(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014397
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】歯科実習評価装置、歯科実習評価プログラム、及び歯科実習評価方法
(51)【国際特許分類】
G09B 23/28 20060101AFI20250123BHJP
G06Q 50/20 20120101ALI20250123BHJP
【FI】
G09B23/28
G06Q50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116915
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】397059652
【氏名又は名称】株式会社モリタ
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】辻本 範幸
(72)【発明者】
【氏名】村本 睦司
【テーマコード(参考)】
2C032
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2C032CA12
5L049CC34
5L050CC34
(57)【要約】
【課題】形成モデル40の窩洞形状を効率よく、かつ精度よく評価できる歯科実習評価装置1、評価プログラム37及び歯科実習評価方法を提供することを目的とする。
【解決手段】歯科実習評価装置1であって、未切削の歯牙を示す未切削モデル38、手本となる窩洞が形成された歯牙を示す手本モデル39、及び実習生によって窩洞が形成された歯牙を示す形成モデル40を取得する取得手段(口腔内スキャナ2及び制御部36)と、手本モデル39における未切削モデル38に重なり合う重合部分39bを削除して基準データ50を生成する基準データ生成手段(制御部36)と、形成モデル40における未切削モデル38に重なり合う重合部分40bを削除して評価対象データ60を生成する評価データ生成手段(制御部36)と、基準データ50に基づいて評価対象データ60を評価する評価手段(制御部36)とを備えたことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科実習における窩洞形状を評価する歯科実習評価装置であって、
未切削の歯牙を示す未切削モデル、手本となる窩洞が形成された歯牙を示す手本モデル、及び実習生によって窩洞が形成された歯牙を示す形成モデルを取得する取得手段と、
前記手本モデルにおける前記未切削モデルに重なり合う重合部分を削除して基準データを生成する基準データ生成手段と、
前記形成モデルにおける前記未切削モデルに重なり合う重合部分を削除して評価対象データを生成する評価データ生成手段と、
前記基準データに基づいて前記評価対象データを評価する評価手段とを備えた
歯科実習評価装置。
【請求項2】
前記基準データ生成手段及び前記評価データ生成手段は、
所定範囲で前記未切削モデルに重なり合う前記重合部分を削除する構成である
請求項1に記載の歯科実習評価装置。
【請求項3】
前記未切削モデル、前記手本モデル及び前記形成モデルが、ポリゴンメッシュの三次元モデルデータで構成され、
前記所定範囲は、メッシュ平面の重心を直線的に結ぶ線分の長さに基づいた範囲である
請求項2に記載の歯科実習評価装置。
【請求項4】
前記評価手段は、
前記基準データに対して切削が不足している切削不足部分と、前記基準データに対して過剰に切削した切削過剰部分とを前記評価対象データから抽出する構成であり、
前記評価手段によって抽出された前記切削不足部分及び前記切削過剰部分を前記形成モデル上に可視化して表示する出力手段を備えた
請求項1に記載の歯科実習評価装置。
【請求項5】
前記評価対象データの前記基準データに対して切削が不足している部分を切削不足部分とし、前記評価対象データの前記基準データに対して過剰に切削した部分を切削過剰部分として、
前記評価手段は、
前記基準データからの距離を所定間隔で区切った距離区分ごとに、前記切削不足部分が占める割合、及び前記切削過剰部分が占める割合を算出する構成であり、
前記切削不足部分が占める割合の分布、及び前記切削過剰部分が占める割合の分布を前記形成モデルとともに表示する表示手段を備えた
請求項1に記載の歯科実習評価装置。
【請求項6】
歯科実習における窩洞形状を評価する歯科実習評価プログラムであって、
未切削の歯牙を示す未切削モデル、手本となる窩洞が形成された歯牙を示す手本モデル、及び実習生によって窩洞が形成された歯牙を示す形成モデルを取得する取得ステップと、
前記手本モデルにおける前記未切削モデルに重なり合う重合部分を削除して基準データを生成する基準データ生成ステップと、
前記形成モデルにおける前記未切削モデルに重なり合う重合部分を削除して評価対象データを生成する評価データ生成ステップと、
前記基準データに基づいて前記評価対象データを評価する評価ステップとを実行する
歯科実習評価プログラム。
【請求項7】
歯科実習における窩洞形状を評価する歯科実習評価方法であって、
未切削の歯牙を示す未切削モデル、手本となる窩洞が形成された歯牙を示す手本モデル、及び実習生によって窩洞が形成された歯牙を示す形成モデルを取得手段が取得する取得工程と、
基準データ生成手段が前記手本モデルにおける前記未切削モデルに重なり合う重合部分を削除して基準データを生成する基準データ生成工程と、
評価データ生成手段が前記形成モデルにおける前記未切削モデルに重なり合う重合部分を削除して評価対象データを生成する評価データ生成工程と、
評価手段が前記基準データに基づいて前記評価対象データを評価する評価工程とを行う
歯科実習評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば大学等の歯科教程の歯科実習において、実習生によって形成された窩洞形状を評価するような歯科実習評価装置、歯科実習評価プログラム及び歯科実習評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大学等の歯科教程の歯科実習において、講師は、実習生が切削によって形成した歯牙模型の窩洞形状を目視によって評価して、実習生の切削技術に応じた技術指導を行っている。
この際、実習生によって形成された窩洞形状が講師の目視によって評価されることで、窩洞形状の評価にバラツキが生じる、あるいは評価の公平性に欠けるおそれがあった。
【0003】
そこで、実習生によって窩洞が形成された歯牙模型を三次元計測して得た三次元モデルデータを、手本となる窩洞が形成された歯牙模型の三次元モデルデータと比較して評価する様々な技術が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、実習生が切削した歯牙模型を三次元計測して得た形成モデルと、許容される形状の窩洞が形成された歯牙模型を三次元計測して得た手本モデル(最大許容形状データ及び最小許容形状データ)とを比較して、形成モデルを評価する歯科実習評価装置が開示されている。
