(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025143516
(43)【公開日】2025-10-01
(54)【発明の名称】眼科レンズ及びそれを備えたフレーム眼鏡
(51)【国際特許分類】
G02C 7/06 20060101AFI20250924BHJP
【FI】
G02C7/06
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025119766
(22)【出願日】2025-07-16
(62)【分割の表示】P 2023577607の分割
【原出願日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】202210602454.0
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210869171.2
(32)【優先日】2022-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202221916689.9
(32)【優先日】2022-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210890733.1
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202221959148.4
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202211268086.7
(32)【優先日】2022-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202211698087.5
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202223532292.2
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523470382
【氏名又は名称】チューハイ フィットレンズ メディカル テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ZHUHAI FITLENS MEDICAL TECHNOLOGY CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】Wework,Shangdong Park,No.2,North Fourth Ring East Road,Chaoyang District,Beijing 100000,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ユーシャオ
(57)【要約】 (修正有)
【解決手段】本開示は、眼科レンズ及びそれを備えたフレーム眼鏡に関する。当該眼科レンズは、中央領域と、複数の第1屈折領域と、複数の第2屈折領域とを含み、前記複数の第1屈折領域は、前記中央領域を囲む第1領域に配置され、前記複数の第2屈折領域は、前記第1領域よりも前記中央領域から離れた第2領域に配置され、前記中央領域の一部又は全部は、人間の眼の処方に基づく処方屈折力を有し、前記複数の第1屈折領域及び前記複数の第2屈折領域は、いずれも前記処方屈折力と異なる屈折力を有し、前記第1領域の面積に対する前記複数の第1屈折領域の総面積の割合は、前記第2領域の面積に対する前記複数の第2屈折領域の総面積の割合よりも大きくなる。
【効果】これにより、本開示は、近視の進行をより効果的に管理及び制御することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央領域と、複数の第1屈折領域と、複数の第2屈折領域とを含む眼科レンズであって、
前記複数の第1屈折領域は、前記中央領域を囲む第1領域に配置され、
前記複数の第2屈折領域は、前記第1領域よりも前記中央領域から離れた第2領域に配置され、
前記中央領域の一部又は全部は、人間の眼の処方に基づく処方屈折力を有し、
前記複数の第1屈折領域及び前記複数の第2屈折領域は、いずれも前記処方屈折力と異なる屈折力を有し、
前記第1領域の面積に対する前記複数の第1屈折領域の総面積の割合は、前記第2領域の面積に対する前記複数の第2屈折領域の総面積の割合よりも大きく、
前記第1領域における前記複数の第1屈折領域の総面積の割合は、60%以上78.5%以下、又は63%超78.5%以下、又は66%超78.5%以下であり、及び、
前記第2領域における前記複数の第2屈折領域の総面積の割合は、60%未満、又は57%未満、又は54%未満である、眼科レンズ。
【請求項2】
前記複数の第1屈折領域は、着用者が前記眼科レンズを着用した際に、前記複数の第1屈折領域における一部又は全部を通過した入射光束が前記着用者の網膜黄斑中心窩の近傍10度から20度の間の領域に投射されるように配置される、請求項1に記載の眼科レンズ。
【請求項3】
前記複数の第1屈折領域は、少なくとも一部が前記眼科レンズの中心を中心とする内縁の直径9.0mmから外縁の直径15.0mmのリング状領域内に配置され、又は少なくとも一部が前記眼科レンズの中心を中心とする内縁の直径9.5mmから外縁の直径14.0mmのリング状領域内に配置され、又は少なくとも一部が前記眼科レンズの中心を中心とする内縁の直径11.0mmから外縁の直径14.0mmのリング状領域内に配置される、請求項1に記載の眼科レンズ。
【請求項4】
前記複数の第1屈折領域の各々及び前記複数の第2屈折領域の各々の前記眼科レンズにおける投影の最大寸法は、それぞれ独立して0.5~2.2mmから選ばれ、及び/又は、
前記複数の第1屈折領域の各々及び前記複数の第2屈折領域の各々の前記眼科レンズにおける投影は円形であり、及び/又は、
前記複数の第1屈折領域及び前記複数の第2屈折領域のそれぞれは、球面、非球面又はトーリック面から選ばれる表面形状を有し、及び/又は、
前記複数の第2屈折領域は、前記眼科レンズにおける等しい投影面積を有する、請求項1に記載の眼科レンズ。
【請求項5】
前記複数の第1屈折領域の各々は、前記処方屈折力にプラスの屈折力を加えた屈折力を有し、及び/又は、前記複数の第2屈折領域の各々は、前記処方屈折力にプラスの屈折力を加えた屈折力を有し、又は、
前記複数の第1屈折領域及び前記複数の第2屈折領域の屈折力はいずれも同一であり、又は、
前記眼科レンズの径方向に沿って、前記複数の第1屈折領域及び前記複数の第2屈折領域の屈折力は、径方向の距離が大きくなるにつれて徐々に増加又は段階的に増加し、及び/又は、前記複数の第1屈折領域及び前記複数の第2屈折領域の寸法は、径方向の距離が大きくなるにつれて徐々に減少又は段階的に減少し、又は、
前記眼科レンズの径方向に沿って、前記複数の第1屈折領域及び前記複数の第2屈折領域の屈折力は、径方向の距離が大きくなるにつれて徐々に減少又は段階的に減少し、及び/又は、前記複数の第1屈折領域及び前記複数の第2屈折領域の寸法は、径方向の距離が大きくなるにつれて徐々に増加又は段階的に増加する、請求項1に記載の眼科レンズ。
【請求項6】
前記中央領域の最大寸法は3.0~11.0mmから選ばれ、及び/又は、
前記中央領域は前記眼科レンズの中心を中心とする円形領域であり、前記円形領域の直径は3.0~11.0mmから選ばれ、及び/又は、
前記第1領域は前記眼科レンズの中心を中心とするリング状領域であり、前記リング状領域の内縁の直径は3.0~11.0mmから選ばれ、且つ外縁の直径は15.0~28.6mmから選ばれ、及び/又は、
前記第2領域は前記眼科レンズの中心を中心とするリング状領域である、請求項1に記載の眼科レンズ。
【請求項7】
前記第1領域は、1つ又は複数の第1パターンを含み、前記第1領域の一部又は全部は、前記眼科レンズの中心を中心とする、内縁の直径が9mm、外縁の直径が15mmである第1リング状領域であり、前記第1リング状領域内のいずれか1つの単一の第1パターンにおける第1屈折領域の総面積の割合は、70%超78.5%未満、又は72%超78.5%未満である、請求項1に記載の眼科レンズ。
【請求項8】
前記第1領域は、1つ又は複数の第1パターンを含み、前記複数の第1屈折領域の一部又は全部は、前記1つ又は複数の第1パターンに配列され、及び/又は、
前記第2領域は、1つ又は複数の第2パターンを含み、前記複数の第2屈折領域の一部又は全部は、前記1つ又は複数の第2パターンに配列され、
任意の隣接する2つの第2パターンの間のピッチは、任意の隣接する2つの第1パターンの間のピッチと等しく、及び/又は、任意の隣接する2つの第2パターンの間のピッチは、隣接する第1パターンと第2パターンの間のピッチに等しく、又は、
任意の隣接する2つの第2パターンの間のピッチ、任意の隣接する2つの第1パターンの間のピッチ及び/又は隣接する第1パターンと第2パターンの間のピッチは、いずれもゼロであり、又は、
任意の隣接する第1パターンの間のピッチは、0.5mm以下である、請求項1に記載の眼科レンズ。
【請求項9】
前記第1パターンの数は1-4個であり、前記第2パターンの数は1-15個である、請求項8に記載の眼科レンズ。
【請求項10】
少なくとも1つの第1パターン内において、隣接する前記第1屈折領域のエッジは互いに接し、及び/又は、
少なくとも1つの第1パターン内において、前記第1屈折領域間のピッチはいずれも0~0.5mmから選ばれ、及び/又は、
少なくとも1つの第2パターン内において、前記第2屈折領域間のピッチはいずれも前記第1屈折領域間のピッチの最大値より大きく、及び/又は、
前記複数の第2パターンのうち、前記眼科レンズの中心に近い第2パターンほど、第2屈折領域間のピッチが小さくなり、及び/又は、
全ての前記第1パターン及び全ての前記第2パターンを含むパターンのうち、前記眼科レンズの中心に近いパターンほど、第1屈折領域又は第2屈折領域間のピッチが小さくなる、請求項8に記載の眼科レンズ。
【請求項11】
少なくとも1つの前記第1パターン内における前記複数の第1屈折領域の総面積の割合は、60%以上78.5%以下、又は70%以上78.5%以下であり、及び/又は、
前記第1領域が複数の第1パターンを含む場合、各第1パターンにおける第1屈折領域の総面積の割合はいずれも60%以上78.5%以下であり、及び/又は、
前記第1領域が複数の第1パターンを含む場合、少なくとも2つの第1パターンにおける第1屈折領域の総面積の割合は70%以上78.5%以下であり、及び/又は、
少なくとも1つの前記第2パターン内における前記複数の第2屈折領域の総面積の割合は30%以上60%未満、又は35%以上60%未満、又は40%以上60%未満であり、及び/又は、
前記第2領域が複数の第2パターンを含む場合、各第2パターンにおける第2屈折領域の総面積の割合はいずれも30%以上60%未満である、請求項8に記載の眼科レンズ。
【請求項12】
前記第1領域が複数の第1パターンを含む場合、前記眼科レンズの中心からより遠い第1パターンにおける第1屈折領域の総面積の割合よりも、前記眼科レンズの中心からより近い第1パターンにおける第1屈折領域の総面積の割合が大きく、及び/又は、
前記第2領域が複数の第2パターンを含む場合、前記眼科レンズの中心からより遠い第2パターンにおける第2屈折領域の総面積の割合よりも、前記眼科レンズの中心からより近い第2パターンにおける第2屈折領域の総面積の割合が大きく、及び/又は、
各第1パターンにおける第1屈折領域の総面積の割合は、各第2パターンにおける第2屈折領域の総面積の割合よりも大きい、請求項8に記載の眼科レンズ。
【請求項13】
前記複数の第1屈折領域は、前記眼科レンズの中心を起点とする複数の放射線又は複数の曲線に分布し、及び/又は、
前記複数の第2屈折領域は、前記眼科レンズの中心を起点とする複数の放射線又は複数の曲線に分布する、請求項1に記載の眼科レンズ。
【請求項14】
同一の放射線又は曲線において、前記第1屈折領域の加入度が一様であり、及び/又は、前記第2屈折領域の加入度が一様であり、及び/又は、前記第1屈折領域と第2屈折領域の加入度が一様であり、又は、
同一の放射線又は曲線において、前記第1屈折領域の寸法が一様であり、及び/又は、前記第2屈折領域の寸法が一様であり、及び/又は、前記第1屈折領域と第2屈折領域の寸法が一様であり、又は、
同一の放射線又は曲線において、前記眼科レンズの中心から離れる方向に沿って、前記第1屈折領域の加入度の変化方向とその寸法の変化方向が反対であり、及び/又は、前記第2屈折領域の加入度の変化方向とその寸法の変化方向が反対であり、又は、
