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特開2025-14383検出装置、検出方法、検出プログラム、および検出システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014383
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】検出装置、検出方法、検出プログラム、および検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
G01N30/86 B
G01N30/86 T
G01N30/86 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116892
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 弘明
(72)【発明者】
【氏名】金澤 慎司
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 智裕
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 有葵
(57)【要約】
【課題】クロマトグラムのピークをターゲット成分のピークとして適切に同定することである。
【解決手段】検出装置(100)は、複数の試料(試料S1~S3)のそれぞれに対応する複数の検出データを取得する取得部(104)と、複数の検出データを処理する演算部(101)とを備える。演算部は、複数の検出データの各々から抽出された信号強度のピーク情報がターゲット成分に対応する信号強度のピーク情報として同定されたことを示す同定結果を取得し、複数の検出データのそれぞれにおいて同定された複数のピーク情報のうちに、外れ値のピーク情報が存在する場合、外れ値のピーク情報に対応する同定結果が異常であることを検出する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフによって検出された複数の試料のそれぞれに対応する複数の検出データを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記複数の検出データを処理する演算部とを備え、
前記演算部は、
前記複数の検出データの各々から抽出された信号強度のピーク情報がターゲット成分に対応する信号強度のピーク情報として同定されたことを示す同定結果を取得し、
前記複数の検出データのそれぞれにおいて同定された複数のピーク情報のうちに、外れ値のピーク情報が存在する場合、前記外れ値のピーク情報に対応する同定結果が異常であることを検出する、検出装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記外れ値のピーク情報を、前記外れ値のピーク情報とは異なる他のピーク情報よりも強調するように表示装置に表示させる、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記演算部は、
前記外れ値のピーク情報とは異なる他のピーク情報に基づいて代表値を取得し、
前記外れ値のピーク情報を前記代表値へ置き換える、請求項1に記載の検出装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記外れ値のピーク情報を前記代表値に置き換える前の前記ピーク情報と、置き換えた後の前記ピーク情報との両方を認識可能な態様で表示装置に表示させる、請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記ピーク情報は、信号強度が最大値であるときの保持時間を含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記ピーク情報は、信号強度が立ち上がりを開始したときの保持時間、信号強度の立ち下がりが終了したときの保持時間、およびベースラインの位置のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記複数の検出データの各々に含まれる保持時間に対して事前に補正する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記検出装置は、ホテリングのT法を用いて、前記複数のピーク情報のうちに前記外れ値のピーク情報が存在するか否かを判断する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項9】
前記複数の試料は、前記ピーク情報から前記ターゲット成分を特定するための情報を生成するための標準サンプルを含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項10】
コンピュータがターゲット成分の同定結果の異常を検出する検出方法であって、
クロマトグラフによって検出された複数の試料のそれぞれに対応する複数の検出データを取得するステップと、
前記取得するステップによって取得された前記複数の検出データを処理するステップとを含み、
前記処理するステップは、
前記複数の検出データの各々から抽出された信号強度のピーク情報がターゲット成分に対応する信号強度のピーク情報として同定されたことを示す同定結果を取得するステップと、
前記複数の検出データのそれぞれにおいて同定された複数のピーク情報のうちに、外れ値のピーク情報が存在する場合、前記外れ値のピーク情報に対応する同定結果が異常であることを検出するステップとを含む、検出方法。
【請求項11】
ターゲット成分の同定結果の異常を検出する検出プログラムであって、
コンピュータに、
クロマトグラフによって検出された複数の試料のそれぞれに対応する複数の検出データを取得するステップと、
前記取得するステップによって取得された前記複数の検出データを処理するステップとを実行させ、
前記処理するステップは、
前記複数の検出データの各々から抽出された信号強度のピーク情報がターゲット成分に対応する信号強度のピーク情報として同定されたことを示す同定結果を取得するステップと、
前記複数の検出データのそれぞれにおいて同定された複数のピーク情報のうちに、外れ値のピーク情報が存在する場合、前記外れ値のピーク情報に対応する同定結果が異常であることを検出するステップとを含む、検出プログラム。
【請求項12】
クロマトグラフと、
ターゲット成分の同定結果の異常を検出する検出装置とを備え、
前記検出装置は、
前記クロマトグラフによって検出された複数の試料のそれぞれに対応する複数の検出データを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記複数の検出データを処理する演算部とを備え、
前記演算部は、
前記複数の検出データの各々から抽出された信号強度のピーク情報がターゲット成分に対応する信号強度のピーク情報として同定されたことを示す同定結果を取得し、
