(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014358
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】産業用ロボットの補正値算出方法および産業用ロボットの制御方法
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20250123BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20250123BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
H01L21/68 A
H01L21/68 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116852
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】戸崎 康一
(72)【発明者】
【氏名】水谷 卓也
【テーマコード(参考)】
3C707
5F131
【Fターム(参考)】
3C707AS24
3C707BS15
3C707CT02
3C707CT04
3C707HS27
3C707KS03
3C707KS04
3C707KS17
3C707KS20
3C707KS21
3C707KV12
3C707KX10
3C707NS13
5F131AA02
5F131CA18
5F131DA32
5F131DA42
5F131DB02
5F131DB52
5F131DB58
5F131DB76
5F131DB82
(57)【要約】
【課題】上下方向で重なっていない状態の2個の搬送対象物が搭載されるハンドを備え、上下方向で重なっていない状態の2個の搬送対象物を一緒に搬送する産業用ロボットのハンドの位置および向きを補正するための補正値の具体的な算出方法を提案する。
【解決手段】この産業用ロボットの補正値算出方法では、第1補正値算出ステップにおいて、上下方向から見たときの搬出側基準中点M11に対する搬出側検知中点M1のずれ量と上下方向から見たときの搬出側基準線分L11に対する搬出側検知線分L1の傾きΔθ1とを搬出側補正値として算出するとともに、第2補正置算出ステップにおいて、上下方向から見たときの搬入側基準中点に対する搬入側検知中点のずれ量と上下方向から見たときの搬入側基準線分に対する搬入側検知線分の傾きとを搬入側補正値として算出している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向で重なっていない状態の2個の搬送対象物が搭載されるハンドを備える産業用ロボットの前記ハンドの位置および向きを補正するための補正値を算出する産業用ロボットの補正値算出方法であって、
前記産業用ロボットは、上下方向で重なっていない状態の2個の前記搬送対象物が配置可能な搬出部から上下方向で重なっていない状態の2個の前記搬送対象物が配置可能な搬入部に2個の前記搬送対象物を一緒に搬送し、
前記ハンドは、1個の前記搬送対象物が搭載される第1搭載部と、1個の前記搬送対象物が搭載される第2搭載部とを備え、
前記第1搭載部に搭載される前記搬送対象物を第1搬送対象物とし、前記第2搭載部に搭載される前記搬送対象物を第2搬送対象物とし、前記搬出部の、前記第1搬送対象物が配置される位置を搬出側第1配置位置とし、前記搬出部の、前記第2搬送対象物が配置される位置を搬出側第2配置位置とし、前記搬入部の、前記第1搬送対象物が配置される位置を搬入側第1配置位置とし、前記搬入部の、前記第2搬送対象物が配置される位置を搬入側第2配置位置とすると、
前記産業用ロボットの補正値算出方法は、
前記第1搭載部および前記第2搭載部に取り付けられる検知機構によって、前記搬出側第1配置位置の所定の箇所に配置される搬出側第1基準ピンの少なくとも水平方向の位置と、前記搬出側第2配置位置の所定の箇所に配置される搬出側第2基準ピンの少なくとも水平方向の位置とを検知する第1検知ステップと、
前記検知機構によって、前記搬入側第1配置位置の所定の箇所に配置される搬入側第1基準ピンの少なくとも水平方向の位置と、前記搬入側第2配置位置の所定の箇所に配置される搬入側第2基準ピンの少なくとも水平方向の位置とを検知する第2検知ステップとを備えるとともに、
前記第1検知ステップの検知結果に基づいて特定される、上下方向から見たときの前記搬出側第1基準ピンの中心と前記搬出側第2基準ピンの中心とを結ぶ線分を搬出側検知線分とし、前記搬出側検知線分の中点を搬出側検知中点とし、前記第2検知ステップの検知結果に基づいて特定される、上下方向から見たときの前記搬入側第1基準ピンの中心と前記搬入側第2基準ピンの中心とを結ぶ線分を搬入側検知線分とし、前記搬入側検知線分の中点を搬入側検知中点とし、前記搬出部において前記搬出側第1基準ピンおよび前記搬出側第2基準ピンが設計上の位置に配置されていると仮定したときの、上下方向から見たときの前記搬出側第1基準ピンの中心と前記搬出側第2基準ピンの中心とを結ぶ線分を搬出側基準線分とし、前記搬出側基準線分の中点を搬出側基準中点とし、前記搬入部において前記搬入側第1基準ピンおよび前記搬入側第2基準ピンが設計上の位置に配置されていると仮定したときの、上下方向から見たときの前記搬入側第1基準ピンの中心と前記搬入側第2基準ピンの中心とを結ぶ線分を搬入側基準線分とし、前記搬入側基準線分の中点を搬入側基準中点とすると、
少なくとも、上下方向から見たときの前記搬出側基準中点に対する前記搬出側検知中点のずれ量と、上下方向から見たときの前記搬出側基準線分に対する前記搬出側検知線分の傾きとを搬出側補正値として算出する第1補正値算出ステップと、
少なくとも、上下方向から見たときの前記搬入側基準中点に対する前記搬入側検知中点のずれ量と、上下方向から見たときの前記搬入側基準線分に対する前記搬入側検知線分の傾きとを搬入側補正値として算出する第2補正値算出ステップとを備えることを特徴とする産業用ロボットの補正値算出方法。
【請求項2】
前記搬出側第1基準ピンは、上下方向から見たときに、前記搬出側第1配置位置の正規の位置に配置されたときの前記第1搬送対象物の中心と前記搬出側第1基準ピンの中心とが一致する箇所に配置され、
前記搬出側第2基準ピンは、上下方向から見たときに、前記搬出側第2配置位置の正規の位置に配置されたときの前記第2搬送対象物の中心と前記搬出側第2基準ピンの中心とが一致する箇所に配置され、
前記搬入側第1基準ピンは、上下方向から見たときに、前記搬入側第1配置位置の正規の位置に配置されたときの前記第1搬送対象物の中心と前記搬入側第1基準ピンの中心とが一致する箇所に配置され、
前記搬入側第2基準ピンは、上下方向から見たときに、前記搬入側第2配置位置の正規の位置に配置されたときの前記第2搬送対象物の中心と前記搬入側第2基準ピンの中心とが一致する箇所に配置されていることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボットの補正値算出方法。
【請求項3】
前記第1検知ステップでは、前記検知機構によって、前記搬出側第1基準ピンの上端の高さと前記搬出側第2基準ピンの上端の高さとを検知し、
前記第2検知ステップでは、前記検知機構によって、前記搬入側第1基準ピンの上端の高さと前記搬入側第2基準ピンの上端の高さとを検知し、
前記第1補正値算出ステップでは、前記第1検知ステップで検知された前記搬出側第1基準ピンの上端の高さと前記搬出側第2基準ピンの上端の高さとに基づいて算出される前記搬出側検知中点の高さの、前記搬出側基準中点の設計上の高さに対するずれ量を前記搬出側補正値として算出し、
前記第2補正値算出ステップでは、前記第2検知ステップで検知された前記搬入側第1基準ピンの上端の高さと前記搬入側第2基準ピンの上端の高さとに基づいて算出される前記搬入側検知中点の高さの、前記搬入側基準中点の設計上の高さに対するずれ量を前記搬入側補正値として算出することを特徴とする請求項1または2記載の産業用ロボットの補正値算出方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の産業用ロボットの補正値算出方法で算出された前記補正値に基づいて前記産業用ロボットを制御するための産業用ロボットの制御方法であって、
前記搬出部および前記搬入部のいずれか一方では、前記ハンドの位置および向きを補正せず、
前記搬出部および前記搬入部のいずれか他方では、前記搬出側補正値および前記搬入側補正値に基づいて前記ハンドの位置および向きを補正することを特徴とする産業用ロボットの制御方法。
【請求項5】
