IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特開2025-143198粒子封入方法、マイクロウェルデバイス、ターゲット物質検出方法
<>
  • 特開-粒子封入方法、マイクロウェルデバイス、ターゲット物質検出方法 図1
  • 特開-粒子封入方法、マイクロウェルデバイス、ターゲット物質検出方法 図2
  • 特開-粒子封入方法、マイクロウェルデバイス、ターゲット物質検出方法 図3
  • 特開-粒子封入方法、マイクロウェルデバイス、ターゲット物質検出方法 図4
  • 特開-粒子封入方法、マイクロウェルデバイス、ターゲット物質検出方法 図5
  • 特開-粒子封入方法、マイクロウェルデバイス、ターゲット物質検出方法 図6
  • 特開-粒子封入方法、マイクロウェルデバイス、ターゲット物質検出方法 図7
  • 特開-粒子封入方法、マイクロウェルデバイス、ターゲット物質検出方法 図8
  • 特開-粒子封入方法、マイクロウェルデバイス、ターゲット物質検出方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025143198
(43)【公開日】2025-10-01
(54)【発明の名称】粒子封入方法、マイクロウェルデバイス、ターゲット物質検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20250924BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20250924BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20250924BHJP
【FI】
G01N1/00 101H
G01N37/00 102
G01N35/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025018577
(22)【出願日】2025-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2024042796
(32)【優先日】2024-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】安部 滋幹
(72)【発明者】
【氏名】笹栗 大助
(72)【発明者】
【氏名】小河 賢史
(72)【発明者】
【氏名】馬場 響子
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
【Fターム(参考)】
2G052AB16
2G052AD09
2G052AD29
2G052CA04
2G052DA06
2G052ED05
2G052GA11
2G058CA01
2G058CC19
2G058GA02
(57)【要約】
【課題】粒子をマイクロウェルに均一に封入することができる簡便な粒子封入方法を提供する。
【解決手段】複数のマイクロウェルからなるアレイが上面に設けられたベースプレートと、ワイピング部材とを備えたマイクロウェルデバイスを準備する準備工程と、前記アレイに、検査粒子を含む分散媒体を導入する導入工程と、前記マイクロウェルに前記検査粒子を充填する充填工程と、前記マイクロウェルの外にある前記分散媒体を除去する除去工程と、前記マイクロウェルを封止媒体で封止する封止工程と、を有し、前記除去工程は、前記ワイピング部材を前記ベースプレートの上面に接した状態で第1の方向にスライドさせることで、前記マイクロウェルの外にある前記分散媒体を前記アレイの外へ移動させることを含む、ことを特徴とする粒子封入方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマイクロウェルからなるアレイが上面に設けられたベースプレートと、ワイピング部材とを備えたマイクロウェルデバイスを準備する準備工程と、
前記アレイに、検査粒子を含む分散媒体を導入する導入工程と、
前記マイクロウェルに前記検査粒子を充填する充填工程と、
前記マイクロウェルの外にある前記分散媒体を除去する除去工程と、
前記マイクロウェルを封止媒体で封止する封止工程と、
を有し、
前記除去工程は、前記ワイピング部材を前記ベースプレートの上面に接した状態で第1の方向にスライドさせることで、前記マイクロウェルの外にある前記分散媒体を前記アレイの外へ移動させることを含む、ことを特徴とする粒子封入方法。
【請求項2】
前記マイクロウェルデバイスは、隔壁部材をさらに有し、
前記隔壁部材は、前記ベースプレートの上面の前記アレイの外側において前記第1の方向に延在する第1の部分を、前記アレイを挟んで2つ有し、また、前記隔壁部材は、前記2つの第1の部分のそれぞれの端部同士を接続し、前記第1の方向に垂直な第2の方向に延在する少なくとも1つの第2の部分をさらに有し、
前記ワイピング部材は、前記第2の部分とともに前記アレイを挟むことが可能なように前記2つの第1の部分の間に設置された状態で用いられるように構成されている、請求項1に記載の粒子封入方法。
【請求項3】
前記ワイピング部材は、前記除去工程において前記分散媒体と当接して前記分散媒体を移動させる第1の面を有し、
前記導入工程は、前記第1の面と、前記第2の部分とで挟まれた領域に、前記検査粒子を含む前記分散媒体を導入することを含む、
請求項2に記載の粒子封入方法。
【請求項4】
前記ワイピング部材は、前記2つの第1の部分のそれぞれと接続した状態で用いられるように構成されている、請求項3に記載の粒子封入方法。
【請求項5】
前記ワイピング部材は、前記封止工程において前記封止媒体と当接して前記封止媒体を移動させる第2の面を有し、
前記封止工程は、前記第2の面と、前記第2の部分とで挟まれた領域に、前記封止媒体を導入することを含む、請求項2に記載の粒子封入方法。
【請求項6】
前記ワイピング部材は、前記2つの第1の部分のそれぞれと接続した状態で用いられるように構成されている、請求項5に記載の粒子封入方法。
【請求項7】
前記ワイピング部材は、前記除去工程において前記分散媒体と当接して前記分散媒体を移動させる第1の面と、前記第1の面から前記第1の方向に延びて前記第1の方向に垂直な第2の方向への前記分散媒体の移動を妨げるように構成された1つ以上の第1の仕切りとを有し、
前記導入工程は、前記第1の仕切りと前記第1の面とで画定される領域に、前記検査粒子を含む前記分散媒体を導入することを含む、請求項1に記載の粒子封入方法。
【請求項8】
前記ワイピング部材は、前記封止工程において前記封止媒体と当接して前記封止媒体を移動させる第2の面を有し、また、前記ワイピング部材は、前記第2の面から前記第1の方向に延びて前記第2の方向への前記封止媒体の移動を妨げるように構成された1つ以上の第2の仕切りを有し、
前記第2の仕切りは、前記第2の方向において前記第1の仕切りと同じ位置に設けられており、
前記封止工程は、前記第2の仕切りと前記第2の面とで画定される領域に、前記封止媒体を導入することを含む、請求項7に記載の粒子封入方法。
【請求項9】
前記ベースプレートは、透光性を有する材料からなり、
前記ワイピング部材の前記ベースプレートと接する第3の面は、前記アレイを覆うために十分な大きさを有する封止面を有し、前記封止面は、金属で被覆されており、
前記封止工程は、前記アレイを前記封止面で覆うことを含む、請求項1に記載の粒子封入方法。
【請求項10】
前記ベースプレートおよび前記ワイピング部材は、それぞれ透光性を有する材料からなり、
前記ワイピング部材の前記ベースプレートと接する第3の面は、前記アレイを覆うために十分な大きさを有する封止面を有し、
前記ワイピング部材の前記ベースプレートと接する第3の面と反対の側の第4の面は、
前記封止面と対向し、前記封止面を覆うのに十分な大きさを有する金属で被覆された面を有し、
前記封止工程は、前記アレイを前記封止面で覆うことを含む、請求項1に記載の粒子封入方法。
【請求項11】
前記封止工程は、前記ワイピング部材を、前記ベースプレートの上面に接した状態で前記第1の方向と逆の方向にスライドさせて前記封止媒体を前記マイクロウェルの上に移動させることを含む、請求項1に記載の粒子封入方法。
【請求項12】
前記マイクロウェルの前記第1の方向の最大長さ、前記第1の方向に垂直な第2の方向の最大長さ、および深さは、それぞれ前記検査粒子の平均粒子径の1.0倍以上2.0倍未満である、請求項1に記載の粒子封入方法。
【請求項13】
複数のマイクロウェルからなるアレイが上面に設けられたベースプレートと、ワイピング部材とを備え、
前記マイクロウェルは、分散媒体に分散された検査粒子を収容するためのウェルであり、
前記ワイピング部材は、前記ベースプレートの上面に接した状態で第1の方向にスライドさせることで、前記マイクロウェルの外にある前記分散媒体を前記アレイの外へ移動させることが可能なように構成されている、ことを特徴とするマイクロウェルデバイス。
【請求項14】
隔壁部材をさらに有し、
前記隔壁部材は、前記ベースプレートの上面の前記アレイの外側において前記第1の方向に延在する第1の部分を少なくとも有することで、前記ベースプレートの上面において前記第1の方向と垂直な第2の方向に向かう前記分散媒体の流れを妨げるように構成されている、請求項13に記載のマイクロウェルデバイス。
【請求項15】
前記隔壁部材は、前記アレイを挟んで設けられた2つの前記第1の部分と、前記2つの第1の部分のそれぞれの端部同士を接続し、前記第2の方向に延在する少なくとも1つの第2の部分とを有し、
前記ワイピング部材は、前記第2の部分とともに前記アレイを挟むことが可能なように前記2つの第1の部分の間に設置された状態で用いられるように構成されている、請求項14に記載のマイクロウェルデバイス。
【請求項16】
前記隔壁部材は、前記2つの第1の部分のそれぞれの一方の端部同士を接続する前記第2の部分と、前記2つの第1の部分のそれぞれの他方の端部同士を接続する前記第2の部分との2つの前記第2の部分を有する、請求項15に記載のマイクロウェルデバイス。
【請求項17】
前記ワイピング部材は、前記2つの第1の部分のそれぞれと接続した状態で用いられるように構成されている、請求項15に記載のマイクロウェルデバイス。
【請求項18】
前記ワイピング部材は、前記分散媒体と当接して前記分散媒体を移動させるように構成された第1の面と、前記第1の面から前記第1の方向に延びて前記第1の方向に垂直な第2の方向への前記分散媒体の移動を妨げるように構成された1つ以上の第1の仕切りとを有する、請求項13に記載のマイクロウェルデバイス。
【請求項19】
前記ワイピング部材は、前記マイクロウェルを封止するための封止媒体と当接して前記封止媒体を移動させるように構成された第2の面を有し、また、前記ワイピング部材は、
前記第2の面から前記第1の方向に延びて前記第2の方向への前記封止媒体の移動を妨げるように構成された1つ以上の第2の仕切りを有し、
前記第2の仕切りは、前記第2の方向において前記第1の仕切りと同じ位置に設けられている、請求項18に記載のマイクロウェルデバイス。
【請求項20】
前記ベースプレートは、透光性を有する材料からなる、請求項13に記載のマイクロウェルデバイス。
【請求項21】
前記ワイピング部材の前記ベースプレートと接する第3の面は、前記アレイを覆うために十分な大きさを有する封止面を有し、前記封止面は、金属で被覆されている、請求項20に記載のマイクロウェルデバイス。
【請求項22】
前記ワイピング部材は、透光性を有する材料からなり、
前記ワイピング部材の前記ベースプレートと接する第3の面は、前記アレイを覆うために十分な大きさを有する封止面を有し、
前記ワイピング部材の前記ベースプレートと接する第3の面と反対の側の第4の面は、
前記封止面と対向し、前記封止面を覆うのに十分な大きさを有する金属で被覆された面を有する、請求項20に記載のマイクロウェルデバイス。
【請求項23】
ターゲット物質を特異的に捕捉する前記検査粒子と、前記ターゲット物質とを反応させる反応工程と、
前記反応工程の後に、前記検査粒子を用いて請求項1乃至11のいずれか1項に記載の粒子封入方法を行う粒子封入工程と、
前記粒子封入工程の後に、前記マイクロウェルの各々に収容された前記検査粒子のうちの前記ターゲット物質を捕捉した前記検査粒子を検出する検出工程と、
を有する、ことを特徴とするターゲット物質検出方法。
【請求項24】
前記検出工程は、酵素の活性により発生した蛍光を検出することを含む、請求項23に記載のターゲット物質検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子封入方法、マイクロウェルデバイス、およびターゲット物質検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質などの生体分子を識別できる形態にしてから観察することにより種々の測定を行う方法として、一分子測定という手法が知られており、この一分子測定を行うための手法がいくつか知られている。
【0003】
特許文献1には、マイクロウェルアレイ上に隔壁と天板とを設けて流路を形成し、さらに天板に注入口と吹き出し口とを設けた構成を用いてマイクロウェルに粒子を封入する技術が開示されている。特許文献1では、マイクロウェルに粒子を入れる際には、注入口から流路を使ってターゲット物質を捕捉した粒子を含む親水性液体媒体を導入している。また、マイクロウェルを封止する際には、同様に注入口から流路を使って疎水性液体媒体を導入し、不要となった余剰の親水性液体媒体を押し出している。
【0004】
また非特許文献1には、マイクロウェルを覆うように配置した粘着テープの上から、ローラーを押し付けながら複数回転がすことでマイクロウェルに粒子を封入する技術が開示されている。非特許文献1では、マイクロウェルアレイ上にカプトンテープで隔壁を設けて、マイクロウェルに粒子を含んだ親水性液体媒体を直接導入している。その後、隔壁を橋渡しするように粘着テープを設置し、その上からローラーを複数回押し付けつつ転がすことで、不要となった余剰の親水性液体媒体を押し出してマイクロウェルを封止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/121310号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】H.Yaginuma et al.,Lab on a Chip,2022,22, 2001-2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および非特許文献1に記載の技術では、いずれもマイクロウェルに均一に粒子を封入することが難しいという問題があった。
【0008】
したがって本発明の目的は、粒子をマイクロウェルに均一に封入することができる簡便な粒子封入方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一観点による粒子封入方法は、
複数のマイクロウェルからなるアレイが上面に設けられたベースプレートと、ワイピング部材とを備えたマイクロウェルデバイスを準備する準備工程と、