【0005】
より詳しくは、特許文献1は、形成モデルにおける歯牙の輪郭が、手本モデルにおける歯牙の輪郭からはみ出しているか否かを判定し、手本モデルの輪郭からはみ出した部分を切削が不適切な部分として評価している。
【0006】
ところで、歯科実習で使用された歯牙模型は、窩洞形成部分を除いて、その殆どが切削されていない未切削部分である。このため、形成モデルを手本モデルと比較して評価する際、形成モデルの未切削部分も評価対象として含まれることになる。
【0007】
そうすると、例えば手本モデルに対する形成モデルの差分を点数化して総合点を算出する場合、総合点の算出に要する時間が長くなる、あるいは未切削部分の位置ズレも点数化されることで総合点にバラツキが生じるおそれがある。このため、形成モデルの窩洞形状を効率よく、かつ精度よく評価できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑み、形成モデルの窩洞形状を効率よく、かつ精度よく評価できる歯科実習評価装置、歯科実習評価プログラム及び歯科実習評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、歯科実習における窩洞形状を評価する歯科実習評価装置であって、未切削の歯牙を示す未切削モデル、手本となる窩洞が形成された歯牙を示す手本モデル、及び実習生によって窩洞が形成された歯牙を示す形成モデルを取得する取得手段と、前記手本モデルにおける前記未切削モデルに重なり合う重合部分を削除して基準データを生成する基準データ生成手段と、前記形成モデルにおける前記未切削モデルに重なり合う重合部分を削除して評価対象データを生成する評価データ生成手段と、前記基準データに基づいて前記評価対象データを評価する評価手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
またこの発明は、歯科実習における窩洞形状を評価する歯科実習評価プログラムであって、未切削の歯牙を示す未切削モデル、手本となる窩洞が形成された歯牙を示す手本モデル、及び実習生によって窩洞が形成された歯牙を示す形成モデルを取得する取得ステップと、前記手本モデルにおける前記未切削モデルに重なり合う重合部分を削除して基準データを生成する基準データ生成ステップと、前記形成モデルにおける前記未切削モデルに重なり合う重合部分を削除して評価対象データを生成する評価データ生成ステップと、前記基準データに基づいて前記評価対象データを評価する評価ステップとを実行することを特徴とする。
【0012】
またこの発明は、歯科実習における窩洞形状を評価する歯科実習評価方法であって、未切削の歯牙を示す未切削モデル、手本となる窩洞が形成された歯牙を示す手本モデル、及び実習生によって窩洞が形成された歯牙を示す形成モデルを取得手段が取得する取得工程と、基準データ生成手段が前記手本モデルにおける前記未切削モデルに重なり合う重合部分を削除して基準データを生成する基準データ生成工程と、評価データ生成手段が前記形成モデルにおける前記未切削モデルに重なり合う重合部分を削除して評価対象データを生成する評価データ生成工程と、評価手段が前記基準データに基づいて前記評価対象データを評価する評価工程とを行うことを特徴とする。
【0013】
上記未切削モデル、手本モデル及び形成モデルは、歯牙模型を三次元計測して得た三次元モデルデータ、あるいは仮想的な空間で歯科実習を行う際に用いる歯牙を示す三次元モデルデータなどのことをいう。
上記未切削モデル、手本モデル及び形成モデルを取得するとは、口腔内スキャナを用いて取得する、通信回線を介して取得する、記憶媒体を介して取得するなどのことをいう。
【0014】
この発明によれば、手本モデルにおける未切削モデルに重なり合う重合部分を削除し、形成モデルにおける未切削モデルに重なり合う重合部分を削除するため、手本モデル及び形成モデルからそれぞれ窩洞形成部分のみを抽出することができる。
【0015】
このため、基準データに基づいて評価対象データを評価する際、歯科実習評価装置は、形成モデルの窩洞形成部分のみを評価対象とすることができる。
これにより、歯科実習評価装置は、評価対象に未切削部分が含まれる場合に比べて、形成モデルの窩洞形状を効率よく、かつ精度よく評価することができる。
【0016】
この発明の態様として、前記基準データ生成手段及び前記評価データ生成手段は、所定範囲で前記未切削モデルに重なり合う前記重合部分を削除する構成であってもよい。
この構成によれば、手本モデル及び形成モデルに対する未切削モデルの位置ズレを所定範囲によって吸収することができる。
【0017】
これにより、歯科実習評価装置は、手本モデルの未切削部分及び形成モデルの未切削部分が窩洞形成部分として誤って抽出されることを防止できる。このため、歯科実習評価装置は、形成モデルを効率よく、かつ精度よく評価することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記未切削モデル、前記手本モデル及び前記形成モデルが、ポリゴンメッシュの三次元モデルデータで構成され、前記所定範囲は、メッシュ平面の重心を直線的に結ぶ線分の長さに基づいた範囲であってもよい。
【0019】
この構成によれば、手本モデル及び形成モデルの任意の位置を結ぶ線分の長さに基づいて重合部分を削除する場合に比べて、手本モデルの窩洞形成部分及び形成モデルの窩洞形成部分を効率よく、かつ精度よく抽出することができる。このため、歯科実習評価装置は、実習形成モデルをより精度よく評価することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記評価手段は、前記基準データに対して切削が不足している切削不足部分と、前記基準データに対して過剰に切削した切削過剰部分とを前記評価対象データから抽出する構成であり、前記評価手段によって抽出された前記切削不足部分及び前記切削過剰部分を前記形成モデル上に可視化して表示する出力手段を備えてもよい。
【0021】
この構成によれば、形成モデルにおける窩洞形状のどの部分が切削過剰なのか、あるいは切削不足なのかを可視化して講師及び実習生に提供することができる。
これにより、歯科実習評価装置は、手本となる窩洞形状との違いを実習生に認識させることができるため、講師による切削技術の指導を支援することができる。このため、歯科実習評価装置は、実習生の窩洞形成技術の向上を支援することができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記評価対象データの前記基準データに対して切削が不足している部分を切削不足部分とし、前記評価対象データの前記基準データに対して過剰に切削した部分を切削過剰部分として、前記評価手段は、前記基準データからの距離を所定間隔で区切った距離区分ごとに、前記切削不足部分が占める割合、及び前記切削過剰部分が占める割合を算出する構成であり、前記切削不足部分が占める割合の分布、及び前記切削過剰部分が占める割合の分布を前記形成モデルとともに表示する表示手段を備えてもよい。
