(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025143148
(43)【公開日】2025-10-01
(54)【発明の名称】モータ駆動装置、電源システム、ステージ装置、リソグラフィ装置、及び、物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02P 27/00 20060101AFI20250924BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20250924BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20250924BHJP
【FI】
H02P27/00
G03F7/20 501
G03F7/20 521
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024042926
(22)【出願日】2024-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】大石 伸司
【テーマコード(参考)】
2H197
5F131
5H505
【Fターム(参考)】
2H197AA06
2H197AA09
2H197BA11
2H197CD12
2H197CD13
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5F131AA02
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5H505JJ30
5H505LL01
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL25
5H505LL42
(57)【要約】
【課題】 モータの駆動において、従来よりもエネルギー損失が少ないモータ駆動装置を提供する。
【解決手段】 電源から給電され、モータに給電するドライバと、前記ドライバが必要とする電圧値に応じた前記電源の電圧値に関する指令を前記電源に送信する送信部と、を有し、前記ドライバが必要とする電圧値は、前記モータの駆動に関する情報に基づいて得られる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から給電され、モータに給電するドライバと、
前記ドライバが必要とする電圧値に応じた前記電源の電圧値に関する指令を前記電源に送信する送信部と、を有し、
前記ドライバが必要とする電圧値は、前記モータの駆動に関する情報に基づいて得られる、
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
前記ドライバは、前記電源からの電圧がパルス幅変調されることにより生成された電流を前記モータに供給することを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記送信部は、前記モータの動作モードが切り替わる前又は切り替わるときに指令を送信することを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記モータの駆動に関する情報は、前記モータにより移動する物体の位置と時間とが対応付けられた情報と、速度と、加速度とのうち少なくとも1つの情報である、ことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記送信部は、前記モータの駆動により物体を加速させて移動させる加速区間と、前記モータの駆動により前記物体を減速させて移動させる減速区間とで前記電源に送信する前記指令を変更することを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記送信部は、外部の情報処理装置から得た前記ドライバが必要とする電圧値に基づいて前記電源に前記指令を送信することを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
前記指令は、前記電源が出力する出力電圧値の情報を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項8】
前記送信部は、前記ドライバが必要とする電圧値の最大値をVd_max、前記電源の出力電圧値をVpとしたときに、Vp≧Vd_maxを満たす前記指令を送信する、ことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項9】
前記モータに含まれるコイルの両端の電圧と、逆起電圧と、誘導電圧と、に基づいて前記ドライバが必要とする電圧値を計算する計算部を有することを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項10】
前記ドライバに給電するキャパシタを有し、
前記送信部は前記キャパシタからの給電に基づいて前記電源に前記指令を送信することを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項11】
電源から給電され、モータに給電するドライバと、
前記モータの駆動に関する情報と対応付けられた前記電源の電圧値に関する情報に基づいて、前記電源の電圧値に関する指令を前記電源に送信する送信部と、
を有することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項12】
前記モータの駆動に関する情報と対応付けられた前記電源の電圧値に関する情報は、前記モータの動作モードと前記電源の出力電圧とが対応付けられた情報であることを特徴とする請求項11に記載のモータ駆動装置。
【請求項13】
前記モータの駆動に関する情報と対応付けられた前記電源の電圧値に関する情報は、時間と前記電源の出力電圧とが対応付けられた情報であることを特徴とする請求項11に記載のモータ駆動装置。
【請求項14】
前記指令は、前記電源の最大電圧値を第1電圧値に制限する指令と、前記電源の最大電圧値を前記第1電圧値の半分以下の第2電圧値に制限する指令とを含むことを特徴とする請求項11に記載のモータ駆動装置。
