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特開2025-143960産業資材シートの製造方法、及びテント膜構造物の縫製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025143960
(43)【公開日】2025-10-02
(54)【発明の名称】産業資材シートの製造方法、及びテント膜構造物の縫製方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/83 20060101AFI20250925BHJP
   D06M 15/37 20060101ALI20250925BHJP
   D06M 13/513 20060101ALI20250925BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20250925BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20250925BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20250925BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20250925BHJP
   E04H 15/54 20060101ALI20250925BHJP
【FI】
D06M11/83
D06M15/37
D06M13/513
D06M13/17
D06M15/53
D06M15/564
D06M15/263
E04H15/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043494
(22)【出願日】2024-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(72)【発明者】
【氏名】狩野 俊也
(72)【発明者】
【氏名】白神 亮
【テーマコード(参考)】
2E141
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
2E141AA01
2E141AA02
2E141AA09
2E141EE04
4L031AA18
4L031AB32
4L031BA04
4L031BA05
4L031DA12
4L033AA07
4L033AB05
4L033AC03
4L033AC04
4L033BA14
4L033BA96
4L033CA18
4L033CA32
4L033CA48
4L033CA50
(57)【要約】
【課題】ターポリン、帆布などの断面からの雨水の浸透防止効果、及び防黴、防藻効果と、その持続性に優れた産業資材シートの(製造方法の)提供、及び、これらの産業資材シートを縫製してなるテント膜構造物の(縫製方法の)提供。
【解決手段】1)フッ素原子非含有樹脂エマルジョン、及びカルボジイミド化合物(エチレンオキサイド部位を有する)エマルジョン、及び特定の希釈水(銀イオン水、銅イオン水、及び有機防黴剤含有水から選ばれた1種以上)を必須とする混合溶液を調製する工程、2)マルチフィラメント糸条の交絡で製織された織物全体に、混合溶液の乾燥物を1~7.5質量%付着させる工程、3)乾燥物付着織物の表裏に熱可塑性樹脂組成物による防水被覆層を形成し、乾燥物付着織物を隠蔽して産業資材シートとする工程により、産業資材シートの裁断面に露出する糸条の断面からの水の内部浸透を20mm長以内で停止するようにする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)フッ素原子非含有樹脂エマルジョン、及びカルボジイミド化合物(エチレンオキサイド部位を有する)エマルジョン、及び希釈水(1~50ppm銀イオンを含有する水、1~50ppm銅イオンを含有する水、及び0.05~1質量%濃度の有機防黴剤を含有する水から選ばれた1種以上)を必須とする混合溶液を調製する工程、
2)マルチフィラメント糸条の交絡で製織された織物全体に、前記混合溶液の乾燥物を付着させ、その付着量を前記織物の目付量に対して1~7.5質量%とする工程、
3)乾燥物付着織物の表裏に熱可塑性樹脂組成物による防水被覆層を形成し、前記乾燥物付着織物を隠蔽して産業資材シートとする工程を含み、
前記産業資材シートの裁断面に露出する前記糸条の断面からの水の内部浸透(JIS K6404-3-16 A.インク法)を20mm長以内で停止することを特徴とする産業資材シートの製造方法。
【請求項2】
前記織物が、長繊維マルチフィラメント糸条のみ、または短繊維紡績マルチフィラメント糸条のみで製織された50~400g/mの目付量、もしくは前記長繊維マルチフィラメント糸条と短繊維紡績マルチフィラメント糸条の併用で製織された50~400g/mの目付量である請求項1に記載の産業資材シートの製造方法。
【請求項3】
前記長繊維マルチフィラメント糸条が、1.25~4デニールの有機系長繊維フィラメントの集合束、または直径2.5~10.0μmの無機系フィラメントの集合束であり、前記短繊維紡績マルチフィラメント糸条が、1.25~4デニールの有機系フィラメント短繊維の集合束である請求項2に記載の産業資材シートの製造方法。
【請求項4】
前記混合溶液が、アルコキシシラン化合物をさらに含み、その含有量が前記乾燥物に対して7.5~35質量%である請求項1~3の何れか1項に記載の産業資材シートの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の製造方法により得られた産業資材シートを用いるテント膜構造物の製造方法であって、
1)前記産業資材シートを裁断し、複数の裁断パーツを用意する工程
2)前記裁断パーツ同士の端部を特定幅で重ね合わせ、熱圧着、または高周波溶着により接合して多数の連結部を形成してテント膜構造物とする工程を含み、
前記連結部に含む、前記産業資材シートの裁断断面に露出する前記糸条からの水の内部浸透(JIS K6404-3-16 A.インク法準拠)が20mm長以内で停止することを特徴とするテント膜構造物の縫製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターポリン、帆布などの産業資材シート、及びこれらを用いてテント膜構造物に関する。より詳しくは、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、日除けテントなどのテント膜構造物において、その構成物である産業資材シート断面からの雨水の浸透防止効果と、その防黴・防藻効果の持続性に優れるテント膜構造物、及びこのテント膜構造物を構成する産業資材シートに関する。
【背景技術】
【0002】
大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、日除けテントなどのテント膜構造物に用いられる産業資材シートは、ポリエステル繊維糸条による織物を基材として、その表面に軟質塩化ビニル樹脂層を形成して製造される、厚さ0.3~1.2mm、幅0.9~2.5m、程度のターポリン、帆布などの防水シートである。これらのターポリン、帆布などは、幅と長さが規定値にスリット加工されたロール反物で流通し、これらのスリット断面には、基材の織物の断面(糸条の断面)が露出した状態である。テント膜構造物は、これらの産業資材シートをパーツとして、これらを複数繋ぎ合わせて面積拡張する縫製が行われ、この縫製は熱融着によるラップ接合(シート材端部をのり代として、のり代同士を重ね合わせた状態で軟質塩化ビニル樹脂層を溶かして接着)で、この接合部の断面には、織物を構成する糸条の断面が露出した状態となっている。この糸条は、長繊維マルチフィラメント糸条、短繊維紡績マルチフィラメント糸条などの、多数のフィラメントの集合束が用いられており、糸条断面が露出することによって、糸条断面から雨水が毛管現象で奥深く染み込み、シート材内部に汚れた雨水が残留することで黴や藻の繁殖トラブルに発展している。この雨水の染み込みは、接合部断面だけではなく、産業資材シートの摩耗、傷穴、などの破損部からも生じるトラブルである。このような産業資材シート内部に発生した黴や藻は除去困難で、膜構造物内外の外観、透過光ムラに影響し、また悪臭の原因となっている。
【0003】
このような雨水の毛管浸透を防ぐ手段として、フッソ樹脂系撥水剤を付着する布帛両面に塩化ビニル樹脂被覆層を設けたテント地(特許文献1)、弗素系撥水剤あるいはシリコン系撥水剤が付与された基布の少なくとも片面に熱可塑性樹脂が被覆された膜材(特許文献2)などが挙げられ、何れも布帛(織編物)を撥水性とする手段が毛細管現象の抑止に効果的である。特にフッ素系化合物は、繊維材料に高い撥水性を付与する撥水成分として多用されているが、撥水剤中に不純物として含むPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(パーフルオロオクタン酸)には、難分解性、高蓄積性、長距離移動性という性質があるため、地球規模で水、土壌、大気、動植物に蓄積され、人体(肝機能低下、発がんなど)、動植物の生息・生育に影響を及ぼす可能性が国際的に問題視され、PFOSやPFOAの廃絶の経緯(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)となり、日本では製造・輸入等を原則禁止する経緯となった。その結果PFOSやPFOAを含み得ないC6系フッ素系化合物(特許文献3)などに推移したが、昨今ではフッ素系化合物全般の残留・蓄積を根絶するために、シリコン系化合物、炭化水素化合物などの非フッ素系撥水剤(特許文献4、5)などに置換する世界的動向となっている。しかしながら、撥水性、撥水効果の持続安定性(耐洗濯性)など、あらゆる性能面でフッ素系撥水剤と同等の非フッ素系撥水剤代替は困難で、非フッ素系撥水剤に架橋性有機化合物などを併用し、性能バランスを補う試み(特許文献6、7)が種々検討されている。
