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特開2025-14357ワイヤバッファ装置、バッファ量の制御システム及び溶接システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014357
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】ワイヤバッファ装置、バッファ量の制御システム及び溶接システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/133 20060101AFI20250123BHJP
   B23K 9/12 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B23K9/133 502A
B23K9/12 304B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116851
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 元章
(57)【要約】
【課題】コンパクトな構成でバッファ量を十分に確保しつつ、バッファ量を精度よく検出できるワイヤバッファ装置を提供する。
【解決手段】送給装置間における溶接ワイヤの弛み量を制御するためのワイヤバッファ装置であって、ワイヤバッファ装置は、基台を有し、基台には、ワイヤ入口部と、ワイヤ出口部と、溶接ワイヤが挿通され、環状部が湾曲形成されるチューブと、ロッドと、環状部の径方向にスライドするスライダと、環状部の中心位置に配置されるクランク軸と、検出センサと、を備え、ロッドは、スライダのスライド移動に応じてクランク軸が回転するように、環状部の径方向に対してスライドする摺動機構と、クランク軸とに接続され、摺動機構は、チューブが挿通されるチューブ挿入部を有し、チューブの径方向の移動に伴って、摺動機構が前記環状部の径方向にスライドする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の送給装置と第2の送給装置との間に配置され、送給装置間における溶接ワイヤの弛み量を制御するためのワイヤバッファ装置であって、
前記ワイヤバッファ装置は、
前記第1の送給装置から溶接ワイヤが送給されるワイヤ入口部と、
前記第2の送給装置へ向かって溶接ワイヤを送出するワイヤ出口部と、
前記ワイヤ入口部と前記ワイヤ出口部との間で交差させることにより環状部が湾曲形成され、前記溶接ワイヤが挿通されるチューブと、
前記ワイヤ入口部、前記ワイヤ出口部、及び前記チューブの環状部を収容する収容領域が設けられる基台と、
前記収容領域に配置され、前記チューブが挿通されて、前記環状部の径の伸縮に伴って径方向に移動するチューブ挿入部と、前記チューブ挿入部と共に移動するスライダと、を有する摺動機構と、
前記収容領域の中心位置に軸支されるクランク軸と、長手方向両端部が前記スライダと前記クランク軸にそれぞれ接続され、前記スライダの移動に伴って前記クランク軸を回転させるロッドと、を備えるクランク機構と、
前記クランク軸の回転角度を検出する検出センサと、
を備える、
ワイヤバッファ装置。
【請求項2】
前記摺動機構は、前記基台の面方向に沿って移動する玉軸受又はピンを有し、
前記玉軸受又はピンは、前記環状部の径方向に沿って、前記基台に形成されたガイド溝に沿って移動する、
請求項1に記載のワイヤバッファ装置。
【請求項3】
前記ワイヤ入口部、又は前記ワイヤ出口部の何れか一方に、前記チューブが取付けられる、
請求項1に記載のワイヤバッファ装置。
【請求項4】
前記チューブ挿入部は、前記チューブを挟持するローラ機構を有する、
請求項1に記載のワイヤバッファ装置。
【請求項5】
前記ロッドを、少なくとも2本以上設け、
前記ロッドと前記クランク軸との連結部を、前記クランク軸の外縁側に等間隔で配置した、
請求項1に記載のワイヤバッファ装置。
【請求項6】
前記チューブをガイドする複数のスリーブを設け、
前記スリーブは、前記環状部の径の伸縮を所定範囲内で許容する内径を有する、
請求項1に記載のワイヤバッファ装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載のワイヤバッファ装置と、
前記ワイヤバッファ装置に前記溶接ワイヤを送給する前記第1の送給装置であるプッシュフィーダと、
前記ワイヤバッファ装置から前記溶接ワイヤが送給される前記第2の送給装置であるプルフィーダと、
制御部と、を備えた、
バッファ量の制御システム。
【請求項8】
請求項1~6の何れか1項に記載のワイヤバッファ装置を備えた溶接ロボットと、
溶接電源と、を備える、
溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤバッファ装置、バッファ量の制御システム及び溶接システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、溶接ワイヤを用いた溶接装置において、ワイヤパック側に配置されて正転方向のみの送給を行うプッシュフィーダと、溶接トーチ側に配置されて正転・逆転方向の送給を行うプルフィーダと、の間に、溶接ワイヤを円滑に供給するためのバッファ装置を設けた構成が知られている。このような溶接装置は、プッシュフィーダとプルフィーダの送給方向が異なる場合に、送給不良などが発生すると送給経路内で溶接ワイヤに大きな負荷が掛かって送給制御が適切に行われない虞がある。このため、バッファ装置により検出された溶接ワイヤに掛かる負荷量を、プッシュフィーダ又はプルフィーダにフィードバックする溶接システムが開示されている。
【0003】
特許文献1には、ワイヤが挿通される入口部と、出口部と、ワイヤを環状に湾曲した状態で収容する収容領域と、収容領域に収容されたガイド部と、を含む収容体を備え、入口部寄りの第1端部と、出口部寄りの第2端部のうち、何れか一方は収容体に固定し、他方は軸線方向に沿ってスライド移動可能に支持する、ワイヤ収容装置が記載されている。
同様に、特許文献2には、ワイヤ導入端とワイヤ送出端とを有するチューブ状のワイヤガイドと、ワイヤガイドを支持する支持ベースとを備え、ワイヤ導入端は、支持ベースに固定され、ワイヤ送出端は、支持ベースに対して軸線方向に相対移動可能に支持され、ワイヤガイドは、ワイヤ導入端とワイヤ送出端とが互いに逆方向を向くようにループをなしている、ワイヤのバッファ形成機構が記載されている。
【0004】
特許文献3には、入口部と出口部との間をワイヤがL字状のアーチを形成して通過するハウジングを備えたワイヤバッファ形成装置が記載されている。
特許文献4には、ワイヤが挿通される収容体にS字状に湾曲された状態のワイヤが収容されるワイヤの収容装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-217689号公報
【特許文献2】特開2010-52021号公報
【特許文献3】特開2017-136613号公報
【特許文献4】特開2015-199091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2の記載は、ワイヤの送給経路を環状にすることで、ワイヤバッファ装置のワイヤ収容量(以降、バッファ量、または弛み量とも称する)を十分確保することを目的としている。しかし、ガイド部に環状に湾曲させたワイヤを収容するとともに、ワイヤ負荷を吸収するために入口部又は出口部の一方を大きく可動させる必要があるため、装置全体が大型化する。また、ワイヤの径や硬さの違いによる影響が大きく、ワイヤの種類によってはさらに装置全体が大型化するという課題がある。
【0007】
特許文献3及び特許文献4の記載は、装置全体のサイズをコンパクトにすることを目的としている。しかし、何れもワイヤをL字状、又はS字状に湾曲させて保持するため、バッファ量が十分に確保できず、バッファ量の検出精度も低くなり易いという課題がある。
【0008】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンパクトな構成でバッファ量を十分に確保しつつ、バッファ量を精度よく検出できるワイヤバッファ装置、バッファ量の制御システム及び溶接システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 第1の送給装置と第2の送給装置との間に配置され、送給装置間における溶接ワイヤの弛み量を制御するためのワイヤバッファ装置であって、
前記ワイヤバッファ装置は、
前記第1の送給装置から溶接ワイヤが送給されるワイヤ入口部と、
前記第2の送給装置へ向かって溶接ワイヤを送出するワイヤ出口部と、
前記ワイヤ入口部と前記ワイヤ出口部との間で交差させることにより環状部が湾曲形成され、前記溶接ワイヤが挿通されるチューブと、
前記ワイヤ入口部、前記ワイヤ出口部、及び前記チューブの環状部を収容する収容領域が設けられる基台と、
前記収容領域に配置され、前記チューブが挿通されて、前記環状部の径の伸縮に伴って径方向に移動するチューブ挿入部と、前記チューブ挿入部と共に移動するスライダと、を有する摺動機構と、
前記収容領域の中心位置に軸支されるクランク軸と、長手方向両端部が前記スライダと前記クランク軸にそれぞれ接続され、前記スライダの移動に伴って前記クランク軸を回転させるロッドと、を備えるクランク機構と、
前記クランク軸の回転角度を検出する検出センサと、
を備える、
ワイヤバッファ装置。
(2)(1)に記載のワイヤバッファ装置と、
前記ワイヤバッファ装置に前記溶接ワイヤを送給する前記第1の送給装置であるプッシュフィーダと、
前記ワイヤバッファ装置から前記溶接ワイヤが送給される前記第2の送給装置であるプルフィーダと、
制御部と、を備えた、
バッファ量の制御システム。
(3)(1)に記載のワイヤバッファ装置を備えた溶接ロボットと、
溶接電源と、を備える、
溶接システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンパクトな構成でバッファ量を十分に確保しつつ、バッファ量を精度よく検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係るワイヤバッファ装置が用いられる溶接システムの概略図である。
