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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025142922
(43)【公開日】2025-10-01
(54)【発明の名称】グリル及び加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20250924BHJP
【FI】
A47J37/06 366
A47J37/06 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024042546
(22)【出願日】2024-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】大脇 将太
(72)【発明者】
【氏名】林 周作
(72)【発明者】
【氏名】矢野 宏治
【テーマコード(参考)】
4B040
【Fターム(参考)】
4B040AA02
4B040AA08
4B040AB02
4B040AC02
4B040AC03
4B040AD04
4B040AE13
4B040CA02
4B040CA05
4B040CB07
4B040CB16
4B040CB30
(57)【要約】
【課題】加熱庫の清掃性に優れるグリルを提供する。
【解決手段】加熱庫20と、扉体21と、被加熱物の上面を加熱する上加熱手段22と、一対の側壁部203の外側にそれぞれ配設され、各側壁部203の外方から加熱庫20内に向かって赤外線を放射して、被加熱物の下面または側面を加熱する赤外線放射部230を有する一対の下加熱手段23と、加熱庫20内の排気ガスを排気口301から加熱庫20外に排気する排気ダクト30とを備えるグリル2において、各側壁部203は各下加熱手段23の赤外線放射部230に対向する領域に側方開口部24を有し、側方開口部24は各下加熱手段23の赤外線放射部230から放射される赤外線が透過する側方透過部26で覆われている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上壁部、一対の側壁部、底壁部、後壁部、及び前方に開口する前方開口部を有し、被加熱物を収納可能な矩形箱状の加熱庫と、
加熱庫の前方開口部を前方から開閉可能な扉体と、
加熱庫の一対の側壁部の外側にそれぞれ配設され、各側壁部の外方から加熱庫内に向かって赤外線を放射して、被加熱物の下面または側面を加熱する赤外線放射部を有する一対の下加熱手段と、
加熱庫に連設され、加熱庫内の排気ガスを加熱庫外に排気する排気口と連通する排気通路を構成する排気ダクトと、を備え、
各側壁部は、各下加熱手段の赤外線放射部に対向する領域に側方開口部を有し、
各側壁部の側方開口部は、各下加熱手段の赤外線放射部から放射される赤外線が透過する側方透過部で覆われているグリル。
【請求項2】
請求項1に記載のグリルにおいて、
一対の下加熱手段の赤外線放射部をそれぞれ、外方から覆う一対のカバー体を有し、
各カバー体は、各カバー体の下方領域または前方領域であって、各側壁部の側方開口部近傍に設けられた第1開口と、各カバー体の上方領域または後方領域であって、第1開口よりも上方に設けられた第2開口とを有するグリル。
【請求項3】
請求項2に記載のグリルにおいて、
各カバー体は、第2開口を介して排気ダクトと連通するように構成されているグリル。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のグリルにおいて、
加熱庫の底壁部は、少なくとも各側壁部の側方開口部近傍に各下加熱手段の赤外線放射部から側方透過部を透過して加熱庫内に放射される赤外線を被加熱物に向かって反射させる底反射部を有するグリル。
【請求項5】
請求項4に記載のグリルにおいて、
底反射部は、赤外線を透過する底透過部で覆われているグリル。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載のグリルにおいて、
各下加熱手段は、供給される燃料ガスを燃焼させることにより赤外線を放射する燃焼板を有する表面燃焼式のバーナからなるグリル。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載のグリルにおいて、
各下加熱手段は、電力を供給することにより赤外線を放射する発熱体を有するヒータからなるグリル。
【請求項8】
請求項7に記載のグリルにおいて、
