(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014290
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】ガラス板梱包体の製造方法及びガラス板梱包体の製造装置
(51)【国際特許分類】
B65H 19/18 20060101AFI20250123BHJP
B65H 19/20 20060101ALI20250123BHJP
B65H 16/06 20060101ALI20250123BHJP
B65B 23/20 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B65H19/18
B65H19/20
B65H16/06
B65B23/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116750
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】進藤 宏佳
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 直樹
(72)【発明者】
【氏名】吉良 厚則
【テーマコード(参考)】
3E043
3F052
3F064
【Fターム(参考)】
3E043AA01
3E043AA05
3E043BA02
3E043CA01
3E043DA01
3E043DB05
3E043FA01
3F052AA03
3F052AB00
3F052BA02
3F052BA14
3F052DA01
3F064AA03
3F064BA02
3F064BB03
3F064BB18
3F064DA01
(57)【要約】
【課題】第二シート元材を保持部により適切に保持して第一シート元材と接合させることで、接合後の第二シート元材の接合部周辺にシワが形成されることを抑制する。
【解決手段】ガラス板梱包体の製造方法につき、第一元材ロールR1から第一シート元材S1を引き出してガラス板Gに重ねる保護シートSを製作する第一製作工程と、第一製作工程の後に第二元材ロールR2から第二シート元材S2を引き出してガラス板Gに重ねる保護シートSを製作する第二製作工程と、第一シート元材S1の第一接合部S1eと第二シート元材S2の第二接合部S2eとを接合する接合工程と、第二シート元材S2の第二接合部S2eよりも引き出し方向前側領域S2f及び引き出し方向後側領域S2gをそれぞれ前側保持部34c及び後側保持部37で保持する保持工程と、を備える。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一元材ロールから第一シート元材を引き出して切断することでガラス板に重ねられる保護シートを製作する第一製作工程と、
前記第一製作工程の後に第二元材ロールから第二シート元材を引き出して切断することでガラス板に重ねられる保護シートを製作する第二製作工程と、
前記第一製作工程の後で前記第二製作工程の前に、前記第一シート元材の一部に存在する第一接合部と、前記第二シート元材の引き出し方向前端部に存在する第二接合部とを接合する接合工程と、
前記第一製作工程の後で前記接合工程の前に、前記第二シート元材の前記引き出し方向前端部を保持する保持工程と、
を備えるガラス板梱包体の製造方法であって、
前記保持工程では、前記第二シート元材の前記第二接合部よりも引き出し方向前側領域を前側保持部で保持すると共に、前記第二シート元材の前記第二接合部よりも引き出し方向後側領域を後側保持部で保持することを特徴とするガラス板梱包体の製造方法。
【請求項2】
前記接合工程では、前記第一接合部に当接する第一押さえ部と、前記前側保持部及び前記後側保持部の相互間に配列され且つ前記第二接合部に当接する第二押さえ部と、が対向して配置され、前記第一接合部と前記第二接合部とを、前記第一押さえ部と前記第二押さえ部とで挟んで接合させることを特徴とする請求項1に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項3】
前記保持工程の後で前記接合工程の前に、前記第一元材ロールと前記第二元材ロールの位置を入れ替える反転工程を備えることを特徴とする請求項2に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項4】
前記第一押さえ部と並列に配置され且つ前記第一シート元材の前記第一接合部よりも引き出し方向後側領域を保持する第一保持部を備えることを特徴する請求項3に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項5】
前記第一製作工程の後で前記反転工程の前に、前記第一シート元材を切断し、該第一シート元材から引き出し側シート部分を分離する切断工程を備え、
前記第一接合部は、前記切断工程で前記引き出し側シート部分の引き出し方向後端部に存在し、前記第一シート元材の切断分離後で前記反転工程の前に前記第一保持部が前記第一シート元材の前記第一接合部よりも引き出し方向後側領域を保持することを特徴とする請求項4に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項6】
前記第一押さえ部は加熱部を有し、前記第二押さえ部は加熱部を有さず、
前記接合工程では、前記第一接合部と前記第二接合部とが、前記加熱部によって熱溶着されることを特徴とする請求項3に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項7】
前記第二押さえ部は、耐熱ゴム製であることを特徴とする請求項6に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項8】
前記保持工程では、前記第二押さえ部が前記第二接合部を保持しないことを特徴とする請求項6又は7に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項9】
前記接合工程では、前記第一接合部と前記第二接合部との熱溶着を終えて前記第一押さえ部が前記第一接合部から離れた後に、前記第二シート元材の保持を解除することを特徴とする請求項6又は7に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項10】
前記第一シート元材及び前記第二シート元材は、帯状の発泡樹脂シートであることを特徴とする請求項6又は7に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項11】
前記第一押さえ部は、前記第一シート元材の幅方向に複数に分割され、それら複数の第一押さえ部の相互間に隙間が形成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項12】
前記前側保持部及び前記後側保持部が前記第二シート元材を保持するそれぞれの保持面は、前記第二押さえ部が前記第二接合部を押さえる押さえ面と平行であることを特徴とする請求項2~7の何れかに記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項13】