【0023】
上記切削不足部分が占める割合とは、切削不足部分の総面積または評価対象データの総面積に対して距離区分内の切削不足部分の面積が占める割合、あるいは切削不足部分の点群総数または評価対象データの点群総数に対して距離区分内の切削不足部分の点群個数が占める割合などのことをいう。
【0024】
上記切削過剰部分が占める割合とは、切削過剰部分の総面積または評価対象データの総面積に対して距離区分内の切削過剰部分の面積が占める割合、あるいは切削過剰部分の点群総数または評価対象データの点群総数に対して距離区分内の切削過剰部分の点群個数が占める割合などのことをいう。
【0025】
この構成によれば、切削不足部分及び切削過剰部分の距離区分ごとの分布状態を可視化して、講師及び実習生に提供することができる。
これにより、歯科実習評価装置は、手本となる窩洞形状との違いを実習生に認識させることができるため、講師による切削技術の指導を支援することができる。このため、歯科実習評価装置は、実習生の窩洞形成技術の向上を支援することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、形成モデルの窩洞形状を効率よく、かつ精度よく評価できる歯科実習評価装置、歯科実習評価プログラム及び歯科実習評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】歯科実習評価装置の内部構成を示すブロック図。
【
図3】歯牙模型の三次元モデルデータを説明する説明図。
【
図4】評価プログラムを実行した際の処理動作を示すフローチャート。
【
図6】基準データの生成過程の概略を説明する説明図。
【
図7】基準データ生成処理の処理動作を示すフローチャート。
【
図8】手本モデルのメッシュ平面を削除する過程を説明する説明図。
【
図9】評価対象データの生成過程の概略を説明する説明図。
【
図10】評価対象データの解析過程を説明する説明図。
【
図11】第1評価結果画面の概略を説明する概略説明図。
【
図12】第2評価結果画面の概略を説明する概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態の歯科実習評価装置1は、歯科教程の歯科実習において、実習生によって形成された窩洞形状を評価する装置である。このような歯科実習評価装置1について、
図1から
図3を用いて説明する。
【0029】
なお、
図1は歯科実習評価装置1の構成図を示し、
図2は歯科実習評価装置1のブロック図を示し、
図3は歯牙模型の三次元モデルデータを説明する説明図を示している。
具体的には、
図3(a)は未切削モデル38の外観斜視図を示し、
図3(b)は手本モデル39の外観斜視図を示し、
図3(c)は形成モデル40の外観斜視図を示している。
【0030】
本実施形態の歯科実習評価装置1は、歯科実習を行う実習生または実習生を指導する講師が使用する端末であって、歯牙模型の歯牙形状を計測する機能と、実習生によって形成された窩洞形状を評価する機能と、評価結果を可視化して出力する機能とを有している。
【0031】
この歯科実習評価装置1は、
図1に示すように、歯牙模型Tの歯牙形状を計測するための口腔内スキャナ2と、口腔内スキャナ2が接続された装置本体3と、装置本体3に接続されたプリンタ4とを備えている。
【0032】
口腔内スキャナ2は、
図1に示すように、口腔内または歯牙模型Tが装着された顎模型における下顎UJや上顎(図示省略)の計測対象部位をスキャニングする機器であって、所定方向に延びる略円柱のペン型に形成されている。なお、口腔内スキャナ2は、周知の機器のため、本実施形態では簡単に説明する。
【0033】
具体的には、口腔内スキャナ2は、
図2に示すように、計測対象部位へ向けて照射光を発光する発光部21と、計測対象部位で反射した照射光の反射光を受光する受光部22と、照射光を照射する操作部23とを備えている。
【0034】
さらに、口腔内スキャナ2は、接続ケーブル(符号省略)が接続され、装置本体3との間で各種信号を入出力する入出力部24と、これらの動作を制御する計測制御部25などを備えている。
【0035】
また、装置本体3は、
図2に示すように、各種情報を表示する表示部31と、利用者の操作を受け付ける操作受付部32と、口腔内スキャナ2が接続されるスキャナ接続部33とを備えている。
さらに、装置本体3は、プリンタ4が接続されるプリンタ接続部34と、各種情報を記憶する記憶部35と、これらの動作を制御する制御部36とを備えている。
【0036】
より詳しくは、表示部31は、
図1に示すように、例えば液晶ディスプレイなどで構成され、制御部36からの制御信号により、各種情報を表示する機能を有している。
操作受付部32は、
図1に示すように、例えばキーボード32aやマウス32bなどで構成され、利用者による入力操作を受け付ける機能と、受け付けた入力内容を示す情報を制御部36に出力する機能とを有している。
【0037】
スキャナ接続部33は、例えばUSB(Universal Serial Bus)などで構成され、接続ケーブルを介して口腔内スキャナ2に接続する機能と、口腔内スキャナ2との間で各種情報の受送信を行う機能とを有している。
【0038】
プリンタ接続部34は、例えばUSB(Universal Serial Bus)などで構成され、接続ケーブルを介してプリンタ4に接続する機能と、プリンタ4との間で各種情報の受送信を行う機能とを有している。
【0039】
記憶部35は、ハードディスクあるいは不揮発性メモリなどで構成され、各種情報を書き込んで記憶する機能と、各種情報を読み出す機能とを有している。この記憶部35には、
図2に示すように、制御部36によって実行され、実習生によって形成された窩洞形状を評価する評価プログラム37が記憶されている。
【0040】
さらに、記憶部35には、
図2に示すように、歯牙模型を口腔内スキャナ2で三次元計測して得られた三次元モデルデータである未切削モデル38、手本モデル39及び形成モデル40と、形成モデル40の評価結果を示す評価結果情報41などが記憶されている。
なお、未切削モデル38及び手本モデル39は予め記憶部35に記憶され、形成モデル40は後述する評価プログラム37を実行することで取得している。
【0041】
ここで、未切削モデル38、手本モデル39及び形成モデル40は、歯牙模型Tの輪郭を示す外観形状データであって、歯牙模型Tの輪郭に沿って配置された複数の点群と、複数の点群のうち、隣接する3つの点を頂点とする三角形状のメッシュ平面とを有するポリゴンメッシュデータである。
【0042】
詳述すると、未切削モデル38は、
図3(a)に示すように、実習生及び講師によって切削されていない未切削の人工歯である歯牙模型Tを、口腔内スキャナ2で三次元計測して得られた三次元モデルデータである。
【0043】
また、手本モデル39は、
図3(b)に示すように、講師が手本となる窩洞を形成した人工歯である歯牙模型Tを、口腔内スキャナ2で三次元計測して得られた三次元モデルデータである。この手本モデル39には、講師によって形成された窩洞である窩洞形成部分39aが凹設されている。
