(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025143368
(43)【公開日】2025-10-01
(54)【発明の名称】超長鎖多価不飽和脂肪酸であるエロバノイドヒドロキシル化誘導体、および使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/202 20060101AFI20250924BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20250924BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20250924BHJP
A61P 27/14 20060101ALI20250924BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250924BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20250924BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20250924BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20250924BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20250924BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20250924BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20250924BHJP
【FI】
A61K31/202 ZNA
A61P37/08
A61P11/06
A61P27/14
A61P29/00
A61P11/02
A61P17/00
A61P25/28
A61P3/04
A61P3/10
A61P27/02
A61K31/202
A61P27/02 ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025111395
(22)【出願日】2025-07-01
(62)【分割の表示】P 2022514679の分割
【原出願日】2020-09-04
(31)【優先権主張番号】62/895,737
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/923,770
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/924,359
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/964,995
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520061826
【氏名又は名称】ザ ボード オブ スーパーバイザーズ オブ ルイジアナ ステート ユニバーシティ アンド アグリカルチュラル アンド メカニカル カレッジ
(71)【出願人】
【識別番号】522084234
【氏名又は名称】ペレーズ リカルド パラシオス
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ペレーズ リカルド パラシオス
(72)【発明者】
【氏名】バザン ニコラス ジー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】超長鎖多価不飽和脂肪酸であるエロバノイドヒドロキシル化誘導体、およびその使用方法を提供する。
【解決手段】疾患の症状を緩和する、該疾患を治療する、または予防するためのエロバノイドとして知られるオメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸(n-3 VLC-PUFA)およびそれらのヒドロキシル化誘導体に関連する使用の方法を提供する。さらに、VLC-PUFAの生物活性および利用可能性を調節するための組成物および方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるアレルギー性炎症性疾患の症状を緩和する、該疾患を治療する、または予防する方法であって、治療有効量のVLC-PUFAを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
細胞老化、フェロトーシス、または細胞老化およびフェロトーシスを調節することにより、疾患の症状を緩和する、該疾患を治療する、または予防する方法であって、治療有効量のVLC-PUFAを対象に投与することを含む、方法。
【請求項3】
対象における代謝障害の症状を緩和する、該障害を治療する、または予防する方法であって、治療有効量のVLC-PUFAを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項4】
前記VLC-PUFA化合物が、式AまたはB:
からなる群から選択され得る、請求項1、請求項2、または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記VLC-PUFA化合物が、下記:
からなる群から選択され得る、請求項1、請求項2、または請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記VLC-PUFAが、医薬組成物として提供される、請求項1、請求項2、または請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記医薬組成物が、局所投与用組成物、鼻腔内投与用組成物、経口投与用組成物、または非経口投与用組成物を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記局所投与用組成物が、クリームを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記VLC-PUFAが、局所的、経口的、鼻腔内、または非経口的に投与される、請求項1、請求項2、または請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記治療有効量が、約500nMの濃度、約500nMを超える濃度、または約500nM未満の濃度を含む、請求項1、請求項2、または請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記医薬組成物が、1つ以上の追加の活性剤をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の追加の活性剤が、少なくとも1つの抗酸化剤を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アレルギー性炎症性疾患が、細胞による炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生の増加によって示される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記炎症誘発性サイトカインおよびケモカインが、IL-6、IL-1β、IL-8/CXCL8、CCL2/MCP-1、CXCL1/KC/GRO、VEGF、ICAM1(CD54)のうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記VLC-PUFAが、炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生を抑止する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞が、上皮細胞を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記上皮細胞が、ヒト鼻上皮細胞を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記上皮細胞が、鼻上皮細胞、角膜上皮細胞、皮膚上皮細胞、または呼吸上皮細胞を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記VLC-PUFAが、アレルゲンへの曝露前、アレルゲンへの曝露とほぼ同時に、またはアレルゲンへの曝露後に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記アレルゲンが、対象においてアレルギー性炎症性疾患を引き起こす、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アレルゲンが、細胞による炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生の増加を引き起こす、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞が、上皮細胞を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記上皮細胞が、ヒト鼻上皮細胞を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記上皮細胞が、鼻上皮細胞、角膜上皮細胞、皮膚上皮細胞、または呼吸上皮細胞を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記アレルギー性炎症性疾患が、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、喘息を含む、請求項1または請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記疾患が、神経変性疾患を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
前記疾患が、Aβ関連疾患を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項28】
前記疾患が、アルツハイマー病または加齢性黄斑変性症を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項29】
代謝状態が、肥満または糖尿病を含む、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月4日に出願された米国特許仮出願第62/895,737号、2019年10月21日に出願された米国特許仮出願第62/923,770号、2019年10月22日に出願された米国特許仮出願第62/924,359号、および2020年1月23日に出願された米国特許仮出願第62/964,995号の優先権を主張しており、それらのそれぞれの全体の内容が、それらの全体において、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府が後援する研究または開発に関する声明
この発明は、国立衛生研究所によって授与された契約EY005121、NS104117およびNS109221に基づき政府の支援を受けて行われた。政府は、発明に対して特定の権利を有する。
【0003】
開示の分野
この開示は、疾患の症状を緩和する、該疾患を治療する、または予防するためのエロバノイドとして知られるオメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸(n-3 VLC-PUFA)およびそれらのヒドロキシル化誘導体に関連する使用の方法に関する。さらに、本発明は、VLC-PUFAの生物活性および利用可能性を調節するための組成物および方法を対象とする。
【背景技術】
【0004】
背景
長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)は、アラキドン酸(ARA、C20:4n6、すなわち20個の炭素、4個の二重結合、オメガ-6)、エイコサペンタエン酸(EPA、C20:5n-3、20個の炭素、5個の二重結合、オメガ-3)、ドコサペンタエン酸(DPA、C22:5n-3、22個の炭素、5個の二重結合、オメガ-3)、およびドコサヘキサエン酸(DHA、C22:6n-3、22個の炭素、6個の二重結合、オメガ-3)を含む、18~22個の炭素を含むオメガ-3(n-3)およびオメガ-6(n6)多価不飽和脂肪酸を含むことができる。LC-PUFAは、リポキシゲナーゼ型酵素を介して、炎症および関連する状態で重要な役割を果たす生物学的に活性な脂質メディエーターとして機能する生物学的に活性なヒドロキシル化PUFA誘導体に変換される。これらの中で最も重要なのは、リポキシゲナーゼ(LOまたはLOX)酵素(例えば15-LO、12-LO)の作用を介して特定の炎症関連細胞で生成されるヒドロキシル化誘導体であり、とりわけ、抗炎症性作用、炎症収束作用、神経保護作用、または組織保護作用を含む強力な作用を有するモノ、ジ、またはトリヒドロキシル化PUFA誘導体の形成をもたらす。例えば、15-リポキシゲナーゼ(15-LO)の酵素作用を介して細胞内で形成されたDHAからのジヒドロキシ誘導体であるニューロプロテクチンD1(NPD1)は、定義されたR/SおよびZ/E立体化学構造(10R,17S-ジヒドロキシ-ドコサ-4Z,7Z,11E,13E,15Z,19Z-ヘキサエン酸)ならびに立体選択的な強力な抗炎症性、恒常性回復、炎症収束、生物活性を含みうるユニークな生物学的プロファイルを有することが示された。NPD1は、神経炎症性シグナル伝達およびタンパク質恒常性を調節し、神経再生、ニューロプロテクチン、および細胞生存を促進することが示されている。
【発明の概要】
【0005】
開示の概要
本開示の態様は、対象におけるアレルギー性炎症性疾患の症状を緩和する、該疾患を治療する、または予防する方法であって、治療有効量のVLC-PUFAを対象に投与することを含む方法に向けられている。
【0006】
さらに、本開示の態様は、細胞老化、フェロトーシス、または細胞老化およびフェロトーシスを調節することにより、疾患の症状を緩和する、該疾患を治療する、または予防する方法であって、治療有効量のVLC-PUFAを対象に投与することを含む方法に向けられている。実施形態では、疾患は、神経変性疾患を含む。実施形態では、疾患は、Aβ関連疾患を含む。例えば、疾患は、アルツハイマー病または加齢性黄斑変性症であり得る。
【0007】
さらに、本開示の態様は、対象における代謝障害の症状を緩和する、該障害を治療する、または予防する方法に向けられており、この方法は、治療有効量のVLC-PUFAを対象に投与することを含む。例えば、代謝状態は、肥満または糖尿病を含む。
【0008】
本開示の態様は、対象におけるアレルギー性炎症性疾患の症状を緩和する、該疾患を治療する、または予防する方法に向けられている。実施形態では、アレルギー性炎症性疾患は、細胞による炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生の増加によって示される。例えば、アレルギー性炎症性疾患は、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、または喘息を含む。
【0009】
例えば、炎症誘発性サイトカインおよびケモカインは、IL-6、IL-1β、IL-8/CXCL8、CCL2/MCP-1、CXCL1/KC/GRO、VEGF、ICAM1(CD54)のうちの少なくとも1つを含む。
【0010】
例えば、細胞は、上皮細胞を含む。上皮細胞の非限定的な例は、呼吸上皮細胞(ヒト鼻上皮細胞など)、角膜上皮細胞、または皮膚上皮細胞を含む。
【0011】
実施形態では、この方法は、治療有効量のVLC-PUFAを対象に投与することを含む。実施形態では、VLC-PUFAは、炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生を抑止する。
【0012】
実施形態では、VLC-PUFA化合物は、式AまたはBからなる群から選択することができる。
【0013】
実施形態では、VLC-PUFA化合物は、以下からなる群から選択することができる。
【0014】
実施形態では、VLC-PUFAは、医薬組成物として提供される。例えば、医薬組成物は、局所投与用組成物、鼻腔内投与用組成物、経口投与用組成物、または非経口投与用組成物を含む。
【0015】
実施形態では、VLC-PUFAまたは医薬組成物は、局所的、経口的、鼻腔内、または非経口的に投与される。
【0016】
実施形態では、治療有効量は、約500nMの濃度、約500nMを超える濃度、または約500nM未満の濃度を含む。
【0017】
実施形態では、VLC-PUFAは、アレルゲンへの曝露前、アレルゲンへの曝露とほぼ同時に、またはアレルゲンへの曝露後に投与される。
【0018】
実施形態では、アレルゲンは、対象においてアレルギー性炎症性疾患を引き起こす。例えば、アレルゲンは、細胞による炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生の増加、抗炎症性サイトカインおよびケモカインの産生の減少、あるいはその両方を引き起こす。
【0019】
本開示の態様はまた、治療有効量のVLC-PUFAを対象に投与することを含む、アレルギー性鼻炎を治療する方法に向けられている。例えば、VLC-PUFAは、鼻腔内に投与される。
【0020】
さらに、本開示の態様は、治療有効量のVLC-PUFAを対象に投与することを含む、アレルギー性結膜炎を治療する方法に向けられている。実施形態では、VLC-PUFAは、点眼薬を使用する眼などに局所的に投与される。
【0021】
さらに、本開示の態様は、対象に治療有効量のVLC-PUFAを投与することを含む、アレルギー性皮膚炎を治療する方法に向けられている。実施形態では、VLC-PUFAは、クリーム、スプレー、またはゲルなど、局所的に投与される。
【0022】
また、本開示の態様は、治療有効量のVLC-PUFAを対象に投与することを含む喘息を治療する方法に向けられている。実施形態では、VLC-PUFAは、鼻腔内に投与される。
【0023】
本開示の態様はまた、上皮組織を治療有効量のVLC-PUFAと接触させることを含む、上皮組織の炎症反応を緩和する、治療する、または予防する方法に向けられている。実施形態では、炎症反応は、細胞による炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生の増加、抗炎症性サイトカインおよびケモカインの産生の減少、あるいはその両方によって示される。例えば、炎症誘発性サイトカインおよびケモカインは、IL-6、IL-1β、IL-8/CXCL8、CCL2/MCP-1、CXCL1/KC/GRO、VEGF、ICAM1(CD54)のうちの少なくとも1つを含む。例えば、抗炎症性分子は、IL-10を含む。
【0024】
実施形態では、VLC-PUFAは、炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生を抑止するか、抗炎症性分子の産生を増強するか、またはその両方である。
【0025】
本明細書で提供されるのは、オメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸(n-3 VLC-PUFA)および/またはエロバノイドとして知られるそれらの内因性ヒドロキシル化誘導体を含む化合物および医薬組成物である。本開示は、対象におけるアレルギー性炎症性疾患の症状を緩和する、該疾患を治療する、または予防するための方法を提供する。
【0026】
n-3 VLC-PUFAは、インビボで、機能的完全性が破壊された組織および臓器への進行性損傷を保護および防止できるエロバノイド(ELV)と呼ばれるいくつかの未知のタイプのVLC-PUFAヒドロキシル化誘導体に変換される。理論に拘束されることを望むものではないが、ELVは炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生を抑止することができ、したがって、対象におけるアレルギー性炎症性疾患の症状を緩和する、該疾患を治療する、または予防することができる。
【0027】
n-3 VLC-PUFAおよびそれらに対応するエロバノイド(ELV)に関連する特定の化合物を提供することにより、炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生を効果的に抑制することができる。したがって、本開示は、アレルギー性炎症性疾患の予防および治療に関連している。
【0028】
本開示は、炎症誘発性サイトカインによって引き起こされる多くの臓器における障害の保護、予防、および治療を促進することができる化合物、組成物、および方法を提供する。例えば、本開示は、鼻上皮細胞などの上皮細胞からの炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生を抑止し、したがってアレルギー性炎症性疾患の症状を緩和する、該疾患を治療する、または予防することができる化合物、組成物および方法を提供する。
【0029】
したがって、本開示の一態様は、その炭素鎖に少なくとも23個の炭素原子を有する少なくとも1つのオメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む組成物の実施形態を包含する。
【0030】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、その炭素鎖に少なくとも23個の炭素原子を有する少なくとも1つのn-3 VLC-PUFAを含み、n-3 VLC-PUFAは、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、またはリン脂質誘導体の形態であり得る。
【0031】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、n-3 VLC-PUFA化合物は、式AまたはBからなる群から選択することができる。
式中、mは0~19であってよく、-CO-ORはカルボン酸基、またはその塩もしくはエステルであってよく、-CO-ORがカルボン酸基であり得る場合、化合物AまたはBはその塩であってよく、塩のカチオンは薬学的に許容され得るカチオンであってよく、-CO-ORがエステルであり得る場合、Rはアルキル基であり得る。
【0032】
いくつかの他の実施形態では、本開示において、n-3 VLC-PUFA化合物は、式C、D、EまたはFからなる群から選択されるリン脂質の形態であり得る。式中、mは、0~19であり得る。
【0033】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容され得る担体をさらに含み、レシピエント対象の、またはレシピエント対象の組織の病的状態の発症の組織の病的状態を軽減するのに有効な量の少なくとも1つのオメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸の送達のために製剤化され得る。
【0034】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、病的状態は、レシピエント対象のアレルギー性炎症性疾患であり得る。例えば、アレルギー性炎症性疾患は、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、または喘息である可能性がある。
【0035】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、点眼薬などで、レシピエント対象の皮膚またはレシピエント対象の眼への少なくとも1つの超長鎖多価不飽和脂肪酸の局所送達のために製剤化され得る。
【0036】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、レシピエント対象の鼻組織への少なくとも1つの超長鎖多価不飽和脂肪酸の鼻腔内送達のために製剤化され得る。
【0037】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、レシピエント対象への少なくとも1つの超長鎖多価不飽和脂肪酸の経口送達または非経口送達のために製剤化され得る。
【0038】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのオメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸は、その炭素鎖中に約26~約42個の炭素原子を有することができる。
【0039】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのオメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸は、その炭素鎖中に32または34個の炭素原子を有することができる。
【0040】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、オメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸は、その炭素鎖中に、シス配置を有する5つまたは6つの交互の二重結合を有することができる。
【0041】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、オメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸は、14Z,17Z,20Z,23Z,26Z,29Z)-ドトリアコンタ-14,17,20,23,26,29-ヘキサエン酸または(16Z,19Z,22Z,25Z,28Z,31Z)-テトラトリアコンタ-16,19,22,25,28,31-ヘキサエン酸である。
【0042】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのオメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸は、14Z,17Z,20Z,23Z,26Z,29Z)-ドトリアコンタ-14,17,20,23,26,29-ヘキサエン酸または(16Z,19Z,22Z,25Z,28Z,31Z)-テトラトリアコンタ-16,19,22,25,28,31-ヘキサエン酸であり得る。
【0043】
本開示の別の態様は、その炭素鎖に少なくとも23個の炭素原子を有する少なくとも1つのエロバノイドを含む組成物の実施形態を包含する。
【0044】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容され得る担体をさらに含むことができ、レシピエント対象の組織の病的状態の症状を緩和する、該状態を予防する、また軽減するのに有効な量の少なくとも1つのエロバノイドの送達のために製剤化され得る。
【0045】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、病的状態は、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、または喘息などのレシピエント対象のアレルギー性炎症性疾患であり得る。
【0046】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、点眼薬などによる、レシピエント対象の皮膚またはレシピエント対象の眼への少なくとも1つのエロバノイドの局所送達のために製剤化され得る。
【0047】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、レシピエント対象の鼻組織への少なくとも1つのエロバノイドの鼻腔内送達のために製剤化され得る。
【0048】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、レシピエント対象への少なくとも1つのエロバノイドの経口送達または非経口送達のために製剤化され得る。
【0049】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのエロバノイドは、モノヒドロキシル化エロバノイド、ジヒドロキシル化エロバノイド、アルキニルモノヒドロキシル化エロバノイド、およびアルキニルジヒドロキシル化エロバノイドまたはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択することができる。
【0050】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのエロバノイドは、エロバノイドの組み合わせであり得る。組み合わせは、モノヒドロキシル化エロバノイドおよびジヒドロキシル化エロバノイド;モノヒドロキシル化エロバノイドおよびアルキニルモノヒドロキシル化エロバノイド;モノヒドロキシル化エロバノイドおよびアルキニルジヒドロキシル化エロバノイド;ジヒドロキシル化エロバノイドおよびアルキニルモノヒドロキシル化エロバノイド;ジヒドロキシル化エロバノイドおよびアルキニルジヒドロキシル化エロバノイド;モノヒドロキシル化エロバノイド、ジヒドロキシル化エロバノイド、およびアルキニルモノヒドロキシル化エロバノイド;モノヒドロキシル化エロバノイド、ジヒドロキシル化エロバノイド、およびアルキニルジヒドロキシル化エロバノイド;ならびにモノヒドロキシル化エロバノイド、ジヒドロキシル化エロバノイド、およびアルキニルモノヒドロキシル化エロバノイド、アルキニルジヒドロキシル化エロバノイドからなる群から選択され、各エロバノイドは、独立して、ラセミ混合物、単離されたエナンチオマー、または1つのエナンチオマーの量が別のエナンチオマーの量を超えるエナンチオマーの組み合わせであり;各エロバノイドは、独立して、ジアステレオマー混合物、単離されたジアステレオマー、または1つのジアステレオマーの量が別のジアステレオマーの量を超えるジアステレオマーの組み合わせである。
【0051】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、モノヒドロキシル化エロバノイドは、式G、H、IまたはJからなる群から選択することができる。
式中、mは0~19であってよく、-CO-ORはカルボン酸基、またはその塩もしくはエステルであってよく、-CO-ORがカルボン酸基であり得る場合、化合物G、H、IまたはJはその塩であってよく、塩のカチオンは薬学的に許容され得るカチオンであってよく、-CO-ORがエステルであり得る場合、Rはアルキル基であり得る。
【0052】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、等モル量のエナンチオマーGおよびHを含むことができ、エナンチオマーは、ヒドロキシル基を有するn-6炭素に(S)または(R)キラリティーを有する。
【0053】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、ある量のエナンチオマーIおよびJを含むことができ、エナンチオマーは、ヒドロキシル基を有するn-6炭素に(S)または(R)キラリティーを有する。
【0054】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、GまたはHのエナンチオマーのうちの1つを、GまたはHのうちの他のエナンチオマーの量を超える量で含むことができる。
【0055】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、IまたはJのエナンチオマーのうちの1つを、IまたはJのうちの他のエナンチオマーの量を超える量で含むことができる。
【0056】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、ジヒドロキシル化エロバノイドは、式K、L、M、およびNからなる群から選択することができる。
式中、mは0~19であってよく、-CO-ORはカルボン酸基、またはその塩もしくはエステルであってよく、-CO-ORがカルボン酸基であり得る場合、化合物K、L、M、またはNはその塩であってよく、塩のカチオンは薬学的に許容され得るカチオンであってよく、-CO-ORがエステルであり得る場合、Rはアルキル基であってよく、化合物KおよびLはそれぞれ、位置n-3、n-7、n-15、およびn-18で始まる4つのシス炭素-炭素二重結合ならびに位置n-9およびn-11で始まる2つのトランス炭素-炭素二重結合を有する炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を有し、化合物MおよびNはそれぞれ、位置n-3、n-7およびn-15で始まる3つのシス炭素-炭素二重結合ならびに位置n-9およびn-11で始まる2つのトランス炭素-炭素二重結合を有する炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を有する。
【0057】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、等モル量のジアステレオマーKおよびLを含むことができ、ジアステレオマーは、位置n-6で(S)または(R)キラリティーのいずれか、および位置n-13で(R)キラリティーを有する。
【0058】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、等モル量の1つ以上のジアステレオマーKおよびLを含むことができ、ジアステレオマーは、位置n-6で(S)または(R)キラリティーのいずれか、および位置n-13で(S)または(R)キラリティーのいずれかを有する。
【0059】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、KまたはLのジアステレオマーのうちの1つを、KまたはLのうちの他のジアステレオマーの量を超える量で含むことができる。
【0060】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、等モル量のジアステレオマーMおよびNを含むことができ、ジアステレオマーは、位置n-6で(S)または(R)キラリティーのいずれか、および位置n-13で(R)キラリティーを有する。
【0061】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、等モル量の1つ以上のジアステレオマーMおよびNを含むことができ、ジアステレオマーは、位置n-6で(S)または(R)キラリティーのいずれか、および位置n-13で(S)または(R)キラリティーのいずれかを有する。
【0062】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、MまたはNのジアステレオマーのうちの1つを、MまたはNのうちの他のジアステレオマーの量を超える量で含むことができる。
【0063】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、アルキニルモノヒドロキシル化エロバノイドは、式O、P、QまたはRからなる群から選択することができる。
式中、mは0~19であってよく、-CO-ORはカルボン酸基、またはその塩もしくはエステルであってよく、-CO-ORがカルボン酸基であり得る場合、化合物O、P、Q、またはRはその塩であってよく、塩のカチオンは薬学的に許容され得るカチオンであってよく、-CO-ORがエステルであり得る場合、Rはアルキル基であり得る、化合物OおよびPはそれぞれ、位置n-3、n-12、n-15、およびn-18で始まる4つのシス炭素-炭素二重結合を有し、位置n-7で始まるトランス炭素-炭素二重結合および位置n-9で始まる炭素-炭素三重結合を有する炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を有し、化合物QおよびRはそれぞれ、位置n-3、n-12、およびn-15で始まる3つのシス炭素-炭素二重結合を有し、位置n-7で始まるトランス炭素-炭素二重結合および位置n-9で始まる炭素-炭素三重結合を有する炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を有する。
【0064】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、等モル量のエナンチオマーOおよびPを含むことができ、エナンチオマーは、ヒドロキシル基を有するn-6炭素に(S)または(R)キラリティーを有する。
【0065】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、等モル量のエナンチオマーQおよびRを含むことができ、エナンチオマーは、ヒドロキシル基を有するn-6炭素に(S)または(R)キラリティーを有する。
【0066】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、OまたはPのエナンチオマーのうちの1つを、OまたはPのうちの他のエナンチオマーの量を超える量で含むことができる。
【0067】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、QまたはRのエナンチオマーのうちの1つを、QまたはRのうちの他のエナンチオマーの量を超える量で含むことができる。
【0068】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、エロバノイドは、式S、T、UまたはVからなる群から選択されるアルキニルジヒドロキシル化エロバノイドであり得る。
mは0~19であってよく、-CO-ORはカルボン酸基、またはその塩もしくはエステルであってよく、-CO-ORがカルボン酸基であり得る場合、化合物S、T、UまたはVはその塩であってよく、塩のカチオンは薬学的に許容され得るカチオンであってよく、-CO-ORがエステルであり得る場合、Rはアルキル基であってよく、化合物SおよびTはそれぞれ、位置n-3、n-15、n-18で始まる3つのシス炭素-炭素二重結合を有し、位置n-9およびn-11で始まる2つのトランス炭素-炭素二重結合および位置n-7で始まる炭素-炭素三重結合を有する炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を有し、化合物UおよびVはそれぞれ、位置n-3およびn-15で始まる2つのシス炭素-炭素二重結合を有し、位置n-9、n-11で始まる2つのトランス炭素-炭素二重結合および位置n-7で始まる炭素-炭素三重結合を有する炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を有する。
【0069】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、等モル量のジアステレオマーSおよびTを含むことができ、ジアステレオマーは、位置n-6で(S)または(R)キラリティーのいずれか、および位置n-13で(R)キラリティーを有する。
【0070】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、等モル量の1つ以上のジアステレオマーSおよびTを含むことができ、ジアステレオマーは、位置n-6で(S)または(R)キラリティーのいずれか、および位置n-13で(S)または(R)キラリティーのいずれかを有する。
【0071】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、SまたはTのジアステレオマーのうちの1つを、SまたはTのうちの他のジアステレオマーの量を超える量で含むことができる。
【0072】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、等モル量のジアステレオマーUおよびVを含むことができ、ジアステレオマーは、位置n-6で(S)または(R)キラリティーのいずれか、および位置n-13で(R)キラリティーを有する。
【0073】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、等モル量の1つ以上のジアステレオマーUおよびVを含むことができ、ジアステレオマーは、位置n-6で(S)または(R)キラリティーのいずれか、および位置n-13で(S)または(R)キラリティーのいずれかを有する。
【0074】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、UまたはVのジアステレオマーのうちの1つを、UまたはVのうちの他のジアステレオマーの量を超える量で含むことができる。
【0075】
本発明の態様は、本明細書に含まれる表の分子標的のエピトープに結合するペプチド類似体にさらに向けられている。
【0076】
実施形態では、ペプチド類似体は、細胞老化、フェロトーシス、または細胞老化およびフェロトーシスを調節する。
【0077】
さらに、本発明の態様は、本明細書に記載のペプチド類似体を対象に投与することによって疾患を治療する方法に向けられている。例えば、実施形態は、細胞老化、フェロトーシス、または細胞老化およびフェロトーシスを調節することによって疾患を治療する方法に向けられている。実施形態では、この方法は、疾患に罹患している、または疾患のリスクがある対象に、エロバノイドまたはそのペプチド類似体を投与するステップを含む。実施形態では、そのエロバノイドまたはペプチド類似体は、本明細書に記載されるように、分子標的のエピトープに結合する。
【0078】
本発明の態様は、細胞老化、フェロトーシス、または細胞老化およびフェロトーシスに関連する疾患を治療する方法にさらに向けられている。例えば、この方法は、少なくとも1つの分子標的をそのエロバノイドまたはペプチド類似体で標的とすることを含む。
[本発明1001]
対象におけるアレルギー性炎症性疾患の症状を緩和する、該疾患を治療する、または予防する方法であって、治療有効量のVLC-PUFAを前記対象に投与することを含む、方法。
[本発明1002]
細胞老化、フェロトーシス、または細胞老化およびフェロトーシスを調節することにより、疾患の症状を緩和する、該疾患を治療する、または予防する方法であって、治療有効量のVLC-PUFAを対象に投与することを含む、方法。
[本発明1003]
対象における代謝障害の症状を緩和する、該障害を治療する、または予防する方法であって、治療有効量のVLC-PUFAを前記対象に投与することを含む、方法。
[本発明1004]
前記VLC-PUFA化合物が、式AまたはB:
からなる群から選択され得る、本発明1001、本発明1002、または本発明1003の方法。
[本発明1005]
前記VLC-PUFA化合物が、下記:
からなる群から選択され得る、本発明1001、本発明1002、または本発明1003の方法。
[本発明1006]
前記VLC-PUFAが、医薬組成物として提供される、本発明1001、本発明1002、または本発明1003の方法。
[本発明1007]
前記医薬組成物が、局所投与用組成物、鼻腔内投与用組成物、経口投与用組成物、または非経口投与用組成物を含む、本発明1006の方法。
[本発明1008]
前記局所投与用組成物が、クリームを含む、本発明1007の方法。
[本発明1009]
前記VLC-PUFAが、局所的、経口的、鼻腔内、または非経口的に投与される、本発明1001、本発明1002、または本発明1003の方法。
[本発明1010]
前記治療有効量が、約500nMの濃度、約500nMを超える濃度、または約500nM未満の濃度を含む、本発明1001、本発明1002、または本発明1003の方法。
[本発明1011]
前記医薬組成物が、1つ以上の追加の活性剤をさらに含む、本発明1006の方法。
[本発明1012]
前記1つ以上の追加の活性剤が、少なくとも1つの抗酸化剤を含む、本発明1011の方法。
[本発明1013]
前記アレルギー性炎症性疾患が、細胞による炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生の増加によって示される、本発明1001の方法。