【0004】
しかしこれらの発明は、衣類布地の防水、撥水性を主目的とするもので、布地に直接水を垂らして、その撥水性(SR)を評価、特定の洗濯条件で10回、または20回洗濯した後の撥水性(SR)評価、さらには180℃でアイロン掛けした後の撥水性(SR)を評価する内容である。これに対して屋外で使用される産業資材シートは、織物に樹脂加工(例えば軟質塩化ビニル樹脂)が施されたターポリン、帆布であるため防水性能に特化して優れている。但しシートの裁断面(接合部)に僅かに露出するマルチフィラメント糸条からの雨水の浸透防止を施す必要があり、これにはマルチフィラメント糸条特有の毛細管現象を封止する技術と、その適切な評価方法が必要である。これは、特許文献に開示された衣類の表面に撥水性を付与する技術、及びその評価方法とは内容を異とするもので、特許文献に開示された方法の単なる転用でマルチフィラメント糸条特有の毛細管現象を封止することは容易なものではない。特に産業資材シートは、テント膜施工物が風でのはためき、雨粒の衝突、積雪荷重など、自然界のストレスを長期間受けることで、マルチフィラメント糸条の集束が経時的に緩むことで、毛細管現象が助長してシート内部に雨水が浸透し、シート内部に黴や藻が発生するという産業資材シート特有の問題がある。従ってテント膜構造物用の産業資材シートとして、産業資材シート断面、破損部などからの雨水の浸透防止効果と、その防黴・防藻性に優れ、その持続性にも優れた産業資材シート、及びテント膜構造物が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-34093号公報
【特許文献2】特開平9-183188号公報
【特許文献3】特開2010-229593号公報
【特許文献4】特開2020-189980号公報
【特許文献5】特開2023-57061号公報
【特許文献6】特表2018-506656号公報
【特許文献7】特開2019-533732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ターポリン、帆布などの断面からの雨水の浸透防止効果、及び防黴、防藻効果と、その持続性に優れた産業資材シートの(製造方法の)提供、及び、これらの産業資材シートを縫製してなるテント膜構造物における接合部断面からの雨水の浸透防止効果、及び防黴、防藻効果と、その動的耐久持続性にも優れたテント膜構造物の(縫製方法の)提供を課題とする。この課題の解決により、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、日除けテントなどのテント膜構造物などにおいて、長期間美麗な外観を保持することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる点を考慮し検討を重ねた結果、本発明の産業資材シートの製造方法は、
1)フッ素原子非含有樹脂エマルジョン、及びカルボジイミド化合物(エチレンオキサイド部位を有する)エマルジョン、及び希釈水(1~50ppm銀イオンを含有する水、1~50ppm銅イオンを含有する水、及び0.05~1質量%濃度の有機防黴剤を含有する水から選ばれた1種以上)を必須とする混合溶液を調製する工程、
2)マルチフィラメント糸条の交絡で製織された織物全体に、前記混合溶液の乾燥物を付着させ、その付着量を前記織物の目付量に対して1~7.5質量%とする工程、
3)乾燥物付着織物の表裏に熱可塑性樹脂組成物による防水被覆層を形成し、前記乾燥物付着織物を隠蔽して産業資材シートとする工程を含み、
前記産業資材シートの裁断面に露出する前記糸条の断面からの水の内部浸透(JIS K6404-3-16 A.インク法)を20mm長以内で停止することによって、産業資材シートの断面からの雨水の浸透防止効果、及び防黴、防藻効果と、その耐久持続性にも優れた産業資材シートが得られること、また大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、日除けテントなどのテント膜構造物にこれらの産業資材シートを用いることで、接合部断面からの雨水の浸透防止効果、及び防黴、防藻効果と、その動的耐久持続性にも優れることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の産業資材シートの製法方法は、前記織物が、長繊維マルチフィラメント糸条のみ、または短繊維紡績マルチフィラメント糸条のみで製織された50~400g/mの目付量、もしくは前記長繊維マルチフィラメント糸条と短繊維紡績マルチフィラメント糸条の併用で製織された50~400g/mの目付量であることが好ましい。これによって、フィラメントの表面、及びフィラメント間に付着する乾燥物の付着量が特定され、産業資材シートの裁断面に露出する糸条の断面からの水の内部浸透(JIS K6404-3-16 A.インク法)を20mm長以内で停止させる。
【0009】
本発明の産業資材シートの製法方法は、前記長繊維マルチフィラメント糸条が、1.25~4デニールの有機系長繊維フィラメントの集合束、または直径2.5~10.0μmの無機系フィラメントの集合束であり、前記短繊維紡績マルチフィラメント糸条が、1.25~4デニールの有機系フィラメント短繊維の集合束であることが好ましい。フィラメント径がこれ以上に大きいと、フィラメント間の隙間が比例増大し、毛管現象による水の侵入を抑止することが困難となることがある。
【0010】
本発明の産業資材シートの製法方法は、前記混合溶液が、アルコキシシラン化合物をさらに含み、その含有量が前記乾燥物に対して7.5~35質量%であることが好ましい。これによって、雨水の浸透防止効果、及び防黴、防藻効果と、その耐久持続性を向上させることができ、特にガラスフィラメント、シリカフィラメント、アルミナシリカフィラメント、バサルトフィラメントなどの無機フィラメントに対して効果的となる。
【0011】
本発明のテント膜構造物の縫製方法は、段落〔0007〕に記載の製造方法により得られた産業資材シートを用いるテント膜構造物の製造方法であって、
1)前記産業資材シートを裁断し、複数の裁断パーツを用意する工程
2)前記裁断パーツ同士の端部を特定幅で重ね合わせ、熱圧着、または高周波溶着により接合して多数の連結部を形成してテント膜構造物とする工程を含み、
前記連結部に含む、前記産業資材シートの裁断断面に露出する前記糸条からの水の内部浸透(JIS K6404-3-16 A.インク法準拠)が20mm長以内で停止することが好ましい。これによって、テント膜構造物における接合部断面からの雨水の浸透防止効果、及び防黴、防藻効果と、その耐久持続性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、ターポリン、帆布などの産業資材シートの断面からの雨水の浸透防止効果、及び防黴、防藻効果と、その耐久持続性に優れた産業資材シートの提供が可能となり、さらにこれらの産業資材シートを縫製してなるテント膜構造物における接合部断面からの雨水の浸透防止効果、及び防黴、防藻効果と、その耐久持続性にも優れたテント膜構造物の提供が可能となることで、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、日除けテントなどのテント膜構造物などにおいて、長期間美麗な外観の状態での使用が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の産業資材シートの製造方法は、1)フッ素原子非含有樹脂エマルジョン、及びカルボジイミド化合物(エチレンオキサイド部位を有する)エマルジョン、及び希釈水(1~50ppm銀イオンを含有する水、1~50ppm銅イオンを含有する水、及び0.05~1質量%濃度の有機防黴剤を含有する水から選ばれた1種以上)を必須とする混合溶液を調製する工程、2)マルチフィラメント糸条の交絡で製織された織物全体に、混合溶液の乾燥物を付着させ、その付着量を織物の目付量に対して1~7.5質量%とする工程、3)乾燥物付着織物の表裏に熱可塑性樹脂組成物による防水被覆層を形成し、乾燥物付着織物を隠蔽して産業資材シートとする工程を含み、産業資材シートの裁断面に露出する糸条の断面からの水の内部浸透(JIS K6404-3-16 A.インク法)を20mm長以内で停止する態様、特に織物が、長繊維マルチフィラメント糸条のみ、または短繊維紡績マルチフィラメント糸条のみで製織された50~400g/mの目付量、もしくは長繊維マルチフィラメント糸条と短繊維紡績マルチフィラメント糸条の併用で製織された50~400g/mの目付量である態様、さらに長繊維マルチフィラメント糸条が、1.25~4デニールの有機系長繊維フィラメントの集合束、または直径2.5~10.0μmの無機系フィラメントの集合束であり、短繊維紡績マルチフィラメント糸条が、1.25~4デニールの有機系フィラメント短繊維の集合束である態様である。また、テント膜構造物の製造方法は、1)産業資材シートを裁断し、複数の裁断パーツを用意する工程2)裁断パーツ同士の端部を特定幅で重ね合わせ、熱圧着、または高周波溶着により接合して多数の連結部を形成してテント膜構造物とする工程を含み、連結部に含む、産業資材シートの裁断断面に露出する糸条からの水の内部浸透(JIS K6404-3-16 A.インク法準拠)が20mm長以内で停止する態様である。
【0014】