【0044】
また、形成モデル40は、
図3(c)に示すように、実習生が窩洞を形成した人工歯である歯牙模型Tを、口腔内スキャナ2で三次元計測して得られた三次元モデルデータである。この形成モデル40には、実習生によって形成された窩洞である窩洞形成部分40aが凹設されている。
【0045】
なお、講師によって窩洞が形成された歯牙模型T、及び実習生によって窩洞が形成された歯牙模型Tは、未切削モデル38となる未切削の歯牙模型Tと同一の歯牙模型Tを切削したものとする。
【0046】
制御部36は、CPUやメモリなどのハードウェアと、制御プログラムなどのソフトウェアとで構成されている。
この制御部36は、口腔内スキャナ2との各種信号の授受に係る処理機能と、表示部31、操作受付部32、スキャナ接続部33、プリンタ接続部34及び記憶部35との各種信号の授受に係る処理機能と、所定のバスを介して接続された各部の動作を制御する機能とを有している。
【0047】
次に、上述した構成の歯科実習評価装置1において、評価プログラム37を実行した際の処理動作について、
図4から
図11を用いて説明する。
なお、
図4は評価プログラム37を実行した際の処理動作のフローチャートを示し、
図5はメニュー画面200の概略を説明する概略説明図を示し、
図6は基準データ50の生成過程の概略を説明する説明図を示している。
【0048】
具体的には、
図6(a)は未切削モデル38及び窩洞形成部分39aが形成された手本モデル39の外観斜視図を示し、
図6(b)は手本モデル39の窩洞形成部分39aを抽出して得た基準データ50の外観斜視図を示している。
【0049】
さらに、
図7は基準データ生成処理のフローチャートを示し、
図8は手本モデル39のメッシュ平面391を削除する過程を説明する説明図を示し、
図9は評価対象データ60の生成過程の概略を説明する説明図を示している。
【0050】
具体的には、
図9(a)は未切削モデル38及び窩洞形成部分40aが形成された形成モデル40の外観斜視図を示し、
図9(b)は形成モデル40の窩洞形成部分40aを抽出して得た評価対象データ60の外観斜視図を示している。
さらにまた、
図10は評価対象データ60の解析過程を説明する説明図を示している。
【0051】
具体的には、
図10(a)は重ね合わせた基準データ50及び評価対象データ60を上方から見た外観斜視図を示し、
図10(b)は重ね合わせた基準データ50及び評価対象データ60を下方から見た外観斜視図を示し、
図10(c)は
図10(a)中のA-A矢視断面図を示している。
加えて、
図11は第1評価結果画面210の概略を説明する概略説明図を示し、
図12は第2評価結果画面220の概略を説明する概略説明図を示している。
【0052】
まず、実習生は、口腔内スキャナ2を用いて未切削の歯牙模型Tを計測して、未切削モデル38を装置本体3の記憶部35に記憶させたのち、当該歯牙模型Tを用いて窩洞を形成する。
その後、実習生または講師の操作によって評価プログラム37が実行されると、装置本体3の制御部36は、
図4に示すように、各種操作を案内するメニュー画面200を表示部31に表示する(ステップS101)。
【0053】
例えばメニュー画面200には、
図5に示すように、「メニュー」というタイトル及び「操作を選択してください」という案内メッセージと、実習生によって窩洞が形成された歯牙模型Tを、口腔内スキャナ2を用いて計測開始するための三次元計測ボタン201とが表示されている。
【0054】
さらに、メニュー画面200には、形成モデル40の解析評価を開始するための解析評価実行ボタン202と、記憶部35に記憶した評価結果情報41を読み出して表示部31に表示するための読出しボタン203と、評価プログラム37を終了するための終了ボタン204とが表示されている。
【0055】
メニュー画面200を表示すると、制御部36は、
図4に示すように、メニュー画面200に表示した三次元計測ボタン201、解析評価実行ボタン202及び読出しボタン203のいずれが押下されたかを判定する(ステップS102)。
【0056】
歯牙模型Tのスキャニングを所望する講師または実習生によって三次元計測ボタン201が押下された場合(ステップS102:1)、制御部36は、歯牙模型Tのスキャニングを案内する計測案内画面(図示省略)を表示部31に表示する(ステップS103)。
【0057】
この際、講師または実習生は、計測案内画面に表示された案内にしたがって、実習生による窩洞が形成された歯牙模型Tを、口腔内スキャナ2を用いてスキャニングする。
計測案内画面を表示すると、制御部36は、
図4に示すように、歯牙模型Tのスキャニングが完了したか否かを判定する(ステップS104)。
歯牙模型Tのスキャニングが完了していない場合(ステップS104:No)、制御部36は、歯牙模型Tのスキャニングが完了するまで処理を待機する。
【0058】
一方、歯牙模型Tのスキャニングが完了した場合(ステップS104:Yes)、制御部36は、口腔内スキャナ2から取得した信号に基づいて、形成モデル40を生成する(ステップS105)。
その後、制御部36は、生成した形成モデル40を記憶部35に記憶したのち、処理をステップS101に戻す。
【0059】
また、
図4のステップS102において、解析評価実行ボタン202が押下された場合(ステップS102:2)、制御部36は、三次元モデルデータ(未切削モデル38、手本モデル39及び形成モデル40)を記憶部35から読み出す(ステップS106)。
【0060】
この際、制御部36は、未切削モデル38、手本モデル39及び形成モデル40をX軸、Y軸及びZ軸からなる同一三次元座標上に配置するとともに、手本モデル39の未切削部分及び形成モデル40の未切削部分が、未切削モデル38に重なり合うように位置合わせしたのち、それぞれの位置座標とともに一時記憶する。
【0061】
例えば、制御部36は、原点位置座標に予め登録した未切削歯を示す基準モデルに対して重ね合わせ誤差が最小となるように、未切削モデル38を重ね合わせて位置合わせする。同様に、制御部36は、基準モデルに対して未切削部分の重ね合わせ誤差が最小となるように手本モデル39及び形成モデル40をそれぞれ重ね合わせて位置合わせする。
【0062】
未切削モデル38、手本モデル39及び形成モデル40を読み出すと、制御部36は、手本モデル39における未切削モデル38に重なり合う重合部分39bを削除して基準データ50を生成する基準データ生成処理を開始する(ステップS107)。
【0063】
この際、制御部36は、
図6(a)に示すように、所定範囲で未切削モデル38に重なり合う手本モデル39の重合部分39b(図中の薄いグレー部分)、すなわち手本モデル39の未切削部分を削除して、手本モデル39の窩洞形成部分39aを抽出することで基準データ50(
図6(b)参照)を生成する。
【0064】
より詳しくは、基準データ生成処理を開始した制御部36は、
