(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014347
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20250123BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/28 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116834
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 元人
(72)【発明者】
【氏名】池田 良成
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109DA07
4M109EA02
4M109EA07
4M109EB12
4M109EB13
4M109EC07
(57)【要約】
【課題】インダクタンスを低減する。
【解決手段】半導体モジュール2は、出力電極及び入力電極を有する半導体チップと、配線端子51の負極導電層54と接触し、半導体チップの出力電極に電気的に接続される負極端子41と、負極端子41と離隔し、負極端子41と平行でありかつ配線端子51の正極導電層53と電気的に接触し、半導体チップの入力電極に電気的に接続される正極端子40と、を備える。半導体モジュール2は、さらに、配線端子51と対向する長側面10aから正極端子40及び負極端子41が同一方向に長側面10aより外部に延在し、半導体チップと正極端子40及び負極端子41とを固定し、長側面10aの正極端子40及び負極端子41の間に収納溝10gを有し、配線端子51の絶縁層52の絶縁端辺が収納溝10gに挿入される封止体10を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と前記絶縁層の一方の主面並びに他方の主面にそれぞれ設けられた第1導電層及び第2導電層とを含み、前記絶縁層の絶縁端辺が前記第1導電層及び前記第2導電層のそれぞれの導電端辺よりも外側に延在する配線端子と、
半導体モジュールと、
を備え、
前記半導体モジュールは、
第1電極及び第2電極を有する半導体チップと、
前記配線端子の前記第1導電層と接触する第1接触面を有する第1端部を含み、前記半導体チップの前記第1電極に電気的に接続される第1端子と、
前記第1端部と離隔し、前記第1接触面と平行でありかつ前記配線端子の前記第2導電層と電気的に接触する第2接触面を有する第2端部を含み、前記半導体チップの前記第2電極に電気的に接続される第2端子と、
前記配線端子と対向する基底面から前記第1端部及び前記第2端部が同一方向に前記基底面より外部に延在し、前記半導体チップと前記第1端子と前記第2端子とを固定し、前記基底面の前記第1端部と前記第2端部との間に窪みを有し、前記配線端子の前記絶縁層の前記絶縁端辺が前記窪みに挿入される固定部と、
を有する、
半導体装置。
【請求項2】
前記固定部は封止部材である、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1端部及び前記第2端部は平板状を成し、
前記第1端部及び前記第2端部は、平面視で、前記第1端部の第1幅方向と前記第2端部の第2幅方向とが平行を成して、前記基底面に設けられ、
前記窪みは平面視で前記第1幅方向及び前記第2幅方向に平行を成している、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記窪みは、前記第1幅方向及び前記第2幅方向に平行を成して前記基底面を横断して形成されている、
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1端部及び前記第2端部は平面視で前記基底面に前記第1幅方向及び前記第2幅方向にそれぞれ位置ずれして設けられている、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記配線端子の前記第1導電層及び前記第2導電層のそれぞれの前記導電端辺は、前記半導体モジュールの前記基底面に当接している、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記配線端子を含むキャパシタをさらに有する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
第1電極及び第2電極を有する第1半導体チップと、
前記第1半導体チップの前記第1電極に電気的に接続された第3電極及び第4電極を有する第2半導体チップと、
第1接触面を有する第1端部を含み、前記第1半導体チップの前記第1電極に電気的に接続される第1端子と、
前記第1端部と離隔し、前記第1接触面と平行である第2接触面を有する第2端部を含み、前記第2半導体チップの前記第4電極に電気的に接続される第2端子と、
前記第1端部及び前記第2端部が基底面から同一方向に前記基底面より外部に延在し、前記第1半導体チップと前記第2半導体チップと前記第1端子と前記第2端子とを固定し、前記基底面の前記第1端部と前記第2端部との間に窪みを有している固定部と、
を有する半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、半導体モジュールと当該半導体モジュールに接続されるコンデンサ(キャパシタ)とを含んでいる(例えば、特許文献1を参照)。半導体モジュールは、半導体チップと正極、負極のそれぞれの端子と半導体チップを封止する封止部材とを備え、封止部材の一面から正極、負極のそれぞれの端子が外側に延伸している(例えば、特許文献2,3,4を参照)。また、半導体モジュールにバスバーを接続するに当たり、ボルトの締め付けによらない方法が提案されている(例えば、特許文献5を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-141729号公報
【特許文献2】特開2019-117944号公報
【特許文献3】国際公開第2017/119226号
【特許文献4】国際公開第2014/002442号
【特許文献5】国際公開第2015/162712号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、インダクタンスが低減された半導体装置及び半導体モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、絶縁層と前記絶縁層の一方の主面並びに他方の主面にそれぞれ設けられた第1導電層及び第2導電層とを含み、前記絶縁層の絶縁端辺が前記第1導電層及び前記第2導電層のそれぞれの導電端辺よりも外側に延在する配線端子と、半導体モジュールと、を備え、前記半導体モジュールは、第1電極及び第2電極を有する半導体チップと、前記配線端子の前記第1導電層と接触する第1接触面を有する第1端部を含み、前記半導体チップの前記第1電極に電気的に接続される第1端子と、前記第1端部と離隔し、前記第1接触面と平行でありかつ前記配線端子の前記第2導電層と電気的に接触する第2接触面を有する第2端部を含み、前記半導体チップの前記第2電極に電気的に接続される第2端子と、前記配線端子と対向する基底面から前記第1端部及び前記第2端部が同一方向に前記基底面より外部に延在し、前記半導体チップと前記第1端子と前記第2端子とを固定し、前記基底面の前記第1端部と前記第2端部との間に窪みを有し、前記配線端子の前記絶縁層の前記絶縁端辺が前記窪みに挿入される固定部と、を有する、半導体装置を提供する。
