(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025142909
(43)【公開日】2025-10-01
(54)【発明の名称】減圧弁
(51)【国際特許分類】
G05D 16/10 20060101AFI20250924BHJP
F16K 17/26 20060101ALI20250924BHJP
【FI】
G05D16/10 P
F16K17/26
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024042520
(22)【出願日】2024-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増原 伊織
【テーマコード(参考)】
3H060
5H316
【Fターム(参考)】
3H060AA09
3H060BB10
3H060CC40
3H060DC05
3H060DD02
5H316AA18
5H316BB08
5H316BB09
5H316DD17
5H316EE02
5H316EE17
5H316JJ01
(57)【要約】
【課題】減圧弁の破損を防止する。
【解決手段】減圧弁100は、スプール弁体20と、スプール弁体20を軸方向において一方の方向に常時付勢する第1スプリング34と、スプール弁体20を軸方向において他方の方向に付勢可能な第2スプリング44と、二次圧ポート13の圧力が導かれ、軸方向において一方の方向にスプール弁体20を付勢する第1推力を生成する第1圧力室32と、パイロット圧力が導かれ、軸方向において他方の方向にスプール弁体20を付勢する第2推力を生成する第2圧力室42と、を備え、第2推力が低下することによって、第1スプリング34の付勢力によりスプール弁体20が一方の方向へと移動し、軸方向におけるスプール弁体20の位置が所定の位置に到達すると、スプール弁体20を他方の方向に付勢する第2スプリング44の付勢力がスプール弁体20に対して作用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次圧通路と二次圧通路との連通状態及びドレーン通路と前記二次圧通路との連通状態を制御し前記二次圧通路内の圧力を所定の圧力に減圧する減圧弁であって、
前記一次圧通路と前記二次圧通路との連通を許容又は遮断し、前記ドレーン通路と前記二次圧通路との連通を許容又は遮断するスプール弁体と、
前記スプール弁体を軸方向において一方の方向に常時付勢する第1付勢部材と、
前記スプール弁体を軸方向において他方の方向に付勢可能な第2付勢部材と、
前記二次圧通路の圧力が導かれ、軸方向において前記一方の方向に前記スプール弁体を付勢する第1推力を生成する第1圧力室と、
パイロット圧力が導かれ、軸方向において前記他方の方向に前記スプール弁体を付勢する第2推力を生成する第2圧力室と、を備え、
前記第2推力が低下することによって、前記第1付勢部材の付勢力により前記スプール弁体が前記一方の方向へと移動し、軸方向における前記スプール弁体の位置が所定の位置に到達すると、前記スプール弁体を前記他方の方向に付勢する前記第2付勢部材の付勢力が前記スプール弁体に対して作用することを特徴とする減圧弁。
【請求項2】
一次圧通路と二次圧通路との連通状態及びドレーン通路と前記二次圧通路との連通状態を制御し前記二次圧通路内の圧力を所定の圧力に減圧する減圧弁であって、
前記一次圧通路と前記二次圧通路との連通を許容又は遮断し、前記ドレーン通路と前記二次圧通路との連通を許容又は遮断するスプール弁体と、
前記スプール弁体を軸方向において一方の方向に常時付勢する第1付勢部材と、
前記スプール弁体を軸方向において他方の方向に付勢可能な第2付勢部材と、
前記二次圧通路の圧力が導かれ、軸方向において前記他方の方向に前記スプール弁体を付勢する推力を生成する圧力室と、を備え、
前記推力が低下することによって、前記第1付勢部材の付勢力により前記スプール弁体が前記一方の方向へと移動し、軸方向における前記スプール弁体の位置が所定の位置に到達すると、前記スプール弁体を前記他方の方向に付勢する前記第2付勢部材の付勢力が前記スプール弁体に対して作用することを特徴とする減圧弁。
【請求項3】
請求項1または2に記載の減圧弁であって、
前記スプール弁体に作用する前記第1付勢部材の付勢力を調節する付勢力調節部をさらに備え、
前記第2付勢部材は、前記スプール弁体が前記一方の方向へと移動し、軸方向における前記スプール弁体の位置が前記所定の位置に到達するまでは、軸方向において前記一方の方向に前記スプール弁体を付勢する付勢力を生じることを特徴とする減圧弁。
【請求項4】
請求項1または2に記載の減圧弁であって、
前記第2付勢部材は、前記スプール弁体が前記一方の方向へと移動し、軸方向における前記スプール弁体の位置が前記所定の位置に到達するまでは、前記スプール弁体を付勢する付勢力を生じないことを特徴とする減圧弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入力ポートと出力ポートとの連通を許容又は遮断し、ドレーンポートと出力ポートとの連通を許容又は遮断するスプール弁体と、スプール弁体を軸方向において一方の方向に付勢するスプリングと、を備えた減圧弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された減圧弁のように、スプール弁体と、スプール弁体を付勢するスプリングと、を備えた減圧弁では、減圧弁の作動が停止される際、スプリングの付勢力に対抗するようにスプール弁体に作用していた作動流体の圧力が低下することになる。このようにスプール弁体に作用していた作動流体の圧力が低下すると、スプリングの付勢力によってスプール弁体が移動し、スプール弁体の端部がハウジング等に衝突することで減圧弁を構成するスプール弁体やハウジングが破損してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、減圧弁の破損を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一次圧通路と二次圧通路との連通状態及びドレーン通路と二次圧通路との連通状態を制御し二次圧通路内の圧力を所定の圧力に減圧する減圧弁であって、一次圧通路と二次圧通路との連通を許容又は遮断し、ドレーン通路と二次圧通路との連通を許容又は遮断するスプール弁体と、スプール弁体を軸方向において一方の方向に常時付勢する第1付勢部材と、スプール弁体を軸方向において他方の方向に付勢可能な第2付勢部材と、二次圧通路の圧力が導かれ、軸方向において一方の方向にスプール弁体を付勢する第1推力を生成する第1圧力室と、パイロット圧力が導かれ、軸方向において他方の方向にスプール弁体を付勢する第2推力を生成する第2圧力室と、を備え、第2推力が低下することによって、第1付勢部材の付勢力によりスプール弁体が一方の方向へと移動し、軸方向におけるスプール弁体の位置が所定の位置に到達すると、スプール弁体を他方の方向に付勢する第2付勢部材の付勢力がスプール弁体に対して作用することを特徴とする。