図2図2は、本実施形態に係るワイヤバッファ装置が用いられる溶接ロボットの概略側面図である。
図3図3は、ワイヤバッファ装置の斜視図である。
図4図4は、ワイヤバッファ装置の正面図である。
図5図5は、図4のA-A断面図である。
図6図6は、摺動部の要部断面図である。
図7図7は、拡張状態のワイヤバッファ装置を示す正面図であり、
図8図8は、縮小状態のワイヤバッファ装置を示す正面図である。
図9図9は、制御部のブロック図である。
図10図10は、第2実施形態の摺動部の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を適用したワイヤバッファ装置の構成を説明する。なお、各図は、本発明の説明のために作成されたものであり、本発明の実施形態は、図示の内容に限らない。
【0013】
まず、本発明を適用したワイヤバッファ装置の全体像を把握するために、図1及び図2に基づいてワイヤバッファ装置が用いられた溶接システムについて説明する。図1は、実施形態に係るワイヤバッファ装置が用いられる溶接システムの概略図であり、図2は、本実施形態に係るワイヤバッファ装置が用いられる溶接ロボットの概略側面図である。
【0014】
(溶接システム)
溶接システム100は、溶接ロボット110と、ロボット制御装置120と、溶接電源130と、サーボアンプ140と、プルフィーダ150と、プッシュフィーダ160と、ワイヤバッファ装置10と、を備える。この構成は、図1を参照するとよい。
【0015】
溶接ロボット110は、エンドエフェクタとして溶接トーチ111を備える。溶接トーチ111は、溶接ワイヤWに通電させる通電機構、すなわち溶接チップを有する。
溶接ワイヤWは、溶接チップからの通電により先端からアークを発生させ、その熱で溶接の対象であるワーク200を溶接する。なお、溶接チップは、一般的にコンタクトチップとも称する。
【0016】
溶接トーチ111は、シールドガスを噴出する機構となるノズルを備える。シールドガスは特に限定しないが、具体的には、電位傾度の高い炭酸ガス、窒素ガス、水素ガス、酸素ガスのうち少なくとも一つのガスが含まれることが好ましい。また、汎用性の観点から、アルゴンガスとの混合ガスの場合は、少なくとも炭酸ガスが10体積%以上混合した系がより好ましく、炭酸ガスが90体積%以上混合した系がさらに好ましく、炭酸ガス単体で用いることがさらにより好ましい。なお、シールドガスは、不図示のシールドガス供給装置から供給される。
【0017】
ロボット制御装置120は、主に溶接ロボット110の動作を制御する。ロボット制御装置120は、予め図示しないティーチングペンダント等によって入力された溶接ロボット110の動作パターン、溶接開始位置、溶接終了位置、溶接条件、ウィービング動作等の制御情報を有する。このロボット制御装置120に入力された制御情報に基づいて、溶接ロボット110や溶接電源130が動作する。なお、ロボット制御装置120は溶接電源130と一体的に設けた構成としてもよい。
【0018】
溶接電源130は、不図示のプラスのパワーケーブルを介して、消耗式電極である溶接ワイヤに通電できるように溶接ロボット110に接続され、不図示のパワーケーブルを介して、ワーク200と接続されている。ワーク200は母材とも称する。
【0019】
プッシュフィーダ160は、溶接電源130と信号線によって接続されている。本実施形態では、プッシュフィーダ160は、溶接電源130に設けた送給制御部131によって制御される不図示のプッシュモータを有する。
【0020】
プルフィーダ150は、溶接トーチ111近傍に設けられ、サーボアンプ140が接続されている。プルフィーダ150は、サーボアンプ140を介して、送給制御部131により制御される不図示のサーボモータを有する。
なお、本実施形態は、溶接トーチ111がプルフィーダ150から独立した構成としているが、溶接トーチ111の中にプルフィーダ150を一体的に備える構成であってもよい。
【0021】
ワイヤバッファ装置10は、プルフィーダ150と、プッシュフィーダ160と、の間に配置される。本実施形態では、ワイヤバッファ装置10は溶接ロボット110に取付固定されている。プッシュフィーダ160は正転方向のみ、プルフィーダ150は正転および逆転方向にワイヤを送給するため、プッシュフィーダ160とプルフィーダ150とで送給方向が異なる場合がある。そのため、ワイヤバッファ装置10によって、溶接ワイヤWを弛ませるとともに、溶接ワイヤWの弛み量を検出してプルフィーダ150又はプッシュフィーダ160にフィードバックすることにより、このような送給状況においても適正な送給制御を可能にしている。以下、ワイヤバッファ装置10が吸収可能な溶接ワイヤWの弛み量を、バッファ量とも称する。
すなわち、送給制御部131は、ワイヤバッファ装置10により検出された溶接ワイヤWのバッファ量に基づいて、プルフィーダ150及びプッシュフィーダ160を制御する送給制御を実行できる。
【0022】
(ワイヤバッファ装置)
次に、図3図6に基づいて、本実施形態に係るワイヤバッファ装置10の具体的な構成について説明する。図3は、ワイヤバッファ装置の斜視図であり、図4は、ワイヤバッファ装置の正面図であり、図5は、図4のA-A断面図であり、図6は、摺動部の要部断面図である。