前記後側保持部が前記第二シート元材を保持する保持面は、前記第二押さえ部が前記第二接合部を押さえる押さえ面と平行であり、
前記前側保持部が前記第二シート元材を保持する保持面は、前記第二押さえ部が前記第二接合部を押さえる押さえ面に対して、前記第一押さえ部から遠ざかる方向に傾斜し又は直角であることを特徴とする請求項2~7の何れかに記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項14】
前記第一シート元材及び前記第二シート元材は、何れも、幅方向の寸法が1100mm以上で3500mm以下であることを特徴とする請求項1~7の何れかに記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項15】
第一元材ロールから第一シート元材を引き出して切断することでガラス板に重ねられる保護シートを製作すると共に、前記第一元材ロールからの前記保護シートの製作を終了した後に第二元材ロールから第二シート元材を引き出して切断することでガラス板に重ねられる保護シートを製作する保護シート製作装置と、
前記第一元材ロールからの前記保護シートの製作を終了した後で前記第二元材ロールからの前記保護シートの製作を開始する前に、前記第一シート元材の一部に存在する第一接合部と、前記第二シート元材の引き出し方向前端部に存在する第二接合部とを接合する接合装置と、
前記第一元材ロールからの前記保護シートの製作を終了した後で前記接合装置による前記接合を開始する前に、前記第二シート元材の前記引き出し方向前端部を保持する保持装置と、
を備えるガラス板梱包体の製造装置であって、
前記保持装置は、前記第二シート元材の前記第二接合部よりも引き出し方向前側領域を前側保持部で保持すると共に、前記第二シート元材の前記第二接合部よりも引き出し方向後側領域を後側保持部で保持するように構成されることを特徴とするガラス板梱包体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板梱包体の製造方法、及びその方法を実施するためのガラス板梱包体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板の保管や輸送に際しては、ガラス板と保護シートとを交互に積層してなるガラス板積層体を、パレット上に縦姿勢又は横姿勢で積載してガラス板梱包体を構成する場合がある。
【0003】
この種のガラス板梱包体は、元材ロールから引き出されたシート元材(帯状のシート)を切断して矩形状の保護シートを製作し、この保護シートをガラス板に重ねてパレット上に積載して製造するのが通例である。
【0004】
この場合、元材ロールから引き出し可能なシート元材が残り僅かになった時点では、この元材ロールによる保護シートの製作工程を終了して、この元材ロール(使用済み元材ロール)を新たな元材ロールに交換する必要がある。
【0005】
この交換のための手法として、特許文献1には、使用済み元材ロール(第一元材ロール)の第一シート元材の一部と、新たな元材ロール(第二元材ロール)の第二シート元材の端部(引き出し方向前側の端部)とを接合装置によって接合させることが開示されている。
【0006】
さらに、同文献には、上記の接合装置が、第二シート元材の引き出し方向前側の端部を吸引によって保持する保持部と、第一シート元材の一部を第二シート元材の当該端部に押し付けて両シート元材を接合させる押圧部材と、を備えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に開示された保持部は、内部が吸引ポンプに接続された中空状部材であって、その保持面には複数の吸引孔が開口している。そのため、第二シート元材の当該端部を保持部で確実に保持するためには、同文献の
図3にも図示されているように、第二シート元材の当該端部で複数の吸引孔を完全に覆っておく必要がある。
【0009】
この要請に応じようとすれば、第二シート元材の当該端部の引き出し方向前側(同図の左側)の端縁部を、複数の吸引孔から引き出し方向前側に食み出させる必要がある。したがって、この食み出し部は、保持部によって保持されていない。しかも、第二シート元材の当該端部の引き出し方向後側は、保持部(複数の吸引孔)によって保持されていない。
【0010】
このような状態で第二シート元材の当該端部に、第一シート元材の一部を押し付けて両シート元材を接合させた場合には、第二シート元材の接合部周辺にシワが発生する不具合を招く。そして、この接合部周辺のシワが原因となって、接合後に第二元材ロールから第二シート元材を引き出す際には、第二シート元材がよじれるなどして、その後の保護シートの製作作業に支障が生じる。
【0011】
以上の観点から、本発明の課題は、第二シート元材を保持部により適切に保持して第一シート元材と接合させることで、接合後の第二シート元材の接合部周辺にシワが形成されることを抑制して、その後の保護シートの製作作業を支障なく円滑に行わせることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1) 上記課題を解決するために創案された本発明の第一の側面は、第一元材ロールから第一シート元材を引き出して切断することでガラス板に重ねられる保護シートを製作する第一製作工程と、第一製作工程の後に第二元材ロールから第二シート元材を引き出して切断することでガラス板に重ねられる保護シートを製作する第二製作工程と、第一製作工程の後で第二製作工程の前に、第一シート元材の一部に存在する第一接合部と、第二シート元材の引き出し方向前端部に存在する第二接合部とを接合する接合工程と、第一製作工程の後で接合工程の前に、第二シート元材の引き出し方向前端部を保持する保持工程と、を備えるガラス板梱包体の製造方法であって、保持工程では、第二シート元材の第二接合部よりも引き出し方向前側領域を前側保持部で保持すると共に、第二シート元材の第二接合部よりも引き出し方向後側領域を後側保持部で保持することに特徴づけられる。
【0013】
このような構成によれば、第二シート元材の第二接合部よりも引き出し方向前側領域及び引き出し方向後側領域がそれぞれ前側保持部と後側保持部とによって保持されるため、第二シート元材のこれらによる保持領域及びそれら保持領域の相互間にはシワが発生し難くなる。そして、このような状態で、第二接合部と第一接合部とが接合されることで、接合後の第二シート元材の接合部周辺にシワが形成されることが抑制される。その結果、接合後に第二元材ロールから第二シート元材を引き出す際における該第二シート元材のよじれなどが防止され、その後の保護シートの製作作業(第二製作工程での作業)が支障なく円滑に行われる。
【0014】
(2) 上記(1)の構成において、接合工程では、第一接合部に当接する第一押さえ部と、前側保持部及び後側保持部の相互間に配列され且つ第二接合部に当接する第二押さえ部と、が対向して配置され、第一接合部と第二接合部とを、第一押さえ部と第二押さえ部とで挟んで接合させることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、第一押さえ部、第二押さえ部、前側保持部、及び後側保持部の四つの構成要素が、適切に配置されるため、第一接合部と第二接合部との接合を、精度良く且つ効率良く行わせることができる。