前記産業用ロボットは、前記ハンドが回動可能に連結されるアームと、前記アームが回動可能に連結される本体部と、水平方向への直線的な移動が可能となるように前記本体部を保持する本体保持部と、前記本体保持部に対して前記本体部を移動させる水平移動機構と、上下方向を回動の軸方向として前記本体部に対して前記アームを回動させるとともに前記ハンドが一定方向を向いた状態で前記本体部に対して水平方向に直線的に移動するように前記アームを伸縮させるアーム駆動機構とを備える水平多関節型のロボットであり、
前記本体保持部に対する前記本体部の移動方向を第1方向とし、前記第1方向と上下方向とに直交する方向を第2方向とすると、
前記ハンドは、設計上、前記搬出部および前記搬入部のいずれか一方に対して前記第1方向に直線的に移動するとともに、前記搬出部および前記搬入部のいずれか他方に対して前記第2方向に直線的に移動することを特徴とする請求項4記載の産業用ロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットのハンドの位置および向きを補正するための補正値を算出する産業用ロボットの補正値算出方法に関する。また、本発明は、かかる産業用ロボットの補正値算出方法で算出された補正値に基づいて産業用ロボットを制御するための産業用ロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハを搬送するための産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の産業用ロボットは、上下方向で重なっていない状態の2枚の半導体ウエハが搭載される第1ハンドと、上下方向で重なっていない状態の2枚の半導体ウエハが搭載される第2ハンドと、第1ハンドおよび第2ハンドが回動可能に連結されるアームと、アームが回動可能に連結される本体部とを備えている。この産業用ロボットは、受渡しチャンバーと処理チャンバーとの間で2枚の半導体ウエハを一緒に搬送する。すなわち、この産業用ロボットは、受渡しチャンバーと処理チャンバーとの間で2枚の半導体ウエハを同時に搬送する。
【0003】
また、従来、半導体ウエハを搬送するための産業用ロボットとして、1枚の半導体ウエハが搭載されるハンドと、ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、アームの基端側が回動可能に連結される本体部と、本体部を水平方向に直線的に移動させるX軸テーブルとを備える産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の産業用ロボットは、ロードポートに設置されるウエハ収納容器とウエハ処理装置との間で半導体ウエハを1枚ずつ搬送する。
【0004】
特許文献2に記載の産業用ロボットが組み込まれる半導体製造システムでは、たとえば、ウエハ収納容器やウエハ処理装置を構成する部品のばらつき等の影響で、産業用ロボットによってウエハ収納容器やウエハ処理装置に搬入されて正規の位置に配置される半導体ウエハの位置が設計上の位置からずれることがある。そのため、特許文献2に記載の産業用ロボットが組み込まれる半導体製造システムでは、センサ治具と遮光治具とを用いて、ウエハ収納容器やウエハ処理装置においてハンドの位置および向きを補正するための補正値を予め算出し、半導体ウエハを搬送するときにこの補正値に基づいてハンドの位置および向きを補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-56545号公報
【特許文献2】国際公開第2009/145082号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2では、ウエハ収納容器とウエハ処理装置との間で半導体ウエハを1枚ずつ搬送する産業用ロボットのハンドの位置および向きを補正するための補正値の算出方法が提案されている。しかしながら、特許文献1に記載の産業用ロボットのように、上下方向で重なっていない状態の2枚の半導体ウエハが搭載されるハンドを備え、上下方向で重なっていない状態の2枚の半導体ウエハを一緒に搬送する産業用ロボットのハンドの位置および向きを補正するための補正値の具体的な算出方法は従来提案されていない。
【0007】
そこで、本発明の課題は、上下方向で重なっていない状態の2個の搬送対象物が搭載されるハンドを備え、上下方向で重なっていない状態の2個の搬送対象物を一緒に搬送する産業用ロボットのハンドの位置および向きを補正するための補正値の具体的な算出方法を提案することにある。また、本発明の課題は、かかる算出方法で算出された補正値に基づいて産業用ロボットを制御するための産業用ロボットの制御方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットの補正値算出方法は、上下方向で重なっていない状態の2個の搬送対象物が搭載されるハンドを備える産業用ロボットのハンドの位置および向きを補正するための補正値を算出する産業用ロボットの補正値算出方法であって、産業用ロボットは、上下方向で重なっていない状態の2個の搬送対象物が配置可能な搬出部から上下方向で重なっていない状態の2個の搬送対象物が配置可能な搬入部に2個の搬送対象物を一緒に搬送し、ハンドは、1個の搬送対象物が搭載される第1搭載部と、1個の搬送対象物が搭載される第2搭載部とを備え、第1搭載部に搭載される搬送対象物を第1搬送対象物とし、第2搭載部に搭載される搬送対象物を第2搬送対象物とし、搬出部の、第1搬送対象物が配置される位置を搬出側第1配置位置とし、搬出部の、第2搬送対象物が配置される位置を搬出側第2配置位置とし、搬入部の、第1搬送対象物が配置される位置を搬入側第1配置位置とし、搬入部の、第2搬送対象物が配置される位置を搬入側第2配置位置とすると、産業用ロボットの補正値算出方法は、第1搭載部および第2搭載部に取り付けられる検知機構によって、搬出側第1配置位置の所定の箇所に配置される搬出側第1基準ピンの少なくとも水平方向の位置と、搬出側第2配置位置の所定の箇所に配置される搬出側第2基準ピンの少なくとも水平方向の位置とを検知する第1検知ステップと、検知機構によって、搬入側第1配置位置の所定の箇所に配置される搬入側第1基準ピンの少なくとも水平方向の位置と、搬入側第2配置位置の所定の箇所に配置される搬入側第2基準ピンの少なくとも水平方向の位置とを検知する第2検知ステップとを備えるとともに、第1検知ステップの検知結果に基づいて特定される、上下方向から見たときの搬出側第1基準ピンの中心と搬出側第2基準ピンの中心とを結ぶ線分を搬出側検知線分とし、搬出側検知線分の中点を搬出側検知中点とし、第2検知ステップの検知結果に基づいて特定される、上下方向から見たときの搬入側第1基準ピンの中心と搬入側第2基準ピンの中心とを結ぶ線分を搬入側検知線分とし、搬入側検知線分の中点を搬入側検知中点とし、搬出部において搬出側第1基準ピンおよび搬出側第2基準ピンが設計上の位置に配置されていると仮定したときの、上下方向から見たときの搬出側第1基準ピンの中心と搬出側第2基準ピンの中心とを結ぶ線分を搬出側基準線分とし、搬出側基準線分の中点を搬出側基準中点とし、搬入部において搬入側第1基準ピンおよび搬入側第2基準ピンが設計上の位置に配置されていると仮定したときの、上下方向から見たときの搬入側第1基準ピンの中心と搬入側第2基準ピンの中心とを結ぶ線分を搬入側基準線分とし、搬入側基準線分の中点を搬入側基準中点とすると、少なくとも、上下方向から見たときの搬出側基準中点に対する搬出側検知中点のずれ量と、上下方向から見たときの搬出側基準線分に対する搬出側検知線分の傾きとを搬出側補正値として算出する第1補正値算出ステップと、少なくとも、上下方向から見たときの搬入側基準中点に対する搬入側検知中点のずれ量と、上下方向から見たときの搬入側基準線分に対する搬入側検知線分の傾きとを搬入側補正値として算出する第2補正値算出ステップを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の産業用ロボットの補正値算出方法では、第1補正値算出ステップにおいて、上下方向から見たときの搬出側基準中点に対する搬出側検知中点のずれ量と上下方向から見たときの搬出側基準線分に対する搬出側検知線分の傾きとを搬出側補正値として算出するとともに、第2補正置算出ステップにおいて、上下方向から見たときの搬入側基準中点に対する搬入側検知中点のずれ量と上下方向から見たときの搬入側基準線分に対する搬入側検知線分の傾きとを搬入側補正値として算出している。
【0010】
そのため、本発明では、上下方向から見たときの搬出側基準中点に対する搬出側検知中点のずれ量と、上下方向から見たときの搬出側基準線分に対する搬出側検知線分の傾きと、上下方向から見たときの搬入側基準中点に対する搬入側検知中点のずれ量と、上下方向から見たときの搬入側基準線分に対する搬入側検知線分の傾きとに基づいて、搬出部や搬入部においてハンドの位置や向きを補正することが可能になる。