前記アレイに、検査粒子を含む分散媒体を導入する導入工程と、
前記マイクロウェルに前記検査粒子を充填する充填工程と、
前記マイクロウェルの外にある前記分散媒体を除去する除去工程と、
前記マイクロウェルを封止媒体で封止する封止工程と、
を有し、
前記除去工程は、前記ワイピング部材を前記ベースプレートの上面に接した状態で第1の方向にスライドさせることで、前記分散媒体を前記アレイの外へ移動させることを含む、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の別の観点によるマイクロウェルデバイスは、
複数のマイクロウェルからなるアレイが上面に設けられたベースプレートと、ワイピング部材とを備え、
前記マイクロウェルは、分散媒体に分散された検査粒子を収容するためのウェルであり、
前記ワイピング部材は、前記ベースプレートの上面に接した状態で第1の方向にスライドさせることで、前記マイクロウェルの外にある前記分散媒体を前記アレイの外へ移動させることが可能なように構成されている、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の別の観点によるターゲット物質検出方法は、
ターゲット物質を特異的に捕捉する前記検査粒子と、前記ターゲット物質とを反応させる反応工程と、
前記反応工程の後に、前記検査粒子を用いて上記の本発明の一観点による粒子封入方法を行う粒子封入工程と、
前記粒子封入工程の後に、前記マイクロウェルの各々に収容された前記検査粒子のうちの前記ターゲット物質を捕捉した前記検査粒子を検出する検出工程と、
を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、粒子をマイクロウェルに均一に封入することができる簡便な粒子封入方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】マイクロウェルデバイスの構成の一例を示す分解斜視図である。
図2】マイクロウェルデバイスの構成の一例を示す斜視図である。
図3】粒子封入方法の各工程を説明するための模式図である。
図4】マイクロウェルデバイスの構成の一例を示す分解斜視図である。
図5】マイクロウェルデバイスの構成の一例を示す斜視図である。
図6】粒子封入方法の各工程を説明するための模式図である。
図7】マイクロウェルデバイスの構成の一例を示す斜視図である。
図8】マイクロウェルデバイスの構成の一例を示す斜視図である。
図9】マイクロウェルデバイスの構成の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
特許文献1の技術では、マイクロウェルに均一に粒子を充填するために粒子を含んだ親水性液体媒体を注入する速度を的確に制御する必要がある。また、疎水性液体媒体を注入する際には、注入口から連続的に疎水性液体媒体を導入するため、疎水性液体媒体に気泡が混入する場合があり、さらに親水性液体媒体全体を均一に押し出して均一に封止することが難しいという問題があった。特にマイクロウェルアレイが大面積の場合では、幅の広い流路に均一に液体を押し流すことはさらに難しくなる。
【0015】
また、非特許文献1に記載の技術は、専門の職人が行ういわゆるウィンドウフィルムの施工の技術を適用する必要があり、粘着テープに気泡が残らないようにマイクロウェルを均一に封止することが難しい。さらに、マイクロウェルに入らなかった粒子を除去する工程を有しなく、マイクロウェルに入らなかった粒子がとどまった状態で粘着テープにより封止されることになる。そのため、検出のための有効な観察範囲を確保することが難しくなる場合がある。
【0016】
つまり、特許文献1および非特許文献1に記載の技術では、適切に行うためにいずれも相応の手技が必要となる。手技が足りないと、マイクロウェルに封入される粒子にムラが生じたり、粒子が封入されたマイクロウェルの数が少なくなったりする場合や、封止の際に気泡が混入する場合がある。その結果、測定時のシグナルが少なくなったり、ノイズが大きくなったりし、最終的に測定に時間がかかったりする場合があった。また、押し出された余剰の親水性液体媒体がマイクロウェルデバイスを備えた検査装置を汚損する可能性もあり、ユーザーによるメンテナンスの手間にもつながる。
【0017】
本願発明者らは、先行技術における課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下に詳細に説明する本発明に係る粒子封入方法を成すに至った。
本発明に係る粒子封入方法は、準備工程、導入工程、充填工程、除去工程、および封止工程を有する。準備工程は、複数のマイクロウェルからなるアレイが上面に設けられたベースプレートと、ワイピング部材とを備えたマイクロウェルデバイスを準備する工程である。また、導入工程は、上記アレイに検査粒子を含む分散媒体を導入する工程である。また、充填工程は、上記マイクロウェルに上記検査粒子を充填する工程である。また、除去工程は、上記マイクロウェルの外にある上記分散媒体を除去する工程である。また、封止工程は、上記マイクロウェルを封止媒体で封止する工程である。さらに、上記除去工程は、上記ワイピング部材を上記ベースプレートの上面に接した状態で第1の方向にスライドさせることで、前記分散媒体を前記アレイの外へ移動させることを含む。
【0018】
本発明に係る粒子封入方法により、測定までの時間を短くし、測定時のシグナルを大きくし、さらに検査装置が汚損される可能性も低減することが可能となる。
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の例示的な実施形態を用いて本発明の各構成について詳細に説明する。なお、図面において、同様の要素または対応する要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化することがある。
【0020】
<マイクロウェルデバイス>
まず、本発明に係る粒子封入方法に用いることができるマイクロウェルデバイスの具体的な構成例を図1、2、4、5、7乃至9に示す。図2、5、7乃至9は、マイクロウェルデバイス10乃至50の全体構成を示す斜視図である。また、図1は、図2に示すマイクロウェルデバイス10の分解斜視図であり、図4は、図5に示すマイクロウェルデバイス20の分解斜視図である。
【0021】
本発明に係るマイクロウェルデバイスは、複数のマイクロウェル13からなるアレイ14が上面11aに形成されたベースプレート11と、ワイピング部材12とを備えている。
【0022】
マイクロウェル13は、分散媒体18bに分散された検査粒子18aを収容するためのウェルである。なお、分散媒体18bに分散された検査粒子18aをマイクロウェル13に収容する具体的な方法については、図3および図6を参照しつつ後述する。
【0023】
ワイピング部材12は、ベースプレート11の上面11aに接した状態で第1の方向Aにスライドさせることで、マイクロウェル13の外にある分散媒体18bをアレイ14の外へ移動させることが可能なように構成されている。
【0024】
本発明に係るマイクロウェルデバイスは、隔壁部材15をさらに有することが好ましい。ここで隔壁部材15は、ベースプレート11の上面11aに接して設けることが可能なように構成されており、ベースプレート11の上面11aのアレイ14の外側において第1の方向Aに延在する第1の部分151を少なくとも有する。これにより隔壁部材15は、ベースプレート11の上面11aにおいて第1の方向Aと垂直な第2の方向Bに向かう分散媒体18bの流れを妨げるように構成されている。
【0025】
隔壁部材15は、アレイ14を挟んで設けられた2つの第1の部分151と、2つの第1の部分151のそれぞれの端部同士を接続し、第2の方向Bに延在する少なくとも1つの第2の部分152とを有することが好ましい。そしてさらに、ワイピング部材12は、第2の部分152とともにアレイ14を挟むことが可能なように2つの第1の部分151の間に設置された状態で用いられるように構成されていることが好ましい。これにより、具体例については後述するが、ワイピング部材12が有する第1の面12aと、第2の部分152とで挟まれた第1の領域16に、検査粒子18aを含む分散媒体18bを導入することができる。あるいは、ワイピング部材12が有する第2の面12bと、第2の部分152とで挟まれた第2の領域17に、封止媒体19を導入することができる。ここで、ワイピング部材12が有する第1の面12aは、除去工程において分散媒体18bと当接して分散媒体18bを移動させるように構成された面である。また、ワイピング部材12が有する第2の面12bは、封止工程において封止媒体19と当接して封止媒体19を移動させるように構成された面である。そして、ワイピング部材12を用いて分散媒体18bあるいは封止媒体19を移動させた際に、アレイ14の上を通り過ぎた分散媒体18bあるいは封止媒体19の余剰分の流れを第2の部分152により堰き止めることができる。
【0026】
すなわち、マイクロウェルデバイスが、上記の構成を有する隔壁部材15を有することで、マイクロウェルデバイスの外に流れ出た余剰の分散媒体18bあるいは封止媒体19により検査装置が汚損されることを効果的に防ぐことができる。また、マイクロウェルデバイスが隔壁部材15を有することで、アレイ14上に導入した分散媒体18bが、アレイ14の外の領域に流出することを抑制でき、マイクロウェル13への検査粒子18aの充填効率を向上させることもできる。
【0027】
隔壁部材15は、2つの第1の部分151のそれぞれの一方の端部同士を接続する第2の部分152と、2つの第1の部分151のそれぞれの他方の端部同士を接続する第2の部分152との2つの第2の部分152を有することが好ましい。これにより、分散媒体18bおよび封止媒体19の両方の押し出し方向の流れをともに堰き止めることができる。
【0028】
図1および図2に示すマイクロウェルデバイス10では、ワイピング部材12と隔壁部材15とが、互いに独立しており、相対的な位置が可変なように構成されている。一方、ワイピング部材12と隔壁部材15とは、図4、5、7乃至9に示すマイクロウェルデバイス20乃至50のように、1体として構成されていてもよい。
【0029】
また、図1、2、4、5、8、9に示すマイクロウェルデバイス10、20、40、50では、ベースプレート11と隔壁部材15とが、ベースプレート11および隔壁部材15のそれぞれの輪郭により形成される矩形の平面同士で互いに接する構成となっている。
しかし本発明に係るマイクロウェルデバイスの全体的な形状はこれに限定されるものではなく、例えば図7に示すマイクロウェルデバイス30のようにディスク形状であってもよい。図7に示すマイクロウェルデバイス30では、軸31を中心としてワイピング部材12がベースプレート11に対して相対的に回転することで、マイクロウェル13の外にある分散媒体18bをアレイ14の外へ移動させることができる。すなわち、図7に示すマイクロウェルデバイス30においては、マイクロウェル13の外にある分散媒体18bをアレイ14の外へ移動させる際にワイピング部材12が回転する方向が、第1の方向Aとなる。なお、本発明において、マイクロウェル13の外にある分散媒体18bをアレイ14の外へ移動させる際にワイピング部材12をスライドさせる第1の方向Aの軌跡が直線的でない場合、第1の方向Aが描く軌跡の接線に垂直な方向を第2の方向Bとする。すなわち、図7に示すマイクロウェルデバイス30のように、第1の方向Aが描く軌跡が軸31を中心とした円弧である場合は、図7中に示すように軸31を中心とした円の半径方向が第2の方向Bとなる。
【0030】
<粒子封入方法>
続いて、上記で説明したマイクロウェルデバイスを用いた本発明に係る粒子封入方法の各工程について、図3および図6を参照しつつ説明する。図3は、図1および図2に示すマイクロウェルデバイス10を用いた粒子封入方法の各工程における各要素の配置を示す第1の方向Aに沿った断面模式図である。また、図6は、図4および図5に示すマイクロウェルデバイス20を用いた粒子封入方法の各工程における各要素の配置を示す第1の方向Aに沿った断面模式図である。なお、図3および図6では、ワイピング部材12ならびにこれによって移動される分散媒体18bおよび封止媒体19等を明瞭なものとするために隔壁部材15が有する第1の部分151の記載を省略している。
【0031】
初めに、図1および図2に示すマイクロウェルデバイス10を用いて本発明に係る粒子封入方法を実施する例について、図3を参照しつつ説明する。
【0032】
(準備工程)
まず、準備工程において、図1および図2に示すマイクロウェルデバイス10を準備する。
【0033】
(導入工程)
続いて、導入工程において、検査粒子18aを含む分散媒体18bをアレイ14に導入する。
アレイ14への検査粒子18aを含む分散媒体18bの導入は、例えばピペットのようなもので直接検査粒子18aを含む分散媒体18bをアレイ14上に滴下することで達成されてもよい。
あるいは、まず、ベースプレート11の上面11aにおけるアレイ14が形成されていない領域に検査粒子18aを含む分散媒体18bを導入する。続いて、ワイピング部材12をベースプレート11の上面11aに接した状態でスライドさせながら検査粒子18aを含む分散媒体18bをアレイ14上に移動させることで達成されてもよい。
【0034】
具体的には例えば、準備工程において図1および図2に示すマイクロウェルデバイス10を準備した場合には、まず図3(a)に示すように、ワイピング部材12をアレイ14から十分に離れた位置に置く。次に、図3(b)に示すように、ワイピング部材12が有する第1の面12aと、第2の部分152とで挟まれた第1の領域16に、検査粒子18aを含む分散媒体18bを導入する。この時、検査粒子18aを含む分散溶媒18bが導入されるベースプレート11の上面11a上の位置は、アレイ14と第1の面12aとの間となるようにする。その後、ワイピング部材12がベースプレート11の上面11aに接した状態を維持しつつ、ワイピング部材12をアレイ14に向けて第1の方向Aにスライドさせ、図3(c)に示すように検査粒子18aを含む分散溶媒18bをアレイ14上に導入する。
【0035】
導入工程において、検査粒子18aを含む分散媒体18bは、アレイ14全体を覆う程度に導入されることが好ましい。アレイ14全体を覆う程度に検査粒子18aを含む分散媒体18bを導入する際には、ベースプレート11上のアレイ14以外の領域にも検査粒子18aを含む分散媒体18bが流れ広がることがある。そして、これによりマイクロウェル13への検査粒子18aの充填効率が低くなる場合や、検査装置の汚損やコンタミを引き起こす場合がある。そのため、ベースプレート11には、例えば隔壁や溝を設けたり、あるいはその代わりに同様の機能を付与するために隔壁や溝にあたる領域を特異的に親水性にしたり疎水性にすることが好ましい。
【0036】
