(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025143190
(43)【公開日】2025-10-01
(54)【発明の名称】ニューロモルフィックコンピューティング装置及びその動作方法
(51)【国際特許分類】
G06N 3/063 20230101AFI20250924BHJP
G06G 7/60 20060101ALI20250924BHJP
【FI】
G06N3/063
G06G7/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025003812
(22)【出願日】2025-01-10
(31)【優先権主張番号】10-2024-0037001
(32)【優先日】2024-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
2.MEMORY STICK
3.ブルートゥース
4.BLUETOOTH
5.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】金 完起
(72)【発明者】
【氏名】黄 榮南
(57)【要約】 (修正有)
【課題】興奮性、抑制性シナプスに連結可能かつ発火率を調整するニューロモルフィックコンピューティング装置及び動作方法を提供する。
【解決手段】シナプスアレイに連結する複数の人工ニューロン141夫々は、第1ノードN1と連結するゲート、電源電圧VDDを受信する電源端及び出力スパイクを出力する第2ノードN2に連結する強誘電体トランジスタFeFET、第1入力スパイクを受信するゲート、第1入力電源電圧Vexを受信する第1入力電源端と第1ノードとに連結する第1入力トランジスタM1exc、第2入力スパイクを受信するゲート、第2入力電源電圧Vinを受信する第2入力電源端と第1ノードとに連結する第2入力トランジスタM1inh、Vadj調整電圧を受信するゲート、第2ノードと接地端とに連結する調整トランジスタM2及びリセット電圧Vrstを受信するゲート、第1ノードと接地端とに連結するリセットトランジスタM3を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シナプスアレイに連結された複数の人工ニューロンを有するニューロモルフィックコンピューティング装置において、
前記複数の人工ニューロンのそれぞれは、
第1ノードに連結された第1ゲートを有し、電源電圧を受信する電源端と出力スパイクを出力する第2ノードとの間に連結される強誘電体トランジスタと、
第1入力スパイクを受信する第2ゲートを有し、第1入力電源電圧を受信する第1入力電源端と前記第1ノードとの間に連結される第1入力トランジスタと、
第2入力スパイクを受信する第3ゲートを有し、第2入力電源電圧を受信する第2入力電源端と前記第1ノードとの間に連結される第2入力トランジスタと、
調整電圧を受信する第4ゲートを有し、前記第2ノードと接地端との間に連結される調整トランジスタと、
リセット電圧を受信する第5ゲートを有し、前記第1ノードと前記接地端との間に連結されるリセットトランジスタを含む、ニューロモルフィックコンピューティング装置。
【請求項2】
前記第1入力スパイクは興奮性シナプスから受信され、
前記第2入力スパイクは抑制性シナプスから受信される、請求項1に記載のニューロモルフィックコンピューティング装置。
【請求項3】
前記第1入力トランジスタは、PMOS(P-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタを含み、
前記第2入力トランジスタは、NMOS(N-channel Metal-Oxide Semiconductor)トランジスタを含む、請求項1に記載のニューロモルフィックコンピューティング装置。
【請求項4】
前記強誘電体トランジスタは、共通連結されたソースとウェルを有するように実現される、請求項1に記載のニューロモルフィックコンピューティング装置。
【請求項5】
前記第1入力電源電圧は正の電圧であり、
前記第2入力電源電圧は負の電圧である、請求項1に記載のニューロモルフィックコンピューティング装置。
【請求項6】
前記電源電圧を可変することで人工ニューロンの発火率が調節される、請求項1に記載のニューロモルフィックコンピューティング装置。
【請求項7】
前記第1入力電源電圧、前記第2入力電源電圧、前記調整電圧、あるいは、前記リセット電圧を可変することで人工ニューロンの発火率が調節される、請求項1に記載のニューロモルフィックコンピューティング装置。
【請求項8】
前記発火率を調節するための制御ユニットをさらに含む、請求項7に記載のニューロモルフィックコンピューティング装置。
【請求項9】
前記シナプスアレイは、2次元構造に配列された興奮性シナプスと抑制性シナプスを含む、請求項1ないし8のうちの何れか一項に記載のニューロモルフィックコンピューティング装置。
【請求項10】
前記シナプスアレイは、3次元構造に交互に配列された興奮性シナプスと抑制性シナプスを含む、請求項1ないし8のうちの何れか一項に記載のニューロモルフィックコンピューティング装置。
【請求項11】
興奮性ビットラインと興奮性ソースラインとの間に連結された第1強誘電体トランジスタを有する興奮性シナプスと抑制性ビットラインと抑制性ソースラインとの間に連結された第2強誘電体トランジスタを有する抑制性シナプスを交互に配置したシナプスアレイと、
前記第1強誘電体トランジスタ及び前記第2強誘電体トランジスタのゲートに連結されたワードラインに対応する入力スパイクを提供するシナプス前ニューロン回路と、
前記興奮性ビットラインに第1ビットライン電圧を提供し、前記抑制性ビットラインに第2ビットライン電圧を提供するビットラインドライバと、
前記興奮性ソースラインのうちいずれかから興奮性入力スパイクを受信し、前記抑制性ソースラインのうちいずれかから抑制性入力スパイクを受信し、LIF(Leaky Integration-and-Fire)動作を実行することで出力スパイクを出力する人工ニューロンを含む、ニューロモルフィックコンピューティング装置。
【請求項12】
前記第1ビットライン電圧と前記第2ビットライン電圧は、互いに異なるものである、請求項11に記載のニューロモルフィックコンピューティング装置。
【請求項13】
前記人工ニューロンのそれぞれの発火率を調節する制御ユニットをさらに含む、請求項11に記載のニューロモルフィックコンピューティング装置。
【請求項14】
前記ワードラインは積層されたレイヤーに配置され、
前記制御ユニットは、前記積層されたレイヤーのそれぞれに応じて、前記発火率を調節する、請求項13に記載のニューロモルフィックコンピューティング装置。
【請求項15】
前記人工ニューロンのそれぞれは、
第1ノードに連結された第1ゲートを有し、電源電圧を受信する電源端と出力スパイクを出力する第2ノードとの間に連結される強誘電体トランジスタと、
第1入力スパイクを受信する第2ゲートを有し、第1入力電源電圧を受信する第1入力電源端と前記第1ノードとの間に連結される第1入力トランジスタと、
第2入力スパイクを受信する第3ゲートを有し、第2入力電源電圧を受信する第2入力電源端と前記第1ノードとの間に連結される第2入力トランジスタと、
調整電圧を受信する第4ゲートを有し、前記第2ノードと接地端との間に連結される調整トランジスタと、
リセット電圧を受信する第5ゲートを有し、前記第1ノードと前記接地端との間に連結されるリセットトランジスタを含む、請求項11ないし14のうちの何れか一項に記載のニューロモルフィックコンピューティング装置。
【請求項16】
興奮性シナプスと抑制性シナプスに連結された人工ニューロンを有するニューロモルフィックコンピューティング装置の動作方法において、
前記興奮性シナプスと前記抑制性シナプスを介して入力スパイクを訓練する段階と、
前記人工ニューロンの発火率を調節する段階と、
