(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025144135
(43)【公開日】2025-10-02
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理方法及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 71/40 20230101AFI20250925BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20250925BHJP
B05C 9/12 20060101ALI20250925BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20250925BHJP
B05C 15/00 20060101ALI20250925BHJP
【FI】
H10K71/40
H10K50/10
B05C9/12
B05C11/10
B05C15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043759
(22)【出願日】2024-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 繁紀
【テーマコード(参考)】
3K107
4F042
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107FF17
3K107GG06
3K107GG26
3K107GG28
3K107GG35
4F042AA02
4F042AA06
4F042AB00
4F042BA06
4F042BA19
4F042DB17
4F042DC00
4F042DE01
4F042DE03
4F042DE06
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】 有機溶媒が基板に再付着するのを防止し、より高品質な有機電子材料を得るために有利な技術を提供すること。
【解決手段】基板に塗布された膜を乾燥させる基板処理装置は、チャンバの内部を第1の圧力に減圧することが可能な第1の減圧部と、チャンバの内部を前記第1の圧力よりも低い圧力に減圧することが可能な第2の減圧部と、膜の溶媒の脱離を促進するガスを、第1の圧力よりも低い第2の圧力に減圧されたチャンバに供給する脱離促進部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に塗布された膜を乾燥させる基板処理装置であって、
チャンバの内部を第1の圧力に減圧することが可能な第1の減圧部と、
前記チャンバの内部を前記第1の圧力よりも低い圧力に減圧することが可能な第2の減圧部と、
前記膜の溶媒の脱離を促進するガスを、前記第1の圧力よりも低い第2の圧力に減圧された前記チャンバに供給する脱離促進部と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記チャンバの内部の圧力を測定する測定部により測定された前記圧力に基づいて、前記第1の減圧部と、前記第2の減圧部と、前記脱離促進部とを制御する制御部を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2の減圧部による減圧を停止させた状態で、前記第1の減圧部と、前記脱離促進部とを動作させて、前記チャンバに前記ガスを供給することを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の減圧部と、前記脱離促進部とを停止させた状態で、前記第2の減圧部を動作させて前記チャンバの内部を減圧することを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、第1の脱離処理として、
前記第2の圧力に減圧された状態で、前記第2の減圧部による減圧を停止させ、
前記第1の減圧部と前記脱離促進部とを動作させて、前記チャンバに前記ガスを供給することを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1の脱離処理の後の第2の脱離処理として、
前記チャンバの内部が、前記チャンバの外部圧力より低く、かつ、前記第1の圧力よりも高い第3の圧力に到達まで、前記第1の減圧部と前記脱離促進部とを動作させて、前記チャンバに前記ガスを供給する
ことを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2の脱離処理の後の第3の脱離処理として、
前記第3の圧力に到達した後に、前記第1の減圧部による減圧と前記脱離促進部の動作とを停止させ、
前記第2の減圧部を動作させて、前記チャンバの内部を、前記第2の圧力よりも低い第4の圧力に減圧することを特徴とする請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記ガスの供給開始から予め定められた時間内に、前記第4の圧力よりも低い目標圧力まで減圧されていない場合、
前記第1の脱離処理、前記第2の脱離処理、及び前記第3の脱離処理の繰り返し処理を行うように、前記第1の減圧部と、前記第2の減圧部と、前記脱離促進部とを制御することを特徴とする請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記脱離促進部は、
前記溶媒の脱離を促進する前記ガスを供給する供給部と、
前記供給部から供給された前記ガスに含まれる不純物を除去し、前記不純物の濃度が低減された純化ガスを出力する純化部と、を有し、