本発明に係る粒子封入方法では、検査粒子18aを含む分散媒体18bが、流れではなく、1つの大きな塊となってアレイ14に導入される。また、その操作もアレイ14上へのただの滴下であったり、ベースプレート11に検査粒子18aを含む分散媒体18bを導入した後にワイピング部材12をスライドさせるだけであり、簡便にムラなく検査粒子18aをマイクロウェル13に導くことができる。
【0037】
(充填工程)
続いて、充填工程において、マイクロウェル13に検査粒子18aを充填する。具体的には、図3(d)に示すように、自然沈降や磁力の力を借りるなどして、分散媒体18b中の検査粒子18aをマイクロウェル13に収納する。
【0038】
アレイ14上に充填された分散媒体18bが含む検査粒子18aをマイクロウェル13に充填するためには、検査粒子18aの自重を利用した自然沈降で達成することができるが、より充填率を上げるために振動や遠心力などを併用してもよい。
【0039】
検査粒子18aが磁性体である場合には、磁場を利用することもできる。ただし磁性体である検査粒子18aの磁場応答性が高過ぎる場合や、印加する磁場の強度が大きすぎる場合、磁場を印加する時間が長すぎる場合などには、磁場により検査粒子18aが磁力線に沿って高さ方向に並ぶことがある。その結果、検査粒子18aの充填率が下がる懸念がある。そのため、印加する磁場の強度と印加時間は最適化する必要がある。
また、磁場により検査粒子18aが磁力線に沿って高さ方向に一度粒子が並んだ場合でも、印加する磁場を弱める、あるいは磁場をかけない時間を設けることにより、検査粒子18aをほぐして充填率の低下を防ぐことが好ましい。
【0040】
また、より効率的に検査粒子18aをマイクロウェル13に充填するために、脱気操作を併用することが好ましい。脱気操作によりマイクロウェル13内の空気と検査粒子18aを含む分散媒体18bとの気液交換を強制的に行い、マイクロウェル13内に検査粒子18aが効率的に充填される環境を作ることが可能となる。脱気する方法としては、例えば、アレイ14を有するベースプレート11あるいはマイクロウェルデバイス10全体を減圧環境下において放置する方法等を好適に用いることができる。具体的には例えば、約0.1気圧の減圧デシケータ内にアレイ14を有するベースプレート11あるいはマイクロウェルデバイス10全体を約30秒放置する方法などが挙げられる。
【0041】
本発明に係る粒子封入方法によりマイクロウェル13に封入した検査粒子18aを検査に供する場合に検査精度を向上させる観点から、充填工程においては、それぞれのマイクロウェル13に検査粒子18aが平均的に1つ充填されることが好ましい。
【0042】
(除去工程)
次に、除去工程において、マイクロウェル13の外にある分散媒体18bを除去する。
具体的には、ワイピング部材12が分散媒体18bと当接する面である第1の面12aがアレイ14の上を通過するようにワイピング部材12をベースプレート11に当接させたまま再び第1の方向Aにスライドさせる。これにより図3(e)に示すように、マイクロウェル13の外にある分散媒体18bをアレイ14から十分離れた位置まで移動させる。
【0043】
アレイ14に導入された分散媒体18b中の検査粒子18aが全てマイクロウェル13に充填されなかった場合、アレイ14上には検査粒子18aと検査粒子18aの分散媒である分散媒体18bとが存在する。また、アレイ14に導入された分散媒体18b中の検査粒子18aが全てマイクロウェル13に充填された場合、アレイ14上には検査粒子18aの分散媒である分散媒体18bが存在する。マイクロウェル13の外にある分散媒体18bとはこの両者のことを指す。
【0044】
マイクロウェル13の外にある分散媒体18bは、ベースプレート11上でワイピング部材12をスライドさせながら、ベースプレート11のアレイ14が形成されていない領域に移動させることで除去される。このとき、分散媒体18b中の検査粒子18aがアレイ14中のマイクロウェル13がないベースプレート11上に沈降している場合に、除去工程で検査粒子18aが移動されてマイクロウェル13に入り込むことが期待され、充填率を向上させることもできる。
【0045】
また、脱気操作を併用している場合には、除去工程でマイクロウェル13内から浮上してきた微細な気泡も一緒に除去される。従来技術においては、脱気操作をして微細な気泡が存在する状態で、フローセルを用いて液状の封止媒体により検査粒子18aを含む分散媒体18bを押し流す手法が用いられる場合がある。この場合には、気泡を避けるような流れができて分散媒体18bが均一に流し出されず、結果として均一にムラなくマイクロウェル13が封止されない場合がある。また、気泡を押し出すために液状の封止媒体を勢いよく流したり、多量に流したりすると、マイクロウェルデバイス10の外に出た分散媒体18bあるいは封止媒体19により検査装置が汚染される懸念もあった。
【0046】
しかしながら、本発明に係る粒子封入方法では、ワイピング部材12をスライドすることで分散媒体18bが流れではなく、1つの大きな塊となってアレイ14上から除去される。また、その操作も、アレイ14に分散媒体18bを導入して検査粒子18aをマイクロウェル13に充填した後に、ワイピング部材12をスライドさせるだけであり、簡便にムラなく分散媒体18bを除去することができる。また、マイクロウェルを封止する際に気泡が混入することを抑制することも可能となる。
【0047】
検査粒子18aを、磁場を用いて充填させた場合、先述したように検査粒子18aの磁場応答性や印加する磁場の強度あるいは時間の長さによっては、検査粒子18aが磁力線に沿って高さ方向に並ぶことがある。この状態でスライド操作を行うと、検査粒子18aがカバープレートとベースプレートとの間に入り込みやすくなり、液体媒体の除去工程や後述する封止工程に支障を及ぼす懸念がある。そのため、スライド操作の前に印加する磁場を弱める、あるいは磁場をかけないことが好ましい。
【0048】
(封止工程)
続いて封止工程において、マイクロウェル13を封止媒体19で封止する。具体的には、まず図3(e)に示すように、ワイピング部材12が有する第2の面12bと、隔壁部材15が有する第2の部分152とで挟まれた第2の領域17に、封止媒体19を導入する。この時、封止媒体19が導入されるベースプレート11の上面11a上の位置は、アレイ14と第2の面12bとの間となるようにする。続いてワイピング部材12をベースプレート11の上面11aに接した状態で第1の方向Aとは逆の方向、つまりアレイ14に向かってスライドさせて、図3(f)に示すように封止媒体19をマイクロウェル13の上に移動させて封止する。つまりマイクロウェルデバイス10で示す例では、ワイピング部材12が分散媒体18bと当接する第1の面12aと、ワイピング部材12が封止媒体19と接する第2の面12bとは互いに異なる面である。
【0049】
封止工程では、例えば封止媒体19が液体であれば、まずピペットのようなもので封止媒体19をアレイ14上に直接滴下してもよい。また、上述したようにアレイ14が形成されていないベースプレート11上の領域に導入した後で封止媒体19をワイピング部材12によりアレイ14上に移動させてもよい。これによりマイクロウェル13上に封止媒体19の層が形成され、マイクロウェル13が封止される。その後、図3(g)に示すように、さらにワイピング部材12を緩やかにスライドさせてアレイ14上に導入された封止媒体19をベースプレート11上のアレイ14が形成されていない領域に移動させる。
このとき、ワイピング部材12をベースプレート11に対して押し付け過ぎないようにする。これにより、マイクロウェル13上に封止媒体19の薄膜が形成され、マイクロウェル13を封止することができる。
【0050】
封止媒体19がカバーガラスのような固体である場合には、封止媒体19をアレイ14上に被せることでもマイクロウェル13を封止することができる。この時、封止媒体19は、アレイ14の上方から降下させるように被せても良いし、ベースプレート上をスライドさせることでアレイ14の上に移動させて被せても良い。
【0051】
また、封止工程は、一度液体の封止媒体19で封止した後に固体の封止媒体19で再度封止するように2つの操作を組み合わせてもよい。
【0052】
次に、図4および図5に示すマイクロウェルデバイス20を用いて本発明に係る粒子封入方法を実施する例について図6を参照しつつ説明する。
【0053】
(準備工程)
初めに、準備工程において、図4および図5に示すマイクロウェルデバイス20を準備する。
【0054】
(導入工程)
続いて、まず図6(a)に示すように、第2の部分とワイピング部材12の第1の面12aとで挟まれた第1の領域16がアレイ14と重ならないようにワイピング部材12をベースプレート11の上面11aに設置する。次に、図6(b)に示すように、第1の領域16に、検査粒子18aを含む分散媒体18bを導入する。続いて、図6(c)に示すように、ワイピング部材12をベースプレート11の上面11aに接した状態を維持しつつ第1の方向Aにスライドさせて第1の領域16がアレイ14を覆うようにし、アレイ14に分散媒体18bを導入する。
【0055】
(充填工程)
次に、図6(d)に示すように、自然沈降や磁力の力を借りるなどして、分散媒体18b中の検査粒子18aをマイクロウェル13に収納する。
【0056】
(除去工程)
図6(c)あるいは図6(d)に示すように、第1の領域16がアレイ14を覆うようにワイピング部材12が配置された状態で、第2の領域17に封止媒体19を導入する。
そして、再びワイピング部材12をベースプレート11に接したまま第1の方向Aにスライドさせて、図6(e)に示すように第1の領域16に導入された分散媒体18bをベースプレート11上のアレイ14が形成されていない領域に移動させる。これによりマイクロウェル13の外にある分散媒体18bが除去される。このとき同時に第2の領域17に導入された封止媒体19も移動される(図6(e))。
【0057】
この段階でワイピング部材12が封止媒体19としても機能してマイクロウェル13が封止されていれば、除去工程と封止工程とが同時になされたことになり、封止された検査粒子18aを検査あるいは測定に供することも可能である。
【0058】
(封止工程)
図6(e)に示す状態からそのままワイピング部材12をベースプレート11に接した状態を維持しつつ第1の方向Aにスライドさせ続ける。そして、図6(f)に示すように第2の領域17に導入された封止媒体19がアレイ14を覆うようにワイピング部材12を配置させる。これにより、マイクロウェル13を封止媒体19で封止することができる(図6(f))。
【0059】
さらにそのままワイピング部材12をベースプレート11に接した状態を維持しつつ第1の方向Aにスライドさせ続ける。これにより、図6(g)に示すようにワイピング部材12を用いてアレイ14上にある余剰の封止媒体19をベースプレート11の上のアレイ14が設けられていない領域に移動させて除去する。その後、図6(g)に示すように、マイクロウェル13を封止媒体19の薄層とワイピング部材12の底面との両方で封止した状態としてもよい。あるいは、ワイピング部材12をさらに第1の方向Aにスライドさせてアレイ14の上から外れた位置まで移動させ、封止媒体19のみでマイクロウェル13を封止しても良い。
【0060】
このように、ワイピング部材12をスライドさせることで、例えばアレイ14が1cmを超える大面積を有する場合であっても、簡便に、均一に、かつ高い効率で検査粒子18aをマイクロウェル13に封入することができる。
【0061】
図6を用いて説明したプロセスは、導入工程、充填工程、封止工程、および除去工程の4つの工程を全てワイピング部材12のスライドによって行っているが、これに限られない。上記の4つの工程のうちの除去工程を含む1以上の工程をワイピング部材12のスライドによって行えれば、従来よりも簡便に粒子を封入することができる。
【0062】
なお、ワイピング部材12がベースプレート11に対して図6(b)ではなく、図6(c)に示す位置にあるときに導入工程を行ってもよく、この場合には導入工程はワイピング部材12のスライド操作は含まない。
【0063】
また、ワイピング部材12がベースプレート11に対して図6(c)の位置にあるときに封止媒体19を第2の領域17に導入する例について説明したがこれに限られない。例えば、図6(b)に示す配置において第2の領域17の下にベースプレート11が存在していれば、この配置のときに第2の領域17に封止媒体19を導入してもよい。また、上述したようにワイピング部材12がベースプレート11に対して図6(c)に示す位置にあるときに導入工程を行うと同時に封止媒体19を第2の領域17に導入しても良い。また、ワイピング部材12とベースプレート11とが図6(e)あるいは図6(f)に示す配置にあるときに、第2の領域17に封止媒体19を導入してもよい。
【0064】
次に、本発明にかかわる各要素についてさらに説明する。
(ベースプレート)
ベースプレートを構成する材料はシクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、シリコン、ガラス、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ酢酸ビニル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等から選択することが好ましい。ベースプレートに設けられたマイクロウェルに封止された検査粒子を、封止後に検査あるいは測定に供することを考慮すると、ベースプレートは透光性を有する材料からなることが好ましい。また、ベースプレートを構成する材料は自家蛍光を有しないものが好ましく、さらにマイクロウェルアレイを形成するための加工性も考慮すると、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、アクリル樹脂を選択することがより好ましい。
【0065】
ベースプレートは、マイクロウェルからなるアレイが形成されている領域と何も形成されていない平坦な領域とから構成される。また、検査粒子の分散媒体としては親水性の液体が好適に用いられる場合が多い。そのため、ベースプレートに形成されたマイクロウェルへの検査粒子の充填率を向上させるために少なくともアレイが形成された領域だけでも親水化処理されていることが好ましい。
【0066】
上述したようにマイクロウェルデバイスが隔壁部材を備えていることで、検査粒子のマイクロウェルへの充填率を向上させることができ、また検査装置の汚損を防ぐことができる。しかし、マイクロウェルデバイスが隔壁部材を備えていない場合には、ベースプレート上の隔壁部材が設けられ得る箇所に、例えば親水性や疎水性となるような化学的処理を施したり、あるいは溝を設けるなどの物理的な処理を施しておくことが好ましい。
【0067】
(ワイピング部材および隔壁部材)
ワイピング部材は、上述したようにベースプレートの上面に接した状態で第1の方向にスライドさせることで、マイクロウェルの外にある分散媒体をアレイの外へ移動させることが可能なように構成されている。
【0068】