【0007】
この発明では、第2推力が低下すると、第1付勢部材の付勢力によりスプール弁体が一方の方向へと移動することになるが、軸方向におけるスプール弁体の位置が、所定の位置に到達すると、スプール弁体を他方の方向に付勢する第2付勢部材の付勢力がスプール弁体に対して作用する。このように、スプール弁体の移動に伴う衝撃は第2付勢部材により緩衝されることから、スプール弁体がハウジングやキャップ等に衝突することによって減圧弁を構成する部材が破損してしまうことを防止することができる。
【0008】
また、本発明は、一次圧通路と二次圧通路との連通状態及びドレーン通路と二次圧通路との連通状態を制御し二次圧通路内の圧力を所定の圧力に減圧する減圧弁であって、一次圧通路と二次圧通路との連通を許容又は遮断し、ドレーン通路と二次圧通路との連通を許容又は遮断するスプール弁体と、スプール弁体を軸方向において一方の方向に常時付勢する第1付勢部材と、スプール弁体を軸方向において他方の方向に付勢可能な第2付勢部材と、二次圧通路の圧力が導かれ、軸方向において他方の方向にスプール弁体を付勢する推力を生成する圧力室と、を備え、推力が低下することによって、第1付勢部材の付勢力によりスプール弁体が一方の方向へと移動し、軸方向におけるスプール弁体の位置が所定の位置に到達すると、スプール弁体を他方の方向に付勢する第2付勢部材の付勢力がスプール弁体に対して作用することを特徴とする。
【0009】
この発明では、推力が低下すると、第1付勢部材の付勢力によりスプール弁体が一方の方向へと移動することになるが、軸方向におけるスプール弁体の位置が、所定の位置に到達すると、スプール弁体を他方の方向に付勢する第2付勢部材の付勢力がスプール弁体に対して作用する。このように、スプール弁体の移動に伴う衝撃は第2付勢部材により緩衝されることから、スプール弁体がハウジングやキャップ等に衝突することによって減圧弁を構成する部材が破損してしまうことを防止することができる。
【0010】
また、本発明は、スプール弁体に作用する第1付勢部材の付勢力を調節する付勢力調節部をさらに備え、第2付勢部材は、スプール弁体が一方の方向へと移動し、軸方向におけるスプール弁体の位置が所定の位置に到達するまでは、軸方向において一方の方向にスプール弁体を付勢する付勢力を生じることを特徴とする。
【0011】
この発明では、第2付勢部材は、軸方向におけるスプール弁体の位置が所定の位置に到達するまでは、第1付勢部材と同様に、第2圧力室において生成される推力に対抗する付勢力を生じる。このため、バネ定数が比較的小さい弾性部材を第1付勢部材として採用することが可能になるとともに、第1付勢部材の付勢力を調節する付勢力調節部を小型化することが可能となる。
【0012】
また、本発明は、第2付勢部材が、スプール弁体が一方の方向へと移動し、軸方向におけるスプール弁体の位置が所定の位置に到達するまでは、スプール弁体を付勢する付勢力を生じないことを特徴とする。
【0013】
この発明では、第2付勢部材は、軸方向におけるスプール弁体の位置が所定の位置に到達するまでは、スプール弁体を付勢する付勢力を生じない。つまり、調圧時には、第2付勢部材の付勢力がスプール弁体に対して作用することはない。このように第2付勢部材は減圧弁の調圧に対して何ら影響を及ぼさないことから、減圧弁を従来の設定のままで使用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、減圧弁の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る減圧弁の構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る減圧弁の作動について説明するための図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る減圧弁の作動について説明するための図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る減圧弁の構成を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る減圧弁の第1変形例の構成を示す概略図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る減圧弁の第1変形例の作動について説明するための図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る減圧弁の第2変形例の構成を示す概略図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る減圧弁の第2変形例の作動について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
<第1実施形態>
まず、
図1から
図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る減圧弁100について説明する。
【0018】
減圧弁100は、図示しないポンプ等の作動流体供給装置から供給される作動流体の圧力を所定の圧力に減圧する装置であり、作業機械等に設けられる油圧アクチュエータといった作動流体利用装置に対して一定圧力の作動流体を供給するために用いられる。以下では、作動流体として作動油が用いられる場合を例に説明するが、作動流体としては作動水等の他の流体が用いられてもよい。