[本発明1014]
前記炎症誘発性サイトカインおよびケモカインが、IL-6、IL-1β、IL-8/CXCL8、CCL2/MCP-1、CXCL1/KC/GRO、VEGF、ICAM1(CD54)のうちの少なくとも1つを含む、本発明1013の方法。
[本発明1015]
前記VLC-PUFAが、炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生を抑止する、本発明1013の方法。
[本発明1016]
前記細胞が、上皮細胞を含む、本発明1013の方法。
[本発明1017]
前記上皮細胞が、ヒト鼻上皮細胞を含む、本発明1016の方法。
[本発明1018]
前記上皮細胞が、鼻上皮細胞、角膜上皮細胞、皮膚上皮細胞、または呼吸上皮細胞を含む、本発明1017の方法。
[本発明1019]
前記VLC-PUFAが、アレルゲンへの曝露前、アレルゲンへの曝露とほぼ同時に、またはアレルゲンへの曝露後に投与される、本発明1001の方法。
[本発明1020]
前記アレルゲンが、対象においてアレルギー性炎症性疾患を引き起こす、本発明1019の方法。
[本発明1021]
前記アレルゲンが、細胞による炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生の増加を引き起こす、本発明1019の方法。
[本発明1022]
前記細胞が、上皮細胞を含む、本発明1021の方法。
[本発明1023]
前記上皮細胞が、ヒト鼻上皮細胞を含む、本発明1022の方法。
[本発明1024]
前記上皮細胞が、鼻上皮細胞、角膜上皮細胞、皮膚上皮細胞、または呼吸上皮細胞を含む、本発明1021の方法。
[本発明1025]
前記アレルギー性炎症性疾患が、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、喘息を含む、本発明1001または本発明1020の方法。
[本発明1026]
前記疾患が、神経変性疾患を含む、本発明1002の方法。
[本発明1027]
前記疾患が、Aβ関連疾患を含む、本発明1002の方法。
[本発明1028]
前記疾患が、アルツハイマー病または加齢性黄斑変性症を含む、本発明1002の方法。
[本発明1029]
代謝状態が、肥満または糖尿病を含む、本発明1003の方法。
【図面の簡単な説明】
【0079】
本開示は、対象における疾患の症状を緩和する、該疾患を予防する、または治療するための化合物、組成物、および投与のための方法に焦点を合わせている。例えば、この疾患は、アレルギー性炎症性疾患などの炎症性疾患である。別の例では、疾患は、加齢性黄斑変性症またはアルツハイマー病を含む、Aβに関連する疾患を含む、細胞老化、フェロトーシス、またはその両方に関連する疾患である。さらに別の例として、この疾患は、糖尿病、肥満、またはその両方などの代謝障害である。
【0080】
本開示のさらなる態様は、添付の図面と併せて解釈される場合、以下に説明されるそのさまざまな実施形態の詳細な説明を検討することで容易に理解されるであろう。
【0081】
【
図1】オメガ-3(n-3またはn-3)の超長鎖多価不飽和脂肪酸(n-3 VLC-PUFA)からのエロバノイド(ELV)の生合成を説明するスキームである。
【
図2】n-3 VLC-PUFAの生合成を説明するスキームである。
【
図3-1】
図3A~3Kは、培養された初代ヒト網膜色素上皮細胞(RPE)からのエロバノイドELV-N-32およびELV-N-34の生成および構造的性質を示す。
図3Aは、中間体(1、2、および3)からのELV-N-32およびELV-N-34合成を示すスキームであり、これらはそれぞれ、立体化学的に純粋な形態で調製された。中間体2および3の立体化学は、鏡像異性的に純粋なエポキシド出発物質を使用して事前に定義されている。最終的なELV(4)は、中間体1、2、および3の反復カップリングを介して結合され、メチルエステル(Me)またはナトリウム塩(Na)として分離された。
図3Bは、C32:6n-3、内因性モノヒドロキシ-C32:6n-3、およびELV-N-32標準で示されたELV-N-32の溶出プロファイルを示している。ELV-N-32のMRMは、標準ELV-N-32が溶出されたときのピークよりも早く溶出された、2つの大きなピークを示し、同じフラグメンテーションパターン(挿入スペクトルに示されている)を示し、異性体であることを示している。
図3Cは、ELV-N-32およびELV-N-34のフルドータースキャンのクロマトグラムを示している。
【
図3-2】
図3A~3Kは、培養された初代ヒトRPEからのエロバノイドELV-N-32およびELV-N-34の生成および構造的性質を示す。
図3Dは、ELV-N-32のフラグメンテーションパターンを示している。
図3Eは、C34:6n-3およびELV-N-34の溶出プロファイルを示している。
図3Fは、内因性ELV-N-34のUVスペクトルを示しており、NPD1に類似したトリエンの特徴を示している。λmaxは275nmであり、ショルダーは268および285nmである。
【
図3-3】
図3A~3Kは、培養された初代ヒトRPEからのエロバノイドELV-N-32およびELV-N-34の生成および構造的性質を示す。
図3Gは、ELV-N-32のフラグメンテーションパターンを示している。
図3Hは、内因性ELV-N-32の完全なフラグメンテーションスペクトルを示している。
図3Iは、ELV-N-32標準が、標準からのすべての主要なピークが内因性ピークと一致することを示している。ただし、内因性ELV-N-32には、標準に表示されないフラグメントが多く含まれており、これは、さまざまな異性体が含まれている可能性があることを示している。
【
図3-4】
図3A~3Kは、培養された初代ヒトRPEからのエロバノイドELV-N-32およびELV-N-34の生成および構造的性質を示す。
図3Jは、標準ELV-N-34と一致する内因性ELV-N-34ピークの完全なフラグメンテーションスペクトルを示している。
図3Kは、ELV-N-34異性体の存在を示している。
【
図4-1】
図4A~4Kは、神経細胞培養物からのエロバノイドELV-N-32およびELV-N-34の構造的性質を示している。大脳皮質混合神経細胞を、OGD条件下でそれぞれ10μMの32:6n-3および34:6n-3とインキュベートした。
図4Aは、中間体(a、b、およびc)からのELV-N-32およびELV-N-34合成を示すスキームであり、これらはそれぞれ、立体化学的に純粋な形態で調製された。中間体bおよびcの立体化学は、鏡像異性的に純粋なエポキシド出発物質を使用して事前に定義されている。最終的なELV(d)は、中間体a、b、およびcの反復カップリングを介して結合され、メチルエステル(Me)またはナトリウム塩(Na)として分離された。
図4Bは、インサート内の32:6n-3、内因性モノヒドロキシ-32:6、ELV-N-32、およびELV-N-32標準を示している。ELV-N-32のMRMは、標準のELV-N-32が溶出されたときのピークよりも早く溶出された2つの大きなピークを示しているが、同じフラグメンテーションパターンを示しており、異性体であることを示している。
図4Cは、34:6n-3およびELV-N-34において示された
図4Aと同じ特徴を示している。
【
図4-2】
図4A~4Kは、神経細胞培養物からのエロバノイドELV-N-32およびELV-N-34の構造的性質を示している。大脳皮質混合神経細胞を、OGD条件下でそれぞれ10μMの32:6n-3および34:6n-3とインキュベートした。
図4Dは、内因性ELV-N-32のUVスペクトルがトリエンの特徴を示していることを示しているが、これらはこの濃度では明確ではない。
図4Eは、内因性ELV-N-32の完全なフラグメンテーションスペクトルを示している。
図4Fは、内因性ELV-N-34のUVスペクトルを示しており、NPD1に類似したトリエンの特徴を示している。λ
maxは275nmであり、ショルダーは268および285nmである。
図4Gは、内因性ELV-N-34のフラグメンテーションパターンを示している。
【
図4-3】
図4A~4Kは、神経細胞培養物からのエロバノイドELV-N-32およびELV-N-34の構造的性質を示している。大脳皮質混合神経細胞を、OGD条件下でそれぞれ10μMの32:6n-3および34:6n-3とインキュベートした。
図4Hは、内因性ELV-N-32の完全なフラグメンテーションパターンを示している。
図4Iは、ELV-N-34標準が、標準からのすべての主要なピークが内因性ピークと一致するが、完全には一致しないことを示している。内因性ELV-N-34には、標準に表示されないフラグメントが多く含まれている。理論に拘束されることを望むものではないが、これはそれが異性体を含むことができることを示している。
【
図4-4】
図4A~4Kは、神経細胞培養物からのエロバノイドELV-N-32およびELV-N-34の構造的性質を示している。大脳皮質混合神経細胞を、OGD条件下でそれぞれ10μMの32:6n-3および34:6n-3とインキュベートした。
図4Jは、ELV-N-34の完全なフラグメンテーションスペクトルを示している。内因性ELV-N-34のピークは標準のELV-N-34と一致する。
図4Kは、ELV-N-34異性体の存在を示している。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、神経細胞培養におけるELV-N-32およびELV-N-34の検出を示している。細胞を、OGD条件下で、それぞれ5μMのC32:6n-3およびC34:6n-3とともにインキュベートした。
図5Aは、VLC-PUFA C32:6n-3、内因性27-ヒドロキシ-32:6n-3、内因性27,33-ジヒドロキシ-32:6n-3(ELV-N-32)、および合成ELV-N-32が、立体制御された全有機合成によって立体化学的に純粋な形で調製されたことを示している。内因性ELV-N-32のMRMは、合成ELV-N-32標準のMRMとよく一致する。
図5Bは、C34:6n-3およびELV-N-34において示された
図5Aと同じ特徴を示し、ELV-N-34MRMに多くのピークがあり、これは異性体を示している。
【
図6】モノヒドロキシル化エロバノイドG、H、I、J、O、P、Q、Rの全合成のスキーム1を示している。試薬および条件:(a)カテコールボラン、熱、(b)N-ヨード-スクシンイミド、MeCN、(c)4-クロロブト-2-イン-1-オール、Cs
2CO
3、NaI、CuI、DMF、(d)CBr
4、PPh
3、CH
2Cl
2、0℃、(e)エチニル-トリメチルシラン、CuI、NaI、K
2CO
3、DMF、(f)リンドラー触媒、H
2、EtOAc、(g)Na
2CO
3、MeOH、(h)Pd(PPh
3)
4、CuI、Et
3N、(i)
tBu
4NF、THF、(j)リンドラー触媒、H
2、EtOAcまたはZn(Cu/Ag)、MeOH、(k)NaOH、THF、H
2O、次にHCl/H
2Oで酸性化、(l)NaOH、KOHなど、またはアミン、イミンなど。
【
図7】ジヒドロキシル化エロバノイドK、L、S、およびTの全合成のスキーム2を示している。試薬および条件:(a)CuI、NaI、K
2CO
3、DMF。(b)カンファースルホン酸(CSA)、CH
2Cl
2、MeOH、室温、(c)リンドラー触媒、H
2、EtOAc、(d)DMSO、(COCl)
2、Et
3N、-78℃、(e)Ph
3P=CHCHO、PhMe、還流、(f)CHI
3、CrCl
2、THF、0℃、(g)触媒Pd(Ph
3)
4、CuI、PhH、室温、(h)
tBu
4NF、THF、室温、(i)Zn(Cu/Ag)、MeOH、40℃、(j)NaOH、THF、H
2O、次にHCl/H
2Oで酸性化、(k)NaOH、KOHなど、またはアミン、イミンなど。
【
図8】ジヒドロキシル化エロバノイドM、N、U、およびVの全合成のスキーム3を示している。試薬および条件:(a)塩化シアヌル、Et
3N、アセトン、室温、(b)(3-メチルオキセタン-3-イル)メタノール、ピリジン、CH
2Cl
2、0℃、(c)BF
3、OEt
2、CH
2Cl
2、(d)
nBuLi、BF
3、OEt
2、THF、-78℃、次に1、(e)
tBuPh
2SiCl、イミダゾール、DMAP、CH
2Cl
2、室温、(f)カンファースルホン酸、CH
2Cl
2、ROH、室温、(g)リンドラー触媒、H
2、EtOAc、(h)DMSO、(COCl)
2、Et
3N、-78℃、(i)Ph
3P=CHCHO、PhMe、還流、(j)CHI
3、CrCl
2、THF、0℃、(k)触媒Pd(Ph
3)
4、CuI、PhH、室温、(l)
tBu
4NF、THF、室温、(m)Zn(Cu/Ag)、MeOH、40℃、(n)NaOH、THF、H
2O、次にHCl/H
2Oで酸性化、(o)NaOH、KOHなど、またはアミン、イミンなど。
【
図9】32-炭素のジヒドロキシル化エロバノイドの全合成のスキーム4を示している。
【
図10】34-炭素のジヒドロキシル化エロバノイドの全合成のスキーム5を示している。
【
図11】HNEpCの形態を示す明視野画像を示している-10倍および20倍。
【
図12】イエダニのアレルギー性を示す。HDMのさまざまなコンポーネントとそれに関連する糞便ペレットおよびほこりは、免疫システムを活性化する。Trends in Immunology,September,2011,Vol.32,No.9Gregory,2011を参照のこと。
【
図13-1】
図13は、LPSおよびポリ(I:C)の構造を示している。
【
図14】いくつかのストレッサー(エアロアレルゲン)を用いたHNEpCのチャレンジの実験計画を示している。
【
図15】異なるエアロアレルゲンでストレスを受けたHNEpCに対する脂質特異性を検証するために500nM濃度で使用された異なるエロバノイド(ELV)を示している。
【
図16】CyQuant LDHアッセイを用いた細胞毒性アッセイを示している。細胞膜への損傷は、LDHを周囲の細胞培養培地に放出する。培地中の細胞外LDHは、LDHがNAD+のNADHへの還元を介して乳酸からピルビン酸への変換を触媒する結合酵素反応によって定量化できる。ジアホラーゼによるNADHの酸化により、テトラゾリウム塩(INT)が還元され、490nmで分光光度的に測定できる赤いホルマザン生成物になる。ホルマザン形成のレベルは、培地に放出されたLDHの量に正比例し、細胞毒性を示す。
【
図27】Trends in Molecular Medicine; October,2011;Vol.17,No.10.Jacquet,2011からの代表的な図を示している。
【
図28】脂質メディエーターの生物活性を模倣する新しい合成非脂質類似体の開発のために老化を制御する収束メカニズムを示している。
【
図29】ヒトRPE細胞においてNPD1およびELV-32:6によって中和された、酸化ストレスおよびエラスチン誘発細胞死を示している。
【
図30-1】
図30は、エロバノイドがエラスチン媒介PEBP-1のリン酸化を弱めることを示している(Wenzel et al.,2017,Cell,171:628-641から採用)。
【
図31】フェロトーシスおよび老化の、エロバノイドによる上流制御を示している。
【
図32】MFRP(Membrane Frizzled-Related Protein(膜Frizzled関連タンパク質))の欠失が進行性のPRC変性につながることを示している。
【
図33】AdipoR1
-/-およびMFRP
rd6におけるPC44:12および56:12の選択的消失を示している。
【
図34】AMDを有するヒト網膜における標的を示している。
【
図35】AMDが、錐体リッチな網膜黄斑および杆体リッチな周辺部におけるPC選択的差異を示すことを示している。MALDI MS分子イメージングは、明確な層状化を示す。
【
図36】orphanMAXパネル(DiscoverX、Eurofins、Fremonst、CA)に対してPathHunterβ-アレスチン酵素フラグメント相補性/β-ガラクトシダーゼによってスクリーニングされた168個のGPCR標的と73個のオーファンGPRC(アンタゴニストまたは部分アゴニスト)のヒートマップを示している。理論に拘束されることを望むものではないが、GPCR標的(青い矢印)はしきい値を超える活性を表示する。GPCRパネルを発現する細胞と37℃、90分インキュベートされた、NPD1、ELV-N-32またはELV-N-34(5μM)またはビヒクルを用いたアッセイ。化学発光用のPerkinElmer EnVisionマルチモードで読み取ったマイクロプレート。CBISデータスイート(ChemInnovation、CA)を使用して分析された活性。スクリーニングはブラインド方式で2回実行され、結果はどちらの場合も同じだった。%活性(アゴニスト)と%阻害(アンタゴニスト)の値を使用してGraphPad Prism8.2で生成された虹色のヒートマップ。最小値が0、最大値が60の均一な凡例を使用して行われたカラーマッピング。高いカットオフ値(緑から赤)の色強度を有するGPCRのみが候補と見なされる(青い矢印)。
【
図37】特定のAdipoR1分子の発現と活性化の誘導が、5xFADマウスの網膜病態の初期発生中、脂質メディエーター経路およびELOVL-4の前駆体および中間体における神経保護メディエーター(1)の欠損を補うであろうことを示している。(A)NPD1、PC 54-12およびPC56-12前駆体からの32:6n-3および34:6n-3エロバノイドの生合成経路。質量分析の検出には、VLC-PUFAの安定したモノヒドロキシ生成物が使用される。(B)網膜(上)とRPE層(下)における遊離32:6n-3および34:6n-3 VLC-PUFA、27-モノヒドロキシ32:6n-3および29-モノヒドロキシ34:6n-3 VLC-PUFA、遊離DHA、およびNPD1の棒グラフ。(C~D)RPEおよび網膜における15-リポキシゲナーゼ-1発現のウエスタンブロットおよび定量化。RPEでは、5xFADでの15-リポキシゲナーゼ-1の発現は、WT RPEに満たない。網膜では、2つのグループの間に違いはない。これは、NPD1のレベルが5xFADで低いが、網膜では変化がない理由を説明している。ELOVL4は、網膜でのみ発現し、その発現は5xFADでは低くなる。結果として、遊離の32:6n-3および34:6n-3が少なくなり、モノヒドロキシ分子の量も少なくなった。(NS:有意ではない、*P<0.05、スチューデントのt検定比較を使用)。
【
図38】NPD1、ELV32、ELV34と、Path Hunterβ-アレスチン相補性によるポジティブスクリーニングGPCRとの相互作用を示している。脂質が拮抗作用(赤)とアゴニスト活性(青)を示した受容体が描かれている。丸で囲んだGPCRは、しきい値を超える活性を示したが、残りは境界線である。path-hunterは、異種システムであるため、代替アプローチとして、限界活性を満たしていないがそれに近いGPCRをテストすることもできる。
【
図39】UOSが、RPE単一細胞の炎症誘発性トランスクリプトームをアップレギュレートし、ホメオスタシス促進経路をダウンレギュレートすることを示している。NPD1およびELV32-6は、これらの変更を抑制する。箱ひげ図の点は、単一のRPECの遺伝子の発現を表している(サンプルあたり合計96)。P<0.001(***)、P<0.01(**)、一元配置分散分析、多重比較のための事後テューキーHSD検定。
【
図40】ヒトのグルタチオンレダクターゼのX線構造に基づいたグルタチオンレダクターゼの構造を示している。
【
図41】標的候補タンパク質TXNRD1の分析を示している。示されている構造は、ヒトNADP(H)チオレドキシンレダクターゼIのX線構造に基づいている。
【
図42】脂質メディエーターの生物活性を模倣する新しい合成非脂質類似体の開発のために老化を制御する収束メカニズムを示している。
【
図43】MEAシステムを使用して、さまざまな視床下部ニューロンから集団レベルの電気的活性が記録されたことを示している。
【
図44】成体肥満糖尿病マウス(db/db)における視床下部神経細胞死(Fluoro-Jade B染色による)のエロバノイドによる保護を示している。
【
図45】オリゴマーアミロイドベータ(Oaβ)(10μM)に曝露されたヒト神経膠(HNG)細胞で測定された老化関連β-ガラクトシダーゼ活性を示している。(A~G)500nMの濃度のOaβ(10μM)および異なるエロバノイド(ELV)またはニューロプロテクチンD1(NPD1)で処理されたHNG細胞におけるSA-β-Gal活性。顕微鏡写真は、明視野顕微鏡で得られた。(H)(A~G)に示されるSA-β-Gal+細胞の定量化。SA-β-Gal+細胞は、少なくとも合計150個の細胞についての3つのランダムな視野においてスコアリングされた。結果は、染色されたSA-β-Gal+細胞のパーセンテージとして表される(平均±SEM)。統計分析は、Graphpad Prismソフトウェア8.3を使用して行われた。結果は、一元配置分散分析、続いてHolm Sidak事後検定により比較し、p<0.05は統計的に有意であるとみなした。
【
図46】エラスチン(10μM)に曝露されたヒト神経膠(HNG)細胞で測定された老化関連β-ガラクトシダーゼ活性を示している。(A~G)500nMの濃度のエラスチン(10μM)および異なるエロバノイド(ELV)またはニューロプロテクチンD1(NPD1)で処理されたHNG細胞におけるSA-β-Gal活性。顕微鏡写真は、明視野顕微鏡で得られた。(H)(A~G)に示されるSA-β-Gal+細胞の定量化。SA-β-Gal+細胞は、少なくとも合計150個の細胞についての3つのランダムな視野においてスコアリングされた。結果は、染色されたSA-β-Gal+細胞のパーセンテージとして表される(平均±SEM)。統計分析は、Graphpad Prismソフトウェア8.3を使用して行われた。結果は、一元配置分散分析、続いてHolm Sidak事後検定により比較し、p<0.05は統計的に有意であるとみなした。
【
図47】実験計画を示している。ヒト神経グリア(HNG)細胞は、Oaβまたはエラスチンを使用したチャレンジを受けた。
【
図48】ELV34が、ヒト糖尿病脂肪細胞におけるIL1βの効果を元に戻すことを示している。A)実験計画。B)TaqmanリアルタイムPCRによるヒト糖尿病および非糖尿病脂肪細胞におけるTP53およびIL8の発現レベル。
【
図49】ELV34が糖尿病のdb/dbマウス視床下部でIL1βによって誘発されるIL6(SASPのマーカー)のレベルを低下させたことを示しており、視床下部ニューロンと星状細胞が、SPを生じることを示している。オスとメスのマウスで異なる影響が観察されている。
【
図50】WTに対するdb/dbマウスの特徴を示している。
【
図51】ELV34処置により、インスリン感受性を促進する脂肪細胞および他の組織(視床下部)から分泌される抗糖尿病性全身ホルモンであるアディポネクチンのレベルが上昇したことを示している。A)ELV34で処置された糖尿病性視床下部は、メスおよびオスでアディポネクチンの増加傾向を示した。B)皮下脂肪組織(SAT)と内臓脂肪組織(VAT)におけるELV34の効果の違い。SATとVATは、褐変19に対して異なる能力を持っている。
【
図52】5xFADの網膜のホスファチジルコリン分子種におけるVLC-PUFAの欠乏を示している。(A)6か月齢の5xFAD(n=6)および野生型(n=6)のPCヒートマップ分析。PCの2つの主要なクラスターは、異なる機能で進化した。グループ1は、5xFADの豊富なPCを示し、グループ2は、WTで優勢なPCを示しており、ほとんどのPCにはVLC-PUFAが含まれている。(B)PCのPCA分析は、主成分1全体に2つの集団(WT-黒および5xFAD-赤)が分散していることを示している。したがって、主成分1の負荷スコアは、WTと5xFADの違いについて個別のPCを識別するために不可欠である。(C)主成分1に対するPCの負荷スコア(絶対値)。負荷スコアが高いほど、WTと5xFADを区別するための主成分へのPCの寄与が大きくなる(SI付録、
図S1A)。PCに含まれた10個の短鎖PUFA(<48C)は、最高負荷スコア上位12個のPC(C)に含まれ、PCに含まれたVLCPUFAは2個(58:1および58:12)に寄与する。(D)WTおよび5xFADのPCのランダムフォレスト分類に使用される時間。使用時間が長いほど、WTおよび5xFADの違いでPCの価値が高くなる(SI付録、
図S1B)。VLC-PUFA含有PCは、この分類で使用される上位12時間のうち7回に寄与する(D)。(E-G)VLC-PUFA含有PC(E)、DHA(F)、およびAA(G)の箱ひげ図。WTは、より多くのVLC-PUFAおよびDHA含有PCを有し、5xFADにはより多くのAA含有PCを有する。(*P<0.05、スチューデントのt検定)
【
図53】5xFADのRPEのホスファチジルコリン分子種におけるVLC-PUFAの欠乏を示している。(A)6か月齢の5xFAD(n=6)およびWT(n=6)のPCのヒートマップ分析。VLC-PUFA含有PCは、5xFADではそれほど豊富ではない。(B)5xFADおよびWTのRPEにおけるPCのためのPCA。主成分1全体に散在する2つの集団がある。しかし、網膜内の分布ほど明確ではない(
図52)。このため、主成分1の負荷スコアは、WTと5xFADの違いについて個別のPCを識別するために不可欠である。(C)主成分1へのPCの負荷スコア(絶対値)。負荷スコアが高いほど、WTと5xFADを区別するための主成分1へのPCの寄与が大きくなる(
図59、パネルC)。6つの短鎖PUFA(<48C)含有PCは、最高負荷スコア上位12個のPC(C)に含まれ、VLC-PUFA含有PCは、6個(50:8、50:12、52:8、54:12、56:12および58:12)に寄与する。(D)WTおよび5xFADのPCのランダムフォレスト分類に使用される時間。使用時間が長いほど、WTおよび5xFADの違いでPCの価値が高くなる(
図59、パネルD)。VLC-PUFA含有PCは、この分類で使用される上位12時間のうち9回に寄与する(D)。(E)WTおよび5xFAD網膜(上)ならびに眼杯(RPE、下)におけるPC38-6、PC40-6、およびPC44-12の%のバイオリン図。驚いたことに、眼杯PCは、5xFADのPC38:6が多く、PC44-12が少なく、PC40-6がWTと等しいことを示している。(NS:有意ではない、*P<0.05、スチューデントのt検定)。
【
図54】5xFADの網膜病態の初期発生時の脂質メディエーター経路およびELOVL-4の前駆体と中間体における欠損を示している。(A)NPD1の、およびPC54-12およびPC56-12からの32:6n-3および34:6n-3 ELVの生合成経路。(B)遊離の32:6n-3および34:6n-3。(C)27-モノヒドロキシ32:6n-3および29-モノヒドロキシ34:6n-3、それぞれELVN-32およびELVN-34のヒドロペルオキシル前駆体の安定な誘導体。(D)遊離DHA。(E)NPD1。B~Eでは、網膜(上)とRPE(下)(n=6/グループ)。(FおよびH)15 LOX1およびELOVL4ウエスタンブロットならびにRPEおよび網膜での定量化(n=6/グループ)。RPEでは、5xFADの15-リポキシゲナーゼ-1はWTに満たない。網膜では、2つのグループの間に違いはない。これは、5xFADのNPD1プールサイズが小さいことと一致しているが、網膜に変化はない(E)。ELOVL4は、網膜でのみ発現し、5xFADでは低くなる。結果として、遊離の32:6n-3および34:6n-3が少なくなり、モノヒドロキシ安定前駆体誘導体の量も少なくなった。(NS:有意ではない、*P<0.05、スチューデントのt検定)。
【
図55】5xFAD網膜の形態と機能を示している。(A)0~0.075cd・s/m2の光フラッシュに対する最大ERG b波振幅を示すVlogIプロット。5xFADは、約100μVの最大振幅を達成した。これはWTで記録されたものの約半分である(n=6/グループ)。(B)WTとの類似性を示す6か月齢の5xFAD網膜の電子顕微鏡検査。(Bi)ブルッフ膜(Br)に沿った膜の折り畳みを示す5xFAD RPE細胞の基底側。(Bii)接続繊毛(CC)膜(WT)から新しく形成されたディスクを示す杆体外節の基底部分のディスク合成領域(矢印)。(Biii)新しいディスク形成を表示する5xFADの同様の領域(矢印)。(Biv)5xFADの細胞体層(N、光受容体核)の強膜端にある外境界膜(OLM、矢印)。ミュラー細胞(M)の細胞質は、PRCの細胞質よりも明るい。(Bv)5xFAD RPE細胞と杆体PRCチップ(PR)間の界面。RPE細胞質内の2つのファゴソーム(Ph)。下部のPhはRPEの頂端突起内に保持され、上部の暗いPhは古く、RPE細胞体に入るだけであり、正常な食作用機能を示している。(Bvi)5xFADの内節ミトコンドリア(M)は、非常に細長いPRCを保持している。(C)5xFAD網膜内の正常なPRCプロファイルを示す5か月齢のWTおよび5xFAD網膜切片。(D)WTおよび5xFADからの網膜の蛍光染色。青(DAPI)は核、赤は5xFADの6か月齢のRPE層におけるAβである。(*P<0.05、スチューデントのt検定)。
【
図56】WTマウスにOAβを網膜下注射した後、ELVがRPEの形態を回復させ、遺伝子発現を低下させることを示している。(A)インビボ実験計画:6か月齢のC57BL/6J WTマウスを7つのグループ(n=12/グループ)に分けた。非注射、PBS、OAβのみ、OAβ+ELV-N-32、OAβ+ELV-N-34、ELV-N-32のみ、ELV-N-34のみ。3日目に、リアルタイムPCRのためにmRNAを単離した。7日目に、マウスをOCTに供し、次に眼の眼球摘出術を行い、ホールマウントRPE染色およびウエスタンブロットのために処理した。(B)タイトジャンクションマーカーであるZonula occludens-1(ZO-1)抗体を使用したRPEのホールフラットマウント。OAβは、RPEの形態を破壊した。(C)OCTによる、網膜およびRPEに対するOAβの影響。(D)PRC層の厚さは、OAβ注射グループでより薄かった。(E)Oaβ(1-42)注射およびELV処置後のRPE遺伝子発現。(E~G)同じ機能グループの遺伝子発現をプロットした。老化およびAMD関連遺伝子(E)、およびコラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、ストロメライシンおよびその他のマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)(F)およびオートファジー(G)。(H)老化の重要なマーカーであるp16INK4a、RPEのウエスタンブロット。(I)OAβ(1-42)注射およびELVによる処置後の網膜アポトーシス遺伝子発現。(*P<0.05、スチューデントのt検定)。
【
図57】老化関連分泌表現型(β-ガラクトシダーゼ、SA-β-Gal)と初代培養のヒトRPE細胞における遺伝子発現のOA-β媒介活性化が、ELVによって打ち消されることを示している。(A)インビトロ実験計画:初代ヒトRPE細胞を10μMのOAβ+/- ELVで処理した。3日後、RNAを単離し、qPCRで分析した。7日後、細胞をβ-ガラクトシダーゼ染色に供した。(B)7日後の明視野顕微鏡下での生細胞画像。(C)β-Gal染色+/-ELV。-Gal陽性細胞の%の定量化。ELVは、陽性の老化細胞を減少させた。(D)OAβ(1-42)曝露+/- ELV後の老化、AMD関連およびオートファジー遺伝子の遺伝子転写。(*P<0.05、スチューデントのt検定)。
【
図58】OAβ誘発RPEとPRC損傷に対するELVの影響の概要を示している。(A)OAβは、老化プログラムを誘発し、RPEタイトジャンクションを破壊する。理論に拘束されることを望むものではないが、OAβは網膜に浸透し、我々のインビボWTマウス研究においてPRC細胞死を引き起こし、より少ない細胞体層(CBL)核に反映される。ELVは、RPEの形態およびPRC完全性を修復する。(B)OAβは、RPEで老化、オートファジー、マトリックスメタロプロテイナーゼ、AMD関連遺伝子、網膜でアポトーシス遺伝子の発現を誘発する。ELVは、OAβ遺伝子の誘導をダウンレギュレートした。ELV合成の経路が、示されている。
【
図59】網膜およびRPEのすべてのPC種に使用される主成分分析の負荷スコアとランダムフォレスト時間を示している。(A)網膜の主成分1に対するすべてのPCの完全な負荷スコア(絶対値)。負荷スコアが高いほど、網膜を野生型および5xFADと区別するための主成分1へのPCの寄与が大きくなる。(B)野生型および5xFADマウスのすべての網膜PCのランダムフォレスト分類に使用された時間。使用時間が長いほど、野生型と5xFADの違いでPCの価値が高くなる。(C)RPEの主成分1に対するすべてのPCの負荷スコア(絶対値)。負荷スコアが高いほど、RPEを野生型および5xFADと区別するために、主成分1へのPCの寄与が大きくなる。(D)野生型および5xFADマウスのすべてのRPEのPCのランダムフォレスト分類に使用された時間。使用時間が長いほど、野生型と5xFADの違いでPCの価値が高くなる。
【
図60】PCの脂肪酸組成が完全なフラグメンテーションによって得られることを示している。負イオンモードは、LC/MS/MSデータ取得に使用された。VLC-PUFA含有PCが描かれている。(A)PC54:12(m/z 1076(M+CH3COO-)は、ポジティブモードのm/z 1018(M+H+)に対応する)は、FA32:6(m/z 467)およびFA22:6(m/z 327)で構成されている。(B)PC56:12(m/z 1104(M+CH3COO-)は、ポジティブモードのm/z 1046(M+H+)に対応する)は、FA34:6(m/z 495)およびFA22:6(m/z 327)で構成されている。(C)PC58:12(m/z 1132(M+CH3COO-)は、ポジティブモードのm/z 1074(M+H+)に対応する)は、FA36:6(m/z 523)およびFA22:6(m/z 327)で構成されている。DHA含有PCは、2列目にある。(D)PC38:6(m/z 864(M+CH3COO-)は、ポジティブモードのm/z 806(M+H+)に対応する)は、FA16:0(m/z 255)およびFA22:6(m/z 327)で構成されている。(E)PC40:6(m/z 892(M+CH3COO-)は、ポジティブモードのm/z 834(M+H+)に対応する)は、FA18:0(m/z 283)およびFA22:6(m/z 327.0)で構成されている。(F)PC44:12(m/z 936(M+CH3COO-)は、ポジティブモードのm/z 878(M+H+)に対応する)は、2つのFA22:6s(m/z 327.0)で構成されている。AA含有PCは3列目にある。(G)PC36:4(m/z 840(M+CH3COO-)は、ポジティブモードのm/z 782(M+H+)に対応する)は、FA16:0(m/z 255)およびFA20:4(m/z 303)で構成されている。(H)PC38:4(m/z 868(M+CH3COO-)は、ポジティブモードのm/z 810(M+H+)に対応する)は、FA18:0(m/z 283)およびFA20:4(m/z 303)で構成されている。(I)PC38:5(m/z 866(M+CH3COO-)は、ポジティブモードのm/z 808(M+H+)に対応する)は、FA18:1(m/z 281)およびFA20:4(m/z 303)で構成されている。このピークもPC38:6同位体からのものである(2個の炭素は天然でC13標識されている)。これにより、FA16:0(m/z 255)とFA22:6(2個の炭素がC13の場合はm/z 329)、またはFA16:0(1個の炭素がC13の場合はm/z 256)およびFA22:6(m/1個の炭素がC13の場合はz328)が生成される。
【
図61】ELVおよび前駆体分子およびNPD1の完全なフラグメンテーションスペクトルを示している。(A)エロバノイド前駆体である遊離脂肪酸FA32:6n-3およびFA34:6-n-3の完全なフラグメンテーションスペクトルは、分子構造とフラグメンテーションパターンを示している。(B)エロバノイドの安定した前駆体である内因性27-モノヒドロキシ32:6および29-モノヒドロキシ34:6は、構造に示されている理論的なフラグメンテーションパターンとよく一致している。(C)エロバノイド、ELV32およびELV34の完全なフラグメンテーション。標準は、構造とフラグメンテーションパターンに示されているすべてのピークを示している。(D)NPD1フラグメンテーションスペクトルは理論値で表される。
【
図62】眼底とOCT分析を示している。(A)野生型(WT)および5xFADマウスの眼底および光コヒーレンストモグラフィー(OCT)画像。マウスは約6か月齢である。(B)光受容体層の厚さの分析。WTと5xFADの間に違いはない。
【
図63】炎症シグナルが5xFADによって活性化されることを示している。(A)WTおよび5xFADにおけるRPEのAMD関連遺伝子の相対的な正規化された発現。WTおよび5xFAD(6か月齢)の眼杯/脈絡膜からのRNAを単離し、cDNAに逆転写し、AMD関連遺伝子を用いるRT-PCRに供した。簡単に言えば、5xFADにおいてAMDに関連するさまざまな遺伝子の活性化が存在する。(B)網膜における炎症性遺伝子の相対的な正規化された発現。WTおよび5xFAD(6か月齢)の網膜からのRNAを単離し、cDNAに逆転写し、さまざまな炎症性遺伝子を用いるRT-PCRに供した。簡単に言えば、5xFADにおいて炎症シグナル伝達の活性化が存在する。
【
図64】オリゴマーAβのウエスタンブロットを示している。オリゴマー化の24時間後、2μlのAβストックを変性せずにトリシンゲルにロードした。
【
図65】小胞体ストレス応答(UPR)遺伝子を示している。3日間の注射後、RPEと網膜からのRNAを単離し、cDNAに逆転写し、UPRプライマーを用いるRT-PCRに供した。これらの遺伝子のRPE(A)と網膜(B)の両方に変化はなかった。
【
図67-1】
図67は、本明細書で利用される遺伝子プライマー配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0082】
開示の詳細な説明
本開示がより詳細に説明される前に、この開示は、説明された特定の実施形態に限定されず、したがって、もちろん、変化することができる。本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではない。
【0083】
値の範囲が提供される場合、それぞれの介在する値は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限と下限と、その規定された範囲内の他の記載または介在する値との間で、本開示に包含される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、独立してより小さな範囲に含めることができ、また、記載された範囲で特に除外された制限を条件として、本開示に包含される。記載された範囲が制限の一方または両方を含むことができる場合、それらのいずれかまたは両方を除外する範囲は、制限を含めることができ、開示に含めることもできる。
【0084】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と同様または同等の任意の方法および材料が本開示の実施またはテストに使用され得るが、有利な方法および材料がこれから記載されている。
【0085】
本明細書で引用されるすべての刊行物および特許は、各個別の刊行物または特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示され、刊行物が引用されることに関連する方法および/または資料を開示および説明するために参照により本明細書に組み込まれるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。出版物の引用は、出願日の前の開示のためであり、本開示が事前の開示のためにそのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行日は、個別に確認する必要がある実際の刊行日とは異なる場合がある。
【0086】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に記載および図示された個々の実施形態のそれぞれは、本開示の範囲または精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離または組み合わせることができる別個の構成要素および特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙されたイベントの順序で、または論理的に可能な他の任意の順序で実行することができる。
【0087】
本開示の実施形態は、他に示されない限り、当技術分野の技術の範囲内である医学、有機化学、生化学、分子生物学、薬理学、毒物学などの技術を使用する。そのような技術は、文献で完全に説明されている。
【0088】
明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数の指示対象を含むことができることに留意されたい。したがって、例えば、「1つの支持体」への言及は、複数の支持体を含むことができる。本明細書および以下の特許請求の範囲では、反対の意図が明らかでない限り、以下の意味を有することができるいくつかの用語が参照される。
【0089】
本明細書で使用される場合、以下の用語は、特に明記しない限り、それらに帰する意味を有する。本開示において、「含む」、「含むこと」、「含有すること」および「有すること」などは、米国特許法においてそれらに帰する意味を有することができ、「含むことができる」、「含む」などを意味することができる。本開示に含まれる方法および組成物に適用される場合、「本質的にからなる」または「本質的になる」などは、本明細書に開示されるもののような組成物を指すことができるが、追加の構造基、組成物成分または方法ステップ(または本明細書で論じられるようなその類似体または誘導体)を含むことができる。しかしながら、そのような追加の構造基、組成物成分または方法ステップなどは、本明細書に開示される対応する組成物または方法の特性と比較して、組成物または方法の特性に実質的に影響を及ぼさない。
【0090】
「例えば」、「など」、「含む」などの句のいずれかが本明細書で使用される場合は常に、他に明確に記載されない限り、「限定することなく」という句が付随することが理解される。同様に、「一例」、「例示的」などは、非限定的であると理解される。
【0091】
「実質的に」という用語は、意図した目的に悪影響を与えない記述語からの逸脱を可能にする。記述用語は、「実質的に」という語が明確に列挙されていなくても、「実質的に」という用語によって修飾されることが理解される。
【0092】
本明細書で使用される「約」という用語は、おおよそ、大まかに、およそ、またはその領域内を指すことができる。「約」という用語が数値範囲とともに使用される場合、それは、記載された数値の上および下の境界を拡張することによってその範囲を変更する。一般に、「約」という用語は、本明細書では、20パーセント上または下の(高い、または低い)分散によって記載された値を上回る、および下回る数値を修飾するために使用される。
【0093】
さまざまな実施形態を説明する前に、以下の例示的な説明が提供される。
【0094】
本明細書で使用される場合、化学技術の当業者によって理解されるように、命名法のアルキル、アルコキシ、カルボニルなどが使用される。本明細書で使用されるように、アルキル基は、最大約20個の炭素、または1~16個の炭素を含む直鎖、分岐および環状アルキルラジカルを含むことができ、直鎖状または分岐状である。本明細書のアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチルおよびイソヘキシルが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0095】