図7に示すように、未切削モデル38の全てのメッシュ平面381における重心G1(
図8参照)の位置座標と、手本モデル39の全てのメッシュ平面391における重心G2(
図8参照)の位置座標とを算出する(ステップS121)。
【0065】
具体的には、制御部36は、
図8に示すように、未切削モデル38を構成する点群のうち、三角形状のメッシュ平面381を形成する3つの点P1の位置座標に基づいて、メッシュ平面381における重心G1の位置を示す位置座標を算出する。
【0066】
さらに、制御部36は、
図8に示すように、手本モデル39を構成する点群のうち、三角形状のメッシュ平面391を形成する3つの点P2の位置座標に基づいて、メッシュ平面391における重心G2の位置を示す位置座標を算出する。
【0067】
その後、制御部36は、
図7に示すように、重心G1の位置座標と重心G2の位置座標とに基づいて、未切削モデル38の重心G1に対する三次元距離Lが最短となる手本モデル39のメッシュ平面391を検出する(ステップS122)。
【0068】
なお、三次元距離Lは、
図8に示すように、重心G1の位置座標と重心G2の位置座標とに基づいて算出される距離であって、未切削モデル38の重心G1と手本モデル39の重心G2とを直線的に結ぶ線分の長さとする。換言すると、三次元距離Lは、重心G1の位置座標に対する重心G2の位置座標のオフセット量である。
【0069】
具体的には、まず、制御部36は、未切削モデル38の1つの重心G1を抽出し、抽出した1つの重心G1から手本モデル39の全ての重心G2までの三次元距離Lを算出する。
【0070】
さらに、制御部36は、算出した全ての三次元距離Lのうち、重心G1からの三次元距離Lが最短となる重心G2を抽出し、当該重心G2が位置する手本モデル39のメッシュ平面391を検出対象として決定する。そして、制御部36は、決定したメッシュ平面391及び三次元距離Lを関連付けて一時記憶する。
【0071】
その後、制御部36は、三次元距離Lが所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS123)。なお、所定範囲内としては、例えば三次元距離Lが0.05mm以内、あるいは三次元距離Lが0.1mm以内とする。
【0072】
三次元距離Lが所定範囲内でない場合(ステップS123:No)、制御部36は、手本モデル39のメッシュ平面391を、手本モデル39の窩洞形成部分39aをなすメッシュ平面として、処理をステップS125に進める。
【0073】
一方、三次元距離Lが所定範囲内の場合(ステップS123:Yes)、制御部36は、三角形状の頂点をなす点P2を削除して、手本モデル39のメッシュ平面391を削除する(ステップS124)。
【0074】
その後、制御部36は、
図7に示すように、未切削モデル38における全てのメッシュ平面381に対して上述のステップS122からステップS124の処理が完了したか否かを判定する(ステップS125)。
【0075】
未切削モデル38における全てのメッシュ平面381に対する処理が完了していない場合(ステップS125:No)、制御部36は、処理をステップS122に戻して、全てのメッシュ平面381に対する処理が完了するまでステップS122からステップS125の処理を繰り返す。
【0076】
一方、未切削モデル38における全てのメッシュ平面381に対する処理が完了した場合(ステップS125:Yes)、手本モデル39における未切削モデル38に重なり合う重合部分39bが削除され、手本モデル39の窩洞形成部分39aが抽出された状態となる。
【0077】
そこで、制御部36は、抽出された手本モデル39の窩洞形成部分39aを基準データ50として記憶部35に記憶したのち(ステップS126)、基準データ生成処理を終了して処理を
図4のステップS108に進める。
【0078】
図4のステップS108に処理を進めると、制御部36は、形成モデル40における未切削モデル38に重なり合う重合部分40bを削除して評価対象データ60を生成する評価対象データ生成処理を開始する(ステップS108)。
【0079】
この際、制御部36は、
図9(a)に示すように、所定範囲で未切削モデル38に重なり合う形成モデル40の重合部分40b(図中の薄いグレー部分)、すなわち形成モデル40の未切削部分を削除して、形成モデル40の窩洞形成部分40aを抽出することで評価対象データ60(
図9(b)参照)を生成する。
【0080】
なお、評価対象データ生成処理は、手本モデル39にかえて形成モデル40を用いる点を除いて、上述の基準データ生成処理と同じ処理動作のため、ここでは
図7の基準データ生成処理の処理動作の流れを用いて説明する。
【0081】
より詳しくは、評価対象データ生成処理を開始した制御部36は、
図7のステップS121において、未切削モデル38のメッシュ平面381における重心G1の位置座標と、形成モデル40のメッシュ平面における重心の位置座標とを算出する。
なお、未切削モデル38における重心G1の位置座標は、上述のステップS107で算出した値を用いてもよい。
【0082】
さらに、
図7のステップS122において、制御部36は、未切削モデル38のメッシュ平面381における重心G1の位置座標と形成モデル40のメッシュ平面における重心の位置座標とに基づいて、未切削モデル38の重心G1に対する三次元距離Lが最短となる形成モデル40のメッシュ平面を検出する。
【0083】
その後、
図7のステップS123において、三次元距離Lが所定範囲内でない場合(ステップS123:No)、制御部36は、形成モデル40のメッシュ平面を、形成モデル40の窩洞形成部分40aをなすメッシュ平面として、処理をステップS125に進める。
【0084】
一方、三次元距離Lが所定範囲内の場合(ステップS123:Yes)、制御部36は、
図7のステップS124において、三角形状の頂点をなす点を削除して、形成モデル40のメッシュ平面を削除する
【0085】
そして、
図7のステップS125において、未切削モデル38における全てのメッシュ平面381に対する処理が完了していない場合(ステップS125:No)、制御部36は、処理をステップS122に戻して、全てのメッシュ平面381に対する処理が完了するまでステップS122からステップS125の処理を繰り返す。
【0086】
一方、未切削モデル38における全てのメッシュ平面381に対する処理が完了した場合(ステップS125:Yes)、形成モデル40における未切削モデル38に重なり合う重合部分40bが削除され、形成モデル40の窩洞形成部分40aが抽出された状態となる。
【0087】
そこで、制御部36は、
図7のステップS126において、抽出された形成モデル40の窩洞形成部分40aを評価対象データ60として記憶部35に記憶したのち、評価対象データ生成処理を終了して処理を
図4のステップS109に進める。
【0088】
図4のステップS109に処理を進めると、制御部36は、基準データ50に基づいて評価対象データ60を解析評価する解析評価処理を開始する(ステップS109)。
