(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025143652
(43)【公開日】2025-10-02
(54)【発明の名称】状態監視システム
(51)【国際特許分類】
H03K 19/0175 20060101AFI20250925BHJP
H03K 5/08 20060101ALI20250925BHJP
【FI】
H03K19/0175 240
H03K5/08 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024042990
(22)【出願日】2024-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下山 陽太
【テーマコード(参考)】
5J039
5J056
【Fターム(参考)】
5J039DA12
5J056AA01
5J056BB54
5J056CC04
5J056CC09
5J056FF08
5J056KK01
(57)【要約】
【課題】多種の出力仕様のセンサを接続することが可能な状態監視装置を提供する。
【解決手段】状態監視装置1は、センサからの信号の入力回路を少なくとも備える。センサ入力回路11は、電源端子PW、信号入力端子SIG、および基準端子COMと、信号入力端子SIGに接続される第1入力ノード(+)と基準電圧が与えられる第2入力ノード(-)とを有する比較回路Uと、電源端子PWと信号入力端子SIGとの間に直列に接続された第1スイッチ素子SW1および第1電流制限素子R1とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサからの信号の入力回路を少なくとも備える状態監視装置であって、
前記入力回路は、
電源端子、信号入力端子、および基準端子と、
前記信号入力端子に接続される第1入力ノードと基準電圧が与えられる第2入力ノードとを有する比較回路と、
前記電源端子と前記信号入力端子との間に直列に接続された第1スイッチ素子および第1電流制限素子とを含む、状態監視装置。
【請求項2】
前記入力回路は、
前記電源端子と前記基準端子との間に第1の電源電圧を供給する第1電源と、
前記基準端子と前記第2入力ノードとの間に前記基準電圧を供給する基準電源とをさらに含む、請求項1に記載の状態監視装置。
【請求項3】
前記基準電源は、DC-DCコンバータ、D/Aコンバータまたは分圧回路を含む可変電圧源である、請求項2に記載の状態監視装置。
【請求項4】
前記第1スイッチ素子は、前記第1電流制限素子を経由して前記電源端子と前記信号入力端子とを接続する電流経路の開閉を切替えることが可能に構成された機械スイッチ、電子スイッチ、ジャンパーまたはヒューズのいずれかであり、
前記第1電流制限素子は、オーム性素子または非オーム性素子である、請求項1に記載の状態監視装置。
【請求項5】
前記センサは、状態監視対象の回転を監視する回転センサであり、
前記比較回路の出力を受けて前記状態監視対象の回転速度を検出する処理回路をさらに備える、請求項1に記載の状態監視装置。
【請求項6】
前記入力回路は、
前記基準端子と前記信号入力端子との間に直列に接続された第2スイッチ素子と第2電流制限素子とをさらに含む、請求項1に記載の状態監視装置。
【請求項7】
前記入力回路は、第1抵抗素子と第2抵抗素子とをさらに備え、
前記第1入力ノードは、前記第1抵抗素子を介して前記信号入力端子と接続され、
前記第2抵抗素子は、前記第1入力ノードと前記基準端子との間に接続され、
前記第1入力ノードには、前記信号入力端子の電圧を前記第1抵抗素子および前記第2抵抗素子によって分圧した電圧が与えられる、請求項1に記載の状態監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、産業機械向け状態監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械の運転状態を監視して故障などを早期に発見する状態監視システムは、監視対象の機器の回転速度などを検出する各種センサからの信号を受ける入力回路を備えている。たとえば、特許第2730112号公報(特許文献1)は、近接スイッチ、光電スイッチ、超音波スイッチ等の直流2線式センサからの信号を受ける回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許第2730112号公報(特許文献1)に開示された構成では、入力回路が直流2線式センサの信号に特化しており、他の形式、たとえば直流3線式のセンサの信号、電圧パルス信号などは入力できない。
