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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025143867
(43)【公開日】2025-10-02
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20250925BHJP
【FI】
H01L21/304 648F
H01L21/304 648K
H01L21/304 651B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043337
(22)【出願日】2024-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 通矩
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸史
(72)【発明者】
【氏名】植村 知浩
(72)【発明者】
【氏名】南 翔耀
(72)【発明者】
【氏名】上田 悠介
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA03
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB46
5F157AB49
5F157AB72
5F157AB90
5F157AC24
5F157BB23
5F157CB13
5F157CB14
5F157CE03
5F157CE05
5F157CE08
5F157CE25
5F157CF04
5F157CF14
5F157CF32
5F157CF34
5F157CF38
5F157CF60
5F157CF74
5F157CF99
5F157DA21
5F157DC84
5F157DC85
5F157DC86
(57)【要約】
【課題】分離膜での分離効率を高めることができる技術の提供。
【解決手段】基板処理装置100は、基板Wに供給された後に回収された水と、基板Wに供給された後に回収された有機溶剤とを含む混合流体を貯留する回収タンク60と、回収タンク60に接続される循環配管62と、循環配管62に設けられ、水を通過させつつ有機溶剤を通過させない分離膜51を備える脱水器621と、循環配管62に設けられるポンプ622と、循環配管62における回収タンク60の下流側であって脱水器621の上流側に設けられ、混合流体を水の沸点以上に加熱するヒータ624と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に水を含むリンス液を供給するリンス液供給部と、
前記基板に有機溶剤を供給する有機溶剤供給部と、
前記基板に供給された後に回収された前記水と、前記基板に供給された後に回収された前記有機溶剤とを含む混合流体を貯留する回収タンクと、
前記回収タンクに接続される循環配管と、
前記循環配管に設けられ、前記水を通過させつつ前記有機溶剤を通過させない分離膜を備える脱水器と、
前記循環配管に設けられるポンプと、
前記循環配管における前記回収タンクの下流側であって前記脱水器の上流側に設けられ、前記混合流体を前記水の沸点以上に加熱するヒータと、
を備える、基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記循環配管における前記脱水器の下流側であって前記回収タンクの上流側に設けられる冷却器、
を備える、基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記冷却器が、前記混合流体を、前記有機溶剤の沸点よりも低く、かつ、常温よりも高い温度に冷却する、
基板処理装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の基板処理装置であって、
前記循環配管における前記冷却器よりも下流側であって前記ヒータよりも上流側の配管部分の耐圧性が、前記循環配管における前記ヒータよりも下流側であって前記冷却器よりも上流側の配管部分の耐圧性よりも低い、
基板処理装置。
【請求項5】
請求項2または3に記載の基板処理装置であって、
前記循環配管に設けられ、前記冷却器で冷却された前記混合流体を減圧する減圧器、
を備える、基板処理装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれかに記載の基板処理装置であって、
送液配管を介して前記回収タンクと接続され、前記混合流体から前記水が分離されることによって得られた濃縮流体を貯留する浄化タンクと、
前記浄化タンクに接続される配管に設けられ、前記配管を流れる前記濃縮流体に含まれる除去対象物質を捕獲するフィルタと、
を備える、基板処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理装置であって、
前記浄化タンクに貯留された前記濃縮流体が、前記フィルタを通された上で、前記有機溶剤供給部に送液されて、前記基板に供給される、
基板処理装置。
【請求項8】
請求項1から3のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記循環配管が、分岐位置と合流位置との間に設けられた複数の分岐部分、を備え、
前記複数の分岐部分の各々に前記回収タンクが設けられる、
基板処理装置。
【請求項9】
請求項1から3のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記脱水器が、前記分離膜内での前記混合流体の流路となるセルが鉛直方向に延在するような姿勢で配置され、
前記循環配管を流れる前記混合流体が、前記セルにおける鉛直下側の開口から流入する、
基板処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の基板処理装置であって、
前記脱水器と前記ヒータとが鉛直方向に配列される、
基板処理装置。
【請求項11】
基板に水を含むリンス液を供給するリンス液供給工程と、
前記基板に有機溶剤を供給する有機溶剤供給工程と、
前記基板に供給された後に回収された前記水と、前記基板に供給された後に回収された前記有機溶剤とを含む混合流体を、回収タンクに貯留させる貯留工程と、
前記回収タンクに貯留された前記混合流体を、前記回収タンクに接続される循環配管に循環させる循環工程と、
前記循環配管に設けられるヒータで、前記混合流体を、前記水の沸点以上に加熱する加熱工程と、
前記循環配管における前記ヒータの下流側であって前記回収タンクの上流側に設けられた、前記水を通過させつつ前記有機溶剤を通過させない分離膜を備える脱水器に、加熱された前記混合流体を流入させて、前記混合流体から前記水を分離する分離工程と、
を備える、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスなどの製造工程で用いられる基板処理装置では、例えば、基板が薬液で処理された後にリンス液で濯がれる。特許文献1では、リンス液で濯がれた後の基板(すなわち、リンス液(典型的には、水)で覆われている基板)に、イソプロピルアルコール(IPA:Isopropyl Alcohol)を供給し、基板上のリンス液をIPAで置換する。その後、基板を高速で回転させて、基板に付着しているIPAを吹き飛ばして、基板を乾燥させる。基板を高速で回転させて付着している液を吹き飛ばす際には、付着している液の表面張力によってパターンが倒壊するおそれがあるところ、基板に付着している水がこれに比べて表面張力が小さいIPAに予め置換されていることで、パターンの倒壊が抑制される。また、IPAは両極性であるため、基板の表面が疎水性であっても、むらなく濡れることができる。このため、乾燥後の基板にウォータマークも生じにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-41505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、基板に供給されたIPAを回収することが記載されている。IPAは水で覆われた状態の基板に供給されるため、回収されるIPAは水で希釈されている(すなわち、IPAは水と混合された混合液の状態で回収される)。このため、回収されたIPAを再利用するためには、混合液から水を分離する必要がある。
【0005】
IPAなどの有機溶剤と水との混合液から水を分離するにあたっては、例えば、水分子が通過でき、有機溶剤の分子が通過できない分離膜を用いることが考えられる。水の分離に要する時間を短縮するためには、分離膜での分離効率を高めることが求められる。
【0006】
そこで、本開示は、分離膜での分離効率を高めることができる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、基板処理装置であって、基板に水を含むリンス液を供給するリンス液供給部と、前記基板に有機溶剤を供給する有機溶剤供給部と、前記基板に供給された後に回収された前記水と、前記基板に供給された後に回収された前記有機溶剤とを含む混合流体を貯留する回収タンクと、前記回収タンクに接続される循環配管と、前記循環配管に設けられ、前記水を通過させつつ前記有機溶剤を通過させない分離膜を備える脱水器と、前記循環配管に設けられるポンプと、前記循環配管における前記回収タンクの下流側であって前記脱水器の上流側に設けられ、前記混合流体を前記水の沸点以上に加熱するヒータと、を備える。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係る基板処理装置であって、前記循環配管における前記脱水器の下流側であって前記回収タンクの上流側に設けられる冷却器、を備える。
【0009】
第3の態様は、第2の態様に係る基板処理装置であって、前記冷却器が、前記混合流体を、前記有機溶剤の沸点よりも低く、かつ、常温よりも高い温度に冷却する。
【0010】
第4の態様は、第2または第3の態様に係る基板処理装置であって、前記循環配管における前記冷却器よりも下流側であって前記ヒータよりも上流側の配管部分の耐圧性が、前記循環配管における前記ヒータよりも下流側であって前記冷却器よりも上流側の配管部分の耐圧性よりも低い。
【0011】
第5の態様は、第2から第4のいずれか態様に係る基板処理装置であって、前記循環配管に設けられ、前記冷却器で冷却された前記混合流体を減圧する減圧器、を備える。
【0012】
第6の態様は、第1から第5のいずれかの態様に係る基板処理装置であって、送液配管を介して前記回収タンクと接続され、前記混合流体から前記水が分離されることによって得られた濃縮流体を貯留する浄化タンクと、前記浄化タンクに接続される配管に設けられ、前記配管を流れる前記濃縮流体に含まれる除去対象物質を捕獲するフィルタと、を備える。
【0013】
第7の態様は、第6の態様に係る基板処理装置であって、前記浄化タンクに貯留された前記濃縮流体が、前記フィルタを通された上で、前記有機溶剤供給部に送液されて、前記基板に供給される。
【0014】
第8の態様は、第1から第7のいずれかの態様に係る基板処理装置であって、前記循環配管が、分岐位置と合流位置との間に設けられた複数の分岐部分、を備え、前記複数の分岐部分の各々に前記回収タンクが設けられる。
【0015】