【0019】
減圧弁100は、
図1に示すように、複数のランド部21,22とランド部21,22の間に形成される環状溝23とを有するスプール弁体20と、スプール弁体20を摺動自在に収容する収容孔18が形成されたハウジング10と、収容孔18の一方の開口端を閉塞するようにハウジング10に取り付けられた第1キャップ30と、収容孔18の他方の開口端を閉塞するようにハウジング10に取り付けられた第2キャップ40と、第1キャップ30内に収容され軸方向において一方の方向(
図1の右方向)にスプール弁体20を常時付勢する第1付勢部材としての第1スプリング34と、第2キャップ40内に収容され軸方向において他方の方向(
図1の左方向)にスプール弁体20を付勢可能な第2付勢部材としての第2スプリング44と、スプール弁体20に作用する第1スプリング34の付勢力を調節する付勢力調節部35と、を備える。
【0020】
ハウジング10には、一次圧通路としての一次圧ポート12と、二次圧通路としての二次圧ポート13と、ドレーン通路としてのドレーンポート14と、がそれぞれ収容孔18に開口するように形成されており、一次圧ポート12とドレーンポート14とは、
図1に示されるように、二次圧ポート13を挟んでほぼ対称的に配置されている。
【0021】
一次圧ポート12は、作動油を吐出する図示しないポンプに連通しており、二次圧ポート13は、一定の圧力に減圧された作動油を利用する図示しない作動流体利用装置に連通しており、ドレーンポート14は、作動油を貯留する図示しないタンクに連通している。
【0022】
スプール弁体20は、収容孔18に開口する一次圧ポート12の開口端を閉塞可能な第1ランド部21と、収容孔18に開口するドレーンポート14の開口端を閉塞可能な第2ランド部22と、第1ランド部21と第2ランド部22との間に形成され、二次圧ポート13を一次圧ポート12及びドレーンポート14の何れかと連通させることが可能な環状溝23と、を有する。なお、
図1には、一次圧ポート12が第1ランド部21により閉塞され、ドレーンポート14が第2ランド部22により閉塞され、二次圧ポート13が一次圧ポート12及びドレーンポート14の何れとも連通していない状態、いわゆる中立状態が示されている。
【0023】
第1ランド部21の2つの端面のうち、環状溝23とは反対側の端面21aは、第1キャップ30内に形成された第1圧力室32に臨んでおり、第2ランド部22の2つの端面のうち、環状溝23とは反対側の端面22aは、第2キャップ40内に形成された第2圧力室42に臨んでいる。
【0024】
第1圧力室32内には、付勢力調節部35と第1ランド部21との間に第1スプリング34が圧縮された状態で設けられている。
【0025】
付勢力調節部35は、第1スプリング34の一端を保持するシート部35aと、軸方向におけるシート部35aの位置を調整する調整ボルト35bと、調整ボルト35bの回転を規制するロックナット35cと、によって主に構成されており、スプール弁体20に作用する第1スプリング34の付勢力は、軸方向におけるシート部35aの位置を変更することによって調節される。
【0026】
このように、スプール弁体20には、付勢力調節部35によって調節された第1スプリング34の付勢力が、第1ランド部21を介して軸方向において一方の方向に常時作用している。
【0027】
また、第1圧力室32内には、二次圧導入通路33を通じて二次圧ポート13の圧力が導かれている。
【0028】
第1圧力室32に臨む第1ランド部21の端面21aが、第1圧力室32に導かれた二次圧ポート13の圧力が作用する受圧面となることで、スプール弁体20には、二次圧ポート13の圧力に応じた第1推力が軸方向において一方の方向(
図1の右方向)に作用することになる。換言すれば、第1圧力室32は、二次圧ポート13の圧力が導かれることによって、軸方向において一方の方向にスプール弁体20を付勢する第1推力を生成する圧力室となっている。
【0029】
第2ランド部22の端面22aが臨む第2圧力室42内には、円環状に形成された第1シート部45及び第2シート部46の間に第2スプリング44が圧縮された状態で設けられている。スプール弁体20には、第2スプリング44を保持する第1シート部45及び第2シート部46に挿通する棒状のロッド部24が第2ランド部22の端面22aから軸方向に延びて設けられているとともに、ロッド部24よりも大きな外径を有するフランジ部25がロッド部24の先端に設けられている。
【0030】
第1シート部45及び第2シート部46の内径の大きさは、ロッド部24の外径よりも大きく、且つ、フランジ部25の外径よりも小さく設定されており、第1シート部45及び第2シート部46の外径の大きさは、収容孔18の内径よりも大きく設定されている。
【0031】
第2スプリング44が収容される第2キャップ40には、第1シート部45及び第2シート部46の外径よりも大きな内径を有するスプリング収容孔40aと、スプリング収容孔40aと同軸上に形成され、内径の大きさが第2シート部46の外径のよりも小さく、且つ、フランジ部25の外径より大きいフランジ収容孔40bと、スプリング収容孔40aとフランジ収容孔40bとを接続する段部40cと、が形成されている。
【0032】
このため、軸方向における第1シート部45の位置は、収容孔18が開口するハウジング10の側面10a、及び、第2ランド部22の端面22aの何れかに第1シート部45が当接することによって規定され、また、軸方向における第2シート部46の位置は、フランジ部25及び段部40cの何れかに第2シート部46が当接することによって規定されることになる。
【0033】
したがって、例えば、
図1に示されるように、第1シート部45がハウジング10の側面10aに当接し、第2シート部46がフランジ部25に当接している場合、第2スプリング44の付勢力はフランジ部25を介してスプール弁体20に作用するため、スプール弁体20には、第1スプリング34の付勢力と同様に、軸方向において一方の方向(
