(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014286
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】後方視認装置の保持構造
(51)【国際特許分類】
B60R 1/04 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
B60R1/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116743
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 光広
(72)【発明者】
【氏名】若森 正悟
(72)【発明者】
【氏名】兼松 幸司
(72)【発明者】
【氏名】青池 和音
(57)【要約】
【課題】車両走行時における後方視認装置の振動を抑制することができる後方視認装置の保持構造を提供すること。
【解決手段】車両の後方を視認するルームミラー10と、一端が車両に取り付けられ、他端にルームミラー10が取り付けられるステー20と、ステー20を車両に固定する固定部30と、を有するルームミラー10の保持構造において、固定部30は、車両に固定される第1固定部材40と、ステー20に対して第1固定部材40をねじ32とともに固定するための樹脂製の第2固定部材50と、を有し、第1固定部材40は、第2固定部材50を収容するために第2固定部材50と同形状に形成された収容凹部42を備え、第2固定部材50は、車両前後方向へ延びる基部60と、基部60から車両前後方向に交差する方向へ延びる腕部70と、ねじ32が配置され、ルームミラー10に対して衝撃が加わった場合に底部が破断するねじ配置穴51と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後方を視認する後方視認装置と、
一端が車両に取り付けられ、他端に前記後方視認装置が取り付けられるステーと、
前記ステーを車両に固定する固定部と、を有する後方視認装置の保持構造において、
前記固定部は、
車両に固定される第1固定部材と、
前記ステーに対して前記第1固定部材をねじとともに固定するための樹脂製の第2固定部材と、を有し、
前記第1固定部材は、前記第2固定部材を収容するために前記第2固定部材と同形状に形成された収容凹部を備え、
前記第2固定部材は、
車両前後方向へ延びる基部と、
前記基部から車両前後方向に交差する方向へ延びる腕部と、
前記ねじが配置され、前記後方視認装置に対して衝撃が加わった場合に底部が破断するねじ配置穴と、を備えている
ことを特徴とする後方視認装置の保持構造。
【請求項2】
請求項1に記載する後方視認装置の保持構造において、
前記基部の側面に対する前記腕部の側面の角度が90度以上に設定されている
ことを特徴とする後方視認装置の保持構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する後方視認装置の保持構造において、
前記基部又は前記腕部の少なくとも一方の端部側面には、前記収容凹部の側面に接触する突出部が形成されている
ことを特徴とする後方視認装置の保持構造。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載する後方視認装置の保持構造において、
前記腕部の前記収容凹部の底面に対向する面には、前記収容凹部の底面に接触する凸部が形成されている
ことを特徴とする後方視認装置の保持構造。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載する後方視認装置の保持構造において、
前記ねじ配置穴の底面外周に、溝が形成されている
ことを特徴とする後方視認装置の保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の後方を視認するために、車室内に設置されるミラーやモニター等の後方視認装置を保持するための保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の室内には、車両の後方を視認するためにミラーやモニター等の後方視認装置が取り付けられている。この後方視認装置は、車両の室内において、一般的に車室天井にステーを介して固定され保持されている。すなわち、ステーの一端に後方視認装置が取り付けられ、ステーの他端が車両に固定されることにより、後方視認装置が車室内に保持されている。
【0003】
