(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014391
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
F01M 13/00 20060101AFI20250123BHJP
F01M 13/04 20060101ALI20250123BHJP
F01M 1/02 20060101ALI20250123BHJP
F01M 1/06 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
F01M13/00 K
F01M13/04 A
F01M13/00 H
F01M1/02 A
F01M1/06 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116906
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】山崎 喬裕
【テーマコード(参考)】
3G015
3G313
【Fターム(参考)】
3G015AA08
3G015BD10
3G015BD24
3G015BE06
3G015BF05
3G015BF08
3G015CA05
3G015DA10
3G015EA38
3G015FB08
3G015FC02
3G015FC03
3G313AA09
3G313BB14
3G313BD47
3G313EA02
3G313EA03
3G313FA06
(57)【要約】
【課題】ブローバイガスの吸気系への還流を確保しつつ、オイルセパレータからのオイルの噴出を抑制したエンジンシステムを提供することを課題とする。
【解決手段】エンジンと、前記エンジン内で発生し吸気系に還流されるブローバイガスから分離したオイルが溜まるオイルセパレータと、前記オイルセパレータ内のオイルを吸引するポンプと、前記オイルセパレータと前記ポンプとを連通した配管と、前記配管を開閉する開閉弁と、前記開閉弁の動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記開閉弁が閉じた状態で前記エンジンの運転状態に応じた所定時間が経過した場合に、前記開閉弁を開く、エンジンシステム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジン内で発生し吸気系に還流されるブローバイガスから分離したオイルが溜まるオイルセパレータと、
前記オイルセパレータ内のオイルを吸引するポンプと、
前記オイルセパレータと前記ポンプとを連通した配管と、
前記配管を開閉する開閉弁と、
前記開閉弁の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記開閉弁が閉じた状態で前記エンジンの運転状態に応じた所定時間が経過した場合に、前記開閉弁を開く、エンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
オイルセパレータを備えたエンジンが知られている。オイルセパレータでは、エンジン内で発生し吸気系に還流されるブローバイガスから分離したオイルが溜まる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オイルセパレータ内にオイルが溜まると、オイルセパレータからオイルが噴出するおそれがある。噴出したオイルはブローバイガスにより巻き上げられてエンジンの吸気系に搬送されるおそれがある。従って、オイルセパレータからオイルを吸引するポンプを設けることが考えられる。しかしながら、常時オイルセパレータからオイルを吸引すると、オイルセパレータ内のブローバイガスもポンプにより吸引され、ブローバイガスの吸気系への還流を妨げるおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、ブローバイガスの吸気系への還流を確保しつつ、オイルセパレータからのオイルの噴出を抑制したエンジンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、エンジンと、前記エンジン内で発生し吸気系に還流されるブローバイガスから分離したオイルが溜まるオイルセパレータと、前記オイルセパレータ内のオイルを吸引するポンプと、前記オイルセパレータと前記ポンプとを連通した配管と、前記配管を開閉する開閉弁と、前記開閉弁の動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記開閉弁が閉じた状態で前記エンジンの運転状態に応じた所定時間が経過した場合に、前記開閉弁を開く、エンジンシステムによって達成できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ブローバイガスの吸気系への還流を確保しつつ、オイルセパレータからのオイルの噴出を抑制したエンジンシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1Aは、エンジンシステムの概略構成図であり、
図1Bは、オイルセパレータの概略構成図である。
【
図2】
図2は、ECUが実行するスイッチングバルブの開閉制御を例示したフローチャートである。
【
図3】
図3は、噴出領域を示したマップの例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[エンジンの概略構成]