ワイピング部材が検査粒子の分散媒体と当接する第1の面の第2の方向の幅は、アレイの第2の方向の幅よりも大きいことが好ましい。ここで第2の方向とは、除去工程においてワイピング部材をスライドさせる方向である第1の方向に垂直な方向である。これにより除去工程を1回のスライド操作で行うことができる。
【0069】
ワイピング部材はベースプレート上をスライドさせることでワイパーとして機能し、導入工程、充填工程、封止工程、および除去工程の4つの工程のうち少なくとも除去工程をこのスライド操作にて行う。
【0070】
ワイピング部材のスライド操作は、ワイピング部材をベースプレートに押し付ける方向に力を加えながらスライドさせる。そのため、ワイピング部材をベースプレートに引っかからずに滑らかにスライドさせるために、ワイピング部材のベースプレートと接する第3の面のエッジには、適度なR加工が施してあることが好ましい。
【0071】
また、フィルムの水貼りのようにワイピング部材とベースプレートとを互いに密着させながらスライドさせるために、ワイピング部材とベースプレートとの間には滑り性を向上させるための媒体(水溶性媒体や疎水性媒体)を付与してもよい。滑り性を向上させるための媒体としては、例えば検査粒子の分散媒体や封止媒体と同じ媒体を用いることができる。
【0072】
ワイピング部材は、例えば1つのアレイで複数のサンプルあるいは複数の項目を検査するために、例えば図9に示すマイクロウェルデバイス50のように仕切りを有することができる。ここで仕切りは、アレイを構成するマイクロウェルを2以上のグループに分ける機能を有する。すなわち、ワイピング部材12は、第1の面12aから第1の方向Aに延びて第1の方向Aに垂直な第2の方向Bへの分散媒体18bの移動を妨げるように構成された1つ以上の第1の仕切り51を有することができる。また、ワイピング部材12は、第2の面12bから第1の方向Aに延びて第2の方向Bへの封止媒体19の移動を妨げるように構成された1つ以上の第2の仕切り52を有することができる。なお、第2の仕切り52は、ワイピング部材12に対して第2の方向Bにおいて第1の仕切り51と同じ位置に設けられていることが好ましい。すなわち、第1の仕切り51と第2の仕切り52とは、ワイピング部材12がベースプレート11の上をスライドする際に同じ軌跡を通ることが好ましい。
【0073】
図9に示すマイクロウェルデバイス50では、第1の面12aと、第2の部分152とで挟まれた第1の領域16が、第1の仕切り51と第1の面12aとで画定される2つの第3の領域16a、16bに分けられている。したがってマイクロウェルデバイス50を用いる場合には、導入工程は第3の領域16a、16bに、検査粒子18aを含む分散媒体18bを導入することを含むことができる。
【0074】
また同様に、図9に示すマイクロウェルデバイス50では、第2の面12bと、第2の部分152とで挟まれた第2の領域17が、第2の仕切り52と第2の面12bとで画定される2つの第4の領域17a、17bに分けられている。したがってマイクロウェルデバイス50を用いる場合には、封止工程は第4の領域17a、17bに、封止媒体19を導入することを含むことができる。
【0075】
このようにワイピング部材が第1の仕切りおよび第2の仕切りを有することで、アレイが十分広い大きさを持つときに複数の検体や複数の検査を行うことが可能となる。また、第2の仕切りによって区切られた第4の領域ごとに、互いに異なる封止媒体を導入して用いることもできる。
【0076】
図6を参照してマイクロウェルデバイス20を用いた粒子封入方法を説明した際にも述べたが、ワイピング部材12は、封止媒体19としての機能を有してもよい。すなわち、ワイピング部材12のベースプレート11と接する第3の面12cは、アレイ14を覆うために十分な大きさを有する封止面を有してもよい。このとき、封止工程は、例えばワイピング部材12をベースプレート11に対して例えば図6(e)に示す位置に配置してアレイ14を封止面で覆うことを含むことができる。
【0077】
さらに、例えばベースプレート11が透光性を有する材料からなり、封止面が金属で被覆されていれば、ワイピング部材12の第3の面が有する被覆面でマイクロウェル13を封止した場合に、最終的に光を利用した検査を好適に実施することができる。具体的には例えば、マイクロウェル13内の発光が封止面を被覆する金属の面で反射し、その結果発光の取り出し効率が上がることで検出感度を向上させることができる。
【0078】
また、封止面の金属による被覆を蒸着により行う場合には、金属と基板(封止面)との密着力が弱く、ワイピング部材12をスライドする過程で蒸着した金属の薄膜が剥がれる懸念がある。そのため、ワイピング部材12が直接ベースプレート11に接する第3の面12cに設けられた封止面ではなく、ワイピング部材12の第3の面12cと反対側の第4の面を金属で被覆してもよい。すなわち、ワイピング部材12のベースプレート11と接する第3の面12cと反対の側の第4の面12dは、封止面と対向し、封止面を覆うのに十分な大きさを有する金属で被覆された面を有してもよい。この場合、封止工程においてアレイ14を封止面で覆うことでマイクロウェル13が封止される。また、ワイピング部材12の厚さの範囲では光を直接反射できないが、ワイピング部材12が金属で被覆された面を有しないよりは発光の取り出し効率を高くすることができる。
【0079】
ワイピング部材は、2つの第1の部分を有する隔壁部材とともに用いられ、さらに2つの第1の部分のそれぞれと接続した状態で用いられるように構成されていることが好ましい。これによりワイピング部材の第1の面と隔壁部材の第1の部分とで形成される領域と、ワイピング部材の第2の面と隔壁部材の第1の部分とで形成される領域とをワイピング部材自体を挟んで完全に分断することができる。これにより分散媒体と封止媒体とが互いに混ざり合うことの懸念がなく、操作が容易となる。
【0080】
本発明に係るマイクロウェルデバイスにおいて、ベースプレート11の上面11aに隔壁部材の機能を有する構造を設けない場合は、マイクロウェルデバイスは隔壁部材を有することが好ましい。
【0081】
隔壁部材は、第2の方向に向かう前記分散媒体の流れを妨げるように構成された第1の方向に延在する第1の部分を少なくとも有するが、第1の部分の第1の方向の長さは、アレイの第1の方向の長さよりも長いことが好ましい。
【0082】
図1、2、4、5、7乃至9には、隔壁部材15の形状が、ワイピング部材12をスライドさせる第1の方向Aに直線的に延在する第1の部分151と、第1の方向に垂直な第2の方向Bに直線的に延在する第2の部分152とにより規定される例を示している。しかし隔壁部材15の形状はこれに限定されない。すなわち、隔壁部材15は、分散媒体18bあるいは封止媒体19がアレイ14の外に流れて検査装置を汚損するのを防ぐための壁として機能する構造をしていればよく、その壁として機能する構造の形状に特に限定はない。例えば、第1の領域16および第2の領域17の形状についても特に限定されず、その輪郭が四角でも丸でもよい。特に、第1の領域16および第2の領域17がアレイと重なったときに、第1の領域16および第2の領域17がアレイを完全に覆うのに十分な面積を有していることが好ましい。
【0083】
隔壁部材は複数の部材から構成されていても良いが、コストや構造の複雑さを考えると1つの部材で構成されていることが好ましい。さらに、隔壁部材とワイピング部材とが一体となって1つの部材で構成されていることがより好ましい。
【0084】
図4および図5に示すマイクロウェルデバイス20は、隔壁部材とワイピング部材とが1つの部材で構成されているマイクロウェルデバイスの一例である。マイクロウェルデバイス20では、隔壁部材およびワイピング部材が一体として構成された1つの部材に貫通した穴(第1の領域16および第2の領域17)が空いている形態となっている。マイクロウェルデバイス20においては、第1の面12aおよび第2の面12bとして機能するのは穴の内壁のスライドする方向の壁、つまり図4に示す例では四角く穴が設けられているが、その内側の壁である。図4では一例として検査粒子18aを含む分散媒体18bを導入するための第1の領域16としての穴と、封止媒体19を導入するための第2の領域17としての穴とからなる2つの穴が部材に設けられているが、これに限られない。例えば、加工の難易度を下げるために部材に設けられる穴は1つでも良い。図8に示すマイクロウェルデバイス40は、隔壁部材およびワイピング部材が一体として構成された1つの部材に設けられた穴が1つである場合の1例である。マイクロウェルデバイス40が有するワイピング部材12(隔壁部材15)は、図4および図5に示すワイピング部材12(隔壁部材15)において一方の穴の第1の方向Aの側の壁を構成する第2の部分が除かれた形状となっている。
【0085】
隔壁部材が有する第1の部分および第2の部分に例示されるような壁として機能する構造は、検査粒子を含む分散媒体や液状の封止媒体を導入したときに、分散媒体や封止媒体があふれるのを防ぐのに十分な高さを有していることが好ましい。隔壁部材が有する壁として機能する構造が十分な高さを有していれば、第1の領域や第2の領域が閉じた空間である場合には、それらの領域に分散媒体や封止媒体を収めることで、時間の経過や振動により濡れ広がることの懸念がなくなる。また、マイクロウェルデバイスを傾けた際に、第1の領域や第2の領域の中の分散媒体や封止媒体がこぼれ出ることを抑制することもできる。
【0086】
ワイピング部材および隔壁部材を構成する材料としては、検査粒子を含む分散媒体や封止媒体と接することを考慮すると、分散媒体や封止媒体に含まれる溶媒に溶出する成分を含まない材料を選択することが好ましい。ワイピング部材および隔壁部材を構成する具体的な材料としては、例えばベースプレートについての説明で挙げた材料から選択することができる。
【0087】
(マイクロウェルおよびアレイ)
マイクロウェルからなるアレイの形成には、フォトリソグラフィやマイクロ射出成形、ナノインプリントなど公知の製法を選択することができる。アレイ全体の輪郭の形状には特に限定はなく、四角くても丸くても良い。上述したように複数の検体や複数の検査をする際には粒子封入方法における各工程をワイピング部材のスライド操作により効率的に行えるため、四角い方が好ましい。
【0088】
アレイを構成するマイクロウェルの形状についても特に限定はないが、加工の容易性から円柱、円錐、円錐台等であることが好ましい。例えば、型から抜く際に型が基材に接触することによるマイクロウェルの欠陥が生じにくかったり、検査粒子の入りやすさを考慮すると、マイクロウェルの形状は円錐台であることがより好ましい。
【0089】
マイクロウェルの開口部の最小口径および深さは、検査粒子の直径以上である。各マイクロウェルには検査粒子が1つ以上入ってもよいが、各マイクロウェルに入る検査粒子の数が多い場合には、必要となる総粒子数が多くなることで検査コストが高くなり、また、検出精度を高くするための工夫が必要になる場合がある。そのため、各マイクロウェルに入る検査粒子の数は1以上4以下であることが好ましく、1であることがより好ましい。
このことから、マイクロウェルの開口径の最大長さ、および深さは、それぞれ検査粒子の平均粒子径の1.0倍以上2.0倍未満であることが好ましい。また、マイクロウェルの開口径の最大長さは、検査粒子が有する平均粒子径の1.5倍以上2.0倍未満であることがより好ましい。具体的には例えば、マイクロウェルの最小口径は、1.5μm以上10μm未満である。また、マイクロウェルの深さは、具体的には例えば、1.0μm以上10μm未満である。
【0090】
アレイにおけるマイクロウェル同士の距離は、近すぎると観察したときにシグナルを分離することや加工自体が難しくなる。しかしながら離れすぎると同じマイクロウェルアレイの面積でも取得できるシグナル数が減ってしまう。そのためマイクロウェルの中心同士の距離は5μm以上15μm以内であることが好ましい。
【0091】
(検査粒子)
検査粒子は平均粒子径が1μm以上5μm以下であることが好ましい。これによりマイクロウェルへの効率的な充填とアレイの高密度化が可能となる。平均粒子径とは、ここでは電子顕微鏡観察または動的光散乱法を用いて測定した値をいう。
【0092】
検査粒子は有機物および無機物のいずれから構成されていてもよく、種々の材料を組み合わせることができる。検査粒子をマイクロウェルに充填する工程と、後述するターゲット物質を捕捉するための分子を結合することを考えると、次のように構成されていることが好ましい。すなわち、検査粒子は、コア側に比重の重い無機層を有し、最表層のシェルとしてはターゲット物質を捕捉するための分子を結合しやすい有機層を有する構成であることが好ましい。
【0093】
無機層を構成する材料としては、シリカ、アルミナ、酸化鉄、鉄、ジルコニア、酸化チタンなどが挙げられる。検査粒子のコアは、単独の材料で形成してもよいし、有機物の層を無機層で覆った形態で形成されていてもよい。
【0094】
本発明に使用可能な市販されている粒子としては、例えば、Magnosphere(登録商標) MS300、Magnosphere(登録商標) MS160、PureProteome(登録商標) Nickel Magnetic Beads、Simoa(登録商標) Homebrewアッセイキット(Quanterix社)で供される磁性粒子やPolybead(登録商標) Microspheres、宇部エクシモ製ハイプレシカ(登録商標)等が挙げられる。
【0095】
検査粒子としては、構成材料に鉄、ニッケル、およびマグネタイト等の常磁性体、強磁性体、超磁性体等を含む検査粒子を用いることが好ましいが、それ以外でも構わない。磁性粒子を用いることで、磁場の印加により、上述した検査粒子のマイクロウェルへの充填だけでなく、後述する検査粒子にターゲット物質を捕捉させる反応工程の後にターゲット物質を捕捉した検査粒子を精製することが容易となる。
【0096】
なお、マイクロウェルに充填および封入される検査粒子は、ターゲット物質を捕捉した検査粒子の他にターゲット物質を捕捉していない検査粒子が混じる場合がある。ターゲット物質を特異的に捕捉する検査粒子としては、例えばターゲット物質を特異的に捕捉するための分子が結合されている検査粒子を用いることができる。ターゲット物質を特異的に捕捉するための分子は、検査粒子の表面にある修飾基に、例えばリンカーを介して結合させてもよい。ターゲット分子を特異的に捕捉するための分子は、例えば、アミノ基で修飾された検査粒子の表面にあるアミノ基に、N-ヒドロキシスクシンイミド等を持つ架橋剤を介して共有結合させることにより結合させることができる。ターゲット物質を特異的に捕捉するための分子は、ターゲット物質に応じて選択すればよく、例えばタンパク質、抗体、核酸等を用いることができる。ターゲット物質を特異的に捕捉するための分子は、検査粒子1個あたり10万分子以上結合されていることが好ましい。例えば、ターゲット捕捉分子が抗体である場合には、解離定数がnMオーダー程度であるが、上述した構成であれば、検査粒子とターゲット物質とを反応させる際のターゲット捕捉分子の濃度を充分に高くすることができる。
