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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014385
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】流体制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/16 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
F16K7/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116895
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 達人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信也
(57)【要約】
【課題】高温条件下でも、環状弁座の変形を抑えることで、シール性能の低下の防止およびダイアフラム部材の疲労破壊の防止が可能な流体制御弁を提供すること。
【解決手段】押圧部材(例えば、第2ステム32)と、ダイアフラム部材34と、弁座33と、を備え、押圧部材(第2ステム32)が、ダイアフラム部材34を、押圧して変形させることで、弁座33に当接させる流体制御弁1において、弁座33は、同軸上に隣接して位置する、フッ素樹脂からなる第1環状弁座331と、耐熱性樹脂からなる第2環状弁座332と、を備えること、耐熱性樹脂は、ASTM D-648に準拠して測定した、1.82MPaでの荷重たわみ温度が、フッ素樹脂よりも高いこと。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧部材と、ダイアフラム部材と、弁座と、を備え、
前記押圧部材が、前記ダイアフラム部材を、押圧して変形させることで、前記弁座に当接させる流体制御弁において、
前記弁座は、同軸上に隣接して位置する、フッ素樹脂からなる第1環状弁座と、耐熱性樹脂からなる第2環状弁座と、を備えること、
前記耐熱性樹脂は、ASTM D-648に準拠して測定した、1.82MPaでの荷重たわみ温度が、前記フッ素樹脂よりも高いこと、
を特徴とする流体制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の流体制御弁において、
前記耐熱性樹脂は、ASTM D-648に準拠して測定した、1.82MPaでの荷重たわみ温度が、125℃以上であること、
を特徴とする流体制御弁。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流体制御弁において、
前記耐熱性樹脂は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリベンゾイミダゾール、ポリイミド、高耐熱ポリアミド、のいずれかであること、
を特徴とする流体制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧部材と、ダイアフラム部材と、弁座と、を備え、押圧部材が、ダイアフラム部材を、押圧して変形させることで、弁座に当接させる流体制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程における成膜処理には複数種のプロセスガスが用いられる。このプロセスガスの流量を制御するために、流体制御弁が用いられる。流体制御弁としては、例えば、特許文献1や特許文献2に開示される流体制御弁が知られている。特許文献1に開示される流体制御弁は、エアオペレイト式開閉弁であり、ダイアフラム部材を弁座に当接離間させて、プロセスガスの流量制御を行うものである。
【0003】
より具体的に、図5図7を用いて説明する。図5は、従来技術に係る流体制御弁100の断面図であり、流体制御弁100の弁開状態を示している。図6は、従来技術に係る流体制御弁100の断面図であり、流体制御弁100の弁閉状態を示している。図7は、図6の部分Cの部分拡大図である。
【0004】
流体制御弁100は、図5に示すように、球冠状に形成されたダイアフラム部材34の頂点部にステム32が当接されている。そして、アクチュエータ部4(例えばエアシリンダ)の動作や、ばね部5内の圧縮コイルばね52の付勢力によってステム32でダイアフラム部材34を図中の下方に向けて押圧し、変形させて、環状の弁座101に当接させる。図6に示すように、ダイアフラム部材34が弁座101に当接した状態が、流体制御弁100の弁閉状態である。そして、ステム32によるダイアフラム部材34の押圧を解除すると、ダイアフラム部材34は、その自己復帰力で、元の球冠状の形状に戻り、弁座101から離間する。図5に示すように、ダイアフラム部材34が弁座101から離間した状態が、流体制御弁100の弁開状態である。