前記複数の検出データのそれぞれにおいて同定された複数のピーク情報のうちに、外れ値のピーク情報が存在する場合、前記外れ値のピーク情報に対応する同定結果が異常であることを検出する、検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検出装置、検出方法、検出プログラム、および検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2023-012485号)に開示されるように、クロマトグラフを用いて分析対象の試料に含まれる成分を分離するクロマトグラフィという技術が知られている。クロマトグラフィは、細胞の活動によって生じる特異的な分子を網羅的に解析するメタボロミクス分野での分析や、残留農薬分析などに適用されている。特許文献1のクロマトグラフは、ピーク検出アルゴリズムを用いてクロマトグラムの信号強度のピークを検出することにより、ターゲット成分の同定を自動的に行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-012485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クロマトグラフの分析対象となる試料は、夾雑成分が混入したり、同一の条件下で取得された試料であっても試料内に含まれる成分の種類、濃度にばらつきが生じたりする場合がある。特許文献1に記載のクロマトグラフでは、夾雑成分の混入または成分のばらつきなどの影響が特に考慮されていないため、ターゲット成分の適切な同定が行われない場合がある。たとえば、誤ったピークをターゲット成分のピークとして同定したり、ピーク形状の一部を誤った形状として同定したりするおそれがある。
【0005】
ピーク検出アルゴリズムの動作により、所望のピークがターゲット成分のピークとして適切に同定されているか否かを判断する方法としては、ユーザの視認による確認が必要となる。メタボロミクス分野における分析、および残留農薬分析では、試料の数およびターゲット成分の数が、数百に達する場合がある。数百の試料中に含まれている数百のターゲット成分の各々が適切に同定されているかを、ユーザの視認によって確認する作業は煩雑である。
【0006】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、クロマトグラムのピークをターゲット成分のピークとして適切に同定することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある局面に従う検出装置は、クロマトグラフによって検出された複数の試料のそれぞれに対応する複数の検出データを取得する取得部と、取得部によって取得された複数の検出データを処理する演算部とを備える。演算部は、複数の検出データの各々から抽出された信号強度のピーク情報がターゲット成分に対応する信号強度のピーク情報として同定されたことを示す同定結果を取得し、複数の検出データのそれぞれにおいて同定された複数のピーク情報のうちに、外れ値のピーク情報が存在する場合、外れ値のピーク情報に対応する同定結果が異常であることを検出する。
【0008】
本開示の別の局面に従う検出方法は、コンピュータがターゲット成分の同定結果の異常を検出する検出方法であって、クロマトグラフによって検出された複数の試料のそれぞれに対応する複数の検出データを取得するステップと、取得するステップによって取得された複数の検出データを処理するステップとを含む。処理するステップは、複数の検出データの各々から抽出された信号強度のピーク情報がターゲット成分に対応する信号強度のピーク情報として同定されたことを示す同定結果を取得するステップと、複数の検出データのそれぞれにおいて同定された複数のピーク情報のうちに、外れ値のピーク情報が存在する場合、外れ値のピーク情報に対応する同定結果が異常であることを検出するステップとを含む。
【0009】
本開示の別の局面に従う検出プログラムは、ターゲット成分の同定結果の異常を検出する検出プログラムであって、コンピュータに、クロマトグラフによって検出された複数の試料のそれぞれに対応する複数の検出データを取得するステップと、取得するステップによって取得された複数の検出データを処理するステップとを実行させる。処理するステップは、複数の検出データの各々から抽出された信号強度のピーク情報がターゲット成分に対応する信号強度のピーク情報として同定されたことを示す同定結果を取得するステップと、複数の検出データのそれぞれにおいて同定された複数のピーク情報のうちに、外れ値のピーク情報が存在する場合、外れ値のピーク情報に対応する同定結果が異常であることを検出するステップとを含む。
【0010】
本開示の別の局面に従う検出システムは、クロマトグラフと、ターゲット成分の同定結果の異常を検出する検出装置とを備える。検出装置は、クロマトグラフによって検出された複数の試料のそれぞれに対応する複数の検出データを取得する取得部と、取得部によって取得された複数の検出データを処理する演算部とを備える。演算部は、複数の検出データの各々から抽出された信号強度のピーク情報がターゲット成分に対応する信号強度のピーク情報として同定されたことを示す同定結果を取得し、複数の検出データのそれぞれにおいて同定された複数のピーク情報のうちに、外れ値のピーク情報が存在する場合、外れ値のピーク情報に対応する同定結果が異常であることを検出する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、クロマトグラムのピークをターゲット成分のピークとして適切に同定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係る検出システムおよび検出装置の構成を示す図である。
図2】同定結果を取得する処理を示すフローチャートである。
図3】実施の形態1における検出装置によって生成されたクロマトグラムの表示例を示す図である。
図4】実施の形態1におけるピーク情報のテーブルの一例を示す図である。
図5】同定結果の異常検出処理を示すフローチャートである。
図6図5のフローチャートを実行した後に表示されるクロマトグラムの表示例を示す図である。
図7図5のフローチャートを実行した後に表示されるピーク情報のテーブルの一例を示す図である。
図8】実施の形態2における検出装置によって生成されたクロマトグラムの表示例を示す図である。
図9】実施の形態2におけるピーク情報のテーブルの一例を示す図である。
図10】実施の形態2において、図5のフローチャートを実行した後に表示されるクロマトグラムの表示例を示す図である。
図11】実施の形態2における図5のフローチャートを実行した後に表示されるピーク情報のテーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態1]
本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一の符号を付して、その説明は原則的に繰り返さない。
【0014】
<検出システムおよび検出装置の全体構成>
図1を参照しながら、実施の形態1に係る検出システム1および検出装置100の構成を説明する。図1は、実施の形態1に係る検出システム1および検出装置100の構成を示す図である。図1に示すように、検出システム1は、クロマトグラフ10と、検出装置100とを備える。
【0015】
クロマトグラフ10は、容器11と、送液ポンプ12と、インジェクタ13と、カラム14と、検出器15とを備える。容器11は、移動相を収容する。送液ポンプ12は、容器11から移動相を吸引して一定流量で送給する。インジェクタ13は、送液ポンプ12によって送給された移動相に分析対象の試料を注入する。
【0016】
カラム14は、固定相を収容し、インジェクタ13によって注入された試料に含まれる各種の成分を分離する。検出器15は、カラム14から溶出される成分を検出する。検出器15としては、たとえば、吸光光度検出器(PDA(Photo Diode Array)検出器)、蛍光検出器、示差屈折率検出器、伝導度検出器、または質量分析計などが用いられる。検出器15によって検出された試料中の成分に対応する信号強度を示す検出データは、検出装置100に出力される。