前記制御部は、前記脱離促進部を制御して、前記純化ガスを前記チャンバに供給することを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記脱離促進部は、
前記溶媒の脱離を促進するガスを供給する供給部と、
前記供給部から供給されたガスを加熱することにより、前記ガスから不純物を揮発させて、前記不純物の濃度が低減された加熱ガスを出力する加熱部と、を有し、
前記制御部は、前記脱離促進部を制御して、前記加熱ガスを前記チャンバに供給することを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記脱離促進部は、
前記溶媒の脱離を促進するガスを供給する供給部と、
前記供給部から供給されたガスに含まれる不純物を除去し、前記不純物の濃度が低減された純化ガスを出力する純化部と、
前記純化ガスを加熱することにより、当該純化ガスに含まれる不純物を揮発させて、前記純化ガスに比べて前記不純物の濃度が更に低減された加熱ガスを出力する加熱部と、を有し、
前記制御部は、前記脱離促進部を制御して、前記加熱ガスを前記チャンバに供給することを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記脱離促進部は、
前記溶媒の脱離を促進するガスを供給する供給部と、
前記供給部から供給されたガスに含まれる不純物を除去し、前記不純物の濃度が低減された純化ガスを出力する純化部と、
前記純化ガスを加熱することにより、当該純化ガスに含まれる不純物を揮発させて、前記純化ガスに比べて前記不純物の濃度が更に低減された加熱ガスを出力する加熱部と、
前記加熱ガスを前記チャンバに供給する加熱ガス供給配管と、
前記加熱部を迂回して前記純化ガスを前記チャンバに供給する純化ガス供給配管と、
前記制御部の制御に基づいて、前記加熱ガス供給配管または前記純化ガス供給配管を切替える切替部と、
を有することを特徴とする請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記繰り返し処理を行わない場合における前記ガスの供給では、前記切替部を制御して、前記純化ガス供給配管から前記純化ガスを前記チャンバに供給することを特徴とする請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記繰り返し処理を行う場合における前記ガスの供給では、前記切替部を制御して、前記加熱ガス供給配管から前記加熱ガスを前記チャンバに供給することを特徴とする請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記供給部により供給される前記ガスには、不活性ガス、酸素、またはオゾンが含まれることを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項16】
基板に塗布された膜を乾燥させる基板処理装置の基板処理方法であって、
第1の減圧部により、チャンバの内部を第1の圧力に減圧することが可能な第1の減圧工程と、
第2の減圧部により、前記チャンバの内部を前記第1の圧力よりも低い圧力に減圧する第2の減圧工程と、
脱離促進部が、前記膜の溶媒の脱離を促進するガスを、前記第1の圧力よりも低い第2の圧力に減圧された前記チャンバに供給する脱離促進工程と、
を有することを特徴とする基板処理方法。
【請求項17】
請求項1乃至15のいずれか1項に記載の基板処理装置を用いて、基板に塗布された膜を乾燥させる工程を有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、固体状の有機電子材料を得るために、液体状の材料が塗布された基板を減圧状態で乾燥する基板処理装置、基板処理方法及び基板処理装置を用いた物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL(Electroluminescence)と呼ばれる電子材料の発光を利用した有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)は、応答速度・視野角・コントラスト比の面での液晶に対する優位性からディスプレイ等に用いられている。
【0003】
有機発光ダイオードは、陽極と陰極の間に複数種の有機EL層を積層した構造を有しており、例えば陽極側から順に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層が積層される。これらの有機EL層の形成方法として近年、有機EL材料を有機溶媒に溶かしたインクを用い、インクジェットによる印刷でマスクを用いずに画素パターンを直接描くといった方法が用いられる。この手法に依れば、基板全域に吐出する蒸着法に比べて、大幅に有機EL材料の使用量を抑えることができ、製品の低コスト化に寄与することができる。
【0004】
インクジェット方式により塗布されたインク中には多量の有機溶媒が含まれているため、真空チャンバを用い、有機溶媒を減圧状態で乾燥除去する処理が用いられている。
【0005】
この乾燥工程においては、膜中に未乾燥の有機溶媒が残留、又は雰囲気中に滞留した溶媒が再付着すると、次に塗布される層の形成に影響を及ぼす懸念が有るため、高真空状態として、例えば、1×10-4Paまで真空チャンバを減圧し、可能な限り膜中から有機溶媒を除去するとともに、有機溶媒を真空チャンバに滞留しない状態とすることが望ましい。
【0006】