【請求項15】
前記ドライバは、前記指令に応じた前記電源からの電圧についてパルス幅変調を行い、前記パルス幅変調により生成した電流を前記モータに供給することを特徴とする請求項14に記載のモータ駆動装置。
【請求項16】
出力電圧が可変である電源と、
前記電源から給電され、モータに給電するドライバと、
前記ドライバが必要とする電圧値に応じて前記電源の前記出力電圧を調整する調整部と、
を有し、
前記ドライバが必要とする電圧値は、前記モータの駆動に関する情報に基づいて得られる、
ことを特徴とする電源システム。
【請求項17】
基板を保持する保持部と、
前記保持部を移動可能なモータと、
電源から給電され、前記モータに給電するドライバと、
前記ドライバが必要とする電圧値に応じた前記電源の電圧値に関する指令を前記電源に送信する送信部と、を有し、
前記ドライバが必要とする電圧値は、前記モータの駆動に関する情報に基づいて得られる、
ことを特徴とするステージ装置。
【請求項18】
請求項17に記載のステージ装置と、
前記ステージ装置に保持された基板を照明する照明光学系と、
を有することを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項19】
請求項18に記載のリソグラフィ装置を用いて基板にパターンを形成する形成工程と、
前記形成工程で前記パターンが形成された前記基板から物品を製造する製造工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動装置、電源システム、ステージ装置、リソグラフィ装置、及び、物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶表示デバイスなどの製造工程において、ステージの駆動にモータを用いる。特許文献1にはモータを駆動するモータ駆動装置に対して電源が給電するときに、キャパシタで給電を補助することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、モータ駆動装置に給電する電源は、モータの最大負荷時の出力に応じた一定の電圧値に基づいて動作する。これにより、モータの負荷が最大ではない場合であっても最大負荷時に応じた高い電圧が印加されるため、不要な発熱が生じてエネルギー損失が生じていた。
【0005】
そこで、本発明は、モータの駆動において、従来よりもエネルギー損失が少ないモータ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのモータ駆動装置は、電源から給電され、モータに給電するドライバと、前記ドライバが必要とする電圧値に応じた前記電源の電圧値に関する指令を前記電源に送信する送信部と、を有し、前記ドライバが必要とする電圧値は、前記モータの駆動に関する情報に基づいて得られる、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来よりもエネルギー損失が少ないモータ駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態におけるモータを駆動する機構のブロック図である。
【
図3】第1実施形態における各動作モード(各シーケンス)における加速度プロファイルとドライバが必要とする電圧の例である。
【
図5】第1実施形態におけるモータを駆動するときのフローチャートである。
【
図6】第2実施形態における加速度プロファイルとドライバが必要とする電圧の例である。
【
図7】第3実施形態における基板処理装置の構成を示す概略図である。
【
図9】第3実施形態における各ステップの動作(動作モード)と電源の出力電圧値Vpとが対応しているテーブルの例である。
【
図10】第3実施形態における各ステップにおける時間と電源の出力電圧値Vpとが対応しているテーブルの例である。
【
図11】第4実施形態における物品の製造方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、各実施形態は任意に組み合わせられてもよい。さらに、図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
また、本明細書および図面では、基本的に、鉛直方向をZ軸とし、鉛直方向に対し垂直な水平面をXY平面とする、各軸が互いに直交するXYZ座標系によって方向が示されている。ただし、各図面にXYZ座標系を記載している場合はその座標系を優先する。
【0012】
以下、各実施形態において、具体的な構成を説明する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態におけるモータを駆動する機構のブロック図である。モータ3は、モータ駆動装置100により駆動する。モータ駆動装置100は、モータ3に給電するドライバ2と、キャパシタ4と、モータ駆動装置100の各部を制御する制御部5と、記憶部6と、計算部7と、送信部8と、を有する。ドライバ2は、電源1とキャパシタ4から給電され、最初にキャパシタ4からの給電が行われ、キャパシタ4の給電が開始した後に(キャパシタ4が給電しているときに)、電源1からの給電が行われる。そして、ドライバ2は制御部5により制御され、モータ3の駆動に必要な電流をモータ3に給電する。このようなモータ駆動装置100は、例えばステージ装置や搬送システム(搬送装置)や搬送ロボットに適用される。なお、
図1はモータ駆動装置100と、電源1と、電源1の出力電圧を調整する調整部101と、を含む電源システムのブロック図でもある。
【0014】
ドライバ2は、制御部5によりPWM(Pulse Width Modulation)制御されている。PWM制御とは、電源1から出力される+側電圧と-側電圧のパルス幅を調整(パルス幅変調)して制御する制御方法であり、パルスの時の比率(Duty)を変更することでドライバ2の出力を変化させることが可能である。ドライバ2は電源1からの電圧を+と-でスイッチングし、このスイッチング波形を平滑化することによって供給電流を生成する。このドライバ2で生成された供給電流が、モータ3に流れ、モータ3は駆動する。