【0023】
ワイヤバッファ装置10は、収容部20を構成する基台21と、ワイヤ入口部22と、ワイヤ出口部23と、ガイド部24と、ワイヤチューブ25と、保護スリーブ26と、摺動部30と、クランク部41と、検出センサ44と、を備える。
基台21は溶接ワイヤWが挿通されたワイヤチューブ25が収容される収容部20を形成する。収容部20内に収容されるワイヤチューブ25は、一端側がワイヤ入口部22に支持され、他端側がワイヤ出口部23に支持され、円形状に湾曲された環状部25aを有する。摺動部30は、ワイヤチューブ25の環状部25aに取付けられ、環状部25aの径方向に沿って移動する。
【0024】
基台21は、円板状に形成された基板部21aと、基板部21aの外縁側に沿って立上げ成形された環状の縁部21bと、を有する。これにより、基台21は、環状に湾曲させたワイヤチューブ25が収容される収容部20を形成する。
収容部20は、ワイヤチューブ25を環状に湾曲するようにガイドしながら収容する収容領域20bと、ワイヤチューブ25を収容部20の上部一端側に設けたワイヤ入口部22から収容領域20bに案内する導入領域20aと、ワイヤチューブ25を収容領域20bから収容部20の上部他端側に設けたワイヤ出口部23に案内する送出領域20cと、を有する。
【0025】
収容部20の収容領域20bの外縁側には、摺動部30が配置される凹部27が形成される。本実施形態では、凹部27及び摺動部30は、基板部21aの外縁に沿って3つずつ配置される。具体的には、収容領域20bの外縁に、第1摺動部30Aが配置される第1凹部27Aと、第2摺動部30Bが配置される第2凹部27Bと、第3摺動部30Cが配置される第3凹部27Cと、が等間隔に設けられている。
【0026】
収容部20の収容領域20bの外縁側には、ワイヤチューブ25の環状部25aをガイドするガイド部24が形成される。
ガイド部24は、縁部21bの内側に沿って配置され、縁部21bと同心の円弧状に設けられ、基板部21aから縁部21bと同じ方向に突出する突出片である。これにより、ガイド部24と、縁部21bとの間に、ワイヤチューブ25を支持するチューブ支持部を形成する。
【0027】
収容部20の導入領域20a及び送出領域20cの上端には、蝶番を介して収容部20を開閉作動する蓋部28が設けられる。この構成は、図5を参照するとよい。
これに対応して、収容領域20b内に、閉作動した蓋部28を着脱容易に固定する一対の固定用磁石29、29が設けられる。なお、収容領域20b内のうち、ガイド部24の内側には、プッシュフィーダ160による溶接ワイヤWの微小送り操作を行うための補助スイッチ15が配置されている。この構成は、図3及び図4を参照するとよい。
【0028】
ワイヤ入口部22は、収容部20上端の軸方向一端に配置される。ワイヤ入口部22には、ワイヤチューブ25の一端側が軸方向に摺動しないように取付固定される。
ワイヤ出口部23は、収容部20上端の軸方向他端に配置される。ワイヤ出口部23には、ワイヤチューブ25の他端側が軸方向への摺動を許容した状態で支持される。
ワイヤ入口部22と、ワイヤ出口部23と、は略同一軸線上に配置される。この構成は、図3及び図4を参照するとよい。
【0029】
ワイヤチューブ25は、溶接ワイヤWが挿通されるチューブであって、収容部20に収容される。ワイヤチューブ25の両端側は、ワイヤ入口部22及びワイヤ出口部23に支持され、導入領域20aと送出領域20cとの間で交差している。これにより、ワイヤチューブ25は、収容部20の収容領域20b内でガイド部24に沿って環状に湾曲する環状部25aが形成される。この構成は、図3及び図4を参照するとよい。
また、ワイヤチューブ25は、ワイヤ出口部23側の端部が軸方向にスライドすることにより、ワイヤチューブ25の環状部25aの径が変動する。この環状部25aの径をループ径とも称する。これにより、ワイヤバッファ装置10は、溶接ワイヤWの弛みを吸収するバッファとして機能する。この構成は、図7及び図8を参照するとよい。
【0030】
保護スリーブ26は、縁部21b及びガイド部24の間に配置されるように円弧状に湾曲形成された複数の円筒状部材であり、ワイヤチューブ25が挿通される。保護スリーブ26は、摺動部30を避けるように間欠的に配置される。
具体的に説明すると、保護スリーブ26は、ワイヤ出口部23の近傍から第1摺動部30Aまで延在する第1保護スリーブ26Aと、第1摺動部30Aから第2摺動部30Bまで延在する第2保護スリーブ26Bと、第2摺動部30Bから第3摺動部30Cまで延在する第3保護スリーブ26Cと、第3摺動部30Cからワイヤ入口部22の近傍まで延在する第4保護スリーブ26Dと、収容部20内において、環状のワイヤチューブ25が交差する部分からワイヤ出口部23までをカバーする第5保護スリーブ26Eと、を有する。
また、保護スリーブ26の内径は、ワイヤチューブ25の外径よりも大きく、ワイヤチューブ25の環状部25aの径が伸縮可能な範囲を規定している。
【0031】