本明細書で使用される場合、低級アルキルは、約1個または約2個の炭素~最大約6個の炭素を有する炭素鎖を指すことができる。適切なアルキル基は、飽和または不飽和であり得る。さらに、アルキルはまた、C1-C15アルキル、アリル、アレニル、アルケニル、C3-C7複素環、アリール、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、オキソ、チオ、アルコキシ、ホルミル、カルボキシ、カルボキサミド、ホスホリル、ホスホネート、ホスホナミド、スルホニル、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、およびスルホンアミドからなる群から選択される置換基で、1個以上の炭素上で1回以上置換することができる。さらに、アルキル基は、最大10個のヘテロ原子、特定の実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8または9個のヘテロ原子置換基を含むことができる。適切なヘテロ原子には、窒素、酸素、硫黄、およびリンが含まれ得る。
【0096】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」は、3~10個の炭素原子の特定の実施形態では、3~6個の炭素原子の他の実施形態では、単環式または多環式環系を指すことができる。シクロアルキル基の環系は、縮合、架橋、またはスピロ結合の様式で一緒に結合することができる1つの環または2つ以上の環から構成することができる。
【0097】
本明細書で使用される場合、「アリール」は、3~16個の炭素原子を含む芳香族単環式または多環式基を指すことができる。本明細書で使用されるように、アリール基は、最大10個のヘテロ原子、特定の実施形態では、1、2、3または4個のヘテロ原子を含むことができるアリールラジカルである。アリール基はまた、1回以上、特定の実施形態では、1~3または4回、アリール基または低級アルキル基で置換されてよく、それはまた、他のアリールまたはシクロアルキル環に縮合され得る。適切なアリール基には、例えば、フェニル、ナフチル、トリル、イミダゾリル、ピリジル、ピロイル、チエニル、ピリミジル、チアゾリルおよびフリル基が含まれ得る。
【0098】
この明細書で使用されるように、環は、1つ以上の窒素、酸素、硫黄またはリン原子を含むことができる最大20個の原子を有することができ、ただし、環が、水素、アルキル、アリル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、クロロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、カルボキサミド、シアノ、オキソ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、アシルチオ、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、ホスホリル、ホスホネート、ホスホナミド、およびスルホニルからなる群から選択される1つ以上の置換基を有することができ、さらに、環が、炭素環式、複素環式、アリールまたはヘテロアリール環を含む1つ以上の縮合環を含むことができることを条件とする。
【0099】
本明細書で使用される場合、アルケニルおよびアルキニル炭素鎖は、指定されていない場合、2~20個の炭素または2~16個の炭素を含み、直鎖状または分岐状である。特定の実施形態では、2~20個の炭素のアルキル炭素鎖は、1~8つの二重結合を含み、特定の実施形態では、2~16個の炭素のアルケニル炭素鎖は、1~5つの二重結合を含む。特定の実施形態では、2~20個の炭素のアルキニル炭素鎖は、1~8個の三重結合を含み、特定の実施形態では、2~16個の炭素のアルキニル炭素鎖は、1~5つの三重結合を含む。
【0100】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」は、特定の実施形態では、環系中の原子の1個以上の、一実施形態では1~3個がヘテロ原子、つまり、窒素、酸素、硫黄を含むがこれらに限定されない炭素以外の元素である約5~約15員の単環式または多環式芳香族環系を指すことができる。ヘテロアリール基は、ベンゼン環に縮合させることができる。ヘテロアリール基には、フリル、イミダゾリル、ピロリジニル、ピリミジニル、テトラゾリル、チエニル、ピリジル、ピロリル、N-メチルピロリル、キノリニルおよびイソキノリニルが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0101】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル」は、3~10員一実施形態では、4~7員の別の実施形態では、5~6員のさらなる実施形態では、1つ以上の、特定の実施形態では、環系の原子の1~3個がヘテロ原子、すなわち、窒素、酸素または硫黄を含むがこれらに限定されない炭素以外の元素である、単環式または多環式の非芳香族環系を指すことができる。ヘテロ原子が窒素である実施形態では、窒素は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリルアルキル、アシル、グアニジノで置換されるか、または四級化されて、置換基が本明細書に記載されるように選択されるアンモニウム基を形成することができる。
【0102】
本明細書で使用される場合、「アラルキル」は、アルキルの水素原子の1つがアリール基で置換されているアルキル基を指すことができる。
【0103】
本明細書で使用される場合、「ハロ」、「ハロゲン」または「ハロゲン化物」は、F、Cl、BrまたはIを指すことができる。
【0104】
本明細書で使用される場合、「ハロアルキル」は、1つ以上の水素原子がハロゲンで置換されているアルキル基を指すことができる。そのような基には、クロロメチルおよびトリフルオロメチルが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0105】
本明細書で使用される場合、「アリールオキシ」は、Rがアリールであり、フェニルなどの低級アリールを含む、RO-を指すことができる。
【0106】
本明細書で使用される場合、「アシル」は、例えば、アルキルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、アリールカルボニル、またはヘテロアリールカルボニルを含む-COR基を指すことができ、これらはすべて置換することができる。
【0107】
本明細書で使用される場合、「n-3」または「n-3」、「n-6」または「n6」などは、多価不飽和脂肪酸またはそれらの誘導体の通常の命名法を指すことができ、二重結合(C=C)の位置は、脂肪酸または脂肪酸誘導体の炭素鎖の末端(メチル末端)から数えて炭素原子にある。例えば、「n-3」は、脂肪酸または脂肪酸誘導体の炭素鎖の末端から3番目の炭素原子を意味する。同様に、「n-3」または「n-3」、「n-6」または「n6」などもまた、の炭素原子に位置するヒドロキシル基(OH)などの置換基の位置を指すことができる。脂肪酸または脂肪酸誘導体。その数(例えば、3、6など)は、脂肪酸または脂肪酸誘導体の炭素鎖の末端から数えられる。
【0108】
本明細書で使用される場合、保護基および他の化合物の略語は、他に示されない限り、それらの一般的な使用法、認識された略語、またはIUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature((1972)Biochem.11:942-944)を参照)に一致する。
【0109】
本明細書で使用される場合、本開示の化合物の化学構造において、末端カルボキシル基「-COOR」を有することが示され、「R」は、アルキル基などのカルボキシルに共有結合した基を表すことができる。あるいは、カルボキシル基はさらに「-COO-」として負電荷を有することができ、Rは金属カチオン、アンモニウムカチオンなどを含むカチオンである。
【0110】
「対象」または「患者」という用語は、本発明の態様を、例えば、実験的、診断的、予防的、および/または治療的目的で投与することができる任意の生物を指すことができる。「対象」という用語は、哺乳動物、例えば、病態に苦しむあらゆる年齢のヒトを含むことができる。別の実施形態では、この用語は、病態を発症するリスクのある対象を包含する。本開示の化合物を投与することができる対象は、動物、例えば霊長類などの哺乳動物、特にヒトである。獣医用途には、例えば、ウシ(cattle)、ヒツジ、ヤギ、ウシ(cow)、ブタなどのような家畜、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウなどのような家禽、ならびに飼育動物、例えばイヌおよびネコのようなペットなどの、多種多様な対象が適しているであろう。診断または研究用途には、齧歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、霊長類、および近交系ブタなどのブタなどを含む、多種多様な哺乳動物が適切な対象であろう。「生体対象」という用語は、上記の対象または生きている別の生物を指すことができる。「生体対象」という用語は、生体対象から切除された部分(例えば、肝臓または他の臓器)だけではなく、対象または生物全体を指すことができる。
【0111】
「状態に罹患している対象」または「状態を有する対象」は、既存の状態を有する対象、または状態を発症する傾向が知られているもしくは疑われる素因を指すことができる。実施形態では、状態は、アレルギー性炎症性疾患などの炎症性疾患であり得る。別の実施形態では、状態は、加齢性黄斑変性症またはアルツハイマー病を含む、Aβに関連する疾患などの、細胞老化、フェロトーシス、またはその両方に関連する疾患であり得る。さらに別の実施形態として、疾患は、糖尿病、肥満、またはその両方などの代謝障害であり得る。
【0112】
一例として、「アレルギー状態を有する対象」は、既存のアレルギー状態、またはアレルギー状態を発症する可能性が知られているもしくは疑われる素因を指すことができる。したがって、対象は、活動性アレルギー状態または潜在性アレルギー状態を有する可能性がある。アレルゲンが公知である必要はない。ただし、特定のアレルギー状態は、季節的または地理的な環境要因に関連しており、対象者には明らかである必要はないが、可能である。一実施形態では、アレルギー状態は、実験的目的で対象に意図的に誘発される。
【0113】
本明細書で使用される場合、化合物の「薬学的に許容され得る誘導体」には、それらの塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、アセタール、ケタール、オルトエステル、ヘミアセタール、ヘミケタール、酸、塩基、溶媒和物、水和物またはプロドラッグが含まれ得る。そのような誘導体は、そのような誘導体化のための既知の方法を使用して、当業者によって容易に調製することができる。生成された化合物は、実質的な毒性作用なしに動物またはヒトに投与することができ、薬学的に活性であるか、またはプロドラッグである。
【0114】
薬学的に許容され得る塩には、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、アンモニア、ジエタノールアミンおよび他のヒドロキシアルキルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、1-パラ-クロロベンジル-2-ピロリジン-1’-イルメチルベンズイミダゾール、ジエチルアミンおよび他のアルキルアミン、ピペラジンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどであるが、これらに限定されないアミン塩;リチウム、カリウム、ナトリウムなどなどであるが、これらに限定されないアルカリ金属塩;バリウム、カルシウムおよびマグネシウムなどであるが、これらに限定されないアルカリ土類金属塩;亜鉛などなどであるが、これらに限定されない遷移金属塩;およびリン酸水素ナトリウムおよびリン酸二ナトリウムなどであるが、これらに限定されない他の金属塩;また、塩酸塩および硫酸塩などであるが、これらに限定されない鉱酸の塩;酢酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、酪酸塩、吉草酸塩およびフマル酸塩などであるが、これらに限定されない有機酸の塩が含まれ得る。
【0115】
薬学的に許容され得るエステルには、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキルならびにカルボン酸、リン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルフィン酸およびボロン酸を含むがこれらに限定されない酸性基のヘテロシクリルエステルが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0116】
薬学的に許容され得るエノールエーテルには、式C=C(OR)の誘導体が含まれ得るが、これらに限定されない。式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクリルである。薬学的に許容され得るエノールエステルには、式C=C(OC(O)R)の誘導体が含まれ得るが、これらに限定されない。式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキルまたはヘテロシクリルである。
【0117】
薬学的に許容され得る溶媒和物および水和物は、1つ以上の溶媒または水分子、または1~約100、または1~約10、または1~約2、3または4の溶媒または水分子との化合物の複合体である。
【0118】
本明細書で使用される「製剤」は、製品仕様および/または使用条件を含む、特定の最終用途に最適な特性を提供するために選択された化合物、混合物、または溶液の成分の任意のコレクションを指すことができる。製剤という用語は、液体、半液体、コロイド溶液、分散液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、ならびに水中油型エマルジョンおよび油中水型エマルジョンを含むナノエマルジョン、ペースト、粉末、ならびに懸濁液を含むことができる。本発明の製剤はまた、化粧品担体、賦形剤、結合剤および充填剤などの他の非毒性化合物とともに含まれ得るか、または包装され得る。具体的には、本発明の実施に使用するための許容可能な化粧品担体、賦形剤、結合剤、および充填剤は、化合物を経口送達に適合させ、および/または本発明の製剤が商業的に許容され得る貯蔵寿命を示すように安定性を提供するものである。
【0119】
本明細書で使用される場合、「投与する」という用語は、VLC-PUFAなどの物質を対象に導入することを指すことができる。例えば、鼻腔内、局所、経口、非経口、硝子体内、眼内、眼、網膜下、髄腔内、静脈内、皮下、経皮、皮内、頭蓋内などの投与を含む任意の投与経路を利用することができる。実施形態では、「投与すること」はまた、治療有効量の製剤または医薬組成物を対象に提供することを指すことができる。本発明の製剤または医薬化合物は、単独で投与することができるが、選択された投与経路および標準的な医薬慣行に基づいて選択される他の化合物、賦形剤、充填剤、結合剤、担体または他のビヒクルとともに投与することができる。投与は、滅菌水溶液もしくは非水溶液を含む注射可能な溶液、または生理食塩水;クリーム;ローション;カプセル;錠剤;顆粒;ペレット;粉末;懸濁液、エマルジョン、もしくはマイクロエマルジョン;パッチ;ミセル;リポソーム;小胞;マイクロインプラントを含むインプラント;点眼薬;他のタンパク質およびペプチド;合成ポリマー;ミクロスフェア;ナノ粒子;などの担体またはビヒクルを介して行うことができる。
【0120】
製剤または医薬組成物はまた、グルコース、ラクトース、アカシアガム、ゼラチン、マンニトール、キサンタンガム、イナゴマメガム、ガラクトース、オリゴ糖および/または多糖、デンプンペースト、三ケイ酸マグネシウム、タルク、コーンスターチ、スターチフラグメント、ケラチン、コロイド状シリカ、ジャガイモデンプン、尿素、デキストランス、デキストリンなどを含むがこれらに限定されない、薬学的に許容され得る担体、賦形剤、結合剤および充填剤などの他の非毒性化合物を含むか、または包装することができる。具体的には、本発明の実施に使用するための薬学的に許容され得る担体、賦形剤、結合剤、および充填剤は、本発明の化合物を鼻腔内送達、経口送達、非経口送達、硝子体内送達、眼内送達、眼送達、網膜下送達、髄腔内送達、静脈内送達、皮下送達、経皮送達、皮内送達、頭蓋内送達、局所送達などに適合させるものである。さらに、包装材料は、プラスチックポリマーまたはシリコーンなど、生物学的に不活性であるか、または生物活性を欠くことができ、包装および/または一緒に送達される組成物/製剤の有効性に影響を与えることなく、対象によって内部で処理することができる。
【0121】
本発明の製剤の異なる形態は、異なる個体および単一の個体の異なるニーズの両方に適応するために修正することができる。しかし、現在の製剤が、すべての個体のすべての原因に対抗する必要はない。むしろ、必要な原因に対抗することにより、現在の製剤が、体と脳を通常の機能に修復する。その後、体と脳自体が、残りの欠陥を直す。
【0122】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、治療されている疾患または状態の1つ以上の症状をある程度緩和する、および/または治療対象が発症する、または発症するリスクのある状態または疾患の1つ以上の症状をある程度予防する、投与される組成物または医薬組成物の実施形態のその量を指すことができる。本明細書で交換可能に使用される場合、「対象」、「個体」、または「患者」は、脊椎動物、例えば、ヒトなどの哺乳動物を指すことができる。哺乳動物には、ネズミ、サル、ヒト、家畜、スポーツ動物、およびペットが含まれるが、これらに限定されない。「ペット」という用語は、イヌ、ネコ、モルモット、マウス、ラット、ウサギ、フェレットなどを含むことができる。家畜という用語は、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ブタ、ウシ、ロバ、ラマ、アルパカ、シチメンチョウなどを含むことができる。
【0123】
「薬学的に許容され得る賦形剤」、「薬学的に許容され得る希釈剤」、「薬学的に許容され得る担体」、または「薬学的に許容され得るアジュバント」は、安全であり、非毒性であり、生物学的にも望ましくないものでもない医薬組成物を調製するのに有用な賦形剤、希釈剤、担体、および/またはアジュバントを指すことができ、獣医用および/またはヒト用医薬品の使用に許容され得る賦形剤、希釈剤、担体、およびアジュバントを含むことができる。本明細書で使用される「薬学的に許容され得る賦形剤、希釈剤、担体および/またはアジュバント」は、1つ以上のそのような賦形剤、希釈剤、担体、およびアジュバントを含むことができる。
【0124】
「医薬組成物」または「製剤」という句は、哺乳動物、特にヒトなどの対象への投与に適した組成物または医薬組成物を指すことができ、かつ活性剤、または、薬学的に許容され得る担体または賦形剤を含む成分の組み合わせを指すことができ、組成物を、インビトロ、インビボ、またはエクスビボでの診断的、治療的、または予防的使用に適したものにする。「医薬組成物」において、組成物が無菌であり、対象内で望ましくない応答を誘発する可能性のある汚染物質がないことを指すことができる(例えば、医薬組成物中の化合物は、医薬グレードである)。医薬組成物は、経口、鼻腔内、局所、静脈内、頬側、直腸、非経口、腹腔内、皮内、気管内、筋肉内、皮下を含む多くの異なる投与経路を介して、ステント溶出装置、カテーテル溶出装置、血管内バルーン、吸入などによって、それを必要とする対象または患者に投与するように設計することができる。
【0125】
実施形態では、医薬組成物は、治療有効量のエロバノイドおよび治療有効量の1つ以上の追加の活性剤(例えば、1つ以上の抗酸化剤、抗アレルギー剤、抗炎症性剤、または鎮痛剤)を含むことができる。例えば、1つ以上の抗酸化剤は、合成抗酸化剤、天然抗酸化剤、またはそれらの組み合わせであり得る。実施形態では、抗酸化剤は、エロバノイドの二重結合を保護することができる。
【0126】
「投与」という用語は、本開示の組成物を対象に導入することを指すことができる。組成物の有利な投与経路は、局所投与、経口投与、または鼻腔内投与である。しかしながら、静脈内、皮下、腹膜、動脈内、吸入、膣、直腸、脳脊髄液への導入、静脈または動脈のいずれかの血管内、または体の区画への点滴注入などの任意の投与経路を使用することができる。
【0127】
本明細書で使用される場合、「治療」および「治療すること」は、状態、疾患または障害と闘う目的で、疾患または障害の症状のうちの1つ以上が改善されたか、または他の方法で有益に変化する任意の方法で、対象者の管理およびケアを指すことができる。この用語は、症状または合併症を軽減または緩和する;状態、疾患または障害の進行を遅らせる;状態、疾患または障害を治癒または排除する;および/または状態、疾患または障害を予防する目的での活性化合物の投与など、患者が苦しんでいる所与の状態に対する治療の全範囲を含むことができる。「予防すること」または「予防」は、状態、疾患または障害の発症を妨げることを目的とした患者の管理およびケアを指し、症状または合併症の発症のリスクを予防または低減するための活性化合物の投与を含むことができる。当業者は、病理の発達を評価するためにさまざまな方法論およびアッセイを使用できることを理解し、同様に、病態、ドライブウェイ、または退行を低減するためにさまざまな方法論およびアッセイを使用することができる。
【0128】
本明細書で使用される場合、「予防する」という用語は、疾患のリスクがあるかもしれないが、まだ疾患を有すると診断されていない対象において、疾患、障害、または状態が発生するのを防ぐことを指すことができる。予防(および予防するための有効用量)は、人口調査で実証することができる。例えば、所与の疾患または状態を予防するのに有効な量は、未治療の対照集団と比較して、治療された集団における発生率を低減するのに有効な量である。
【0129】
「の症状を緩和する」という句は、アレルギー性炎症性疾患に関連する状態または症状を寛解、低減、または排除することを指すことができる。例えば、アレルギー性炎症状態の症状には、口のうずきまたはかゆみ、蕁麻疹、かゆみ、または湿疹;唇、顔、舌、喉、または体の他の部分の腫れ;喘鳴の鼻づまり、または呼吸困難;腹痛、下痢、吐き気または嘔吐;めまい、立ちくらみ、または失神などがある。
【0130】
治療される患者は、ヒトなどの哺乳動物であり得る。治療はまた、本明細書で提供されるような疾患を治療するための使用など、本明細書での組成物の任意の医薬使用を包含する。
【0131】
実施形態では、組成物は、1つ以上の「栄養成分」をさらに含むことができる。本明細書で使用される「栄養成分」という用語は、タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、および本開示の機能性成分、すなわち、食品を消費する人に特定の利点を生み出すことができる成分を含む他の有益な栄養素などを指すことができる。炭水化物は、グルコース、スクロース、フルクトース、デキストロース、タガトース、ラクトース、マルトース、ガラクトース、キシロース、キシリトール、デキストロース、ポリデキストロース、シクロデキストリン、トレハロース、ラフィノース、スタキオース、フルクトオリゴ糖、マルトデキストリン、デンプン、ペクチン、ガム、カラゲナン、イヌリン、セルロースベースの化合物、糖アルコール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトール、イソマルト、エリスリトール、ペクチン、ガム、カラゲナン、イヌリン、水素化難消化性デキストリン、水素化デンプン加水分解物、高度に分岐したマルトデキストリン、デンプンおよびセルロースであり得るが、これらに限定されない。
【0132】
栄養タンパク質、炭水化物などの市販の供給源およびそれらの仕様は、加工食品配合の当業者によって知られているか、または容易に確認することができる。
【0133】
栄養成分を含むことができる本明細書に記載の組成物は、「スナックサイズ」または「一口サイズ」の組成物であり得るが、これらに限定されない、通常はフードバーであると考えられるものよりも小さい食品調製物であり得る。例えば、フードバーは、消費者が食べるために小さな部分を分割できるように刻み目を付けるかまたは穴を開けることができる。または、フード「バー」は、長い棒状の製品ではなく、小さな断片にすることができる。小さな部分は、個別にコーティングまたはエンローブすることができる。それらは、個別にまたはグループでパッケージ化できる。
【0134】
食品は、限定されないが、均一な塊に粉砕されていない固形物を含むことができる。食品は、ダーク、ライト、ミルクまたはホワイトチョコレート、イナゴマメ、ヨーグルト、その他の菓子、ナッツまたは穀物を含むチョコレートなどでコーティングまたはエンローブすることができるが、これらに限定されない。コーティングは、配合菓子コーティングまたは非菓子(例えば、無糖)コーティングであり得る。コーティングは、滑らかにすることも、固体の粒子または断片を含めることもできる。
【0135】
アレルギーとは、免疫系がアレルゲンと呼ばれる異物に反応することである。例えば、アレルゲンは、食べられたり、肺に吸い込まれたり、対象に注射されたり、触れたりすることができる。このアレルギー反応は、咳、くしゃみ、目のかゆみ、鼻水、喉のかゆみを引き起こす可能性がある。重症の場合、発疹、蕁麻疹、低血圧、呼吸困難、喘息発作、さらには死を引き起こす可能性がある。アレルギーは、国内で最も一般的な疾患の1つであるが、治療法はない。
【0136】
アレルギー反応は、ブロムフェニラミン(ジメタン)、セチリジン(ジルテック)、クロルフェニラミン(クロルトリメトン)、クレマスチン(タビスト)、ジフェンヒドラミン(ベナドリル)、フェキソフェナジン(アレグラ)などの抗アレルギー薬を使用して治療される。このような抗アレルギー薬の多くは、眠気、めまい、口渇/鼻/喉の乾燥、頭痛、胃のむかつき、便秘、睡眠障害などの望ましくない副作用を伴う。VLC-PUFAを含む本明細書で提供される医薬組成物は、そのような望ましくない副作用を引き起こさず、したがって、既知の抗アレルギー薬よりも改善されている。
【0137】
本発明の態様は、アレルギー性炎症性疾患の症状を緩和する、該疾患を予防する、または治療するための組成物および方法に向けられている。本明細書に含まれる実施例を参照すると、細胞毒性アッセイ(LDH)の結果は、鼻上皮細胞の培養物にストレッサーを添加すると、細胞毒性を示す赤いホルマザンの形成が顕著に増加することを示しており、これは、ELVの添加によって減少する。(
図17Aおよび
図17B)。さらに、PrestoBlue HS試薬を使用した細胞生存率アッセイでは、さまざまなストレッサーによるチャレンジを受けた細胞と比較して、対照細胞でのレゾルフィン産生が多いこと、およびELVの添加により細胞生存率が向上し、HNEpCに保護が与えられることも示される(
図18Aおよび
図18B)。さらに、HNEpCが、さまざまなストレッサーによるチャレンジを受けた場合、対照と比較して炎症誘発性サイトカインとケモカインの顕著な産生と、抗炎症性サイトカインの放出の顕著な減少が見られる。炎症誘発性サイトカインおよびケモカインのこの増加した産生は、それぞれのストレッサーでのチャレンジの30分後に500nMの濃度でELVを添加することによって抑止され(
図19Aおよび
図19B)、一方、抗炎症性サイトカインおよびケモカインの産生の減少は、逆転する(
図26Aおよび
図26B)。
【0138】
本発明の態様はまた、細胞老化、フェロトーシス、またはその両方に関連する疾患の症状を緩和する、該疾患を予防する、または治療するための組成物および方法に向けられている。例えば、この疾患は、Aβに関連する疾患である。そのような疾患の非限定的な例には、加齢性黄斑変性症またはアルツハイマー病が含まれる。
【0139】
本発明の態様は、代謝障害の症状を緩和する、該障害を予防する、または治療するための組成物および方法にさらに向けられている。代謝障害の非限定的な例には、糖尿病および肥満が含まれる。
【0140】
本開示は、疾患の症状の緩和、該疾患の予防、および治療のための化合物、組成物、および方法の実施形態を包含する。
【0141】
これは、特定の超長鎖多価不飽和脂肪酸(VLC-PUFA)およびそれらに関連するヒドロキシル化誘導体の驚くべき生物学的活性に関する本明細書に記載の新しい発見に基づいている。例えば、そのような生物学的活性には、とりわけ、特定のVLC-PUFAの抗炎症性作用が含まれる。
【0142】
長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)は、アラキドン酸(ARA、C20:4n6、すなわち20個の炭素、4個の二重結合、オメガ-6)、エイコサペンタエン酸(EPA、C20:5n-3、20個の炭素、5個の二重結合、オメガ-3)、ドコサペンタエン酸(DPA、C22:5n-3、22個の炭素、5個の二重結合、オメガ-3)、およびドコサヘキサエン酸(DHA、C22:6n-3、22個の炭素、6個の二重結合、オメガ-3)を含む、18~22個の炭素を含むオメガ-3(n-3)およびオメガ-6(n6)多価不飽和脂肪酸を含むことができる。LC-PUFAは、リポキシゲナーゼ型酵素を介して、炎症および関連する状態で重要な役割を果たす生物学的に活性な脂質メディエーターとして機能する生物学的に活性なヒドロキシル化PUFA誘導体に変換される。これらの中で最も重要なのは、リポキシゲナーゼ(LOまたはLOX)酵素(例えば15-LO、12-LO)の作用を介して特定の炎症関連細胞で生成されるヒドロキシル化誘導体であり、とりわけ、抗炎症性作用、炎症収束作用、神経保護作用、または組織保護作用を含む強力な作用を有するモノ、ジ、またはトリヒドロキシル化PUFA誘導体の形成をもたらす。例えば、15-リポキシゲナーゼ(15-LO)の酵素作用を介して細胞内で形成されたDHAからのジヒドロキシ誘導体であるニューロプロテクチンD1(NPD1)は、定義されたR/SおよびZ/E立体化学構造(10R,17S-ジヒドロキシ-ドコサ-4Z,7Z,11E,13E,15Z,19Z-ヘキサエン酸)ならびに立体選択的な強力な抗炎症性、恒常性回復、炎症収束、生物活性を含むことができるユニークな生物学的プロファイルを有することが示された。NPD1は、神経炎症性シグナル伝達およびタンパク質恒常性を調節し、神経再生、ニューロプロテクチン、および細胞生存を促進することが示されている。
【0143】
他の重要なタイプの脂肪酸は、n-3およびn6 LC-PUFAを、24~42個の炭素(C24-C42)のn-3およびn6 VLC-PUFAに伸長するエロンガーゼ酵素を含む細胞で生成されるn-3およびn6超長鎖多価不飽和脂肪酸(n-3 VLC-PUFA、n6 VLC-PUFA)である。これらの中で最も重要なのは、28~38個の炭素のVLC-PUFA(C28-C38)のようである。VLC-PUFAの代表的なタイプには、C32:6n-3(32個の炭素、6つの二重結合、オメガ-3)、C34:6n-3、C32:5n-3、およびC34:5n-3が含まれる。これらのVLC-PUFAは、ELOVL4(ELOngation of Very Long chain fatty acids 4)などのエロンガーゼ酵素の作用によって生合成的に誘導される。VLC-PUFAは、スフィンゴ脂質およびホスファチジルコリンの特定の分子種などのリン脂質を含む複雑な脂質でもアシル化される。
【0144】
ELOVL4の生合成の役割とVLC-PUFAの生物学的機能は、最近の多くの調査の対象となっている。例えば、PCT/US2016/017112、PCT/US2018/023082、およびUS16/576,456を参照のこと。これらのそれぞれは、参照によりそれらの全体が本明細書に含まれ得る。これらのVLC-PUFAディスプレイは、膜組織化で機能し、健康への重要性がますます認識されている。
【0145】
本開示の実施形態に含まれる化合物、組成物および方法は、疾患の症状を緩和する、該疾患を予防する、または治療するためのn-3 VLC-PUFAの使用を含む。
【0146】
n-3 VLC-PUFAの生合成経路:
n-3 VLC-PUFAの生合成は、22個の炭素および6つの交互のC=C結合(C22:6n-3)を含むドコサヘキサエン酸(DHA)、ならびに22個の炭素および5つの交互のC=C結合(C22:5n-3)を含むドコサペンタエン酸(DPA)など、炭素鎖に偶数個の炭素のみを含む低炭素PUFAから始まる。n-3 VLC-PUFAの生合成には、基質としてのDHAまたは他の短鎖PUFAの利用可能性、および特定のエロンガーゼ酵素、例えばELOVL4の存在と作用が必要である。
図1および2に要約されているように、これらの22-炭素オメガ-3長鎖脂肪酸(n-3 LC-PUFA)は、ELOVL4などのエロンガーゼ酵素の基質であり、これは、一度に2-炭素CH
2CH
2基をカルボキシル末端に付加し、少なくとも24個の炭素から最大42個の炭素までの炭素鎖を含むn-3 VLC-PUFAを形成する。
【0147】
ドコサヘキサエン酸(DHA、C22:6n-3、1は、ホスファチジルコリン分子種の2位に組み込まれ(3)、エロンガーゼ酵素によって長鎖n-3 VLC-PUFAに変換される。エロンガーゼ酵素ELOVL4(ELOngation of Very Long chain fatty acids-4)による伸長は、ホスファチジルコリン分子種の1位に組み込まれる超長鎖オメガ-3多価不飽和脂肪酸(n-3 VLC-PUFA、2、C32:6n-3およびC34:6n-3を含む)の形成につながる、3。2位にDHAが存在し、1位にn-3 VLC-PUFAが存在すると、病的状態に直面したときにニューロンおよびその他の重要な細胞型の生存を増幅する、冗長で補完的な相乗的な細胞保護および神経保護作用を提供できる。
【0148】
n-3-VLC-PUFA、3のリポ酸素化は、モノヒドロキシ化合物(例えばELV-27SおよびELV-29S、4、およびジヒドロキシ誘導体、例えばELV-N-32およびELV-N-34、5を含むことができる、エロバノイドと呼ばれるn-3-VLC-PUFAの酵素的にヒドロキシル化誘導体の形成をもたらす。エロバノイドELV-N-32は、20R,27S-ジヒドロキシ32:6誘導体である(ニューロプロテクチン様の20(R),27(S)-ジヒドロキシパターンの32-炭素、6つの二重結合エロバノイド)。エロバノイドELV-N-34は、22R,29S-ジヒドロキシ34:6誘導体である(22(R),29(S)-ジヒドロキシパターンの34-炭素、6つの二重結合エロバノイド)。
【0149】
図2は、光受容体へのドコサヘキサエン酸(DHA、C22:6n-3)の送達、光受容体外節膜の再生、およびエロバノイドの合成を示している。DHAまたは前駆体C18:3n-3は、DHA自体と同様に食事によって得られる(
図1)。体循環(主に門脈系)は、それらを肝臓に運ぶ。肝細胞は、肝臓に入ると、DHAをDHA-リン脂質(DHA-PL)に取り込み、リポタンパク質として毛細血管、神経血管単位、および他の組織の毛細血管に輸送される。
【0150】
DHAは、脈絡毛細血管からブルッフ膜を通過し(
図2)、網膜の裏側を覆う網膜色素上皮(RPE)細胞に取り込まれ、光受容体の内節に送られる。肝臓から網膜へのこの標的指向送達経路は、DHAロングループと呼ばれる。
【0151】
次に、DHAは、光受容体間マトリックス(IPM)を通過して光受容体の内節に到達し、そこで光受容体の外節、細胞膜、細胞小器官のリン脂質に組み込まれる。大部分は、ディスク膜の生合成(外節)で使用される。新しいDHAリッチディスクが光受容体外節のベースで合成されると、古いディスクはRPE細胞に向かって頂端に押し出される。光受容体の先端は、RPE細胞によって毎日貪食され、最も古いディスクが除去される。得られたファゴソームは、RPE細胞内で分解され、DHAは新しいディスク膜生合成のために光受容体の内節に再利用される。このローカルリサイクルは、22:6ショートループと呼ばれる。
【0152】
エロバノイドは、光受容体の内節でELOVL4(ELOngation of Very Long chain fatty acids-4)によって生合成されたオメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸(n-3 VLC-PUFA)から形成される。したがって、C1(C34:6n-3が描かれる)にVLCオメガ-3 FAを含み、C2にDHA(C22:6n-3)を含む内節のホスファチジルコリン分子種は、光受容体膜の生合成に使用される。このリン脂質は、ロドプシンと密接に関連していることがわかっている。毎日の生理学的プロセスとしてディスクがRPE細胞で貪食されると、恒常性障害の際に、ホスホリパーゼA1(PLA1)がsn-1でアシル鎖を切断し、C34:6n-3を放出し、エロバノイド(例えばエロバノイド-34、ELV-N-34)を形成する。エロバノイド合成に使用されないVLCオメガ-3脂肪酸は、ショートループでリサイクルされる。
【0153】
したがって、生合成の理由から、天然に生じ、生物遺伝学的に誘導されたn-3 VLC-PUFAには、少なくとも24個の炭素から少なくとも42個の炭素の範囲の偶数の炭素(すなわち、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42個の炭素)しか含まれていない。したがって、少なくとも23個から最大41個までの範囲の奇数個の炭素(すなわち、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41個の炭素)のみを含むn-3 VLC-PUFAは、天然に生じるものではないが、合成化学的な方法と戦略を使用して合成および製造され得る。
【0154】
網膜および脳におけるエロバノイドELV-N-32およびELV-N-34の立体制御された全合成および構造的性質:
図3および
図4に要約されているように、ELV-N-32(27S-およびELV-N-34は、3つの主要な中間体(1、2、および3)から合成され、それぞれが立体化学的に純粋な形態で調製された。中間体2および3の立体化学は、鏡像異性的に純粋なエポキシド出発物質を使用することによって事前に定義されている。中間体1、2、および3の反復カップリングにより、ELV-N-32およびELV-N-34(4)が生成され、これらはメチルエステル(Me)またはナトリウム塩(Na)として分離された。合成材料ELV-N-32およびELV-N-34は、培養ヒト網膜色素上皮細胞(RPE)(
図3)および神経細胞培養(
図4)から得られた、炭素鎖上に同じ数の炭素を持つ内因性エロバノイドと一致した。
【0155】
エロバノイドの実験的検出および特性評価:
実験的証拠は、DHA由来17-ヒドロキシ-DHAおよびジヒドロキシ化合物NPD1(10R,17S-ジヒドロキシ-ドコサ-4Z,7Z,11E,13E,15Z,19Z-ヘキサエン酸)に類似の分子構造を有するモノヒドロキシおよびジヒドロキシn-3 VLC-PUFA誘導体であるエロバノイドの生合成形成を実証する。エロバノイドは、32-炭素(ELV-N-32)および34-炭素(ELV-N-34)n-3 VLC-PUFAの酵素的に生成されたヒドロキシル化誘導体であり、初代ヒト網膜色素上皮細胞(RPE)の培養(
図3A~3K)および神経細胞培養物(
図4A~4K)で最初に同定された。
【0156】
本開示は、6または5つのC=C結合を有することに加えて、1つ、2つ、またはそれ以上のヒドロキシル基も含む、n-3 VLC-PUFAに関連する炭素鎖を有する化合物を提供する。このタイプの化合物が、n-3 VLC-PUFAの保護および神経保護作用に関与している可能性があることを考慮して、培養中のヒト網膜色素上皮細胞に32:6n-3および34:6n-3 VLC-PUFA脂肪酸を添加して、それらの存在を特定しようとした。我々の結果は、32:6n-3および34:6n-3 VLC-PUFA脂肪酸の両方からのモノヒドロキシおよびジヒドロキシエロバノイド誘導体を示した。これらのエロバノイド(ELV-N-32、ELV-N-34)の構造を、立体制御された全有機合成を介して立体化学的に純粋な形で調製された標準と比較した(
図5Aおよび
図5B)。
【0157】
治療薬としてのn-3 VLC-PUFAの有益な役割:
本明細書に記載のデータは、疾患の予防および治療のための治療薬として、提供されたn-3 VLC-PUFAおよび/またはエロバノイド化合物の有益な使用の裏付けを提供した。
【0158】
「アレルギー性疾患」または「アレルギー性炎症性疾患」という句は、アレルギー反応を伴う疾患を指すことができる。より具体的には、「アレルギー性疾患」は、アレルゲンへの曝露と病理学的変化の発生との間の強い相関、および病理学的変化が免疫メカニズム(すなわち、アレルギー性炎症性疾患)を有することによって特徴付けることができる。例えば、免疫メカニズムは、白血球がアレルゲン刺激に対して免疫応答を示すことを指すことがある。例えば、免疫応答は、炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生の増加を指すことがある。アレルゲンの例としては、ダニ抗原および花粉抗原が挙げられる。代表的なアレルギー性疾患には、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎またはアレルギー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、花粉および昆虫アレルギーが含まれる。アレルギー性素因は、アレルギー性素因の親子が受け継ぐことができる遺伝的要因である。家族性アレルギー性疾患は、アトピー性疾患とも呼ばれ、原因となる遺伝的要因はアトピー性体質である。「アトピー性皮膚炎」は、皮膚の炎症に関連する疾患などのアトピー性疾患の総称である。非限定的な例としては、湿疹、アレルギー性鼻炎、枯草熱、蕁麻疹、および食物アレルギーからなる群から選択されるアレルギー状態が挙げられ得る。アレルギー状態には、湿疹、アレルギー性鼻炎または鼻炎、枯草熱、気管支喘息、蕁麻疹(蕁麻疹(蕁麻疹))、食物アレルギー、およびその他のアトピー性状態が含まれる。
【0159】
「喘息」は、炎症、気道狭窄、および吸入物質またはアレルゲンに対する気道反応性の増加を特徴とする呼吸器系の障害を指す場合がある。喘息は、アトピー性またはアレルギー性の症状に関連していることがよくあるが、これに限定されない。喘息の症状には、呼吸困難、咳、喘鳴を含むことができることが広く認識されている。3つの症状はすべて共存するが、喘息の診断を行うためにそれらの共存は必要ない。
【0160】
「アレルギー性喘息」という用語は、喘息症状の中で喘息のアレルギー性の側面を指すことができ、例えば、混合型喘息およびアトピー性喘息を含むことができる。アレルギー性喘息は、アスピリン喘息などの非アレルギー性喘息と区別される。例えば、「喘息のための治療薬剤」は、喘息のアレルギー反応に対する作用を介して治療効果を発揮することができる。さらに、喘息の治療薬剤は、例えば、慢性気管支炎または気道過敏症に効果を発揮する。例えば、喘息の治療薬剤は、慢性気管支炎および気道過敏症に影響を及ぼす。喘息の治療薬剤は、アレルギー反応の後期反応、遅延型反応、または後期および遅延型反応に影響を及ぼす。例えば、喘息の治療薬剤は、即時型反応に加えて、後期反応、遅延型反応または後期および遅延型反応に影響を及ぼす。
【0161】