【0017】
なお、実施の形態1に係るクロマトグラフ10は、移動相として液体を用いた液体クロマトグラフ(LC:Liquid Chromatograph)であるが、クロマトグラフ10は、移動相として気体を用いたガスクロマトグラフなどの他のクロマトグラフであってもよい。
【0018】
クロマトグラフ10においては、インジェクタ13によって、移動相中に分析対象の試料が注入される。注入された試料は、送液ポンプ12によって送給された移動相の流れに乗ってカラム14に到達し、カラム14の中を通過する。試料に含まれる各種の成分は、固定相または移動相との間の親和性に応じて、カラム14の中を通過する時間が異なる。たとえば、試料に含まれる成分のうち、固定相に吸着し易い成分は、固定相に吸着し難い成分よりも、カラム14の中を通過する時間(「保持時間」とも称する。)が長くなる。これにより、試料に含まれる各種の成分がカラム14によって時間方向に分離される。
【0019】
カラム14において分離された成分を含む溶出液は、カラム14から検出器15へと導入される。検出器15は、カラム14によって導入された成分の濃度(量)に応じた信号強度を示す検出データを出力する。検出データは、検出装置100によって処理されることによって、クロマトグラムが生成される。なお、検出器15を通過した溶液は、廃液として排出される。
【0020】
検出装置100は、汎用コンピュータであってもよいし、クロマトグラフ10からの検出データを処理するための検出システム1専用のコンピュータであってもよい。検出装置100は、演算装置101と、メモリ102と、記憶装置103と、インターフェース104と、表示装置110と、入力装置120とを備える。
【0021】
演算装置101は、「演算部」の一例である。演算装置101は、各種のプログラムを実行することで、各種の処理を実行する演算主体(コンピュータ)である。演算装置101は、たとえば、CPU(central processing unit)またはMPU(Micro-processing unit)などのプロセッサで構成されている。なお、演算装置101の一例であるプロセッサは、プログラムを実行することによって各種の処理を実行する機能を有するが、これらの機能の一部または全部を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェア回路を用いて実装してもよい。
【0022】
「プロセッサ」は、CPUまたはMPUのようにストアードプログラム方式で処理を実行する狭義のプロセッサに限らず、ASICまたはFPGAなどのハードワイヤード回路を含み得る。このため、演算装置101の一例である「プロセッサ」は、コンピュータ読み取り可能なコードおよび/またはハードワイヤード回路によって予め処理が定義されている、処理回路(processing circuitry)と読み替えることもできる。
【0023】
なお、演算装置101は、1チップで構成されてもよいし、複数のチップで構成されてもよい。さらに、プロセッサおよび関連する処理回路は、ローカルエリアネットワークまたは無線ネットワークなどを介して、有線または無線で相互接続された複数のコンピュータで構成されてもよい。プロセッサおよび関連する処理回路は、入力データに基づきリモートで演算し、その演算結果を離れた位置にある他のデバイスへと出力するような、クラウドコンピュータで構成されてもよい。
【0024】
メモリ102は、演算装置101が各種のプログラムを実行するにあたって、プログラムコードやワークメモリなどを一時的に格納する揮発性の記憶領域(たとえば、ワーキングエリア)を含む。記憶部の一例としては、DRAM(dynamic random access memory)およびSRAM(static random access memory)などの揮発性メモリ、または、ROM(Read Only Memory)およびフラッシュメモリなどの不揮発性メモリが挙げられる。
【0025】
記憶装置103は、演算装置101が実行する各種のプログラムまたは各種のデータなどを記憶する。記憶装置103は、1または複数の非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)であってもよいし、1または複数のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(computer readable storage medium)であってもよい。記憶装置103の一例としては、HDD(Hard Disk Drive)およびSSD(Solid State Drive)などが挙げられる。
【0026】
実施の形態1に係る記憶装置103は、演算装置101がクロマトグラフ10から取得した検出データの異常を検出する処理を実行するための検出プログラム130、および後述するターゲット成分の同定結果を取得するための取得プログラム135を記憶している。
【0027】
インターフェース104は、有線通信または無線通信を介して、外部装置または外部機器との間でデータを送受信する。たとえば、インターフェース104は、クロマトグラフ10と通信することで、クロマトグラフ10から出力された検出データを取得する。また、インターフェース104は、図示しないクラウドサーバと通信することで、クロマトグラフ10から取得した検出データをクラウドサーバに送信したり、演算装置101が異常データの検出処理の実行結果をクラウドサーバに送信したりする通信装置であってもよい。
【0028】
さらに、インターフェース104は、有線通信または無線通信を介して、ユーザインターフェースである表示装置110または入力装置120との間でデータを送受信してもよい。検出装置100は、1つのインターフェース104に限らず、通信対象の数に応じて複数のインターフェース104を備えていてもよい。
【0029】
表示装置110は、たとえば、液晶パネルなどで構成されるディスプレイであり、検出装置100による異常データの検出処理の実行結果を表示する。入力装置120は、たとえばキーボードまたはマウスなどのポインティングデバイスであり、ユーザからの指令を受け付ける。ユーザインターフェースとしてタッチパネルが用いられる場合、表示装置110と入力装置120とが一体的に形成されてもよい。なお、表示装置110および入力装置120は、検出装置100と別体に備えられていてもよい。
【0030】
<同定結果の取得>
上述のように構成された検出システム1において、検出装置100は、インターフェース104を介して、クロマトグラフ10によって検出された試料中の成分に対応する信号強度を示す検出データを時系列で取得する。検出装置100は、取得した検出データに基づき、信号強度の時間変化を示すクロマトグラムを生成する。クロマトグラムは、複数のピーク形状の波形(単に「ピーク」とも称する。)を含んでいる。クロマトグラムに含まれている複数のピークは、試料中の複数の成分にそれぞれ対応している。
【0031】
実施の形態1における検出装置100は、ピーク検出アルゴリズムを用いて、クロマトグラムに含まれる複数のピークのうちのいずれのピークが、ターゲット成分に対応するのかを自動的に判断する。ターゲット成分とは、試料中に含まれている複数の成分のうち、分析対象となる成分であって検出システム1のユーザによって予め設定される。
【0032】
上述したように、カラム14によって試料中の成分が分離する。クロマトグラム内のピークは、成分ごとに固有の保持時間で形成される。ターゲット成分の理論的な保持時間(「理論保持時間」とも称する。)は、予めユーザによって入力され、記憶装置103に記憶されている。
