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  • 特開-状態監視装置、および診断方法 図1
  • 特開-状態監視装置、および診断方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025143695
(43)【公開日】2025-10-02
(54)【発明の名称】状態監視装置、および診断方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20250925BHJP
【FI】
G01R31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043058
(22)【出願日】2024-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下山 陽太
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA19
2G036AA28
2G036BB09
(57)【要約】
【課題】アナログフロントエンド回路の異常診断を行うための構成の故障を防止して、信頼性の高い状態監視装置、および診断方法を提供する。
【解決手段】状態監視装置10は、アナログフロントエンド回路1と、AD変換回路2と、CPU3と、基準信号源4と、遮断回路5と、スイッチ6と、受動回路7と、を備える。受動回路7は、スイッチ6とアナログフロントエンド回路1との間に配置され、入力されるサージ電圧から基準信号源およびスイッチを保護する。CPU3は、基準信号源4からの基準信号を処理した結果に基づいてアナログフロントエンド回路1の異常診断を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常診断が可能な状態監視装置であって、
信号源からのアナログ信号を受信するアナログフロントエンド回路と、
前記アナログフロントエンド回路で処理されたアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路と、
前記AD変換回路で変換されたデジタル信号を処理する演算処理回路と、
前記アナログフロントエンド回路の異常診断を行うための基準信号を発信する基準信号源と、
前記信号源と前記アナログフロントエンド回路との間に配置され、前記信号源からのアナログ信号を遮断する遮断回路と、
前記基準信号源と前記アナログフロントエンド回路との間に配置され、前記アナログフロントエンド回路が受信する信号を前記信号源からのアナログ信号か、前記基準信号源からの基準信号かを切り替えるスイッチと、
前記スイッチと前記アナログフロントエンド回路との間に配置され、入力されるサージ電圧から前記基準信号源および前記スイッチを保護する受動回路と、を備え、
前記演算処理回路は、前記基準信号源からの基準信号を処理した結果に基づいて前記アナログフロントエンド回路の異常診断を行う、状態監視装置。
【請求項2】
前記遮断回路は、半導体スイッチを含む、請求項1に記載の状態監視装置。
【請求項3】
前記基準信号源は、デジタル信号またはアナログ信号を発生する発生回路を含む、請求項1に記載の状態監視装置。
【請求項4】
前記スイッチは、半導体スイッチである、請求項1に記載の状態監視装置。
【請求項5】
前記受動回路は、インダクタンス成分を含む電子素子を含む、請求項1に記載の状態監視装置。
【請求項6】
前記演算処理回路は、前記基準信号源からの基準信号を処理した結果と、あらかじめ記憶されている基準結果とを比較して、前記アナログフロントエンド回路の異常診断を行う、請求項1に記載の状態監視装置。
【請求項7】
前記演算処理回路は、前記基準信号源からの基準信号を処理した結果と、他のアナログフロントエンド回路を経由した信号を処理した結果とを比較して、前記アナログフロントエンド回路の異常診断を行う、請求項1に記載の状態監視装置。
【請求項8】
前記スイッチと前記受動回路との間に配置され、前記基準信号源を電気的に保護する保護回路を、さらに備える、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の状態監視装置。
【請求項9】