図1Aは、エンジンシステムAの概略図である。エンジンシステムAは、エンジン1とECU(Electronic Control Unit)50とを含む。エンジン1は、V型エンジンである。エンジン1は、シリンダブロック6の上部にV型に突出した一対のバンク2L及び2Rを有している。エンジンシステムAは、例えば車両に搭載される。バンク2Lはシリンダヘッド5Lとヘッドカバー4Lとを含む。同様に、バンク2Rはシリンダヘッド5Rとヘッドカバー4Rとを含む。シリンダヘッド5L及び5Rはシリンダブロック6の上部に設置されている。ヘッドカバー4Lはシリンダヘッド5Lの上部に設置されている。同様に、ヘッドカバー4Rはシリンダヘッド5Rの上部に設置されている。
【0010】
シリンダブロック6内には、各バンク2L及び2Rのそれぞれに複数のシリンダが設けられている。各シリンダ内にはピストンが設けられている。各ピストンは、クランクシャフト8に動力伝達可能に連結されている。シリンダブロック6の下側にはラダーフレーム7が取り付けられている。シリンダブロック6及びラダーフレーム7により、クランクシャフト8は回転可能に支持されている。シリンダブロック6及びラダーフレーム7の内部に、クランクシャフト8を収容したクランク室6aが画定される。ラダーフレーム7の下側には、潤滑用のオイルを貯留したオイルパン9が取り付けられている。オイルパン9に貯留されたオイルは、不図示のポンプによりエンジン1の各摺動部へと供給される。潤滑に供されたオイルは、最終的にオイルパン9に流下する。
【0011】
ECU50は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の揮発性や不揮発性のメモリを含むコンピュータを中心に構成される。ECU50には、イグニッションスイッチ61、クランク角センサ62、及びエアフロメータ63が接続されている。イグニッションスイッチ61は、イグニッションのオンオフ状態を検出する。クランク角センサ62は、エンジン1のクランク角を検出する。エアフロメータ63は、エンジン1の吸入空気量を検出する。ECU50は、クランク角及び吸入空気量に基づいてそれぞれエンジン1の回転数及び負荷を算出する。ECU50は、エンジン1の回転数及び負荷に基づいて、エンジン1での燃料噴射量や吸入空気量を制御する。ECU50は制御装置の一例である。
【0012】
[オイルセパレータの概略構成]
図1Bは、オイルセパレータ10Rの概略構成図である。
図1Bでは、オイルセパレータ10Rの内部構成を示している。ヘッドカバー4Rの上面4Raにオイルセパレータ10Rが一体的に形成されている。オイルセパレータ10Rは、ヘッドカバー4Rの上面4Raに設けられたハウジング11を含む。ハウジング11には、導入口12a及び排出口12bが形成されている。排出口12bは、導入口12aよりも重力方向の上方側に位置する。またハウジング11には、ブローバイガス供給配管22が接続されている。ブローバイガス供給配管22がハウジング11に接続されている位置は、導入口12aよりも重力方向の上方側である。
【0013】
クランク室6aから導入口12aを介してハウジング11内に導入される。ブローバイガスがハウジング11内を流れる過程でハウジング11の内壁面に衝突する。これにより、ブローバイガスに含まれるオイルが内壁面に捕捉される。このようにしてハウジング11内でブローバイガスからオイルが分離される。オイルが分離されたブローバイガスは、ブローバイガス供給配管22を介してエンジン1の吸気系、例えばサージタンクに還流される。ハウジング11の内壁面に付着したオイルは、エンジン1の振動や重力の作用により流れ落ちてハウジング11の下方部に溜まる。ハウジング11内に溜まったオイルは、自重により排出口12bからシリンダヘッド5Rやシリンダブロック6に形成されたオイル通路を介してオイルパン9へと流れる。
【0014】
図1Bに示すようにハウジング11の下方部には、排出管24の一端が接続されている。詳細には、ハウジング11内のオイルが溜まる部位に排出管24の一端が接続されている。排出管24の他端は、スカベンジングポンプ40に接続されている。また、排出管24には、スイッチングバルブ30が設けられている。排出管24は、配管の一例である。スイッチングバルブ30は開閉弁の一例である。スカベンジングポンプ40には、オイルパン9に連通した連通管44が接続されている。スカベンジングポンプ40は、例えば不図示のカム室に溜まったオイルを、連通管44を介してオイルパン9に搬送するために設けられている。スカベンジングポンプ40は、クランクシャフト8の回転に連動して駆動する機械式のポンプである。従ってエンジン1の駆動中は、スカベンジングポンプ40は常時駆動している。
【0015】
上述したように、オイルセパレータ10Rのハウジング11内にはオイルが溜まる。排出口12bから排出されるオイルの流量よりも、ハウジング11内でブローバイガスから分離したオイルの流量の方が多い場合、ハウジング11内にオイルが溜まる。ハウジング11内のオイルの量が増えると、導入口12aからオイルが噴出するおそれがある。従ってECU50は、詳しくは後述するが所定のタイミングでスイッチングバルブ30を開く。これにより、ハウジング11内に溜まったオイルをスカベンジングポンプ40により吸引される。この結果、オイルは強制的にオイルパン9へと搬送され、上述したオイルの噴出が抑制される。
【0016】
