(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014381
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】係留具
(51)【国際特許分類】
E05B 71/00 20060101AFI20250123BHJP
E05B 73/00 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
E05B71/00 G
E05B73/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116888
(22)【出願日】2023-07-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年3月6日に大阪市東淀川区東淡路3丁目および5丁目にて鈴木加代子,津村雅子,垣見直樹,川口勝範が公開 令和5年3月8日にニトリモール枚方駐輪場にて津村雅子が公開 令和5年3月12日に近鉄奈良線学園前駅北側地域および北コミュニティセンター Ista はばたきにて鈴木加代子が公開 令和5年3月14日に奈良県磯城郡田原本町阪手にて鈴木加代子,垣見直樹,津村雅子,林正佳が公開 令和5年4月3日に和気産業株式会社本社駐車場にて鈴木加代子および土手優人が公開 令和5年4月27日にアドレス https://www.makuake.com/project/unbreakable/およびhttps://www.makuake.com/project/unbreakable/communication/にかかる株式会社マクアケのウェブサイトにて和気産業株式会社が公開
(71)【出願人】
【識別番号】595171381
【氏名又は名称】和気産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(74)【代理人】
【識別番号】100142376
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 加代子
(72)【発明者】
【氏名】垣見 直樹
(57)【要約】
【課題】係留に寄与する部分の長さの調整を容易とし、かつ、その調整に寄与する手段の破壊リスクを軽減する。
【解決手段】係留具10は、ひも20と拘束錠22とを備える。拘束錠22は、ひも20のいずれかの箇所を拘束する。ひも20には複数の貫通孔60,60,60,62が形成されている。拘束錠22が、貫通軸体80と、一方端面形成体82と、他方端面形成体84と、軸動制限部122とを有している。端面最大間隔が貫通孔形成箇所厚さのうち最も薄いものと3番目に薄いものとの合計を超える。最大占有厚さを端面最大間隔から差し引いて得られる値が、次に述べられる直線距離の対のうち大きい方未満である。その直線距離は、一方端面100と他方端面140とのうち差し渡しの最小値が小さい方における差し渡しが最小値となる箇所の縁から貫通軸体80の外周までの直線距離である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひもと、
前記ひものいずれかの箇所を拘束する拘束錠とを備える係留具であって、
前記ひもには少なくとも3つの貫通孔が形成されており、
前記ひもに形成されている前記貫通孔のいずれかが、他の前記貫通孔のうち少なくとも2つと前記ひもの屈曲に伴って少なくとも個別に重ね得るように配置されており、
前記拘束錠が、
前記少なくとも3つの貫通孔のいずれの差し渡しの最小値よりも差し渡しの最大値が小さい貫通軸体と、
一方端面を有する一方端面形成体と、
他方端面を有する他方端面形成体とを有しており、
前記一方端面の差し渡しの最小値は前記貫通軸体の差し渡しの最大値よりも大きく、
前記他方端面の差し渡しの最小値は前記貫通軸体の差し渡しの最大値よりも大きく、
前記貫通軸体の一端が前記一方端面に固定されており、
前記一方端面と前記他方端面とが互いに沿うように対向するとき前記一方端面から前記他方端面へ向かう方向に前記貫通軸体が沿っており、
前記他方端面には前記貫通軸体の他端が進入するための進入孔が形成されており、
前記他方端面形成体が、
前記他方端面、前記進入孔、および、空間を形成する他方外殻と、