信号源からのアナログ信号を受信するアナログフロントエンド回路と、前記アナログフロントエンド回路で処理されたアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路と、前記AD変換回路で変換されたデジタル信号を処理する演算処理回路と、前記アナログフロントエンド回路の異常診断を行うための基準信号を発信する基準信号源と、前記信号源と前記アナログフロントエンド回路との間に配置され、前記信号源からのアナログ信号を遮断する遮断回路と、前記基準信号源と前記アナログフロントエンド回路との間に配置され、前記アナログフロントエンド回路が受信する信号を前記信号源からのアナログ信号か、前記基準信号源からの基準信号かを切り替えるスイッチと、前記スイッチと前記アナログフロントエンド回路との間に配置され高抵抗素子と、を備える、状態監視装置において、前記アナログフロントエンド回路の異常診断を行う診断方法であって、
前記アナログフロントエンド回路が前記信号源からのアナログ信号を受信できないように、前記遮断回路で前記信号源からのアナログ信号を遮断するステップと、
前記基準信号源からの基準信号を前記アナログフロントエンド回路が受信できるように前記スイッチを切り替えるステップと、
前記演算処理回路で前記基準信号源からの基準信号を処理した結果に基づいて前記アナログフロントエンド回路の異常診断を行うステップと、を含む、診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、状態監視装置、および診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平9-211051号公報(特許文献1)に示す装置は、たとえばモータの回転軸の角度値を抵抗値に変換するポテンショメータ等のアナログ信号回路からのアナログ信号を、入力整合回路(アナログフロントエンド回路)を介してAD変換回路でデジタル信号に変換している。さらに、当該装置は、AD変換回路で変換されたデジタル信号をマイクロコンピュータに入力し、モータの回転軸の角度値に基づいて車両の状態監視を行っている。
【0003】
さらに、特許文献1に示す装置は、アナログフロントエンド回路の断線の有無を診断するために、アナログフロントエンド回路にスリーステートバッファを接続している。当該装置は、アナログ信号回路からのアナログ信号を計測する計測モード時、スリーステートバッファをハイインピーダンスにして、スリーステートバッファ自体の存在を無化している。一方、当該装置は、アナログフロントエンド回路の断線の有無を診断する診断モード時、スリーステートバッファからハイ/ロウの信号をアナログフロントエンド回路に入力して断線の有無を診断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-211051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示す装置では、アナログフロントエンド回路にスリーステートバッファが接続されているので、アナログ信号回路からサージ電圧などの異常信号が入力されると、スリーステートバッファが破壊される可能性がある。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、アナログフロントエンド回路の異常診断を行うための構成の故障を防止して、信頼性の高い状態監視装置、および診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る状態監視装置は、異常診断が可能な状態監視装置である。状態監視装置は、アナログフロントエンド回路と、AD変換回路と、演算処理回路と、基準信号源と、遮断回路と、スイッチと、受動回路と、を備える。アナログフロントエンド回路は、信号源からのアナログ信号を受信する。AD変換回路は、アナログフロントエンド回路で処理されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。演算処理回路は、AD変換回路で変換されたデジタル信号を処理する。基準信号源は、アナログフロントエンド回路の異常診断を行うための基準信号を発信する。遮断回路は、信号源とアナログフロントエンド回路との間に配置され、信号源からのアナログ信号を遮断する。スイッチは、基準信号源とアナログフロントエンド回路との間に配置され、アナログフロントエンド回路が受信する信号を信号源からのアナログ信号か、基準信号源からの基準信号かを切り替える。受動回路は、スイッチとアナログフロントエンド回路との間に配置され、入力されるサージ電圧から基準信号源およびスイッチを保護する。演算処理回路は、基準信号源からの基準信号を処理した結果に基づいてアナログフロントエンド回路の異常診断を行う。
【0008】