【0006】
また、前記固定部は封止部材であってよい。
また、前記第1端部及び前記第2端部は平板状を成し、前記第1端部及び前記第2端部は、平面視で、前記第1端部の第1幅方向と前記第2端部の第2幅方向とが平行を成して、前記基底面に設けられ、前記窪みは平面視で前記第1幅方向及び前記第2幅方向に平行を成してよい。
【0007】
また、前記窪みは、前記第1幅方向及び前記第2幅方向に平行を成して前記基底面を横断して形成されてよい。
また、前記第1端部及び前記第2端部は平面視で前記基底面に前記第1幅方向及び前記第2幅方向にそれぞれ位置ずれして設けられてよい。
【0008】
また、前記配線端子の前記第1導電層及び前記第2導電層のそれぞれの前記導電端辺は、前記半導体モジュールの前記基底面に当接してよい。
また、前記配線端子を含むキャパシタをさらに有してよい。
【0009】
また、本発明の一観点によれば、第1電極及び第2電極を有する第1半導体チップと、前記第1半導体チップの前記第1電極に電気的に接続された第3電極及び第4電極を有する第2半導体チップと、第1接触面を有する第1端部を含み、前記第1半導体チップの前記第1電極に電気的に接続される第1端子と、前記第1端部と離隔し、前記第1接触面と平行である第2接触面を有する第2端部を含み、前記第2半導体チップの前記第4電極に電気的に接続される第2端子と、前記第1端部及び前記第2端部が基底面から同一方向に前記基底面より外部に延在し、前記第1半導体チップと前記第2半導体チップと前記第1端子と前記第2端子とを固定し、前記基底面の前記第1端部と前記第2端部との間に窪みを有している固定部と、を有する半導体モジュールを提供する。
【0010】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となりうる。
【発明の効果】
【0011】
開示の技術によれば、インダクタンスが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】実施の形態の半導体装置の側面図(X-Z面)である。
【
図3】実施の形態の半導体装置に含まれる半導体モジュールの斜視図である。
【
図4】実施の形態の半導体装置に含まれる半導体モジュールの側面図(X-Z面)である。
【
図5】実施の形態の半導体装置に含まれる半導体モジュールの側面図(Z-Y面)である。
【
図6】実施の形態の半導体装置に含まれる半導体モジュールの裏面図である。
【
図7】実施の形態の半導体モジュールに含まれる半導体ユニットの平面図である。
【
図8】実施の形態の半導体モジュールに含まれる半導体ユニットの断面図である。
【
図9】実施の形態の半導体モジュールに含まれる半導体ユニットの側面図(Z-Y面)である。
【
図10】実施の形態の半導体モジュールに含まれる絶縁回路基板の平面図である。
【
図11】実施の形態の半導体装置に含まれるキャパシタの斜視図である。
【
図12】実施の形態の半導体装置の連結箇所の断面図である。
【
図13】参考例の半導体装置の側面図(X-Z面)である。
【
図14】実施の形態(変形例1)の半導体装置に含まれる半導体モジュールの側面図(Z-Y面)である。
【
図15】実施の形態(変形例1)の半導体装置の連結箇所の断面図である。
【
図16】実施の形態(変形例2)の半導体装置に含まれる半導体モジュールの側面図(Z-Y面)である。
【
図17】実施の形態(変形例2)の半導体装置の連結箇所の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、「おもて面」及び「上面」とは、図の半導体装置1において、上側(+Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「上」とは、図の半導体装置1において、上側(+Z方向)の方向を表す。「裏面」及び「下面」とは、図の半導体装置1において、下側(-Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「下」とは、図の半導体装置1において、下側(-Z方向)の方向を表す。必要に応じて他の図面でも上記と同様の方向性を意味する。「高位」とは、図の半導体装置1において、上側(+Z方向)の位置を表す。同様に、「低位」とは、図の半導体装置1において、下側(-Z方向)の位置を表す。「おもて面」、「上面」、「上」と「裏面」、「下面」、「下」と「側面」とは、相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。また、以下の説明において「主成分」とは、80vol%以上含む場合を表す。また、「略同一」とは、±10%以内の範囲であればよい。また、「垂直」並びに「直交」、「平行」とは、±10°以内の範囲であればよい。
【0014】
[実施の形態]
実施の形態の半導体装置について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、実施の形態の半導体装置の平面図であり、
図2は、実施の形態の半導体装置の側面図(X-Z面)である。なお、
図2は、
図1の半導体装置1を+Y方向に見た側面図である。
【0015】
半導体装置1は、3つの半導体モジュール2a~2cとキャパシタ5とを含んでいる半導体モジュール2a~2cは、いずれも同じ構成、同じ機能を有する。以下では、半導体モジュール2a~2cを区別しない場合には、半導体モジュール2とする。
【0016】
半導体モジュール2に含まれる、後述する正極端子40及び負極端子41により、キャパシタ5に含まれる、後述する配線端子51のおもて側及び裏側がそれぞれ挟持されて、半導体モジュール2とキャパシタ5とが接続される。キャパシタ5の配線端子51に対して、半導体モジュール2の正極端子40及び負極端子41がそれぞれナット及びボルトで連結される。この連結の詳細について後述する。
【0017】
次に、実施の形態の半導体モジュール2の外観について、
図3~
図6を用いて説明する。
図3は、実施の形態の半導体装置に含まれる半導体モジュールの斜視図である。
図4は、実施の形態の半導体装置に含まれる半導体モジュールの側面図(X-Z面)である。
図5は、実施の形態の半導体装置に含まれる半導体モジュールの側面図(Z-Y面)である。
図6は、実施の形態の半導体装置に含まれる半導体モジュールの裏面図である。
【0018】
なお、
図4は、
図3の半導体モジュール2を-Y方向に見た側面図であり、
図5は、
図3の半導体モジュール2を、+X方向に見た側面図である。
図6は、
図3の半導体モジュール2を+Z方向に見た裏面図である。
図5の半導体モジュール2の-Y方向に見た側面図は、
図4を参照することができる。
図3の半導体モジュール2の-X方向に見た側面図は、省略するものの、長側面10cに出力端子42のみが延伸している。
【0019】
半導体モジュール2は、後述する半導体ユニット3(
図8~
