(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025143870
(43)【公開日】2025-10-02
(54)【発明の名称】壁紙
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20250925BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20250925BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20250925BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/30 101
E04F13/07 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043340
(22)【出願日】2024-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】青木 優典
(72)【発明者】
【氏名】八木澤 遥
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK15B
4F100AK15C
4F100AK17B
4F100AK17C
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AL01B
4F100AL01C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA30B
4F100CA30C
4F100DD01C
4F100DG10A
4F100DJ01B
4F100DJ01C
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100GB07
4F100HB00
4F100HB00C
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】壁紙の製造法によらず、パンクの発生が防止され、表面への均一な撥水性の付与を可能とする壁紙を提供する。
【解決手段】基材層10と、前記基材層10上にベース層20と、前記ベース層20上に柄層30を有する壁紙において、ベース層20及び柄層30を塩化ビニル樹脂及び機能性材料を含有する層とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層上に、ベース層と、
前記ベース層上に、柄層と、を有し、
前記ベース層及び柄層は、塩化ビニル樹脂及び機能性材料を含有する層である、
ことを特徴とする壁紙。
【請求項2】
前記機能性材料が、撥水剤である、
請求項1に記載の壁紙。
【請求項3】
前記機能性材料が、フッ素系コポリマーとアクリル系コポリマーのブロック共重合体からなる撥水剤である、
請求項1に記載の壁紙。
【請求項4】
前記ベース層及び柄層が、塩化ビニル樹脂及び撥水剤を含有する層であり、前記撥水剤の含有量が、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対し、0.2質量部以上10質量部以下のものである、
請求項1に記載の壁紙。
【請求項5】
前記柄層が、表面に凹凸形状を有する層である、
請求項1に記載の壁紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性が付与された壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の内装材である壁紙の一つに、基材層上に、ベース層及び柄層を積層してなるものがある。また、壁紙表面に、撥水性や防汚性等の機能性が付与された壁紙として、壁紙の表面全体に機能層を設けてなる壁紙が知られている。さらに、壁紙表面に、意匠性のための発泡やエンボスによる凹凸が設けられた壁紙も知られている。
このような、表面に機能性を備え、かつ凹凸形状を有する壁紙を製造する方法として、例えば、特許文献1や2に記載された方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、基体上に発泡層や図柄層が設けられた発泡壁紙の表面にエンボス加工を施した後、エンボス加工が施された表面の全面に、表面改質剤を塗工して機能性層を形成してなる壁紙及び壁紙の製造方法が記載されている。
また、特許文献2には、基材表面に熱分解型の発泡剤を含むペースト状塩化ビニル樹脂組成物を、ロータリースクリーン印刷により塗布したのち、発泡剤の熱分解温度以下の温度で加熱乾燥させ、その上に水性ウレタン樹脂組成物を塗布して、発泡剤の熱分解温度以下で加熱乾燥させて機能層を形成したのち、発泡剤の熱分解温度以上に加熱して熱分解型の発泡剤を発泡させたのち、エンボスによる凹凸加工を施す、壁紙の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-170552号公報