前記他方外殻により形成される前記空間に収容されており、前記貫通軸体の前記他端が前記他方外殻により形成される前記空間の内部へ前記進入孔を介して進入すると前記貫通軸体の進退を制限する軸動制限部とを有しており、
前記軸動制限部が前記貫通軸体の進退を制限する際の前記一方端面と前記他方端面との最大間隔である端面最大間隔が、前記貫通孔が形成されている箇所における前記ひもの厚さである貫通孔形成箇所厚さのうち最も薄いものと3番目に薄いものとの合計を超え、
前記貫通孔形成箇所厚さの組み合わせであって合計が前記端面最大間隔未満となるものの中で最大となるものにおける前記貫通孔形成箇所厚さの和である最大占有厚さを前記端面最大間隔から差し引いて得られる値が、前記一方端面と前記他方端面とのうち前記差し渡しの最小値が小さい方における前記差し渡しが最小値となる箇所の縁から前記貫通軸体の外周までの直線距離の対のうち大きい方未満であることを特徴とする係留具。
【請求項2】
前記ひもの一端が、前記ひもの他端が貫通可能な環状となっていることを特徴とする請求項1記載の係留具。
【請求項3】
他の前記貫通孔のうち少なくとも2つと前記ひもの屈曲に伴って少なくとも個別に重ね得る前記貫通孔が、個別に重ね得る他の前記貫通孔のうち2つに同時に重ね得るように配置されていることを特徴とする請求項2記載の係留具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は係留具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1はワイヤ錠を開示する。このワイヤ錠は、ワイヤ体と、キーシリンダと、キーとを備える。キーシリンダは、ワイヤ体の一端部に取り付けられる。キーシリンダは、その頭部に係止部を有する。キーは、ワイヤ体の他端部に取り付けられる。キーは、キーシリンダへ挿入される。これにより、ワイヤ体は環状に施錠される。特許文献1に開示されたワイヤ錠は自転車等の盗難防止のために用いられ得る。
【0003】
特許文献2はワイヤ錠を開示する。特許文献2に開示されたワイヤ錠は、連結ロック錠本体と、ワイヤ体と、中間緊張具とからなる。ワイヤ体は、所要の弾力で復帰しようとする弾性を備える。ワイヤ体は、連結ロック錠本体に接続する。中間緊張具は、ワイヤ体の中間を、ワイヤ体の復帰弾力に抗して所要間隔に維持する。中間緊張具は、復帰弾力で中間挟持支承面を構成する。特許文献2に開示されたワイヤ錠は、フレームパイプと同形の細長い形状に変形することができ、しかも、コンパクトに装備して携帯できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭58-047185号公報
【特許文献2】特開平10-280773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2に開示されたワイヤ錠には、ワイヤ体のうち係留に寄与する部分の長さ調整が困難という問題点がある。
【0006】
また、上述の調整を可能とする従前の手段が特許文献1および特許文献2に開示されたワイヤ錠に採用された場合、しばしば、その手段のいずれかの箇所の破壊が特に容易となりやすい。そのような破壊が特に容易な箇所があると、そこを破壊され被係留物が盗難に遭う可能性が高くなる。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、係留に寄与する部分の長さの調整を容易とし、かつ、その調整に寄与する手段の破壊リスクを軽減できる係留具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
図面に基づいて本発明の係留具が説明される。なおこの欄で図中の符号を使用したのは発明の内容の理解を助けるためである。この欄で図中の符号を使用することには発明の内容を図示した範囲に限定する意図がない。