図10)と半導体ユニット3を封止する封止体10とを含んでいる。封止体10は、固定部の一例であり、半導体ユニット3に含まれる半導体チップ30と正極端子40及び負極端子41とを固定する。封止体10は、立方体を成しており、平面視で矩形状を成す上面10eと上面10eに対向する底面10fとを含んでいる。封止体10は、さらに、上面10e及び底面10fの四方を順に取り囲む長側面10a、短側面10b、長側面10c、短側面10dを含んでいる。
【0020】
上面10e及び底面10fは略同じ形状であって、略同じサイズを成している。上面10e及び底面10fはそれぞれ全体的に略平滑である。上面10e及び底面10fはまた略平行を成している。上面10eから半導体ユニット3に含まれる制御端子43a,43bが鉛直上方(+Z方向)にそれぞれ延伸している。底面10fから半導体ユニット3に含まれる、後述する絶縁回路基板20の金属層23の裏面が露出している。金属層23は底面10fに対して略同一平面を成している。
【0021】
長側面10a,10cは、上面10e及び底面10fの長辺をそれぞれ接続している。接続箇所は略直角を成している。接続箇所は、直角に限らず、R面取り、C面取りされていてよい。長側面10aは、基底面であって、半導体ユニット3に含まれる正極端子40及び負極端子41が鉛直(-X方向)にそれぞれ延伸している。なお、側面視(+X方向に見て)で、負極端子41は上面10e側に、正極端子40は底面10f側にそれぞれ位置している。
【0022】
また、長側面10aは、側面視(+X方向に見て)で、正極端子40及び負極端子41(上面10eと底面10fと)の間に、窪みである収納溝10gが形成されている。収納溝10gは、長側面10aの±Y方向の幅を横断するように長側面10aに形成されている。また、収納溝10gは、平面視で、正極端子40及び負極端子41のそれぞれの幅方向に平行を成している。収納溝10gの(+X方向の)深さ、並びに、(±Z方向の)幅は、後述する、キャパシタ5の配線端子51の正極導電層53及び負極導電層54から突出する絶縁層52の先端が完全に入り込むことができるサイズであってよい。なお、収納溝10gの(+X方向の)深さは、封止体10内の負極端子41の連係領域41b(
図8を参照)に及ばない深さであってよい。負極端子41の連係領域41bの絶縁性が維持されるには、収納溝10gの底部と封止体10内の負極端子41の連係領域41bとの(±X方向)距離は1mm程度であってよい。なお、収納溝10gの開口はR面取り、C面取りされていてよい。
【0023】
長側面10cの中央部は、半導体ユニット3に含まれる出力端子42が垂直(+X方向)に延伸している。なお、出力端子42は、正極端子40と略同一の高さに位置してよい。
【0024】
短側面10b,10dは、上面10e及び底面10fの短辺をそれぞれ接続している。さらに、短側面10b,10dは、(封止体10の周径方向に沿って)長側面10a,10cの両辺をそれぞれ接続している。それぞれの接続箇所は略直角を成している。接続箇所は、直角に限らず、R面取り、C面取りされていてよい。
【0025】
このような封止体10は、熱硬化性樹脂を主成分として構成されている。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイミド樹脂が挙げられる。また、当該熱硬化性樹脂は充填剤を含んでよい。充填剤は、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウムが挙げられる。
【0026】
次に、半導体ユニット3について、
図7~
図10を用いて説明する。
図7は、実施の形態の半導体モジュールに含まれる半導体ユニットの平面図であり、
図8は、実施の形態の半導体モジュールに含まれる半導体ユニットの断面図である。
図9は、実施の形態の半導体モジュールに含まれる半導体ユニットの側面図(Z-Y面)である。
図10は、実施の形態の半導体モジュールに含まれる絶縁回路基板の平面図である。なお、
図8は、
図7の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。
図9は、
図7の半導体ユニット3を+X方向に見た側面図である。また、
図8及び
図9は、制御端子43a,43b及び各種ワイヤの図示を省略している。
【0027】
半導体ユニット3は、絶縁回路基板20と半導体チップ30と制御ワイヤ36とセンスワイヤ37と主電流ワイヤ38と正極端子40と負極端子41と出力端子42と制御端子43a,43bとを含んでいる。
【0028】
絶縁回路基板20は、平面視で矩形状である。絶縁回路基板20は、絶縁層21と絶縁層21のおもて面に形成された複数の回路パターン層と絶縁層21の裏面に形成された金属層23と、を有している。なお、複数の回路パターン層は、正極回路パターン層22a、負極回路パターン層22b、出力回路パターン層22c、制御回路パターン層22d,22f、センス回路パターン層22e,22gを含む。以降、これらを特に区別しない場合には、回路パターン層と称する。複数の回路パターン層及び金属層23の外形は、平面視で、絶縁層21の外形より小さく、絶縁層21の内側に形成されている。なお、複数の回路パターン層の形状、個数、大きさは一例である。
【0029】
絶縁層21は、平面視で矩形状を成す。また、絶縁層21は、角部が面取りされていてもよい。例えば、C面取りあるいはR面取りされていてもよい。絶縁層21は、外周辺である長側面21a、短側面21b、長側面21c、短側面21dにより四方が囲まれている。このような絶縁層21は、熱伝導性のよいセラミックスにより構成されている。セラミックスは、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、または、窒化珪素を主成分とする材料により構成されている。
【0030】
金属層23は、平面視で矩形状を成す。また、角部が、例えば、C面取りあるいはR面取りされていてもよい。金属層23は、絶縁層21のサイズより小さく、絶縁層21の縁部を除いた裏面全面に形成されている。金属層23は、熱伝導性に優れた金属を主成分として構成されている。金属は、例えば、銅、アルミニウムまたは、少なくともこれらの一種を含む合金である。金属板の耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。
【0031】
複数の回路パターン層は、既述の通り、正極回路パターン層22a、負極回路パターン層22b、出力回路パターン層22c、制御回路パターン層22d,22f、センス回路パターン層22e,22gを含む。複数の回路パターン層は、絶縁層21の縁部を除いた全面に形成されている。好ましくは、平面視で、複数の回路パターン層の絶縁層21の外周に面する端部は、金属層23の絶縁層21の外周側の端部と重畳する。
【0032】
複数の回路パターン層は、導電性に優れた金属により構成されている。このような金属は、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。また、複数の回路パターン層の表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。
【0033】