第9の態様は、第1から第8のいずれかの態様に係る基板処理装置であって、前記脱水器が、前記分離膜内での前記混合流体の流路となるセルが鉛直方向に延在するような姿勢で配置され、前記循環配管を流れる前記混合流体が、前記セルにおける鉛直下側の開口から流入する。
【0016】
第10の態様は、第9の態様に係る基板処理装置であって、前記脱水器と前記ヒータとが鉛直方向に配列される。
【0017】
第11の態様は、基板処理方法であって、基板に水を含むリンス液を供給するリンス液供給工程と、前記基板に有機溶剤を供給する有機溶剤供給工程と、前記基板に供給された後に回収された前記水と、前記基板に供給された後に回収された前記有機溶剤とを含む混合流体を、回収タンクに貯留させる貯留工程と、前記回収タンクに貯留された前記混合流体を、前記回収タンクに接続される循環配管に循環させる循環工程と、前記循環配管に設けられるヒータで、前記混合流体を、前記水の沸点以上に加熱する加熱工程と、前記循環配管における前記ヒータの下流側であって前記回収タンクの上流側に設けられた、前記水を通過させつつ前記有機溶剤を通過させない分離膜を備える脱水器に、加熱された前記混合流体を流入させて、前記混合流体から前記水を分離する分離工程と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
第1および第11の態様の各々によると、混合流体に含まれる水を蒸気状態で脱水器に流入させることができる。これによって、分離膜での分離効率を高めることができる。
【0019】
第2の態様によると、加熱された混合流体を冷却器で冷却することによって、混合流体の圧力を低下させることができる。
【0020】
第3の態様によると、冷却器で冷却されることによって、混合流体に含まれる有機溶剤が蒸気状態から液体状態に戻るので、混合流体の圧力を十分に低下させることができる。その一方で、冷却器は、混合流体を常温よりも高い温度にまでしか冷却しないので、ヒータおよび冷却器の負荷がともに低減される。
【0021】
第4の態様によると、循環配管の一部分(冷却器よりも下流側であってヒータよりも上流側の配管部分)の耐圧性が、循環配管の他の部分(ヒータよりも下流側であって冷却器よりも上流側の配管部分)の耐圧性よりも低いので、循環配管の全体にわたって相対的に高い耐圧性をもたせる場合に比べて、装置をコンパクト化できる。
【0022】
第5の態様によると、冷却器で低下された混合流体の圧力を、減圧器によってさらに低下させることができる。
【0023】
第6の態様によると、混合流体から水が分離されることによって得られた濃縮流体から除去対象物質を除去して、濃縮流体の清浄度を高めることができる。
【0024】
第7の態様によると、基板に供給された後に回収された水と基板に供給された後に回収された有機溶剤とを含む混合流体から水が分離されることによって得られた濃縮流体が、清浄度を高められた上で、再び基板に供給される。したがって、有機溶剤の使用量および排出量を削減することができる。
【0025】
第8の態様によると、循環配管に複数の回収タンクが設けられるので、送液先の回収タンクを切り替えることで、基板に供給された後に回収された水および基板に供給された後に回収された有機溶剤を、途切れなく送液することができる。
【0026】
第9の態様によると、循環配管からセルに流入した混合流体が、鉛直方向に延在するセルの内部を、下から上に流れる。したがって、セルの内部に流入した混合流体が、セルの内部に十分に留まって、分離膜と十分に接触する。これによって、分離効率がさらに高まる。
【0027】
第10の態様によると、ヒータで加熱された混合流体が脱水器に流入するまでに発生する熱損失が低減される。ひいては、ヒータの負荷が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】基板処理装置の構成例を模式的に示す平面図である。
図2】処理ユニットの構成例を模式的に示す側面図である。
図3】有機溶剤回収部の構成例を模式的に示す図である。
図4】脱水器の構成例を概略的に示す側断面図である。
図5】有機溶剤回収部で行われる処理の流れの一例を示す図である。
図6】混合流体から水を分離する処理の流れの一例を示す図である。
図7】ステップS1を説明するための図である。
図8】ステップS201を説明するための図である。
図9】ステップS203を説明するための図である。
図10】ステップS207を説明するための図である。
図11】ステップS3を説明するための図である。
図12】ステップS4を説明するための図である。
図13】変形例に係る有機溶剤回収部の構成例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照しながら、実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本開示の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、図面は、概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、構成の省略、寸法の誇張または簡略化、個数の誇張または簡略化、構成の簡略化、などが適宜になされるものである。また、図面に示される構成の位置関係は、必ずしも正確に記載されるものではない。
【0030】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」、「同軸」、など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で、相対的に角度または距離に関して変位された状態も含むものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば、「同一」、「等しい」、「均質」、など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も含むものとする。形状を示す表現(例えば、「円形状」、「楕円形状」、「四角形状」、「円筒形状」、など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲の形状を含むものとし、例えば凹凸または面取りなどを有していてもよい。構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、「有する」、といった各表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A、BおよびCのうちの少なくとも一つ」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「A、BおよびCのうち任意の2つ」、「A、BおよびCの全て」が含まれる。「第1」または「第2」などの序数が用いられる場合、これらの用語は、実施形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0031】
<1.基板処理装置>
実施形態に係る基板処理装置100について、図1を参照しながら説明する。図1は、基板処理装置100の構成例を模式的に示す平面図である。
【0032】
基板処理装置100は、処理対象である基板Wを1枚ずつ処理する、いわゆる枚葉式の処理装置である。基板処理装置100で処理対象とされる基板Wは、例えば、半導体基板である。また、処理対象とされる基板Wの形状は、例えば、円板形状である。
【0033】
基板処理装置100は、ロードポート1、インデクサロボット2、主搬送ロボット3、処理ユニット4、有機溶剤回収部5、および、制御部6を備える。
【0034】
ロードポート1は、複数の基板Wを収容する収容容器の一種であるキャリアCに対する基板Wの出し入れを行うためのインターフェースである。ロードポート1は、例えば、複数(図の例では3個)設けられる。複数のロードポート1は、例えば、水平方向に一列に並んで配列される。キャリアCは、基板Wを密閉空間に収納するタイプのもの(例えば、FOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッド、など)であってもよいし、基板Wを外気にさらすタイプのもの(例えば、OC(Open Cassette)、など)であってもよい。
【0035】
インデクサロボット2は、基板Wを搬送する搬送装置である。一例として、インデクサロボット2は、水平多関節ロボットであり、基板Wを保持する一対のハンド21,21および各ハンド21に接続されたアーム22を備える。また、インデクサロボット2は、各ハンド21を旋回させ、各アーム22を屈伸、旋回、および、昇降させるための駆動機構(図示省略)を備える。インデクサロボット2は、ロードポート1に載置されたキャリアCと、主搬送ロボット3との間で基板Wを搬送する。すなわち、インデクサロボット2は、ロードポート1に載置されているキャリアCにアクセスして、搬出動作(すなわち、キャリアCに収容されている基板Wをハンド21で取り出す動作)、および、搬入動作(すなわち、ハンド21に保持されている基板WをキャリアCに収容する動作)を行う。また、インデクサロボット2は、受け渡し位置にアクセスして、主搬送ロボット3との間で基板Wの受け渡しを行う。
【0036】
主搬送ロボット3は、基板Wを搬送する搬送装置である。一例として、主搬送ロボット3は、水平多関節ロボットであり、基板Wを保持する一対のハンド31,31および各ハンド31に接続されたアーム32を備える。また、主搬送ロボット3は、各ハンド31を旋回させ、各アーム32を屈伸、旋回、および、昇降させるための駆動機構(図示省略)を備える。主搬送ロボット3は、インデクサロボット2と各処理ユニット4との間で基板Wを搬送する。すなわち、主搬送ロボット3は、受け渡し位置にアクセスして、インデクサロボット2との間で基板Wの受け渡しを行う。また、主搬送ロボット3は、処理ユニット4にアクセスして、搬入動作(すなわち、ハンド31に保持されている基板Wを処理ユニット4に搬入する動作)、および、搬出動作(すなわち、処理ユニット4内の基板Wをハンド31で搬出する動作)、を行う。
【0037】
処理ユニット4は、基板Wに対して処理液(例えば、薬液、リンス液、および、有機溶剤)を用いた所定の処理を行う。ここでは例えば、鉛直方向に積層された複数(例えば3個)の処理ユニット4が、1個のタワーを構成しており、該タワーが、主搬送ロボット3を取り囲むようにして、複数(図の例では4個)、設けられる。処理ユニット4の具体的な構成は、後に説明する。
【0038】
有機溶剤回収部5は、処理ユニット4において処理に用いられた有機溶剤を回収して、再び処理ユニット4に供給する。ここでは例えば、タワーと同数個の有機溶剤回収部5が設けられる。各有機溶剤回収部5は、各タワーと1対1で対応づけられており、対応するタワーに含まれる各処理ユニット4において処理に用いられた有機溶剤を回収して、再び各処理ユニット4に供給する。有機溶剤回収部5の具体的な構成は、後に説明する。
【0039】