本発明の産業資材シートに用いる織物は、平織物、斜子織物、綾織物、朱子織物、及び模紗織物などが使用できるが、特に平織物が好ましく、目付量は50~400g/mが適している。織物の空隙率は、産業資材シートがターポリンの場合は5~35%、帆布の場合は0~15%程度である。これらの織物には、染色、撥水、防炎、などの公知の染色整理を施したものを使用することができる。織物を構成する糸条は、ビニロン繊維、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート:PET、再生PET、バイオマスPETなど)繊維、ポリアミド(ナイロン、再生ナイロン、バイオマスナイロンなど)繊維などによる有機系マルチフィラメント糸条が使用できるが、特にポリエステル繊維では、末端にヒドロキシル基、カルボキシル基などの官能基を有し、またポリアミド繊維では、末端にアミノ基、カルボキシル基などの官能基を有することで、ポリカルボジイミドのカルボジイミド結合(-N=C=N-)と結合するので好ましい。また国土交通大臣認定の不燃材料には、無機系長繊維マルチフィラメント糸条による織物が、不燃性、及び強度に優れ適している。無機系長繊維はガラス長繊維が好ましく、フィラメント径が2.5~3.80μm(Bファイバー)、3.81~5.08μm(Cファイバー)、5.09~6.35μm(Dファイバー)、5.66~6.98μm(DEファイバー)、6.35~7.62μm(Eファイバー)、8.89~10.0μm(Gファイバー)などの何れかに溶融紡糸され、同一径ファイバー50~1600本集束して得たストランドに撚りを掛けた、あるいは無撚のマルチフィラメント単糸、またはこれら単糸2~3本の合撚糸が好ましい。ガラス原料は、ガラスの中で弾性係数(GPa)の高いEガラス(無アルカリガラス)が適し、フィラメントは屈曲耐久性に優れるBファイバーが適している。フィラメント径がこれ以上に大きいと、フィラメント間の隙間が比例増大し、毛管現象による水の侵入を抑止することが困難となる。
【0015】
マルチフィラメント糸条は、長繊維マルチフィラメント糸条、短繊維紡績マルチフィラメント糸条であり、織物は長繊維マルチフィラメント糸条のみ、または短繊維紡績マルチフィラメント糸条のみで製織された50~400g/mの目付量、もしくは長繊維マルチフィラメント糸条と短繊維紡績マルチフィラメント糸条の併用で製織された50~400g/mの目付量である。長繊維マルチフィラメント糸条は、ポリエステル、ナイロンなどを紡糸口金から押出して紡糸した長繊維紡原糸を延伸した長繊維紡糸束(1.25~4デニールのフィラメント100~500本の束)のまま無撚、または1~200回/m撚りを掛けた、繊度125~2000デニール(139~2222dtex)の糸条が使用できる。フィラメントデニールがこれ以上に大きいと、フィラメント間の隙間が比例増大し、毛管現象による水の侵入を抑止することが困難となる。短繊維紡績マルチフィラメント糸条は、ポリエステル、ナイロンなどを紡糸口金から押出して紡糸した長繊維紡糸束(1.25~4デニールの100~500本の束)を3.8~5.8mm長程度に切断したステープルを開繊練条したスライバを引き伸ばしたロービング(粗糸)とし、これに所定の番手太さにドラフトと撚りを掛けてトウ紡績したものである。フィラメントデニールがこれ以上に大きいと、フィラメント間の隙間が比例増大し、毛管現象による水の侵入を抑止することが困難となる。番手は綿番手の10番手(591dtex)~60番手(97dtex)の範囲、特に10番手(591dtex)、14番手(422dtex)、16番手(370dtex)、20番手(295dtex)、24番手(246dtex)、30番手(197dtex)などで、これらの単糸、または双糸(片撚糸)、単糸2本以上による合撚糸(諸撚糸)などが使用できる。撚糸の撚り回数は200~2000回/m程度である。
【0016】
長繊維マルチフィラメント糸条のフィラメントの表面、及びフィラメント間、及び短繊維紡績マルチフィラメント糸条のフィラメントの表面、及びフィラメント間に付着させる乾燥物は、フッ素原子非含有樹脂エマルジョン、及びカルボジイミド化合物(エチレンオキサイド部位を有する)エマルジョン、及び希釈水(銀イオン水、銅イオン水、及び有機防黴剤含有水から選ばれた1種以上)を必須とする混合溶液を乾燥させた固形物である。フッ素原子非含有樹脂エマルジョンは、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、及びシリコン系樹脂(OH基含有ポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン)、から選ばれた1種以上である。混合エマルジョンの乾燥物は、加熱による水分の蒸発により得られる。特に「ウレタン系樹脂/エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミド」複合物、または「アクリル系樹脂/エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミド」複合物が好ましく、織物の目付量に対して1~7.5質量%の乾燥物付着量であることが好ましい。この付着量は、織物を構成する糸条の比重、糸条を構成するフィラメント本数、フィラメント径、糸条の撚り、紡糸に用いる油剤、サイジング剤の種類、及び量などの要素の影響が大きいので、織物に応じて適宜調整する必要がある。乾燥物の付着量が1質量%未満だと、水の内部浸透(JIS K6404-3-16 A.インク法)が20mm長を超えることがあり、付着量が7.5質量%を超えると、フィラメント間が過剰な樹脂で埋め尽くされ、糸条の屈曲柔軟性が損なわれ硬くなることで、産業資材シートの引裂強度を低下させることがある。
【0017】
「フッ素原子非含有樹脂/エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミド」複合物におけるフッ素原子非含有樹脂として、ウレタン系樹脂は、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖延長剤と水中で反応させた水分散性ポリウレタン樹脂で、イソシアネート基末端プレポリマーは、有機ポリイソシアネート化合物、高分子量ポリオール、カルボキシル基、またはカルボキシレート基、及び2個以上の活性水素を有する化合物をモノマーとするもので、ポリアミン誘導体、ヒドラジン誘導体などの鎖延長剤を含むことができる。有機ポリイソシアネート化合物は、脂肪族ジイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート)、脂環式ジイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート)、芳香族ジイソシアネート(例えば、2,4-トリレンジイソシアネート)などで、特に紫外線、窒素酸化物ガスによる黄変の少ない脂肪族ジイソシアネート、及び脂環式ジイソシアネートが好ましく、これらは2種以上を併用することができる。高分子量ポリオールは、分子量300~10000,好ましくは、500~5000の、ポリエステルジオール(例えば、ポリエチレンアジペートジオール)、ポリエーテルジオール(例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール)、ポリカーボネートジオール(例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール)などが挙げられ、用いるポリオールの種類に応じてエステル結合を含むポリポリウレタン、エーテル結合を含むポリウレタン、カーボネート結合を含むポリウレタン、カプロラクトン結合を含むポリウレタンが得られる。NCO/OHのモル比は、1.2/1.0~ 1.5/1.0で、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを水に乳化分散した反応液に、水溶性ポリアミン誘導体、ヒドラジン誘導体などの鎖延長剤、必要に応じてトリイソシアネート(ジイソシアネート3量体)、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などの架橋剤を添加して、水中で鎖伸長反応させてポリウレタンエマルジョン(例えば、固形分20~60質量%)が得られる。ウレタン系樹脂本体、及び端末には、エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミドと反応するためのヒドロキシル基、カルボキシル基などの官能基を有することが好ましい。
【0018】
