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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014424
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】熱交換装置
(51)【国際特許分類】
   F28F 19/00 20060101AFI20250123BHJP
   F23L 15/00 20060101ALI20250123BHJP
   F23G 5/46 20060101ALI20250123BHJP
   F28D 7/08 20060101ALI20250123BHJP
   F28F 9/22 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
F28F19/00 511D
F23L15/00 B
F23G5/46 A
F28D7/08
F28F9/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116958
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】523183714
【氏名又は名称】月島JFEアクアソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】梅野 浩和
(72)【発明者】
【氏名】野須 貢治
(72)【発明者】
【氏名】河岸 正泰
(72)【発明者】
【氏名】浅岡 祐輝
【テーマコード(参考)】
3K023
3K065
3L065
3L103
【Fターム(参考)】
3K023QA11
3K023QC01
3K023RA01
3K065AB01
3K065AC02
3K065BA01
3K065BA07
3L065DA20
3L103AA12
3L103BB05
3L103CC02
3L103CC27
3L103DD02
3L103DD06
3L103DD61
(57)【要約】
【課題】腐食成分が含まれる排ガスが熱交換部を通過するときに、熱交換装置を構成する部材表面の結露を抑制することができる熱交換装置を提供すること。
【解決手段】熱交換装置1は、排ガスが流通する熱交換部20と、熱交換部20を収容するケーシング10と、熱交換部20とケーシング10の隙間の少なくとも一部を塞ぐ複数の流路形成部材30と、を備え、複数の流路形成部材30は、熱交換部20の一端側に配置される第1流路形成部材31と、熱交換部20の他端側に配置される第2流路形成部材32と、熱交換部20の他端側とケーシング10の排ガス出口12の間に配置される第3流路形成部材33と、を備え、熱交換部20の壁部材23内を流通する排ガスの流通方向で見たときに、排ガス導入部41を形成する第2流路形成部材32と、排ガス流通部42を形成する第3流路形成部材33は、異なる位置に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスが流通する熱交換部と、
前記熱交換部を収容するケーシングと、
前記ケーシング内に配置され、前記熱交換部と前記ケーシングの隙間の少なくとも一部を塞ぐ複数の流路形成部材と、を備え、
前記熱交換部は、
伝熱管と、
前記熱交換部を流通する排ガスと前記ケーシングの内側を流れる排ガスを隔離する壁部材と、を備え、
前記ケーシングは、
前記ケーシングの一端側に配置された、排ガスが供給される排ガス入口と、
前記熱交換部の前記壁部材と前記ケーシングとにより形成された空間を流通する排ガスが排出される排ガス出口と、を備え、
前記複数の流路形成部材は、
前記熱交換部の一端側に配置され、前記ケーシングと前記熱交換部の前記壁部材との隙間の全面を塞ぎ、前記排ガス入口から供給された排ガスを前記熱交換部の前記壁部材内に導入する第1流路形成部材と、
前記熱交換部の他端側に配置され、前記熱交換部の前記壁部材内を通過した排ガスを前記ケーシングと前記熱交換部の前記壁部材との間に導入する排ガス導入部を形成する第2流路形成部材と、
前記熱交換部の他端側と前記ケーシングの前記排ガス出口の間に配置され、前記排ガス導入部から導入された排ガスが流通する排ガス流通部を形成する第3流路形成部材と、を備え、
前記熱交換部の前記壁部材内を流通する排ガスの流通方向で見たときに、前記第2流路形成部材の前記排ガス導入部と、前記第3流路形成部材の前記排ガス流通部は、異なる位置に配置されている、熱交換装置。
【請求項2】
前記壁部材は、筒状であり、
前記伝熱管は屈曲部を有し、
前記伝熱管の屈曲部は、筒状の前記壁部材の外側に配置されている、請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項3】
前記ケーシングは、円筒形状であり、
前記熱交換部は、四角柱状である、請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項4】