【0015】
例えば、+300Vと-300Vの電圧が出力される電源1から供給される電力によりドライバ2が電流を供給する場合、パルスの時の比率(Duty)を50%にすると+300Vと-300Vの電圧が互いに打ち消し合う。これにより、ドライバ2から出力される平均電流値は0となる。一方、出力したい平均電流値を出すために必要な電圧が+290Vである場合は、+300Vである時間と-300Vである時間との比を調整することで所望の電圧を得ることができる。具体的には、電源1から供給される+300Vについて所望の電圧である+290Vより過剰な10V分を打ち消すように-300Vである時間を調整する。つまり、パルスの時の比率(Duty)を調整する。
【0016】
PWM制御の場合、ドライバ2による電源1に対するスイッチングの周期(Fpwm)で電流リップルが発生する。
図2は、電流リップルΔIを示す図である。
図2(a)は、電源1から出力される+側最大電圧値及び-側最大電圧値が小さい場合の電流リップルΔIの例である。
図2(b)は、電源1から出力される+側最大電圧値及び-側最大電圧値が大きい場合の電流リップルΔIの例である。電流リップルΔIは電源1の電圧値に応じて変化するため、
図2(b)のように電源1の電圧値が大きい場合の電流リップルΔIは、
図2(a)のように電源1の電圧値が小さい場合の電流リップルΔIより大きい。
【0017】
図2(a)と
図2(b)とで、平均電流値Iavg(モータ3の駆動に用いる電流の大きさ)は同じであり、モータ3のトルクは同じとなる。しかし、電流リップルΔIは熱の発生に起因するRMS(二乗平均平方根)電流値Irmsを増加させる。つまり、
図2(b)のように電源1から出力される電圧値が大きく電流リップルΔIが大きいと、RMS(二乗平均平方根)電流値Irmsが大きくなり、
図2(a)よりも多くの熱が発生する。この熱は不要な熱であり、電源1からの給電量に対する損失(エネルギー損失)である。さらに、電流リップルΔIはノイズであり、モータ3により物体を搬送するステージ装置や搬送装置や搬送ロボットにおいて物体の位置決め精度に悪影響を及ぼすこともある。
【0018】
ドライバ2の電流リップルΔIと電源1の出力電圧値Vpの関係を式(1)に示す。
ΔI=Vp×D(1-D)/(L×Fpwm)---------(1)
Vp:電源1の出力電圧
D:Duty(電源1のオンとオフの比率)
L:ドライバ2の出力平滑フィルタのインダクタンス
Fpwm:ドライバ2のスイッチングの周期
【0019】
式(1)から明らかなように、電源1の出力電圧値Vpと電流リップルΔIは比例関係にある。そのため、モータ3の駆動のためにドライバ2が必要とする電圧値が小さいとき(平均電流値Iavgが小さいとき)は、電源1の出力電圧値Vpを小さくすることで電流リップルΔIを低減することができる。従来は、電源1はモータ3の最大負荷時の出力に応じた電圧値で電源1は出力を行っていたため、モータ3の負荷が最大でないときであっても大きな電流リップルΔI及び不要な熱を発生させていて、電源1からの給電量に対して損失を生じさせていた。
【0020】
具体的に、基板を露光する露光装置の一部に構成される、基板を保持しつつ搬送するステージ装置を例に説明する。
図3は、本実施形態における各動作モード(各シーケンス)における加速度プロファイルとドライバ2が必要とする電圧Vdの例である。露光装置は、動作モードとして、例えば、初期化、停止、アライメント、露光などを含み、これらの動作モードを順次繰り返していく。各動作モードは互いにモータ3の駆動が異なり、露光装置のシーケンス(動作モード)とは、換言すればモータ3の動作モードである。
【0021】
ここで、各動作モードに必要な加速度は互いに異なり、これによりモータ3を駆動するためにドライバ2が必要とする電圧Vd及び電圧Vdの最大値Vd_maxも各動作モードで互いに異なる。
図3の例では、初期化モードでは最大値Vd_maxはVd1であり、停止モードでは最大値Vd_maxはVd2であり、アライメントモードでは最大値Vd_maxはVd3であり、露光モードでは最大値Vd_maxはVd4である。そして、最大値Vd_maxは、Vd4が最大であり、Vd4、Vd3、Vd1、Vd2の順に大きい。従来の電源1は、モータ3の最大負荷時(最大値Vd_maxがVd4)の出力に応じた電圧値(Vd4)で出力を行っていた。これにより、モータ3の負荷が最大でないとき、例えば、初期化モードや停止モードやアライメントモードを実施するときにも、大きな電流リップルΔIが発生し、これに起因して不要な熱が発生していた。
【0022】
そこで、本実施形態は、モータ3の駆動に関する情報に基づいて、モータ3の駆動のためにドライバ2が必要とする電圧Vdを計算し、計算結果に基づいて電源1の出力電圧値Vpを調整する。
図3の例でいえば、各動作モードにおけるドライバ2が必要とする電圧Vdを計算し、計算結果に基づいて電源1の出力電圧値Vpを各動作モードに応じた適切な値に調整する。具体的には、初期化モードを実施する際にはVd1に基づいた出力電圧値Vpで、停止モードを実施する際にはVd2に基づいた出力電圧値Vpで、電源1は出力を行う。そして、アライメントモードを実施する際にはVd3に基づいた出力電圧値Vpで、露光モードを実施する際にはVd4に基づいた出力電圧値Vpで、電源1は出力を行う。
【0023】
例えば、露光モードと停止モードとでドライバ2が必要とする電圧Vdが2倍以上異なることがある。このような場合に、本実施形態では露光モードに際しては電源1の最大電圧値を第1電圧値に制限する、電源1の電圧値に関する指令を送信する。停止モードに際しては電源1の最大電圧値を第1電圧値の半分以下の第2電圧値に制限する、電源1の電圧値に関する指令を送信する。第2電圧値は第1電圧値の半分以下でなくともよく、例えば3分の1以下であってもよい。或いは、10%以下であってもよい。
【0024】