一方、フッ素原子非含有樹脂としてのアクリル系樹脂は、アルキル基の炭素数12~24の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、カルボキシル基含有不飽和モノマーを0.1~10質量%含むアクリル系共重合体樹脂で、アルキル基は、分岐であってもよいが直鎖が好ましい。直鎖アルキル基としては、ラウリル基、ヘキサデシル基、ステアリル基、イソステアリル基、ベヘニル基、などのアクリル酸、またはメタクリル酸のアルキルエステルで、(メタ)アクリル酸アルキルエステル量は40~80質量%以上が好ましい。40質量%よりも少ないと水の内部浸透(JIS K6404-3-16 A.インク法)が20mm長を超えることがあり、80質量%を超えると、長期使用に伴う糸条の屈曲により経時的に水の内部浸透が20mm長を超えることがある。カルボキシル基含有不飽和モノマーは、分子中にカルボキシル基と炭素-炭素不飽和結合を有し、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸などが挙げられる。カルボキシル基含有モノマーの量は0.1~10質量%で、その量が0.1質量%未満では、ポリカルボジイミドとの架橋結合が不足して、水の内部浸透(JIS K6404-3-16 A.インク法)が20mm長を超えることがあり、10質量%を超えるとフィラメント間が過剰な架橋体で埋め尽くされ、糸条の屈曲柔軟性が損なわれ硬くなることで、産業資材シートの引裂強度を低下させることがある。上記主成分と共重合するモノマーは、炭素数6~12の芳香環、または置換基を有する芳香環、あるいは炭素数5~12のシクロアルカン、または置換基を有するシクロアルカンを有するモノマーで、これらは、スチレン、α-メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート 、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、4-モルホリノエチル(メタ) アクリレート、テトラヒドロフルフリル (メタ)アクリレート、 ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジニルメタクリレート、桂皮酸メチル、桂皮酸エチルなど、から選ばれた1種以上で15~40質量%の共重合比が好ましい。15質量%未満だと水の内部浸透が20mm長を超えることがあり、40質量%を超えると糸条の屈曲柔軟性が損なわれ硬くなることで、産業資材シートの引裂強度を低下させることがある。特に第3の共重合成分として、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、ブロックイソシアネート基、アミド基、N-メチロール基、及びメルカプト基から選ばれる官能基を有する1種以上のモノマーを、1~10質量%含有させて、エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミドとの反応ポイントとすることが好ましい。アクリル系樹脂本体、及び端末には、エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミドと反応するためのヒドロキシル基、カルボキシル基などの官能基を有することが好ましい。得られたアクリル系樹脂は、エマルジョン(例えば、固形分20~60質量%)の態様が、織物への処理が容易で好ましい。
【0019】
また「フッ素原子非含有樹脂/エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミド」複合物に用いるエチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミドは、有機ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応によって得られるポリカルボジイミドと、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール誘導体などを反応させた共重合体で、カルボジイミド結合(-N=C=N-)とエチレンオキサイド部位(-CH-CH-O-)を有する水溶性ポリカルボジイミドを主体とするもので、カルボジイミド結合はガラス繊維との密着性に優れ、エチレンオキサイド部位は水溶性に作用する。これらのポリカルボジイミドは、カルボジイミド結合(-N=C=N-)の総和の1~20%程度にポリエチレングリコールがグラフトしたものであってもよい。ポリカルボジイミドの部分の部位は、化学式(R-[-N=C=N-R’]-:式中、R、及びR’は、C1-C20アルキル、またはC3-C10シクロアルキル、またはC1-C20アルケニル基で、これらは環状、または分岐状であり、またはC8-C16芳香族核を含んでいてもよく、芳香族核は官能基で置換されたものであってもよい。R’はC1-C20アルキレン、C3-C10シクロアルキレンなどであってもよい。nは2~50、好ましくは5~20)である。水溶性ポリカルボジイミドの使用量はウレタン系樹脂、またはアクリル系樹脂に含むカルボキシル基含有不飽和モノマーのカルボキシル基1当量当り、カルボジイミド結合が0.01~3当量が好ましい。使用量が0.01当量より少ないと、架橋反応不足により水の内部浸透が20mm長を超えることがあり、使用量が3当量を超えると未反応のポリカルボジイミド同士の二量化、または三量化反応による風合い硬化、ポリカルボジイミドに含むエチレンオキサイド部位の影響で、水の内部浸透が20mm長を超えることがある。有機ジイソシアネートは、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネートが挙げられ、エチレンオキサイド部位を形成する有機化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールのモノアルキルエーテル、及びポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールのランダム共重合物のモノアルキルエーテル、またはブロック共重合物のモノアルキルエーテルなどのポリエチレングリコール誘導体が挙げられる。
【0020】
エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミドのカルボジイミド部位としては、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、N、N’-ジフェニルカルボジイミド、N,N’-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド、N,N-ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N’-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、2,2’,6,6’-テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドオリゴマー、1,3,5-トリイソプロピル-2,4-ジイソシアナトベンゼンポリマー、1,3,5-トリイソプロピル-2,4-ジイソシアナトベンゼンポリマー、及び2,6-ジイソプロピルフェニルイソシアネート、などが挙げられ、これらのN=C=N当量(カルボジイミド基1mol当たりの化学式量)は300~600が好ましい。このカルボジイミド基の総数の1~20%程度に、ポリエチレングリコールのモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールのランダム共重合物のモノアルキルエーテル、またはブロック共重合物のモノアルキルエーテルなどのポリエチレングリコール誘導体を付加反応させることもできる。化学式(R-[-N=C=N-R’]-)におけるR’は、2,6-ジイソプロピルベンゼン、ナフタレン、3,5-ジエチルトルエン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチレンフェニル)、4,4’-メチレンビス(2-エチル-6-メチルフェニル)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)、4,4’-メチレンビス(2-エチル-5-メチルシクロヘキシル)、2,4,6-トリイソプロピルフェニル、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン、及びメチルシクロヘキサンなどである。エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミドは、エマルジョン(例えば、固形分20~60質量%)の態様が、織物への処理が容易で好ましい。ウレタン系樹脂/エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミドの固形分比率は3:1~1:1で、特に2:1近傍が好ましく、アクリル系樹脂/エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミドにおいても同様の比率である。
【0021】
上述の「フッ素原子非含有樹脂/エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミド」複合物は、ポリエステル繊維が有する末端ヒドロキシル基、カルボキシル基が、カルボジイミド結合(-N=C=N-)に結合することで、ポリエステル繊維織物による産業資材シートの裁断面に露出する糸条の断面からの水の内部浸透(JIS K6404-3-16 A.インク法)を20mm長以内で停止させ、産業資材シートの断面からの雨水の浸透防止効果(黴、藻の繁殖防止)と、その動的耐久持続性に優れた産業資材シートが得られる。一方、ガラス長繊維マルチフィラメント糸条で製織された織物に対しては、上記「フッ素原子非含有樹脂/エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミド」複合物には、追加成分としてアルコキシシラン化合物の加水分解反応物を含み、その含有量がこの複合物に対して7.5~35質量%であることが好ましい。アルコキシシラン化合物は、アミノシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、アクリルシラン、クロルシラン、メルカプトシラン、イソシアヌレートシラン、イソシアネートシラン、から選ばれた1種以上のシランカップリング剤が例示できる。アルコキシシラン化合物は、一般式:XR-Si(Y)で表される分子中に2個以上の異なった反応基を有し、X=アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基、クロル基、メルカプト基、イソシアヌレート基、イソシアネート基の何れか(R=アルキル鎖)、Y=メトキシ基、またはエトキシ基である。アルコキシシラン化合物は水溶液中で加水分解して、一般式:XR-Si(OH)を生成し、この加水分解物同士が反応した縮合物を必須とするが、このような縮合物は特に、X=アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基などがカルボジイミド結合(-N=C=N-)との反応性が高く好適である。一方、Si(OH)はガラスフィラメント表面に結合することで、ガラス繊維織物による産業資材シートの裁断面に露出する糸条の断面からの水の内部浸透(JIS K6404-3-16 A.インク法)を20mm長以内で停止させ、産業資材シートの断面からの雨水の浸透防止効果(黴、藻の繁殖防止)と、その動的耐久持続性に優れた産業資材シートが得られる。
