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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014304
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】キャニスタ
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
F02M25/08 311F
F02M25/08 311A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116771
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】浅野 輝
【テーマコード(参考)】
3G144
【Fターム(参考)】
3G144BA20
3G144GA14
3G144GA15
3G144GA16
(57)【要約】
【課題】キャニスタ内における流体の流れがスムーズになるよう促す。
【解決手段】キャニスタは、燃料蒸気を吸着する吸着材が配置された複数の室と、ケース部材と、流入ポートと、大気ポートと、流出ポートとを備える。ケース部材は、複数の室のうちの1つである主室を形成し、流入ポート及び流出ポートは、主室の第1端部に設けられる。ケース部材は、主室における第1端部の周辺の領域を形成する壁状の部位である少なくとも1つの縮小部を有する。縮小部は、主室における流体の流れ方向に直交する断面の面積を、第1端部に向かうに従い縮小する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを有する車両に搭載されるよう構成されたキャニスタであって、
燃料蒸気を吸着する吸着材が配置された複数の室と、
前記複数の室のうちの1つである主室を形成するケース部材と、
前記主室の第1端部に設けられた部位であって、前記車両の燃料タンクから前記主室に燃料蒸気を流入させるよう構成された部位である流入ポートと、
大気に開放されるよう構成され、前記複数の室のうちの1つである副室に設けられた大気ポートと、
前記主室の前記第1端部に設けられた部位であって、前記大気ポートから流入した前記大気により、前記吸着材に吸着した燃料蒸気を前記エンジンに向けて流出させるよう構成された部位である流出ポートと、を備え、
前記ケース部材は、前記主室における前記第1端部の周辺の領域を形成する壁状の部位である少なくとも1つの縮小部を有し、
前記縮小部は、前記主室における流体の流れ方向に直交する断面の面積を、前記第1端部に向かうに従い縮小するよう構成されている
キャニスタ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャニスタであって、
前記縮小部は、前記主室における前記流入ポートが設けられた前記第1端部の周辺の領域を形成する壁状の部位であり、該領域の前記断面を、前記流入ポートに向かうに従い縮小するよう構成されている
キャニスタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のキャニスタであって、
前記縮小部は、前記主室における前記流出ポートが設けられた前記第1端部の周辺の領域を形成する壁状の部位であり、該領域の前記断面を、前記流出ポートに向かうに従い縮小するよう構成されている
キャニスタ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のキャニスタであって、
前記縮小部は、前記流れ方向に対し傾斜した部位を有し、前記部位は、前記主室における前記第1端部の周辺の領域を囲む
キャニスタ。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のキャニスタであって、
前記縮小部は、当該縮小部が設けられた前記第1端部を通過する線であって、前記流れ方向に延びる線である軸線を含む断面である軸線断面において、直線状に延びる
キャニスタ。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のキャニスタであって、
前記主室には、粒状の吸着材が配置され、
前記縮小部の内周面の付近に、所定の形状を有する少なくとも1つの空隙形成部が設けられている
キャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、パージの際に大気を流入させるための大気ポートに隣接する第1吸着室と、第2吸着室と、第1及び第2吸着室の間に位置する空間室とが一列に配置されたキャニスタが知られている。該キャニスタでは、パージ用の空気が空間室を通過する際、その流速が低減するため、第2吸着室の吸着材とパージ用の空気との接触時間が長くなる。これにより、燃料蒸気の脱離効率が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-019572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、燃料タンクに連通するチャージポートと、パージの際に燃料蒸気を排出するパージポートとが設けられた主室は、容積が大きいため、空間室によりパージ用の空気の流速が低下した結果、主室では該空気の流れが滞る恐れがある。
【0005】
本開示の一態様では、キャニスタ内における流体の流れがスムーズになるよう促すのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、エンジンを有する車両に搭載されるよう構成されたキャニスタであって、複数の室と、ケース部材と、流入ポートと、大気ポートと、流出ポートと、を備える。室は、燃料蒸気を吸着する吸着材が配置される。ケース部材は、複数の室のうちの1つである主室を形成する。流入ポートは、主室の第1端部に設けられた部位であって、車両の燃料タンクから主室に燃料蒸気を流入させるよう構成された部位である。大気ポートは、大気に開放されるよう構成され、複数の室のうちの1つである副室に設けられる。流出ポートは、主室の第1端部に設けられた部位であって、大気ポートから流入した大気により、吸着材に吸着した燃料蒸気をエンジンに向けて流出させるよう構成された部位である。ケース部材は、主室における第1端部の周辺の領域を形成する壁状の部位である少なくとも1つの縮小部を有する。縮小部は、主室における流体の流れ方向に直交する断面の面積を、第1端部に向かうに従い縮小するよう構成されている。
【0007】
上記構成によれば、縮小部により、主室における第1端部の周辺での流体の流れが改善され得る。このため、キャニスタ内における流体の流れがスムーズになるよう促すことができる。
【0008】
本開示の一態様では、縮小部は、主室における流入ポートが設けられた第1端部の周辺の領域を形成する壁状の部位であり、該領域の断面を、流入ポートに向かうに従い縮小するよう構成されていてもよい。
【0009】
上記構成によれば、縮小部により、主室における流入ポート周辺の領域での流体の流れが改善され得る。このため、キャニスタ内における流体の流れがスムーズになるよう促すことができる。
【0010】
本開示の一態様では、縮小部は、主室における流出ポートが設けられた第1端部の周辺の領域を形成する壁状の部位であり、該領域の断面を、流出ポートに向かうに従い縮小するよう構成されていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、縮小部により、主室における流出ポート周辺の領域での流体の流れが改善され得る。このため、パージの際、キャニスタに蓄積されていた燃料蒸気が流出ポートからスムーズに流出するよう促すことができ、脱離性能が向上する。
【0012】
本開示の一態様では、縮小部は、流れ方向に対し傾斜した部位を有し、該部位は、主室における第1端部の周辺の領域を囲んでもよい。
上記構成によれば、縮小部により、主室における第1端部の周辺での流体の流れがより一層改善され得る。このため、キャニスタ内における流体の流れがより一層スムーズになるよう促すことができる。
【0013】
本開示の一態様では、縮小部は、当該縮小部が設けられた第1端部を通過する線であって、流れ方向に延びる線である軸線を含む断面である軸線断面において、直線状に延びてもよい。
【0014】
上記構成によれば、縮小部により、主室における第1端部の周辺の領域での流体の流れが改善され得る。このため、キャニスタ内における流体の流れがスムーズになるよう促すことができる。
【0015】
本開示の一態様では、主室には、粒状の吸着材が配置されてもよい。縮小部の内周面の付近に、所定の形状を有する少なくとも1つの空隙形成部が設けられていてもよい。
上記構成によれば、空隙形成部と、該空隙形成部の周辺に位置する粒状の吸着材との間に空隙が形成され易くなる。このため、縮小部の内側の通気抵抗を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】キャニスタにおける流体の流れ方向に沿った断面図である。
図2】変形例1の縮小部における流体の流れ方向に沿った断面図である。
図3】変形例1の縮小部における流体の流れ方向に沿った断面図である。
図4】変形例2の縮小部における流体の流れ方向に沿った断面図である。