本開示に係る診断方法は、状態監視装置において、アナログフロントエンド回路の異常診断を行う診断方法である。診断方法は、アナログフロントエンド回路が信号源からのアナログ信号を受信できないように、遮断回路で信号源からのアナログ信号を遮断するステップと、基準信号源からの基準信号をアナログフロントエンド回路が受信できるようにスイッチを切り替えるステップと、演算処理回路で基準信号源からの基準信号を処理した結果に基づいてアナログフロントエンド回路の異常診断を行うステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、状態監視装置がスイッチとアナログフロントエンド回路との間に受動回路が配置されているので、アナログフロントエンド回路の異常診断を行うための構成の故障を防止して、信頼性の高い状態監視を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る状態監視装置の構成を概略的に示す図である。
図2】実施の形態に係る状態監視装置の異常診断方法を説明するためのフローチャートである。
図3】変形例に係る状態監視装置の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
[実施の形態]
図1は、実施の形態1に係る状態監視装置10の構成を概略的に示す図である。状態監視装置10は、監視対象に対して設けたセンサなどの信号源20からアナログ信号を受信し、アナログフロントエンド回路1を介してAD変換回路2でデジタル信号に変換してCPU3(central processing unit)で状態を監視する。状態監視装置10は、たとえば車両に取り付けられたモータの回転軸の角度値を監視したり、風力発電装置の軸受の振動量を監視したりなど産業の様々な場所で使用され、少なくとも監視対象に対する何らかのデータを計測する装置である。
【0013】
図1に示すように、状態監視装置10は、アナログフロントエンド回路1と、AD変換回路2と、CPU3と、基準信号源4と、遮断回路5と、スイッチ6と、受動回路7とを備える。アナログフロントエンド回路1は、信号源20からのアナログ信号を受信する。なお、状態監視装置10において、電源装置や記憶装置、外部のサーバなど、動作に要/不要を問わず、本開示に関連しない要素については省いている。信号源20は、たとえば振動センサや電流センサ、アナログ電圧出力機器などであり、監視対象の状態を計測しアナログ信号として出力するセンサや機器などである。
【0014】
アナログフロントエンド回路1は、信号源20からのアナログ信号を受信する回路であり、受信したアナログ信号をAD変換し易くするための回路である。信号源20であるセンサなどで検出したアナログ信号は、微弱で、ノイズ成分が含まれている場合があるので、そのままAD変換回路2に入力しても上手くデジタル信号に変換することができない場合がある。そこで、アナログフロントエンド回路1は、AD変換回路2でデジタル信号に変換し易いように増幅を行ったり、フィルタでノイズ成分を除去したりする。アナログフロントエンド回路1は、アンプ、フィルタなどの含む半導体チップなどで構成される。
【0015】
AD変換回路2は、アナログフロントエンド回路1で処理されたアナログ信号をデジタル信号に変換する回路である。CPU3(演算処理回路)は、AD変換回路2で変換されたデジタル信号を処理する回路である。具体的に、CPU3は、信号源20であるセンサなどで計測した値をデジタル信号として保存、または他の装置等に転送する。また、CPU3は、デジタル信号に対して監視対象の状態を監視するために必要な処理を行う。たとえば、CPU3は、デジタル信号の計測値の平均値を演算したり、閾値と比較して警告を行ったりする。さらに、CPU3は、後述するように、アナログフロントエンド回路1が異常か否かを診断することができる。
【0016】
基準信号源4は、アナログフロントエンド回路1の異常診断を行うための基準信号を発信する信号源である。基準信号源4は、デジタル信号またはアナログ信号を発生する発生回路を含む。基準信号源4は、たとえば、抵抗分圧やレギュレータなどのDC電圧発生回路、発振回路やタイマー回路などの交流信号発生回路、マイコンやFPGA(Field Programmable Gate Array)のデジタル信号発生回路などである。基準信号源4は、回路でなくてもよく、DC電圧を発生する素子、交流信号を発生する素子、デジタル信号発生する素子であってもよい。これにより、基準信号源4は、様々な基準信号を発生させることができる。
【0017】