各側壁部の外側に配設され、ヒータの発熱体から放射される赤外線を加熱庫内に向かって反射させる側方反射部を有するグリル。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載のグリルを備える加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリル及び加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱庫の左右の側壁部の内側下部にブンゼンバーナからなる一対の下火バーナを配設し、これらの下火バーナの炎孔から加熱庫の左右中央部に向かって噴出される燃焼排気により被加熱物の下面や側面を加熱するグリルを備えた加熱調理器が知られている。この種の加熱調理器では、各側壁部の下部に開設された空気導入口の上下に、各側壁部の内壁面から加熱庫の内方に向かって延びる二次空気案内板を設けることによって加熱庫の外部から各下火バーナの炎孔周辺に二次空気を導き、二次空気流により炎孔から噴出される燃焼排気を加熱庫の左右中央部まで飛ばすようにしている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-19827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、グリルを使用した加熱調理では、加熱庫内に食材からの油脂や油煙などが飛散し、加熱庫内が汚れるため、使用者が加熱庫内を掃除する必要がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1のようなグリルでは、下火バーナや二次空気案内板などの加熱庫内に突出する部品が多くなるため、清掃が必要な箇所に使用者の手が届き難く、清掃性に劣るという問題がある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するものであり、本発明の目的は、加熱庫内の清掃性に優れるグリル及び当該グリルを備える加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の第1の態様によれば、
上壁部、一対の側壁部、底壁部、後壁部、及び前方に開口する前方開口部を有し、被加熱物を収納可能な矩形箱状の加熱庫と、
加熱庫の前方開口部を前方から開閉可能な扉体と、
加熱庫の一対の側壁部の外側にそれぞれ配設され、各側壁部の外方から加熱庫内に向かって赤外線を放射して、被加熱物の下面または側面を加熱する赤外線放射部を有する一対の下加熱手段と、
加熱庫に連設され、加熱庫内の排気ガスを加熱庫外に排気する排気口と連通する排気通路を構成する排気ダクトと、を備え、
各側壁部は、各下加熱手段の赤外線放射部に対向する領域に側方開口部を有し、
各側壁部の側方開口部は、各下加熱手段の赤外線放射部から放射される赤外線が透過する側方透過部で覆われているグリルが提供される。
【0008】
上記第1の態様によれば、下加熱手段は側方透過部によって加熱庫内の調理空間と分離されているから、下加熱手段やその周辺部品への油脂や油煙などの汚れの付着を防止できる。また、上記第1の態様によれば、加熱庫内に突出する部品を低減できる。これにより、加熱庫の清掃性を向上させることができる。
【0009】
本技術の第2の態様によれば、上記第1の態様において、
一対の下加熱手段の赤外線放射部をそれぞれ、外方から覆う一対のカバー体を有し、
各カバー体は、各カバー体の下方領域または前方領域であって、各側壁部の側方開口部近傍に設けられた第1開口と、各カバー体の上方領域または後方領域であって、第1開口よりも上方に設けられた第2開口とを有する。
【0010】
上記第2の態様によれば、下加熱手段による加熱を行ったときに生ずるドラフト効果によって、カバー体内が負圧になり、第1開口を介してカバー体外からカバー体内に取り込まれた空気が第2開口を介してカバー体外に排気される冷却空気の流路がカバー体内に形成される。これにより、側方透過部を冷却することができ、側方透過部の温度上昇を抑制して、耐久性を向上させることができる。
【0011】
本技術の第3の態様によれば、上記第2の態様において、
各カバー体は、第2開口を介して排気ダクトと連通するように構成される。
【0012】
加熱調理中、排気ダクト内には加熱庫内の排気ガスが加熱庫外に排気されるドラフト効果が生じる。そして、上記第3の態様によれば、カバー体内の空気が第2開口を介して排気ダクトに排気されるから、カバー体内での負圧が大きくなり、ドラフト効果を増大させることができる。これにより、カバー体内に冷却空気が流れやすくなり、さらに側方透過部を冷却することができる。
【0013】
本技術の第4の態様によれば、上記第1~第3の態様のいずれか1つの態様において、
加熱庫の底壁部は、少なくとも各側壁部の側方開口部近傍に各下加熱手段の赤外線放射部から側方透過部を透過して加熱庫内に放射される赤外線を被加熱物に向かって反射させる底反射部を有する。
