(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025143170
(43)【公開日】2025-10-01
(54)【発明の名称】ガンボージ樹脂のアセトン抽出物含有の徐放性製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/38 20060101AFI20250924BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20250924BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20250924BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20250924BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20250924BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20250924BHJP
A61K 9/22 20060101ALI20250924BHJP
A61P 29/00 20060101ALN20250924BHJP
【FI】
A61K36/38
A61K47/20
A61K47/38
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/26
A61K9/22
A61P29/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024135328
(22)【出願日】2024-08-14
(31)【優先権主張番号】113110007
(32)【優先日】2024-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】504376382
【氏名又は名称】台湾森本生物科技開發股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】李 森彬
(72)【発明者】
【氏名】李 佳玲
(72)【発明者】
【氏名】李 宜玲
(72)【発明者】
【氏名】李 巧玲
【テーマコード(参考)】
4C076
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA38
4C076BB01
4C076CC04
4C076DD05
4C076DD29
4C076DD41
4C076DD67
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF01
4C088AB12
4C088AC08
4C088CA07
4C088MA35
4C088MA52
4C088NA12
4C088ZB11
(57)【要約】
【課題】徐放性製剤を提供する
【解決手段】製剤の総重量に基づいて、含有量が25.00wt%~31.25wt%のガンボージ樹脂のアセトン抽出物を含む有効活性成分と、含有量が4wt%~25wt%のラウリル硫酸ナトリウムと、含有量が15.63wt%~23.44wt%のヒドロキシプロピルメチルセルロースと、含有量が6.25wt%~13.38wt%の微結晶セルロースと、含有量が0.63wt%~1.56wt%の二酸化ケイ素と、含有量が0.63wt%~1.56wt%のステアリン酸マグネシウムと、含有量が25.00wt%~40.13wt%のラクトースと、含有量が5.00wt%~7.81wt%のデキストロースと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製剤の総重量に基づいて、
含有量が25.00wt%~31.25wt%のガンボージ樹脂のアセトン抽出物を含む有効活性成分と、
含有量が4wt%~25wt%のラウリル硫酸ナトリウムと、
含有量が15.63wt%~23.44wt%のヒドロキシプロピルメチルセルロースと、
含有量が6.25wt%~13.38wt%の微結晶セルロースと、
含有量が0.63wt%~1.56wt%の二酸化ケイ素と、
含有量が0.63wt%~1.56wt%のステアリン酸マグネシウムと、
含有量が25.00wt%~40.13wt%のラクトースと、
含有量が5.00wt%~7.81wt%のデキストロースと、を含む、ことを特徴とする徐放性製剤。
【請求項2】
前記ガンボージ樹脂のアセトン抽出物は、
ガンボージ樹脂を粉末に粉砕してガンボージ樹脂粉末を得た後、該ガンボージ樹脂粉末をアセトンで抽出して、第1の抽出物を得るステップaと、
前記第1の抽出物を超音波処理して、第2の抽出物を得るステップbと、
前記第2の抽出物をろ過処理して、ろ過液を得るステップcと、
前記ろ過液を濃縮処理して、アセトンを除去するステップdと、を含む方法により製造された、ことを特徴とする請求項1に記載の徐放性製剤。
【請求項3】
前記ステップaにおいて、前記ガンボージ樹脂粉末とアセトンとの重量体積比は、1:2~1:3の範囲内にある、ことを特徴とする請求項2に記載の徐放性製剤。
【請求項4】