【0033】
検出装置100は、クロマトグラム内の複数のピークのうち、ターゲット成分の理論保持時間と近い保持時間に形成されているピークを、ターゲット成分に対応するピークであると自動的に特定する。このように、クロマトグラムに含まれる複数のピークのうちの1つのピークをターゲット成分のピークとして特定することを「同定」と称する。
【0034】
検出装置100は、ターゲット成分のピークとして同定されたピークに関する情報(「ピーク情報」とも称する。)を同定結果として取得する。ピーク情報には、たとえば、信号強度の最大値、信号強度が最大値であるときの保持時間(「ピーク保持時間」とも称する。)、信号強度が立ち上がりを開始したときの保持時間(「ピーク開始保持時間」と称する。)、信号強度の立ち下がりが終了したときの保持時間(「ピーク終了保持時間」と称する。)、およびピーク形状の面積(「ピーク面積」と称する。)、後述するベースラインの位置、信号強度の最大値からベースラインの強度を差し引いた強度(「ピーク高さ」とも称する。)などの情報が含まれる。
【0035】
検出装置100は、ピーク高さ、ピーク面積、予め準備された検量線を用いて、試料中に含まれていたターゲット成分の濃度を算出する。このように、実施の形態1の検出装置100は、検出データから抽出された信号強度のピーク情報がターゲット成分に対応する信号強度のピーク情報として同定されたことを示す同定結果を取得する。
【0036】
図2は、同定結果を取得する処理を示すフローチャートである。図2に示される処理ステップは、演算装置101が同定結果の取得プログラム135を実行することによって実現される。
【0037】
図2に示されように、演算装置101は、クロマトグラフ10によって検出された試料中の成分に対応する信号強度を示す検出データを取得する(ステップS110)。演算装置101は、検出データに基づいてクロマトグラムを生成する(ステップS120)。
【0038】
演算装置101は、保持時間の補正処理を実行する(ステップS130)。クロマトグラムの保持時間は、同一の成分がカラム14を通過する場合であっても、カラム14の劣化などによって変動し得る。ステップS130の処理は、カラム14の劣化などによる保持時間の変動を補正する処理である。
【0039】
実施の形態1では、標準物質(たとえば、アルカン)を用いて保持時間の変動を補正する。実施の形態1では、試料に当該標準物質を混入させてクロマトグラムの生成が行われる。検出装置100には、カラム14が劣化していない状態における標準物質の保持時間が予め入力されている。検出装置100は、生成されたクロマトグラム内における標準物質の保持時間と、カラム14が劣化していない状態における標準物質の保持時間とを用いて、カラム14の劣化度合いを判断し、クロマトグラム全体の保持時間を補正する。
【0040】
ある局面では、標準物質を用いずに、カラム14が劣化していないときの任意の成分の保持時間と、当該任意の成分が実際に検出されたときの保持時間とを用いて、保持時間を補正してもよい。他の局面では、移動相の流量を補正することによって、保持時間が補正され得る。このように、実施の形態1の検出装置100は、カラム14の劣化などの外的要因による保持時間の変動を考慮して、クロマトグラムの保持時間に対して事前に補正処理が行われる。
【0041】
図2に戻り、演算装置101は、ステップS130において保持時間が補正されたクロマトグラムに含まれる複数のピークのうちから、ピーク検出アルゴリズムを用いて、ターゲット成分の同定結果を取得し(ステップS140)、処理を終了する。図2に示されるステップS110~ステップS140の処理は、1つの試料に対して1つのターゲット成分の同定結果を取得する処理である。
【0042】
<複数の試料ごとの同定結果>
図2では、1つの試料における1つのターゲット成分の同定結果の取得処理について説明した。実施の形態1では、複数の試料からターゲット成分の同定結果を取得する。すなわち、実施の形態1の検出装置100は、予め準備された複数の試料の数だけ、図2に示されるフローチャートを実行する。上述したように、メタボロミクス分野における分析、および残留農薬分析では、試料の数は、数百に達する。
【0043】
より具体的には、出荷される農産物中に農薬が含まれているか否かを分析する残留農薬分析では、出荷品の中から一部の出荷品を試料として無作為に選ぶ。以下では、100個の出荷品が試料として選ばれる例を説明する。この場合、検出装置100は、100個の出荷品の各々に対して、図2のフローチャートを実行する。100個の出荷品は、同一種類の農産物である。より具体的には、出荷品がたとえばバナナである場合、100個の出荷品にはバナナ以外の農産物は含まれず、100個の出荷品の全てがバナナである。したがって、100個の試料は、基本的に共通した成分を有する。
【0044】
実施の形態1において、ターゲット成分として、農薬であるターゲット成分Aが設定される場合を説明する。ターゲット成分Aの理論保持時間は、7.14分である。実施の形態1では、100個の出荷品の各々に対して、図2のフローチャートを実行して100個のクロマトグラムを生成する。検出装置100は、100個のクロマトグラムの各々に対して、7.14分と近い保持時間に形成されているピークをターゲット成分Aに対応するピークであると自動的に特定する同定処理を行う。
【0045】
図3は、実施の形態1における検出装置100によって生成されたクロマトグラムの表示例を示す図である。図3には、100個の試料のうちの3つの試料S1,S2,S3に対応するクロマトグラムC1,C2,C3が図示されている。各クロマトグラムC1,C2,C3において、横軸は保持時間(分)を示し、縦軸は信号強度(吸光度)を示す。図3に示されているクロマトグラムC1~C3は、表示装置110によって画像データとしてユーザに表示される。
【0046】
上述したように、100個の試料は、同一種類の農産物である。したがって、100個の試料内に含まれている成分の大部分は、共通した成分を有する。実施の形態1の例では、100個の試料の大部分がターゲット成分Aを含んでしまっている例を説明する。しかしながら、図3に示されるように、試料への夾雑成分の混入、または成分のばらつきなどによって、各クロマトグラムC1~C3に含まれるピーク形状が異なる場合がある。
【0047】
図3の例において、クロマトグラムC1,C2では、保持時間「7.14分」時点において信号強度「5000」を超えるピークが形成されている。一方で、クロマトグラムC3では、保持時間「7.14分」時点において、信号強度「5000」に満たない信号強度「2000」程度のピークが形成されている。また、クロマトグラムC3では、保持時間「7.30分」時点において、信号強度「3000」程度のピークが形成されている。一方で、クロマトグラムC1,C2では、保持時間「7.30分」時点において、何らのピークも形成されていない。
【0048】
このように、同一条件下で採取されている同一種類の試料S1,S2,S3であっても、夾雑成分の混入、または成分のばらつきにより、ピークの形状は異なる。上述したように、実施の形態1の検出装置100は、各クロマトグラムC1,C2,C3に対して、ピーク検出アルゴリズムを用いて、ターゲット成分Aの同定を行う。図3には、各クロマトグラムC1~C3のピークにおいて、白色の三角形状の画像P1,P2,P3がそれぞれ表示されている。画像P1,P2,P3は、画像P1,P2,P3によって示されているピークがターゲット成分Aとして同定されていることを示す。
