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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014321
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】半導体装置、及び車両
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20250123BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/52 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116797
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】磯野 友寛
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047AA17
5F047BA06
5F047CA00
(57)【要約】
【課題】半導体素子の主電極と導体板とを接合する接合材の飛散による半導体装置の動作不良の発生を防ぐ。
【解決手段】半導体装置(1)は、配線板(2)と、配線板上に配置された半導体素子(3A)と、半導体素子の上面に設けられた主電極と接合材(901、902)により接合されたリード(4A)と、を備え、半導体素子の主電極は、第1の方向に延伸する絶縁層(306)により分割された第1のパッド(303)と第2のパッド(304)とを有し、リードは、半導体素子の主電極と向かい合う接合面(401)のうちの絶縁層と向かい合う位置に、上面側に変位した底面(413)を有し、第1の方向(Y方向)に延伸する凹部(410)が形成されており、リードの凹部は、第1の方向の少なくとも一端が、接合面の平面視においてリードの第1の方向の端に位置し、底面における接合材と接触していない領域が凹部の第1の方向の一端から他端まで連続している。
【選択図】図10C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線板と、前記配線板上に配置された半導体素子と、前記半導体素子の上面に設けられた主電極と接合材により接合されたリードと、を備え、
前記半導体素子の前記主電極は、第1の方向に延伸する絶縁層により分割された第1のパッドと第2のパッドとを有し、
前記リードは、前記半導体素子の前記主電極と向かい合う接合面のうちの前記絶縁層と向かい合う位置に、前記接合面とは反対の上面側に変位した底面を有し、前記第1の方向に延伸する凹部が形成されており、
前記リードの前記凹部は、前記第1の方向の両端のうちの少なくとも一端が、前記接合面の平面視において前記リードの前記第1の方向の端に位置し、前記底面における前記接合材と接触していない領域が前記凹部の前記第1の方向の一端から他端まで連続している
半導体装置。
【請求項2】
前記半導体素子は、前記上面に配置された、前記第1のパッドと前記第2のパッドとを分割する前記絶縁層の内部で前記第1の方向に延伸する導電性のランナー部と、前記ランナー部の前記第1の方向の一端に接続され、前記上面に露出している制御電極と、をさらに有し、
前記制御電極は、前記リードの前記凹部を前記第1の方向に延長した位置で露出している
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記リードの前記凹部は、前記接合面の平面視において前記リードの前記第1の方向での一端から他端まで延伸している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記絶縁層は、前記第1のパッドと前記第2のパッドとの間隙が第1の間隙となる第1の区間と第3の区間との間に、前記第1のパッドと前記第2のパッドとの間隙が前記第1の間隙よりも大きい第2の間隙となる第2の区間が存在するように、前記第1のパッドと前記第2のパッドとを分割しており、
前記リードの前記接合面のうちの前記絶縁層と向かい合う位置に、前記接合面の平面視において一端が前記第2の区間内にあり、他端が前記リードの前記第1の方向での端まで延伸した別個の凹部を有する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記接合面の平面視における前記リードの前記凹部の幅が、前記第1の間隙以上である、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記リードの凹部が、前記リードのうちの前記絶縁層と向かい合う部分を半抜き加工により変位させて形成されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体素子の前記絶縁層上に、前記第1のパッド上の第1の接合材、及び前記第2のパッド上の第2の接合材と連結しており、かつ前記リードの前記凹部の底面から離間している接合材のブリッジを有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記配線板の前記半導体素子が配置された面とは反対側の面に熱的に接続される冷却器をさらに備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の半導体装置を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ装置等の電力変換装置に用いられる半導体装置には、はんだ等の接合材により半導体素子の主電極と導体板とを接合したものがある。この種の半導体装置には、接合信頼性の向上を目的として、導体板にはんだを収容する凹部を形成したものがある(例えば、特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2019/244492号