特許文献1には、ターボ分子ポンプ等が接続され高真空にまで排気が可能な高真空ラインと、ドライポンプ等が接続され低真空で排気可能な粗引きラインと、が別々に真空チャンバに接続されている真空装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1により開示されるような真空チャンバを用いて真空乾燥を行う場合でも、高真空ラインを用いて高真空に減圧する際には、真空チャンバの壁面や真空チャンバ内の雰囲気には有機溶媒が僅かに残留しており、基板を処理しない場合の真空度に比べて真空チャンバの真空度が低下する場合が生じ得る。すなわち、次に塗布される有機EL層にも、真空チャンバ内に残留した有機溶媒の雰囲気が再付着することとなり、充分な乾燥を行うことができず、品質に影響を及ぼす懸念が生じ得る。
【0009】
開示の技術は、上記の課題に基づいてなされたもので、有機溶媒が基板に再付着するのを防止し、より高品質な有機電子材料を得るために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示の技術の一態様による基板処理装置は、基板に塗布された膜を乾燥させる基板処理装置であって、
チャンバの内部を第1の圧力に減圧することが可能な第1の減圧部と、
前記チャンバの内部を前記第1の圧力よりも低い圧力に減圧することが可能な第2の減圧部と、
前記膜の溶媒の脱離を促進するガスを、前記第1の圧力よりも低い第2の圧力に減圧された前記チャンバに供給する脱離促進部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
開示の技術によれば、有機溶媒が基板に再付着するのを防止し、より高品質な有機電子材料を得るために有利な技術を提供することができる。
【0012】
真空チャンバに残留する有機溶媒を減らすことにより、基板の乾燥処理を繰り返し行っても真空度の低下を防ぐことができるため、複数の基板を乾燥処理する際に、基板間のバラつきを改善することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る基板処理装置の構成例を説明する図。
【
図2】実施形態の基板処理装置における基板処理方法の流れを示す図。
【
図3】
図2の基板処理方法における圧力制御の推移の一例を示す図。
【
図4】ガス加熱部を有する基板処理装置の構成例を説明する図。
【
図5】実施形態に係る基板処理装置の変形例1を説明する図。
【
図6】実施形態に係る基板処理装置の構成例2を説明する図。
【
図7】変形例2の基板処理装置における基板処理方法の流れを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0015】
図1は、本実施形態の基板処理装置の構成を示す模式的な断面図である。基板処理装置SPAは、膜が塗布された基板2(以下、ワークともいう)の処理を行うように構成されうる。より詳しくは、基板処理装置SPAは、基板2に塗布された膜を乾燥させる乾燥処理を行うように構成されうる。
【0016】
基板2に塗布された膜は、例えば、有機電子材料(有機EL素子)の有機膜を形成するための溶質と溶媒とを含む溶液で構成される膜でありうる。溶媒は、大気圧よりも低い減圧環境において蒸発が促進される性質を有しうる。有機膜は、例えば、有機EL素子の正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層のいずれかでありうる。有機EL素子の製造は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等の各有機膜を基板の上に形成する工程を含みうる。膜は、基板2が基板処理装置SPAに搬送される前に、基板2上に膜を塗布する塗布装置により塗布されうる。
【0017】
基板処理装置SPAは、チャンバ1を備えうる。チャンバ1は、外部空間から分離された内部空間SP1を規定する部材である。チャンバ1は、内部空間SP1を囲包する部材である。以下では、チャンバ1によって外縁が規定された内部空間SP1をチャンバ1の内部空間SP1ともいう。本実施形態において、基板2が配置されている側の空間を「内部」と表現し、基板2が配置されていない側の空間を「外部」と表現する。
【0018】
チャンバ10は、ゲートバルブ12を備えうる。乾燥処理を施すべき基板2は、ゲートバルブ12を通して外部空間から内部空間SP1に搬送されうる。ゲートバルブ12を経由して内部空間SP1に搬入された基板2は、内部空間SP1に配置されている基板保持部11(ステージ)に載置される。基板保持部11は、内部空間SP1に搬入された基板2を保持する基板保持部として機能する。また、乾燥処理を経た基板2は、ゲートバルブ12を通して内部空間SP1から外部空間に搬送されうる。
【0019】
基板処理装置SPAは、チャンバ10の内部空間SP1を減圧する減圧部を更に備えうる。減圧部は、例えば、基板2上に塗布された膜(有機EL素子の有機膜)から溶媒を排気し、除去するために、排気管15を通じてドライポンプ4に接続された真空バルブ3と、真空バルブ3とは独立して、ターボ分子ポンプ(TMP)6に接続された丸型ゲートバルブ5と、を有する。以下の明細書の説明において、真空バルブ3、及びドライポンプ4を第1の減圧部(3、4)ともいい、丸型ゲートバルブ5、及びターボ分子ポンプ(TMP)6を第2の減圧部(5、6)ともいう。また、第1の減圧部(3、4)、及び第2の減圧部(5、6)を総称して、減圧部(3~6)ともいう。
【0020】
第1の減圧部(3、4)に用いる真空バルブ3としては、例えば、ベローズバルブ、ダイアフラムバルブなどといった真空排気ラインの開閉機構を用いることができる。また、塗布工程は通常大気圧にて行われるため、第1の減圧部(3、4)に用いるポンプとしては、例えば、大気圧からの減圧が可能なルーツポンプ、ダイアフラムポンプ、スクリューポンプなどの排気機構を用いてもよい。