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明のある局面に従うと、係留具10は、ひも20と拘束錠22とを備える。拘束錠22は、ひも20のいずれかの箇所を拘束する。ひも20には少なくとも3つの貫通孔60,60,60,62が形成されている。ひも20に形成されている貫通孔60,60,60,62のいずれかは、他の貫通孔60,60,60,62のうち少なくとも2つとひも20の屈曲に伴って少なくとも個別に重ね得るように配置されている。拘束錠22が、貫通軸体80と、一方端面形成体82と、他方端面形成体84とを有している。貫通軸体80は、少なくとも3つの貫通孔60,60,60,62のいずれの差し渡しの最小値よりも差し渡しの最大値が小さい。一方端面形成体82は、一方端面100を有する。他方端面形成体84は、他方端面140を有する。一方端面100の差し渡しの最小値は貫通軸体80の差し渡しの最大値よりも大きい。他方端面140の差し渡しの最小値は貫通軸体80の差し渡しの最大値よりも大きい。貫通軸体80の一端が一方端面100に固定されている。次に述べられる方向に貫通軸体80が沿っている。その方向は、次に述べられるとき一方端面100から他方端面140へ向かう方向である。それは一方端面100と他方端面140とが互いに沿うように対向するときである。他方端面140には進入孔142が形成されている。進入孔142は、他方端面140に貫通軸体80の他端が進入するためのものである。他方端面形成体84が、他方外殻120と、軸動制限部122とを有している。他方外殻120は、他方端面140、進入孔142、および、空間144を形成する。軸動制限部122は、他方外殻120により形成される空間144に収容されている。軸動制限部122は、貫通軸体80の他端が他方外殻120により形成される空間144の内部へ進入孔142を介して進入すると貫通軸体80の進退を制限する。端面最大間隔が、貫通孔形成箇所厚さのうち最も薄いものと3番目に薄いものとの合計を超える。端面最大間隔とは、軸動制限部122が貫通軸体80の進退を制限する際の一方端面100と他方端面140との最大間隔のことである。貫通孔形成箇所厚さとは、貫通孔60,60,60,62が形成されている箇所におけるひも20の厚さのことである。最大占有厚さを端面最大間隔から差し引いて得られる値が、次に述べられる直線距離の対のうち大きい方未満である。その直線距離は、一方端面100と他方端面140とのうち差し渡しの最小値が小さい方における差し渡しが最小値となる箇所の縁から貫通軸体80の外周までの直線距離である。最大占有厚さとは、貫通孔形成箇所厚さの組み合わせであって合計が端面最大間隔未満となるものの中で最大となるものにおける貫通孔形成箇所厚さの和のことである。
【0010】
ひも20には少なくとも3つの貫通孔60,60,60,62が形成されている。ひも20に形成されている貫通孔60,60,60,62のいずれかは、他の貫通孔60,60,60,62のうち少なくとも2つとひも20の屈曲に伴って重ね得るように配置されている。貫通軸体80は、少なくとも3つの貫通孔60,60,60,62のいずれの差し渡しの最小値よりも差し渡しの最大値が小さい。これにより、貫通軸体80は、少なくとも3つの貫通孔60,60,60,62のうち少なくとも2つを貫通し得る。さらに、端面最大間隔が貫通孔形成箇所厚さのうち最も薄いものと3番目に薄いものとの合計を超えることにより、少なくとも3つの貫通孔60,60,60,62のうち少なくとも2つを貫通した貫通軸体80の他端が進入孔142を介して他方外殻120により形成される空間144の内部に進入できる。貫通軸体80の他端が他方外殻120により形成される空間144の内部に進入すると軸動制限部122は貫通軸体80の進退を制限する。これにより、係留が可能となる。しかも、貫通軸体80が貫通する貫通孔60,60,60,62の組み合わせに応じて、係留に寄与する部分の長さの調整が容易となる。
【0011】
また、上述された本発明のある局面においては、一方端面100と他方端面140との間に在ってひも20の貫通孔60,60,60,62を貫通している貫通軸体80を工具でせん断するためには、一方端面100と他方端面140との間に形成される隙間がその工具の刃の厚さよりも大きくなくてはならない。工具の刃が片刃でその先端がなす角が例えばπ/4ラジアンのとき、その刃の先端の尖った箇所からその刃の付け根までの高さはその刃の付け根部分の厚さに等しくなる。その工具の刃が両刃でその先端がなす角が例えばπ/2ラジアンのとき、その刃の先端の尖った箇所からその刃の付け根までの高さはその刃の付け根部分の厚さの半分に等しくなる。これにより、一方端面100と他方端面140との間に形成される隙間がこれらの厚さよりも狭ければ、刃の先端がなす角が上述されたもののような大きな工具によって貫通軸体80がせん断されることを防止できることとなる。