「アレルギー性鼻炎」とは、枯草熱(季節性アレルギー性鼻炎)および通年性鼻炎(非季節性アレルギー性鼻炎)を含む、鼻粘膜のあらゆるアレルギー反応を指すことがある。アレルギー性鼻炎の症状は、くしゃみ、鼻漏、鼻づまり、そう痒症、目のかゆみ、発赤、涙などである。
【0162】
「皮膚障害」という表現には、蕁麻疹および血管性浮腫の皮膚反応が含まれることがある。これらの皮膚障害は、特定の食品、薬、またはウイルス感染症への曝露によって引き起こされることがある。蕁麻疹(蕁麻疹または膨疹と呼ばれる)は、さまざまな形および大きさの皮膚の赤み、かゆみを伴う隆起した領域である。蕁麻疹は、肥満細胞からのヒスタミンおよびその他の化合物の放出の結果であり、血清が局所血管から漏れ、それによって皮膚の腫れを引き起こす。血管性浮腫は、蕁麻疹に似た組織の腫れの一種であるが、より深い皮膚組織(すなわち、「深い蕁麻疹」)が関与し、蕁麻疹よりも長く続く。
【0163】
「アレルギー性皮膚炎」という用語は、アレルギー反応に関連する皮膚炎を指すことができ、例えば、アトピー性皮膚炎を含むことができる。アレルギー性皮膚炎は、けがまたは創傷による皮膚炎などの非アレルギー性皮膚炎と区別される。「アトピー性皮膚炎の治療薬剤」として、アトピー性皮膚炎で発生するアレルギー反応に作用することで治療効果を発揮するものが有用である。さらに、アトピー性皮膚炎の治療薬剤は、アレルギー反応の後期反応、遅延型反応、または後期および遅延型反応に影響を及ぼす。例えば、アトピー性皮膚炎の治療薬剤は、即時型反応に加えて、後期反応、遅発型反応、または後期反応および遅発型反応に影響を及ぼす。
【0164】
「アレルギー性結膜炎」という表現は、眼球とまぶたの内側を覆う結膜と呼ばれる透明で薄い膜のアレルゲンによる刺激を指す場合がある。症状には、目の腫れ、目のかゆみ/灼熱感、涙、眼の発赤などが含まれ得る。一部のアレルゲンには、樹木、草、ブタクサの花粉、動物の皮膚、唾液、香水、化粧品、皮膚薬、大気汚染、煙などの分泌物が含まれ得る。
【0165】
「アレルゲン」は、対象においてアレルギー性炎症性疾患を誘発する可能性のある物質を指すことがある。アレルゲンのリストは膨大であり、花粉、昆虫毒液、動物の皮屑、イエダニ、ダスト、真菌胞子、ラテックス、および薬物(例えば、ペニシリン)を含むことができる。天然、動物、植物のアレルゲンの例には、次の属に固有のタンパク質が含まれる:イヌ属(Canis)(イヌ(Canis familiaris))、ヒョウヒダニ属(Dermatophagoides)(例、コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae))、ネコ属(Felis)(フェリス・ドメスチカス(Felis domesticus))、ブタクサ属(Ambrosia)(ブタクサ(Ambrosia artemiisfolia))、ドクムギ属(Lolium)(例えば、ホソムギ(Lolium perenne)またはネズミムギ(Lolium multiflorum))、スギ属(Cryptomeria)(スギ(Cryptomeria japonica))、アルテルナリア属(Alternaria )(アルテルナリア・アルテナータ(Alternaria alternata))、ハンノキ(Alder)、ハンノキ属(Alnus)(ヨーロッパハンノキ(Alnus gultinosa))、カバノキ属(Betula)(ヨーロッパシラカンバ(Betula verrucosa))、カシ属(Quercus)(アルバオーク(Quercus alba))、オリーブ属(Olea)(オリーブ(Olea europa))、ヨモギ属(Artemisia)(オウシュウヨモギ(Artemisia vulgaris))、オオバコ属(Plantago)(例、ヘラオオバコ(Plantago lanceolata))、ヒカゲミズ属(Parietaria)(例、パリエタリア・オフィシナリス(Parietaria officinalis)またはパリエタリア・ジュダイカ(Parietaria judaica))、チャバネゴキブリ属(Blattella)(例、チャバネゴキブリ(Blattella germanica))、ミツバチ属(Apis)(例、アピス・ムルチフロラム(Apis multiflorum))、イトスギ属(Cupressus)(例、ホソイトスギ(Cupressus sempervirens)、アリゾナイトスギ(Cupressus arizonica)およびモントレーイトスギ(Cupressus macrocarpa))、ビャクシン属(Juniperus)(例、ジュニペラス・サビノイデス(Juniperus sabinoides)およびジュニペラス・ビルギニアナ(Juniperus virginiana)、ジュニペラス・コンムニス(Juniperus communis)、ジュニペラス・アスヘイ(Juniperus ashei))、クロベ属(Thuya)(例、コノテガシワ(Thuya orientalis))、ヒノキ属(Chamaecyparis)(例、ヒノキ(Chamaecyparis obtusa))、ゴキブリ属(Periplaneta)(例、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana))、カモジグサ属(Agropyron)(例、シバムギ(Agropyron repens))、ライムギ属(Secale)(例、ライムギ(Secale cereale))、コムギ属(Triticum)(例、コムギ(Triticum aestivum))、カモガヤ属(Dactylis)(例、カモガヤ(Dactylis glomerata))、ウシノケグサ属(Festuca)(例、オニウシノケグサ(Festuca elatior))、イチゴツナギ属(Poa)(例、ナガハグサ(Poa pratensis)またはコイチゴツナギ(Poa compressa))、カラスムギ属(Avena)(例、エンバク(Avena sativa))、シラゲガヤ属(Holcus)(例、シラゲガヤ(Holcus lanatus))、ハルガヤ属(Anthoxanthum)(例、ハルガヤ(Anthoxanthum odoratum))、オオカニツリ属(Arrhenatherum)(例、オオカニツリ(Arrhenatherum elatius))、コヌカグサ属(Agrostis)(例、コヌカグサ(Agrostis alba))、アワガエリ属(Phleum)(例、オオアワガエリ(Phleum pratense))、クサヨシ属(Phalaris)(例、クサヨシ(Phalaris arundinacea))、スズメノヒエ属(Paspalum)(例、アメリカスズメノヒエ(Paspalum notatum))、モロコシ属(Sorghum)(例、ソルガム・ハレペンシス(Sorghum halepensis))、およびスズメノチャヒキ属(Bromus)(例:ブロマス・イネルミス(Bromus inermis))。アレルゲンには、オボアルブミン(OVA)およびマンソン住血吸虫卵抗原を含む、アレルギーおよび喘息の実験動物モデルで使用されるペプチドおよびポリペプチドも含まれ得る。
【0166】
「代謝障害」は、代謝の変化(同化作用および/または異化作用)のために恒常性の正常な生理学的状態の破壊をもたらす障害または疾患を指すことができる。代謝変化は、分解される物質(例、フェニルアラニン)を分解(異化)できず、物質および/または中間体物質のレベルが上昇するか、一部の必須物質(例、インスリン)を生成できない(同化)。
【0167】
「メタボリックシンドローム」は、単一の個体に集まり、糖尿病および/または心血管疾患を発症するリスクが高いメタボリックシンドロームのグループ化の概念を指す場合がある。メタボリックシンドロームの主な特徴には、インスリン抵抗性、高血圧(高血圧)、コレステロール異常、脂質異常症、トリグリセリド異常、凝固のリスクの増加、特に腹部および太りすぎまたは肥満が含まれる。メタボリックシンドロームは、シンドロームX、インスリン抵抗性シンドローム、肥満シンドローム、異常メタボリックシンドローム、Reavenシンドロームとしても知られている。メタボリックシンドロームのさまざまな危険因子の相互関係を
図1に示す。単一個体に3つ以上の危険因子の存在は、メタボリックシンドロームを示している。アメリカ心臓協会は、メタボリックシンドロームは次の3つ以上の要因の存在によって診断されると述べている:(1)ウエスト周囲の増加(男性、40インチ(102cm)以上;女性、35インチ(88cm以上))、(2)トリグリセリド上昇(150mg/dL以上)、(3)高密度脂質またはHDL低下(男性、40mg/dL未満、女性、50mg/dL未満)、(4)血圧の上昇(130/85mmHg以上);および(5)空腹時血糖値の上昇(100mg/dL以上)。
【0168】
「メタボリックシンドローム関連の代謝障害」とは、メタボリックシンドロームと肥満、インスリン抵抗性、2型糖尿病、アテローム性動脈硬化症、および心筋症を指すことがある。
【0169】
「糖尿病」は、インスリン分泌もしくは作用またはその両方の欠乏に起因する高血糖(グルコース)レベルを特徴とする一群の代謝障害を指すことができる。
【0170】
「2型糖尿病」は、膵臓のβ細胞がインスリンを産生するが、体の細胞はインスリンの作用に耐性があるため、少なくとも疾患の初期段階では、2つの主要なタイプの糖尿病の1つとされている。疾患の後半では、ベータ細胞がインスリンの産生を停止する可能性がある。2型糖尿病は、インスリン抵抗性糖尿病、非インスリン依存性糖尿病、成人発症型糖尿病としても知られている。
【0171】
「前糖尿病」は、グルコース利用障害、空腹時血漿グルコース異常または障害、耐糖能障害、インスリン感受性障害およびインスリン抵抗性障害を含む1つ以上の初期糖尿病状態を指すことができる。
【0172】
「インスリン抵抗性」とは、細胞がインスリン(細胞へのブドウ糖の取り込みを制御するホルモン)の作用に抵抗性になるか、生成されるインスリンの量が正常なブドウ糖レベルを維持することを意味する。細胞は、血液から筋肉および他の組織への糖グルコースの輸送を促進する際に、インスリンの影響(すなわち、インスリンに対する感受性の消失)に応答する能力が低下する可能性がある。最終的に、膵臓は通常よりもはるかに多くのインスリンを産生し、細胞は耐性を維持する。この抵抗性を克服するのに十分なインスリンが生成される限り、血糖値は正常なままである。膵臓が維持できなくなると、血糖値が上昇し始め、糖尿病につながる。インスリン抵抗性は、正常(インスリン感受性)からインスリン抵抗性(IR)までさまざまである。
【0173】
「A-ベータ関連疾患」は、A-ベータタンパク質凝集体を特徴とする疾患または状態を指すことがある。Aβ関連疾患に特徴的なアミロイド斑の主成分は、βアミロイドペプチド(A-ベータ)であり、長さが39-43アミノ酸(aa)の非常に不溶性のペプチドで、ベータシート構造を取り、オリゴマー化してタンパク質凝集体を形成する強い傾向がある。A-ベータ関連疾患の非限定的な例には、神経変性疾患または障害、アルツハイマー病、アルツハイマー型認知症、脳アミロイド血管症(CAA)、21トリソミー(ダウン症候群)、成人ダウン症候群、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(HCHWA-D)、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症、緑内障、加齢性黄斑変性症、筋萎縮性側索硬化症、散発性封入体筋炎、および高齢のヒト対象の不安障害が含まれる。
【0174】
本開示の化合物の起源:
提供された化合物は、自然界に天然に存在する組織からではなく、ヒト細胞と化学的に合成されたn-3-VLC-PUFAを組み合わせた人工実験の結果から単離された。我々の合成エロバノイド化合物の一般的な構造は、HPLCおよび質量分析を使用して、ヒト網膜色素上皮細胞で生合成された化合物または神経細胞培養で検出された化合物と一致した。ただし、具体的に定義された立体化学を持つ提供されたモノおよびジヒドロキシル化エロバノイドの天然発生は、現時点では不明である。さらに、提供される化合物は、天然源から得られるものではないが、それらは、市販の材料から始めて、当技術分野で知られている立体制御された合成方法を適応させることによって調製される。提供される調製方法は、n-3 VLC-PUFAの固有の疎水性特性に適合するように設計されている。これは、炭素の総数が22個炭素以下の化合物とは著しく異なる。
【0175】
本開示は、立体化学的に純粋な構造を有し、それらが薬理学的活性を発揮することを可能にする追加の構造的特徴および特性を有するように化学的に合成および修飾される化合物を包含する。提供された化合物は、化学的および生物学的安定性を高め、さまざまな形態の薬物送達を含む治療用途での使用を可能にする、カルボン酸エステルまたは塩の形態の化学的に修飾された薬学的に許容され得る誘導体である。
【0176】
本開示はまた、標的とされた細胞および組織に到達することができる方法で対象に送達されるそれらの能力を高める、提供される化合物の薬理学的に有効な組成物を提供する。
【0177】
本明細書に記載のデータはまた、アレルギーまたはアレルギー反応に関連する疾患などの疾患の予防および治療のための治療薬として、上皮細胞などの細胞による炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生を抑止することにより、提供されるn-3 VLC-PUFAおよび/またはエロバノイド化合物の有益な使用の裏付けを提供した。
【0178】
上皮は、体の外側(皮膚)ならびに内側の空洞および内腔の両方を覆っている。上皮組織は、スクート状で、密に詰まっており、連続したシートを形成している。細胞間スペースは、ほとんどない。上皮は、細胞外線維性基底膜によって下層組織から分離されている。口の内壁、肺胞、尿細管はすべて上皮組織でできている。血管とリンパ管の内層は、内皮と呼ばれる特殊な形の上皮である。
【0179】
「上皮細胞」という用語は、体の外側(皮膚)、粘膜、および内側の空洞と管腔を覆う細胞を指すことがある。ほとんどの上皮細胞は、細胞成分の頂端-基底分極を示す。上皮細胞は、形状とその特殊性によって分類される。
【0180】
表皮(すなわち、皮膚)は、角質化した重層扁平上皮で構成されている。4つの細胞タイプが存在する。ケラチノサイトは、皮膚を硬化および防水するタンパク質であるケラチンを生成する。皮膚表面の成熟したケラチノサイトは死んでおり、ほぼ完全にケラチンで満たされている。メラノサイトは、紫外線から細胞を保護する色素であるメラニンを生成する。メラノサイトからのメラニンは、ケラチノサイトに移される。ランゲルハンス細胞は、免疫応答中に白血球と相互作用する食細胞マクロファージである。メルケル細胞は、表皮の深部、表皮と真皮の境界で発生する。それらはメルケルディスクを形成し、神経終末と関連して感覚機能を果たす。
【0181】
表皮を構成するいくつかの層がある。手のひらと足の裏に見られる「厚い皮膚」は、5層で構成されているが、「薄い皮膚」は4層のみで構成されている。5層は、ケラチンで完全に満たされた死んだ、無核のケラチノサイトの多くの層を含む角質層を含むことができる。最外層は、常に脱落している。透明層は、2~3層の無核細胞を含む。この層は、手のひらおよび足の裏などの「厚い皮膚」にのみ見られる。顆粒層は、デスモソームによって結合された2~4層の細胞を含む。これらの細胞は、表皮の上層でのケラチンの形成に寄与するケラトヒアリン顆粒を含んでいる。有棘層は、デスモソームによって結合された8~10層の細胞を含む。これらの細胞は有糸分裂において中程度に活性である。基底層(stratum germinativum)は、有糸分裂によって活発に分裂して表皮上部層に移動し、最終的には皮膚の表面に移動する細胞を生成する円柱細胞の単層を含む。
【0182】
例えば、鼻上皮細胞は、環境要因に対する最外保護層を形成する。それらは、吸入された空気をきれいにし、加湿し、そして暖める。それらは粘液を生成し、それが粒子に結合し、その後上皮細胞の繊毛によって咽頭に輸送される。
【0183】
例えば、角膜上皮は上皮組織で構成されており、角膜の前面を覆っている。角膜を保護するバリアとして機能し、涙液からの液体の自由な流れに抵抗し、細菌が上皮および角膜実質に侵入するのを防ぐ。
【0184】
呼吸上皮、または気道上皮は、気道の大部分を呼吸器粘膜として覆っているのが見られる繊毛円柱上皮の一種である。呼吸上皮の細胞は、a)繊毛細胞、b)杯細胞、c)クラブ細胞、d)基底細胞の4つの主要なタイプである。呼吸上皮は、気道を湿らせて保護するように機能する。それは、病原体および異物に対する物理的障壁として機能し、粘液線毛クリアランスのメカニズムにおける病原体の除去を行い、粘液の分泌および粘液線毛クリアランスの作用による感染および組織損傷を予防する。
【0185】
化合物
本明細書に記載されているのは、「エロバノイド」と呼ばれる、オメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸およびそれらのヒドロキシル化誘導体に基づく化合物である。
【0186】
オメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸は、AまたはB、あるいはその誘導体の構造を有する。
Aは、炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を含み、位置n-3、n-6、n-9、n-12、n-15、およびn-18で始まる6つの交互のシス炭素-炭素二重結合を有し、Bは、炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を含み、位置n-3、n-6、n-9、n-12およびn-15で始まる5つの交互のシス炭素-炭素二重結合を有する。Rは、水素、メチル、エチル、アルキル、またはアンモニウムカチオン、イミニウムカチオン、またはナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、もしくはカルシウムカチオンを含むがこれらに限定されない金属カチオンなどのカチオンであってよく、mは、0~19までの数値である。
【0187】
本開示のオメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸は、末端カルボキシル基「-COOR」を有することができ、「R」は、アルキル基などのカルボキシルに共有結合した基を表すことができる。あるいは、カルボキシル基はさらに「-COO-」として負電荷を有することができ、Rは金属カチオン、アンモニウムカチオンなどを含むカチオンである。
【0188】
一部のオメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸では、mは0~15からなる群から選択される数である。したがって、脂肪酸成分が、その炭素鎖に合計24、26、28、30、32、34、36、または38個の炭素原子を含む1、3、5、7、9、11、13、または15から選択される数にすることができる。他のオメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸では、mは、0、2、4、6、8、10、12、または14からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分が、その炭素鎖に合計23、25、27、19、31、33、35、または37の炭素原子を含む。一部のオメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸では、mは、5~15からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計28、29、30、31、32、33、34、35、36、37または38個の炭素原子を含む。一部のオメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸では、mは、9~11からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計32または34個の炭素原子を含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、オメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸は、カルボン酸であり、すなわち、Rは水素である。他の実施形態では、オメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸は、カルボン酸エステルであり、Rは、メチル、エチル、またはアルキルである。オメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸がカルボン酸エステルである場合、Rはメチルまたはエチルである可能性があるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、オメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸は、カルボン酸エステルであり、Rはメチルである。
【0190】
いくつかの実施形態では、オメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸は、カルボン酸塩であり得る。Rは、アンモニウムカチオン、イミニウムカチオン、またはナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、もしくはカルシウムカチオンからなる群から選択される金属カチオンである。いくつかの有利な実施形態では、Rは、アンモニウムカチオンまたはイミニウムカチオンである。Rは、ナトリウムカチオンまたはカリウムカチオンであり得る。いくつかの実施形態では、Rは、ナトリウムカチオンである。
【0191】
本開示のオメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸または誘導体は、その炭素鎖に32または34個の炭素およびn-3位から始まる6つの交互のシス二重結合を有してよく、式A1(14Z,17Z,20Z,23Z,26Z,29Z)-ドトリアコンタ-14,17,20,23,26,29-ヘキサエン酸)または式A2(16Z,19Z,22Z,25Z,28Z,31Z)-テトラトリアコンタ-16,19,22,25,28,31-ヘキサエン酸)を有する。
【0192】
オメガ-3超長鎖多価不飽和脂肪酸のいくつかの実施形態では、カルボキシル誘導体は、グリセロール由来のリン脂質の一部であり、これは、当技術分野で知られており、構造C、D、E、またはFによって表される方法を利用することによって、構造AまたはBのn-3 VLC-PUFAのカルボン酸形態から始めて容易に調製することができる。
CまたはEは、炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を含み、位置n-3、n-6、n-9、n-12、n-15およびn-18で始まる6つの交互のシス炭素-炭素二重結合を有し、DまたはEは、炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を含み、位置n-3、n-6、n-9、n-12およびn-15で始まる5つの交互のシス炭素-炭素二重結合を有する。有利な実施形態では、mは、0~15からなる群から選択される数である。他の実施形態では、mは、1、3、5、7、9、11、13、または15から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計24、26、28、30、32、34、36または38個の炭素原子を含む。追加の有利な実施形態では、mは、0、2、4、6、8、10、12または14からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計23、25、27、19、31、33、35または37個の炭素原子を含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、mは、5~15からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計28、29、30、31、32、33、34、35、36、37または38個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、mは、5、7、9、11、13、または15からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計で28、30、32、34、36または38個の炭素原子を含む。他の実施形態では、mは、4、6、8、10、12または14からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計27、29、31、33、35または37個の炭素原子を含む。有利な実施形態では、mは、9~11からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖中に合計32または34個の炭素原子を含む。
【0194】
本開示のモノヒドロキシル化エロバノイドは、G、H、IまたはJの構造を有することができる。
化合物GおよびHは、炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を有し、位置n-3、n-9、n-12、n-15、およびn-18で始まる5つのシス炭素-炭素二重結合ならびに位置n-7で始まるトランス炭素-炭素二重結合を有する。化合物IおよびJは、炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を有し、位置n-3、n-9、n-12およびn-15で始まる4つのシス炭素-炭素二重結合ならびに位置n-7で始まるトランス炭素-炭素二重結合を有する。Rは、水素、メチル、エチル、アルキル、あるいはアンモニウムカチオン、イミニウムカチオン、またはナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、もしくはカルシウムカチオンからなる群から選択される金属カチオンからなる群から選択されるカチオンである。mは、0~19からなる群から選択される数である。化合物GおよびHは、等モル混合物として存在することができる。化合物IおよびJは、等モル混合物として存在することができる。提供される化合物GおよびHは、主に、ヒドロキシル基を有する炭素に定義された(S)または(R)キラリティーを有する1つのエナンチオマーである。化合物GおよびHは、主に、ヒドロキシル基を有する炭素に定義された(S)または(R)キラリティーを有する1つのエナンチオマーである。
【0195】
本明細書および本開示の他の構造で使用される場合、本開示の化合物は、末端カルボキシル基「-COOR」を有することが示され、「R」は、アルキル基などのカルボキシルに共有結合した基を表すことができる。あるいは、カルボキシル基はさらに「-COO-」として負電荷を有することができ、Rは金属カチオン、アンモニウムカチオンなどを含むカチオンである。
【0196】
本開示のモノヒドロキシル化エロバノイドのいくつかの実施形態では、mは、0~15からなる群から選択される数である。他の有利な実施形態では、mは、1、3、5、7、9、11、13、または15から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計24、26、28、30、32、34、36、または38個の炭素原子を含む。他の実施形態では、mは、0、2、4、6、8、10、12または14からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計23、25、27、19、31、33、35または37個の炭素原子を含む。
【0197】
いくつかの実施形態では、mは、5~15からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計28、29、30、31、32、33、34、35、36、37または38個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、mは、5、7、9、11、13、または15からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計で28、30、32、34、36または38個の炭素原子を含む。他の実施形態では、mは、4、6、8、10、12または14からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計27、29、31、33、35または37個の炭素原子を含む。有利な実施形態では、mは、9~11からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖中に合計32または34個の炭素原子を含む。
【0198】
いくつかの実施形態では、本開示のモノヒドロキシル化エロバノイドは、カルボン酸であり、すなわち、Rは水素である。他の実施形態では、化合物はカルボン酸エステルであり、Rはメチル、エチルまたはアルキルである。有利な実施形態では、化合物はカルボン酸エステルであり、Rはメチルまたはエチルである。有利な実施形態では、化合物はカルボン酸エステルであり、Rはメチルである。他の有利な実施形態では、化合物はカルボン酸塩であり、Rは、アンモニウムカチオン、イミニウムカチオン、またはナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、もしくはカルシウムカチオンからなる群から選択される金属カチオンである。いくつかの有利な実施形態では、Rは、アンモニウムカチオンまたはイミニウムカチオンである。他の有利な実施形態では、Rは、ナトリウムカチオンまたはカリウムカチオンである。有利な実施形態では、Rはナトリウムカチオンである。
【0199】
本開示のジヒドロキシル化エロバノイドは、構造K、L、M、またはNを有することができる。
化合物KおよびLは、炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を有し、位置n-3、n-7、n-15、およびn-18で始まる4つのシス炭素-炭素二重結合ならびに位置n-9、n-11で始まる2つのトランス炭素-炭素結合を有する。化合物MおよびNは、炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を有し、位置n-3、n-7、n-12およびn-15で始まる3つのシス炭素-炭素二重結合ならびに、位置n-9、n-11で始まる2つのトランス炭素-炭素結合を有する。Rは、水素、メチル、エチル、アルキル、あるいはアンモニウムカチオン、イミニウムカチオン、またはナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、もしくはカルシウムカチオンからなる群から選択される金属カチオンからなる群から選択されるカチオンである。mは、0~19からなる群から選択される数である。化合物KおよびLは、等モル混合物として存在することができる。化合物MおよびNは、等モル混合物として存在することができる。化合物KおよびLは、主に、ヒドロキシル基を有する炭素に定義された(S)または(R)キラリティーを有する1つのエナンチオマーである。提供される化合物MおよびNは、主に、ヒドロキシル基を有する炭素に定義された(S)または(R)キラリティーを有する1つのエナンチオマーである。
【0200】
本明細書および本開示の他の構造で使用される場合、本開示の化合物は、末端カルボキシル基「-COOR」を有することが示され、「R」は、アルキル基などのカルボキシルに共有結合した基を表すことができる。あるいは、カルボキシル基はさらに「-COO-」として負電荷を有することができ、Rは金属カチオン、アンモニウムカチオンなどを含むカチオンである。
【0201】
本開示のジヒドロキシル化エロバノイドのいくつかの実施形態では、mは、5~15からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計28、29、30、31、32、33、34、35、36、37または38個の炭素原子を含む。有用な実施形態では、mは、5、7、9、11、13、または15からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計で28、30、32、34、36または38個の炭素原子を含む。他の実施形態では、mは、4、6、8、10、12または14からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計27、29、31、33、35または37個の炭素原子を含む。有用な実施形態では、mは、9~11からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖中に合計32または34個の炭素原子を含む。
【0202】
本開示のいくつかのジヒドロキシル化エロバノイドは、カルボン酸であり、すなわち、Rは水素である。他の実施形態では、本開示のジヒドロキシル化エロバノイドは、カルボン酸エステルであり、Rは、メチル、エチル、またはアルキルである。有用な実施形態では、化合物はカルボン酸エステルであり、Rはメチルまたはエチルである。有用な実施形態では、化合物はカルボン酸エステルであり、Rはメチルである。
【0203】
他の実施形態では、本開示のジヒドロキシル化エロバノイドは、カルボン酸塩であり、Rは、アンモニウムカチオン、イミニウムカチオン、またはナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、もしくはカルシウムカチオンからなる群から選択される金属カチオンである。いくつかの有用な実施形態では、Rは、アンモニウムカチオンまたはイミニウムカチオンである。他の有用な実施形態では、Rは、ナトリウムカチオンまたはカリウムカチオンである。有用な実施形態では、Rは、ナトリウムカチオンである。
【0204】
本開示のアルキニルモノヒドロキシル化エロバノイドは、O、P、QまたはRの構造を有することができる。
化合物OおよびPは、炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を有し、位置n-3、n-12、n-15、およびn-18で始まる4つのシス炭素-炭素二重結合、位置n-7で始まるトランス炭素-炭素結合、ならびに位置n-9で始まる炭素-炭素三重結合を有する。化合物IおよびJは、炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を有し、位置n-3、n-12、およびn-15で始まる3つのシス炭素-炭素二重結合、位置n-7で始まるトランス炭素-炭素結合、ならびに位置n-9で始まる炭素-炭素三重結合を有する。Rは、水素、メチル、エチル、アルキル、あるいはアンモニウムカチオン、イミニウムカチオン、またはナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、もしくはカルシウムカチオンからなる群から選択される金属カチオンからなる群から選択されるカチオンである。mは、0~19からなる群から選択される数である。化合物OおよびPは、等モル混合物として存在することができる。化合物QおよびRは、等モル混合物として存在することができる。提供される化合物OおよびPは、主に、ヒドロキシル基を有する炭素に定義された(S)または(R)キラリティーを有する1つのエナンチオマーである。提供される化合物OおよびPは、主に、ヒドロキシル基を有する炭素に定義された(S)または(R)キラリティーを有する1つのエナンチオマーである。
【0205】
本明細書および本発明の他の構造で使用される場合、本開示のアルキニルモノヒドロキシル化エロバノイドは、末端カルボキシル基「-COOR」を有することが示され、「R」は、アルキル基などのカルボキシルに共有結合した基を表すことができる。あるいは、カルボキシル基はさらに「-COO-」として負電荷を有することができ、Rは金属カチオン、アンモニウムカチオンなどを含むカチオンである。
【0206】
いくつかの実施形態では、mは、0~15からなる群から選択される数である。他の実施形態では、mは、1、3、5、7、9、11、13、または15から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計24、26、28、30、32、34、36または38個の炭素原子を含む。
【0207】
追加の実施形態では、mは、0、2、4、6、8、10、12または14からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計23、25、27、19、31、33、35または37個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、mは、5~15からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計28、29、30、31、32、33、34、35、36、37または38個の炭素原子を含む。実施形態では、mは、5、7、9、11、13、または15からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計で28、30、32、34、36または38個の炭素原子を含む。他の実施形態では、mは、4、6、8、10、12または14からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計27、29、31、33、35または37個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、mは、9~11からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖中に合計32または34個の炭素原子を含む。
【0208】
いくつかの実施形態では、本開示のアルキニルモノヒドロキシル化エロバノイドは、カルボン酸であり、すなわち、Rは水素である。他の実施形態では、本開示のアルキニルモノヒドロキシル化エロバノイドは、カルボン酸エステルであり、Rは、メチル、エチル、またはアルキルである。実施形態では、本開示のアルキニルモノヒドロキシル化エロバノイドは、カルボン酸エステルであり、Rは、メチルまたはエチルである。
【0209】
いくつかの実施形態では、Rはメチルである。他の実施形態では、本開示のアルキニルモノヒドロキシル化エロバノイドは、カルボン酸塩であってよく、Rは、アンモニウムカチオン、イミニウムカチオン、またはナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、もしくはカルシウムカチオンからなる群から選択される金属カチオンである。いくつかの実施形態では、Rは、アンモニウムカチオンまたはイミニウムカチオンである。他の実施形態では、Rは、ナトリウムカチオンまたはカリウムカチオンである。実施形態では、Rは、ナトリウムカチオンである。
【0210】
アルキニルジヒドロキシル化エロバノイドは、S、T、U、またはVの構造を有することができる。
化合物SおよびTは、炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を有し、位置n-3、n-12、n-15、およびn-18で始まる3つのシス炭素-炭素二重結合、位置n-9およびn-11で始まる2つのトランス炭素-炭素二重結合、ならびに位置n-7で始まる炭素-炭素三重結合を有する。化合物UおよびVは、炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を有し、位置n-3およびn-15で始まる2つのシス炭素-炭素二重結合、位置n-9およびn-11で始まる2つのトランス炭素-炭素二重結合、ならびに位置n-7で始まる炭素-炭素三重結合を有する。Rは、水素、メチル、エチル、アルキル、あるいはアンモニウムカチオン、イミニウムカチオン、またはナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、もしくはカルシウムカチオンからなる群から選択される金属カチオンからなる群から選択されるカチオンである。mは、0~19からなる群から選択される数である。化合物SおよびTは、等モル混合物として存在することができる。化合物UおよびVは、等モル混合物として存在することができる。
【0211】
いくつかの実施形態では、提供される化合物SおよびTは、主に、ヒドロキシル基を有する炭素に定義された(S)または(R)キラリティーを有する1つのエナンチオマーである。提供される化合物UおよびVは、主に、ヒドロキシル基を有する炭素に定義された(S)または(R)キラリティーを有する1つのエナンチオマーである。
【0212】
本明細書および本発明の他の構造で使用される場合、本発明の化合物は、末端カルボキシル基「-COOR」を有することが示され、「R」は、アルキル基などのカルボキシルに共有結合した基を表すことができる。あるいは、カルボキシル基はさらに「-COO-」として負電荷を有することができ、Rは金属カチオン、アンモニウムカチオンなどを含むカチオンである。
【0213】
いくつかの実施形態では、mは、5~15からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計28、29、30、31、32、33、34、35、36、37または38個の炭素原子を含む。実施形態では、mは、5、7、9、11、13、または15からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計で28、30、32、34、36または38個の炭素原子を含む。他の実施形態では、mは、4、6、8、10、12または14からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖に合計27、29、31、33、35または37個の炭素原子を含む。実施形態では、mは、9~11からなる群から選択される数であり、脂肪酸成分は、その炭素鎖中に合計32または34個の炭素原子を含む。
【0214】
いくつかの実施形態では、提供される化合物はカルボン酸であり、すなわち、Rは水素である。
【0215】
他の実施形態では、提供される化合物はカルボン酸エステルであり、Rはメチル、エチルまたはアルキルである。実施形態では、提供される化合物はカルボン酸エステルであり、Rはメチルまたはエチルである。実施形態では、提供される化合物はカルボン酸エステルであり、Rはメチルである。他の実施形態では、提供される化合物はカルボン酸塩であり、Rは、アンモニウムカチオン、イミニウムカチオン、またはナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、もしくはカルシウムカチオンからなる群から選択される金属カチオンである。いくつかの実施形態では、Rは、アンモニウムカチオンまたはイミニウムカチオンである。他の実施形態では、Rは、ナトリウムカチオンまたはカリウムカチオンである。実施形態では、Rは、ナトリウムカチオンである。
【0216】
実施形態では、本開示は、(S,14Z,17Z,20Z,23Z,25E,29Z)-27-ヒドロキシドトリアコンタ-14,17,20,23,25,29-ヘキサエノエン酸メチルという名称の式G1のモノヒドロキシル化32-炭素メチルエステル;(S,14Z,17Z,20Z,23Z,25E,29Z)-27-ヒドロキシドトリアコンタ-14,17,20,23,25,29-ヘキサエン酸ナトリウムという名称の式G2のモノヒドロキシル化32-炭素ナトリウム塩;(S,16Z,19Z,22Z,25Z,27E,31Z)-29-ヒドロキシテトラトリアコンタ-16,19,22,25,27,31-ヘキサエン酸メチルという名称の式G3のモノヒドロキシル化34-炭素メチルエステル;または(S,16Z,19Z,22Z,25Z,27E,31Z)-29-ヒドロキシテトラトリアコンタ-16,19,22,25,27,31-ヘキサエン酸ナトリウムという名称の式G4のモノヒドロキシル化34-炭素ナトリウム塩を提供する。