前記調節する段階で調節された発火率に応じて前記人工ニューロンの出力スパイクを訓練する段階を含む、方法。
【請求項17】
前記人工ニューロンのそれぞれは、
第1ノードに連結された第1ゲートを有し、電源電圧を受信する電源端と出力スパイクを出力する第2ノードとの間に連結される強誘電体トランジスタと、
対応する興奮性シナプスから第1入力スパイクを受信する第2ゲートを有し、第1入力電源電圧を受信する第1入力電源端と前記第1ノードとの間に連結される第1入力トランジスタと、
対応する抑制性シナプスから第2入力スパイクを受信する第3ゲートを有し、第2入力電源電圧を受信する第2入力電源端と前記第1ノードとの間に連結される第2入力トランジスタと、
調整電圧を受信する第4ゲートを有し、前記第2ノードと接地端との間に連結される調整トランジスタと、
リセット電圧を受信する第5ゲートを有し、前記第1ノードと前記接地端との間に連結されるリセットトランジスタを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
デジタルデータに対応する入力スパイクを生成する段階と、
前記出力スパイクのそれぞれに対応するデジタルデータを出力する段階をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記発火率を調節する段階は、
前記第1入力電源電圧、前記第2入力電源電圧、前記調整電圧、前記リセット電圧のうち少なくとも1つを調節する段階を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記興奮性シナプスと前記抑制性シナプスは、3次元積層されたFeMBCFETで実現される、請求項17ないし19のうちの何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューロモルフィックコンピューティング装置及びその動作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Spiking Neural Network(SNN)は、生物学的神経網をモデリングした人工神経網の一類型である。このネットワークは、生物学的ニューロンが発火(spiking)する方式を模倣して動作する。各ニューロンは、一定の時間間隔で電気的な信号を生成し、このような信号は、他のニューロンとの連結を介して伝達される。SNNは一般的な人工神経網とは異なるいくつかの重要な特徴を有している。第一に、SNNは時間的な情報を考慮して作動する。ニューロンの発火時間と間隔は、情報処理に重要な役割を果たす。第二に、SNNはイベントが発生する場合にのみ活性化されるイベント駆動型処理(Event-driven processing)を用いる。これにより、活性化されたニューロンのみが演算に関与するため、電力と計算リソースを効率的に用いることができる。第三に、SNNにおけるシナプスの強度は、時間とともに変化し得る。これにより、シナプス強度を効果的に調節して学習及び記憶機能を改善することができる。第四に、SNNは入力信号を時間的に積分し、基準値を超過する場合にのみニューロンが発火する。これにより、入力パターンの変化及び時間的な特性を処理することができる。SNNは、センサデータ処理、パターン認識、時間的情報処理など、様々な応用分野に適用されることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2018-0133061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新規なニューロモルフィックコンピューティング装置及びその動作方法を提供することにある。
【0005】
本発明の目的は、興奮性シナプスと抑制性シナプスに連結可能なニューロモルフィックコンピューティング装置及びその動作方法を提供することにある。
【0006】
本発明の目的は、発火率を調整するニューロモルフィックコンピューティング装置及びその動作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置は、シナプスアレイに連結された複数の人工ニューロンを有し、上記複数の人工ニューロンのそれぞれは、第1ノードに連結されたゲートを有し、電源電圧を受信する電源端と出力スパイクを出力する第2ノードとの間に連結される強誘電体トランジスタと、第1入力スパイクを受信するゲートを有し、第1入力電源電圧を受信する第1入力電源端と上記第1ノードとの間に連結される第1入力トランジスタと、第2入力スパイクを受信するゲートを有し、第2入力電源電圧を受信する第2入力電源端と上記第1ノードとの間に連結される第2入力トランジスタと、調整電圧を受信するゲートを有し、上記第2ノードと接地端との間に連結される調整トランジスタと、リセット電圧を受信するゲートを有し、上記第1ノードと上記接地端との間に連結されるリセットトランジスタを含むことができる。
【0008】
本発明の他の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置は、興奮性ビットラインと興奮性ソースラインとの間に連結された第1強誘電体トランジスタを有する興奮性シナプスと抑制性ビットラインと抑制性ソースラインとの間に連結された第2強誘電体トランジスタを有する抑制性シナプスを交互に配置したシナプスアレイと、上記第1強誘電体トランジスタ及び上記第2強誘電体トランジスタのゲートに連結されたワードラインに対応する入力スパイクを提供するシナプス前ニューロン回路と、上記興奮性ビットラインに第1ビットライン電圧を提供し、上記抑制性ビットラインに第2ビットライン電圧を提供するビットラインドライバと、上記興奮性ソースラインのいずれかから興奮性入力スパイクを受信し、上記抑制性ソースラインのいずれかから抑制性入力スパイクを受信し、LIF(Leaky Integration-and-Fire)動作を実行することで出力スパイクを出力する人工ニューロンを含むことができる。
【0009】
本発明の実施形態による興奮性シナプスと抑制性シナプスに連結された人工ニューロンを有するニューロモルフィックコンピューティング装置の動作方法は、上記興奮性シナプスと上記抑制性シナプスを介して入力スパイクを訓練する段階と、上記人工ニューロンの発火率を調節する段階と、上記調節された発火率によって上記人工ニューロンの出力スパイクを訓練する段階を含むことができる。
【0010】
本発明の他の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置は、興奮性ビットラインと興奮性ソースラインとの間に連結され、積層されたレイヤーのそれぞれに配置された第1強誘電体トランジスタと、抑制性ビットラインと抑制性ソースラインとの間に連結され、上記積層されたレイヤーのそれぞれに配置された第2強誘電体トランジスタと、上記興奮性ビットラインと上記抑制性ビットラインに対応するビットライン電圧を提供するビットラインドライバと、上記興奮性ソースラインと上記抑制性ソースラインに連結された人工ニューロンを含み、上記人工ニューロンは、上記興奮性ソースラインを介して第1入力スパイクと上記抑制性ソースラインを介して受信された第2入力スパイクを受信し、LIF(Leaky Integration-and-Fire)動作を行うことで出力スパイクを出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置及びその動作方法は、興奮性シナプスと抑制性シナプスを連結可能にすることで、モデル柔軟性を増加させることができる。
【0012】
本発明の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置及びその動作方法は、発火率(firing rate)調節方式を改善することで、モデル柔軟性を増加させることができる。
【0013】