該構成によれば、ループ径が変動するワイヤチューブ25が、摺動抵抗の少ない保護スリーブ26の内周面に摺接する。このため、ワイヤチューブ25が、縁部21bやガイド部24に直接擦れて劣化が早期に進行することを防止できる。
【0032】
また、これをワイヤ出口部23に設けた第5保護スリーブ26Eにより、ワイヤチューブ25のループ径の拡大に伴って、送出領域20c内でワイヤチューブ25から露出する溶接ワイヤWを保護できる。
具体的に説明すると、ワイヤチューブ25の一端側はワイヤ出口部23で軸方向にスライドするため、溶接作業時に弛んだ溶接ワイヤWをワイヤ出口部23からワイヤバッファ装置10内に吸収した場合に、ワイヤチューブ25の端部が収容部20内に押込まれて、溶接ワイヤWが収容部20内で露出することがある。このような溶接ワイヤWの露出を第5保護スリーブ26Eによって保護できる。
【0033】
図5及び図6に基づき、摺動部30と、クランク部41について説明する。
摺動部30は、基板部21aの外縁に沿って等間隔に配置した複数の凹部27にそれぞれ設けられている。本実施形態では、摺動部30は、第1凹部27Aに配置される第1摺動部30Aと、第2凹部27Bに配置される第2摺動部30Bと、第3凹部27Cに配置される第3摺動部30Cと、を有する。この構成は、図3及び図4を参照するとよい。
各摺動部30は、スライダ31と、ガイドシャフト32と、支持板33と、チューブ挿入部34と、ガイド溝35と、を有する。
クランク部41は、クランク軸42と、ロッド43と、を有する。クランク軸42は、収容領域20bの中心位置に軸支される支持部材である。ロッド43は、長手方向両端部がスライダ31とクランク軸42とにそれぞれ接続され、各摺動部30に設けたスライダ31の移動に伴ってクランク軸42を回転させる。
【0034】
ガイドシャフト32は、ワイヤチューブ25の環状部25aの径方向に沿って延在する棒状部材であって、凹部27の開放端側を架け渡すように設けられる。各ガイドシャフト32の軸方向端部は、ガイドシャフト32の軸方向に沿って締結される固定ボルトによって凹部27側に固定される。この構成は、図5及び図6を参照するとよい。
【0035】
スライダ31は、ガイドシャフト32に沿って、環状部25aの径方向にスライド移動するように設けられている。
スライダ31は、ロッド43の一端側及び支持板33が取付けられるスライダ本体31aと、スライダ本体31aに固定され、ガイドシャフト32に外挿されたガイド筒31bと、を有する。すなわち、ロッド43の一端側及び支持板33は、スライダ31と共にガイドシャフト32に沿ってスライド移動する。
【0036】
チューブ挿入部34は、支持板33に固定された第1支持軸38に軸支される玉軸受36と、支持板33に固定された第2支持軸39に軸支されるローラ37と、の間に形成される。チューブ挿入部34は、玉軸受36と、ローラ37と、がガイドシャフト32の延在方向に沿って並べて配置されることによって、ワイヤチューブ25がその長手方向にスライド自在に挿入されるローラ機構を構成している。
このとき、玉軸受36の外輪には、ワイヤチューブ25の断面形状に沿って半円状に凹設された当接面36aが形成される。これにより、チューブ挿入部34の当接面36aが筒状のワイヤチューブ25の外周面の半部に嵌合するようにして密着する。この構成は、図6を参照するとよい。
【0037】
チューブ挿入部34を構成する第1支持軸38の一端側には、ガイドローラ40が軸支されている。
ガイドローラ40は、凹部27に形成されたガイド溝35内に配置され、ガイド溝35に沿って転動する。このガイド溝35は、ガイドシャフト32の延在方向に沿って形成される。このため、チューブ挿入部34は、基板部21aの面方向に沿って形成されたガイド溝35に沿って移動する。この構成は、図5図7を参照するとよい。
すなわち、上述の摺動部30は、チューブ挿入部34に挿通されたワイヤチューブ25がローラ機構によって軸方向にスライドし、スライダ31のスライド方向と交差する方向に外力が掛かった場合であっても、スライダ31を、ガイドシャフト32に沿ってスムーズ且つ正確にスライド移動させることができる。なお、ガイドローラ40は後述するようにピンに置き換えてもよい。
【0038】
ロッド43は、一端側がクランク軸42側に取付固定され、他端側がスライダ31側に取付固定される部材であり、クランク軸42と、摺動部30と、の間を連結する。
ロッド43は、各摺動部30に設けられる。すなわち本実施形態では、第1摺動部30Aのスライダ31とクランク軸42との間は、第1ロッド43Aで連結され、第2摺動部30Bのスライダ31とクランク軸42との間は、第2ロッド43Bで連結され、第3摺動部30Cのスライダ31とクランク軸42との間は、第3ロッド43Cで連結されている。
【0039】
クランク軸42は、収容領域20bの中心位置に軸支される支持部材であり、各摺動部30に設けたスライダ31の移動に伴って回動する。クランク軸42は、軸部42aと、軸部42aを中心に径方向に延在する円板状のフランジ部42bと、を有する。
軸部42aは、収容部20の中心側であって、基板部21aに形成した貫通孔に固定した軸受49の内輪と一体回転するように設けられた筒状の軸部材である。軸部42aは、同芯軸上に設けた固定ボルト48を用いてフランジ部42bが一体回転するように取付けられている。この構成は、図5を参照するとよい。