なお、基準信号源4は、専用の回路や素子で構成するよりも、他の用途で既に実装されている回路や素子を用いてもよい。これにより、基準信号源4の回路や素子を実装する場合に比べて、追加する回路要素が少なくなり、コストや故障率を低減することができる。また、基準信号源4から出力される信号は、既知であれば異常診断を容易に行うことができるが、未知であってもよい。
【0018】
遮断回路5は、信号源20とアナログフロントエンド回路1との間に配置され、信号源20からのアナログ信号を遮断する。遮断回路5は、たとえば、スイッチ回路、制御回路、コネクタの抜き/差しが可能な回路などである。アナログフロントエンド回路1が異常か否かを正確に判断するためには、ノイズ源となる信号源20をとアナログフロントエンド回路1から切り離して、基準信号源4からの基準信号のみがアナログフロントエンド回路1に入力されることが望ましい。そのため、アナログフロントエンド回路1の異常診断を行う場合には、遮断回路5で信号源20からのアナログ信号を遮断することが好ましい。
【0019】
遮断回路5において、信号源20からのアナログ信号を遮断する方法は、単純なスイッチでアナログ信号を遮断する方法だけでなく、信号源20から信号が発信されないように制御信号を送信する方法、間欠的に信号を発信する信号源20の場合に信号が発信されていないタイミングを利用する方法などがある。遮断回路5は、信号源20からのアナログ信号がアナログフロントエンド回路1に入力されない状態を形成することができる構成であれば何れの構成であってもよい。
【0020】
また、遮断回路5は、半導体スイッチを含む構成が好ましい。半導体スイッチは、電子的に遠隔でスイッチの開閉を操作でき、小型で、開閉回数の寿命が物理的なスイッチに比べて長い。また、半導体スイッチを遮断回路5に用いることで、異常診断の工数を削減したり、異常診断を行うことができる回数を向上させたりできると共に、状態監視装置10の基板サイズや製造コストを低減することができる。さらに、状態監視装置10においてアナログフロントエンド回路1の異常診断を自動的に行いたいのであれば、たとえばCPU3が遮断回路5を制御できるようにすることが好ましい。
【0021】
スイッチ6は、基準信号源4とアナログフロントエンド回路1との間に配置され、アナログフロントエンド回路1が受信する信号を信号源20からのアナログ信号か、基準信号源4からの基準信号かを切り替える。つまり、スイッチ6は、状態監視装置10が通常の監視(計測)を行う際に基準信号源4からの基準信号を遮断し、監視(計測)結果への影響を抑制している。スイッチ6は、たとえばアナログのスイッチ回路が想定されるが、フォトMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)などを含む半導体スイッチや、基準信号源4の一部に搭載され基準信号源4の出力をハイインピーダンスする構成であってもよい。また、状態監視装置10においてアナログフロントエンド回路1の異常診断を自動的に行いたいのであれば、たとえばCPU3がスイッチ6の開閉を制御できるようにすることが好ましい。
【0022】
受動回路7は、スイッチ6とアナログフロントエンド回路1との間に配置され、入力されるサージ電圧(雷サージなどの異常信号含む)から基準信号源4およびスイッチ6を保護する。受動回路7は、入力されるサージ電圧に対して十分に大きな抵抗値を持った受動素子が含まれていればよく、たとえば抵抗素子および抵抗素子を含む回路である。受動回路7は、抵抗素子および抵抗素子を含む回路に限定されず、キャパシタやインダクタなどの他の受動素子でもよく、それらの組み合わせであってもよい。
【0023】
受動回路7は、信号源20や信号源20とアナログフロントエンド回路1とを繋ぐ配線から侵入するサージ電圧などから、基準信号源4およびスイッチ6を保護するため、たとえば、数kV以上のサージ電圧からスイッチ6を保護するため1kΩ以上の抵抗値を持つことが好ましい。また、受動回路7は、インダクタンス成分を含む電子素子(たとえば、コイル)を含むことで、急峻な立ち上がりを持つサージ電圧を効果的に阻止できる。
【0024】
状態監視装置10は、CPU3が基準信号源4からの基準信号を処理した結果に基づいてアナログフロントエンド回路1の異常診断を行う機能を有している。状態監視装置10は、当該機能を有するために基準信号源4およびスイッチ6が必要となる。しかし、状態監視装置10は、信号源20や信号源20とアナログフロントエンド回路1とを繋ぐ配線からサージ電圧が侵入すると基準信号源4およびスイッチ6が破壊される可能性がある。そこで、状態監視装置10は、スイッチ6とアナログフロントエンド回路1との間に受動回路7を設けることで、サージ電圧などの異常入力から基準信号源4およびスイッチ6を保護している。