【0012】
貫通孔60,60,60,62のいずれかを貫通している貫通軸体80が軸動制限部122により進退を制限されていると、一方端面100と他方端面140との間に形成される隙間は貫通する貫通孔60,60,60,62の数に応じたものとなる。貫通する貫通孔60,60,60,62の数が最も多くなりその隙間が最も小さくなるときにその隙間が上述された刃の厚さよりも狭ければ、少なくともその場合には貫通軸体80がせん断されることを防止できることとなる。貫通する貫通孔60,60,60,62の数が最も多くなりその隙間が最も小さくなるときとは、最大占有厚さを端面最大間隔から差し引いて得られる値が次に述べられる直線距離未満であるときである。その直線距離は、一方端面100と他方端面140とのうち差し渡しの最小値が小さい方における差し渡しが最小値となる箇所の縁から貫通軸体80の外周までの直線距離の対のうち大きい方である。これにより、刃の先端がなす角が上述されたもののような大きな工具によって貫通軸体80がせん断されることを防止できる。
【0013】
最大占有厚さを端面最大間隔から差し引いて得られる値が上述された直線距離未満であっても、次に述べられる場合には貫通軸体80のせん断が可能となり得る。その場合とは、一方端面形成体82と他方端面形成体84との間で形成できる隙間へ進入する刃が、例えば片刃でその先端がなす角がπ/4ラジアンよりも小さいものであるような、いわゆる薄い刃の場合である。しかしながら、そういった刃は上述された先端がなす角が大きな刃に比べて変形が生じやすくなる。変形が生じる場合には貫通軸体80のせん断は困難である。したがって、この点で貫通軸体80を挟みこれをせん断し得る工具は限られることとなる。
【0014】
以上述べられたように、刃の先端がなす角が大きな工具によって貫通軸体80がせん断されることが防止され、刃の先端がなす角が小さな工具のうち貫通軸体80をせん断し得る工具は限られる。その結果、本発明のある局面に従う係留具10は、係留に寄与する部分の長さの調整に寄与する手段の破壊リスクを軽減できる。
【0015】
また、本発明のある局面に従う係留具10において、上述されたひも20の一端42が環状となっていることが望ましい。その一端42をひも20の他端が貫通可能であることが望ましい。これにより、その環状となっている一端42をひも20の他端が貫通すると、ひも20はその一端42とは異なる環状部分を形成可能となる。そのような環状部分が形成され得ると、係留に寄与する部分の長さの調整がより容易となる。
【0016】
もしくは、本発明のある局面に従う係留具10において、上述された他の貫通孔60,60,60,62のうち少なくとも2つとひも20の屈曲に伴って少なくとも個別に重ね得る貫通孔60が、個別に重ね得る他の貫通孔60,60,60のうち2つに同時に重ね得るように配置されていることが望ましい。これにより、次に述べられる場合、一方端面100と他方端面140との間に生じる隙間を小さくできる。その場合とは、ひも20の一端42をひも20の他端が貫通して輪を形成する一方、それら少なくとも3つの貫通孔60,60,60,62のいずれかの対を貫通軸体80が貫通してさらに別の輪を形成する場合である。上述された隙間を小さくできるのは、後者の輪の形成に寄与しない貫通孔60を貫通軸体80がさらに貫通可能となるためである。後者の輪の形成に寄与しない貫通孔60を貫通軸体80がさらに貫通すると、ひも20のうちその貫通孔60の周囲の部分が上述された隙間を占めることとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、係留に寄与する部分の長さの調整を容易とし、かつ、その調整に寄与する手段の破壊リスクを軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のある実施形態にかかる係留具の外観図である。
【
図2】本発明のある実施形態にかかるひもの外観図である。
【
図3】本発明のある実施形態にかかる拘束錠の外観図である。
【
図4】本発明のある実施形態にかかる一方端面と他方端面との間に形成される隙間が示される図である。
【