【0016】
(3) 上記(1)又は(2)の構成において、保持工程の後で接合工程の前に、第一元材ロールと第二元材ロールの位置を入れ替える反転工程を備えることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、第一元材ロールと第二元材ロールとの交換を効率良く行うことができる。しかも、反転工程が実行される際には、第二元材シートが前側保持部と後側保持部とによって少なくとも引き出し方向の二箇所で保持されているため、反転時に第二シート元材の保持位置にズレが生じたり更にはシワが発生したりする等の不具合が生じ難くなる。
【0018】
(4) 上記(1)~(3)の何れかの構成において、第一押さえ部と並列に配置され且つ第一シート元材の第一接合部よりも引き出し方向後側領域を保持する第一保持部を備えることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、第一シート元材も適所で第一保持部によって保持されるため、第一接合部と第二接合部との接合作業がより一層適切に行われる。
【0020】
(5) 上記(1)~(4)の何れかの構成において、第一製作工程の後で反転工程の前に、第一シート元材を切断し、該第一シート元材から引き出し側シート部分を分離する切断工程を備え、第一接合部は、切断工程で引き出し側シート部分の引き出し方向後端部に存在し、第一シート元材の切断分離後で反転工程の前に第一保持部が第一シート元材の第一接合部よりも引き出し方向後側領域を保持することが好ましい。
【0021】
このようにすれば、第一保持部が、第一シート元材を切断分離して得られた引き出し側シート部分の引き出し方向後端部に存在する第一接合部よりも引き出し方向後側領域を保持した状態で、反転工程が実行される。したがって、反転工程では、第一元材ロールから第一シート元材が引き出されることなく、第一元材ロールと第二元材ロールとが入れ替えられる。これによって、反転時に第一シート元材が邪魔にならなくなり、反転工程がより一層効率良く且つ簡素に行われると共に、反転工程を実施するための反転装置の構成が簡略化される。
【0022】
(6) 上記(1)~(5)の何れかの構成において、第一押さえ部は加熱部を有し、第二押さえ部は加熱部を有さず、接合工程では、第一接合部と第二接合部とが、加熱部によって熱溶着されることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、接着材の塗布や両面テープの貼り付けが不要となり、元材ロールの交換作業を簡略化できる。しかも、上記(5)の構成と組み合わせることで、反転工程では、第一押さえ部(加熱部)を反転動作させる必要がなくなるため、加熱のための配線などが簡略化される。
【0024】
(7) 上記(1)~(6)の何れかの構成において、第二押さえ部は、耐熱ゴム製であることが好ましい。
【0025】
このようにすれば、加熱部を有する第一押さえ部と、耐熱ゴム製の第二押さえ部とによって、第一接合部と第二接合部とを接合させる際には、第二押さえ部が熱により損傷する等の不具合が回避される。しかも、第二押さえ部のクッション性などによって、第一接合部と第二接合部とが全面に亘って均一に押さえられるため、適切な接合状態が得られ、これによってもシワの発生が抑制される。
【0026】
(8) 上記(1)~(7)の何れかの構成において、保持工程では、第二押さえ部が第二接合部を保持しないことが好ましい。
【0027】
このようにすれば、第二押さえ部が耐熱ゴム製である場合には、耐熱ゴムに例えば吸引孔などを形成する必要性が生じ、その場合には吸引孔などが邪魔になって適切な接合が困難になるが、ここでの構成によればそのような不具合は生じない。
【0028】
(9) 上記(1)~(8)の何れかの構成において、接合工程では、第一接合部と第二接合部との熱溶着を終えて第一押さえ部が第一接合部から離れた後に、第二シート元材の保持を解除することが好ましい。
【0029】
このようにすれば、第一押さえ部(加熱部)による熱溶着を終えた後、第二シート元材が保持された状態にある時に、第一押さえ部が第一接合部から離れる。これにより、第一押さえ部に第一接合部が熱によって貼り付いた状態で該第一押さえ部と共に移動しようとする不具合が回避される。したがって、熱溶着の後の処理が煩雑にならずに円滑に行われる。
【0030】
(10) 上記(1)~(9)の何れかの構成において、第一シート元材及び第二シート元材は、帯状の発泡樹脂シートであることが好ましい。
【0031】
このようにすれば、第一接合部と第二接合部とを適正且つ確実に熱溶着することができる。
【0032】
(11) 上記(1)~(10)の何れかの構成において、第一押さえ部は、第一シート元材の幅方向に複数に分割され、それら複数の第一押さえ部の相互間に隙間が形成されていることが好ましい。
【0033】
このようにすれば、第一シート元材(第一接合部)と第二シート元材(第二接合部)とを幅方向の全長に亘って熱溶着させる必要がなくなり、熱溶着に要するエネルギー(電気エネルギー等)の使用量を削減することができる。
【0034】
(12) 上記(1)~(11)の何れかの構成において、前側保持部及び後側保持部が第二シート元材を保持するそれぞれの保持面は、第二押さえ部が第二接合部を押さえる押さえ面と平行であってもよい。
【0035】
このようにすれば、第二シート元材が同方向に沿って延びた状態で前側保持部材及び後側保持部材のそれぞれの保持面に保持されるため、保持作業が確実化される。
【0036】
(13) 上記(1)~(12)の何れかの構成において、前記後側保持部が前記第二シート元材を保持する保持面は、前記第二押さえ部が前記第二接合部を押さえる押さえ面と平行であり、
前記前側保持部が前記第二シート元材を保持する保持面は、第二押さえ部が第二接合部を押さえる押さえ面に対して、第一押さえ部から遠ざかる方向に傾斜し又は直角であってもよい。
【0037】
このようにすれば、第二押さえ部の押さえ面と平行な後側保持部の保持面と、前側保持部の保持面との向きが異なるため、第二押さえ部の押さえ面と平行な方向に対する保持面全体の長さを短くできる。したがって、これら保持部を構成する保持装置のコンパクト化が図られる。
【0038】
(14) 上記(1)~(13)の何れかの構成において、第一シート元材及び第二シート元材は、何れも、幅方向の寸法が1100mm以上で3500mm以下であることが好ましい。
【0039】
このように両シート元材の幅方向の長さが長尺であると、第一接合部と第二接合部との接合時にシワが発生し易くなるのが一般的であるが、本発明の構成によれば、このようなシワの発生に対して十分に対処可能となる。
【0040】