【0005】
状態監視装置は、監視対象の構造や構成によって、状態監視に必要な情報の収集方法に制約を受ける。具体的には、監視対象に特定のセンサしか設置できないこと、同じ機能を持った出力仕様が異なるセンサが既に監視対象に設置されていることなどが挙げられる。
【0006】
状態監視装置に入力できる回転信号の種別が限定されることによって、前者の場合では、状態監視装置の入力回路に対応するセンサが設置できずに回転信号の計測ができないこと、後者の場合では、既設のセンサからの信号が利用できずにセンサを追加することで余計なコストを要求されることなどの問題がある。
【0007】
本開示は、上記の課題を解決する状態監視装置であって、多種の出力仕様のセンサを接続することが可能な状態監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、センサからの信号の入力回路を少なくとも備える状態監視装置に関する。入力回路は、電源端子、信号入力端子、および基準端子と、信号入力端子に接続される第1入力ノードと基準電圧が与えられる第2入力ノードとを有する比較回路と、電源端子と信号入力端子との間に直列に接続された第1スイッチ素子および第1電流制限素子とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の状態監視装置によれば、入力回路を交換しなくても、多種の出力仕様のセンサ出力信号を入力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】状態監視装置と周辺の装置の構成と接続関係とを示した図である。
【
図2】状態監視装置1に含まれるセンサ入力回路11の構成を示す図である。
【
図3】センサ入力回路と直流3線式センサ(負荷内蔵型)との接続状態を説明するための図である。
【
図4】センサ入力回路と直流3線式センサ(負荷非内蔵型)との接続状態を説明するための図である。
【
図5】センサ入力回路と直流2線式センサとの接続状態を説明するための図である。
【
図6】
図3から
図5に示した直流3線式または直流2線式センサを接続した際のセンサ入力回路の動作を説明するための動作波形図である。
【
図7】センサ入力回路とパルス出力型センサとの接続状態を説明するための図である。
【
図8】パルス出力型センサを接続した際のセンサ入力回路の動作を説明するための動作波形図である。
【
図9】センサ入力回路とPNP型直流3線式センサとの接続状態を説明するための図である。
【
図10】PNP型直流3線式センサを接続した際のセンサ入力回路の動作を説明するための動作波形図である。
【
図11】入力電圧のレンジが拡大されたセンサ入力回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0012】
[実施の形態1]
図1は、状態監視装置と周辺の装置の構成と接続関係とを示した図である。
図1において、産業機械2は、監視対象の機器であり、発電機または電動機などの回転体を含む機器、たとえば風力発電設備などが該当する。産業機械2は、回転センサ21およびその他センサ22を含む。
【0013】
回転センサ21は、監視対象の回転速度を測定するための信号を検出する。たとえば、監視対象に設置した各種センサからの信号、監視対象の制御装置からの信号などが回転信号として産業機械2から状態監視装置1に送信される。
【0014】
その他センサ22は、監視対象の状態を監視するためのセンサであり、加速度や温度、変位、圧力などを検出するセンサである。
【0015】
状態監視装置1は、センサ入力回路11,センサ入力回路12および処理回路13を含む。
【0016】
センサ入力回路11は、回転センサ21からの信号を受けて、処理回路13が処理可能な形式(たとえば、既定の電圧パルス信号)に変換する。