図5】本発明のある実施形態にかかる胴貫通孔と付根貫通孔とを貫通軸体が貫通しその貫通軸体が進入孔内へ進入している状況が示される図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明される。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0020】
[構成の説明]
図1は本実施形態にかかる係留具10の外観図である。
図1に基づいて、本実施形態にかかる係留具10の構成が説明される。
【0021】
本実施形態にかかる係留具10は、ひも20と拘束錠22とを備える。ひも20は、図示されない被係留物と図示されない固着物とを連結する。本実施形態の場合、被係留物の例には自転車がある。固着物の例には地面に固定され縦方向に延びる鋼管が横方向に並んでいる柵がある。もちろん、被係留物も固着物もこれらに限定されない。拘束錠22は、ひも20のいずれかの箇所を拘束する。
【0022】
図2は本実施形態にかかるひも20の外観図である。
図2において、ひも20のうち途中部分は省略されている。
図2において、ひも20の胴部40のうち環状端部42に接する箇所はねじられた状態で示されている。
図2に基づいて、本実施形態にかかるひも20の構成が説明される。
【0023】
本実施形態にかかるひも20は、胴部40と、環状端部42とを有する。本実施形態にかかる胴部40は、帯状に織られた織物に対して後述される貫通孔が形成されたものである。上述された織物は高強度の糸を織ったものである。また、その織物には細い鋼線も織り込まれている。これにより、本実施形態にかかる胴部40をナイフおよびハサミといった一般的な切断道具で切断することは困難となっている。環状端部42は、胴部40を構成する織物の一端が折り曲げられその一端がその織物に固定されたものである。これにより、環状端部42は、ひも20の一端に形成され胴部40の端ひいてはひも20の他端が貫通可能な環状となっている。
【0024】
本実施形態にかかる胴部40には胴貫通孔60,60,60が3箇所形成されている。それら3つの胴貫通孔60,60,60の縁には周知のハトメが固定されている。これにより、それら3つの胴貫通孔60,60,60の縁がほつれることは防止される。なお、本実施形態の場合、胴貫通孔60,60,60は、いずれも、他の胴貫通孔60,60,60とひも20の屈曲に伴って同時に重ね得るように配置されている。これにより、重ねられた3つの胴貫通孔60,60,60を後述される貫通軸体80が貫通可能である。当然、胴貫通孔60,60,60は、いずれも、他の胴貫通孔60,60,60のうち一方とのみ重ね得る。また、本実施形態の場合、胴貫通孔60,60,60の縁に固定されているハトメの内周は円形である。これにより、胴貫通孔60,60,60の差し渡しは一様となる。胴貫通孔60,60,60の差し渡しは胴貫通孔60,60,60の内径に等しくなる。
【0025】
本実施形態の場合、環状端部42の付け根には付根貫通孔62が形成されている。その付根貫通孔62の縁にも周知のハトメが固定されている。この付根貫通孔62の縁に固定されているハトメは、上述された織物の一端をその織物に固定するための金具を兼ねている。その付根貫通孔62は、3つの胴貫通孔60,60,60とひも20の屈曲に伴って個別に重ね得る。また、本実施形態の場合、付根貫通孔62の縁に固定されているハトメの内周は円形である。これにより、付根貫通孔62の差し渡しは一様となる。付根貫通孔62の差し渡しは付根貫通孔62の内径に等しくなる。
【0026】
本実施形態においては、胴貫通孔60,60,60と付根貫通孔62とは「貫通孔」と総称される。
【0027】
図3は、本実施形態にかかる拘束錠22の外観図である。
図3に基づいて、本実施形態にかかる拘束錠22の構成が説明される。
【0028】
本実施形態の場合、拘束錠22は、貫通軸体80と、一方端面形成体82と、他方端面形成体84とを有している。
【0029】