【0021】
また、第2の減圧部(5、6)に用いるバルブとしては、高真空でのコンダクタンスを確保するため、開口が広い丸型ゲートバルブ等を適用することができ、第2の減圧部(5、6)に用いるポンプとしては、例えば、チャンバ1の内部空間SP1を、高真空状態の1×10-4Pa以下に減圧することが可能なポンプとして、例えば、クライオポンプ、チタンサブリメーションポンプ等を適用することもできる。
【0022】
基板処理装置SPAは、チャンバ10の内部空間SP1の圧力を計測する圧力計測部13(圧力計)を更に備えうる。圧力計測部13は、外部空間の大気圧からチャンバ10の内部空間SP1における高真空度の圧力を計測可能である。圧力計測部13は、内部空間SP1の圧力を計測し、計測結果を示す電気信号を制御部8に出力する。
【0023】
また、基板処理装置SPAは、チャンバ1の壁面等に付着した有機溶媒や、チャンバ1の内部空間SP1に残留している有機溶媒を脱離するための脱離促進部7を更に備え得る。脱離促進部7は、ガス供給部71と、純化部72と、バルブ73とを有する。脱離促進部7の各構成は配管75により接続されている。ガス供給部71は、有機溶媒の脱離を促進するガスを貯留する不図示のボンベと、ガスの供給流量や供給圧力を制御することが可能な不図示のマスフローコントローラとを有する。マスフローコントローラは、後述する制御部8の制御指令に基づいて、供給流量や供給圧力を制御したガスを供給する。本実施形態において、有機溶媒の脱離を促進するガスは、凝集してチャンバ1の壁面への付着に繋がらない、水分や有機溶剤の濃度が低いガスであればよく、例えば、窒素(N2)などの不活性ガスのほかに、酸素(O2)や、酸化能力を有するオゾン(O3)などを適用することが可能である。本実施形態では、有機溶媒の脱離を促進するこれらのガスを総称して単に「ガス」という。
【0024】
純化部72は、ガス供給部71から供給されたガスから、水分(H2O)、酸素(O2)、炭化水素などの不純物を除去し、不純物を除去したガスを通過させる。純化部72を通過することにより、ガスに含まれる不純物の濃度が低減され、ガスの純度を高くすることができる。純化部72により不純物の濃度が低減されたガスを、本実施形態では、超高純度のガス(純化ガス)ともいう。バルブ73は、純化部72によって不純物濃度が低減されたガス(純化ガス)を、チャンバ1の内部空間SP1に導入するためのバルブである。バルブ73の開閉は制御部8により制御され、バルブ73が開くことにより、純化部72によって不純物の濃度が低減されたガスが、チャンバ1の内部空間SP1に導入される。
【0025】
本実施形態では、ガス供給部71から供給されたガスから不純物を除去する構成として、純化部72を用いる構成を例示的に説明したが、この例に限られず、純化部72に替えて、ガスを加熱可能なガス加熱部74(ガスヒーター)を適用することも可能である。
図4は、
図1の脱離促進部7の構成のうち、純化部72に替えて、ガス加熱部74(ガスヒーター)を配置した構成例を示す図であり、ガス加熱部74は、ガス供給部71から供給されたガスを加熱することにより、ガスから不純物を揮発させ、純度の高いガス(加熱ガス)を出力する。制御部8により制御され、バルブ73が開くことにより、ガス加熱部74による加熱により不純物を揮発させて、不純物の濃度が低減された加熱ガスが、チャンバ1の内部空間SP1に導入される。
【0026】
制御部8は、1つまたは複数のプロセッサーとメモリを有し、プロセッサーがメモリに格納されたプログラムを実行して基板処理装置SPAにおける各種の処理を制御する。制御部8による各処理は、専用のハードウエアにより実現されてもよいし、ハードウエアとソフトウエアの協働により実現されてもよい。
【0027】
制御部8は基板処理装置SPAの各種構成を制御する。例えば、制御部8は、圧力計測部13によって計測された内部空間SP1の圧力に基づいて減圧部(3~6)や脱離促進部7を制御することが可能である。制御部8は、圧力計測部13によって計測された内部空間SP1の圧力に基づいて、第1の減圧部(3、4)と、第2の減圧部(5、6)と、脱離促進部7とを制御して、チャンバ10内の圧力を目標とする所定の圧力に調整してもよい。制御部8は、第2の減圧部(5、6)による減圧を停止させた状態(丸型ゲートバルブ5を閉じた状態)で、第1の減圧部(3、4)と、脱離促進部7とを動作させて、チャンバ1にガスを供給してもよい。
【0028】
あるいは、制御部8は、第1の減圧部(3、4)による減圧を停止させた状態(真空バルブ3を閉じた状態)にして、更に脱離促進部7の動作を停止させた状態で、第2の減圧部(5、6)を動作させてチャンバ1の内部を減圧してもよい。
【0029】
あるいは、制御部8は、圧力計測部13によって計測された内部空間SP1の圧力に基づいて、脱離促進部7(ガス供給部71、純化部72やガス加熱部74及びバルブ73)の動作を制御して、内部空間SP1に残留している有機溶媒を脱離するためのガスの供給を制御することも可能である。
【0030】
基板処理装置SPAにより高品質な乾燥を行うためには、真空バルブ3を開き、ドライポンプ4の動作により、真空チャンバ1の内部空間SP1や基板2から、有機溶媒の大半を取り除いた後、有機溶媒が逆流するのを防ぐため真空バルブ3を閉じる。
【0031】
さらに内部空間SP1における基板2の乾燥を進めるために丸型ゲートバルブ5を開き、ターボ分子ポンプ6の動作を通じて内部空間SP1の圧力をさらに下げる。内部空間SP1に基板2が無い状態での到達圧力と同等の高真空(例えば、3×10-4Pa)付近まで減圧することを目標の到達圧力としても、チャンバ1の壁面等に有機溶媒が付着していると、目標の到達圧力まで達しないことが生じ得る。そこで、制御部8は脱離促進部7を制御してバルブ73を開き、バルブ73から、不純物濃度が低減されたガス(超高純度のガス)を内部空間SP1に導入し、チャンバ1の壁面等に付着した有機溶媒を脱離させる。