これにより、必要とする電圧Vd分だけ電源1から給電されるため不要な電流リップルΔIの増大及び熱の発生を低減できる。よって、モータ3の駆動において電源1からの給電量に対する損失を低減でき、省電力でモータ3を駆動できる。そして、ノイズである電流リップルΔIを低減できるため、モータ3により物体を搬送するステージ装置や搬送装置や搬送ロボットにおいて物体の位置決め精度の低下を低減できる。
【0025】
本実施形態では、記憶部6に記憶されているモータ3の駆動に関する情報に基づいて、計算部7がモータ3の駆動のためにドライバ2が必要とする電圧値を計算する。そして、送信部8は、計算部7が計算した電圧値に基づいて、電源1又は調整部101に電源1の電圧値に関する指令(指令値、電源1の出力電圧値)を送信する。送信部8が電源1に直接指令を送信する場合は、電源1は送信部8の指令に基づいて出力電圧を調整する。送信部8が調整部101に指令を送信する場合は、調整部101は送信部8の指令に基づいて電源1の出力電圧を調整する。なお、本実施形態では調整部101が電源1とは別である例を示すが、調整部101は電源1の内部にあってもよい。
【0026】
ここで、モータ3の駆動に関する情報とは、例えば、モータ3が駆動する量の情報(位置プロファイル)、又は、速度の情報(速度プロファイル)、又は、加速度の情報(加速度プロファイル)である。モータ3が駆動する量の情報とは、例えば、モータ3が駆動することによって移動する物体の、移動における目標位置の情報である。或いは、モータ3が駆動する量の情報は、モータ3が駆動することによって移動する物体の、現在位置と目標位置との間の距離の情報である。或いは、モータ3がリニアモータであり現在位置から目標位置まで駆動する場合に、モータ3が駆動する量の情報とは、リニアモータの可動子が移動する距離の情報である。つまり、モータ3が駆動する量の情報とは、モータ3により移動する物体の位置と時間とが対応付けられた情報である。
【0027】
本実施形態では、計算部7が計算した電圧値に基づいて、電源1の出力電圧値Vpを調整するため、電源1は可変電圧電源である。電源1は、例えば、フライバック式コンバータ回路を含む。
【0028】
図4は、モータ3の駆動に関する情報を示す図である。
図4(a)は位置プロファイルを、
図4(b)は速度プロファイルを、
図4(c)は加速度プロファイルを示す図である。計算部7は、記憶部6に記憶されている位置プロファイルを取得し、位置プロファイルを2回微分することで位置プロファイルを加速度プロファイルに変換する。なお、記憶部6に加速度プロファイルが記憶されている場合は、位置プロファイルを取得するのではなく、加速度プロファイルを取得してもよい。或いは、記憶部6に速度プロファイルが記憶されている場合は、位置プロファイルを取得するのではなく、速度プロファイルを取得し、速度プロファイルを1回微分することで速度プロファイルを加速度プロファイルに変換する。
【0029】
ここで、加速度Acc(t)は式(2)で表される。
Acc(t)=F/M=(I(t)×Kf)/M---------(2)
F=モータ3で発生させる推力(トルク)
M:負荷質量(モータ3で駆動させる対象の質量)
I(t):電流波形(平均電流値)
Kf:力定数
【0030】
なお、力定数Kfは供給された電流に対してモータ3が出力する力を示す定数であり、モータ3毎に決まっている。
【0031】
式(2)より、電流波形I(t)は式(3)となり、式(3)を用いることで電流波形I(t)を求めることができる。
I(t)=(Acc(t)×M)/Kf---------(3)
【0032】
計算部7は、コイル抵抗Rの両端の電圧Vr(t)を求める。電圧Vr(t)は、式(4)から求めることができる。
図4(d)は電圧Vr(t)を示す図である。ここで、コイルは例えばモータ3の固定子又は可動子に含まれるコイルである。
Vr(t)=R×I(t)---------(4)
R:コイル抵抗
【0033】
次に、計算部7は逆起電圧Eb(t)を求める。逆起電圧Eb(t)は式(5)から求めることができる。
図4(e)は逆起電圧Eb(t)を示す図である。
Eb(t)=Vel(t)×Kf---------(5)
Vel(t):速度(速度プロファイル)
【0034】
次に、計算部7は誘導電圧Ec(t)を求める。誘導電圧Ec(t)は式(6)から求めることができる。
図4(f)は誘導電圧Ec(t)を示す図である。
Ec(t)=L・dI(t)/dt---------(6)
L:モータ3のインダクタンス
【0035】
そして、モータ3の駆動のためにドライバ2が必要とする電圧Vd(ドライバ2の出力電圧)は式(7)から求めることができる。
図4(g)はドライバ2の出力電圧Vdを示す図である。
Vd(t)=Vr(t)+Eb(t)+Ec(t)---------(7)
【0036】
式(7)により求めたドライバ2の出力電圧Vdのプロファイルに基づいて、計算部7は、所定区間(例えば、モータ3の所定の動作モード開始から終了までの区間)におけるドライバ2の出力電圧Vdの最大値Vd_maxを計算(算出)する。計算部7による最大値Vd_maxの計算は、例えば、モータ3の駆動開始前に行われる。
【0037】
送信部8は、計算部7が計算した最大値Vd_maxに基づいて、電源1の出力電圧値Vpが式(8)となるように電源1にモータ3が駆動するときの電圧値に関する指令を送信する。
Vp≧Vd_max---------(8)
【0038】
式(8)を満たす電源1の出力電圧値Vpでない場合、つまり最大値Vd_maxが電源1の出力電圧値Vpより大きい場合には、モータ3の駆動のために必要な電圧が足らず、電圧不足によりドライバ2にてモータ3に所望の電流を流すことができない。それにより、モータ3が駆動する物体を正常に移動させることができない。したがって、モータ3の駆動が正常に行われないために、モータ3を利用して物体を移動させるステージ装置、搬送装置、搬送ロボットハンドなどがエラーにより停止してしまう。そのため、電源1の出力電圧値Vpと最大値Vd_maxの関係は式(8)を満たす必要がある。
【0039】