前記ステップbにおいて、前記超音波処理は、温度が20℃~35℃の範囲内で行う、ことを特徴とする請求項2に記載の徐放性製剤。
【請求項5】
前記ステップcにおいて、前記ろ過処理は、孔径が3μm~6μmの範囲内のろ紙を使用して行う、ことを特徴とする請求項2に記載の徐放性製剤。
【請求項6】
前記ガンボージ樹脂のアセトン抽出物は、
図1に示されるような高速液体クロマトグラフィー溶出プロフィールを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の徐放性製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンボージ樹脂(gamboge resin)のアセトン抽出物(acetone-extracted product)含有の徐放性製剤(sustained-release formulation)に関する。
【背景技術】
【0002】
ガンボージ樹脂は、フクギ科(Guttiferae)のフクギ属(Garcinia)の植物によって分泌されるゴム樹脂(gum-resin)である。古くから植物染料や顔料の原料として使われてきた。一部の区域、例えばインドやタイでは、ガンボージ樹脂は民間薬(folk-medicine)としても使用されている。
【0003】
主に「ガンボージ」と呼ばれているガルシニア(藤黄)は、熱帯地方で生長する常緑樹の一種である。インドで生育している主要種は、ガルシニア・モレラ・デスブ(Garcinia morella Desv)であり、一方、タイで生育している主要種は、藤黄 (Garcinia hanburyi Hook)である。開花期の前に、樹皮を地面から2メートルのところで螺旋状に切り開き、滲み出る樹脂を採取する。一般にはこの樹脂を熱乾燥(heat-drying)させて固化したものがガンボージ樹脂である。
【0004】
伝統中国医学(Traditional Chinese Medicine、TCM)によると、ガンボージは、抗炎症、毒素の排出、止血、寄生虫を殺す効果があると見られる。1934年以来、ガンボージ樹脂の成分については多くの報告がある。
【0005】
現在では、ガンボージ樹脂の抽出物から多くの化合物が単離できることが知られている。例えば、モレリン(morellin)、モレリン酸(morellic acid)、ガンボギン酸(gambogic acid)、モレリノール(morellinol)、イソモレリン(isomorellin)、イソモレル酸(isomorellic acid)、イソガンボグ酸(isogambogic acid)、イソモレリノール(isomorellinol)、ネオガンボグ酸(neogambogic acid)、デオキシモレリン(desoxymorellin)、ジヒドロイソモレリン(dihydroisomorellin)、α-グッチフェリン(α-guttiferin)、β―グッチフェリン(β-guttiferin)、ガンボゲン酸(gambogenic acid)、デオキシガンボゲニン(desoxygambogenin)、ガンボゲル酸(gambogellic acid)、エピガンボグ酸(epigambogic acid)、エピイソガンボグ酸(epiisogambogic acid)、イソガンボゲン酸(isogambogenic acid)、30-ヒドロキシガンボグ酸(30-hydroxygambogic acid)などが挙げられる。
【0006】
ガンボージ樹脂のアセトン抽出物及びそれから得られる化合物は、腫瘍/癌細胞の増殖を抑制する活性を有し、且つ、鎮痛作用および抗炎症作用を有することが報告されている。例えば、引用文献1には、ガンボージ樹脂由来のアセトン抽出物、前記アセトン抽出物から9つの化合物がさらに精製されており、その中には、当時では新規化合物であったフォルモキサントンA(formoxanthone A)及び8つの既知の化合物であるベツリン(betulin)、ベツリン酸(betulinic acid)、モレリン酸、イソモレル酸、ガンボギン酸、イソガンボグ酸、イソモレリノール及びデオキシモレリンが含まれている。
【0007】
前記アセトン抽出物及び9種類の精製化合物は、肝臓がん細胞(HepG2)、肺がん細胞(A549)、乳がん細胞(MCF-7)、結腸がん細胞(HT-29)、白血病細胞(HL-60)、リンパ腫がん細胞(U937)などの腫瘍/がん細胞の増殖を抑制する効果があることが実証された。
【0008】
引用文献2は、当時、ガンボージ樹脂のアセトン抽出物から得られた17つの新規化合物及び5つの分画物(fractionated products)を開示している。これらの17つの新規化合物及び5つの分画物は、腫瘍/癌細胞の増殖を抑制する活性を有することが実証された。また、アセトン抽出物及びそれから得られた5つの分画物には、鎮痛・抗炎症作用があることが実証された。
【0009】