ここで、オイルセパレータ10Rからのオイルの噴出を抑制するために、例えば排出口12bを拡大することが考えられる。しかしながら排出口12bを拡大すると、排出口12bからハウジング11内にブローバイガスが流入するおそれがある。これにより、ハウジング11内を通過するブローバイガスの流速が低下し、ブローバイガスからオイルを十分に分離することができないおそれがある。また、クランク室6a内の換気が不十分となるおそれもある。本実施例では上述したように、ハウジング11内に溜まったオイルをスカベンジングポンプ40により強制的にオイルパン9へと搬送する。これにより、オイルセパレータ10Rからのオイルの噴出が抑制される。
【0017】
例えば、スイッチングバルブ30を設けずにスカベンジングポンプ40により常時ハウジング11内のオイルを吸引することが考えられる。しかしながらこの場合、オイルセパレータ10R内のブローバイガスがスカベンジングポンプ40により吸引され、ブローバイガスの吸気系への還流の妨げとなるおそれがある。従って、ECU50は以下のようなタイミングでスイッチングバルブ30を開く。
【0018】
[スイッチングバルブの開閉制御]
図2は、ECU50が実行するスイッチングバルブ30の開閉制御を例示したフローチャートである。本制御は、イグニッションオンの間に繰り返し実行される。ECU50は、エンジン1の動作点が噴出領域内にあるか否かを判定する(ステップS1)。エンジン1の動作点とは、エンジン1の回転数及び負荷に基づいて定められる、エンジン1の運転状態である。噴出領域とは、スイッチングバルブ30が閉じた状態で、排出口12bから排出されるオイルの流量よりもハウジング11内でブローバイガスから分離したオイルの流量の方が大きい運転状態である。噴出領域については後述する。ステップS1でNoの場合には、ECU50はスイッチングバルブ30を閉じた状態に維持する(ステップS6)。
【0019】
ステップS1でYesの場合、ECU50はエンジン1の動作点が噴出領域内に属した状態で所定時間αが経過したか否かを判定する(ステップS2)。所定時間αは、スイッチングバルブ30が閉じた状態でエンジン1の運転状態に応じて変化する可変値である。
【0020】
図3は、噴出領域を示したマップの例示図である。
図3では、縦軸がエンジン1の負荷であり、横軸がエンジン1の回転数を示す。
図3の例では、噴出領域は噴射猶予時間に応じて3つの領域に区画されている。噴出猶予時間とは、エンジン1の動作点が噴出領域内に属してから導入口12aからオイルが噴出するまでの時間である。
図3の例では、噴出猶予時間は、A秒、B秒、及びC秒に設定されている。噴射猶予時間は、予め実験結果により定められている。所定時間αは、噴射猶予時間から所定のT秒減算した値である。T秒は、導入口12aからオイルが噴出するまでの余裕時間を確保するための時間である。従って、T秒は、A秒、B秒、及びC秒の何れよりも短い時間である。例えば、噴射猶予時間がA秒に設定されている領域にエンジン1の動作点が属する場合、所定時間αは、α=A-Tに設定される。B秒の領域に動作点が属する場合、α=B-Tに設定される。C秒の領域に動作点が属する場合、α=C-Tに設定される。ステップS2でNoの場合には、ECU50はスイッチングバルブ30を閉じた状態に維持する(ステップS6)。
【0021】
ステップS2でYesの場合、ECU50はスイッチングバルブ30を開く(ステップS3)。これにより、ハウジング11内に溜まったオイルはスカベンジングポンプ40により強制的にオイルパン9へと搬送される。これにより、導入口12aからのオイルの噴出が抑制される。
【0022】
次にECU50は、エンジン1の動作点が噴出領域外に属したか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4でNoの場合には、再度ステップS4が実行される。
【0023】
ステップS4でYesの場合、ECU50はエンジン1の動作点が噴出領域外となってから所定時間βが経過したか否かを判定する(ステップS5)。所定時間βは、エンジン1の動作点が噴出領域外となってからハウジング11内からオイルが十分に排出されるのに必要な時間である。ステップS5でNoの場合、再度ステップS4が実行される。尚、ステップS5でNoと判定されてから再び動作点が噴出領域に属してステップS4でNoと判定され、その後にステップS4でYesと判定された場合、動作点が噴出領域外となってからの時間カウントはゼロにリセットされる。ステップS5でYesの場合、ECU50はスイッチングバルブ30を閉じる(ステップS6)。
【0024】
このようにして所定のタイミングでスイッチングバルブ30が開く。これにより、ブローバイガスの吸気系への還流を確保しつつ、オイルセパレータ10Rからのオイルの噴出が抑制される。
【0025】
尚、上記のオイルセパレータ10Rと同様の構成がヘッドカバー4L側にも形成されている。この場合、スカベンジングポンプ40は、ヘッドカバー4L側のオイルセパレータと共用してもよい。また、このようなオイルセパレータは、ヘッドカバー4L及び4Rの何れか一方側にのみ設けてもよい。
【0026】
また、オイルセパレータはシリンダヘッドに形成されていることに限定されない。例えばオイルセパレータは、シリンダブロックに形成されていてもよい。また、エンジンはV型エンジンに限定されず、直列エンジンであってもよい。
【0027】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 エンジン 10R オイルセパレータ 24 排出管(配管) 30 スイッチングバルブ(開閉弁) 40 スカベンジングポンプ(ポンプ)