そして、このような後方視認装置の保持構造には、乗員が後方視認装置に衝突した際に、乗員を保護するために衝撃軽減機構が設けられている。この衝撃軽減機構の1つとして、例えば、後方視認装置及びステーが、車両に対する固定部分から脱落することにより、乗員の頭部などが後方視認装置に衝突した際に大きな負傷を負わないようにしたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような衝撃軽減機構を備える後方視認装置の保持構造では、後方視認装置が取り付けられたステーが、衝撃軽減機構を介して車室天井に固定されているため、車室天井に対して直に固定される場合に比べると、振動特性が悪くなっており、後方視認装置が振動しやすい。そして、近年、カメラ映像を鏡面に映すタイプの後方視認装置が普及してきている。このタイプの後方視認装置では、カメラ映像を映すために必要となるディスプレイ等の新たな部品が備わっているため、重量が大幅に増加している。
【0006】
そのため、走行時に車両に発生する振動により、後方視認装置がより振動しやすくなっており、後方視野がぶれて見にくくなる問題が生じている。すなわち、後方視認装置の振動は小さくても、そこに写る後方の鏡面像(ディスプレイがオフ状態のとき)あるいはカメラ映像(ディスプレイがオン状態のとき)は、遠い距離ほど揺れが大きく見えるため、振動に伴うぶれの問題が顕著となる。
【0007】
そこで、本開示は上記した問題点を解決するためになされたものであり、車両走行時における後方視認装置の振動を抑制することができる後方視認装置の保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、
車両の後方を視認する後方視認装置と、
一端が車両に取り付けられ、他端に前記後方視認装置が取り付けられるステーと、
前記ステーを車両に固定する固定部と、を有する後方視認装置の保持構造において、
前記固定部は、
車両に固定される第1固定部材と、
前記ステーに対して前記第1固定部材をねじとともに固定するための樹脂製の第2固定部材と、を有し、
前記第1固定部材は、前記第2固定部材を収容するために前記第2固定部材と同形状に形成された収容凹部を備え、
前記第2固定部材は、
車両前後方向へ延びる基部と、
前記基部から車両前後方向に交差する方向へ延びる腕部と、
前記ねじが配置され、前記後方視認装置に対して衝撃が加わった場合に底部が破断するねじ配置穴と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
この後方視認装置の保持構造では、第2固定部材が第1固定部材の収容凹部に収容された状態で、第2固定部材がステーに対して、ねじによって固定されることにより、第2固定部材ととともに第1固定部材がステーに固定される。つまり、第1固定部材は、ねじによってステーに直接固定されておらず、第2固定部材を介して固定されている。そして、第1固定部材が車両に固定されることにより、第1固定部材及び第2固定部材が取り付けられたステーが車両に固定されている。
【0010】
そして、第2固定部材が、衝撃軽減機構として作用するねじ配置穴を備えている。すなわち、後方視認装置に対して衝撃が加わった場合に、ねじ配置穴の底部(ねじ座面)が破断することにより、ステーを固定しているねじが、ステーととともに第1固定部材から外れるため、ステー及び後方視認装置が車両から脱落する。
【0011】
そのため、走行時に車両に発生する振動により、後方視認装置が振動しやすくなっている。そこで、この後方視認装置の保持構造では、第2固定部材が、車両前後方向へ延びる基部と、基部から車両前後方向に交差する方向へ延びる腕部とを備えている。
【0012】
これにより、車両の前後方向及び前後方向に交差する方向のそれぞれにおいて、第2固定部材の強度を向上させることができる。そのため、第1固定部材及び第2固定部材によってステーを車両に対してしっかりと固定することができる。従って、衝撃軽減機構を備える後方視認装置であっても、車両走行時における後方視認装置の振動を抑制することができる。
【0013】
ここで、第2固定部材の腕部が延びる(設ける)方向は、車両前後方向と直交する方向とすることが好ましい。こうすることにより、後方視認装置の振動が大きくなりやすい車両前後方向と直交する方向(車両の左右方向)における振動を効果的に抑制することができるからである。
【0014】
また、第2固定部材の腕部に、車両前後方向に交差(望ましくは直交)する方向に延びるリブを設けてもよい。このようなリブを設けることにより、第2固定部材の腕部において車両前後方向と交差する方向の強度を向上させることできる。そのため、車両前後方向と交差する方向における後方視認装置の振動抑制効果を増大させることができる。
【0015】