【0014】
上記第4の態様によれば、底反射部で反射された赤外線によって被加熱物の下面を効率的に加熱することができるから、加熱性能を向上させることができる。
【0015】
本技術の第5の態様によれば、上記第4の態様において、
底反射部は、赤外線を透過する底透過部で覆われる。
【0016】
上記第5の態様によれば、加熱庫の底壁部の清掃性を向上させることができる。
【0017】
本技術の第6の態様によれば、上記第1~第5の態様のいずれか1つの態様において、
各下加熱手段は、供給される燃料ガスを燃焼させることにより赤外線を放射する燃焼板を有する表面燃焼式のバーナからなる。
【0018】
上記第6の態様によれば、清掃性に優れるガスグリルを提供することができる。
【0019】
本技術の第7の態様によれば、上記第1~第5の態様のいずれか1つの態様において、
各下加熱手段は、電力を供給することにより赤外線を放射する発熱体を有するヒータからなる。
【0020】
上記第7の態様によれば、清掃性に優れる電気グリルを提供することができる。
【0021】
本技術の第8の態様によれば、上記第7の態様において、
各側壁部の外側に配設され、ヒータの発熱体から放射される赤外線を加熱庫内に向かって反射させる側方反射部を有する。
【0022】
上記第8の態様によれば、ヒータの発熱体から放射される赤外線で効率的に被加熱物を加熱することができるから、加熱性能を向上させることができる。
【0023】
本技術の第9の態様によれば、上記第1~第8の態様のいずれか1つの態様のグリルを備える加熱調理器が提供される。
【0024】
上記第9の態様によれば、清掃性に優れるグリルを搭載した加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の一例を示す概略斜視図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1に係るグリルの一例を示す要部概略斜視図である。
図3図3は、本発明の実施の形態1に係るグリルの下方部分の一例を示す要部概略斜視図である。
図4図4は、本発明の実施の形態1に係るグリルの一例を示す要部概略縦断面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態1に係るグリルの一例を示す要部概略横断面図である。
図6図6は、本発明の実施の形態2に係るグリルの下方部分の一例を示す要部概略斜視図である。
図7図7は、本発明の実施の形態2に係るグリルの一例を示す要部概略縦断面図である。
図8図8は、本発明の実施の形態2に係るグリルの一例を示す要部概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施の形態1)
以下、図面を参照しながら、本実施の形態に係るグリルを備える加熱調理器について具体的に説明する。
図1は、ビルトイン式のガスコンロに適用した本実施の形態の加熱調理器の一例を示す概略斜視図であり、図2は、グリルの要部概略斜視図であり、図3は、グリルの下方部分を示す要部概略斜視図であり、図4は、グリル周辺の要部概略縦断面図であり、図5は、グリル周辺の要部概略横断面図である。ガスコンロ1は、天板11のコンロ用開口(図示せず)から上方に臨む複数のコンロバーナ3と、加熱調理器本体であるコンロ本体10内に組み込まれたグリル2とを備える。
【0027】
グリル2は、上壁部202、左右一対の側壁部203,203、底壁部204、後壁部205、及び前方に開口する前方開口部200を有する矩形箱状の加熱庫20と、加熱庫20の前方開口部200を前方から開閉可能に被閉する扉体21とを備える。なお、本明細書では、扉体21側を正面側とし、ガスコンロ1を扉体21側からみたとき、扉体21と加熱庫20の奥側とが対向する方向を前後方向、加熱庫20の幅方向を左右方向、加熱庫20の高さ方向を上下方向という。
【0028】
加熱庫20内には、例えば、伝熱性に優れるアルミニウム製の成形体または鋳造体からなるグリルプレート4や、図示しない焼網、ココット、ダッチオーブンなどのような金属製や陶器製の調理器具が収納される。加熱調理では、これらの調理器具上または調理器具内に被調理物Fが載置または収容されて加熱される。従って、本実施の形態では、グリルプレート4及び被調理物Fが被加熱物を構成する。
【0029】
扉体21は、前後にスライド開閉するようにコンロ本体10に連結支持されている。図示しないが、扉体21の後面下部には、加熱庫20内へ向かって連結板が延設されており、連結板にはグリルプレート4の器具支持体40を下方から支持する支持枠が連結されている。これにより、扉体21を手前に引くことで、グリルプレート4が加熱庫20の前方に引き出され、扉体21を後方に押すことで、グリルプレート4が加熱庫20内に収容される。なお、煩雑化を避けるため、図4及び図5では器具支持体40は省略されている。