フランジ部42bには、第1ロッド43Aが連結される第1連結部46Aと、第2ロッド43Bが連結され第2連結部46Bと、第3ロッド43Cが連結される第3連結部46Cと、が外縁側に沿って等間隔に設けられる。このとき、フランジ部42bの各連結部46A、46B、46Cの位置は、正面視でロッド43の他方側に連結される各摺動部30A、30B、30Cとクランク軸42の軸部42aとを結んだ線より、各ロッド43を各摺動部30A、30B、30Cを軸にそれぞれ同じ角度で傾斜させた位置に配置されている。この構成は、図7及び図8を参照するとよい。
なお、本実施形態では、各ロッド43が各摺動部30A、30B、30Cを軸に反時計回りに傾斜しているが、傾斜方向は逆でもよい。
【0040】
以上によれば、収容領域20bの外縁に沿って等間隔で3つ設けられた各摺動部30A、30B、30Cは、連係機構として機能するクランク部41を介して連結される。このため、ワイヤチューブ25の環状部25aの径の変動に伴う各摺動部30A、30B、30Cの動作が全て同期する。このため、環状部25aの形状を崩したり歪ませたりすることなく、真円に近い形状を保ったままワイヤチューブ25のループ径の拡大・縮小をスムーズに行うことができ、ワイヤバッファ装置10内での局所的な溶接ワイヤWの曲率変化を防止することができるため、ワイヤバッファ装置10としてコンパクトな構成を実現できる。
【0041】
また、クランク軸42とロッド43とが連結される連結部46A、46B、46Cが、クランク軸42の外縁に沿って等間隔に配置されたことにより、ワイヤバッファ装置10が慣性を受けた場合、各摺動部30A、30B、30Cが受ける慣性が互いに打ち消し合い、合力が0になる。
すなわち、溶接ロボット110に搭載されたワイヤバッファ装置10が溶接作業中に慣性を受けてもクランク軸42は慣性の影響を受けて勝手に回ることがない。
【0042】
検出センサ44は、センサ支持板45に取付固定されることにより、クランク軸42の軸部42aと同一軸心上に配置されるポテンショメータであり、クランク軸42の回転・回動位置を検出する。
センサ支持板45は、複数の固定ボルト47を介して、基板部21aでクランク軸42を軸部42aの軸方向で挟むように取付固定される。本実施形態では、センサ支持板45は、三角形状に形成され、外縁に沿って3つ設けた固定ボルト47、47、47によって、基板部21a側に固定される。この構成は、図3図5を参照するとよい。
【0043】
(作用及び効果)
図7及び図8に基づいて、ワイヤバッファ装置10の作用効果について説明する。図7は、拡張状態のワイヤバッファ装置を示す正面図であり、図8は、縮小状態のワイヤバッファ装置を示す正面図である。
【0044】
ワイヤバッファ装置10は、溶接作業時に溶接ワイヤWが弛んだ場合、溶接ワイヤWの弛みを吸収することで、収容部20内のワイヤチューブ25のループ径が大きくなる。これに伴い、各摺動部30A、30B、30Cのスライダ31と、各ロッド43A、43B、43Cと、を介してクランク軸42が正面視で時計回りに回動する。これにより、ワイヤチューブ25が環状部25aの形状を保ったままループ径が拡大する拡径状態となる。これにより、収容部20内への溶接ワイヤWの収容量が増える。言い換えると、収容部20内の溶接ワイヤWのバッファ量が増える。この構成は、図7を参照するとよい。
【0045】
その一方で、ワイヤバッファ装置10は、溶接ワイヤWの弛みが解消した場合、収容部20内のワイヤチューブ25のループ径が小さくなる。これに伴い、各摺動部30A、30B、30Cのスライダ31と、各ロッド43A、43B、43Cと、を介してクランク軸42が正面視で反時計回りに回動する。これにより、ワイヤチューブ25が環状部25aの形状を保ったままループ径が縮小する縮径状態となる。これにより、再び収容部20内で溶接ワイヤWの弛みを吸収可能な状態となる。この構成は、図8を参照するとよい。
【0046】
すなわち、ワイヤバッファ装置10は、収容部20内に収まるコンパクトな構成で溶接作業時の溶接ワイヤWの弛みをワイヤチューブ25のループ径の伸縮によってスライダ31の最大ストローク量×2πのワイヤ長を吸収するバッファとして機能する。
また、ワイヤバッファ装置10は、検出センサ44によってクランク軸42の回動位置を検出することによって、収容部20で吸収可能な溶接ワイヤWのバッファ量を常に検出できる。クランク軸42の軸中心から連結部46までのオフセット距離を極力小さくし、且つクランク軸42の軸中心から連結部46とを結ぶ線と、ロッド43の軸線との角度を90°前後に設定することにより、スライダ31のループ径方向の変位量に対し、検出センサ44の回転角度を大きく動かすことができるため、優れた検出精度を有する。
【0047】
(送給制御部)
次に、図9に基づいて、送給制御部について説明する。図9は、制御部のブロック図である。
送給制御部131の入力側には、溶接電源130と、補助スイッチ15と、検出センサ44と、が接続されている。送給制御部131の出力側には、プッシュフィーダ160と、プルフィーダ150と、が接続されている。