(15) 上記課題を解決するために創案された本発明の第二の側面は、第一元材ロールから第一シート元材を引き出して切断することでガラス板に重ねられる保護シートを製作すると共に、第一元材ロールからの保護シートの製作を終了した後に第二元材ロールから第二シート元材を引き出して切断することでガラス板に重ねられる保護シートを製作する保護シート製作装置と、第一元材ロールからの保護シートの製作を終了した後で第二元材ロールからの保護シートの製作を開始する前に、第一シート元材の一部に存在する第一接合部と、第二シート元材の引き出し方向前端部に存在する第二接合部とを接合する接合装置と、第一元材ロールからの保護シートの製作を終了した後で接合装置による接合を開始する前に、第二シート元材の前記引き出し方向前端部を保持する保持装置と、を備えるガラス板梱包体の製造装置であって、保持装置は、第二シート元材の第二接合部よりも引き出し方向前側領域を前側保持部で保持すると共に、第二シート元材の第二接合部よりも引き出し方向後側領域を後側保持部で保持するように構成されることに特徴づけられる。
【0041】
この製造装置によっても、上記(1)の製造方法と実質的に同一の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、第二シート元材が保持部により適切に保持されて第一シート元材と接合されるため、接合後の第二シート元材の接合部周辺にシワが形成されることを抑制できる。これにより、その後の保護シートの製作作業を支障なく円滑に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るガラス板梱包体の製造装置の全体構成を模式的に示す概略側面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係るガラス板梱包体の製造装置の構成要素であるシート元材供給装置を示す平面図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係るガラス板梱包体の製造装置の構成要素であるシート元材供給装置を示す側面図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係るガラス板梱包体の製造装置の構成要素である第一押さえユニットを示す縦断側面図である。
【
図5】
図4に示す状態にある上記第一押さえユニットを下方から視た下面図である。
【
図6】本発明の第一実施形態に係るガラス板梱包体の製造装置の構成要素である第二押さえユニットを示す縦断側面図である。
【
図7】
図6に示す状態にある上記第二押さえユニットを下方から視た下面図である。
【
図8】
図6に示す状態にある上記第二押さえユニットを左側から視た正面図である。
【
図9】本発明の第一実施形態に係るガラス板梱包体の製造方法における切断工程を実施している状況を示す側面図である。
【
図10】本発明の第一実施形態に係るガラス板梱包体の製造方法における切断工程の後で接合工程の前の状況を示す側面図である。
【
図11】本発明の第一実施形態に係るガラス板梱包体の製造方法における切断工程を実施している状況を示す側面図である。
【
図12】本発明の第一実施形態に係るガラス板梱包体の製造方法における接合工程を実施している状況を示す拡大縦断側面図である。
【
図13】本発明の第一実施形態に係るガラス板梱包体の製造方法における接合工程の後の状況を示す拡大縦断側面図である。
【
図14】本発明の第一実施形態に係るガラス板梱包体の製造方法における接合工程の後の状況を示す拡大縦断側面図である。
【
図15】本発明の第一実施形態に係るガラス板梱包体の製造方法における接合工程の変形例を実施している状況を示す拡大縦断側面図である。
【
図16】本発明の第二実施形態に係るガラス板梱包体の製造装置の構成要素であるシート元材供給装置を示す側面図である。
【
図17】本発明の第二実施形態に係るガラス板梱包体の製造装置の構成要素であるシート元材供給装置の作用を示す側面図である。
【
図18】本発明の第二実施形態に係るガラス板梱包体の製造装置の構成要素であるシート元材供給装置の作用を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態に係るガラス板梱包体の製造装置及びガラス板梱包体の製造方法について添付図面を参照して説明する。
【0045】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係るガラス板梱包体の製造装置1を模式的に示す側面図である。同図に示すように、本製造装置1は、第一元材ロールR1から第一シート元材S1を引き出して切断することにより保護シートSを製作する保護シート製作装置2を備える。また、保護シート製作装置2は、第一元材ロールR1からの保護シートSの製作を終了した後に、第二元材ロールR2から第二シート元材S2を引き出して切断することにより保護シートSを製作する。さらに、本製造装置1は、ガラス板Gを保護シートSに重ねて梱包用パレットP上に積載する。以上の動作により、本製造装置1は、ガラス板梱包体12を製造する。なお、以下の説明では、
図1における紙面と直交する方向を「幅方向」とし、
図1における矢印A方向側を「右側」とし、矢印B方向側を「左側」とする。
【0046】
ガラス板Gは、図外の成形装置によって連続成形された帯状ガラスを、長手方向の所定長さ毎に切断すると共に、幅方向の両端部の不要部を切断除去することで得られたものである。このガラス板Gは、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの各種ディスプレイ用や、太陽電池用のガラス基板或いはカバーガラスに利用される。なお、この成形装置は、オーバーフローダウンドロー法やスロットダウンドロー法などのダウンドロー法を実行するものであってもよく、ダウンドロー法以外の方法、例えばフロート法などを実行するものであってもよい。ガラス板Gの寸法は、例えば一辺が1000mm以上で3500mm以下である。
【0047】
第一元材ロールR1及び第二元材ロールR2はそれぞれ、第一シート元材S1及び第二シート元材S2を巻き芯に巻き取ることにより構成されている。これらのシート元材S1,S2としては、本実施形態では、ポリエチレンを主成分とする樹脂により構成される発泡樹脂シートが使用される。これらのシート元材S1,S2の幅方向寸法は、1100mm以上で3500mm以下である。
【0048】
保護シート製作装置2は、保護シートSを製作するために元材ロールR1,R2から引き出されたシート元材S1,S2を切断する保護シート用切断装置3と、当該切断装置3の下方に配置され且つ切断後の保護シートSを保持する一対の第一把持部4及び一対の第二把持部5と、各把持部4,5を移動可能に支持するガイド部材6,7と、を備える。
【0049】
保護シート用切断装置3は、各把持部4,5によってシート元材S1,S2の一部を保持した状態で、その切断刃3aにより、シート元材S1,S2を切断する構成とされている。
【0050】
一対の第一把持部4は、保護シートSの上部における幅方向の両端部をそれぞれ把持するように構成される。一対の第二把持部5は、保護シートSの下部における幅方向の両端部をそれぞれ把持するように構成される。各把持部4,5は、シート元材S1,S2を切断してなる保護シートSの幅方向の端部を把持するクランプ機構を有する。
【0051】
ガイド部材6,7は、各把持部4,5を梱包用パレットPに対して左右に接近及び離反させる第一ガイド部材6と、この第一ガイド部材6を上下に移動させる第二ガイド部材7とを含む。
【0052】