【0025】
ただし、スイッチ6とアナログフロントエンド回路1との間に受動回路7を設けることで、基準信号の出力インピーダンスが受動回路7によって高くなる。そこで、状態監視装置10は、基準信号がアナログフロントエンド回路1に入力されるために、アナログフロントエンド回路1と受動回路7との接続点と、信号源20との間に遮断回路5を設けている。
【0026】
(アナログフロントエンド回路1の異常診断)
次に、状態監視装置10において行うアナログフロントエンド回路1の異常診断の診断方法について説明する。図2は、実施の形態に係る状態監視装置10の異常診断方法を説明するためのフローチャートである。まず、CPU3は、アナログフロントエンド回路1の異常診断(診断モード)を開始する。CPU3は、アナログフロントエンド回路1の異常診断を常に行っているのではなく、間欠的に行われている。そのため、CPU3は、アナログフロントエンド回路1の異常診断を行うための何らかのトリガが必要となる。当該トリガとして、たとえば一定時間の経過(1週間ごと、)や、特定の日時(日曜日の深夜)、または監視(計測)の結果に異常値が現れたタイミングなどである。
【0027】
CPU3は、アナログフロントエンド回路1の異常診断を開始すると、まず遮断回路5で信号源20からアナログフロントエンド回路1に入力するアナログ信号を遮断する(ステップS101)。
【0028】
CPU3は、スイッチ6を閉状態(close)にして、基準信号源4とアナログフロントエンド回路1とを接続する(ステップS102)。
【0029】
CPU3は、アナログフロントエンド回路1に対して基準信号源4から基準信号を出力する(ステップS103)。基準信号源4から基準信号を出力するのは、消費電力やノイズ低減の観点からアナログフロントエンド回路1の異常診断を行う期間のみであることが好ましい。もちろん、基準信号源4は、常に基準信号を出力する構成でもよい。この場合、CPU3は、ステップS103の処理をスキップする。
【0030】
CPU3は、AD変換回路2でデジタル信号に変換された基準信号を処理する(ステップS104)。つまり、CPU3は、基準信号に基づく計測値などの処理結果を求める。
【0031】
CPU3は、基準信号の処理結果に基づいてアナログフロントエンド回路1の異常診断を行う(ステップS105)。具体的に、CPU3は、基準信号の処理結果と基準結果とを比較することで、アナログフロントエンド回路1が異常であるか否かの診断を行う。CPU3は、基準結果として、たとえば基準信号源4の基準信号から想定される信号をあらかじめ記憶しておき、記憶してある基準結果と基準信号の処理結果を比較してアナログフロントエンド回路1の異常を判断する。なお、CPU3は、図示していないが基準結果を記憶する不揮発性のメモリを有している。
【0032】
または、CPU3は、基準結果として、たとえば正常なアナログフロントエンド回路1に対して行った基準信号の処理結果をあらかじめ記憶しておき、記憶してある基準結果と基準信号の処理結果を比較してアナログフロントエンド回路1の異常を判断する。さらに、状態監視装置10が複数のアナログフロントエンド回路1を有する場合、CPU3は、基準結果として、他のアナログフロントエンド回路1を経由した信号を処理した結果を採用し、採用した基準結果と基準信号の処理結果との差異でアナログフロントエンド回路1の異常を判断する。
【0033】
たとえば、基準結果として、たとえば正常なアナログフロントエンド回路1に対して行った基準信号の処理結果をあらかじめ記憶する方法であれば、比較的簡易な方法で正確にアナログフロントエンド回路1の異常を判断でき、個体差の影響も少なく、基準信号そのものは未知でもよい。また、基準結果として、他のアナログフロントエンド回路1を経由した信号を処理した結果を採用する方法であれば、動作温度や経年劣化など、正常な範囲でアナログフロントエンド回路1の特性の変化を正しく評価しやすく、基準信号そのものは未知でもよい。
【0034】
なお、CPU3で処理する処理結果には、モータの回転軸の角度値や軸受の振動量などの計測値に限られず、波形、スペクトログラム、特徴量(平均値や実効値、ピーク周波数など)などであってもよい。
【0035】