【0011】
したがって、本発明では、搬出部や搬送部を構成する部品のばらつき等の影響で、搬出部において正規の位置に配置される第1搬送対象物と第2搬送対象物との水平方向のピッチと、搬入部において正規の位置に配置される第1搬送対象物と第2搬送対象物との水平方向のピッチとが異なっている場合に、たとえば、搬出部から搬入部まで搬送されて搬入部に配置された第1搬送対象物の正規の位置からの水平方向のずれ量と、搬出部から搬入部まで搬送されて搬入部に配置された第2搬送対象物の正規の位置からの水平方向のずれ量とを等しくすることが可能になる。
【0012】
その結果、本発明では、搬出部において正規の位置に配置される第1搬送対象物と第2搬送対象物との水平方向のピッチと、搬入部において正規の位置に配置される第1搬送対象物と第2搬送対象物との水平方向のピッチとが異なっている場合に、たとえば、搬入部に配置された第1搬送対象物の正規の位置からの水平方向のずれ量、および、搬入部に配置された第2搬送対象物の正規の位置からの水平方向のずれ量の両方のずれ量を小さくすることが可能になる。
【0013】
また、本発明では、第1補正値算出ステップにおいて、上下方向から見たときの搬出側基準線分に対する搬出側検知線分の傾きを搬出側補正値として算出するとともに、第2補正値算出ステップにおいて、上下方向から見たときの搬入側基準線分に対する搬入側検知線分の傾きとを搬入側補正値として算出しているため、上下方向から見たときの搬出側基準線分に対する搬出側検知線分の傾きと、上下方向から見たときの搬入側基準線分に対する搬入側検知線分の傾きとに基づいて、搬出部や搬入部においてハンドの向きを補正することが可能になる。したがって、本発明では、上下方向で重なっていない状態の2個の搬送対象物を一緒に搬送しても、ハンドの向きを適切に補正することが可能になる。
【0014】
本発明において、搬出側第1基準ピンは、上下方向から見たときに、搬出側第1配置位置の正規の位置に配置されたときの第1搬送対象物の中心と搬出側第1基準ピンの中心とが一致する箇所に配置され、搬出側第2基準ピンは、上下方向から見たときに、搬出側第2配置位置の正規の位置に配置されたときの第2搬送対象物の中心と搬出側第2基準ピンの中心とが一致する箇所に配置され、搬入側第1基準ピンは、上下方向から見たときに、搬入側第1配置位置の正規の位置に配置されたときの第1搬送対象物の中心と搬入側第1基準ピンの中心とが一致する箇所に配置され、搬入側第2基準ピンは、上下方向から見たときに、搬入側第2配置位置の正規の位置に配置されたときの第2搬送対象物の中心と搬入側第2基準ピンの中心とが一致する箇所に配置されていることが好ましい。このように構成すると、搬出側補正値や搬入側補正値に基づくハンドの位置や向きの補正を容易に行うことが可能になる。
【0015】
本発明において、たとえば、第1検知ステップでは、検知機構によって、搬出側第1基準ピンの上端の高さと搬出側第2基準ピンの上端の高さとを検知し、第2検知ステップでは、搬入側第1基準ピンの上端の高さと搬入側第2基準ピンの上端の高さとを検知し、第1補正値算出ステップでは、第1検知ステップで検知された搬出側第1基準ピンの上端の高さと搬出側第2基準ピンの上端の高さとに基づいて算出される搬出側検知中点の高さの、搬出側基準中点の設計上の高さに対するずれ量を搬出側補正値として算出し、第2補正値算出ステップでは、第2検知ステップで検知された搬入側第1基準ピンの上端の高さと搬入側第2基準ピンの上端の高さとに基づいて算出される搬入側検知中点の高さの、搬入側基準中点の設計上の高さに対するずれ量を搬入側補正値として算出する。この場合には、搬出部や搬入部において、搬出側補正値や搬入側補正値に基づくハンドの上下方向の位置の補正を行うことが可能になる。
【0016】
本発明の産業用ロボットは、たとえば、本発明の産業用ロボットの補正値算出方法で算出された補正値に基づいて産業用ロボットを制御するための産業用ロボットの制御方法によって制御される。この産業用ロボットの制御方法では、たとえば、搬出部および搬入部のいずれか一方では、ハンドの位置および向きを補正せず、搬出部および搬入部のいずれか他方では、搬出側補正値および搬入側補正値に基づいてハンドの位置および向きを補正する。
【0017】
この場合には、たとえば、搬出部または搬入部の設置位置や、搬出部または搬入部の構造や、産業用ロボットの構造等に起因する機械的な制約によって、搬出部および搬入部のいずれか一方においてハンドの位置や向きを適切に補正することができなくても、搬出部および搬入部のいずれか他方においてハンドの位置や向きを適切に補正することが可能になる。したがって、機械的な制約によって搬出部および搬入部のいずれか一方においてハンドの位置や向きを適切に補正することができなくても、搬出部から搬入部に搬送対象物を適切に搬送することが可能になる。
【0018】
本発明において、たとえば、産業用ロボットは、ハンドが回動可能に連結されるアームと、アームが回動可能に連結される本体部と、水平方向への直線的な移動が可能となるように本体部を保持する本体保持部と、本体保持部に対して本体部を移動させる水平移動機構と、上下方向を回動の軸方向として本体部に対してアームを回動させるとともにハンドが一定方向を向いた状態で本体部に対して水平方向に直線的に移動するようにアームを伸縮させるアーム駆動機構とを備える水平多関節型のロボットであり、本体保持部に対する本体部の移動方向を第1方向とし、第1方向と上下方向とに直交する方向を第2方向とすると、ハンドは、設計上、搬出部および搬入部のいずれか一方に対して第1方向に直線的に移動するとともに、搬出部および搬入部のいずれか他方に対して第2方向に直線的に移動する。
【0019】
この場合には、本体保持部に対する本体部の移動方向が第1方向となっており、設計上、ハンドが搬出部および搬入部のいずれか一方に対して第1方向に直線的に移動するため、産業用ロボットの構造等に起因する機械的な制約によって搬出部および搬入部のいずれか一方においてハンドの位置や向きを適切に補正することができないが、搬出部および搬入部のいずれか他方においてハンドの位置や向きを適切に補正することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の産業用ロボットの補正値算出方法によって補正値を算出すれば、搬出部において正規の位置に配置される第1搬送対象物と第2搬送対象物との水平方向のピッチと、搬入部において正規の位置に配置される第1搬送対象物と第2搬送対象物との水平方向のピッチとが異なっている場合に、たとえば、搬入部に配置された第1搬送対象物の正規の位置からのずれ量、および、搬入部に配置された第2搬送対象物の正規の位置からのずれ量の両方のずれ量を小さくすることが可能になる。また、本発明の産業用ロボットの補正値算出方法によって補正値を算出すれば、上下方向で重なっていない状態の2個の搬送対象物を一緒に搬送しても、ハンドの向きを適切に補正することが可能になる。
【0021】
また、本発明の産業用ロボットの制御方法で産業用ロボットを制御すれば、たとえば、搬出部または搬入部の設置位置や、搬出部または搬入部の構造や、産業用ロボットの構造等に起因する機械的な制約によって、搬出部および搬入部のいずれか一方においてハンドの位置や向きを適切に補正することができなくても、搬出部および搬入部のいずれか他方においてハンドの位置や向きを適切に補正することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係る産業用ロボットの構成を説明するための平面図である。
【
図2】
図1に示す産業用ロボットの構成を説明するための側面図である。
【
図3】
図1に示す産業用ロボットの構成を説明するためのブロック図である。
【
図4】
図1に示すハンドの位置および向きを補正するための補正値の算出方法を説明するための図である。
【
図5】
図1に示すハンドの位置および向きを補正するための補正値の算出方法を説明するための図である。
【
図6】
図1に示すハンドの補正値を算出するときに実行される第1検知ステップを説明するための図である。
【
図7】
図1に示す産業用ロボットの制御方法を説明するための図である。
【
図8】
図1に示す産業用ロボットの制御方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
(産業用ロボットの構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る産業用ロボット1の構成を説明するための平面図である。
図2は、
図1に示す産業用ロボット1の構成を説明するための側面図である。
図3は、
図1に示す産業用ロボット1の構成を説明するためのブロック図である。