【0005】
近年普及している成膜技術である原子層堆積法(ALD)に用いられるプロセスガスは250℃以上の高温であることがあり、この場合、ダイアフラム部材34と弁座101は、耐熱性確保のために、ともに金属製とされる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-180490号公報
【特許文献2】特開2017-223318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ダイアフラム部材34と弁座101をともに金属製とした場合、ダイアフラム部材34の弁座33に対する当接は、金属同士の接触であるため、摩耗が発生しやすい。特にALDに用いられる流体制御弁は、非常に高頻度に当接離間の動作を繰り返す必要があるため、流体制御弁100を使用開始してから数カ月で、新たなものに交換が必要になってしまう場合がある。
【0008】
金属同士の接触による摩耗を防ぐために、弁座101を、耐薬品性に優れるフッ素樹脂により形成することが考えられる。しかし、フッ素樹脂のASTM D-648に準拠して測定した、1.82MPaでの荷重たわみ温度は、約50度であるため、プロセスガスの温度が250℃以上という高温条件下において、弁座101は変形しやすくなる。したがって、高温条件下において、ダイアフラム部材34がフッ素樹脂製の弁座101に対する当接離間を繰り返すと、弁座101は、例えば図7に示すように、ダイアフラム部材34により設計値以上に押しつぶされ、当接離間の方向の寸法(弁座高さ寸法)が低くなるおそれがある。このように弁座101が過剰に押しつぶされると、ダイアフラム部材34が当接した時の面圧が低下するため、流体制御弁100のシール性能の低下の原因となる。加えて、弁座101の高さ寸法が低くなると、流体制御弁100を弁開状態から弁閉状態とする際の、ダイアフラム部材34の弁座101に当接するまでの変形量(ストローク量)が設計値よりも大きくなる。ダイアフラム部材34の変形量が設計値よりも大きくなると、ダイアフラム部材34に疲労破壊が生じやすくなるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、高温条件下でも、環状弁座の変形を抑えることで、シール性能の低下の防止およびダイアフラム部材の疲労破壊の防止が可能な流体制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様における流体制御弁は、次のような構成を有している。
【0011】
(1)押圧部材と、ダイアフラム部材と、弁座と、を備え、前記押圧部材が、前記ダイアフラム部材を、押圧して変形させることで、前記弁座に当接させる流体制御弁において、前記弁座は、同軸上に隣接して位置する、フッ素樹脂からなる第1環状弁座と、耐熱性樹脂からなる第2環状弁座と、を備えること、前記耐熱性樹脂は、ASTM D-648に準拠して測定した、1.82MPaでの荷重たわみ温度が、前記フッ素樹脂よりも高いこと、を特徴とする。
【0012】
上記(1)に記載の流体制御弁によれば、弁閉時のシール性能は、主に、フッ素樹脂からなる第1環状弁座により確保される。第1環状弁座は、フッ素樹脂からなるため、ダイアフラム部材が当接したとき、ダイアフラム部材の形状に馴染みやすく、転写性が良いためである。そして、第2環状弁座は、荷重たわみ温度がフッ素樹脂よりも高い耐熱性樹脂からなるため、高温条件下でも、フッ素樹脂よりも変形しにくい。よって、第2環状弁座は、主に、ダイアフラム部材から負荷される荷重を受ける役割を果たす。第2環状弁座が、第1環状弁座に隣接した位置でダイアフラム部材から負荷される荷重を受けることで、当該荷重により第1環状弁座が過剰に押しつぶされてしまうことを防止することができる。これにより、弁座の潰れによるダイアフラム部材の環状弁座に当接するまでの変形量(ストローク量)の拡大を防止し、ひいては、流体制御弁のシール性能の低下と、ダイアフラム部材に疲労破壊の発生と、を防止することができる。なお、フッ素樹脂とは、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエラストマー(FFKM)などが挙げられる。
【0013】
(2)(1)に記載の流体制御弁において、前記耐熱性樹脂は、ASTM D-648に準拠して測定した、1.82MPaでの荷重たわみ温度が、125℃以上であること、が好ましい。
【0014】
(3)(1)または(2)に記載の流体制御弁において、前記耐熱性樹脂は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリイミド(PI)、高耐熱ポリアミド(PA)、のいずれかであること、が好ましい。