【0217】
他の実施形態では、本開示は、(14Z,17Z,20R,21E,23E,25Z,27S,29Z)-20,27-ジヒドロキシドットリアコンタ-14,17,21,23,25,29-ヘキサエン酸メチルという名称の式K1のジヒドロキシル化32-炭素メチルエステル;(14Z,17Z,20R,21E,23E,25Z,27S,29Z)-20,27-ジヒドロキシドトリアコンタ-14,17,21,23,25,29-ヘキサエン酸ナトリウムという名称の式K2のジヒドロキシル化32-炭素ナトリウム塩;または、(16Z,19Z,22R,23E,25E,27Z,29S,31Z)-22,29-ジヒドロキシテトラトリアコンタ-16,19,23,25,27,31-ヘキサエン酸メチルという名称の式K3のジヒドロキシル化34-炭素メチルエステル;または、(16Z,19Z,22R,23E,25E,27Z,29S,31Z)-22,29-ジヒドロキシテトラトリアコンタ-16,19,23,25,27,31-ヘキサエン酸ナトリウムという名称の式K4のジヒドロキシル化34-炭素ナトリウム塩を提供する。
【0218】
他の実施形態では、本発明は、(S,14Z,17Z,20Z,25E,29Z)-27-ヒドロキシドトリアコンタ-14,17,20,25,29-ヒドロキシドトリアコンタ-23-イン酸メチルという名称の式O1のアルキニルモノヒドロキシル化32-炭素メチルエステル;(S,17Z,20Z,25E,29Z)-27-ヒドロキシドトリアコンタ-17,20,25,29-テトラエン-23-イン酸ナトリウムという名称の式O2のアルキニルモノヒドロキシル化32-炭素ナトリウム塩;(S,16Z,19Z,22Z,27E,31Z)-29-ヒドロキシテトラトリアコンタ-16,19,22,27,31-ペンタエン-25-イン酸メチルという名称の式O3のアルキニルモノヒドロキシル化34-炭素メチルエステル;(S,16Z,19Z,22Z,27E,31Z)-29-ヒドロキシテトラトリアコンタ-16,19,22,27,31-ペンタエン-25-イン酸ナトリウムという名称の式O4のアルキニルモノヒドロキシル化34―炭素ナトリウム塩を提供する。
【0219】
他の有利な実施形態では、本発明は、(14Z,17Z,20R,21E,23E,27S,29Z)-20,27-ジヒドロキシドットリアコンタ-14,17,21,23,29-ペンタエン-25-イン酸メチルという名称の式S1のアルキニルジヒドロキシル化32-炭素メチルエステル;(14Z,17Z,20R,21E,23E,27S,29Z)-20,27-ジヒドロキシドトリアコンタ-14,17,21,23,29-ペンタエン-25-イン酸ナトリウムという名称の式S2のアルキニルジヒドロキシル化32-炭素ナトリウム塩;または、(16Z,19Z,22R,23E,25E,29S,31Z)-22,29-ジヒドロキシテトラトリアコンタ-16,19,23,25,31-ペンタエン-27-イン酸メチルという名称の式S3のアルキニルジヒドロキシル化34-炭素メチルエステル;または、(16Z,19Z,22R,23E,25E,29S,31Z)-22,29-ジヒドロキシテトラトリアコンタ-16,19,23,25,31-ペンタエン-27-イン酸ナトリウムという名称の式S4のアルキニルジヒドロキシル化34-炭素ナトリウム塩を提供する。
【0220】
提供される化合物の調製および製造の方法:
本開示の提供される化合物は、
図6~10に示されるスキーム1~5に要約される市販の材料を用いて始め、当技術分野で知られている方法を適応させることによって容易に調製することができる。
【0221】
スキーム1(
図6)は、タイプOの化合物の立体制御された全合成のための詳細なアプローチを示し、nは9であり、脂肪酸鎖は合計32個の炭素原子を含み、R基はメチルまたはナトリウムカチオンである。例えば、スキーム1は、ペンタデカ-14-イン酸メチル(S1)から開始して、化合物ELV-N-32-MeおよびELV-N-32-Naの合成を示している。ヘプタデカ-16-イノエート(T1)から開始することにより、このプロセスにより、化合物ELV-N-34-MeおよびELV-N-34-Naが得られる。ELV-N-32-MeおよびELV-N-32-Naのアルキニル前駆体、すなわち13a、13b、15a、および15bもまた、本開示において提供される化合物XおよびZの中にある。スキーム1は、このタイプの反応に典型的な反応条件を使用することにより、提供される化合物の調製のための試薬および条件を提供する。
【0222】
スキーム2(
図7)は、スキーム1でも使用された中間体2、5、および7から開始することによって、ジヒドロキシル化エロバノイドKおよびLならびにそれらのアルキン前駆体SおよびTの全合成を説明している。保護された(R)エポキシド4の中間体15への変換、ならびに7および15のカップリングとそれに続く中間体17への変換は、文献の手順に従って行うことができる(Tetrahedron Lett.2012;53(14):1695-8)。
【0223】
中間体2または17間、または中間体5または17間の触媒的クロスカップリングと、それに続く脱保護により、アルキニル化合物SおよびTが形成され、次に選択的に還元されて、ジヒドロキシル化エロバノイドKおよびLが形成される。加水分解および酸性化により、対応するカルボン酸が得られ、これは、等量の対応する塩基を添加することでカルボン酸塩に変換することができる。アルキン出発物質7中の炭素数を変えることにより、炭素鎖に少なくとも23個の炭素と最大42個の炭素を有するタイプK、L、S、およびTのジヒドロキシル化エロバノイドを同様に調製することができる。
【0224】
スキーム3(
図8)は、スキーム1でもまた使用される同じアルキニル中間体2および5を利用することによる、タイプMおよびNの5つの不飽和二重結合を有するジヒドロキシル化エロバノイド、ならびにそれらのアルキン前駆体UおよびVの全合成を示している。(Tetrahedron Lett.2012;53(14):1695-8)。
【0225】
中間体22の合成は、既知の方法論(Tetrahedron Lett.1983、24(50)、5571-4)を使用してオルトエステル19に変換されるカルボン酸18から始まる。リチウム化アルキンとエポキシド1との反応により、中間体21が得られ、これは、16~17への変換と同様に、ヨウ化物中間体22に変換される。中間体2または5と22との間の触媒的クロスカップリング、それに続く脱保護は、アルキニルジヒドロキシエロバノイドUおよびVの形成をもたらし、これらは次に選択的に還元されてジヒドロキシル化エロバノイドMおよびNを形成する。
【0226】
加水分解および酸性化により、対応するカルボン酸が得られ、これは、等量の対応する塩基を添加によりカルボン酸塩に変換することができる。アルキンカルボン酸18中の炭素数を変えることにより、炭素鎖に少なくとも23個の炭素と最大42個の炭素を有するタイプM、N、U、およびVのジヒドロキシル化エロバノイドを同様に調製することができる。
【0227】
スキーム4(
図9)は、アルキンメチルエステル23、中間体15、およびアルキン中間体2から始まる、32-炭素ジヒドロキシル化エロバノイドの立体制御された全合成を示している。例えば、このスキームは、32-炭素アルキニルエロバノイド化合物ELV-N-32-Me-アセチレンの全合成、およびエロバノイドメチルエステルELV-N-32-Me、エロバノイドカルボン酸ELV-N-32-H、およびエロバノイドナトリウム塩ELV-N-32-Naへの変換を示している。
【0228】
スキーム5(
図10)は、アルキンメチルエステル30から始まり、スキーム4と同じ一連の反応を使用することによる、34-炭素のジヒドロキシル化エロバノイドの立体制御された全合成を示している。
【0229】
例えば、このスキームは、34-炭素アルキニルエロバノイド化合物ELV-N-34-Me-アセチレンの全合成、およびエロバノイドメチルエステルELV-N-34-Me、エロバノイドカルボン酸ELV-N-34-H、およびエロバノイドナトリウム塩ELV-N-34-Naへの変換を示している。
【0230】
スキーム1-5(
図6~10)に示されている化学反応は、炭素鎖に少なくとも23個の炭素と最大42個の炭素を有する追加のモノヒドロキシル化およびジヒドロキシル化エロバノイドの全合成にも適合させることができる。
【0231】
疾患の治療のための医薬組成物:
他の実施形態では、本開示は、治療有効量の本明細書で提供される1つ以上の化合物またはそれらの塩を薬学的に許容され得る担体中に含有する医薬組成物の製剤を提供する。
【0232】
提供される組成物は、本明細書で提供される1つ以上の化合物またはそれらの塩、ならびに薬学的に許容され得る賦形剤、希釈剤、担体および/またはアジュバントを含む。化合物は、経口、頬、鼻腔内、膣、直腸、眼球投与用の溶液、懸濁液、錠剤、散剤、丸薬、カプセル、粉末、眼球表面のコラーゲンもしくは他の材料に埋め込まれた硝子体内に移植されたリザーバーもしくはナノデバイス、デンドリマーからの徐放化された徐放性製剤またはエリキシル剤、または非経口投与用の滅菌溶液もしくは懸濁液、経皮パッチ、ならびに経皮パッチ製剤、乾燥粉末吸入器などの適切な医薬製剤に製剤化され得る。提供される製剤は、点眼薬などの液滴の形態であってよく、製剤は、眼疾患の治療のための抗酸化剤および/または既知の薬剤をさらに含むことができる。本明細書に記載の化合物は、当技術分野で周知の技術および手順を使用して医薬組成物に製剤化される(例えば、Ansel Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,Fourth Edition 1985,126を参照のこと)。
【0233】
本開示の実施形態は、遊離カルボン酸またはそれらの薬学的に許容され得る塩として、またはそれらの対応するエステルまたはそれらのリン脂質誘導体として、提供される化合物のさまざまな形態を含む医薬組成物を提供する。他の有用な実施形態では、本開示は、遊離カルボン酸またはそれらの薬学的に許容され得る塩、またはそれらの対応するエステルとして、超長鎖多価不飽和脂肪酸のn-3~n-18の間に位置する位置に1つまたは2つのヒドロキシル基を含む1つ以上のエロバノイドを含む医薬組成物を提供する。
【0234】
さらなる実施形態では、本開示は、疾患の症状を緩和する、該疾患を治療する、または予防するための医薬組成物を提供する。例えば、この疾患は、アレルギー性炎症性疾患、細胞老化および/もしくはフェロトーシスに関連する疾患、または代謝障害である。
【0235】
提供される組成物において、1つ以上の化合物または薬学的に許容され得る誘導体の有効濃度は、適切な医薬担体またはビヒクルと混合される。化合物は、本明細書に記載されるように、製剤前に、対応する塩、エステル、エノールエーテルもしくはエステル、酸、塩基、溶媒和物、水和物またはプロドラッグとして誘導体化することができる。組成物中の化合物の濃度は、投与時に、疾患、障害、または状態の1つ以上の症状を治療する、予防する、または寛解する量の送達に有効である。
【0236】
本明細書に記載されるように、組成物は、当技術分野で知られている方法を適応することによって調製することができる。組成物は、薬学的製剤の成分であり得る。薬学的製剤は、神経変性疾患を含む炎症性または変性疾患の治療のための既知の薬剤をさらに含むことができる。提供される組成物は、脂肪酸のプロドラッグ前駆体として機能することができ、疾患の部位に局在化すると遊離脂肪酸に変換され得る。
【0237】
本開示はまた、疾患または状態を治療する際の予防、回復、または使用のためのパッケージ化された組成物または医薬組成物を提供する。本開示によって提供される他のパッケージ化された組成物または医薬組成物は、疾患または状態を治療するために組成物を使用するための指示のうちの少なくとも1つを含む兆候をさらに含むことができる。キットは、本明細書に記載されている成分のさまざまな組み合わせを宿主に投与するための当技術分野で知られている適切な緩衝液および試薬を、さらに含むことができる。
【0238】
医薬製剤:
本開示の実施形態は、本明細書で同定される組成物または医薬組成物を含んでよく、かつ1つ以上の薬学的に許容され得る賦形剤、希釈剤、担体、天然に生じるもしくは合成抗酸化剤、および/またはアジュバントとともに製剤化され得る。さらに、本開示の実施形態には、1つ以上の薬学的に許容され得る補助物質で製剤化された組成物または医薬組成物が含まれ得る。例えば、組成物または医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容され得る賦形剤、希釈剤、担体、および/またはアジュバントとともに製剤化されて、本開示の組成物の実施形態を提供することができる。
【0239】
多種多様な薬学的に許容され得る賦形剤が当技術分野で知られている。製薬上許容され得る賦形剤は、例えば、A.Gennaro(2000)“Remington:The Science and Practice of Pharmacy,”20th edition,Lippincott,Williams,&Wilkins;Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(1999)H.C.Ansel et al.,eds.,7th ed.,Lippincott,Williams,&Wilkins;およびHandbook of Pharmaceutical Excipients(2000)A.H.Kibbe et al.,eds.,3rd ed.Amer.Pharmaceutical Assoc.を含むさまざまな出版物に十分に記載されている。ビヒクル、アジュバント、担体または希釈剤などの薬学的に許容され得る賦形剤は、一般に入手可能である。さらに、pH調整剤および緩衝剤、張性調整剤、安定剤、湿潤剤などの薬学的に許容され得る補助物質は、一般に容易に入手可能である。
【0240】
本開示の一実施形態では、組成物または医薬組成物は、所望の効果をもたらすことができる任意の手段を使用して、対象に投与することができる。したがって、組成物または医薬組成物は、治療的投与のためのさまざまな製剤に組み込むことができる。例えば、組成物または医薬組成物は、適切な薬学的に許容され得る担体または希釈剤と組み合わせることによって医薬組成物に製剤化することができ、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤、クリーム、およびエアロゾルなどの固体、半固体、液体または気体の形態の調製物に製剤化され得る。
【0241】
組成物または医薬組成物に適した賦形剤ビヒクルは、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組み合わせである。さらに、必要に応じて、ビヒクルは、湿潤剤または乳化剤、抗酸化剤またはpH緩衝剤などの少量の補助物質を含むことができる。そのような剤形を調製する方法は、当業者に知られているか、またはこの開示の考慮の上で明らかになるであろう。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania,17th edition,1985を参照のこと。投与される組成物または製剤は、いずれにせよ、治療される対象において所望の状態を達成するのに十分な量の組成物または医薬組成物を含むであろう。
【0242】
本開示の組成物には、徐放性または制御放出性マトリックスを含むものが含まれ得る。さらに、本開示の実施形態は、徐放性製剤を使用する他の治療と組み合わせて使用され得る。本明細書で使用される場合、徐放性マトリックスは、酵素的または酸ベースの加水分解または溶解によって分解可能な材料、例えばポリマー製マトリックスである。体内に挿入されると、マトリックスは酵素と体液の作用を受ける。徐放性マトリックスは、望ましくは、リポソーム、ポリラクチド(ポリ乳酸)、ポリグリコリド(グリコール酸のポリマー)、ポリラクチドコグリコリド(乳酸とグリコール酸のコポリマー)、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリペプチド、ヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、カルボン酸、脂肪酸、リン脂質、多糖、核酸、ポリアミノ酸、フェニルアラニンなどのアミノ酸、チロシン、イソロイシン、ポリヌクレオチド、ポリビニルプロピレン、ポリビニルピロリドンおよびシリコーンなどの生体適合性材料から選択される。例示的な生分解性マトリックスには、ポリラクチドマトリックス、ポリグリコリドマトリックス、およびポリラクチドコグリコリド(乳酸とグリコール酸のコポリマー)マトリックスが含まれ得る。別の実施形態では、本開示の医薬組成物(および組み合わせ組成物)は、制御放出システムにおいて送達され得る。例えば、組成物または医薬組成物は、静脈内注入、移植可能な浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、または他の投与様式を使用して投与することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる(Sefton(1987))CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201; Buchwald et al.(1980).Surgery 88:507; Saudek et al.(1989).N.Engl.J.Med.321:574)。別の実施形態では、高分子材料が使用される。さらに別の実施形態では、制御放出システムは、治療標的の近くに配置され、したがって、全身用量のほんのわずかしか必要としない。さらに別の実施形態では、制御放出システムは、治療標的の近くに配置され、したがって、全身のほんのわずかしか必要としない。他の制御放出システムは、Langer(1990).Science 249:1527-1533によるレビューで議論されている。
【0243】
別の実施形態では、本開示の組成物(および別個にまたは一緒に組み合わせた組成物)には、本明細書に記載の組成物または医薬組成物を、縫合糸、包帯、およびガーゼなどの吸収性材料に含浸させることによって形成されたもの、または組成物を送達するための外科用ステープル、ジッパー、カテーテルなどの固相材料の表面にコーティングされたものが含まれ得る。このタイプの他の送達システムは、本開示を考慮して当業者には容易に明らかになるであろう。
【0244】
別の実施形態では、本開示の組成物または医薬組成物(ならびに別々にまたは一緒に組み合わせた組成物)は、遅延放出製剤の一部であり得る。遅延放出剤形製剤は、“Pharmaceutical dosage form tablets”,eds.Liberman et.al.(New York,Marcel Dekker,Inc.,1989),“Remington-The science and practice of pharmacy”,20th ed.,Lippincott Williams & Wilkins,Baltimore,MD,2000、および“Pharmaceutical dosage forms and drug delivery systems”,6th Edition,Ansel et al.,(Media,PA:Williams and Wilkins,1995)編などの標準的な参考文献に記載されているように調製することができる。これらの参考文献は、錠剤およびカプセルを調製するための賦形剤、材料、機器およびプロセス、ならびに錠剤、カプセル、および顆粒の遅延放出剤形に関する情報を提供する。これらの参考文献は、錠剤およびカプセルを調製するための担体、材料、機器およびプロセス、ならびに錠剤、カプセル、および顆粒の遅延放出剤形に関する情報を提供する。
【0245】
組成物または医薬組成物の実施形態は、1つ以上の用量で対象に投与することができる。当業者は、投与レベルが、投与される特定の組成物または医薬組成物の機能、症状の重症度、および副作用に対する対象の感受性に従って変化し得ることを理解するであろう。所与の化合物の有用な投与量は、当業者によってさまざまな手段によって容易に決定可能である。
【0246】
一実施形態では、組成物または医薬組成物の複数回用量が投与される。組成物または医薬組成物の投与の頻度は、例えば、症状の重症度などのさまざまな要因のいずれかに応じて変化し得る。例えば、一実施形態では、組成物または医薬組成物は、月に1回、月に2回、月に3回、隔週(qow)、週に1回(qw)、週に2回(biw)、週に3回(tiw)、週に4回、週に5回、週に6回、隔日(qod)、毎日(qd)、1日2回(qid)、1日3回(tid)、または一日に4回投与され得る。本明細書で論じられるように、一実施形態では、組成物または医薬組成物は、1~10日の期間にわたって1日1~4回投与される。
【0247】
組成物または医薬組成物類似体の投与期間、例えば、組成物または医薬組成物が投与される期間は、さまざまな要因、例えば、患者の反応などのいずれかに応じて変化し得る。組成物または医薬組成物は、組み合わせてまたは別々に、約1日から1週間、約1日から2週間の期間にわたって投与され得る。
【0248】
状態または疾患を治療するのに有効であり得る本開示の組成物および医薬組成物の量は、標準的な臨床技術によって決定することができる。さらに、インビトロまたはインビボアッセイを使用して、最適な投与量範囲を特定することができる。使用する正確な用量は、投与経路にも依存する可能性があり、開業医の判断および各患者の状況に応じて決定することができる。
【0249】
投与経路:
本開示の実施形態は、インビボおよびエクスビボ方法、ならびに全身的および局所的な投与経路を含む、薬物送達に適した任意の利用可能な方法および経路を使用して、対象(例えば、ヒト)に活性剤を投与するための方法および組成物を提供する。投与経路には、鼻腔内、筋肉内、気管内、皮下、皮内、硝子体内、局所適用、静脈内、直腸、鼻、経口、および他の経腸および非経口投与経路が含まれ得る。投与経路は、必要に応じて組み合わせることができ、または薬剤および/または所望の効果に応じて調整することができる。活性剤は、単回投与または複数回投与で投与され得る。
【0250】
実施形態では、本発明の態様は、ネブライザーによって投与され得る。「ネブライザー」という用語は、液体から小さな液滴またはエアロゾルを生成する当技術分野で既知の任意の装置を指すことができる。例えば、組成物は、肺に吸入されるミストの形態で投与することができる。
【0251】
n-3 VLC-PUFAおよびその生体誘導体は、細胞内で形成され、ヒトの食事の構成要素ではない。本明細書で提供される化合物の有利な投与経路には、局所投与、経口投与、鼻腔内投与、および非経口投与が含まれ得る。例えば、提供される製剤は、点眼薬などの液滴の形で、または眼のアレルギー性炎症性疾患を治療するための他の任意の慣習的な方法で送達され得る。例えば、提供される製剤は、鼻腔内スプレーまたは鼻腔もしくは肺のアレルギー性炎症性疾患の治療のための他の任意の慣習的な方法の形で送達され得る。例えば、提供される製剤は、皮膚のアレルギー性炎症性疾患の治療のためのクリームもしくはゲルまたは他の任意の慣習的な方法の形態で送達され得る。
【0252】
吸入投与以外の非経口投与経路には、局所、経皮、皮下、筋肉内、眼窩内、被膜内、脊髄内、胸骨内、および静脈内経路、すなわち、消化管以外の任意の投与経路が含まれ得るが、これらに限定されない。非経口投与は、組成物の全身的または局所的送達に影響を与えるために実施され得る。全身送達が望まれる場合、投与は、医薬製剤の侵襲的または全身的に吸収された局所または粘膜投与を含む。一実施形態では、組成物または医薬組成物はまた、経腸投与によって対象に送達され得る。経腸投与経路には、経口および直腸送達(例えば、坐剤を使用すること)が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0253】
皮膚または粘膜を介した組成物または医薬組成物の投与方法には、適切な医薬製剤の局所適用、経皮伝達、注射および表皮投与が含まれ得るが、これらに限定されない。経皮伝達には、吸収促進剤またはイオントフォレーシスが適切な方法である。イオントフォレーシス伝達は、数日以上の期間、切れ目のない皮膚を通して電気パルスを介して製品を連続的に送達する市販の「パッチ」を使用して達成することができる。
【0254】
本開示によって提供される化合物および組成物は、酸化ストレスまたは他の恒常性破壊を受けている特定の細胞において、恒常性を回復させ、生存シグナル伝達を誘導することができる。本開示はまた、遊離カルボン酸もしくはそれらの薬学的に許容され得る塩として、またはそれらの対応するエステルまたは他のプロドラッグ誘導体として、超長鎖多価不飽和脂肪酸のヒドロキシル化誘導体を含む提供される化合物および組成物の使用方法を提供する。提供される化合物は、市販の材料から始めて、当技術分野で知られている方法を適応させることによって、容易に調製することができる。
【0255】
エロバノイド誘導体ELV-N-32-Me、ELV-N-32-Na、ELV-N-34-MeおよびELV-N-34-Naによって例示されるように、提供された化合物の生物活性は、それらの能力に起因して、標的となるヒト細胞に到達し、細胞に入ること、または/および膜結合受容体に作用することにより、それらの生物学的作用を発揮する。あるいは、提供された化合物は、細胞内受容体(例えば核膜)を介して作用することができ、したがって、それらは重要なシグナル伝達イベントに影響を与えることによって特異的に機能するだろう。提供された化合物および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物の投与は、恒常性バランスを回復させ、正常な機能を維持するために不可欠である特定の細胞の生存を促進する。提供される化合物、組成物、および方法は、炎症性、退行性、および神経変性疾患の予防的および治療的治療に使用することができる。この開示は、効力、選択性、副作用のない、持続的な生物活性を達成するために、内因性の細胞/臓器応答の特定の生物学を模倣することによって、これらの状態の開始および早期進行の重要なステップを対象とする。
【0256】
したがって、本開示の一態様は、その炭素鎖に少なくとも23個の炭素原子を有する少なくとも1つの超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む組成物の実施形態を包含する。
【0257】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容され得る担体をさらに含み、レシピエント対象の、またはレシピエント対象の組織の病的状態の発症の組織の病的状態を軽減するのに有効な量の少なくとも1つの超長鎖多価不飽和脂肪酸の送達のために製剤化され得る。
【0258】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、病的状態は、レシピエント対象の組織のアレルギー性炎症性疾患またはアレルギー性炎症性状態であり得る。
【0259】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、病的状態は、細胞老化、フェロトーシス、またはその両方に関連し得る。
【0260】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、病的状態は、代謝障害に関連し得る。
【0261】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、レシピエント対象の皮膚または眼への少なくとも1つの超長鎖多価不飽和脂肪酸組織の局所送達のために製剤化され得る。
【0262】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、レシピエント対象の鼻腔および/または肺への少なくとも1つの超長鎖多価不飽和脂肪酸組織の鼻腔内送達のために製剤化され得る。
【0263】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの栄養成分をさらに含むことができ、例えば、組成物は、レシピエント対象への少なくとも1つの超長鎖多価不飽和脂肪酸の経口または非経口送達のために、製剤化され得る。
【0264】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの超長鎖多価不飽和脂肪酸は、その炭素鎖中に約26~約42個の炭素原子を有することができる。
【0265】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの超長鎖多価不飽和脂肪酸は、その炭素鎖中に32または34個の炭素原子を有することができる。
【0266】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、超長鎖多価不飽和脂肪酸は、その炭素鎖中に、シス配置を有する5つまたは6つの二重結合を有することができる。
【0267】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、超長鎖多価不飽和脂肪酸は、14Z,17Z,20Z,23Z,26Z,29Z)-ドトリアコンタ-14,17,20,23,26,29-ヘキサエン酸または(16Z,19Z,22Z,25Z,28Z,31Z)-テトラトリアコンタ-16,19,22,25,28,31-ヘキサエン酸である。
【0268】
本開示の別の態様は、その炭素鎖に少なくとも23個の炭素原子を有する少なくとも1つのエロバノイドを含む組成物の実施形態を包含する。
【0269】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容され得る担体をさらに含むことができ、レシピエント対象の組織の病的状態を軽減するのに有効な量の少なくとも1つのエロバノイドの送達のために製剤化され得る。
【0270】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、病的状態は、アレルギー性炎症性疾患であり得る。
【0271】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのエロバノイドは、モノヒドロキシル化エロバノイド、ジヒドロキシル化エロバノイド、アルキニルモノヒドロキシル化エロバノイド、およびアルキニルジヒドロキシル化エロバノイドまたはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択することができる。
【0272】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのエロバノイドは、エロバノイドの組み合わせであり得る。組み合わせは、モノヒドロキシル化エロバノイドおよびジヒドロキシル化エロバノイド;モノヒドロキシル化エロバノイドおよびアルキニルモノヒドロキシル化エロバノイド;モノヒドロキシル化エロバノイドおよびアルキニルジヒドロキシル化エロバノイド;ジヒドロキシル化エロバノイドおよびアルキニルモノヒドロキシル化エロバノイド;ジヒドロキシル化エロバノイドおよびアルキニルジヒドロキシル化エロバノイド;モノヒドロキシル化エロバノイド、ジヒドロキシル化エロバノイド、およびアルキニルモノヒドロキシル化エロバノイド;モノヒドロキシル化エロバノイド、ジヒドロキシル化エロバノイド、およびアルキニルジヒドロキシル化エロバノイド;モノヒドロキシル化エロバノイド、ジヒドロキシル化エロバノイド、およびアルキニルモノヒドロキシル化エロバノイド、アルキニルジヒドロキシル化エロバノイド;各エロバノイドは、独立して、ラセミ混合物、単離されたエナンチオマー、または1つのエナンチオマーの量が別のエナンチオマーの量を超えるエナンチオマーの組み合わせ;各ジヒドロキシル化エロバノイドは、独立して、ジアステレオマー混合物、単離されたジアステレオマー、または1つのジアステレオマーの量が別のジアステレオマーの量を超えるジアステレオマーの組み合わせからなる群から選択される。
【0273】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、その炭素鎖に少なくとも23個の炭素原子を有する少なくとも1つの超長鎖多価不飽和脂肪酸を、さらに含むことができる。
【0274】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの超長鎖多価不飽和脂肪酸は、その炭素鎖中に約26~約42個の炭素原子を有することができる。
【0275】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの超長鎖多価不飽和脂肪酸は、その炭素鎖中に、シス配置を有する5つまたは6つの二重結合を有することができる。
【0276】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの超長鎖多価不飽和脂肪酸は、14Z,17Z,20Z,23Z,26Z,29Z)-ドトリアコンタ-14,17,20,23,26,29-ヘキサエン酸または(16Z,19Z,22Z,25Z,28Z,31Z)-テトラトリアコンタ-16,19,22,25,28,31-ヘキサエン酸であり得る。
【0277】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、モノヒドロキシル化エロバノイドは、式G、H、IまたはJからなる群から選択することができる。
式中、nは0~19であってよく、-CO-ORはカルボン酸基、またはその塩もしくはエステルであってよく、-CO-ORがカルボン酸基であり得る場合、化合物G、H、IまたはJはその塩であってよく、塩のカチオンは薬学的に許容され得るカチオンであってよく、かつ-CO-ORがエステルであり得る場合、Rはアルキル基であり得る。
【0278】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、薬学的に許容され得るカチオンは、アンモニウムカチオン、イミニウムカチオン、または金属カチオンであり得る。
【0279】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、金属カチオンは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、またはカルシウムカチオンであり得る。
【0280】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、等モル量のエナンチオマーGおよびHを含むことができ、エナンチオマーは、ヒドロキシル基を有する炭素に(S)または(R)キラリティーを有する。
【0281】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、ある量のエナンチオマーIおよびJを含むことができ、エナンチオマーは、ヒドロキシル基を有する炭素に(S)または(R)キラリティーを有する。
【0282】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、GまたはHのエナンチオマーのうちの1つを、GまたはHのうちの他のエナンチオマーの量を超える量で含むことができる。
【0283】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、IまたはJのエナンチオマーのうちの1つを、IまたはJのうちの他のエナンチオマーの量を超える量で含むことができる。
【0284】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、モノヒドロキシル化エロバノイドは、それぞれ次の式を有する(S,14Z,17Z,20Z,23Z,25E,29Z)-27-ヒドロキシドトリアコンタ-14,17,20,23,25,29-ヘキサエン酸メチル(G1);(S,14Z,17Z,20Z,23Z,25E,29Z)-27-ヒドロキシドトリアコンタ-14,17,20,23,25,29-ヘキサエン酸ナトリウム(G2);(S,16Z,19Z,22Z,25Z,27E,31Z)-29-ヒドロキシテトラトリアコンタ-16,19,22,25,27,31-ヘキサエン酸メチル(G3);および(S,16Z,19Z,22Z,25Z,27E,31Z)-29-ヒドロキシテトラトリアコンタ-16,19,22,25,27,31-ヘキサエン酸ナトリウム(G4)からなる群から選択することができる。
【0285】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、ジヒドロキシル化エロバノイドは、式K、L、M、およびNからなる群から選択することができる。
mは0~19であってよく、かつ-CO-ORはカルボン酸基、またはその塩もしくはエステルであってよく、
-CO-ORがカルボン酸基であり得る場合、化合物K、L、M、またはNはその塩であってよく、塩のカチオンは薬学的に許容され得るカチオンであってよく、かつ-CO-ORがエステルであり得る場合、Rはアルキル基であり得る。
【0286】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、薬学的に許容され得るカチオンは、アンモニウムカチオン、イミニウムカチオン、または金属カチオンであり得る。
【0287】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、金属カチオンは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、またはカルシウムカチオンであり得る。
【0288】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、等モル量のジアステレオマーKおよびLを含むことができ、ジアステレオマーは、位置n-6で(S)または(R)キラリティーのいずれか、および位置n-13で(R)キラリティーを有する。
【0289】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、等モル量のジアステレオマーMおよびNを含むことができ、ジアステレオマーは、位置n-6で(S)または(R)キラリティーのいずれか、および位置n-13で(R)キラリティーを有する。
【0290】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、KまたはLのジアステレオマーのうちの1つを、KまたはLのうちの他のジアステレオマーの量を超える量で含むことができる。
【0291】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、MまたはNのジアステレオマーのうちの1つを、MまたはNのうちの他のジアステレオマーの量を超える量で含むことができる。
【0292】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、ジヒドロキシル化エロバノイドは、それぞれ次の式を有する(14Z,17Z,20R,21E,23E,25Z,27S,29Z)-20,27-ジヒドロキシドットリアコンタ-14,17,21,23,25,29-ヘキサエン酸メチル(K1);(14Z,17Z,20R,21E,23E,25Z,27S,29Z)-20,27-ジヒドロキシドトリアコンタ-14,17,21,23,25,29-ヘキサエン酸ナトリウム(K2);(16Z,19Z,22R,23E,25E,27Z,29S,31Z)-22,29-ジヒドロキシテトラトリアコンタ-16,19,23,25,27,31-ヘキサエン酸メチル(K3);および、(16Z,19Z,22R,23E,25E,27Z,29S,31Z)-22,29-ジヒドロキシテトラトリアコンタ-16,19,23,25,27,31-ヘキサエン酸ナトリウム(K4)からなる群から選択することができる。
【0293】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、アルキニルモノヒドロキシル化エロバノイドは、式O、P、QまたはRからなる群から選択することができる。
式中、mは0~19であってよく、かつ-CO-ORはカルボン酸基、またはその塩もしくはエステルであってよく、-CO-ORがカルボン酸基であり得る場合、化合物O、P、Q、またはRはその塩であってよく、塩のカチオンは薬学的に許容され得るカチオンであってよく、かつ-CO-ORがエステルであり得る場合、Rはアルキル基であり得る、化合物OおよびPはそれぞれ、位置n-3、n-12、n-15、およびn-18で始まる4つのシス炭素-炭素二重結合を有し、位置n-7で始まるトランス炭素-炭素二重結合および位置n-9で始まる炭素-炭素三重結合を有する炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を有し、化合物QおよびRはそれぞれ、位置n-3、n-12、およびn-15で始まる3つのシス炭素-炭素二重結合を有し、位置n-7で始まるトランス炭素-炭素二重結合および位置n-9で始まる炭素-炭素三重結合を有する炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を有する。
【0294】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、アルキニルモノヒドロキシル化エロバノイドは、それぞれ次の式を有する(S,14Z,17Z,20Z,25E,29Z)-27-ヒドロキシドトリアコンタ-14,17,20,25,29-ヒドロキシドトリアコンタ-23-イン酸メチル(O1);(S,17Z,20Z,25E,29Z)-27-ヒドロキシドトリアコンタ-17,20,25,29-テトラエン-23-イン酸ナトリウム(O2);(S,16Z,19Z,22Z,27E,31Z)-29-ヒドロキシテトラトリアコンタ-16,19,22,27,31-ペンタエン-25-イン酸メチル(O3);および(S,16Z,19Z,22Z,27E,31Z)-29-ヒドロキシテトラトリアコンタ-16,19,22,27,31-ペンタエン-25-イン酸ナトリウム(O4)からなる群から選択することができる。
【0295】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、薬学的に許容され得るカチオンは、アンモニウムカチオン、イミニウムカチオン、または金属カチオンであり得る。
【0296】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、金属カチオンは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、またはカルシウムカチオンであり得る。
【0297】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、等モル量のエナンチオマーOおよびPを含むことができ、エナンチオマーは、ヒドロキシル基を有する炭素に(S)または(R)キラリティーを有する。
【0298】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、等モル量のエナンチオマーQおよびRを含むことができ、エナンチオマーは、ヒドロキシル基を有する炭素に(S)または(R)キラリティーを有する。
【0299】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、OまたはPのエナンチオマーのうちの1つを、OまたはPのうちの他のエナンチオマーの量を超える量で含むことができる。
【0300】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、QまたはRのエナンチオマーのうちの1つを、QまたはRのうちの他のエナンチオマーの量を超える量で含むことができる。
【0301】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、エロバノイドは、式S、T、UまたはVからなる群から選択されるアルキニルジヒドロキシル化エロバノイドであり得る。