図1の右方向)に第2スプリング44の付勢力が作用することになる。
【0034】
一方、例えば、
図2に示されるように、第1シート部45がハウジング10の側面10aに当接し、第2シート部46が第2キャップ40の段部40cに当接している場合、第2スプリング44は、ハウジング10と第2キャップ40との間に圧縮された状態となることから、スプール弁体20には、第2スプリング44の付勢力が作用しない。なお、ロッド部24の長さは、ハウジング10の側面10aと第2キャップ40の段部40cとの間の長さよりも僅かに長く設定されている。
【0035】
なお、第2スプリング44は、
図2に示されるように、ハウジング10に当接する第1シート部45と第2キャップ40に当接する第2シート部46との間に保持された状態において、圧縮されることなく、ほぼ自然長となっていてもよい。
【0036】
また、例えば、
図3に示されるように、第1シート部45が第2ランド部22の端面22aに当接し、第2シート部46が第2キャップ40の段部40cに当接している場合、第2スプリング44の付勢力は第2ランド部22を介してスプール弁体20に作用するため、スプール弁体20には、第1スプリング34の付勢力とは反対の方向、すなわち、軸方向において他方の方向(
図1及び
図3の左方向)に第2スプリング44の付勢力が作用することになる。
【0037】
このようにスプール弁体20には、第2スプリング44の付勢力が軸方向において一方の方向または他方の方向に作用する。
【0038】
また、第2圧力室42内には、パイロット圧導入通路43を通じて図示しないパイロット圧供給源から所定の大きさのパイロット圧力が導かれている。
【0039】
第2圧力室42に臨む第2ランド部22の端面22aやフランジ部25の端面が、第2圧力室42に導かれたパイロット圧力が作用する受圧面となることで、スプール弁体20には、パイロット圧力に応じた第2推力が軸方向において他方の方向(
図1の左方向)、すなわち、第1スプリング34の付勢力に対抗する方向に作用することになる。換言すれば、第2圧力室42は、パイロット圧力が導かれることによって、軸方向において他方の方向にスプール弁体20を付勢する第2推力を生成する圧力室となっている。
【0040】
また、第2ランド部22には、第2圧力室42をドレーンポート16に連通させることが可能なノッチ22bが設けられている。ノッチ22bは、第2ランド部22の外周面に軸方向に沿って所定の長さにわたって形成され溝であり、一端が端面22aにおいて開口している。なお、ドレーンポート16は、ドレーンポート14よりも側面10a側において収容孔18に開口したポートであり、ドレーンポート14と同様に図示しないタンクに連通している。
【0041】
図1に示されるように、スプール弁体20が中立状態にあるときには、第2圧力室42とドレーンポート16とはノッチ22bを通じて連通することなく、連通が遮断された状態となっているが、二次圧ポート13を一次圧ポート12と連通させる方向にスプール弁体20が移動すると、第2圧力室42とドレーンポート16とは、ノッチ22bを通じて連通した状態となる。
【0042】
なお、ドレーンポート16に対して開口するノッチ22bの開口面積、すなわち、第2圧力室42とドレーンポート16とを連通させる通路の流路断面積は、スプール弁体20が二次圧ポート13を一次圧ポート12と連通させる方向に移動するにつれて徐々に大きくなるように設定される。
【0043】
続いて、
図1から
図3を参照し、上記構成の減圧弁100の作動について説明する。
【0044】
上記構成の減圧弁100は、第2圧力室42内に導かれたパイロット圧力に応じて二次圧ポート13の圧力を調圧する、いわゆる比例減圧弁であり、図示しないパイロット圧供給源から所定の大きさのパイロット圧力が第2圧力室42内に導かれていない状態、すなわち、非作動状態では、第1スプリング34の付勢力のみがスプール弁体20に作用していることから、
図2または
図3に示されるように、スプール弁体20の第2ランド部22が第1シート部45に押し付けられた状態となっている。なお、スプール弁体20の停止位置は、予め設定された第1スプリング34及び第2スプリング44のバネ定数等に応じて変化する。
【0045】
パイロット圧導入通路43を通じてパイロット圧力が第2圧力室42内に導かれ、減圧弁100が作動状態となると、スプール弁体20は、
図2または
図3に示されるように第2ランド部22が第1シート部45に接した位置から、例えば、
図1に示されるように、軸方向において一方の方向(
図1の右方向)にスプール弁体20を付勢する第1推力と第1スプリング34の付勢力と第2スプリング44の付勢力とを合わせた第1合力と、軸方向において他方の方向(
図1及び
図3の左方向)にスプール弁体20を付勢する第2推力とが釣り合う位置へと移動する。
【0046】
例えば、二次圧ポート13の圧力が上昇すると、第1合力が第2推力を上回ることによって、スプール弁体20は、
図1の右方向へと移動し、二次圧ポート13をドレーンポート14と連通させて、二次圧ポート13の圧力を低下させる。
【0047】
一方、二次圧ポート13の圧力が低下すると、第2推力が第1合力を上回ることによって、スプール弁体20は、
図1の左方向へと移動し、二次圧ポート13を一次圧ポート12と連通させて、二次圧ポート13の圧力を上昇させる。
【0048】
このように減圧弁100は、二次圧ポート13の圧力が所定の目標圧力となるように調圧する。目標圧力は、付勢力調節部35により第1スプリング34の付勢力を小さくしたり、パイロット圧力を大きくしたりすることによって高くすることができる一方、付勢力調節部35により第1スプリング34の付勢力を大きくしたり、パイロット圧力を小さくしたりすることによって低くすることができる。
【0049】
なお、目標圧力を高くするためにパイロット圧力を大きくすると、第2推力が急に大きくなることによって、スプール弁体20が、
図1の左方向へと大幅に移動し、二次圧ポート13の圧力が一時的に急上昇してしまうおそれがあるが、上述のように、二次圧ポート13を一次圧ポート12と連通させる方向にスプール弁体20が移動すると、パイロット圧力が導かれる第2圧力室42は、ノッチ22bを通じてドレーンポート16と連通する。