【0015】
上記(2)または(3)に記載の流体制御弁によれば、プロセスガスの温度が250℃以上という高温条件下においても、第2環状弁座の変形を防止することができる。よって、第2環状弁座は、ダイアフラム部材から負荷される荷重を確実に受けることができ、第1環状弁座が過剰に押しつぶされてしまうことを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の流体制御弁によれば、高温条件下でも、弁座の変形を抑えることで、シール性能の低下の防止およびダイアフラム部材の疲労破壊の防止が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る流体制御弁の断面図であり、流体制御弁の弁開状態を示している。
図2図1の部分Aの部分拡大図である。
図3】本実施形態に係る流体制御弁の断面図であり、流体制御弁の弁閉状態を示している。
図4図3の部分Bの部分拡大図である。
図5】従来技術に係る流体制御弁の断面図であり、流体制御弁の弁開状態を示している。
図6】従来技術に係る流体制御弁の断面図であり、流体制御弁の弁閉状態を示している。
図7図6の部分Cの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る流体制御弁の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明に用いる図面は、説明のために簡略化しており、形状や寸法等を正確に表すものではない。
【0019】
(流体制御弁の構成について)
本実施形態に係る流体制御弁1の構成について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る流体制御弁1の断面図であり、流体制御弁1の弁開状態を示している。図2は、図1の部分Aの部分拡大図である。図3は、本実施形態に係る流体制御弁1の断面図であり、流体制御弁1の弁閉状態を示している。図4は、図3の部分Bの部分拡大図である。
【0020】
流体制御弁1は、半導体製造装置のガス供給系に配設されるガスバルブであり、高温(例えば250℃程度)のプロセスガスの供給を制御するために用いられる。流体制御弁1は、ノーマルクローズタイプのエアオペレイト式の開閉弁であり、図1に示すように、駆動部2と、弁部3とを備えている。さらに、駆動部2は、アクチュエータ部4と、スプリング部5とを備えている。
【0021】
まず、アクチュエータ部4について説明する。アクチュエータ部4は、空圧駆動のエアシリンダである。アクチュエータ部4は、円筒状のケース41と、ケース41の内部に装填されるピストン(不図示)と、ピストンに結合された円柱状の駆動軸42と、を備えている。さらに、アクチュエータ部4は、ケース41のスプリング部5と反対側の端部(図1中の上端部)に操作エアをケース41内に入力するためのパイロットポート44を備えている。
【0022】
ピストンは、パイロットポート44からケース41内への操作エアの送給またはその停止により、ピストンがケース41内を上下方向に摺動可能にされている。そして、ピストンの上下動に従って、駆動軸62が、駆動軸62の軸方向に沿って進退される。駆動軸62の軸方向は、図1中の上下方向と平行な方向であり、後述するダイアフラム部材34が弁座33に対して当接離間をする方向と一致されている。なお、図中の上側が離間方向であり、下側が当接方向である。
【0023】
駆動軸42の弁部3側の端部(図1中の下端部)は、アクチュエータ部4から突出し、スプリング部5内に延伸している。そして、駆動軸42のスプリング部5内の先端には第1ステム43が設けられている。よって、駆動軸42の進退するに伴い、第1ステム43も同方向に進退する。第1ステム43は、駆動軸42の側とは反対側の端面で、後述する第2ステム32に当接している。これにより、第1ステム43が当接方向に駆動されるとき、第1ステム43が第2ステム32を当接方向に押圧するようになっている。
【0024】
次にスプリング部5について説明する。スプリング部5は、内部空間51に、操作ロッド9と同軸上に位置した圧縮コイルばね52を備えている。圧縮コイルばね52は、内部空間51のアクチュエータ部4側の端面53と第1ステム43とに圧縮されている。このため、圧縮コイルばね52は、第1ステム43を、常に当接方向(図中の下方向)に付勢している。
【0025】
次に弁部3について説明する。弁部3は、ボディ31と、第2ステム32(押圧部材の一例)と、弁座33と、ダイアフラム部材34を備えている。ボディ31は、スプリング部5と接続する筒状部315を備えている。また、ボディ31には、該筒状部315の内側に、弁室311が穿設されている。
【0026】