さらに、第2固定部材の腕部(基部の一部(基部のうち腕部に挟まれる部分)も含む)に、補強材を設けてもよい。例えば、補強材をインサート成形することにより、補強材を配置することができる。なお、補強材は、上記のリブとともに設けてよいし、リブを設けずに単独で設けてよい。
【0016】
このような補強材を設けることにより、第2固定部材の腕部において車両前後方向と交差する方向の強度をさらに向上させることできる。そのため、車両前後方向と交差する方向における後方視認装置の振動抑制効果をより増大させることができる。
【0017】
上記した後方視認装置の保持構造において、
前記基部の側面に対する前記腕部の側面の角度が90度以上に設定されていることが好ましい。そして、前記基部と前記腕部との接続(境界)部分は、R形状をなしていることが望ましい。
【0018】
腕部の根元部分をこのような形状にすることにより、腕部の根元部分において応力集中が発生しないようにすることができる。これにより、第2固定部材において最も損傷しやすい(最も荷重がかかりやすい)腕部の根元部分における強度を向上させることができる。従って、第2固定部材において車両の前後方向に交差する方向における強度を向上させることができるため、後方視認装置の車両前後方向と交差する方向の振動を効果的に抑制することができる。
【0019】
上記したいずれかの後方視認装置の保持構造において、
前記基部又は前記腕部の少なくとも一方の端部側面には、前記収容凹部の側面に接触する突出部が形成されていることが好ましい。
【0020】
このような突出部を設けることにより、第2固定部材を収容凹部の側面に対してガタつきなく収容(嵌合)することができるため、第2固定部材の振動特性を向上させることができる。すなわち、基部の端部側面に突出部を設けることにより、第2固定部材の車両前後方向における振動特性を向上させることができ、腕部の端部側面に突出部を設けることにより、第2固定部材の車両前後方向と交差する方向における振動特性を向上させることができる。これにより、第1固定部材及び第2固定部材によるステーの車両への取付強度が向上するため、車両走行時における後方視認装置の振動をより抑制することができる。
【0021】
ここで、基部の端部側面に凸部を設ける場合には、凸部を複数設けることが望ましい。この場合、凸部の厚み(高さ)を内側より外側を厚く(高く)するとよい。こうすることにより、第2固定部材の車両前後方向と交差する方向における振動特性をさらに向上させることができるからである。
【0022】
上記したいずれかの後方視認装置の保持構造において、
前記腕部の前記収容凹部の底面に対向する面には、前記収容凹部の底面に接触する凸部が形成されていることが好ましい。
【0023】
このような凸部を設けることにより、第2固定部材の腕部が収容凹部の底面に対してガタつきなく収容することができるため、第2固定部材の腕部における振動特性をより向上させる(振動しにくくする)ことができる。従って、後方視認装置の車両前後方向と交差する方向の振動をより効果的に抑制することができる。
【0024】
上記したいずれかの保持装置において、
前記ねじ配置穴の底面外周に、溝が形成されていることが好ましい。
【0025】
このような溝を設けることにより、後方視認装置に衝撃が加わってねじ配置穴の底部が破断する際、溝の部分から破断させることができる。これにより、衝撃荷重の作用方向にかかわらず、溝に沿ってねじ配置穴の底面がきれいに破断するため、ステー及び後方視認装置を確実に車両から脱落させることができるので、衝撃安全性を向上させることができる。
【0026】
なお、溝の断面形状については特に制限はなく、例えば、半円形状、V字形状や矩形状などにすることができる。また、溝の全周において断面形状が一定である必要はなく、部分的に断面形状を変化(徐変)させてもよい。例えば、部分的に溝の幅を細くしたり、溝の深さを深くしたりすることができる。また、溝を全周に設けずに部分的に設けることもできる。これにより、第2固定部材の耐震性能を維持しながら、後方視認装置に衝撃荷重が加わった際、ねじ配置穴において破断し始める位置を常に一定にすることができるので衝撃安全性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、車両走行時における後方視認装置の振動を抑制することができる後方視認装置の保持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施形態のルームミラーの保持構造を示す概略斜視図である。
【
図2】実施形態のルームミラーの保持構造における固定部の分解斜視図である。
【
図6】腕部にリブを設けた第2固定部材を示す図である。
【