同一の放射線又は曲線において、前記眼科レンズの中心から離れる方向に沿って、前記第1屈折領域及び前記第2屈折領域の寸法が徐々に増大又は段階的に増大し、及び/又は、同一の放射線又は曲線において、前記眼科レンズの中心から離れる方向に沿って、前記第1屈折領域及び前記第2屈折領域の加入度が徐々に減少又は段階的に減少する、請求項13に記載の眼科レンズ。
【請求項15】
前記複数の第1屈折領域及び前記複数の第2屈折領域は、第1領域及び第2領域全体にわたってほぼ一定のイメージジャンプを維持できるように配置され、
ここで、前記イメージジャンプは、単一の第1屈折領域又は第2屈折領域の加入度と、それに対応する眼科レンズにおける最大寸法との積で表され、前記ほぼ一定は、眼科レンズにおいて第1屈折領域と第2屈折領域が配置されている範囲の全体にわたって第1屈折領域と第2屈折領域の当該積の変動係数が30%未満であることを意味する、請求項1に記載の眼科レンズ。
【請求項16】
第1領域及び第2領域全体にわたって、前記複数の第1屈折領域及び前記複数の第2屈折領域のイメージジャンプの変動係数は20%未満であり、
第2領域全体にわたって、前記複数の第2屈折領域のイメージジャンプの変動係数は、15%未満、又は12%未満、又は10%未満である、請求項15に記載の眼科レンズ。
【請求項17】
前記第1領域の側頭部側に設けられた第1屈折領域の総面積の割合は、前記第1領域の鼻部側に設けられた第1屈折領域の総面積の割合と異なり、及び/又は、
前記第1屈折領域の加入度は、前記第1領域の側頭部側と鼻部側とで非対称に設けられ、及び/又は、
前記第2領域の側頭部側に設けられた第2屈折領域の総面積の割合は、前記第2領域の鼻部側に設けられた第2屈折領域の総面積の割合と異なり、及び/又は、
第2屈折領域の加入度は、前記第2領域の側頭部側と鼻部側とで非対称に設けられる、請求項1に記載の眼科レンズ。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の眼科レンズが設けられたフレームメガネ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼鏡レンズの技術分野に関し、具体的に、複数のマイクロデフォーカス領域を有する眼科レンズ、及びそれを備えたフレーム眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の目の屈折異常は、近視、遠視及び乱視などを含み、中でも近視は最も一般的な屈折異常であり、特に青少年において多く発生する。眼が調節静止状態にある場合、外部の平行光線が眼の屈折系を通過した後、網膜黄斑中心窩ではなく網膜の前に焦点を合わせ、患者から遠くの物体が見えなくなり、即ち近視が発生し、つまり、眼の軸方向の長さが眼の光学系の焦点距離より大きい場合、近視が発生する。
【0003】
通常、フレームレンズやコンタクトレンズなどの眼科装置を用いて患者の視力を矯正又は向上させ、例えば、マイナスレンズを用いて近視を矯正し、プラスレンズを用いて遠視を矯正する。従来の近視矯正用眼科レンズは、単一(単焦点)の球面レンズであり、すなわち眼鏡中心からエッジまでの屈折力が同じである。単一の球面レンズによって生成されたベストフォーカス面であるペッツバール面は球形であるが、眼球は一般的に楕円球形であるため、周辺ペッツバール面が網膜後に位置し、遠視デフォーカスを形成する。遠視デフォーカスは眼軸成長を促進するため、近視の進行を促進する。
【0004】
現在、近視の進行を管理・制御(以下、単に「近視管理・制御」という)するための眼科レンズが複数種存在しており、中でも、CN104678572Aを参照すると、網膜の前方に物体の像を形成することで近視の進行を抑制する複数のマイクロレンズを単一の球面レンズ上に配置したものがある。
【0005】
しかしながら、目の軸方向の長さの増加を効果的に抑制することができ、視覚品質に著しく影響しない近視管理・制御レンズに対して、更に要望がある。また、近視管理・制御レンズは、患者の着用のコンプライアンスを向上させ、及び/又は異なる個体間の差を減少させ、近視管理及び制御の効果を向上させることができることが期待される。
【発明の概要】
【0006】
従来技術の課題を少なくとも部分的に解決するために、本開示の第1の態様によれば、中央領域と、複数の第1屈折領域と、複数の第2屈折領域とを含む眼科レンズであって、前記複数の第1屈折領域は、前記中央領域を囲む第1領域に配置され、前記複数の第2屈折領域は、前記第1領域よりも前記中央領域から離れた第2領域に配置され、前記中央領域の一部又は全部は、人間の眼の処方に基づく処方屈折力を有し、前記複数の第1屈折領域及び前記複数の第2屈折領域は、いずれも前記処方屈折力と異なる屈折力を有し、前記第1領域の面積に対する前記複数の第1屈折領域の総面積の割合は、前記第2領域の面積に対する前記複数の第2屈折領域の総面積の割合よりも大きくなる眼科レンズを提供する。
【0007】
選択的に、前記第1領域内における前記複数の第1屈折領域の密度は、前記第2領域内における前記複数の第2屈折領域の密度よりも大きく、及び/又は、前記複数の第1屈折領域間の平均ピッチは、前記複数の第2屈折領域間の平均ピッチよりも小さくなる。
【0008】
選択的に、前記複数の第1屈折領域は、着用者が前記眼科レンズを着用した際に、前記複数の第1屈折領域における一部又は全部を通過した入射光束が前記着用者の網膜黄斑中心窩の近傍10度から20度の間の領域に投射されるように配置される。
【0009】
選択的に、前記複数の第1屈折領域は、少なくとも一部が前記眼科レンズの中心を中心とする内縁の直径9.0mmから外縁の直径15.0mmのリング状領域内に配置され、又は少なくとも一部が前記眼科レンズの中心を中心とする内縁の直径9.5mmから外縁の直径14.0mmのリング状領域内に配置され、又は少なくとも一部が前記眼科レンズの中心を中心とする内縁の直径11.0mmから外縁の直径14.0mmのリング状領域内に配置される。
【0010】
選択的に、前記複数の第1屈折領域は、間隔を空けずに配置され、及び/又は、前記複数の第2屈折領域は、間隔を空けて配置される。
【0011】
選択的に、前記複数の第1屈折領域のそれぞれ及び前記複数の第2屈折領域のそれぞれの前記眼科レンズにおける投影の最大寸法は、それぞれ独立して0.5~2.2mmから選ばれ、及び/又は、前記複数の第1屈折領域のそれぞれ及び前記複数の第2屈折領域のそれぞれの前記眼科レンズにおける投影は円形であり、及び/又は、前記複数の第1屈折領域及び前記複数の第2屈折領域のそれぞれは、球面、非球面又はトーリック面から選ばれる表面形状を有し、及び/又は、前記複数の第2屈折領域は、前記眼科レンズにおける等しい投影面積を有する。
【0012】
選択的に、前記複数の第1屈折領域の各々は、前記処方屈折力にプラスの屈折力を加えた屈折力を有し、及び/又は、前記複数の第2屈折領域の各々は、前記処方屈折力にプラスの屈折力を加えた屈折力を有し、又は、前記複数の第1屈折領域及び前記複数の第2屈折領域の屈折力はいずれも同一であり、又は、前記眼科レンズの径方向に沿って、前記複数の第1屈折領域及び前記複数の第2屈折領域の屈折力は、径方向の距離が大きくなるにつれて徐々に増加又は段階的に増加し、及び/又は、前記複数の第1屈折領域及び前記複数の第2屈折領域の寸法は、径方向の距離が大きくなるにつれて徐々に減少又は段階的に減少し、又は、前記眼科レンズの径方向に沿って、前記複数の第1屈折領域及び前記複数の第2屈折領域の屈折力は、径方向の距離が大きくなるにつれて徐々に減少又は段階的に減少し、及び/又は、前記複数の第1屈折領域及び前記複数の第2屈折領域の寸法は、径方向の距離が大きくなるにつれて徐々に増加又は段階的に増加する。
【0013】
選択的に、前記中心領域の最大寸法は3.0~11.0mmから選ばれ、及び/又は、前記中心領域は前記眼科レンズの中心を中心とする円形領域であり、前記円形領域の直径は3.0~11.0mmから選ばれ、及び/又は、前記第1領域は前記眼科レンズの中心を中心とするリング状領域であり、前記リング状領域の内縁の直径は3.0~11.0mmから選ばれ、且つ外縁の直径は15.0~28.6mmから選ばれ、及び/又は、前記第2領域は前記眼科レンズの中心を中心とするリング状領域である。
【0014】
選択的に、前記第1領域における前記複数の第1屈折領域の総面積の割合は、60%以上78.5%以下、又は63%超78.5%以下、又は66%超78.5%以下であり、及び/又は、前記第2領域における前記複数の第2屈折領域の総面積の割合は、60%未満、又は57%未満、又は54%未満である。
【0015】
選択的に、前記第1領域は、1つ又は複数の第1パターンを含み、前記第1領域の一部又は全部は、前記眼科レンズの中心を中心とする、内縁の直径が9mm、外縁の直径が15mmである第1リング状領域であり、前記第1リング状領域内のいずれか1つの単一の第1パターン内の第1屈折領域の総面積の割合は、70%超78.5%未満、又は72%超78.5%未満である。
【0016】
選択的に、前記第1領域は、1つ又は複数の第1パターンを含み、前記複数の第1屈折領域の一部又は全部は、前記1つ又は複数の第1パターンに配列され、及び/又は、前記第2領域は、1つ又は複数の第2パターンを含み、前記複数の第2屈折領域の一部又は全部は、前記1つ又は複数の第2パターンに配列される。
【0017】
選択的に、前記第1パターン及び前記第2パターンは、いずれも前記眼科レンズの中心と同心に設けられたリング状パターンであり、又は、前記第2パターンは、前記眼科レンズの中心と同心に設けられた扇リングパターンである。
【0018】
選択的に、任意の隣接する2つの第2パターンの間のピッチは、任意の隣接する2つの第1パターンの間のピッチと等しく、及び/又は、任意の隣接する2つの第2パターンの間のピッチは、隣接する第1パターンと第2パターンの間のピッチに等しく、又は、任意の隣接する2つの第2パターンの間のピッチ、任意の隣接する2つの第1パターンの間のピッチ及び/又は隣接する第1パターンと第2パターンの間のピッチは、いずれもゼロであり、又は、任意の隣接する第1パターンの間のピッチは、0.5mm以下である。
【0019】
選択的に、前記第1パターンの数は1-4個であり、前記第2パターンの数は1-15個である。
【0020】
選択的に、少なくとも1つの第1パターン内に前記第1屈折領域が均一に分布し、及び/又は、少なくとも1つの第2パターン内に前記第2屈折領域が均一に分布する。
【0021】
選択的に、少なくとも1つの第1パターン内において、隣接する前記第1屈折領域のエッジは互いに接し、及び/又は、少なくとも1つの第1パターン内において、前記第1屈折領域間のピッチはいずれも0~0.5mmから選ばれ、及び/又は、少なくとも1つの第2パターン内において、前記第2屈折領域間のピッチはいずれも前記第1屈折領域間のピッチの最大値より大きく、及び/又は、前記複数の第2パターンのうち、前記眼科レンズの中心に近い第2パターンほど、第2屈折領域間のピッチが小さくなり、及び/又は、全ての前記第1パターン及び全ての前記第2パターンを含むパターンのうち、前記眼科レンズの中心に近いパターンほど、第1屈折領域又は第2屈折領域間のピッチが小さくなる。
【0022】
選択的に、少なくとも1つの前記第1パターン内における前記複数の第1屈折領域の総面積の割合は、60%以上78.5%以下、又は70%以上78.5%以下であり、及び/又は、前記第1領域が複数の第1パターンを含む場合、各第1パターンにおける第1屈折領域の総面積の割合はいずれも60%以上78.5%以下であり、及び/又は、前記第1領域が複数の第1パターンを含む場合、少なくとも2つの第1パターンにおける第1屈折領域の総面積の割合は70%以上78.5%以下であり、及び/又は、少なくとも1つの前記第2パターン内における前記複数の第2屈折領域の総面積の割合は60%未満30%以上、又は60%未満35%以上、又は60%未満40%以上であり、及び/又は、前記第2領域が複数の第2パターンを含む場合、各第2パターンにおける第2屈折領域の総面積の割合はいずれも60%未満30%以上である。
【0023】
選択的に、前記第1領域が複数の第1パターンを含む場合、前記眼科レンズの中心からより遠い第1パターンにおける第1屈折領域の総面積の割合よりも、前記眼科レンズの中心からより近い第1パターンにおける第1屈折領域の総面積の割合が大きく、及び/又は、前記第2領域が複数の第2パターンを含む場合、前記眼科レンズの中心からより遠い第2パターンにおける第2屈折領域の総面積の割合よりも、前記眼科レンズの中心からより近い第2パターンにおける第2屈折領域の総面積の割合が大きく、及び/又は、各第1パターンにおける第1屈折領域の総面積の割合は、各第2パターンにおける第2屈折領域の総面積の割合よりも大きくなる。
【0024】