【0030】
加熱庫20の上壁部202には、上火バーナ(上加熱手段)22が配設されている。上火バーナ22は、下面部がセラミック製の燃焼板220で構成された表面燃焼式の全一次燃焼バーナであり、燃焼板220の下面部の略全域に多数の炎孔が形成されている。図示しないが、上火バーナ22の燃焼板220の後方位置には、イグナイタから高電圧が印加された際に火花放電する点火プラグと、火炎の有無を検知する炎検知センサとしての熱電対とが設けられている。上火バーナ22が点火されると、燃焼板220の下面部全体に火炎が形成され、上火バーナ22の燃焼板220から加熱庫20内の下方に向かって燃焼排気が噴出されるとともに、赤外線が放射されて、燃焼排気の熱や赤外線の輻射熱によりグリルプレート4やグリルプレート4上に載置された被調理物Fの上面が主として加熱される。上火バーナ22は、その後部に加熱庫20の上壁部202から右外側方に延出するベンチュリ部221を有する。図示しないが、ベンチュリ部221の外側端に開口する開口部にはガスノズルが挿入される。従って、ガスノズルから燃料ガスがベンチュリ部221の開口部内に向かって噴出されると、燃料ガスが開口部の周囲の空気とともにベンチュリ部221に吸い込まれて、燃料ガスと一次空気との混合ガスが生成され、燃焼板220に供給される。
【0031】
加熱庫20の左右の側壁部203,203にはそれぞれ、前後方向に長手の側方開口部24,24が開設されている。側方開口部24,24は、後述する下火バーナ23,23の燃焼板230,230よりも上下方向及び前後方向に大きなサイズを有する。また、側方開口部24,24は、側壁部203,203と略面一となるように赤外線が透過する側方透過部26,26で覆われている。従って、側方透過部26,26は下火バーナ23,23の燃焼板230,230と左右方向で対向しており、側方透過部26,26が設けられた側壁部203,203によって加熱庫20の左右の内壁面は略平坦面に形成されている。側方透過部26,26としては、例えば、優れた赤外線透過性を有する結晶化ガラスなどの耐熱材を用いることができる。また、側方透過部26,26は、撥油処理などの表面処理がされてもよい。
【0032】
加熱庫20の左右の側壁部203,203の外側にはそれぞれ、左右の側壁部203,203に沿って前後方向に延びる左右一対の下火バーナ(下加熱手段)23,23が配設されている。なお、左右の下火バーナ23,23は、左右対称である以外は同一の構成を有するため、下火バーナ23,23及びその周辺の構成については、一方の下火バーナ23を例に挙げて説明する。
【0033】
下火バーナ23は、前後方向に長手の略矩形状を有し、短辺が略垂直に立設する姿勢で配設されている。下火バーナ23は、上火バーナ22と同様に、側壁部203側の側面部がセラミック製の燃焼板230で構成された表面燃焼式の全一次燃焼バーナである。図示しないが、下火バーナ23の燃焼板230の後方位置には、イグナイタから高電圧が印加された際に火花放電する点火プラグと、火炎の有無を検知する炎検知センサとしての熱電対とが設けられている。下火バーナ23が点火されると、燃焼板230の側面部全体に火炎が形成され、側壁部203側に向かって燃焼排気が噴出されるとともに、赤外線が放射される。そして、下火バーナ23の燃焼板230から噴出される燃焼排気は既述した側方透過部26で遮断される一方、下火バーナ23の燃焼板230から放射される赤外線が側
方透過部26を透過して加熱庫20内に放射され、赤外線の輻射熱によりグリルプレート4やグリルプレート4上に載置された被調理物Fの下面または側面が主として加熱される。従って、本実施の形態では、下火バーナ23の燃焼板230が赤外線放射部を構成する。下火バーナ23は、その後部に後方に延出するベンチュリ部231を有する。図示しないが、ベンチュリ部231の後端に開口する開口部にはガスノズルが挿入される。従って、ガスノズルから燃料ガスがベンチュリ部231の開口部内に向かって噴出されると、燃料ガスが開口部の周囲の空気とともにベンチュリ部231に吸い込まれて、燃料ガスと一次空気との混合ガスが生成され、燃焼板230に供給される。なお、下火バーナ23は、燃焼板230がグリルプレート4の下面に向くように、下火バーナ23の上端が下端よりも外側方に位置する傾斜した姿勢で配設されてもよい。
【0034】