mは0~19であってよく、かつ-CO-ORはカルボン酸基、またはその塩もしくはエステルであってよく、-CO-ORがカルボン酸基であり得る場合、化合物S、T、UまたはVはその塩であってよく、塩のカチオンは薬学的に許容され得るカチオンであってよく、かつ-CO-ORがエステルであり得る場合、Rはアルキル基であってよく、化合物SおよびTはそれぞれ、位置n-3、n-15、n-18で始まる3つのシス炭素-炭素二重結合を有し、位置n-9およびn-11で始まるに2つのトランス炭素-炭素二重結合および位置n-7で始まる炭素-炭素三重結合を有する炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を有し、化合物UおよびVはそれぞれ、位置n-3およびn-15で始まる2つのシス炭素-炭素二重結合を有し、位置n-9、n-11で始まる2つのトランス炭素-炭素二重結合および位置n-7で始まる炭素-炭素三重結合を有する炭素鎖に合計23~42個の炭素原子を有する。
【0302】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、薬学的に許容され得るカチオンは、アンモニウムカチオン、イミニウムカチオン、または金属カチオンである。
【0303】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、金属カチオンは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、またはカルシウムカチオンである。
【0304】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、アルキニルモノヒドロキシル化エロバノイドは、それぞれ次の式を有する(14Z,17Z,20R,21E,23E,27S,29Z)-20,27-ジヒドロキシドットリアコンタ-14,17,21,23,29-ペンタエン-25-イン酸メチル(S1);(14Z,17Z,20R,21E,23E,27S,29Z)-20,27-ジヒドロキシドトリアコンタ-14,17,21,23,29-ペンタエン-25-イン酸ナトリウム(S2);(16Z,19Z,22R,23E,25E,29S,31Z)-22,29-ジヒドロキシテトラトリアコンタ-16,19,23,25,31-ペンタエン-27-イン酸メチル(S3);および(16Z,19Z,22R,23E,25E,29S,31Z)-22,29-ジヒドロキシテトラトリアコンタ-16,19,23,25,31-ペンタエン-27-イン酸ナトリウム(S4)からなる群から選択することができる。
【0305】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、等モル量のジアステレオマーSおよびTを含むことができ、ジアステレオマーは、ヒドロキシル基を有する炭素に(S)または(R)キラリティーを有する。
【0306】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、等モル量のジアステレオマーUおよびVを含むことができ、ジアステレオマーは、位置n-6で(S)または(R)キラリティーのいずれか、および位置n-13で(R)キラリティーを有する。
【0307】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、SまたはTのジアステレオマーのうちの1つを、SまたはTのうちの他のジアステレオマーの量を超える量で含むことができる。
【0308】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物は、UまたはVのジアステレオマーのうちの1つを、UまたはVのうちの他のジアステレオマーの量を超える量で含むことができる。
【0309】
本開示の他の組成物、化合物、方法、特徴、および利点は、以下の図面、詳細な説明、および例を検討することにより、当業者に明らかであるか、または明らかになるであろう。そのようなすべての追加の組成物、化合物、方法、特徴、および利点は、この説明に含めることができ、本開示の範囲内にあることができる。
【0310】
エロバノイドの生物活性および利用可能性を調節するための組成物および方法
細胞老化は、老化および疾患に関連する細胞周期停止の一形態である。細胞老化は、ADおよびAMDを含む加齢性疾患に関連する炎症性細胞の運命である。老化の表現型は、細胞の拡大、クロマチンの変化、SASP、および細胞周期調節タンパク質(サイクリンおよびサイクリン依存性キナーゼ)を示す終末の複製停止を生じている細胞で発現する。老化の持続的な蓄積は、加齢性疾患と機能衰弱に関連している。組織からの老化細胞のクリアランスは、微小環境で変性および炎症誘発性のイベントが伝播するため、老化に関連する病態を緩和する。
【0311】
脳では、老化シグネチャープログラムは、星状細胞、ミクログリア、およびニューロンでトリガーされる(有糸分裂後であるにもかかわらず)。老化細胞表現型の結果(例、慢性炎症)は、AMDの鍵にもなる。細胞老化は、癌に対する防御イベントであり、老化および加齢性疾患において役割を果たす。老化細胞は、腫瘍の進行を促進する微小環境を作り出すのに役立つ。これらのイベントには、幹細胞と前駆細胞の枯渇、および炎症性恒常性を乱すサイトカインおよびケモカイン、成長因子、ならびにマトリックスメタロプロテイナーゼを含むSASPの発現による細胞傷害結果が含まれる。
【0312】
さらに、老化細胞は、損傷の修復および組織のリモデリングにも有益な効果がある。したがって、理論に拘束されるものではないが、老化は、年齢依存性疾患およびメタボリックシンドロームのドライバーであることに加えて、老化細胞クリアランスを通じて臓器/生物に損傷を与える他の細胞に加えて、健康な細胞を取り除くことができる。例えば、老化細胞およびSASPのプラス効果は、老化細胞によって分泌されるPDGF-AAによって引き起こされるSASPの早期分泌による皮膚創傷治癒の加速である。創傷は、局所線維芽細胞および内皮細胞に老化を誘発する。結果として、筋線維芽細胞の分化、肉芽組織の形成、および創傷治癒の完了が起こる。ELVは、腫瘍抑制タンパク質であるp16INK4a(サイクリン依存性キナーゼ阻害剤2A、サイクリン依存性キナーゼ4阻害剤Aとしても知られている)の発現(およびタンパク質の存在量)を変更する。このタンパク質は、Ink4a/Arf遺伝子座またはCdkn2aによってコードされている。p16は、G1期からS期への細胞の進行を減速させることにより、細胞周期の制御に役割を果たす。
【0313】
図を参照すると、ELVは、老化に関与するプログラム細胞死の一形態である上流フェロトーシスを標的としている。本発明者らは、足場タンパク質PEBP-1のリン酸化をブロックすることによって細胞死の阻害を示したELVの新規分子標的を発見した(
図29~31)。その結果、過酸化脂質が形成されず、フェロトーシスがブロックされる。鉄、フェリチン、および酸化ストレスのマーカーは、老化細胞で強化されている。これらの細胞は、異常な鉄の恒常性を示し、老化した組織の鉄含有量に影響を与える。鉄自体がミクログリアの老化を誘発するが、鉄キレート剤の減少は、細胞老化の鉄とフェリチンの蓄積を減らし、防ぐことができる。理論に拘束されることを望むものではないが、老化関連分泌表現型(SASP)は、急性期応答としてニューロンとグリアでのフェリチン発現を促進し、鉄媒介細胞死プロセスであるフェロトーシスに対する感受性を高めることができる。
【0314】
例えば、特定の収束メカニズムは、次のとおりである。
【0315】
フェロトーシスは、オートファジーの中間期にあり、老化を起こす(
図2~4)。
【0316】
AdipoR1受容体サブタイプは、DHA細胞の取り込み/保持およびVLC-PUFAのELV前駆体の利用可能性を強化する。取り込み/保持後、この受容体サブタイプは、PLA1による放出時にELV生合成の経路に入るVLC-PUFAの膜リザーバーのホスファチジルコリンの構築を促進する。VLC-PUFAを含む膜は、補償されていない酸化ストレス(UOS)チャレンジ、外傷、虚血、および神経変性疾患の発症時に放出される。PRC死の前に失敗した経路の5XFAD(
図32および
図37)。
【0317】
ELVおよびNPD1の特定のGPCRは、特定の受容体を標的とすることによってELVの作用を模倣するペプチドに対するMFRPとAdipoR1標的の合成リガンド(ペプチド小分子など)の相互作用を開発するための基盤である。GPCRデータ(
図36および
図38)。
【0318】
生物活性を高めるための調節部位としての、ELVの標的となる細胞内タンパク質。GPCRを標的とする細胞浸透性(または組織浸透性)ペプチドまたは他の小分子の同定。例には、ビボMO-(ブラジキニン類似体を含む)が含まれる。網膜に対する毒性がない例(
図34)。
【0319】
ELVを、その分解をブロック/減衰することによってELVの利用可能性を高める新しい小分子の標的として分解することによる、シグナル終結のための酵素。
【0320】
GBMにおけるELVの有益な役割(図を参照のこと)。
【0321】
TBI(図を参照のこと)。
【0322】
したがって、本発明の実施形態は、老化細胞の排除をもたらす組成物および方法を含む。例えば、本発明の実施形態は、癌(化学療法、脳(神経変性疾患))、創傷治癒(糖尿病、角膜ケラチノサイト、褥瘡性潰瘍)、およびAMDとADなどの神経変性疾患における老化細胞の利用可能性を調節する組成物および方法に向けられている。
【0323】
本発明の実施形態はまた、神経保護的および/または神経回復的である組成物および方法に向けられている。例えば、実施形態は、AMDまたは網膜色素変性症(RP)または他の網膜変性疾患における失明に先行するMCAおよび/または視力障害の前駆標的化において神経保護的である。さらに、実施形態は、AD、AM、CV疾患、メタボリックシンドローム、肥満、2型糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、TBI、GBMなどの他の疾患における神経保護的または神経回復的である。例えば、癌では、老化細胞が、腫瘍の進行を促進する微小環境を作り出すのに役立つ。
【0324】
本発明の態様は、フェロトーシスおよび老化を制御し、疾患において有益な結果をもたらすエロバノイド(ELV)の一連の収束メカニズムに向けられる。例えば、本発明の態様は、癌(多形性膠芽腫またはGBMなど)、加齢性黄斑変性症(AMD)、アルツハイマー病(AD)、その他の神経変性疾患、メタボリックシンドローム、肥満、2型糖尿病、神経外傷、皮膚および角膜の創傷治癒の症状を予防する、治療する、寛解する、または進行を遅らせるための組成物および方法に向けられている。
【0325】
本明細書の実施形態で使用されるエロバノイドは、PCT/US2016/017112、PCT/US2018/023082に記載されており、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。例えば、エロバノイドは、ELV-N-34もしくはELV-N-32、またはそれらの誘導体を含む。n-3-VLC-PUFA、3のリポ酸素化は、モノヒドロキシ化合物(例えばELV-27SおよびELV-29S、4、およびジヒドロキシ誘導体、例えばELV-N-32およびELV-N-34、5を含むことができる、エロバノイドと呼ばれるn-3-VLC-PUFAの酵素的にヒドロキシル化誘導体の形成をもたらす。エロバノイドELV-N-32は、20R,27S-ジヒドロキシ32:6誘導体である(ニューロプロテクチン様の20(R),27(S)-ジヒドロキシパターンの32-炭素、6つの二重結合エロバノイド)。エロバノイドELV-N-34は、22R,29S-ジヒドロキシ34:6誘導体である(22(R),29(S)-ジヒドロキシパターンの34-炭素、6つの二重結合エロバノイド)。
【0326】
ペプチド類似体
さらに、本発明の態様は、エロバノイドなどの脂質メディエーターの生物活性を模倣するための新しい合成非脂質類似体の開発に向けられている。「類似体」という用語は、第1の有機もしくは無機分子と類似または同一の機能を有する第2の有機もしくは無機分子を指すことができる。類似体は、最初の有機または無機分子と構造的に類似している可能性がある。実施形態では、第1の分子は脂質であり、第2の分子(すなわち、類似体)は非脂質分子である。例えば、第1の分子はエロバノイドであり、第2の分子はペプチドである。そのような実施形態では、ペプチドは「ペプチド類似体」と呼ばれることがある。
【0327】
実施形態では、ペプチド類似体は、治療用ペプチドとみなことができる。「治療用ペプチド」という用語は、1つ以上の治療的および/もしくは生物学的活性を有するペプチドまたはそのフラグメントもしくは変異体を指すことができる。
【0328】
「ペプチド」という用語は、ペプチド結合によって一緒に結合された2つ以上のアミノ酸残基を含む分子を指すことができる。これらの用語には、例えば、天然および人工タンパク質、タンパク質配列のタンパク質フラグメント、ならびにポリペプチド模倣物(ムテイン、変異体、および融合タンパク質など)、ならびに翻訳後または他の方法で共有結合または非共有結合で修飾されたペプチドが含まれ得る。ペプチドは、単量体または高分子であってよい。特定の実施形態では、「ペプチド」は、アルファ炭素がペプチド結合を介して結合され得るアミノ酸の鎖である。したがって、鎖の一方の末端の末端アミノ酸(アミノ末端)は、遊離アミノ基を有し、一方、鎖の他方の末端の末端アミノ酸(カルボキシ末端)は、遊離カルボキシル基を有する。本明細書で使用される場合、「アミノ末端」(略してN末端)という用語は、ペプチドのアミノ末端のアミノ酸上の遊離アミノ基またはペプチドの任意の他の位置のアミノ酸のアミノ基を指すことができる。同様に、「カルボキシ末端」という用語は、ペプチドのカルボキシ末端の遊離カルボキシル基、またはペプチド内の任意の他の位置のアミノ酸のカルボキシル基を指すことができる。ペプチドはまた、アミド結合などのペプチド模倣物とは対照的に、エーテルによって結合されたアミノ酸を含むがこれらに限定されない、本質的に任意のポリアミノ酸を含むことができる。
【0329】
実施形態では、ペプチド類似体は、本明細書に記載されるように、ペプチド結合または他の共有結合を介して結合された少なくとも4つのアミノ酸を含むペプチドである。一実施形態では、ペプチドまたはペプチド類似体は、長さが約4~約50個のアミノ酸である。本明細書のペプチドには、4~50個のアミノ酸のすべての整数の部分範囲が有用である。一実施形態では、ペプチドまたはペプチド類似体は、約5~約35個のアミノ酸、長さが約5~約30個のアミノ酸、長さが約5~約25個のアミノ酸、または長さが約5~約20個のアミノ酸のアミノ酸である。一実施形態では、ペプチドまたはペプチド類似体は、約6~約35個のアミノ酸、長さが約7~約30個のアミノ酸、長さが約6~約25個のアミノ酸、または長さが約6~約20個のアミノ酸のアミノ酸である。一実施形態では、ペプチドまたはペプチド類似体は、約7~約35個のアミノ酸、長さが約7~約30個のアミノ酸、長さが約7~約25個のアミノ酸、または長さが約7~約20個のアミノ酸のアミノ酸である。一実施形態では、ペプチドまたはペプチド類似体は、約8~約35個のアミノ酸、長さが約8~約30個のアミノ酸、長さが約8~約25個のアミノ酸、または長さが約8~約20個のアミノ酸のアミノ酸である。一実施形態では、ペプチドは、長さが約8~約17もしくは18個または約9~約16もしくは17個のアミノ酸のアミノ酸である。一実施形態では、ペプチドは、長さが約10~約17個または約12~約16もしくは17個のまたは約14~約16個のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、ペプチドは、5-mer、6-mer、7-mer、8-mer、9-mer、10-mer、16-mer、17-mer、18-mer、19-mer、または20-merからなる群から選択される。
【0330】
実施形態では、エロバノイドおよび/またはペプチド類似体は、フェロトーシスを制御/調節することができ、フェロトーシスの調節は、対象の疾患を治療するかまたは予防する。本明細書で使用される場合、「フェロトーシス」は、鉄依存性である制御された細胞死を意味する。フェロトーシスは、致死的な脂質活性酸素種の圧倒的な鉄依存性の蓄積を特徴としている。フェロトーシスは、アポトーシス、ネクローシス、オートファジーとは異なる。フェロトーシスのアッセイは、例えば、Dixon et al.,2012に開示されているとおりである。
【0331】
他の実施形態では、エロバノイドおよび/またはペプチド類似体は、細胞老化を制御/調節することができ、細胞老化の調節は、対象の疾患を治療する。
【0332】
「調節する」、「調節すること」という用語およびそれらの文法的変化は、生物学的活性を増加または減少させるなど、変化することを意味する。
【0333】
分子標的
実施形態では、エロバノイドおよび/またはペプチド類似体は、
図28および
図42で同定されたものなどの1つ以上の分子標的上のエピトープに結合することができる。
【0334】
実施形態では、エロバノイドおよび/またはペプチド類似体は、以下の表に示されるように、1つ以上の分子標的上のエピトープに(例えば、以下の表にリストされているタンパク質NCBI参照番号によって示される隣接または非隣接アミノ酸配列に)結合することができる。
【0335】
実施形態では、エロバノイドおよびペプチド類似体は、分子標的上の同じまたは類似のエピトープと相互作用する。実施形態では、エロバノイドおよびペプチド類似体は、分子標的上の異なるエピトープと相互作用することができる。
【0336】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、表に同定されたものなど、エロバノイドおよび/またはペプチド類似体が特異的に結合する分子標的の一部を指すことができる。
【0337】
例えば、実施形態では、そのエロバノイドまたはペプチド類似体は、細胞老化および/またはフェロトーシスを調節するために、LTB4R、GPR37、GPR52、GPR132、CNR2、BAI2、TXNRD1、PEBP1、および/またはGSR上のエピトープを標的とすることができる。実施形態では、エピトープは、「標的部位」または「標的配列」を含むことができ、これは、エロバノイドまたはペプチド類似体などの結合パートナーによって結合される配列を指すことができる。例えば、標的部位は、1つ以上のアミノ酸を含むことができる。
【0338】
本明細書の表におけるタンパク質は、「分子標的」と呼ぶことができる。「標的」または「分子標的」という用語は、候補化合物(例えば、薬物、エロバノイド、またはそのペプチド類似体)との相互作用について調べられている任意の分子、例えば、細胞内の分子または細胞膜に関連する分子を指すことができる。分子標的の非限定的な例には、DNA、RNA、および受容体(例えば、細胞表面、膜結合または核)、シグナル伝達経路の構成要素、転写因子またはそれらの機能的フラグメントなどのタンパク質が含まれ得る。分子標的はまた、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、本明細書に記載の分子の任意の修飾誘導体、または1つ以上の本明細書に記載の分子を含む任意の複合体などの高分子を含み得る。化合物、エロバノイド、またはペプチド類似体は、分子標的に影響を与える場合、直接的または間接的に、分子標的と「相互作用」する。化合物は、分子標的に直接的に作用することができ、例えば、分子標的がタンパク質である場合、化合物は、それに結合することによってタンパク質と直接的に相互作用するか、または転写制御エレメントに対する作用を介してタンパク質の発現を直接的に制御してもよい。同様に、化合物はまた、例えば、分子標的に次々に作用する別個の分子をブロックまたは刺激することによって、分子標的に間接的に作用することができる。分子標的に対する化合物の間接作用は、例えば、標的が非タンパク質分子であり、化合物が非タンパク質分子標的の産生、安定性、活性、維持および/または修飾に関与するタンパク質と相互作用する場合に起こり得る。
【0339】
「結合」という用語は、結合ポリペプチドが所与の標的を認識し、可逆的に結合するという、本明細書に記載されるものを含む標準的なアッセイによる決定を指すことができる。このような標準的なアッセイには、平衡透析、ゲル濾過、および結合に起因する分光学的変化のモニタリングが含まれるが、これらに限定されない。
【0340】
実施形態では、エロバノイドまたはペプチド類似体は、表1の分子標的に対して特異性を有することができる。「特異性」という用語は、ある標的に対して別の標的より高い結合親和性を有する結合ポリペプチドを指すことができる。結合特異性は、2つのテストされた標的材料の解離平衡定数(KD)または結合平衡定数(Ka)によって特徴付けられ得る。
【実施例0341】
実施例1-本明細書の実施例で使用される初代ヒト鼻上皮細胞(HNEpC)
凍結保存されたヒト鼻上皮細胞HNEpCは、PromoCell GmbH、Heidelberg,Germanyから購入した。(カタログ番号C-1260、ロット番号436Z028)。
【0342】
我々の実験に使用された細胞は、50歳の白人男性の鼻粘膜から得られた初代鼻上皮細胞である。
【0343】
細胞は継代(P1)で受け取られ、継代(P3)まで継代培養され、すべての実験に使用された。
【0344】
HNEpCは、気道上皮細胞増殖培地サプリメントパック(カタログ番号C-39160)およびペニシリン/ストレプトマイシンを添加したPromocellの気道上皮細胞増殖培地(カタログ番号C-21060)で80%培養密度まで増殖させた。
【0345】
実施例2-HNEpCは、いくつかのストレッサー(エアロアレルゲン)を使用したチャレンジを受けた
●大腸菌(Escherichia coli)血清型0111:B4(カタログ番号L4391)のリポ多糖(LPS)は、Sigma-Aldrichから入手した。LPSは、グラム陰性菌の主成分であり、トール様受容体4(TLR4)による認識を通じて自然免疫系を活性化する。これは、最終的にNF-κBの活性化および炎症性サイトカインの産生をもたらすシグナル伝達カスケードにつながる。実験に使用したLPSは、グラム陰性大腸菌(E.coli)0111:B4から精製された平滑(S)型LPSの調製物であり、HNEpCにチャレンジを行うために30μg/mLで使用した。
●ポリイノシン酸-ポリシチジル酸(ポリ(I:C)またはポリ(rI):ポリ(rC)と略記)は、上皮完全性の消失、粘液および炎症性サイトカインの産生の増加などのウイルス感染に関連する分子パターンである、二本鎖ウイルスRNA(dsRNA)の合成類似体である。TLR3アゴニストであるポリ(I:C)は、抗ウイルスパターン認識受容体TLR3、RIG-I/MDA5、およびPKRを活性化し、NF-κBおよびIRFを含む複数の炎症経路を介したシグナル伝達を誘導する。高分子量ポリ(I:C)は、シチジンポリ(C)ホモポリマーのストランドにアニーリングしたイノシンポリ(I)ホモポリマーの長いストランドを含む。ポリ(I:C)HMWの平均サイズは1.5kb~8kbである。ポリ(I:C)(カタログ番号P1530)はSigma-Aldrichから入手し、HNEpCにチャレンジを行うために100μg/mLで使用した。
●ヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)からのイエダニ抽出物(D.P.)(カタログ番号3033)-純粋な凍結乾燥抽出物は、Chondrex,Inc.から入手した。
●D.P.は、HNEpCにチャレンジを行うために30μg/mLで使用した。アレルゲン-Der p1、Der p2。
●コナヒョウヒダニからのイエダニ抽出物(D.F.)(カタログ番号3040)-純粋な凍結乾燥抽出物は、Chondrex,Inc.から入手した。
●D.F.は、HNEpCにチャレンジを行うために30μg/mLで使用した。アレルゲン-Der f1、Der f2。
●イエダニ抽出物-(D.P.)と(D.F.)の両方の混合物であるHDMは、HNEpCにチャレンジを行うために(15μg/mL+15μg/mL)で使用した。
【0346】
実施例3-(HNEpC)は、いくつかのストレッサー(エアロアレルゲン)を使用したチャレンジを受け、次のアッセイが実行された
●LDH細胞毒性アッセイ-InvitrogenのCyQuantLDH細胞毒性アッセイキット(カタログ番号C20301)を使用。
●細胞生存率アッセイ-InvitrogenのPrestoBlueHS細胞生存率アッセイキット(カタログ番号C50201)を使用。
●Chondrex,Abcam、およびR&D SystemsのサンドイッチELISAアッセイ:
1)ChondrexのヒトIL-6検出キット(カタログ番号6802)
2)ChondrexのヒトIL-1β検出キット(カタログ番号6805)
3)R&D SystemsのヒトIL-8/CXCL8 Quantikine ELISAキット(カタログ番号D8000C)
4)ChondrexのヒトCCL2/MCP-1検出キット(カタログ番号6821)
5)ChondrexのヒトCXCL1/KC/GRO検出キット(カタログ番号6825)
6)ChondrexのヒトVEGF検出キット(カタログ番号6810)
7)AbcamのヒトICAM1(CD54)ELISAキット(カタログ番号ab100640)
8)ChondrexのヒトIL-10検出キット(カタログ番号6806)
【0347】
実施例4-Presto Blue HS試薬を使用した細胞生存率アッセイ
PrestoBlue HS Cell Viability Reagentは、細胞溶解を必要としない、添加および読み取り完結型の、無毒の試薬である。PrestoBlue HSに使用される高度に精製されたレサズリンは、バックグラウンド蛍光において>50%の減少と、バックグラウンドに対するシグナル比において>100%の増加とを有する試薬をもたらす。
【0348】
生細胞に入ると、細胞還元環境により、レサズリンは還元され、赤色で蛍光性の高い化合物であるレゾルフィンになる。
【0349】
生存細胞は継続的にレサズリンをレゾルフィンに変換し、細胞を取り巻く培地の全体的な蛍光と色を増加させる。また、レサズリンからレゾルフィンへの変換により、顕著な色の変化が生じるため、吸光度ベースのプレートリーダーを使用して細胞生存率を検出できる。
【0350】
蛍光は、560nmの蛍光励起波長(励起範囲は540~570nm)と590nmの発光(発光範囲は580~610nm)を使用して読み取られる。
【0351】
実施例5-結論
細胞毒性アッセイ(LDH)の結果は、ストレッサー(LPS、ポリ(I:C)、HDM抽出物)を添加すると、細胞毒性を示す赤いホルマザンの形成が顕著に増加することを示し、これは、ELVの添加によって減少する。(
図17Aおよび
図17B)。
【0352】
PrestoBlue HS試薬を使用した細胞生存率アッセイでは、さまざまなストレッサー(LPS、ポリ(I:C)、HDM抽出物)によるチャレンジを受けた細胞と比較して、対照細胞でのレゾルフィン産生が多いこと、およびELVの添加により細胞生存率が向上し、HNEpCに保護が与えられることも示される(
図18Aおよび
図18B)。
【0353】
HNEpCがさまざまなストレッサー(LPS、ポリ(I:C)、HDM抽出物)によるチャレンジを受けた場合、対照と比較すると、炎症誘発性サイトカインおよびケモカイン-IL-6、IL-1β、IL-8/CXCL8、CCL2/MCP-1、CXCL1/KC/GRO、VEGF、ICAM1(CD54)の顕著な産生が存在する。炎症誘発性サイトカインおよびケモカインのこの増加した産生は、それぞれのストレッサーでのチャレンジの30分後に500nMの濃度でELVを添加することによって抑止される(
図19Aおよび
図19B)。
【0354】
逆に、HNEpCがさまざまなストレッサー(LPS、ポリ(I:C)、HDM抽出物)によるチャレンジを受けた場合、対照と比較して抗炎症性サイトカイン-IL-10の放出において著しく減少する。抗炎症性サイトカインのこの減少した産生は、それぞれのストレッサーによるチャレンジの30分後に、500nMの濃度でELVを添加することによって逆転される(
図26Aおよび
図26B)。
【0355】
実施例6-アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、および喘息のための、エロバノイド
以下は、(初代培養の)ヒト鼻粘膜において炎症/アレルギーを引き起こし、エロバノイドが収縮して、これらの細胞の完全性を保護する実験条件である。
a)上皮完全性の消失、粘液および炎症性サイトカインの産生の増加などのウイルス感染に関連する分子パターンである、二本鎖ウイルスRNA(dsRNA)の合成類似体である、ポリイノシン酸-ポリシチジル酸(ポリ(I:C)またはポリ(rI):ポリ(rC))。
b)トール様受容体4(TLR4)による認識を通じて自然免疫系を活性化するグラム陰性菌の主成分である、LPS。これは、最終的にNF-κBの活性化および炎症性サイトカインの産生をもたらすシグナル伝達カスケードにつながる。実験に使用したLPSは、グラム陰性大腸菌0111:B4から精製された平滑(S)型LPSの調製物であり、HNEpCにチャレンジを行うために30μg/mLで使用した。
c)ヤケヒョウヒダニからのイエダニ抽出物(D.P.)(カタログ番号3033)-純粋な凍結乾燥抽出物は、Chondrex,Inc.から入手した。D.P.は、HNEpCにチャレンジを行うために30μg/mLで使用した。アレルゲン-Der p1、Der p2。
d)コナヒョウヒダニからのイエダニ抽出物(D.F.)(カタログ番号3040)-純粋な凍結乾燥抽出物は、Chondrex,Inc.から入手した。D.F.は、HNEpCにチャレンジを行うために30μg/mLで使用した。アレルゲン-Der f1、Der f2。
e)イエダニ抽出物-(D.P.)と(D.F.)の両方の混合物であるHDMは、HNEpCにチャレンジを行うために(15μg/mL+15μg/mL)で使用した。
【0356】
かゆみ、呼吸困難などのアレルギー治療は一貫して効果がなく、多くの人が眠気、口渇、および日常の機能を困難にするその他の副作用を経験している。エロバノイドは、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、喘息を治療するために鼻腔内に送達されることができ、それらの経路におけるこれらの状態を停止させ、ほとんどの市販薬に代わる効果的な代替品と、その副作用を抑制することとを提供する。
【0357】
細胞毒性アッセイ(LDH)の結果は、ストレッサー(LPS、ポリ(I:C)、HDM抽出物)を添加すると、細胞毒性を示す赤いホルマザンの形成が顕著に増加することを示し、これは、ELVの添加によって減少する。(
図17Aおよび
図17B)。
【0358】
PrestoBlue HS試薬を使用した細胞生存率アッセイでは、さまざまなストレッサー(LPS、ポリ(I:C)、HDM抽出物)によるチャレンジを受けた細胞と比較して、対照細胞でのレゾルフィン産生が多いこと、およびELVの添加により細胞生存率が向上し、HNEpCに保護が与えられることも示される(
図18Aおよび
図18B)。
【0359】
HNEpCがさまざまなストレッサー(LPS、ポリ(I:C)、HDM抽出物)によるチャレンジを受けた場合、対照と比較すると、炎症誘発性サイトカインおよびケモカイン-IL-6、IL-1β、IL-8/CXCL8、CCL2/MCP-1、CXCL1/KC/GRO、VEGF、ICAM1(CD54)の顕著な産生が存在する。炎症誘発性サイトカインおよびケモカインのこの増加した産生は、それぞれのストレッサーでのチャレンジの30分後に500nMの濃度でELVを添加することによって抑止される(
図19Aおよび
図19B)。
【0360】
逆に、HNEpCがさまざまなストレッサー(LPS、ポリ(I:C)、HDM抽出物)によるチャレンジを受けた場合、対照と比較して抗炎症性サイトカイン-IL-10の放出において減少する。抗炎症性サイトカインのこの減少した産生は、それぞれのストレッサーによるチャレンジの30分後に、500nMの濃度でELVを添加することによって逆転される(
図26Aおよび
図26B)。
【0361】
実施例7
(1)疾患が明らかになる前に、前駆症状の標的になる可能性がある。5xFAD網膜の構造と機能。(A)0~0.075cd・s/m2の光フラッシュに対する最大ERG b波振幅を示すVlogIプロット。5xFADマウスは、約100μVの最大振幅を達成した。これは、野生型マウスで記録されたものの約半分である。(B)野生型網膜との形態的類似性を示す5か月齢の5xFAD網膜の電子顕微鏡検査。i.ブルッフ膜(Br)に沿った膜の折り畳みを示す5xFAD RPE細胞の基底側。ii.接続繊毛(CC)膜から新しく形成されたディスクを示す野生型杆体外節の基底部分のディスク合成領域(矢印)。iii.新しいディスク形成を示す5xFAD網膜の同様の領域(矢印)。iv.5xFAD網膜の細胞体層(N、光受容体核)の強膜端にある外境界膜(OLM、矢印)。ミュラー細胞(M)の細胞質は、光受容体(PR)の細胞質よりも明るい。v.5xFAD RPE細胞および杆体光受容体先端(PR)の間の界面。2つのファゴソーム(Ph)がRPE細胞質内に見える。下部のPhは、RPEの頂端突起内に保持され、上部の暗いPhは古く、RPE細胞体に入るだけであり、正常な食作用機能を示している。vi.5xFAD網膜の内節ミトコンドリア(M)は、非常に細長い形の健康な光受容体を保持している。(C)5xFAD網膜内の正常な光受容体プロファイルを示す5か月齢の野生型および5xFAD網膜切片。(D)WTおよび5xFADからの網膜の蛍光染色。青(DAPI)は核、赤は5xFADの6か月齢のRPE層におけるAβである。(*P<0.05、スチューデントのt検定の比較を使用)。
【0362】
実施例8
ELVは、WTマウスにOAβを網膜下注射した後、RPE形態を回復させ、遺伝子発現を低下させる。(A)マウスを7つのグループに分けた:非注射、PBS、OAβのみ、OAβ+ELV-N-32、OAβ+ELV-N-34、ELV-N-32のみ、およびELV-N-34のみ。3日目に、RT-PCRのためにmRNAを単離した。7日目に、マウスをOCTに供し、次に眼の眼球摘出術を行い、ホールマウントRPE染色およびウエスタンブロットに処理した。(B)RPEのホールフラットマウント。OAβは、RPEの形態を破壊した。ただし、ELV処置群では、PBS処置群と同様にRPEの損傷が少なく、ELV単独では変化を誘発しなかった。(C)OCTによる、網膜およびRPEに対するOAβ効果の評価。(D)OAβ注射群ではPRCの厚みが薄かった。OAβはPRCの細胞死を引き起こし、OCT測定でも厚みが薄い。(E)OAβ(1-42)注射およびELV処置後のRPE遺伝子発現。注射の3日後、RPEからRNAを単離し、cDNAに逆転写し、異なるプライマーを用いるRT-PCRに供した。老化およびAMD関連遺伝子(E)、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、ストロメライシンおよびその他のマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)(F)、およびオートファジー(G)を含む、同じ機能グループの遺伝子が、同じチャートにプロットされた。(H)RPE/脈絡膜のp16INK4aウエスタンブロット。ELV-N-32およびELV-N-34は、OAβ注射によって上昇した重要な老化マーカーであるp16INK4aの発現をダウンレギュレートした。(I)OAβ(1-42)注射およびELVによる処置後の網膜遺伝子発現。OAβは、網膜のアポトーシス遺伝子を活性化する。ELVの同時注射により、これらの遺伝子はダウンレギュレートされた。(*P<0.05、スチューデントのt検定の比較を使用)。
【0363】
実施例9
OAβの毒性は、初代hRPEにおけるELVによって打ち消される。(A)初代hRPE細胞を、ELVの添加の有りまたは無しで、10μM OAβで処理した。3日後、全RNAを単離し、q-PCRで分析した。7日後、細胞をβ-ガラクトシダーゼ染色に供した。(B)7日後の明視野顕微鏡イメージング下での初代hRPEの生細胞画像。(C)初代hRPE、+/-ELVのβ-ガラクトシダーゼ染色。β-Gal陽性細胞の%の定量。ELVは、陽性の老化細胞を減少させた。(D)OAβ(1-42)曝露およびELVによる処置下での初代hRPEにおける老化遺伝子、AMD関連遺伝子およびオートファジー遺伝子の転写(*P<0.05、スチューデントのt検定の比較を使用)。
【0364】
実施例10
OAβ誘発RPEおよびPRC損傷におけるELVの作業モデル。(A)OAβは老化を誘発し、RPEのタイトジャンクションを破壊する。次に、OAβは網膜に浸透し、より少ない細胞体層(CBL)の核に反映される光受容体の細胞死を引き起こす。エロバノイドは、OAβ曝露時にRPE層の形態を回復させ、その結果、網膜構造が維持される。(B)OAβは、RPEにおける老化、オートファジー、マトリックスメタロプロテイナーゼ、およびAMD関連遺伝子、ならびに網膜におけるアポトーシス遺伝子を誘導する。ELVは、OAβ遺伝子の誘導をダウンレギュレートした。ELVの合成のための経路が描かれている。
【0365】
実施例11-エロバノイドによる、視床下部および脂肪組織の老化プログラミングのダウンレギュレーションは、糖尿病の発症および進行を打ち消す
1)研究計画
a)特定の目的
2型糖尿病(肥満の結果)の発生率は、例えば加齢の間に急速に増加し、腎機能障害、心血管疾患、脳卒中、創傷治癒障害、感染症、うつ病、不安、および認知機能低下の危険因子である。糖尿病、メタボリックシンドローム、および併存疾患の病因についての理解が進んでいるにもかかわらず、有効な治療法はない。細胞老化は、メタボリックシンドローム(高血圧、肥満、アテローム性動脈硬化症)を含む加齢性慢性炎症性疾患、膵臓ベータ細胞機能を標的とし、脂肪組織機能障害を引き起こすことによる2型糖尿病の病因に関係している。老化プログラミングは糖尿病ループ―細胞機能障害の原因と結果―を形成する。この新しいクラスの脂質メディエーターであるエロバノイド(ELV)は、糖尿病の発症および進行に対抗するための老化プログラミングのダウンレギュレーターとして研究されるであろう。本明細書において、糖尿病の実験モデルにおける説得力のある証拠および我々の最近のメカニズムの発見によって裏付けられる特定の新しい化合物を利用した新しい治療アプローチを検証することを提案する。
【0366】
ELVは、超長鎖多価不飽和脂肪酸(VLC-PUFA)32:6n-3および34:6n-3のジヒドロキシル化誘導体である。ELVの前駆体として、VLC-PUFAは、22:6n-3脂肪酸の伸長によって生合成され、ELOVL4(elongation of very-long-chain fatty acids-4)によって触媒される。我々の研究室では、立体制御された全有機合成によって確立された、詳細な構造と立体化学を含むELVの発見を報告した1、2。最近、我々の研究室は、ELVが、ホメオスタシスの破壊時に神経細胞の老化遺伝子プログラミングと老化活性化分泌表現型(SASP)を阻止する、存在量が少なく、効力が高く、神経保護的で、恒常性を促進するメディエーターであることを明らかにした3。
【0367】
理論に拘束されることを望むものではないが、エロバノイドは、主に老化トランスクリプトームおよびSASPを含む老化プログラム(SP)を通じて、脂肪組織(AT)および視床下部(HT)のゆっくりと進行する炎症(炎症老化)をダウンレギュレートする。これは、糖尿病患者のヒト脂肪細胞、遺伝性糖尿病マウスモデル、培養中のヒト脳細胞、およびHTの特定の機能的問題に対処するための最先端のアプローチを使用したデータによって検証される。
【0368】
HTは、最終分化細胞で構成され、神経上皮に由来するが、老化したマウスの老化ニューロン、ADのモデル4、および星状細胞5,6もまた老化を発現し、近くの細胞の神経炎症を促進する分泌型SASPを発生させるため7-9、標的でもある。我々の最近の研究は、隣接する細胞がSASPの神経毒性作用の標的となり、網膜のパラクリン老化を誘発することを示している3。
【0369】
目的1)TNFα、IL1βまたは他の誘導物質による誘導の際の、糖尿病患者由来のヒト脂肪細胞における老化プログラミング活性化を、エロバノイドが中和することを検証する。
【0370】
活性な褐色/ベージュのAT可塑性は、エネルギー消費を増加させ、高血糖と高脂血症の減少につながる。一方、その萎縮と不活化は、肥満と老化に関連している。したがって、慢性的なゆっくりと進行する局所炎症状態は、HCとの接続だけでなく内部シグナルの制御を妨害するだろう。
【0371】
目的2)遺伝的糖尿病マウスのHTがSPを発症し、それがシナプスの接続性および神経機能障害を損なうことを検証する。これは、遺伝的糖尿病マウスのHCが(我々の新しく開発されたMaestroシステムで)電気生理学的活動の乱れを示すことを示すデータによって裏付けられる。したがって、我々は、治療用エロバノイドを評価するためのモデルに加えて、利用するための新しい実験モデルとメカニズムを有する。
【0372】
目的3)糖尿病マウスに全身および/または鼻腔内投与した場合のエロバノイドの実験的治療効果をテストする。
【0373】
b)重要性および革新
この例は、新しい恒常性維持および神経保護メディエーターであるエロバノイド(ELV)の糖尿病のための治療的使用に基づいている。これらの化合物は、神経細胞の完全性を維持し1、10、老化プログラミングを打ち消し3、現在のデータで裏付けられるように、脂肪組織(ヒト糖尿病患者)および視床下部(遺伝性糖尿病マウスモデル)におけるシグナル伝達障害を阻止する。ELVは、酸素/グルコース欠乏またはNメチル-D-アスパラギン酸受容体媒介興奮毒性のいずれかを受けている神経細胞培養物、および実験的虚血性脳卒中の保護を仲介する10。ELV-N-32およびELV-N-34のメチルエステルまたはナトリウム塩は、中大脳動脈閉塞による2時間の虚血の1時間後に投与した場合、梗塞体積の減少、細胞生存の促進、および神経血管単位の破壊の減少をもたらした。
【0374】
糖尿病および肥満の治療法としてのエロバノイド
最近、痩せたマウスが高脂肪食のために肥満になった場合、脳内の老化細胞の存在量と不安行動の増強を示すことが発見された11。この研究はまた、肥満による不安は、老化細胞を消散させる新しい老化細胞除去薬によって阻止されるという最初の証拠を提供する。老化細胞は、老化関連分泌表現型(SASP)を放出し、近くの健康な細胞が機能障害に加わるように誘導する。
【0375】
老化細胞を若いマウスに移植すると衰弱、虚弱、および持続的な機能障害が引き起こされるが、老化細胞のプログラムされた細胞死を引き起こすダサチニブ(抗白血病薬)およびケルセチン(植物フラボノール)を含みうる老化細胞除去カクテルを投与することによって、これらが軽減され、老化したマウスの寿命と健康寿命の両方が延長される。いくつかの刊行物は、老化細胞が肥満に蓄積することを報告している。肥満マウスは、側脳室に隣接する白質で老化細胞の存在量が増加していることを示す12~17。
【0376】
治療法としてのエロバノイドは、以下によって裏付けられる。
1)ATおよびHTに関する我々のデータ(本明細書を参照のこと)。
2)培養中のヒトニューロンに関する我々のデータは、SASPの活性化がELVによってブロックされていることを示している(本明細書を参照のこと)。ELVは、ヒト神経細胞の老化を打ち消す。
3)我々は、オリゴマーA-ベータペプチドが、SP、SASPを活性化し、続いて網膜細胞死を引き起こすこと、ならびにウエスタンブロットにより、エロバノイドがSP遺伝子p16INK4a、MMP1、p53、p21、p27、Il-6、およびMMP1の発現を停止させ、かつSASPセクレトームおよびp16タンパク質の発現を停止させることを報告した3。