【0017】
センサ入力回路12は、回転センサ以外のセンサからの信号を受けて、処理回路13が処理可能な形式(A/D(アナログ/デジタル)変換後のデジタル値、規定の電圧信号など)に変換する。たとえば、センサ入力回路12は、プリアンプ、電源供給回路、アナログフロントエンド、A/Dコンバータ、デコーダ/エンコーダなどを含んでもよい。
【0018】
処理回路13は、センサ入力回路11、センサ入力回路12からの信号またはデータを処理して、診断、保存、表示、上位システムへの転送のどれか一つ以上を行う。
【0019】
サーバ3は、状態監視装置1の上位システムの例である。状態監視装置1は、サーバ3の代わりに、出力信号を表示器に送信したり、監視対象の産業機械2にフィードバックしたりしてもよい。
【0020】
状態監視装置1は、その他の要素として、計測データ、設定値、処理用の変数などを格納する記録部、センサ以外のデータを取得するための通信部、外部から設定値などを変更するためのコンソール部など含んでも良い。
【0021】
一般に、回転センサには、出力信号の形式が異なる4つの代表的な種別がある。これらの種別には、たとえば、直流3線式センサ(負荷内蔵)、直流3線式センサ(NPNまたはPNPトランジスタ出力)、直流2線式センサ、電圧パルス出力型センサが挙げられる。形式が異なる出力信号を受けるためには、従来は各形式に対応する専用の入力回路が必要であった。形式が異なる信号用の入力回路で、他の種別の信号を受けて処理することは通常はできなかった。
【0022】
本実施の形態の状態監視装置1が内蔵するセンサ入力回路11は、複数の形式の入力信号に対応することができるため、多数のバリエーションの状態監視装置を用意しなくてもよい。
【0023】
図2は、状態監視装置1に含まれるセンサ入力回路11の構成を示す図である。
図2に示すセンサ入力回路11は、3つの入力端子を有する。すなわちセンサ入力回路11は、電源端子PWと、信号入力端子SIGと、基準端子COMとを含む。
【0024】
電源端子PWと、基準端子COMとは、センサ用の電源電圧VDCを供給する電源PS1と接続される。なお、
図2では電源PS1はセンサ入力回路11に含まれているが、センサ入力回路11の外部から図示しないセンサ用の電圧源が電源端子PWと基準端子COMとの間に接続されても良い。
【0025】
センサ入力回路11は、さらに、比較回路Uとスイッチ素子SW1と電流制限素子R1とを含む。信号入力端子SIGは、比較回路Uの+入力ノードに接続される。電源端子PWと信号入力端子SIGとの間に、スイッチ素子SW1と、負荷抵抗である電流制限素子R1とが直列に接続される。
【0026】
比較回路Uは、二つ以上の入力ノードと、一つ以上の出力ノードと、正負の電源ノードとを有する。比較回路Uの入力ノードのうち、+入力ノードに信号入力端子SIGが接続され、-入力ノードに基準電圧Vthが与えられる。比較回路Uの正負電源ノードには、比較回路Uの駆動電源であるVCCが接続される。なお、
図2では基準電圧Vthを発生する電源PS2はセンサ入力回路11に含まれているが、センサ入力回路11の外部から図示しないセンサ用の基準電圧源で発生された基準電圧が比較回路Uの-入力ノードに接続されても良い。
【0027】
比較回路Uの出力ノードは、センサ入力回路11の出力であり、処理回路13に接続される。たとえば、処理回路13は、回転センサ21からの回転信号をカウントするカウンターを内蔵している。
【0028】
スイッチ素子SW1は、回路の開放/短絡を切替える素子であり、機械スイッチであるか、または、MOSFET、フォトカプラなどの電子スイッチである。なお、スイッチ素子SW1は、ジャンパー線、ヒューズなどであってもよい。
【0029】
電流制限素子R1は、電流を制限する素子であり、負荷抵抗などのオーム性素子か、または定電流ダイオードなどの非オーム性素子である。
【0030】
比較回路Uは、二つの入力の電圧を比較して、比較結果を出力する素子であり、コンパレータ、オペアンプなどである。
【0031】
基準電圧Vthを供給する電源PS2は、可変電圧源であり、DC-DCコンバータ、分圧回路、D/A(デジタル/アナログ)コンバータなどを用いることができる。基準電圧Vthは比較回路Uが入力信号を判定するしきい値電圧である。