【0048】
送給制御部131は、検出センサ44によって検出されたワイヤバッファ装置10のバッファ量に基づいて、プルフィーダ150側のサーボモータ、又は/及びプッシュフィーダ160のプッシュモータの駆動を制御して溶接ワイヤWの送給量速度を調整することにより、プッシュフィーダ160とプルフィーダ150の送給速度誤差の累積による溶接ワイヤWの圧縮、引張りを回避し、ワイヤバッファ装置10のバッファ量を適正位置(具体的にはスライダ31のストローク中間付近)が目標となるようにフィードバック制御する送給制御が実行可能に構成される。
送給制御によれば、溶接作業時にワイヤバッファ装置10内で溶接ワイヤWをある程度弛ませたバッファ状態を維持できる。すなわち、プッシュフィーダ160の送給量とプルフィーダ150の送給方向、送給量が異なる状態となった場合でも、溶接ワイヤWに必要以上に負荷が掛かることを防止し、溶接トーチ111に向けた溶接ワイヤWのスムーズ且つ安定した送給を維持できる。
【0049】
具体的に説明すると、プッシュフィーダ160による正転方向の送給とプルフィーダ150による逆転方向の送給とが重なり、プッシュフィーダ160とプルフィーダ150との間で溶接ワイヤWが圧縮された場合でも、ワイヤバッファ装置10のバッファによって、溶接ワイヤWに必要以上の負荷が掛かって座屈することを防止できる。
同様に、プルフィーダ150による溶接ワイヤWの送給量が多くなった場合でも、ワイヤバッファ装置10のバッファによって、溶接ワイヤWが過度に引っ張られて負荷が掛かる状態となることを防止できる。
【0050】
また、送給制御部131は、ワイヤバッファ装置10内の補助スイッチ15の押操作が検出された場合に、プッシュフィーダ160のプッシュモータを正転駆動させる組付補助制御が実行可能に構成される。
組付補助制御によれば、補助スイッチ15の押操作のみで溶接ワイヤWを送り出すことができるため、ワイヤチューブ25に溶接ワイヤWを挿通する組付作業をする際に、溶接ワイヤWがプッシュフィーダ160から送給経路のいずれかの箇所に引っかかることなくトーチ先端まで送給することができ、ワイヤバッファ装置10の組付作業が容易になる。
【0051】
また、送給制御部131は、補助スイッチ15を押操作している間、プッシュモータが駆動する構成としてもよいし、補助スイッチ15の押操作が検出された場合に、予め設定された微小な送給幅のみ溶接ワイヤWの送給が実行される構成としてもよい。
また、補助スイッチ15は、収容部20を構成する基板部21a上に設置されるため、ワイヤバッファ装置10の取付作業時にスムーズ且つ簡単に操作できる。
【0052】
(第2実施形態)
図10に基づいて、第2実施形態の摺動部50の構成について説明する。
摺動部50は、スライダ31と、ガイドシャフト32と、支持体51と、チューブ挿入部51aと、ガイドピン52と、ガイド溝53と、を有する。
摺動部50は、基板部21aの外縁に沿って等間隔に配置した複数の凹部27にそれぞれ設けられている。
【0053】
支持体51は、スライダ31側に固定されて、凹部27の凹設面側に向けて延在する。
支持体51は、チューブ挿入部51aと、ガイドピン52とが設けられる。
チューブ挿入部51aは、延在方向の中途部に形成され、ワイヤチューブ25の環状部25aが挿通される挿通孔である。
ガイドピン52は、支持体51の端部に取付固定され、ガイド溝53に沿って摺動する。
ガイド溝53は、凹部27に凹設され、ガイドピン52が摺動される長孔であって、ガイドシャフト32の延在方向に沿って形成される。
【0054】
該構成の摺動部50によれば、より簡易且つ低コストな構成でスライダ31のスライド方向が環状部25aの径方向に沿うようにガイドすることができる。
【0055】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0056】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 第1の送給装置と第2の送給装置との間に配置され、送給装置間における溶接ワイヤの弛み量を制御するためのワイヤバッファ装置であって、
前記ワイヤバッファ装置は、
前記第1の送給装置から溶接ワイヤが送給されるワイヤ入口部と、
前記第2の送給装置へ向かって溶接ワイヤを送出するワイヤ出口部と、
前記ワイヤ入口部と前記ワイヤ出口部との間で交差させることにより環状部が湾曲形成され、前記溶接ワイヤが挿通されるチューブと、
前記ワイヤ入口部、前記ワイヤ出口部、及び前記チューブの環状部を収容する収容領域が設けられる基台と、
前記収容領域に配置され、前記チューブが挿通されて、前記環状部の径の伸縮に伴って径方向に移動するチューブ挿入部と、前記チューブ挿入部と共に移動するスライダと、を有する摺動機構と、
前記収容領域の中心位置に軸支されるクランク軸と、長手方向両端部が前記スライダと前記クランク軸にそれぞれ接続され、前記スライダの移動に伴って前記クランク軸を回転させるロッドと、を備えるクランク機構と、
前記クランク軸の回転角度を検出する検出センサと、
を備える、
ワイヤバッファ装置。