この際、制御部36は、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、基準データ50(図中の濃いグレーの部分)に評価対象データ60(図中の薄いグレーの部分)を重ね合わせた状態で、評価対象データ60の解析評価を行う。
【0089】
具体的には、制御部36は、上述の基準データ生成処理と同様に、基準データ50を構成する点群の位置座標と評価対象データ60を構成する点群の位置座標とに基づいて、基準データ50のメッシュ平面における重心の位置座標、及び評価対象データ60のメッシュ平面における重心の位置座標を算出する。
【0090】
さらに、制御部36は、基準データ50の重心の位置座標に対する評価対象データ60の重心の位置座標の差分を、基準データ50に対する窩洞形状オフセット量として算出する。
より詳しくは、制御部36は、基準データ50がなす窩洞形状の輪郭の内部へ向かう方向を正の方向とし、基準データ50の重心から評価対象データ60の重心までの三次元距離を大きさとして、基準データ50の重心から評価対象データ60の重心へ向かうベクトル量を窩洞形状オフセット量として算出する。
【0091】
この際、制御部36は、窩洞形状オフセット量が正の値となる領域を、講師によって形成された窩洞よりも過剰に切削された切削過剰部分60aとして識別する。
換言すると、制御部36は、評価対象データ60がなす窩洞形状の輪郭が、基準データ50がなす窩洞形状の輪郭の内部に位置する領域を切削過剰部分60aとして識別している。
【0092】
一方、制御部36は、窩洞形状オフセット量が負の値となる領域を、講師によって形成された窩洞よりも切削が不足している切削不足部分60bとして識別する。
換言すると、制御部36は、評価対象データ60がなす窩洞形状の輪郭が、基準データ50がなす窩洞形状の輪郭の外部に位置する領域を切削不足部分60bとして識別している。
【0093】
例えば、制御部36は、
図10(c)に示すように、破線で図示した基準データ50が示す窩洞形状に対して、実線で図示した評価対象データ60が示す窩洞形状がZ軸方向で下回っている部分を切削過剰部分60aとし、基準データ50が示す窩洞形状に対して評価対象データ60が示す窩洞形状がZ軸方向で上回っている部分を切削不足部分60bとして識別する。
【0094】
その後、制御部36は、評価対象データ60を構成する各メッシュ平面の面積に基づいて、切削過剰部分60aの総面積及び切削不足部分60bの総面積をそれぞれ算出する。
【0095】
さらに、制御部36は、基準データ50の重心からの三次元距離を所定間隔で区切った距離区分と、距離区分内に位置する評価対象データ60のメッシュ平面の面積とに基づいて、距離区分内の切削過剰部分60aの面積を示す区分面積を距離区分ごとに算出する。
【0096】
加えて、制御部36は、上述の距離区分と、距離区分内に位置する評価対象データ60のメッシュ平面の面積とに基づいて、距離区分内の切削不足部分60bの面積を示す区分面積を距離区分ごとに算出する。なお、距離区分は、予め設定登録されている。
【0097】
総面積及び区分面積を算出すると、制御部36は、切削過剰部分60aの総面積に対して切削過剰部分60aの区分面積が占める割合を切削過剰面積割合として距離区分ごとに算出する。
【0098】
さらに、制御部36は、切削不足部分60bの総面積に対して切削不足部分60bの区分面積が占める割合を切削不足面積割合として距離区分ごとに算出する。
そして、制御部36は、予め定めた切削過剰面積割合及び切削不足面積割合と点数との対応関係に基づいて、切削過剰部分60a及び切削不足部分60bをそれぞれ減点数で点数化する。
【0099】
そして、制御部36は、距離区分ごとの切削過剰面積割合及び切削不足面積割合と、切削過剰部分60aの減点数と、切削不足部分60bの減点数とを、評価対象データ60に関連づけた評価結果情報41を生成して記憶部35に記憶する。
【0100】
図4のステップS109の解析評価処理を終了すると、制御部36は、評価結果情報41に基づいて、形成モデル40の評価結果を提示する第1評価結果画面210を表示部31に表示する(ステップS110)。
【0101】
なお、
図4のステップS102において、読出しボタン203が押下された場合も(ステップS102:3)、制御部36は、記憶部35の評価結果情報41に基づいて第1評価結果画面210を表示部31に表示する。
【0102】
例えば第1評価結果画面210には、
図11に示すように、切削過剰部分60aを暖色とし切削不足部分60bを寒色として、窩洞形状オフセット量に対応する色を組み合わせたカラーマップ211と、切削過剰面積割合及び切削不足面積割合の分布を示す割合分布欄212とが画面左側に表示されている。
なお、詳細な図示を省略するが、第1評価結果画面210には、切削過剰部分60aの減点数及び切削不足部分60bの減点数も表示されている。
【0103】
さらに、第1評価結果画面210には、
図11に示すように、形成モデル40の窩洞形状を断面で表示するための断面表示ボタン213、第1評価結果画面210の表示内容を印刷するための印刷ボタン214、及び第1評価結果画面210を閉じてメニュー画面200に戻るための閉じるボタン215が、カラーマップ211の下方に表示されている。
【0104】
加えて、第1評価結果画面210には、窩洞形状オフセット量に対応するカラーマップ211の色で切削過剰部分60a及び切削不足部分60bが彩色された状態の形成モデル40が画面右側に表示されている。
つまり、形成モデル40は、切削過剰部分60aを示す領域及び切削不足部分60bを示す領域を重ね合わせるとともに、手本モデル39に対する窩洞形状オフセット量が色によって可視化された状態で第1評価結果画面210に表示されている。
【0105】
この第1評価結果画面210を表示した状態において、講師または実習生による操作によって断面表示ボタン213が押下されると、制御部36は、第1評価結果画面210にかえて第2評価結果画面220を表示部31に表示する。
【0106】
例えば第2評価結果画面220には、
図12に示すように、形成モデル40の断面位置をカーソルによって調整する調整欄221が画面左上に表示され、その下方に断面の方向を変更する断面変更ボタン222が表示されている。
【0107】
さらに、第2評価結果画面220には、第1評価結果画面210を表示するための三次元表示ボタン223、第2評価結果画面220の表示内容を印刷するための印刷ボタン224、及び第2評価結果画面220を閉じてメニュー画面200に戻るための閉じるボタン225が断面変更ボタン222の下方に表示されている。
【0108】
加えて、第2評価結果画面220には、調整欄221の断面位置における形成モデル40の断面形状(図中の太い実線)と、未切削モデル38の断面形状(図中の破線)と、手本モデル39の断面形状(図中の細い実線)とを重ね合わせて表示する断面表示欄226が画面右側に表示されている。