図10】基部に複数の突出部を設けた一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示に係る実施形態である後方視認装置の保持構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、カメラ映像を鏡面に映すルームミラーに対して本開示を適用した場合について説明する。本実施形態におけるルームミラーの保持構造は、
図1に示すように、ルームミラー10と、ルームミラー10を支持するステー20と、これらを車室天井に固定する固定部30とを備えている。なお、本開示において、車両前後方向、左右方向とは、車両の前進方向を見た状態での前後方向、左右方向を意味する。
【0030】
ルームミラー10は、
図1に示すように、車両後方を視認するためのミラー部11と、ミラー部11の背面に取り付けられたジョイント部12とを有している。なお、ルームミラー10は、本開示の「後方視認装置」の一例である。ミラー部11には、鏡面13が形成されており、この鏡面13に、カメラ映像あるいは反射像が表示される。すなわち、ミラー部11は、入射光の一部を反射し、一部を透過させるハーフミラーと、ハーフミラーの背面側に配置されるディスプレイとを備えている。そして、ディスプレイがオン状態のときには、ハーフミラーを透過したディスプレイに表示されるカメラ映像が視認され、ディスプレイがオフ状態のときには、ハーフミラーからの高反射像が視認されるようになっている。
【0031】
このようなミラー部11は、ジョイント部12を介して、ステー20に対して回動可能に取り付けられている。これにより、ミラー部11の角度をステー20に対して調整することができるようになっている。
【0032】
ステー20は、アーム状の支持部材であって、先端側(ミラー部側)がU字状に湾曲しており、先端部がジョイント部12に連結されている。一方、ステー20の基端側(車室天井側)には、
図2に示すように、三角形の板状の取付ブラケット21が設けられている。なお、取付ブラケット21は、ステー20に一体成形されている。この取付ブラケット21には、3つの貫通穴22と、2つのねじ穴23と、3つの位置決め突起24とが形成されている。
【0033】
貫通穴22は、後述する第1固定部材40を車室天井に固定するためのボルト31を挿入するための穴である。この貫通穴22は、三角形の取付ブラケット21の各頂点付近に配置されている。ねじ穴23は、後述する第1固定部材40及び第2固定部材50を取付ブラケット21に固定するためのねじ32が螺合するねじ穴である。このねじ穴23は、取付ブラケット21の中央付近にて車両前後方向に配置されている。位置決め突起24は、第1固定部材40を取付ブラケット21に固定する際の位置決めを行うための突起である。この位置決め突起24は、各貫通穴22の間に配置されている。
【0034】
そして、このようなステー20は、固定部30を介して車室天井に固定される。固定部30は、第1固定部材40と、第2固定部材50と、3本のボルト31と、2本のねじ32とを備えている。
【0035】
第1固定部材40は、取付ブラケット21と同形状をなす部材であり、各頂点付近にボルト31を配置するボルト配置穴41が形成されている。ボルト配置穴41は、第1固定部材40を取付ブラケット21に配置したときに、その中心が取付ブラケット21の貫通穴22の中心と一致するように設けられている。
【0036】
また、第1固定部材40には、第2固定部材50を収容する収容凹部42が形成されている。収容凹部42は、第2固定部材50と同形状をなす凹部であり、後述する第2固定部材50のねじ配置穴51を底面から露出させた状態で、第2固定部材50を収容するようになっている。つまり、収容凹部42の底面は、第2固定部材50のねじ配置穴51が配置される部分が開口(貫通)している。なお、本実施形態では、収容凹部42の底面は、瓢箪形に開口している。
【0037】
第2固定部材50は、ステー20に対して第1固定部材40をねじ32とともに固定するための樹脂部材である。第2固定部材50の材質としては、強化剤を混入した樹脂(例えば、PA66-CF30、PA66-GF50、PA6-GF30、POM-GF25、PBT-GF55等)がよい。このような樹脂を使用することにより、第2固定部材50の強度を向上させることができるからである。
【0038】
この第2固定部材50は、車両前後方向へ延びる基部60と、基部60から車両前後方向と交差する方向(本実施形態では直交する方向:車両左右方向)へ延びる一対の腕部70,70とを備えている。つまり、第2固定部材50は、基部60の中心線に対して左右対称の十字形をなしている。これにより、第2固定部材50において車両の前後方向及び左右方向の強度を向上させることができる。
【0039】
そして、第2固定部材50では、