図5】変形例3の縮小部における流体の流れ方向に沿った断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0018】
[1.キャニスタの構成]
本実施形態のキャニスタ1は、車両に搭載される(図1参照)。キャニスタ1は、外周面を形成する樹脂製のケース部材10を有し、ケース部材10の内部には、主室20及び副室30が設けられる。これらの室には、燃料蒸気を吸着するための吸着材4が配置される。なお、キャニスタ1の室の数は、例えば、3以上であっても良い。
【0019】
吸着材4とは、例えば、粒状又は粉状の活性炭であってもよいし、繊維状の活性炭の集塊や、活性炭を含むハニカムカーボンであってもよい。また、吸着材4は、活性炭に限らず、燃料蒸気を吸着可能な様々な材料で構成され得る。
【0020】
ケース部材10の端部には、流入ポート11、流出ポート12、及び、大気ポート13が設けられている。以後、キャニスタ1のケース部材10における流入ポート11、流出ポート12、及び、大気ポート13が設けられた側を、ポート側と記載する。また、ケース部材10は、ポート側の反対側に開口を有している。該開口は、蓋部材14により閉鎖されている。以後、ポート側の反対側(換言すれば、蓋部材14が設けられた側)を、蓋側と記載する。
【0021】
[2.主室]
主室20は、ポート側から蓋側に延びる略直方体形状の空間を形成しており、ポート側の端部(以後、第1端部F)には、主室20とキャニスタ1の外部とを繋ぐ流入ポート11及び流出ポート12が設けられている(図1参照)。なお、主室20内の空間の形状は、略直方体形状に限らず、例えば、略円柱状であってもよい。また、主室20の蓋側の端部(以後、第2端部S)は、連通路15に繋がっている。主室20では、燃料蒸気及び後述するパージエア(以後、流体とも記載)は、第1端部Fと第2端部Sとが対面する方向に沿って流れる。主室20は、ケース部材10により形成されており、本体部21と、2つの縮小部22とを備える。
【0022】
本体部21は、主室20の第2端部Sからポート側に延びており、主室20を側方から囲む壁状の部位である。
2つの縮小部22は、本体部21のポート側の端部からポート側に広がり、主室20を形成する壁状の部位である。各縮小部22は、主室20における流体の流れ方向に直交する断面(以後、直交断面)の面積を、ポート側(換言すれば、第1端部F側)に向かうに従い縮小するよう構成されている。2つの縮小部22は、それぞれ、流入ポート11の周辺と、流出ポート12の周辺とに対応して設けられ、主室20における対応するポートの周辺の領域を側方から囲み、該領域の直交断面を、対応するポートに向かうに従い縮小する。
【0023】
また、2つの縮小部22は、本体部21のポート側の端部に、流体の流れ方向に直交する向き、より詳しくは、主室20と副室30とが並ぶ方向に沿って並んで設けられる。主室20の第1端部Fは、2つの縮小部22のポート側の端部により構成される。各縮小部22の端部(換言すれば、各第1端部F)には、それぞれ、流入ポート11及び流出ポート12が設けられている。
【0024】
主室20における各第1端部Fには、フィルタ23が設けられていると共に、第2端部Sには、フィルタ24が配置されている。そして、ポート側の2つのフィルタ23と、蓋側のフィルタ24との間には、吸着材4が配置されている。また、蓋側のフィルタ24と連通路15との間には、透過性を有する多孔板25が配置されており、多孔板25と蓋部材14との間には、コイルばね16が配置されている。コイルばね16は、多孔板25をポート側に向けて押し付けている。
【0025】
[3.副室]
副室30は、主室20に隣接しており、主室20よりも容積が小さく、蓋側からポート側に伸びる細長い円柱状の形状を有する(図1参照)。なお、副室30の形状は、円柱状に限らず、例えば、角柱状であってもよい。副室30のポート側の端部(以後、第1端部F)には、副室30とキャニスタ1の外部とを繋ぐ大気ポート13が設けられている。副室30の第1端部Fと蓋側の端部(以後、第2端部S)とには、それぞれ、フィルタ31,32が配置されており、フィルタ31,32の間には、吸着材4が配置されている。また、副室30の第2端部Sは連通路15に繋がっており、蓋側のフィルタ32と連通路15との間には、多孔板33が配置されている。また、主室20と同様、多孔板33は、当該多孔板33と蓋部材14との間のコイルばね17により、ポート側に向けて押されている。
【0026】
また、連通路15は、蓋部材14に沿って設けられ、主室20と副室30とを繋ぐ。このため、キャニスタ1の内部では、流体は、連通路15を介して主室20と副室30とを往来できる。
【0027】