【0022】
糸条を構成するフィラメントの表面、及びフィラメント間に乾燥物を、織物の目付量に対して1~7.5質量%の総量で付着させる手段は、1)上述のフッ素原子非含有樹脂エマルジョン、及びカルボジイミド化合物(エチレンオキサイド部位を有する)エマルジョン、及び希釈水(銀イオン水、銅イオン水、及び有機防黴剤含有水から選ばれた1種以上)を必須とする混合溶液を計量、希釈により総合固形分濃度を10~25質量%に調整後、攪拌調製する工程、2)マルチフィラメント糸条の交絡で製織された織物を、混合溶液が充填された液浴中に浸漬して、織物全体に混合溶液(エマルジョン組成物)を含侵させ、エマルジョン組成物が含侵付着した織物を引き上げると同時に、1対のゴムロール間で圧搾し、織物を構成するマルチフィラメント糸条の表面、及びフィラメント間にエマルジョン組成物を含侵させると同時に余剰なエマルジョン組成物を除去した後、100℃以上の熱風で乾燥固化する手段により、織物全体に、エマルジョン組成物の乾燥物を付着させ、その付着量を織物の目付量に対して1~7.5質量%とする工程により達成できる。1)の工程には必要に応じて、アルコキシシラン化合物をさらに含むことができ、その含有量は乾燥物全体量に対して7.5~35質量%である。2)の工程は、織物の表裏に、混合溶液(エマルジョン組成物)をグラビア塗布、ロール塗布、ナイフ塗布などして、マルチフィラメント糸条の表面、及びフィラメント間にエマルジョン組成物を含侵させた後、100℃以上の熱風で乾燥固化する手段であってもよい。エマルジョン組成物に併用できる撥水剤は、公知のシリコーン系化合物、及びパラフィン系化合物などで、その併用量は乾燥物全体に対して1~25質量%である。
【0023】
エメルジョン組成物の固形分濃度を調製する希釈水は、1~50ppm銀イオンを含有する銀イオン水、1~50ppm銅イオンを含有する銅イオン水、及び0.05~1質量%濃度の有機防黴剤を含有する有機防黴剤含有水から選ばれた1種以上であり、特に銀イオン水と有機防黴剤含有水の1:2~2:1質量比併用、または銅イオン水と有機防黴剤含有水の1:2~2:1質量比併用、銀イオン水と銅イオン水と有機防黴剤含有水の1:1:2質量比併用が好ましい。銀イオン水は、水中に配置された2つの純銀電極間に直流電圧を印加して銀イオンを発生させる公知の電気分解法、あるいは金イオン成分を含む化合物(例えば臭化銀、塩化銀、クエン酸銀、沃化銀、乳酸銀、硝酸銀、酸化銀など)を水に溶解させる公知の薬剤法により得られ、銀イオン濃度を1~50ppmに調整して使用する。銅イオン水は、水中に配置された2つの純銅電極間に直流電圧を印加して銅イオンを発生させる公知の電気分解法、あるいは銅イオン成分を含む化合物(例えば硝酸銅)を水に溶解させる公知の薬剤法により得られ、銅イオン濃度を1~50ppmに調整して使用する。有機防黴剤含有水は、イミダゾール系化合物、チアゾール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ピリジン系化合物、トリアジン系化合物、トリアゾール系化合物、N-ハロアルキルチオ系化合物、四級アンモニウム塩系化合物、及び有機金属系化合物から選ばれた1種以上を水に溶解、または分散して0.05~1質量%濃度に調整して含むもので、これらの有機防黴剤は防藻剤でもある。銀イオン水に含む銀イオン、銅イオン水に含む銅イオン、及び有機防黴剤含有水に含む有機防黴剤は、フッ素原子非含有樹脂/エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミド」複合物の乾燥物内に残留し、産業資材シートの裁断面に露出する前記糸条の断面から黴、藻の胞子を含む雨水が内部浸透したとしても、黴、細菌(グラム陽性、グラム陰性)、真菌などの細胞壁、細胞膜、細胞質、及び細胞核などに対して、酸化的リン酸化阻害、電子伝達系阻害、-SH基阻害、DNA合成阻害、細胞表皮機能阻害、脂質代謝阻害、キレート形成などの作用を及ぼし、黴、藻の繁殖を抑止する効果を発現する。銀イオン水、銅イオン水、及び有機防黴剤含有水は、黴の種類、藻の種類によって、各々防黴効果、及び防藻効果には差異を生じるので、黴、藻の種類に応じた、組成物とする必要がある。
【0024】
イミダゾール系化合物は、2-(4-チアゾリル)-ベンズイミダゾール(略称TBZ)、2-(カルボメトキシアミノ)ベンズイミダゾール(略称BCM)、1-(ブチルカルバモイル)-2-ベンズイミダゾールカルバミン酸メチルなど、チアゾール系化合物は、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(4-チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、2-(チオシアノメチルスルホニル)ベンゾチアゾールなど、イソチアゾリン系化合物は、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4-クロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、N-n-ブチル-1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチルチオ-4-t-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノ-S-チアジンなど、ピリジン系化合物は、ビス(ピリジン-2-チオール-1-オキシド)亜鉛塩(略称ZPT)、(2-ピリジンチオール-1-オキサイド)ナトリウム塩、2,2-ジチオ-ビスピリジン-1-オキサイド、2-ピリジルチオ-1-オキサイド銅塩、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジンなど、トリアジン系化合物は、ヘキサヒドロ-N,N′,N″-トリス(2-ヒドロキシエチル)-S-トリアジン、ヘキサヒドロ-N,N′,N″-トリエチル-S-トリアジン、2-メチルチオ-4-t-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノ-S-トリアジン、2-クロロ-4,6-ジエチルアミノ-S-トリアジン、2-クロロ-4-エチルアミノ-6-イソプロピルアミノ-S-トリアジン、2-メチルチオ-4-エチルアミノ-6-(1,2-ジメチルプロピルアミノ)-S-トリアジンなど、トリアゾール系化合物は、α-[2-(4-クロロフェニル)エチル]-α-(1,1-ジメチルエチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-エタノール、1-[[2-(2,4-ジクロロフェニル)-4-n-プロピル-1,3-ジオキソラン-2-イル]メチル]-1H-1,2,4-トリアゾール、1-[[2-(2,4-ジクロロフェニル)-1,3-ジオキソラン-2-イル]メチル]-1H-1,2,4-トリアゾール、α-(4-クロロフェニル)-α-(1-シクロプロピルエチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-エタノールなど、N-ハロアルキルチオ系化合物は、N-(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N-トリクロロメチルチオテトラヒドロフタルイミド、N-(トリクロロメチルチオ)-4-シクロヘキサン1,2-ジカルボキシイミド、N,N-ジメチル-N-(フルオロジメチルチオ)-N-フェニルスルファミド、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’,N’-ジメチル-N-p-トリルスルファミドなど、四級アンモニウム塩系化合物は、塩化ベンザコニウム、塩化ベンゼトニウム、N-デシル-N-イソノニル-N,N-ジメチルアンモニウムクロライドなど、有機金属系化合物は、10,10-オキシビスフェノキシアルシン(略称OBPA)、8-オキシキノリン銅、2-エチルヘキサン酸ニッケルなどが例示できる。
【0025】
