(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014356
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】オフラインダイレクトティーチング装置
(51)【国際特許分類】
B25J 9/22 20060101AFI20250123BHJP
G05B 19/42 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B25J9/22 A
G05B19/42 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116850
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】北山 直篤
【テーマコード(参考)】
3C269
3C707
【Fターム(参考)】
3C269AB33
3C269BB09
3C269QC03
3C269QE07
3C269QE10
3C269SA17
3C707BS12
3C707JU03
3C707LS01
3C707LS09
3C707MT01
(57)【要約】
【課題】画面上に表示させた多関節ロボットのモデルをポインティングデバイスで動かしてティーチングを行うとき、実際の多関節ロボットの移動途中の姿勢だけでなく到達した位置も把握することができるオフラインダイレクトティーチング装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかるオフラインダイレクトティーチング装置100は、画面上に表示させた多関節ロボットのモデル112をポインティングデバイス104で動かして実際の多関節ロボット110も動かしながら多関節ロボットのティーチングを行うオフラインダイレクトティーチング装置において、モデルをポインティングデバイスの操作に追従して移動させ、モデルの移動に追従してモデルの経路138a、138b、138cを半透明表示させ、モデルの半透明表示された経路を、半透明表示された順に実際の多関節ロボットの動作に伴い、実際の多関節ロボットの動作速度で消去していくことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面上に表示させた多関節ロボットのモデルをポインティングデバイスで動かして実際の多関節ロボットも動かしながら該多関節ロボットのティーチングを行うオフラインダイレクトティーチング装置において、
前記モデルを前記ポインティングデバイスの操作に追従して移動させ、
前記モデルの移動に追従して該モデルの経路を半透明表示させ、
前記モデルの半透明表示された経路を、半透明表示された順に前記実際の多関節ロボットの動作に伴い、前記実際の多関節ロボットの動作速度で消去していくことを特徴とするオフラインダイレクトティーチング装置。
【請求項2】
前記モデルの経路は、単位時間ごとの前記モデルを半透明表示させて描くことを特徴とする請求項1に記載のオフラインダイレクトティーチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画面上に表示させた多関節ロボットのモデルをポインティングデバイスで動かして実際の多関節ロボットのティーチングを行うオフラインダイレクトティーチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多関節ロボットに動きを教示(ティーチング)する場合、ティーチングペンダントを用いてティーチング作業を行うのが主流である。別の手法としては、作業者が直接ロボットを手で動かすダイレクトティーチングや、コンピュータのソフトウェアで動作用のプログラムを作成するオフラインティーチング等も知られている。
【0003】
特許文献1には、ロボットの制御装置が記載されている(ティーチングペンダント)。このロボットの制御装置は、ヒューマンインターフェースの画面上に表示された任意の動作座標系の2つの軸からなる平面上で、ポインティングデバイスをドラッグすることで画面上のロボットの手首の先端の点に相当するポインティング位置を移動させる。そして、画面上のポインティング位置の単位時間変化に比例する量だけ実際のロボットの手首の先端の点に相当する制御点を平行または回転移動させる。
【0004】
このようにロボットの制御装置では、ポインティング位置のドラッグ操作によってロボットを移動させている。このため、特許文献1のロボットの制御装置では、ティーチングペンダント上のボタン操作に比べてより直感的な手動操作感覚が得られる、としている。
【0005】
特許文献2には、ロボット操作装置が記載されている(ティーチングペンダント)。ロボット操作装置は、ユーザからの入力操作を受ける入力操作部と、動作指令生成部とを備える。動作指令生成部は、入力操作部に入力された入力操作に基づいて複数の駆動軸を有する多関節型のロボットを動作させるための動作指令を生成する。さらに動作指令生成部は、入力操作部に入力された入力操作の操作量を判断する操作量判断処理と、入力操作の操作量に基づいてロボットの移動量を算出する移動量算出処理とを行うことができる。