制御部6は、基板処理装置100が備える各部(ロードポート1、インデクサロボット2、主搬送ロボット3、処理ユニット4、および、有機溶剤回収部5)の動作を制御する。制御部6は、例えば、電気回路を有する一般的なコンピュータによって構成される。一例として、制御部6は、各種の演算処理(データ処理)を行う中央演算装置としてのCPU(Central Processor Unit)、基本プログラムなどが格納されるROM(Read Only Memory)、CPUが所定の処理(データ処理)を行う際の作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)、記憶装置(具体的には例えば、フラッシュメモリ、ハードディスク装置、などの不揮発性記憶装置)、これらを相互に接続するバスライン、などを含んで構成される。記憶装置あるいはRAMなどには、制御部6が実行する処理を規定するプログラムが格納されてもよい。この場合に、例えば、CPUが該プログラムを実行することによって、基板処理装置100が備える各部が制御部6に制御され、プログラムによって規定された処理が基板処理装置100において実行されてもよい。すなわち、CPUがプログラムを実行することによって、プログラムによって規定された処理を行う回路が制御部6において実現されてもよい。もっとも、制御部6が行う制御の一部または全部(制御部6で実現される回路の一部または全部)が、専用の論理回路などのハードウェアによって実行(実現)されてもよい。
【0040】
<2.処理ユニット>
<2-1.処理ユニットの構成>
処理ユニット4の構成について、図2を参照しながら説明する。図2は、処理ユニット4の構成例を模式的に示す側面図である。
【0041】
処理ユニット4は、基板Wに対して処理液(例えば、薬液、リンス液、および、有機溶剤)を用いた所定の処理を行う。処理ユニット4は、例えば、スピンチャック41、カップ42、および、ノズル43を備える。スピンチャック41、カップ42、および、ノズル43は、処理チャンバー44に収容される。
【0042】
スピンチャック41は、基板Wを水平姿勢(基板Wの厚み方向が上下方向(鉛直方向)に沿うような姿勢)で保持しつつ、基板Wをその主面の中心を通って上下に延びる軸線(回転軸線)Aのまわりで回転させる。スピンチャック41は、具体的には例えば、スピンベース411を備える。スピンベース411は、円板形状の部材であり、厚み方向が上下方向に沿うような姿勢で配置される。スピンベース411の上面には、複数のチャックピン412が設けられる。複数のチャックピン412は、基板Wの周縁に対応する円周に沿って等間隔に配置される。複数のチャックピン412には、これらを当接位置と開放位置との間で移動させるリンク機構(図示省略)が接続される。「当接位置」とは、チャックピン412が、基板Wの周縁に当接する位置である。「開放位置」は、チャックピン412が、基板Wの周縁から離れた位置である。複数のチャックピン412の各々が当接位置に配置されると、基板Wが、スピンベース411の上方に、水平姿勢で保持(チャック)される。また、複数のチャックピン412の各々が開放位置に配置されると、基板Wの保持が解除される。リンク機構は、制御部6からの指示に応じて、チャックピン412の位置を切り替える。すなわち、基板Wを保持するタイミング、基板Wの保持を解除するタイミング、などは、制御部6によって制御される。また、スピンベース411は、回転軸線Aと同軸に設けられたシャフト部413を介して、スピンモータ414と接続される。シャフト部413およびスピンモータ414は、カバー415に収容される。スピンモータ414は、シャフト部413を回転軸線Aのまわりで回転させる。これにより、スピンベース411、ひいては、その上方に保持される基板Wが、回転軸線Aのまわりで回転する。スピンモータ414は、制御部6からの指示に応じて、スピンベース411を回転させる。すなわち、スピンベース411(ひいては、基板W)の回転数、回転の開始タイミング、回転の終了タイミング、などは、制御部6によって制御される。
【0043】
カップ42は、スピンチャック41に保持されて回転される基板Wから排出された処理液を、受け止める。カップ42は、具体的には例えば、回転軸線Aと同軸に配置された円筒状の案内部421、案内部421の上端に連なって上方に向かうにつれて縮径する傾斜部422、および、案内部421の下端に連なって上向きに開いた環状の溝を形成する液受部423を備える。液受部423には、ここで受け止められた液を回収するカップ側回収管が設けられる。ここでは例えば、薬液用のカップ側回収管(図示省略)と、有機溶剤用のカップ側回収管424とが設けられる。また、カップ42には、これを下位置と上位置との間で昇降させるカップ昇降機構425が接続される。「下位置」は、カップ42の上端(具体的には、傾斜部422の上端)がスピンチャック41に保持される基板Wよりも下方に配置されるような位置である。「上位置」は、カップ42の上端が、スピンチャック41に保持される基板Wよりも上方に配置されるような位置である。カップ昇降機構425は、制御部6からの指示に応じて、カップ42を昇降させる。すなわち、カップ42の位置は、制御部6によって制御される。
【0044】
ノズル43は、スピンチャック41に保持される基板Wの上面に向けて、処理液を吐出する。ここでは例えば、処理液の種類ごとに個別のノズル43が設けられる。すなわち、薬液を吐出するノズル43(以下「薬液ノズル43a」とも呼ぶ)、リンス液を吐出するノズル43(以下「リンス液ノズル43b」とも呼ぶ)、および、有機溶剤を吐出するノズル43(以下「有機溶剤ノズル43c」とも呼ぶ)が設けられる。
【0045】
薬液ノズル43aは、スピンチャック41に保持されている基板Wの上面に向けて、薬液を吐出する。薬液ノズル43aは、薬液バルブ431aが介挿された薬液配管432aを介して、薬液供給源433aに接続される。薬液バルブ431aが開かれると、薬液配管432aを通じて薬液ノズル43aに薬液が供給され、薬液ノズル43aから薬液が吐出される。薬液バルブ431aは、制御部6からの指示に応じて開閉される。すなわち、薬液ノズル43aからの薬液の吐出タイミングは、制御部6によって制御される。薬液は、例えば、フッ酸である。もっとも、薬液は、フッ酸に限られるものではなく、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、リン酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(例えば、クエン酸、蓚酸、など)、有機アルカリ(例えば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、など)、界面活性剤、および、腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液であってもよい。
【0046】
リンス液ノズル43bは、スピンチャック41に保持されている基板Wの上面に向けて、リンス液を吐出する。つまり、ここでは、リンス液ノズル43bが、基板Wにリンス液を供給するリンス液供給部としての役割を担う。リンス液ノズル43bは、リンス液バルブ431bが介挿されたリンス液配管432bを介して、リンス液供給源433bに接続される。リンス液バルブ431bが開かれると、リンス液配管432bを通じてリンス液ノズル43bにリンス液が供給され、リンス液ノズル43bからリンス液が吐出される。リンス液バルブ431bは、制御部6からの指示に応じて開閉される。すなわち、リンス液ノズル43bからのリンス液の吐出タイミングは、制御部6によって制御される。ここでは、リンス液は、水(具体的には例えば、純水(脱イオン水:Deionized water))であるとする。
【0047】
有機溶剤ノズル43cは、スピンチャック41に保持されている基板Wの上面に向けて、有機溶剤を吐出する。つまり、ここでは、有機溶剤ノズル43cが、基板Wに有機溶剤を供給する有機溶剤供給部としての役割を担う。有機溶剤ノズル43cは、有機溶剤バルブ431cが介挿された有機溶剤配管432cを介して、有機溶剤回収部5に接続される。有機溶剤バルブ431cが開かれると、有機溶剤配管432cを通じて有機溶剤ノズル43cに有機溶剤(純度が十分に高い有機溶剤であり、具体的には例えば、純度が99wt%以上の有機溶剤)が供給され、有機溶剤ノズル43cから有機溶剤が吐出される。有機溶剤バルブ431cは、制御部6からの指示に応じて開閉される。すなわち、有機溶剤ノズル43cからの有機溶剤の吐出タイミングは、制御部6によって制御される。有機溶剤は、例えば水溶性の有機溶剤である。ここでは、有機溶剤は、イソプロピルアルコール(IPA:Isopropyl Alcohol)であるとする。
【0048】
なお、薬液ノズル43a、リンス液ノズル43b、および、有機溶剤ノズル43cのうちの少なくとも一つに、これを処理位置と退避位置との間で移動させるノズル移動機構が接続されてもよい。「処理位置」は、ノズル43a,43b,43cから吐出された処理液が、スピンチャック41に保持されている基板Wに供給される位置である。「退避位置」とは、ノズル43a,43b,43cが、上方から見て、スピンチャック41に保持されている基板Wの周縁よりも外側(径方向の外方)にある位置である。この場合、ノズル移動機構は、制御部6からの指示に応じて、ノズル43a,43b,43cを移動させる。すなわち、ノズル43a,43b,43cの位置は、制御部6によって制御される。
【0049】
<2-2.処理ユニットの動作>
処理ユニット4の動作の一例について、引き続き図2を参照しながら説明する。
【0050】
処理ユニット4で行われる動作は、制御部6の制御下で行われる。すなわち、制御部6が、チャックピン412、スピンモータ414、カップ昇降機構425、薬液バルブ431a、リンス液バルブ431b、有機溶剤バルブ431c、などを制御することによって、処理ユニット4において一連の動作が進行する。
【0051】
主搬送ロボット3によって処理チャンバー44内に基板Wが搬入されると、スピンチャック41が基板Wを保持する。続いて、スピンチャック41が、回転を開始する。
【0052】
この状態で、薬液バルブ431aが開かれる。すると、薬液ノズル43aから、スピンチャック41に保持されて回転される基板Wの上面に向けて、薬液が吐出される。これにより、基板Wの上面の全域に薬液が供給され、基板Wが薬液によって処理される(薬液供給工程)。例えば、薬液としてフッ酸が用いられる場合、薬液によって基板Wからパーティクル等の異物が除去される。薬液供給工程が行われる間、カップ42は上位置に配置されている。したがって、基板Wの周囲に飛散した薬液は、カップ42で受け止められる。すなわち、基板Wの周囲に飛散した薬液は、傾斜部422で受け止められ、案内部421によって下方に案内されて、液受部423に集められる。カップ42で受け止められた薬液(すなわち、液受部423に集められた薬液)は、薬液用のカップ側回収管(図示省略)を通じて回収される。
【0053】
薬液の吐出が開始されてから所定時間が経過した時点で、薬液バルブ431aが閉じられる。すると、薬液ノズル43aからの薬液の吐出が停止される。続いて、リンス液バルブ431bが開かれる。すると、リンス液ノズル43bから、スピンチャック41に保持されて回転される基板Wの上面に向けて、リンス液が吐出される。これにより、基板Wの上面の全域にリンス液が供給され、基板Wに付着している薬液がリンス液によって洗い流される(リンス液供給工程)。リンス液供給工程が行われる間も、カップ42は上位置に配置されている。したがって、基板Wの周囲に飛散した薬液およびリンス液は、カップ42で受け止められる。カップ42で受け止められた薬液およびリンス液は、薬液用のカップ側回収管(図示省略)を通じて回収される。