複数の回路パターン層に含まれる正極回路パターン層22aは、平面視で、F字状を成して、絶縁層21の長側面21aに面して形成されている。正極回路パターン層22aは、端子領域22a1とチップ領域22a2,22a3とを含んでいる。
【0034】
端子領域22a1は平面視で矩形状を成している。端子領域22a1は、絶縁層21のおもて面に、長側面21a(長手方向)に対して平行に延伸して形成されている。端子領域22a1の-Y方向の端部は、絶縁層21のおもて面の中心線Cから短側面21b側に所定の距離離れている。なお、中心線Cは、長側面21a,21cの中心を通り、短側面21b,21dに平行である。端子領域22a1の+Y方向の端部と短側面21bとの間には隙間が空いている。端子領域22a1は、長側面21aに面している。端子領域22a1内に示されている破線の領域(配置領域Ta)は、正極端子40の接合箇所である。
【0035】
チップ領域22a2は、平面視で矩形状を成している。チップ領域22a2は、端子領域22a1の+Y方向の端部から短側面21b,21d(短手方向)に平行を成して長側面21cに向かって延伸している。チップ領域22a2の+X方向の端部と長側面21cとの間には隙間が空いている。チップ領域22a2の+Y方向の端部と端子領域22a1の+Y方向の端部とは同一平面を成している。チップ領域22a2内に示されている2つの破線の領域は、半導体チップ30の接合箇所である。
【0036】
チップ領域22a3は、平面視で矩形状を成している。チップ領域22a3は、端子領域22a1の-Y方向の端部から+Y方向に所定の距離、離れた位置に接続されて、短側面21b,21dに平行を成して長側面21cに向かって延伸している。チップ領域22a3の+X方向の端部と長側面21cとの間には隙間が空いている。チップ領域22a2,22a3の+X方向の端部は同一平面を成している。また、チップ領域22a3の-Y方向の端部と中心線Cとは隙間が空いている。チップ領域22a2の-Y方向の端部と、チップ領域22a3の+Y方向の端部とは隙間が空いている。チップ領域22a3内に示されている2つの破線の領域は、半導体チップ30の接合箇所である。なお、チップ領域22a3の±Y方向の幅は、チップ領域22a2の同方向の幅と略等しい。
【0037】
複数の回路パターン層に含まれる負極回路パターン層22bは、平面視で、J字状を成して、絶縁層21の長側面21aに面して形成されている。負極回路パターン層22bは、端子領域22b1と配線領域22b2,22b3とを含んでいる。
【0038】
端子領域22b1は平面視で矩形状を成している。端子領域22b1は、絶縁層21のおもて面に、長側面21a(長手方向)に対して平行に延伸して形成されている。端子領域22b1の+Y方向の端部は、絶縁層21のおもて面の中心線Cから短側面21d側に所定の距離離れている。また、端子領域22b1の+Y方向の端部と、端子領域22a1の-Y方向の端部とは、中心線Cに対して線対称を成している。端子領域22b1は、長側面21aに面している。端子領域22b1内に示されている破線の領域(配置領域Tb)は、負極端子41の接合箇所である。
【0039】
配線領域22b2は、平面視で矩形状を成している。配線領域22b2は、端子領域22b1の+Y方向の端部から短側面21b,21d(短手方向)に平行を成して長側面21cに向かって延伸している。配線領域22b2の+X方向の端部と長側面21cとの間には隙間が空いている。配線領域22b2の+Y方向の端部と端子領域22b1の+Y方向の端部とは同一平面を成している。
【0040】
配線領域22b3は、平面視で矩形状を成している。配線領域22b3は、端子領域22b1の-Y方向の端部から短側面21b,21d(短手方向)に平行を成して長側面21cに向かって延伸している。配線領域22b3の+X方向の端部は長側面21c側の縁部を空けて形成されている。さらに、配線領域22b3の-Y方向の端部は短側面21dに面している。配線領域22b3の-Y方向の端部と端子領域22b1の-Y方向の端部とは同一平面を成している。なお、配線領域22b3の±Y方向の幅は、配線領域22b2の同方向の幅と略等しい。
【0041】
複数の回路パターン層に含まれる出力回路パターン層22cは、平面視で、櫛歯状を成して、絶縁層21の長側面21cに面して形成されている。出力回路パターン層22cは、端子領域22c1と配線領域22c2,22c3とチップ領域22c4,22c5とを含んでいる。
【0042】
端子領域22c1は平面視で矩形状を成している。端子領域22c1は、絶縁層21のおもて面に、長側面21c(長手方向)に対して平行に延伸して形成されている。端子領域22c1の+Y方向の端部は、絶縁層21のおもて面の短側面21bに面している。また、端子領域22c1の-Y方向の端部は短側面21dから隙間を空けて形成されている。端子領域22c1は、長側面21cにも面している。端子領域22c1内に示されている破線の領域(配置領域Tc)は、出力端子42の接合箇所である。
【0043】
配線領域22c2は、平面視で矩形状を成している。配線領域22c2は、端子領域22c1の+Y方向の端部から短側面21b,21d(短手方向)に平行を成して長側面21aに向かって延伸している。配線領域22c2の-X方向の端部は長側面21aに面している。配線領域22c2の+Y方向の端部と端子領域22c1の+Y方向の端部とは同一平面を成している。
【0044】
配線領域22c3は、平面視で矩形状を成している。配線領域22c3は、端子領域22c1から短側面21b,21d(短手方向)に平行を成し、チップ領域22a3及び配線領域22b2の間を長側面21aに向かって延伸している。配線領域22c3の-X方向の端部は端子領域22a1に面している。配線領域22c3の±Y方向の幅は、チップ領域22a3と配線領域22b2との間隔に対応すると共に、配線領域22c2の同方向の幅と略等しい。
【0045】
チップ領域22c4は、平面視で矩形状を成している。チップ領域22c4は、端子領域22c1から配線領域22b2と後述する制御回路パターン層22fとの間を短側面21b,21d(短手方向)に平行を成して長側面21aに向かって延伸している。チップ領域22c4の-X方向の端部は、端子領域22b1に面している。チップ領域22c4内に示されている2つの破線の領域は、半導体チップ30の接合箇所である。
【0046】
チップ領域22c5は、平面視で矩形状を成している。チップ領域22c5は、端子領域22c1の-Y方向の端部から、配線領域22b3と後述するセンス回路パターン層22gとの間を短側面21b,21d(短手方向)に平行を成して長側面21aに向かって延伸している。チップ領域22c5の-X方向の端部は端子領域22b1に面している。チップ領域22c4,22c5及び配線領域22c3の-X方向の端部は同一平面を成している。また、チップ領域22c5の-Y方向の端部と端子領域22c1の-Y方向の端部とは同一平面を成している。チップ領域22c5内に示されている2つの破線の領域は、半導体チップ30の接合箇所である。なお、チップ領域22c5の±Y方向の幅は、チップ領域22c4の同方向の幅と略等しい。また、チップ領域22c5の+Y方向の端部とチップ領域22c4の-Y方向の端部との隙間の幅は、チップ領域22c4,22c5の同方向の幅と略等しい。