本発明の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置及びその動作方法は、3D積層することでチップ面積を減少させることができる。また、本発明のニューロモルフィックコンピューティング装置は、柔軟なニューロン設定によりモデル柔軟性を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下に添付される図面は、本実施形態に関する理解を助けるためのものであり、詳細な説明と共に実施形態を提供する。
【
図1】一般的な人工ニューロンの機能を説明する図面である。
【
図2】一般的なSNNのスパイキングニューロンを例示的に示す図面である。
【
図3】一般的なFeFET基盤のスパイキングニューロン回路を例示的に示す図面である。
【
図4】本発明の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置を例示的に示す図面である。
【
図5】本発明の実施形態による人工ニューロンを例示的に示す図面である。
【
図6】一般的なSNNにおけるレイヤー別スパイクの伝達過程を例示的に示す図面である。
【
図7】SNNで入力スパイクを訓練することで出力スパイクを得るタイミングを例示的に示す図面である。
【
図8a】電源電圧調節による発火率調節方式と本発明の実施形態による発火率調節方式を例示的に示す図面である。
【
図8b】電源電圧調節による発火率調節方式と本発明の実施形態による発火率調節方式を例示的に示す図面である。
【
図9】本発明の他の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置を例示的に示す図面である。
【
図10】
図9に示されたレイヤー別の柔軟な人工ニューロン設定を説明するための図面である。
【
図11】積層されたレイヤー別に柔軟に人工ニューロン設定を例示的に示す図面である。
【
図12】本発明の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置の動作を例示的に示すフローチャートである。
【
図13】本発明の実施形態によるスパイキング神経網を簡略に示す図面である。
【
図14】本発明の実施形態による電子装置を例示的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図面を用いて本発明の技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる程度に本発明の内容を明確かつ詳細に記載する。
【0016】
一般的に、ニューロモルフィック(neuromorphic)コンピューティングは、人間の脳の神経細胞であるニューロンとシナプスの作動原理を模倣してコンピュータシステムを構築したものである。ANN(Artificial Neural Network)を使用して情報を処理して保存することが一般的である。脳は、大量の情報を同時に処理する能力を有している。ニューロモルフィックコンピューティングは、このような並列処理能力を模倣して動作する。脳は、エネルギーを効率的に使用して非常に複雑な作業を処理することができる。ニューロモルフィックコンピューティングは、このようなエネルギー効率性を模倣して設計されることで、従来のコンピューティングと比較してエネルギーを節約することができる。ニューロモルフィックコンピューティングは、学習能力と融通の利くシステムを作ることで、特定の動作に制限されず、様々な種類の動作を処理することができる。ニューロモルフィックコンピューティングは、機械学習及び人工知能の分野で多くの関心を集めており、パターン認識、音声認識、イメージ処理、及び自律走行などの様々な応用分野に適用できる。
【0017】
ニューロモルフィックコンピューティングは、主にNPU(Neural Processing Unit)に近いAnalog MAC(Multiply-and-Accumulate)方式及び頭脳作動にもう少し近いSNN(Spiking Neural Network)方式を含む。SNNの主な構成要素は、人工シナプス(artificial synapse)と人工ニューロン(artificial neuron)を含む。人工シナプスと人工ニューロンは、様々なメモリ素子で実現されることができる。
【0018】
本発明は、SNN実現に適用可能なFeFET(Ferroelectric Field Effect Transistor)基盤の人工ニューロン(artificial neuron)を開示する。特に、本発明は、FeFETシナプスアレイ(synapse array)基盤のアーキテクチャ及び3次元積層が可能なFeMBCFET(Ferroelectric Multi Bridge Channel Field Effect Transistor)シナプス基盤のアーキテクチャを開示する。
【0019】
図1は、一般的な人工ニューロンの機能を説明する図面である。人工ニューロンは、入力信号を受け入れて加重値をかけて、その結果を活性化関数を介して変換して出力を生成する。このような方式で人工ニューロンは複雑なパターン及び関係をモデリングして学習する。例えば、SSNのスパイキングニューロンの機能は、推論過程と学習過程を含む。推論過程は、入力を累積して基準値以上であると発火(firing)することにより、スパイク(spike)を出力する。学習過程は、入力スパイク(input spike)と出力スパイク(output spike)の時間差に応じて対応するシナプス(synapse)の加重値をアップデートする。
【0020】
一般的に、人工ニューロンは、ニューロンの行動を模写するように製作された電子素子を通称する。計算性能及び集積度を向上させるために、ほとんどのニューロン素子は最も単純なモデルであるLIF(Leaky Integration-and-Fire)動作を模写している。LIF動作は、パルス入力に応じて信号を徐々に累積(integration)し、入力がない場合は信号を再度減衰(leaky)し、動作中に信号が閾値電圧(threshold voltage)を超過すると強いスパイク信号を発火(firing)する。
【0021】
強誘電体(ferroelectrics)は、2つの分極(polarization)状態を介してメモリ素子に多様に応用されている物質である。特に、単に2つの分極状態を有するものではなく、入力信号の累積に応じて部分分極(partial polarization)が起こるため、入力信号の累積を用いてニューロン素子の応用に適合する。ニューロンには、入力に応じて膜電位(membrane potential)が累積される興奮性連結だけでなく、膜電位を減衰させて発火(firing)を抑制する抑制性連結も存在する。ニューロンを連結して神経網を構成する場合、抑制性連結を介してニューロンの動作をさらに容易に制御することによって、神経網の全体の動作効率が大きく改善されることができる。
【0022】
図2は、一般的なSNNのスパイキングニューロンを例示的に示す図面である。SNNの一般的な作動原理は次のとおりである。シナプスは、シナプス前ニューロン(Pre-synaptic neuron)からスパイクとも知られた活動電位を受信すると、PSP(Post-synaptic potential)を放出する。PSPは、順にシナプス後のスパイキングニューロンの膜電位を刺激する。神経膜電位は、PSPを統合する時間的進化を示す。膜電位が閾値電圧を超えると、シナプス後ニューロンが活性化される。すなわち、出力スパイク(output spike)を発火する。一般LIFニューロンを考慮すると、膜電位uは次の方程式によって決定される。
【数1】
ここで、f(u)は神経膜に蓄積された電荷の漏れを説明する漏れ項であり、w
iはシナプスウェイト、I
iは興奮性あるいは抑制性PSPによって変わる入力電流である。興奮性入力信号の電圧パルスが到着すると、膜電位は時間によって持続的に発電し、閾値電圧を超えると神経回路が出力電圧パルスを伝送して発火イベントを生成する。FeFET基盤のスパイキングニューロンは、固有の状態変数、強誘電性分極として膜電位(u)を表す。