【0032】
比較回路Uの駆動電源電圧VCCは電源PS3から供給される。電源PS3は、センサ入力回路11中に示されているが、センサ入力回路11の外部から駆動電源電圧VCCが供給されても良い。比較回路Uの出力信号COUTは、センサ入力回路11の出力信号となる。
【0033】
なお、回路図中の極性は一例であり、それぞれの正負で対応する端子同士で、独立に極性を反転させてもよい。
【0034】
以下、各入力信号種別に応じて、センサ入力回路11の構成要素がどのように働くか説明する。
【0035】
図3は、センサ入力回路と直流3線式センサ(負荷内蔵型)との接続状態を説明するための図である。
図3では、センサ入力回路11には、回転センサ21Aが接続される。回転センサ21Aは、負荷内蔵型の直流3線式センサであり、センサ主回路MCと、スイッチ素子TrNと、負荷R21とを含む。
【0036】
負荷内蔵型の直流3線式センサである回転センサ21Aをセンサ入力回路11に接続するときは、電源端子PWにセンサの電源端子PTを接続し、信号入力端子SIGにセンサの信号端子STを接続し、基準端子COMにセンサの基準端子CTを接続する。そして、スイッチ素子SW1を開放(オープン)として、電流制限素子R1に電流が流れないようにする。
【0037】
さらに基準電圧Vthを、電源電圧VDCと接地電圧との範囲内の任意の電圧に設定する。より望ましくは、電源電圧VDCと接地電圧の中間の電圧とする。
【0038】
このようにスイッチ素子SW1を設定し、センサ入力回路11に回転センサ21Aを接続することによって、電源電圧VDCがセンサに供給され、信号入力端子SIGから入力される信号(電圧)が、比較回路Uで基準電圧Vthと比較されて、処理回路13に入力可能なパルス信号に変換される。
【0039】
図4は、センサ入力回路と直流3線式センサ(負荷非内蔵型)との接続状態を説明するための図である。
図4では、センサ入力回路11には、回転センサ21Bが接続される。回転センサ21Bは、負荷非内蔵型の直流3線式センサであり、センサ主回路MCと、スイッチ素子TrNとを含む。
図3と異なり、負荷R21は回転センサ21Bには含まれていない。
【0040】
センサ入力回路11に回転センサ21Bを接続するときは、
図3と同様に、電源端子PWにセンサの電源端子PTを接続し、信号入力端子SIGにセンサの信号端子STを接続し、基準端子COMにセンサの基準端子CTを接続する。そして、スイッチ素子SW1を短絡させる。さらに、基準電圧Vthを、電源電圧VDCから、接地電圧に残留電圧を加えた電圧の範囲内の任意の電圧に設定する。一般的には、電源電圧VDCと接地電圧の中間の電圧とするのが望ましい。
【0041】
図4に示すようにスイッチ素子SW1を設定することによって、回転センサ21Bに電源電圧VDCが供給されるとともに、電源電圧VDCが電流制限素子R1を経由して信号入力端子SIGに印加され、回転センサ21Bのスイッチ素子TrNの出力状態が電圧に変換される。すなわち、信号端子STと基準端子CT間の短絡/開放がそれぞれローレベル/ハイレベルの電圧に変換される。
【0042】
そして、変換された電圧が、比較回路Uで基準電圧Vthと比較されて、
図1の処理回路13に入力可能なパルス信号にさらに変換される。
【0043】
図5は、センサ入力回路と直流2線式センサとの接続状態を説明するための図である。直流2線式の回転センサ21Cをセンサ入力回路11に接続するときは、信号入力端子SIGにセンサの信号端子STを接続し、基準端子COMにセンサの基準端子CTを接続し、スイッチ素子SW1を短絡させる。電源端子PWには何も接続しない(オープンとする)。
【0044】
さらに、基準電圧Vthを、電源電圧VDCから、接地電圧に残留電圧を加えた電圧の範囲内の任意の電圧に設定する。一般的には、電源電圧VDCと接地電圧の中間の電圧とするのが望ましい。
【0045】
上記のようにすることで、電流制限素子R1と信号入力端子SIGおよび信号端子STを経由して回転センサ21Cに電源が供給される。そして回転センサ21Cのスイッチ素子TrNの出力状態(インピーダンス変化)によって、電流制限素子R1との分圧比が変化して信号入力端子SIGの電圧が変化する。この変化した電圧が、比較回路Uで基準電圧Vthと比較されて、処理回路13に入力可能なパルス信号にさらに変換される。