【0047】
複数の回路パターン層に含まれる制御回路パターン層22d及びセンス回路パターン層22eは、平面視で、矩形状を成して、正極回路パターン層22aと出力回路パターン層22cの端子領域22c1とで囲まれる領域に、短側面21b,21d(短手方向)に平行を成して形成されている。制御回路パターン層22d及びセンス回路パターン層22eの±Y方向の幅は、配線領域22c2の同方向の幅よりも小さい。
【0048】
複数の回路パターン層に含まれる制御回路パターン層22f及びセンス回路パターン層22gは、平面視で、矩形状を成して、負極回路パターン層22bの端子領域22b1と出力回路パターン層22cの端子領域22c1及びチップ領域22c4,22c5とで囲まれる領域に、短側面21b,21d(短手方向)に平行を成して形成されている。制御回路パターン層22f及びセンス回路パターン層22gの±Y方向の幅は、配線領域22c2の同方向の幅よりも小さい。
【0049】
このような構成を有する絶縁回路基板20として、例えば、DCB(Direct Copper Bonding)基板、AMB(Active Metal Brazed)基板を用いてもよい。絶縁回路基板20は、半導体チップ30で発生した熱を正極回路パターン層22a及び負極回路パターン層22b、絶縁層21、金属層23を介して、絶縁回路基板20の裏面側に伝導させて放熱する。
【0050】
半導体チップ30は、炭化シリコンにより構成されるパワーデバイスである。このパワーデバイスの一例として、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)が挙げられる。パワーMOSFETでは、ボディダイオードがFWD(Free Wheeling Diode)として機能する。半導体チップ30は裏面に入力電極としてドレイン電極を、おもて面に、制御電極31としてゲート電極及び出力電極としてソース電極をそれぞれ備えている。
【0051】
また、半導体チップ30は、シリコンにより構成されるパワーデバイスであってもよい。この場合のパワーデバイスは、例えば、RC(Reverse Conducting)-IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。RC-IGBTは、スイッチング素子であるIGBT及びダイオード素子であるFWDが逆並列で構成された回路が1チップ内に構成されたものである。この半導体チップ30は、例えば、裏面に入力電極としてコレクタ電極を、おもて面に、制御電極としてゲート電極及び出力電極としてエミッタ電極をそれぞれ備えている。
【0052】
なお、半導体チップ30は、本実施の形態では、正極回路パターン層22a及び出力回路パターン層22cに、既述の接合部材35を介してそれぞれ複数配置されている。本実施の形態では、半導体チップ30を正極回路パターン層22aのチップ領域22a2,22a3及び出力回路パターン層22cのチップ領域22c4,22c5に2つずつ短側面21b,21dに沿って配置している場合を例示している。また、本実施の形態では、正極回路パターン層22aのチップ領域22a2,22a3及び出力回路パターン層22cのチップ領域22c4,22c5にそれぞれ配置されている2つの半導体チップ30は、互いの制御電極31が対向して配置されている。
【0053】
正極端子40、負極端子41、出力端子42、制御端子43a,43bは、導電性に優れた金属により構成されている。このような金属は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金である。正極端子40、負極端子41、出力端子42、制御端子43a,43bの金属板の耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。
【0054】
正極端子40は平板状を成している。正極端子40の内端部である正極接合領域40aが正極回路パターン層22aの端子領域22a1の配置領域Taに接合部材35を介して接合されている。すなわち、正極端子40は、半導体チップ30の裏面の入力電極に電気的に接続されている。正極端子40の外端部(第1端部)は正極回路パターン層22aの端子領域22a1から鉛直(-X方向)に延伸している。正極端子40の外端部の角部はR面取り、C面取りされていてよい。正極端子40の外端部のおもて面側の接触面40c1が後述するキャパシタ5の配線端子51に含まれる正極導電層53に接触する。また、正極端子40の外端部に貫通された締結孔40dが形成されてよい。このような締結孔40dを用いて、バスバーを取り付けてよい。正極端子40は全体的に略均一な厚さ並びに均一な(
図7中、±Y方向の)幅を成している。正極端子40の厚さは、例えば、0.4mm以上、0.6mm以下である。また、正極端子40の封止体10の長側面10aから-X方向に延伸する長さは、例えば、20mm以上、30mm以下である。
【0055】
負極端子41は負極接合領域41aと連係領域41bと配線領域41cとを含んでいる。負極接合領域41aと連係領域41bと配線領域41cとはいずれも平板状を成している。負極端子41は全体的に略均一な厚さ並びに均一な(
図7中の±Y方向の)幅を成している。負極端子41は、平面視で、その幅方向(±Y方向)が正極端子40の幅方向(±Y方向)と平行を成している。よって、負極端子41及び正極端子40のそれぞれの幅方向は、封止体10の長側面10aに平行を成している。また、負極端子41は、正極端子40に対して、幅方向(±Y方向)に位置ずれしている。負極端子41の内端部である負極接合領域41aは負極回路パターン層22bの端子領域22b1の配置領域Tbに接合部材35を介して接合されている。連係領域41bは、負極接合領域41aの(
図7中の-X方向の)端部に接続されて、鉛直上方(+Z方向)に延伸している。配線領域41cは、連係領域41bに接続されて、負極回路パターン層22bの端子領域22b1から鉛直(-X方向)に延伸している。したがって、負極端子41の配線領域41cは、絶縁回路基板20のおもて面から連係領域41bの高さの分だけ+Z方向に離隔している。また、負極端子41の配線領域41cの外端部の角部はR面取り、C面取りされていてよい。負極端子41(配線領域41c)の外端部の裏面側の接触面41c1が後述するキャパシタ5の配線端子51に含まれる負極導電層54に接触する。負極端子41の接触面41c1は、側面視で、正極端子40の接触面40c1に平行を成す。負極端子41の外端部に貫通された締結孔41dが形成されてよい。このような締結孔41dを用いて、後述するキャパシタ5の配線端子51を取り付けてよい。負極端子41の厚さは、例えば、0.4mm以上、0.6mm以下である。また、負極端子41の封止体10の長側面10aから-X方向に延伸する長さは、例えば、20mm以上、30mm以下である。
【0056】
出力端子42は平板状を成している。出力端子42の内端部である出力接合領域42aが出力回路パターン層22cの端子領域22c1の配置領域Tcに接合部材35を介して接合されている。出力端子42の外端部は出力回路パターン層22cの端子領域22c1から鉛直(+X方向)に延伸している。なお、出力端子42の外端部の角部はR面取り、C面取りされていてよい。また、出力端子42の外端部には貫通孔が形成されてもよい。このような貫通孔を用いて、バスバーを取り付けてよい。また、出力端子42は全体的に略均一な厚さ並びに均一な(