【特許文献2】特開2011-162909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来、壁紙の表面全体に、撥水層や防汚層等の機能層を設ける方法として、特許文献1や2に記載の方法が知られている。
しかしながら、従来法においては、次のような問題があった。
すなわち、特許文献1に記載の方法のように、壁紙表面に凹凸加工を施した後に、ロータリースクリーン印刷法により、機能層形成用組成物を塗布して機能層を形成する場合には、ペースト状の塩化ビニル樹脂組成物の印刷面に凹凸があるため、凹部に、機能層形成用組成物が十分に塗布されず、均一な機能層を形成することが困難な場合があった。この場合、ロールコーターやスプレーコート等の手法による塗布も考えられるが、塗布量が多くなり、コスト面での課題がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の方法のように、壁紙表面に機能性層を形成した後に、発泡やエンボスにより、凹凸を形成する方法においては、塗料(機能層形成用組成物)の組成によっては、エンボス加工時に、塩化ビニル樹脂層(塩化ビニル樹脂組成物から形成された層)に生じた気泡が抜けにくくなり、馬蹄状のパンクが発生し、外観上や品質上問題となる場合があった。
従って、壁紙の製造法によらず、パンクの発生が防止され、表面への均一な機能性の付与を可能とする壁紙が望まれている。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点と実情に鑑みてなされたものであり、壁紙の製造法によらず、パンクの発生が防止され、表面への均一な撥水性の付与を可能とする壁紙を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、基材層上に、ベース層及び柄層を積層した壁紙であって、壁紙表面に撥水性や防汚性等の機能性が付与された壁紙について鋭意検討を重ねた。その結果、前記ベース層及び柄層が、塩化ビニル樹脂及び撥水剤を含有する塩化ビニル樹脂組成物から形成されたものである壁紙は、壁紙の製造法によらず、パンクの発生が防止され、均一な撥水性を有することを見出し、この知見を一般化して、本発明を完成したものである。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の壁紙は、
基材層と、
前記基材層上に、ベース層と、
前記ベース層上に、柄層と、を有し、
前記ベース層及び柄層は、塩化ビニル樹脂及び機能性材料を含有する層である、
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の壁紙は、前記機能性材料が、撥水剤である、ことが好ましい。
本発明の壁紙は、前記機能性材料が、フッ素系コポリマーとアクリル系コポリマーのブロック共重合体からなる撥水剤である、ことが好ましい。
本発明の壁紙は、前記ベース層及び柄層が、塩化ビニル樹脂及び撥水剤を含有する層であり、前記撥水剤の含有量が、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対し、0.2質量部以上10質量部以下のものである、ことが好ましい。
また、本発明の壁紙は、前記柄層が、表面に凹凸形状を有する層である、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の壁紙によれば、壁紙の製造法によらず、パンクの発生が防止され、表面への均一な機能性の付与が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の壁紙1は、
図1に示すように、基材層10と、基材層10上に、ベース層20と、ベース層20上に、柄層30とを有し、ベース層20及び柄層30は、塩化ビニル樹脂及び機能性材料を含有する層であることを特徴とする。
【0014】
本明細書においては、後述する塩化ビニル樹脂1及び塩化ビニル樹脂2をまとめて「塩化ビニル樹脂」と、機能性材料1及び機能性材料2をまとめて「機能性材料」と、塩化ビニル樹脂組成物1及び塩化ビニル樹脂組成物2をまとめて「塩化ビニル樹脂組成物」ということがある。また、ベース発泡層及び柄発泡層は、それぞれ、ベース層及び柄層に含まれるものとする。
【0015】
基材層
基材層10は、壁紙1の裏打ち紙としての機能を有するものであり、これまで使用されている壁紙用の基材をそのまま用いることができる。基材層10となる基材シートとしては、例えば、紙、合成紙、難燃紙、不燃紙、無機質紙、ラミネート紙、合成樹脂フィルム、不織布等が挙げられる。基材シートの坪量は、特に限定するものでなく通常の基材シートで使用される範囲であれば良く、例えば坪量は、50~300g/m2、好ましくは50~80g/m2である。
