(第3変形例)
図14は、第3変形例に係るシリンダ型ガス発生器の仕切り部材近傍の拡大断面図である。以下、
図14を参照して、上述した実施の形態に基づいた第3変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A3について説明する。
【0145】
図14に示すように、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A3は、上述した実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aと比較した場合に、仕切り部材50の構成のみが相違している。
【0146】
より詳細には、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A3においては、仕切り部材50の環状壁部51の当接部51aが、第1当接部51a1と第2当接部51a2とを含んでいる。離間部51bは、周壁部10の内周面と略平行な方向に沿って延在する第2部分51b2のみによって構成されている。
【0147】
第2当接部51a2、離間部51bおよび第1当接部51a1は、隔壁部52に近い側から周壁部10の軸方向においてこの順で連続して設けられている。換言すれば、離間部51bは、第1当接部51a1と第2当接部51a2とに挟まれるように位置している。溶接部90は、離間部51bの一部と、当該離間部51bの一部に相対する部分の周壁部10とに設けられている。
【0148】
このように構成されたシリンダ型ガス発生器1A3にあっては、間隙Gが、ガス発生剤収容室S1およびフィルタ室S2のいずれにも連通していない。
【0149】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果が得られることになり、仕切り部材とハウジングとを溶接する溶接部におけるシール性の向上が図られたシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0150】
(第4変形例)
図15は、第4変形例に係るシリンダ型ガス発生器の仕切り部材近傍の拡大断面図である。以下、
図15を参照して、上述した実施の形態に基づいた第4変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A4について説明する。
【0151】
図15に示すように、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A4は、上述した実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aと比較した場合に、仕切り部材50の構成および溶接部90の構成が相違している。
【0152】
より詳細には、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A4においては、仕切り部材50の環状壁部51の離間部51bが、周壁部10の内周面と略平行な方向に沿って延在する第2部分51b2のみによって構成されている。
【0153】
また、シリンダ型ガス発生器1A4においては、離間部51bが相当程度に厚く構成されている。これに起因して、シリンダ型ガス発生器1A4においては、溶接部90が、周壁部10をその厚み方向において貫通しているものの、離間部51bをその厚み方向において貫通していない。
【0154】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果が得られることになり、仕切り部材とハウジングとを溶接する溶接部におけるシール性の向上が図られたシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0155】
(第5変形例)
図16は、第5変形例に係るシリンダ型ガス発生器の仕切り部材近傍の拡大断面図である。詳細には、
図16(A)は、仕切り部材をその軸方向における環状壁部側からみた模式図である。
図16(B)は、
図16(A)に中に示すXVIB-XVIB線に沿った模式断面図である。
図16(C)は、
図16(A)に中に示すXVIC-XVIC線に沿った模式断面図である。以下、
図16を参照して、上述した実施の形態に基づいた第5変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A5について説明する。なお、
図16(A)においては、仕切り部材50のみを図示している。
図16(B)および
図16(C)においては、周壁部10、仕切り部材50および溶接部90のみを図示している。
【0156】
図16(A)から
図16(C)に示すように、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A5は、上述した実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aと比較した場合に、仕切り部材50の構成が相違している。
【0157】
より詳細には、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A5においては、仕切り部材50の環状壁部51が、複数の当接部51aと複数の離間部51bとを含んでいる。環状壁部51中に占める複数の離間部51bの面積比率は、環状壁部51中に占める複数の当接部51aの面積比率よりも相当程度に大きく構成されている。
【0158】
複数の当接部51aと複数の離間部51bとは、いずれも、周壁部10の軸方向と平行な方向に沿って延在している。また、複数の離間部51bは、周壁部10の内周面と略平行な方向に沿って延在する第2部分51b2のみによって構成されている。
【0159】