貫通軸体80は、その一端が一方端面形成体82に固定されその他端が他方端面形成体84内へ進入するものである。本実施形態の場合、貫通軸体80のうち他方端面形成体84内に進入する部分に形成された2箇所の溝および他端の錐台状となっている箇所以外の部分は円柱状である。それら2箇所の溝の一方にはシール材90が嵌められている。それら2箇所の溝の他方には後述される軸動制限部122の一部が嵌まる。これにより、貫通軸体80の差し渡しは、一方端面形成体82と他方端面形成体84との間に配置される部分については一様となる。この部分において貫通軸体80の差し渡しは貫通軸体80の直径に等しくなる。本実施形態の場合、貫通軸体80の直径は、胴貫通孔60,60,60および付根貫通孔62のいずれの内径よりも小さい。これにより、貫通軸体80の差し渡しの最大値が、胴貫通孔60,60,60および付根貫通孔62のいずれの差し渡しの最小値よりも小さいこととなる。
【0030】
一方端面形成体82は、一方端面100を有する。貫通軸体80の一端は一方端面100に固定されている。本実施形態にかかる一方端面100は、円形かつ平滑な平面である。したがって本実施形態の場合において一方端面100の差し渡しは一様となる。一方端面100の差し渡しは一方端面100の直径に等しくなる。
図3から明らかなように、本実施形態の場合、一方端面100の直径は貫通軸体80の直径よりも大きい。これにより、本実施形態の場合において、一方端面100の差し渡しの最小値は貫通軸体80の差し渡しの最大値よりも大きいこととなる。
【0031】
他方端面形成体84は、他方端面140を有する。一方端面100と同様に、本実施形態にかかる他方端面140も円形かつ平滑な平面である。したがって本実施形態の場合において他方端面140の差し渡しは一様となる。他方端面140の差し渡しは他方端面140の直径に等しくなる。
図3から明らかなように、本実施形態の場合、他方端面140の直径は貫通軸体80の直径よりも大きい。これにより、本実施形態の場合において、他方端面140の差し渡しの最小値は貫通軸体80の差し渡しの最大値よりも大きいこととなる。
【0032】
図3から明らかなように、本実施形態の場合、一方端面100と他方端面140とは互いに沿うように対向する。この場合、貫通軸体80は、一方端面100から他方端面140へ向かう方向に沿う。
【0033】
本実施形態の場合、他方端面形成体84が、他方外殻120と、軸動制限部122と、鍵蓋124とを有している。
【0034】
他方外殻120は、上述された他方端面140を形成する。他方外殻120は、進入孔142、および、空間144をさらに形成する。本実施形態の場合、進入孔142は他方端面140の中央に形成される。他方外殻120が形成する空間144は、進入孔142を介して他方外殻120の外と連通する。
【0035】
軸動制限部122は、他方外殻120により形成される空間144に収容されている。軸動制限部122は、貫通軸体80の他端が他方外殻120により形成される空間144の内部へ進入孔142を介して進入すると貫通軸体80の進退を制限する。軸動制限部122は、後述される図示されない鍵穴を形成する。その鍵穴に図示されない鍵が挿入され軸動制限部122が操作されると軸動制限部122は貫通軸体80の進退に関する制限を解除する。なお、そのような制限および制限の解除を実現するための具体的な構造は「ヒッチロック」と呼ばれる周知の錠のものと同様である。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返されない。
【0036】
鍵蓋124は、他方外殻120が形成する空間144の端を着脱自在に塞ぐ。上述されたように、軸動制限部122は、他方外殻120が形成する空間144の内部に収容されている。これにより、鍵蓋124が取り除かれると、軸動制限部122が有する図示されない鍵穴が露出する。
【0037】
図4は、本実施形態にかかる一方端面100と他方端面140との間に形成される隙間が示される図である。
図3および
図4に基づいて、本実施形態にかかる端面最大間隔と最大占有厚さとの関係が説明される。
【0038】
上述されたように、本実施形態の場合、軸動制限部122は、貫通軸体80の他端が他方外殻120により形成される空間144の内部へ進入孔142を介して進入すると貫通軸体80の進退を制限する。その際、貫通軸体80および軸動制限部122の寸法誤差その他の要因で貫通軸体80は若干の進退が可能となる。そのような若干の進退に伴い、一方端面100と他方端面140との間隔は若干の変動が可能となる。そのような若干の変動に伴い、一方端面100と他方端面140との間隔には最大値と最小値とが存在することとなる。本実施形態の場合、その最大値が端面最大間隔となる。端面最大間隔とは、軸動制限部122が貫通軸体80の進退を制限する際の一方端面100と他方端面140との最大間隔のことだからである。ここでは、一方端面100と他方端面140との間隔が最大となっている状況が