また、基材層10の厚みは、通常100~200μmの範囲内である。
【0016】
ベース層及び柄層
本発明の壁紙1を構成するベース層20は、塩化ビニル樹脂1及び機能性材料1を含有する層である。ベース層20は、塩化ビニル樹脂1及び機能性材料1を含有する塩化ビニル樹脂組成物1を用いて形成することができる。
また、柄層30は、塩化ビニル樹脂2及び機能性材料2を含有する層である。柄層30は、塩化ビニル樹脂2及び機能性材料2を含有する塩化ビニル樹脂組成物2を用いて形成することができる。
このような組成からなるベース層及び柄層を有する本発明の壁紙によれば、壁紙の製造法によらず、パンクの発生が防止され、表面への均一な機能性の付与が可能となる。
【0017】
塩化ビニル樹脂
本発明の壁紙に用いる塩化ビニル樹脂は、一般的な塩化ビニル樹脂の樹脂製壁紙に使用されるものを使用することができ、例えば、塩化ビニル単独重合体や塩化ビニルモノマーとそれと共重合し得る他のモノマーとの共重合体を挙げることができる。塩化ビニルモノマーと共重合し得る他のモノマーは、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニリデン等のビニリデン類;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ブチルベンジル等の不飽和カルボン酸エステル類;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;及びジアリルフタレート等の架橋性モノマー類;等が挙げられる。
【0018】
塩化ビニル樹脂の平均重合度は限定されないが、通常、500~6000、好ましくは800~3000である。
塩化ビニル樹脂の還元粘度(K値)は限定されないが、JIS K7367-2に準拠した値として、通常、50~110、好ましくは60~90であることが望ましい。
【0019】
塩化ビニル樹脂の製造方法は、特に限定されず、例えば、懸濁重合法や塊状重合法、乳化重合法等が挙げられる。また、塩化ビニル樹脂の微粒子を有機媒体に分散させたプラスチゾルや水性ラテックスであってもよい。
【0020】
塩化ビニル樹脂1、2のそれぞれは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、塩化ビニル樹脂1と塩化ビニル樹脂2とは、モノマー組成及び平均重合度が同一のものであっても、モノマー組成及び/又は平均重合度が異なるものであってもよい。
【0021】
機能性材料
機能性材料は、ベース層20及び柄層30に含まれることにより、ベース層20及び柄層30に、撥水性や防汚性、耐擦傷性等の各種機能を付与する物質である。
【0022】
機能性材料1及び機能性材料2は、それぞれ一種のみからなるものであっても、二種以上からなるものであってもよい。
また、機能性材料1と機能性材料2とは、同一のものであっても、異なるものであってもよいが、製造法によらず、均一な機能を発揮するベース層20及び柄層30を得るという観点から、ベース層20及び柄層30には、同じ機能を有する機能性材料が含まれていることが好ましい。
【0023】
機能性材料としては、撥水剤や防汚剤、表面保護剤等が挙げられる。本発明の効果がより顕著に得られることから、撥水剤および防汚剤が好ましく、撥水剤が特に好ましい。
【0024】
撥水剤
本発明に用いる撥水剤は、ベース層20及び柄層30表面に撥水性を付与する物質である。ここで、「撥水性」とは、ベース層20又は柄層30表面に水滴を滴下し、滴下後30秒経過した後の水滴の接触角を接触角測定器を用いて測定したとき、当該接触角が、好ましくは60°以上、より好ましくは70°以上となる表面物性をいう。
【0025】
本発明の壁紙に用いる撥水剤としては、壁紙のベース層20及び柄層30表面に、撥水性を付与するものであれば、特に限定されない。
用いる撥水剤としては、シリコーン系撥水剤、有機フッ素化ポリマー系撥水剤等が挙げられる。
【0026】
シリコーン系撥水剤としては、ベースとなるポリオレフィン系樹脂中に、シリコーン樹脂と高級脂肪酸アミドを含有する組成物からなるものや、シリコーン系コポリマーとアクリル系コポリマーのブロック共重合体からなるものが挙げられる。
前者において用いる、ベースとなるポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。シリコーン樹脂としては、オルガノポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられ、なかでも、ジメチルポリシロキサンが挙げられる。また、高級脂肪酸アミドとしては、飽和脂肪酸アミド(ステアリン酸アミドやベヘニン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等)、飽和脂肪酸ビスアミド(エチレンビスステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸ビスアミド(エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等)等が挙げられる。