CPU3は、アナログフロントエンド回路1に対して基準信号源4から基準信号を出力しているのを停止する(ステップS106)。基準信号源4から基準信号を出力するのは、消費電力やノイズ低減の観点からアナログフロントエンド回路1の異常診断を行う期間のみであることが好ましいが、基準信号源4が、常に基準信号を出力する構成の場合、CPU3は、ステップS106の処理をスキップする。
【0036】
CPU3は、スイッチ6を開状態(open)にして、基準信号源4とアナログフロントエンド回路1との接続を切断する(ステップS107)。
【0037】
CPU3は、アナログフロントエンド回路1の異常診断を終了するため、遮断回路5において遮断していた信号源20からアナログフロントエンド回路1へのアナログ信号の入力を再開する(ステップS108)。つまり、CPU3は、アナログフロントエンド回路1の異常診断(診断モード)を終了し、信号源20からのアナログ信号を計測する計測モードに戻す。
【0038】
なお、図2に示したフローチャートは一例であり、ステップS101~ステップS103の順番を入れ替えてもよい。ただし、ステップS101の処理は、ステップS102の処理よりも先に実行されることが好ましい。これは、信号源20からのアナログ信号を遮断していない場合、基準信号源4へ影響を与える可能性があり、基準信号が信号源20へ逆流する虞もあるためである。
【0039】
また、ステップS106~ステップS108の順番を入れ替えてもよい。ただし、ステップS107の処理は、ステップS108の処理よりも先に実行されることが好ましい。これは、基準信号源4からのアナログ信号を遮断していない場合、信号源20へ影響を与える可能性があり、アナログ信号が基準信号源4へ逆流する虞もあるためである。
【0040】
さらに、ステップS105の処理は、ステップS106~ステップS108の処理と順番が入れ替わってよく、ステップS105の処理と、ステップS106~ステップS108の処理とを並行に処理を実施してもよい。
【0041】
(変形例)
次に、本実施の形態に係る状態監視装置10の変形例について説明する。図3は、変形例に係る状態監視装置10aの構成を概略的に示す図である。なお、図3に示す状態監視装置10aにおいて、図1に示す状態監視装置10と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0042】
図3に示す状態監視装置10aは、アナログフロントエンド回路1と、AD変換回路2と、CPU3と、基準信号源4と、遮断回路5と、スイッチ6と、受動回路7と、保護回路8とを備える。アナログフロントエンド回路1は、信号源20からのアナログ信号を受信する。なお、状態監視装置10aにおいて、電源装置や記憶装置、外部のサーバなど、動作に要/不要を問わず、本開示に関連しない要素については省いている。信号源20は、たとえば振動センサや電流センサ、アナログ電圧出力機器などであり、監視対象の状態を計測しアナログ信号として出力するセンサや機器などである。
【0043】
状態監視装置10aでは、サージ電圧などの異常信号の入力から、より確実にスイッチ6や基準信号源4などの回路を保護ために、スイッチ6と受動回路7との間に配置され、基準信号源4を電気的に保護する保護回路8をさらに設けている。保護回路8は、たとえば基準信号源4と接続される信号線と、電源線(GND含む)との間に保護素子を挿入した構造である。保護素子には、たとえば、キャパシタ、抵抗、クランプダイオード、ツェナーダイオード(TVS(Transient Voltage Suppressor)ダイオードを含む)、バリスタなどが含まれる。
【0044】
(態様)
(1) 本開示に係る状態監視装置は、異常診断が可能な状態監視装置であって、
信号源からのアナログ信号を受信するアナログフロントエンド回路と、
アナログフロントエンド回路で処理されたアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路と、
AD変換回路で変換されたデジタル信号を処理する演算処理回路と、
アナログフロントエンド回路の異常診断を行うための基準信号を発信する基準信号源と、
信号源とアナログフロントエンド回路との間に配置され、信号源からのアナログ信号を遮断する遮断回路と、
基準信号源とアナログフロントエンド回路との間に配置され、アナログフロントエンド回路が受信する信号を信号源からのアナログ信号か、基準信号源からの基準信号かを切り替えるスイッチと、
スイッチとアナログフロントエンド回路との間に配置され、入力されるサージ電圧から基準信号源およびスイッチを保護する受動回路と、を備え、
演算処理回路は、基準信号源からの基準信号を処理した結果に基づいてアナログフロントエンド回路の異常診断を行う。