【0054】
リンス液の吐出が開始されてから所定時間が経過した時点で、リンス液バルブ431bが閉じられる。すると、リンス液ノズル43bからのリンス液の吐出が停止される。続いて、有機溶剤バルブ431cが開かれる。すると、有機溶剤ノズル43cから、スピンチャック41に保持されて回転される基板Wの上面に向けて、IPAが吐出される。これにより、基板Wの上面の全域にIPAが供給され、基板Wに付着しているリンス液がIPAに置換される(有機溶剤供給工程)。有機溶剤供給工程が行われる間も、カップ42は上位置に配置されている。したがって、基板Wの周囲に飛散したリンス液およびIPAは、カップ42で受け止められる。カップ42で受け止められたリンス液およびIPAは、有機溶剤用のカップ側回収管424を通じて回収される。
【0055】
IPAの供給開始から所定時間が経過した時点で、有機溶剤バルブ431cが閉じられる。すると、有機溶剤ノズル43cからのIPAの吐出が停止される。この段階で、基板W上のリンス液がIPAに完全に置換され、基板Wの上面の全域を覆うIPAの液膜が形成されている。続いて、スピンチャック41が、高速回転を開始する。これにより、基板Wが高速回転され、基板W上のIPAが、遠心力によって基板Wの周囲に振り切られていく(スピンドライ工程)。基板Wが高速回転される間も、カップ42は上位置に配置されている。したがって、基板Wの周囲に飛散したIPAは、カップ42で受け止められる。カップ42で受け止められたIPAは、有機溶剤用のカップ側回収管424を通じて回収される。
【0056】
スピンチャック41の高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、スピンチャック41の回転が停止される。この段階で、IPAが基板Wから除去され、基板Wは乾燥されている。乾燥された基板Wは、主搬送ロボット3によって処理チャンバー44から搬出される。
【0057】
以上で、1枚の基板Wに対する一連の処理が終了する。処理ユニット4では、上記の一連の動作が繰り返されることによって、基板Wが1枚ずつ次々に処理されていく。
【0058】
<3.有機溶剤回収部>
<3-1.構成>
有機溶剤回収部5の構成について、図3を参照しながら説明する。図3は、有機溶剤回収部5の構成例を模式的に示す図である。
【0059】
有機溶剤回収部5は、回収タンク60と、浄化タンク70と、供給タンク80とを備える。一例として、回収タンク60および浄化タンク70は、第1収容ボックス50aに収容され、供給タンク80は、第2収容ボックス50bに収容される。また、一例として、第1収容ボックス50aは、基板処理装置100の外壁100aの外側(例えば、基板処理装置100が設置されるクリーンルームの下(地下))に配置され、第2収容ボックス50bは、基板処理装置100の外壁100aの内側に配置される(図1)。
【0060】
(a)回収タンク60
回収タンク60は、回収配管61を介して、カップ42と接続される。すなわち、回収配管61の一端側は、回収タンク60に接続され、回収配管61の他端側は、カップ42(具体的には、カップ42に接続されたカップ側回収管424)に接続される。ここでは例えば、回収配管61は、同じタワーに属する複数の処理ユニット4の各々が備えるカップ42に接続される。回収配管61には回収バルブ611が設けられる。回収バルブ611が開かれると、有機溶剤供給工程およびスピンドライ工程においてカップ42に集められた有機溶剤(ここではIPA)が、回収配管61に案内されて回収タンク60に流入して、ここに貯留される。ただし、スピンドライ工程では、IPA(純度が十分に高いIPAであり、具体的には例えば、純度が99wt%以上のIPA)が回収されるものの、有機溶剤供給工程では、IPAがリンス液(ここでは水)と混合された状態(すなわち、水で希釈された状態)で回収される。このため、回収タンク60には、処理ユニット4において基板Wに供給された後に回収された水と、処理ユニット4において基板Wに供給された後に回収されたIPAとを含む混合流体が貯留される。
【0061】
回収タンク60には、循環配管(脱水用循環配管)62が接続される。具体的には、脱水用循環配管62の一端側および他端側はいずれも回収タンク60に接続される。脱水用循環配管62は、回収タンク60に貯留されている混合流体が、回収タンク60から流出し、再び、回収タンク60に戻るように循環する循環経路を形成する。
【0062】
脱水用循環配管62には、脱水器(分離器)621が設けられる。脱水器621は、ここに流入した混合流体から水を分離して脱水する。脱水器621の構成については後に説明する。
【0063】
脱水用循環配管62には、ポンプ(脱水側送液ポンプ)622および一対の開閉バルブ623a,623bが設けられる。一例として、脱水側送液ポンプ622は、回収タンク60の下流側であって、脱水器621の上流側に設けられる。また、一方の開閉バルブ623aは回収タンク60の上流側に設けられ、他方の開閉バルブ623bは回収タンク60の下流側に設けられる。脱水側送液ポンプ622は、脱水用循環配管62内の混合流体を、循環に必要な圧(循環圧)で送液する。一対の開閉バルブ623a,623bがともに開かれた状態で、脱水側送液ポンプ622が循環圧で混合流体を送液することで、回収タンク60に貯留された混合流体が脱水用循環配管62を循環する。
【0064】
脱水用循環配管62には、ヒータ624が設けられる。ヒータ624は、回収タンク60の下流側であって脱水器621の上流側に設けられる。図の例では、ヒータ624は、脱水側送液ポンプ622の下流側に設けられる。ヒータ624は、混合流体を、所定の温度(加熱温度)T1に加熱する。ここでは、加熱温度T1は、水の沸点以上の温度とされる。つまり、ヒータ624は、混合流体を水の沸点以上に加熱する。ここでいう「水の沸点」とは、厳密にいうと、循環圧の下での水の沸点である。しかしながら、循環圧は十分に小さいため、循環圧の下での水の沸点は、大気圧下での水の沸点(100℃)と同じであるとみなすことができる。ヒータ624の具体的な構成はどのようなものであってもよい。一例として、ヒータ624は、配管の周囲を覆ってここを流れる流体を加熱するヒータ(いわゆる、ジャケットヒータ)を用いて形成されてもよい。ヒータ624がジャケットヒータを用いて形成される場合、加熱によって配管内の混合流体の圧が高まっても、ヒータ624の動作が影響されにくい。また、ヒータ624がジャケットヒータを用いて形成される場合、これが、例えば、熱伝導性に優れた金属製の配管の周囲を覆うように設けられることで、配管内の混合流体を効果的に加熱することができる。
【0065】
脱水用循環配管62には、冷却器625が設けられる。冷却器625は、脱水器621の下流側であって回収タンク60の上流側に設けられる。冷却器625は、混合流体を、所定の温度(冷却温度)T2に冷却する。ここでは、冷却温度T2は、有機溶剤(ここではIPA)の沸点よりも低い温度とされる。つまり、冷却器625は、混合流体を、有機溶剤の沸点よりも低い温度に冷却する。ここでいう「有機溶剤の沸点」とは、厳密にいうと、循環圧の下での有機溶剤の沸点である。しかしながら、上記のとおり、循環圧は十分に小さいため、循環圧の下での有機溶剤の沸点は、大気圧下での有機溶剤の沸点(有機溶剤がIPAの場合、82.3℃)と同じであるとみなすことができる。冷却器625の具体的な構成はどのようなものであってもよい。一例として、冷却器625は、配管の周囲に設けられた冷却管に冷却媒体を流通させて、配管を流れる流体の熱を奪ってこれを冷却するもの(いわゆる、熱交換器)を用いて形成されてもよい。
【0066】
上記のとおり、ヒータ624は、混合流体を水の沸点以上の加熱温度T1に加熱し、冷却器625は、混合流体をIPAの沸点よりも低い冷却温度T2に冷却する。したがって、混合流体は、その状態を変化させつつ、脱水用循環配管62を循環することになる。つまり、脱水用循環配管62を循環する混合流体は、ヒータ624よりも下流側であって冷却器625よりも上流側の配管部分(以下、「第1配管部分62a」と呼ぶ)を流れる間は、蒸気状態(すなわち、混合流体に含まれる水およびIPAがともに蒸気の状態)となっており、冷却器625よりも下流側であってヒータ624よりも上流側の部分(以下、「第2配管部分62b」と呼ぶ)を流れる間は、液体状態(すなわち、混合流体に含まれる水およびIPAがともに液体の状態)となっている。
【0067】
このため、第1配管部分62a、ここに設けられる機器類(例えば、脱水器621)、ヒータ624、および、冷却器625は、蒸気状態の混合流体の圧力に耐える耐圧性、および、加熱温度T1に耐え得る耐熱性を有するものとされる。一方、第2配管部分62bおよびここに設けられる機器類(例えば、回収タンク60、脱水側送液ポンプ622、一対の開閉バルブ623a,623b)は、蒸気状態の混合流体の圧力に耐える耐圧性、および、加熱温度T1に耐え得る耐熱性を有さなくてよい。つまり、第2配管部分62bおよびここに設けられる機器類は、第1配管部分62aおよびここに設けられる機器類よりも、耐圧性が低く、耐熱性が低いものであってよい。一例として、第1配管部分62aは、耐圧配管(例えば、金属製の配管)により形成され、第2配管部分62bは、耐圧配管ではない配管(例えば、樹脂製の配管)により形成される。また、回収タンク60は、圧力容器(圧力タンク)である必要はなく、例えば大気圧タンクにより形成される。
【0068】
ここでは、ヒータ624と冷却器625が同じ脱水用循環配管62に設けられる。このため、ヒータ624には、冷却温度T2に冷却された混合流体が流入し、冷却器625には、加熱温度T1に加熱された混合流体が流入する。つまり、ヒータ624は、混合流体を冷却温度T2から加熱温度T1にまで昇温させなければならず、冷却器625には、混合流体を加熱温度T1から冷却温度T2にまで降温させなければならない。ヒータ624および冷却器625の負荷を小さくするためには、加熱温度T1と冷却温度T2との差が小さいほど好ましい。すなわち、加熱温度T1は、水の沸点以上の範囲で、できるだけ低い温度であることが好ましい。一例として、加熱温度T1は、水の沸点よりも5~10℃程度高い温度(105~110℃)とされる。また、冷却温度T2は、有機溶剤(ここではIPA)の沸点よりも低い範囲で、できるだけ高い温度であることが好ましい。例えば、冷却温度T2は、IPAの沸点よりも低く、かつ、常温よりも高い温度とされる。特に、冷却温度T2は、IPAの沸点よりも5~10℃程度低い温度(すなわち、77.3~72.3℃)であることが好ましい。
【0069】
脱水用循環配管62には、減圧器626がさらに設けられてもよい。減圧器626は、例えば、冷却器625の下流側であって回収タンク60の上流側に設けられ、冷却器625で冷却された混合流体を減圧する。減圧器626は、例えば、流路を絞ることによって配管を流れる流体に圧力損失を生じさせて、二次側に流出する混合流体の圧力を一次側から流入する混合流体の圧力よりも低い値に減圧するものであってよい。一例として、減圧器626は、絞りバルブ(絞り弁)、リリーフバルブ(リリーフ弁)、減圧バルブ(減圧弁)、などを用いて形成することができる。減圧器626が設けられることで、第2配管部分62bにおける減圧器626よりも下流側の配管部分およびここに設けられる機器類(例えば、回収タンク60、脱水側送液ポンプ622、一対の開閉バルブ623a,623b)にかかる圧力を、十分に小さく抑えることができる。