【0049】
すなわち、画像P1は、クロマトグラムC1の保持時間「7.14分」時点におけるピークがターゲット成分Aのピークであることを示している。画像P2は、クロマトグラムC2の保持時間「7.14分」時点におけるピークがターゲット成分Aのピークであることを示している。一方で、画像P3は、クロマトグラムC3の保持時間「7.30分」時点におけるピークがターゲット成分Aのピークであることを示している。
【0050】
図3に示されているように、クロマトグラムC3では、誤ったピーク(信号強度「3000」程度のピーク)がターゲット成分Aとして同定されてしまっている。これは、試料S3に含まれるターゲット成分Aの濃度が他の試料と比較して小さく、かつ、成分のばらつきによって保持時間が「7.30分」である夾雑成分が試料S3に混入してしまっているためである。
【0051】
そのため、検出装置100は、保持時間「7.30分」時点に形成された夾雑成分に対応するピークを、誤ってターゲット成分Aとして同定している。このように、図3に示す例では、ピーク検出アルゴリズムを用いて自動的にターゲット成分Aの同定を行ったことによって、一部の試料において誤ったピークがターゲット成分Aとして同定されている。そこで、実施の形態1において、以下に示す手法によって、誤った同定が行われていることを異常として検出する。
【0052】
<同定結果の異常検出処理>
検出装置100は、各クロマトグラムC1~C3において同定したターゲット成分Aのピーク情報を取得する。図4は、実施の形態1におけるピーク情報のテーブルの一例を示す図である。図4に示されているテーブルは、図3と同様に、表示装置110によって画像データとしてユーザに表示される。実施の形態1において、ピーク情報は、ピーク保持時間である。検出装置100は、同定したピークに対応するピーク保持時間を取得し、図4に示されるテーブルを生成する。図4に示されるテーブルは、記憶装置103によって記憶される。
【0053】
図4に示されるように、クロマトグラムC1におけるターゲット成分Aのピーク保持時間は、保持時間「7.14分」である。クロマトグラムC2におけるターゲット成分Aのピーク保持時間は、保持時間「7.14分」である。クロマトグラムC3におけるターゲット成分Aのピーク保持時間は、保持時間「7.30分」である。図示が省略されているが、図4に示されるテーブルは100個分の試料のピーク保持時間を含んでいる。
【0054】
続いて、検出装置100は、異常検出処理を実行するための検出プログラム130を実行する。図5は、同定結果の異常検出処理を示すフローチャートである。図5に示される処理ステップは、演算装置101が検出プログラム130を実行することによって実現される。
【0055】
演算装置101は、図4に示されている複数のピーク保持時間のうちに外れ値が存在するか否かを検出する(ステップS210)。実施の形態1において、演算装置101は、ホテリングのT法を用いて外れ値の有無を判断する。より具体的には、演算装置101は、標本数N個(実施の形態1では100個)の試料全ての各ピーク保持時間χの平均値μを算出する。また、演算装置101は、100個の試料全てのピーク保持時間の不偏分散σを算出する。不偏分散σは、下記の数式1にて表される。
【0056】
【数1】
【0057】
演算装置101は、平均値μと不偏分散σとを用いて、ピーク保持時間χごとの異常度aを算出する。異常度aは、下記の数式2にて表される。
【0058】
【数2】
【0059】
演算装置101は、ピーク保持時間の異常度aが予め定められた閾値を超えるとき、当該ピーク保持時間は外れ値であると判断する。演算装置101は、ピーク保持時間の異常度が閾値以下であるとき、当該ピーク保持時間は外れ値ではないと判断する。閾値は、たとえば10である。
【0060】
図5に戻り、演算装置101は、外れ値が存在しない場合(ステップS220でNO)、処理を終了する。外れ値が存在する場合(ステップS220でYES)、演算装置101は、外れ値に対応する同定結果を異常データとして検出する(ステップS230)。演算装置101は、異常データを強調表示する(ステップS240)。より具体的には、演算装置101は、外れ値のピーク保持時間を、外れ値のピーク保持時間とは異なる他のピーク保持時間よりも強調させて表示装置110に表示させる。
【0061】
演算装置101は、外れ値のピーク保持時間とは異なるピーク保持時間に基づいて、代表値を取得する(ステップS250)。代表値とは、外れ値ではない正常な値を代表する値であって、たとえば、外れ値のピーク保持時間とは異なるピーク保持時間の平均値である。具体的には、実施の形態1の例において、試料S3のピーク保持時間だけが外れ値として検出される場合、試料S3以外の99個の試料におけるピーク保持時間の平均値が代表値として算出される。実施の形態1の例では、理論保持時間と同一の保持時間「7.14分」が代表値として算出される。その後、演算装置101は、外れ値のピーク保持時間を代表値に置き換える(ステップS260)。
【0062】
図6は、図5のフローチャートを実行した後に表示されるクロマトグラムの表示例を示す図である。図6に示されるように、演算装置101は、誤ったピークを示している三角形状の画像P3に代えて、画像P3Cを表示させる。画像P3Cは、画像P3と異なり、色情報が付されている。たとえば、画像P3Cは、赤色で表示される。上述したように、画像P1,P2は、白色であることから、赤色の画像P3Cは、強調されて表示されている。これにより、検出装置100では、画像P3が示していたピークが誤っていたことを容易にユーザに認識させることができる。
【0063】
さらに、図6に示されるように、ステップS260において置き換えた代表値を用いて、演算装置101は、代表値付近に存在するピークをターゲット成分Aのピークとして同定し直す。図6には、代表値に基づいて同定されたピークを示す画像P3Aが図示されている。画像P3Aは、画像P1,P2よりも大きく表示されている。これにより、検出装置100では、外れ値が代表値に置き換えられた後のピークの位置をユーザに容易に把握させることができる。さらに、実施の形態1の例では、外れ値が代表値に置き換えられる前後の両方のピークの位置を示す、矢印形状の画像Ar1が表示されている。このように、実施の形態1では、矢印形状の画像Ar1が表示されていることにより、外れ値が代表値に置き換えられる前後のピークの位置をユーザに容易に把握させることができる。
【0064】
図7は、図5のフローチャートを実行した後に表示されるピーク情報のテーブルの一例を示す図である。図7に示されるように、誤った同定が行われているクロマトグラムC3のピーク保持時間を示すセルの背景に色情報が付されている。具体的には、図7のテーブルにおいて、ピーク保持時間「7.30分」を示すセルの背景は赤色である。これにより、検出装置100では、ピーク保持時間「7.30分」が誤ったピークの保持時間であったことを容易にユーザに認識させることができる。
【0065】
このように、実施の形態1の検出装置100は、外れ値を用いて誤って同定された同定結果を異常データとして検出することができる。これにより、実施の形態1では、異常データをユーザに表示して、異常データの修正する作業を促すことによって、クロマトグラムのピークをターゲット成分のピークとして適切に同定させることができる。また、上述したように、検出装置100が自動的に外れ値を代表値へと置き換えることによって、ユーザに修正作業を行わせずに、自動的にクロマトグラムのピークをターゲット成分のピークとして適切に同定することができる。さらに、実施の形態1の例では、外れ値であるか否かを用いて異常を判断しているため、ユーザの視認によって異常の有無を判断する場合と比較して、ユーザによって同定結果が異常であるか否かの判断が異なってしまうことを抑制することができる。