第一ガイド部材6は、第二ガイド部材7から右側に突出する長尺体である。第一ガイド部材6は、水平方向に対して所定の角度で下方に傾斜している。第一ガイド部材6は、その上面側で、各把持部4,5をその長手方向(左右方向)にスライド自在に支持する。第一ガイド部材6は、各把持部4,5を左右に移動させるための駆動機構を備える。
【0053】
第二ガイド部材7は、上下方向に延びる長尺体である。第二ガイド部材7は、鉛直方向に対して所定の角度で傾斜している。第二ガイド部材7は、第一ガイド部材6の一端部を上下移動可能に支持する。第一ガイド部材6は、第二ガイド部材7に対して直角を為すように、当該第二ガイド部材7に支持される。第二ガイド部材7は、第一ガイド部材6を上下に移動させるための駆動機構を有する。
【0054】
第二ガイド部材7は、梱包用パレットPの上方に配置された基台部8に吊り下げ支持されている。基台部8は、第一基台部9と第二基台部10の上下二つに分割されている。第一基台部9は、定位置に設置されている。第二基台部10は、左右方向に移動可能となるように第一基台部9の下面に支持されている。
【0055】
また、本製造装置1は、ガラス板梱包体12を製造するための構成として、ガラス板Gを搬送する搬送部13と、ガラス板Gを梱包用パレットPに梱包する梱包部14とを備える。
【0056】
搬送部13は、ガラス板Gを移動させる複数のガラス板保持部15を備える搬送装置として構成される。各ガラス板保持部15は、ロボットアームその他の各種移動機構により三次元的に移動し得る。各ガラス板保持部15は、ガラス板Gを把持可能なクランプ機構16を有する。搬送部13は、ガラス板保持部15のクランプ機構16によってガラス板Gの上部を把持すると共に、ガラス板Gの一方の主面がその移動方向と直交するように、当該ガラス板Gを搬送する。
【0057】
梱包部14は、上述の保護シート製作装置2と、当該製作装置2にシート元材S1,S2を供給するシート元材供給装置17とを備えている。
【0058】
梱包部14に配置される梱包用パレットPは、ガラス板Gの主面を支持する第一支持面Paと、ガラス板Gの下端部を支持する第二支持面Pbとを有する。第一支持面Paと第二支持面Pbとは、90°を為すように交差している。搬送部13及び保護シート製作装置2の動作により、梱包用パレットPには、ガラス板Gと保護シートSとが縦姿勢で交互に梱包用パレットPに積層される。これにより、ガラス板梱包体12が得られる。
【0059】
シート元材供給装置17は、第一元材ロールR1と第二元材ロールR2とを交換する機能を備えている。シート元材供給装置17は、第一元材ロールR1と第二元材ロールR2とを離間させて支持する支持枠体18と、第二元材ロールR2から引き出された第二シート元材S2の引き出し方向前端部S2aを保持する保持枠体19と、を備える。さらに、シート元材供給装置17は、第一元材ロールR1に係る第一シート元材S1と第二元材ロールR2に係る第二シート元材S2とを接合する接合装置20と、第一シート元材S1を切断するための元材切断装置21と、第一元材ロールR1における第一シート元材S1の残量を測定するセンサ(図示略)と、を備える。
【0060】
なお、シート元材供給装置17から保護シート製作装置2に至るまでの経路には、シート元材S1,S2の送り移動を円滑に行うための各種ローラが配列されている。
【0061】
支持枠体18は、
図1及び
図2に示すように、対向して配置され且つ左右方向に長尺な一対の支持枠材18aと、これら支持枠材18a同士を連結する幅方向に長尺な二本の連結枠材18bとを備える。支持枠体18は、駆動装置(図示略)の動作によって支持軸22の廻りに回転駆動される構成とされている。支持軸22は、定位置に設置されている。各支持枠材18a及び各連結枠材18bは、例えば金属製である。
【0062】
支持枠体18の左右方向両端部には、第一元材ロールR1及び第二元材ロールR2が支持されている。詳しくは、第一元材ロールR1の巻き芯が、一対の支持枠材18aの右側端部同士を連結する第一軸部18cに回転可能に支持されている。また、第二元材ロールR2の巻き芯が、一対の支持枠材18aの左側端部同士を連結する第二軸部18dに回転可能に支持されている。支持枠体18は、その回転により第一元材ロールR1と第二元材ロールR2との位置を入れ替える反転動作を行う。
【0063】
保持枠体19は、支持枠体18の幅方向外側で対向して配置された一対の保持枠材19aを有する。これら保持枠材19aは、右側端部が上述の支持軸22に回転可能に支持され且つ左側に向かって延びている。また、これら保持枠材19aの左側端部は、支持枠体18の左側端部よりも左側に位置している。そして、これら保持枠材19aの左側端部には、幅方向に延びる第二押さえユニット24が補助枠材19bを介して固定されている。
【0064】
保持枠体19は、駆動装置(図示略)の動作によって回転駆動される構成とされている。各保持枠材19a及び補助枠材19bは、例えば金属製である。各保持枠材19aと各支持枠材18aとは平行に配列されている。本実施形態では、保持枠体19及び支持枠体18がそれぞれ独立して回転駆動される構成であるが、一体的に回転駆動される構成であってもよい。
【0065】
接合装置20は、
図2及び
図3に示すように、第一元材ロールR1から右側に引き出された第一シート元材S1の上方に配置された第一押さえユニット23を備える。また、接合装置20は、第二元材ロールR2から左側に引き出された第二シート元材S2の引き出し方向前端部S2aの周辺に配備される上述の第二押さえユニット24を備える。なお、同図には便宜上、第二押さえユニット24が、第二シート元材S2の引き出し方向前端部S2aを保持した状態を図示している。
【0066】
第一押さえユニット23は、定位置に設置された駆動装置25(図例ではエアシリンダ25)によって上下動する構成とされている。
図2に示すように、エアシリンダ25は幅方向に沿って複数個が間隔を空けて配列されている。また、同図に示すように、第一押さえユニット23は、幅方向に長尺であり、第一シート元材S1の幅方向全長に亘るように配備されている。
【0067】
第一押さえユニット23は、
図4に示すように、加熱部としてのヒータ26を備える。本実施形態では、ヒータ26の下端部27が、第一押さえ部に相当し、第一押さえ部27の下端面27aが、第一押さえ面に相当する。また、第一押さえユニット23は、中空状の第一箱体28を備える。ヒータ26は、第一箱体28の右側に配置されている。ヒータ26と第一箱体28とは、支持基板29の下面に固定されている。ヒータ26の左右方向の長さは、支持基板29の左右方向の長さの1/3~2/3である。支持基板29は、エアシリンダ25のピストンロッド25aの下端に連結されている。第一箱体28は、断面が矩形状を呈しており、例えば金属製である。なお、ヒータ26と第一箱体28との相互間には隙間30が形成されているが、ヒータ26の熱が第一箱体28を通じて第一シート元材S1を変質(熱溶融等)させなければ、この隙間30はなくてもよい。また、隙間30には断熱材を設けても良い。なお、
図1、
図2及び
図3などの他の図においては、便宜上、この隙間30がない状態を例示している。また、