【0070】
脱水用循環配管62には、各種のセンサが設けられてもよい。例えば、脱水用循環配管62には、脱水用循環配管62を循環する混合流体に含まれるIPAの濃度を計測する濃度センサ627、脱水用循環配管62を循環する混合流体の圧力を検知する圧力センサ628、脱水用循環配管62を循環する混合流体の温度を検知する温度センサ629、脱水用循環配管62を循環する混合流体の流量を計測する流量センサ(流量計)630、などが設けられてもよい。各センサ627,628,629,630は、第2配管部分62bに設けられることが好ましい。図の例では、濃度センサ627は、減圧器626よりも下流側であって、回収タンク60よりも上流側の位置に設けられ、圧力センサ628は、脱水側送液ポンプ622の下流側近傍に設けられ、温度センサ629は、ヒータ623の上流側近傍に設けられ、流量センサ630は、脱水側送液ポンプ622の上流側近傍に設けられる。
【0071】
(b)脱水器621
次に、脱水器621について、図3に加え、図4を参照しながら説明する。図4は、脱水器621の構成例を概略的に示す側断面図である。
【0072】
脱水器621は、分離膜51と、ハウジング52とを備える。
【0073】
分離膜51は、水を通過させつつ有機溶剤(ここではIPA)を通過させない膜である。分離膜51は、具体的には例えば、ゼオライトで形成されたゼオライト膜である。ゼオライトは、例えば、四面体構造の基本単位(例えば、(SiO4)4-および(AlO4)5-のうちの少なくとも一方を含む基本単位)が相互に連結された結晶構造を有する。分離膜51は、具体的には例えば、円柱状の基体511に、これを軸線方向に貫通する無数のセル512が設けられた構成を備える。セル512は、分離膜51内での混合流体の流路となる。なお、この場合、基体511の全体がゼオライトで形成されてもよいし、各セル512の内周面だけがゼオライトで形成されてもよい。
【0074】
ハウジング52は、中空の円筒状の部材であり、内部に分離膜51を収容する。ハウジング52とここに収容される分離膜51との間には、これらの間を封止する一対の封止部材520が設けられる。各封止部材520は例えばリング状であり、分離膜51の軸線方向の一端側と他端側にそれぞれ設けられる。ハウジング52の内部空間は、分離膜51によって、分離膜51の内部空間(すなわち、各セル512の内部空間)であるセル内空間V1と、分離膜51の外部空間である分離空間V2とに隔てられている。また、ハウジング52には、流入口521と、第1流出口522と、第2流出口523とが設けられる。流入口521は、ハウジング52の軸線方向の一方側の端面に設けられ、各セル512の一方の開口を通じてセル内空間V1と連通する。第1流出口522は、ハウジング52の軸線方向の他方側の端面に設けられ、各セル512の他方の開口を通じてセル内空間V1と連通する。第2流出口523は、ハウジング52の側面(周面)に設けられ、分離空間V2と連通する。
【0075】
流入口521および第1流出口522には、脱水用循環配管62が接続される。一方、第2流出口523には、真空ポンプ531が設けられた分離配管53が接続される。脱水用循環配管62を流れる混合流体は、流入口521から脱水器621(具体的には、セル内空間V1)に流入して、セル内空間V1を流れる。この状態で、分離配管53に設けられた真空ポンプ531が作動されると、分離空間V2が減圧されて、セル内空間V1と分離空間V2との間に圧力差が設けられる。セル内空間V1と分離空間V2とを隔てる分離膜51は、水が通過でき、IPAが通過できない膜である。したがって、セル内空間V1と分離空間V2との間に圧力差が設けられると、セル内空間V1に流入した混合流体に含まれる水(水分子)が、分離膜51を通過して、分離空間V2に到達し、第2流出口523を通じて分離配管53に流入する。こうして、混合流体から水が分離される。一方、セル内空間V1に流入した混合流体に含まれるIPA(IPA分子)は、分離膜51を通過できないため、セル内空間V1を流れて、第1流出口522を通じて脱水用循環配管62に流入する。このようにして、混合流体は、脱水器621に流入したときよりもIPAの濃度が高められた状態で脱水器621から流出する。脱水器621を繰り返して通過するごとに混合流体におけるIPAの濃度が高まっていく。
【0076】
ここでは、脱水器621の上流側に設けられるヒータ624が、混合流体を、水の沸点以上の加熱温度T1に加熱する。したがって、脱水器621に流入する混合流体は、蒸気状態(すなわち、混合流体に含まれる水およびIPAがともに蒸気の状態)となっている。蒸気状態の水(水蒸気)は、液体状態の水に比べて、分子間の距離が大きく、分子間にはたらく力が小さく、分子の平均運動エネルギーが高いため、分離膜51を通過しやすい。したがって、脱水器621に流入する混合流体に含まれる水が蒸気状態となっていることで、分離効率(脱水効率)が高まる。分離対象となる流体を蒸気状態として分離膜51に供給する方法は、VP(Vapor permeation)法などとも呼ばれる。
【0077】
なお、混合流体から分離された水が流入する分離配管53の側の構成は適宜に規定することができる。ここでは例えば、分離配管53における真空ポンプ531よりも上流側の位置に、凝縮器532が設けられる。凝縮器532には、ここで凝縮された水を導く排水配管54が接続される。排水配管54には、ここを流れる水に微量に含まれる有機溶剤(ここではIPA)を分解して水の純度を高めるための分解器541が設けられる。分解器541は、例えば、水に含まれるIPAを電気分解して水の純度を高めるものであってもよい。この場合、分解器541は、例えば、排水配管54を流れる水を一時的に貯留するタンク、タンクに貯留された水に浸される一対の電極、一対の電極に電力を供給してこれらの間に電位差を形成する電力供給部、などを含んで構成することができる。排水配管54は、例えば、処理ユニット4のリンス液供給源433b(図2)に接続されてもよいし、工場の水回収ラインに接続されてもよい。例えば、排水配管54がリンス液供給源433bに接続される場合、混合流体から分離されて分離配管53に流入した水は、凝縮器532で凝縮されて排水配管54に流入し、分解器541で水の純度を高められた上で、リンス液供給源433bに導かれて、リンス液ノズル43bからリンス液として吐出される。すなわち、この場合、混合流体から分離された水が、リンス液として再利用されることになる。
【0078】
(c)浄化タンク70
再び図3を参照する。浄化タンク70は、第1送液配管71および脱水用循環配管62を介して、回収タンク60と接続される。すなわち、第1送液配管71の一端側は、浄化タンク70に接続され、第1送液配管71の他端側は、脱水用循環配管62に接続される。一例として、第1送液配管71の他端側は、脱水用循環配管62の第2配管部分62b(例えば、ヒータ623よりも上流側であって脱水側送液ポンプ622よりも下流側の位置)に接続される。もっとも、第1送液配管71の他端側は、脱水用循環配管62を介さずに回収タンク60と直接に接続されてもよい。第1送液配管71には第1送液バルブ711が設けられる。回収タンク60に、混合流体から水が分離されることによってIPAの濃度(純度)が十分に(基板Wに供給できる程度に)高められた流体(以下「濃縮流体」とも呼ぶ)が得られている状態で、第1送液バルブ711が開かれると、濃縮流体が第1送液配管71に案内されて浄化タンク70に流入して、ここに貯留される。
【0079】
浄化タンク70には、循環配管(浄化用循環配管)72が接続される。具体的には、浄化用循環配管72の一端側および他端側はいずれも浄化タンク70に接続される。浄化用循環配管72は、浄化タンク70に貯留されている濃縮流体が、浄化タンク70から流出し、再び、浄化タンク70に戻るように循環する循環経路を形成する。
【0080】
浄化用循環配管72には、ポンプ(浄化側送液ポンプ)721および開閉バルブ722が設けられる。一例として、開閉バルブ722は、浄化側送液ポンプ721の下流側であって浄化タンク70の上流側に設けられる。浄化側送液ポンプ721は、浄化用循環配管72内の濃縮流体を、循環に必要な圧で送液する。開閉バルブ722が開かれた状態で、浄化側送液ポンプ721が循環に必要な圧で濃縮流体を送液することで、浄化タンク70に貯留された濃縮流体が浄化用循環配管72を循環する。
【0081】
浄化用循環配管72には、フィルタ723および温調器724が設けられる。一例として、フィルタ723は、浄化側送液ポンプ721の下流側であって浄化タンク70の上流側に設けられ、温調器724は、浄化側送液ポンプ721の下流側であってフィルタ723の上流側に設けられる。フィルタ723は、浄化用循環配管72を流れる濃縮流体に含まれる除去対象物(例えば、パーティクル、金属、など)を捕獲する。濃縮流体がフィルタ723を通過することで、濃縮流体に含まれる除去対象物が濃縮流体から除去され、濃縮流体の清浄度が高められる。フィルタ723には、エア抜き用の配管7231が接続されてもよい。温調器724は、冷却性能と加熱性能を有する機器であり、一例として、ペルチェ素子を用いて電子的な冷却および加熱を行う電子冷熱器である。フィルタ723を高温の流体が通過すると、熱膨張などによってフィルタ723の性能が低下するおそれがある。そこで、ここでは、温調器724が、必要に応じて、浄化用循環配管72を循環する濃縮流体を所定の温度(例えば、常温)にまで冷却する。これによって、フィルタ723の性能が低下することが抑制される。
【0082】
浄化用循環配管72には、各種のセンサが設けられてもよい。例えば、浄化用循環配管72には、浄化用循環配管72を循環する濃縮流体の圧力を検知する圧力センサ725、浄化用循環配管72を循環する濃縮流体の温度を検知する温度センサ726、浄化用循環配管72を循環する濃縮流体に含まれるパーティクルの個数を計数するパーティクルカウンタ(図示省略)、などが設けられてもよい。図の例では、浄化側送液ポンプ721の下流側近傍に圧力センサ725が設けられ、温調器724の下流側近傍に温度センサ726が設けられる。
【0083】
(d)供給タンク80
供給タンク80は、第2送液配管81および浄化用循環配管72を介して、浄化タンク70と接続される。すなわち、第2送液配管81の一端側は、供給タンク80に接続され、第2送液配管81の他端側は、浄化用循環配管72に接続される。一例として、第2送液配管81の他端側は、浄化用循環配管72における、フィルタ723よりも上流側であって浄化側送液ポンプ721よりも下流側の位置に接続される。もっとも、第2送液配管81の他端側は、浄化用循環配管72を介さずに浄化タンク70と直接に接続されてもよい。第2送液配管81には第2送液バルブ811が設けられる。浄化タンク70に、清浄度が十分に(基板Wに供給できる程度に)高められた濃縮流体(以下「浄化流体」と呼ぶ)が得られている状態で、第2送液バルブ811が開かれると、浄化流体が第2送液配管81に案内されて供給タンク80に流入して、ここに貯留される。
【0084】