【0046】
図6は、
図3から
図5に示した直流3線式または直流2線式センサを接続した際のセンサ入力回路の動作を説明するための動作波形図である。
図6に示すように、回転センサのスイッチ素子TrNは、センサ主回路MCの出力に応じてオープン状態とクローズ状態とを繰り返す。信号入力端子SIGの電圧は、スイッチ素子TrNがクローズ状態の場合は、ほぼ0V、スイッチ素子TrNがオープン状態の場合は、ほぼ電源電圧VDCとなる。この電圧が基準電圧Vthと比較された結果が出力信号COUTとなる。
【0047】
すなわち、スイッチ素子TrNがクローズ状態の場合は、出力信号COUTの電圧は0Vとなる。一方、スイッチ素子TrNがオープン状態の場合は、出力信号COUTの電圧は電源電圧VCCとなる。
【0048】
図7は、センサ入力回路とパルス出力型センサとの接続状態を説明するための図である。回転センサ21Dは、センサ主回路MCとパルス出力回路とを含む。パルス出力回路は、基準端子CTの電圧を基準として、信号端子STにハイレベル、ローレベルを有する電圧パルス信号を出力する。パルス出力回路は、たとえば、プッシュプルの2つのトランジスタを含む回路であっても良い。図示しないが、パルス出力回路には別途電源電圧が供給されても良い。回転センサ21Dをセンサ入力回路11に接続するときは、信号入力端子SIGにセンサの信号端子STを接続し、基準端子COMにセンサの基準端子CTを接続し、スイッチ素子SW1をオープンに設定する。電源端子PWには何も接続しない(オープンとする)。
【0049】
さらに、基準電圧Vthを、電圧パルス信号の下限値と上限値の範囲内の任意の電圧に設定する。一般的には、上限値と下限値の中間の電圧とするのが望ましい。
【0050】
このようにすることによって、信号入力端子SIGに入力されたパルス電圧が、比較回路Uにおいて基準電圧Vthと比較されて、処理回路13に入力可能なパルス信号にさらに変換される。
【0051】
図8は、パルス出力型センサを接続した際のセンサ入力回路の動作を説明するための動作波形図である。
【0052】
図8に示すように、回転センサのパルス出力回路はセンサ主回路MCの出力に応じてハイ(High)レベル状態とロー(Low)レベル状態とを繰り返す。信号入力端子SIGの電圧は、パルス出力がローレベルの場合は、ローレベルとなり、パルス出力がハイレベルの場合は、ハイレベルとなる。この電圧が基準電圧Vthと比較された結果が出力信号COUTとなる。
【0053】
すなわち、パルス出力信号がローレベル状態の場合は、出力信号COUTの電圧は0Vとなる。一方、パルス出力信号がハイレベル状態の場合は、出力信号COUTの電圧は電源電圧VCCとなる。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態のセンサ入力回路11を状態監視装置1に備えることによって、産業機械2に設置された回転センサ21の出力がいくつかの異なる形式を取り得る場合であっても、センサ入力回路11の設定を変更することによって、同じ回路で対応することが可能となる。
【0055】
[実施の形態2]
実施の形態1では、状態監視装置1に接続される回転センサ21の出力部に主としてNPN型トランジスタが用いられている場合について説明した。しかし、PNP型トランジスタが用いられる場合も考えられる。実施の形態2では、センサの出力トランジスタがNPN型トランジスタである場合に加えてPNP型トランジスタの出力である場合も対応可能なセンサ入力回路について説明する。
【0056】
図9は、センサ入力回路とPNP型直流3線式センサとの接続状態を説明するための図である。実施の形態2では、状態監視装置1の入力回路として、
図1のセンサ入力回路11に代えてセンサ入力回路11Aが使用される。
【0057】
図9に示すセンサ入力回路11Aは、
図2に示すセンサ入力回路11の構成に加えて、第2スイッチ素子SW2と、第2電流制限素子R2とを備える。センサ入力回路11Aの他の部分の構成は、