また、副室30においても、主室20と同様、流体は、第1端部Fと第2端部Sとが対面する方向に沿って流れる。
[4.ポート]
流入ポート11は、車両のエンジンの燃料タンクに接続される(図1参照)。燃料タンクにて生じた燃料蒸気は、流入ポート11を介してキャニスタ1の内部に流入し、各室の吸着材4に吸着する。これにより、キャニスタ1の内部に燃料が蓄積される。
【0028】
また、流出ポート12は、車両のエンジンの吸気管に接続されていると共に、大気ポート13は、車両の外部に繋がっており、大気に開放されている。そして、エンジンの吸気負圧により、大気ポート13を介して大気(換言すれば、パージエア)がキャニスタ1の内部に流入する。パージエアの流入により、吸着材4に吸着した燃料蒸気が脱離し、脱離した燃料蒸気は、パージエアと共に流出ポート12から吸気管に向けて流出する。これにより、吸着材4に吸着していた燃料蒸気を除去するパージが行われ、吸着材4が再生される。
【0029】
[5.縮小部の詳細]
各縮小部22は、第1端部Fに隣接して設けられ、一例として、テーパ状に形成される(図1参照)。具体的には、各縮小部22の直交断面は、略円形となっている。無論、これに限らず、縮小部22の直交断面の形状は、略円形以外の形状、例えば、略楕円形や略多角形等であってもよい。また、各縮小部22の軸線断面は、ポート側に向かうに従い軸線Aに接近するように流体の流れ方向に対し傾斜しつつ、直線状に延びる。縮小部22における流体の流れ方向に対し傾斜した部位は、主室20における当該縮小部22が設けられた第1端部Fの周辺の領域を囲むように形成される。なお、軸線断面とは、軸線Aに平行であり、且つ、軸線Aを含む断面を意味する。また、軸線Aとは、縮小部22に対応する流入ポート11又は流出ポート12(換言すれば、第1端部F)を通過し、且つ、流体の流れ方向に延びる仮想的な直線である。
【0030】
なお、縮小部22は、流入ポート11及び流出ポート12のうちの一方にのみ対応して設けられていてもよい。この場合、縮小部22が設けられていない流入ポート11又は流出ポート12の周辺の領域は、直交断面の形状が略一定である(換言すれば、略真っ直ぐに延びる)筒状の部位により囲まれてもよい。
【0031】
[6.変形例1]
縮小部22は、流入ポート11及び流出ポート12が設けられた第1端部Fから離れた位置に設けられてもよい(図2参照)。具体的には、例えば、第1端部Fの周辺に、縮小部22と直線部26とが設けられてもよい。
【0032】
縮小部22は、テーパ状であり、一例として、蓋側及びポート側の端部には丸みが形成されている。
直線部26は、軸線断面において流体の流れ方向に沿って延びる部位である。つまり、直線部26は、略真っ直ぐに延びる筒状となっている。直線部26の直交断面は、略一定であり、主室20の第1端部Fをなす端面と略同一の形状となっている。また、直線部26は、第1端部Fから蓋側に延び、縮小部22は、直線部26における蓋側の端部に設けられる。そして、縮小部22の蓋側の端部は、本体部21に接続される。
【0033】
さらに、縮小部22の形状は、テーパ状に限らず、適宜定められ得る。また、第1端部Fの周辺には、複数の縮小部22が設けられてもよい。具体的には、図3に示すように、一例として、縮小部22A,22Bは、流体の流れ方向に略直交する向きに広がる段差状の部位であってもよい。つまり、縮小部22A,22Bにおける流体の流れ方向に対する傾斜は、略90°であってもよい。
【0034】
また、図3に示す様に、第1端部Fの周辺には、2つの段差状の第1及び第2縮小部22A,22Bと、第1~第3直線部26A~26Cとが設けられてもよい。すなわち、主室20の第1端部Fから、蓋側に延びるように第1直線部26Aが設けられ、第1直線部26Aにおける蓋側の端部に、第1縮小部22Aが設けられる。さらに、第1縮小部22Aの外周側の端部から蓋側に延びるように第2直線部26Bが設けられ、第2直線部26Bにおける蓋側の端部に、第2縮小部22Bが設けられる。さらに、第2縮小部22Bの外周側の端部から蓋側に延びるように第3直線部26Cが設けられ、第3直線部26Cの蓋側の端部は、本体部21に接続される。
【0035】
[7.変形例2]
縮小部22は、流入ポート11及び流出ポート12に対応して設けられていてもよい(図4参照)。つまり、主室20には、1つの縮小部22が設けられており、縮小部22は、主室20における流入ポート11及び流出ポート12が設けられた1つの第1端部Fから、蓋側に延びるように設けられてもよい。
【0036】
図4では、一例として、縮小部22はテーパ状となっており、第1端部Fに隣接して設けられる。しかし、縮小部22の形状、位置、及び、数は、適宜定められ得る。すなわち、変形例1と同様、縮小部22は、第1端部Fから離れて設けられてもよいし、段差状の形状であってもよい。また、変形例1と同様、第1端部Fの周辺には、直線部と共に複数の縮小部22が設けられていてもよい。