このように構成されたシリンダ型ガス発生器1A5にあっては、複数の当接部51aおよび複数の離間部51bが、周壁部10の周方向において交互に隣り合うように位置している。また、周壁部10の内周面と複数の離間部51bの各々との間に設けられた間隙Gが、ガス発生剤収容室S1およびフィルタ室S2の双方に連通している。
【0160】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果が得られることになり、仕切り部材とハウジングとを溶接する溶接部におけるシール性の向上が図られたシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0161】
(第6変形例)
図17は、第6変形例に係るシリンダ型ガス発生器の仕切り部材近傍の拡大断面図である。詳細には、
図17(A)は、仕切り部材をその軸方向における環状壁部側からみた模式図である。
図17(B)は、
図17(A)に中に示すXVIIB-XVIIB線に沿った模式断面図である。以下、
図17を参照して、上述した実施の形態に基づいた第6変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A6について説明する。なお、
図17(A)においては、仕切り部材50のみを図示している。
図17(B)においては、周壁部10、仕切り部材50および溶接部90のみを図示している。
【0162】
図17(A)および
図17(B)に示すように、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A6は、上述した実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aと比較した場合に、仕切り部材50の構成が相違している。
【0163】
より詳細には、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A6においては、仕切り部材50の環状壁部51が、複数の当接部51aと複数の離間部51bとを含んでいる。環状壁部51中に占める複数の当接部51aの面積比率と、環状壁部51中に占める複数の離間部51bの面積比率とは、概ね同一である。
【0164】
複数の当接部51aと複数の離間部51bとは、いずれも、周壁部10の軸方向と平行な方向に沿って延在している。また、複数の離間部51bは、周壁部10の内周面と略平行な方向に沿って延在する第2部分51b2のみによって構成されている。
【0165】
このように構成されたシリンダ型ガス発生器1A6にあっては、複数の当接部51aおよび複数の離間部51bが、周壁部10の周方向において交互に隣り合うように位置している。また、周壁部10の内周面と複数の離間部51bの各々との間に設けられた間隙Gが、ガス発生剤収容室S1およびフィルタ室S2の双方に連通している。
【0166】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果が得られることになり、仕切り部材とハウジングとを溶接する溶接部におけるシール性の向上が図られたシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0167】
(その他の形態等)
上述した実施の形態およびその変形例においては、主として点火器を保持する機能を有する金属製の第1ホルダと、主として指向性付与部材としての機能を有する樹脂製の第2ホルダと、主として雌型コネクタ部を構成する樹脂製の第3ホルダとによって構成されたホルダ組立体が用いられる場合を例示して説明を行なったが、このようなホルダ組立体に代えて、単一の部材にて構成されたホルダが用いられてもよい。また、このホルダは、必ずしも指向性付与部材としての機能を有していなくてもよい。
【0168】
また、上述した実施の形態およびその変形例において開示した各部材の形状や大きさ、数、配置位置等は、本発明の趣旨に照らして逸脱しない範囲において、当然にこれを種々変更することができる。
【0169】
さらには、上述した実施の形態およびその変形例においては、本発明をサイドエアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器に適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明の適用対象はこれに限られるものではなく、カーテンエアバッグ装置やニーエアバッグ装置、シートクッションエアバッグ装置等に組み込まれるシリンダ型ガス発生器や、シリンダ型ガス発生器と同様に長尺状の外形を有するいわゆるT字型ガス発生器にもその適用が可能である。
【0170】
このように、今回開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0171】
1A,1A1~1A6 シリンダ型ガス発生器、10 周壁部、10b ストレート部、11 第1かしめ部、12 第2かしめ部、13 第3かしめ部、14 ガス噴出口、20 ホルダ組立体、20A 第1ホルダ、20B 第2ホルダ、20C 第3ホルダ、21 第1胴部、21a 第1収容部、21b かしめ部、22 環状突部、23 第2胴部、23a 第2収容部、24 突起部、26 蓋部、27 第3胴部、27a 第3収容部、28 シール部材、30 閉塞部材、40 点火器、41 基部、42 点火部、43 端子ピン、50,50X 仕切り部材、51 環状壁部、51a 当接部、51a1 第1当接部、51a2 第2当接部、51b 離間部、51b1 第1部分、51b2 第2部分、51b11 第1離間部、51b12 第2離間部、52 隔壁部、52a スコア、60 ガス発生剤、61 オートイグニッション剤、70 コイルバネ、71 バネ部、72 押圧部、80 フィルタ、81 空洞部、90 溶接部、100 トーチ、G 間隙、LA レーザ、S1 ガス発生剤収容室、S2 フィルタ室。