図5は、本実施形態におけるモータ3を駆動するときのフローチャートである。まず、計算部7がモータ3の駆動に関する情報を取得する(取得工程、S110)。次に、計算部7は取得工程で取得した駆動に関する情報に基づいて、ドライバ2の出力電圧Vd(最大値Vd_max)を計算する(計算工程、S120)。次に、送信部8は計算工程で計算した結果に基づいて、電源1にモータ3が駆動するときの電圧値(電源1の出力電圧値Vp)に関する指令を送信する(送信工程、S130)。送信工程は、モータ3の動作モードが切り替わる前又は切り替わるときに行われる。なお、送信工程は調整部101が計算工程で計算した結果に基づいて電源1の出力電圧値を調整する調整工程であってもよいし、送信工程に調整工程が含まれていてもよい。つまり、調整部101による調整も、モータ3の動作モードが切り替わる前又は切り替わるときに行われる。そして、送信工程で送信された指令に基づいて電源1が出力を行い、ドライバ2がモータ3に給電することでモータ3が駆動する(駆動工程、S140)。
【0040】
計算部7による計算は、計算対象の動作モードの1つ前の動作モードを実行しているときに行ってもよい。つまり、アライメントモードにおける最大値Vd_maxの計算は、停止モードを実行しているときに行ってもよい。或いは、複数のモードそれぞれについて事前にそれぞれ最大値Vd_maxを計算してもよい。そして、送信部8は、各動作モードの開始時に電源1の出力電圧値Vpが、計算結果に基づいた値となるよう、電源1又は調整部101に指令を送信する。そして、電源1又は調整部101は送信部8からの指令に基づいて
図3のタイミングT1、タイミングT2、タイミングT3、タイミングT4と同時又はそれより前に電源1の出力電圧値Vpを調整する(切り替える)。
【0041】
ここで、本実施形態ではモータ3の駆動のためにドライバ2が必要とする電圧値に基づいて電源1の出力電圧値Vpを設定(指令の送信、調整)する例を示した。しかし、ドライバ2が必要とする電圧値だけでなくキャパシタ4からの給電(給電量)にも基づいて電源1の出力電圧値Vpを設定(指令の送信、調整)してもよい。前述したようにドライバ2は、電源1とキャパシタ4から給電され、最初にキャパシタ4からの給電が行われ、キャパシタ4の給電が開始した後に(キャパシタ4が給電しているときに)、電源1からの給電が行われる。よって、キャパシタ4から給電されているときは電源1からの給電量は少なくて良い。したがって、キャパシタ4からの給電に基づいて電源1の出力電圧値Vpを調整することで、より適切に電源1の出力電圧値Vpを調整することができる。
【0042】
本実施形態では、制御部5と記憶部6と計算部7と送信部8とが別である例を示したが、これらは1つの処理部によって行われてもよい。また、本実施形態では計算部7がモータ駆動装置100の内部に配置されている例を示したが、外部の情報処理装置により最大値Vd_maxの計算を行ってもよい。そして、モータ駆動装置100内に制御部5が配置されている例を示したが、モータ駆動装置100が搭載される装置の制御部がモータ駆動装置100を併せて制御してもよい。また、本実施形態ではモータ駆動装置100内に記憶部6が配置されている例を示したが、モータ駆動装置100は記憶部6を備えなくともよく、記憶部6を備えない場合に計算部7は外部の記憶部や情報処理装置からモータ3の駆動に関する情報を取得する。
【0043】
ここで、本実施形態では送信部8と調整部101とがそれぞれ配置される例を示したが、計算部7の計算結果に基づいて送信部8を介さず調整部101が電源1の出力電圧を調整してもよい。
【0044】
制御部5(情報処理装置)は、処理部と、バスと、ROMと、RAMと、記憶装置と、を含み、各構成要素はプログラムに従って機能する。処理部は、プログラムに従って制御のための演算を行い、バスに接続された各構成要素を制御する処理装置である。この処理部は、CPU、又は、FPGAなどのPLD、又は、ASIC、又は、プログラムが組み込まれたコンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合せによって構成されうる。ROMは、データ読出し専用のメモリであり、プログラムやデータが格納されている。RAMは、データ読み書き用のメモリであり、プログラムやデータの保存用に用いられる。RAMは、CPUの演算の結果等のデータの一時保存用に用いられる。記憶装置も、プログラムやデータの保存用に用いられる。記憶装置は、制御部5のオペレーティングシステム(OS)のプログラム、およびデータの一時保存領域としても用いられる。記憶装置は、RAMに比べてデータの入出力は遅いが、大容量のデータを保存することが可能である。記憶装置は、保存するデータを長期間にわたり参照できるように、永続的なデータとして保存できる不揮発性記憶装置であることが望ましい。記憶装置は、主に磁気記憶装置(HDD)で構成されるが、CD、DVD、メモリカードといった外部メディアを装填してデータの読み込みや書き込みを行う装置であっても良い。
【0045】
以上のように、本実施形態ではモータ3の駆動に関する情報に基づいて、モータ3の駆動のためにドライバ2が必要とする電圧Vdを計算し、計算結果に基づいて電源1の出力電圧値Vpを調整する。これにより、モータ3の駆動において電源1からの給電量に対する損失(エネルギー損失)を低減でき、省電力でモータ3を駆動できる。そして、ノイズである電流リップルΔIを低減できるため、モータ3により物体を搬送するステージ装置や搬送装置や搬送ロボットにおいて物体の位置決め精度の低下を低減できる。
【0046】
<第2実施形態>
本実施形態は、第1実施形態と電源1の出力電圧値Vpを調整するタイミングが異なる。本実施形態では、加速度プロファイルに基づいて電源1の出力電圧値Vpを調整する。例えば、モータ3がステージ装置の駆動機構である場合に、ステージ装置は加速と定速と減速を繰り返すが、加速状態と定速及び減速状態とではドライバ2の出力電圧Vdが異なる。具体的には、加速状態におけるドライバ2の出力電圧Vdの最大値Vd_maxは、定速及び減速状態におけるドライバ2の出力電圧Vdの最大値Vd_maxより大きい。つまり、加速状態の出力に応じた電圧値で定速及び減速状態の動作を行うと、不要な熱が発生して電源1からの給電量に対して損失が生じていた。