図4において示されていることとする。
【0039】
上述されたように、貫通孔形成箇所厚さとは、胴貫通孔60,60,60および付根貫通孔62が形成されている箇所におけるひも20の厚さのことである。本実施形態の場合、胴貫通孔60,60,60および付根貫通孔62のそれぞれにおいてハトメが固定されているので、本実施形態にかかる貫通孔形成箇所厚さはハトメの厚さでもある。その際、ハトメの寸法誤差その他の要因で胴貫通孔60,60,60にかかる貫通孔形成箇所厚さには若干のバラツキがある。付根貫通孔62に固定されているハトメは上述された織物2枚に固定されるものなので、付根貫通孔62にかかる貫通孔形成箇所厚さは胴貫通孔60,60,60にかかる貫通孔形成箇所厚さと異なる。これにより、胴貫通孔60,60,60および付根貫通孔62のうち貫通孔形成箇所厚さには順位が生じる。本実施形態の場合、端面最大間隔は、貫通孔形成箇所厚さのうち最も薄いものと3番目に薄いものとの合計を超える。これにより、貫通軸体80の他端は、胴貫通孔60,60,60および付根貫通孔62のうち貫通孔形成箇所厚さが最も薄いものと3番目に薄いものとを貫通した状態で、他方外殻120が形成する空間144の内部へ進入し得る。当然、貫通軸体80の他端は、胴貫通孔60,60,60および付根貫通孔62のうち貫通孔形成箇所厚さが最も薄いものと2番目に薄いものとを貫通した状態で、他方外殻120が形成する空間144の内部へ進入し得る。
図4においては、貫通軸体80が3つの胴貫通孔60,60,60を貫通している状態が示されている。
【0040】
本実施形態の場合、貫通軸体80が胴貫通孔60,60,60および付根貫通孔62のうち少なくとも2つを貫通し得るので、貫通軸体80が貫通する胴貫通孔60,60,60および付根貫通孔62の組み合わせには様々なものがある。その組み合わせに応じて、貫通孔形成箇所厚さの和も様々なものとなる。これにより、貫通孔形成箇所厚さの和には最大値と最小値とがあることとなる。その最大値が本実施形態にかかる最大占有厚さとなる。本実施形態にかかる最大占有厚さとは、貫通孔形成箇所厚さの組み合わせであって合計が端面最大間隔未満となるものの中で最大となるものにおける貫通孔形成箇所厚さの和のことだからである。本実施形態においては、3つの胴貫通孔60,60,60の貫通孔形成箇所厚さの和が最大占有厚さであることとする。これにより、
図4に示された隙間の幅160の値が最大占有厚さを端面最大間隔から差し引いて得られる値に等しいこととなる。
【0041】
図4から明らかなように、本実施形態の場合、他方端面140の直径は、一方端面100の直径よりも小さい。これにより、他方端面140における差し渡しの最小値が、一方端面100における差し渡しの最小値よりも小さいこととなる。本実施形態の場合、他方端面140の縁から貫通軸体80の外周までの直線距離162,164は等しい。
図4から明らかなように、
図4に示された隙間の幅160は、それら直線距離162,164よりも大幅に狭い。これにより、最大占有厚さを端面最大間隔から差し引いて得られる値は、それら直線距離162,164の対のうち大きい方未満となる。
【0042】
[使用方法の説明]
本実施形態にかかる係留具10の使用方法の第1の例は以下の通りである。まず、ユーザは、固着物のうち本実施形態にかかるひも20が抜けない箇所に本実施形態にかかるひも20の環状端部42を通す。当然、そのひも20が抜けない箇所は容易に壊れない箇所であることが望ましい。固着物が上述された柵の場合、そのようなひも20が抜けない箇所の例には隣り合うよう並び上下が連結されている鋼管のうち隣り合う鋼管に挟まれているものがある。固着物のうち本実施形態にかかるひも20が抜けない箇所に環状端部42を通し、胴部40の端にその環状端部42を貫通させると、環状端部42は固着物のうち本実施形態にかかるひも20が抜けない箇所につながることとなる。環状端部42が固着物のうち本実施形態にかかるひも20が抜けない箇所につながると、ユーザは、環状端部42を貫通した胴部40の端を被係留物のうちひも20が抜けない箇所に通す。