【特許文献2】特開2012-104709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した半導体装置では、接合材により半導体素子の主電極と導体板とを接合するときに、溶融した接合材が飛散し、半導体素子表面の意図しない部位に付着して残留することにより、半導体装置の動作不良の原因になることがある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、半導体素子の主電極と導体板とを接合する接合材の飛散による半導体装置の動作不良の発生を防ぐことを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る半導体装置は、配線板と、前記配線板上に配置された半導体素子と、前記半導体素子の上面に設けられた主電極と接合材により接合されたリードと、を備え、前記半導体素子の前記主電極は、第1の方向に延伸する絶縁層により分割された第1のパッドと第2のパッドとを有し、前記リードは、前記半導体素子の前記主電極と向かい合う接合面のうちの前記絶縁層と向かい合う位置に、前記接合面とは反対の上面側に変位した底面を有し、前記第1の方向に延伸する凹部が形成されており、前記リードの前記凹部は、前記第1の方向の両端のうちの少なくとも一端が、前記接合面の平面視において前記リードの前記第1の方向の端に位置し、前記底面における前記接合材と接触していない領域が前記凹部の前記第1の方向の一端から他端まで連続している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、半導体素子の主電極と導体板とを接合する接合材の飛散による半導体装置の動作不良の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施の形態に係る半導体装置の構成例を示す上面図である。
図2図1のA-A’線で切断した半導体装置の構成例を示す断面側面図である。
図3図1の半導体装置を適用したインバータ装置の回路構成例を示す図である。
図4】半導体素子の上面電極の構成例を示す上面図である。
図5図4のB-B’線の位置における半導体素子の構成例を示す断面図である。
図6A】半導体素子の上面の主電極と接合するリードの従来例を示す断面図である。
図6B】溶融した接合材の平面形状の好ましい例を示す部分上面図である。
図6C】溶融した接合材に生じるブリッジの例を示す部分上面図である。
図6D図6CのC-C’線の位置における接合材の状態を例示する断面図である。
図6E図6CのD-D’線の位置における接合材の状態を例示する断面図である。
図6F図6CのE-E’線の位置における接合材の状態を例示する断面図である。
図7】一実施の形態に係るリードの形状を例示する斜視図である。
図8】一実施の形態に係るリードの形状を説明する断面図である。
図9】一実施の形態に係るリードの形成方法の一例を説明する断面図である。
図10A】一実施の形態に係るリードを接合する工程における溶融した接合材の状態を例示する断面図である。
図10B】一実施の形態に係るリードを接合する工程における溶融した接合材の状態を例示する断面図である。
図10C】一実施の形態に係るリードを接合する工程における溶融した接合材の状態を例示する断面図である。
図11A】リードの形状の変形例を示す上面図である。
図11B図11AのF-F’線の位置における溶融した接合材の状態を例示する断面図である。
図12】本発明に係る半導体装置を適用した車両の一例を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、参照する各図におけるX軸、Y軸、及びZ軸は、例示する半導体装置等における平面や方向を定義する目的で示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交し、右手系を成している。以下の説明では、X軸に平行な方向をX方向と呼び、Y軸に平行な方向をY方向と呼び、Z軸に平行な方向をZ方向と呼ぶ。また、X方向、Y方向、及びZ方向の各方向は、図示されるX軸、Y軸、及びZ軸の矢印(正負)の方向と関連付ける場合には、「正側」又は「負側」が付される。
【0010】
本明細書では、Z方向を上下方向と呼ぶことがある。本明細書において、「上」や「上方」は、基準となる面、部材、位置等よりもZ方向正側であることを意図し、「下」や「下方」は、基準となる面、部材、位置等よりもZ方向負側であることを意図する。例えば、「部材Aの上に部材Bが配置される」と記載されるとき、部材Bは、部材AからみてZ方向正側に配置される。また、「部材Aの上面」と記載されるとき、その面は、部材AにおけるZ方向正側の端に位置し、Z方向正側を向いた面である。本明細書において、「上面視」は、対象となる物品(例えば、半導体装置等)をZ方向正側からみたときの平面視を意図する。本明細書において、「側面視」は、対象となる物品をX方向負側又はX方向正側からみたときの平面視を意図し、X方向負側からみたときの平面視を「左側面視」と呼び、X方向正側からみたときの平面視を「右側面視」と呼ぶこともある。これらの方向や面は、説明の便宜上用いる文言であり、半導体装置の取付姿勢等によっては、X軸、Y軸、及びZ軸の方向のそれぞれとの対応関係が変わることがある。例えば、本明細書では、半導体素子における配線板と向かい合う面を下面と呼び、下面とは反対側の面を上面と呼ぶが、これに限らず、配線板と向かい合う面が上面と呼ばれ、その反対側の面が下面と呼ばれてもよい。半導体素子における下面及び上面は、側面と呼ばれてもよい。また、各図における縦横比や各部材同士の大小関係は、あくまで模式的に表されており、実際に製造される半導体装置等における関係とは必ずしも一致しない。説明の便宜上、各部材同士の大小関係を誇張して表現している場合も想定される。
【0011】
また、以下の説明で例示する半導体装置は、例えば、産業用又は電装用(例えば、車載用モータ)のインバータ装置等の電力変換装置に適用されるものであってよい。このため、以下の説明では、既知の半導体装置と同一の、又は類似した構成、機能、動作、製造方法等についての詳細な説明を省略する。
【0012】
図1は、一実施の形態に係る半導体装置の構成例を示す上面図である。図2は、図1のA-A’線で切断した半導体装置の構成例を示す断面側面図である。図2の断面側面図は、図1のA-A’線で切断した半導体装置のうちのA-A’線よりも左側の部分の右側面視を示している。また、図2では、半導体素子等を封止する封止材の断面であることを示すハッチングを省略している。
【0013】
図1及び図2に例示した半導体装置1は、配線板2と、半導体素子3A、3Bと、リード4A、4Bと、ボンディングワイヤ5A、5Bと、ケース6と、冷却器7と、封止材8とを含む。
【0014】
配線板2は、絶縁基板200と、絶縁基板200の上面に設けられた第1の導体パターン211及び第2の導体パターン212と、絶縁基板200の下面に設けられた第3の導体パターン213とを含む。配線板2は、例えば、DCB(Direct Copper Bonding)基板やAMB(Active Metal Brazing)基板であり得る。配線板2は、積層基板、絶縁回路基板等と呼ばれてもよい。