加熱庫20の後壁部205には、加熱庫20内の調理空間と連通する排気ダクト30が連設されている。排気ダクト30は、加熱庫20の上壁部202に連設されてもよい。排気ダクト30は、燃焼排気や食材から生じる油煙を含む排気ガスをガスコンロ1の外部に排気する上端の排気口301と連通しており、排気通路300を構成する。排気ダクト30は、加熱庫20の後壁部205の上部から天板11の下面側に向かって斜め上方に延設されており、排気口301は天板11の上面に開設されたグリル用開口14に下方から臨んでいる。また、排気ダクト30を形成する左右のダクト側壁部(図示せず)には、外側方に開口するダクト開口部310(図3参照)が開設されている。ダクト開口部310は、後述するカバー体5の補助ダクト部53の補助開口部530と接続されている。
【0035】
図2図3、及び図5に示すように、加熱庫20の側壁部203の外側には、下火バーナ23の燃焼板230が形成されている領域を外方から所定距離、離間して覆うカバー体5が配設されている。カバー体5は、側壁部203側の周縁部の所定箇所で加熱庫20の側壁部203と接続されている。従って、加熱庫20の側壁部203の外側にはカバー体5により加熱庫20の外側方に向かって凹む凹室が形成されており、加熱庫20の側方透過部26が設けられた側壁部203と側壁部203の外側に配設されたカバー体5の前方部分とによって加熱庫20内の調理空間と分離された下火バーナ23の燃焼板230を収容する収容部51が画成されている。なお、カバー体5は上壁部202や底壁部204から連設されてもよい。
【0036】
カバー体5は、収容部51を形成する上壁511、下壁512、前壁513、後壁514、及び側壁515を有する。また、カバー体5の下方領域を形成する下壁512には、下方に開口するスリット状の下方開口510(第1開口)が形成されている。また、カバー体5の後方領域を形成する後壁514の上部には、後方に開口する矩形状の後方開口520(第2開口)が形成されている。さらに、カバー体5は、後方開口520の周縁から後方に向かって延びる補助上壁531、補助下壁532、補助後壁533、及び補助側壁534と、排気ダクト30側に向かって開口する補助開口部530とを有する補助ダクト部53を備える。この補助開口部530は、既述した排気ダクト30のダクト開口部310と接続されている。従って、カバー体5の収容部51は、後方開口520や補助ダクト部53を介して排気ダクト30と連通している。
【0037】
下火バーナ23を燃焼させると、下火バーナ23の燃焼板230から噴出される燃焼排気が後方開口520から排気ダクト30へ排気されるドラフト効果が生じる。このため、カバー体5の内部が負圧となり、下方開口510からカバー体5の収容部51内にコンロ本体10内の空気が取り込まれる。また、上火バーナ22を燃焼させると、加熱庫20内の燃焼排気を含む排気ガスが排気ダクト30を通じてガスコンロ1の外部へ排気されるドラフト効果が排気ダクト30内に生じる。このため、補助ダクト部53を介して排気ダクト30と連通するカバー体5の内部はさらに負圧となって、ドラフト効果が増大し、下方開口510からカバー体5の収容部51内にコンロ本体10内の空気が円滑に取り込まれ
る。そして、カバー体5の収容部51内に取り込まれた空気及び下火バーナ23の燃焼板230から噴出される燃焼排気は、後方開口520及び補助ダクト部53を通って排気ダクト30に排気され、さらに加熱庫20内の排気ガスとともに、排気口301からガスコンロ1の外部に排気される。その結果、下方開口510から収容部51内を通り、後方開口520及び補助ダクト部53を介して排気ダクト30に繋がる冷却空気の流路がカバー体5内に形成される。これにより、燃焼板230に対向する側方透過部26を効率的に冷却することができる。また、カバー体5によって下火バーナ23の燃焼排気がコンロ本体10内へ漏出し難くなるから、下火バーナ23のベンチュリ部231の開口部や上火バーナ22のベンチュリ部221の開口部からの燃焼排気の吸い込みも低減され、下火バーナ23や上火バーナ22の燃焼不良も抑制することができる。なお、後方開口520が下方開口510よりも上方に位置していれば、下方開口510及び後方開口520はそれぞれ複数、設けられてもよい。また、後方開口520は、好ましくは、下方開口510よりも後方に設けられる。また、下方開口510はカバー体5の前方領域(例えば、前壁513や側壁515の下部)に設けられてもよいし、下方領域と前方領域の両領域に設けられてもよい。また、後方開口520はカバー体5の上方領域(例えば、上壁511や側壁515の上部)に設けられてもよいし、後方領域と上方領域の両領域に設けられてもよい。
【0038】