【0050】
このため、目標圧力を高くするためにパイロット圧力が変更された場合であっても、第2圧力室42がノッチ22bを通じてドレーンポート16と連通することで第2圧力室42内の作動油がドレーンポート16へと排出されるため、第2圧力室42内の圧力が急に高くなること、すなわち、第2推力が急に大きくなることが抑制される。これにより、二次圧ポート13の圧力が一時的に急上昇してしまうことを回避することができる。
【0051】
減圧弁100による調圧は、パイロット圧力の供給が停止されることによって停止される。
【0052】
パイロット圧力の供給が停止されると、スプール弁体20には第1合力のみが作用した状態となり、スプール弁体20は、第2圧力室42側(
図1の右方向)に向かって急峻に移動することになる。
【0053】
ここで、本実施形態では、上述のように、第2圧力室42内に配置された第2スプリング44が、スプール弁体20を軸方向において他方の方向(
図1及び
図3の左方向)に付勢することが可能である。
【0054】
このため、調圧が終了した際にスプール弁体20が第2圧力室42側に向かって急峻に移動し、
図2に示されるように第2ランド部22の端面22aが第1シート部45に当接したとしても、スプール弁体20の移動に伴う衝撃は、
図3に示されるように第2スプリング44が圧縮された状態となることによって吸収されることになる。
【0055】
換言すれば、パイロット圧力の供給が停止し、第2推力が低下することによって、主に第1スプリング34の付勢力によりスプール弁体20が一方の方向(
図1及び
図3の右方向)へと第2圧力室42側に向かって移動し、軸方向におけるスプール弁体20の位置が所定の位置、すなわち、第2ランド部22の端面22aが第1シート部45に当接する位置に到達すると、スプール弁体20を他方の方向(
図1及び
図3の左方向)に付勢する第2スプリング44の付勢力がスプール弁体20に対して作用することとなり、結果として、スプール弁体20の移動に伴う衝撃は第2スプリング44により緩衝される。
【0056】
このように、スプール弁体20を軸方向において他方の方向に付勢可能な第2スプリング44を設けておくことによって、調圧が終了した際にスプール弁体20が急峻に移動し、スプール弁体20がハウジングやキャップ等に衝突することによって減圧弁100を構成する部材が破損してしまうことを防止することができる。
【0057】
また、上述の第2スプリング44は、調圧時、すなわち、軸方向におけるスプール弁体20の位置が上述の所定の位置に到達していない間は、第1スプリング34と同様に、第2推力に対抗する付勢力を生じることから、バネ定数が比較的小さい小型のスプリングを第1スプリング34として採用することが可能になるとともに、第1スプリング34の付勢力を調節する付勢力調節部35を小型化することが可能となる。
【0058】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0059】
減圧弁100では、パイロット圧力の供給が停止して第2推力が低下すると、第1スプリング34の付勢力によりスプール弁体20が一方の方向へと移動することになるが、軸方向におけるスプール弁体20の位置が、所定の位置、すなわち、第2ランド部22の端面22aが第1シート部45に当接する位置に到達すると、スプール弁体20を他方の方向に付勢する第2スプリング44の付勢力がスプール弁体20に対して作用する。
【0060】
このように、第1スプリング34の付勢力がスプール弁体20に対して常時作用していても、スプール弁体20の移動に伴う衝撃は第2スプリング44により緩衝される。したがって、調圧が終了した際にスプール弁体20が急峻に移動し、スプール弁体20がハウジングやキャップ等に衝突することによって減圧弁100を構成する部材が破損してしまうことを防止することができる。
【0061】
<第2実施形態>
次に、
図4を参照して、本発明の第2実施形態に係る減圧弁200について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し説明を省略する。
【0062】
図4に示されるように、ハウジング10、スプール弁体20、第1キャップ30、第1スプリング34、付勢力調節部35、第2キャップ40、第2スプリング44、及び、第2スプリング44の保持構造といった減圧弁200の基本的な構成は、第1実施形態に係る減圧弁100と同じであるが、減圧弁200では、二次圧ポート13の圧力が、第1圧力室32ではなく、圧力室としての第2圧力室42へと二次圧導入通路33を通じて導かれている。
【0063】
減圧弁200では、第2圧力室42に臨む第2ランド部22の端面22aやフランジ部25の端面が、第2圧力室42に導かれた二次圧ポート13の圧力が作用する受圧面となることで、スプール弁体20には、二次圧ポート13の圧力に応じた推力が軸方向において他方の方向(
図4の左方向)、すなわち、第1スプリング34の付勢力に対抗する方向に作用することになる。
【0064】
一方、第1圧力室32は、図示しないドレーン通路を通じて図示しないタンクに連通している。つまり、減圧弁200では、第2圧力室42のみがスプール弁体20を付勢する推力を生成する圧力室として機能している。
【0065】
また、減圧弁200では、第1ランド部21が、収容孔18に開口するドレーンポート14の開口端を閉塞し、第2ランド部22が、収容孔18に開口する一次圧ポート12の開口端を閉塞するように構成されている。つまり、減圧弁200の一次圧ポート12及びドレーンポート14の位置は、
図4に示されるように、上述の第1実施形態に係る減圧弁100の一次圧ポート12及びドレーンポート14の位置と入れ替わっている。
【0066】
このように、上述の第1実施形態に係る減圧弁100が、第2圧力室42内に導かれたパイロット圧力に応じて二次圧ポート13の圧力を調圧する、いわゆる比例減圧弁であったのに対して、減圧弁200は、パイロット圧力を用いることなく、第2圧力室42内に導かれた二次圧ポート13の圧力に応じて二次圧ポート13の圧力を調圧する、いわゆる固定減圧弁である。