【0015】
絶縁基板200は、特定の基板に限定されない。絶縁基板200は、例えば、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si)、又は酸化アルミニウム(Al)と酸化ジルコニウム(ZrO)との複合材料等のセラミックス材料によって形成されたセラミックス基板であってよい。絶縁基板200は、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁樹脂を成形した基板、ガラス繊維等の基材に絶縁樹脂を含侵させた基板、平板状の金属コアの表面を絶縁樹脂でコーティングした基板等であってもよい。
【0016】
絶縁基板200の上面に設けられた第1の導体パターン211及び第2の導体パターン212は、配線部品として機能するものであり、例えば、銅やアルミニウム等の金属板又は金属箔等によって形成される。第1の導体パターン211及び第2の導体パターン212は、導体層、導体板、導電層、配線パターン等と呼ばれてもよい。
【0017】
配線板2の上面に配置された2つの半導体素子3A及び3Bは、それぞれ、例えば、スイッチング素子であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子と、IGBT素子に逆並列に接続されるFWD(Free Wheeling Diode)素子等のダイオード素子の機能とを一体化したRC(Reverse Conducting)-IGBT素子で構成される。この種の半導体素子3A及び3Bは、それぞれ、下面に第1の主電極(図示せず)が設けられ、上面に第2の主電極303、304及び制御電極(ゲート電極)305が設けられている。半導体素子3A及び3Bのスイッチング素子がIGBT素子である場合、下面側の第1の主電極がコレクタ電極と呼ばれ、上面側の第2の主電極303、304がエミッタ電極と呼ばれてもよい。また、半導体素子3A及び3Bにおけるスイッチング素子及びダイオード素子を形成する基板は、シリコン基板に限らず、例えば、SiC(シリコンカーバイド)基板、GaN(窒化ガリウム)基板等であってもよい。以下の説明では、2つの半導体素子3A及び3Bを区別する場合には、第1の半導体素子3A、第2の半導体素子3Bと記載する。また、2つの半導体素子を区別しない場合には、「半導体素子3」と記載することもある。また、以下の説明では、単一の半導体素子3の上面に設けられた2つの第2の主電極303、304を第1のパッド303、第2のパッド304と記載することがある。
【0018】
図1及び図2の半導体装置1では、第1の半導体素子3Aが第1の導体パターン211の上面に配置されており、第2の半導体素子3Bが第2の導体パターン212の上面に配置されている。第1の導体パターン211は、第1の半導体素子3Aの下面に設けられた第1の主電極(図示せず)と接合材(図示せず)により接合されている。また、第2の導体パターン212は、第2の半導体素子3Bの下面に設けられた第1の主電極(図示せず)と接合材(図示せず)により接合されている。接合材は、はんだ等の周知の接合材であってよい。
【0019】
第1の半導体素子3Aの下面に設けられた第1の主電極は、第1の導体パターン211を介して、ケース6に設けられた第1の主端子610と電気的に接続されている。第1の導体パターン211と第1の主端子610とを電気的に接続する方法は、特定の方法に限定されない。第1の導体パターン211と第1の主端子610とは、例えば、第1の導体パターン211の上面に設けられたブロック状の導体部材(導体ブロック)を介して電気的に接続される。第1の半導体素子3Aの上面に設けられた第2の主電極303、304は、第1のリード4Aを介して、第2の導体パターン212と電気的に接続されている。第1のリード4Aは、銅板等の導体板を折り曲げて形成したものであり、リードフレーム等と呼ばれてもよい。第1のリード4Aは、一部分がはんだ等の周知の接合材901、902(図10A参照)により第1の半導体素子3Aの第2の主電極303、304と接合され、別の一部分がはんだ等の周知の接合材(図示せず)により第2の導体パターン212と接合されている。以下の説明では、接合材901を第1のはんだ901と記載し、接合材902を第2のはんだ902と記載する。また、第1の半導体素子3Aの上面に設けられた制御電極305は、ボンディングワイヤ5Aにより、ケース6に設けられた制御端子640と電気的に接続されている。制御電極305は、1つに限らず、2つ以上配置されていてもよい。
【0020】
第2の半導体素子3Bの下面に設けられた第1の主電極は、第2の導体パターン212を介して、ケース6に設けられた第3の主端子630と電気的に接続されている。第2の導体パターン212と第3の主端子630とを電気的に接続する方法は、特定の方法に限定されない。第2の導体パターン212と第3の主端子630とは、例えば、第2の導体パターン212の上面に設けられたブロック状の導体部材(導体ブロック)222を介して電気的に接続される。第2の半導体素子3Bの上面に設けられた第2の主電極303、304は、第2のリード4Bを介して、ケース6に設けられた第2の主端子620と電気的に接続されている。第2のリード4Bは、第1のリード4Aと同様、銅板等の導体板を折り曲げて形成したものであり、リードフレーム等と呼ばれてもよい。第2のリード4Bは、一部分がはんだ等の周知の接合材9Bにより第2の半導体素子3Bの第2の主電極303、304と接合され、別の一部分が第2の主端子620と接合されている。第2のリード4Bと第2の主端子620とを電気的に接続する方法は、特定の方法に限定されない。第2のリード4Bは、例えば、レーザ溶接、超音波接合等により第2の主端子620と接合される。また、第2の半導体素子3Bの上面に設けられた制御電極305は、ボンディングワイヤ5Bにより、ケース6に設けられた制御端子645と電気的に接続されている。
【0021】
なお、半導体装置1における2つの導電部材間を電気的に接続する方法は、上述した方法とは異なる方法であってもよい。例えば、配線板2の第1の導体パターン211とケース6の第1の主端子610との電気的な接続や、第2の導体パターン212と第3の主端子630との電気的な接続は、はんだ等の接合材を利用して行われてもよい。また、第2のリード6Bと第2の主端子620とは、例えば、配線板2(絶縁基板200)の上面に設けられる、第1の導体パターン211及び第2の導体パターン212とは別の導体パターンを介して電気的に接続されてもよい。