加熱庫20の底壁部204の上面には、好ましくは、側方透過部26を透過して加熱庫20内に放射される下火バーナ23からの赤外線をグリルプレート4の下面に向かって反射させる底反射部60が形成される。底反射部60は、例えば、高反射率を有するアルミニウムなどの金属板を底壁部204上に積層することによって形成してもよいし、底壁部204をBA(Bright Annealed)材で形成してもよい。なお、底反射部60を形成する場合は、好ましくは、底反射部60は少なくとも下火バーナ23の燃焼板230の前後方向の長さに対応する範囲の側方開口部24近傍に設けられる。
【0039】
底反射部60の上面は、好ましくは、底透過部61で覆われる。底透過部61は、例えば、結晶化ガラスからなる耐熱材を底反射部60上に積層することよって形成することができる。底反射部60の上面を底透過部61で被覆することによって、側方透過部26を透過して加熱庫20内に放射される下火バーナ23からの赤外線を底反射部60で反射させることができるとともに、清掃性を向上させることができる。底反射部60の上面は、撥油処理などの表面処理がされてもよい。
【0040】
以上詳細に説明したように、本実施の形態のグリル2によれば、下火バーナ23が側方透過部26によって加熱庫20内の調理空間と分離されているから、下火バーナ23やその周辺部品への油脂や油煙などの汚れの付着を防止できる。また、本実施の形態によれば、下火バーナ23や二次空気案内板などの加熱庫20内に突出する部品を低減できる。これにより、加熱庫20内の清掃性に優れるグリル2を提供することができる。
【0041】
また、従来の加熱庫内に下火バーナが配設され、側壁部に空気導入口が開設されているグリルでは、加熱調理中、食材から飛散する油脂や油煙などによって、加熱庫内に露出している下火バーナの炎孔の一部が閉塞したり、側壁部に開設された空気導入口が部分的に閉塞したりする。その結果、火炎の形状が崩れたり、加熱庫内に導入される二次空気の量が減少したりして、燃焼排気が加熱庫の左右中央部まで十分に届かず、加熱性能が低下しやすい。しかしながら、本実施の形態によれば、下火バーナ23の燃焼板230は側方透過部26によって加熱庫20内の調理空間と分離されているから、加熱調理による下火バーナ23への汚れの付着を確実に防止できる。さらに、本実施の形態によれば、加熱庫20内の清掃性を向上させることができるから、側方透過部26の汚れによる加熱性能の低下も抑えることができる。これにより、長期に亘って安定な加熱性能を確保することができる。
【0042】
また、従来のブンゼンバーナを下火バーナに用いたグリルでは、炎孔から加熱庫の内方に向かって略水平に火炎が延び、側壁部に設けられた空気導入口からの二次空気によって燃焼排気が火炎の延びる方向に沿って流れるため、火炎と調理器具との干渉が生じやすく、ブンゼンバーナの燃焼が悪化しやすい。また、ブンゼンバーナの燃焼排気による加熱は強い指向性を有するため、グリルプレート4やダッチオーブンなどの調理器具を用いた場合、燃焼排気が当たりやすい部分は燃焼排気が当たり難い部分よりも高温となる。その結果、調理器具に温度分布が生じやすく、被加熱物が不均一に加熱されて、加熱性能に劣るだけでなく、調理器具の局所的な劣化が進みやすい。しかしながら、本実施の形態によれば、短い火炎が形成され、赤外線を放射する燃焼板230を有する表面燃焼式の下火バーナ23が用いられ、また下火バーナ23から噴出される燃焼排気は側方透過部26で遮断され、放射状に広がる赤外線の輻射熱により調理器具を加熱することができるから、下火バーナ23の燃焼の悪化を抑制できるとともに、ブンゼンバーナを用いる場合よりも調理器具の温度分布が抑えられ、均一に被加熱物を加熱することができ、優れた加熱性能を得ることができる。さらに、下火バーナ23の火炎や燃焼排気が調理器具に接触しないから、調理器具の局所的な劣化も抑えることができ、調理器具の耐久性も向上することができる。
【0043】
また、本実施の形態によれば、下方開口510及び後方開口520を有するカバー体5によって、冷却空気の流路がカバー体5内に形成されるから、側方透過部26を冷却することができる。これにより、側方透過部26の温度上昇を抑制して、耐久性を向上させることができる。特に、本実施の形態によれば、カバー体5は排気ダクト30と連通しているから、カバー体5内に冷却空気が流れやすくなり、さらに側方透過部26を冷却することができる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、底反射部60で反射された赤外線によって被加熱物の下面を効率的に加熱することができるから、加熱性能を向上させることができる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、底反射部60の上面を覆う底透過部61によって、加熱庫20の底壁部204の清掃性を向上させることができる。