選択的に、前記複数の第1屈折領域は、前記眼科レンズの中心を起点とする複数の放射線又は複数の曲線に分布し、及び/又は、前記複数の第2屈折領域は、前記眼科レンズの中心を起点とする複数の放射線又は複数の曲線に分布する。
【0025】
選択的に、各放射線又は曲線にいずれも第1屈折領域及び第2屈折領域が分布され、及び/又は、前記複数の放射線又は複数の曲線は前記眼科レンズに均一に分布される。
【0026】
選択的に、同一の放射線又は曲線において、前記第1屈折領域の加入度が一様であり、及び/又は、前記第2屈折領域の加入度が一様であり、及び/又は、前記第1屈折領域及び第2屈折領域の加入度が一様であり、又は、同一の放射線又は曲線において、前記第1屈折領域の寸法が一様であり、及び/又は、前記第2屈折領域の寸法が一様であり、及び/又は、前記第1屈折領域及び第2屈折領域の寸法が一様であり、又は、同一の放射線又は曲線において、前記眼科レンズの中心から離れる方向に沿って、前記第1屈折領域の加入度の変化方向とその寸法の変化方向が反対であり、及び/又は、前記第2屈折領域の加入度の変化方向とその寸法の変化方向が反対であり、又は、同一の放射線又は曲線において、前記眼科レンズの中心から離れる方向に沿って、前記第1屈折領域及び前記第2屈折領域の寸法が徐々に増大又は段階的に増大し、及び/又は、同一の放射線又は曲線において、前記眼科レンズの中心から離れる方向に沿って、前記第1屈折領域及び前記第2屈折領域の加入度が徐々に減少又は段階的に減少する。
【0027】
選択的に、同一の放射線又は曲線上において隣接する第1屈折領域及び/又は隣接する第2屈折領域は互いに接する。
【0028】
選択的に、前記複数の放射線又は前記複数の曲線の数は、16-40個、又は26-35個である。
【0029】
選択的に、各放射線又は曲線において、第1屈折領域の数は第2屈折領域の数より小さく、及び/又は、前記複数の放射線の数が2nである場合、前記複数の放射線はn本の直線を形成する。
【0030】
選択的に、前記複数の第1屈折領域及び前記複数の第2屈折領域は、第1領域及び第2領域全体にわたってほぼ一定のイメージジャンプを維持できるように配置される。
【0031】
選択的に、第1領域及び第2領域全体にわたって、前記複数の第1屈折領域及び前記複数の第2屈折領域のイメージジャンプの変動係数は20%未満である。
【0032】
選択的に、第2領域全体にわたって、前記複数の第2屈折領域のイメージジャンプの変動係数は、15%未満、又は12%未満、又は10%未満である。
【0033】
選択的に、前記第1領域の側頭部側に設けられた第1屈折領域の総面積の割合は、前記第1領域の鼻部側に設けられた第1屈折領域の総面積の割合と異なり、及び/又は、前記第1屈折領域の加入度は、前記第1領域の側頭部側と鼻部側とで非対称に設けられ、及び/又は、前記第2領域の側頭部側に設けられた第2屈折領域の総面積の割合は、前記第2領域の鼻部側に設けられた第2屈折領域の総面積の割合と異なり、及び/又は、第2屈折領域の加入度は、前記第2領域の側頭部側と鼻部側とで非対称に設けられる。
【0034】
選択的に、前記第1領域の側頭部側に設けられた第1屈折領域の総面積の割合は、前記第1領域の鼻部側に設けられた第1屈折領域の総面積の割合よりも大きく、及び/又は、前記第1領域の側頭部側に設けられた第1屈折領域の平均加入度は、前記第1領域の鼻部側に設けられた第1屈折領域の平均加入度よりも大きく、及び/又は、前記第2領域の側頭部側に設けられた第2屈折領域の総面積の割合は、前記第2領域の鼻部側に設けられた第2屈折領域の総面積の割合よりも大きく、及び/又は、前記第2領域の側頭部側に設けられた第2屈折領域の平均加入度は、前記第2領域の鼻部側に設けられた第2屈折領域の平均加入度よりも大きくなる。
【0035】
選択的に、前記眼科レンズは、前記眼科レンズの中心を原点とする複数の扇形領域に分けられ、前記複数の扇形領域において、各扇形領域が互いに独立するように前記第1屈折領域が設定され、各扇形領域が互いに独立するように前記第2屈折領域が設定される。
【0036】
本開示の第2の態様によれば、本開示の第1の態様及びその様々な選択可能な実施例に記載の眼科レンズが設けられたフレームメガネを提供する。
【0037】
本開示における「・・・から選ばれる」という表現は、その後の数値範囲における任意の値を選択することができ、当該数値範囲の2つの端点値を含むことを意味することが理解される。
【0038】
本開示でいうパターン又はリングの中心線とは、当該パターン又はリングの径方向幅の中間点を通る線を意味することが理解される。なお、本開示でいう第1/第2屈折領域等の中心とは、当該屈折領域をレンズ正面図上に投影した図形の幾何中心を意味する。
【0039】
一連の簡略化された形態の概念が出願の内容に導入され、それは発明を実施するための形態においてさらに詳細に説明する。本願の内容部分は、保護を求める技術案の重要な特徴及び必要な技術的特徴を限定しようとするものではなく、保護を求める技術案の保護範囲を限定しようとするものでもない。
【0040】
以下、図面を参照しながら本願の利点及び特徴を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本願の以下の図面は、本願の一部として本願を理解するために使用される。添付図面は、本願の原理を説明するための本願の実施形態及びその説明を示す。
【
図1】
図1は、本願の一例示的な実施例に係る眼科レンズの正面図である。
【
図2】
図2は、本願の別の例示的な実施例に係る眼科レンズの正面図である。
【
図4】
図4は、本願のまた別の例示的な実施例に係る眼科レンズの正面図である。
【
図5】
図5は、本願のさらに別の例示的な実施例に係る眼科レンズの正面図である。
【
図7】
図7は、本願の一例示的な実施例に係る眼科レンズと比較例とを比較したデータチャートである。
【
図8A】
図8A-
図8Eは、それぞれ本願の異なる実施例に係る眼科レンズの簡略模式図であり、それぞれ屈折領域の異なる分布を示し、マイクロレンズの配列規則を明確に示すために、全てのマイクロレンズの外輪郭が描かれていない。
【
図8B】
図8A-
図8Eは、それぞれ本願の異なる実施例に係る眼科レンズの簡略模式図であり、それぞれ屈折領域の異なる分布を示し、マイクロレンズの配列規則を明確に示すために、全てのマイクロレンズの外輪郭が描かれていない。
【
図8C】
図8A-
図8Eは、それぞれ本願の異なる実施例に係る眼科レンズの簡略模式図であり、それぞれ屈折領域の異なる分布を示し、マイクロレンズの配列規則を明確に示すために、全てのマイクロレンズの外輪郭が描かれていない。
【
図8D】
図8A-
図8Eは、それぞれ本願の異なる実施例に係る眼科レンズの簡略模式図であり、それぞれ屈折領域の異なる分布を示し、マイクロレンズの配列規則を明確に示すために、全てのマイクロレンズの外輪郭が描かれていない。
【
図8E】
図8A-
図8Eは、それぞれ本願の異なる実施例に係る眼科レンズの簡略模式図であり、それぞれ屈折領域の異なる分布を示し、マイクロレンズの配列規則を明確に示すために、全てのマイクロレンズの外輪郭が描かれていない。
【
図9】
図9は、本発明のさらにまた別の例示的な実施例に係る眼科レンズの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の説明では、本願を完全に理解できるように、多くの詳細を提供する。しかしながら、以下の説明は、本願の好ましい実施例を例示的に示すに過ぎず、本願は、1つ又は複数のこのような詳細を必要とせずに実施され得ることは、当業者には理解される。なお、本願との混同を避けるために、当該分野で公知の技術的特徴について詳細に説明しない。
【0043】
本願の実施形態を完全に理解するために、以下の説明において詳細な構造を示す。本願の実施形態の実行が、当業者に周知の特別な詳細に限定されないことは明らかである。本願の好ましい実施形態は以下のように詳細に説明するが、これらの詳細な説明に加えて、本願は他の実施形態を有してもよい。
【0044】
眼の屈折異常の進行を抑制し、レンズ着用後の明瞭な視力を満たすために、本願の一態様は眼科レンズを提供する。
【0045】
以下、まず、
図1を例として本願の眼科レンズについて詳細に説明する。
【0046】
図1に示すように、眼科レンズ1は、中心領域5と、複数の第1屈折領域2と、複数の第2屈折領域3とを含み、複数の第1屈折領域2は、中心領域5を囲む第1領域8(
図1における複数の第1屈折領域2に接する2本の破線で囲まれた領域)に配置され、複数の第2屈折領域3は、第1領域8よりも中心領域5から離れた第2領域9(
図1における最も内側の複数の第2屈折領域3及び最も外側の複数の第2屈折領域3にそれぞれ接する2本の破線で囲まれた領域)に配置される。
【0047】
中央領域5の一部又は全部は、人間の眼(使用者/着用者の眼)の処方に基づく処方屈折力を有していてもよい。いくつかの実施例において、中心領域5は、使用者が眼鏡を着用した後に前方を平面視したときに瞳孔が正対する位置として設計され、このように、遠距離視時に瞳に平行入射した光線は、中心領域5により補正された後、ちょうど黄斑中心窩に結像し、視力が明瞭であることを保証する。処方屈折力は、視力検査機構による処方における屈折力であり、一般に言われている度数と捉えることができる。使用者が近視である場合、当該処方屈折力はマイナスの屈折力であってもよい。いくつかの実施例において、使用者が近視基準に達していない可能性があるが、遠視リザーブが不足しており、近視を予防するために、この時、該処方屈折力は0又はプラスの屈折力であってもよい。いくつかの実施例において、中心領域5は、処方屈折力を有する単焦点領域であってもよい。他のいくつかの実施例において、中央領域5は、連続的に変化する屈折力を有する多焦点領域、例えば、累進多焦点領域であってもよい。この場合、中央領域5は、一部のみが処方屈折力を有する。
【0048】
中央領域5の周辺に設けられた複数の第1屈折領域2と複数の第2屈折領域3はいずれも処方屈折力とは異なる屈折力を有する。従って、第1屈折領域2及び第2屈折領域3は、いずれも眼の網膜以外の位置に光線を集束させ、眼の屈折異常の進行を抑制することができる。
【0049】
いくつかの実施例において、眼科レンズ1における第1屈折領域2及び第2屈折領域3が配置されていない領域の少なくとも一部は、処方屈折力を有し、例えば、
図1、
図2、
図4又は
図5に示す中心領域5、第1領域8と第2領域9の中間の領域、第1領域8と第2領域9以外の周辺領域6、及び各第1屈折領域2と第2屈折領域3の間の中間領域7の少なくとも1つは処方屈折力を有する。好ましくは、いくつかの実施例において、眼科レンズ1における第1屈折領域2及び第2屈折領域3が配置されていない領域(
図1、
図2、
図4又は
図5に示す中心領域5、第1領域8と第2領域9の中間の領域、第1領域8と第2領域9以外の周辺領域6、及び各第1屈折領域2と第2屈折領域3の間の中間領域7)は、いずれも処方屈折力を有してもよい。複数の第1屈折領域2及び/又は複数の第2屈折領域3の間の隙間は、いずれも処方屈折力を有するように設定され、患者により良い視覚効果を提供することができ、それにより患者のコンプライアンスを向上させ、近視管理及び制御の効果を向上させる。特に、複数の第1屈折領域2及び/又は複数の第2屈折領域3の間の隙間が連続性を有する場合、患者により優れた視覚効果を提供し、近視管理及び制御の効果をさらに向上させることができる。
【0050】
好ましくは、いくつかの実施例において、各第1屈折領域2は、処方屈折力にプラスの屈折力を加えた屈折力を有してもよく、つまり、第1屈折領域2に対応するレンズの全体屈折力は処方屈折力よりもプラスとなっている。本明細書で、該処方屈折力に加えたプラスの屈折力を第1屈折領域の加入度と呼ぶ。これに加えて又は代えて、いくつかの実施例において、各第2屈折領域3は、処方屈折力にプラスの屈折力を加えた屈折力を有してもよく、つまり、第2屈折領域3に対応するレンズの全体屈折力は処方屈折力よりもプラスとなっている。本明細書で、該処方屈折力に加えたプラスの屈折力を第2屈折領域の加入度と呼ぶ。これにより、第1屈折領域2及び第2屈折領域3において、中心領域5の周辺の特定の微小領域における屈折力(例えば、-0.75D)が中心領域5の屈折力(例えば、-3.5D)よりもプラスとなるように加入することで、周辺の網膜では網膜が知覚できるが脳では知覚できない近視デフォーカスを形成することで、視覚品質に影響を与えず又は著しく影響を与えずに眼軸成長を制御し、近視を防止したり、近視の深化を阻止又は遅延させたりする作用を奏する。
【0051】