図3に示すように、基部60の側面に対する腕部70の側面の角度θ1,θ2が90度以上になっている。また、基部60と腕部70との境界部分(腕部70の根元部分)は、R形状にされている。これらにより、腕部70の根元部分において応力集中が発生しないようにすることができるため、第2固定部材50において最も損傷しやすい腕部70の根元部分における強度を向上させることができる。
【0040】
また、基部60及び腕部70のそれぞれの端部側面には、突出部61及び71が形成されている。これらの突出部61,71は、第2固定部材50を収容凹部42に配置したときに、弾性変形して収容凹部42の側面に接触する。そのため、第2固定部材50を収容凹部42に収容した際、ガタつきなく収容(嵌合)することができる。
【0041】
さらに、
図4に示すように、腕部70の下面70a(収容凹部42の底面に対向する面)には、凸部72が形成されている。この凸部72は、第2固定部材50を収容凹部42に配置したときに、収容凹部42の底面に接触する。そのため、第2固定部材50を収容凹部42に収容した際、腕部70が収容凹部42の底面に対してガタつきなく収容することができるため、腕部70を撓みにくくすることができる。
【0042】
ねじ配置穴51は、第1固定部材40及び第2固定部材50をステー20に固定するためのねじ32が配置される穴であり、
図3及び
図5に示すように、ねじ32の頭部が配置される円形凹部51aと、ねじ32のねじ部が挿入される貫通穴51bとにより構成されている。このねじ配置穴51は、基部60の両端付近に形成されており、第2固定部材50を設置した第1固定部材40をステー20の取付ブラケット21に配置した際、その中心がねじ穴23の中心と一致する位置に配置されている。
【0043】
このねじ配置穴51の底面外周には、溝52が形成されている。溝52は、ねじ配置穴51の底面外周全周に形成された環状溝である。本実施形態では、
図5に示すように、溝52の断面形状は半円形状であるが、断面形状は特に制限はなく、例えば、V字形状や矩形状などにすることもできる。このような溝52を設けることにより、ステー20(ルームミラー10)に衝撃が加わってねじ配置穴51の底部が破断する際、溝52に沿って破断させることができる。
【0044】
なお、
図6に示すように、第2固定部材50の腕部70(基部60の一部(基部60のうち腕部70に挟まれる部分)も含む)に、車両左右方向に延びるリブ75を設けることもできる。リブ75は、第2固定部材50を製作する際に一体的に形成すればよい。このようなリブ75を腕部70に設けることにより、腕部70において車両左右方向の強度をさらに向上させることできる。
【0045】
また、第2固定部材50の腕部70(基部60の一部(基部60のうち腕部70に挟まれる部分)も含む)に、補強材(例えば金属板など)を設けてもよい。例えば、補強材をインサート成形することにより、第2固定部材50内に補強材を配置することができる。なお、補強材は、上記のリブ75とともに設けてよいし、リブ75を設けずに単体で設けてよい。このような補強材を設けることにより、第2固定部材50の腕部70において車両左右方向の強度をさらに向上させることできる。
【0046】
ここで、ステー20(取付ブラケット21)を室内天井に固定する手順について、
図2を参照しながら説明する。まず、第2固定部材50を第1固定部材40の収容凹部42に配置する。このとき、第2固定部材50は、突出部61,71及び凸部72によって、収容凹部42の側面及び底面に対してガタつきなく収容することができる。つまり、第2固定部材50を第1固定部材40に一体化することができる。
【0047】
次に、一体化された第1固定部材40と第2固定部材50を、ステー20の取付ブラケット21に配置する。このとき、第1固定部材40の下面に形成された位置決め用の穴を、取付ブラケット21の位置決め突起24に嵌め込むことにより、第1固定部材40と取付ブラケット21との位置合わせが行われる。
【0048】
続いて、第2固定部材50のねじ配置穴51にねじ32を配置して、ねじ32を取付ブラケット21のねじ穴23に螺合させて締め付ける。これにより、ねじ32によって第2固定部材50及び第1固定部材40がステー20に固定される。つまり、第1固定部材40は、第2固定部材50を介してステー20に固定される。
【0049】
最後に、ボルト31を、取付ブラケット21の貫通穴22から挿入して、第1固定部材40のボルト配置穴41に配置する。そして、ボルト31を車室天井側に設けられたボルト穴に螺合させて締め付けることにより、ボルト31によって第1固定部材40及び第2固定部材50を介して、ステー20が車室天井に固定される。
【0050】