図4に示す例では、第一押さえ部27を有する部材26の全体がヒータとして構成されているが、第一押さえ部27を有する部材26の下部又は下端部のみをヒータとしてもよい。
【0068】
第一箱体28の内部空間31は、吸引ポンプ(図示略)によって負圧の状態に維持される。第一箱体28の下端壁部28aには、第一シート元材S1を吸着するための複数の吸引孔32が形成されている。したがって、本実施形態では、第一箱体28の下端壁部28aが、第一保持部に相当し、第一保持部28aの下端面28bが、第一保持面に相当する。第一保持面28bと第一押さえ面27aとは、同一平面上に位置している。なお、吸引孔32の寸法は、例えば4mm以上で10mm以下である。吸引孔32のピッチは、例えば10mm以上で300mm以下である。
【0069】
図5は、第一押さえユニット23を下方から視た下面図である。同図に示すように、ヒータ26及び第一箱体28は、幅方向で複数に分割され、それらの幅方向に沿う相互間には隙間33が形成されている。これら分割されたヒータ26及び第一箱体28は、第一シート元材S1の幅方向一端S1xから幅方向他端S1yに亘って配備されている。なお、第一箱体28については、幅方向で分割されずに連なっていてもよい。本実施形態では、第一シート元材S1を保持する第一保持装置が、第一箱体28と吸引ポンプとで構成されている。
【0070】
第二押さえユニット24は、
図6に示すように、中空状の第二箱体34を有する。第二箱体34は、断面が矩形状を呈しており、例えば金属製である。第二箱体34の内部空間35は、吸引ポンプ(図示略)によって負圧の状態に維持される。第二箱体34の下端壁部34aの右側部分には、複数の吸引孔36が形成されている。下端壁部34aにおける吸引孔36が形成された領域の下端面には、ゴム製の板状体37が貼り付けられている。このゴム製の板状体37にも、上述の吸引孔36と同一位置に複数の吸引孔38が形成されている。吸引孔36、38の寸法は、例えば4mm以上で10mm以下である。吸引孔36、38のピッチは、例えば10mm以上で300mm以下である。また、第二箱体34の下端壁部34aにおける吸引孔36が形成されていない領域の下端面には、耐熱ゴム製の板状体39が貼り付けられている。耐熱ゴム製の板状体39は、ゴム製の板状体37よりも耐熱性に優れている。耐熱ゴムとしては、例えばフッ素ゴムやシリコーンゴム等を使用することができる。第二箱体34の下端壁部34aにおいて、吸引孔36が形成された領域の左右方向長さは、下端壁部34aの左右方向長さ(全長)の1/3~2/3である。したがって、ゴム製の板状体37の左右方向長さも、下端壁部34aの左右方向長さの1/3~2/3であり、また耐熱ゴム製の板状体39の左右方向長さも、下端壁部34aの左右方向長さの1/3~2/3である。さらに、第二箱体34の左側の側壁部34bの下側部分にも、複数の吸引孔40が形成されている。本実施形態では、耐熱ゴム製の板状体39が、第二押さえ部に相当し、第二押さえ部39の下端面39aが、第二押さえ面に相当する。また、第一押さえ面27aと第二押さえ面39aの左右方向の寸法は、略同一であることが好ましい。
【0071】
図7は、第二押さえユニット24を下方から視た下面図である。また、
図8は、第二押さえユニット24を左側から視た正面図である。
図7及び
図8に示すように、第二箱体34は、第二シート元材S2の幅方向一端S2xから幅方向他端S2yに亘って配備されている。したがって、
図7に示すように、ゴム製の板状体37及び耐熱ゴム製の板状体39も、第二シート元材S2の幅方向一端S2xから幅方向他端S2yに亘って配備されている。また、ゴム製の板状体37の吸引孔38及び第二箱体34の下端壁部34aの吸引孔36も、第二シート元材S2の幅方向一端S2xから幅方向他端S2yに亘って配備されている。さらに、
図8に示すように、第二箱体34の側壁部34bにおける吸引孔40の形成領域34cも、第二シート元材S2の幅方向一端S2xから幅方向他端S2yに亘って配備されている。本実施形態では、第二箱体34の側壁部34bにおける吸引孔40の形成領域34cが、前側保持部に相当し、ゴム製の板状体37が、後側保持部に相当する。また、
図6に示される前側保持部34cの左端面34dが、前側保持面に相当し、後側保持部37の下端面37aが、後側保持面に相当する。前側保持面34dと後側保持面37aとは直角を為している。後側保持面37aと第二押さえ面39aとは、同一平面上に位置している。本実施形態では、第二シート元材S2を保持する第二保持装置が、第二箱体34と、ゴム製の板状体37と、吸引ポンプとで構成されている。
【0072】
元材切断装置21は、
図2及び
図3に示すように、第一シート元材S1の上方に配置された切断刃21aを有する。切断刃21aは、図外の駆動装置により上下動可能に保持されている。また、切断刃21aは、第一シート元材S1の幅方向一端S1x及び幅方向他端S1yからそれぞれ幅方向外側に食み出して配備されている。切断刃21aは、第一押さえユニット23における第一箱体28(第一保持部28a)の左側近傍に配置されている。詳しくは、切断刃21aの刃先21aaと、第一箱体28との離間長さL1は、5mm以上で30mm以下である。また、元材切断装置21は、第一シート元材S1の下方に配置された受け部材41を備える。受け部材41は、切断刃21aによる第一シート元材S1の切断時に第一押さえユニット23からの押さえ力を受けるものである。したがって、受け部材41も、第一シート元材S1の幅方向一端S1x及び幅方向他端S1yからそれぞれ幅方向外側に食み出して配備されている。また、受け部材41は、図外の駆動装置によって、第一シート元材S1側への前進移動と、退避位置側への後退移動とを行うように構成されている。
【0073】
次に、以上の構成を備えた製造装置1を使用して実施されるガラス板梱包体の製造方法について説明する。
【0074】
本製造方法は、第一製作工程と、第二製作工程とを備える。第一製作工程は、第一元材ロールR1から第一シート元材S1を引き出して切断することで保護シートSを製作する。第二製作工程は、第一製作工程の後に第二元材ロールR2から第二シート元材S2を引き出して切断することで保護シートSを製作する。
【0075】
さらに、本製造方法は、第一製作工程の後で第二製作工程の前の工程として、保持工程と、切断工程と、反転工程と、接合工程とを備える。
【0076】
保持工程及び切断工程は、何れも、反転工程の前に実行される。切断工程と保持工程とは何れを先に実行してもよい。この両工程は、何れも、第一元材ロールR1における第一シート元材S1の残量が所定量以下になったことをセンサが検知した後に実行される。
【0077】
保持工程では、
図3に示すように、第二シート元材S2の引き出し方向前端部S2aが第二押さえユニット24によって保持される。
【0078】
切断工程では、第一押さえユニット23と元材切断装置21とを用いて、第一元材ロールR1から引き出されている第一シート元材S1が所定位置で切断される。詳しくは、切断工程では、