【0027】
また、シリコーン系コポリマーとアクリル系コポリマーとのブロック共重合体としては、例えば、製品名:モディパーFS710-1、製品名:モディパーFS700、製品名:モディパーFS720、製品名:モディパーFS730、製品名:モディパーFS770(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
【0028】
有機フッ素化ポリマー系撥水剤としては、パーフルオロアルキル基やポリフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートから形成される重合体、並びに、これらのモノマーと、ビニルエステル、ビニルエーテル、アクリルアミド、脂肪族イソシアネート等のパーフルオロアルキル基やポリフルオロアルキル基を有しないモノマーとの共重合体;フッ素系コポリマーとアクリル系コポリマーのブロック共重合体;からなるものが挙げられる。
【0029】
有機フッ素化ポリマー系撥水剤の具体例としては、特開平11-279997号公報、特開2000-178899号公報、特開2000-220097号公報、特開2002-363898号公報、特開2005-002536号公報、特開2014-113721号公報、特開2009-242550号公報、特開2014-58673号公報に記載されたものが挙げられる。
【0030】
また、フッ素系コポリマーとアクリル系コポリマーとのブロック共重合体としては、例えば、製品名:モディパーF206、製品名:モディパーF606、製品名:モディパーF246、製品名:モディパーF3636、製品名:モディパーF2266(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
【0031】
これらの中でも、塩化ビニル樹脂との相溶性に優れ、ベース層20及び柄層30により優れた撥水性を付与する観点から、シリコーン系コポリマー又はフッ素系コポリマーと、アクリル系コポリマーとのブロック共重合体からなるものが好ましく、フッ素系コポリマーとアクリル系コポリマーとのブロック共重合体からなるものがより好ましい。
【0032】
防汚剤
本発明の壁紙に用いる防汚剤は、壁紙表面に、汚れが付着するのを防止する機能を付与する物質である。
用いる防汚剤としては、ポリウレタン塗料、特開2003-129388号公報に記載されたフッ素系のSG防汚剤、SR防汚剤や、特開2013-35898号公報に記載された脂肪酸ビスアミド化合物等が挙げられる。
【0033】
表面保護剤
本発明の壁紙に用いる表面保護剤は、壁紙表面に傷が付くのを防止する機能や、壁紙表面の劣化が進行するのを抑制する機能を付与する物質である。
表面保護剤としては、塩化ビニル系エマルジョン(例えば、ビニブランHD-057KM:日信化学工業社製)等が挙げられる。
【0034】
機能性材料の含有量
ベース層20及び柄層30の機能性材料の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、0.2~10質量部が好ましく、0.3~5質量部がより好ましく、0.5~3質量部がさらに好ましい。
【0035】
ベース層20及び柄層30が機能性材料を含有しないか、ベース層20及び柄層30の機能性材料の含有量があまりに少ないと、ベース層20及び柄層30に機能性が発現しないか、発現したとしても効果が不十分となる。
また、ベース層20及び柄層30の機能性材料の含有量があまりに多いと、ベース層20及び柄層30の機能性の効果が飽和する一方で、塩化ビニル樹脂組成物の塗膜の表面に荒れが生じるおそれがある。
また、ベース層20と柄層30に含まれる機能性材料1の配合量は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
各種添加剤
ベース層20及び柄層30には、塩化ビニル樹脂及び機能性材料のほか、従来公知の各種添加剤を含有させてもよい。用いる添加剤としては、可塑剤、安定剤、顔料、発泡剤、希釈剤、着色剤、無機充填剤、着色剤、難燃剤、減粘剤、整泡剤等が挙げられる。これらの添加剤は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
可塑剤