本発明の産業資材シートにおいて、織物の表裏に形成する防水被覆層は、公知の熱可塑性樹脂を主体とする組成物から形成されたものであり、これらは例えば、軟質塩化ビニル樹脂(可塑剤含有)、塩化ビニル系共重合体樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂(PE,PP)、オレフィン系共重合体樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、などであり、防水被覆層は下記の配合例により、着色遮光性、着色光透過性、無色透明の何れであってもよい。本発明の産業資材シートにおいて防水被覆層は、軟質塩化ビニル樹脂(可塑剤含有)であることが、可撓性、難燃性、耐摩耗性、耐候性の観点において特に好ましい。軟質塩化ビニル樹脂組成物は具体的に、数平均分子量800~2500の塩化ビニル樹脂(乳化重合、または懸濁重合)100質量部と、可塑剤(アジピン酸ジエステル化合物、フタル酸ジエステル化合物、シクロヘキサンジカルボン酸エステル化合物、シクロヘキセンジカルボン酸エステル化合物、リン酸エステル化合物、塩素化パラフィン化合物、ポリエステル系オリゴマー、エポキシ化大豆油などから選ばれた1種以上)を40~100質量部、安定剤(バリウム-亜鉛複合系、カルシウム-亜鉛複合系、錫メルカプト複合系などから選ばれた1種以上を2~5質量部、難燃剤(三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛などから選ばれた1種以上)を0~30質量部、充填剤(炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、タルクなどなどから選ばれた1種以上)を0~30質量部、耐光安定剤(ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物などから選ばれた1種以上)を0.5~3質量部、架橋剤(多官能イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン系化合物、(メタ)アクリレート化合物、シランカップリング剤などから選ばれた1種以上)を0~10質量部、防黴剤(イミダゾール系化合物、チアゾール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ピリジン系化合物、N-ハロアルキルチオ系化合物、フェノキシアルシン化合物など)から選ばれた1種以上)を0~3質量部、顔料(酸化チタン、カーボンブラック、無機化合物、アゾ系化合物、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、キナクリドン系化合物などから選ばれた1種以上)を0~5質量部、などを任意かつ任意量で含む配合組成物であり、必要に応じて帯電防止剤、滑剤、化学発泡剤、防虫剤、消臭剤、遮熱剤など公知の添加剤を追加することができる。
【0026】
産業資材シート(ターポリン)の防水被覆層は、熱可塑性樹脂組成物(好ましくは軟質塩化ビニル樹脂コンパウンド)を熱混練し、カレンダー法、またはTダイス押出法で溶融圧延した厚さが80~800μm、特に150~300μmフィルム(シート)が使用できる。また「フッ素原子非含有樹脂/エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミド」複合物を付着させた目開き織物に対する表裏の防水被覆層の形成は、熱ロール/ゴムロールの連続圧着ユニットを1~2と、冷却ロールユニット、及び巻取ユニットを有するラミネーターを用いることによって1パスまたは2パスの工程により熱溶融圧着することで、厚さ0.4~1.5mm、質量500~2000g/mのターポリンを得ることができる。これらのターポリンは、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、日除けテントなどの膜構造物用途に適している。一方、産業資材シート(帆布)の防水被覆層は、ペースト状熱可塑性樹脂組成物(好ましくは軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル)の液浴中に織物を浸漬し、これを引き上げると同時に1対のゴムロール間で圧搾し、織物を構成するマルチフィラメント糸条の表面、及び糸条間に軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾルを含侵させると同時に余剰な軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾルを除去した後、160~185℃の熱風でゲル化させ防水被覆層となる厚さ50~300μm、特に80~200μmの皮膜を形成させるディッピング法が1パス工程で実施可能で好適である。または、織物の表裏にナイフコート、クリアランスコート、グラビアコートなどのコーティング法などにより軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾルを塗工し、これを160~185℃の熱風でゲル化させ防水被覆層となる厚さ50~300μm、特に80~200μmの皮膜を形成することもできる。これらの方法により、厚さ0.3~0.8mm、質量400~1000g/mの帆布が得られ、トラック幌、トラック荷台シート、屋形テント、シートハウスなどに使用できる。
【0027】
本発明の産業資材シート(ターポリン、帆布)の防水被覆層表面の片面以上には、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル/シリコン系共重合体樹脂、ウレタン/シリコン系グラフト共重合体樹脂、などのフッ素原子非含有塗膜からなる防汚層が形成されていてもよい。これらの防汚層を、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、などの膜構造物に適用することで屋外使用時の耐久性を飛躍的に向上させることができる。さらにこれらの防汚層の表面、もしくは産業資材シート(ターポリン、帆布)表面には、1次粒子径3nm~150nmの無機コロイド物質を原料とするナノ粒子が、シランカップリング剤の加水分解縮合物を含むバインダー成分に担持されてなる帯電防止性防汚層が設けられていてもよい。無機コロイド物質は、光触媒性酸化チタンゾル、光触媒性酸化亜鉛ゾル、光触媒性酸化錫ゾル、酸化チタンゾル、酸化亜鉛ゾル、酸化錫ゾル、シリカゾル、酸化アルミニウムゾル、酸化ジルコニウムゾル、酸化セリウムゾル、及び複合酸化物(酸化亜鉛-五酸化アンチモン複合または酸化スズ-五酸化アンチモン複合)ゾルなどの金属酸化物である。
【0028】
本発明の産業資材シート(ターポリン、帆布)は、厚さ0.3~1.2mm、幅0.9~2.5m、程度の規格で、例えば1ロット1000mの長尺巻で生産し、これを規格幅にスリットして50m長に巻替えたものが商品(ターポリン原反、帆布原反)として流通する。この原反の左右スリット断面、及び50m反末断面には、織物の断面(糸条の断面)が露出した状態である。テント膜構造物は、これらの産業資材シートをパーツとして、これらを複数繋ぎ合わせて面積拡張する縫製が行われ、この縫製は熱融着、または高周波溶着によるラップ接合(シート材端部をのり代として、のり代同士を重ね合わせた状態で防水被覆層を溶かして接着)で、この接合部の断面には、織物を構成する糸条の断面が露出した状態となり、屋外使用時には常に雨水に晒された状態となるが、本発明により織物を構成する糸条のフィラメントの表面、及びフィラメント間に「フッ素原子非含有樹脂/エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミド」複合物が、織物の目付量に対して1~7.5質量%の総量で付着したことで、産業資材シートの任意の裁断面に露出する糸条の断面からの水の内部浸透(JIS K6404-3-16 A.インク法)が20mm長以内で停止させることができる。従って黴や藻の繁殖トラブルとなる汚れた雨水の侵入を抑止することで、長期間美麗な膜構造物外観、内部からの良好な光透過外観を維持することができる。この吸水防止効果は、産業資材シートの摩耗、傷穴、などの破損部からも生じるトラブル防止にも効果的である。
【0029】
本発明を下記の実施例及び比較例を挙げて更に説明するが、本発明の態様はこれらの例の範囲に限定されるものではない。
シート材断面からの水の浸透抑止効果(初期)
JIS K6404-3-16 A.インク法
20cm(タテ)×3cm(ヨコ)、及び3cm(タテ)×20cm(ヨコ)に切り出した短冊形の試料の先端5mmを、3%赤インク水溶液浴中に72時間浸し、これを取り出し乾燥した試験体から防水被覆層を高周波溶着により剥離除去し、織物を露出させ、赤インクの最大吸い上げ部を測長し、吸い上げ20mm以内(5試験体の平均値)を水の浸透抑止効果ありと判定した。防水被覆層の除去は、試験体と同じシート材を高周波溶着機で溶着し一体化させたものを強制的に分離することで実施可能である。
※赤インク:株式会社パイロットコーポレーション「インク赤350R」
※社団法人日本膜構造協会試験法標準「膜材料の品質及び性能試験方法」
(MSAJ/M-3-82003)13項「耐吸水性A法」参照
シート材断面からの水の浸透抑止効果(機械式屈曲ダメージ後)
JIS K6404-3-16 A.インク法準拠
12cm(タテ)×2.5cm(ヨコ)、及び2.5cm(タテ)×12cm(ヨコ)に切り出したシート材をスコット耐揉み摩擦試験機(株式会社東洋精機製作所製)に装着し、JIS L1096摩耗強さB法(スコット形法)に準拠し、押圧1.0kgf×30回の揉み屈曲のダメージを負荷した。この試験体を3%赤インク水溶液浴中に72時間浸し、同様の評価を行ない、吸い上げ20mm以内(5試験体の平均値)を浸透抑止効果ありと判定した。防水被覆層の除去、赤インク、試験方法は上述の通りである。
シート材同士の接合体の断面からの水の浸透抑止効果(初期)
JIS K6404-3-16 A.インク法
20cm(タテ)×15cm(ヨコ)2枚(タテ糸試験用)を完全に重ね合わせ、20cmタテ積重体の片端部5cmを、5cm幅×20cm長のウエルドバー(平刃)を装着した高周波ウエルダー融着機(山本ビニター株式会社)YTO-8A型:高周波出力8KW)を用い、陽極電流1.0アンペア×通電5秒(OFF3秒)で高周波融着接合を行い、産業資材シート接合体(テント膜構造物模擬体)を得た。15cm(タテ)×20cm(ヨコ)2枚(ヨコ糸試験用)も同様にして接合体(テント膜構造物模擬体)を得た。これらの接合体から長さ20cm×幅3cmの試験片5本、2セット(タテ糸試験用、ヨコ糸試験用)を採取し、この試験体を3%赤インク水溶液浴中に72時間浸し、同様の評価を行ない、吸い上げ20mm以内(5試験体の平均値)を浸透抑止効果ありと判定した。防水被覆層の除去、赤インク、試験方法は上述の通りである。
織物の防黴性の評価(JIS Z2911培養試験)