【0025】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、搬送対象物である半導体ウエハ2(以下、「ウエハ2」とする。)を搬送するためのロボットである。具体的には、ロボット1は、水平多関節型のロボットである。ウエハ2は、薄い円板状に形成されている。ロボット1は、半導体製造システム3に組み込まれて使用される。半導体製造システム3は、ウエハ2に対して所定の処理を行う複数のウエハ処理装置4と、処理前または処理後のウエハ2が一時的に収容されるウエハ収容部(バッファ)5とを備えている。
図1では、2個のウエハ処理装置4が図示されている。
【0026】
ロボット1は、ウエハ収容部5とウエハ処理装置4との間でウエハ2を搬送する。本形態では、ロボット1は、ウエハ収容部5からウエハ処理装置4にウエハ2を搬送する。ウエハ収容部5には、ウエハ処理装置4で処理される前のウエハ2が収容されている。ウエハ処理装置4およびウエハ収容部5には、上下方向(鉛直方向)で重なっていない状態の2枚(2個)のウエハ2が配置可能になっている。すなわち、ウエハ処理装置4およびウエハ収容部5には、水平方向で隣り合う2枚のウエハ2が配置可能になっている。ウエハ収容部5およびウエハ処理装置4は、たとえば、ウエハ2を下側から支持する複数の支持ピンを備えており、ウエハ2は、複数の支持ピンに載置される。本形態のウエハ収容部5は、ウエハ2が搬出される搬出部であり、ウエハ処理装置4は、ウエハ2が搬入される搬入部である。
【0027】
ロボット1は、ウエハ2が搭載されるハンド7、8と、ハンド7、8が連結されるアーム9と、アーム9が連結される本体部10と、水平方向への直線的な移動が可能となるように本体部10を保持する本体保持部11と、ロボット1を制御するための制御部12とを備えている。本形態のロボット1は、2個のハンド7、8を備えている。ハンド7、8は、アーム9に回動可能に連結されており、上下方向を回動の軸方向としてアーム9に対して回動可能となっている。アーム9は、本体部10に回動可能に連結されており、上下方向を回動の軸方向として本体部10に対して回動可能となっている。本形態のハンド7は第1ハンドであり、ハンド8は第2ハンドである。なお、
図2では、本体保持部11の図示を省略している。
【0028】
アーム9は、ハンド7が回動可能に連結される先端側アーム部15と、ハンド8が回動可能に連結される先端側アーム部16と、先端側アーム部15、16が回動可能に連結されるとともに本体部10に回動可能に連結される共通アーム部17とを備えている。本形態のアーム9は、先端側アーム部15、16と共通アーム部17とによって構成されている。先端側アーム部15、16は、上下方向を回動の軸方向として共通アーム部17に対して回動可能となっている。本形態の先端側アーム部15は第1先端側アーム部であり、先端側アーム部16は第2先端側アーム部である。
【0029】
先端側アーム部15、16は、上下方向から見たときの形状が細長い長円形状をなすとともに上下方向の厚さが比較的薄いブロック状に形成されている。共通アーム部17は、上下方向から見たときの形状が二等辺三角形状をなすとともに上下方向の厚さが比較的薄いブロック状に形成されている。共通アーム部17は、本体部10よりも上側に配置されている。先端側アーム部15、16は、共通アーム部17よりも上側に配置されている。先端側アーム部16は、先端側アーム部15よりも上側に配置されている。ハンド7は、先端側アーム部15の先端側に回動可能に連結されている。ハンド8は、先端側アーム部16の先端側に回動可能に連結されている。
【0030】
先端側アーム部15、16の基端側は、共通アーム部17に回動可能に連結されている。具体的には、先端側アーム部15の基端側は、上下方向から見たときの形状が二等辺三角形状をなす共通アーム部17の、一方の斜辺と底辺とが交わる角部の近傍に回動可能に連結され、先端側アーム部16の基端側は、共通アーム部17の、他方の斜辺と底辺とが交わる角部の近傍に回動可能に連結されている。共通アーム部17は、本体部10に回動可能に連結されている。具体的には、二等辺三角形状をなす共通アーム部17の、2個の斜辺が交わる角部を頂角部とすると、上下方向から見たときに、共通アーム部17の、中心部よりも若干頂角部に近い部分が本体部10に回動可能に連結されている。
【0031】
ハンド7は、ハンド8よりも下側に配置されている。先端側アーム部15は、ハンド7よりも下側に配置されている。先端側アーム部16は、ハンド8よりも上側に配置されている。ハンド7、8には、上下方向で重なっていない状態の2枚のウエハ2が搭載される。ロボット1は、上下方向で重なっていない状態の2枚のウエハ2をウエハ収容部5からウエハ処理装置4に一緒に(同時に)搬送する。
【0032】
ハンド7、8は、1枚のウエハ2が搭載される搭載部20と、1枚のウエハ2が搭載される搭載部21と、搭載部20の基端と搭載部21の基端とが固定されるハンド基部22とを備えている。本形態のハンド7、8は、搭載部20、21とハンド基部22とによって構成されている。ハンド基部22は、上下方向から見たときの形状が略二等辺三角形状をなすとともに上下方向の厚さが薄いブロック状に形成されている。ハンド基部22は、先端側アーム部15、16の先端側に回動可能に連結されている。本形態の搭載部20は第1搭載部であり、搭載部21は第2搭載部である。
【0033】
搭載部20、21は、薄板状の部材である。ウエハ2は、搭載部20、21の先端側に搭載される。搭載部20、21の先端側は、略E形状に形成されている。搭載部20、21の先端側の中心部には、搭載部20、21に搭載されたウエハ2を吸着するためのウエハ吸着部23が設置されている。搭載部20と搭載部21とは、水平方向に間隔をあけた状態で配置されている。また、搭載部20と搭載部21とは、ハンド7、8の長手方向(基端から先端に向かう方向)に直交する方向におけるハンド基部22の中心線に対して対称に配置されている。
【0034】
本形態では、本体部10に対する共通アーム部17の回動中心と共通アーム部17に対する先端側アーム部15の回動中心との水平方向の距離と、本体部10に対する共通アーム部17の回動中心と共通アーム部17に対する先端側アーム部16の回動中心との水平方向の距離と、共通アーム部17に対する先端側アーム部15の回動中心と先端側アーム部15に対するハンド7の回動中心との水平方向の距離と、共通アーム部17に対する先端側アーム部16の回動中心と先端側アーム部16に対するハンド8の回動中心との水平方向の距離とが等しくなっている。
【0035】
本体部10は、筐体25と、筐体25に対して昇降可能な昇降体26とを備えている。共通アーム部17は、昇降体26の上端部に回動可能に連結されている。上述のように、本体部10は、本体保持部11に対して水平方向に直線的に移動可能となっている。本体保持部11は、本体部10の移動方向に細長いブロック状に形成されている。以下の説明では、本体保持部11に対する本体部10の移動方向(
図1等のX方向)を「左右方向」とし、上下方向と左右方向とに直交する
図1等のY方向を「前後方向」とする。本形態の左右方向(X方向)は第1方向であり、前後方向(Y方向)は第2方向である。
【0036】
本体保持部11は、本体部10の後ろ側に配置されている。ウエハ収容部5は、本体部10および本体保持部11よりも左側に配置されている。2個のウエハ処理装置4は、本体部10および本体保持部11よりも前側に配置されている。2個のウエハ処理装置4は、左右方向で隣接している。ウエハ収容部5に配置される2枚のウエハ2は、前後方向で隣接し、ウエハ処理装置4に配置される2枚のウエハ2は、左右方向で隣接している。
【0037】
ロボット1は、上下方向を回動の軸方向として共通アーム部17に対して先端側アーム部15を回動させるとともに先端側アーム部15に対してハンド7を回動させる先端側アーム部駆動機構28と、上下方向を回動の軸方向として共通アーム部17に対して先端側アーム部16を回動させるとともに先端側アーム部16に対してハンド8を回動させる先端側アーム部駆動機構29と、上下方向を回動の軸方向として本体部10に対して共通アーム部17を回動させる共通アーム部駆動機構30と、筐体25に対して昇降体26を昇降させる昇降機構31と、本体保持部11に対して本体部10を左右方向に移動させる水平移動機構32とを備えている。
【0038】
先端側アーム部駆動機構28は、モータ33と、モータ33の動力を先端側アーム部15およびハンド7に伝達するための動力伝達機構と、モータ33の回転位置を検知するためのエンコーダ38とを備えている。先端側アーム部駆動機構29は、モータ34と、モータ34の動力を先端側アーム部16およびハンド8に伝達するための動力伝達機構と、モータ34の回転位置を検知するためのエンコーダ39とを備えている。共通アーム部駆動機構30は、モータ35と、モータ35の動力を共通アーム部17に伝達するための動力伝達機構と、モータ35の回転位置を検知するためのエンコーダ40とを備えている。