4)さらに、我々は、網膜細胞におけるオリゴマーA-ベータペプチドチャレンジ時に、エロバノイドが、オートファジー遺伝子(ATG3、ATG5、ATG7、およびBeclin-1)の発現を阻害することを発見した3。オートファジーは、褐色/ベージュの脂肪生成、熱発生活性化、および不活性化中に細胞内リモデリングを制御することによる、褐色/ベージュの脂肪細胞の可塑性の重要なイベントである。これには、褐色脂肪細胞の不活性化およびベージュから白色脂肪組織への移行に重要なミトコンドリアのオートファジー分解が含まれる可能性がある3。
5)また、エロバノイドが、マトリックスメタロプロテイナーゼトランスクリプトーム(MMP1a、MMP2、MMP3、MMP8、MMP9、MMP12、およびMMP13)を調節することを発見し、SASPとともに、このメカニズムが細胞外マトリックスの変化に寄与することを示した3。したがって、ATとHTの両方で、SASPは、オートクリンとパラクリンであり、結果としてATとHTの両方で細胞外マトリックス微小環境の恒常性を変更し、インスリン感受性の機能障害に寄与する炎症環境を作り出す。エロバノイドは、進行の遅い慢性の無菌性炎症(すなわち、炎症老化)を制御する。これは、本明細書で説明する理論的根拠の重要なテナントである。
6)さらに、エロバノイドの別の標的は、ニューロンおよび神経損傷モデルにおける未解決の酸化ストレスおよび炎症である1、2。未解決の炎症などのこれらの変化は、機能不全の脂肪細胞で進化し、ATおよびインスリン抵抗性で研究された炎症誘発性シグナル伝達の最良の結果の1つである。IL-6、IFN-γ、およびCCL2に加えて、免疫細胞によって産生されるTNF-αは、主要なインスリン応答性グルコーストランスポーターGLUT4をダウンレギュレートすることにより脂肪細胞でのインスリン作用を直接防ぎ、セラミド産生によってインスリン受容体とIRS-1のインスリン依存性チロシンリン酸化を阻害する。
7)翻訳の革新。内因的に生成されるエロバノイドの合成的に生成された分子を使用した、生体模倣治療アプローチ:
-恒常性を回復させ、糖尿病に対抗する-メタボリックシンドローム/肥満における老化プログラミングと神経細胞損傷を阻止する。
-革新的な医薬品化学を使用する。
【0377】
c)研究アプローチ
視床下部はメタボリックシンドロームの標的であり、肥満と2型糖尿病に重要である。
【0378】
肥満および2型糖尿病を含む生理学的悪化のさまざまな側面は、神経内分泌系を生理学的機能に接続する重要な脳領域である視床下部によって制御されている。さらに、アグーチ関連ペプチド/ニューロペプチドY(AgRP/NPY)およびプロオピオメラノコルチン(POMC)ニューロンのセット、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)およびソマトスタチン(SST)ニューロンのセット、アルギニンバソプレシン(AVP)および血管作動性腸ペプチド(VIP)ニューロンのセット、およびゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)およびキスペプチン/ニューロキニンB/ダイノルフィン(KNDy)ニューロンのセットにおける機能変化は、エネルギー代謝、ホルモン制御、サーカディアンリズム、および生殖における加齢性の生理学的低下に寄与する。視床下部媒介機能障害の進行の根底にある細胞メカニズムには、栄養素感知の調節不全、細胞間コミュニケーションの変化、幹細胞の枯渇、老化プログラミングの活性化、タンパク質恒常性の消失、および後成的変化が含まれる。
【0379】
弓状(ARC)視床下部ニューロンの機能の1つは、ホルモンと神経ペプチドに局所的および末梢的に適切に応答し、エネルギー恒常性に関与することである。弓状視床下部ニューロンは、PVNに投射しており、ARCを刺激すると、PVNのニューロンにドーパミンとGABAが同時放出され、ここで、ドーパミンによって興奮した食欲促進ニューロンがAgRPとNPYを合成し、POMCを合成する食欲不振ニューロンを阻害する。視床下部の腹内側核(VMH)は、低血糖イベントの検出と、それを克服するための生理学的逆制御反応の開始に関与している。したがって、視床下部をエロバノイドの標的として評価するために、C57BL/6J(WT)マウスと年齢を一致させたLeprdb(db/db糖尿病)マウスの脳からの視床下部スライスのエクスビボ器官型培養を使用し、MaestroPro MEA、Axion Biosystems、GAで実行される革新的なMaestro微小電極アレイ(MEA)を使用して、シナプス回路活性の変化および活動電位の列を発火することがわかった(以下を参照のこと)。
【0380】
糖尿病におけるエロバノイドの標的としての視床下部を評価するための微小電極アレイ(MEA)測定
C57BL/6J(WT)マウスと年齢を一致させたLeprdb(db/db糖尿病)マウスの脳から得られた視床下部スライス(厚さ200μm)のエクスビボ器官型培養が電気的に活性であり、 Axion Biosystems、GAのMaestroPro MEAシステムで実行されるMaestro微小電極アレイ(MEA)を使用して、活動電位の列を発火できるかどうかを決定した。
【0381】
MEA測定は、Axion Biosystems、GAからの48ウェル微小電極アレイ(MEA)プレート(M768-tMEA-48W)を使用して実施された。MEAプレートの各ウェルには、細胞培養基板に埋め込まれた30nmの円形ナノポーラスPEDOT電極の4×4グリッドが含まれ、極間電極間隔は200μMだった。視床下部スライスを播種する準備として、ウェルをホウ酸ナトリウム緩衝液、pH8.4中の0.1%ポリエチレンイミン(PEI)で処理した。次に、ウェルをラミニン(6μg/mL)でプレコートし、視床下部スライス(厚さ200μm)を電極グリッドにプレーティングした。視床下部スライスをプレーティングし、GlutaMax(商標)およびPen Strep(Thermo Fisher、Gibco(商標))とともに、B27(商標)およびN2サプリメントを添加した完全な神経基礎培地で37℃および5%CO2で4日間培養した。
【0382】
MaestroPro MEAシステムの標準的な神経設定とAxISソフトウェアバージョン1.5.1.12を使用して、37℃の培地で自発活動電位の細胞外記録を行った。(Axion Biosystems)。データは、200~5000Hzのハードウェア周波数帯域幅で12.5kHzのレートでサンプリングされ、スパイク検出の前に高周波ノイズを除去するために、200~2500Hzのシングルオーダーバターワースバンドパスファイラーを使用してソフトウェアで再度フィルタリングされた。スパイク検出のしきい値は、各電極のフィルターされた電界電位のローリング標準偏差の6倍に設定された。5分間の記録スパンを使用して、ウェルの平均スパイクレート、およびスパイクレートが0.5/分以上の数として定義されたウェル内のアクティブ電極の数(「活性電極」)を計算した。電極あたりの記録されたスパイク数は、分析からノイズの多い電極を無視した後に平均化された。スパイクタイムスタンプは、スパイクラスタープロットを作成するためにNeuroexplorer 5.0(NEX Technologies)にエクスポートされた。
【0383】
MEAシステムを使用して、集団レベルの電気的活性が、さまざまな視床下部ニューロンから記録された。
図43を参照すると、左上のパネルには、C57Bl6(WT)オスマウスのバースト活性とスパイクヒストグラムを示す代表的なラスタープロットがあり、左下のパネルには、ELV(500nM)で処置されたC57Bl6(WT)オスマウスで処理されたラスタープロットがある。各ウェルのラスタートレースは、活性神経と接触している電極の視床下部ニューロンによる測定可能な発火を示した。各水平列は、ウェル内の電極を表している。自発的活性(孤立した単一スパイクと複数スパイクバースト)は、通常のC57Bl6 WT対照からの視床下部スライスで明らかだったが、中央と右上のパネルは、それぞれLeprdb(db/db糖尿病)のオスとメスのマウスのラスタープロットを示している。これらのプロットは、非同期フィールド電位とスパイク/バースト活性を示している。低レベルのスパイクは、興奮性の細胞自律的な欠乏または隣接する細胞からのシナプスドライブの欠如のいずれかから発生する可能性がある。これらのスパイクはすべて、ドーパミン(50nM)に続いて、GABA-アンタゴニストであるビククリン(10μM)を添加することで誘発された。NMDA(10μM)を添加すると、大きなスパイクの誘導はなく、ベースラインのようだった。中央と右下のパネルは、Leprdb(db/db糖尿病)のオスとメスの年齢が一致する対照マウスの視床下部切片で、ELV-34-6 Na(500nM)の追加によって非同期活性が克服され、同期スパイクが復元された。ELV34は、視床下部を神経変性から保護する可能性がある。ここでは、CNS制御障害をモデル化でき、多電極アレイ(MEA)システムを使用したHTSスクリーニング法を使用して、対照/疾患の状態の違いを描写できること、エロバノイドは、糖尿病の悪影響を逆転させるのに治療上の有用性があり、グルコース代謝のCNS制御において重要な役割を果たしうることを示した。
【0384】
成体肥満糖尿病マウス(db/db)における視床下部神経細胞死(Fluoro-Jade B染色による)のエロバノイドによる保護
Fluoro-Jade b(F-Jb)は、変性ニューロンを染色する。成体肥満糖尿病マウス(db/db)は、視床下部の器官型スライスでFJbシグナルの増加を示したが、野生型マウスは、無視できる量を示し、db/dbマウスの視床下部が神経変性を受けていることを示した。500nM ELV34との48時間のインキュベーションは、F-Jbシグナルの減少に反映される神経保護を誘発した(a)。
【0385】
エロバノイドが老化関連分泌表現型(SASP)をブロックすることを実証する、ヒト脳ニューロン/星状細胞の検証実験:老化ニューロンのβ-ガラクトシダーゼ染色
オリゴマーアミロイドベータ(Oaβ)(10μM)に曝露されたヒト神経膠(HNG)細胞で測定された老化関連β-ガラクトシダーゼ活性。(A~G)500nMの濃度のOaβ(10μM)および異なるエロバノイド(ELV)またはニューロプロテクチンD1(NPD1)で処理されたHNG細胞におけるSA-β-Gal活性。顕微鏡写真は、明視野顕微鏡で得られた。(H)(A~G)に示されるSA-β-Gal+細胞の定量化。SA-β-Gal+細胞は、少なくとも合計150個の細胞についての3つのランダムな視野においてスコアリングされた。結果は、染色されたSA-β-Gal+細胞のパーセンテージとして表される(平均±SEM)。統計分析は、Graphpad Prismソフトウェア8.3を使用して行われた。結果は、一元配置分散分析、続いてHolm Sidak事後検定により比較し、p<0.05は統計的に有意であるとみなした。
【0386】
同様に、老化関連β-ガラクトシダーゼ活性は、エラスチン(10μM)に曝露されたヒト神経膠(HNG)細胞で測定された。(A~G)500nMの濃度のエラスチン(10μM)および異なるエロバノイド(ELV)またはニューロプロテクチンD1(NPD1)で処理されたHNG細胞におけるSA-β-Gal活性。顕微鏡写真は、明視野顕微鏡で得られた。(H)(A~G)に示されるSA-β-Gal+細胞の定量化。SA-β-Gal+細胞は、少なくとも合計150個の細胞についての3つのランダムな視野においてスコアリングされた。結果は、染色されたSA-β-Gal+細胞のパーセンテージとして表される(平均±SEM)。統計分析は、Graphpad Prismソフトウェア8.3を使用して行われた。結果は、一元配置分散分析、続いてHolm Sidak事後検定により比較し、p<0.05は統計的に有意であるとみなした。実験計画:ヒト神経グリア(HNG)細胞は、Oaβまたはエラスチンを使用したチャレンジを受けた。
【0387】
次の目的は、本明細書で説明する成分をテストする。
【0388】
目的1)TNFα、IL1βまたは他の誘導物質による誘導の際の、糖尿病患者由来のヒト脂肪細胞における老化プログラミング活性化を、エロバノイドが中和するという予測をテストする。
【0389】
活性な褐色/ベージュのAT可塑性は、エネルギー消費を増加させ、高血糖と高脂血症の減少につながる。一方、その萎縮と不活化は、肥満と老化に関連している。
【0390】
目的2)遺伝的糖尿病マウスのHTがSPを発症し、それがシナプスの接続性と神経機能障害を損なうことをテストする。これは、遺伝的糖尿病マウスのHCが(我々の新しく開発されたMaestroシステムで)電気生理学的活動の乱れを示すことを示すデータによって裏付けられる。したがって、我々は、治療用エロバノイドを評価するためのモデルに加えて、メカニズムをテストするための新しい実験モデルを有する。
【0391】
目的3)糖尿病マウスに全身および/または鼻腔内投与した場合のエロバノイドの実験的治療効果をテストする。
【0392】
老化プログラミングおよび炎症に対抗するエロバノイドを実証するデータ
●ELV34は、IL1βで処置された糖尿病患者のヒト脂肪細胞において、TP53 mRNAのレベルを非糖尿病の対照レベルまで低下させた。IL1βは、脂肪細胞にインスリン抵抗性を誘発するサイトカインである18。
●同様に、IL8は、IL1βによって上昇し、糖尿病および非糖尿病脂肪細胞の両方で500nM ELV34によって約40倍低下した。メカニズムは不明であるが、ELV34は、糖尿病患者で観察される有害なシグナル伝達を中断または停止する治療薬剤となり得る。
【0393】
ELV34は、ヒト糖尿病脂肪細胞におけるIL1βの効果を元に戻す。A)実験計画。B)TaqmanリアルタイムPCRによるヒト糖尿病および非糖尿病脂肪細胞におけるTP53およびIL8の発現レベル。
【0394】
ELV34は、糖尿病のdb/dbマウス視床下部でIL1βによって誘発されるIL6(SASPのマーカー)のレベルを低下させ、視床下部ニューロンと星状細胞がSPを生じることを示した。オスとメスのマウスで異なる影響が観察されている。
【0395】
ELV34処置は、インスリン感受性を促進する脂肪細胞および他の組織(視床下部)から分泌される抗糖尿病性全身ホルモンであるアディポネクチンのレベルを上昇させた。A)ELV34で処置された糖尿病性視床下部は、メスおよびオスでアディポネクチンの増加傾向を示した。B)皮下脂肪組織(SAT)と内臓脂肪組織(VAT)におけるELV34の効果の違い。SATとVATは、褐変に対して異なる能力を持っている19。
【0396】
アプローチ
具体的な目的1
TNFα、IL1βまたは他の誘導物質による誘導の際の、糖尿病患者由来のヒト脂肪細胞における老化プログラミング活性化を、エロバノイドが中和するという予測をテストする。
【0397】
理論的根拠
TNFαは、肥満患者において循環しており、インスリン抵抗性の病因に重要な役割を果たしている20、21。さらに、インターロイキン1βシグナル伝達は、脂肪組織に対するマクロファージの効果を仲介する18。循環しているIL1βは、脂肪組織の機能の破壊を誘発する22。理論に拘束されることを望むものではないが、全身性IL1βはヒト脂肪細胞に老化を誘導する。サイトカインに曝露された脂肪細胞の機能の消失には、細胞の褐変不能が含まれ得る。活性な褐色/ベージュのAT可塑性は、エネルギー消費を増加させ、高血糖と高脂血症の減少につながる。一方、その萎縮と不活化は、肥満と老化に関連している。したがって、慢性的なゆっくりと進行する局所炎症状態は、HCとの接続だけでなく内部シグナルの制御を妨害するだろう。さらに、脂肪細胞がSPを生じると、アディポネクチンなどの脂肪組織によって産生および分泌される他のホルモンが減少する可能性がある。理論に拘束されることを望むものではないが、アディポネクチンは、抗糖尿病および抗炎症性効果があり、インスリン感受性改善薬としても機能する23。結果は、エロバノイド34(ELV34)が、糖尿病マウス(db/db)およびヒト糖尿病脂肪細胞のいくつかの病理学的特徴を元に戻すことができることを示した。これらの結果に基づいて、ヒト糖尿病脂肪細胞のSPとSASPを停止することができる。
【0398】
実験計画
実験1:IL1βが脂肪細胞で老化を誘発するかどうかを決定するために、1)老化のマーカー:p16、p21、p27、p53の発現と活性をテストする、2)β-ガラクトシダーゼ活性を測定する、ならびに3)IL1βおよび/またはTNFαに曝露された糖尿病患者および非糖尿病患者のヒト脂肪細胞における老化関連分泌表現型(SASP)を測定する。
【0399】
老化マーカーの発現をテストするために、糖尿病患者および非糖尿病患者からの分化脂肪細胞を、IL1βおよび/またはTNFαに6日間、ELV34有りおよび無しで曝露させ、採取し、それらのRNAを抽出してcDNA合成のテンプレートとして使用する。p16、p21、p27、およびp53の発現レベルは、Taqmanプローブを使用したリアルタイムPCRによって評価される。結果は、ハウスキーピング遺伝子:PPIA、GAPDH、β-アクチン、B2M、TBPおよびTFRCの発現によって正規化される。これらのマーカーの活性は、リン酸化と総タンパク質含有量の増加を検出するためのウエスタンブロットアッセイによって測定される。
【0400】
β-ガラクトシダーゼ活性アッセイは、特に老化細胞における内因性リソソームβ-ガラクトシダーゼの過剰発現と蓄積に基づいている24。老化マーカーの発現の検出と同様に、ヒト糖尿病および非糖尿病脂肪細胞は、IL1βおよび/またはTNFαに、6、9、および12日間、ELV34有りおよび無しで曝露され、その後、内因性酵素によって加水分解されたときの蛍光シグナルを生成するβ-ガラクトシダーゼ基質を使用して染色される。サンプルは、共焦点顕微鏡法とフローサイトメトリーの2つの方法で画像化される。
【0401】
第3の部分は、老化関連分泌表現型の決定である。脂肪細胞の老化は、EL34の存在下または非存在下で本明細書に記載されるように誘導され、得られた培地を収集し、濃縮し、ウエスタンブロットまたはELISAアッセイを介して候補についてテストされる。テストされる候補のいくつかは次のとおりである:IL-6、IL-7、IL-1α、-1β、IL-13、IL-15、IL-8、GRO-α、-β、-γ、MCP-2、 MIP-1a、エオタキシン、エオタキシン-3、TECK、ENA-78、I-309およびMMP-1、-3、-10、-12、-13、-14。
【0402】
実験2:褐色脂肪細胞と白色脂肪細胞の含有量におけるSPおよび/またはSASPの効果を評価するために、実験1の細胞を1)ヒト褐色脂肪(BAT)に豊富に含まれていることが分かっているCD137、TMEM26(膜貫通タンパク質26)、およびTBX1(Tボックス1)などの褐色組織のマーカーについてテストする。PGC-1α、PPARγ、C/EBPαおよびPRDM16は、IL1βおよび/またはTNFαに曝露された糖尿病および非糖尿病脂肪細胞でもウエスタンブロットを使用して評価され、それらの含有量の変動が確証され、それらの活性がルシフェラーゼレポーターアッセイによって測定される。次に、SPおよび/またはSASPを生じている脂肪細胞をELV34で処置し、本明細書に記載されているパラメーターがテストされる。
【0403】
実験3:IL1βおよび/またはTNFαに、6、9、12日間曝露された糖尿病脂肪細胞が、アディポネクチンを合成および放出する能力を評価すること。IL1βおよび/またはTNFαで処理された脂肪細胞は、リアルタイムPCR(
図X)、ウエスタンブロットアッセイを介してアディポネクチンmRNAの発現についてテストされ、培養培地が収集され、ELISAおよび/またはウエスタンブロットアッセイに供される。アディポネクチンの産生に対するELV34の効果は、本明細書に記載の手順を使用してテストされる。
【0404】
理論に拘束されることを望むものではないが、IL1βおよび/またはTNFαに曝露された糖尿病患者のヒト脂肪細胞では、老化とSASPを検出するが、非糖尿病脂肪細胞では検出しない。しかし、p16またはp21などの細胞周期阻害剤を過剰発現する細胞で老化様の表現型が引き起こされると、細胞は、老化細胞の多くの特徴を有する成長停止を生じるが、SASPを生じない25。したがって、理論に拘束されることを望むものではないが、p16またはp21が増加した場合にSASPは観察されない。
【0405】
理論に拘束されることを望むものではないが、糖尿病脂肪細胞は老化すると、BATマーカー:CD137、TMEM26(膜貫通タンパク質26)およびTBX1(T-box1)のより低い発現と、同時に褐色脂肪細胞で観察される遺伝的特徴の原因となる主要な転写因子の低活性とを示す。
【0406】
SPと並行して、理論に拘束されることを望むものではないが、糖尿病脂肪細胞におけるアディポネクチンの発現と分泌の減少が観察される。
【0407】
ELV34は、培養中の糖尿病脂肪細胞のSPとSASPを停止し、細胞の褐変とAdipoQの合成を促進する。
【0408】
具体的な目的2
遺伝的に糖尿病マウスのHTが、SPを発生させ、それがシナプスの接続性と神経機能障害を損なうことを検証する。これは、遺伝的糖尿病マウスのHCが(我々の新しく開発されたMaestroシステムで)電気生理学的活動の乱れを示すことを示すデータによって裏付けられる。したがって、我々は、治療用エロバノイドを評価するためのモデルに加えて、本明細書に記載の実施形態およびメカニズムを検証するための実験モデルを有する。
【0409】
理論的根拠
視床下部の神経炎症は、ニューロンの調節不全を誘発し、それが老化に入り、メタボリックシンドロームを引き起こす。
【0410】
実験計画
BKS.Cg-Dock7m+/+Leprdb/J糖尿病マウスと対照C57BLKS/Jを使用して調査結果を評価する。両方の性別のサンプルが含まれる。この系統のマウスは、II型糖尿病と肥満のフェーズIからIIIをモデル化するために使用される。これらの動物の脳を解剖し、スライスして視床下部、海馬、皮質を分離する。各器官型スライスは、B27を添加したNeurobasal培地を使用して個々のウェルに設定される。プレーティング後48時間の培地に500nM ELVを補充し、24時間後に器官型スライスを記録する。神経活動は、Axion BioSystemsのMaestro多電極アレイ(MEA)テクノロジーを使用して決定される。視床下部を構成するニューロンの不均一性のため、50nMのドーパミンと10μMのビククリンを追加することにより、テストしている視床下部ニューロンのアイデンティティを検証する。これは、満腹と摂食のために重要な腹膜(VTM)と弓状核の存在を示す。ELVの有りおよび無しでの対照と糖尿病マウスの視床下部の神経活動の比較は、この脳構造の基本的活動を提供し、ニューロンの機能を評価するのに役立つ。記録後、視床下部スライスが回収され、トータルRNAが抽出される。第1のストランドcDNAは逆転写され、老化プログラミングに関与する遺伝子の発現、ならびにインスリンシグナル伝達および感受性ならびにグルコース代謝が調べられる。候補(p53、p21、p16ink4a、およびBmi-1)のアップレギュレーションとダウンレギュレーションは、より多くの標的のパネルのウエスタンブロットまたはキャピラリーウエスタンブロットによってさらに確認される。
【0411】
結果
糖尿病マウスのHTの神経活性は、ドーパミンとビククリンに対する低下した感受性を有し、ニューロンの機能不全を示している。因果関係を調査することにより、対照と比較した糖尿病マウスにおけるSPおよびSASPのマーカーのアップレギュレーションが観察される。
【0412】
具体的な目的3
糖尿病マウスに全身および/または鼻腔内投与した場合のエロバノイドの治療効果を検証する。
【0413】
理論的根拠
投与経路は、薬物が通過しなければならない生物学的障壁の数を変更することによって、またはポンプおよび代謝メカニズムへの薬物の曝露を変更することによって、生物学的利用能に影響を及ぼす。点滴および鼻腔内肺などのさまざまな投与経路が効果的な薬剤投与経路として機能することを検証する。肺胞は、大きな表面と拡散に対する最小限の障壁を表している。肺はまた、血流として総心拍出量を受け取る。したがって、肺からの吸収は、非常に迅速かつ完全になる。0.9%生理食塩水(ビヒクル)に溶解したエロバノイドは刺激性がなく、以前の実験から、鼻腔内に非常に効果的に送達されることが見られた。意図された効果は、全身的である可能性がある。
【0414】
実験計画
BKS.Cg-Dock7m+/+Leprdb/Jマウスと対照C57BLKS/Jを使用して調査結果を評価する。この系統のマウスは、II型糖尿病と肥満のフェーズIからIIIをモデル化するために使用される。両方の性別のサンプルが含まれる。すべての動物実験は、Louisiana State University Health Sciences Centerによって発行された承認済みのIACUCプロトコルに従って実施される。鼻腔内投与は、軽く麻酔をかけたマウスに対して行われる。各マウスを滅菌手術用パッドに置き、軽く伸ばして首筋をしっかりと保持する。首筋をしっかりと握って、マウスを仰向けにするが、マウスに呼吸させ快適にさせるようにする。首とあごを平らにしてパッドと平行にした状態で、0.9%生理食塩水(ビヒクル)に分散したエロバノイドを含むピペッターの先端を、45度の角度でマウスの左鼻孔の近くに配置し、鼻孔に約5μLの薬剤を2~3秒間隔で、合計で10μL/鼻孔を投与する。マウスをこの位置に5秒間、または意識が回復するまで保持し、その後、もう一方の鼻孔に対して投与ステップを繰り返し、合計20μL/マウスとする。マウスがすべての液滴を受け取った後、材料が鼻孔内に消えるまで動物は仰向けに拘束されたままであり、その後ケージに戻される。4、24、48、72、120時間後、マウスを犠牲にする。内臓脂肪組織および皮下脂肪組織(VATとSAT)、ならびに脳を収集して視床下部を解剖し、器官型スライスを作製する。VATとSATを分離し、脂肪細胞を6つのウェルプレートにプレーティングし、脳を解剖して視床下部、海馬、皮質を収集する。組織を使用して、具体的な目的1および2のために設計された実験で説明されているパラメーターをテストする。
【0415】
結果
理論に拘束されることを望むものではないが、SPとSASPはLeprdb/JマウスのVAT、SAT、HTで停止する。また、ELV-34でdb/dbマウスを鼻腔内処置すると、これらのマウスのHTの自発的な電気的活性が回復する。さらに、VATとSATはアディポネクチンを合成して放出し、SPの再プログラミングを修復する。
【0416】
結果
1-1型糖尿病の治療薬としてのエロバノイドの使用の場合もあるが、肥満および2型糖尿病の治療薬としてのエロバノイドの強固な基盤を確立する。
【0417】
【0418】
実施例12-エロバノイドは、オリゴマーβ-アミロイド誘発遺伝子発現を打ち消し、光受容体を保護する
要約
神経変性疾患の発症は炎症を活性化し、進行性の神経細胞死ならびに認知障害(アルツハイマー病、AD)および視力障害(加齢性黄斑変性症、AMD)を引き起こす。どのように神経炎症を打ち消すことができるかは不明である。AMDでは、アミロイドβペプチド(Aβ)が網膜下ドルーゼンに蓄積する。5xFAD網膜では、光受容体細胞(PRC)死を伴わない初期機能障害(ERG)を発見し、恒常性促進/神経保護メディエーター、ニューロプロテクチンD1(NPD1)およびエロバノイド(ELV)の生合成経路の初期機能不全を特定した。野生型(WT)マウスの炎症環境を模倣するために、網膜下に注入されたオリゴマーβ-アミロイド(OAβ)によって網膜色素上皮(RPE)損傷/PRC死を引き起こし、ELV投与がそれらの効果を打ち消してこれらの細胞を保護することを観察した。さらに、ELVは、老化、炎症、オートファジー、細胞外マトリックスのリモデリング、およびAMDに関与する遺伝子発現のOAβ誘発変化を防止した。さらに、OAβはRPEを標的とするため、初代ヒトRPE細胞培養を使用し、OAβが細胞損傷を引き起こし、ELVがマウスと同様に遺伝子発現を保護および回復することを実証した。我々のデータは、OAβが、p16INK4a、MMP1、p53、p21、p27、Il-6の発現、および老化関連分泌表現型(SASP)のセクレトームの増強によって反映されるように老化を活性化し、続いてRPEとPRCが死滅し、エロバノイド32および34がこれらのイベントを鈍化し保護作用を引き出すことを示した。さらに、ELVは、AMD、オートファジー、および細胞外マトリックス(ECM)のリモデリングに関与する遺伝子のOAβ誘発発現を打ち消した。全体として、我々のデータは、ELVが、OAβ老化プログラムの誘導と炎症性転写イベントを抑制し、RPE細胞とPRCを保護し、したがってAMDの治療手段としての有用性があることを明らかにした。
【0419】
この例は、トランスジェニックアルツハイマー病5xFADマウスの初期の病態発現中に、網膜における恒常性促進/神経保護メディエーター、ニューロプロテクチンD1およびエロバノイドの生合成経路の機能不全を明らかにする。これらの変化は、光受容体細胞の消失に先行するそれらの機能障害と相関している。AMDでは、アミロイドベータ(Aβ)ペプチドがドルーゼンに蓄積する。したがって、野生型マウスの網膜の後ろにオリゴマーβアミロイドを注入すると、光受容体細胞の変性と、老化プログラムおよびSASPのアップレギュレーションを含みうる遺伝子発現の破壊が引き起こされる。同様の変化は、培養中のヒト網膜色素上皮細胞でも起こる。新しい脂質メディエーターであるエロバノイドは、Aβペプチド誘発遺伝子発現の変化およびSASPセクレトームを回復させ、これらの細胞を保護する。この研究は、AMDに対するエロバノイドの治療的評価の道を開く。
【0420】
序説
神経炎症性反応の発症には、脳および/または網膜の損傷に対抗することを目的とした内因性メディエーターの合成が含まれる。オメガ-3必須脂肪酸に由来するドコサノイドであるニューロプロテクチンD1(NPD1)は、炎症の開始を阻止し、光受容体細胞(PRC)の完全性を維持することによって、神経保護作用を示し(1)、初期アルツハイマー病(AD)の海馬CA1領域では欠損している(2)。ADでは、Aβが蓄積する。5xFAD網膜においても、Aβが蓄積し、AMDのAβは、炎症を含みPRC死に寄与する可能性のある恒常性障害を引き起こすが(3、4)、Aβ媒介細胞損傷を制限する方法は不明である。PRCでは、超長鎖PUFA(VLC-PUFA、C>28)は、ELOVL4(elongation of very long chain fatty acid-4)によって合成され(5、6)、ロドプシン機能に必要である(7)。ELOVL4遺伝子の変異(5)は、中枢性視力消失を伴うシュタルガルト網膜黄斑ジストロフィー3型を引き起こす。劣性ELOVL4変異は、発作、精神遅滞、および痙性四肢麻痺を引き起こし、脳の発達および生理学においてもVLC-PUFAの重要性を示している(8)。VLC-PUFAが、光受容体細胞の外節の特定のホスファチジルコリン分子種(PC)に組み込まれると、毎日のPRCディスクの脱落と食作用の後に網膜色素上皮(RPE)に到達する。32および34Cを有するELVは、PC放出VLCPUFAからRPE細胞内でホスホリパーゼA1によって酵素的に合成される(9、10)。これらの新しい脂質メディエーターは、光受容体細胞(9、10)およびニューロン(11)のアポトーシスを減衰させて、恒常性および生存促進タンパク質の存在量をアップレギュレートすることにより、RPE細胞を、補償されていない酸化ストレスから保護する能力を有する。
【0421】
Aβ42は、AMDにおけるドルーゼンおよびADの老人斑の成分である(12、13)。AMDでは、βアミロイドは炎症、RPEの形態と機能の破壊、およびPRCの完全性に寄与する(14、15)。5xFADトランスジェニックマウスは、早期発症の家族性ADに関連する変異を持っており、いくつかの非特異的な変化を示すが、PRCの変性を示す(16、17)。最初に、5xFADマウスにおけるPRC変性の発現に先行する脂質メディエーターの前駆体の利用可能性を理解しようとして、5xFAD網膜リン脂質プロファイルを調査した。次に、野生型(WT)マウスに、βアミロイドの最も細胞毒性のある形態の1つであるオリゴマーAβ(OAβ)を網膜下投与し、RPEおよびPRC、ならびに老化、オートファジー、AMD、細胞外マトリックス(ECM)のリモデリングおよびアポトーシスに関与する遺伝子の発現に対する結果を研究した。また、培養中のヒトRPE細胞をOAβに曝露し、同様のエンドポイントを評価した。最後に、我々は、エロバノイドが、老化プログラムおよび老化関連分泌表現型(SASP)を含むOAβ誘発遺伝子発現を改変して、RPEを保護し、光受容体細胞の完全性を維持するかどうかを評価した。
【0422】
結果
5xFADマウスの網膜およびRPEは、NPD1とELVの生合成につながる経路の欠損を明らかにする。
【0423】
PLA2およびPLA1によって切断されると、DHA(sn2)およびVLC-PUFA、n-3(sn1)を有するホスファチジルコリンのアシル鎖が、それぞれNPD1およびエロバノイドの合成につながる(10)。5xFAD網膜およびRPEで、これらのPC利用可能性を確認するために、ヒートマップ分析を実行した。これらの分析から2つのPCクラスターが明らかになった。5xFADとWTを比較すると、短鎖(<48C)および飽和(<6つの二重結合)(グループ1)と存在量の少ないクラスター(グループ2)である(
図52、パネルA)。これは、5xFAD網膜にはVLC-PUFA含有PCが比較的少ないことを意味する。ただし、5xFADおよびWTマウスの識別可能なメーカーはすべて短鎖を含むPCであったため、主成分分析(PCA)では有意差は認められなかった(
図52、パネルBおよびC)。したがって、ホスファチジルコリンに使用される時間が長いほど、5xFAD対WTの変動に対するPCの寄与が強調されるという基準で、ランダムフォレスト分類を実行した。その結果、ヒートマップ分析の観察を裏付けるVLC-PUFA含有PC領域に、使用頻度の高いPCが密に分布していることがわかった(
図52、パネルD)。したがって、PCは、(i)DHAおよびVLC-PUFA含有PC、(ii)DHA含有PC、および(iii)AA含有PCの3つのグループに分けて提示された。PCの構造およびm/z(
図60)。5xFADは、PC54:12、PC56:12、PC58:12を含む、DHAおよびVLC-PUFA含有PC(
図52、パネルE)、ならびにPC36:8、PC38:8およびPC44:12を含む、DHA含有PCの両方の減少を示している。(
図52、パネルF)。対照的に、PC36:4、PC38:4、およびPC36:5を含むAA含有PCは、5xFAD網膜で増加し(
図52、パネルG)、n-6/n-3(AA、DHA、およびVLC-PUFA)が変更された。次に、PCに含まれるDHAおよびVLC-PUFAは、RPE(
図53)とは異なり、5xFAD網膜(
図1A~G)で欠乏していることを観察した。PC38:6の含有量は、5xFADのRPEで高く(網膜とは対照的に-
図2E)、PC40:6は、5xFADおよびWTにおいて類似していた(
図2E)。ただし、PC44:12は、網膜と同様に5xFAD RPEでより低かった。さらに、PCの相対的な存在量は、網膜とRPEで異なる。網膜では、VLC-PUFA含有PCは、全PCの3%に達したが、これらのPCは、RPEでは0.3%未満だった。同様に、PC44:12は、網膜で5%、RPEで0.5%未満だった。したがって、DHAおよびVLC-PUFA含有PCは、RPEよりも光受容体細胞に豊富に含まれている。RPEにおけるこれらのPCのわずかな寄与にもかかわらず、我々の結果は、5xFAD RPEにおいてVLC-PUFA含有PCの欠乏を明らかにした。
【0424】
エロバノイドは、PC54-12およびPC56-12に保存されているVLC-PUFAから生成され、5xFAD網膜およびRPEに限られた量で存在する(
図1および2)。PC54-12およびPC56-12それぞれのsn-1位置からの放出を反映して、32:6n-3および34:6n-3の遊離プールサイズが増加していることがわかった。次に、エポキシド中間体を形成するためのその後のリポキシゲナーゼ触媒による酵素的エポキシ化、続いて加水分解酵素触媒による酵素的加水分解を検討し、その結果、Z、E、Eトリエン部分を有するジヒドロキシル化ELV-N-32またはELV-N-34が合成される(
図54、パネルA)。したがって、5xFAD RPEでの15-リポキシゲナーゼ-1の発現は、WTに満たないのに対し、5xFAD RPEで低く、網膜では変化しないNPD1の存在量と一致して(
図54、パネルB)、網膜では、2つの遺伝子型の間に違いはない(
図54、パネルCおよびD)。一方、EPAまたはDHAを伸長する酵素であるELOVL4は、PRCでのみ発現し、5xFADで低く、32:6n-3および34:6n-3、ならびにエロバノイドヒドロペルオキシド前駆体のモノヒドロキシ安定誘導体のプールサイズが小さいことと相関している(
図54、パネルB~D)。したがって、脂質、ならびにELVおよびNPD1経路に関与する2つの酵素の発現は、5xFADの網膜病態発生の初期の網膜およびRPEで著しく抑制される。
【0425】
5xFADでのPRC消失に先行する、初期の異常な網膜機能
6か月齢の5xFADマウスのb波ERG分析は、視覚感度の消失を明らかにしている(
図55、パネルA)。ただし、網膜の超微細構造、RPE細胞/ブルッフ膜界面、ディスク合成の外節基底領域、外境界膜(OLM)の完全性、細長い内節ミトコンドリア(分裂プロファイルなし)、およびPRCチップの放出とRPEによる食作用(
図55、パネルB)は、異常の欠如を実証した。さらに、組織学は、5xFADのPRC消失を示さなかった(
図55、パネルC)。他方、免疫蛍光顕微鏡学は、5xFADにおいて、Aβが、ドルーゼンのAMD表現型のようにRPE下の網膜に主に蓄積されることを示した(
図55、パネルD)。
【0426】
ELVは、RPEおよびPRCをOAβ誘発毒性から保護する
5xFAD網膜のエロバノイドにつながる恒常性促進経路の初期の欠損およびそれに続く網膜変性のために、次に、ELVが、最も細胞毒性のあるAβペプチドであるOAβの影響からの保護をもたらすかどうかを問うた(18)。網膜下にOAβを注射された6か月齢のWTマウスは、PRC変性を示した(
図56、パネルA、C)。眼底(左側)および対応する光コヒーレンストモグラフィー(OCT)(右側)の画像が描かれている。PRC層は、注入されていない網膜の105μmの厚さから、OAβが注入された網膜の35μmまで、細胞消失を受けた。非注射、PBS注射およびELV-32、ELV-34注射マウスは、PRC変性をもたらさなかった(
図56、パネルC、D)。フラットマウントRPEのZO-1染色により、オリゴマーβ-アミロイドがタイトジャンクションを破壊し、細胞損傷を引き起こしたことが明らかになった。ELV32またはELV34をOAβと同時注射し、続いて7日間エロバノイドを局所適用し(
図56、パネルA)、RPE形態の回復(
図56、パネルB)およびPRCの保護(
図56、パネルCおよびD)をもたらした。PBSまたはELV単独を注射されたマウスは、網膜下注射後の機械的ストレスのために、ONLのわずかな減少を示した(
図56、パネルCおよびD)。これらの結果は、エロバノイドがPRCの完全性を維持していることを示している。これは、OAβ毒性によって持続する細胞傷害に対抗するこれらの脂質メディエーターの能力を示している。
【0427】
ELVは、RPEにおけるOAβ誘発老化、オートファジー、AMDおよびECMリモデリング遺伝子発現、および網膜におけるアポトーシス遺伝子発現の破壊を打ち消す
OAβ媒介損傷に対するELV保護に関与するメカニズムを検索するために、単離されたRPEと網膜を定量的PCR(qPCR)に供した。我々は、RPEの注射後3日目に老化(19、20)、オートファジー(21)、AMD(22、23)およびECMリモデリング(24)に関与する遺伝子を調査することを選択した(
図56、パネルE~G)。さらに、網膜の細胞死関連遺伝子Bax、Bad、Casp3、Dapk1、Fasを調べた(図>56、パネルI)。老化、オートファジー、AMDおよびいくつかのECMリモデリング遺伝子発現のOAβ媒介アップレギュレーションは、エロバノイドによって打ち消された(
図56)。特定のマトリックスメタロプロテイナーゼ(1b、10、14および7)は、OAβの影響を受けなかった。さらに、RPEでは、主要な老化p16INK4aのタンパク質の存在量(
図56、パネルH)は、その遺伝子発現におけるもの(
図56、パネルE)と相関している。
【0428】
ELVは、OAβ誘発老化およびその他の遺伝子転写破壊からヒトRPE細胞を保護する
5xFADマウスは、Aβ蓄積時にRPEタイトジャンクションの破壊を示すため(16)、OAβによるチャレンジを受けた培養中の初代ヒトRPE細胞を使用して、損傷を評価し、ELV-N-32またはELV-N-34保護を評価した(
図57、パネルA)。7日間のインキュベーション後、SA-β-Gal染色(
図57、パネルBおよびC)によって明らかにされたように、オリゴマーのβ-アミロイドは、RPE細胞の形態を変化させ、SASPを活性化し、老化遺伝子(
図57、パネルE)、AMD、マトリックスメタロプロテイナーゼおよびオートファジー関連遺伝子(
図57、パネルD)のセットの発現を増強した。興味深い点は、いくつかのマトリックスメタロプロテイナーゼが影響を受けたが、RPE細胞で発現されたすべてが影響を受けたわけではないということである。他の細胞では、SASPは、主に炎症誘発性であり、ケモカイン、メタロプロテイナーゼ、プロテアーゼ、サイトカイン(TNF-α、IL-6、IL-8など)、およびインスリン様成長因子結合タンパク質を含むことが示されている。研究された老化遺伝子は、P16 INK4a(Cdkn2a)、p21CIP1(Cdkn1A)、p27 KIP(Cdkn1B)、p53(Tp53またはTRP53)、IL6およびMMP1である。ELV-N-32およびELV-N-34は、これらの効果を元に戻した(
図57、パネルB~D)。
【0429】
考察
AMDおよびアルツハイマー病は、それぞれ網膜および脳にβアミロイドの蓄積を示す。Aβベースの抗体およびADの抗炎症性療法はほとんど成功していないため、メカニズムを理解し、Aβ神経毒性を制限する特定の薬剤を特定する必要がある(25~28)。RPEは、PRCの完全性を維持し、その機能障害は、AMDを含む網膜変性疾患でPRCの死を引き起こす。本明細書において、我々は、Oaβが、インビボで齧歯動物および初代ヒトRPE細胞培養の両方でRPEとPRC病態を促進することを示す。5xFAD PRC変性の病因の初期に、我々は、NPD1およびELV生合成の前駆体および経路の欠損を報告する。これらの欠損は、ERGがすでに障害を示している一方で、ECMおよびPRC損傷の組織学的兆候に先行する。これらの発見は、発症および初期の疾患進行中の主要な恒常性促進性脂質シグナル伝達の前駆症状の変化を明らかにする。バイオマーカーとして使用されるほか、これらはAMDの治療標的としても検討できる。
【0430】
遺伝的動物モデルには、Aβ形成をブロックするとAMD病態が減少するという明確な証拠はない。しかしながら、PRCを保護するために実験的に眼のAβを阻害することを目的とした研究がある。例えば、Liu et al.は、10か月のAβワクチン接種が網膜沈着を阻害するが、ADトランスジェニックマウスにおいてミクログリア浸潤とアストログリオーシスを特徴とする網膜アミロイド血管症を引き起こすことを示した(29)。これの欠点は、能動免疫が重篤な副作用を引き起こす可能性があるという事実である。
【0431】