【0023】
図3は、一般的なFeFET基盤のスパイキングニューロン回路を例示的に示す図面である。
図3を参照すると、LIFニューロンは1つのFeFET及び3つのトランジスタ(M1~M3)で実現されている。追加されたトランジスタ(M4~M6)は、適応性(adaptation)を支援する。
図3に示されたように、入力スパイク(input spikes)がトランジスタM1に入力される度に、電源電圧(VDD)がFeFETニューロンのゲートに印加される。FeFETの強磁性物質は、多結晶(polycrystalline)状態として多数のドメインからなっている。入力スパイクが入力される度に、強磁性ドメインのうち一部の偏光状態が変わる。これにより、FeFETニューロンの閾値電圧が低くなることができる。閾値電圧が十分に低くなって、FeFETニューロンがON状態になると、負荷トランジスタM2を介して電圧形態でスパイクを出力する。スパイク出力で発火(firing)し、トランジスタM3を用いてFeFETニューロンの偏光を元に戻すことで閾値電圧が高くなる。
【0024】
入力スパイク(例えば、PSP)はPMOSトランジスタM1に印加される。初期にノード電圧(V0)と(V1)が全て0Vである。入力スパイクが印加されることによって、ノード電圧(V0)が増加し、FeFETのゲートに負の抗電圧パルスが印加される。連続的なパルスを印加すると、FeFETは高い閾値電圧(VT)状態から低い閾値電圧(VT)状態に突然変わり、ドレイン電流(ID)は増加する。これに伴って出力スパイクが出力され、ノード電圧(V1)が増加する。出力スパイクが生成されると、リセット信号がトランジスタM3に印加される。スパイク間の間隔中にトランジスタM1が遮断されながら、ノード電圧(V0)は0Vにフールダウンされる。これにより、FeFET全体に負のゲートソース電圧(VGS)が発生し、分極が反対方向に転換され、FeFETが高い閾値電圧(VT)状態に再設定される。
【0025】
また、追加のトランジスタ(M4~M6)は、人工ニューロンの活動を調節し、すべての出力スパイク後に発火速度を低くするバイオインスピレーション適応性メカニズムを実行する。キャパシタ(CP)は対応するノードの寄生キャパシタである。すべての出力スパイクイベント中にノード電圧(V1)が高くなると、トランジスタ(M4)がターンオンし、これに伴って順にノード電圧(V2)が増加する。ノード電圧(V2)の放電速度は、追加のトランジスタを追加することによって制御されることができる。ノード電圧(V2)が増加することによって、トランジスタ(M5)は出力スパイクが発生する度に徐々にターンオンする。結果的に、ノード電圧(V0)の放電速度が増加する。
【0026】
本発明の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置は、FeFET/FeMBCFETシナプスアレイ、興奮性(excitatory)シナプスと抑制性(inhibitory)シナプスを受信する人工ニューロン、または柔軟なニューロン設定のためのレイヤーバッファ(layer buffer)を含むことができる。本発明のニューロモルフィックコンピューティング装置は、興奮性シナプスと抑制性シナプスを連結可能にすることで、モデル柔軟性を増加させることができる。また、本発明のニューロモルフィックコンピューティング装置は、ニューロン発火率(firing rate)調節方式を改善することで、モデル柔軟性を増加させることができる。また、本発明のニューロモルフィックコンピューティング装置は、3D積層することでチップ面積を減少させることができる。また、本発明のニューロモルフィックコンピューティング装置は、柔軟なニューロン設定でモデル柔軟性を増加させることができる。
【0027】
図4は、本発明の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置100を例示的に示す図面である。
図4を参照すると、ニューロモルフィックコンピューティング装置100は、シナプスアレイ110、シナプス前ニューロン回路120、ビットラインドライバ130、及びスパイキングニューロン回路140を含むことができる。
【0028】
シナプスアレイは、少なくとも1つの第1ストリング111(興奮性シナプス)及び少なくとも1つの第2ストリング112(抑制性シナプス)を含むことができる。第1ストリング111は、興奮性ビットラインBLeと興奮性ソースラインSLeに連結された複数の第1強誘電体トランジスタを含むことができる。第1強誘電体トランジスタのそれぞれは、ワードライン(WL1~WL8)に連結されたゲートを含むことができる。ワードライン(WL1~WL8)のそれぞれは、入力スパイクを伝達することができる。一方、
図4に示されたワードラインの個数は8であるが、本発明はここに制限されない。第2ストリング112は、抑制性ビットラインBLiと抑制性ソースラインSLeに連結された複数の第2強誘電体トランジスタを含むことができる。第2強誘電体トランジスタのそれぞれは、ワードライン(WL1~WL8)に連結されたゲートを含むことができる。ワードライン(WL1~WL8)のそれぞれは入力スパイクを伝達することができる。
【0029】
シナプス前ニューロン回路120は、データに対応する入力スパイクを生成し、対応するワードライン(WL1~WL8)のそれぞれに入力スパイクを伝達するように実現されることができる。
【0030】
ビットラインドライバ130は、興奮性ビットラインBLe及び抑制性ビットラインBLiで対応するビットライン電圧を提供するように実現されることができる。実施形態において、ビットライン電圧は互いに異なるか又は同じであることができる。
【0031】
スパイキングニューロン回路140は、複数の人工ニューロンを含むことができる。人工ニューロンのそれぞれは、第1ストリングに連結された興奮性ソースラインSLeから興奮性信号を受信し、第2ストリングに連結された抑制性ソースラインSLiから抑制性信号を受信し、興奮性信号と抑制性信号に対してLIF動作を行うことで出力スパイクを出力するように実現されることができる。
【0032】
本発明の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置100は、FeFET基盤のシナプスアレイ110及び人工ニューロンを含むことができる。ここで、FeFET基盤のシナプスアレイ110は、興奮性シナプスカラム(excitatory synapse column;第1ストリング)と抑制性シナプスカラム(inhibitory synapse column;第2ストリング)を組(pair)で配置し、対応する人工ニューロンが各組を処理することができる。
【0033】
図5は、本発明の実施形態による人工ニューロン141を例示的に示す図面である。
図5を参照すると、人工ニューロン141は、第1入力トランジスタM1exc、第2入力トランジスタM1inh、調整トランジスタM2、リセットトランジスタM3、及び強誘電体トランジスタFeFETを含むことができる。
【0034】
第1入力トランジスタM1excは、第1ノードN1と第1電源端との間に連結されることができる。第1電源端は第1入力電源電圧Vexを受信することができる。ここで、第1入力電源電圧VexはOVより大きいことができる。第1入力トランジスタM1excは、興奮性信号を受信するゲートを含むことができる。実施形態において、第1入力トランジスタM1excはP型トランジスタで実現されることができる。
【0035】
第2入力トランジスタM1inhは、第1ノードN1と第2電源端との間に連結されることができる。第2電源端は第2入力電源電圧Vinを受信することができる。ここで、第2入力電源電圧VinはOVよりも小さいことができる。第2入力トランジスタM1inhは、抑制性信号を受信するゲートを含むことができる。実施形態において、第2入力トランジスタM1inhはN型トランジスタで実現されることができる。