【0022】
絶縁基板200の下面に設けられた第3の導体パターン213は、第1の半導体素子3A及び第2の半導体素子3Bが発した熱を冷却器7に伝導する熱伝導部材として機能するものであり、例えば、銅やアルミニウム等の金属板又は金属箔等によって形成される。第3の導体パターン213は、はんだ等の接合材(図示せず)によって冷却器7の上面に接合される。冷却器7は、複数のフィンが配置された冷媒の流路を内部に有し、第1の半導体素子3A及び第2の半導体素子3Bからの熱により温度が上昇したフィンと流路を流れる冷媒との間での熱交換を行う。冷却器7は、本実施の形態の半導体装置1において任意の構成要素であってよい。本実施の形態の半導体装置1は、例えば、冷却器7とは別の放熱ベースの上面に配線板2が接合されたものであって、放熱ベースを半導体装置1とは別体の冷却器7と熱的に接続したものであってもよい。この種の半導体装置1において、放熱ベースと冷却器7とは、例えば、サーマルグリスやサーマルコンパウンド等の熱伝導材料により密着させてもよい。
【0023】
ケース6は、冷却器7の上面に配置された配線板2、第1の半導体素子3A及び第2の半導体素子3B、第1のリード4A及び第2のリード4B、ボンディングワイヤ5A、5B等を収容可能な収容部650を有するケース部材600と、上述した第1の主端子610、第2の主端子620、第3の主端子630、制御端子640、及び制御端子645と、を含む。
【0024】
図1及び図2に例示したケース6のケース部材600は、上端及び下端が開口した収容部(中空部)650を有する上面視で概略環形状であり、収容部650に配線板2等が収容される。上述した第1の主端子610、第2の主端子620、第3の主端子630、制御端子640、及び制御端子645は、それぞれ、ケース部材600の収容部650内に露出した内方端子部と、ケース部材600の上面から露出した外方端子部とを有し、ケース部材600と一体的に設けられている。この種のケース6は、インサート成形を利用した方法等の、周知の製造方法により製造される。第1の主端子610、第2の主端子620、第3の主端子630、制御端子640、及び制御端子645の形状は、図1及び図2に例示した形状に限定されない。例えば、第1の主端子610、第2の主端子620、及び第3の主端子630は、それぞれ、ケース部材600の上面から露出した外方端子部がケース部材600の上面に沿うように折り曲げられていてもよい。
【0025】
ケース6は、例えば、接着材によりケース部材600が冷却器7(又は放熱ベース)の上面に接着される。ケース6の収容部650には、配線板2、第1の半導体素子3A及び第2の半導体素子3B、第1のリード4A及び第2のリード4B、ボンディングワイヤ5A、5B等を封止する封止材8が充填される。封止材8は、例えば、エポキシ樹脂又はシリコーンゲル等であってよい。封止材8は、2種類以上の絶縁材料の組み合わせであってもよい。ケース6の収容部650は、例えば、上端側の開口が蓋で覆われてもよい。
【0026】
図1及び図2に例示した半導体装置1は、1つの単相インバータ回路を含む。このような半導体装置1を3つ用いることにより、例えば、三相インバータ装置を構成することができる。
【0027】
図3は、図1の半導体装置を適用したインバータ装置の回路構成例を示す図である。
【0028】
図3には、インバータ装置11の回路構成例として、電圧形の三相インバータ装置における回路構成の一例を示している。インバータ装置11は、3つの単相インバータ回路1101(U)、1101(V)、及び1101(W)と、平滑コンデンサ1102と、制御回路1103とを含む。単相インバータ回路1101(U)は、直流を交流に変換し、U相の交流として出力する。単相インバータ回路1101(V)は、直流を交流に変換し、V相の交流として出力する。単相インバータ回路1101(W)は、直流を交流に変換し、W相の交流として出力する。本明細書では三相交流における3つの相をU相、V相、W相と呼ぶが、他の呼び方であってもよい。
【0029】
インバータ装置11は、3つの単相インバータ回路1101(U)、1101(V)、及び1101(W)と、平滑コンデンサ1102とが並列に接続されている。図3に等価回路で例示した、3つの単相インバータ回路1101(U)、1101(V)、及び1101(W)の各々の回路構成は、図1及び図2を参照して上述した1つの半導体装置1に形成される回路と対応する。
【0030】
インバータ装置11は、直流電源12の正極を接続する第1の入力端IN(P)と、直流電源12の負極を接続する第2の入力端IN(N)と、三相交流を出力する出力端OUT(U)、OUT(V)、OUT(W)とを有する。第1の入力端IN(P)は、半導体装置1の第1の主端子610に接続され、第2の入力端IN(N)は、半導体装置1の第2の主端子620に接続される。出力端OUT(U)、OUT(V)、OUT(W)は、半導体装置1の第3の主端子630に接続される。
【0031】
図3に例示した単相インバータ回路1101(U)、1101(V)、及び1101(W)の各々は、ハーフブリッジインバータ回路である。単相インバータ回路1101(U)は、上アームと呼ばれることがある第1の入力端IN(P)と出力端OUT(U)との間に接続された第1の半導体素子3Aにおけるスイッチング素子320(例えば、IGBT素子)のコレクタ電極が、第1の主端子610を介して第1の入力端IN(P)に接続される。また、単相インバータ回路1101(U)は、下アームと呼ばれることがある第2の入力端IN(N)と出力端OUT(U)との間に接続された第2の半導体素子3Bにおけるスイッチング素子322のエミッタ電極が、第2の主端子620を介して第2の入力端IN(N)に接続される。単相インバータ回路1101(U)における上アームのスイッチング素子320のエミッタ電極と下アームのスイッチング素子322のコレクタ電極は、第3の主端子630を介して、三相交流におけるU相の交流を出力する出力端OUT(U)に接続される。また、上アームのスイッチング素子320にはダイオード素子321が逆並列に接続されており、下アームのスイッチング素子322にはダイオード素子323が逆並列に接続されている。他の2つの単相インバータ回路1101(V)及び1101(W)は、それぞれ、上述した単相インバータ回路1101(U)における出力端OUT(U)を、出力端OUT(V)及びOUT(W)に置き換えた構成である。