【0039】
昇降機構31は、モータ36と、モータ36の動力を昇降体26に伝達するための動力伝達機構と、モータ36の回転位置を検知するためのエンコーダ41とを備えている。水平移動機構32は、モータ37と、モータ37の動力を本体部10に伝達するための動力伝達機構と、モータ37の回転位置を検知するためのエンコーダ42とを備えている。モータ33~37およびエンコーダ38~42は、制御部12に電気的に接続されている。
【0040】
アーム9は、本体部10と共通アーム部17との連結部である関節部からハンド7、8の先端が離れるように伸びる位置と、ハンド7、8の先端がこの関節部に近づくように縮む位置との間で本体部10に対して伸縮可能となっている。本形態では、アーム9の、先端側アーム部15側の部分が伸縮するときには、アーム9の、先端側アーム部16側の部分は縮んだ状態で停止している。また、アーム9の、先端側アーム部16側の部分が伸縮するときには、アーム9の、先端側アーム部15側の部分は縮んだ状態で停止している(
図1の二点鎖線参照)。
【0041】
本体部10に対してアーム9が伸縮するときには、設計上、ハンド7、8は、本体部10に対して一定方向を向いた状態で水平方向に直線的に移動する。本形態では、先端側アーム部駆動機構28と先端側アーム部駆動機構29と共通アーム部駆動機構30とによって、上下方向を回動の軸方向として本体部10に対してアーム9を回動させるとともにハンド7、8が一定方向を向いた状態で本体部10に対して水平方向に直線的に移動するようにアーム9を伸縮させるアーム駆動機構46が構成されている。
【0042】
ハンド7がウエハ収容部5からウエハ2を搬出するときには、ハンド7は、設計上、ウエハ収容部5に対して左右方向に直線的に移動する。同様に、ハンド8がウエハ収容部5からウエハ2を搬出するときには、ハンド8は、設計上、ウエハ収容部5に対して左右方向に直線的に移動する。ハンド7がウエハ処理装置4にウエハ2を搬入するときには、ハンド7は、設計上、ウエハ処理装置4に対して前後方向に直線的に移動する。同様に、ハンド8がウエハ処理装置4からウエハ2を搬出するときには、ハンド8は、設計上、ウエハ処理装置4に対して前後方向に直線的に移動する。
【0043】
(産業用ロボットの補正値算出方法)
図4、
図5は、
図1に示すハンド7、8の位置および向きを補正するための補正値の算出方法を説明するための図である。
図6は、
図1に示すハンド7、8の補正値を算出するときに実行される第1検知ステップを説明するための図である。
【0044】
半導体製造システム3では、たとえば、ウエハ収容部5を構成する部品のばらつきやウエハ収容部5の組立誤差等の影響で、ウエハ収容部5において正規の位置に配置されるウエハ2の位置が設計上の位置からずれることがある。たとえば、
図4(A)の二点鎖線で示す位置が、ウエハ収容部5に配置されるウエハ2の設計上の位置であるのに対して、ウエハ収容部5において正規の位置に配置されるウエハ2の位置が
図4(A)の実線で示す位置になることがある。
【0045】
同様に、たとえば、ウエハ処理装置4を構成する部品のばらつき等の影響で、ウエハ処理装置4において正規の位置に配置されるウエハ2の位置が設計上の位置からずれることがある。たとえば、
図5(A)の二点鎖線で示す位置が、ウエハ処理装置4に配置されるウエハ2の設計上の位置であるのに対して、ウエハ処理装置4において正規の位置に配置されるウエハ2の位置が
図5(A)の実線で示す位置になることがある。
【0046】
本形態では、ウエハ処理装置4においてハンド7、8の位置および向きを補正するための補正値が予め算出されて制御部12に記憶されている。具体的には、ウエハ収容部5において正規の位置に配置されるウエハ2の、設計上の位置からのずれに基づいてハンド7、8の位置および向きを補正するための搬出側補正値と、ウエハ処理装置4において正規の位置に配置されるウエハ2の、設計上の位置からのずれに基づいてハンド7、8の位置および向きを補正するための搬入側補正値とが予め算出されて制御部12に記憶されている。
【0047】
また、本形態では、制御部12に記憶される搬出側補正値と搬入側補正値とに基づいて、ロボット1がウエハ収容部5からウエハ処理装置4にウエハ2を搬送するときに、ハンド7、8の位置および向きが補正される。制御部12は、搬出側補正値および搬入側補正値を算出する補正値算出部49と、搬出側補正値および搬入側補正値を記憶する補正値記憶部50とを備えている(
図3参照)。
【0048】
以下、搬出側補正値および搬入側補正値の算出方法を説明する。なお、ハンド7の位置および向きを補正するための補正値の算出方法とハンド8の位置および向きを補正するための補正値の算出方法とは同じであるため、以下では、ハンド7の位置および向きを補正するための補正値の算出方法を説明する。また、
図4~
図6等では、説明の便宜上、ウエハ収容部5において正規の位置に配置されるウエハ2の位置を設計上の位置から大きくずらすとともに、ウエハ処理装置4において正規の位置に配置されるウエハ2の位置を設計上の位置から大きくずらしているが、実際には、ウエハ2の位置がこれほど大きくずれることはない。
【0049】
以下の説明では、搭載部20に搭載されるウエハ2と搭載部21に搭載されるウエハ2とを区別して表す場合には、搭載部20に搭載されるウエハ2を「ウエハ2A」とし、搭載部21に搭載されるウエハ2を「ウエハ2B」とする。本形態のウエハ2Aは第1搬送対象物であり、ウエハ2Bは第2搬送対象物である。また、以下の説明では、ウエハ収容部5の、ウエハ2Aが配置される位置を第1配置位置55aとし、ウエハ収容部5の、ウエハ2Bが配置される位置を第2配置位置55bとし、ウエハ処理装置4の、ウエハ2Aが配置される位置を第1配置位置54aとし、ウエハ処理装置4の、ウエハ2Bが配置される位置を第2配置位置54bとする。本形態の第1配置位置55aは搬出側第1配置位置であり、第2配置位置55bは搬出側第2配置位置であり、第1配置位置54aは搬入側第1配置位置であり、第2配置位置54bは搬入側第2配置位置である。
【0050】
搬出側補正値および搬入側補正値を算出するときには、検知用治具60と被検知用治具61とを使用する。被検知用治具61は、円柱状の基準ピン62を備えている。被検知用治具61は、補正値の算出時に第1配置位置54a、55aおよび第2配置位置54b、55bに載置されて使用される。第1配置位置54a、55aおよび第2配置位置54b、55bに被検知用治具61が配置された状態では、基準ピン62の軸方向は上下方向と一致している。
【0051】
ウエハ収容部5では、基準ピン62は、第1配置位置55aの所定の箇所と第2配置位置55bの所定の箇所とに配置される。以下の説明では、第1配置位置55aに配置される基準ピン62を「第1基準ピン62A」とし、第2配置位置55bに配置される基準ピン62を「第2基準ピン62B」とする。本形態の第1基準ピン62Aは搬出側第1基準ピンであり、第2基準ピン62Bは搬出側第2基準ピンである。
【0052】
ウエハ処理装置4では、基準ピン62は、第1配置位置54aの所定の箇所と第2配置位置54bの所定の箇所とに配置される。以下の説明では、第1配置位置54aに配置される基準ピン62を「第1基準ピン62C」とし、第2配置位置54bに配置される基準ピン62を「第2基準ピン62D」とする。本形態の第1基準ピン62Cは搬入側第1基準ピンであり、第2基準ピン62Dは搬入側第2基準ピンである。
【0053】
第1基準ピン62Aは、上下方向から見たときに、第1配置位置55aの正規の位置に配置されたときのウエハ2Aの中心C1(
図4(A)参照)と第1基準ピン62Aの中心C2(
図4(B)参照)とが一致する箇所に配置される。第2基準ピン62Bは、上下方向から見たときに、第2配置位置55bの正規の位置に配置されたときのウエハ2Bの中心C3(
図4(A)参照)と第2基準ピン62Bの中心C4(
図4(B)参照)とが一致する箇所に配置される。
【0054】
第1基準ピン62Cは、上下方向から見たときに、第1配置位置54aの正規の位置に配置されたときのウエハ2Aの中心C5(
図5(A)参照)と第1基準ピン62Cの中心C6(
図5(B)参照)とが一致する箇所に配置される。第2基準ピン62Dは、上下方向から見たときに、第2配置位置54bの正規の位置に配置されたときのウエハ2Bの中心C7(
図5(A)参照)と第2基準ピン62Dの中心C8(
図5(B)参照)とが一致する箇所に配置される。
【0055】