【0036】
調整トランジスタM2は、第2ノードN2と接地端GNDとの間に連結されることができる。調整トランジスタM2は、調整電圧Vadjを受信するゲートを含むことができる。
【0037】
リセットトランジスタM3は、第1ノードN1と接地端GNDとの間に連結されることができる。リセットトランジスタM3は、リセット電圧Vrstを受信するゲートを含むことができる。
【0038】
強誘電体トランジスタFeFETは、電源端VDDと第2ノードN2との間に連結されることができる。強誘電体トランジスタFeFETは、ゲート電圧Vgを受信する第1ノードN1に連結されたゲートを含むことができる。実施形態において、強誘電体トランジスタFeFETは、common source/well構造で実現されることができる。
【0039】
一方、
図5に示された人工ニューロン141は、興奮性シナプス(excitatory synapse)から興奮性信号を、抑制性シナプス(inhibitory synapse)から抑制性信号をそれぞれ受信するトランジスタから構成されている。しかし、本発明はここに制限されない。本発明の人工ニューロンは、興奮性信号と抑制性信号を全て受信する1つのトランジスタで実現されることもできると理解されるべきである。
【0040】
一般的に、興奮性シナプス(excitatory synapse)は、ニューロンの膜電圧を高めて発火を促進し、抑制性シナプス(inhibitory synapse)は、ニューロンの膜電圧を下げて発火を抑制することができる。このように、人工ニューロン141で興奮性シナプスが入力されるPMOSは、正の電圧を有するVex電源に連結し、抑制性シナプスが入力されるNMOSは、負の電圧を有するVin電源に連結することができる。この時、興奮性シナプスのスパイクは強誘電体トランジスタ(FeFET)の閾値電圧を下げ、抑制性シナプスのスパイクは強誘電体トランジスタ(FeFET)の閾値電圧を高める。閾値電圧が基準値よりも低くなると発火し(つまり、出力スパイクを出力する)、閾値電圧が基準値よりも高くなると発火しない。人工ニューロン141は、このような方式で興奮性シナプスと抑制性シナプスを処理することができる。
【0041】
この時、スパイクによる分極変化は、FeFETニューロンの書き込み動作の結果である。従来のFeFETニューロンは、電源電圧VDDを調節することで発火率(firing rate)を調節している。本発明の人工ニューロンは、common source/well構造を用いることでチャネル電圧がソース電圧と同じであるようにすることで、書き込み電圧を下げることができる。本発明の人工ニューロンは、入力電源電圧(Vex、Vin)を用いるか、調整トランジスタM2のゲート電圧Vadjを用いるか、リセットトランジスタM3のゲート電圧Vrstを用いて発火率を調節することができる。
【0042】
本発明のニューロモルフィックコンピューティング装置100は、人工ニューロンの発火率の調節手段を電源電圧VDDと分離して多様に変化させるように実現されることができる。一方、本発明のニューロモルフィックコンピューティング装置100は、電源電圧VDDと連係しながら、第1及び第2入力電源電圧を用いるか、調整トランジスタのゲート電圧を用いるか、リセットトランジスタのゲート電圧を用いて発火率を調節することもできる。
【0043】
図6は、一般的なSNNにおいて、レイヤー別スパイクの伝達過程を例示的に示す図面である。ニューロモルフィックコンピューティング装置100は、スパイクエンコーダ101によってデータをスパイクにエンコーディングし、入力スパイクをシナプスアレイによって訓練し、訓練された入力スパイクを受信して人工ニューロンによって出力スパイクを出力し、出力スパイク訓練を繰り返し、スパイクデコーダ102によって出力スパイクに対応するデータを出力することができる。
【0044】
一般的に、人工ニューロンの発火率は、SNNにおいて非常に重要な調節因子である。SNNは、レイヤー毎に人工ニューロンの発火に依存している。人工ニューロンは、複数個のスパイクが入力され、1つのスパイクを出力する。これにより、総じて入力スパイクよりも出力スパイクの頻度が減る。したがって、レイヤーを重ねるほど、スパイクの頻度が減少して伝達される情報の量を減らすことができる。
【0045】
図7は、SNNで入力スパイクを訓練することで出力スパイクを得るタイミングを例示的に示す図面である。
図7に示されたように、入力スパイクのトレーニングによってシナプスの電流が増加することができる。電流によって人工ニューロンのポテンシャルも増加する。人工ニューロンのポテンシャルが基準値以上であるときに、出力スパイクが発火する可能性がある。
【0046】
図8a及び
図8bは、本発明の実施形態による発火率調節方式を例示的に示す図面である。
図8aに示された発火率調節方式(VDD調節方式:2.1→2.2→2.3)は、各レイヤー毎にスパイキング頻度が異なり、後ろのレイヤーであるほどスパイキング頻度が減少することができる。一方、
図8bに示された発火率調節方式(Vex/Vin調節方式:2.1→2.2→2.3、Vrst調節方式:2.0→1.5→1.5、Vadj調節方式:0.5→0.5→1.0)は、スパイキング頻度が比較的多くなる。一般的に、データプレゼンテーションに多数のスパイクが必要である。したがって、本発明の人工ニューロンは、様々なスパイキング頻度調節手段を有することで、ここに有利である。
【0047】
一方、本発明の実施形態によるシナプスアレイは、3次元で実現されることができる。
【0048】
図9は、本発明の他の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置200を例示的に示す図面である。
図9を参照すると、ニューロモルフィックコンピューティング装置200は、3次元シナプスアレイ210、ビットラインドライバ230、及びスパイキングニューロン回路240で実現されることができる。
【0049】
3次元シナプスアレイ210は、積層されたレイヤーを有する。各レイヤーは、興奮性ビットラインBLeと興奮性ソースラインSLeとの間に連結された第1セルトランジスタ211と抑制性ビットラインBLiと抑制性ソースラインSLiとの間に連結された第2セルトランジスタ212を含むことができる。第1セルトランジスタ211(興奮性シナプスレイヤー)及び第2セルトランジスタ212(抑制性シナプスレイヤー)は、不揮発性メモリトランジスタとして実現されることができる。例えば、第1セルトランジスタ211及び第2セルトランジスタ212のそれぞれは、強誘電体トランジスタで実現されることができる。ここで、第1セルトランジスタ211及び第2セルトランジスタ212は、基板形態のワードライン(WL_L1~WL_L4)のうち対応するワードラインに連結されるゲートを含むことができる。
【0050】
スパイキングニューロン回路240は、人工ニューロン241、242を含むことができる。人工ニューロン241、242のそれぞれは、
図1~
図8で説明されたLIF動作を実行する人工ニューロンとして実現されることができる。
【0051】
実施形態において、ニューロモルフィックコンピューティング装置200は、人工ニューロンの発火率を調節する制御ロジックをさらに含むことができる。実施形態において、ニューロモルフィックコンピューティング装置200は、積層されたレイヤーのそれぞれに対応して人工ニューロンの発火率を調節するための調整情報をレイヤーバッファをさらに含むことができる。実施形態において、セルトランジスタは、FeMBCFET(Ferroelectric Multi Bridge Channel Field Effect Transistor)で実現されることができる。
【0052】