【0067】
続いて、
図4を参照し、上記構成の減圧弁200の作動について説明する。
【0068】
減圧弁200は、二次圧ポート13の圧力がまだ上昇しておらず、圧力室としての第2圧力室42内に二次圧導入通路33を通じて二次圧ポート13の圧力が導かれていない状態、すなわち、非作動状態では、上述の減圧弁100と同様に、第1スプリング34の付勢力のみがスプール弁体20に作用していることから、スプール弁体20の第2ランド部22が第1シート部45に押し付けられた状態となっている。
【0069】
二次圧導入通路33を通じて二次圧ポート13の圧力が第2圧力室42内に導かれ、減圧弁200が作動状態となると、スプール弁体20は、第2ランド部22が第1シート部45に接した位置から、例えば、
図4に示されるように、軸方向において一方の方向(
図4の右方向)にスプール弁体20を付勢する第1スプリング34の付勢力と第2スプリング44の付勢力とを合わせた第2合力と、軸方向において他方の方向(
図4の左方向)にスプール弁体20を付勢する推力とが釣り合う位置へと移動する。
【0070】
例えば、二次圧ポート13の圧力が上昇すると、推力が第2合力を上回ることによって、スプール弁体20は、
図4の左方向へと移動し、二次圧ポート13をドレーンポート14と連通させて、二次圧ポート13の圧力を低下させる。
【0071】
一方、二次圧ポート13の圧力が低下すると、第2合力が推力を上回ることによって、スプール弁体20は、
図4の右方向へと移動し、二次圧ポート13を一次圧ポート12と連通させて、二次圧ポート13の圧力を上昇させる。
【0072】
このように減圧弁200は、二次圧ポート13の圧力が所定の目標圧力となるように調圧する。なお、目標圧力は、付勢力調節部35により第1スプリング34の付勢力を大きくすることによって高くなる一方、付勢力調節部35により第1スプリング34の付勢力を小さくすることによって低くなる。
【0073】
減圧弁200による調圧は、一次圧ポート12への作動油の供給が遮断されることによって停止される。
【0074】
一次圧ポート12への作動油の供給が遮断されると、二次圧ポート13の圧力が低下することから、スプール弁体20には第2合力のみが作用した状態となり、スプール弁体20は、第2圧力室42側(
図4の右方向)に向かって急峻に移動することになる。
【0075】
ここで、本実施形態では、上述の第1実施形態と同様に、第2圧力室42内に配置された第2スプリング44が、スプール弁体20を軸方向において他方の方向(
図4の左方向)に付勢することが可能である。
【0076】
このため、調圧が終了した際にスプール弁体20が第2圧力室42側に向かって急峻に移動し、第2ランド部22の端面22aが第1シート部45に当接したとしても、スプール弁体20の移動に伴う衝撃は、上述の第1実施形態と同様に、第2スプリング44が圧縮された状態となることによって吸収されることになる。
【0077】
換言すれば、二次圧ポート13の圧力が低下し、推力が低下することによって、主に第1スプリング34の付勢力によりスプール弁体20が一方の方向(
図4の右方向)へと第2圧力室42側に向かって移動し、軸方向におけるスプール弁体20の位置が所定の位置、すなわち、第2ランド部22の端面22aが第1シート部45に当接する位置に到達すると、スプール弁体20を他方の方向(
図4の左方向)に付勢する第2スプリング44の付勢力がスプール弁体20に対して作用することとなり、結果として、スプール弁体20の移動に伴う衝撃は第2スプリング44により緩衝される。
【0078】
このように、スプール弁体20を軸方向において他方の方向に付勢可能な第2スプリング44を設けておくことによって、調圧が終了した際にスプール弁体20が急峻に移動し、スプール弁体20がハウジングやキャップ等に衝突することによって減圧弁200を構成する部材が破損してしまうことを防止することができる。
【0079】
また、上述の第2スプリング44は、調圧時、すなわち、軸方向におけるスプール弁体20の位置が上述の所定の位置に到達していない間は、第1スプリング34と同様に、推力に対抗する付勢力を生じることから、バネ定数が比較的小さい小型のスプリングを第1スプリング34として採用することが可能になるとともに、第1スプリング34の付勢力を調節する付勢力調節部35を小型化することが可能となる。
【0080】
以上の第2実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0081】
減圧弁200では、二次圧ポート13の圧力が低下して推力が低下すると、第1スプリング34の付勢力によりスプール弁体20が一方の方向へと移動することになるが、軸方向におけるスプール弁体20の位置が、所定の位置、すなわち、第2ランド部22の端面22aが第1シート部45に当接する位置に到達すると、スプール弁体20を他方の方向に付勢する第2スプリング44の付勢力がスプール弁体20に対して作用する。
【0082】
このように、第1スプリング34の付勢力がスプール弁体20に対して常時作用していても、スプール弁体20の移動に伴う衝撃は第2スプリング44により緩衝される。したがって、調圧が終了した際にスプール弁体20が急峻に移動し、スプール弁体20がハウジングやキャップ等に衝突することによって減圧弁200を構成する部材が破損してしまうことを防止することができる。
【0083】
次に、上記各実施形態の変形例について説明する。なお、以下のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0084】
上記各実施形態では、第2スプリング44は、調圧が終了した際に生じるスプール弁体20の移動に伴う衝撃を緩衝するように配置されているとともに、調圧時には、第1スプリング34と同様に、第2圧力室42で生成される推力に対抗する付勢力を生じるように配置されている。これに代えて、第2スプリング44は、
図5及び
図6に示される第1変形例や
図7及び
図8に示される第2変形例のように、第2圧力室42で生成される推力に対抗する付勢力を生じることなく、調圧が終了した際に生じるスプール弁体220,320の移動に伴う衝撃を緩衝するためだけに配置されていてもよい。