検知用治具60は、補正値の算出時に搭載部20、21に載置されて使用される。検知用治具60は、2個の検知機構63、64を備えている。検知機構63、64は、たとえば、発光素子を有する発光部と、受光素子を有する受光部とを備える透過型の光学式センサである。搬出側補正値および搬入側補正値を算出するときには、検知機構63、64は、制御部12に電気的に接続される。
【0056】
搭載部20、21の正規の位置に検知用治具60が配置されているときには、検知機構63の光軸は、水平方向と平行になっているとともに、ハンド7の長手方向に直交する方向と平行になっている(
図6参照)。また、搭載部20、21の正規の位置に検知用治具60が配置されているときには、検知機構64の光軸は、水平方向と平行になっているとともに、ハンド7の長手方向と検知機構63の光軸の方向とに対して傾いた方向と平行になっている(
図6参照)。
【0057】
搬出側補正値を算出するときには、まず、第1基準ピン62Aを第1配置位置55aに配置するとともに、第2基準ピン62Bを第2配置位置55bに配置する。また、検知用治具60をハンド7に取り付ける。すなわち、搭載部20、21に検知機構63、64を取り付ける。その後、
図6に示すように、ハンド7を左右方向に移動させて、搭載部20、21に取り付けられる検知機構63、64によって、第1基準ピン62Aの水平方向の位置と第2基準ピン62Bの水平方向の位置とを検知する(第1検知ステップ)。
【0058】
第1検知ステップにおいて、制御部12は、搭載部20に取り付けられる検知機構63の検知結果に基づいて第1基準ピン62Aの左右方向の位置を検知し、搭載部21に取り付けられる検知機構63の検知結果に基づいて第2基準ピン62Bの左右方向の位置を検知する。また、第1検知ステップにおいて、制御部12は、搭載部20に取り付けられる検知機構63の検知結果と検知機構64の検知結果とに基づいて第1基準ピン62Aの前後方向の位置を検知し、搭載部21に取り付けられる検知機構63の検知結果と検知機構64の検知結果とに基づいて第2基準ピン62Bの前後方向の位置を検知する。第1検知ステップは、所定の制御プログラムに基づいて自動で実行される。
【0059】
同様に、搬入側補正値を算出するときには、まず、第1基準ピン62Cを第1配置位置54aに配置するとともに、第2基準ピン62Dを第2配置位置54bに配置する。また、検知用治具60をハンド7に取り付ける。その後、ハンド7を前後方向に移動させて、搭載部20、21に取り付けられる検知機構63、64によって、第1基準ピン62Cの水平方向の位置と第2基準ピン62Dの水平方向の位置とを検知する(第2検知ステップ)。
【0060】
第2検知ステップにおいて、制御部12は、搭載部20に取り付けられる検知機構63の検知結果に基づいて第1基準ピン62Cの前後方向の位置を検知し、搭載部21に取り付けられる検知機構63の検知結果に基づいて第2基準ピン62Dの前後方向の位置を検知する。また、第2検知ステップにおいて、制御部12は、搭載部20に取り付けられる検知機構63の検知結果と検知機構64の検知結果とに基づいて第1基準ピン62Cの左右方向の位置を検知し、搭載部21に取り付けられる検知機構63の検知結果と検知機構64の検知結果とに基づいて第2基準ピン62Dの左右方向の位置を検知する。第2検知ステップは、所定の制御プログラムに基づいて自動で実行される。
【0061】
以下、第1検知ステップの検知結果に基づいて特定される、上下方向から見たときの第1基準ピン62Aの中心C2と第2基準ピン62Bの中心C4とを結ぶ線分を搬出側検知線分L1とし、搬出側検知線分L1の中点を搬出側検知中点M1とする(
図4(B)参照)。また、以下では、
図4(B)の二点鎖線で示すように、ウエハ収容部5において第1基準ピン62Aおよび第2基準ピン62Bが設計上の位置に配置されていると仮定したときの(すなわち、ウエハ収容部5において正規の位置に配置されるウエハ2の位置が設計上の位置と一致していると仮定したときの)、上下方向から見たときの第1基準ピン62Aの中心C2と第2基準ピン62Bの中心C4とを結ぶ線分を搬出側基準線分L11とし、搬出側基準線分L11の中点を搬出側基準中点M11とする。
【0062】
また、以下では、第2検知ステップの検知結果に基づいて特定される、上下方向から見たときの第1基準ピン62Cの中心C6と第2基準ピン62Dの中心C8とを結ぶ線分を搬入側検知線分L2とし、搬入側検知線分L2の中点を搬入側検知中点M2とする(
図5(B)参照)。また、以下の説明では、
図5(B)の二点鎖線で示すように、ウエハ処理装置4において第1基準ピン62Cおよび第2基準ピン62Dが設計上の位置に配置されていると仮定したときの(すなわち、ウエハ処理装置4において正規の位置に配置されるウエハ2の位置が設計上の位置と一致していると仮定したときの)、上下方向から見たときの第1基準ピン62Cの中心C6と第2基準ピン62Dの中心C8とを結ぶ線分を搬入側基準線分L21とし、搬入側基準線分L21の中点を搬入側基準中点M21とする。
【0063】
第1検知ステップが実行されると、制御部12は、上下方向から見たときの搬出側基準中点M11に対する搬出側検知中点M1のずれ量(すなわち、搬出側基準中点M11に対する搬出側検知中点M1の水平方向のずれ量)と、上下方向から見たときの搬出側基準線分L11に対する搬出側検知線分L1の傾きΔθ1とを搬出側補正値として算出する(第1補正値算出ステップ)。すなわち、上下方向から見たときに、第1配置位置55aの正規の位置に配置されるウエハ2Aの中心C1と第2配置位置55bの正規の位置に配置されるウエハ2Bの中心C3とを結ぶ線分を第1線分とすると、搬出側補正値には、搬出側検知中点M1に相当する第1線分の中点の、水平方向における設計上の位置からのずれ量と、上下方向から見たときの第1線分の、設計上の位置からの傾きとが含まれている。
【0064】
同様に、第2検知ステップが実行されると、制御部12は、上下方向から見たときの搬入側基準中点M21に対する搬入側検知中点M2のずれ量(すなわち、搬入側基準中点M21に対する搬入側検知中点M2の水平方向のずれ量)と、上下方向から見たときの搬入側基準線分L21に対する搬入側検知線分L2の傾きΔθ2とを搬入側補正値として算出する(第2補正値算出ステップ)。すなわち、上下方向から見たときに、第1配置位置54aの正規の位置に配置されるウエハ2Aの中心C5と第2配置位置54bの正規の位置に配置されるウエハ2Bの中心C7とを結ぶ線分を第2線分とすると、搬入側補正値には、搬入側検知中点M2に相当する第2線分の中点の、水平方向における設計上の位置からのずれ量と、上下方向から見たときの第2線分の、設計上の位置からの傾きとが含まれている。
【0065】
(産業用ロボットの制御方法)
図7、
図8は、
図1に示すロボット1の制御方法を説明するための図である。
【0066】
制御部12は、ロボット1がウエハ収容部5からウエハ処理装置4にウエハ2を搬送するときに、制御部12に記憶される搬出側補正値と搬入側補正値とに基づいてハンド7、8の位置および向きを補正する。具体的には、制御部12は、ウエハ収容部5では、ハンド7、8の位置および向きを補正せずに、ウエハ処理装置4において、搬出側補正値および搬入側補正値に基づいてハンド7、8の位置および向きを補正する。すなわち、ウエハ収容部5からウエハ2を搬出するときには、制御部12は、設計上の向きを向いている状態のハンド7、8をウエハ収容部5における設計上のウエハ2の搭載位置まで移動させて搭載部20、21にウエハ2を搭載する(
図7参照)。なお、本形態では、ウエハ収容部5において、ウエハ2は正規の位置に配置されている。
【0067】
また、ウエハ処理装置4にウエハ2を搬入するときには、制御部12は、搬出側補正値および搬入側補正値に基づいてハンド7、8の位置および向きを補正する。具体的には、搬出側基準中点M11に対する搬出側検知中点M1の左右方向のずれ量をΔX1とし、搬出側基準中点M11に対する搬出側検知中点M1の前後方向のずれ量をΔY1とし、搬入側基準中点M21に対する搬入側検知中点M2の左右方向のずれ量をΔX2とし、搬入側基準中点M21に対する搬入側検知中点M2の前後方向のずれ量をΔY2とすると、制御部12は、ウエハ処理装置4にウエハ2を搬入するときに、ウエハ処理装置4における設計上のウエハ2の搭載位置からΔX1+ΔX2の分だけ左右方向でハンド7、8の位置を補正し、ΔY1+ΔY2の分だけ前後方向でハンド7、8の位置を補正するとともに、ウエハ処理装置4における設計上のハンド7、8の向きからΔθ1+Δθ2の分だけハンド7、8の向きを補正する。
【0068】
ウエハ収容部5でハンド7、8に搭載された2枚のウエハ2の中心C11を結んだ線分を線分L50とし、線分L50の中点を中点M50とすると(
図8参照)、ウエハ処理装置4においてハンド7、8の位置および向きが補正されると、
図8に示すように、上下方向から見たときに、搬入側検知中点M2と中点M50とが一致し、搬入側検知線分L2と線分L50とが重なる。