供給タンク80は、新液配管82を通じて、新液供給源821に接続されてもよい。この場合、新液配管82の一端側は、供給タンク80に接続され、新液配管82の他端側は、新液供給源821に接続される。新液供給源821は、一度も基板Wに供給されていない未使用のIPA(純度が十分に高いIPAであり、具体的には例えば、純度が99wt%以上のIPA)の供給源である。新液配管82には、新液バルブ822が設けられる。新液バルブ822が開かれると、未使用のIPAが新液配管82に案内されて供給タンク80に流入して、ここに貯留される。
【0085】
供給タンク80は、第3送液配管83を通じて、有機溶剤ノズル43cに接続される。すなわち、第3送液配管83の一端側は、供給タンク80に接続され、第3送液配管83の他端側は、有機溶剤ノズル43c(具体的には、有機溶剤ノズル43cに接続された有機溶剤配管432c)に接続される。ここでは例えば、第3送液配管83は、同じタワーに属する複数の処理ユニット4の各々が備える有機溶剤ノズル43cに接続される。第3送液配管83には、ポンプ(供給側送液ポンプ)831が設けられる。有機溶剤バルブ431cが開かれると、供給タンク80に貯留されている浄化流体が、供給側送液ポンプ831によって有機溶剤ノズル43cの側に送液されて、有機溶剤ノズル43cから吐出される。
【0086】
第3送液配管83には、第3送液配管83を送液される浄化流体に含まれる除去対象物を捕獲するフィルタ832、および、第3送液配管83を送液される浄化流体の温度を調整する(すなわち、浄化流体が所定の温度となるように加熱あるいは冷却する)温調器833が設けられてもよい。図の例では、供給側送液ポンプ831の下流側に温調器833が設けられ、温調器833の下流側にフィルタ832が設けられる。また、第3送液配管83には、各種のセンサが設けられてもよい。例えば、第3送液配管83には、第3送液配管83を送液される浄化流体の圧力を検知する圧力センサ834、第3送液配管83を送液される浄化流体の温度を検知する温度センサ835、などが設けられてもよい。図の例では、供給側送液ポンプ831の下流側近傍に圧力センサ834が設けられ、温調器833の下流側近傍に温度センサ835が設けられる。
【0087】
<3-2.動作>
有機溶剤回収部5で行われる処理の流れについて、図5図12を参照しながら説明する。図5は、有機溶剤回収部5で行われる処理の流れの一例を示す図である。図6は、混合流体から水を分離する処理の流れの一例を示す図である。図7図12は、各工程における有機溶剤回収部5の状態を模式的に示す図である。図7図12では、説明の便宜上、流体が流れている配管が実線で示され、流体が流れていない配管が破線で示されている。
【0088】
有機溶剤回収部5の動作は、制御部6の制御下で行われる。すなわち、制御部6が、センサ(濃度センサ627、圧力センサ628,725,834、温度センサ629,726,835、流量センサ630、など)からの入力情報などに基づいて、ポンプ(脱水側送液ポンプ622、真空ポンプ531、浄化側送液ポンプ721、および、供給側送液ポンプ831)、バルブ(回収バルブ611、一対の開閉バルブ623a,623b、第1送液バルブ711、開閉バルブ722、第2送液バルブ811、および、新液バルブ822、など)、ヒータ624、冷却器625、減圧器626、凝縮器532、分解器541、温調器724,833、などを制御することによって、有機溶剤回収部5において一連の動作が進行する。
【0089】
ステップS1
まず、回収タンク60が空の状態で、回収バルブ611が開かれる。すると、有機溶剤供給工程およびスピンドライ工程においてカップ42に集められた液体が、回収配管61に案内されて回収タンク60に流入する。これにより、回収タンク60に、基板Wに供給された後に回収された水と、基板Wに供給された後に回収されたIPAとを含む混合流体が貯留される(図7)(貯留工程)。所定量の混合流体が回収タンク60に貯留されると、回収バルブ611が閉じられる。
【0090】
ステップS2
続いて、回収タンク60に貯留されている混合流体から水を分離する処理が行われる。この処理について、図6および図8図10を参照しながら具体的に説明する。
【0091】
まず、一対の開閉バルブ623a,623bがともに開かれるとともに、脱水側送液ポンプ622が循環圧で混合流体を送液する。これにより、回収タンク60に貯留されている混合流体が、脱水用循環配管62を循環する状態となる(ステップS201:循環工程)(図8)。
【0092】
続いて、混合流体の加熱が開始される(ステップS202a:加熱工程)。具体的には、ヒータ624が、脱水用循環配管62を循環する混合流体を、水の沸点以上の加熱温度T1に加熱する。また、混合流体の加熱が開始されるのと同時に、混合流体の冷却も開始される(ステップS202b:冷却工程)。具体的には、冷却器625が、脱水用循環配管62を循環する混合流体を、IPAの沸点よりも低い冷却温度T2に冷却する。加熱および冷却が行われることにより、混合流体が、その状態を変化させつつ、脱水用循環配管62を循環する。すなわち、この状態において、脱水用循環配管62を循環する混合流体は、第1配管部分62aを流れる間は蒸気状態となっており、第2配管部分62bを流れる間は液体状態となっている。
【0093】
続いて、混合流体の加熱および冷却が継続されたままで、真空ポンプ531の作動が開始される。真空ポンプ531が作動されることで、分離空間V2が減圧され、セル内空間V1と分離空間V2との間に圧力差が設けられる。この圧力差によって、セル内空間V1に流入した混合流体に含まれる水が、分離膜51を通過して分離空間V2に到達し、分離配管53に流入する。すなわち、脱水用循環配管62を循環する混合流体が脱水器621を通過する際に、該混合流体に含まれる水が分離される(ステップS203:分離工程)(図9)。ここでは、脱水器621に流入する混合流体は、加熱されることで蒸気状態(すなわち、混合流体に含まれる水およびIPAがともに蒸気の状態)となっている。脱水器621に流入する混合流体に含まれる水が蒸気状態となっていることで、混合流体から水が効率的に分離される。
【0094】
その後、真空ポンプ531が作動された状態が所定時間だけ継続される。この間も、混合流体の加熱および冷却は継続される。この間に、脱水用循環配管62を循環する混合流体が、脱水器621を繰り返して通過することによって、混合流体におけるIPAの濃度が高まっていく。ここでは、回収タンク60に貯留される混合流体におけるIPAの濃度が十分に(基板Wに供給できる程度に)高まるまでに要する時間(すなわち、濃縮流体が得られるまでに要する時間)が、測定、計算、などによって予め特定されて、所定時間として規定される。したがって、真空ポンプ531の作動が開始されてから所定時間が経過した段階で、回収タンク60に濃縮流体が貯留された状態となっている。真空ポンプ531の作動が開始されてから所定時間が経過すると(ステップS204でYES)、真空ポンプ531の作動が停止される。これにより、脱水器621における水の分離が概ね停止される(ステップS205)。さらに、混合流体の加熱が停止され(ステップS206a)、混合流体の冷却が停止される(ステップS206b)。
【0095】
その後、第1送液バルブ711が開かれる。すると、回収タンク60に貯留されている濃縮流体が、第1送液配管71を通じて浄化タンク70に送液される。これにより、浄化タンク70に、濃縮流体が貯留される(ステップS207)(図10)。回収タンク60に貯留されていた濃縮流体の全量が浄化タンク70に送液されると、第1送液バルブ711が閉じられる。
【0096】
ステップS3
続いて、浄化タンク70に貯留された濃縮流体の清浄度を高める処理が行われる。具体的には、開閉バルブ722が開かれるとともに、浄化側送液ポンプ721が循環に必要な圧で濃縮流体を送液する。これにより、浄化タンク70に貯留されている濃縮流体が、浄化用循環配管72を循環する状態となる(図11)。この状態は、所定時間だけ継続される。この間に、浄化用循環配管72を循環する濃縮流体が、フィルタ723を繰り返して通過することによって、濃縮流体の清浄度が高まっていく。ここでは、浄化用循環配管72を循環する濃縮流体の清浄度が十分に(基板Wに供給できる程度に)高まるまでに要する時間(すなわち、浄化流体が得られるまでに要する時間)が、測定、計算、などによって予め特定されて、所定時間として規定される。したがって、循環が開始されてから所定時間が経過した段階で、浄化タンク70に浄化流体が貯留された状態となっている。循環が開始されてから所定時間が経過すると、開閉バルブ722が閉じられる。
【0097】
ステップS4
続いて、第2送液バルブ811が開かれる。すると、浄化タンク70内の浄化流体が、第2送液配管81を通じて供給タンク80に送液される。これにより、供給タンク80に、浄化流体が貯留される(図12)。例えば、浄化タンク70内の浄化流体の全量が、供給タンク80に送液されると、第2送液バルブ811が閉じられる。その後、有機溶剤バルブ431cが開かれると、供給タンク80に貯留されている浄化流体が、供給側送液ポンプ831によって有機溶剤ノズル43cの側に送液されて、有機溶剤ノズル43cから吐出される。すなわち、浄化流体が基板Wに供給される。なお、浄化流体は、第3送液配管83を通過する途中で、フィルタ832を通過して清浄度を高められてもよいし、必要に応じて温調器833で温度を調整されてもよい。また、供給タンク80に貯留された浄化流体の量が所定量よりも少なくなった場合に、新液バルブ822が開かれて、未使用のIPAが供給タンク80に補充されてもよい。
【0098】
有機溶剤回収部5では、このような一連の処理(ステップS1~ステップS4)が繰り返して行われる。もっとも、ステップS4の処理が終了するより先に(例えば、ステップS3の処理が終了した段階で)、次のステップS1の処理が開始されてもよい。
【0099】
<4.効果>
上記の実施形態に係る基板処理装置100は、基板Wに水を含むリンス液を供給するリンス液供給部(リンス液ノズル)43bと、基板Wに有機溶剤(例えばIPA)を供給する有機溶剤供給部(有機溶剤ノズル)43cと、基板Wに供給された後に回収された水と、基板Wに供給された後に回収された有機溶剤とを含む混合流体を貯留する回収タンク60と、回収タンク60に接続される循環配管(脱水用循環配管)62と、脱水用循環配管62に設けられ、水を通過させつつ有機溶剤を通過させない分離膜51を備える脱水器621と、脱水用循環配管62に設けられるポンプ(脱水側送液ポンプ)622と、脱水用循環配管62における回収タンク60の下流側であって脱水器621の上流側に設けられ、混合流体を水の沸点以上に加熱するヒータ624と、を備える。この構成によると、混合流体に含まれる水を蒸気状態で脱水器621に流入させることができる。これによって、分離膜51での分離効率を高めることができる。
【0100】
また、上記の実施形態に係る基板処理装置100は、脱水用循環配管62における脱水器621の下流側であって回収タンク60の上流側に設けられる冷却器625、を備える。この構成によると、加熱された混合流体を冷却器625で冷却することによって、混合流体の圧力を低下させることができる。また、脱水用循環配管62を循環する混合流体は、冷却器625を通過する際に抵抗を受ける。したがって、蒸気状態の混合流体が冷却器625の下流側(つまりは、第1配管部分62a)に留まりやすくなる。これにより、混合流体が分離膜51と十分に接触し、分離膜51での分離効率がさらに高まる。