【0046】
(実施の形態2)
本実施の形態のグリルは、下加熱手段として、下火バーナの代わりに、赤外線を放射するヒータが用いられている以外は、実施の形態1のグリルと同様の構成を有する。このため、実施の形態1と同一の構成については、同一の引用番号を付して説明を省略し、異なる部分を主として説明する。
【0047】
図6図8に示すように、本実施の形態のグリル2aの加熱庫20の左右の側壁部203,203には、実施の形態1と同様に、前後方向に長手の側方開口部24,24が開設されており、側方開口部24,24は、後述するヒータ23a,23aの発熱体230b,230bよりも上下方向及び前後方向に大きなサイズを有する。また、側方開口部24は、側壁部203,203と略面一となるように赤外線が透過する側方透過部26,26で覆われている。側方透過部26,26は、ヒータ23a,23aの発熱体230b,230bと左右方向で対向している。
【0048】
加熱庫20の左右一対の側壁部203,203の外側にはそれぞれ、側壁部203,203に沿って前後方向に延びる左右一対のヒータ23aが配設されている。なお、左右のヒータ23a,23aは、左右対称である以外は同一の構成を有するため、ヒータ23a,23a及びその周辺の構成については、一方のヒータ23aを例に挙げて説明する。
【0049】
ヒータ23aは、側壁部203に沿って前後方向に延びる円筒状の筒部230aと、筒
部230aに収納された発熱体230bとを備える。筒部230aとしては、例えば、優れた赤外線透過性を有する結晶化ガラスまたは遠赤外線放射量の高いセラミックからなる耐熱管を用いることができる。また、発熱体230bとしては、例えば、従来公知の高分子フィルムやフィラーを添加した高分子フィルムを熱処理することにより得られるグラファイトフィルムを用いることができる。
【0050】
筒部230aの両端部は封止されており、筒部230a内には、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスが充填されている。図示しないが、発熱体230bの両端部にはそれぞれリード線の一端部が接続され、リード線の他端部は筒部230aから外部に引き出されている。リード線に対して電力を供給することによって、発熱体230bに電流が流れ、発熱体230bの抵抗により熱が発生する。このとき、発熱体230bから赤外線が放射される。そして、側方透過部26を透過して加熱庫20内に放射される赤外線の輻射熱により、グリルプレート4やグリルプレート4上に載置された被調理物Fの下面または側面が主として加熱される。従って、本実施の形態では、発熱体230bが赤外線放射部を構成する。
【0051】
加熱庫20の側壁部203の外側には、ヒータ23aの発熱体230bが形成されている領域を外方から所定距離、離間して覆うカバー体5aが配設されている。カバー体5aは、側壁部203側の周縁部の所定箇所で加熱庫20の側壁部203と接続されている。従って、加熱庫20の側方透過部26が設けられた側壁部203と側壁部203の外側に配設されたカバー体5aとによって、加熱庫20内と分離されたヒータ23aの発熱体230bを収容する収容部51aが画成されている。
【0052】
カバー体5aは、半円筒状の側壁515aと、側壁515aの上端から側壁部203に向かって延びる上壁511aと、側壁515aの下端から側壁部203に向かって延びる下壁512aと、側壁515aの前端から側壁部203に向かって延びる前壁513aと、側壁515aの後端から側壁部203に向かって延びる後壁514aとを有する。カバー体5aの下方領域を形成する下壁512aには、前後方向に所定の間隔で下方に開口する複数の矩形状の下方開口510a(第1開口)が形成されている。また、カバー体5aの後方領域を形成する後壁514aの上部には後方に開口する矩形状の後方開口520a(第2開口)が形成されている。さらに、カバー体5aは、後方開口520aの周縁から後方に向かって延びる補助上壁531a、補助下壁532a、補助後壁533a、及び補助側壁534aと、排気ダクト30側に向かって開口する補助開口部530aとを有する補助ダクト部53aを備える。この補助開口部530aは、実施の形態1と同様に、排気ダクト30のダクト開口部310と接続されている。従って、カバー体5aの収容部51aは、後方開口520aや補助ダクト部53aを介して排気ダクト30と連通している。
【0053】
カバー体5aの外側方に向かって突出する側壁515aの内壁面には、好ましくは、ヒータ23aから放射される赤外線を加熱庫20内に向かって反射する側方反射部63が形成される。側方反射部63としては、実施の形態1の底反射部60と同様に、例えば、高い赤外線の反射率を有するアルミニウムなどの金属板を側壁515aに積層して形成してもよいし、側壁515aをBA材で形成してもよい。