【0066】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、外れ値の有無を判断するためにピーク保持時間が用いられ、1つの試料中における1つのターゲット成分Aだけを分析対象とする例を説明した。実施の形態2においては、ピーク保持時間と異なる情報を用いて外れ値の有無を判断し、かつ、複数のターゲット成分を分析対象とする例について説明する。なお、実施の形態2において、実施の形態1の構成と重複する構成の説明は繰り返さない。
【0067】
実施の形態2では、外れ値の検出のために使用されるピーク情報は、ピーク開始保持時間とピーク終了保持時間とである。上述したように、ピーク開始保持時間とは、信号強度が立ち上がりを開始したときの保持時間であり、ピーク終了保持時間とは、信号強度の立ち下がりが終了したときの保持時間である。ピーク開始保持時間およびピーク終了保持時間は、クロマトグラムを読み込んだピーク検出アルゴリズムによって自動的に検出される。より具体的には、検出装置100は、所定の閾値より低い信号強度の状態から信号強度が増大し、所定の閾値以上の信号強度に到達した保持時間を「ピーク開始保持時間」として検出する。また、検出装置100は、所定の閾値より高い信号強度の状態から信号強度が低減し、所定の閾値を以下の信号強度に到達した保持時間を「ピーク終了保持時間」として検出する。
【0068】
実施の形態2では、ターゲット成分Aに加えてターゲット成分Bを分析対象とする。ターゲット成分Bの理論保持時間は、「8.05分」である。また、ターゲット成分Bの理論的なピーク開始保持時間は「8.01分」であり、理論的なピーク終了保持時間は「8.09分」である。
【0069】
図8は、実施の形態2における検出装置100によって生成されたクロマトグラムの表示例を示す図である。図8には、図3と同様に、100個の試料のうちの3つの試料S1,S2,S3に対応するクロマトグラムC1,C2,C3が図示されている。図8には、ターゲット成分Aとして同定されたピークだけが図示されており、ターゲット成分Bとして同定されたピークの図示は省略されている。
【0070】
図8に示されるように、クロマトグラムC1では、ターゲット成分Aとして同定されたピークにおいて、保持時間「6.10分」時点から信号強度が立ち上がり始め、保持時間「6.21分」時点で信号強度の立ち下がりが終了している。画像PS1は、クロマトグラムC1のピーク開始保持時間が「6.10分」であることを示している。画像PE1は、クロマトグラムC1のピーク終了保持時間が「6.21分」であることを示している。図8に示されるように、検出装置100は、クロマトグラムC1において、信号強度が立ち上がり始める保持時間と、信号強度の立ち下がりが終了する保持時間との間に、ベースラインBs1を描画している。ベースラインBs1は、ピーク面積およびピーク高さを計算する際に用いられるラインであって、検出装置100によって描画される。
【0071】
また、クロマトグラムC2では、ターゲット成分Aとして同定されたピークにおいて、保持時間「6.11分」時点から信号強度が立ち上がり始め、保持時間「6.23分」時点で信号強度の立ち下がりが終了している。画像PS2は、クロマトグラムC2のピーク開始保持時間が「6.11分」であることを示している。画像PE2は、クロマトグラムC2のピーク終了保持時間が「6.23分」であることを示している。図8に示されるように、クロマトグラムC2では、信号強度が立ち上がり始める保持時間と、信号強度の立ち下がりが終了する保持時間との間に、ベースラインBs2が描画されている。
【0072】
さらに、クロマトグラムC3では、ターゲット成分Aとして同定されたピークにおいて、保持時間「6.11分」時点から信号強度が立ち上がり始め、保持時間「6.34分」時点で信号強度の立ち下がりが終了している。画像PS3は、クロマトグラムC3のピーク開始保持時間が「6.11分」であることを示している。画像PE3は、クロマトグラムC2のピーク終了保持時間が「6.34分」であることを示している。図8に示されるように、クロマトグラムC3では、信号強度が立ち上がり始める保持時間と、信号強度の立ち下がりが終了する保持時間との間に、ベースラインBs3が描画されている。
【0073】
実施の形態2では、試料S3において、保持時間「6.25分」~「6.35分」の間をピークとする夾雑成分が混入してしまっている。そのため、検出装置100は、クロマトグラムC3におけるターゲット成分Aのピークのピーク終了保持時間を、クロマトグラムC1,C2よりも比較的大きい「6.34分」であると検出している。このため、検出装置100は、クロマトグラムC3におけるターゲット成分Aのピーク面積などを誤って算出することとなる。すなわち、検出装置100は、クロマトグラムC3において誤った同定結果を取得している。
【0074】
図9は、実施の形態2におけるピーク情報のテーブルの一例を示す図である。実施の形態2の検出装置100は、各クロマトグラムC1~C3において同定したターゲット成分Aのピークにおけるピーク開始保持時間とピーク終了保持時間とをピーク情報として取得する。検出装置100は、ピーク検出アルゴリズムを用いて、同定したピークのピーク開始保持時間とピーク終了保持時間とを取得し、図9に示されるテーブルを生成する。図9に示されるテーブルは、図4と同様に、記憶装置103によって記憶されている。
【0075】
図9に示されるように、クロマトグラムC1におけるターゲット成分Aのピーク開始保持時間は、保持時間「6.10分」である。また、クロマトグラムC1におけるターゲット成分Aのピーク終了保持時間は、保持時間「6.21分」である。クロマトグラムC2におけるターゲット成分Aのピーク開始保持時間は、保持時間「6.11分」である。また、クロマトグラムC2におけるターゲット成分Aのピーク終了保持時間は、保持時間「6.23分」である。クロマトグラムC3におけるターゲット成分Aのピーク開始保持時間は、保持時間「6.11分」である。また、クロマトグラムC3におけるターゲット成分Aのピーク終了保持時間は、保持時間「6.34分」である。
【0076】
上述したように、実施の形態2の検出装置100では、ターゲット成分Aに加えてターゲット成分Bを分析対象とする。実施の形態2の検出装置100は、ピーク検出アルゴリズムを用いて、ターゲット成分Aと同様に、ターゲット成分Bに対応するピークを自動的に同定し、同定結果から図9に示されるテーブルを生成する。
【0077】
図9に示されるように、クロマトグラムC1におけるターゲット成分Bのピーク開始保持時間は、保持時間「8.01分」である。また、クロマトグラムC1におけるターゲット成分Bのピーク終了保持時間は、保持時間「8.09分」である。クロマトグラムC2におけるターゲット成分Bのピーク開始保持時間は、保持時間「8.00分」である。また、クロマトグラムC2におけるターゲット成分Bのピーク終了保持時間は、保持時間「8.08分」である。クロマトグラムC3におけるターゲット成分Bのピーク開始保持時間は、保持時間「8.03分」である。また、クロマトグラムC3におけるターゲット成分Bのピーク終了保持時間は、保持時間「8.08分」である。図9の例では、クロマトグラムC1~C3において、ターゲット成分Bに対する同定結果の異常は生じていない。
【0078】