塩化ビニル樹脂組成物は、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤は、塩化ビニル樹脂に柔軟性や弾性を付与するために添加される。用いる可塑剤としては、特に限定されない。例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ジウンデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジドデシルフタレート、ジイソクミルフタレート、ジノニルフタレート等の炭素数1~12のアルキル基を有するフタル酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジブチルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジ-2-エチルヘキシルアゼレート、ジヘキシルアゼレート、ジイソオクチルアゼレート、トリエチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、アセチルトリオクチルシトレート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート等の脂肪酸エステル類;トリ-(2-エチルヘキシル)トリメリテート、トリ-n-オクチル・トリメリテート、トリイソオクチル・トリメリテート、テトラ-(2-エチルヘキシル)ピロメリテート、テトラ-n-オクチル・ピロメリテート、テトライソオクチル・ピロメリテート、ビフェニルテトラカルボン酸テトラブチルエステル、ビフェニルテトラカルボン酸テトラペンチルエステル、ビフェニルテトラカルボン酸テトラヘキシルエステル等の芳香族カルボン酸エステル類;トリ-2-エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート等の正リン酸エステル類;塩素化パラフィン;塩素化脂肪酸エステル;エポキシ化大豆油;エポキシ化あまに油;エポキシブチルステアレート、エポキシオクチルステアレート;メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等が挙げられる。
これらの可塑剤は、1種の化合物のみを用いても、2種以上の化合物を併用してもよい。
【0038】
可塑剤を用いる場合の配合量は限定されないが、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、通常1~150重量部、好ましくは15~120重量部、より好ましくは20~100重量部である。可塑剤の配合量が前記下限値未満であると、柔軟性が不十分となる傾向にある。一方、可塑剤の配合量が前記上限値を超えると、本発明の防汚性樹脂組成物を成形した成形品から可塑剤がブリードアウトする場合や、成形性が悪化する場合がある。
【0039】
安定剤
塩化ビニル樹脂組成物は、安定剤を含有していてもよい。安定剤は、塩化ビニル樹脂が分解、劣化するのを抑制する目的で添加される。用いる安定剤は特に限定されず、公知の塩化ビニル樹脂用安定剤の中から適宜選択することが可能である。例えば、三塩基性硫酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、ケイ酸鉛、オルトケイ酸鉛-シリカゲル共沈物、二塩基性ステアリン酸鉛、カドミウム-バリウム系安定剤、バリウム-亜鉛系安定剤、カルシウム-亜鉛系安定剤、錫系安定剤、及び、ハイドロタルサイト等のマグネシウム、アルミニウム、ケイ素等の無機塩を主成分とした安定剤等が挙げられる。
これらの安定剤は、1種の化合物のみを用いても、2種以上の化合物を併用してもよい。
【0040】
本発明において安定剤を用いる場合の配合量は限定されないが、塩化ビニル樹脂100重量部に対して通常1~30重量部、好ましくは2~20重量部、より好ましくは3~15重量部である。安定剤が前記範囲で配合されていると、防汚性樹脂組成物を成形した成形品の熱安定性や成形性が良好となる傾向にある。
【0041】
無機充填剤
塩化ビニル樹脂組成物は、無機充填剤を含有していてもよい。無機充填剤としては、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。エンボス加工による凹凸模様がつきやすくする観点からは、無機充填剤は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、5~300質量部が好ましく、10~200質量部がより好ましい。
【0042】
着色剤
着色剤としては、例えば、顔料を適宜使用することができる。顔料には、無機顔料と有機顔料とがある。無機顔料としては、例えば、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。また、有機顔料としては、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等が挙げられる。着色剤の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して10質量部以上50質量部以下程度が好ましく、15質量部以上30質量部以下程度がより好ましい。
【0043】
発泡剤
塩化ビニル樹脂組成物は、発泡剤を含有していてもよい。塩化ビニル樹脂組成物に含まれる発泡剤を加熱発泡させることにより、発泡層を形成することができる。発泡層とすることにより、ベース層及び柄層に意匠性を付与することができる。