いくつかの実施例において、各第1屈折領域2は、一様な屈折力を有してもよく、異なる屈折力を有してもよい。各第2屈折領域3は、一様な屈折力を有してもよく、異なる屈折力を有してもよい。いくつかの実施例において、複数の第1屈折領域2と複数の第2屈折領域3の屈折力はいずれも同じであってもよい。
【0052】
いくつかの実施例において、眼科レンズの径方向に沿って、第1屈折領域2又は第2屈折領域3の屈折力は、径方向距離の増大に伴って一定、又は徐々に増大又は減少、又は段階的に増大又は減少してもよい。本開示における「レンズの径方向」という表現とは、レンズ投影図においてレンズ中心点から外周に向かう方向を意味する。段階的に増大又は減少するとは、隣接するいくつかのパターン(「パターン」については後述する)内に配置される第1屈折領域2又は第2屈折領域3が第1屈折力を有し、そのいくつかのパターンの外側のいくつかのパターン内の第1屈折領域2又は第2屈折領域3が第2屈折力を有してもよいことを意味する。第2屈折力は、第1屈折力より大きくても小さくてもよい。例示的に、眼科レンズの径方向に沿って、第1屈折領域2及び第2屈折領域3は、全体として径方向距離の増大に伴って徐々に又は段階的に増大し、又は徐々に又は段階的に減少する屈折力を有してもよい。
【0053】
上述したように、第1屈折領域2又は第2屈折領域3の屈折力が径方向距離に応じて変化する場合、いくつかの実施例において、第1屈折領域2又は第2屈折領域3の寸法も径方向距離に応じて変化し、その寸法の変化方向は屈折力の変化方向と逆であることが好ましい。本開示において、第1屈折領域2又は第2屈折領域3の寸法とは、レンズに投影される図形の寸法、例えば最大寸法を意味する。本開示における用語「最大寸法」とは、各方向における図形の寸法のうち最大の寸法を意味することが理解される。
図1に示す各屈折領域の投影の図形が円形である場合、当該寸法は、その直径を指してもよい。例えば、いくつかの場合、第1屈折領域2又は第2屈折領域3の屈折力が径方向距離の増大に伴って徐々に減少又は段階的に減少する場合には、第1屈折領域2又は第2屈折領域3の寸法を径方向距離の増大に伴って徐々に増加又は段階的に増加させてもよい。これにより、レンズ全域においてほぼ一定の低強度の「イメージジャンプ」を維持し、着用者に良好な視覚効果を提供し、着用者の順応を容易にし、着用のコンプライアンスを向上させることができる。
【0054】
イメージジャンプは、単一の第1又は第2屈折領域の加入度と、それに対応するレンズにおける投影の最大寸法(例えば直径)との積で簡単に表すことができ、この場合、用語「ほぼ一定」とは、レンズにおいて第1屈折領域と第2屈折領域が配置されている範囲の全体にわたって(例えば第1領域と第2領域の全体にわたって)第1屈折領域と第2屈折領域の当該積の変動係数が30%未満、好ましくは25%未満、より好ましくは20%未満であることを意味する。変動係数(CV、即ち、Coefficient of Variation)は標準偏差と平均値との比を意味することが当業者に理解される。また、上述した径方向距離に応じて変化する方式に加えて、他の方式を採用して各第1又は第2屈折領域の加入度及びその最大寸法を設計することにより、所望のイメージジャンプ変化を実現することができることが理解される。また、いくつかの実施例において、周辺視覚品質を向上させるために、外側に設けられた第2屈折領域のイメージジャンプ変化をさらに一定にすることができる。単一の第2屈折領域のイメージジャンプは、単一の第2屈折領域の加入度とその最大寸法との積で表される。いくつかの実施例において、第2領域全体にわたって、複数の第2屈折領域のイメージジャンプの変動係数は15%未満であってもよく、好ましくは12%未満であり、より好ましくは10%未満である。また、いくつかの実施例において、周辺に設けられた第2屈折領域の近視制御効果を確保するために、第2領域全体にわたって、複数の第2屈折領域のイメージジャンプの変動係数は、1%より大きくなってもよく、好ましくは2%より大きくなり、より好ましくは3%より大きくなる。いくつかの実施例において、上記の上限値と下限値を任意に組み合わせて複数の第2屈折領域のイメージジャンプの変動係数の範囲を設定することができる。
【0055】
好ましくは、第1屈折領域2又は第2屈折領域3の中心領域5に対する加入度は、+1.0Dから+10.0Dの範囲から選択することができ、例えば、+1.0D、+1.5D、+2.5D、+3.0D、+3.5D、+4.0D、+4.5D、+5.0D、+5.5D、+6.0D、+6.5D、+7.0D、+7.5D、+8.0D、+8.5D、+9.0D、+9.5D又は+10.0Dである。
【0056】
いくつかの例示的な実施例において、各第1屈折領域2又は第2屈折領域3は、元レンズに付加されたマイクロレンズであってもよく、例えば、凸レンズであってもよい。選択的に、第1屈折領域2又は第2屈折領域3は元レンズと一致する輪郭を有してもよく、即ち元レンズから突出しない。この場合、第1屈折領域2又は第2屈折領域3は、元レンズと異なる屈折率を有していてもよい。例えば、第1屈折領域2又は第2屈折領域3は、元レンズとは異なる材料を用いて作成してもよく、又はそのイオン濃度を調整してレンズ材料を重合させる際の異なる領域の屈折率を調整して作成してもよく、又は特定の領域に紫外線を照射して再重合させることにより屈折率を変化させて作成してもよい。
【0057】
複数の第1屈折領域及び複数の第2屈折領域がいずれもマイクロレンズである場合、複数の第1屈折領域は眼科レンズの中心に近いマイクロレンズと考えられ、複数の第2屈折領域は眼科レンズの中心から遠いマイクロレンズと考えられる。ここでいう近いと遠いとは絶対的なものではなく、相対的なものである。
【0058】
いくつかの実施例において、各第1屈折領域2又は第2屈折領域3のレンズにおける投影は、真円形、扁平円形(楕円形)、多角形などであってもよい。多角形の場合、辺の数は6以上であってもよい。
図1に示すように、第1屈折領域2が円形である場合、複数の第1屈折領域2のうちの任意の隣接する2つは互いに接してもよく、間隔を空けずに複数の第1屈折領域2が設けられるともいえる。本開示において、「~と接する」、「~に接する」、又は「ピッチがゼロである」などの表現は、例えば、測定又は加工などによる一定の誤差量が存在する実際の状況を含むべきことが当業者に理解される。
【0059】
いくつかの実施例において、各第1屈折領域2又は第2屈折領域3のレンズにおける投影の最大寸法は、それぞれ独立して0.5-2.2mmの範囲から選択することができ、例えば、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、2.0mm、2.1mm又は2.2mmであってもよく、又はそれらの間の任意の値であってもよい。いくつかの実施例において、第1屈折領域2又は第2屈折領域3のレンズにおける投影が円形である場合、円形の直径は最大寸法となり、0.5-2.2mmであってもよい。いくつかの例示的な実施例において、複数の第2屈折領域3の眼科レンズにおける投影の面積は等しくてもよい。いくつかの例示的な実施例において、複数の第1屈折領域2の眼科レンズにおける投影の面積は等しくてもよい。あるいは、いくつかの例示的な実施例において、複数の第1屈折領域2又は複数の第2屈折領域3のうちの少なくとも一部の眼科レンズにおける投影の面積は等しい。
【0060】
例示的に、第1屈折領域2又は第2屈折領域3は、それぞれ球面、非球面又はトーリック面から選ばれる表面形状を有してもよい。複数の第1屈折領域2は、一致する表面形状を有してもよいし、異なる表面形状を有してもよい。複数の第2屈折領域3は、一致する表面形状を有してもよいし、異なる表面形状を有してもよい。
【0061】
本開示において議論される眼科レンズの各領域等の形状、ピッチ、及びその他の寸法等は、眼科レンズ、又は例えば図面に示される眼科レンズの正面図における平面投影の形状及び寸法を意味することが当業者に理解される。本開示において、眼科レンズの表面の曲率半径は、各屈折領域の寸法よりもはるかに大きいため、各屈折領域に配置された一部は実質的に平坦であると見なすことができ、これにより、本開示に記載の各屈折領域の眼科レンズへの投影は、眼科レンズの正面図への投影と見なすことができる。いくつかの実施例において、第1屈折領域2及び第2屈折領域3は眼科レンズの外側表面(即ち眼から離れた表面)に配置されてもよく、図に示す眼科レンズの正面図は該外側表面の平面投影である。もちろん、他の実施例において、第1屈折領域2及び第2屈折領域3は眼科レンズの内側表面(即ち眼に近い表面)に配置されてもよく、図に示す眼科レンズの正面図は該内側表面の平面投影である。
【0062】
図1は、中心領域5が眼科レンズ1の中心を中心とする円形領域であることを示しているが、他のいくつかの実施例において、中心領域5は多角形、又は他の回転対称の図形であってもよい。中心領域5の最大寸法は、3.0-11.0mmであってもよく、例えば、3.0mm、4.0mm、5.0mm、6.0mm、7.0mm、8.0mm、9.0mm、10.0mm、又は11.0mm、若しくはそれらの間の任意の値であってもよい。
図1に示すように中心領域5が円形である場合、中心領域5の直径は3.0-11.0mmであってもよい。
【0063】
図1に示すように、第1領域8は中心領域5を囲み、その内縁は中心領域5の外縁と同一であり、いずれも最も内側のリング内の第1屈折領域2の内側に接し、その外縁はそれらの第1屈折領域2の外側に接し、図中破線で示す。このとき、第1領域8は、眼科レンズの中心を中心とするリング状領域である。いくつかの実施例において、第1領域の内縁の直径は3.0~11.0mmから選ばれてもよく、外縁の直径は15.0~28.6mmから選ばれてもよい。
【0064】
図1に示すように、第2領域9は第1領域8を囲み、眼科レンズの中心を中心とするリング状領域でもあり、図中破線で示すように、その内縁は最も内側の第2屈折領域3の内側に接し、外縁は最も外側の第2屈折領域3の外側に接する。第2領域9は、第1領域8よりも中央領域5から離れている。
図1には、第2領域9が第1領域8を囲むように示されているが、本発明はこれに限定されないことが理解される。いくつかの実施例において、第2領域9は、例えば
図4を参照して詳細に説明されるように、第1領域8を部分的に囲むことができる。
【0065】
中心領域5に近い第1領域8に複数の第1屈折領域2が配置され、中心領域5から遠い第2領域9に複数の第2屈折領域3が配置され、眼の屈折異常の進行を抑制するとともに、着用後の明瞭な視力を満足させるために、いくつかの例示的な実施例において、第1領域における第1屈折領域の密集度合いが第2領域における第2屈折領域の密集度合いよりも大きくなるように適宜設計することができる。
【0066】
この密集度合いは、総面積の割合で表すことができる。換言すれば、第1領域における複数の第1屈折領域2の総面積の割合は、第2領域における複数の第2屈折領域3の総面積の割合よりも大きく、すなわち、第1領域の面積に対する複数の第1屈折領域2の総面積の割合は、第2領域の面積に対する複数の第2屈折領域3の総面積の割合よりも大きい。本開示において、「総面積の割合」という表現とは、1つの領域内の全てのマイクロ屈折領域(即ち、第1屈折領域2又は第2屈折領域3)の面積の和と、当該領域の総面積との比を意味する。いくつかの実施例において、該密集度合いは、密度又はピッチで表されてもよい。つまり、第1領域における第1屈折領域2の密度は、第2領域における第2屈折領域3の密度よりも大きくてもよい。即ち、全体的に言えば、第1屈折領域2の間の配列がより緊密であり、例えば、全体的に言えば、第1屈折領域2とその周囲の第1屈折領域との間のピッチの平均値が第2屈折領域3とその周囲の第2屈折領域との間のピッチの平均値よりも小さく、つまり、複数の第1屈折領域2の間の平均ピッチが複数の第2屈折領域3の間の平均ピッチよりも小さい。屈折領域の密度とは、単位面積当たりの屈折領域の個数を意味する。2つの屈折領域の間のピッチとは、2つの屈折領域が最も近接する点間の距離を意味する。複数の第1屈折領域2の間の平均ピッチとは、それらの複数の第1屈折領域2の各々の第1屈折領域2と最も隣接する第1屈折領域2との間のピッチの合計を第1屈折領域2の総数で除したピッチの平均値を意味し、ここで、最も隣接する第1屈折領域2は後に詳述するようにそれらの複数の第1屈折領域2がパターンに配列されている場合には、1つのパターン内で最もピッチの小さい第1屈折領域2を意味し、それ以外の場合には、各方向で最もピッチの小さい第1屈折領域2を意味する。複数の第2屈折領域3の間の平均ピッチも同様に定義される。場合によっては、各屈折領域の寸法がいずれも比較的小さく、異なる屈折領域の寸法の差がそれほど大きくない(例えば、最大値が最小値の約2-3倍を超えない)ため、密度やピッチによって第1屈折領域2と第2屈折領域3の密集度合いを説明することができる。