このような本実施形態のルームミラー10の保持構造には、乗員の頭部等がルームミラー10に衝突してルームミラー10に衝撃が加わった際、乗員が受ける衝撃を緩和するために衝撃軽減機構が備わっている。具体的には、ルームミラー10に対して衝撃荷重F(
図1参照)が加わった際、その衝撃荷重Fがステー20を介して、ステー20に固定されているねじ32に作用する。そのため、ねじ32が配置されているねじ配置穴51の底部が破断する。ねじ配置穴51は、第1固定部材40に形成された収容凹部42の底面から露出しているため、ねじ配置穴51の底面が破断すると、
図7に示すように、ねじ32がステー20とともに第1固定部材40及び第2固定部材50から脱落する。一方、第1固定部材40及び第2固定部材50(ねじ配置穴51の底部が抜けた状態)は、ボルト31によって室内天井に固定されたままである。このように衝撃軽減機構によって、第1固定部材40及び第2固定部材50が室内天井に固定された状態のままで、ステー20及びルームミラー10が車室天井から脱落することで、乗員が受ける衝撃を緩和するようになっている。
【0051】
そして、本実施形態では、ねじ配置穴51の底面外周に溝52を形成していため、ねじ配置穴51の底部での破断を溝52に沿って生じさせることができる。そのため、ルームミラー10及びステー20に加わる衝撃荷重Fの作用方向にかかわらず、溝52に沿ってねじ配置穴51の底面をきれいに破断させることができる。従って、ステー20及びルームミラー10を確実に車室天井から脱落させることができるため、衝撃安全性を向上させることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、溝52の全周において断面形状が一定であるが、部分的に断面形状を変化(徐変)させてもよい。例えば、
図8に示すように、部分的に溝52の幅を細くすることができる。あるいは、溝52の深さを部分的に深くすることもできる。また、
図9に示すように、ねじ配置穴51の底面外周の一部にのみ溝52を形成してもよい。これにより、第2固定部材50の強度(耐震性能)を維持しながら、ねじ配置穴51において破断し始める位置を一定にすることができるので衝撃安全性をより向上させることができる。
【0053】
ここで、上記のような衝撃軽減機構を備える保持構造は、車室天井に対して直に固定される場合に比べると、振動特性が悪くなっており、ルームミラー10が振動しやすい。そして、ルームミラー10は、カメラ映像を映すためのディスプレイ等を備えており重量が大幅に増加している。そのため、走行時に車両に発生する振動によって、ルームミラー10がより振動しやすくなっており、後方視野がぶれて見にくくなる問題が生じている。
【0054】
そのため、本実施形態では、第2固定部材50を、車両前後方向に延びる基部60と、車両左右方向に延びる一対の腕部70とを有する十字形状に形成している。そのため、第2固定部材50において、車両の前後方向及び左右方向における強度を向上させることができる。従って、第1固定部材40及び第2固定部材50によって、ステー20を車室天井に対してしっかりと固定することができる。よって、衝撃軽減機構を備えていても、車両走行時におけるルームミラー10の振動を抑制することができる。
【0055】
そして、第2固定部材50の腕部70の根元部分(基部60と腕部70の境界部分)において、基部60の側面に対する腕部70の側面の角度θ1,θ2が90度以上であってR形状をなしているため、腕部70の根元部分において応力集中が発生しにくくなっている。そのため、第2固定部材50において最も損傷しやすい(荷重がかかりやすい)腕部70の根元部分における強度を向上させることができる。これにより、第2固定部材50において車両左右方向の強度を向上させることができるため、ルームミラー10の振動が大きくなりやすい車両左右方向の振動を効果的に抑制することができる。
【0056】
なお、第2固定部材50の腕部70に、リブ75又は補強材の少なくとも一方を設ける場合、腕部70の強度をより向上させることができるため、車両左右方向におけるルームミラー10の振動抑制効果をより増大させることができる。
【0057】
また、第2固定部材50において、基部60及び腕部70の端部側面には、収容凹部42の側面に接触する突出部61及び71が形成されている。そのため、第2固定部材50を収容凹部42の側面に対してガタつきなく収容(嵌合)することができるので、第2固定部材50の振動特性を向上させる(振動しにくくする)ことができる。すなわち、基部60の端部側面に突出部61を設けることにより、第2固定部材50の車両前後方向における振動特性を向上させることができ、腕部70の端部側面に突出部71を設けることにより、第2固定部材50の車両左右方向における振動特性を向上させることができる。これにより、第1固定部材40及び第2固定部材50によるステー20の車室天井への取付強度が向上するため、車両走行時におけるルームミラー10の振動を効果的に抑制することができる。