【0032】
さらに続けて、ターボ分子ポンプ6の動作により丸型ゲートバルブ5から排気する。内部空間SP1を高真空に排気することで、残留した有機溶媒の蒸気が基板2に再度付着するのを防止し、高品質な乾燥を行うことが可能になる。
【0033】
図2は、実施形態に係る基板処理装置SPAを用いた基板処理方法の流れを示すフローチャートであり、
図3は、
図2の基板処理方法における内部空間SP1の圧力制御の推移の一例を示す図である。ここで、
図3に示すチャンバ1の内部空間SP1の圧力は例示的なものであり、本実施形態による開示の技術は、この例に限定されるものではない。
【0034】
図2に示される基板処理方法は、制御部8によって制御されうる。工程S101では、有機溶媒を含む有機電子材料が塗布された基板2をチャンバ1の内部空間SP1に搬入(ロード)し、内部空間SP1に配置された基板保持部11に基板2を載置する。
【0035】
工程S102では、制御部8は、真空バルブ3を制御して開き、ドライポンプ4によりチャンバ1の内部空間SP1を第1の圧力(例えば、10Pa)まで減圧して、基板2の有機溶媒を乾燥させることにより、有機溶媒の大半を基板2から除去する。
【0036】
工程S103では、圧力計測部13によって内部空間SP1の圧力を計測し、圧力計測部13は計測結果を制御部8に出力する。工程S104において、制御部8は、第1の圧力(10Pa)まで減圧できたか判定し、第1の圧力まで減圧されていないと判定する場合は(S104-NO)、処理をS102に戻し、同様の処理を繰り返す。一方、工程S104の判定で、内部空間SP1の圧力が第1の圧力まで減圧されたと判定する場合は(S104-YES)、処理を工程S105に進める。
【0037】
工程S105において、制御部8は、真空バルブ3を制御して閉じ、丸型ゲートバルブ5を制御して開き、ターボ分子ポンプ6によりチャンバ1の内部空間SP1を第2の圧力(例えば、5×10-3Pa)まで減圧する。
【0038】
工程S106では、圧力計測部13によって内部空間SP1の圧力を計測し、圧力計測部13は計測結果を制御部8に出力する。
【0039】
工程S107において、制御部8は、第2の圧力(5×10-3Pa)まで減圧できたか判定し、第2の圧力まで減圧されていないと判定する場合は(S107-NO)、処理をS105に戻し、同様の処理を繰り返す。一方、工程S107の判定で、内部空間SP1の圧力が第2の圧力まで減圧されたと判定する場合は(S107-YES)、処理を工程S108に進める。
【0040】
工程S105~S107の処理により、継続して真空引きを行えば、有機溶媒が徐々に排気されていくが、チャンバ1の壁面などに付着した有機溶媒が揮発することで、内部空間SP1の真空度が低下して、内部空間SP1に基板2が無い状態での目標圧力(例えば、3×10-4Pa)に到達しない場合が生じ得る。
【0041】
そこで、工程S108において、制御部8は、第1の脱離処理として、第2の圧力(5×10-3Pa)に減圧された状態で、第2の減圧部(5、6)による減圧を停止させ、第1の減圧部(3、4)と脱離促進部7とを動作させて、チャンバ1にガスを供給する。工程S108において、制御部8は、内部空間SP1に残留した有機溶媒を排気除去するため、脱離促進部7を制御して超高純度のガス(不純物が低減された純度の高い純化ガス)を内部空間SP1に導入する。また、制御部8は、丸型ゲートバルブ5を制御して閉じ、真空バルブ3を制御して開いて、チャンバ1の内部空間SP1を、第3の圧力(例えば、10kPa)の圧力状態にする。この圧力状態は、脱離促進部7から大量の超高純度のガス(純化ガス)が内部空間SP1に導入されている状態であり、第1の圧力や第2の圧力よりも高い圧力の状態である。
【0042】
制御部8は、第1の脱離処理の後の第2の脱離処理として、チャンバ1の内部が、チャンバ1の外部圧力(大気圧)より低く、かつ、第1の圧力(10Pa)よりも高い第3の圧力に到達まで、第1の減圧部(3、4)と脱離促進部7とを動作させて、チャンバ1にガス(純化ガス)を供給する。
【0043】
工程S109において、内部空間SP1の圧力状態は、圧力計測部13により測定されており、圧力計測部13は、内部空間SP1の圧力を計測し、計測結果を示す電気信号を制御部8に出力する。制御部8は、圧力計測部13の計測結果に基づいて、内部空間SP1の圧力を監視することができる。
【0044】
制御部8は、内部空間SP1の圧力状態が第3の圧力(10kPa)に到達しているか判定する。制御部8は、内部空間SP1の圧力状態が第3の圧力に到達していないと判定する場合(S109-NO)、処理を工程S108に戻し、脱離促進部7を制御して、内部空間SP1に超高純度のガス(純化ガス)を導入する処理を継続する。一方、工程S109の判定で、制御部8は、内部空間SP1の圧力状態が第3の圧力に到達していると判定する場合(S109-YES)、処理を工程S110に進める。
【0045】
工程S110において、制御部8は、第2の脱離処理の後の第3の脱離処理として、第3の圧力(10kPa)に到達した後に、第1の減圧部(3、4)による減圧と脱離促進部7の動作とを停止させ、第2の減圧部(5、6)を動作させて、チャンバ1の内部を、第2の圧力(5×10-3Pa)よりも低い第4の圧力(例えば、8×10-4Pa)に減圧する。内部空間SP1の圧力が第3の圧力(10kPa)の圧力状態になり、所定の時間(例えば、T1)が経過すると、制御部8は脱離促進部7を制御して、超高純度のガス(純化ガス)の供給を停止させる。また、制御部8は、真空バルブ3を制御して閉じ、丸型ゲートバルブ5を制御して開き、ターボ分子ポンプ6によりチャンバ1の内部空間SP1を、第2の圧力(5×10-3Pa)に比べて低い第4の圧力(例えば、8×10-4Pa)まで減圧する。