【0054】
ヒータ23aに電力が供給されて、発熱体230bが発熱すると、ヒータ23aの発熱体230bから発生する熱気が後方開口520aから排気ダクト30へ排気されるドラフト効果が生じる。このため、カバー体5a内が負圧となり、下方開口510aからカバー体5aの収容部51a内にコンロ本体10内の空気が取り込まれる。また、上火バーナ22を燃焼させると、加熱庫20内の燃焼排気を含む排気ガスが排気ダクト30を通じてガスコンロ1の外部へ排気されるドラフト効果が生じる。このため、補助ダクト部53aを介して排気ダクト30と連通するカバー体5a内はさらに負圧となって、ドラフト効果が
増大し、下方開口510aからカバー体5aの収容部51a内にコンロ本体10内の空気が円滑に取り込まれる。そして、カバー体5aの収容部51a内に取り込まれた空気は、ヒータ23aの発熱体230bから発生する熱気とともに補助ダクト部53aを通って排気ダクト30に排気され、加熱庫20内の排気ガスとともに、排気口301からガスコンロ1の外部に排気される。その結果、下方開口510aから収容部51a内を通り、後方開口520a及び補助ダクト部53aを介して排気ダクト30に繋がる冷却空気の流路がカバー体5a内に形成される。これにより、ヒータ23a自体やヒータ23aの筒部230aに対向する側方透過部26を効率的に冷却することができる。
【0055】
加熱庫20の底壁部204の上面には、実施の形態1と同様に、好ましくは、側方透過部26を透過して加熱庫20内に放射されるヒータ23aからの赤外線をグリルプレート4の下面に向かって反射させる底反射部60が形成される。また、実施の形態1と同様に、底反射部60の上面は、好ましくは、底透過部61で覆われる。
【0056】
以上詳細に説明したように、本実施の形態のグリル2aによれば、実施の形態1と同様に、ヒータ23aが側方透過部26によって加熱庫20内の調理空間と分離されているから、ヒータ23aやその周辺部品への油脂や油煙などの汚れの付着を防止できる。また、本実施の形態によれば、加熱庫20内に突出する部品を低減できる。これにより、加熱庫20内の清掃性に優れるグリル2aを提供することができる。
【0057】
また、本実施の形態によれば、加熱庫20内の清掃性を向上させることができるから、側方透過部26の汚れによる加熱性能の低下も抑えることができる。これにより、長期に亘って安定な加熱性能を確保することができる。
【0058】
また、本実施の形態によれば、放射状に広がる赤外線の輻射熱により調理器具を加熱することができるから、ブンゼンバーナを用いる場合よりも調理器具の温度分布が抑えられ、均一に被加熱物を加熱することができ、優れた加熱性能を得ることができる。また、ヒータ23aからは赤外線のみが放射されるから、調理器具の局所的な劣化も抑えることができ、調理器具の耐久性も向上することができる。
【0059】
また、本実施の形態によれば、側方反射部63によってヒータ23aから放射される赤外線で効率的に被加熱物を加熱することができるから、加熱性能を向上させることができる。特に、半円筒状の側方反射部63がヒータ23aの外方を覆っているから、ヒータ23aから上方、下方、及び外側方に向かって放射状に広がる赤外線を加熱庫20内に反射させることができる。
【0060】
(その他の実施の形態)
(1)上記実施の形態では、赤外線を放射する下加熱手段が用いられている。しかしながら、本発明では、遠赤外線を放射する下加熱手段を用いてもよい。
【0061】
(2)上記実施の形態では、上加熱手段として全一次燃焼の上火バーナが用いられている。しかしながら、本発明では、上加熱手段として他のバーナを用いてもよいし、ヒータを用いてもよい。
【0062】
(3)上記実施の形態では、赤外線照射部を含む下加熱手段の一部を外方から覆うようにカバー体が設けられている。しかしながら、本発明では、下加熱手段の全体を外方から覆うようにカバー体を設けてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 ガスコンロ
2 グリル
4 グリルプレート
5,5a カバー体
20 加熱庫
21 扉体
22 上火バーナ
23 下火バーナ
23a ヒータ
24 側方開口部
26 側方透過部
30 排気ダクト
60 底反射部
61 底透過部
63 側方反射部
203 側壁部
204 底壁部
230 燃焼板
230b 発熱体
510,510a 下方開口
520,520a 後方開口
F 被調理物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8