【0085】
図5及び
図6に示される第1変形例では、第2スプリング44は、上記各実施形態と同様に、ハウジング10の側面10aに当接する第1シート部45と第2キャップ40の段部40cに当接する第2シート部46との間に圧縮された状態で設けられているものの、スプール弁体220には、ロッド部24及びフランジ部25が設けられていない。なお、第2スプリング44は、
図5に示されるように、ハウジング10に当接する第1シート部45と第2キャップ40に当接する第2シート部46との間に保持された状態において、圧縮されることなく、ほぼ自然長となっていてもよい。
【0086】
このため、第1変形例では、調圧が終了した際にスプール弁体220が第2圧力室42側に向かって急峻に移動し、軸方向におけるスプール弁体220の位置が所定の位置、すなわち、第2ランド部22の端面22aが第1シート部45に当接する位置に到達すると、スプール弁体220を他方の方向(
図6の左方向)に付勢する第2スプリング44の付勢力がスプール弁体220に対して作用することとなる。
【0087】
したがって、第1変形例においても上記各実施形態と同様に、スプール弁体220の移動に伴う衝撃が第2スプリング44によって緩衝されることから、スプール弁体220がハウジングやキャップ等に衝突することによって減圧弁300を構成する部材が破損してしまうことを防止することができる。
【0088】
なお、第1変形例における第2スプリング44は、調圧が終了した際にスプール弁体220が一方の方向(
図5及び
図6の右方向)へと移動し、軸方向におけるスプール弁体220の位置が所定の位置、すなわち、第2ランド部22の端面22aが第1シート部45に当接する位置に到達するまでは、スプール弁体220を付勢する付勢力を一切生じない。つまり、調圧時には、第2スプリング44の付勢力がスプール弁体220に対して作用することはない。
【0089】
このように第2スプリング44は減圧弁300の調圧に対して何ら影響を及ぼさないことから、減圧弁300を従来の設定のままで使用することができる。
【0090】
図7及び
図8に示される第2変形例では、スプール弁体320には、上記各実施形態と同様に、ロッド部24及びフランジ部25が設けられており、ロッド部24が挿通する第1シート部45及び第2シート部46の間には第2スプリング44が圧縮された状態で設けられているものの、第1シート部45及び第2シート部46の外径の大きさは、収容孔18の内径及び第2ランド部22の外径よりも小さく設定されている。なお、第2スプリング44は、
図7に示されるように、第2ランド部22の端面22aに当接する第1シート部45とフランジ部25に当接する第2シート部46との間に保持された状態において、圧縮されることなく、ほぼ自然長となっていてもよい。
【0091】
このため、第2変形例では、調圧が終了した際にスプール弁体320が第2圧力室42側に向かって急峻に移動し、軸方向におけるスプール弁体320の位置が所定の位置、すなわち、第2シート部46が第2キャップ40の段部40cに当接する位置に到達すると、スプール弁体320を他方の方向(
図8の左方向)に付勢する第2スプリング44の付勢力がスプール弁体320に対して作用することとなる。
【0092】
したがって、第2変形例においても上記各実施形態と同様に、スプール弁体320の移動に伴う衝撃が第2スプリング44によって緩衝されることから、スプール弁体320がハウジングやキャップ等に衝突することによって減圧弁400を構成する部材が破損してしまうことを防止することができる。
【0093】
なお、第2変形例における第2スプリング44は、調圧が終了した際にスプール弁体320が一方の方向(
図7及び
図8の右方向)へと移動し、軸方向におけるスプール弁体320の位置が所定の位置、すなわち、第2シート部46が第2キャップ40の段部40cに当接する位置に到達するまでは、スプール弁体320を付勢する付勢力を一切生じない。つまり、調圧時には、第2スプリング44の付勢力がスプール弁体320に対して作用することはない。
【0094】
このように第2スプリング44は減圧弁400の調圧に対して何ら影響を及ぼさないことから、減圧弁400を従来の設定のままで使用することができる。
【0095】
なお、上述の第1変形例及び第2変形例では、第2スプリング44のようなコイルスプリングが第2付勢部材として用いられているが、第2付勢部材は、スプール弁体220,320の移動に伴う衝撃を緩衝するものであることから、第2付勢部材としては、コイルスプリングに代えて、ゴム等の弾性部材が用いられてもよい。
【0096】
また、上述の第1変形例及び第2変形例では、上記第1実施形態と同様に、第2圧力室42には、パイロット圧力がパイロット圧導入通路43を通じて導かれているが、第2圧力室42には、上記第2実施形態のように、二次圧ポート13の圧力が二次圧導入通路33を通じて導かれていてもよい。つまり、第1変形例及び第2変形例は、上記第1実施形態及び第2実施形態の何れに対しても適用することができる。
【0097】
また、上記各実施形態では、推力を生成する第2圧力室42が、収容孔18の開口端を閉塞するようにハウジング10に取り付けられた第2キャップ40内に形成されている。第2圧力室42が形成される場所は、第2スプリング44が収容される第2キャップ40内に限定されず、第1スプリング34の付勢力に対抗する推力をスプール弁体20に対して付与することができれば、どのような場所に形成されてもよい。
【0098】
また、上記第1実施形態では、第1ランド部21の端面21aが第1圧力室32に導かれた二次圧ポート13の圧力が作用する受圧面となっている。これに代えて、受圧面の面積を変えるために、一端が第1圧力室32に臨み他端が第1ランド部21の端面21aに当接する円柱状の伝達部材が設けられてもよい。例えば、伝達部材の外径を第1ランド部21の外径よりも小さくし、二次圧ポート13の圧力が作用する受圧面を小さくすることによって、上述の第1推力を小さくすることが可能である。
【0099】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0100】