図9に示すように、第一シート元材S1を第一押さえユニット23と受け部材41とによって挟持した状態で、切断刃21aによって第一シート元材S1を切断する。この場合、第一押さえユニット23の左右方向の長さと、受け部材41の左右方向長さとは同等であって、且つ、切断刃21aは、第一押さえユニット23の左側近傍に配置されている。そのため、切断後における第一シート元材S1の引き出し側シート部分S1aの引き出し方向後端部S1bにおいては、第一箱体28から左側への食み出し部分S1cが短い長さになる。そして、この時点では、第一押さえユニット23の第一保持部28aが、第一シート元材S1の引き出し側シート部分S1aの引き出し方向後端部S1bを吸着により保持している。この後に、受け部材41が退避位置に向かって後退移動する。受け部材41が後退移動しても、上記引き出し側シート部分S1aは垂れ下がることなく上記引き出し方向後端部S1bが第一保持部28aにより継続して保持された状態になる。そして、この状態は、後工程である接合工程まで継続して維持される。なお、この切断工程では、第一押さえユニット23のヒータ26は加熱されていなくてもよいが、本実施形態では、ヒータ26は常時加熱されている。
【0079】
反転工程は、保持工程及び切断工程の後で接合工程の前に実行される。反転工程では、
図3に示す状態にある支持枠体18と保持枠体19とが、同図に符号Xで示す方向に同時に同速度で180°回転する。これにより、
図10に示すように、第一元材ロールR1と第二元材ロールR2との位置が入れ替わる。したがって、以下の反転工程の後の第二押さえユニット24に関する説明では、既述の反転工程の前の説明と対比して、「上」と「下」とが入れ替わり且つ「右」と「左」とが入れ替わる。
【0080】
接合工程は、反転工程の後に実行される。接合工程は、接合装置20を用いて実施される。詳述すると、接合工程では、
図10に示す状態から第一押さえユニット23と第二押さえユニット24とを接近させていくことで、
図11及び
図12に示すように第一シート元材S1と第二シート元材S2とが接触する。この場合、第一押さえユニット23が下方に移動することが好ましいが、第二押さえユニット24が上方に移動してもよい。この時点で、
図12に示すように、第一シート元材S1の第一接合部S1eと、第二シート元材S2の第二接合部S2eとがヒータ26の熱によって接合(熱溶着)する。ここで、第一接合部S1eは、第一シート元材S1の引き出し側シート部分S1aの引き出し方向後端部S1bにおけるヒータ26の第一押さえ面27aと接触する部位である。また、第二接合部S2eは、第二シート元材S2の引き出し方向前端部S2aにおける第一接合部S1eと接触する部位である。第二接合部S2eは、耐熱製の板状体39の第二押さえ面39aと接触している。この熱溶着時には、第一接合部S1eと第二接合部S2eとに厚み方向の押圧力が付与されることが好ましい。
【0081】
この時点では、第二シート元材S2の第二接合部S2eよりも引き出し方向前側領域S2fが、前側保持部34cによって吸着により保持され、第二接合部S2eよりも引き出し方向後側領域S2gが、後側保持部37によって吸着により保持されている。これらの吸着による保持は、既述の保持工程で行われたものである。また、第一シート元材S1の引き出し側シート部分S1aの引き出し方向後端部S1bにおける第一接合部S1eよりも引き出し方向後側領域S1gは、第一保持部28aによって吸着により保持されている。この吸着による保持は、既述の切断工程で行われたものである。なお、本実施形態では、第二押さえ面39aと後側保持面37aとが同一平面上に位置しているが、第一接合部S1eと第二接合部S2eとに厚み方向の押圧力を確実に付与するためには、第二押さえ面39aよりも後側保持面37aを5~20mmだけ下方に位置させてもよい。また、同様の理由により、第一押さえ面27aよりも第一保持面28bを同長さだけ上方に位置させてもよい。この二つの対策は、何れか一方を採用してもよく、双方を採用してもよい。
【0082】
この後においては、
図13に示すように、第一押さえユニット23における第一保持部28aの吸着による保持を解除して、第一押さえユニット23と第二押さえユニット24とを離反させることで、第一保持面28b及び第一押さえ面27aを第一シート元材S1から離反させる。その後に、
図14に示すように、第二押さえユニット24における前側保持部34c及び後側保持部37の吸着による保持を解除して、前側保持面34d、後側保持面37a、及び第二押さえ面39aから第二シート元材S2を離反させる。この時点では、第二シート元材S2の垂れ下がり部分S2hを切断により除去しておくことが好ましい。これにより、第一シート元材S1の引き出し側シート部分S1aと第二シート元材S2とが熱溶着によって連結されるため、第二元材ロールR2から第二シート元材S2を引き出して保護シート製作装置2に供給できる状態になる。この後は、第二元材ロールR2を用いて第二製作工程を実行することができる。
【0083】
なお、第二製作工程が実行されることで、第二シート元材S2の残量が所定量以下になった場合は、第二元材ロールR2及び第二シート元材S2を、第一元材ロールR1及び第一シート元材S1とみなし、新たな元材ロール及びシート元材を、第二元材ロールR2及び第二シート元材S2とみなして、既述の場合と同様の各工程が繰り返し実行される。
【0084】
以上の構成を備えた第一実施形態によれば、以下に示すような作用効果が得られる。
【0085】
接合工程では、第二シート元材S2の第二接合部S2eよりも引き出し方向前側領域S2f及び引き出し方向後側領域S2gがそれぞれ前側保持部34cと後側保持部37とによって保持されるため、第二シート元材S2のこれらによる保持領域及びそれら保持領域の相互間(第二押さえ面39aの上方部位)にはシワが発生し難くなる。そして、このような状態で、第二接合部S2eと第一接合部S1eとが接合(熱溶着)されることで、接合後の熱溶着部周辺にシワが形成されることが抑制される。その結果、接合後に第二元材ロールR2から第二シート元材S2を引き出す際における該第二シート元材S2のよじれなどが防止され、その後の保護シートSの製作作業(第二製作工程での作業)が支障なく円滑に行われる。
【0086】
反転工程の前に切断工程で第一シート元材S1が切断されるため、その後の反転工程では、第一元材ロールR1から第一シート元材S1が引き出されることなく、第一元材ロールR1と第二元材ロールR2とが入れ替えられる。これによって、反転時に第一シート元材S1が邪魔にならなくなり、反転工程がより一層効率良く且つ簡素に行われると共に、反転工程を実施するための反転装置の構成が簡略化される。
【0087】
反転工程では、ヒータ26を反転動作させる必要がないため、加熱のための配線などが簡略化される。
【0088】
切断工程で、第一シート元材S1が切断された後は、引き出し側シート部分S1aの引き出し方向後端部S1bの第一保持部28aからの食み出し部分S1cが短いため、その後の接合工程で、食み出し部分S1cが邪魔になって接合不良が生じる等の不具合が回避される。
【0089】
第二押さえ部39は、耐熱ゴム製の板状体で構成されるため、第二押さえ部39が熱により損傷する等の不具合が回避される。しかも、第二押さえ部39のクッション性などによって、第一接合部S1eと第二接合部S2eとが全面に亘って均一に押さえられるため、適切な接合状態が得られ、これによってもシワの発生が抑制される。
【0090】