【0032】
各単相インバータ回路1101(U)、1101(V)、及び1101(W)が出力する交流は、制御回路1103から、制御端子640を介して上アームのスイッチング素子320のゲート(第1の半導体素子3Aの制御電極305)に印加される制御信号、及び制御端子645を介して下アームのスイッチング素子322のゲート(第2の半導体素子3Bの制御電極305)に印加される制御信号により、位相が互いに120度ずつずれるように制御される。インバータ装置11の出力端OUT(U)、OUT(V)、OUT(W)には、交流で動作する負荷(例えば、交流モータ)13が接続される。
【0033】
なお、本実施の形態の半導体装置1を含むインバータ装置11の回路構成は、図3に例示した回路構成に限定されない。また、本実施の形態の半導体装置1を含むインバータ装置11の動作も特定の動作に限定されない。例えば、1つの半導体装置1が、図3に例示した3つの単相インバータ回路1101(U)、1101(V)、及び1101(W)を含む構成になっていてもよい。言い換えると、半導体装置1は、図1及び図2に例示した配線板2、第1の半導体素子3A及び第2の半導体素子3B、第1のリード4A及び第2のリード4B、ボンディングワイヤ5A及び5Bの組が、1つのケース6に3組収容された構成になっていてもよい。また、例えば、半導体装置1に含まれるインバータ回路は、図3を参照して上述したハーフブリッジのものに限らず、フルブリッジインバータ回路であってもよい。
【0034】
更に、図3を参照して上述したインバータ装置11は、本実施の形態に係る半導体装置1が適用される装置の例示に過ぎない。
【0035】
第1の半導体素子3A及び第2の半導体素子3Bのスイッチング素子320及び322は、上述したIGBT素子に限らず、例えば、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、BJT(Bipolar Junction Transistor)等で構成されてもよい。スイッチング素子がMOSFET素子の場合、第1の半導体素子3A及び第2の半導体素子3Bの下面側の主電極がドレイン電極と呼ばれ、上面側の主電極303、304がソース電極と呼ばれてもよい。また、ダイオード素子321及び323は、例えば、SBD(Schottky Barrier Diode)、JBS(Junction Barrier Schottky)ダイオード、MPS(Merged PN Schottky)ダイオード、PNダイオード等で構成されてもよい。また、第1の半導体素子3A及び第2の半導体素子3Bの上面に設けられる制御電極305は、ゲート電極と、補助電極とを含んでもよい。例えば、補助電極は、上面側の主電極と電気的に接続され、ゲート電位に対する基準電位となる補助エミッタ電極あるいは補助ソース電極であってよい。また、補助電極は、インバータ装置11等に含まれることがある温度センス部と電気的に接続され、第1の半導体素子3A及び第2の半導体素子3Bの温度を測定する温度センス電極であってよい。第1の半導体素子3A及び第2の半導体素子3Bの上面に形成されたこれらの電極(第2の主電極303、304、並びにゲート電極及び補助電極を含む制御電極305)は、総じて上面電極と呼ばれてもよい。また、スイッチング素子320及び322、ダイオード素子321及び323を形成する基板は、シリコン基板に限らず、例えば、SiC(シリコンカーバイド)基板、GaN(窒化ガリウム)基板等であってもよい。
【0036】
また、図3を参照して上述した単相インバータ回路において1つの半導体素子に含まれるものとして説明されるスイッチング素子とダイオード素子とは、別個の半導体素子により提供されてもよい。例えば、上アームのスイッチング素子320とダイオード素子321とは、スイッチング素子320が形成された半導体素子と、ダイオード素子321が形成された半導体素子とにより提供されてもよい。半導体素子の形状、配置数、配置箇所等は適宜変更が可能である。配線板2の上面側に設けられる配線部品としての導体パターンのレイアウトは、半導体素子の種類、形状、配置する数、配置箇所等に応じて変更される。
【0037】
本実施の形態に係る半導体装置1では、単一の半導体素子3の上面に設けられるエミッタ電極(又はソース電極)等の第2の主電極が、図1に例示したように第1のパッド303と第2のパッド304とに分割されている。
【0038】
図4は、半導体素子の上面電極の構成例を示す上面図である。図5は、図4のB-B’線の位置における半導体素子の構成例を示す断面図である。
【0039】
本実施の形態の半導体装置1に用いられる半導体素子3は、例えば、図4及び図5に示すように、半導体基板300の下面に第1の主電極301(コレクタ電極又はドレイン電極)が形成されている。また、半導体基板300の上面には、第2の主電極303、304(エミッタ電極又はソース電極)と、ゲート電極としての制御電極305とが形成されている。制御電極305は、例えば、ゲート絶縁膜と呼ばれることがある絶縁膜302を介して、半導体基板300の上面に形成されている。第2の主電極は、第1のパッド303と第2のパッド304とに分割されており、半導体基板300の上面における第1のパッド303と第2のパッド304との間には、制御電極305から半導体基板300の上面に沿って延伸するランナー部305aが通っている。ランナー部305aは、絶縁層306で覆われている。
【0040】
第1のパッド303及び第2のパッド304の上面には、接合材との接合信頼性を向上させるめっき層307が形成されている。めっき層307もまた、制御電極305のランナー部305aを覆う絶縁層306によって分割されている。
【0041】
なお、半導体素子3の構成は、図4及び図5に例示した構成に限定されない。
【0042】
図4及び図5を参照して上述した半導体素子3を用いて半導体装置1を製造した場合、半導体素子3の第2の主電極とリードとを接合する接合材の飛散により半導体素子3の動作不良が発生し得る。図6A図6Fを参照して、接合材の飛散と動作不良について説明する。
【0043】