一般的に、SNNは各レイヤー毎に人工ニューロンを経るようになる。この時、SNNのレイヤー毎に入力スパイクのパターンが異なる。したがって、人工ニューロンの発火頻度が異なるようになる。発火頻度が高すぎるかまたは低すぎると、レイヤー毎に発火率の調節が必要である。本発明の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置100は、Vex、Vin、Vrst、Vadjを介して発火率を調節するように実現されることができる。
【0053】
図10は、
図9に示されたレイヤー別の柔軟な人工ニューロン設定を説明するための図面である。ニューロモルフィックコンピューティング装置は、レイヤー別スパイクエンコーダによってデータをスパイクにエンコーディングし、入力スパイクをレイヤー別シナプスアレイによって訓練し、訓練された入力スパイクを受信して、レイヤー別人工ニューロンによって出力スパイクを出力し、レイヤー別のこのような出力スパイク訓練を繰り返し、レイヤー別スパイクデコーダによって出力スパイクに対応するデータを出力することができる。
【0054】
図10を参照すると、ニューロモルフィックコンピューティング装置200は、制御ユニット250及びレイヤーバッファ260をさらに含むことができる。制御ユニット250は、Vex、Vin、Vrst、Vadjを介して発火率を調節するように実現されることができる。レイヤーバッファ260は、各レイヤー毎にVex、Vin、Vrst、Vadjの値を貯蔵して制御ユニット250を介して各レイヤーのニューロンに対応する電圧を印加すると、レイヤー別の発火率を調節することができる。実施形態において、レイヤーバッファ260は、揮発性/不揮発性メモリとして実現されることができる。
【0055】
図11は、積層されたレイヤー別に柔軟に人工ニューロン設定を例示的に示す図面である。
図11に示されたように、6つのレイヤーのそれぞれにVex、Vin、Vrst、Vadjが設定されることができる。一方、このようなレイヤー別の調整情報は、ニューロモルフィックコンピューティング装置の環境情報に応じて可変することもできる。ここで、環境情報は装置の温度、データ処理量、データ処理速度、動作周波数などであることができる。
【0056】
本発明は、第一に、興奮性シナプス(excitatory synapse)及び抑制性シナプス(inhibitory synapse)を同時に処理することができるFeFETシナプスアレイ(synapse array)とFeFETニューロン(neuron)を開示し、第二に、FeMBCFET基盤の3Dシナプスアレイ(synapse array)を開示し、第三に、レイヤー別に発火率(firing rate)を調節することができる柔軟なニューロン設定(flexible neuron setting)方法を開示する。
【0057】
図12は、本発明の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置の動作を例示的に示すフローチャートである。
図1~
図12を参照すると、興奮性シナプスと抑制性シナプスに連結された人工ニューロンを有するニューロモルフィックコンピューティング装置の動作は、次のように行われることができる。ニューロモルフィックコンピューティング装置は、興奮性シナプスと上記抑制性シナプスを介して人工ニューロンの入力スパイクを訓練することができる(S110)。ニューロモルフィックコンピューティング装置は、様々な方式で人工ニューロンの発火率を調節することができる(S120)。例えば、ニューロモルフィックコンピューティング装置は、電源電圧、第1入力電源電圧、第2入力電源電圧、調整電圧、リセット電圧中で少なくとも1つを調節することで、人工ニューロンの発火率を調節することができる。ニューロモルフィックコンピューティング装置は、制御された発火率によって人工ニューロンの出力スパイクを訓練することができる(S130)。
【0058】
実施形態において、人工ニューロンのそれぞれは、第1ノードに連結されたゲートを有し、電源電圧を受信する電源端と出力スパイクを出力する第2ノードとの間に連結される強誘電体トランジスタと、対応する興奮性シナプスから第1入力スパイクを受信するゲートを有し、第1入力電源電圧を受信する第1入力電源端と上記第1ノードとの間に連結される第1入力トランジスタと、対応する抑制性シナプスから第2入力スパイクを受信するゲートを有し、第2入力電源電圧を受信する第2入力電源端と上記第1ノードとの間に連結される第2入力トランジスタと、調整電圧を受信するゲートを有し、上記第2ノードと接地端との間に連結される調整トランジスタと、リセット電圧を受信するゲートを有し、上記第1ノードと上記接地端との間に連結されるリセットトランジスタを含むことができる。
【0059】
実施形態において、ニューロモルフィックコンピューティング装置は、デジタルデータに対応する入力スパイクを生成し、出力スパイクのそれぞれに対応するデジタルデータを出力することができる。実施形態において、興奮性シナプスと抑制性シナプスは、3次元積層されたFeMBCFET(Ferroelectric Multi Bridge Channel Field Effect Transistor)で実現されることができる。
【0060】
一方、本発明の実施形態による人工ニューロンは、スパイキング神経網に用いられることができる。
【0061】
図13は、本発明の実施形態によるスパイキング神経網(SNN)を示す図面である。
図13を参照すると、スパイキング神経網10は、シナプス前ニューロン12、制御回路14、シナプスアレイ16、シナプス後ニューロン18でモデリングされることができる。
【0062】
シナプス前ニューロン12は、入力スパイク(sp<j>、jは0以上の整数)を生成する。シナプス前ニューロン12は、多重レイヤーのスパイキング神経網(SNN)において前のレイヤーのシナプス後ニューロンであることもできる。
【0063】
制御回路14は、同時多発的(simultaneous and multiple)に発生する入力スパイク(sp<j>)をストリング選択信号(S<j>、jは0以上の整数)に変換する。すなわち、制御回路14は、複数の入力チャネルを介して同時多発的に発生する入力スパイク(sp<j>)を対応するチャネルに対応するアドレスのストリング選択信号(S<j>)に変換する。制御回路14は、いずれかの入力スパイク(sp<j>)に応答してパルス幅が変換されたストリング選択信号(S<j>)を生成することができる。すなわち、制御回路14は、1つのNANDセルストリングのメモリセルを全て読み取ることができるパルス幅を有するストリング選択信号(S<j>)を生成する。したがって、ストリング選択信号(S<j>)のパルス幅は、1つのメモリセルを読み取るのに要する時間をストリングに含まれるメモリセルの数(k個)と乗じた時間に対応する。例えば、一番目の入力スパイクに応答して、制御回路14がストリング選択時間(Δ)の間に活性化されるストリング選択信号(S<0>)を生成したと仮定する。ここで、ストリング選択時間(Δ)は一つのストリングに含まれるメモリセルの全てを順次読み取るのに要される時間であることができる。
【0064】
シナプス後ニューロン18は、シナプスアレイ16を介して伝達されるシナプス加重値Wsを累積するための「k」個のニューロンを含む。シナプス後ニューロン18は、「p」個のストリング選択信号(S<j>)に応じてシナプスアレイ16が提供するシナプス加重値Wsが反映された電流を累積(Integrate)し、累積された値に応じて出力スパイクを発火(Fire)する。「k」個のニューロンがシナプス後ニューロン18に含まれる場合、「k」個の出力スパイク(Output_0~Output_k-1)が同時多発的に発生し得る。多層レイヤーでスパイキング神経網10が構成される場合、シナプス後ニューロン18は後続レイヤーのシナプス前ニューロン(Pre-synaptic neuron)と見なすことができる。