何人のAD患者がAMDを発症するか、またその逆も明らかではない。しかし、緑内障および糖尿病性網膜症を含みうるAMD以外の眼疾患とADとの間には相関関係がある(30)。進化する主要なシグナル伝達疾患メカニズムには、CFH、APOE(31~33)、およびマトリックスメタロプロテイナーゼ経路(34)が含まれ得る。我々のデータは、マウスへの網膜下OAβ注射が7日後にRPE細胞損傷とPRC消失を引き起こすことを示している。RPEに対するAβの有害な影響の健全性をテストするために、初代培養でヒトRPE細胞を使用し、インビボのげっ歯類動物と同様の損傷を引き起こすことを示した。さらに、インビボのげっ歯類モデルとインビトロのヒト細胞の両方で、遺伝子発現プロファイルの変化は類似した。Aβ合成は、RPEで起こり(35~38)、ドルーゼンに蓄積する。アミロイド前駆体タンパク質のプロセシング機能障害が、同じく神経節細胞に隣接する網膜内の内顆粒層へのペプチドの蓄積につながることが明らかになりつつあり(39~41)、その合成、存在量、分泌、および凝集は、年齢に依存して増加する(39)。我々のAβの網膜下注射は、RPEを標的とするAMDの病態に関連するいくつかの状態を再現している。
【0432】
インビボでの野生型マウスにおけるOAβ誘発RPEおよび光受容体細胞死がエロバノイドによって打ち消されたという発見は、オメガ-3脂肪酸からのこれらの特定の下流メディエーターの追加の生物活性を明らかにする。機械論的に、神経炎症性破壊は、AMD病態の初期段階に関与しており、いくつかの研究では、オメガ-3脂肪酸(42~46)の栄養補助食品が使用されており、これらの重要な脂肪酸がPRCおよびシナプスに供給されるには、腸、肝臓、血流輸送、細胞への取り込みなどを含む複雑なステップが含まれるため、明確な利点は得られていない(47、48)。AMDの合理的な治療アプローチは、神経保護生物活性を有するオメガ-3脂肪酸からのメディエーターを使用することであり得る。
【0433】
この研究は、SASPおよびRPEにおける老化関連遺伝子の発現によって示されるように、ELV32および34を、OAβ誘発老化のダウンレギュレーションメディエーターとして特定している。これらの条件下で、ヒト補体因子(49)および細胞外マトリックス遺伝子を含むオートファジーおよびAMD関連遺伝子のアップレギュレートされた発現は、エロバノイドによっても有益に標的とされた。したがって、ELV標的指向保護を含め、培養中のRPE細胞およびインビボでのRPEおよびPRCにおけるオリゴマーβ-アミロイド誘発効果の類似性は、ヒト網膜との関連性を示している。驚くべきことに、我々は、OAβ注射が光受容体細胞において老化ではなくアポトーシス関連の細胞死シグナル伝達を引き起こすことを観察した。ただし、エロバノイドは、RPEでのOAβ誘発老化とOAβ誘発PRCアポトーシスの両方を防止したことに注意することが重要である。
【0434】
結論として、RPE(例えば、VLC-PUFAを含むもの)および網膜(DHAおよびVLCPUFAを含むもの)におけるPC分子種の存在量の減少によって強調された、5xFADマウスにおけるPRC死前の恒常性促進経路の初期の欠損を明らかにした。また、遊離VLC-PUFAならびに前駆体27-および29-モノヒドロキシならびにELV-32とELV-34の安定誘導体それぞれのプールサイズが枯渇していることがわかった。さらに、網膜は、恒常性促進/神経保護のNPD1およびELVの合成のための経路の主要な酵素の欠乏を示し、明白なPRC損傷または消失はないが、機能障害を示す。エロバノイドは、RPEタイトジャンクションの破壊とそれに続くPRC細胞死を引き起こす、WTマウスに網膜下投与されたOAβの細胞毒性を打ち消した。我々のデータは、OAβがp16INK4a、MMP1、p53、p21、p27、Il-6、MMP1の遺伝子発現、SASPセクレトームの増強に反映される老化プログラムを活性化し、続いてRPEとPRCが死滅し、ELV-N-32とELV-N-34がこれらのイベントを鈍化し、両方の細胞の保護を引き出すことを示した。RPE細胞は最終的に分化し、神経上皮に由来する。これに関連して、老化したマウスの老化ニューロンとADのモデル(50)および星状細胞(51、52)も老化を発現し、近くの細胞の神経炎症を促進する分泌型SASPを発生させる(53~55)。我々の研究は、隣接する細胞がSASP神経毒性作用の標的となり、光受容体のパラクリン老化を誘発する可能性があることを示している。したがって、RPE細胞からのSASPは、オートクリンおよびパラクリンである可能性があり、結果として光受容体間マトリックス微小環境の恒常性を変化させ、炎症環境を作り出し、加齢(56)、加齢性病態(56)およびAMDに関連する機能の消失に寄与する。さらに、ELVは、光受容体間マトリックスのさらなる障害を示す、OAβ処理によって変化したECMリモデリングマトリックスメタロプロテイナーゼの発現を回復させる。進行中の炎症は、炎症老化と同様の低悪性度の無菌の慢性炎症誘発性状態である可能性があり、これは免疫系の老化にも関連している(56、57)。さらに、エロバノイドは、AMDおよびオートファジーに関与する遺伝子のOAβ誘発発現を打ち消した。理論に拘束されることを望むものではないが、エロバノイドは、遺伝子転写のイベントを標的とし(
図58)、老化および神経変性疾患の間の健康スパンを維持するための新しい統一制御メカニズムを提供する(56、58)。さらなる研究が必要であるが、我々の結果は、全体として、AMDの治療的な探索の手段としてのELVを示している。
【0435】
材料および方法
材料および方法。この情報には、動物、脂質抽出およびLC-MS/MSベースのリピドミクス分析、初代ヒトRPE培養、Aβ(1-42)オリゴマー化、SA-β-Gal染色、タンパク質抽出およびウエスタンブロット分析、RNA分離および定量PCR分析、免疫蛍光および共焦点顕微鏡、および統計が含まれ得る。
【0436】
【0437】
材料および方法
動物
すべての動物実験は、眼科および視覚研究における動物の使用に関するARVO声明に従って実施され、プロトコルはLSU Health New OrleansのInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって承認された。6か月齢の5xFADマウス(在庫番号:34848-JAX、The Jackson Laboratory、Bar Harbor,ME,USA)は、ヒトアミロイド前駆体タンパク質のFAD変異型(スウェーデン変異:K670N、M671L、フロリダ変異:I716V;およびロンドン変異:V717I)およびプレセニリン1(PS1、Psen1によってコードされた:M146L、L286V)トランスジーンを、神経特異的マウスThy1プロモーターの転写制御下において共過剰発現する。5xFADマウスは、トランスジーンおよび非トランスジェニックWT同腹仔に関して半接合体だった。ジェノタイピングは、テールDNAのPCRによって行われた。すべての分析は、マウスの遺伝子型に関してブラインドで実行された。網膜下注射のために、6か月齢のC57BL/6Jマウスに、ケタミン/キシラジンの腹腔内注射で麻酔をかけ、瞳孔を1.0%トロピカミド(Akorn、IL、USA)で拡張した。局所麻酔のために、0.5%塩酸プロパラカイン(Akorn)を適用した。眼は、レンズを乱すことなく、角膜強膜接合部と鋸状縁の間の硝子体腔へと30ゲージの針で穿刺された。解剖顕微鏡下で、5μlのハミルトン注射器(Hamilton Company、Reno,NV,USA)に取り付けられた33ゲージの鈍針を使用して、化合物を網膜下領域に送達した。非注射マウスを陰性対照として使用し、PBS注射マウスを偽物に使用した。注入量は、PBS、10μMのOAβ、10μMのOAβ+200ng ELV-N-32、200ng ELV-N-32単独、10μMのOAβ+200ng ELV-N-34または200ng ELV-N-34単独を含む2μlだった(n=12/グループ)。すべてのグループに局所用液滴を投与した:PBSのみまたはELV-N-32(200nM)またはELV-N-34(200nM)、1日2回3または7日間。
【0438】
脂質抽出およびLC-MS/MSベースのリピドミクス分析
網膜またはRPE/脈絡膜を3mlのMeOHでホモジナイズした後、6mlのCHCl3および5μlの重水素標識脂質の内部標準混合物(AA-d8(5ng/μl)、PGD2-d4(1ng/μl)、EPA-d5(1ng/μl)、15-HETE-d8(1ng/μl)、およびLTB4-d4(1ng/μl))を添加した。サンプルを30分間超音波処理し、-80℃で一晩保存した。次に、上澄みを集め、ペレットを1mlのCHCl3/MeOH(2:1)で洗浄し、遠心分離し、上澄みを合わせた。上澄みに2mLの蒸留水(pH3.5)を加え、ボルテックスし、遠心分離した後、0.1N HClで上相のpHを3.5~4.0に調整した。下相をN2下で乾燥させた後、1mlのMeOHに再懸濁した。LC-MS/MS分析は、フロースルーニードルを備えたAcquity IクラスUPLCを備えたXevo TQ(Waters、Milford,MA,USA)で実施した。PCおよびPE分子種分析では、サンプルをN2で乾燥させた後、20μlのサンプル溶媒(アセトニトリル/クロロホルム/メタノール、体積で90:5:5)に再懸濁した。Acquity UPLC BEH HILIC1.7-μm、2.1×100-mmカラムを、移動相(0.5ml/min)として、溶媒A(アセトニトリル/水、1:1;10mM酢酸アンモニウム、pH8.3)と溶媒B(アセトニトリル/水、95:5;10mM酢酸アンモニウム、pH8.3)の混合物とともに使用した。溶媒B(100%)を最初の5分間均一濃度で実行し、次に溶媒Aについて20%まで8分間勾配で実行し、溶媒Aについて65%まで0.5分間増加させ、溶媒Aについて65%の均一濃度で3分間実行した。次に平衡化のために3.5分間溶媒Bについて100%まで戻した。カラム温度は30℃に設定した。各PCおよびPE種の量は、PCおよびPE/サンプルの合計の%として計算された。脂肪酸およびそれらの誘導体の分析のために、6つの網膜または6つのRPE/脈絡膜をプールし、本明細書に記載されているようにホモジナイズした。サンプル(1mlのMeOH中)を9mlのH2OとpH3.5で混合し、C18カラム(Agilent、Santa Clara,CA,USA)にロードし、10mlのギ酸メチルで溶出し、N2で乾燥させ、50μlのMeOH/H2O(1:1)に再懸濁し、Acquity UPLC HSS T3 1.8-μm 2.1×50-mmカラムに注入した。移動相45%溶媒A -H2O+0.01%酢酸および55%溶媒B -MeOH+0.01%酢酸-、最初は0.4ml/minの流量、次に最初の10分間は15%溶媒Aまでの勾配、18分間は2%溶媒Aまでの勾配、2%溶媒Aを25分まで均一濃度で実行し、次に45%溶媒Aまで勾配を戻して30分まで再平衡化する。脂質標準(Cayman、Ann Arbor,MI,USA)を使用して、チューニングおよび最適化を行い、各化合物の検量線を作成した。
【0439】
初代ヒトRPE培養
初代ヒトRPE細胞を用いたすべての実験は、LSUHNOの施設内倫理委員会によって承認され、NIHガイドラインに従って実施された。細胞は、アイバンクから提供された匿名のドナーから収集された。簡単に言えば、頭部外傷による死亡後24時間以内に、眼の病態のない19歳の白人男性の球体がNDRIから得られた。眼球を開き、RPE細胞を採取して培養し(1、2)、10%FBS、5%NCS、非必須アミノ酸、ペニシリン-ストレプトマイシン(100U/mL)、ヒト線維芽細胞成長因子10ng/mlを添加したMEM培地で増殖させて、5%CO2を一定に供給しながら37℃で培養した。細胞の完全性は、以前の研究(3)と同様に検証された。オリゴマーAβ処理のために、細胞を6ウェルプレートに30,000細胞/cm2で播種した。2日後、サブコンフルエントの細胞を10μM OAβまたはPBS(ビヒクル対照)で処理した。
【0440】
Aβ(1-42)オリゴマー化
Aβ(1-42)(HFIP処理、ANASPEC Company、Fremont,CA,USA,Cat AS-64129)を、1%NH4OH/水およびDMSOを添加して500μMの濃度になるように再懸濁し、10分間超音波処理した。次に、低結合ポリプロピレンマイクロ遠心チューブ内で滅菌リン酸緩衝液でt Aβ(1-42)を4℃で24時間希釈することにより、オリゴマー化を行った。オリゴマー化は、マウスモノクローナル6E10抗体を使用したウエスタンブロットによって確認された(
図64)。
【0441】
老化関連β-ガラクトシダーゼ(SA-β-Gal)染色
SA-β-Gal染色キット(Cat 9860、Cell Signaling Technology、MA,USA)を使用して細胞を可視化した。簡単に説明すると、RPE細胞をPBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で15分間固定した後、再度PBSで洗浄し、染色液ミックスで37℃(CO2なし)で一晩インキュベートした。CO2の存在によってpHが変化し、染色結果に影響を与える可能性がある。写真は、青色発色後、明視野顕微鏡(Nikon Eclipse TS100)の200X倍率で撮影し、細胞をウェルごとに10の異なるランダムな視野においてカウントした。
【0442】
タンパク質抽出およびウエスタンブロット分析
サンプルをRIPA緩衝液で溶解し、タンパク質をBradfordアッセイ(Bio-Rad、Hercules,CA,USA)で測定した。変性後、各培地サンプル20μlまたは細胞/組織サンプルの総タンパク質30μgをSDS-PAGE(4~12%勾配)ゲル(Thermo Fisher Scientific、Waltham,MA,USA)で分離し、ニトロセルロース膜(Bio-Rad)に転写した。膜をPBST中の5%脱脂粉乳でブロックし、一次抗体(
図66)で1時間プローブし、PBSTで3回洗浄し、二次抗体(GE Healthcare,Chicago,IL,USA)で1時間プローブし、PBSTで3回洗浄した。タンパク質バンドは、LAS 4000イメージングシステム(GE Healthcare)を使用して視覚化された。デンシトメトリーデータは、95%の信頼水準で統計的に分析された。
【0443】
RNAの単離およびqPCR分析
細胞培養培地を除去し、細胞をPBS 1Xで洗浄し、セルスクレーパーを使用してサンプルを収集した。RNeasy Plus Mini Kit(Qiagen、Hilden,Germany)を使用して全RNAを単離した。
【0444】
インビボ実験では、眼球の眼球摘出術を行い、角膜、水晶体、および虹彩を含む前眼部を取り出し、網膜を残りの眼杯から分離した(RPE/脈絡膜)。RNeasy Plus Mini Kit(Qiagen)を使用して、総網膜および眼杯(RPE/脈絡膜)RNAを単離した。1μgの全RNAをiScript cDNA合成キット(Bio-Rad)を使用して逆転写し、BrightGreen 2X qPCR MasterMix(Applied Biological Materials Inc.,Richmond,BC,Canada)および検証済みプライマー(SI付録、表S2)を使用して反応を行った。定量的PCRは、CFX-384リアルタイムPCRシステム(Bio-Rad)で実行された。標的遺伝子の発現は、ハウスキーピング遺伝子の幾何平均に対して正規化され、相対的発現は、比較しきい値サイクル法(ΔΔCT)によって計算された。
【0445】
免疫蛍光および共焦点顕微鏡
ホールマウントRPE染色では、眼球の眼球摘出術を行い、4%PFAで15分間前固定した。次に、RPEシートを含む眼杯を4%PFAで30分間固定し、PBSで3回洗浄し、続いて室温で1時間ブロックするステップを行った。一次抗体(ZO-1)を4℃で48時間インキュベートすることにより免疫染色を行った。次に、眼杯をPBSで3回洗浄し、二次抗体とともに4℃で12時間インキュベートした。初代ヒトRPE細胞とマウス眼杯は、2枚のガラスカバースリップの間のProLong(商標)Gold Antifade Mounting培地(Thermo Fisher Scientific)に埋め込まれた。写真は、オリンパスFV1200顕微鏡(Olympus,Japan)で撮影された。画像は、ソフトウェアImageJ(rsb.info.nih.gov/ij/)によって分析された。
【0446】
スペクトル領域-光コヒーレンストモグラフィーのイメージングおよび分析
注射の7日後、マウスをipケタミン/キシラジンで麻酔し、局所1.0%トロピカミドで瞳孔を拡張し、OCTイメージング用に特注のホルダーに入れた(体温をヒートパッドで38℃に維持)。網膜は、Heidelberg Spectralis HRA OCTシステム(Heidelberg Engineering、Heidelberg,Germany)を使用して、視神経乳頭を通る水平経線に沿って画像化された。軸方向の解像度は、7mm光学および3.5mmデジタルである。生のOCT Bスキャン断面画像は、μm単位のスケールでエクスポートされ、ImageJ(http//imagej.nih.gov/ij)で開かれた。PRC層の厚さは、外網状層の直後の外顆粒層の先端からPRCの外節までの幅として定義された。同じスキャンで3回の測定が行われ、平均化された。平均および平均の標準誤差(SEM)を計算した(n=4/グループ)。スチューデントのT検定を使用して統計的有意性を計算し、0.05未満のP値を有意と見なした。
【0447】
統計
データは、3回以上の独立した実験の平均±SEMとして表される。データは、一元配置分散分析とそれに続く95%信頼水準でのTukey HSD事後検定によって分析され、さまざまなグループが比較され、P<0.05で有意であるとみなされた。ピアソン関係分析は、要因間の関係を分析するために使用された。統計分析は、BioVinciソフトウェア(Bioturing INC.、San Diego,CA,USA)を使用して実行された。
【0448】
【0449】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> THE BOARD OF SUPERVISORS OF LOUISIANA STATE UNIVERSITY AND
AGRICULTURAL AND MECHANICAL COLLEGE
PELAEZ, Ricardo Palacios
<120> VERY-LONG-CHAIN POLYUNSATURATED FATTY ACIDS, ELOVANOID
HYDROXYLATED DERIVATIVES, AND METHODS OF USE
<150> US 62/964,995
<151> 2020-01-23
<150> US 62/924,359
<151> 2019-10-22
<150> US 62/923,770
<151> 2019-10-21
<150> US 62/895,737
<151> 2019-09-04
<160> 115
<170> PatentIn version 3.5
<210> 1
<211> 18
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 1
Ser Tyr Asp Tyr Leu Val Ile Gly Gly Gly Ser Gly Gly Leu Ala Ser
1 5 10 15
Ala Arg
<210> 2
<211> 21
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 2
Ala Asp Phe Asp Asn Thr Val Ala Ile His Pro Thr Ser Ser Glu Glu
1 5 10 15
Leu Val Thr Leu Arg
20
<210> 3
<211> 15
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 3
Thr Tyr Ser Thr Ser Phe Thr Pro Met Tyr His Ala Val Thr Lys
1 5 10 15
<210> 4
<211> 19
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 4
His Val Leu Gly Pro Asn Ala Gly Glu Val Thr Gln Gly Phe Ala Ala
1 5 10 15
Ala Leu Lys
<210> 5
<211> 9
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 5
Val Glu Leu Thr Pro Val Ala Ile Gln
1 5
<210> 6
<211> 23
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 6
Val Val Gly Phe His Val Leu Gly Pro Asn Ala Gly Glu Val Thr Gln
1 5 10 15
Gly Phe Ala Ala Ala Leu Lys
20
<210> 7
<211> 13
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 7
Val Leu Asp Phe Val Thr Pro Thr Pro Leu Gly Thr Arg
1 5 10
<210> 8
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 8
gctcaactac ggtgcagatt c 21
<210> 9
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 9
gcacgatgtc ttgatgtccc 20
<210> 10
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 10
cgagaacggt ggaactttga c 21
<210> 11
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 11
ccagggctca ggtagacctt 20
<210> 12
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 12
tcaaacgtga gagtgtctaa cg 22
<210> 13
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 13
ccgggccgaa gagatttctg 20
<210> 14
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 14
gcgtaaacgc ttcgagatgt t 21
<210> 15
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 15
tttttatggc gggaagtaga ctg 23
<210> 16
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 16
ctgcaagaga cttccatcca g 21
<210> 17
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 17
agtggtatag acaggtctgt tgg 23
<210> 18
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 18
aggctcgtgg tcagaacaac 20
<210> 19
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 19
gttagacgcc acccattttc c 21
<210> 20
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 20
cctggtaatg gcccctcctc 20
<210> 21
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 21
ccccattgct ctgtgccttg 20
<210> 22
<211> 19
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 22
ctgacaggat gcctagccg 19
<210> 23
<211> 19
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 23
cgcaggtaat cccagaagc 19
<210> 24
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 24
gtgatgctca ggtatccatc ca 22
<210> 25
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 25
cacagttctc aaagcacagc g 21
<210> 26
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 26
gcaactgttc ctgaactcaa ct 22
<210> 27
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 27
atcttttggg gtccgtcaac t 21
<210> 28
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 28
gaggaagtcc agtgtccagc 20
<210> 29
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 29
ttgctgatgg caacttcaac 20
<210> 30
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 30
ctcctcctcc atcccttcat 20
<210> 31
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 31
gagcaacatt catcagcagg 20
<210> 32
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 32
tgtacgcgca caagctagaa tt 22
<210> 33
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 33
tggaaagtgg agtccaggga ga 22
<210> 34
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 34
gatgaacttg gccgcatact 20
<210> 35
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 35
atgactgtgt tcaggcagga 20
<210> 36
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 36
gatgcacact ctgcgatgaa g 21
<210> 37
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 37
cagtgttcac agccaggaga at 22
<210> 38
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 38
ggtaaataga ttcatgccag aac 23
<210> 39
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 39
ccatgtacta gaatcacggg 20
<210> 40
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 40
agtctttgag gaggaaggcg ata 23
<210> 41
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 41
caaacctagg cctggcagaa 20
<210> 42
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 42
aatccttgcc catgcctttc aacc 24
<210> 43
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 43
ccaaattcat gagcagccac gaga 24
<210> 44
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 44
ttctggtctt ctggcacacg cttt 24
<210> 45
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 45
ccaagctcat gggcagcaac aata 24
<210> 46
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 46
ccttaaaagt atggagcgac gtca 24
<210> 47
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 47
agcgttccca tactttacgc g 21
<210> 48
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 48
acgacataga cggcatccag tatc 24
<210> 49
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 49
aggtatagtg ggacacatag tggg 24
<210> 50
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 50
accaacctat tcctggttgc tgct 24
<210> 51
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
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<400> 51
atggaaacgg gacaagtctg tgga 24
<210> 52
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 52
cactccctgg gtctctttca 20
<210> 53
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 53
tttgtctggg gtctcaggtc 20
<210> 54
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 54
ccgccatgca aaagttctat 20
<210> 55
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 55
gcccacctta ggggtgtaat 20
<210> 56
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
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<400> 56
tgcagatcga acagttctgg 20
<210> 57
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 57
tcgttcgcct ttgaagaagt 20
<210> 58
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 58
tgaatttggc cactctctgg gtct 24
<210> 59
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 59
tctgaatgcc tgcaatgtcg tcct 24
<210> 60
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 60
tagaagcaac tgggcaactg gaca 24
<210> 61
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 61
accgcttcat ccatcttgac ctct 24
<210> 62
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 62
catgttggac agtggtggac 20
<210> 63
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 63
gaagtggccg agtacctgac 20
<210> 64
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 64
acagcttctg gatgaaaggc 20
<210> 65
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 65
tgggactgca gaatgacaga 20
<210> 66
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 66
tgtggttgct tgcttcagac 20
<210> 67
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 67
gaaggattca ccttcctagc g 21
<210> 68
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 68
ggcgagtttc aataaatggc 20
<210> 69
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 69
ccaggaactc acagctccat 20
<210> 70
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 70
gtgacgttga catccgtaaa ga 22
<210> 71
<211> 19
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 71
gccggactca tcgtactcc 19
<210> 72
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 72
aggtcggtgt gaacggattt g 21
<210> 73
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 73
tgtagaccat gtagttgagg tca 23
<210> 74
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 74
atgccgacaa taacatgaag gc 22
<210> 75
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 75
acacgcttac aatagcccag g 21
<210> 76
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 76
agaacaatcc agactagcag ca 22
<210> 77
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 77
gggaacttca catcacagct c 21
<210> 78
<211> 18
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 78
gggggcacca gaggcagt 18
<210> 79
<211> 19
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 79
ggttgtggcg ggggcagtt 19
<210> 80
<211> 19
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 80
tgtccgtcag aacccatgc 19
<210> 81
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 81
aaagtcgaag ttccatcgct c 21
<210> 82
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 82
taattggggc tccggctaac t 21
<210> 83
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 83
tgcaggtcgc ttccttattc c 21
<210> 84
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 84
cccctcctgg cccctgtcat cttc 24
<210> 85
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 85
gcagcgcctc acaacctccg tcat 24
<210> 86
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 86
cacacaagat ggatggtcgc 20
<210> 87
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 87
ggatggcagg caacgtctat 20
<210> 88
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 88
actgccatcc aatcgagacc 20
<210> 89
<211> 25
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 89
gatggcttga agatgtactc gatct 25
<210> 90
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 90
ttcctggcag gatgccaggc 20
<210> 91
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 91
ggtcagttgt tcctccagtt c 21
<210> 92
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 92
agctacgaat ctccgaccac 20
<210> 93
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 93
cgttatccca tgtgtcgaag aa 22
<210> 94
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 94
gatggcggat gggtagatac a 21
<210> 95
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 95
tcttcacata gtgctgagca atc 23
<210> 96
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 96
agaagctgtt tcgtcctgtg g 21
<210> 97
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 97
aggtgtttcc aacattggct c 21
<210> 98
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 98
atgatccctg taacttagcc ca 22
<210> 99
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 99
cacggaagca aacaacttca ac 22
<210> 100
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 100
ggtgtctctc gcagattcat c 21
<210> 101
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 101
tcagtcttcg gctgaggttc t 21
<210> 102
<211> 17
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 102
agcctcgcct ttgccga 17
<210> 103
<211> 15
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 103
ctggtgcctg gggcg 15
<210> 104
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 104
tggacctgac ctgccgtcta 20
<210> 105
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 105
ccctgttgct gtagccaaat tc 22
<210> 106
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 106
gactcaccca tccgagttgt g 21
<210> 107
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 107
ctcccagtct tcatctggtc c 21
<210> 108
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 108
acttggggac cacctattcc t 21
<210> 109
<211> 19
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 109
atcgccaatc agacgctcc 19
<210> 110
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 110
ctggaagcct ggtatgagga t 21
<210> 111
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 111
cagggtcaag agtagtgaag gt 22
<210> 112
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 112
acaccgacca ccgtatctca 20
<210> 113
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 113
ctcaggataa tggtagccat gtc 23
<210> 114
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 114
gacagagagt caaactaacg tgg 23
<210> 115
<211> 19
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 115
gtccagcagg caagaaggt 19