弁室311の底部の中央に、弁室311にプロセスガスを入力するための弁口312が設けられている。また、弁室311の底面には、弁口312の外周側かつ弁口312と同軸上に、円環状の弁座33が固定されている。さらに、弁室311は、弁座33の半径方向外側において、出力流路314と連通している。この出力流路314は、プロセスガスを弁室311から出力するために用いられる。
【0027】
第2ステム32は、例えばステンレス鋼を材質とする。第2ステム32は、略円柱形状に形成されており、ダイアフラム部材34に対向する面(図中の下端面)は、ダイアフラム部材34の側に膨出した球面321である。第2ステム32は、球面321がダイアフラム部材34に当接した状態、かつ、上下動可能なようにホルダ35によって保持されている。
【0028】
ダイアフラム部材34は、例えば、Ni合金を材質とする。また、ダイアフラム部材34は、第2ステム32の側に膨出する球冠状に形成されている。したがって、ダイアフラム部材34の、第2ステム32に対向する対向面341は球面である。なお、ダイアフラム部材34の、対向面341の反対側の面を裏面342とする。また、ダイアフラム部材34は、外周縁に、当接離間の方向に直交する平面状の縁部344を備えている。この縁部344が、ホルダ35とボディ31とにより挟持されることで、ダイアフラム部材34が弁室311に固定されている。ダイアフラム部材34は、このように固定されることで、第2ステム32に押圧されると、中央部が、第2ステム32の球面321に沿って、当接方向に弾性変形される。そして、第2ステム32による押圧が解除されると、自己復帰力により元の球冠状の形状に戻るようになっている。
【0029】
弁座33は、フッ素樹脂からなる第1環状弁座331と、耐熱性樹脂からなる第2環状弁座332と、からなる。第1環状弁座331を形成するフッ素樹脂とは、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエラストマー(FFKM)などが挙げられる。第2環状弁座332を形成する耐熱性樹脂とは、ASTM D-648に準拠して測定した、1.82MPaでの荷重たわみ温度(以下、単に「荷重たわみ温度」という)が、上記フッ素樹脂の荷重たわみ温度の約50-55℃よりも高いものであることが好ましく、荷重たわみ温度が125℃以上であることがさらに好ましい。具体的には、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリイミド(PI)、高耐熱ポリアミド(PA)などが挙げられる。なお、PEEKの荷重たわみ温度は155℃、PEKの荷重たわみ温度は180℃、PBIの荷重たわみ温度は410℃、PIの荷重たわみ温度は360℃、PAの荷重たわみ温度は125℃である。
【0030】
第1環状弁座331と第2環状弁座332とは、ともに円環状に形成され、同軸上に隣接して位置している。より具体的には、第1環状弁座331が外周側、第2環状弁座332が内周側に位置し、第1環状弁座331の内周面と、第2環状弁座332の外周面が相互に接触した状態で位置されている。そして、ボディ31に設けられたかしめ部316が、第1環状弁座331を外周側から押さえつけることで、第1環状弁座331と第2環状弁座332とが、弁室311の底面に固定されている。
【0031】
また、第1環状弁座331と第2環状弁座332とが、同軸上に隣接して位置しているため、第1環状弁座331の、ダイアフラム部材34に対向する上端面331aと、第2環状弁座332の、ダイアフラム部材34に対向する上端面332aとが、ダイアフラム部材34が当接離間をするための、弁座33の当接面33aをなす。したがって、ダイアフラム部材34が弁座33に当接する際に、弁座33に負荷される荷重を、第1環状弁座331と第2環状弁座332とで受けることができる。
【0032】
なお、本実施形態においては、第1環状弁座331を外周側に位置させ、第2環状弁座332を内周側に位置させているが、第1環状弁座331を内周側に位置させ、第2環状弁座332を外周側に位置させても良い。本実施形態において、第1環状弁座331を外周側に位置させ、第2環状弁座332を内周側に位置させているのは、弁座33を確実に固定するためである。詳しく説明すると、かしめ部316が弁座33の外周側に位置しているため、かしめ部316で弁座33を押さえつけるとき、より硬度の低い第1環状弁座331が外周側に位置している方が、かしめ部316が弁座33に食い込みやすく、弁座33の固定が確実となるのである。
【0033】
(流体制御弁の動作について)
次に、流体制御弁1の動作について説明する。
【0034】