図6Aは、半導体素子の上面の主電極と接合するリードの従来例を示す断面図である。図6Bは、溶融した接合材の平面形状の好ましい例を示す部分上面図である。図6Cは、溶融した接合材に生じるブリッジの例を示す部分上面図である。図6Dは、図6CのC-C’線の位置における接合材の状態を例示する断面図である。図6Eは、図6CのD-D’線の位置における接合材の状態を例示する断面図である。図6Fは、図6CのE-E’線の位置における接合材の状態を例示する断面図である。
【0044】
図6Aには、半導体素子3の上面の主電極(第1のパッド303及び第2のパッド304)と接合するリードの従来例として、接合面401(半導体素子3の上面と向かい合う面)が平坦なリード4Cを示している。半導体素子3の上面の第1のパッド303及び第2のパッド304とリード4Cとを接合するときには、半導体素子3の上面とリード4Cとの間に板状はんだ9を配置し、板状はんだ9を加熱溶融させる。加熱溶融させる前、板状はんだ9は、第1のパッド303と第2のパッド304とを分離する絶縁層306上(言い換えると、絶縁層306とリード4Cの接合面401との間)にも存在している。しかしながら、絶縁層306の表面は、第1のパッド303及び第2のパッド304の表面に形成されためっき層307と比べてはんだの濡れ性が低いので、板状はんだ9を加熱溶融させると絶縁層306上の溶融したはんだが第1のパッド303上及び第2のパッド304上に流れる。このため、加熱溶融させたはんだ9は、図6B及び図6Cに例示したように、第1のパッド303上の第1のはんだ901と第2のパッド304上の第2のはんだ902に分離する。言い換えると、半導体素子3とリード4との間に絶縁層306の延伸方向に沿ってはんだ層を貫通する空洞が生じる。
【0045】
ところで、図6Bに例示したように、第1のパッド303と第2のパッド304との間を通る絶縁層306には、第1のパッド303と第2のパッド304との間隙が第1の間隙G1である第1の区間306a及び第3の区間306cと、第1の間隙G1よりも大きい第2の間隙G2である第2の区間306bとが存在する。第2の区間306bは、絶縁層306で覆われる制御電極305のランナー部305aの延伸方向(Y方向)で第1の区間306aと第3の区間306cとの間に位置する。第1の間隙G1及び第2の間隙G2は、特定の値に限定されない。第1の間隙G1は、例えば、166μmであってよい。第1のパッド303と第2のパッド304とがこのような平面形状である場合に接合面401が平坦なリード4Cを用いると、例えば、図6D図6E、及び図6Fに例示したように、第1の区間306a及び第3の区間306cに、第1のパッド303上の第1のはんだ901と第2のパッド304上の第2のはんだ902とを連結するブリッジ903~905が生じることがある。
【0046】
ブリッジ903~905は、例えば、図6E及び図6Fに例示したように、絶縁層306の上面及びリード4Cの下面(接合面401)と接触した状態になることがある。このような状態のブリッジ903~905が存在する場合、ブリッジによって外部空間から遮断された空間(空隙部)に残留した空気が熱膨張し、ブリッジ部分のはんだが絶縁層306(制御電極305のランナー部305a)の延伸方向に沿って外方に押し出されて飛散することがある。絶縁層306の延伸方向に沿って外方に飛散したはんだは、例えば、制御電極305の表面等に付着することがある。制御電極305の表面に付着したはんだは、例えば、ボンディングワイヤを接続する際の接続不良の原因や、制御電極305と電気的に絶縁されるべき別の導体とが電気的に接続されてしまうことの原因になり得る。
【0047】
また、特許文献1及び特許文献2のようなリードの接合面(半導体素子と向かい合う面)に形成された溝内にはんだが充填される構成の場合、加熱溶融したはんだが溝内に充填されるときにはんだ層内に空隙が生じ、空隙の膨張によるはんだの飛散が起こり得る。
【0048】
図7は、一実施の形態に係るリードの形状を例示する斜視図である。図8は、一実施の形態に係るリードの形状を説明する断面図である。図9は、一実施の形態に係るリードの形成方法の一例を説明する断面図である。
【0049】
図7及び図8には、図1及び図2を参照して上述した半導体装置1において第1の半導体素子3Aの第2の主電極(第1のパッド303及び第2のパッド304)と接続される第1のリード4Aのうちの、第1のパッド303及び第2のパッド304と向かい合う接合面401を有する端子部400の形状の例を示している。端子部400は、第1の半導体素子3Aと向かい合う下面(接合面)401のうちの第1の半導体素子3Aの絶縁層306と向かい合う部分が上方に変位し、かつ絶縁層306の延伸方向に沿って延伸する凹部410が形成されている。凹部410の幅W1は、第1の半導体素子3Aにおける第1のパッド303と第2のパッド304との第1の間隙G1以上であればよい。例えば、第1の間隙G1が166μmの場合、凹部410の幅W1は166μm以上であればよい。凹部410の深さDは、端子部400の厚さTと対応する深さよりも小さく、かつ、溶融したはんだが凹部410内を充満することがないような深さにする。
【0050】
第1のリード4Aの端子部400の凹部410は、図7及び図8に例示したように、端子部400における凹部410を形成する部分(言い換えると、半導体素子3の絶縁層306と向かい合う部分)のみが上方に変位して突出したような形状にすることが好ましい。更に、凹部410は、互いに向かい合う第1の壁面411及び第2の壁面412のそれぞれが、端子部400の下面(凹部410の底面413)と直交するような形状にすることが好ましい。このような形状の凹部410は、例えば、溶融したはんだの凹部410内への流入を抑制し、凹部410内がはんだで充満することを抑制することができる。
【0051】
図7及び図8に例示した端子部400の凹部410を形成する方法は、特定の方法に限定されない。凹部410は、例えば、図9に示したような、金型(抜き型)を利用した半抜き加工(ハーフカット)により形成することができる。半抜き加工は、ダイ1401とストリッパ1402とで第1のリード4Aの端子部400を挟んだ状態にし、端子部400が抜けない程度にパンチ1403を端子部400に押し込んで端子部を変形させる加工である。端子部400は、パンチ1403で押された部分だけが下方に変位して凹部410と反対側の凸部420が形成される。
【0052】
図10Aは、一実施の形態に係るリードを接合する工程における溶融した接合材の状態を例示する断面図である。図10Bは、一実施の形態に係るリードを接合する工程における溶融した接合材の状態を例示する断面図である。図10Cは、一実施の形態に係るリードを接合する工程における溶融した接合材の状態を例示する断面図である。