【0047】
図6は、本実施形態における加速度プロファイルとドライバ2が必要とする電圧Vdの例であり、加速と定速・減速とが繰り返し行われる例である。
図6の例では、タイミングT1からタイミングT2の間と、タイミングT3からタイミングT4の間と、タイミングT5からタイミングT6の間と、タイミングT7からタイミングT8の間とが、加速が行われる加速区間である。そして、タイミングT2からタイミングT3の間と、タイミングT4からタイミングT5の間と、タイミングT6からタイミングT7の間と、タイミングT8からタイミングT9の間とが、定速・減速区間である。ここで、加速区間とは、モータ3の駆動により物体(例えば可動子)を加速させて移動させる区間である。そして、減速区間とは、モータ3の駆動により物体(例えば可動子)を減速させて移動させる区間である。
【0048】
この場合、加速区間では最大値Vd_maxはVd1であり、定速・減速区間では最大値Vd_maxはVd2である。従来の電源1は、モータ3の最大負荷時である加速区間(最大値Vd_maxがVd1)の出力に応じた電圧値(Vd1)で出力を行っていた。これにより、モータ3の負荷が最大でないときである定速・減速区間では、大きな電流リップルΔIに起因して不要な熱が発生していた。
【0049】
そこで、本実施形態は、モータ3の駆動に関する情報(加速度プロファイル)に基づいて、モータ3の駆動のためにドライバ2が必要とする電圧Vdを計算し、計算結果に基づいて電源1の出力電圧値Vpを調整する。
図6の例でいえば、加速区間と定速・減速区間におけるドライバ2が必要とする電圧Vdを計算し、計算結果に基づいて電源1の出力電圧値Vpを各区間に応じた適切な値に調整する。具体的には、加速区間では電源1の出力電圧値VpはVd1に基づいて式(8)を満たすように調整され、定速・減速区間では電源1の出力電圧値VpはVd2に基づいて式(8)を満たすように調整される。
【0050】
計算部7による計算は、例えば、加速区間と定速・減速区間についてそれぞれモータ3の駆動前に予め行う。そして、送信部8は、各区間の開始時に電源1の出力電圧値Vpが、計算結果に基づいた値となるよう、電源1又は調整部101に指令を送信する。この送信は、各区間の開始前又は各区間の開始時に行われる。そして、電源1又は調整部101は送信部8からの指令に基づいて
図6のタイミングT1~タイミングT8それぞれと同時又はそれより前に電源1の出力電圧値Vpを調整する(切り替える)。
【0051】
これにより、各区間においてドライバ2が必要とする電圧Vd分だけ電源1から給電されるため不要な電流リップルΔIの増大及び熱の発生を低減できる。よって、モータ3の駆動において電源1からの給電量に対する損失を低減でき、省電力でモータ3を駆動できる。そして、ノイズである電流リップルΔIを低減できるため、モータ3により物体を搬送するステージ装置や搬送装置や搬送ロボットにおいて物体の位置決め精度の低下を低減できる。
【0052】
なお、本実施形態では定速区間と減速区間とを1区間として最大値Vd_maxを求めたが、定速区間と減速区間とを分けてそれぞれの区間について最大値Vd_maxを求め、定速区間と減速区間それぞれに適切な電源1の出力電圧値Vpを調整してもよい。
【0053】
<第3実施形態>
本実施形態は、前述の実施形態を基板11上の各ショット領域を露光する際に適用する。
図7は、本実施形態における基板処理装置200の構成を示す概略図である。基板処理装置200は、本実施形態では、ステップ・アンド・リピート方式又はステップ・アンド・スキャン方式により原版(マスク、レチクル)のパターンを、投影光学系を介して基板に露光する投影露光装置である。
【0054】
基板処理装置200は、光を照射する照明光学系21と、投影光学系24と、レチクル22を保持するレチクルステージ23と、基板11を保持しつつXY方向に移動可能な基板ステージ(保持部)25と、制御部20と、を有する。レチクル22は、例えば、転写されるべきパターン(例えば回路パターン)がクロムで石英ガラスの表面に形成されている原版である。また、基板11は、例えば単結晶シリコンであり、基板処理装置200が露光装置である場合において基板処理装置200に搬送される基板11は、表面上に感光材料(レジスト)が塗布されている。
【0055】
基板処理装置200において、光源(不図示)からの露光光は、照明光学系21を介して、レチクルステージ23に保持されたレチクル22を照明する。レチクル22を透過した光は、投影光学系24を介して、基板11に照射される。この時、レチクル22に形成されたパターンからの光が基板11表面に結像し、基板11(感光材料)がパターン像により露光される。基板処理装置200はこのように基板11上のショット領域を露光し、複数のショット領域のそれぞれについて同様に露光を行う。
【0056】
この露光の際には、レチクル22と基板11の位置を同期させるよう、制御部20はモータ3及びモータ駆動装置100をそれぞれ含む駆動部3a及び駆動部3bを制御する。駆動部3aはレチクルステージ23を移動させ、駆動部3bは基板ステージ25を移動させる。駆動部3aと駆動部3bはそれぞれ電源1から給電されている。
【0057】
図8は基板11上の各ショット領域の配置の例であり、この例では基板11上に21個のショット領域が配置されている。21個のショット領域は駆動部3aと駆動部3bとの駆動によりレチクルステージ23と基板ステージ25とが所望の位置に移動することで順次露光される。例えば、基板ステージ25がステップ駆動を繰り返すことで各ショット領域は露光される。
【0058】
ここで、各ショット領域を露光する際の駆動部3aと駆動部3bとの軌跡(駆動部の駆動により移動する物体の移動の軌跡)は、ショットレイアウトや露光条件により予め決定されている。本実施形態では、予め決定された軌跡である位置プロファイル(モータ3の駆動に関する情報)を取得し、位置プロファイルに応じて最大値Vd_maxを事前に計算する。そして、計算した最大値Vd_maxに基づいて電源1の出力電圧値Vpを調整する。
【0059】