【0097】
アレイに導入する検査粒子の数は、アレイを構成するマイクロウェルの総数と同等以上であることが好ましく、導入する検査粒子の数の上限の目安は、マイクロウェルと検査粒子との大きさの関係で決めることができる。例えば、1つのマイクロウェルに1つの検査粒子しか収容できないのであれば、導入する検査粒子の数の上限は、アレイを構成するマイクロウェルの総数と同じとすることができる。また例えば、1つのマイクロウェルに3つの検査粒子が充填され得るような大きさの関係であれば、導入する粒子の数の上限を、アレイを構成するマイクロウェルの総数の3倍とすればよい。
【0098】
(ターゲット物質)
ターゲット物質とは、検出対象である分子、すなわちここでは検査粒子に捕捉させることによって検出しようとする分子を指す。ターゲット物質としては、例えばタンパク質、酵素、核酸、ペプチド、脂質代謝物、糖等の生体分子、ならびにウイルス粒子そのものなどが挙げられる。
【0099】
酵素は、例えば細胞外小胞が小胞表面あるいは内部に有するあらゆる酵素をも含む。そのような酵素の例としては、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)、ADAM(a disintegrin and metalloproteinase)、ADAMTS(ADAM with thrombospondin motifs)等のMMPファミリー、マトリプターゼ、β-セクレターゼ、ECE(エンドセリン変換酵素)、カルパイン、DPPIV(Dipeptidyl Peptidase-4)、ACE1(アンジオテンシン変換酵素1)、ACE2(アンジオテンシン変換酵素2)等を含む各種プロテアーゼ、AChE(アセチルコリンエステラーゼ)、オートタキシン、リパーゼ、ホスホリパーゼ、ホスファターゼ等を含む各種エステラーゼ、β-ガラクトシダーゼ等を含む各種グリコシダーゼに代表される加水分解酵素、MAO(モノアミン酸化酵素)等を含む各種オキシダーゼ、MPO(ミエロペルオキシダーゼ)等を含む各種ペルオキシダーゼ、カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼに代表される酸化還元酵素、HAT(ヒストンアセチルトランスフェラーゼ)、HDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)等を含む各種のアセチル化/脱アセチル化酵素、キナーゼ、タンパク質キナーゼ、糖転移酵素に代表される転移酵素、Pin1(PPIase:ペプチジルプロリルイソメラーゼ)等を含む各種シス・トランスイソメラーゼ、ラセマーゼ、ムターゼに代表される異性化酵素等を挙げることができる。
【0100】
(分散媒体)
検査粒子を含んでマイクロウェルに検査粒子を充填するために用いる分散媒体は、種々の媒体から用いる検査粒子に合わせて適宜選択して用いることができる。中でも、親水性の液体媒体を分散媒体として好適に用いることができる場合が多い。分散媒体として使用することができる親水性の液体媒体としては、例えば、水、親水性アルコール、親水性エーテル、ケトン、ニトリル系溶媒、ジメチルスルホキシド、およびN,N-ジメチルホルムアミドからなる群より選択される少なくとも1つ、またはこれを含む混合物等が挙げられる。親水性アルコールとしては、例えばエタノール、メタノール、プロパノール、グリセリン等が挙げられる。親水性エーテルとしては、例えばテトラヒドロフラン、ポリエチレンオキサイド、1,4-ジオキサン等が挙げられる。ケトンとしては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。ニトリル系溶媒としては、例えばアセトニトリル等が挙げられる。
分散媒体は、ターゲット物質を捕捉した検査粒子やターゲット物質を捕捉していない検査粒子を含んで用いられる。分散媒体は、他に、例えば検査粒子に捕捉されたターゲット物質を特異的に検出するための物質や、液滴あるいはマイクロウェルを確認するための標準蛍光物質、ブロッキング材料、バッファー、界面活性剤などをさらに含んでいてもよい。
【0101】
検査粒子に捕捉されたターゲット物質を特異的に検出するための物質としては例えば、検査粒子に捕捉されたターゲット物質またはこれに特異的に結合した分子に結合した所定の酵素によって分解されて、蛍光物質を遊離する蛍光基質等が好ましい。ターゲット物質に特異的に結合する分子は、例えば二次抗体、核酸等であってもよい。
【0102】
酵素活性による構造の変化で発光強度が大きくなるようなレポーター分子としては、例えば、蛍光物質と消光物質で標識された分子を挙げることができる。そのようなレポーター分子としては、例えば、両末端あるいはレポーター分子内の修飾可能なアミノ酸残基上にそれぞれ蛍光物質と消光物質を有し、その間に、標的酵素の基質となるペプチドを含む分子(FRET基質)を例示することができる。FRET基質は、酵素切断前は、蛍光物質と消光物質とが互いに十分近くにあることで蛍光物質は消光されているが、ペプチドが酵素活性により切断されると、消光物質による消光が解除され蛍光を発する。FRET基質をレポーター分子として用いることで、標的酵素の有無を蛍光の大きな輝度変化として観察することができる。FRET基質が含むペプチドは、反応性の点で3残基以上、消光効果の点で30残基以下であることが好ましい。また、酵素活性による化学構造の変化により無蛍光物質から蛍光物質に変換されるようなレポーター分子も大きな輝度変化が得られる点で好ましい。このようなレポーター分子としては、市販されるキットのレポーター分子を適宜使用することができる。
【0103】
また、標的となる酵素の基質配列を基に、基質配列の両端、あるいは基質配列内に蛍光物質と消光物質を組み合わせてカスタム合成することもできる。
【0104】
液滴あるいはマイクロウェルを確認するための標準蛍光物質としては例えばAlexa Fluor(登録商標)色素やDy Light(登録商標)色素から好適な発光波長を有する色素を選択することができる。前者と後者を併用する際には観察しやすいように発光波長が異なるものを選択することが好ましい。
【0105】
ブロッキング材料は検査粒子と捕捉タンパク質とを結合させる際に、検査粒子のリンカー結合部のうち捕捉タンパク質が結合しなかった部分を埋める機能を有する。例えば、捕捉タンパク質のアミノ基と検査粒子のカルボキシル基とを、NHS/WSCを用いて縮合反応させる場合、検査粒子は、反応後に未反応のカルボキシル基を有し得る。そこで、捕捉タンパク質と結合しなかったカルボキシル基をブロッキング剤としてのエタノールアミンやアミノ基を有するPEG等と反応させることができる。ブロッキング材料としては公知のものを使用することができ、例えばBlockmaster(登録商標)のCE510,CE210,DB1130,PA1080などが挙げられる。
【0106】
バッファーとしては、Tris系のバッファーおよびHEPES系のバッファーなどが挙げられる。
【0107】
界面活性剤は、検査粒子の分散の安定化やタンパク質の安定化に用いることができる。
界面活性剤としては、Brij 35、Brij 58やTween20、Tween80、NP40、TritonX―100、TritonX―114などが挙げられる。具体的には界面活性剤としては例えば、Binding buffer(20mM Tris-HCl (pH7.6)、100mM KCl、5mM MgCl、1mM DTT、5%グリセロール、50μg/mL heparin)、NEBuffer(登録商標)2.1(10mM Tris―HCl、50mM NaCl、10mM MgCl、100μg/mL ウシ血清アルブミン(BSA),pH7.9)、FZ Buffer(20mM HEPES、60mM NaCl、6mM MgCl、pH6.8)などが挙げられる。
【0108】
(封止媒体)
封止媒体としては、液体であれば、疎水性の液体媒体を用いることで、分散媒体として親水性の液体媒体を用いた場合に互いに混ざり合うことを抑制することができる。疎水性の液体媒体としては、例えば飽和炭化水素、不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、シリコーンオイル、フッ素系オイル、パーフルオロカーボン、ハロゲン系溶媒、および疎水性イオン液体からなる群より選択される少なくとも1つまたはこれを含む混合物等を好適に用いることができる。
【0109】
飽和炭化水素としては、例えばアルカン、シクロアルカンなどが挙げられる。アルカンとしては、例えばデカン、ヘキサデカン等が挙げられる。不飽和炭化水素としては、例えばスクアレン等が挙げられる。芳香族炭化水素としては、例えばベンゼン、トルエン等が挙げられる。フッ素系オイルとしてはSR-X Sealing Oilなどが挙げられる。パーフルオロカーボンとしては、例えばフロリナート(登録商標)FC40(SIGMA社製)等が挙げられる。ハロゲン系溶媒としては、例えばクロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼン等が挙げられる。疎水性イオン液体とは少なくとも水中では解離しないイオン液体をさし、例えばヘキサフルオロリン酸1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム等が挙げられる。イオン液体とは、室温において液体で存在する塩を指す。
封止媒体は、固体であれば、先に述べたように例えばワイピング部材を用いることができる。固体の封止媒体を構成する材料としては、ガラスや金属などを選択することができ、それらを組み合わせることもできる。
【0110】
<ターゲット物質検出方法>
本発明に係るターゲット物質検出方法は、反応工程と、粒子封入工程と、検出工程とを有する。反応工程は、ターゲット物質を特異的に捕捉する検査粒子と、上記ターゲット物質とを反応させる工程である。粒子封入工程は、上記反応工程の後に、上記検査粒子用いてこれまでに説明した本発明に係る粒子封入方法を行う工程である。また、検出工程は、上記マイクロウェルの各々に収容された上記検査粒子のうちの上記ターゲット物質を捕捉した検査粒子を検出する工程である。
【0111】
(反応工程)
反応工程は検査粒子にターゲット物質を反応させる工程であり、例えば検査粒子を含む溶液と、ターゲット物質を含む溶液とを混合して反応させることで達成することができる。反応工程で行う反応としては、例えば抗原抗体反応、ストレプトアビジン-ビオチン反応、核酸の相補的な結合等、公知の分子認識反応や分子間の相互作用等を好適に用いることができる。
【0112】
(粒子封入工程)
粒子封入工程では、上述した粒子封入方法における各工程を同様に行うことができる。
【0113】
(検出工程)
検出工程は、粒子封入工程の後に、それぞれのマイクロウェルにターゲット物質を捕捉した検査粒子が充填されているか否かを検出する工程である。
【0114】
マイクロウェルにターゲット物質を捕捉した検査粒子が収容されているか否かを検出する方法としては、例えば蛍光検出を利用した方法が挙げられる。具体的には例えば、マイクロウェルを有するベースプレートをインキュベートしてターゲット物質またはこれに特異的に結合した分子に結合した所定の酵素の活性により発生した蛍光を検出することを含んでもよい。酵素の活性により発生した蛍光とは、例えば酵素の活性により蛍光基質を分解し、これにより遊離した蛍光物質が発する蛍光である。蛍光の検出方法としては、蛍光顕微鏡およびイメージセンサ等を用いた方法等が挙げられる。
【0115】
また、検出工程は、各マイクロウェルに検査粒子が収容されているか否かを検出する工程を含むことが好ましい。各マイクロウェルに検査粒子が収容されているか否かを検出する方法としては、例えば顕微鏡下において検査粒子の有無を観察する方法が挙げられる。
また、検査粒子の有無を検出する方法として、検査粒子による散乱光を検出する方法、電界効果トランジスタによる電位計測を利用する方法等も挙げられる。さらに、他の検出方法としては、上述したように検査粒子を含む分散媒体に標準蛍光物質を添加することで蛍光を検出する方法が挙げられる。ここで蛍光を検出する方法としては、先に述べたのと同様に蛍光顕微鏡やイメージセンサ等を用いた方法等が挙げられる。
【0116】
ターゲット物質を捕捉した検査粒子が収容されているか否かを検出する方法と、各マイクロウェルに検査粒子が収容されているか否かを検出する方法との両方で蛍光を検出する際には、それぞれの検出における蛍光波長は互いに十分に離れていることが好ましい。これによりそれぞれの検出が容易となる。
【0117】
以下に検出工程の流れをより詳細に説明する。
例えばインキュベートによって、ターゲット物質またはこれに特異的に結合した分子に結合した所定の酵素により蛍光基質を分解し、これにより遊離した蛍光物質が発する蛍光を検出する場合、まずインキュベート後に明視野画像および蛍光画像を取得する。明視野画像および蛍光画像の取得には蛍光顕微鏡等を用いることができる。
【0118】
取得された明視野画像にはマイクロウェルに収容された検査粒子やマイクロウェルが撮像されている。つまり、明視野画像はマイクロウェルおよび検査粒子の検知のために撮影する。ここで、反応液に標準蛍光物質等を入れておき、すべてのマイクロウェルが蛍光を発するようにしておけば、明視野画像の代わりに、その標準蛍光物質の蛍光波長に合った撮像条件で撮影した蛍光画像を取得することもできる。また、検査粒子の自家蛍光を利用して検査粒子の位置を判断するための蛍光画像を撮影してもよい。
【0119】
次に、前記明視野画像を用いて各マイクロウェルのマスク画像(ウェル:1、ウェル以外:0)(以下、ウェルマスク画像ともいう)と検査粒子が収容されたマイクロウェルに対応する部分をマスクした画像(以下、粒子マスク画像ともいう)とを作成する。
【0120】
最後に蛍光画像、ウェルマスク画像、および粒子マスク画像を用いて、各マイクロウェルの蛍光強度を算出し、検査粒子が存在し、かつ所定の閾値を超えた蛍光強度を有するマイクロウェルを特定する(ポジ判定)。前記閾値は、各マイクロウェルの蛍光強度から大津法等を用いて自動的に決定してもよいし、検査粒子が収容されていないウェルプレートを用いて測定しておいて、その蛍光強度バラツキから決定してもよい。または、検査粒子が収容されていない各マイクロウェルの蛍光強度情報を用いて算出してもよい。
【0121】
検出工程の結果、検査粒子が収容されているマイクロウェルの数と、検査粒子のうちターゲット物質を捕捉した粒子が収容されているマイクロウェルの数とを明らかにすることができる。これらの値を用いて、マイクロウェルに封入された検査粒子の全数のうちターゲット物質を捕捉した検査粒子の数の割合を算出することができる。これにより、ターゲット物質の濃度を定量化することが可能となる。
【0122】
また蛍光顕微鏡、イメージセンサ等を用いてアレイ中の蛍光物質を検出する際に、倍率が高すぎると観察範囲が狭くなり、検出精度が低くなる。そのため有効な観察範囲としては少なくとも25000程度のマイクロウェルが観察できような倍率が好ましく、100万個のマイクロウェルが観察できる倍率であることがより好ましい。観察範囲が広ければ前述した複数のサンプル、複数の項目を一度に検査することも可能となる。