実施の形態2においても検出装置100は、図5のフローチャートを実行する。実施の形態2では、外れ値の検出を行う対象となるピーク情報は、ピーク保持時間ではなく、ピーク開始保持時間およびピーク終了保持時間である。また、実施の形態2では、ターゲット成分A,Bの2つの成分をターゲット成分とするため、図5のフローチャートが1つの試料に対してターゲット成分A,Bに対応する2回分実行される。
【0079】
図10は、実施の形態2において、図5のフローチャートを実行した後に表示されるクロマトグラムの表示例を示す図である。図10に示されるように、演算装置101は、誤ったピークをターゲット成分Aのピーク終了保持時間として示していた三角形状の画像PE3に代えて、画像PE3Cを表示させる。画像PE3Cは、赤色で強調されて表示されている。これにより、実施の形態2においても検出装置100では、画像PE3が示していたピーク終了保持時間が誤っていたことをユーザに認識させることができる。
【0080】
さらに、図10に示されるように、ステップS260において置き換えた代表値を用いて、演算装置101は、代表値付近に存在するピーク終了時時間をターゲット成分Aのピーク終了時時間として同定し直す。図10には、代表値に基づいて同定されたピークを示す画像PE3Aが図示されている。画像PE3Aは、他の三角形状の画像よりも大きく強調されて表示されている。これにより、検出装置100では、代表値に置き換えられた後のピーク終了保持時間をユーザに容易に把握させることができる。また、図10に示されるように、ピーク終了時時間が代表値に基づいて変更したことに基づいて、検出装置100は、ベースラインBs3Aを描画する。さらに、実施の形態2においても、矢印形状の画像Ar2が表示されていることによって、外れ値から代表値に置き換えられる前後におけるピークの位置をユーザに容易に把握させることができる。
【0081】
図11は、実施の形態2における図5のフローチャートを実行した後に表示されるピーク情報のテーブルの一例を示す図である。図11に示されるように、誤った同定が行われているクロマトグラムC3のピーク終了保持時間の背景に色情報が付されている。具体的には、図11のテーブルにおいて、ピーク保持時間「6.34分」のセルの背景は赤色となり、強調表示されている。
【0082】
また、実施の形態2では、上述のホテリングのT法に基づいて算出した異常度が表示されている。図11に示されるように、クロマトグラムC1におけるターゲット成分Aのピーク開始保持時間の異常度は、保持時間「0.01」であり、クロマトグラムC1におけるターゲット成分Aのピーク終了保持時間の異常度は、保持時間「0.04」である。また、クロマトグラムC2におけるターゲット成分Aのピーク開始保持時間の異常度は、保持時間「0.03」であり、クロマトグラムC2におけるターゲット成分Aのピーク終了保持時間の異常度は、保持時間「0.05」である。
【0083】
さらに、クロマトグラムC3におけるターゲット成分Aのピーク開始保持時間の異常度は、保持時間「0.03」であり、クロマトグラムC3におけるターゲット成分Aのピーク終了保持時間の異常度は、保持時間「10.01」である。検出装置100は、異常度が閾値「10」を超えているクロマトグラムC3におけるターゲット成分Aのピーク終了保持時間が異常であると判断している。
【0084】
実施の形態2において、検出装置100は、ピーク保持時間「6.34分」のセルに加えて、試料を示す「試料S3(クロマトグラムC3)」のセルおよび異常度「10.01」のセルの背景も赤色にして強調表示する。これにより、実施の形態2においては、異常が発生している試料がいずれの試料であるのか、また、他の試料と比較したときの異常度合いの程度をユーザに容易に把握させることができる。なお、外れ値である試料が複数検出された場合、検出装置100は、異常度合いで表示順序をソートできてもよい。これにより、実施の形態2では、異常度合いの高い順序で試料をユーザに表示することができる。
【0085】
このように、実施の形態2においても、外れ値を用いて誤って同定されている同定結果を異常として容易に検出している。これにより、実施の形態2においても、クロマトグラムのピークをターゲット成分のピークとして適切に同定することができる。
【0086】
<変形例>
以下では、上述にて説明した実施の形態から一部変形したその他の形態について説明する。
【0087】
上述の例では、ピーク情報には、ピーク保持時間、ピーク開始保持時間、ピーク終了保持時間、ピーク面積などが含まれる例を説明した。しかしながら、ピーク情報に含まれる情報は、これらに限られない。ある局面では、ピーク情報は、ピーク開始保持時間からピーク終了保持時間までの期間(「ピーク幅」とも称する。)、ピーク開始保持時間からピーク保持時間までの期間(「ピーク前半幅」とも称する。)、ピーク保持時間からピーク終了保持時間までの期間(「ピーク後半幅」とも称する。)、信号強度が立ち上がりを開始したとき信号強度の大きさ(「ピーク開始高さ」とも称する。)、および信号強度が立ち下がりを終了したとき信号強度の大きさ(「ピーク終了高さ」とも称する。)を含む。さらに、ピーク情報は、所定の強度(N%)におけるピーク幅、ピーク前半幅、ピーク後半幅を含んでもよいし、また、隣接する他のピークからどの程度の分離しているかを示す分離度、もしくは分離係数、保持係数、カラム効率を表す理論段数、ピークの対称性の度合いを示すシンメトリ係数などを含んでもいてもよい。
【0088】
上述の例では、ホテリングのT法において、閾値が「10」である例を説明したが、閾値は「10」以外の数字であってもよい。たとえば、閾値は「5」、「20」、「30」であってもよく、実験に基づいて定められ得る。
【0089】
実施の形態1の例では、ピーク情報としてピーク保持時間が用いられ、外れ値の検出対象となる例を説明した。しかしながら、外れ値の検出対象となるピーク情報は、上述にて説明した他のピーク情報であってもよいし、たとえば、ピーク保持時間と理論保持時間との差であってもよい。
【0090】
上述の例では、試料の例として農産物の出荷品が用いられる例を説明した。しかしながら、試料には、たとえば、ピーク情報からターゲット成分を特定するための検量線を生成するために、予め準備された標準サンプルが用いられてもよい。すなわち、複数の試料の一部は、実際に市場に出荷される農産物などの実際の試料ではなく、ターゲット成分の情報を取得するため、人為的にターゲット成分が混入されている標準サンプルであってもよい。
【0091】
上述の例では、はずれ値の有無の検出方法について、ホテリングT法を用いる例を説明した。しかしながら、ある局面では、他の手法によって外れ値を検出してもよく、たとえば、単に分散または平均値からの距離が用いられてもよいし、k近傍法が用いられてもよい。
【0092】
上述の例では、画像の強調表示の手法として、画像P3Cに色情報を付して表示すること、および、画像P3Aの大きくして表示することについて説明した。しかしながら、画像を強調表示する手法は、他の手法でもよく、たとえば、画像を点滅させること、画像の形状を三角形から変更することなども含み得る。また、上述の例では、図7および図11テーブルの表示に関して、代表値に置き換える前のはずれ値だけが表示されていたが、外れ値は、代表値とともに表示されていてもよい。さらに、上述の例では、異常度が閾値「10」を超える場合、赤色の色情報が付される例を説明した。しかしながら、色情報は、異常度に応じて段階的に付されてもよい。すなわち、検出装置100は、異常度が閾値「5」を超え、かつ閾値「10」以下である場合、黄色の色情報が付し、異常度が閾値「10」を超える場合に赤色の色情報を付してもよい。