操作エアが、パイロットポート44からアクチュエータ部4に送給されると、ケース41内のピストンが離間方向に移動する。これに伴い、駆動軸62が同方向に駆動される。第1ステム43は、駆動軸62と連結されているので、圧縮コイルばね52の弾性力に抗して上昇する。これにより、第1ステム43によって押さえつけられていた第2ステム32が、ダイアフラム部材34の復元力によって上昇する。ダイアフラム部材34は、弁座33と離間し、流体制御弁1は、図1に示すように、弁開状態となる。この弁開状態で、プロセスガスは、弁口312から弁室311に流入され、次いで、出力流路314に出力される。
【0035】
一方、パイロットポート44への操作エアの送給が停止されると、圧縮コイルばね52の弾性力によって、第1ステム43は当接方向に駆動される。第1ステム43は、第2ステム32を押圧することで同方向に移動させる。第2ステム32の移動に伴い、ダイアフラム部材34は弁座33に当接し、流体制御弁1が、図3に示すように、弁閉状態となる。弁閉状態では、プロセスガスの弁口312から弁室311への流れが遮断される。
【0036】
(作用効果について)
以上説明したように、本実施形態に係る流体制御弁1は、
(1)押圧部材(例えば、第2ステム32)と、ダイアフラム部材34と、弁座33と、を備え、押圧部材(第2ステム32)が、ダイアフラム部材34を、押圧して変形させることで、弁座33に当接させる流体制御弁1において、弁座33は、同軸上に隣接して位置する、フッ素樹脂からなる第1環状弁座331と、耐熱性樹脂からなる第2環状弁座332と、を備えること、耐熱性樹脂は、ASTM D-648に準拠して測定した、1.82MPaでの荷重たわみ温度が、フッ素樹脂よりも高いこと、を特徴とする。
【0037】
上記(1)に記載の流体制御弁1によれば、弁閉時のシール性能は、主に、フッ素樹脂からなる第1環状弁座331により確保される。第1環状弁座331は、フッ素樹脂からなるため、ダイアフラム部材34が当接したとき、ダイアフラム部材34の形状に馴染みやすく、転写性が良いためである。そして、第2環状弁座332は、荷重たわみ温度がフッ素樹脂よりも高い耐熱性樹脂からなるため、高温条件下でも、フッ素樹脂よりも変形しにくい。よって。第2環状弁座332は、主に、ダイアフラム部材34から負荷される荷重を受ける役割を果たす。第2環状弁座332が、第1環状弁座331に隣接した位置でダイアフラム部材34から負荷される荷重を受けることで、上記の当接離間の動作が繰り返されたとしても、ダイアフラム部材から負荷される荷重により第1環状弁座331が過剰に押しつぶされてしまうことを防止することができる。
【0038】
また、流体制御弁1は、使用される前に、弁閉状態でアニール処理される場合がある。このアニール処理により、当接面33aを、弁閉状態におけるダイアフラム部材34の裏面342に馴染ませる。このアニール処理を行う際にも、ダイアフラム部材34が弁座33に当接している間、弁座33に負荷される荷重を、第1環状弁座331とともに耐熱性樹脂からなる第2環状弁座332が受けるため、第1環状弁座331が過剰に潰されてしまうことを防止することができる。
【0039】
以上のように、弁座33(第1環状弁座331)の潰れを防止することで、弁座の潰れによるダイアフラム部材の環状弁座に当接するまでの変形量(ストローク量)の拡大を防止し、ひいては、流体制御弁のシール性能の低下と、ダイアフラム部材に疲労破壊の発生と、を防止することができる。
【0040】
(2)(1)に記載の流体制御弁1において、前記耐熱性樹脂は、ASTM D-648に準拠して測定した、1.82MPaでの荷重たわみ温度が、125℃以上であること、が好ましい。
【0041】
(3)(1)または(2)に記載の流体制御弁1において、前記耐熱性樹脂は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリイミド(PI)、高耐熱ポリアミド(PA)、のいずれかであること、が好ましい。
【0042】
上記(2)または(3)に記載の流体制御弁1によれば、プロセスガスの温度が250℃以上という高温条件下においても、第2環状弁座332の変形を防止することができる。よって、第2環状弁座332は、ダイアフラム部材34から負荷される荷重を確実に受けることができ、第1環状弁座331が過剰に押しつぶされてしまうことを確実に防止することができる。
【0043】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、本実施形態に係る流体制御弁1においては、駆動部2として、空圧駆動のエアシリンダを用いているが、例えば、直動式のサーボモータを用いる等、その他の駆動源を用いても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 流体制御弁
32 第2ステム(押圧部材の一例)
33 弁座
34 ダイアフラム部材
331 第1環状弁座
332 第2環状弁座332
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7