エマルジョン組成物の乾燥物を付着させた織物(幅3cm×長さ3cm)に、下記試験用黴の胞子を接種し、ポテト・デキストロース寒天培地上に置き、シャーレ中で28℃×7日間、及び14日間、黴の発生状況を観察し、以下の判定基準で評価した。
1:試験片の接種した部分に菌糸の発育が認められない
2:試験片の接種した部分に認められる菌糸の発育部分の面積が全面積の 1/3 を超えない
3:試験片の接種した部分に認められる菌糸の発育部分の面積が,全面積の 1/3 を超える
〈試験用黴〉A+B+Cの混合黴
A)Aspergillus niger NBRC 105649(黒黴)
B)Penicillium citrinum NBRC 6352(青黴)
C)Cladosporium cladosporioides NBRC 6348(クロカワ黴)
【0030】
[実施例1]
〈織物(1)〉
1000デニール(1111dtex)のポリエステル長繊維(フィラメント数192本)からなり、S撚50T/mを施したPETマルチフィラメント糸条を経糸群及び緯糸群に用い、経糸群は1インチ間16本の織組織とし、また緯糸群は1インチ間16本の織組織とする平織物を布帛(1)に用いた。この織物(1)の質量は150g/m、空隙率(目抜け部総和)は14%であった。〔配合1〕の混合溶液(1)を調製し、この織物(1)を下記〔配合1〕の混合溶液(1)を充填した液浴中に浸漬し、織物(1)全体に混合溶液(1)を含浸させ、織物を構成する糸条のフィラメント表面、及びフィラメント間に混合溶液(1)を含浸させた。この含浸織物(1a)を引き上げると同時に1対のゴムロール間で圧搾し、直後電気炉内120℃の熱風乾燥を行い、織物の糸条のフィラメント表面、及びフィラメント間に複合物の乾燥物が付着してなる質量155.5g/mの織物(1a)を得た。複合物の乾燥物の付帯量は5.5g/mで、織物(1)に対して3.6%であった。
〔配合1〕混合溶液(1)固形分6質量%
フッ素原子非含有樹脂(ウレタン系樹脂)エマルジョン(固形分40質量%)
商品名:メイシールドZ-1(明成化学工業株式会社)
※段落〔0017〕※カルボキシル基を有する 10質量部
エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミドエマルジョン
商品名:カルボジライトV-02(日清紡ケミカル株式会社:固形分40質量%)
※段落〔0019〕〔0020〕 5質量部
希釈水 85質量部
※電気分解法による5ppm濃度の銀イオン水84.2質量部に、2-(4-チアゾ
リル)-ベンズイミダゾール(TBZ)の粉末0.8質量部を分散させた水溶液を希
釈液とした。
<産業資材シート(1):ターポリン>
織物(1a)を基材として、その両面に下記〔配合2〕の軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる厚さ0.2mmのカレンダー成型フィルムを表裏の防水被覆層として、ラミネーターでの熱圧着による溶融ラミネートを施し、厚さ0.7mm、質量830g/mの産業資材シート(1)のターポリンを得た。産業資材シート(1)が含む織物(1a)は、糸条のフィラメント表面、及びフィラメント間に複合物が、織物(1)に対して3.6%付着したものである。
〔配合2〕:軟質塩化ビニル樹脂組成物(コンパウンド)
塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジイソノニル(可塑剤DINP:MW419) 55質量部
リン酸トリクレジル(防炎可塑剤) 10質量部
エポキシ化大豆油(安定剤兼可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合安定剤 2質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ルチル型酸化チタン(白顔料) 5質量部
ベンゾトリアゾール骨格化合物(紫外線吸収剤) 0.3質量部
【0031】
[実施例2]
実施例1の〔配合1〕混合溶液(1)を、〔配合3〕混合溶液(2)に変更した以外は、実施例1と同様として、厚さ0.7mm、質量830g/mの産業資材シート(2)のターポリンを得た。産業資材シート(2)が含む織物(1b)は、糸条のフィラメント表面、及びフィラメント間に複合物の乾燥物が、織物(1)に対して3.6%付着したものである。
〔配合3〕混合溶液(2)固形分6質量%
フッ素原子非含有樹脂(アクリル系樹脂)エマルジョン(固形分40質量%)
商品名:パラヂウムSEF-1(大原パラヂウム化学株式会社)
※段落〔0018〕※カルボキシル基を有する 10質量部
エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミドエマルジョン
商品名:カルボジライトV-02(日清紡ケミカル株式会社:固形分40質量%)
※段落〔0019〕〔0020〕 5質量部
希釈水 85質量部
※電気分解法による5ppm濃度の銅イオン水84.2質量部に、10,10-オ
キシビスフェノキシアルシン(OBPA)の粉末0.8質量部を分散させた水溶液を
希釈液とした。
【0032】
[実施例3]
〈織物(2)〉
経糸として20番手双糸のポリエステル短繊維紡績糸条(約5cm長のPETステープルファイバー:S撚り300T/m)2本引揃単位を、27本/インチの打込密度、及び緯糸として10番手単糸のポリエステル短繊維紡績糸条(約5cm長のPETステープルファイバー:S撚り400T/m)2本引揃単位を、23本/インチの打込密度で平織製織した空隙率が外観上0、質量240g/m、の織物(2)を用いた。この織物を〔配合1〕の混合溶液(1)を充填した液浴中に浸漬し、織物(2)全体に混合溶液(1)を含浸させ、織物を構成する糸条のフィラメント表面、及びフィラメント間に混合溶液(1)を含浸させた。この含浸織物(2a)を引き上げると同時に1対のゴムロール間で圧搾し、直後電気炉内120℃の熱風乾燥を行い、織物の糸条のフィラメント表面、及びフィラメント間に複合物の乾燥物が付着してなる質量250.4g/mの織物(2a)を得た。複合物の乾燥物の付帯量は10.4g/mで、織物(2)に対して4.3%であった。
<産業資材シート(3):帆布>
織物(2)を〔配合4〕の軟質塩化ビニル樹脂組成物(ペースト)が充填された液浴中にディッピング(浸漬)し、織物(2)に〔配合4〕の加工液を含浸させた後、織物(2a)を液浴から引き上げると同時に、ゴム製マングルロールで圧搾し、余分な加工液を除去した後、180℃の熱風炉で3分間ゲル化処理を行うことで防水被覆層を織物(2a)の全体に含浸被覆形成し、厚さ0.47mm、質量580g/mの産業資材シート(3)の帆布を得た。産業資材シート(3)が含む織物(2a)は、糸条のフィラメント表面、及びフィラメント間に複合物の乾燥物が、織物(2)に対して4.3%付着したものである。
〔配合4〕軟質塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ペースト塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
フタル酸ジイソノニル(可塑剤DINP:MW419 55質量部
リン酸トリクレジル(防炎可塑剤) 10質量部
エポキシ化大豆油(安定剤兼可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合安定剤 2質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 15質量部
ルチル型酸化チタン(白顔料) 5質量部
ベンゾトリアゾール骨格化合物(紫外線吸収剤) 0.3質量部
希釈溶剤(トリクロロエチレン) 20質量部
【0033】
[実施例4]
実施例3の産業資材シート(3)において、織物(2)に含侵させる混合溶液(1)を混合溶液(2)に変更した以外は実施例3と同様として、厚さ0.47mm、質量580g/mの産業資材シート(4)の帆布を得た。産業資材シート(4)が含む織物(2b)は、糸条のフィラメント表面、及びフィラメント間に複合物の乾燥物が、織物(2)に対して4.3%付着したものである。
【0034】
[実施例5]
実施例1の産業資材シート(1)において、織物(1)を、織物(3)に変更した以外は実施例1と同様として、厚さ0.74mm、質量960g/mの産業資材シート(5)のターポリンを得た。産業資材シート(5)が含む織物(3a)は、糸条のフィラメント表面、及びフィラメント間に複合物の乾燥物が、織物(3)に対して3.9%付着したものである。
〈織物(3)〉
Eガラスの長繊維マルチフィラメント糸条(フィラメント径6μm、フィラメント数400本:75dtexの扁平糸条)を経糸、及び緯糸とし、経糸打込密度44本/1インチ、緯糸打込密度40本/1インチ、空隙率5%、質量285g/m、の織物(3)を用いた。
【0035】
[実施例6]
実施例2の産業資材シート(2)において、織物(1)を、織物(3)に変更した以外は実施例2と同様として、厚さ0.74mm、質量960g/mの産業資材シート(6)のターポリンを得た。産業資材シート(6)が含む織物(3b)は、糸条のフィラメント表面、及びフィラメント間に複合物の乾燥物が、織物(3)に対して3.9%付着したものである。
【0036】
[実施例7]
実施例5の産業資材シート(5)において、〔配合1〕混合溶液(1)を、〔配合5〕混合溶液(3)に変更した以外は実施例5と同様として、厚さ0.74mm、質量960g/mの産業資材シート(7)のターポリンを得た。〔配合5〕混合溶液(3)は、常温で1時間攪拌したものを使用した。産業資材シート(7)が含む織物(3a)は、糸条のフィラメント表面、及びフィラメント間に複合物の乾燥物が、織物(3)に対して3.9%付着したものである。