【0006】
このためロボット操作装置では、ユーザの入力操作部に対する入力操作の操作量と、ロボットの移動量とは相関を有することになる。これにより特許文献2のロボット操作装置では、ユーザは、入力操作の操作量を調整することにより、ロボットの移動量を調整することができ、直感的な操作が可能になり、操作性の向上が図られ、その結果、安全性が向上する、としている。
【0007】
特許文献3には、プロセッサ及び表示装置を備える情報処理装置(HMD:Head Mounted Display)が記載されている(オフラインティーチング)。プロセッサは、環境モデル格納部と、ロボットモデル格納部と、シミュレーション部と、MR画像生成部とを備える。環境モデル格納部は、ロボットが設置される実環境をモデル化した環境モデルを格納する。ロボットモデル格納部は、ロボットをモデル化したロボットモデルを格納する。
【0008】
シミュレーション部は、ロボットの動作軌跡を表示するロボット動作軌跡表示モードが選択された場合、環境モデル格納部から環境モデルを取得し、ロボットモデル格納部からロボットモデルを取得し、動作シーケンスに基づいてロボットモデルを動作させ、ロボットの動作軌跡をメモリに格納する。
【0009】
またMR画像生成部は、実環境におけるロボットの設置位置にロボットモデル画像を重畳し、ロボット動作軌跡画像が重畳されるようにMR画像を生成し、表示装置に表示する。さらにMR画像生成部は、各タイミングのロボット動作軌跡画像について、輪郭のみを表示したり、一部又は全体を半透明にして表示したりする。これにより特許文献3のHMDでは、ロボットを設置する前に行われるロボットが周辺の物体に干渉するか否かの確認をより確実に行うことができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平09-103978号公報
【特許文献2】特開2016-068237号公報
【特許文献3】特開2022-186476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1、2の技術ではティーチングペンダントが発達していて、特許文献1ではペン入力が可能であり、特許文献2ではレバー(ジョイスティック)を備え、ロボットの操作を直感的に行うことが可能になる。さらにオフラインティーチングは操作中に実機を動かさない場合もあるため、ポインティングデバイスによってロボットのモデルを動かしてティーチングする際に、画面上ではロボットのモデルはポインティングデバイスのカーソルの動きに追従して高速に移動可能である。
【0012】
しかしながら実際のロボットは、機構上の限界または安全上の制限により、画面上で動かせるほどには高速に動作できない。また、コンピュータ上でのティーチングは個々の動作の始点と終点を特定するに留まり、ロボットを移動させた際の移動途中の動き(ロボットの姿勢)を把握することができない。
【0013】
このため、ロボットが移動する際に意図しない姿勢となる可能性があっても、実際にロボットを動作させないと、ロボットの姿勢を把握することができない。なお逆運動の計算によっては、ロボットの手首が回転するなど、軸値の大幅な変化が突然発生することがある。
【0014】
特許文献3の技術は、ロボット動作軌跡画像が重畳されるMR画像を生成するため、ロボットの動作軌跡を把握することができる。しかし特許文献3の技術においては干渉のリスクを確認するためにMR画像を利用するものの、ティーチング自体は完了していて、ティーチング中の表示ではない。
【0015】
したがってティーチング中に移動途中の姿勢を把握することはできないし、特に、マウスカーソルの動きより遅れて動作するロボットがどの位置まで到達したか(どのくらい遅れて追従するか)を把握することはできない。
【0016】
本発明は、このような課題に鑑み、画面上に表示させた多関節ロボットのモデルをポインティングデバイスで動かしてティーチングを行うとき、実際の多関節ロボットの移動途中の姿勢だけでなく到達した位置も把握することができるオフラインダイレクトティーチング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明にかかるオフラインダイレクトティーチング装置の代表的な構成は、画面上に表示させた多関節ロボットのモデルをポインティングデバイスで動かして実際の多関節ロボットも動かしながら該多関節ロボットのティーチングを行うオフラインダイレクトティーチング装置において、モデルをポインティングデバイスの操作に追従して移動させ、モデルの移動に追従してモデルの経路を半透明表示させ、モデルの半透明表示された経路を、半透明表示された順に実際の多関節ロボットの動作に伴い、実際の多関節ロボットの動作速度で消去していくことを特徴とする。
【0018】