【0045】
これにより、本開示に係る状態監視装置は、スイッチとアナログフロントエンド回路との間に受動回路が配置されているので、アナログフロントエンド回路の異常診断を行うための構成の故障を防止して、信頼性の高い状態監視を行うことができる。
【0046】
(2)(1)に記載の状態監視装置において、遮断回路は、半導体スイッチを含む。これにより、状態監視装置は、異常診断の工数を削減したり、異常診断を行うことができる回数を向上させたりできると共に、状態監視装置の基板サイズや製造コストを低減することができる。
【0047】
(3)(1)または(2)に記載の状態監視装置において、基準信号源は、デジタル信号またはアナログ信号を発生する発生回路を含む。これにより、基準信号源は、様々な基準信号を発生させることができる。
【0048】
(4)(1)~(3)のいずれか1項に記載の状態監視装置において、スイッチは、半導体スイッチである。これにより、状態監視装置は、異常診断の工数を削減したり、異常診断を行うことができる回数を向上させたりできると共に、状態監視装置の基板サイズや製造コストを低減することができる。
【0049】
(5)(1)~(4)のいずれか1項に記載の状態監視装置において、受動回路は、インダクタンス成分を含む電子素子を含む。これにより、サージ電圧(雷サージなどの異常信号含む)から基準信号源およびスイッチを保護することができる。
【0050】
(6)(1)~(5)のいずれか1項に記載の状態監視装置において、演算処理回路は、基準信号源からの基準信号を処理した結果と、あらかじめ記憶されている基準結果とを比較して、アナログフロントエンド回路の異常診断を行う。これにより、比較的簡易な方法で正確にアナログフロントエンド回路の異常を診断することができ、個体差の影響も少ない。
【0051】
(7)(1)~(5)のいずれか1項に記載の状態監視装置において、演算処理回路は、基準信号源からの基準信号を処理した結果と、他のアナログフロントエンド回路を経由した信号を処理した結果とを比較して、アナログフロントエンド回路の異常診断を行う。これにより、動作温度や経年劣化など、正常な範囲でアナログフロントエンド回路の特性の変化を正しく評価しやすい。
【0052】
(8)(1)~(7)のいずれか1項に記載の状態監視装置において、スイッチと受動回路との間に配置され、基準信号源を電気的に保護する保護回路を、さらに備える。これにより、サージ電圧(雷サージなどの異常信号含む)から基準信号源およびスイッチをさらに保護することができる。
【0053】
(9)本開示に係る診断方法は、信号源からのアナログ信号を受信するアナログフロントエンド回路と、アナログフロントエンド回路で処理されたアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路と、AD変換回路で変換されたデジタル信号を処理する演算処理回路と、アナログフロントエンド回路の異常診断を行うための基準信号を発信する基準信号源と、信号源とアナログフロントエンド回路との間に配置され、信号源からのアナログ信号を遮断する遮断回路と、基準信号源とアナログフロントエンド回路との間に配置され、アナログフロントエンド回路が受信する信号を信号源からのアナログ信号か、基準信号源からの基準信号かを切り替えるスイッチと、スイッチとアナログフロントエンド回路との間に配置され高抵抗素子と、を備える、状態監視装置において、アナログフロントエンド回路の異常診断を行う診断方法であって、
アナログフロントエンド回路が信号源からのアナログ信号を受信できないように、遮断回路で信号源からのアナログ信号を遮断するステップと、
基準信号源からの基準信号をアナログフロントエンド回路が受信できるようにスイッチを切り替えるステップと、
演算処理回路で基準信号源からの基準信号を処理した結果に基づいてアナログフロントエンド回路の異常診断を行うステップと、を含む。
【0054】
これにより、本開示に係る診断方法は、スイッチとアナログフロントエンド回路との間に受動回路が配置されている状態監視装置を用いてアナログフロントエンド回路の異常診断を行うので、アナログフロントエンド回路の異常診断を行うための構成の故障を防止して、信頼性の高い状態監視を行うことができる。
【0055】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
1 アナログフロントエンド回路、2 変換回路、4 基準信号源、5 遮断回路、6 スイッチ、7 受動回路、8 保護回路、10,10a 状態監視装置、20 信号源。
図1
図2
図3