【0101】
また、上記の実施形態では、冷却器625が、混合流体を、有機溶剤(例えばIPA)の沸点よりも低く、かつ、常温よりも高い温度に冷却する。この構成によると、冷却器625で冷却されることによって、混合流体に含まれるIPAが蒸気状態から液体状態に戻るので、混合流体の圧力を十分に低下させることができる。その一方で、冷却器625は、混合流体を常温よりも高い温度にまでしか冷却しないので、ヒータ624および冷却器625の負荷がともに低減される。その結果、例えば、ヒータ624および冷却器625の小型化などが実現される。
【0102】
また、上記の実施形態では、脱水用循環配管62の第2配管部分(冷却器625よりも下流側であってヒータ624よりも上流側の配管部分)62bの耐圧性が、脱水用循環配管62の第1配管部分(ヒータ624よりも下流側であって冷却器625よりも上流側の配管部分)62aの耐圧性よりも低いものとされる。この構成によると、脱水用循環配管62の全体にわたって相対的に高い耐圧性をもたせる場合に比べて、装置をコンパクト化できる。
【0103】
また、上記の実施形態に係る基板処理装置100は、脱水用循環配管62に設けられ、冷却器625で冷却された混合流体を減圧する減圧器626、を備える。この構成によると、冷却器625で低下された混合流体の圧力を、減圧器626によってさらに低下させることができる。したがって、第2配管部分62bにおける減圧器626よりも下流側の配管部分およびここに設けられる機器類にかかる圧力を、十分に小さく抑えることができる。
【0104】
また、上記の実施形態に係る基板処理装置100は、送液配管(第1送液配管)71を介して回収タンク60と接続され、混合流体から水が分離されることによって得られた濃縮流体を貯留する浄化タンク70と、浄化タンク70に接続される配管(浄化用循環配管)72に設けられ、浄化用循環配管72を流れる濃縮流体に含まれる除去対象物質を捕獲するフィルタ723とを備える。この構成によると、混合流体から水が分離されることによって得られた濃縮流体から除去対象物質を除去して、濃縮流体の清浄度を高めることができる。
【0105】
また、上記の実施形態では、浄化タンク70に貯留された濃縮流体が、フィルタ723を通された上で、有機溶剤ノズル43cに送液されて、基板Wに供給される。つまり、基板Wに供給された後に回収された水と基板Wに供給された後に回収された有機溶剤とを含む混合流体から水が分離されることによって得られた濃縮流体が、清浄度を高められた上で、再び基板Wに供給される。したがって、有機溶剤の使用量および排出量を削減することができる(省液化)。IPAは揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compound)であり、その使用量および排出量を削減することによって、環境負荷を軽減することができる。
【0106】
<5.変形例>
上記の実施形態に係る基板処理装置100に係る構成および動作は、適宜に変更することができる。以下の説明においては、上記の実施形態で説明したものと同様の要素については、同一符号を付すとともに、その説明を省略する。
【0107】
<5-1.第1変形例>
第1変形例に係る有機溶剤回収部5tの構成について、図13を参照しながら説明する。図13は、有機溶剤回収部5tの一例を模式的に示す図である。
【0108】
有機溶剤回収部5tは、複数(図の例では2個)の回収タンク60A,60Bと、複数(図の例では2個)の浄化タンク70A,70Bと、供給タンク80(図3参照)とを備える。
【0109】
回収タンク60A,60Bは、回収配管61tを介して、カップ42と接続される。すなわち、回収配管61tの一端側は分岐しており、一方の分岐部分61Aの端部は、第1回収タンク60Aに接続され、他方の分岐部分61Bの端部は、第2回収タンク60Bに接続される。回収配管61tの他端側は、カップ42(具体的には、カップ42に接続されたカップ側回収管424)に接続される。各分岐部分61A,61Bには、回収バルブ611A,611Bが設けられる。一方の回収バルブ611Aが開かれると、有機溶剤供給工程およびスピンドライ工程においてカップ42に集められた液体が、回収配管61tに案内されて第1回収タンク60Aに流入して、ここに貯留される。すなわち、第1回収タンク60Aに混合流体が貯留される。同様に、他方の回収バルブ611Bが開かれると、有機溶剤供給工程およびスピンドライ工程においてカップ42に集められた液体が、回収配管61tに案内されて第2回収タンク60Bに流入して、ここに貯留される。すなわち、第2回収タンク60Bに混合流体が貯留される。
【0110】
回収タンク60A,60Bには、循環配管(脱水用循環配管)62tが接続される。脱水用循環配管62tには、分岐位置R1と合流位置R2とが規定されており、これらの間に複数(回収タンク60A,60Bと同数個)の分岐配管620A,620Bが設けられる。そして、複数の分岐配管620A,620Bの各々に、回収タンク60A,60Bが設けられる。すなわち、一方の分岐配管620Aには、第1回収タンク60Aが設けられ、他方の分岐配管620Bには、第2回収タンク60Bが設けられる。また、一方の分岐配管620Aには、第1回収タンク60Aを挟んで一対の第1バルブ621A,621Aが設けられ、他方の分岐配管620Bには、第2回収タンク60Bを挟んで一対の第2バルブ621B,621Bが設けられる。一対の第1バルブ621A,621Aが開かれ、かつ、一対の第2バルブ621B,621Bが閉じられると、第1回収タンク60Aに貯留されている混合流体が、第1回収タンク60Aから流出し、再び、第1回収タンク60Aに戻るように循環する循環経路が形成される。逆に、一対の第1バルブ621A,621Aが閉じられ、かつ、一対の第2バルブ621B,621Bが開かれると、第2回収タンク60Bに貯留されている混合流体が、第2回収タンク60Bから流出し、再び、第2回収タンク60Bに戻るように循環する循環経路が形成される。
【0111】
上記の実施形態と同様、脱水用循環配管62tには、脱水器621、脱水側送液ポンプ622、一対の開閉バルブ623a,623b、ヒータ624、冷却器625、減圧器626、および、各種のセンサ627,628,629,630が設けられる。これら各部は、分岐位置R1よりも上流側であり、かつ、合流位置R2よりも下流側の各位置に設けられる。
【0112】
上記の実施形態と同様、ヒータ624は、混合流体を、水の沸点以上の加熱温度T1に加熱する。また、冷却器625は、混合流体を、IPAの沸点よりも低い冷却温度T2に冷却する。したがって、上記の実施形態と同様、脱水用循環配管62を循環する混合流体は、ヒータ624よりも下流側であって冷却器625よりも上流側の第1配管部分62aを流れる間は、蒸気状態となっており、冷却器625よりも下流側であってヒータ624よりも上流側の第2配管部分62bを流れる間は、液体状態となっている。このため、上記の実施形態と同様、第1配管部分62a、ここに設けられる機器類(例えば、脱水器621)、ヒータ624、および、冷却器625は、蒸気状態の混合流体の圧力に耐える耐圧性、および、加熱温度T1に耐え得る耐熱性を有するものとされる。一方、第2配管部分62bおよびここに設けられる機器類(例えば、第1回収タンク60A、第2回収タンク60B、脱水側送液ポンプ622、一対の開閉バルブ623a,623b)は、蒸気状態の混合流体の圧力に耐える耐圧性、および、加熱温度T1に耐え得る耐熱性を有さなくてよい。一例として、第1回収タンク60Aおよび第2回収タンク60Bは、いずれも、大気圧タンクにより形成される。
【0113】
浄化タンク70A,70Bは、第1送液配管71tおよび脱水用循環配管62tを介して回収タンク60A,60Bと接続される。すなわち、第1送液配管71tの一端側は分岐しており、一方の分岐部分71Aの端部は、第1浄化タンク70Aに接続され、他方の分岐部分71Bの端部は、第2浄化タンク70Bに接続される。第1送液配管71tの他端側は、脱水用循環配管62tの第2配管部分62bに接続される。各分岐部分71A,71Bには、第1送液バルブ711A,711Bが設けられる。第1回収タンク60Aあるいは第2回収タンク60Bに濃縮流体が得られている状態で、第1浄化タンク70A側の第1送液バルブ711Aが開かれると、濃縮流体が第1送液配管71tに案内されて第1浄化タンク70Aに流入して、ここに貯留される。同様に、第1回収タンク60Aあるいは第2回収タンク60Bに濃縮流体が得られている状態で、第2浄化タンク70B側の第1送液バルブ711Bが開かれると、該濃縮流体が第1送液配管71tに案内されて第2浄化タンク70Bに流入して、ここに貯留される。
【0114】
第1浄化タンク70Aおよび第2浄化タンク70Bの各々には、循環配管(浄化用循環配管)72A,72Bが接続される。各浄化用循環配管72A,72Bには、上記の実施形態に係る浄化用循環配管72と同様、浄化側送液ポンプ721、開閉バルブ722、フィルタ723、温調器724、および、各種のセンサ725,726が設けられる。
【0115】
第1浄化タンク70Aおよび第2浄化タンク70Bの各々は、浄化用循環配管72A,72Bおよび第2送液配管81tを介して、供給タンク80(図3)と接続される。すなわち、第2送液配管81tの一端側は分岐しており、一方の分岐部分81Aの端部は、第1浄化タンク70A側の浄化用循環配管72Aに接続され、他方の分岐部分81Bの端部は、第2浄化タンク70B側の浄化用循環配管72Bに接続される。第2送液配管81tの他端側は、供給タンク80に接続される。各分岐部分81A,81Bには、第2送液バルブ811A,811Bが設けられる。第1浄化タンク70Aに浄化流体が得られている状態で、第1浄化タンク70A側の第2送液バルブ811Aが開かれると、第1浄化タンク70A内の浄化流体が第2送液配管81tに案内されて供給タンク80に流入して、ここに貯留される。同様に、第2浄化タンク70Bに浄化流体が得られている状態で、第2浄化タンク70B側の第2送液バルブ811Bが開かれると、第2浄化タンク70B内の浄化流体が第2送液配管81tに案内されて供給タンク80に流入して、ここに貯留される。
【0116】
有機溶剤回収部5tでも、上記の実施形態と同様の一連の処理(ステップS1~ステップS4)(図5)が行われる。
【0117】
すなわち、上記の実施形態と同様、有機溶剤回収部5tでも、まずは、カップ42に集められた液体が、一方の回収タンク(例えば第1回収タンク60A)に送液されて、ここに混合流体が貯留される(ステップS1)。続いて、第1回収タンク60Aに貯留されている混合流体から水を分離する処理が行われる(ステップS2)。ただし、有機溶剤回収部5tでは、この処理と並行して、カップ42に集められた液体が、他方の回収タンク(第2回収タンク60B)に送液されて、ここに混合流体が貯留される。つまり、カップ42に集められた液体は、一方の回収タンク60Aに送液された後、該回収タンク60Aが空になるのを待たずに(すなわち、該回収タンク60Aに貯留されている混合流体から水を分離する処理が終了するのを待たずに)、他方の回収タンク60Bに送液される。
【0118】