図7中、±Y方向の)幅を成している。
【0057】
制御端子43a,43bは柱状を成している。柱状とは、断面が、多角形状、円形状、楕円形状であってよい。制御端子43aの下端部は、制御回路パターン層22d及びセンス回路パターン層22eの長側面21aの端部に接合部材35(図示を省略)によりそれぞれ接合されている。制御端子43aの上端部は、制御回路パターン層22d及びセンス回路パターン層22eから鉛直上方(+Z方向)に延伸している。制御端子43bの下端部は、制御回路パターン層22f及びセンス回路パターン層22gの長側面21aの端部に接合部材35(図示を省略)によりそれぞれ接合されている。制御端子43bの上端部は、制御回路パターン層22f及びセンス回路パターン層22gから鉛直上方(+Z方向)に延伸している。
【0058】
制御ワイヤ36、センスワイヤ37、主電流ワイヤ38は、導電性に優れた材質を主成分としている。このような材質は、例えば、金、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの1種を含む合金により構成されている。また、制御ワイヤ36及びセンスワイヤ37の径は、主電流ワイヤ38の径よりも小さくてよい。
【0059】
制御ワイヤ36(
図7中の+Y方向側)は、各半導体チップ30の制御電極31と制御回路パターン層22dとを直接それぞれ接続している。制御ワイヤ36(
図7中の-Y方向側)は、各半導体チップ30の制御電極31と制御回路パターン層22fとを直接それぞれ接続している。
【0060】
センスワイヤ37(
図7中の+Y方向側)は、各半導体チップ30の出力電極とセンス回路パターン層22eとを直接それぞれ接続している。センスワイヤ37(
図7中の-Y方向側)は、各半導体チップ30の出力電極とセンス回路パターン層22gとを直接それぞれ接続している。
【0061】
主電流ワイヤ38(
図7中の+Y方向側)は、各半導体チップ30の出力電極と出力回路パターン層22cの配線領域22c2,22c3とを直接それぞれ接続している。主電流ワイヤ38(
図7中の-Y方向側)は、各半導体チップ30の出力電極と負極回路パターン層22bの配線領域22b2,22b3とを直接それぞれ接続している。主電流ワイヤ38は、長側面21a,21cに対して平行を成してそれぞれ配線されている。
【0062】
次に、キャパシタ5について、
図11を用いて説明する。
図11は、実施の形態の半導体装置に含まれるキャパシタの斜視図である。キャパシタ5は、筐体50と配線端子51とを含んでいる。
【0063】
筐体50は、キャパシタ本体である。筐体50は、上面50eと底面50fと長側面50aと短側面50bと長側面50cと短側面50dとを含む。上面50e及び底面50fは、形状及びサイズが等しく、平面視で矩形状を成す。長側面50aと短側面50bと長側面50cと短側面50dとは、上面50e及び底面50fの四方を順に取り囲んでいる。長側面50a,50cは、上面50e及び底面50fの長辺に対応している。短側面50b,50dは、上面50e及び底面50fの短辺に対応している。筐体50の材質は、例えば、エポキシ樹脂である。筐体50内には、図示を省略する、N極及びP極を有するキャパシタ部品が、複数収納されている。
【0064】
配線端子51は、絶縁層52と正極導電層53と負極導電層54とを含んでいる。絶縁層52は、絶縁性を有する絶縁材により構成されている。このような絶縁材は、例えば、全芳香族ポリアミドポリマーによる絶縁紙、フッ素系、ポリイミド系の樹脂材料を主成分として構成される。また、絶縁層52は、このような絶縁材によりシート状に形成されたものである。絶縁層52は、筐体50の長側面50aから外側に延伸する。絶縁層52は、後述するように正極導電層53及び負極導電層54に挟持されて、正極導電層53及び負極導電層54の絶縁性を維持する。また、絶縁層52は、筐体50内でも、正極導電層53及び負極導電層54の間の絶縁性を維持する。絶縁層52は、後述する正極締結孔53a、負極開口孔53b、負極締結孔54a、正極開口孔54bに対向する箇所に孔が形成されている。
【0065】
正極導電層53は、筐体50内で複数のキャパシタ部品のP極にそれぞれ電気的に接続されて、筐体50の長側面50aから外側に延伸する。正極導電層53は、外側に延伸する部分は平板状を成して、絶縁層52の裏面に設けられている。正極導電層53は、正極締結孔53a及び負極開口孔53bがそれぞれ形成されている(
図12を参照)。正極締結孔53a及び負極開口孔53bを一組として、配線端子51に取り付けられる半導体モジュール2の個数に対応して設けられる。正極締結孔53aは、半導体モジュール2の正極端子40がボルトで締結される。負極開口孔53bは正極締結孔53aよりも径が十分大きい。負極開口孔53bは、半導体モジュール2の負極端子41を締結するボルトが触れることなく挿通される。
【0066】
負極導電層54は、筐体50内で複数のキャパシタ部品のN極にそれぞれ電気的に接続されて、筐体50の長側面50aから外側に延伸する。負極導電層54は、外側に延伸する部分は平板状を成して、絶縁層52のおもて面側に設けられている。負極導電層54の外側に延伸する部分は、正極導電層53の外側に延伸する部分と、形状及びサイズが同じである。負極導電層54は、負極締結孔54a及び正極開口孔54bがそれぞれ形成されている(
図12を参照)。負極締結孔54a及び正極開口孔54bを一組として、配線端子51に取り付けられる半導体モジュール2の個数に対応して設けられる。負極締結孔54aは、半導体モジュール2の負極端子41がボルトで締結される。正極開口孔54bは負極締結孔54aよりも径が十分大きい。正極開口孔54bは、半導体モジュール2の正極端子40を締結するボルトが触れることなく挿通される。
【0067】
このような配線端子51では、平面視で、正極締結孔53aと正極開口孔54bとが対応し、負極締結孔54aと負極開口孔53bとが対応している。絶縁層52は、少なくとも筐体50の長側面50aの外側の部分については、正極導電層53及び負極導電層54のサイズよりも大きい。このため、正極導電層53及び負極導電層54に挟持される絶縁層52の外縁(端辺)は、正極導電層53及び負極導電層54の外縁(端辺)からそれぞれ突出している。絶縁層52の突出長さは、例えば、1.0mm以上、1.4mm以下である。このため、正極導電層53及び負極導電層54の絶縁距離が維持されて、正極導電層53及び負極導電層54の絶縁性が維持される。
【0068】
次に、半導体モジュール2とキャパシタ5との連結について、
図1及び
図2並びに
図12を用いて説明する。
図12は、実施の形態の半導体装置の連結箇所の断面図である。なお、
図12は、
図1及び
図2において、ボルト55aとナット55bにより連結した場合に対する一点鎖線X-Xにおける断面図である。また、ボルト55a及びナット55bは、ここでは、例えば、導電性の金属により構成されている。
【0069】