【0046】
工程S111において、内部空間SP1の圧力状態は、圧力計測部13により測定されており、圧力計測部13は、内部空間SP1の圧力を計測し、計測結果を示す電気信号を制御部8に出力する。制御部8は、圧力計測部13の計測結果に基づいて、内部空間SP1の圧力を監視することができる。
【0047】
制御部8は、内部空間SP1の圧力状態が第4の圧力(8×10-4Pa)に到達しているか判定する。制御部8は、内部空間SP1の圧力状態が第4の圧力に到達していないと判定する場合(S111-NO)、処理を工程S110に戻し、ターボ分子ポンプ6によるチャンバ1の内部空間SP1の減圧を継続する。一方、工程S111の判定で、制御部8は、内部空間SP1の圧力状態が第4の圧力に到達していると判定する場合(S111-YES)、処理を工程S112に進める。
【0048】
工程S112において、内部空間SP1の圧力状態は、圧力計測部13により測定されており、制御部8は、圧力計測部13の計測結果に基づいて、内部空間SP1の圧力を監視する。制御部8は、脱離促進部7による超高純度のガス(純化ガス)の供給開始(S107-YES、S108)から、所定の時間(例えば、T2)内に、第4の圧力(8×10-4Pa)よりも低い目標圧力(例えば、3×10-4Pa)に到達しているか判定する。制御部8は、純化ガスの供給開始から、所定の時間(T2)内に、目標圧力(3×10-4Pa)に到達していないと判定する場合(S112-NO)、処理を工程S108に戻し、同様の処理を繰り返す。工程S108~工程S112を1セットのサイクルとして、工程S108~工程S112の処理を再度実施する。
【0049】
制御部8は、ガス(純化ガス)の供給開始から予め定められた時間内に、第4の圧力よりも低い目標圧力まで減圧されていない場合、上記の第1の脱離処理、第2の脱離処理、及び第3の脱離処理の繰り返し処理を行うように、第1の減圧部(3、4)と、第2の減圧部(5、6)と、脱離促進部7とを制御する。
【0050】
工程S108~工程S112の処理を再度実施することにより、内部空間SP1の有機溶媒の排気が進むと内部空間SP1の真空度を高くすることができる。例えば、目標圧力(3×10-4Pa)の高真空まで減圧することができるようになり、有機溶媒の残留が少ない高品質な乾燥処理を行うことができる。処理の繰り返し回数は、予め複数回を設定してもよいが、生産性を損なわない範囲で、工程S108~工程S112の処理サイクルを繰り返す回数を増やしてもよい。
【0051】
一方、工程S112の判定で、制御部8は、純化ガスの供給開始から、所定の時間(T2)内に、目標圧力に到達していると判定する場合(S112-YES)、処理を工程S113に進める。
【0052】
工程S113において、制御部8は、丸型ゲートバルブ5を制御して開き、ターボ分子ポンプ6の動作を継続し排気状態を維持してもよい。
【0053】
その後、工程S114において、制御部8は、チャンバ1をパージして大気圧に戻し、チャンバ1に不活性ガスを導入する。そして、基板保持部11によって保持された基板2がチャンバ1の外部空間に搬出(アンロード)される。
【0054】
本実施形態によれば、有機溶媒が基板に再付着するのを防止し、より高品質な有機電子材料を得るために有利な技術を提供することができる。
【0055】
真空チャンバに残留する有機溶媒を減らすことにより、基板の乾燥処理を繰り返し行っても真空度の低下を防ぐことができるため、複数の基板を乾燥処理する際に、基板間のバラつきを改善することもできる。
【0056】
(変形例1)
図5は、変形例1の基板処理装置SPAの構成を示す模式的な断面図である。基板処理装置SPAの基本的な構成は、
図1で説明した基板処理装置SPAと同様であるが、変形例1(
図5)の基板処理装置SPAでは、脱離促進部7の構成において、ガス加熱部74(ガスヒーター)が、純化部72とバルブ73との間に接続されている点で相違する。変形例1の基板処理装置による基板処理方法の流れは
図2で説明した処理と同様である。
【0057】
変形例1の基板処理装置SPAでは、純化部72は、ガス供給部71から供給されたガスから、水分(H2O)、酸素(O2)、炭化水素などの不純物を除去し、不純物を除去したガスを通過させる。純化部72によって、ガスに含まれる不純物の濃度が低減されたガス(純化ガス)はガス加熱部74に供給される。
【0058】
ガス加熱部74は、純化部72により不純物が除去されたガス(純化ガス)を加熱することにより、ガス(純化ガス)から純化ガスに含まれる不純物を揮発させ、不純物の濃度が更に低減された、純度の高いガス(加熱ガス)を出力する。制御部8の制御によりバルブ73が開くことにより、ガス加熱部74の加熱により不純物を揮発させて、不純物の濃度が、より一層低減されたガス(加熱ガス)が、チャンバ1の内部空間SP1に導入される。変形例1の構成によれば、純化部72とガス加熱部74とは、有機溶剤の脱離を促進するメカニズムが異なるものであり両者を用いることにより、より一層純度の高いガスをチャンバ1の内部空間SP1に導入することができ、脱離促進の効果を向上させることが可能になる。
【0059】
(変形例2)
図6は、変形例2の基板処理装置SPAの構成を示す模式的な断面図である。基板処理装置SPAの基本的な構成は、
図1で説明した基板処理装置SPAと同様であるが、変形例2(