【0053】
図6Aに例示したリード4Cの代わりに図7及び図8に例示した第1のリード4Aを用いた場合、第1の半導体素子3Aと第1のリード4Aとの間に板状はんだ9を配置すると、板状はんだ9の上面のうちの凹部410と向かい合う部分は、第1のリード4Aに接していない。言い換えると、板状はんだ9の上面は、平面視で第1の半導体素子3Aの第1のパッド303と重なる領域と、第2のパッド304と重なる領域の2つの別個の領域が第1のリード4Aと接する。このため、板状はんだ9を加熱溶融させたときには、溶融したはんだの表面張力及び絶縁層306に対する濡れ性の低さ等により、例えば、図10Aに示すように、第1のパッド303上の第1のはんだ901と、第2のパッド304上の第2のはんだ902とに分離する。
【0054】
また、凹部410を有する第1のリード4Aを用いた場合にも、溶融したはんだが第1のはんだ901と第2のはんだ902とに分離する過程で、上述したブリッジ903~905が絶縁層306上に生じることがある。しかしながら、第1のリード4Aの端子部400の下面における絶縁層306と向かい合う位置に、上方に変位した底面413を有する凹部410が形成されている。このため、ブリッジ903~905が絶縁層306上に生じたときに、例えば、図10B及び図10Cに示すように、ブリッジ903の上面903aと第1のリード4Aの凹部410の壁面411、412及び底面413とによって、ブリッジ903により隔てられる2つの空間を連通する穴が形成される。言い換えると、凹部410の底面413おけるはんだと接触していない領域が、凹部410の延伸方向における一端から他端まで連続した状態になる。これにより、本実施の形態の半導体装置1では、加熱溶融させたはんだの内部に空隙が生じて空気が膨張することによる溶融した接合材の飛散を防ぐことができる。従って、本実施の形態の半導体装置1では、半導体素子3の主電極と導体板とを接合する接合材の飛散による半導体装置の動作不良の発生を防ぐことができる。
【0055】
また、図を参照した詳細な説明は省略するが、第2の半導体素子3Bの上面の第2の主電極303、304と電気的に接続する第2のリード4Bも、第1のリード4Aと同様の構成にすることで、接合材の飛散による半導体装置の動作不良の発生を防ぐことができる。具体的には、第2のリード4Bのうちの第2の半導体素子3Bの上面の第2の主電極303、304と向かい合う接合面を有する端子部は、平面視(上面視)でのランナー部305aの延伸方向となる、第1のパッド303と第2のパッド304とを分離する絶縁層306の延伸方向(図1のY方向)に延伸する凹部410を形成する。これにより、絶縁層306上に残留してブリッジ903~905となったはんだが飛散して絶縁層306を延長した方向に配置された制御電極305に付着することを防げる。
【0056】
なお、本実施の形態に係る半導体素子3の上面電極のレイアウトは、図1及び図4等を参照して上述したようなレイアウトに限定されない。半導体素子3の上面に第2の主電極として配置されるエミッタ電極又はソース電極は、例えば、2つに限らず、3つ以上に分割されていてもよい。3つ以上に分割された第2の主電極と電気的に接続するリードの端子部は、例えば、第2の主電極を分割する絶縁層306(ランナー部305a)のうちの、延伸方向を延長した位置に飛散したはんだが付着することを望まない制御電極が配置されている絶縁層と平面視で重なる位置にのみ凹部を形成してもよい。
【0057】
また、上述した凹部410は、半導体素子3の第2の主電極を分割する絶縁層306(ランナー部305a)の延伸方向に沿って、平面視における端子部400の一端から他端まで延伸している。しかしながら、半導体素子3の第2の主電極を分割する絶縁層306は、図6Bを参照して上述したように、延伸方向における中央部分にその両側の区間(第1の区間306a及び第3の区間306c)よりも幅が広い部分(第2の区間306b)が存在することがある。このような半導体素子3を用いた場合、絶縁層306の幅が広い第2の区間では加熱溶融したはんだによるブリッジが生じない。したがって、リード4Aの端子部400に形成する凹部410は、半導体素子3の第2の主電極を分割する絶縁層306(ランナー部305a)のうちの、加熱溶融したはんだによるブリッジが生じやすい区間に断続的に形成されてもよい。
【0058】
図11Aは、リードの形状の変形例を示す上面図である。図11Bは、図11AのF-F’線の位置における溶融した接合材の状態を例示する断面図である。
【0059】
図11A及び図11Bに例示したリード4Aにおける端子部400の接合面401には、太い点線で示したような、平面視で絶縁層306の第1の区間306aと重なる第1の凹部410Aと、絶縁層306の第3の区間306cと重なる第2の凹部410Bとが形成されている。第1の凹部410Aにおける平面視で端子部400の中心に近いほうの端部、及び第2の凹部410Bにおける平面視で端子部400の中心に近いほうの端部は、それぞれ、第2の区間306b内に延伸しており、かつ延伸方向の長さLの区間で分離されている。
【0060】
このような第1の凹部410A及び第2の凹部410Bを形成すると、例えば、図11Bに太い点線で示したように、第1の区間のうちの第2の区間に最も近い位置、及び第3の区間のうちの第2の区間に最も近い位置に溶融したはんだによるブリッジが生じた場合にも、各凹部の底面におけるはんだと接触しない領域が、延伸方向における一端から他端まで連続する。このため、溶融したはんだのブリッジにより生じた空隙内の空気が膨張してはんだが飛散することを防げる。
【0061】
また、本実施の形態のリード4Aは、半導体素子3の第2の主電極と接続される端子部400の上面に、下面に形成した凹部410と対応した凸部420が生じる。このため、ケース6の収容部650内に封止材8を充填したときに、リード4Aの端子部400の上面と封止材8との接触面積が増大し、端子部400の上面における封止材8の剥離が生じにくくなる。また、図11Bに例示したように、端子部400の上面に生じる凸部が2つに分割されることにより、リード4Aの端子部400の上面と封止材8との接触面積が更に増大し、端子部400の上面における封止材の剥離が生じにくくなる。また、端子部400の上面に生じる凸部が2つに分割されることにより、例えば、熱膨張率の違いにより端子部400の上面と封止材と界面で生じる熱応力を緩和する効果が増し、端子部400の上面における封止材の剥離をより生じにくくすることができる。