図2に示したセンサ入力回路11と同様であるので、ここでは説明は繰り返さない。回転センサ21Eは、センサ主回路MCと、出力用のスイッチ素子TrPと、電源端子PTと信号端子STと基準端子CTとを含む。
【0058】
図9に示した構成のように、基準端子COMと信号入力端子SIGとの間に、スイッチ素子SW2と電流制限素子R2とを直列に追加することによって、PNP型の直流3線式センサの出力信号または電流信号(4-20mAなど)も入力可能となる。
【0059】
センサ入力回路11Aにおいて、入力される信号種別が、PNP型の直流3線式センサまたは電流信号の場合はスイッチSW1を開放かつスイッチ素子SW2を短絡し、それ以外の場合はスイッチ素子SW2を開放する。スイッチ素子SW2を開放すれば、
図2に示した回路と等しくなるので、この場合の動作の説明は繰り返さない。
【0060】
図10は、PNP型直流3線式センサを接続した際のセンサ入力回路の動作を説明するための動作波形図である。
図9、
図10を参照して、PNP型の直流3線式センサと電流信号が接続された場合に、どのように働くか説明する。
【0061】
センサ入力回路11AにPNP型の直流3線式センサである回転センサ21Eを接続するときは、電源端子PWに回転センサ21Eの電源端子PTを接続し、信号入力端子SIGに回転センサ21Eの信号端子STを接続し、基準端子COMに回転センサ21Eの基準端子CTを接続する。そして、スイッチ素子SW1を開放するとともに、スイッチ素子SW2を短絡する。
【0062】
さらに、基準電圧Vthを、電源電圧VDCから残留電圧を差し引いた電圧から接地電圧の範囲内の任意の電圧に設定する。一般的には、電源電圧VDCと接地電圧の中間の電圧とするのが望ましい。
【0063】
このようにすることで、回転センサ21Eに電源電圧VDCが供給される。さらにセンサのスイッチ素子TrPの状態によって、信号入力端子SIGの電圧が変化する。すなわち、スイッチ素子TrPが導通状態の場合は、スイッチ素子TrPによって信号入力端子SIGは電源電圧VDCに引き上げられる。また、スイッチ素子TrPが非導通状態の場合は、電流制限素子R2によって信号入力端子SIGは接地電圧付近まで引き下げられる。
【0064】
このように変動する信号入力端子SIGの電圧が比較回路Uにおいて基準電圧Vthと比較され、処理回路13に入力可能なパルス信号にさらに変換される。
【0065】
また、センサ入力回路11Aに電流信号を接続するときは、信号入力端子SIGにセンサからの電流信号の信号線を接続し、基準端子COMにセンサの接地線を接続し、スイッチ素子SW1を開放し、SW2を短絡する。電源端子PWには何も接続しない。さらに基準電圧Vthを、電流信号の電流の最大値と最小値に電流制限素子R2の抵抗値を掛けた値の範囲内の任意の電圧に設定する。一般的には、中間の電流値に電流制限素子R2の抵抗値を掛け算した電圧とするのが望ましい。
【0066】
このような接続とすることによって、電流制限素子R2を経由して信号入力端子SIGと基準端子COMとの間に電流信号が流れることで、電流信号が信号入力端子SIGの電圧に変換される。この変換された電圧が、比較回路Uで基準電圧Vthと比較されて、処理回路13に入力可能なパルス信号にさらに変換される。
【0067】
さらに、比較回路Uを1次側と2次側が絶縁されたものにすることで、同じ電流信号を取得する機器と直列接続できるようになる。
【0068】
[実施の形態3]
図11は、入力電圧のレンジが拡大されたセンサ入力回路の構成を示す図である。実施の形態3では、状態監視装置1の入力回路として、
図1のセンサ入力回路11に代えてセンサ入力回路11Bが使用される。
図11に示すセンサ入力回路11Bは、
図2に示すセンサ入力回路11の構成に加えて、抵抗素子R3と、抵抗素子R4とをさらに備える。抵抗素子R3は、信号入力端子SIGと比較回路Uの+入力ノードとの間に挿入される。抵抗素子R4は、比較回路Uの+入力ノードと基準端子COMとの間に接続される。
【0069】
センサ入力回路11Bの他の部分の構成は、
図2に示したセンサ入力回路11と同様であるので、ここでは説明は繰り返さない。
【0070】
図11に示す回路図のように、分圧抵抗として抵抗素子R3,R4を加えることで、出力信号COUTに許容される信号の振幅に対して、より大きな振幅の入力信号を受け入れられるようになる。