【0067】
これにより、複数の第1屈折領域2は、中心領域5の周辺に密な加入(前記加入は、すなわち処方屈折力にプラスの屈折力を加えることである)を形成することができる。本願は、中央光学領域(例えば、中心領域5)の近傍(例えば前記第1領域であり、網膜敏感領域に対応する)に高密度な近視デフォーカス領域を設定することにより、より良い近視制御効果を実現する。また、中央光学領域からより離れた領域(例えば、前記第2領域)において第2屈折領域3の間に適切な間隔を保持する(例えば、第2領域においてより低い面積割合を設定する)ことにより、近視患者のコンプライアンスを向上させるだけでなく、異なる患者の近視管理・制御効果の間の差を最大限に低減することができ、近視進行の管理及び制御をより容易にする。
【0068】
いくつかの実施例において、第1領域内における複数の第1屈折領域2の総面積の割合は、60%以上78.5%以下、好ましくは63%超78.5%以下、より好ましくは66%超78.5%以下であってもよい。
【0069】
いくつかの実施例において、第2領域内における複数の第2屈折領域3の総面積の割合は、60%未満、好ましくは57%未満、より好ましくは54%未満である。
【0070】
また、本発明者らは、眼科レンズの中心を中心とする内縁の直径3.0mm(例えば、4.0mm、5.0mm、6.0mm、7.0mm、8.0mm、9.0mm、10.0mm、11.0mm又はそれらの間の任意の値)から外縁の直径28.6mm(例えば、15.0mm、19.8mm、24.2mm又はそれらの間の任意の値)にかけて形成されたリング状の領域において密集な加入を行う(例えば、少なくとも眼科レンズの中心を中心とする内縁の直径9.0mmから外縁の直径15.0mmにかけて形成されたリング状の領域において密集な加入を行う)ことにより形成された近視デフォーカスが、網膜により多くの刺激を与え、眼軸の伸長を抑制できることを見出した。換言すれば、第1領域は、上述した眼科レンズの中心を中心とする内縁の直径3.0mmから外縁の直径28.6mmにかけて形成されたリング状領域を含んでもよく、又は実質的に該リング状領域を含んでもよく、又は該リング状領域から構成されてもよい。
【0071】
以下、一例を挙げて第1屈折領域2の設計を簡単に説明する。処方屈折力が-3.5Dであり、レンズの中心領域5の直径が10mmであり、第1屈折領域2が中心から5mm程度の位置にあると仮定する。例示的に、
図1に示すように、第1屈折領域2は、直径10mmの中心領域5に当接する境界に位置して一周に設置されてもよく、第1屈折領域2の数はπ×d1/d2であってもよく、ここで、d1は中心領域5の直径であり、d2は第1屈折領域2の最大寸法(例えば直径)である。d2が1.2mmの場合、第1屈折領域2の数は26個と算出できる。勿論、いくつかの実施例において、第1屈折領域2の数は、26-35個であってもよく、それに対応して、第1屈折領域2の最大寸法と中心領域5の直径を設計することができる。第1屈折領域2を中心領域5の周囲に密集に設けることにより、眼軸が長くなるのを効果的に遅らせることができ、近視抑制効果がより高い。
【0072】
いくつかの実施例において、好ましくは、眼科レンズの中心を中心とする内縁の直径9mmから外縁の直径15mmにかけて形成されたリング状領域内に密集な加入を行い、このとき、リング状領域を通過した入射光束は、網膜黄斑中心窩の近傍の10度から20度の間の領域にほぼ投射される。これに合わせて、研究により、網膜黄斑中心窩に近くに競合性近視デフォーカス信号を印加することは、眼軸の軸方向成長を緩和することに対してより強く且つより一致する作用を有することが示された(E. L. Smith IIIら、Eccentricity-dependent effects of simultaneous competing defocus on emmetropization in infant rhesus monkeys, Vision Research, 17(3):32-40, 2020)。このことは、
図7の実験結果からも明らかである。
図7は光学シミュレーションソフトウェアOptic Studio Zemaxにより、異なるマイクロレンズ配列を有するレンズを模型眼Liou&Brenna表面に置いた時に、計算して得られた像面湾曲積分(マイナスの像面湾曲絶対値)である。
図7に示すように、本発明のレンズは、網膜デフォーカス敏感領域に対応する部分に、密集に加入したマイクロレンズ(即ち、第1屈折領域2)を設けることにより、好適な例(その密集に加入したマイクロレンズは、内径が9.5mmで外径が14mmのリング状領域にほぼ位置する)を参照すると、網膜により多くのデフォーカス刺激を提供することができる。小規模実験において、本願の眼科レンズは効果的に脈絡膜増厚(2週間平均脈絡膜増厚(6±6)%)を促進できることを発見し、現在、短期脈絡膜増厚は長期眼軸成長制御効果に関連すると考えられている。
【0073】
レンズが着用中に上下に移動する場合があることを考慮して、網膜デフォーカス敏感領域を確実にカバーするために、余分な幅を有するリング状領域内において密集な加入を行ってもよい。全体的に言えば、複数の第1屈折領域2は、内縁の直径3.0mmから外縁の直径28.6mmのリング状領域内に設けられてもよく、例えば、全部が該リング状領域内に設けられる。例示的に、複数の第1屈折領域2は、内縁の直径3.0mmから外縁の直径24.2mmのリング状領域内に設けられてもよく、例えば、全部が該リング状領域内に設けられる。例示的に、複数の第1屈折領域2は、内縁の直径3.0mmから外縁の直径19.8mmのリング状領域内に設けられてもよく、例えば、全部が該リング状領域内に設けられる。いくつかの実施例において、複数の第1屈折領域2は、少なくとも眼科レンズの中心を中心とする内縁の直径9.0mmから外縁の直径15.0mmのリング状領域内に設けられ、又は、第1領域は、少なくとも眼科レンズの中心を中心とする内縁の直径9.0mmから外縁の直径15.0mmのリング状領域を含む。該リング状領域内に密集に加入する効果を達成するために、好ましくは、複数の第1屈折領域2の一部又は全部が該リング状領域を満たすことができる。好ましくは、上記内縁の直径9.0mmから外縁の直径15.0mmのリング状領域内のいずれか1つの第1パターン(「第1パターン」の詳細は後述する)における第1屈折領域2の総面積の割合は、70%超78.5%未満であり、好ましくは72%超78.5%未満である。また、いくつかの実施例において、複数の第1屈折領域2のうちの少なくとも一部は、眼科レンズの中心を中心とする内縁の直径9.5mmから外縁の直径14.0mmのリング状領域に配置され、又は、少なくとも一部は、眼科レンズの中心を中心とする内縁の直径11.0mmから外縁の直径14.0mmのリング状領域内に配置される。
【0074】
図1に示すように、複数の第1屈折領域2は、第1リング21によって表される1つのリング状領域(第1パターンと呼ぶ)内に配置され、複数の第2屈折領域3は、第2リング31によって表される5つのリング状領域(第2パターンと呼ぶ)内に配置される。つまり、
図1において、第1領域8は、第1リング21によって表されるリング状領域である1つの第1パターンのみを含み、第2領域9は、5つの第2リング31によって表される合計リング状領域である5つの第2パターンを含む。
【0075】
図示を簡単にするために、本願の各図において、リング状パターン(例えば、第1リング21、第2リング31及び後述する第1パターン2a、2b)は、いずれも当該円環の中心線として簡略化して表示されていることが当業者に理解される。例えば、
図1において、リング状パターンである第1リング21とは、眼科レンズ1の中心を中心とし、
図1の符号21で示す円を中心線とし、内縁と外縁がそれぞれ第1屈折領域2に接するリング状パターンを意味する。第1屈折領域2の中心は、第1リング21の中心線上に位置することが分かる。また、同様に、
図1において、第2屈折領域3の中心は、第2リング31の中心線上に位置する。リング状パターンとしての各第2リング31とは、眼科レンズ1の中心を中心とし、
図1の符号31で示す対応する円を中心線とし、内縁と外縁がそれぞれ対応する中心線に位置する第2屈折領域3に接するリング状パターンを意味する。これにより、
図1において、第1領域8は、内縁及び外縁がそれぞれ第1屈折領域2に接する第1リング21であり、第2領域9は、複数の第2リング31及びそれらの間の間隔を含む領域、即ち、レンズの中心に最も近い第2リング31の内縁とレンズの中心から最も遠い第2リング31の外縁との間のリング状領域である。後述する
図2、
図4-5、
図8A-8Eの各例示的な実施例における第1領域及び第2領域は、いずれも
図1と同様に定義される。
【0076】
図1は、第1領域が1つの第1パターンを含み、第2領域が5つの第2パターンを含むことを示しているが、他の実施例において、第1領域及び/又は第2領域は、より多い又はより少ないパターンを含んでもよい。つまり、いくつかの実施例において、第1領域は、1つ又は複数の第1パターン(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの第1パターン)を含み得、第1領域内の複数の第1屈折領域の一部又は全部は、前記1つ又は複数の第1パターンに配置される。同様に、第2領域は、1つ又は複数の第2パターン(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ又は8つの第2パターン)を含んでもよく、第2領域内の複数の第2屈折領域の一部又は全部は、前記1つ又は複数の第2パターンに配置される。いくつかの実施例において、第1パターンの数は1-4個であってもよく、第2パターンの数は1-15個であってもよい。
【0077】
図1に示すように、1つ又は複数の第1パターンは、眼科レンズ1の中心と同心に設けられてもよい。簡略化の観点から、各第1パターンは、該パターンをほぼ配列可能な最小数の第1屈折領域のみを含み、例えば、
図1における第1パターンは、最内周の第1屈折領域のみを含み、即ち、径方向において、第1屈折領域は1周のみであり、より多くの第1屈折領域を含まない。
図1には、1つの第1パターンである第1リング21を含む合計6つのリング状パターンが示されている。1つ又は複数の第2パターンは眼科レンズ1の中心と同心に設置されてもよく、第2パターンの最大寸法について明確な制限はなく、当業者は必要に応じて適切な範囲を選択することができる。第1パターンと同様に、簡略化の観点から、各第2パターンは、該パターンをほぼ配列可能な最小数の第2屈折領域のみを含み、例えば、
図1における第2パターンは、径方向において、第2屈折領域は1周のみであり、より多くの第2屈折領域を含まず、よって、
図1は5つの第2パターン、即ち5つの第2リング31を有する。
【0078】
図2は、
図1の眼科レンズの変形例を示し、第1領域は、1つの第1パターンではなく、2つの第1パターンを含む。
【0079】
具体的には、
図2は、複数の第1屈折領域2が2つの第1パターンに配列されている場合を示す。
図3に示す
図2の一部を参照すると、第1屈折領域2は、中央領域5に近い第1パターン2a(以下、説明の便宜上、内側の第1パターン2aと称する)と、中央領域5から離れ且つ第1パターン2aに隣接する第1パターン2b(以下、説明の便宜上、外側の第1パターン2aと称する)とに配置されてもよい。内側の第1パターン2aにおける第1屈折領域同士は、接していてもよいし、ギリギリ隣接していてもよい。ギリギリ隣接するとは、これらの第1屈折領域の間が小さいピッチを有することを意味し、例えば第2屈折領域3の間のピッチよりも小さい。外側の第1パターン2bにおける第1屈折領域同士は、接していてもよいし、ギリギリ隣接していてもよい。第1屈折領域2の密集加入作用を大きくするためには、内側の第1パターン2aにおける第1屈折領域と、外側の第1パターン2bにおける第1屈折領域とを、パターン内でもパターン間でも接するようにすればよい。この場合、内側の第1パターン2aにおける第1屈折領域の径を、外側の第1パターン2bにおける第1屈折領域の径よりも若干小さくすることができ、このように、内側の第1パターン2aにおける第1屈折領域と外側の第1パターン2bにおける第1屈折領域の数を同等にすることができる。この場合、内側の第1パターン2aと外側の第1パターン2bを、いずれも図中2a及び2bで示す円を中心線とするリング状の領域とみなすと、内側の第1パターン2aと外側の第1パターン2bの一部でも重なる。勿論、他の実施例において、内側の第1パターン2aにおける第1屈折領域と外側の第1パターン2bにおける第1屈折領域は、直径が同じであるように設定されてもよく、このように、内側の第1パターン2aにおける第1屈折領域の数は、外側の第1パターン2bにおける第1屈折領域の数よりも少なくてもよい。