【0062】
上述した実施の形態の半導体装置1は、特定の用途に限定されないが、冷却器7を備えた半導体装置1は、特に、高温度の環境下で使用することに適している。例えば、上述した実施の形態の半導体装置1は、車載用モータのインバータ装置等の電力変換装置に適用され得る。図12を参照して、本発明に係る半導体装置1が適用された車両について説明する。
【0063】
図12は、本発明に係る半導体装置を適用した車両の一例を示す平面模式図である。図12に示す車両1501は、例えば、4つの車輪1502を備えた四輪車で構成される。車両1501は、例えば、モータ等によって車輪を駆動させる電気自動車、モータの他に内燃機関の動力を用いたハイブリッド車であってもよい。また、半導体装置1を適用する車両は、四輪車に限らず、二輪車や鉄道車両等であってもよい。
【0064】
車両1501は、車輪1502に動力を付与する駆動部1503と、駆動部1503を制御する制御装置1504と、を備える。駆動部1503は、例えば、エンジン、モータ、エンジンとモータのハイブリッドの少なくとも1つで構成されてよい。
【0065】
制御装置1504は、駆動部1503の制御(例えば、電力制御)を実施する。制御装置1504は、上述した実施の形態の冷却器7を含む半導体装置1を備える。半導体装置1は、駆動部1503に対する電力制御を実施するように構成され得る。
【0066】
本発明に係る半導体装置1の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらに、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0067】
以下、上述した実施の形態における特徴点を整理する。
【0068】
上述した実施の形態に係る半導体装置は、配線板と、前記配線板上に配置された半導体素子と、前記半導体素子の上面に設けられた主電極と接合材により接合されたリードと、を備え、前記半導体素子の前記主電極は、第1の方向に延伸する絶縁層により分割された第1のパッドと第2のパッドとを有し、前記リードは、前記半導体素子の前記主電極と向かい合う接合面のうちの前記絶縁層と向かい合う位置に、前記接合面とは反対の上面側に変位した底面を有し、前記第1の方向に延伸する凹部が形成されており、前記リードの前記凹部は、前記第1の方向の両端のうちの少なくとも一端が、前記接合面の平面視において前記リードの前記第1の方向の端に位置し、前記底面における前記接合材と接触していない領域が前記凹部の前記第1の方向の一端から他端まで連続している。
【0069】
上記実施の形態に係る半導体装置において、前記半導体素子は、前記上面に配置された、前記第1のパッドと前記第2のパッドとを分割する前記絶縁層の内部で前記第1の方向に延伸する導電性のランナー部と、前記ランナー部の前記第1の方向の一端に接続され、前記上面に露出している制御電極と、をさらに有し、前記制御電極は、前記リードの前記凹部を前記第1の方向に延長した位置で露出している。
【0070】
上記実施の形態に係る半導体装置において、前記リードの前記凹部は、前記接合面の平面視において前記リードの前記第1の方向での一端から他端まで延伸している。
【0071】
上記実施の形態に係る半導体装置において、前記絶縁層は、前記第1のパッドと前記第2のパッドとの間隙が第1の間隙となる第1の区間と第3の区間との間に、前記第1のパッドと前記第2のパッドとの間隙が前記第1の間隙よりも大きい第2の間隙となる第2の区間が存在するように、前記第1のパッドと前記第2のパッドとを分割しており、前記リードの前記接合面の内の前記絶縁層と向かい合う位置に、前記接合面の平面視において一端が前記第2の区間内にあり、他端が前記リードの前記第1の方向での端まで延伸した別個の凹部を有する。
【0072】
上記実施の形態に係る半導体装置において、前記接合面の平面視における前記リードの前記凹部の幅が、前記第1の間隙以上である。
【0073】
上記実施の形態に係る半導体装置において、前記リードの前記凹部が、前記リードのうちの前記絶縁層と向かい合う部分を半抜き加工により変位させて形成されている。
【0074】
上記実施の形態に係る半導体装置において、前記半導体素子の前記絶縁層上に、前記第1のパッド上の第1の接合材、及び前記第2のパッド上の第2の接合材と連結しており、かつ前記リードの前記凹部の底面から離間している接合材のブリッジを有する。
【0075】
上記実施の形態に係る半導体装置は、前記配線板の前記半導体素子が配置された面とは反対側の面に熱的に接続される冷却器をさらに備える。
【0076】
上述の実施の形態に係る車両は、上記実施の形態に係る半導体装置を備える。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明は、半導体素子の主電極と導体板とを接合する接合材の飛散による半導体装置の動作不良の発生を防ぐことができ、特に、電力変換装置として用いられる産業用又は電装用の半導体装置、及び車両に有用である。
【符号の説明】
【0078】
1 半導体装置
2 配線板
200 絶縁基板
211、212、213 導体パターン
222 導体ブロック
3、3A、3B 半導体素子
300 半導体基板
301 第1の主電極
302 絶縁膜
303 第2の主電極(第1のパッド)
304 第2の主電極(第2のパッド)
305 制御電極
305a ランナー部
306 絶縁層
307 めっき層
320、322 スイッチング素子
321、323 ダイオード素子
4A、4B、4C リード
400 端子部
401 接合面
410、410A、410B 凹部
411、412 壁面
413 底面
420 凸部
5A、5B ボンディングワイヤ
6 ケース
600 ケース部材
610、620、630 主端子
640、645 制御端子
650 収容部
7 冷却器
8 封止材
9、901、902 はんだ
903、904、905 ブリッジ
11 インバータ装置
1101(U)、1101(V)、1101(W) 単相インバータ回路
1102 平滑コンデンサ
1103 制御回路
12 直流電源
13 負荷
1401 ダイ
1402 ストリッパ
1403 パンチ
1501 車両
1502 車輪
1503 駆動部
1504 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12