図9は、本実施形態における各ステップの動作(モータ3の動作モード)と電源1の出力電圧値Vpとが対応しているテーブルの例である。計算部7は、各ステップにおいてドライバ2が必要とする電圧Vd(最大値Vd_max)を計算する。そして、送信部8は、計算部7が計算した最大値Vd_maxに基づいて電源1の出力電圧値Vpが式(8)となるように、電源1の出力電圧値Vpを各ステップ毎に決定して
図9のようなテーブルを作成する。送信部8が作成したテーブルは記憶部6により記憶される。そして、各ショット領域を露光する際には、送信部8は記憶部6に記憶されている
図9に示すテーブルに基づいて、電源1又は調整部101に指令を送信する。この送信は、各ステップの開始前又は各ステップの開始時に行われる。そして、電源1は送信部8からの指令に基づいた出力電圧値Vpで駆動部3aと駆動部3bに給電を行う。
【0060】
例えば
図9に示すテーブルに基づいて1つ目のショット領域を露光するための加速区間においては電源1の出力電圧がVp1_1となるように、1つ目のショット領域を露光するための定速・減速区間においては電源1の出力電圧がVp1_2となるようにする。ショット領域を露光するための加速区間とは、例えばショット領域間の移動時であったり、ショット領域を露光する時の走査速度に達するための助走時である。ショット領域を露光するための定速区間とは、例えばショット領域に対する定速の露光時である。ショット領域を露光するための減速区間とは、例えばショット領域間の移動時である。
【0061】
これにより、各ステップにおいてドライバ2が必要とする電圧Vd分だけ電源1から給電されるため不要な電流リップルΔIの増大及び熱の発生を低減できる。よって、モータ3の駆動において電源1からの給電量に対する損失を低減でき、省電力でモータ3を駆動できる。そして、ノイズである電流リップルΔIを低減できるため、レチクルステージ23や基板ステージ25の位置決め精度の低下を低減できる。
【0062】
なお、本実施形態では送信部8が
図9に示すテーブルを作成する例を示したが、このテーブルは送信部8が作成しなくともよく、例えば制御部5や計算部7が作成してもよい。或いは、別の処理部が作成してもよい。
【0063】
また、
図9に示すテーブルは各ステップの動作(モータ3の動作モード)と電源1の出力電圧値Vpとが対応しているが、この例に限定されない。各ショット領域を露光する際の駆動部3aと駆動部3bとの軌跡(駆動部の駆動により移動する物体の移動の軌跡)は、ショットレイアウトや露光条件により予め決定されているため、処理における経過時間とドライバ2が必要とする電圧値とは対応している。よって、
図10に示すような、各ステップにおける時間と電源1の出力電圧値Vpとが対応しているテーブルであってもよい。
【0064】
例えば、
図10に示すテーブルに基づいて、設定時間T1_1となったときには電源1の出力電圧がVp1_1となるように、設定時間T1_2となったときには電源1の出力電圧がVp1_2となるように電源1の出力電圧がVpを調整する。
図10のテーブルのように各ステップにおける時間と電源1の出力電圧値Vpとが対応しているテーブルに基づくことで、単純に加速や減速などの動作に応じて出力電圧値Vpを切り替えるのではなく、任意のタイミングで出力電圧値Vpを切り替えることができる。
【0065】
また、本実施形態では
図9や
図10に示すようなモータ3の駆動(に関する情報)と対応付けられた電源1の電圧値に関する情報をモータ駆動装置100内で生成(計算)する例を示したが、この例に限定されない。外部の情報処理装置がモータ3の駆動(に関する情報)と対応付けられた電源1の電圧値に関する情報を生成(計算)し、送信部8は情報処理装置から取得した電源1の電圧値に関する情報に基づいて電源1の電圧値に関する指令を電源1に送信してもよい。
【0066】
本実施形態では、基板処理装置200が投影露光装置である例を説明したが、基板処理装置200は、投影露光装置に限定されるものではない。例えば、基板処理装置200は、電子線やイオンビームなどによって基板に描画を行い、パターンを基板に形成する描画装置であってもよい。また、基板処理装置200は、他のリソグラフィ装置(基板露光装置)、例えば、基板の上のインプリント材を型により成形してパターンを基板上に形成するインプリント装置であってもよい。あるいは、基板処理装置200は、イオン打ち込み装置、現像装置、エッチング装置、成膜装置、アニール装置、スパッタリング装置、蒸着装置など、半導体ウエハやガラスプレートなどの基板を処理する他の装置であってもよい。また、基板処理装置200は、平坦な板を用いて基板上の組成物を平坦化する平坦化装置であってもよい。
【0067】
<第4実施形態>
本実施形態は、前述した基板処理装置(リソグラフィ装置)を用いて物品を製造することを特徴とする物品の製造方法に関する。
【0068】
図11は本実施形態における物品の製造方法のフローチャートを示す図である。前述したリソグラフィ装置を用いてステージ装置に保持された基板を照明して基板にパターンを形成する形成工程(S210)を行う。ステージ装置は、基板を保持する保持部と、保持部を移動可能なモータ3と、電源1から給電され、モータ3に給電するドライバ2と、送信部8と、を有する。送信部8は、モータ3の駆動に関する情報に基づいて得られる、ドライバ2が必要とする電圧値に応じた電源1の電圧値に関する指令を電源1に送信する。そして、形成工程でパターンが形成された基板から物品を製造する製造工程(S220)を行う。
【0069】
この製造方法で製造する物品は、例えば、半導体IC素子、液晶表示素子、カラーフィルタ、MEMS等である。
【0070】
形成工程は、例えば、感光材料が塗布された基板(シリコンウエハ、ガラスプレート等)を露光装置(リソグラフィ装置)により露光することで基板にパターンを形成する。
【0071】
製造工程は、例えば、パターンが形成された基板(感光材料)の現像、現像された基板に対するエッチング及びレジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージングの実施が含まれる。本製造方法によれば、従来よりも高品位の物品を製造することができる。