図2乃至
図3は、第1屈折領域2が上記のような2つの第1パターンに配列される実施例を説明したが、第1屈折領域2は、より多くの第1パターンに配列されてもよく、該2つ又は複数の第1パターンは、重ならず、互いに接してもよく、又は一定のピッチを有してもよいことが理解される。
【0080】
先の
図1及び
図2に示す実施例において、各第1パターン及び第2パターンは、いずれも眼科レンズの中心と同心に設けられたリング状パターンである。しかし、他のいくつかの実施例において、第1パターン及び/又は第2パターンは、眼科レンズの中心と同心でなくてもよく、又は扇形状、略リング状、多角形、又は前記レンズの中心に沿って回転対称な他の図形などの他の形状を有してもよい。また、複数の第1パターン及び複数の第2パターンを有する場合、当該複数の第1パターン及び/又は複数の第2パターンは、互いに同一であっても異なってもよい。これらの場合、第1領域及び第2領域は、リング状領域ではなく、第1パターン及び第2パターンの形状及び配置に応じた形状であってもよい。例えば、第1領域又は第2領域は、それぞれ、全ての第1パターン又は全ての第2パターンを含んで形成された最小領域であってもよい。略リング状とは、大部分の第1屈折領域2が1つ又は複数の円周上に配列され、残りの第1屈折領域2が円周外にあり、例えば、一定の規則に従って(例えば、等間隔に)円周の内側であって円周にギリギリ隣接する位置に配列され、及び/又は一定の規則に従って(例えば、等間隔に)円周の外側であって円周にギリギリ隣接する位置に配列され、例えば、複数の第1屈折領域2が太陽花の外輪郭に類似する形状に配列されてもよい。
【0081】
いくつかの実施例において、第1屈折領域2及び第2屈折領域3は、
図1及び
図2のように中央領域5の外周全体に均一に分布しなくてもよく、例えば、中央領域5の一側、例えば、図中の上側、下側、左側又は右側のみに分布してもよく、中央領域5の外周を囲む一部の領域であってもよい。これらは、中心領域5に関して対称に設けられてもよいし、非対称に設けられてもよい。具体的な分布については、着用者の視力状況に応じて調整することができる。いくつかの例では、第1パターン及び/又は第2パターン、並びにそれを含む第1領域及び/又は第2領域は、例えば
図4に示すような扇リング形状を有すると考えられる。
図4において、図中のB領域内に第2屈折領域3を設けなくてもよく、図示しないが、他の実施例において、B領域内に第1屈折領域を設けなくてもよい。いくつかの実施例において、該領域Bは、着用者が遠方視認(例えば、黒板を見る)と近方視認(例えば、机上の本を見る)との間で切り替える際に、頭部を大きく移動させなくてもよいため、該領域は近方視認タスク用の処方屈折力と異なる屈折力を有してもよい。この場合、第2領域は、内縁がレンズの中心に最も近い第2リング31内の第2屈折領域3の内側に接し、外縁がレンズの中心から最も遠い第2リング31内の第2屈折領域3の外側に接するリング状領域からB領域を引いたものであってもよく、即ち、扇リング形状を有し、各第2パターンも扇リングパターンである。
【0082】
前述したように、
図1では、1つの第1リング21(第1パターン)内に第1屈折領域2が配置され、5つの第2リング31(第2パターン)内に第2屈折領域3が配置される。このときの各隣接するリング(各パターン)間のピッチは等しい。以下、
図1の具体的な数値の実施例を挙げて説明する。最大の第2リング31の直径は30mm(半径15mm)であってもよく、中心領域5の直径は10mm(半径5mm)であってもよく、第1屈折領域2と第2屈折領域3の直径はいずれも1.2mmであってもよく、隣接するリング間のピッチは(15-5-0.6)/5-1.2≒0.7mmであってもよく、即ち、隣接するリング間の間隔(即ち、径方向に沿って隣接するリング上の2つの屈折領域間の間隔)は概ね0.7mmである。
【0083】
本明細書において、隣接するパターン間のピッチ(単にパターンピッチと称する場合がある)は、レンズの径方向に沿って、1つのパターン内の屈折領域と隣接するもう1つのパターン内の屈折領域との間の距離を指してもよく、又はレンズの径方向において、外側パターンの最内側径方向距離と内側パターンの最外側径方向距離との間の距離を指してもよい。
図1のように異なるパターン上の屈折領域がいずれも径方向に沿って放射状に分布している場合、径方向に沿って隣接する2つの屈折領域によってパターンピッチを決定することができる。異なるパターン上の屈折領域が径方向に沿って放射状に分布していない場合、パターンピッチは、外側パターンの最内輪郭の所定径方向における直径と、内側パターンの最外輪郭の当該所定径方向における直径との差の半分であってもよい。
【0084】
いくつかの実施形態において、各隣接するリング又は隣接するパターンの間のピッチは、すべて等しくなくてもよく、部分的に等しくてもよく、又はすべて異なってもよい。例えば、任意の隣接する2つの第2パターンの間のピッチは、隣接する第1パターンと第2パターンとの間のピッチ、及び/又は任意の隣接する2つの第1パターンの間のピッチ(2つの第1パターンがある場合)と等しくてもよい。
【0085】
いくつかの実施例において、例えば、隣接するパターン(第1パターンと第2パターンを含む)間のピッチは、第1屈折領域2又は第2屈折領域3の直径の0.2から1.5倍に等しくてもよく、例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、又は1.5倍である。
【0086】
いくつかの実施例において、第1パターン(例えば、第1リング21)の数が複数である場合、隣接する2つの第1パターンの間は、互いに接していてもよく、又はギリギリ隣接していてもよく、又は若干大きいピッチを有していてもよい。いくつかの実施例において、任意の隣接する第1パターンの間のピッチは、0.5mm以下であってもよい。いくつかの実施例において、中央領域5から離れる方向に沿って、隣接するパターン(第1パターンと第2パターンを含む)の間のピッチが徐々に大きくなってもよい。他のいくつかの実施例において、第1パターン同士は、等しい第1ピッチを有してもよく、第2パターン同士は、等しい又は異なる第2ピッチを有してもよく、第1ピッチは、第2ピッチより小さくてもよい。
【0087】
いくつかの実施例において、第2パターン(例えば、第2リング31)の数が複数である場合、隣接する第2パターンの間のピッチは等しくてもよい。もちろん、外側の第2パターンに近いほどパターンピッチが大きくなるようにしてもよい。
【0088】
いくつかの実施例において、任意の隣接する2つの第1パターン(もしあれば)の間のピッチ、任意の隣接する2つの第2パターン(もしあれば)の間のピッチ、及び/又は、隣接する第1パターンと第2パターンとの間のピッチはゼロであり得る。ピッチが0である隣接パターンについて、当該隣接するパターンは接しているともいえる。
図5及びその部分図(
図6)に示すように、第1領域8は、2つの第1リング21(第1パターン)を含み、第2領域9は、6つの第2リング31(第2パターン)を含む。各隣接するリング(第1リング21及び第2リング31のいずれであってもよい)の間は、いずれも互いに接していてもよく、ギリギリ隣接していてもよい。実際、この場合、第1リングと第2リングとを明確に識別することはできない。しかしながら、全体的に見ると、外側の屈折領域間のピッチが内側の屈折領域間のピッチよりも明らかに大きいことが分かる。ここで、明瞭化の観点から、同一パターン内の少なくとも2つの隣接する屈折領域間のピッチが0.5mm未満であるパターンを「第1パターン」と呼び、より大きなピッチの屈折領域を有するパターンを「第2パターン」と呼ぶことができる。一つの実施例において、最も内側の一つのパターン及びそれに隣接する一つのパターンにおける屈折領域の間にほとんど間隔がないか又は間隔が小さい(0.5mm未満)ため、第1リング21の数は2個であり、第2リング31の数は6個であると考えられる。第1リング21の間のピッチはゼロであり、第2リング31の間のピッチはゼロであり、且つ第1リング21と第2リング31との間のピッチもゼロである。また、
図5に示すように、外側に近いほど、第1リング21又は第2リング31内の第1屈折領域2又は第2屈折領域3の寸法が大きくなり、第1リング21又は第2リング31内の隣接する第1屈折領域2又は第2屈折領域3の間のピッチも大きくなる。
【0089】
上記
図1には、第1パターン内において隣接する第1屈折領域2がいずれも接している(間隔を空けずに配列されている)ことが示されているが、いくつかの実施例において、少なくとも1つの第1パターン内において、第1屈折領域2の間は小さいピッチを有してもよく、つまり、第1パターンの延伸する方向に沿って、隣接する第1屈折領域2の間は小さいピッチ(例えば、0.5mm未満、例えば、0.4mm、0.3mm、0.2mm、0.1mmのピッチ)を有してもよい。いずれにせよ、第1屈折領域2の間のピッチ(例えば平均ピッチ)は、第2屈折領域3の間のピッチ(例えば平均ピッチ)よりも小さくてもよい。例えば、第1パターンの延在方向に沿った第1屈折領域2の間のピッチ(例えば平均ピッチ)は、第2パターンの延在方向に沿った第2屈折領域3の間のピッチ(例えば平均ピッチ)よりも小さいが、ある方向(例えば径方向)において、第1屈折領域2の間のピッチ(例えば平均ピッチ)は、同一方向における第2屈折領域3の間のピッチ(例えば平均ピッチ)より小さく、等しく、又は大きくてもよい。
【0090】
いくつかの実施例において、複数の第2屈折領域3は、互いに離間する複数の島状領域として、1つ又は複数の第2パターンにおいて互いに離間して配列されてもよい。いくつかの実施例において、少なくとも1つの第2パターンにおいて、第2屈折領域3の間のピッチは、いずれも第1屈折領域2の間のピッチの最大値よりも大きい。本発明者らは、第2屈折領域3の間に適切な間隔を確保することにより、レンズ着用者である患者のコンプライアンスや視覚的快適性を向上させることができるだけでなく、異なる患者の近視管理・制御効果の差を極力低減できることを見出した。任意の理論に制限されることを望まず、発明者らは、近視デフォーカス範囲が大きすぎると、網膜上の集束光線が不足し、眼が網膜を調節して集束点を探すには前に向けるか、それとも後ろに向けるべきかを判断することが困難になる可能性があり、それにより異なる患者の間に大きな効果差をもたらすことから、複数の第2屈折領域3の間に十分なピッチを残すことが重要であると考えた。
【0091】
いくつかの実施例において、各第2パターンにおける第2屈折領域3をいずれも同じピッチに設定することができ、例えば、異なる第2パターン内における第2屈折領域3の間のピッチは等しくてもよく、このように、外側に近いほど、第2パターン上の第2屈折領域3の数が多くなり、又は寸法が大きくなると表現される。
【0092】
いくつかの実施例において、全体的に見ると、第1パターン及び第2パターンを含む全てのパターンは、例えば、
図1、
図4及び
図5に示すように、眼科レンズの中心から離れるパターンほど、該パターン内の隣接する2つの屈折領域の間のピッチが大きくなる。つまり、任意の2つの隣接するパターンのうち、相対的に眼科レンズの中心に近い方のパターン内の屈折領域の間のピッチは、眼科レンズの中心から遠い方のパターン内の屈折領域の間のピッチよりも小さい。もちろん、第2パターンについてのみ上記規則が存在してもよい。具体的には、複数の第1パターンが存在する場合、網膜デフォーカス敏感領域に対応する部分に密集な加入を行うことを保証するために、例えば
図2に示すように、各第1パターン内の第1屈折領域の間は、接してもよく、又はギリギリ隣接してもよい。この場合、眼科レンズの中心から遠い第2パターンほど、第2屈折領域の間のピッチを大きくすることができる。1つの例示的な実施例において、最も内側の1つのパターンから最も外側の1つのパターンまで、1つのパターン内の隣接する2つの屈折領域の間のピッチはゼロから徐々に増大するが、2.00mm未満、好ましくは1.90mm未満、より好ましくは1.80mm未満、例えば1.20mmまで徐々に増大する。
【0093】
図示した実施例では、第1屈折領域2は、第1パターンの延在方向に沿って均一に設けられているように図示したが、図示しない実施例では、第1屈折領域2は、第1パターンの延在方向に沿って不均一に設けられていてもよい。第1パターンの延在方向とは、第1パターンが概ね形成する線の延在方向である。例えば、
図1、
図2、