発泡剤としては、通常公知の発泡壁紙に使用されている、熱分解型の発泡剤の使用が可能である。例えば、熱膨張性マイクロカプセル発泡剤、アゾジカルボンアミド等のアゾ系発泡剤、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等のヒドラジド系発泡剤、ニトロソ系発泡剤等が挙げられる。
発泡剤を含有させる場合、その配合量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、通常1~10質量部、好ましくは1.5~6質量部、より好ましくは2~5質量部である。
【0044】
希釈剤
塩化ビニル樹脂組成物は、塗工性の向上などを目的として希釈剤を含有していてもよい。用いる溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸-2-メトキシエチル、酢酸-2-エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等が挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は混合物の状態で使用できる。溶媒の含有量は、塗工性等を考慮して、適宜決定することができる。
【0045】
他の成分
ベース層20及び柄層30は、本発明の効果を著しく妨げない範囲で、他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、減粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、造核剤、衝撃改良剤、相溶化剤、消泡剤、増粘剤、架橋剤、界面活性剤、滑剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤等が挙げられる。これらは、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用しても良い。
【0046】
これら他の成分を使用する場合、ベース層20及び柄層30中の含有量は限定されないが、通常0.01重量%以上、好ましくは0.2重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下であることが望ましい。
【0047】
壁紙の製造
本発明の壁紙は、例えば、次のようにして製造することができる。
(1)ステップ1:塩化ビニル樹脂組成物の調製
まず、塩化ビニル樹脂1、機能性材料1、他の添加剤、及び、所望により発泡剤を混合して塩化ビニル樹脂組成物1を調製する。また、塩化ビニル樹脂2、機能性材料2、他の添加剤、及び、所望により発泡剤を混合して塩化ビニル樹脂組成物2を調製する。
【0048】
(2)ステップ2:ベース層の形成
次いで、基材層10となる基材シートとして、例えば、坪量が40~100g/m2の壁紙用原紙を用意する。次いで、前記壁紙用原紙上に、塩化ビニル樹脂組成物1を、例えば、50~150g/cm2で塗工する。
【0049】
塩化ビニル樹脂組成物1の塗工方法としては、例えば、ナイフコート法、ノズルコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、グラビアコート法、ロータリースクリーンコート法、リバースロールコート法等を利用できる。
【0050】
次いで、得られた塗膜を加熱乾燥させることで、ベース層を形成する。
この場合、塩化ビニル樹脂組成物1が熱分解型発泡剤を含有している場合には、塗膜の乾燥を、発泡剤の熱分解温度未満の温度で加熱して行う。
その後、形成したベース層を発泡剤の熱分解温度以上の温度に加熱することで、ベース層を発泡させて、ベース発泡層を形成することができる。
【0051】
(3)ステップ3:柄層の形成
その後、ベース層(又はベース発泡層)20上に、塩化ビニル樹脂組成物2を、例えば、50~150g/cm2で塗工し、得られた塗膜を加熱乾燥することで、柄層30を形成する。
【0052】
塩化ビニル樹脂組成物2の塗工方法としては、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ロータリースクリーン印刷法等が挙げられる。
その後、塩化ビニル樹脂組成物2の塗膜を乾燥させることで、柄層30を形成する。
【0053】
柄層30は、壁紙1に意匠性を付与する層である。柄層30は、例えば、ベース層20の表面に絵柄模様を印刷することで形成できる。
柄層は2層以上を積層したものであってもよい。
柄層30の厚みは、絵柄模様の種類により異なるが、一般には0.1μm以上10μm以下程度とすることが好ましい。
【0054】
絵柄模様としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、目的に応じて選択できる。