【実施例0123】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0124】
(ベースプレート1の作製)
図1に示すベースプレート11を、フッ素樹脂塗布工程、フォトリソグラフィ工程、エッチング・レジスト除去工程を経て作製した。
【0125】
ベースプレート11の作製に用いる基板としては、石英基板(合成石英基板AQグレード、厚さ1mm、AGC社製)を使用した。フッ素樹脂塗布工程では、上記基板をシランカップリング剤(KBE‐903、信越シリコーン社製)で処理した後、フッ素樹脂(CYTOP(登録商標) CTL‐809A、AGC社製)を塗布した。
【0126】
フォトリソグラフィ工程では、ポジ型のフォトレジスト(AZ P4903、AZ Electronic Materials)を塗布した。次に、目的のパターンのフォトマスクを介して上部からUVを露光し、アルカリによる現像処理を行なった。この現像処理によりUVが照射された部分のみ、フォトレジストが溶解して疎水性の樹脂層がむき出しになった。
【0127】
エッチング・レジスト除去工程では、一部が溶解したフォトレジストを介して酸素プラズマによるエッチングで樹脂層の一部を除去して疎水性の隔壁を形成した。
【0128】
最後に、有機溶媒でフォトレジストを溶解させることによって目的とする複数のマイクロウェル13からなるアレイ14を形成した。各マイクロウェル13の円形の開口の直径は5μm、深さは4μm、体積は78.5fL、ピッチは10μm、ウェル数は約100万個であった。アレイ14が形成されたベースプレート11上の領域は、1辺およそ10mmの正方形であった。このようにしてベースプレート1を作製した。
【0129】
(ワイピング部材1の作製)
図1に示すワイピング部材12を、材料となる基板として石英基板(合成石英基板AQグレード、厚さ1mm、AGC社製)を使用してウォータージェット加工により作製し、ワイピング部材1とした。また、図1に示す隔壁部材15についても、ワイピング部材1と同様にして作成し、隔壁部材1とした。
【0130】
(ワイピング部材2の作製)
図4に示すワイピング部材12(隔壁部材15)を、材料となる基板として石英基板(合成石英基板AQグレード、厚さ1mm、AGC社製)を使用してウォータージェット加工により作製し、ワイピング部材2とした。すなわち、ワイピング部材2は、隔壁部材としても機能する部材である。なお、第1の領域16の開口および第2の領域17の開口はそれぞれ1辺11mmの正方形状となった。
【0131】
(ワイピング部材3の作製)
図9に示すワイピング部材12(隔壁部材15)を、材料となる基板として石英基板(合成石英基板AQグレード、厚さ1mm、AGC社製)を使用してウォータージェット加工により作製し、ワイピング部材3とした。すなわち、ワイピング部材3は、隔壁部材としても機能する部材である。なお、第1の仕切り51および第2の仕切り52それぞれの第2の方向Bの幅はいずれも2mmであった。また、第1の仕切り51および第2の仕切り52により分室された第3の領域16a、16bの開口および第4の領域17a、17bの開口はそれぞれ短辺4.5mm長辺11mmの長方形状となった。
【0132】
(ワイピング部材4の作製)
ワイピング部材2の片面(第3の面12cまたは第4の面12d(図6(e)参照)となる面)をアルミ蒸着して作製したワイピング部材をワイピング部材4とした。すなわち、ワイピング部材4は、ワイピング部材2と同様に隔壁部材としても機能する部材である。
【0133】
(ワイピング部材5の作製)
本例では、図4で示されるワイピング部材12(隔壁部材15)を、厚さ1mmの透明ポリスチレン板を使用しウォータージェット加工によりワイピング部材5として作製した。図4における第1の領域16の開口および第2の領域17の開口はそれぞれ1辺11mmの正方形状となった。
【0134】
(検査粒子1の準備)
磁性粒子の分散液(Magnosphere(登録商標)MS160/Carboxyl、JSR株式会社製)を準備し、検査粒子1の分散液とした。
【0135】
(検査粒子2の準備)
磁性粒子の分散液(Magnosphere(登録商標)MS300/Carboxyl、JSR株式会社製)を準備し、検査粒子2の分散液とした。
【0136】
(検査粒子3の準備)
宇部エクシモ製ハイプレシカ(登録商標) N3N(粒子径2.9μm)を原料粒子として0.5g用意し、これをエタノール75mL(キシダ化学製)と純水75mLとの混合溶液に分散させた。次に、テトラエトキシシラン(TEOS)(キシダ化学製)を1.5mL添加し、触媒として28%アンモニア水(キシダ化学製)を22.5mL追加して撹拌しながら1.5時間反応させた。反応後、遠心分離で溶媒を除去し、純水で7回洗浄して原料粒子にシリカ層を形成した。
【0137】
得られたシリカ被覆粒子をエタノール10mLと純水10mLとの混合溶液に分散させ、シランカップリング剤として、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(LS-3380、信越化学工業製)を100μL添加して十分に混合した。次に、28%のアンモニア水2mLを添加し1.5時間撹拌した。次に、遠心分離で溶媒を除去し、純水で十分洗浄した後、60mLの窒素バブリングした純水を追加して水分散液を得た。次に、この水分散液を4つ口のフラスコ(200mL)に入れ、窒素バブリングして200rpmの撹拌速度で15分撹拌した。続いて、窒素バブリングを窒素フローに切り替た後、この水分散液にスチレンモノマー(キシダ化学社製)を50μL添加した。
次に、0.02gの過硫酸カリウム(シグマアルドリッチ社製)を予め窒素バブリングで脱気した純水2mLに溶解して1mLをフラスコ内に添加した。次に、オイルバスを用いて、35℃で30分加熱した後、60℃に昇温して1時間保持した。続いて、グリシジルメタクリレート(キシダ化学社製)200μL添加して、さらに12時間保持して重合を終了した。重合終了後、遠心分離で溶媒を除去し、純水で十分洗浄した。
【0138】
続いて得られた粒子10mgを5mLの純水に分散させた。この粒子分散液とは別に、メルカプトコハク酸(キシダ化学製)350mgを純水5mLに溶解して、pH調整としてトリエチルアミン(東京化成工業製)を0.8mL添加した。この溶液を、粒子分散液に1mL添加して十分撹拌して60℃で3時間加熱処理した。この後、遠心分離で溶媒を除去し、純水で十分洗浄し検査粒子3の分散液を得た。
【0139】
示差熱-熱重量同時分析(TG-DTA)により求めた検査粒子3の分散液の固形分濃度は30mg/mLであった。検査粒子の直径を3.0μm、比重を2.1g/cmと仮定し、この分散体の粒子数濃度は1.0×10個/mLとした。
【0140】
(検査粒子4の作製)
検査粒子4としてCas12aとcrRNAとの複合体が粒子に結合した複合粒子を作製した。
まず、磁性粒子の分散液(Magnosphere(登録商標)MS300/Carboxyl)をマイクロチューブに入れて磁性粒子を磁石で沈殿させた。上清を除去した後に、磁性粒子ペレットにMES緩衝液(100mM、pH5.4)を加えて再度分散させ、N-ヒドロキシスルホスクシンイミド(sulfo-NHS)、および、水溶性カルボジイミド(WSC)を加えた。その後、25℃で1時間攪拌し、磁石で磁性粒子を回収した。
【0141】
続いて、回収した磁性粒子をMES緩衝液で洗浄し、MES緩衝液で分散させて、任意の量の抗Hisタグ抗体(Anti-His-tag mAb、MBLライフサイエンス社)を加えた。その後、25℃で2時間攪拌した。
続いて大過剰のエタノールアミンを添加して磁性粒子表面の活性基を失活させた。磁石で磁性粒子を回収し、回収した磁性粒子をMES緩衝液で洗浄して、抗体固定化粒子を作製した。
【0142】
得られた抗体固定化粒子にストレージバッファー(10mM HEPES-NaOH(pH7.9)、50mM KCl、1mM EDTA、10%グリセロール)を添加し、抗体固定化粒子液を調製した。抗体固定化粒子液は使用時まで4℃で保存した。
次に、希釈したCas12aとcrRNAとを1:1.25の濃度比(モル比)になるように混合し、37℃で30分間インキュベートし、Cas12a-crRNA複合体を作製した。
【0143】
また、作製した抗体固定化粒子液(1wt%)を2mLサンプルチューブ(VIOLAMO製、型番:1-1600-04)に分取した。攪拌後、磁性スタンド(マジカルトラッパー、TOYOBO製、型番:MGS-101)にサンプルチューブを立て、1分間静置したのち上清を除去することにより、溶液除去を行った。粒子洗浄液として0.05%Tween20含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS-T)を加え、攪拌後、上記と同様にして溶液を除去した。以上の操作を2度繰り返して洗浄した。
【0144】
洗浄後の抗体固定化粒子をPBS-Tに懸濁し、上記で調製したCas12a-crRNA溶液を任意の濃度になるように添加し、攪拌後、振とう機で1時間反応させた。ここで、用いたCas12aはN末端にHisタグを有することから、Cas12が有するHisタグと、抗体固定化粒子が有する抗Hisタグ抗体との抗原抗体反応によりCas12aと抗体固定化粒子とが結合される。これによりCas12aとcrRNAとの複合体が粒子に結合した検査粒子4を作製した。最終的な検査粒子4の分散体中の粒子数濃度は計算から3.1×10個/mLとなった。
反応後に溶液を除去し、PBS-Tで洗浄操作を行った。洗浄後、精製水に懸濁し、攪拌後、使用時まで4℃で保存した。
【0145】
(検査粒子1を含む分散媒体1の調製)
検査粒子1の水分散体(10mg/mL、4.0×10個/mL)10μLをバッファー(A)489.25μLで希釈し、さらに標準蛍光物質として1mMのAlexa Fluor 647を0.75μL加え、検査粒子1を含む分散媒体1とした。
なお、バッファー(A)の組成は以下のとおりである。
バッファー(A)の組成:
50mM Tris-Cl (pH7.6)
10mM CaCl
0.01% Brij(登録商標)35
【0146】
(検査粒子2を含む分散媒体2の調製)
検査粒子2の水分散体(10mg/mL、6.0×10個/mL)16.7μLをバッファー(A)482.55μLで希釈し、さらに標準蛍光物質として1mMのAlexa Fluor 647を0.75μL加え、検査粒子2を含む分散媒体2とした。
【0147】
(検査粒子3を含む分散媒体3の調製)
検査粒子3の分散液(30mg/mL、1.0×10個/mL)10μLをバッファー(A)490μLで希釈し、検査粒子3を含む分散媒体3とした。
【0148】
(検査粒子4を含む分散媒体4の調製)
まず、ターゲット物質であるDNAとしては合成DNA(以下、DNA_113bpという)を用いた。DNA_113bpを精製水で希釈してDNA原液(4nM)を調製し、Qubit(登録商標) 2.0 Fluorometer (ライフテクノロジーズ社製)で計測して濃度を確認した。DNA原液(4nM)を精製水で希釈し、DNA溶液(0.684nM)を調製した。さらにDNA溶液(0.684nM)から精製水で希釈を行い、DNA溶液1(0.228nM)を調製した。
なおDNA_113bpの塩基配列(配列番号1)は以下のとおりである。
ctcacgccttatgactgcccttatgtcaccgcttatgtctcccgatatcacacccgttatctcagccctaatctctgcggtttagtctggccttaatccatgcctcatagcta
次に検査粒子4の水分散体(3.1×10個/mL):7.3μL、水:22.7μL、およびDNA溶液1(0.228nM):30μLを混合した。得られた混合溶液を37℃で30分間反応させ、複合粒子とDNAとの複合体を形成した。
【0149】
次に、以下の材料を用意した。
・800nMのHiLyte488を含むレポーター分子溶液(12μM):25μL ・Tween20(5%):10μL
・BSA(30%):1μL
・スペルミン水溶液(50mM):4μL
・10×Binding buffer:10μL
これらをあらかじめ1.5mLマイクロチューブ内で混合した。この混合溶液に、上記の複合粒子とDNAとの複合体50μLを加えて検査粒子4を含む分散媒体4とした。
なおレポーター分子溶液としては、市販のキット(商品名:DNaseAlert(登録商標) Substrate Nuclease Detection System 11-02-01-04、IDT社製)に含まれるレポーター分子を用いた。このレポーター分子は、蛍光物質であるHEXと、消光剤とを有する。
【0150】
(検査粒子4を含む分散媒体5の調製)
まず、ターゲット物質であるDNAとしてはDNA_113bpを用いた。DNA_113bpを精製水で希釈してDNA原液(4nM)を調製し、Qubit 2.0 Fluorometer(ライフテクノロジーズ社製)で計測して濃度を確認した。DNA原液(4nM)を精製水で希釈し、DNA溶液(0.684nM)を調製した。さらにDNA溶液(0.684nM)から精製水で希釈を行い、DNA溶液2(0.114nM)を調製した。
次に検査粒子4の分散体(3.1×10個/mL):7.3μL、水:22.7μL、およびDNA溶液2(0.114nM):30μLを混合した。得られた混合溶液を37℃で30分間反応させ、複合粒子とDNAとの複合体を形成した。
次に、以下の材料を用意した。
・800nMのHiLyte488を含むレポーター分子溶液(12μM):25μL ・Tween20(5%):10μL
・BSA(30%):1μL
・スペルミン水溶液(50mM):4μL
・10×Binding buffer:10μL
これらをあらかじめ1.5mLマイクロチューブ内で混合した。この混合溶液に、上記の複合粒子とDNAとの複合体50μLを加えて検査粒子4を含む分散媒体5とした。
【0151】
[実施例1]
マイクロウェルデバイスとしてベースプレート1とワイピング部材2との組み合わせを選択し、またアレイに導入する検査粒子を含む分散媒体としては、検査粒子2を含む分散媒体2を選択した。
まずベースプレートおよびワイピング部材を図6(a)に示す配置となるようにセットした。次に、ワイピング部材が有する第1の領域に100μLの検査粒子を含む分散媒体を、マイクロピペットを用いて投入した。投入してすぐにワイピング部材をベースプレートに対して図6(c)に示す位置までベースプレート上をスライドさせてから、マイクロウェルデバイスを0.1気圧の減圧デシケータ内に約30秒放置することにより脱気を行った。脱気後5分間静置してマイクロウェルに検査粒子2が充填されるのを待った。静置している間にワイピング部材が有する第2の領域にフッ素系オイルであるSR-X Sealing Oilを、マイクロピペットを用いて100μL投入した。次にワイピング部材をベースプレートに対して図6(f)に示す位置までベースプレート上をゆっくりスライドさせ、マイクロウェルをフッ素系オイルで封止した。