【0058】
ここで、基部60の端部側面に突出部61を設ける場合には、
図10に示すように、突出部61を複数(
図10では2つ)設けることもできる。そして、この場合には、
図11に示すように、突出部61の厚み(高さ)を内側(中心側)より外側(側面側)を厚く(高く)するとよい。こうすることにより、第2固定部材50の車両左右方向における振動特性をさらに向上させることができるからである。
【0059】
また、第2固定部材50において、腕部70の収容凹部42の底面に対向する面(下面)に、収容凹部42の底面に接触する凸部72が形成されている。そのため、第2固定部材50の腕部70を収容凹部42の底面に対してガタつきなく収容することができるので、腕部70における振動特性をより向上させる(振動しにくくする)ことができる。従って、ルームミラー10の振動が大きくなりやすい車両左右方向の振動をより効果的に抑制することができる。
【0060】
さらに、第2固定部材50において、ねじ配置穴51の底面外周に溝52が形成されている。そのため、ルームミラー10に衝撃荷重Fが加わった際、ねじ配置穴51において溝52の部分から破断させることができる。これにより、衝撃荷重Fの作用方向にかかわらず、溝52に沿ってねじ配置穴51の底面がきれいに破断するため、ステー20及びルームミラー10を車室天井から確実に脱落させることができるので、衝撃安全性を向上させることができる。
【0061】
以上のように、本実施形態のルームミラー10の保持構造によれば、衝撃軽減機構として機能する第2固定部材50を、車両前後方向に延びる基部60と、車両左右方向に延びる腕部70とを有する十字形状に形成している。これにより、第2固定部材50において、車両の前後方向及び左右方向における強度が向上するため、第1固定部材40及び第2固定部材50によって、ステー20を車室天井に対してしっかりと固定することができる。従って、衝撃軽減機構を備えていても、車両走行時におけるルームミラー10の振動を抑制することができる。
【0062】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記の実施形態では、第2固定部材50として十字形のものを例示したが、第2固定部材50の形状は特に制限されることはなく、例えば、
図12に示すように、T字形にすることもできる。この場合には、第1固定部材40の収容凹部42の形状も第2固定部材50の形状に合わせて変更する必要がある。また、第2固定部材50をT字形にした場合には、各腕部70にねじ配置穴51を配置して合計3つのねじ配置穴51を設けることもできる。これにより、腕部70における振動特性をより一層向上させる(振動しにくくする)ことができるため、ルームミラー10の振動が大きくなりやすい車両左右方向の振動抑制効果をさらに高めることができる。
【0063】
そして、第2固定部材50をT字形にした場合には、腕部70にねじ配置穴51を並べて配置することができる。つまり、第2固定部材50に3つのねじ配置穴51を配置することができる。これにより、車両左右方向において、2つのねじ32によって、ステー20を第1固定部材40及び第2固定部材50を介して車室天井に固定することができる。従って、車両走行時におけるルームミラー10の車両左右方向における振動をより一層抑制することができる。
【0064】
また、上記実施形態では、第1固定部材40として三角形状のものを例示したが、第1固定部材40の形状は車両の仕様によって決まるので、三角形状に限られることはなく、例えば、
図13や
図14に示すように、四角形状にすることもできる。このように第1固定部材40を四角形状にする場合には、第2固定部材50をT字形にして、ねじ配置穴51を2つ(
図13参照)あるいは3つ(
図14参照)設けることができる。
【0065】
また、上記実施形態では、後方視認装置としてルームミラー10を使用する場合を例示したが、例えば大型車両のように後方視認装置としてモニターを使用する場合にも本開示を適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 ルームミラー
20 ステー
30 固定部
31 ボルト
32 ねじ
40 第1固定部材
42 収容凹部
50 第2固定部材
51 ねじ配置穴
52 溝
60 基部
61 突出部
70 腕部
71 突出部
72 凸部
F 衝撃荷重
θ1 腕部の根元部分における基部の側面と腕部の側面とがなす角度
θ2 腕部の根元部分における基部の側面と腕部の側面とがなす角度