前述のことを考慮すると、医療用途において、ガンボージ樹脂のアセトン抽出物含有の徐放性製剤の開発が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7138428号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0305784号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本出願人は、従来技術の欠点の少なくとも1つを軽減することができる徐放性製剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく、本発明は、製剤の総重量に基づいて、
含有量が25.00wt%~31.25wt%のガンボージ樹脂のアセトン抽出物を含む有効活性成分(active pharmaceutical ingredient、「API」と略称する)と、
含有量が4wt%~25wt%のラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate、「SLS」と略称する)と、
含有量が15.63wt%~23.44wt%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methylcellulose)と、
含有量が6.25wt%~13.38wt%の微結晶セルロース(microcrystalline cellulose)と、
含有量が0.63wt%~1.56wt%の二酸化ケイ素(silicon dioxide)と、
含有量が0.63wt%~1.56wt%のステアリン酸マグネシウム(magnesium stearate)と、
含有量が25.00wt%~40.13wt%のラクトース(lactose)と、
含有量が5.00wt%~7.81wt%のデキストロース(dextrose)と、を含む、ことを特徴とする徐放性製剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、以下の実施形態の詳細に説明することにより明白になる。さまざまな特徴が正確な縮尺で描かれていない場合があることに注意してください。
【
図1】下記実施例2のガンボージ樹脂のアセトン抽出生成物TSB-9-W1の高性能液体クロマトグラフィーのHPLC溶出プロフィール(HPLC elution profile)を示す。
【
図2】本発明の錠剤及び下記実施例4のガンボージ樹脂のアセトン抽出生成物TSB-9-W1のそれぞれのインビトロ溶解率(in vitro dissolution rate)の経時的な変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書の目的のために、「含んでいる」という語は「含めるがこれに限定されない」ことを意味し、「含む」という語もそれに対応する意味を有することが明確に理解されよう。
先行技術の刊行物が本明細書で言及されている場合、そのような言及は、その刊行物が台湾または他の国において本技術分野における一般的な知識の一部を形成していることを認めるものではないことを理解されたい。
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術に熟練した者によって一般的に理解される意味を有する。当技術に熟練した者は、本発明の実施において使用され得る、本明細書に記載されたものと類似または同等の多くの方法及び材料を認識するであろう。実際、本発明は、本明細書に記載された方法及び材料に限定されるものではない。
【0015】
本明細書及び特許請求の範囲の目的のために、別段の記載がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される総量(amounts)、サイズ(sizes)、寸法(dimensions)、比率(proportions)、形状(shapes)、剤形(formulations)、パラメータ(parameters)、パーセンテージ(percentages)、量(quantities)、特性(characteristics)及びその他の数値を表すすべての数は、例え「約(about)」という用語が値、量または範囲とともに明示的に示されていなくても、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。
【0016】
したがって、反対の提示がない限り、以下の明細書及び特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、厳密ではなく、また厳密である必要はないが、公差(tolerances)、変換係数(conversion factor)、四捨五入(rounding off)、測定誤差(measurement error)などを反映して、概算値および/または所望の大きさまたは小ささであってもよく、また、現在開示されている主題によって得られようとする所望の特性に応じて、当業者に知られている他の要因を反映していてもよい。
例えば、値を参照する場合の「約」という用語は、そのような変動が開示された方法を実行するため、または開示された組成物を使用するために適切であるとして、部分の形態では±100%、部分の形態では±50%、部分の形態では±20%、部分の形態では±10%、部分の形態では±5%、部分の形態では±1%、部分の形態では±0.5%または部分の形態では±0.1%の指定された量からの変動を包含することを意味することができる。