【0152】
[実施例2]
実施例1において、封止工程を次のように変更した以外は実施例1と同様に実施した。
図6(c)に示す配置で静置している間に、ワイピング部材が有する第2の領域にフッ素系オイルであるSR-X Sealing Oilを、マイクロピペットを用いて100μL投入した。次に、ワイピング部材をベースプレートに対して図6(f)に示す位置までベースプレート上をゆっくりスライドさせた。さらに、ワイピング部材をベースプレートに対して図6(g)に示す位置までベースプレート上をゆっくりかつ、ワイピング部材のベースプレートへの押さえつけを緩めながらスライドさせ、マイクロウェルをオイルの薄層とワイピング部材とで封止した。
【0153】
[実施例3]
実施例2において、「検査粒子2を含む分散媒体2」を、「検査粒子3を含む分散媒体3」に変更した。それ以外は実施例2と同様に実施した。
【0154】
[実施例4]
実施例2において、「検査粒子2を含む分散媒体2」を、「検査粒子1を含む分散媒体1」に変更した。それ以外は実施例2と同様に実施した。
【0155】
[実施例5]
実施例2において、ワイピング部材2をワイピング部材4に変更した。なお、ワイピング部材4は、金属蒸着面がベースプレートのアレイを有する面と接するようにセットして使用した。すなわちワイピング部材4の第3の面が金属蒸着面を有する構成とした。それ以外は実施例2と同様に実施した。
【0156】
[実施例6]
実施例5において、ワイピング部材4を、金属蒸着面と反対の側の面がベースプレートのアレイを有する面と接するようにセットして使用した。すなわちワイピング部材4の第4の面が金属蒸着面を有する構成とした。それ以外は実施例5と同様に実施した。
【0157】
[実施例7]
実施例2において、導入工程を次のように変更した以外は実施例2と同様に実施した。
ベースプレートおよびワイピング部材を図6(c)に示す配置となるようにセットした。次にワイピング部材が有する第1の領域に100μLの検査粒子2を含む分散媒体2を、マイクロピペットを用いて投入した。
【0158】
[実施例8]
実施例7において、「検査粒子2を含む分散媒体2」を、「検査粒子1を含む分散媒体1」に変更し、さらに充填工程を次のように変更した以外は実施例7と同様に実施した。
図6(c)に示す配置において、マイクロウェルデバイスを0.1気圧の減圧デシケータ内に約30秒放置することにより脱気を行い、脱気後ベースプレートの裏側からアレイ全体を5秒間かけてネオジム磁石(直径15mm、高さ10mm、二六製作所製)でなぞった。その後、5分間静置してマイクロウェルに検査粒子1が充填されるのを待った。
【0159】
[実施例9]
マイクロウェルデバイスとしてベースプレート1とワイピング部材3との組み合わせを選択した。また、検査粒子を含む分散媒体として、検査粒子1を含む分散媒体1と、検査粒子2を含む分散媒体2との2種類を選択した。
まずベースプレートおよびワイピング部材を図6(c)に示す配置となるようにセットした。次に、一方の第3の領域16aに80μLの検査粒子1を含む分散媒体1を投入し、同様に他方の第3の領域16bに80μLの分散媒体2を投入した。
続いて、マイクロウェルデバイスを0.1気圧の減圧デシケータ内に約30秒放置することにより脱気を行い、脱気後10分間静置してマイクロウェルに検査粒子1と検査粒子2が充填されるのを待った。静置している間に第4の領域17a、17bにフッ素系オイルであるSR-X Sealing Oilを、マイクロピペットを用いて100μL投入した。次にワイピング部材をベースプレートに対して図6(f)に示す位置までベースプレート上をゆっくりスライドさせた。さらにワイピング部材をベースプレートに対して図6(g)に示す位置までベースプレート上をゆっくりかつ、ワイピング部材のベースプレートへの押さえつけを緩めながらスライドさせ、マイクロウェルをオイルの薄層とワイピング部材とで封止した。
【0160】
[実施例10]
実施例1において、封止工程を次のように変更した以外は実施例1と同様に実施した。
図6(c)に示す配置で充填工程を行った後、ワイピング部材をベースプレートに対して図6(f)に示す位置までベースプレート上をゆっくりスライドさせた。その後、ワイピング部材が有する第2の領域にフッ素系オイルであるSR-X Sealing Oilを、マイクロピペットを用いて穴の壁を沿わせて100μL投入し、マイクロウェルをフッ素系オイルで封止した。
【0161】
[実施例11]
実施例10において、導入工程を次のように変更した以外は実施例10と同様に実施した。
まずベースプレートおよびワイピング部材を図6(c)に示す配置となるようにセットした。次にワイピング部材が有する第1の領域に100μLの分散媒体2を、マイクロピペットを用いて投入した。
【0162】
[実施例12]
マイクロウェルデバイスとしてベースプレート1とワイピング部材1と隔壁部材1との組み合わせを選択し、また、アレイに導入する検査粒子を含む分散媒体として、検査粒子2を含む分散媒体2を選択した。
まずベースプレート、ワイピング部材、および隔壁部材を図3(a)に示す配置となるようにセットした。次に、アレイとワイピング部材の第1の面との間のベースプレート上の領域に、100μLの検査粒子2を含む分散媒体2を、マイクロピペットを用いて投入した。投入してすぐにワイピング部材をベースプレートに対して図3(c)に示す位置までベースプレート上をスライドさせた。その後、マイクロウェルデバイスを0.1気圧の減圧デシケータ内に約30秒放置することにより脱気を行い、脱気後5分間静置してマイクロウェルに検査粒子2が充填されるのを待った。静置後、ワイピング部材をベースプレートに対して図3(e)に示す位置までベースプレート上をゆっくりスライドさせた。その後、アレイとワイピング部材の第2の面との間のベースプレート上の領域に、フッ素系オイルであるSR-X Sealing Oilを、マイクロピペットを用いて100μL投入した。投入してすぐにワイピング部材をベースプレートに対して図3(f)に示す位置までベースプレート上をゆっくりスライドさせ、マイクロウェルをオイルで封止した。
【0163】
[実施例13]
実施例12において、導入工程を次のように変更した以外は実施例12と同様に実施した。
まずベースプレート、ワイピング部材、および隔壁部材を図3(c)に示す配置となるようにセットした。次に、アレイ上に100μLの検査粒子2を含む分散媒体2を、マイクロピペットを用いてワイピング部の第1の面に沿わせて投入した。
【0164】
[実施例14]
実施例12において、封止工程を次のように変更した以外は実施例12と同様に実施した。
図3(c)に示す配置において充填工程を行った後、ワイピング部材をベースプレートに対して図3(e)に示す位置までベースプレート上をゆっくりスライドさせた後で、続いて図3(f)に示す位置までスライドさせた。その後、フッ素系オイルであるSR-X Sealing Oilを、マイクロピペットを用いてワイピング部材の第2の面に沿わせてアレイ上に100μL投入し、マイクロウェルをオイルで封止した。
【0165】
[実施例15]
実施例13において、封止工程を次のように変更した以外は実施例13と同様に実施した。
図3(c)に示す配置において充填工程を行った後、ワイピング部材をベースプレートに対して図3(e)に示す位置までベースプレート上をゆっくりスライドさせた後で、続いて図3(f)に示す位置までスライドさせた。その後、フッ素系オイルであるSR-X Sealing Oilを、マイクロピペットを用いてワイピング部材の第2の面に沿わせてアレイ上に100μL投入し、マイクロウェルをオイルで封止した。
【0166】
[実施例16]
実施例1において、「検査粒子2を含む分散媒体2」を、「検査粒子4を含む分散媒体4」に変更した。それ以外は実施例1と同様に実施した。
【0167】
[実施例17]
実施例2において、「検査粒子2を含む分散媒体2」を、「検査粒子4を含む分散媒体4」に変更した。それ以外は実施例2と同様に実施した。
【0168】
[実施例18]
実施例7において、「検査粒子2を含む分散媒体2」を、「検査粒子4を含む分散媒体4」に変更した。それ以外は実施例7と同様に実施した。
【0169】
[実施例19]
実施例8において、「検査粒子2を含む分散媒体2」を、「検査粒子4を含む分散媒体4」に変更した。それ以外は実施例8と同様に実施した。
【0170】
[実施例20]
実施例5において、「検査粒子2を含む分散媒体2」を、「検査粒子4を含む分散媒体4」に変更した。それ以外は実施例5と同様に実施した。
【0171】
[実施例21]
実施例6において、「検査粒子2を含む分散媒体2」を、「検査粒子4を含む分散媒体4」に変更した。それ以外は実施例6と同様に実施した。
【0172】
[実施例22]
実施例9において、検査粒子1を含む分散媒体1と、検査粒子2を含む分散媒体2との2種類を、検査粒子4を含む分散媒体4と、検査粒子4を含む分散媒体5との2種類に変更した。また、導入工程において、一方の第3の領域16aに検査粒子4を含む分散媒体4を投入し、他方の第3の領域16bに検査粒子4を含む分散媒体5を投入した。それ以外は実施例9と同様に実施した。
【0173】
[実施例23]
はじめに、マイクロピペットを用いてワイピング部材の裏面全体にフッ素系オイルであるSR-X Sealing Oil 120μLを塗布した。その後に、オイルを塗布した面をベースプレートに接触させ、図6(a)に示す配置となるようにセットした以外は実施例10と同様に行った。
【0174】
[実施例24]
ワイピング部材2の代わりにワイピング部材5を選択した以外は実施例23と同様に行った。
【0175】
[実施例25]
ワイピング部材裏面全体に塗布する媒体をフッ素系オイルであるSR-X Sealing Oilの代わりに純水を用いた以外は実施例24と同様に行った。
【0176】
[実施例26]
最初のスライド操作の後のマイクロウェルデバイスの脱気操作を行わなかった以外は実施例24と同様に行った。
【0177】
[実施例27]
マグネットソフトケース(クラウン社、CR-MGA5)のマグネット面に接触させるようにベースプレートを設置してからワイピング部材をセットした以外は実施例26と同様に行った。
【0178】
[実施例28]
マグネットソフトケースの代わりにマグネットバー(コクヨ社、マクー201NB)を用い、マグネット面に接触させるようにベースプレートを設置してからワイピング部材をセットした以外は実施例27と同様に行った。
【0179】
[実施例29]
図6(c)に示す配置でマイクロウェルに検査粒子2が充填されるのを5分間待った後に、マイクロウェルデバイスをマグネットバーから下ろして、磁場をかけない状態を1分保持した。その後でワイピング部材を図6の(f)の位置までベースプレート上をゆっくりスライドさせた以外は実施例28と同様に行った。
【0180】
[比較例1]
マイクロウェルデバイスとしてベースプレート1およびワイピング部材2の組み合わせを選択し、またアレイに導入する検査粒子を含む分散媒体として、検査粒子2を含む分散媒体2を選択した。
まずベースプレートおよびワイピング部材を図6(a)に示す配置となるようにセットした。次に、ワイピング部材が有する第1の領域に100μLの検査粒子2を含む分散媒体2を、マイクロピペットを用いて投入した。投入してすぐにワイピング部材をベースプレートに対して図6(c)に示す位置までベースプレート上をスライドさせてから、マイクロウェルデバイスを0.1気圧の減圧デシケータ内に約30秒放置することにより脱気を行った。脱気後、5分間静置してマイクロウェルに検査粒子2が充填されるのを待った。静置後、マイクロピペットを用いて第1の領域の中の分散媒体2を一回の吸引作業でゆっくりと吸い取った。その後、第1の領域にフッ素系オイルであるSR-X Sealing Oilを、マイクロピペットを用いて100μL投入して、マイクロウェルをオイルで封止した。
【0181】
[比較例2]
比較例1において、導入工程を次のように変更した以外は比較例1と同様に実施した。
まずベースプレートおよびワイピング部材を図6(c)に示す配置となるようにセットした。次に、ワイピング部材が有する第1の領域に100μLの分散媒体2を、マイクロピペットを用いて投入した。
【0182】
[比較例3]
マイクロウェルデバイスとしてSimoa Discs(16枚):100001(Quanterix社製)を用いた。仕様からマイクロウェルの開口の直径は4.25μm、深さは3.25μm、容量は50fL、マイクロウェルの総数は239,000個であり、ベースプレート上のアレイが形成された領域は短辺3mm長辺4mmの長方形である。アレイに導入する検査粒子を含む分散媒体としては、検査粒子2を含む分散媒体2を選択した。
マイクロウェルデバイスのインレットの穴に25μLの検査粒子2を含む分散媒体2を、マイクロピペットを用いてゆっくりと投入した。投入後、マイクロウェルデバイスを0.1気圧の減圧デシケータ内に約30秒放置することにより脱気を行った。脱気後5分間静置してマイクロウェルに検査粒子2が充填されるのを待った。静置後、マイクロウェルデバイスのインレットの穴にフッ素系オイルであるSR-X Sealing Oilを、マイクロピペットを用いて100μL投入し、マイクロウェルをオイルで封止した。なお、封止用のフッ素系オイルをインレットの穴から投入した際に、アウトレットの穴から少量の分散媒体2が押し出されてきた。
【0183】
[比較例4]
比較例3において、検査粒子2を含む分散媒体2の代わりに、検査粒子1を含む分散媒体1を選択し、また、静置時間を10分にした他は比較例3と同様に実施した。なお、封止用のフッ素系オイルをインレットの穴から投入した際に、比較例3と同様にアウトレットの穴から少量の分散媒体1が押し出されてきた。
【0184】
[比較例5]
非特許文献1に記載の粒子の封入方法であるPITAT METHODを再現するように以下の条件で実施した。
マイクロウェルデバイスとしてベースプレート1を選択し、またアレイに導入する検査粒子を含む分散媒体として、検査粒子2を含む分散媒体2を選択した。
ベースプレートのアレイ上に100μLの検査粒子2を含む分散媒体2を、マイクロピペットを用いて投入した。
マイクロウェルデバイスを氷冷したアルミブロックの上に1分間静置して脱気した後、25℃の室温に戻して5分間静置した。
静置後、短辺がおよそ6mm長辺がおよそ15mmの長方形状に切り出したスコッチ(登録商標)145RN(3M社製)のテープ1枚を、アレイを横断する形で軽く貼り付けた。
その後、およそ0.2mmの厚さにカプトンテープを巻いたプラスチック棒を、カプトンテープを巻いた部分が仮止めした145RNテープに当たるように転がした。これにより、145RNテープをアレイにしっかりと貼り付けて、マイクロウェルを145RNテープで封止した。
なお、145RNテープでマイクロウェルを封止する際にテープの脇から分散媒体2が押し出されてきた。さらにプラスチック棒を転がしているときに、巻いたカプトンテープ部分に押し出された分散媒体2が付着し、また、封止した145RNテープの表面にも分散媒体2が付着した。