【0055】
なお、塩化ビニル樹脂組成物2が熱分解型発泡剤を含有している場合には、形成した柄層30を発泡温度以上の温度に加熱することで、柄層を発泡させて、柄発泡層を形成することができる。
【0056】
(4)ステップ4:エンボス加工
柄層(又は柄発泡層)を形成した後、エンボスロールにより、柄層(又は柄発泡層)にエンボス加工を施すことができる。加熱発泡と同時又は加熱発泡の直後に、ベース層20及び/又は柄層30側からエンボスを施すことにより、エンボス模様を有する壁紙を製造することができる。
【0057】
エンボス加工は、例えば、深度15μm以上の凹部を有するエンボスロールと、硬度が50度以上90度未満のゴム製のバックロールとの間を通過させることによって行うことができる。
【0058】
なお、ベース層20及び柄層30の表面にエンボス模様を形成する方法としては、他にも、発泡抑制インキにより部分的に発泡させる方法や、熱風や赤外線により部分的に加熱発泡させるケミカルエンボス方法があるが、特にエンボスロールによる圧接によるメカニカルエンボスが発泡層等に対してシャープな凹凸を得ることができるので好ましい。
【0059】
エンボス模様としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。いずれの模様であっても、柄層30と同調した模様であることが望ましい。
【0060】
以上のようにして、表面に凹凸形状を有する機能性壁紙を製造することができる。
本発明の壁紙は、基材層と、前記基材層上にベース層と、前記ベース層上に柄層とを有するものであって、前記ベース層及び柄層は、塩化ビニル樹脂及び機能性材料を含有する層であるものであれば、上記のものに限定されない。例えば、ベース層及び柄層以外の他の層を有する壁紙や、ベース層も発泡層である壁紙、ベース層にもエンボス加工が施されている壁紙、柄層が発泡層ではない壁紙、柄層が発泡層となっているが、エンボス加工が施されていない壁紙等であってもよい。また、一般的な艶消し塗料を柄層表面に塗布することもでき、この場合であっても、撥水性や防汚性などの機能性は維持される。
【0061】
従来の表面に機能性が付与された壁紙の製造方法には、表面の凹凸面(特に、凹部の側面や底面)に機能性材料を含む塗工液を均一に塗布できない場合があり、壁紙の最表面に、均一な機能層を形成することが困難な場合があった。また、機能性材料を含む塗工液の組成によっては、エンボス加工時に、塩化ビニル樹脂組成物から形成された層に生じた気泡が抜けにくくなり、馬蹄状のパンクが発生し、外観上や品質上問題となることがあった。
一方、本発明の壁紙によれば、ベース層及び柄層を形成する塩化ビニル樹脂組成物に、機能性材料が含まれているので、最表面に機能性層を形成する必要がないため、パンクの発生が防止される。また、エンボス加工を施した場合であっても、表面への均一な機能性が付与された壁紙を得ることができる。
【0062】
本発明の壁紙1は、ベース層20及び柄層30上に、さらに表面保護層を有していてもよい。表面保護層は、柄層30の表面に、艶調整や絵柄印刷層の保護を意図して形成されるものである。また、これに加えて、施工時に水性接着剤(糊)を適用した際に、壁紙の伸張を防ぐと共に、乾燥に伴う収縮を防止する機能を有している。このような機能を発揮するため、表面保護層は、例えば、アクリル樹脂を主成分とする塗料(表面保護層形成用組成物)を塗布することにより形成することができる。
【実施例0063】
次の本発明の実施例について比較例とともに説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
<塩化ビニル樹脂組成物1、2の調製>
表1に示す組成を有する塩化ビニル樹脂組成物1、2を調製した。
表1中、配合剤として、次のものを用いた。
(1)塩化ビニル樹脂
塩化ビニル樹脂1:カネカ社製、製品名:PSM-671
塩化ビニル樹脂2:カネカ社製、製品名:PSL-290R
塩化ビニル樹脂3:カネカ社製、製品名:XPS-300L
【0064】
(2)可塑剤
ジイソノニルフタレート:シージーエスター社製、製品名:DINP
(3)安定剤
安定剤:大協化成社製、製品名:LFX-98E
(4)希釈剤
イソパラフィン系炭化水素:出光興産社製、製品名:IPクリーンLX
(5)減粘剤
減粘剤:BYK社製、製品名:BYK-4041
(6)無機充填剤
炭酸カルシウム:日東粉化工業社製、製品名:NN-500A
(7)顔料
酸化チタン:テイカ社製、製品名:JR-401
(8)発泡剤
発泡剤:大塚化学社製、製品名:AZ-VI25
(9)撥水剤
フッ素系コポリマーとアクリル系コポリマーとのブロック共重合体(固形分濃度30質量%、希釈剤:パラフィン系溶剤):日油社製、製品名:モディパーF3636
【0065】
【0066】
(10)塩化ビニル樹脂組成物の調製