上記のモデルの経路は、単位時間ごとのモデルを半透明表示させて描くことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、画面上に表示させた多関節ロボットのモデルをポインティングデバイスで動かしてティーチングを行うとき、実際の多関節ロボットの移動途中の姿勢だけでなく到達した位置も把握することができるオフラインダイレクトティーチング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態におけるオフラインダイレクトティーチング装置の概要を説明する図である。
【
図2】
図1のオフラインダイレクトティーチング装置の機能を示すブロック図である。
【
図3】
図1のオフラインダイレクトティーチング装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図1のオフラインダイレクトティーチング装置の表示部に表示させたモデルをポインティングデバイスで動かしてティーチングを行う様子を示す図である。
【
図5】
図4に後続するオフラインダイレクトティーチング装置によるティーチングの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態におけるオフラインダイレクトティーチング装置の概要を説明する図である。オフラインダイレクトティーチング装置(以下、ティーチング装置100)は、コンピュータ102とコンピュータ102上で実行されるソフトウェアとを含んで構成される。ティーチング装置100は、マウスなどのポインティングデバイス104と、表示部106と、
図2に示すティーチング部108とを備える。
【0023】
ティーチング装置100は、コンピュータ102の表示部106に実機すなわちロボット110のモデル112を表示し、さらにポインティングデバイス104のポインタ114を用いてモデル112を動かして、実機のロボット110も実際に動かしながらティーチングを行う。
【0024】
実機であるロボット110は、一例として6軸の多関節ロボットであり、工場などの床に設置される基台116と、旋回フレーム118と、第1アーム120と、第2アーム122と、エンドエフェクタ124とを備える。エンドエフェクタ124は、第2アーム122の先端126に装着されている。実機のロボット110は、これらの機構上の限界または安全上の制限により、速度が制限されている。
【0025】
表示部106の画面上ではロボット110のモデル112は、ポインタ114の動きに追従して高速に移動可能である。一方、実機であるロボット110は、上記のように速度が制限されているため、画面上で動かせるほどには高速に動作できない。
【0026】
そのため、一般的なコンピュータ上でのティーチングは、個々の動作の始点と終点を特定するに留まり、ロボット110を移動させた際の移動途中の動き(ロボット110の姿勢)を把握することができない。特に、ポインタ114の動きより遅れて動作するロボット110がどの位置まで到達したか(どのくらい遅れて追従するか)を把握することはできない。
【0027】
そこでティーチング装置100では、画面上に表示させたロボット110のモデル112をポインティングデバイス104のポインタ114で動かして、ロボット110も実際に動かしながらティーチングを行うとき、ロボット110の移動途中の姿勢と到達した位置を把握できるソフトウェアを採用した(
図2参照)。またティーチング装置100は、実機のロボット110に無線または有線で接続されていて、コンピュータ102上で実行されるソフトウェアを用いて、ロボット110を実際に動かしてティーチィングを行う。
【0028】
図2は、
図1のティーチング装置100の機能を示すブロック図である。ティーチング装置100のティーチング部108は、記憶部130と、操作検出部132と、表示制御部134とを有する。記憶部130は、ロボット110のモデル112を記憶している。操作検出部132は、ポインティングデバイス104の位置および動きを検出する。表示制御部134は、表示部106を制御する。
【0029】
図3は、
図1のティーチング装置100の動作を示すフローチャートである。
図4は、
図1のティーチング装置100の表示部106に表示させたモデル112をポインティングデバイス104で動かしてティーチングを行う様子を示す図である。
図5は、
図4に後続するティーチング装置100によるティーチングの様子を示す図である。
【0030】
ティーチング装置100では、まず、ティーチング部108の表示制御部134が記憶部130からロボット110のモデル112を読み出して、モデル112を表示部106に表示する(ステップS100)。ステップS100では、
図4(a)に示すようにモデル112が作業領域136とともに画面上に表示される。
【0031】
つぎに、操作検出部132は、作業者によってポインティングデバイス104が操作されたか否かを検出する(ステップS102)。ポインティングデバイス104の操作が検出されない場合(No)、操作検出部132は、ステップS102の処理を繰り返す。