【0065】
本発明のスパイキング神経網10は、不揮発性メモリのメモリ素子配列をシナプス素子配列として用いることができる。すなわち、制御回路14で発生されるストリング選択信号(S<j>)は、不揮発性メモリのストリング(String)を選択するための信号であり、シナプス加重値Wsは伝達するためのシナプスアレイ16は、メモリセルのそれぞれに貯蔵されたデータとして実現されることができる。そして、シナプス後ニューロン18は、複数のストリングにおいて加重値に応じて伝達される電流を累積し、累積された電流の大きさに応じて出力スパイクを生成する複数の感知回路で実現されることができる。
【0066】
上述したスパイキング神経網10の実現のために、垂直に積層された3次元不揮発性メモリが用いられることができる。大容量のメモリ容量によって、シナプス加重値Wsの拡張が容易なスパイキング神経網10が実現されることができる。
【0067】
一方、本発明の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置及びその動作方法は、電子装置に実現されることができる。
【0068】
図14は、本発明の実施形態による電子装置1000を例示的に示す図面である。
図14を参照すると、電子装置1000は、神経網に基づいて入力データをリアルタイムで分析して有効な情報を抽出し、抽出された情報に基づいて状況判断をしたり、又は電子装置1000が搭載された装置の構成を制御することができる。例えば、電子装置1000は、ドローン(drone)、先進運転支援システム(Advanced Drivers Assistance System;ADAS)などのロボット装置、スマートTV、スマートフォン、医療装置、モバイル装置、映像表示装置、計測装置、IoT装置などに適用されることができ、これ以外にも様々な種類の装置のうち少なくとも1つに搭載されることができる。
【0069】
電子装置1000は、プロセッサ1100、RAM(Random Access Memory)1200、神経網装置1300、メモリ装置1400、センサモジュール1500、及び通信装置1600を含むことができる。電子装置1000は、入出力モジュール、保安モジュール、電力制御装置などをさらに含むことができる。電子装置1000のハードウェア構成のうち一部は、少なくとも1つの半導体チップに搭載されることができる。
【0070】
プロセッサ1100は、電子装置1000の全体的な動作を制御する。プロセッサ1100は、1つのプロセッサコア(Single Core)を含むか、または複数のプロセッサコア(Multi-Core)を含むことができる。プロセッサ1100は、メモリ装置1400に記憶されたプログラムまたはデータを処理または実行することができる。一部実施形態において、プロセッサ1100は、メモリ装置1400に記憶されたプログラムを実行することで、神経網装置1300の機能を制御することができる。プロセッサ1100は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、AP(Application Processor)などで実現されることができる。
【0071】
RAM1200は、プログラム、データ、または命令(instructions)を一時的に記憶することができる。例えば、メモリ装置1400に記憶されたプログラムまたはデータは、プロセッサ1100の制御またはブートコードに従ってRAM1200に一時的に記憶されることができる。RAM1200は、DRAM(Dynamic RAM)やSRAM(Static RAM)などのメモリで実現されることができる。
【0072】
神経網装置1300は、受信される入力データに基づいて神経網の演算を行い、実行結果に基づいて情報信号を生成することができる。神経網は、CNN、RNN、FNN、LSTM(long short-term memory)、SNN(stacked neural network)、SSDNN(state-space dynamic neural network)、DBN(deep belief networks)、RBM(restricted Boltzmann machines)などを含むことができるが、これに制限されない。神経網装置1300は、神経網専用ハードウェア加速器自体またはこれを含む装置であることができる。神経網装置1300は、神経網の演算のみならず、読み取り動作または書き込み動作を実行することができる。
【0073】
神経網装置1300は、
図1~
図13で説明されたニューロモルフィックコンピューティングを実行するように実現されることができる。神経網装置1300は、線形的な状態変化の特性を有するウェイトを実現されることができるため、神経網装置1300によって実行される神経網演算の正確性が増加されることができ、より精密な神経網が実現されることができる。
【0074】
情報信号は、音声認識信号、事物認識信号、映像認識信号、生体情報認識信号などの様々な種類の認識信号のうち1つを含むことができる。例えば、神経網装置1300は、ビデオストリームに含まれるフレームデータを入力データとして受信し、フレームデータからフレームデータが表すイメージに含まれた事物に対する認識信号を生成することができる。しかしながら、これに制限されるものではなく、電子装置1000が搭載された装置の種類や機能によって、神経網装置1300は様々な種類の入力データを受信することができ、入力データに応じた認識信号を生成することができる。
【0075】
神経網装置1300は、例えば、線形回帰分析(linear regression)、ロジスティック回帰分析(logistic regression)、統計的クラスタ化(statistical clustering)、ベジアン分類(Bayesian classification)、決定木(decision trees)、主成分分析(principal component analysis)、または専門家システムなどのマシンラーニングモデル、またはランダムフォレスト(random forest)などのアンサンブル技術などのマシンラーニングモデルを実行することができる。このようなマシンラーニングモデルは、例えば、映像分類サービス、生体情報または生体データに基盤したユーザ認証サービス、先進運転支援システム(ADAS、advanced driver assistance system)、ボイスアシスタントサービス(voice assistant service)、自動音声認識(ASR、Automatic speech recognition)サービスなどの様々なサービスを提供するのに用いられることができる。
【0076】
メモリ装置1400は、データを記憶するための記憶場所として、OS(Operating System)、各種プログラム、及び各種データを記憶することができる。実施形態において、メモリ装置1400は、神経網装置1300の演算実行過程で生成される中間結果を記憶することができる。
【0077】
メモリ装置1400はDRAMであることができるが、これに限定されない。メモリ装置1400は、揮発性メモリまたは不揮発性メモリのうち少なくとも1つを含むことができる。不揮発性メモリは、ROM(Read Only Memory)、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Electrically Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)、フラッシュメモリ、PRAM(Phase-change RAM)、MRAM(Magnetic RAM)、RRAM(Resistive RAM)、FRAM(Ferroelectric RAM)などを含む。揮発性メモリは、DRAM(Dynamic RAM)、SRAM(Static RAM)、SDRAM(Synchronous DRAM)、PRAM(Phase-change RAM)、MRAM(Magnetic RAM)、RRAM(Resistive RAM)、FeRAM(Ferroelectric RAM)などを含む。実施形態において、メモリ装置1400は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、CF(compact flash)、SD(secure digital)、Micro-SD(micro secure digital)、Mini-SD(mini secure digital)またはMemory Stickのうち少なくとも1つを含むことができる。