このようなキャパシタ5の長側面50aに、複数(ここでは、例えば3つ)の半導体モジュール2の長側面10aをそれぞれ対向し、複数の半導体モジュール2をキャパシタ5にそれぞれ移動させる。これにより、
図1及び
図2に示されるように、キャパシタ5の配線端子51が、複数の半導体モジュール2の正極端子40及び負極端子41により挟持される。すなわち、複数の半導体モジュール2の正極端子40が、配線端子51の正極導電層53の裏面に接触する。この際、配線端子51の正極導電層53の先端は、半導体モジュール2の長側面10aに接触する。複数の半導体モジュール2の負極端子41が、配線端子51の負極導電層54のおもて面に接触する。この際、配線端子51の負極導電層54の先端は、半導体モジュール2の長側面10aに接触する。さらに、絶縁層52の先端が、半導体モジュール2の長側面10aの収納溝10gに入り込む(収納される)。
【0070】
キャパシタ5の配線端子51を半導体モジュール2の正極端子40及び負極端子41の間に取り付けた後、
図12に示されるように、ボルト55aを負極端子41の締結孔41d及び負極導電層54の負極締結孔54aに、負極端子41のおもて側から挿通する。ボルト55aの下端部は、正極導電層53の負極開口孔53bから露出し、正極導電層53の負極開口孔53b内で当該下端部にナット55bを締結する。この際、正極導電層53の負極開口孔53bの径はナット55bの径よりも十分に大きいため、ボルト55a及びナット55bと、正極導電層53とは接触することがなく、絶縁性が維持される。すなわち、負極端子41と正極導電層53とは絶縁性が維持される。
【0071】
同様に、ボルト55aを負極導電層54の正極開口孔54bから、正極導電層53の正極締結孔53a及び正極端子40の締結孔40dに挿通する。ボルト55aの下端部は、正極端子40の締結孔40dから露出し、当該下端部にナット55bを締結する。この際、負極導電層54の正極開口孔54bの径はボルト55aの径よりも十分に大きいため、ボルト55aと、負極導電層54とは接触することがなく、絶縁性が維持される。すなわち、正極端子40と負極導電層54とは絶縁性が維持される。
以上により、複数の半導体モジュール2とキャパシタ5とが機械的かつ電気的に連結されて半導体装置1が構成される。
【0072】
ここで、実施の形態の半導体装置1に対する参考例について説明する。参考例の半導体装置に含まれる半導体モジュールは、半導体モジュール2の収納溝10gが形成されていない。このような参考例の半導体装置について
図13を用いて説明する。
図13は、参考例の半導体装置の側面図(X-Z面)である。なお、
図13は、参考例の半導体装置100において
図2に対応する。
【0073】
半導体装置100は、複数の半導体モジュール200とキャパシタ5とを含んでいる。キャパシタ5は、実施の形態のキャパシタ5と同様である。半導体モジュール200は、実施の形態の半導体モジュール2に含まれる長側面10aに収納溝10gが形成されておらず、長側面10aの全体は平坦である。半導体モジュール200は、長側面10a以外は、半導体モジュール2と同様の構成である。
【0074】
キャパシタ5の配線端子51と複数の半導体モジュール200の正極端子40及び負極端子41とを
図13に示されるように取り付ける(
図1も参照)。この場合、配線端子51(絶縁層52)の(+X方向の)先端は、半導体モジュール200の長側面10aに当接する。また、正極導電層53及び負極導電層54の(+X方向の)先端と半導体モジュール200の長側面10aとは隙間Gが空く。
【0075】
半導体装置100のインダクタンス成分は、キャパシタ5の配線端子51と半導体モジュール200の正極端子40及び負極端子41との長さに依存する。キャパシタ5の配線端子51は、正極導電層53と負極導電層54との間に絶縁層52を挟んで(ラミネート化して)インダクタンスが低減される。また、このような配線端子51により半導体モジュール200の正極端子40及び負極端子41も含めてラミネート化を行うことが望まれる。これにより、配線端子51と正極端子40及び負極端子41とは、スイッチングに応じて往復する電流が重なり合う配置関係となる。この結果、磁界が相殺されてインダクタンスを抑制することができる。
【0076】
しかし、半導体モジュール200において、隙間Gでは、配線端子51と正極端子40及び負極端子41とが完全に重なることができない。このため、隙間Gにおいてインダクタンスを低減することができない。
【0077】
一方、実施の形態の半導体装置1は半導体モジュール2とキャパシタ5とを含む。キャパシタ5は、絶縁層52と絶縁層52の一方の主面並びに他方の主面にそれぞれ設けられた正極導電層53及び負極導電層54とを含み、絶縁層52の絶縁端辺が正極導電層53及び負極導電層54のそれぞれの導電端辺よりも外側に延在する配線端子51を備える。
【0078】
半導体モジュール2は、出力電極及び入力電極を有する半導体チップ30と、配線端子51の負極導電層54と接触する接触面41c1を含み、半導体チップ30の出力電極に電気的に接続される負極端子41と、負極端子41と離隔し、負極端子41と平行でありかつ配線端子51の正極導電層53と電気的に接触する接触面40c1を含み、半導体チップ30の入力電極に電気的に接続される正極端子40と、を備える。半導体モジュール2は、さらに、配線端子51と対向する長側面10aから正極端子40及び負極端子41が同一方向に長側面10aより外部に延在し、半導体チップ30と正極端子40及び負極端子41とを固定し、長側面10aの正極端子40及び負極端子41の間に収納溝10gを有し、配線端子51の絶縁層52の先端が収納溝10gに挿入される封止体10を備える。この半導体装置1では、キャパシタ5の配線端子51の絶縁層52の先端が半導体モジュール2の長側面10aの収納溝10gに入り込むことで、半導体モジュール2の正極端子40及び負極端子41とキャパシタ5の配線端子51とが重畳する部分を増やすことができる。このため、参考例の半導体装置100よりもインダクタンスを低減することができる。
【0079】
配線端子51の絶縁層52の当該先端が半導体モジュール2の長側面10aの収納溝10gに深く入るにつれて、参考例の隙間Gが小さくなり、インダクタンスを低減することができる。すなわち、半導体モジュール2の長側面10aの収納溝10gは、配線端子51の絶縁層52の当該先端が少しでも入り、隙間Gを小さくすることができればインダクタンスを低減することができる。したがって、半導体モジュール2の長側面10aの収納溝10gの深さは、隙間Gが無くなるように、キャパシタ5の配線端子51の正極導電層53及び負極導電層54から突出する絶縁層52の先端の全体が入る深さであることが好ましい。
【0080】
(変形例1)
以下、半導体装置1の変形例について説明する。まず、変形例1の半導体モジュール2について、
図14を用いて説明する。
図14は、実施の形態(変形例1)の半導体装置に含まれる半導体モジュールの側面図(Z-Y面)である。変形例1の半導体モジュール2では、
図14に示されるように、実施の形態の半導体モジュール2において、長側面10aから延伸する正極端子40及び負極端子41が対向して設けられている。なお、半導体モジュール2の封止体10内では、正極端子40及び負極端子41がこのように設けられるように、正極端子40、負極端子41の形状が変更されてよい。