減圧弁100,300,400は、一次圧ポート12と二次圧ポート13との連通を許容又は遮断し、ドレーンポート14と二次圧ポート13との連通を許容又は遮断するスプール弁体20,220,320と、スプール弁体20,220,320を軸方向において一方の方向に常時付勢する第1スプリング34と、スプール弁体20,220,320を軸方向において他方の方向に付勢可能な第2スプリング44と、二次圧ポート13の圧力が導かれ、軸方向において一方の方向にスプール弁体20,220,320を付勢する第1推力を生成する第1圧力室32と、パイロット圧力が導かれ、軸方向において他方の方向にスプール弁体20,220,320を付勢する第2推力を生成する第2圧力室42と、を備え、第2推力が低下することによって、第1スプリング34の付勢力によりスプール弁体20,220,320が一方の方向へと移動し、軸方向におけるスプール弁体20,220,320の位置が所定の位置に到達すると、スプール弁体20,220,320を他方の方向に付勢する第2スプリング44の付勢力がスプール弁体20,220,320に対して作用する。
【0101】
この構成では、パイロット圧力の供給が停止して第2推力が低下すると、第1スプリング34の付勢力によりスプール弁体20,220,320が一方の方向へと移動することになるが、軸方向におけるスプール弁体20,220,320の位置が、所定の位置に到達すると、スプール弁体20,220,320を他方の方向に付勢する第2スプリング44の付勢力がスプール弁体20,220,320に対して作用する。
【0102】
このように、第1スプリング34の付勢力がスプール弁体20,220,320に対して常時作用していても、スプール弁体20,220,320の移動に伴う衝撃は第2スプリング44により緩衝される。したがって、調圧が終了した際にスプール弁体20,220,320が急峻に移動し、スプール弁体20,220,320がハウジングやキャップ等に衝突することによって減圧弁100,300,400を構成する部材が破損してしまうことを防止することができる。
【0103】
減圧弁200,300,400は、一次圧ポート12と二次圧ポート13との連通を許容又は遮断し、ドレーンポート14と二次圧ポート13との連通を許容又は遮断するスプール弁体20,220,320と、スプール弁体20,220,320を軸方向において一方の方向に常時付勢する第1スプリング34と、スプール弁体20,220,320を軸方向において他方の方向に付勢可能な第2スプリング44と、二次圧ポート13の圧力が導かれ、軸方向において他方の方向にスプール弁体20,220,320を付勢する推力を生成する第2圧力室42と、を備え、推力が低下することによって、第1スプリング34の付勢力によりスプール弁体20,220,320が一方の方向へと移動し、軸方向におけるスプール弁体20,220,320の位置が所定の位置に到達すると、スプール弁体20,220,320を他方の方向に付勢する第2スプリング44の付勢力がスプール弁体20,220,320に対して作用する。
【0104】
この構成では、二次圧ポート13の圧力が低下して推力が低下すると、第1スプリング34の付勢力によりスプール弁体20,220,320が一方の方向へと移動することになるが、軸方向におけるスプール弁体20,220,320の位置が、所定の位置に到達すると、スプール弁体20,220,320を他方の方向に付勢する第2スプリング44の付勢力がスプール弁体20,220,320に対して作用する。
【0105】
このように、第1スプリング34の付勢力がスプール弁体20,220,320に対して常時作用していても、スプール弁体20,220,320の移動に伴う衝撃は第2スプリング44により緩衝される。したがって、調圧が終了した際にスプール弁体20,220,320が急峻に移動し、スプール弁体20,220,320がハウジングやキャップ等に衝突することによって減圧弁200,300,400を構成する部材が破損してしまうことを防止することができる。
【0106】
また、減圧弁100,200は、スプール弁体20に作用する第1スプリング34の付勢力を調節する付勢力調節部35をさらに備え、第2スプリング44は、スプール弁体20が一方の方向へと移動し、軸方向におけるスプール弁体20の位置が所定の位置に到達するまでは、軸方向において一方の方向にスプール弁体20を付勢する付勢力を生じる。
【0107】
この構成では、第2スプリング44は、軸方向におけるスプール弁体20の位置が所定の位置に到達するまでは、第1スプリング34と同様に、第2圧力室42において生成される推力に対抗する付勢力を生じる。このため、バネ定数が比較的小さい小型のスプリングを第1スプリング34として採用することが可能になるとともに、第1スプリング34の付勢力を調節する付勢力調節部35を小型化することが可能となる。
【0108】
また、減圧弁300,400の第2スプリング44は、スプール弁体220,320が一方の方向へと移動し、軸方向におけるスプール弁体220,320の位置が所定の位置に到達するまでは、スプール弁体220,320を付勢する付勢力を生じない。
【0109】
この構成では、第2スプリング44は、軸方向におけるスプール弁体220,320の位置が所定の位置に到達するまでは、スプール弁体220,320を付勢する付勢力を生じない。つまり、調圧時には、第2スプリング44の付勢力がスプール弁体220,320に対して作用することはない。このように第2スプリング44は減圧弁300,400の調圧に対して何ら影響を及ぼさないことから、減圧弁300,400を従来の設定のままで使用することができる。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0111】
100,200,300,400・・・減圧弁、10・・・ハウジング、12・・・一次圧ポート(一次圧通路)、13・・・二次圧ポート(二次圧通路)、14・・・ドレーンポート(ドレーン通路)、20,220,320・・・スプール弁体、32・・・第1圧力室、34・・・第1スプリング(第1付勢部材)、35・・・付勢力調節部、42・・・第2圧力室(圧力室)、44・・・第2スプリング(第2付勢部材)