表1に示す配合において、撥水剤の配合量を下記表2に示す量として、塩化ビニル樹脂組成物1-1~1-11、及び、塩化ビニル樹脂組成物2-1~2-11を調製した。
【0067】
【0068】
(実施例1)
質量75g/m2の壁紙用原紙上に、表1、2に示す組成を有する塩化ビニル樹脂組成物1-1をロータリースクリーン印刷法により塗工し、塗膜を140℃で加熱乾燥して、厚さ150μmのベース層を形成した。
次いで、得られたベース層上に、表1、2に示す組成を有する塩化ビニル樹脂組成物2-1をロータリースクリーン印刷法により塗工し、塗膜を140℃で加熱乾燥して、厚さ100μmの柄層を形成した。その後、ベース層、柄層を225℃に加熱して、発泡剤を熱分解させて、ベース発泡層、柄発泡層を形成することで、実施例1の壁紙を得た。
【0069】
(実施例2~8、比較例1)
塩化ビニル樹脂組成物1-1に替えて、塩化ビニル樹脂組成物1-2~1-9を用いる以外は実施例同様にして、ベース層を形成した。
次いで、塩化ビニル樹脂組成物2-1に替えて、表1、2に示す組成を有する塩化ビニル樹脂組成物2-2~2-9を用いる以外は、実施例2と同様にして柄層を形成して、その後加熱によりベース発泡層、柄発泡層とし、実施例2~8、比較例1の壁紙を得た。
【0070】
(比較例2)
質量75g/m2の壁紙用原紙上に、表1、2に示す組成を有する塩化ビニル樹脂組成物1-10をロータリースクリーン印刷法により塗工し、塗膜を140℃で加熱乾燥して、厚さ150μmのベース層を形成した。
次いで、得られたベース層上に、表1、2に示す組成を有する塩化ビニル樹脂組成物2-10をロータリースクリーン印刷法により塗工し、塗膜を140℃で加熱乾燥して、厚さ100μmの柄層を形成した。
その後、得られた柄層上に、撥水剤を含有する塗工液を、グラビア印刷法により塗布して撥水層を形成した。
さらに、得られた撥水層上にエンボスロールを押しあてて、エンボス加工を施すことにより、表面に凹凸形状を有する比較例2の壁紙を得た。
【0071】
(比較例3)
質量75g/m2の壁紙用原紙上に、表1、2に示す組成を有する塩化ビニル樹脂組成物1-11をロータリースクリーン印刷法により塗工し、塗膜を140℃で加熱乾燥して、厚さ150μmのベース層を形成した。
次いで、得られたベース層上に、表1、2に示す組成を有する塩化ビニル樹脂組成物2-11をロータリースクリーン印刷法により塗工し、塗膜を140℃で加熱乾燥して、厚さ100μmの柄層を形成した。次いでベース層、柄層を225℃で30秒間加熱して、発泡剤を熱分解させることによりベース発泡層、柄発泡層を形成して、比較例3の壁紙を得た。
【0072】
<評価試験>
実施例1~8、比較例1~3で得た壁紙につき、以下の評価試験を行った。
(1)塩化ビニル樹脂組成物の塗工性評価
壁紙原紙への塩化ビニル樹脂組成物の塗工時に、塗工面にスジ、試薬の原紙への浸透、塗工厚さ以上の大きな粒の有無等の、塗工面の荒れ具合を目視にて確認した。
その結果、塗工面に荒れの発生が認められなかった場合を「〇」、若干荒れの発生が認められたものの使用可能な場合を「△」、荒れが認められた場合を「×」として評価した。
【0073】
(2)発泡性の評価
225℃で30秒間加熱発泡させたときの、ベース層表面のセルの均一さを目視にて観察した。その結果、ベース層の断面及び表面に荒れの発生が認められなかった場合を「〇」、ベース層の断面及び表面に若干荒れの発生が認められたものの使用可能な場合を「△」、ベース層の断面及び表面に荒れの発生が認められた場合を「×」として評価した。
【0074】
(3)撥水性の評価
発泡後のベース層表面を、JISR3257に準拠し、接触角測定器(協和界面科学社製、製品名:DM-SA)を用いて、水滴を滴下してから30秒経過後の接触角を測定した。その結果、水滴の接触角が70°以上の場合を「〇」、水滴の接触角が60°以上70°未満の場合を「△」、水滴の接触角が60°未満の場合を「×」として評価した。
以上の評価試験結果を表3、4にまとめて示す。
【0075】
【0076】
【0077】
表3、4から、次のことがわかる。
実施例1~6の壁紙は、塗工性、発泡性、撥水性のすべての評価試験において優れた結果を示した。
実施例7の壁紙は、ベース層及び柄層に含まれる撥水剤の量が少ないため、撥水性が不十分であった。
実施例8の壁紙は、ベース層及び柄層に含まれる撥水剤の量が多いため、撥水性は十分であったが、塩化ビニル樹脂組成物の塗膜表面に荒れがわずかに観測された。
比較例1の壁紙は、ベース層及び柄層に撥水剤が含有されておらず、また、撥水層も形成していないものであるため、塗工性と発泡性の評価は良好であったが、撥水性は認められなかった。
比較例2の壁紙は、発泡性は問題なかったが、エンボス時に、馬蹄状のパンクが発生して表面が荒れるため、品質に問題があるものであった。
比較例3の壁紙は、発泡により表面に凹凸形容が形成されているため、撥水剤を含有する塗工液が凹部に均一に塗工することができなかったため、撥水性に劣るものであった。