【0081】
次に、このような半導体モジュール2とキャパシタ5との連結について、
図15を用いて説明する。
図15は、実施の形態(変形例1)の半導体装置の連結箇所の断面図である。なお、
図15は、変形例1の半導体モジュール2とキャパシタ5とを連結した場合において、
図1及び
図2の一点鎖線X-Xにおける
図12の断面図に対応する。
【0082】
変形例1のキャパシタ5に含まれる配線端子51もまた絶縁層52が正極導電層53及び負極導電層54により挟持されている。変形例1の正極導電層53及び負極導電層54は、実施の形態の正極導電層53及び負極導電層54に対して、正極締結孔53a及び負極締結孔54aがそれぞれ対応する位置に形成されている。また、変形例1の正極導電層53及び負極導電層54は、負極開口孔53b及び正極開口孔54bは形成されていない。
【0083】
このようなキャパシタ5の長側面50aに、複数(ここでは、例えば3つ)の半導体モジュール2の長側面10aをそれぞれ対向し、複数の半導体モジュール2をキャパシタ5に移動させる。キャパシタ5の配線端子51が、複数の半導体モジュール2の正極端子40及び負極端子41により挟持される。この際、絶縁層52の先端が、半導体モジュール2の長側面10aの収納溝10gに入り込む(収納される)。
【0084】
キャパシタ5の配線端子51を半導体モジュール2の正極端子40及び負極端子41の間に取り付けた後、
図15に示されるように、ボルト55aが負極端子41の締結孔41dと負極導電層54の負極締結孔54aと正極導電層53の正極締結孔53aと正極端子40の締結孔40dを挿通する。ボルト55aの下端部は、正極端子40の締結孔40dから露出し、当該下端部にナット55bを締結する。
【0085】
このような半導体モジュール2及びキャパシタ5を含む半導体装置1もまた、実施の形態と同様に、インダクタンスを低減することができる。なお、変形例1では、ボルト55aと負極端子41との間、ナット55bと正極端子40との間、締結孔41d、負極締結孔54a、正極締結孔53a、締結孔40d内に絶縁部材55c,55d,55eが設けられている。このため、負極端子41と正極端子40との絶縁性が維持される。
【0086】
(変形例2)
変形例2の半導体モジュール2について、
図16を用いて説明する。
図16は、実施の形態(変形例2)の半導体装置に含まれる半導体モジュールの側面図(Z-Y面)である。変形例2の半導体モジュール2では、
図16に示されるように、実施の形態の半導体モジュール2において長側面10aから延伸する正極端子40及び負極端子41が側面視で同一平面を成している。なお、半導体モジュール2の封止体10内では、正極端子40及び負極端子41がこのように設けられるように、正極端子40、負極端子41の形状が変更されてよい。
【0087】
次に、このような半導体モジュール2とキャパシタ5との連結について、
図17を用いて説明する。
図17は、実施の形態(変形例2)の半導体装置の連結箇所の断面図である。なお、
図17は、変形例2の半導体モジュール2とキャパシタ5とを連結した場合において、
図12の一点鎖線X-Xにおける断面図に対応する。
【0088】
変形例2のキャパシタ5に含まれる配線端子51もまた絶縁層52が正極導電層53及び負極導電層54により挟持されている。変形例2の正極導電層53は、実施の形態の正極導電層53と同様である。他方、変形例2の負極導電層54は、実施の形態の負極導電層54に対して、正極端子40に接する部分が開口されて、フローティング配線54dが設けられている。フローティング配線54dは、負極導電層54の他の部分から離隔されており、電気的に孤立している。フローティング配線54dの厚さは負極導電層54と同じ厚さである。フローティング配線54dは、フローティング締結孔54eが形成されている。変形例2の負極導電層54は、正極開口孔54bが形成されていない。
【0089】
このような配線端子51では、負極導電層54の負極締結孔54aと正極導電層53の負極開口孔53bが対応している。また、負極導電層54に含まれるフローティング配線54dのフローティング締結孔54eと正極導電層53の正極締結孔53aが対応している。
【0090】
このようなキャパシタ5の長側面50aに、複数(ここでは、例えば3つ)の半導体モジュール2の長側面10aをそれぞれ対向し、複数の半導体モジュール2をキャパシタ5に移動させる。キャパシタ5の配線端子51に、おもて側から、複数の半導体モジュール2の正極端子40及び負極端子41が配置される。この際、絶縁層52の先端が、半導体モジュール2の長側面10aの収納溝10gに入り込む(収納される)。
【0091】
キャパシタ5の配線端子51に半導体モジュール2の正極端子40及び負極端子41が配置された後、
図17に示されるように、ボルト55aが負極端子41の締結孔41dと負極導電層54の負極締結孔54aとを挿通する。ボルト55aの下端部は、正極導電層53の負極開口孔53bから露出し、当該下端部にナット55bを締結する。
【0092】
また、ボルト55aが正極端子40の締結孔40dとフローティング配線54dのフローティング締結孔54eと正極導電層53の正極締結孔53aを挿通する。ボルト55aの下端部は、正極導電層53の正極締結孔53aから露出し、当該下端部にナット55bを締結する。
【0093】
このような半導体モジュール2及びキャパシタ5を含む半導体装置1もまた、実施の形態と同様に、インダクタンスを低減することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 半導体装置
2,2a,2b,2c 半導体モジュール
3 半導体ユニット
5 キャパシタ
10 封止体
10a,10c 長側面
10b,10d 短側面
10e 上面
10f 底面
10g 収納溝(窪み)
20 絶縁回路基板
21 絶縁層
21a,21c 長側面
21b,21d 短側面
22a 正極回路パターン層
22a1 端子領域
22a2,22a3 チップ領域
22b 負極回路パターン層
22b1 端子領域
22b2,22b3 配線領域
22c 出力回路パターン層
22c1 端子領域
22c2,22c3 配線領域
22c4,22c5 チップ領域
22d,22f 制御回路パターン層
22e,22g センス回路パターン層
23 金属層
30 半導体チップ
31 制御電極
35 接合部材
36 制御ワイヤ
37 センスワイヤ
38 主電流ワイヤ
40 正極端子
40a 正極接合領域
40c1 接触面
40d 締結孔
41 負極端子
41a 負極接合領域
41b 連係領域
41c 配線領域
41c1 接触面
41d 締結孔
42 出力端子
42a 出力接合領域
43a,43b 制御端子
Ta,Tb,Tc 配置領域
50 筐体
50a,50c 長側面
50b,50d 短側面
50e 上面
50f 底面
51 配線端子
52 絶縁層
53 正極導電層
53a 正極締結孔
53b 負極開口孔
54 負極導電層
54a 負極締結孔
54b 正極開口孔
54d フローティング配線
54e フローティング締結孔
55a ボルト
55b ナット
55c,55d,55e 絶縁部材