〔配合5〕混合溶液(3)固形分6質量%
フッ素原子非含有樹脂(ウレタン系樹脂)エマルジョン(固形分40質量%)
商品名:メイシールドZ-100(明成化学工業株式会社)
※段落〔0017〕 10質量部
エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミドエマルジョン
商品名:カルボジライトV-04(日清紡ケミカル株式会社:固形分40質量%)
※段落〔0019〕〔0020〕※カルボキシル基を有する 5質量部
N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン
の塩酸塩(有効成分40質量%/メタノール溶液:アルコキシシラン化合物)5質量部
希釈水 80質量部
※電気分解法による5ppm濃度の銅イオン水79.2質量部に、2-(4-チアゾ
リル)-ベンズイミダゾール(TBZ)の粉末0.8質量部を分散させた水溶液を希
釈液とした。
【0037】
[実施例8]
実施例7の〔配合5〕混合溶液(3)を、〔配合6〕混合溶液(4)に変更した以外は、実施例7と同様として、厚さ0.74mm、質量960g/mの産業資材シート(8)のターポリンを得た。産業資材シート(8)が含む織物(3b)は、糸条のフィラメント表面、及びフィラメント間に複合物の乾燥物が、織物(3)に対して3.9%付着したものである。
〔配合6〕混合溶液(4)固形分6質量%
フッ素原子非含有樹脂(アクリル系樹脂)エマルジョン(固形分40質量%)
商品名:パラヂウムSEF-8(大原パラヂウム化学株式会社)
※段落〔0018〕※カルボキシル基を有する 10質量部
エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミドエマルジョン
商品名:カルボジライトV-04(日清紡ケミカル株式会社:固形分40質量%)
※段落〔0019〕〔0020〕 5質量部
3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(アルコキシシラン化合物)2質量部
希釈水 83質量部
※電気分解法による5ppm濃度の銀イオン水82.2質量部に、10,10-オキ
シビスフェノキシアルシン(OBPA)の粉末0.8質量部を分散させた水溶液を希
釈液とした。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
実施例1~8の産業資材シートは、織物に対して、フィラメントの表面、及びフィラメント間に「フッ素原子非含有樹脂/エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミド」複合物の乾燥物を、織物の目付量に対して3.6~4.3質量%程度の総量で付着させることによって、産業資材シートの裁断面に露出する糸条の断面からの水の内部浸透(JIS K6404-3-16 A.インク法)を全て5mm長以内で停止させることができた。また、実施例1~8の産業資材シートに屈曲の負荷を与え、マルチフィラメントに隙間を生じて毛細管現象を助長させるようなストレスを与えた後でも水の内部浸透長は10mm長以内で停止させることができたことから、これらの産業資材シートをテント膜構造物に縫製する際のシート折り畳み、テント膜構造物縫製物を鉄骨フレームに装着する際の展張、テント膜構造物竣工後の暴風はためき、などのストレスによる毛細管現象の助長抑止が期待できる。そしてさらに産業資材シート(1)~(8)、特に同一シート同士による高周波接合部の断面は「フッ素原子非含有樹脂/エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミド」複合物の乾燥物が加熱圧着で溶融物となって、縫製時の折り曲げなどで生じたマルチフィラメント間の隙間を再充填する効果で、水の内部浸透長は全て5mm長以内で停止した。従って、本発明による産業資材シートを縫製してなるテント膜構造物においては、これらの断面からの雨水の浸透防止効果(黴、藻の繁殖防止)に優れ、しかもその効果の耐久持続性にも優れていることが明らかとなった。また実施例5と7の対比、及び実施例6と8の対比において、複合物を構成する要素にアルコキシシラン化合物を25質量%含有する実施例7、及び8では、アルコキシシラン化合物が加水分解したシラノール基Si(OH)がガラスフィラメント表面に結合し、一方アルコキシ基がカルボジイミド基と結合することにより、産業資材シートに屈曲の負荷を与えた際に生じるガラスマルチフィラメントの隙間を生じ難い堅牢な糸条とし、この堅牢さによってガラス繊維織物における毛細管現象を効果的に抑止可能であることが明らかとなった。また、実施例1~8の産業資材シートは、織物に対して、フィラメントの表面、及びフィラメント間に「フッ素原子非含有樹脂/エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミド」複合物の乾燥物を、織物の目付量に対して3.6~4.3質量%程度の総量で付着させ、乾燥物中に銀イオン、銅イオン、有機防黴剤などが残留することによって、織物自体に十分な防黴性を有するもので、JIS K6404-3-16 A.インク法における20mm長以内の雨水の浸透許容内においても防黴性が担保されたものであった。
【0041】
[比較例1]
実施例1の産業資材シート(1)において、〔配合1〕の混合溶液(1)を、〔配合7〕の溶液(5)に変更した以外は実施例1と同様として、厚さ0.7mm、質量830g/mの産業資材シート(9)のターポリンを得た。産業資材シート(9)が含む織物(1a)は、糸条のフィラメント表面、及びフィラメント間に樹脂が、織物(1)に対して3.6%付着したもので実施例1と同様であるが、エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミドを省略したことによって、水の内部浸透が40mm長を超え、20mm以内で停止させることができず、雨水の浸透時には産業資材シート内に黴や藻が繁殖して、外観を損なうと同時に黴臭の原因となる可能性の高いものであった。また、乾燥物中に銀イオン、銅イオン、有機防黴剤などを含まないことによって、織物自体に防黴性を有することなく、雨水の浸透時には産業資材シート内に黴や藻が繁殖して、外観を損なうと同時に黴臭の原因となる可能性の極めて高いものであった
〔配合7〕溶液(5)固形分6質量%
フッ素原子非含有樹脂(ウレタン系樹脂)エマルジョン(固形分40質量%)
商品名:メイシールドZ-1(明成化学工業株式会社) 15質量部
希釈水 85質量部
【0042】
[比較例2]
実施例2の産業資材シート(2)において、〔配合3〕の混合溶液(2)を、〔配合8〕の溶液(6)に変更した以外は実施例2と同様として、厚さ0.7mm、質量830g/mの産業資材シート(10)のターポリンを得た。産業資材シート(10)が含む織物(1b)は、糸条のフィラメント表面、及びフィラメント間に樹脂が、織物(1)に対して3.6%付着したもので実施例2と同様であるが、エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミドを省略したことによって、水の内部浸透が40mm長を超え、20mm以内で停止させることができず、雨水の浸透時には産業資材シート内に黴や藻が繁殖して、外観を損なうと同時に黴臭の原因となる可能性の高いものであった。また、乾燥物中に銀イオン、銅イオン、有機防黴剤などを含まないことによって、織物自体に防黴性を有することなく、雨水の浸透時には産業資材シート内に黴や藻が繁殖して、外観を損なうと同時に黴臭の原因となる可能性の極めて高いものであった

〔配合8〕溶液(6)固形分6質量%
フッ素原子非含有樹脂(アクリル系樹脂)エマルジョン(固形分40質量%)
商品名:パラヂウムSEF-1(大原パラヂウム化学株式会社) 15質量部
希釈水 85質量部
【0043】
[比較例3]
実施例1の産業資材シート(1)において、〔配合1〕の混合溶液(1)を、〔配合9〕の溶液(7)に変更した以外は実施例1と同様として、厚さ0.7mm、質量830g/mの産業資材シート(11)のターポリンを得た。産業資材シート(11)が含む織物(1a)は、糸条のフィラメント表面、及びフィラメント間に樹脂が、織物(1)に対して3.6%付着したもので実施例1と同様であるが、フッ素原子非含有樹脂を省略したことによって、水の内部浸透が60mm長を超え、20mm以内で停止させることができず、雨水の浸透時には産業資材シート内に黴や藻が繁殖して、外観を損なうと同時に黴臭の原因となる可能性の高いものであった。また、乾燥物中に銀イオン、銅イオン、有機防黴剤などを含まないことによって、織物自体に防黴性を有することなく、雨水の浸透時には産業資材シート内に黴や藻が繁殖して、外観を損なうと同時に黴臭の原因となる可能性の極めて高いものであった
〔配合9〕溶液(7)固形分6質量%
エチレンオキサイド部位を有するポリカルボジイミドエマルジョン(固形分40質量%)
商品名:カルボジライトV-02(日清紡ケミカル株式会社) 15質量部
希釈水 85質量部
【0044】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明により、ターポリン、帆布などの産業資材シートの断面からの雨水の浸透防止効果、及び防黴、防藻効果と、その耐久持続性に優れた産業資材シートの提供が可能となり、さらにこれらの産業資材シートを縫製してなるテント膜構造物における接合部断面からの雨水の浸透防止効果、及び防黴、防藻効果と、その耐久持続性にも優れたテント膜構造物の提供が可能となることで、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、日除けテントなどのテント膜構造物などにおいて、長期間美麗な外観の状態での使用が可能となる。