【0078】
センサモジュール1500は、電子装置1000が搭載される装置周辺の情報を収集することができる。センサモジュール1500は、電子装置1000の外部から信号(例えば、映像信号、音声信号、磁気信号、生体信号、タッチ信号など)をセンシングまたは受信し、センシングまたは受信された信号をデータに変換することができる。このために、センサモジュール1500は、センシング装置、例えば、マイク、撮像装置、イメージセンサ、ライダー(LIDAR;light detection and ranging)センサ、超音波センサ、赤外線センサ、バイオセンサ、及びタッチセンサなどの様々な種類のセンシング装置のうち少なくとも1つを含むことができる。
【0079】
センサモジュール1500は、変換されたデータを神経網装置1300に入力データとして提供することができる。例えば、センサモジュール1500はイメージセンサを含むことができ、電子装置1000の外部環境を撮影してビデオストリームを生成し、ビデオストリームの連続するデータフレームを神経網装置1300に入力データとして順に提供することができる。しかしながら、これに制限されるものではなく、センサモジュール1500は、様々な種類のデータを神経網装置1300に提供することができる。
【0080】
通信装置1600は、外部装置と通信することができる様々な有線または無線インタフェースを備えることができる。例えば、通信装置1600は、有線近距離通信網(Local Area Network;LAN)、Wi-fi(Wireless Fidelity)などの無線近距離通信網(Wireless Local Area Network;WLAN)、ブルートゥース(Bluetooth)などの無線個人通信網(Wireless Personal Area Network;WPAN)、無線USB(Wireless Universal Serial Bus)、Zigbee、NFC(Near Field Communication)、RFID(Radio-frequency identification)、PLC(Power Line communication)、または3G(3rd Generation)、4G(10th Generation)、LTE(Long Term Evolution)などの移動通信網(mobile cellular network)に接続可能な通信インタフェースなどを含むことができる。
【0081】
以上で説明された装置は、ハードウェア構成要素、ソフトウェア構成要素、またはハードウェア構成要素及びソフトウェア構成要素の組み合わせで実現されることができる。例えば、実施形態で説明された装置及び構成要素は、プロセッサ、コントローラ、ALU(arithmetic logic unit)、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor)、マイクロコンピュータ、FPGA(field programmable gate array)、PLU(programmable logic unit)、マイクロプロセッサ、または命令(instruction)を実行して応答することができる他のどのような装置のように、一つ以上の汎用コンピュータまたは特殊目的コンピュータを用いて実現されることができる。処理装置は、運営体制(OS)及び上記運営体制上で行われる一つ以上のソフトウェアアプリケーションを行うことができる。また、処理装置は、ソフトウェアの実行に応答して、データを接近、保存、操作、処理及び生成することもできる。理解の便宜のために、処理装置は一つが用いられると説明された場合もあるが、対応する技術分野で通常の知識を有する者は、処理装置が複数個の処理要素(processing element)または複数類型の処理要素を含むことができることが分かる。例えば、処理装置は、複数個のプロセッサまたは一つのプロセッサ及び一つの制御器を含むことができる。また、並列プロセッサ(parallel processor)などの、他の処理構成(processing configuration)も可能である。
【0082】
ソフトウェアは、コンピュータプログラム(computer program)、コード(code)、命令(instruction)、あるいはこれらのうち一つ以上の組み合わせを含むことができ、所望のとおり動作するように処理装置を構成するか、独立して或いは結合的に(collectively)処理装置を命令することができる。ソフトウェアまたはデータは、処理装置によって解釈されるか、または処理装置に命令或いはデータを提供するために、ある類型の機械、構成要素(component)、物理的装置、仮想装置(virtual equipment)、コンピュータ記憶媒体または装置に具体化(embody)されることができる。ソフトウェアは、ネットワークで連結されたコンピュータシステム上に分散して、分散した方法で記憶または実行されることもできる。ソフトウェア及びデータは、一つ以上のコンピュータ読み取り可能記録媒体に記憶されることができる。
【0083】
本発明の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置及びその動作方法は、FeFET基盤の2Dシナプスアレイと従来のFeFETニューロンを改善した人工ニューロンを開始し、FeMBCFET基盤の3Dシナプスアレイを開始し、人工ニューロンの発火率(firing rate)をレイヤー毎に調節する柔軟なニューロン設定方式を開示する。
【0084】
本発明の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置は、Artificial Neuronがexcitatory及びinhibitoryの全て受信するように実現されることができる。本発明の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置は、Artificial Neuronのfire rate調整のための回路を備えることができる。本発明の実施形態によるニューロモルフィックコンピューティング装置は、MBCFET(Multi Bridge Channel FET;Nanosheet)構造の強誘電体トランジスタとして実現されることができる。一方、本発明のニューロモルフィックコンピューティング装置は、Planar FET構造の強誘電体トランジスタ、FinFET構造の強誘電体トランジスタ、GAA(Gate-All-Around)FET(Nanowire)構造の強誘電体トランジスタ、Forksheet構造の強誘電体トランジスタ、あるいは、CFET(Complementary FET)で実現されることもできる。
【0085】
一方、上述された本発明の内容は、発明を実施するための具体的な実施形態に過ぎない。本発明は、具体的かつ実際に利用可能な手段自体だけでなく、今後技術として活用できる抽象的で概念的なアイデアである技術的思想を含む。
【符号の説明】
【0086】
100 ニューロモルフィックコンピューティング装置
110 シナプスアレイ
120 シナプス前ニューロン回路
130 ビットラインドライバ
140 スパイキングニューロン回路
141、142 人工ニューロン