【0072】
本明細書の開示は、以下のモータ駆動装置、電源システム、ステージ装置、リソグラフィ装置、及び、物品の製造方法を含む。
【0073】
〔項目1〕
電源から給電され、モータに給電するドライバと、
前記ドライバが必要とする電圧値に応じた前記電源の電圧値に関する指令を前記電源に送信する送信部と、を有し、
前記ドライバが必要とする電圧値は、前記モータの駆動に関する情報に基づいて得られる、
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【0074】
〔項目2〕
前記ドライバは、前記電源からの電圧がパルス幅変調されることにより生成された電流を前記モータに供給することを特徴とする項目1に記載のモータ駆動装置。
【0075】
〔項目3〕
前記送信部は、前記モータの動作モードが切り替わる前又は切り替わるときに指令を送信することを特徴とする項目1又は2に記載のモータ駆動装置。
【0076】
〔項目4〕
前記モータの駆動に関する情報は、前記モータにより移動する物体の位置と時間とが対応付けられた情報と、速度と、加速度とのうち少なくとも1つの情報である、ことを特徴とする項目1~3のうちいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【0077】
〔項目5〕
前記送信部は、前記モータの駆動により物体を加速させて移動させる加速区間と、前記モータの駆動により前記物体を減速させて移動させる減速区間とで前記電源に送信する前記指令を変更することを特徴とする項目1~4のうちいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【0078】
〔項目6〕
前記送信部は、外部の情報処理装置から得た前記ドライバが必要とする電圧値に基づいて前記電源に前記指令を送信することを特徴とする項目1~5のうちいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【0079】
〔項目7〕
前記指令は、前記電源が出力する出力電圧値の情報を含む、ことを特徴とする項目1~6のうちいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【0080】
〔項目8〕
前記送信部は、前記ドライバが必要とする電圧値の最大値をVd_max、前記電源の出力電圧値をVpとしたときに、Vp≧Vd_maxを満たす前記指令を送信する、ことを特徴とする項目1~7のうちいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【0081】
〔項目9〕
前記モータに含まれるコイルの両端の電圧と、逆起電圧と、誘導電圧と、に基づいて前記ドライバが必要とする電圧値を計算する計算部を有することを特徴とする項目1~8のうちいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【0082】
〔項目10〕
前記ドライバに給電するキャパシタを有し、
前記送信部は前記キャパシタからの給電に基づいて前記電源に前記指令を送信することを特徴とする項目1~9のうちいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【0083】
〔項目11〕
電源から給電され、モータに給電するドライバと、
前記モータの駆動に関する情報と対応付けられた前記電源の電圧値に関する情報に基づいて、前記電源の電圧値に関する指令を前記電源に送信する送信部と、
を有することを特徴とするモータ駆動装置。
【0084】
〔項目12〕
前記モータの駆動に関する情報と対応付けられた前記電源の電圧値に関する情報は、前記モータの動作モードと前記電源の出力電圧とが対応付けられた情報であることを特徴とする項目11に記載のモータ駆動装置。
【0085】
〔項目13〕
前記モータの駆動に関する情報と対応付けられた前記電源の電圧値に関する情報は、時間と前記電源の出力電圧とが対応付けられた情報であることを特徴とする項目11に記載のモータ駆動装置。
【0086】
〔項目14〕
前記指令は、前記電源の最大電圧値を第1電圧値に制限する指令と、前記電源の最大電圧値を前記第1電圧値の半分以下の第2電圧値に制限する指令とを含むことを特徴とする項目11~13のうちいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【0087】
〔項目15〕
前記ドライバは、前記指令に応じた前記電源からの電圧についてパルス幅変調を行い、前記パルス幅変調により生成した電流を前記モータに供給することを特徴とする項目14に記載のモータ駆動装置。
【0088】
〔項目16〕
出力電圧が可変である電源と、
前記電源から給電され、モータに給電するドライバと、
前記ドライバが必要とする電圧値に応じて前記電源の前記出力電圧を調整する調整部と、
を有し、
前記ドライバが必要とする電圧値は、前記モータの駆動に関する情報に基づいて得られる、
ことを特徴とする電源システム。
【0089】
〔項目17〕
基板を保持する保持部と、
前記保持部を移動可能なモータと、
電源から給電され、前記モータに給電するドライバと、
前記ドライバが必要とする電圧値に応じた前記電源の電圧値に関する指令を前記電源に送信する送信部と、を有し、
前記ドライバが必要とする電圧値は、前記モータの駆動に関する情報に基づいて得られる、
ことを特徴とするステージ装置。
【0090】
〔項目18〕
項目17に記載のステージ装置と、
前記ステージ装置に保持された基板を照明する照明光学系と、
を有することを特徴とするリソグラフィ装置。
【0091】
〔項目19〕
項目18に記載のリソグラフィ装置を用いて基板にパターンを形成する形成工程と、
前記形成工程で前記パターンが形成された前記基板から物品を製造する製造工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【0092】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。