図5において、第1パターンがいずれも円環21として形成されている場合、第1パターンの延在方向は、当該円環を形成する線の延在方向、すなわち周方向として理解されてもよい。他の実施例では、1つの第1パターンについては、均一に配置されたこれらの第1屈折領域に加えて、不均一に配置されたいくつかの第1屈折領域をさらに含んでもよい。不均一に配列された第1屈折領域は、第1パターンの延在方向に沿って離散的に分布し、それらの間に比較的大きなピッチを有してもよいが、第1パターンの延在方向に沿って接するか又は密に配列された第1屈折領域2に接するか又はギリギリ隣接する。
【0094】
図示した実施例では、第2屈折領域3は、第2パターンの延在方向に沿って均一に設けられているように図示したが、図示しない実施例では、第2屈折領域3は、第2パターンの延在方向に沿って不均一に設けられていてもよい。第2パターンの延在方向とは、第2パターンが概ね形成する線の延在方向である。例えば、
図1、
図2、
図5において、第2パターンがいずれも円環31として形成されている場合、第2パターンの延在方向は、当該円環を形成する線の延在方向、すなわち周方向として理解されてもよい。他の実施例では、1つの第2パターンについては、均一に配置されたこれらの第2屈折領域に加えて、不均一に配置されたいくつかの第2屈折領域をさらに含んでもよい。不均一に配列された第2屈折領域は、第2パターンの延在方向に沿って離散的に分布し、それらの間に比較的大きなピッチを有してもよいが、第2パターンの延在方向に沿って配列されたそれらの第2屈折領域3に接するか又はギリギリ隣接する。選択的に、隣接する第2パターンの間は接する(すなわち
図5に示されるように)又はギリギリ隣接することなく、わずかに大きなピッチを有してもよい(たとえば、
図1及び
図2に示される)。
【0095】
各パターン内の屈折領域の間のピッチの設計については上述したが、各パターン内の総面積の割合の設計については以下に説明する。例えば、好ましくは、少なくとも1つの第1パターン又は各第1パターン内に、第1屈折領域2の総面積の割合が60%以上78.5%以下となるように設定することができる。好ましくは、少なくとも1つの第1パターン内に、第1屈折領域2の総面積の割合が70%以上78.5%以下となるように設定することができる。好ましくは、少なくとも2つの第1パターン内に第1屈折領域2の総面積の割合が70%以上78.5%以下となるように設定する。いくつかの実施例において、少なくとも1つの第2パターン内又は各第2パターン内に、第2屈折領域3の総面積の割合が60%未満30%以上、好ましくは60%未満35%以上、より好ましくは60%未満40%以上となるように設定することができる。好ましくは、第2領域が複数の第2パターンを含む場合、各第2パターン内に第2屈折領域3の総面積の割合が60%未満30%以上となるように設定することができる。
【0096】
いくつかの実施例において、各第1パターンにおける第1屈折領域の総面積の割合は、いずれも各第2パターンにおける第2屈折領域の総面積の割合よりも大きい。複数のパターンを含む場合、各パターン内に含まれる屈折領域の総面積の割合は、レンズ中心から離れる方向に沿って徐々に小さくなってもよい。例えば、第1領域が複数の第1パターンを含む場合、眼科レンズの中心により近い第1パターンにおける第1屈折領域の総面積の割合は、眼科レンズの中心からより遠い第1パターンにおける第1屈折領域の総面積の割合よりも大きい。例えば、第2領域が複数の第2パターンを含む場合、眼科レンズの中心により近い第2パターンにおける第2屈折領域の総面積の割合は、眼科レンズの中心からより遠い第2パターンにおける第2屈折領域の総面積の割合よりも大きい。
【0097】
また、例えば、いくつかの実施例において、レンズの中心を原点として、レンズを複数の扇形領域、例えば2~36個の扇形領域、例えば2~18個、例えば2~4個、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18個の扇形領域に分けることができる。これらの扇形領域において、各扇形領域が互いに独立するように第1屈折領域2を設け、各扇形領域が互いに独立するように第2屈折領域3を設けてもよい。例えば、上述した各第1パターン、第2パターン、第1領域及び第2領域などの領域を、当該複数の扇形領域にそれぞれ位置する複数の部分に分けて、各部分に第1屈折領域2及び第2屈折領域3を設ける方式を検討することができる。つまり、異なる扇形領域における第1屈折領域2の設置は同一でも異なっていてもよく、異なる扇形領域における第2屈折領域3の設置は同一でも異なっていてもよい。例示的に、いくつかの実施例において、前記複数の扇形領域のうちの少なくとも1つにおける第1屈折領域2及び/又は第2屈折領域3の設置(例えば、形状、寸法、密度、ピッチ、面積の割合及び/又は加入度)は、他の扇形領域における設置とは異なる。いくつかの実施例において、第1屈折領域2及び/又は第2屈折領域3は、少なくとも1つの扇形領域において、前述した例えば
図1-6及び
図8A-8Eのいずれか1つの形態のように設定されてもよく、あるいは、第1屈折領域2及び/又は第2屈折領域3は、少なくともいくつかの扇形領域において、それぞれ、前述した例えば
図1-6及び
図8A-8Eの複数の形態のように設定されてもよい。いくつかの実施例において、前記複数の扇形領域のうち、例えば少なくとも20%-60%(例えば20%、30%、40%、50%、60%)の扇形領域において、第1領域(又は少なくとも1つの第1パターン)内の複数の第1屈折領域2の総面積の割合は60%以上78.5%以下であり、好ましくは63%超78.5%%以下であり、より好ましくは66%超78.5%以下であり、さらに好ましくは70%以上78.5%以下であり、第2領域内の複数の第2屈折領域3の総面積の割合は60%未満であり、好ましくは57%未満であり、より好ましくは54%未満であり、第2領域に含まれる少なくとも1つの第2パターン内の複数の第2屈折領域3の総面積の割合は60%未満30%以上であり、好ましくは60%未満35%以上であり、より好ましくは60%未満40%以上である。また、第1領域が1つ又は複数の第1パターンを含み、且つ第1領域の少なくとも一部が眼科レンズの中心を中心とし、内縁の直径が9mmであり、外縁の直径が15mmである第1リング状領域であるいくつかの実施例において、前記複数の扇形領域のうち、例えば、少なくとも20%-60%(例えば、20%、30%、40%、50%、60%)の扇形領域において、第1リング状領域内のいずれか1つの単一の第1パターン内の第1屈折領域の総面積の割合が70%超78.5%未満であり、好ましくは72%超78.5%未満である。
【0098】
また、例えば
図1に示すように、複数の第1屈折領域2及び複数の第2屈折領域3の配置方式について、上述した第1パターン、第2パターン等を用いて説明する他、放射線の方式を用いてそれらの配置を説明することもできる。言い換えれば、
図1に示すように、複数の第1屈折領域2及び複数の第2屈折領域3は、眼科レンズの中心を起点とする複数の放射線4上に分布する(即ち、これらの屈折領域の円心が放射線4上に位置する)。放射線状の分布とするのは、特にパターンピッチが小さい場合、使用者がこの眼鏡レンズを着用した後、上下鼻部側頭方向にいずれも視認する放射線状の明瞭領域を有し、使用者の上下鼻部側頭の各方向における視認の明瞭さ要求を両立させる。
【0099】
いくつかの実施例において、各放射線4には、いずれも第1屈折領域2と第2屈折領域3が分布している。第1屈折領域2及び第2屈折領域3の眼科レンズにおける投影の形状が円形ではないいくつかの実施例において、第1屈折領域2及び第2屈折領域3の中心(例えば眼科レンズに投影された図形の中心)は放射線4上に位置すると言える。各放射線4上において、第1屈折領域の数は、第2屈折領域の数より小さく、等しく又は大きくなる。例示的に、放射線4の数が2nである場合、これらの放射線4はn本の直線を形成する。勿論、図示しない他の実施例において、複数の第1屈折領域2及び複数の第2屈折領域3のうちの一部は、放射線に分布しなくてもよく、例えば、一部のリング上の屈折領域は、隣接するリング上の屈折領域に対して交互に設置されてもよい。複数の第1屈折領域2及び複数の第2屈折領域3がいずれも放射線4上に分布している場合、各リング上の屈折領域の数は等しく、この場合、中心光学領域以外に放射状の連続したブランク領域、すなわち放射状の連続した遠方用屈折矯正領域が形成され、それは良好な視覚品質を提供することに寄与する。選択的に、中心領域5に近いリングほど、屈折領域の数が少なく、それに応じて、中心領域5から離れるリングほど、屈折領域の数が多くなってもよい。いくつかの実施例において、
図5に示すように、同一の放射線における隣接する第1屈折領域及び/又は隣接する第2屈折領域は互いに接してもよい。
【0100】
患者の快適性に対するアンケート調査において、本願の眼科レンズ(例えば、上記した中心光学領域以外に放射状の連続した遠方用屈折矯正領域を形成する構造を有するレンズ)は、長期にわたる着用後に、採点がより高く評価され(表1)、前記アンケート内容は、着用時の快適性、二重の有無、疲労の有無、めまい、頭痛又は適応不能の有無、新しいレンズを着用する際の適応のしやすさ、着用時の歩き方が何らかの困難を感じるか、レンズを着用した場合の階段の昇降の可否などを含む(各項目の総点数10点を取り、最後に全ての点数を平均し、平均値の総点数10点を取り、点数が高いほど快適性が高くなる)。比較用の眼科レンズ1は、放射状の連続した遠方用屈折矯正領域を有していない。
【0101】
【0102】
選択的に、いくつかの実施例において、中央領域5から離れる方向に沿って、各放射線上の第1屈折領域2及び第2屈折領域3は、全体として徐々に又は段階的に増大する寸法を有し、徐々に又は段階的に減少する加入度を有してもよい。前述したように、このような配列方式は、光学的に最適化され、他のパラメータが変化せずに、レンズ全体にわたってほぼ一定の低強度「イメージジャンプ」を維持することができ、放射線状で連続した遠方用屈折矯正領域と組み合わせて、被験者に良好な視覚効果を提供することができ、被験者が適応しやすく、着用のコンプライアンスが高い。いくつかの実施例において、第2領域全体にわたって、複数の第2屈折領域のイメージジャンプの変動係数は15%未満であってもよく、好ましくは12%未満であり、より好ましくは10%未満である。また、いくつかの実施例において、周辺に設置された第2屈折領域の近視制御効果を確保するために、第2領域全体にわたって、複数の第2屈折領域のイメージジャンプの変動係数は、1%より大きく、好ましくは2%より大きく、より好ましくは3%より大きい。いくつかの実施例において、上記の上限値と下限値を任意に組み合わせて複数の第2屈折領域のイメージジャンプの変動係数の範囲を設定することができる。
【0103】
例示的に、隣接する2本の放射線4の間に、追加の第2屈折領域が分布されてもよく、これらの追加の第2屈折領域は規則的なパターンに配列されてもよい。説明を明確にするために、
図8Aに示すように、本明細書では追加の第2屈折領域が配列されたパターンを追加パターン41と呼ぶ。選択的に、各隣接する2本の放射線4の間にいずれも追加パターン41を設けてもよい。あるいは、一部の隣接する2本の放射線4の間に追加パターン41を設け、他の一部の隣接する2本の放射線4の間には何もパターンを設けない(すなわち余白を形成する)ようにしてもよい。この場合、
図8Bに示すように、追加パターン41と余白とを交互に設けてもよい。全体的に見ると、全ての追加パターン41が中央領域5に対して発散的に分布していてもよい。各追加パターン41については、図示のように直線状であってもよいし、任意の方式で湾曲した曲線状であってもよい。
【0104】
例示的に、例えば
図8C-8Dに示すように、複数の放射線4の代わりに、複数の第1屈折領域及び複数の第2屈折領域は、複数の曲線42に分布してもよい。いくつかの実施例において、第1屈折領域2と第2屈折領域3の中心(例えば眼科レンズに投影された図形の中心)は曲線42上に位置してもよい。これらの曲線42は、中心領域5に対して発散的に分布してよい。つまり、隣接する曲線42上における、眼科レンズの中心を中心とする交差円(図中の破線を参照)との2つの交点m
1とm
2との距離は、当該交差円の直径が大きくなるにつれて徐々に大きくなる。例示的に、同一の交差円について、全ての曲線42と交差してもよく、任意の隣接する2本の曲線42と当該交差円との交点間の距離が等しくてもよい。例示的に、複数の曲線42は、同一方向、例えば、反時計回り方向(
図8Cに示すように)、又は図示しない他の実施例において時計回り方向に湾曲してもよい。もちろん、各曲線42は、複数の湾曲方向を有してもよく、