【0032】
ステップS102において、ポインティングデバイス104の操作が検出されると(Yes)、表示制御部134は、ロボット110のモデル112をポインティングデバイス104の操作に追従して画面上で移動させ、これを表示部106に表示する(ステップS104)。
【0033】
一例としてステップS104において、ポインティングデバイス104が操作されて、
図4(a)に示す画面上のモデル112に重ねられたポインタ114が
図4(b)に示す位置まで移動した場合、表示制御部134は表示部106を制御して、ポインタ114の移動に追従して
図4(a)のモデル112を
図4(b)の位置まで移動させる。
【0034】
続いて表示制御部134は、
図4(b)に示すようにモデル112の移動に追従してモデル112の経路138a、138b、138cを半透明表示させる(ステップS106)。モデル112の経路138a、138b、138cは、この順で画面上に半透明表示され、ロボット110の移動途中の動き(姿勢)を示している。また表示制御部134は、単位時間ごとのモデル112を半透明表示させることで、モデル112の経路138a、138b、138cを描く。
【0035】
このため作業者は、ティーチングを行うとき、ロボット110のモデル112の経路138a、138b、138cを把握し、ロボット110の移動途中の姿勢を直感的に把握することができる。特に、モデル112の経路138a、138b、138cが単位時間ごとに半透明表示されるため、作業者は、モデル112の経路138a、138b、138cを確実に把握することができる。
【0036】
また作業者は、ロボット110の移動途中の姿勢を把握することで、ロボット110の関節の角速度に制限を設定するなどして、ロボット110の軸値が意図せず大幅に変化することを回避できる。
【0037】
さらにティーチング部108は、実機のロボット110を制御して、モデル112の経路138a、138b、138cに沿って、これらの経路138a、138b、138cが半透明された順に、ロボット110を動作させる。
【0038】
この実機のロボット110の動作に伴って、表示制御部134は、多関節ロボットであるロボット110の例えばエンコーダからの位置情報などに基づいて実機のロボット110の現在の姿勢および位置を取得する。さらに表示制御部134は、取得したロボット110の現在の姿勢および位置を用いて、モデル112の半透明表示された経路138a、138b、138cを、半透明表示された順に、実際のロボット110の動作に伴い、実際のロボット110の動作速度で消去していく(ステップS108)。
【0039】
ステップS108では、
図5(a)に示すように、モデル112の経路138a、138b、138cのうち、最初に半透明表示された経路138a(
図4(b)参照)が消去され、モデル112とともに経路138b、138cのみが表示された状態となる。また
図5(b)に示すように、経路138aに次いで半透明表示された経路138b(
図5(a)参照)が消去され、モデル112とともに経路138cのみが表示された状態となる。続いて
図5(c)に示すように、経路138cも消去されて、モデル112のみが画面上に表示された状態となる。
【0040】
つまりステップS108では、モデル112の半透明表示された経路138a、138b、138cの位置までロボット110が到達すると、経路138a、138b、138cが順次消去されることになる。
【0041】
そしてティーチング部108は、ステップS108において
図5(c)に示すようにモデル112の半透明表示された経路138a、138b、138cがすべて消去され、ロボット110が
図4(b)のポインタ114に示す位置まで到達すると処理を終了する。
【0042】
このため作業者は、ロボット110のモデル112の経路138a、138b、138cによってロボット110の移動途中の姿勢を把握するだけでなく、ロボット110がどの位置まで到達したかを直感的に把握することができる。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、画面上に表示させた多関節ロボットのモデルをポインティングデバイスで動かしてティーチングを行うオフラインダイレクトティーチング装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
100…オフラインダイレクトティーチング装置、102…コンピュータ、104…ポインティングデバイス、106…表示部、108…ティーチング部、110…ロボット、112…モデル、114…ポインタ、116…基台、118…旋回フレーム、120…第1アーム、122…第2アーム、124…エンドエフェクタ、126…第2アームの先端、130…記憶部、132…操作検出部、134…表示制御部、136…作業領域、138a、138b、138c…モデルの経路