【0093】
[態様]
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0094】
(第1項)
一態様に係る検出装置は、クロマトグラフによって検出された複数の試料のそれぞれに対応する複数の検出データを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記複数の検出データを処理する演算部とを備え、
前記演算部は、前記複数の検出データの各々から抽出された信号強度のピーク情報がターゲット成分に対応する信号強度のピーク情報として同定されたことを示す同定結果を取得し、
前記複数の検出データのそれぞれにおいて同定された複数のピーク情報のうちに、外れ値のピーク情報が存在する場合、前記外れ値のピーク情報に対応する同定結果が異常であることを検出する。
【0095】
第1項に記載の検出装置100によれば、クロマトグラムのピークをターゲット成分のピークとして適切に同定できる。
【0096】
(第2項)
第1項に記載の検出装置100において、演算部は、前記外れ値のピーク情報を、前記外れ値のピーク情報とは異なる他のピーク情報よりも強調するように表示装置に表示させる。
【0097】
第2項に記載の検出装置によれば、同定されていたピークが誤っていたことをユーザに認識させることができる。
【0098】
(第3項)
第1項または第2項に記載の検出装置100において、演算部は、
前記外れ値のピーク情報とは異なる他のピーク情報に基づいて代表値を取得し、
前記外れ値のピーク情報を前記代表値へ置き換える。
【0099】
第3項に記載の検出装置によれば、正常な値の代表である代表値へと外れ値を置き換えられることができる。
【0100】
(第4項)
第3項に記載の検出装置100において、演算部は、前記外れ値のピーク情報を前記代表値に置き換える前の前記ピーク情報と、置き換えた後の前記ピーク情報との両方を認識可能な態様で表示装置に表示させる。
【0101】
第4項に記載の検出装置によれば、外れ値が代表値に置き換えられる前後のピークの位置をユーザに容易に把握させることができる。
【0102】
(第5項)
第1項~第4項のいずれか1項に記載の検出装置100において、ピーク情報は、信号強度が最大値であるときの保持時間を含む。
【0103】
第5項に記載の検出装置によれば、ピーク保持時間を用いて、同定の異常を検出することができる。
【0104】
(第6項)
第1項~第5項のいずれか1項に記載の検出装置100において、ピーク情報は、信号強度が立ち上がりを開始したときの保持時間、信号強度の立ち下がりが終了したときの保持時間、およびベースラインの位置のうちの少なくとも1つを含む。
【0105】
第6項に記載の検出装置によれば、ピーク開始保持時間またはピーク終了保持時間を用いて、同定の異常を検出することができる。
【0106】
(第7項)
第1項~第6項のいずれか1項に記載の検出装置100において、演算部は、前記複数の検出データの各々に含まれる保持時間に対して事前に補正する。
【0107】
第7項に記載の検出装置によれば、カラム劣化などによる保持時間の変動を事前に補正できる。
【0108】
(第8項)
第1項~第7項のいずれか1項に記載の検出装置100において、検出装置は、ホテリングのT法を用いて、前記複数のピーク情報のうちに前記外れ値のピーク情報が存在するか否かを判断する。
【0109】
第8項に記載の検出装置によれば、ホテリングのT法を用いて外れ値を判断できる。
(第9項)
第1項~第8項のいずれか1項に記載の検出装置100において、複数の試料は、前記ピーク情報から前記ターゲット成分を特定するための情報を生成するための標準サンプルを含む。
【0110】
第9項に記載の検出装置によれば、標準サンプルを用いて同定の異常を検出することができる。
【0111】
(第10項)
一態様に係る検出方法において、コンピュータがターゲット成分の同定結果の異常を検出する検出方法であって、
クロマトグラフによって検出された複数の試料のそれぞれに対応する複数の検出データを取得するステップと、
前記取得するステップによって取得された前記複数の検出データを処理するステップとを含み、
前記処理するステップは、
前記複数の検出データの各々から抽出された信号強度のピーク情報がターゲット成分に対応する信号強度のピーク情報として同定されたことを示す同定結果を取得するステップと、
前記複数の検出データのそれぞれにおいて同定された複数のピーク情報のうちに、外れ値のピーク情報が存在する場合、前記外れ値のピーク情報に対応する同定結果が異常であることを検出するステップとを含む。
【0112】
第10項に記載の検出方法によれば、クロマトグラムのピークをターゲット成分のピークとして適切に同定できる。
【0113】
(第11項)
一態様に係る検出プログラムにおいて、ターゲット成分の同定結果の異常を検出する検出プログラムであって、コンピュータに、
クロマトグラフによって検出された複数の試料のそれぞれに対応する複数の検出データを取得するステップと、
前記取得するステップによって取得された前記複数の検出データを処理するステップとを実行させ、
前記処理するステップは、
前記複数の検出データの各々から抽出された信号強度のピーク情報がターゲット成分に対応する信号強度のピーク情報として同定されたことを示す同定結果を取得するステップと、
前記複数の検出データのそれぞれにおいて同定された複数のピーク情報のうちに、外れ値のピーク情報が存在する場合、前記外れ値のピーク情報に対応する同定結果が異常であることを検出するステップとを含む、検出プログラム。
【0114】
第11項に記載の検出プログラムによれば、クロマトグラムのピークをターゲット成分のピークとして適切に同定できる。
【0115】
(第12項)
一態様に係る検出システムにおいて、
クロマトグラフと、
ターゲット成分の同定結果の異常を検出する検出装置とを備え、
前記検出装置は、前記クロマトグラフによって検出された複数の試料のそれぞれに対応する複数の検出データを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記複数の検出データを処理する演算部とを備え、
前記演算部は、
前記複数の検出データの各々から抽出された信号強度のピーク情報がターゲット成分に対応する信号強度のピーク情報として同定されたことを示す同定結果を取得し、
前記複数の検出データのそれぞれにおいて同定された複数のピーク情報のうちに、外れ値のピーク情報が存在する場合、前記外れ値のピーク情報に対応する同定結果が異常であることを検出する、検出システム。
【0116】
第12項に記載の検出システムによれば、クロマトグラムのピークをターゲット成分のピークとして適切に同定できる。
【0117】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0118】
1 検出システム、10 クロマトグラフ、11 容器、12 液ポンプ、13 インジェクタ、14 カラム、15 検出器、100 検出装置、101 演算装置、102 メモリ、103 記憶装置、104 インターフェース、110 表示装置、120 入力装置、130 検出プログラム、135 取得プログラム、A,B ターゲット成分、Ar1,Ar2,P1~P3,P3A,PS1~PS3,PE1~PE3,PE3C,PE3A 画像、C1~C3 クロマトグラム、S1~S3 試料、ベースラインBs1~Bs3,Bs3A。
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