【0037】
[8.変形例3]
主室20に粒状の吸着材4を配置しつつ、縮小部22の内周面の付近に、所定の形状を有する少なくとも1つの空隙形成部が設けてもよい。なお、粒状の吸着材4とは、例えば、粒状の活性炭であるペレットであってもよい。ペレットは、例えば、略円柱状又は球状等、様々な形状を有し得る。また、主室20に2つの縮小部22が設けられている場合には、空隙形成部は、2つの縮小部22の双方又は一方に設けられ得る。
【0038】
具体的には、一例として、図5に示す様に、複数の空隙形成部27は、テーパ状の縮小部22の内周面から、該縮小部22に隣接するポートの軸線Aに向かって突出するように設けられてもよい。各空隙形成部27は、流体の流れ方向に沿って延び、流体の流れ方向に直交する断面が、一例として長方形状となっている。つまり、各空隙形成部27は、板状となっている。また、各空隙形成部27は、該軸線Aの周りを周回するように、略一定の間隔を開けて並ぶ。また、複数の空隙形成部27は、縮小部22及びケース部材10と同様に樹脂製であり、縮小部22ひいてはケース部材10と一体に形成されてもよい。
【0039】
無論、各空隙形成部27の形状及び配置態様は、適宜定められる。具体的には、例えば、各空隙形成部27は、縮小部22の内周面から突出し、流体の流れ方向に延びるリブ状の部位であってもよい。また、各空隙形成部27は、例えば、流体の流れ方向とは異なる方向に延びていてもよい。また、各空隙形成部27は、縮小部22の内周面から突出する棒状の部位であってもよい。各空隙形成部27は、軸線Aの周りを周回することなく、内周面における特定の場所に設けられてもよい。
【0040】
また、縮小部22に隣接して直線部26が設けられている場合であれば、各空隙形成部27は、縮小部22と直線部26とに跨るように設けられていてもよい。
また、各空隙形成部27の頂部は、正面領域20Aの境界に沿って延びる。なお、正面領域20Aとは、主室20における流出ポート12又は流出ポート12が設けられた第1端部Fをなす端面から、流体の流れ方向に沿って蓋側に延びる領域を意味する。正面領域20Aは、伸長方向に直交する断面が端面と略同一の形状である柱状の領域となる。無論、これに限らず、各空隙形成部27の頂部の形状は、適宜定められ得る。
【0041】
また、複数の空隙形成部27は、縮小部22とは別の部材として構成されてもよい。つまり、複数の空隙形成部27は、縮小部22とは別に形成され、縮小部22の内周面に組付けられるか、または、該内周面の付近に配置されてもよい。また、縮小部22の内周面には、同様にして、1つの空隙形成部が設けられてもよい。また、変形例1,2の縮小部22においても、同様にして、少なくとも1つの空隙形成部が設けられてもよい。
【0042】
[9.効果]
(1)キャニスタにおけるポートが設けられた室では、流体の流れが相対的に良好な領域は、ポートから流体の流れ方向に沿って略扇状に広がると考えられる。このため、該室におけるポートの周辺では、該室を側方から囲む側壁の周辺の領域にて流体の流れが滞り、該領域は、吸着材による燃料蒸気の吸着及び脱離が十分に行われないデッドスペースとなる恐れがある。
【0043】
これに対し、上記実施形態によれば、主室20の第1端部Fに縮小部22を設けたことで、デッドスペースを削減でき、主室20における第1端部Fの周辺での流体の流れが改善され得る。このため、キャニスタ1内における流体の流れがスムーズになるよう促すことができる。これにより、吸着材に吸着された燃料蒸気の脱離性能が向上する。そして、脱離性能の向上により、少ない量の吸着材4により燃料蒸気を効率的に蓄積することが可能となるため、燃料蒸気の吸着性能が向上する。
【0044】
(2)また、パージの際、主室20における流出ポート12の周辺では、パージエアの流速が低下すると考えられる。これに対し、流出ポート12の周辺に縮小部22を設けることで、主室20における流出ポート12の周辺でのパージエアの流速の低下を抑制できる。このため、パージの際、キャニスタ1に蓄積されていた燃料蒸気が流出ポート12からスムーズに流出するよう促すことができ、脱離性能が向上する。
【0045】
(3)また、縮小部22における傾斜した部位は、主室20における、対応するポートが設けられた第1端部Fの周辺の領域を囲む。このため、主室20おいて、第1端部Fの周辺での流体の流れがより一層改善され得る。したがって、キャニスタ1内における流体の流れがより一層スムーズになるよう促すことができる。
【0046】