また、上記の実施形態と同様、有機溶剤回収部5tでも、混合流体から水を分離することによって得られた濃縮流体は、第1回収タンク60Aあるいは第2回収タンク60Bから、第1浄化タンク70Aあるいは第2浄化タンク70Bに送液されて、ここに貯留される。第1浄化タンク70Aおよび第2浄化タンク70Bの各々では、ここに濃縮流体が貯留されると、該濃縮流体の清浄度を高める処理が行われ(ステップS3)、得られた浄化流体が供給タンク80に送液される(ステップS4)。ここでは、複数の浄化タンク70A,70Bが設けられているので、一方の浄化タンク70Aにおいて濃縮流体の清浄度を高める処理が行われている間でも、他方の浄化タンク70Bに濃縮流体を送液することができる。
【0119】
このように、有機溶剤回収部5tは、複数の回収タンク60A,60Bを備えるので、送液先の回収タンク60A,60Bを切り替えることで、カップ42に集められた液体(すなわち、基板Wに供給された後に回収された水、および、基板Wに供給された後に回収された有機溶剤)を途切れなく送液することができる。また、有機溶剤回収部5tは、複数の浄化タンク70A,70Bを備えるので、送液先の浄化タンク70A,70Bを切り替えることで、混合流体から水を分離することによって得られた濃縮流体を途切れなく送液することができる。これらにより、基板Wに供給された有機溶剤を回収してから、これが再び基板Wに供給されるまでのサイクルタイムを短縮することができる。その結果、有機溶剤の使用量および排出量を効果的に削減することができる。
【0120】
<5-2.第2変形例>
上記の実施形態に係る有機溶剤回収部5において、脱水器621は、セル512が鉛直方向に延在し、流入口521が鉛直下側に(したがって、第1流出口522が鉛直上側に)配置されるような、姿勢および向きで配置されてもよい。この場合、脱水用循環配管62を流れる混合流体が、セル512における鉛直下側の開口から流入することになる。
【0121】
この変形例によると、脱水用循環配管62からセル512に流入した混合流体が、鉛直方向に延在するセル512の内部(セル内空間V1)を、下から上に流れる。したがって、例えば、セル内空間V1に流入した混合流体の一部がセル内空間V1を通過する途中で凝縮して液体(例えば液滴)となったとしても、該混合流体は、重力を受けてセル内空間V1に十分に留まって、分離膜51と十分に接触する。したがって、該液体に含まれる水が分離される可能性が高まる。すなわち、分離効率がさらに高まる。また、この変形例によると、水頭圧により、脱水器621の二次側における混合流体の圧力が、一次側における混合流体の圧力に比べて小さくなる。すなわち、脱水器621を通過した後の混合流体の圧力を低下させることができる。
【0122】
<5-3.第3変形例>
第2変形例に係る有機溶剤回収部5のように、脱水器621が、セル512が鉛直方向に延在するような姿勢で配置される場合、脱水器621とヒータ624とが鉛直方向に配列されてもよい。具体的には例えば、脱水器621が、セル512が鉛直方向に延在するような姿勢で配置される場合に、脱水用循環配管62における流入口521との接続部分およびその近傍に、鉛直方向に延在する配管部分(鉛直配管部分)が設けられ、この鉛直配管部分に、ヒータ624が設けられてもよい。一例として、ジャケットヒータを用いて形成されるヒータ624が、鉛直配管部分の周囲を少なくとも覆うように設けられてもよい。ヒータ624が鉛直配管部分に設けられることで、ヒータ624で加熱された混合流体が脱水器621に流入するまでに発生する熱損失が低減される。ひいては、ヒータ624の負荷が低減される。
【0123】
<5-4.その他の変形例>
上記の実施形態において、ヒータ624の負荷を低減するためには、ヒータ624で加熱された混合流体が脱水器621に流入するまでに発生する熱損失を低減することが有効である。この熱損失を低減するためには、ヒータ624と脱水器621との離間距離が小さい方が好ましい。例えば、ヒータ624が、脱水器621との離間距離が設計上許容される最小値となるような位置に設けられることが好ましい。ヒータ624と脱水器621との離間距離を小さくするためには、ヒータ624と脱水器621との間に他の機器類が配設されないことも好ましい。
【0124】
上記の実施形態において、第1配管部分62aには、相対的に高い耐圧性および相対的に高い耐熱性が求められる。したがって、装置のコンパクト化のためには、脱水用循環配管62において第1配管部分62aが占める長さの割合が短い方が好ましい。このためには、ヒータ624と冷却器625との離間距離が小さい方が好ましい。この点に鑑みても、上記のとおり、ヒータ624が、脱水器621との離間距離が設計上許容される最小値となるような位置に設けられることが好ましい。また、冷却器625が、脱水器621との離間距離が設計上許容される最小値となるような位置に設けられることも好ましい。冷却器625と脱水器621との離間距離を小さくするためには、冷却器625と脱水器621との間に他の機器類が配設されないことも好ましい。
【0125】
上記の実施形態において、脱水用循環配管62に減圧器626が設けられることで、減圧器626よりも下流側の配管部分およびここに設けられる機器類にかかる圧力が、減圧器626よりも上流側の配管部分およびここに設けられる機器類にかかる圧力よりも、小さく抑えられる。したがって、配管などにかかる負荷を効果的に軽減するためには、減圧器626は、できるだけ上流側に設けられることが好ましく、このためには、減圧器626と冷却器625との離間距離が小さい方が好ましい。例えば、減圧器626は、冷却器625との離間距離が設計上許容される最小値となるような位置に設けられることが好ましい。また、減圧器626と冷却器625との離間距離を小さくするためには、減圧器626と冷却器625との間に他の機器類が配設されないことも好ましい。なお、第2配管部分62bにおける減圧器626よりも下流側の配管部分およびここに設けられる機器類は、第2配管部分62bにおける減圧器626よりも上流側の配管部分およびここに設けられる機器類よりも、耐圧性が低いものとされてもよい。
【0126】
上記の実施形態に係る有機溶剤回収部5において、冷却器625および減圧器626の一方あるいは両方が省略されてもよい。例えば、第2配管部分62bおよびここに設けられる機器類に、蒸気状態の混合流体の圧力に耐える耐圧性、および、加熱温度T1に耐え得る耐熱性をもたせることができる場合、冷却器625および減圧器626が省略されてもよい。
【0127】
上記の実施形態に係る有機溶剤回収部5において、回収タンク60と浄化タンク70が一つのタンクで共用されてもよい。具体的には例えば、一つのタンク(回収浄化タンク)に、脱水用循環配管62と浄化用循環配管72とが接続されてもよい。この場合、回収浄化タンクに貯留された混合流体を、まずは、脱水用循環配管62に循環させて濃縮流体とし、続いて、得られた濃縮流体を、浄化用循環配管72に循環させて浄化流体とすればよい。
【0128】
上記の実施形態に係る有機溶剤回収部5において、脱水用循環配管62にフィルタが設けられてもよい。すなわち、脱水用循環配管62を循環する混合流体から、水を分離しつつ、除去対象物を除去してもよい。この場合、浄化タンク70を省略し、回収タンク60を直接に(浄化タンク70を介在させずに)、供給タンク80と接続してもよい。
【0129】
上記の実施形態に係る有機溶剤回収部5において、脱水器621の構成は適宜に変更することができる。例えば、脱水器621が備える分離膜51は、ゼオライト膜に限られるものではない。例えば、分離膜51は、有機分離膜であってもよい。有機分離膜は、例えば、ポリビニルアルコール、キトサン、ポリイミド、などで形成される有機膜である。あるいは、分離膜51は、CNT(カーボンナノチューブ)分離膜であってもよい。CNT分離膜は、例えば、ポリアミドなどの膜にカーボンナノチューブを添加して得られる膜である。あるいは、分離膜51は、二次元材料で形成されたものであってもよい。二次元材料は、原子1層分で構成される材料であり、具体的には例えば、硫化モリブデン(MoS2)、前周期遷移金属(チタン、バナジウム、など)と軽元素(炭素または窒素)とによる複合原子層化合物、などである。あるいは、分離膜51は、MOF(Metal Organic Frameworks)材料で形成されたものであってもよいし、炭素材料(例えば、グラフェン、酸化グラフェン、など)で形成されたものであってもよい。
【0130】
上記の実施形態に係る基板処理装置100において、有機溶剤回収部5が、有機溶剤の回収および供給を行う処理ユニット4は、必ずしも同じタワーに含まれる各処理ユニット4でなくともよい。すなわち、有機溶剤回収部5は、任意に選択された1以上の処理ユニット4に対して、有機溶剤の回収および供給を行うものであってよい。また、有機溶剤回収部5が有機溶剤を回収する処理ユニット4と有機溶剤を供給する処理ユニット4とが異なってもよい。
【0131】
上記の実施形態に係る基板処理装置100において、有機溶剤は、IPAに限られるものではない。例えば、有機溶剤は、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、メタノール、エタノール、アセトン、および、Trans-1,2-ジクロロエチレンのうちの少なくとも1つであってもよい。また、有機溶剤は、単体の成分のみからなる必要はなく、複数の成分が混合した液体であってもよい。
【0132】
上記の実施形態に係る基板処理装置100において、リンス液は、水を含む各種の液体であってもよい。例えば、リンス液は、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および、希釈濃度(例えば、10~100ppm程度)の塩酸水のうちのいずれかであってもよい。
【0133】
上記の各実施形態に係る基板処理装置100において、処理対象とされる基板Wは、必ずしも半導体基板でなくともよい。例えば、処理対象とされる基板Wは、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、などであってもよい。また、処理対象とされる基板Wは、完全な円形状でなくともよく、ノッチ、オリエンテーションフラット、などといった形状部分を有するものであってもよい。
【0134】
以上のように、基板処理装置および基板処理方法は詳細に説明されたが、上記の説明は、全ての局面において例示であり、これらによって、基板処理装置および基板処理方法が限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記の各実施形態、および、上記の各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り、適宜に、組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0135】
100 基板処理装置
4 処理ユニット
43c 有機溶剤ノズル
43b リンス液ノズル
5 有機溶剤回収部
60 回収タンク
61 回収配管
62 循環配管(脱水用循環配管)
621 脱水器
51 分離膜
622 ポンプ(脱水側送液ポンプ)
624 ヒータ
625 冷却器
626 減圧器
70 浄化タンク
71 第1送液配管
72 浄化用循環配管
721 浄化側送液ポンプ
723 フィルタ
80 供給タンク
81 第2送液配管
図1
図2
図3
図4
図5
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図13