図6)の基板処理装置SPAでは、脱離促進部7の構成において、ガス加熱部74、切り替えバルブ76(切替部)、加熱ガス供給配管77、及び純化ガス供給配管78が、純化部72とバルブ73との間に接続されている点で相違する。ここで、加熱ガス供給配管77、及び純化ガス供給配管78は、配管75から2つに分岐する配管である。
【0060】
加熱ガス供給配管77は、ガス加熱部74から出力された加熱ガスをチャンバ1に供給するための配管である。また、純化ガス供給配管78は、ガス加熱部74を迂回して純化部72から出力された純化ガスをチャンバ1に供給する配管である。
【0061】
切り替えバルブ76(切替部)は、制御部8の制御に基づいて開閉可能なバルブであり、バルブの開閉により、加熱ガス供給配管77または純化ガス供給配管78を切替えることができる。また、
図7は変形例2の基板処理装置SPAによる基板処理方法の流れを示す図である。
【0062】
制御部8の制御により切り替えバルブ76が開くと、純化部72によって、ガスに含まれる不純物の濃度が低減されたガス(純化ガス)はガス加熱部74に供給される。
【0063】
ガス加熱部74は、純化部72により不純物が除去されたガス(純化ガス)を加熱することにより、ガス(純化ガス)から純化ガスに含まれる不純物を揮発させ、不純物の濃度が更に低減された、純度の高いガス(加熱ガス)を出力する。制御部8の制御によりバルブ73が開くことにより、ガス加熱部74の加熱により不純物を揮発させて、不純物の濃度が、より一層低減されたガス(加熱ガス)が、チャンバ1の内部空間SP1に導入される。
【0064】
一方、制御部8の制御により切り替えバルブ76が閉じると、ガス加熱部74を迂回して、純化部72により不純物が除去されたガス(純化ガス)はバルブ73に供給される。制御部8の制御によりバルブ73が開くことにより、純化部72によって、ガスに含まれる不純物の濃度が低減されたガス(純化ガス)が、チャンバ1の内部空間SP1に導入される。
【0065】
制御部8の制御による切り替えバルブ76の開閉は、チャンバ1の内部空間SP1の圧力状態に基づいて切り替えてもよい。例えば、
図7の処理において、工程S108~工程S112の処理サイクルを繰り返さない場合(S112-YES)には、制御部8の制御により切り替えバルブ76を閉じ、ガス加熱部74を迂回して、純化部72により不純物の濃度が低減されたガス(純化ガス)をバルブ73に供給すればよい。
【0066】
そして、工程S108~工程S112の処理サイクルを繰り返す場合、すなわち、所定の時間(T2)内に、目標圧力(3×10
-4Pa)に到達していないと判定する場合(S112-NO)、
図7に示す工程S115に処理を進めればよい。
【0067】
工程S115では、制御部8の制御により切り替えバルブ76が開き、純化部72によって不純物の濃度が低減されたガス(純化ガス)がガス加熱部74に供給される。
【0068】
ガス加熱部74は、純化部72により不純物が除去されたガス(純化ガス)を加熱することにより、ガス(純化ガス)から純化ガスに含まれる不純物を揮発させ、更に純度の高いガス(加熱ガス)を出力する。制御部8の制御によりバルブ73が開くことにより、ガス加熱部74の加熱により不純物を揮発させて、不純物の濃度が、より一層低減されたガス(加熱ガス)が、チャンバ1の内部空間SP1に導入される。工程S115の処理の後、処理は工程S108に戻され、工程S108~工程S112の処理サイクルを繰り返せばよい。変形例2によれば、チャンバ1の内部空間SP1の圧力状態に基づいて、チャンバ1に供給するガスとして、加熱ガスまたは純化ガスを切り替えることが可能である。純化部72とガス加熱部74とは、有機溶剤の脱離を促進するメカニズムが異なるものであり両者を用いることにより、より一層純度の高いガスをチャンバ1の内部空間SP1に導入することができ、脱離促進の効果を向上させることが可能になる。
【0069】
(物品の製造方法の実施形態)
実施形態にかかる物品(電子デバイス)の製造方法は、例えば、有機EL(OLED)パネルなどの物品を、インクジェット印刷装置やスリットコータ等を用いて製造するのに適用することができる。本実施形態の物品の製造方法は、基板の上に溶液膜を、インクジェット印刷装置やスリットコータ等を用いた塗布方式等によって配置あるいは塗布して塗布基板を得る工程(塗布工程)を含む。
【0070】
また、上記の基板処理装置SPAにより塗布基板上の溶液膜を乾燥させ、乾燥膜が形成された乾燥基板を得る工程(乾燥工程)を含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(焼成、冷却、除湿、ドライ洗浄、電極の形成、封止膜の形成等)を含む。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0071】
(実施形態のまとめ)
[項目1] 基板に塗布された膜を乾燥させる基板処理装置であって、
チャンバの内部を第1の圧力に減圧することが可能な第1の減圧部と、
前記チャンバの内部を前記第1の圧力よりも低い圧力に減圧することが可能な第2の減圧部と、
前記膜の溶媒の脱離を促進するガスを、前記第1の圧力よりも低い第2の圧力に減圧された前記チャンバに供給する脱離促進部と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
[項目2] 前記チャンバの内部の圧力を測定する測定部により測定された前記圧力に基づいて、前記第1の減圧部と、前記第2の減圧部と、前記脱離促進部とを制御する制御部を更に備える
ことを特徴とする項目1に記載の基板処理装置。