【0069】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、第1補正値算出ステップにおいて、搬出側基準中点M11に対する搬出側検知中点M1の水平方向のずれ量と上下方向から見たときの搬出側基準線分L11に対する搬出側検知線分L1の傾きΔθ1とを搬出側補正値として算出するとともに、第2補正置算出ステップにおいて、搬入側基準中点M21に対する搬入側検知中点M2の水平方向のずれ量と上下方向から見たときの搬入側基準線分L21に対する搬入側検知線分L2の傾きΔθ2とを搬入側補正値として算出している。また、本形態では、搬出側基準中点M11に対する搬出側検知中点M1の水平方向のずれ量と、搬入側基準中点M21に対する搬入側検知中点M2の水平方向のずれ量と、傾きΔθ1、Δθ2とに基づいて、ウエハ処理装置4でハンド7、8の位置および向きを補正している。
【0070】
そのため、本形態では、ウエハ収容部5やウエハ処理装置4を構成する部品のばらつき等の影響で、たとえば、ウエハ収容部5において正規の位置に配置されるウエハ2Aとウエハ2Bとの水平方向のピッチP1(
図4(A)参照)と、ウエハ処理装置4において正規の位置に配置されるウエハ2Aとウエハ2Bとの水平方向のピッチP2(
図5(A)参照)とが異なっていても、
図8に示すように、ウエハ処理装置4に搬入されて配置されたウエハ2Aの正規の位置からの水平方向のずれ量ΔS1と、ウエハ2Bの正規の位置からの水平方向のずれ量ΔS2とを等しくすることが可能になる。
【0071】
したがって、本形態では、たとえば、ピッチP1とピッチP2とが異なっていても、ウエハ処理装置4に配置されたウエハ2Aの正規の位置からの水平方向のずれ量ΔS1、および、ウエハ処理装置4に配置されたウエハ2Bの正規の位置からの水平方向のずれ量ΔS2の両方のずれ量を小さくすることが可能になる。また、本形態では、傾きΔθ1と傾きΔθ2とに基づいて、ウエハ処理装置4でハンド7、8の向きを補正しているため、上下方向で重なっていない状態の2枚のウエハ2を一緒に搬送しても、ハンド7、8の向きを適切に補正することが可能になる。
【0072】
本形態では、第1基準ピン62Aは、上下方向から見たときに、第1配置位置55aの正規の位置に配置されたときのウエハ2Aの中心C1と第1基準ピン62Aの中心C2とが一致する箇所に配置され、第2基準ピン62Bは、上下方向から見たときに、第2配置位置55bの正規の位置に配置されたときのウエハ2Bの中心C3と第2基準ピン62Bの中心C4とが一致する箇所に配置され、第1基準ピン62Cは、上下方向から見たときに、第1配置位置54aの正規の位置に配置されたときのウエハ2Aの中心C5と第1基準ピン62Cの中心C6とが一致する箇所に配置され、第2基準ピン62Dは、上下方向から見たときに、第2配置位置54bの正規の位置に配置されたときのウエハ2Bの中心C7と第2基準ピン62Dの中心C8とが一致する箇所に配置されている。そのため、本形態では、搬出側補正値や搬入側補正値に基づくハンド7、8の位置および向きの補正を容易に行うことが可能になる。
【0073】
本形態では、本体保持部11に対する本体部10の移動方向が左右方向となっており、設計上、ハンド7、8がウエハ収容部5に対して左右方向に直線的に移動するため、ロボット1の構造等に起因する機械的な制約によって、ウエハ収容部5においてハンド7、8の位置や向きを適切に補正することができないが、制御部12は、ウエハ収容部5においてハンド7、8の位置および向きを補正せずに、ウエハ処理装置4において、搬出側補正値および搬入側補正値に基づいてハンド7、8の位置および向きを補正している。
【0074】
そのため、本形態では、機械的な制約によってウエハ収容部5においてハンド7、8の位置や向きを適切に補正することができなくても、ウエハ処理装置4においてハンド7、8の位置および向きを適切に補正することが可能になる。したがって、本形態では、機械的な制約によってウエハ収容部5においてハンド7、8の位置や向きを適切に補正することができなくても、ウエハ収容部5からウエハ処理装置4にウエハ2を適切に搬送することが可能になる。
【0075】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0076】
上述した形態において、第1検知ステップでハンド7を上下動(昇降)させて、搭載部20、21に取り付けられる検知機構63、64によって、第1基準ピン62Aの上端の高さと第2基準ピン62Bの上端の高さとを検知し、第2検知ステップでハンド7を上下動させて、搭載部20、21に取り付けられる検知機構63、64によって、第1基準ピン62Cの上端の高さと第2基準ピン62Dの上端の高さとを検知しても良い。
【0077】
この場合には、制御部12は、第1補正値算出ステップにおいて、第1検知ステップで検知された第1基準ピン62Aの上端の高さと第2基準ピン62Bの上端の高さとに基づいて算出される搬出側検知中点M1の高さの、搬出側基準中点M11の設計上の高さに対するずれ量を搬出側補正値として算出し、第2補正値算出ステップにおいて、第2検知ステップで検知された第1基準ピン62Cの上端の高さと第2基準ピン62Dの上端の高さとに基づいて算出される搬入側検知中点M2の高さの、搬入側基準中点M21の設計上の高さに対するずれ量を搬入側補正値として算出する。この場合には、ウエハ収容部5やウエハ処理装置4において、搬出側補正値や搬入側補正値に基づくハンド7、8の上下方向の位置の補正を行うことが可能になる。
【0078】
上述した形態において、上下方向から見たときに、第1配置位置55aに配置される第1基準ピン62Aの中心C2が、第1配置位置55aの正規の位置に配置されたときのウエハ2Aの中心C1からずれていても良いし、第2配置位置55bに配置される第2基準ピン62Bの中心C4が、第2配置位置55bの正規の位置に配置されたときのウエハ2Bの中心C3からずれていても良い。同様に、上下方向から見たときに、第1配置位置54aに配置される第1基準ピン62Cの中心C6が、第1配置位置54aの正規の位置に配置されたときのウエハ2Aの中心C5からずれていても良いし、第2配置位置54bに配置される第2基準ピン62Dの中心C8が、第2配置位置54bの正規の位置に配置されたときのウエハ2Bの中心C7からずれていても良い。
【0079】
上述した形態において、ロボット1は、ウエハ処理装置4からウエハ収容部5にウエハ2を搬送しても良い。この場合には、ウエハ処理装置4が搬出部となり、ウエハ収容部5が搬入部となる。また、この場合には、ウエハ処理装置4からウエハ収容部5にウエハ2を搬送するときに、搬出部であるウエハ処理装置4において、搬出側補正値および搬入側補正値に基づいてハンド7、8の位置および向きを補正し、搬入部であるウエハ収容部5では、ハンド7、8の位置および向きを補正しない。
【0080】
上述した形態において、機械的な制約がなくて、ウエハ収容部5においてハンド7、8の位置および向きを適切に補正することができるのであれば、ウエハ収容部5からウエハ処理装置4にウエハ2を搬送するときに、ウエハ収容部5において、搬出側補正値および搬入側補正値に基づいてハンド7、8の位置および向きを補正し、ウエハ処理装置4では、ハンド7、8の位置および向きを補正しなくても良い。また、機械的な制約がなくて、ウエハ収容部5においてハンド7、8の位置および向きを適切に補正することができるのであれば、ウエハ収容部5において、搬出側補正値に基づいてハンド7、8の位置および向きを補正するとともに、ウエハ処理装置4において、搬入側補正値に基づいてハンド7、8の位置および向きを補正しても良い。
【0081】
上述した形態において、検知機構63、64は、搭載部20、21に直接取り付けられていても良い。この場合には、検知用治具60が不要になる。また、上述した形態において、ウエハ収容部5とウエハ処理装置4とが左右方向で隣接していても良い。この場合には、ハンド7、8は、設計上、ウエハ収容部5に対して前後方向に直線的に移動する。さらに、上述した形態において、共通アーム部17は、V形状に形成されていても良いし、長円形状に形成されていても良い。また、上述した形態において、第1検知ステップおよび第2検知ステップは、オペレータによって手動で実行されても良い。
【0082】
上述した形態において、ロボット1は、たとえば、特開2021-167045号公報に開示される産業用ロボットのように、2本の多関節アームを備えていても良い。また、上述した形態において、ロボット1が備えるハンドの数は1個であっても良い。この場合には、ロボット1は1本の多関節アームを備えている。さらに、上述した形態において、ロボット1は、たとえば、特開2019-25585号公報に開示される産業用ロボットように、水平多関節型以外の産業用ロボットであっても良い。また、上述した形態において、ロボット1は、ウエハ2以外の搬送対象物を搬送しても良い。この場合には、搬送対象物は円板状に形成されていなくても良い。