【0071】
すなわち、通常の比較回路Uでは、電源電圧VCCの範囲を超えた信号は入力できない。このため、一般には、信号入力端子SIGと基準端子COMの間の電圧は電源電圧VCC以下である必要がある。
【0072】
これに対して、分圧抵抗(R3,R4)を加えることで、比較回路Uに入力される信号の電圧を(R4/(R3+R4))倍に引き下げることができ、より広い電圧範囲の回転信号を入力できる。
【0073】
以上説明したように、実施の形態1~3のセンサ入力回路を使用した状態監視装置は、入力可能な回転信号の信号種別が増えることで、計測対象に適合する回転計測方法が利用できる。その結果、回転を計測できる対象の拡張や、回転計測にかかるコストを低減できる。
【0074】
なお、実施の形態1~3のセンサ入力回路は、回転センサ以外の入力を受ける
図1のセンサ入力回路12に適用しても良い。この場合も信号の出力形態が異なる種々のセンサを接続することができる。
【0075】
[付記]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0076】
(第1項) 本開示は、センサからの信号の入力回路を少なくとも備える状態監視装置1に関する。
図2に示すセンサ入力回路11は、電源端子PW、信号入力端子SIG、および基準端子COMと、信号入力端子SIGに接続される第1入力ノード(+)と基準電圧が与えられる第2入力ノード(-)とを有する比較回路Uと、電源端子PWと信号入力端子SIGとの間に直列に接続された第1スイッチ素子SW1および第1電流制限素子R1とを含む。
【0077】
(第2項) 第1項に記載の状態監視装置1において、センサ入力回路11は、
図2に示すように、電源端子PWと基準端子COMとの間に第1の電源電圧VDCを供給する第1電源PS1と、基準端子COMと第2入力ノード(-)との間に基準電圧Vthを供給する基準電源PS2とをさらに含む。
【0078】
(第3項) 第2項に記載の状態監視装置において、基準電源PS2は、DC-DCコンバータ、D/Aコンバータまたは分圧回路を含む可変電圧源である。
【0079】
(第4項) 第1項に記載の状態監視装置において、第1スイッチ素子SW1は、第1電流制限素子R1を経由して電源端子PWと信号入力端子SIGとを接続する電流経路の開閉を切替えることが可能に構成された機械スイッチ、電子スイッチ、ジャンパーまたはヒューズのいずれかであり、第1電流制限素子R1は、オーム性素子または非オーム性素子である。
【0080】
(第5項) 第1項に記載の状態監視装置において、
図1に示すように、センサは、状態監視対象である産業機械2の回転を監視する回転センサ21であり、比較回路Uの出力を受けて状態監視対象の回転速度を検出する処理回路13をさらに備える。
【0081】
(第6項) 第1項に記載の状態監視装置において、
図9に示すように、センサ入力回路11Aは、基準端子COMと信号入力端子SIGとの間に直列に接続された第2スイッチ素子SW2と第2電流制限素子R2とをさらに含む。
【0082】
(第7項) 第1項に記載の状態監視装置において、
図11に示すように、センサ入力回路11Bは、第1抵抗素子R3と第2抵抗素子R4とをさらに備え、第1入力ノード(+)は、第1抵抗素子R3を介して信号入力端子SIGと接続され、第2抵抗素子R4は、第1入力ノード(+)と基準端子COMとの間に接続され、第1入力ノード(+)には、信号入力端子SIGの電圧を第1抵抗素子R3および第2抵抗素子R4によって分圧した電圧が与えられる。
【0083】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
1 状態監視装置、2 産業機械、3 サーバ、11,11A,11B,12 センサ入力回路、13 処理回路、21,21A,21B,21C,21D,21E 回転センサ、22 センサ、COM,CT 基準端子、MC センサ主回路、PS1,PS2,PS3 電源、PW 電源端子、R1,R2 電流制限素子、R3,R4 抵抗素子、R21 負荷抵抗、SIG 信号入力端子、ST 信号端子、SW1,SW2 スイッチ素子、TrN,TrP トランジスタ、U 比較回路。