[項目3] 前記制御部は、前記第2の減圧部による減圧を停止させた状態で、前記第1の減圧部と、前記脱離促進部とを動作させて、前記チャンバに前記ガスを供給することを特徴とする項目2に記載の基板処理装置。
[項目4] 前記制御部は、前記第1の減圧部と、前記脱離促進部とを停止させた状態で、前記第2の減圧部を動作させて前記チャンバの内部を減圧することを特徴とする項目2または3に記載の基板処理装置。
[項目5] 前記制御部は、第1の脱離処理として、
前記第2の圧力に減圧された状態で、前記第2の減圧部による減圧を停止させ、
前記第1の減圧部と前記脱離促進部とを動作させて、前記チャンバに前記ガスを供給することを特徴とする項目2に記載の基板処理装置。
[項目6] 前記制御部は、前記第1の脱離処理の後の第2の脱離処理として、
前記チャンバの内部が、前記チャンバの外部圧力より低く、かつ、前記第1の圧力よりも高い第3の圧力に到達まで、前記第1の減圧部と前記脱離促進部とを動作させて、前記チャンバに前記ガスを供給する
ことを特徴とする項目5に記載の基板処理装置。
[項目7] 前記制御部は、前記第2の脱離処理の後の第3の脱離処理として、
前記第3の圧力に到達した後に、前記第1の減圧部による減圧と前記脱離促進部の動作とを停止させ、
前記第2の減圧部を動作させて、前記チャンバの内部を、前記第2の圧力よりも低い第4の圧力に減圧することを特徴とする項目6に記載の基板処理装置。
[項目8] 前記制御部は、前記ガスの供給開始から予め定められた時間内に、前記第4の圧力よりも低い目標圧力まで減圧されていない場合、
前記第1の脱離処理、前記第2の脱離処理、及び前記第3の脱離処理の繰り返し処理を行うように、前記第1の減圧部と、前記第2の減圧部と、前記脱離促進部とを制御することを特徴とする項目7に記載の基板処理装置。
[項目9] 前記脱離促進部は、
前記溶媒の脱離を促進する前記ガスを供給する供給部と、
前記供給部から供給された前記ガスに含まれる不純物を除去し、前記不純物の濃度が低減された純化ガスを出力する純化部と、を有し、
前記制御部は、前記脱離促進部を制御して、前記純化ガスを前記チャンバに供給することを特徴とする項目2に記載の基板処理装置。
[項目10] 前記脱離促進部は、
前記溶媒の脱離を促進するガスを供給する供給部と、
前記供給部から供給されたガスを加熱することにより、前記ガスから不純物を揮発させて、前記不純物の濃度が低減された加熱ガスを出力する加熱部と、を有し、
前記制御部は、前記脱離促進部を制御して、前記加熱ガスを前記チャンバに供給することを特徴とする項目2に記載の基板処理装置。
[項目11] 前記脱離促進部は、
前記溶媒の脱離を促進するガスを供給する供給部と、
前記供給部から供給されたガスに含まれる不純物を除去し、前記不純物の濃度が低減された純化ガスを出力する純化部と、
前記純化ガスを加熱することにより、当該純化ガスに含まれる不純物を揮発させて、前記純化ガスに比べて前記不純物の濃度が更に低減された加熱ガスを出力する加熱部と、を有し、
前記制御部は、前記脱離促進部を制御して、前記加熱ガスを前記チャンバに供給することを特徴とする項目2に記載の基板処理装置。
[項目12] 前記脱離促進部は、
前記溶媒の脱離を促進するガスを供給する供給部と、
前記供給部から供給されたガスに含まれる不純物を除去し、前記不純物の濃度が低減された純化ガスを出力する純化部と、
前記純化ガスを加熱することにより、当該純化ガスに含まれる不純物を揮発させて、前記純化ガスに比べて前記不純物の濃度が更に低減された加熱ガスを出力する加熱部と、
前記加熱ガスを前記チャンバに供給する加熱ガス供給配管と、
前記加熱部を迂回して前記純化ガスを前記チャンバに供給する純化ガス供給配管と、
前記制御部の制御に基づいて、前記加熱ガス供給配管または前記純化ガス供給配管を切替える切替部と、
を有することを特徴とする項目8に記載の基板処理装置。
[項目13] 前記制御部は、前記繰り返し処理を行わない場合における前記ガスの供給では、前記切替部を制御して、前記純化ガス供給配管から前記純化ガスを前記チャンバに供給することを特徴とする項目12に記載の基板処理装置。
[項目14] 前記制御部は、前記繰り返し処理を行う場合における前記ガスの供給では、前記切替部を制御して、前記加熱ガス供給配管から前記加熱ガスを前記チャンバに供給することを特徴とする項目12に記載の基板処理装置。
[項目15] 前記供給部により供給される前記ガスには、不活性ガス、酸素、またはオゾンが含まれることを特徴とする項目9乃至14のいずれか1項に記載の基板処理装置。
[項目16] 基板に塗布された膜を乾燥させる基板処理装置の基板処理方法であって、
第1の減圧部により、チャンバの内部を第1の圧力に減圧することが可能な第1の減圧工程と、
第2の減圧部により、前記チャンバの内部を前記第1の圧力よりも低い圧力に減圧する第2の減圧工程と、
脱離促進部が、前記膜の溶媒の脱離を促進するガスを、前記第1の圧力よりも低い第2の圧力に減圧された前記チャンバに供給する脱離促進工程と、
を有することを特徴とする基板処理方法。
[項目17] 項目1乃至15のいずれか1項に記載の基板処理装置を用いて、基板に塗布された膜を乾燥させる工程を有することを特徴とする物品の製造方法。
【0072】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0073】
1:真空チャンバ、2:基板、3:真空バルブ、4:ドライポンプ、
5:丸型ゲートバルブ(ゲートバルブ)、6:ターボ分子ポンプ、
7:脱離促進部、8:制御部、11:基板保持部(ステージ)、
12:ゲートバルブ、13:圧力計測部、71:ガス供給部、
72:純化部、73:バルブ、74:ガス加熱部、75:配管、
76:切り替えバルブ、77:加熱ガス供給配管、78:純化ガス供給配管