なお、断面表示欄226には、切削過剰部分60aと切削不足部分60bとがそれぞれ異なる色で塗潰されている。
【0109】
上述した第1評価結果画面210または第2評価結果画面220を表示部31に表示した状態において、第1評価結果画面210の閉じるボタン215または第2評価結果画面220の閉じるボタン225が押下されると、制御部36は、
図4に示すように、処理をステップS101に戻して、メニュー画面200を表示する。
そして、制御部36は、メニュー画面200の終了ボタン204が押下されるまで、ステップS101からステップS110の処理を繰り返す。
【0110】
このように、歯科実習評価装置1及び評価プログラム37、並びに歯科実習評価装置1を用いた歯科実習評価方法は、手本モデル39の窩洞形成部分39aである基準データ50と、形成モデル40の窩洞形成部分40aである評価対象データ60とに基づいて形成モデル40の窩洞形状を評価している。
【0111】
以上のように、歯科実習における窩洞形状を評価する本実施形態の歯科実習評価装置1は、未切削の歯牙を示す未切削モデル38、手本となる窩洞が形成された歯牙を示す手本モデル39、及び実習生によって窩洞が形成された歯牙を示す形成モデル40を取得する取得手段(口腔内スキャナ2及び制御部36)を備えている。
【0112】
さらに、歯科実習評価装置1は、手本モデル39における未切削モデル38に重なり合う重合部分39bを削除して基準データ50を生成する基準データ生成手段(制御部36)を備えている。
【0113】
そして、歯科実習評価装置1は、形成モデル40における未切削モデル38に重なり合う重合部分40bを削除して評価対象データ60を生成する評価データ生成手段(制御部36)と、基準データ50に基づいて評価対象データ60を評価する評価手段(制御部36)とを備えている。
【0114】
また、本実施形態の評価プログラム37は、未切削の歯牙を示す未切削モデル38、手本となる窩洞が形成された歯牙を示す手本モデル39、及び実習生によって窩洞が形成された歯牙を示す形成モデル40を取得する取得ステップ(ステップS106)を実行するものである。
【0115】
さらに、評価プログラム37は、手本モデル39における未切削モデル38に重なり合う重合部分39bを削除して基準データ50を生成する基準データ生成ステップ(ステップS107)を実行するものである。
【0116】
そして、評価プログラム37は、形成モデル40における未切削モデル38に重なり合う重合部分40bを削除して評価対象データ60を生成する評価データ生成ステップ(ステップS108)と、基準データ50に基づいて評価対象データ60を評価する評価ステップ(ステップS109)とを実行するものである。
【0117】
また、本実施形態の歯科実習評価方法は、未切削の歯牙を示す未切削モデル38、手本となる窩洞が形成された歯牙を示す手本モデル39、及び実習生によって窩洞が形成された歯牙を示す形成モデル40を取得手段が取得する取得工程(ステップS106)を行うものである。
【0118】
さらに、歯科実習評価方法は、基準データ生成手段が手本モデル39における未切削モデル38に重なり合う重合部分39bを削除して基準データ50を生成する基準データ生成工程(ステップS107)を行うものである。
【0119】
そして、歯科実習評価方法は、評価データ生成手段が形成モデル40における未切削モデル38に重なり合う重合部分40bを削除して評価対象データ60を生成する評価データ生成工程(ステップS108)と、評価手段が基準データ50に基づいて評価対象データ60を評価する評価工程(ステップS109)とを行うものである。
【0120】
この構成によれば、手本モデル39における未切削モデル38に重なり合う重合部分39bを削除し、形成モデル40における未切削モデル38に重なり合う重合部分40bを削除するため、手本モデル39及び形成モデル40からそれぞれ窩洞形成部分39a,40aのみを抽出することができる。
【0121】
このため、基準データ50に基づいて評価対象データ60を評価する際、歯科実習評価装置1は、形成モデル40の窩洞形成部分40aのみを評価対象とすることができる。
これにより、歯科実習評価装置1は、評価対象に未切削部分(重合部分40b)が含まれる場合に比べて、形成モデル40の窩洞形状を効率よく、かつ精度よく評価することができる。
【0122】
また、基準データ生成手段(制御部36)及び評価データ生成手段(制御部36)が、所定範囲で未切削モデル38に重なり合う重合部分39b,40bを削除するため、歯科実習評価装置1は、手本モデル39及び形成モデル40に対する未切削モデル38の位置ズレを所定範囲によって吸収することができる。
【0123】
これにより、歯科実習評価装置は、手本モデル39の未切削部分及び形成モデル40の未切削部分が窩洞形成部分39a,40aとして誤って抽出されることを防止できる。このため、歯科実習評価装置1は、形成モデル40を効率よく、かつ精度よく評価することができる。
【0124】
また、未切削モデル38、手本モデル39及び形成モデル40が、ポリゴンメッシュの三次元モデルデータで構成されている。そして、所定範囲は、メッシュ平面の重心G1,G2を直線的に結ぶ線分の長さ(三次元距離L)に基づいた範囲である。
【0125】
この構成によれば、手本モデル39及び形成モデル40の任意の位置を結ぶ線分の長さに基づいて重合部分39b,40bを削除する場合に比べて、手本モデル39の窩洞形成部分39a及び形成モデル40の窩洞形成部分40aを効率よく、かつ精度よく抽出することができる。このため、歯科実習評価装置1は、形成モデル40をより精度よく評価することができる。
【0126】
また、評価手段(制御部36)は、基準データ50に対して切削が不足している切削不足部分60bと、基準データ50に対して過剰に切削した切削過剰部分60aとを評価対象データ60から抽出する構成である。
【0127】
そして、歯科実習評価装置1は、評価手段によって抽出された切削不足部分60b及び切削過剰部分60aを形成モデル40上に可視化して表示する出力手段(表示部31)を備えている。
【0128】
この構成によれば、形成モデル40における窩洞形状のどの部分が切削過剰なのか、あるいは切削不足なのかを可視化して講師及び実習生に提供することができる。
これにより、歯科実習評価装置1は、手本となる窩洞形状との違いを実習生に認識させることができるため、講師による切削技術の指導を支援することができる。このため、歯科実習評価装置1は、実習生の窩洞形成技術の向上を支援することができる。
【0129】
また、評価手段(制御部36)は、基準データ50の重心からの距離を所定間隔で区切った距離区分ごとに、切削不足部分60bの区分面積が占める割合、及び切削過剰部分60aの区分面積が占める割合を算出する構成である。
【0130】
そして、歯科実習評価装置1は、切削不足部分60bの区分面積が占める割合の分布、及び切削過剰部分60aの区分面積が占める割合の分布を形成モデル40とともに表示する表示手段(表示部31)を備えている。
【0131】