第二押さえ部39が第二接合部S2eを保持しないため、耐熱ゴム製の板状体39に吸引孔を形成しなくてもよくなり、吸引孔の存在による接合不良などが生じなくなる。また、耐熱ゴム製の板状体39に吸引孔を設ける加工を行わないことで、耐久性の低下を防止できる。
【0091】
接合工程では、第一接合部S1eと第二接合部S2eとの熱溶着を終えて第一押さえ部27(ヒータ)が第一接合部S1eから離反した後に、第二シート元材S2の保持を解除するため、第一押さえ部27に第一接合部S1eが熱によって貼り付いた状態で該第一押さえ部27と共に移動しようとする不具合が回避される。したがって、熱溶着の後の処理が煩雑にならずに円滑に行われる。
【0092】
第一押さえ部27(ヒータ)は、幅方向に複数に分割され、それら複数の第一押さえ部27の相互間に隙間33が形成されているため、第一接合部S1eと第二接合部S2eとを幅方向の全長に亘って熱溶着させる必要がなくなり、熱溶着に要する電気エネルギーの使用量を削減することができる。
【0093】
前側保持部34cの前側保持面34dと、後側保持部37の後側保持面37aとが直角に配列されているため、第二押さえユニット24のコンパクト化が図られる。
【0094】
図15は、上記第一実施形態の変形例を示すもので、接合装置20を用いて接合工程を実施している状態を図示したものである。同図に示すように、この変形例は、第二シート元材S2の引き出し方向前側領域S2fと引き出し方向後側領域S2gとを吸着によりそれぞれ保持する前側保持部34cと後側保持部37とを、同一平面上に配置したものである。詳述すると、第二箱体34の上端壁部34aの右側部分に、左側部分と同様に複数の吸引孔42を形成し、これらの吸引孔42の形成領域の上端面に、後側保持部37と同様にゴム製の板状体からなり且つ複数の吸引孔43が形成された前側保持部34cを貼り付けたものである。したがって、第二押さえ部39の左右方向両側には、同一構造の前側保持部34cと後側保持部37とが配列されている。この場合、第二押さえ面39aと、前側保持面34dと、後側保持面37aとは、同一平面上に配列されている。この変形例においても、第一接合部S1eと第二接合部S2eとに厚み方向の押圧力を確実に付与するために、第二押さえ面39aよりも前側保持面34d及び後側保持面37aを5~20mmだけ下方に位置させてもよい。その他の構成は、既述の第一実施形態と同一であるため、両者に共通の構成要素については、
図15に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0095】
図16は、本発明の第二実施形態を例示している。この第二実施形態が既述の第一実施形態と大きく相違している点は、支持枠体18において対向して配置された一対の支持枠材18aにそれぞれ、下方に延び出す延出部材44を固定し、これら延出部材44の下端部を、幅方向に延びるローラ部材45で連結したところにある。この延出部材44は、一つの支持枠材18aについて二本が固定されている。また、この第二実施形態では、反転工程の前に切断工程が実行されない。
【0096】
この第二実施形態の構成によれば、
図16に示す状態にある支持枠体18及び保持枠体19が、同図に矢印Zで示す方向に180°回転して反転工程が実行されることで、
図17に示すように、第一元材ロールR1から引き出された第一シート元材S1が、二本のローラ部材45上に張り渡された状態になる。この後、
図18に示すように、第一押さえユニット23と第二押さえユニット24とを接近させて、第一シート元材S1の第一接合部S1eと第二シート元材S2の第二接合部S2eとを接触させる。これにより、第一接合部S1eと第二接合部S2eとが熱溶着される。このとき、第一シート元材S1を介して押圧部材46を一方のローラ部材45に押し付けることで、第一シート元材S1の切断箇所に弛みが生じることを防止する。この状態で、切断刃47を下方に移動させて第一シート元材S1を切断する。この後、第一押さえユニット23及び第二押さえユニット24をそれぞれ、第一シート元材S1及び第二シート元材S2から離反させる。これにより、第二元材ロールR2から第二シート元材S2を引き出して保護シート製作装置2に供給できるようになる。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施の形態はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0098】
例えば、上記実施形態では、シート元材S1,S2を発泡樹脂シートとしたが、発泡性を有しない樹脂シートなどのように熱溶着が可能なシートであれば他のシートであってもよい。
【0099】
上記実施形態では、ヒータ26を用いて第一シート元材S1と第二シート元材S2とを熱溶着させたが、ヒータ26を用いずに、例えば両面テープなどの接着材を用いて両シート元材S1,S2を接合するようにしてもよい。この場合、接着材は、接合工程の前に、第一接合部S1eと第二接合部S2eとの何れか一方又は双方の対向面に塗布又は貼り付けておけばよい。また、このようにヒータ26を用いない場合は、シート元材S1,S2が熱溶着できないシートであってもよい。
【0100】
上記実施形態(第一実施形態)では、第二押さえ部39を耐熱ゴム製の板状体とし、後側保持部37をゴム製の板状体としたが、少なくとも一方を樹脂製などとしてもよく、またそれらが板状体でなく、棒状体などの他の形状としてもよい。
【0101】
上記実施形態では、第二シート元材S2を保持する保持部を、第二押さえ部39の両側にそれぞれ一つ設けたが、第二押さえ部39の一方側または両側に二つ以上設けてもよい。
【0102】
上記実施形態では、第一シート元材S1を保持する保持部を、第一押さえ部27の一方側に一つ設けたが、第一押さえ部39の両側に一つ以上設けてもよい。
【0103】
上記実施形態(第一実施形態)では、後側保持面37aに対して、前側保持面34dを直角に配列させたが、傾斜して配列させてもよい。
【0104】
上記実施形態では、ガラス板梱包体12として、梱包用パレットP上にガラス板G及び保護シートSを縦姿勢(傾斜姿勢)で積載したが、これらG,Sを横姿勢(平置き姿勢)で積載してもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 ガラス板梱包体の製造装置
2 保護シート製作装置
12 ガラス板梱包体
20 接合装置
26 ヒータ(加熱部)
27 第一押さえ部
27a 第一押さえ面
28a 下端壁部
28a 第一保持部
28b 第一保持面
34c 前側保持部
34d 前側保持面
37 後側保持部
37a 後側保持面
39 第二押さえ部
39a 第二押さえ面
G ガラス板
P 梱包用パレット
R1 第一元材ロール
R2 第二元材ロール
S 保護シート
S1 第一シート元材
S1a 第一元材の引き出し側シート部分
S1b 引き出し側シート部分の引き出し方向後端部
S1e 第一接合部
S2e 第二接合部
S1g 第一シート元材の引き出し方向後側領域
S2 第二シート元材
S2a 第二シート元材の引き出し方向前端部
S2f 第二シート元材の引き出し方向前側領域
S2g 第二シート元材の引き出し方向後側領域