当然、そのひも20が抜けない箇所も容易に壊れない箇所であることが望ましい。被係留物が自転車の場合、そのようなひも20が抜けない箇所の例にはフレームがある。胴部40の端が被係留物のうちひも20が抜けない箇所を通ると、ユーザは、胴貫通孔60,60,60のうち環状端部42へ最も近いものに拘束錠22の貫通軸体80を貫通させる。次いで、ユーザは、胴部40の端を折り曲げて、胴貫通孔60,60,60のうち環状端部42へ2番目に近いものに拘束錠22の貫通軸体80を貫通させる。これに伴い、胴部40は被係留物のひも20が抜けない箇所に連結される胴部40の輪180を形成することとなる。
図4にはその胴部40の輪180が示されている。次いで、ユーザは、胴部40の端を折り曲げて、胴貫通孔60,60,60のうち環状端部42から最も離れているものに拘束錠22の貫通軸体80を貫通させる。次いで、ユーザは、貫通軸体80を他方端面形成体84の他方端面140の進入孔142内へ進入させる。貫通軸体80が進入孔142内へ進入すると、軸動制限部122は貫通軸体80の進退を制限する。これにより、本実施形態にかかる係留具10を介して被係留物は固着物に係留されることとなる。
図4には、この状態のひも20の胴部40が示されている。
【0043】
被係留物の係留を解除する場合、ユーザは、鍵蓋124を開けてその内側に設けられている鍵穴に図示されない鍵を挿入する。鍵が挿入されると、ユーザはその鍵を操作することで軸動制限部122による制限を解除する。これにより貫通軸体80は進退自在となるので、ユーザは進入孔142および胴貫通孔60,60,60から貫通軸体80を引き抜く。貫通軸体80が引き抜かれると、ユーザは固着物および被係留物からひも20を引き抜く。これにより被係留物の係留は解除される。
【0044】
本実施形態にかかる係留具10の使用方法の第2の例は以下の通りである。まず、ユーザは、固着物のうち本実施形態にかかるひも20が抜けない箇所と被係留物のうちひも20が抜けない箇所とに本実施形態にかかるひも20の環状端部42を通す。それらの箇所を環状端部42が通ると、ユーザは、胴貫通孔60,60,60のいずれかと付根貫通孔62とを貫通軸体80に貫通させる。次いで、ユーザは、貫通軸体80を他方端面形成体84の他方端面140の進入孔142内へ進入させる。貫通軸体80が進入孔142内へ進入すると、軸動制限部122は貫通軸体80の進退を制限する。これにより、本実施形態にかかる係留具10を介して被係留物は固着物に係留されることとなる。
図5は、胴貫通孔60と付根貫通孔62とを貫通軸体80が貫通しその貫通軸体80が進入孔142内へ進入している状況が示される図である。
【0045】
[本実施形態にかかる効果の説明]
本実施形態にかかる係留具10によれば、係留に寄与する部分の長さの調整を容易とし、かつ、その調整に寄与する手段の破壊リスクを軽減できる。
【0046】
[変形例の説明]
上述した係留具10は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものである。上述した係留具10は、本発明の技術的思想の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0047】
例えば、ひも20は環状端部42を有していなくてもよい。当然、ひも20には付根貫通孔62が設けられていなくてもよい。この場合、ひも20の形状は一端から他端まで平坦な帯状となる。胴貫通孔60,60,60の位置は特に限定されない。少なくとも3つある限り、ひも20が有する貫通孔の数は特に限定されない。
【0048】
また、拘束錠22の具体的な形態は上述されたものに限定されない。したがって、一方端面100の形状も他方端面140の形状も円形に限定されない。一方端面100のうち貫通軸体80の一端が固定される箇所も他方端面140のうち進入孔142が形成される箇所も上述されたものに限定されない。
【符号の説明】
【0049】
10…係留具
22…拘束錠
40…胴部
42…環状端部
60…胴貫通孔
62…付根貫通孔
80…貫通軸体
82…一方端面形成体
84…他方端面形成体
90…シール材
100…一方端面
120…他方外殻
122…軸動制限部
124…鍵蓋
140…他方端面
142…進入孔
144…空間
160…隙間の幅
162,164…直線距離