図8Dに示すように、各曲線42は、ほぼ2つの湾曲を有する波状であることを示している。図示しない他の実施例において、各曲線42は、より多くの湾曲を有する波状であってもよい。なお、これらの湾曲は、各曲線42に均一に分布していてもよいし、各曲線42に不均一に分布していてもよい。例えば、中央領域5に近い部分には湾曲が少なく分布し、中央領域5から遠い部分には湾曲が多く分布していてもよい。いくつかの実施例において、同一曲線上の隣接する第1屈折領域及び/又は隣接する第2屈折領域は、互いに接してもよい。
【0105】
また、図示されていない他の実施例において、眼科レンズの中心を起点とする複数の放射線又は複数の曲線(前の図に示すような、又はそれに類似する放射線又は曲線)における第1部分に第1屈折領域2を配置し、第2部分に第2屈折領域3を配置してもよく、第1部分の放射線又は曲線は第2部分の放射線又は曲線と重ならなくてもよく、又は部分的に重なってもよい。一例において、
図1、
図2、
図4又は
図5に示す各第2パターン内の第2屈折領域3を周方向に沿って一定の距離だけ移動させ(つまり、レンズの中心の周りに一定の角度だけ移動させ)、第1屈折領域2と第2屈折領域3をそれぞれ眼科レンズの中心を起点とする2組の放射線(この時、放射線は図に示すものよりも1倍多い)のうちの1組に分布させる。
【0106】
放射線41も曲線42も、単一の線で形成されている。選択的に、放射線41又は曲線42の代わりに、複数の第1屈折領域及び複数の第2屈折領域は、例えば
図8Eに示すように、複数の複合線43に分布してもよい。いくつかの実施例において、第1屈折領域2と第2屈折領域3の中心(例えば眼科レンズに投影された図形の中心)は複合線43上に位置してもよい。複数の複合線43は、中心領域5に対して発散的に分布してよい。複合線43は、複数の直線、又は複数の曲線、又は直線と曲線との組み合わせによって構成されてもよい。図示の実施例では、複合線43は、眼科レンズの径方向に沿って延びる主線と、主線の眼科レンズの中心から離れた端部から外側に延びる2つの分岐線とを含み得る。複数の複合線43は、眼科レンズの周方向に沿って繰り返し配列されてもよい。つまり、眼科レンズの中心を中心とする交差円(図中の破線を参照)と、複数の複合線43上の対応する部分が形成する交点m
1、m
2・・・m
nとの距離は等しい。
【0107】
いくつかの実施例において、上記のような各放射線又は曲線にはいずれも第1屈折領域及び第2屈折領域が分布され、及び/又は、前記複数の放射線又は複数の曲線は前記眼科レンズに均一に分布される。いくつかの実施例において、同一の放射線又は曲線において、前記第1屈折領域の加入度が一様であり、及び/又は、前記第2屈折領域の加入度が一様であり、及び/又は、前記第1屈折領域と第2屈折領域の加入度が一様であり、又は、同一の放射線又は曲線において、前記第1屈折領域の寸法が一様であり、及び/又は、前記第2屈折領域の寸法が一様であり、及び/又は、前記第1屈折領域と第2屈折領域の寸法が一様であり、又は、同一の放射線又は曲線において、前記眼科レンズの中心から離れる方向に沿って、前記第1屈折領域の加入度の変化方向とその寸法の変化方向が反対であり、及び/又は、前記第2屈折領域の加入度の変化方向とその寸法の変化方向が反対であり、又は、同一の放射線又は曲線において、前記眼科レンズの中心から離れる方向に沿って、前記第1屈折領域と前記第2屈折領域の寸法が徐々に増大し、及び/又は、同一の放射線又は曲線において、前記眼科レンズの中心から離れる方向に沿って、前記第1屈折領域と前記第2屈折領域の加入度が段階的に減少する。いくつかの実施例において、上記のような放射線又は曲線の数は16-40個であってもよく、好ましくは26-35個であってもよい。
【0108】
また、いくつかの例示的な実施例において、例えば
図9に示すように、レンズの鼻部側と側頭部側の両側に第1屈折領域2と第2屈折領域3を非対称に設置することができる。本開示における「鼻部側」及び「側頭部側」とは、レンズの中心を通る垂直線(例えば、
図9に示す中心を通る垂直な点線)で分けられた左右両側を意味し、着用時に鼻に近い側が「鼻部側」であり、鼻から遠い側が「側頭部側」であることが理解される。人間の目の鼻部側と側頭部側は対称ではなく、人間の目の軸外収差を測定する研究が数多く行われており、これらの研究では、ほとんどが水平視野で測定されている。研究により、水平視野角の増加に伴い、デフォーカス、乱視ともに変化することが分かった(Atchison DA. Recent advances in measurement of monochromatic aberrations of human eyes. Clin Exp Optom. 2005 Jan;88(1):5-27)。人間の目の非対称性により、水平視野で異なる方向における人間の目自体のデフォーカスが同じではなく、鼻部側と側頭部側に一定の差異がある。したがって、いくつかの実施例において、第1屈折領域2及び/又は第2屈折領域3の形状、寸法、密度、ピッチ、面積の割合及び/又は加入度は、第1領域(又は各第1パターン)及び/又は第2領域(又は各第2パターン)内において鼻部側と側頭部側に非対称に設定されてもよい。例えば、
図9に示すように、鼻部側(左側)と側頭部側(右側)の第1屈折領域2と第2屈折領域3の個数を非対称に設定し、第1領域(第1パターン21)の側頭部側に設定される第1屈折領域2の総面積の割合を、鼻部側に設定される第1屈折領域2の総面積の割合よりも大きくし、第2領域(各第2パターン31)の側頭部側に設定される第2屈折領域3の総面積の割合を、鼻部側に設定される第2屈折領域3の総面積の割合よりも大きくしてもよい。また例えば、着用者の眼球屈折力分布(例えば、鼻部側頭部側周辺網膜の屈折状態)及び/又は眼長輪郭(例えば、Shin Nippon自動屈折装置、又はMultispectral Refraction Topograph装置(MRT)、又はIOLMaster、又はLensStar、又は超音波又は磁気共鳴イメージングなどにより測定されたもの)に基づいて、鼻部側及び側頭部側の第1屈折領域2及び/又は第2屈折領域3の形状、寸法、密度、ピッチ、面積の割合及び/又は加入度を決定することができる。本願の発明者らは、鼻部側及び側頭部側の屈折領域を非対称に設定することにより、人間の目の非対称性を補償することができ、着用者が異なる方向においても十分な近視デフォーカスを得ることができ、近視の進行をよりよく管理及び制御することができると考えた。
【0109】
好ましくは、第1領域又は第1パターンの側頭部側に設けられた第1屈折領域の密度又は総面積の割合は、第1領域又は第1パターンの鼻部側に設けられた第1屈折領域の密度又は総面積の割合とは異なる。好ましくは、第1屈折領域の加入度は、第1領域又は単一の第1パターンの側頭部側と鼻部側とで非対称に設定される。例えば、レンズの中心を通る垂直線に対して略対称な2つの第1屈折領域の加入度が異なる。あるいは、第1領域又は各第1パターンの側頭部側と鼻部側にそれぞれ設けられた第1屈折領域の加入度は、それぞれ一様な値であるが、両側の一様な値が異なる。また或いは、第1領域又は各第1パターンの側頭部側に設けられた第1屈折領域の加入度は、レンズの径方向又はリング方向に沿った変化の仕方(変化の傾向及び/又は数値等)が鼻部側とは異なる。好ましくは、第2領域又は第2パターンの側頭部側に設けられた第2屈折領域の密度又は総面積の割合は、第2領域又は第2パターンの鼻部側に設けられた第2屈折領域の密度又は総面積の割合とは異なる。好ましくは、第2屈折領域の加入度は、第2領域又は単一の第2パターンの側頭部側と鼻部側とで非対称に設定される。例えば、レンズの中心を通る垂直線に対して略対称な2つの第2屈折領域の加入度が異なる。あるいは、第2領域又は各第2パターンの側頭部側と鼻部側にそれぞれ設けられた第2屈折領域の加入度は、それぞれ一様な値であるが、両側の一様な値が異なる。また或いは、第2領域又は各第2パターンの側頭部側に設けられた第2屈折領域の加入度は、レンズの径方向又はリング方向に沿った変化の仕方(変化の傾向及び/又は数値等)が鼻部側とは異なる。
【0110】
場合によっては、鼻部側で遠視デフォーカスが発生しやすくなるため、両側の近視デフォーカスの程度をバランスさせるために、側頭部側の第1屈折領域2及び/又は第2屈折領域3の加入度、密度及び/又は面積割合を大きくする。従って、好ましくは、第1領域又は少なくとも1つの第1パターンの側頭部側に設けられた第1屈折領域の密度又は総面積の割合は、前記第1領域又は少なくとも1つの第1パターンの鼻部側に設けられた第1屈折領域の密度又は総面積の割合よりも大きい。好ましくは、第1領域又は少なくとも1つの第1パターンの側頭部側に設けられた第1屈折領域の平均加入度は、前記第1領域又は少なくとも1つの第1パターンの鼻部側に設けられた第1屈折領域の平均加入度よりも大きい。例えば、レンズの中心を通る垂直線に対して略対称な2つの第1屈折領域のうち、側頭部側の第1屈折領域の加入度が鼻部側の第1屈折領域の加入度よりも大きい。又は、第1領域又は各第1パターンの側頭部側と鼻部側にそれぞれ設けられた第1屈折領域の加入度はそれぞれ一様な値であり、側頭部側の一様な値は鼻部側の一様な値より大きい。好ましくは、第2領域又は少なくとも1つの第2パターンの側頭部側に設けられた第2屈折領域の密度又は総面積の割合は、前記第2領域又は少なくとも1つの第2パターンの鼻部側に設けられた第2屈折領域の密度又は総面積の割合よりも大きい。好ましくは、第2領域又は少なくとも1つの第2パターンの側頭部側に設けられた第2屈折領域の平均加入度は、前記第2領域又は少なくとも1つの第2パターンの鼻部側に設けられた第2屈折領域の平均加入度よりも大きい。例えば、レンズの中心を通る垂直線に対して略対称な2つの第2屈折領域のうち、側頭部側の第2屈折領域の加入度は、鼻部側の第2屈折領域の加入度よりも大きい。又は、第2領域又は各第2パターンの側頭部側と鼻部側にそれぞれ設置された第2屈折領域の加入度はそれぞれ一様な値であり、側頭部側の一様な値は鼻部側の一様な値より大きい。
【0111】
また、本願のいくつかの例示的な実施例によれば、例えば、
図1、
図2、
図5、
図8C-
図8D、
図9に示すように、各第1パターン(例えば、第1リング21)内の第1屈折領域2の数と各第2パターン(例えば、第2リング31)内の第2屈折領域3の数は同じであってもよい。好ましくは、眼科レンズ全体において、合計で配置される第1屈折領域2と第2屈折領域3の数は、170-400個であってもよく、より好ましくは、190-300個である。
【0112】
本開示の一態様によれば、フレームメガネをさらに提供し、当該フレームメガネには、上記本発明の各実施例による各種眼科レンズが設けられてもよい。これにより、このフレームメガネは、着用者の眼の屈折異常の進行を抑制しつつ、着用者に明瞭な視力を提供することができる。
【0113】
なお、ここで使用される用語は、具体的な実施形態を説明するためのものに過ぎず、本願に係る例示的な実施形態を限定するものではない。本明細書で使用されるように、文脈が特に明記しない限り、単数形も複数形を含むことを意図し、また、本明細書において用語「含む」及び/又は「含有する」を使用する場合、特徴、ステップ、操作、部品、コンポーネント及び/又はそれらの組み合わせが存在することを示すことを理解されたい。
【0114】
なお、本願の明細書、特許請求の範囲及び上記図面における用語「第1」、「第2」等は、類似する対象を区別するためのものであり、特定の順序又は前後の順序を説明するためのものではない。このように使用されるデータは、本明細書に記載された本願の実施形態が本明細書に図示又は説明されたもの以外の順序で実施され得るように、適切な場合に交換され得ることを理解されたい。
【0115】
本願は上記実施例によって説明されたが、上記実施例は例示及び説明の目的に過ぎず、本願を説明された実施例の範囲内に制限することを意図するものではないことを理解されたい。また、当業者であれば、本願は上記実施例に限定されず、本願の教示に基づいてより多くの変形及び修正を行うことができ、これらの変形及び修正はいずれも本願の保護範囲に含まれることを理解できる。本願の保護範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等範囲によって定義される。
【符号の説明】
【0116】
1 眼科レンズ
2 第1屈折領域
2a 内側の第1パターン
2b 外側の第1パターン
3 第2屈折領域
4 放射線
41 追加パターン
42 曲線
43 複合線
5 中心領域
6 周辺領域
7 中間領域
8 第1領域
9 第2領域
21 第1リング
31 第2リング