【0017】
本発明は、徐放性製剤を提供する。該徐放性製剤は、該徐放性製剤の総重量に基づいて、含有量が25.00wt%~31.25wt%のガンボージ樹脂のアセトン抽出物を含む有効活性成分(API)と、含有量が4wt%~25wt%のラウリル硫酸ナトリウム(SLS)と、含有量が15.63wt%~23.44wt%のヒドロキシプロピルメチルセルロースと、含有量が6.25wt%~13.38wt%の微結晶セルロースと、含有量が0.63wt%~1.56wt%の二酸化ケイ素と、含有量が0.63wt%~1.56wt%のステアリン酸マグネシウムと、含有量が25.00wt%~40.13wt%のラクトースと、含有量が5.00wt%~7.81wt%のデキストロースとを含む。
【0018】
例示的な実施形態において、該徐放性製剤は、該徐放性製剤の総重量に基づいて、含有量が31.25wt%のAPIと、含有量が5wt%のSLSと、含有量が18.75wt%のヒドロキシプロピルメチルセルロースと、含有量が6.25wt%の微結晶セルロースと、含有量が1.56wt%の二酸化ケイ素と、含有量が1.56wt%のステアリン酸マグネシウムと、含有量が27.81wt%のラクトースと、含有量が7.81wt%のデキストロースとを含む。
【0019】
本明細書で使用されるように、「徐放性製剤」は、「放出制御製剤(controlled-release formulation)」などの他の用語と互換的に使用でき、長期間にわたって薬剤を徐々に放出することで血液中の薬剤濃度を一定に保つ製剤を指す。一部の実施形態において、徐放性製剤は、少なくとも12時間から72時間の期間にわたって徐々に薬剤を放出することができる。例示的な実施形態において、徐放性製剤は、少なくとも24時間の期間にわたって徐々に薬剤を放出することができる。
【0020】
本明細書で使用されるように、「有効活性成分」は、「有効成分(active component)」や「生物学的活性化合物(biologically active compound)」などの他の用語と互換的に使用でき、薬理学的に活性(pharmacologically active)であり、それ故に治療的価値を有する任意の物質もしくは材料、または物質と材料の組み合わせを含むものと理解される。
【0021】
本発明によれば、有効活性成分(API)は、約10μmの平均粒子径を有する。
【0022】
本発明によれば、ガンボージ樹脂のアセトン抽出物は、以下のステップa~ステップdを含む方法により製造することができる。
ステップaにおいて、ガンボージ樹脂を粉末に粉砕してガンボージ樹脂粉末を得た後、該ガンボージ樹脂粉末をアセトンで抽出して、第1の抽出物を得る。
ステップbにおいて、該第1の抽出物を超音波処理して、第2の抽出物を得る。
ステップcにおいて、該第2の抽出物をろ過処理して、ろ過液を得る。
ステップdにおいて、ろ過液を濃縮処理して、アセトンを除去する。
【0023】
一部の実施形態において、ステップaにおいて、前記ガンボージ樹脂粉末とアセトンとの重量体積比(g/mL)は、1:2~1:3の範囲内にある。
一部の実施形態において、ステップbにおいて、前記超音波処理は、温度が20℃~35℃の範囲内で行う。
一部の実施形態において、ステップcにおいて、前記ろ過処理は、孔径が3μm~6μmの範囲内のろ紙を使用して行う。
【0024】
本発明によれば、ガンボージ樹脂のアセトン抽出物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析すると、
図1に示されるような高速液体クロマトグラフィー(HPLC)溶出プロフィールを得る。
【0025】
本発明によれば、該徐放性製剤は、当業者に周知の技術を用いて、経口投与(oral administration)に適した剤型(dosage form)にすることができる。剤型の例として、錠剤(tablet)(例えば、コーティングされた錠剤(coated tablet))、顆粒(granule)、粉末(powder)、カプセル(capsule)(例えば、コーティングされたカプセル(coated capsule)及びペレットが充填されたカプセル(pellet-filled capsule))、ペレット(pellet)及び丸薬(pill)が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な実施形態において、該徐放性製剤は、錠剤に製造される。
【0026】
本発明によれば、該徐放性製剤は、当技術分野の当業者に周知の直接圧縮(direct compression)または乾式造粒(dry granulation)を用いて錠剤に製造することができる。
【0027】
以下、本発明の実施例について説明する。これらの実施例は、例示的かつ説明的なものであり、且つ、本発明を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【実施例0028】
<実施例>
基本的な実験材料:
実施例1.ガンボージ樹脂のアセトン抽出物TSB-9-W1の調製