この構成によれば、切削不足部分60b及び切削過剰部分60aの距離区分ごとの分布状態を可視化して、講師及び実習生に提供することができる。
これにより、歯科実習評価装置1は、手本となる窩洞形状との違いを実習生に認識させることができるため、講師による切削技術の指導を支援することができる。このため、歯科実習評価装置1は、実習生の窩洞形成技術の向上を支援することができる。
【0132】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の取得手段は、実施形態の口腔内スキャナ2及び制御部36に対応し、
以下同様に、
基準データ生成手段、評価データ生成手段及び評価手段は、制御部36に対応し、
出力手段は、表示部31に対応し、
メッシュ平面の重心を直線的に結ぶ線分の長さは、三次元距離Lに対応し、
歯科実習評価プログラムは、評価プログラム37に対応し、
取得ステップ及び取得工程は、ステップS106に対応し、
基準データ生成ステップ及び基準データ生成工程は、ステップS107に対応し、
評価データ生成ステップ及び評価データ生成工程は、ステップS108に対応し、
評価ステップ及び評価工程は、ステップS109に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0133】
具体的には、上述した実施形態において、接続ケーブル(符号省略)を介して装置本体3に接続された口腔内スキャナ2としたが、これに限定せず、無線を介して装置本体3に接続された口腔内スキャナであってもよい。
また、未切削モデル38、手本モデル39及び形成モデル40を取得するタイミングは、上述した実施形態に限定せず、形成モデル40を評価可能なタイミングであれば、適宜のタイミングであってもよい。
【0134】
また、未切削モデル38、手本モデル39及び形成モデル40を、口腔内スキャナ2を用いて歯牙模型Tを計測して取得した三次元モデルデータとしたが、これに限定せず、装置本体3に接続された口腔内スキャナ2とは別の口腔内スキャナや固定式のスキャナを用いて取得した三次元モデルデータ、あるいは仮想的な空間で歯科実習を行う際に用いる歯牙を示す三次元モデルデータであってもよい。
なお、仮想的な空間で歯科実習を行う際に用いる三次元モデルデータの場合、手本モデル39の窩洞形成部分39a及び形成モデル40の窩洞形成部分40aは、仮想的な空間で形成された窩洞とする。
【0135】
また、未切削モデル38、手本モデル39及び形成モデル40を歯科実習評価装置1の記憶部35に記憶したが、これに限定せず、通信回線を介して接続されたサーバーや外部記憶装置に記憶してもよい。
【0136】
また、評価プログラム37の処理動作、基準データ生成処理の処理動作、及び評価対象データ生成処理の処理動作は一例であって、未切削モデル38に重なり合う重合部分39b,40bを削除して窩洞形成部分39a,40aを抽出するとともに、抽出した窩洞形成部分39a,40aに基づいて形成モデル40を評価する構成であれば、上述した実施形態に限定しない。
【0137】
また、上述した実施形態におけるメニュー画面200、第1評価結果画面210及び第2評価結果画面220は一例であって、これに限定しない。例えばメニュー画面200において、実習生の氏名や学籍番号を入力可能にしてもよい。
【0138】
また、
図7のステップS122において、未切削モデル38の重心G1に対する三次元距離Lが最短となる手本モデル39のメッシュ平面391を検出するために、未切削モデル38の1つの重心G1から手本モデル39の全ての重心G2までの三次元距離Lを算出したが、これに限定しない。
【0139】
同様に、未切削モデル38の重心G1に対する三次元距離Lが最短となる形成モデル40のメッシュ平面を検出するために、未切削モデル38の1つの重心G1から形成モデル40の全ての重心までの三次元距離を算出したが、これに限定しない。
【0140】
例えば未切削モデル38の1つのメッシュ平面381に対向する手本モデル39の1つ以上のメッシュ平面391を抽出し、抽出したメッシュ平面391の重心G2までの三次元距離Lを算出する。そして、算出した三次元距離Lのうち、三次元距離Lが最短となる手本モデル39のメッシュ平面391を検出対象として抽出してもよい。
【0141】
あるいは、未切削モデル38の1つのメッシュ平面381の重心G1を通る法線方向に沿った仮想直線を設定し、仮想直線に交差する手本モデル39の1つのメッシュ平面391を、三次元距離Lが最短となるメッシュ平面391としてもよい。
【0142】
また、
図4のステップS109において、基準データ50のメッシュ平面における重心の位置座標、及び評価対象データ60のメッシュ平面における重心の位置座標を算出したが、これに限定しない。
【0143】
例えば
図4のステップS107の基準データ生成処理において、基準データ50を生成する際にメッシュ平面の重心の位置座標を記憶し、
図4のステップS108の評価対象データ生成処理において、評価対象データ60を生成する際にメッシュ平面の重心の位置座標を記憶する。
そして、
図4のステップS109において、記憶した基準データ50の重心の位置座標、及び評価対象データ60の重心の位置座標を読み出して、以降の処理を行ってもよい。
【0144】
また、
図4のステップS109において、切削過剰部分60aの総面積に対して切削過剰部分60aの区分面積が占める割合を算出したが、これに限定せず、距離区分内の切削過剰部分60aが占める割合は適宜の割合であってもよい。
【0145】
例えば評価対象データ60の総面積に対して切削過剰部分60aの区分面積が占める割合であってもよい。あるいは切削過剰部分60aの点群総数または評価対象データ60の点群総数に対する距離区分内の切削過剰部分60aの点群個数が占める割合であってもよい。
【0146】
同様に、切削不足部分60bの総面積に対して切削不足部分60bの区分面積が占める割合を算出したが、これに限定せず、評価対象データ60の総面積に対して切削不足部分60bの区分面積が占める割合であってもよい。
あるいは、切削不足部分60bの点群総数または評価対象データ60の点群総数に対する距離区分内の切削不足部分60bの点群個数が占める割合であってもよい。
【0147】
また、
図4のステップS109において、予め定めた切削過剰面積割合及び切削不足面積割合と点数との対応関係に基づいて、切削過剰部分60a及び切削不足部分60bをそれぞれ点数化したが、これに限定せず、例えば切削過剰部分60aの窩洞形状オフセット量、及び切削不足部分60bの窩洞形状オフセット量をそれぞれ点数化してもよい。
【符号の説明】
【0148】
1…歯科実習評価装置
2…口腔内スキャナ
31…表示部
36…制御部
37…評価プログラム
38…未切削モデル
39…手本モデル
39b…重合部分
40…形成モデル
40b…重合部分
50…基準データ
60…評価対象データ
60a…切削過剰部分
60b…切削不足部分
381…メッシュ平面
391…メッシュ平面
G1…重心
G2…重心
L…三次元距離