【0185】
[評価]
充填率、有効な観察範囲の広さ、およびマイクロウェルデバイスの汚損の3つの項目で実施例の結果を評価した。
実際の検出感度としては、まず検査粒子がどれだけマイクロウェルに充填されたかが重要である。たとえ前処理で検査粒子がターゲット物質を捕捉していたとしても、マイクロウェルに検査粒子が充填されなければ検出することはできず、粒子の封入方法としては不適である。
【0186】
次に重要なのは有効な観察範囲の広さである。たとえ粒子がマイクロウェルに充填されても、実際に検出する際に、マイクロウェル上に検査粒子の凝集体や気泡が存在したり、封止媒体が均一にマイクロウェルアレイを覆えていなかったりする場合がある。このような場合が生じるような方法は、所定の画像処理においてマイクロウェル自体の位置や検査粒子、発光するマイクロウェルを検出できる領域が狭くなるため、粒子の封入方法としては不適である。
【0187】
また、実際のハンドリング操作においては、封止工程等で排出された分散媒体や封止媒体でマイクロウェルデバイス自体が汚損され、続く検出工程等で検査装置も汚損される場合がある。このような場合が生じるような方法は、検査結果の正確性に影響し得るため、たとえ高感度で検出できたとしても、粒子の封入方法としては不適である。
【0188】
上記実施例のうち、アレイに導入する検査粒子を含む分散媒体として、検査粒子3を含む分散媒体3および検査粒子4を含む分散媒体4を選択した実施例では、37℃でインキュベートして反応させることにより蛍光の生成を促した。
【0189】
充填率および有効な観察範囲の広さは蛍光顕微鏡(BZ-X800(キーエンス社製))を用い、マイクロウェルがおよそ25000個観察できる範囲の条件で評価した。
【0190】
検査粒子の充填率は、具体的には次のようにして求めた。まず、標準蛍光物質の蛍光を基にマイクロウェルの位置を確認し、続いてそのマイクロウェルの中に検査粒子に起因する輪郭のエッジを有しているウェルを画像処理により抽出した。その後、観察範囲に占めるマイクロウェルの総数と検査粒子が充填されたマイクロウェルの数との比率から、検査粒子の充填率を求めた。分散媒体が標準蛍光物質を含まないときは、予め同じ標準蛍光物質を含む溶媒をマイクロウェルに充填して取得したマイクロウェルのマスク画像を基にマイクロウェルの位置を確認した。続いて、マイクロウェルの中に検査粒子に起因する輪郭のエッジを有しているマイクロウェルを画像処理により抽出し、観察範囲に占めるマイクロウェルの総数と検査粒子が充填されたマイクロウェルの数との比率から、検査粒子の充填率を求めた。
【0191】
また各マイクロウェルの蛍光強度を測定し、所定の閾値を超えたマイクロウェルを、ターゲット物質が有する酵素活性により蛍光が生じたポジティブのマイクロウェルと判断し、ポジティブのマイクロウェルの数を測定した。そして、検査粒子が充填されたマイクロウェルの数と、ポジティブのマイクロウェルの数との比率からポジ率を参考値として算出した。
【0192】
充填率を表1に、また、ポジ率を表2にそれぞれ示す。
なお、各蛍光物質の測定条件は以下のとおりである。
(検査粒子1を含む分散媒体1および検査粒子2を含む分散媒体2)
標準蛍光物質(Alexa Fluor(登録商標) 647):ex650nm、em670nm
(検査粒子4を含む分散媒体4および検査粒子4を含む分散媒体5)
HEX:ex533nm、em559nm
標準蛍光物質(HiLyte(登録商標)Fluor488):ex499nm、em523nm
【0193】
【表1】
【0194】
【表2】
【0195】
また、マイクロウェルデバイスの汚損の評価は、次のようにしておこなった。
封止工程の後に、マイクロウェルデバイスを5度の角度に10分間静置し、マイクロウェルデバイスに導入した分散媒体や封止媒体がマイクロウェルデバイスの表面を伝ってマイクロウェルデバイスを汚損する懸念があるかどうかを観察した。なお、5度という角度は、マイクロウェルデバイスの通常のハンドリング操作で想定されるマイクロウェルデバイスの傾きとして設定した。
本発明においては、充填率、有効な観察範囲の広さ、およびデバイスの汚損の各評価を以下の評価基準に基づいてランク付けした。本発明においては、A-Bを好ましいレベルとし、Cを許容できないレベルとした。各評価結果をまとめて表3に示す。
【0196】
<充填率>
A:充填率が50%を超える。
B:充填率が30%を超え、50%以下である。
C:充填率が30%以下である。
【0197】
<有効な観察範囲の広さ>
A:観察範囲におけるマイクロウェルの総数に対する、画像処理で発光するマイクロウェルを正しく検出できない領域にあるマイクロウェルの数の割合が、最大で5%未満である。
B:観察範囲におけるマイクロウェルの総数に対する、画像処理で発光するマイクロウェルを正しく検出できない領域にあるマイクロウェルの数の割合が、最大で5%以上20%未満である。
C:観察範囲におけるマイクロウェルの総数に対する、画像処理で発光するマイクロウェルを正しく検出できない領域にあるマイクロウェルの数の割合が、最大で20%以上である。
【0198】
<デバイスの汚損>
A:マイクロウェルデバイスを5度の角度で傾けて10分間保持してもマイクロウェルデバイスが汚損される懸念がない。
C:マイクロウェルデバイスを5度の角度で傾けて10分間保持するとマイクロウェルデバイスが汚損される懸念がある。
【0199】
【表3】
【0200】
本発明の実施形態に係る開示は、以下の構成および方法を含む。
(方法1)
複数のマイクロウェルからなるアレイが上面に設けられたベースプレートと、ワイピング部材とを備えたマイクロウェルデバイスを準備する準備工程と、
前記アレイに、検査粒子を含む分散媒体を導入する導入工程と、
前記マイクロウェルに前記検査粒子を充填する充填工程と、
前記マイクロウェルの外にある前記分散媒体を除去する除去工程と、
前記マイクロウェルを封止媒体で封止する封止工程と、
を有し、
前記除去工程は、前記ワイピング部材を前記ベースプレートの上面に接した状態で第1の方向にスライドさせることで、前記マイクロウェルの外にある前記分散媒体を前記アレイの外へ移動させることを含む、ことを特徴とする粒子封入方法。
(方法2)
前記マイクロウェルデバイスは、隔壁部材をさらに有し、
前記隔壁部材は、前記ベースプレートの上面の前記アレイの外側において前記第1の方向に延在する第1の部分を、前記アレイを挟んで2つ有し、また、前記隔壁部材は、前記2つの第1の部分のそれぞれの端部同士を接続し、前記第1の方向に垂直な第2の方向に延在する少なくとも1つの第2の部分をさらに有し、
前記ワイピング部材は、前記第2の部分とともに前記アレイを挟むことが可能なように前記2つの第1の部分の間に設置された状態で用いられるように構成されている、方法1に記載の粒子封入方法。
(方法3)
前記ワイピング部材は、前記除去工程において前記分散媒体と当接して前記分散媒体を移動させる第1の面を有し、
前記導入工程は、前記第1の面と、前記第2の部分とで挟まれた領域に、前記検査粒子を含む前記分散媒体を導入することを含む、
方法2に記載の粒子封入方法。
(方法4)
前記ワイピング部材は、前記2つの第1の部分のそれぞれと接続した状態で用いられるように構成されている、方法3に記載の粒子封入方法。
(方法5)
前記ワイピング部材は、前記封止工程において前記封止媒体と当接して前記封止媒体を移動させる第2の面を有し、
前記封止工程は、前記第2の面と、前記第2の部分とで挟まれた領域に、前記封止媒体を導入することを含む、方法2乃至4のいずれかに記載の粒子封入方法。
(方法6)
前記ワイピング部材は、前記2つの第1の部分のそれぞれと接続した状態で用いられるように構成されている、方法5に記載の粒子封入方法。
(方法7)
前記ワイピング部材は、前記除去工程において前記分散媒体と当接して前記分散媒体を移動させる第1の面と、前記第1の面から前記第1の方向に延びて前記第1の方向に垂直な第2の方向への前記分散媒体の移動を妨げるように構成された1つ以上の第1の仕切りとを有し、
前記導入工程は、前記第1の仕切りと前記第1の面とで画定される領域に、前記検査粒子を含む前記分散媒体を導入することを含む、方法1乃至6のいずれかに記載の粒子封入方法。
(方法8)
前記ワイピング部材は、前記封止工程において前記封止媒体と当接して前記封止媒体を移動させる第2の面を有し、また、前記ワイピング部材は、前記第2の面から前記第1の方向に延びて前記第2の方向への前記封止媒体の移動を妨げるように構成された1つ以上の第2の仕切りを有し、
前記第2の仕切りは、前記第2の方向において前記第1の仕切りと同じ位置に設けられており、
前記封止工程は、前記第2の仕切りと前記第2の面とで画定される領域に、前記封止媒体を導入することを含む、方法7に記載の粒子封入方法。
(方法9)
前記ベースプレートは、透光性を有する材料からなり、
前記ワイピング部材の前記ベースプレートと接する第3の面は、前記アレイを覆うために十分な大きさを有する封止面を有し、前記封止面は、金属で被覆されており、
前記封止工程は、前記アレイを前記封止面で覆うことを含む、方法1乃至8のいずれかに記載の粒子封入方法。
(方法10)
前記ベースプレートおよび前記ワイピング部材は、それぞれ透光性を有する材料からなり、
前記ワイピング部材の前記ベースプレートと接する第3の面は、前記アレイを覆うために十分な大きさを有する封止面を有し、
前記ワイピング部材の前記ベースプレートと接する第3の面と反対の側の第4の面は、前記封止面と対向し、前記封止面を覆うのに十分な大きさを有する金属で被覆された面を有し、
前記封止工程は、前記アレイを前記封止面で覆うことを含む、方法1乃至9のいずれかに記載の粒子封入方法。
(方法11)
前記封止工程は、前記ワイピング部材を、前記ベースプレートの上面に接した状態で前記第1の方向と逆の方向にスライドさせて前記封止媒体を前記マイクロウェルの上に移動させることを含む、方法1乃至10のいずれかに記載の粒子封入方法。
(方法12)
前記マイクロウェルの前記第1の方向の最大長さ、前記第1の方向に垂直な第2の方向の最大長さ、および深さは、それぞれ前記検査粒子の平均粒子径の1.0倍以上2.0倍未満である、方法1乃至11のいずれかに記載の粒子封入方法。
(構成1)
複数のマイクロウェルからなるアレイが上面に設けられたベースプレートと、ワイピング部材とを備え、
前記マイクロウェルは、分散媒体に分散された検査粒子を収容するためのウェルであり、
前記ワイピング部材は、前記ベースプレートの上面に接した状態で第1の方向にスライドさせることで、前記マイクロウェルの外にある前記分散媒体を前記アレイの外へ移動させることが可能なように構成されている、ことを特徴とするマイクロウェルデバイス。
(構成2)
隔壁部材をさらに有し、
前記隔壁部材は、前記ベースプレートの上面の前記アレイの外側において前記第1の方向に延在する第1の部分を少なくとも有することで、前記ベースプレートの上面において前記第1の方向と垂直な第2の方向に向かう前記分散媒体の流れを妨げるように構成されている、構成1に記載のマイクロウェルデバイス。
(構成3)
前記隔壁部材は、前記アレイを挟んで設けられた2つの前記第1の部分と、前記2つの第1の部分のそれぞれの端部同士を接続し、前記第2の方向に延在する少なくとも1つの第2の部分とを有し、
前記ワイピング部材は、前記第2の部分とともに前記アレイを挟むことが可能なように前記2つの第1の部分の間に設置された状態で用いられるように構成されている、構成2に記載のマイクロウェルデバイス。
(構成4)
前記隔壁部材は、前記2つの第1の部分のそれぞれの一方の端部同士を接続する前記第2の部分と、前記2つの第1の部分のそれぞれの他方の端部同士を接続する前記第2の部分との2つの前記第2の部分を有する、構成3に記載のマイクロウェルデバイス。
(構成5)
前記ワイピング部材は、前記2つの第1の部分のそれぞれと接続した状態で用いられるように構成されている、構成3または4に記載のマイクロウェルデバイス。
(構成6)
前記ワイピング部材は、前記分散媒体と当接して前記分散媒体を移動させるように構成された第1の面と、前記第1の面から前記第1の方向に延びて前記第1の方向に垂直な第2の方向への前記分散媒体の移動を妨げるように構成された1つ以上の第1の仕切りとを有する、構成1乃至5のいずれかに記載のマイクロウェルデバイス。
(構成7)
前記ワイピング部材は、前記マイクロウェルを封止するための封止媒体と当接して前記封止媒体を移動させるように構成された第2の面を有し、また、前記ワイピング部材は、前記第2の面から前記第1の方向に延びて前記第2の方向への前記封止媒体の移動を妨げるように構成された1つ以上の第2の仕切りを有し、
前記第2の仕切りは、前記第2の方向において前記第1の仕切りと同じ位置に設けられている、構成6に記載のマイクロウェルデバイス。
(構成8)
前記ベースプレートは、透光性を有する材料からなる、構成1乃至7のいずれかに記載のマイクロウェルデバイス。
(構成9)
前記ワイピング部材の前記ベースプレートと接する第3の面は、前記アレイを覆うために十分な大きさを有する封止面を有し、前記封止面は、金属で被覆されている、構成8に記載のマイクロウェルデバイス。
(構成10)
前記ワイピング部材は、透光性を有する材料からなり、
前記ワイピング部材の前記ベースプレートと接する第3の面は、前記アレイを覆うために十分な大きさを有する封止面を有し、
前記ワイピング部材の前記ベースプレートと接する第3の面と反対の側の第4の面は、前記封止面と対向し、前記封止面を覆うのに十分な大きさを有する金属で被覆された面を有する、構成8または9に記載のマイクロウェルデバイス。
(方法13)
ターゲット物質を特異的に捕捉する前記検査粒子と、前記ターゲット物質とを反応させる反応工程と、
前記反応工程の後に、前記検査粒子を用いて方法1乃至11のいずれか1項に記載の粒子封入方法を行う粒子封入工程と、
前記粒子封入工程の後に、前記マイクロウェルの各々に収容された前記検査粒子のうちの前記ターゲット物質を捕捉した前記検査粒子を検出する検出工程と、
を有する、ことを特徴とするターゲット物質検出方法。
(方法14)
前記検出工程は、酵素の活性により発生した蛍光を検出することを含む、方法13に記載のターゲット物質検出方法。
【符号の説明】
【0201】
10、20、30、40、50 マイクロウェルデバイス
11 ベースプレート
12 ワイピング部材
12a 第1の面
12b 第2の面
12c 第3の面
12d 第4の面
13 マイクロウェル
14 アレイ
15 隔壁部材
16 第1の領域
16a、16b 第3の領域
17 第2の領域
17a、17b 第4の領域
18a 検査粒子
18b 分散媒体
19 封止媒体
51 第1の仕切り
52 第2の仕切り
151 第1の部分
152 第2の部分
A 第1の方向
B 第2の方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2025143198000001.xml