本構成によれば、環状部の径方向にスライドするスライダと、収容領域の中心に設けたクランク軸と、の間をロッドで連結し、クランク軸の回動位置を検出する検出センサを設けたことにより、コンパクトな構成でバッファ量を十分に確保しつつ、バッファ量を精度よく検出できる。
【0057】
(2) 前記摺動機構は、前記基台の面方向に沿って移動する玉軸受又はピンを有し、
前記玉軸受又はピンは、前記環状部の径方向に沿って、前記基台に形成されたガイド溝に沿って移動する、
(1)に記載のワイヤバッファ装置。
本構成によれば、スライダを環状部の径方向に沿って確実にスライド移動させることができるため、環状部の径の伸縮作動を、環状部の形を崩さずにスムーズに行うことができる。
【0058】
(3) 前記ワイヤ入口部、又は前記ワイヤ出口部の何れか一方に、前記チューブが取付けられる、
(1)又は(2)に記載のワイヤバッファ装置。
本構成によれば、溶接ワイヤが挿入されるワイヤチューブの環状部の径方向の伸縮作動をスムーズにすることができる。
【0059】
(4) 前記チューブ挿入部は、前記チューブを挟持するローラ機構を有する、
(1)~(3)の何れか1つに記載のワイヤバッファ装置。
本構成によれば、チューブ挿入部に挿入されるワイヤチューブを抵抗なくスムーズに摺動させることができるため、環状部の径方向の伸縮に伴うスライダの径方向のスライド移動もスムーズになる。
【0060】
(5) 前記ロッドを、少なくとも2本以上設け、
前記ロッドと前記クランク軸との連結部を、前記クランク軸の外縁側に等間隔で配置した、
(1)~(4)の何れか1つに記載のワイヤバッファ装置。
本構成によれば、各ロッドのスライド移動が、クランク軸を介して同期するため、環状部の径方向の伸縮作動を、環状部の形状を崩さずに行うことができる。また、ワイヤバッファ装置に加速度が掛かった場合に、各ロッドに掛かる負荷が互いに打ち消し合うため、溶接ロボットにワイヤバッファ装置が搭載されても、溶接ロボットが高速移動しても、加速度の影響で環状部の径が変動することを防止できる。
【0061】
(6) 前記チューブをガイドする複数のスリーブを設け、
前記スリーブは、前記環状部の径の伸縮を所定範囲内で許容する内径を有する、
(1)~(5)の何れか1つに記載のワイヤバッファ装置。
本構成によれば、ワイヤチューブの環状部の径が変動した際に、ワイヤチューブが基台側に直接擦れて劣化することを防止できる。
【0062】
(7) (1)~(6)の何れか1つに記載のワイヤバッファ装置と、
前記ワイヤバッファ装置に前記溶接ワイヤを送給する前記第1の送給装置であるプッシュフィーダと、
前記ワイヤバッファ装置から前記溶接ワイヤが送給される前記第2の送給装置であるプルフィーダと、
制御部と、を備えた、
バッファ量の制御システム。
本構成によれば、ワイヤバッファ装置により検出されるバッファ量を、第1の送給装置と、第2の送給装置と、にフィードバックできるため、第1の送給装置及び第2の送給装置による溶接ワイヤの送給制御がより安定する。
【0063】
(8) (1)~(6)の何れか1つに記載のワイヤバッファ装置を備えた溶接ロボットと、
溶接電源と、を備える、
溶接システム。
本構成によれば、ワイヤバッファ装置により検出されるバッファ量を、第1の送給装置と、第2の送給装置と、にフィードバックすることで、溶接トーチに送給される溶接ワイヤの送給量が安定するため、結果的に溶接精度が向上する。
【符号の説明】
【0064】
10 ワイヤバッファ装置
15 補助スイッチ
20 収容部
20a 導入領域
20b 収容領域
20c 送出領域
21 基台
21a 基板部(基台の面)
21b 縁部
22 ワイヤ入口部
23 ワイヤ出口部
24 ガイド部
25 ワイヤチューブ(チューブ)
25a 環状部
26 保護スリーブ(スリーブ)
26A 第1保護スリーブ
26B 第2保護スリーブ
26C 第3保護スリーブ
26D 第4保護スリーブ
26E 第5保護スリーブ
27 凹部
27A 第1凹部
27B 第2凹部
27C 第3凹部
28 蓋部
29 固定用磁石
30 摺動部(摺動機構)
30A 第1摺動部
30B 第2摺動部
30C 第3摺動部
31 スライダ
32 ガイドシャフト
33 支持板
34 チューブ挿入部
35 ガイド溝
36 玉軸受
36a 当接面
37 ローラ
38 第1支持軸
39 第2支持軸
41 クランク部(クランク機構、連係機構)
42 クランク軸
42a 軸部
42b フランジ部
43 ロッド
43A 第1ロッド
43B 第2ロッド
43C 第3ロッド
44 検出センサ
45 センサ支持板
46A 第1連結部(連結部)
46B 第2連結部(連結部)
46C 第3連結部(連結部)
49 軸受
50 摺動部
51 支持体
51a チューブ挿入部
52 ガイドピン(ピン)
53 ガイド溝
100 溶接システム
110 溶接ロボット
111 溶接トーチ
120 ロボット制御装置
130 溶接電源
131 送給制御部
140 サーボアンプ
150 プルフィーダ(第2の送給装置)
160 プッシュフィーダ(第1の送給装置)
200 ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10