(4)また、縮小部22はテーパ状であるため、主室20における第1端部Fの周辺での流体の流れが改善され得る。このため、キャニスタ1内における流体の流れがスムーズになるよう促すことができる。
【0047】
(5)また、縮小部22に空隙形成部27を設けることで、空隙形成部27と、該空隙形成部27に当接する粒状の吸着材の周辺に、空隙が形成され得る。このため、縮小部22の内側での通気抵抗を低減できる。
【0048】
[10.他の実施形態]
(1)上記実施形態では、キャニスタ1の外周面を形成するケース部材10により、主室20及び縮小部22が形成される。しかし、これに限らず、キャニスタ1は、外周面を形成する外側ケースと、外側ケースの内部に配置されたインナーケースであるケース部材とを有していても良い。そして、インナーケースであるケース部材により、上記実施形態と同様の縮小部を有する主室が形成されてもよい。
【0049】
また、キャニスタ1には、流体の流れ方向に並ぶ複数の主室が設けられていてもよい。この場合、流入ポート11及び流出ポート12に隣接する主室に、上記実施形態と同様の縮小部22が形成されていてもよい。
【0050】
(2)上記実施形態では、縮小部22における流体の流れ方向に対し傾斜した部位は、主室20における、対応するポートが設けられた第1端部Fの周辺の領域を囲むように形成される。しかし、該傾斜した部位は、該領域を囲まなくてもよい。すなわち、縮小部は、流体の流れ方向に対し傾斜する傾斜部と、流体の流れ方向に沿って略真っ直ぐに延びる非傾斜部とが設けられてもよい。このような縮小部であっても、主室20における当該縮小部により囲まれた領域の直交断面を、対応するポートに向かうに従い縮小できる。
【0051】
(3)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0052】
[11.本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
エンジンを有する車両に搭載されるよう構成されたキャニスタであって、
燃料蒸気を吸着する吸着材が配置された複数の室と、
前記複数の室のうちの1つである主室を形成するケース部材と、
前記主室の第1端部に設けられた部位であって、前記車両の燃料タンクから前記主室に燃料蒸気を流入させるよう構成された部位である流入ポートと、
大気に開放されるよう構成され、前記複数の室のうちの1つである副室に設けられた大気ポートと、
前記主室の前記第1端部に設けられた部位であって、前記大気ポートから流入した前記大気により、前記吸着材に吸着した燃料蒸気を前記エンジンに向けて流出させるよう構成された部位である流出ポートと、を備え、
前記ケース部材は、前記主室における前記第1端部の周辺の領域を形成する壁状の部位である少なくとも1つの縮小部を有し、
前記縮小部は、前記主室における流体の流れ方向に直交する断面の面積を、前記第1端部に向かうに従い縮小するよう構成されている
キャニスタ。
【0053】
[項目2]
項目1に記載のキャニスタであって、
前記縮小部は、前記主室における前記流入ポートが設けられた前記第1端部の周辺の領域を形成する壁状の部位であり、該領域の前記断面を、前記流入ポートに向かうに従い縮小するよう構成されている
キャニスタ。
【0054】
[項目3]
項目1又は項目2に記載のキャニスタであって、
前記縮小部は、前記主室における前記流出ポートが設けられた前記第1端部の周辺の領域を形成する壁状の部位であり、該領域の前記断面を、前記流出ポートに向かうに従い縮小するよう構成されている
キャニスタ。
【0055】
[項目4]
項目1から項目3のうちのいずれ1項目に記載のキャニスタであって、
前記縮小部は、前記流れ方向に対し傾斜した部位を有し、前記部位は、前記主室における前記第1端部の周辺の領域を囲む
キャニスタ。
【0056】
[項目5]
項目1から項目4のうちのいずれ1項目に記載のキャニスタであって、
前記縮小部は、当該縮小部が設けられた前記第1端部を通過する線であって、前記流れ方向に延びる線である軸線を含む断面である軸線断面において、直線状に延びる
キャニスタ。
【0057】
[項目6]
項目1から項目5のうちのいずれ1項目に記載のキャニスタであって、
前記主室には、粒状の吸着材が配置され、
前記縮小部の内周面の付近に、所定の形状を有する少なくとも1つの空隙形成部が設けられている
キャニスタ。
【符号の説明】
【0058】
1…キャニスタ、10…ケース部材、11…流入ポート、12…流出ポート、13…大気ポート、20…主室、21…本体部、22…縮小部、26…直線部、27…空隙形成部、30…副室、4…吸着材、F…第1端部、S…第2端部。
図1
図2
図3
図4
図5