【0083】
(本技術の構成)
なお、本技術は以下のような構成を取ることが可能である。
(1)上下方向で重なっていない状態の2個の搬送対象物が搭載されるハンドを備える産業用ロボットの前記ハンドの位置および向きを補正するための補正値を算出する産業用ロボットの補正値算出方法であって、
前記産業用ロボットは、上下方向で重なっていない状態の2個の前記搬送対象物が配置可能な搬出部から上下方向で重なっていない状態の2個の前記搬送対象物が配置可能な搬入部に2個の前記搬送対象物を一緒に搬送し、
前記ハンドは、1個の前記搬送対象物が搭載される第1搭載部と、1個の前記搬送対象物が搭載される第2搭載部とを備え、
前記第1搭載部に搭載される前記搬送対象物を第1搬送対象物とし、前記第2搭載部に搭載される前記搬送対象物を第2搬送対象物とし、前記搬出部の、前記第1搬送対象物が配置される位置を搬出側第1配置位置とし、前記搬出部の、前記第2搬送対象物が配置される位置を搬出側第2配置位置とし、前記搬入部の、前記第1搬送対象物が配置される位置を搬入側第1配置位置とし、前記搬入部の、前記第2搬送対象物が配置される位置を搬入側第2配置位置とすると、
前記産業用ロボットの補正値算出方法は、
前記第1搭載部および前記第2搭載部に取り付けられる検知機構によって、前記搬出側第1配置位置の所定の箇所に配置される搬出側第1基準ピンの少なくとも水平方向の位置と、前記搬出側第2配置位置の所定の箇所に配置される搬出側第2基準ピンの少なくとも水平方向の位置とを検知する第1検知ステップと、
前記検知機構によって、前記搬入側第1配置位置の所定の箇所に配置される搬入側第1基準ピンの少なくとも水平方向の位置と、前記搬入側第2配置位置の所定の箇所に配置される搬入側第2基準ピンの少なくとも水平方向の位置とを検知する第2検知ステップとを備えるとともに、
前記第1検知ステップの検知結果に基づいて特定される、上下方向から見たときの前記搬出側第1基準ピンの中心と前記搬出側第2基準ピンの中心とを結ぶ線分を搬出側検知線分とし、前記搬出側検知線分の中点を搬出側検知中点とし、前記第2検知ステップの検知結果に基づいて特定される、上下方向から見たときの前記搬入側第1基準ピンの中心と前記搬入側第2基準ピンの中心とを結ぶ線分を搬入側検知線分とし、前記搬入側検知線分の中点を搬入側検知中点とし、前記搬出部において前記搬出側第1基準ピンおよび前記搬出側第2基準ピンが設計上の位置に配置されていると仮定したときの、上下方向から見たときの前記搬出側第1基準ピンの中心と前記搬出側第2基準ピンの中心とを結ぶ線分を搬出側基準線分とし、前記搬出側基準線分の中点を搬出側基準中点とし、前記搬入部において前記搬入側第1基準ピンおよび前記搬入側第2基準ピンが設計上の位置に配置されていると仮定したときの、上下方向から見たときの前記搬入側第1基準ピンの中心と前記搬入側第2基準ピンの中心とを結ぶ線分を搬入側基準線分とし、前記搬入側基準線分の中点を搬入側基準中点とすると、
少なくとも、上下方向から見たときの前記搬出側基準中点に対する前記搬出側検知中点のずれ量と、上下方向から見たときの前記搬出側基準線分に対する前記搬出側検知線分の傾きとを搬出側補正値として算出する第1補正値算出ステップと、
少なくとも、上下方向から見たときの前記搬入側基準中点に対する前記搬入側検知中点のずれ量と、上下方向から見たときの前記搬入側基準線分に対する前記搬入側検知線分の傾きとを搬入側補正値として算出する第2補正値算出ステップとを備えることを特徴とする産業用ロボットの補正値算出方法。
(2)前記搬出側第1基準ピンは、上下方向から見たときに、前記搬出側第1配置位置の正規の位置に配置されたときの前記第1搬送対象物の中心と前記搬出側第1基準ピンの中心とが一致する箇所に配置され、
前記搬出側第2基準ピンは、上下方向から見たときに、前記搬出側第2配置位置の正規の位置に配置されたときの前記第2搬送対象物の中心と前記搬出側第2基準ピンの中心とが一致する箇所に配置され、
前記搬入側第1基準ピンは、上下方向から見たときに、前記搬入側第1配置位置の正規の位置に配置されたときの前記第1搬送対象物の中心と前記搬入側第1基準ピンの中心とが一致する箇所に配置され、
前記搬入側第2基準ピンは、上下方向から見たときに、前記搬入側第2配置位置の正規の位置に配置されたときの前記第2搬送対象物の中心と前記搬入側第2基準ピンの中心とが一致する箇所に配置されていることを特徴とする(1)記載の産業用ロボットの補正値算出方法。
(3)前記第1検知ステップでは、前記検知機構によって、前記搬出側第1基準ピンの上端の高さと前記搬出側第2基準ピンの上端の高さとを検知し、
前記第2検知ステップでは、前記検知機構によって、前記搬入側第1基準ピンの上端の高さと前記搬入側第2基準ピンの上端の高さとを検知し、
前記第1補正値算出ステップでは、前記第1検知ステップで検知された前記搬出側第1基準ピンの上端の高さと前記搬出側第2基準ピンの上端の高さとに基づいて算出される前記搬出側検知中点の高さの、前記搬出側基準中点の設計上の高さに対するずれ量を前記搬出側補正値として算出し、
前記第2補正値算出ステップでは、前記第2検知ステップで検知された前記搬入側第1基準ピンの上端の高さと前記搬入側第2基準ピンの上端の高さとに基づいて算出される前記搬入側検知中点の高さの、前記搬入側基準中点の設計上の高さに対するずれ量を前記搬入側補正値として算出することを特徴とする(1)または(2)記載の産業用ロボットの補正値算出方法。
(4)(1)から(3)のいずれかに記載の産業用ロボットの補正値算出方法で算出された前記補正値に基づいて前記産業用ロボットを制御するための産業用ロボットの制御方法であって、
前記搬出部および前記搬入部のいずれか一方では、前記ハンドの位置および向きを補正せず、
前記搬出部および前記搬入部のいずれか他方では、前記搬出側補正値および前記搬入側補正値に基づいて前記ハンドの位置および向きを補正することを特徴とする産業用ロボットの制御方法。
(5)前記産業用ロボットは、前記ハンドが回動可能に連結されるアームと、前記アームが回動可能に連結される本体部と、水平方向への直線的な移動が可能となるように前記本体部を保持する本体保持部と、前記本体保持部に対して前記本体部を移動させる水平移動機構と、上下方向を回動の軸方向として前記本体部に対して前記アームを回動させるとともに前記ハンドが一定方向を向いた状態で前記本体部に対して水平方向に直線的に移動するように前記アームを伸縮させるアーム駆動機構とを備える水平多関節型のロボットであり、
前記本体保持部に対する前記本体部の移動方向を第1方向とし、前記第1方向と上下方向とに直交する方向を第2方向とすると、
前記ハンドは、設計上、前記搬出部および前記搬入部のいずれか一方に対して前記第1方向に直線的に移動するとともに、前記搬出部および前記搬入部のいずれか他方に対して前記第2方向に直線的に移動することを特徴とする(4)記載の産業用ロボットの制御方法。
【符号の説明】
【0084】
1 ロボット(産業用ロボット)
2 ウエハ(半導体ウエハ、搬送対象物)
2A ウエハ(第1搬送対象物)
2B ウエハ(第2搬送対象物)
4 ウエハ処理装置(搬入部)
5 ウエハ収容部(搬出部)
7、8 ハンド
9 アーム
10 本体部
11 本体保持部
20 搭載部(第1搭載部)
21 搭載部(第2搭載部)
32 水平移動機構
46 アーム駆動機構
54a 第1配置位置(搬入側第1配置位置)
54b 第2配置位置(搬入側第2配置位置)
55a 第1配置位置(搬出側第1配置位置)
55b 第2配置位置(搬出側第2配置位置)
62A 第1基準ピン(搬出側第1基準ピン)
62B 第2基準ピン(搬出側第2基準ピン)
62C 第1基準ピン(搬入側第1基準ピン)
62D 第2基準ピン(搬入側第2基準ピン)
63、64 検知機構
C1 搬出側第1配置位置の正規の位置に配置されたときの第1搬送対象物の中心
C2 搬出側第1基準ピンの中心
C3 搬出側第2配置位置の正規の位置に配置されたときの第2搬送対象物の中心
C4 搬出側第2基準ピンの中心
C5 搬入側第1配置位置の正規の位置に配置されたときの第1搬送対象物の中心
C6 搬入側第1基準ピンの中心
C7 搬入側第2配置位置の正規の位置に配置されたときの第2搬送対象物の中心
C8 搬入側第2基準ピンの中心
L1 搬出側検知線分
L2 搬入側検知線
L11 搬出側基準線分
L21 搬入側基準線分
M1 搬出側検知中点
M2 搬入側検知中点
M11 搬出側基準中点
M21 搬入側基準中点
X 第1方向
Y 第2方向
Δθ1 搬出側基準線分に対する搬出側検知線分の傾き
Δθ2 搬入側基準線分に対する搬入側検知線分の傾き