ガンボージ樹脂のアセトン抽出物TSB-9-W1(即ち、有効活性成分(API))は、米国特許第7138428号明細書の実施例1に記載されている方法を若干改変した方法で製造した。先ず、ガンボージ樹脂を粉末に粉砕してガンボージ樹脂粉末を得た後、篩(mesh NO.40、台湾Kuang Yang社)を使用して該ガンボージ樹脂粉末を篩過し、そして、篩過したガンボージ樹脂粉末をアセトン(該ガンボージ樹脂粉末とアセトンとの重量体積比(g/mL)は、1:3である)に室温で12時間含浸させて抽出し、それにより第1の抽出物を得た。そして、初期水温が20℃~35℃の範囲内で、超音波抽出設備(メーカー:台湾Taiwan Supercritical Technology Co., Ltd.社、型番:ES-600N)を使用して該第1の抽出物を1時間超音波振動して、第2の抽出物を得た。孔径が6μmのろ紙NO.1(メーカー:ADVANTEC社)を使用して該第2の抽出物をろ過処理して、ろ紙にある残留物(residue)とろ過液を得た。その後、該残留物に対して上記のアセトン含浸、上記の超音波振動及び上記のろ過処理を4回連続して行った。後の4回のアセトン含浸において、該残留物とアセトンとの重量体積比(g/mL)は、1:2である。その後、全5回のろ過で得られた濾液をすべて集め、ロータリーエバポレーター(メーカー:台湾Hocon-Engineering Enterprise Co., Ltd.社、型番:16A8-19)を用いて濃縮処理を行って、アセトンの大部分を除去し、そして、40℃で真空炉(メーカー:台湾Dengyng Instrument Co., Ltd.社、型番:DOV-40)を使用して乾燥抽出物を得た。そして、孔径が0.2mmの篩が装備されている床置き型粉砕機(メーカー:台湾Yu Chi Ling Co., Ltd.社、型番:FM)を使用して、該乾燥抽出物を粉砕して、ガンボージ樹脂のアセトン抽出物TSB-9-W1の乾燥粉末を得た。
【0029】
実施例2.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析
実験手順:
実施例1で得られたガンボージ樹脂のアセトン抽出物TSB-9-W1の乾燥粉末を、適量のアセトニトリルに溶解して、1mg/mLの濃度を有するアセトン抽出物TSB-9-W1の試験サンプルを得た。
該試験サンプルに対して、当業者に周知の技術を使用して、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を行った。HPLCを実行するための操作パラメータと条件を以下の表1にまとめる。
【0030】
【0031】
結果:
図1は、ガンボージ樹脂のアセトン抽出生成物TSB-9-W1の高性能液体クロマトグラフィーのHPLC溶出プロフィールである。
図1に示されるように、0分~70分の保持時間の間に13個の主要ピーク(即ちピーク1~ピーク13)が現れ、ガンボージ樹脂のアセトン抽出生成物TSB-9-W1には13種の主要な化合物があることを示している。
【0032】
実施例3.アセトン抽出生成物TSB-9-W1含有の疎水性長時間作用性錠剤の調製
実験材料:
アセトン抽出生成物TSB-9-W1含有の疎水性長時間作用性錠剤(医薬品として使用される)を製造するための成分及びその量は、表2に示される。
【0033】
【0034】
実験手順:
先ず、実施例1で得られたアセトン抽出生成物TSB-9-W1を(APIとして)平均粒子径が10μmとなるように粉砕した。SLS、ヒドロキシプロピルメチルセルロースK4M、微結晶セルロース102、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、ラクトース及びデキストロースのそれぞれを、40メッシュの篩(mesh NO.40、台湾Kuang Yang社)を使用して篩過した。そして、10μmの平均粒子径を有するアセトン抽出生成物TSB-9-W1、篩過されたSLS、篩過されたヒドロキシプロピルメチルセルロースK4M、篩過された微結晶セルロース102、篩過されたラクトース及び篩過されたデキストロースを混合して第1の混合物を得てから、回転式打錠機(メーカー:台湾Chuang Pao Special Precision Industry Co., Ltd.社、型番:CB-747)を使用して該第1の混合物を圧縮して塊にした。そして、該塊を粉末に粉砕した後、粉砕粉末を20メッシュのメッシュ番号を有する篩(mesh NO.20、台湾Kuang Yang社)を使用して篩過した。そして、該粉砕粉末を篩過された二酸化ケイ素及び篩過されたステアリン酸マグネシウムと混合して、第2の混合物を得た。上記の回転式打錠機を使用して該第2の混合物を圧縮して錠剤にした。得られた各錠剤は、0.9cm(幅)×1.6cm(長さ)×0.515cm(高さ)の寸法及び640mgの重量を有する。
【0035】
実施例4.アセトン抽出生成物TSB-9-W1含有の錠剤の溶解試験
実施例3で得られた錠剤(即ち徐放性製剤)に対して溶解試験を行って、錠剤から放出されるアセトン抽出生成物TSB-9-W1のインビトロ放出プロフィールを評価した。比較のために、実施例1で得られたアセトン抽出生成物TSB-9-W1に対して同様の溶解試験を行った。
【0036】
実験手順:
USP溶出装置II機械(USP dissolution apparatus II machine、メーカー:中国Tianda Tianfa Technology Co., Ltd社、型番:RC806D)を使用して、それぞれがアセトン抽出生成物TSB-9-W1(即ちAPI)を含有する3つの錠剤のインビトロ溶解速度を評価した。先ず、3つの錠剤のそれぞれを、溶剤に50mMのリン酸二水素ナトリウム溶液(sodium phosphate monobasic solution)を使用した濃度が0.25%のSLS溶液900mL(pH6.8)に置いて、パドル速度(paddle speed)50rpmで37±0.5℃で24時間撹拌した。撹拌期間において、不定期(約0.5時間から3時間ごと)に3つの錠剤のそれぞれで得られた溶解溶液5mLを収集して、0.45μmの多孔性(porosity)を有するフィルター(メーカー:米Pall Corporation)を使用して、試験溶液としてろ過液を収集した。得られた試験溶液に対して、UV-VIS分光光度計(UV-VIS spectrophotometer、メーカー:中国Shishin Technology Co., Ltd社、型番:SP-8001)を使用して360nm(A360)の波長で吸光度を測定した。更に、200mgの実施例1で得られたアセトン抽出生成物TSB-9-W1を、溶剤に50mMのリン酸二水素ナトリウム溶液を使用した濃度が0.25%のSLS溶液900mL(pH6.8)に溶解して、同じ溶解試験を行った。
【0037】
そして、アセトン抽出生成物TSB-9-W1とアセトン抽出生成物TSB-9-W1を含有する3つの錠剤とのそれぞれで得られたA360の値を、それぞれのA360値に対するアセトン抽出生成物TSB-9-W1(即ちAPI)の異なる既知濃度の標準を使用して事前に作成された標準曲線に従って、mg/mLで表記するアセトン抽出生成物TSB-9-W1(即ちAPI)濃度にそれぞれ変換し、そして、異なる時点において、アセトン抽出生成物TSB-9-W1と本発明のアセトン抽出生成物TSB-9-W1を含有する3つの錠剤とのそれぞれのTSB-9-W1(即ちAPI)の総溶解量(mg)を計算した。
【0038】
アセトン抽出生成物TSB-9-W1と本発明のアセトン抽出生成物TSB-9-W1を含有する3つの錠剤とのそれぞれの溶解率(%)は、APIの総溶解量とAPIの初期重量(即ち200mg)とを下記の式1に代入して算出した。
【0039】
【0040】
式中、A=溶解率(%)
B=アセトン抽出生成物TSB-9-W1と各本発明の錠剤とのAPIの総溶解量(mg)
C=アセトン抽出生成物TSB-9-W1と各本発明の錠剤とのAPIの初期重量(即ち200mg)
【0041】
このようにして得られた3つの錠剤の各時点の溶解率を平均して、本発明の錠剤の各時点の平均溶解率を求めた。本発明の錠剤(即ち徐放性製剤)の各時点の平均溶解率及びアセトン抽出生成物TSB-9-W1の溶解率を、時間に対してプロットし、対応する溶解プロフィールを作成した。
【0042】
結果:
図2には、本発明の錠剤(即ち徐放性製剤)及びアセトン抽出生成物TSB-9-W1のインビトロ溶解率の変化が示される。
図2に示されるように、アセトン抽出生成物TSB-9-W1の溶解率は、溶解試験の開始から2時間後90%以上であり、一方、本発明の錠剤(即ち徐放性製剤)の平均溶解率は、溶解試験の開始から2時間経過した時点で16.1%のみである。更に、本発明の錠剤(即ち徐放性製剤)の平均溶解率は、全期間において上昇が緩慢であり、24時間の溶解試験の終了時でも80%付近に達したのみである。まとめると、本発明の錠剤(即ち徐放性製剤)は、効果的且つ持続的にアセトン抽出生成物TSB-9-W1(即ちAPI)を放出することができる。
【0043】
上記の結果によれば、本発明の徐放性製剤は、効果的且つ持続的にガンボージ樹脂のアセトン抽出生成物を放出することができる。
【0044】
上記においては、説明のため、実施形態の完全な理解を促すべく多くの具体的な詳細が示された。しかしながら、当業者であれば、一またはそれ以上の他の実施形態が具体的な詳細を示さなくとも実施され得ることが明らかである。また、本明細書における「一つの実施形態」「一実施形態」を示す説明において、序数などの表示を伴う説明は全て、特定の態様、構造、特徴を有する本発明の具体的な実施に含まれ得るものであることと理解されたい。更に、本説明において、時には複数の変化例が一つの実施形態、図面、またはこれらの説明に組み込まれているが、これは本説明を合理化させるためのもので、また、本開示の多面性が理解されることを目的としたものであり、また、一実施形態における一またはそれ以上の特徴あるいは特定の具体例は、適切な場合には、本開示の実施において、他の実施形態における一またはそれ以上の特徴あるいは特定の具体例と共に実施され得る。
【0045】
以上、本発明の例示的な実施形態と考えられるものを記載したが、本発明は開示された実施形態に限定されるものではなく、最も広い解釈の精神及び範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾及び均等な構成を包含するものとする。