前記熱交換部内の排ガス流れ方向の垂直断面において、前記壁部材の内面により形成される前記垂直断面の面積は、前記ケーシングの内面により形成される前記垂直断面の面積の40%以上60%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項5】
焼却炉と、
請求項1~3のいずれか1項に記載の熱交換装置と、を備え、
前記焼却炉で発生した排ガスを前記熱交換装置に導入する焼却設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚泥等の燃焼システムとして、排ガスの熱を回収して燃焼空気の予熱を利用するシステムが提案されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-220545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような排ガスボイラシステムの熱交換装置で利用される排ガスは腐食成分を含む。よって、熱交換装置を流通する排ガスが露点以下に低下すると腐食成分が結露し、結露した腐食成分により熱交換装置を構成する部材が腐食するおそれがある。
【0005】
本発明は、腐食成分が含まれる排ガスが熱交換部を通過するときに、熱交換装置を構成する部材表面の結露を抑制できる熱交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、排ガスが流通する熱交換部と、前記熱交換部を収容するケーシングと、前記ケーシング内に配置され、前記熱交換部と前記ケーシングの隙間の少なくとも一部を塞ぐ複数の流路形成部材と、を備え、前記熱交換部は、伝熱管と、前記熱交換部を流通する排ガスと前記ケーシングの内側を流れる排ガスを隔離する壁部材と、を備え、前記ケーシングは、前記ケーシングの一端側に配置された、排ガスが供給される排ガス入口と、前記熱交換部の前記壁部材と前記ケーシングとにより形成された空間を流通する排ガスが排出される排ガス出口と、を備え、前記複数の流路形成部材は、前記熱交換部の一端側に配置され、前記ケーシングと前記熱交換部の前記壁部材との隙間の全面を塞ぎ、前記排ガス入口から供給された排ガスを前記熱交換部の前記壁部材内に導入する第1流路形成部材と、前記熱交換部の他端側に配置され、前記熱交換部の前記壁部材内を通過した排ガスを前記ケーシングと前記熱交換部の前記壁部材との間に導入する排ガス導入部を形成する第2流路形成部材と、前記熱交換部の他端側と前記ケーシングの前記排ガス出口の間に配置され、前記排ガス導入部から導入された排ガスが流通する排ガス流通部を形成する第3流路形成部材と、を備え、前記熱交換部の前記壁部材内を流通する排ガスの流通方向で見たときに、前記第2流路形成部材の前記排ガス導入部と、前記第3流路形成部材の前記排ガス流通部は、異なる位置に配置されている、熱交換装置に関する。
【0007】
また、前記壁部材は、筒状であり、前記伝熱管は屈曲部を有し、前記伝熱管の屈曲部は、筒状の前記壁部材の外側に配置されていてもよい。
【0008】
また、前記ケーシングは、円筒形状であり、前記熱交換部は、四角柱状であってもよい。
【0009】
また、前記熱交換部内の排ガスの流れ方向の垂直断面において、前記壁部材の内面により形成される前記垂直断面の面積は、前記ケーシングの内面により形成される前記垂直断面の面積の40%以上60%以下であることが好ましい。
【0010】
本発明は、焼却炉と、前記熱交換装置と、を備え、前記焼却炉で発生した排ガスを前記熱交換装置に導入する焼却設備に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱交換装置は、腐食成分が含まれる排ガスが熱交換部を通過するときに、熱交換装置を構成する部材表面の結露を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態の熱交換装置を示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態の熱交換装置の正面図である。
図3】本発明の第1実施形態の熱交換装置の平面図である。
図4】本発明の第1実施形態の熱交換装置の第2流路形成部材の断面を示す図である。
図5】本発明の第1実施形態の熱交換装置の第3流路形成部材の断面を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態の熱交換装置の正面図である。
図7】本発明の第2実施形態の熱交換装置の平面図である。
図8】本発明の第2実施形態の熱交換装置の第2流路形成部材の断面を示す図である。
図9】本発明の第2実施形態の熱交換装置の第3流路形成部材Aの断面を示す図である。
図10】本発明の第2実施形態の熱交換装置の第3流路形成部材Bの断面を示す図である。
図11】本発明の排ガスボイラシステムのレイアウトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、排ガスボイラシステムにおける本発明に係る熱交換装置1について、図面を参照しながら説明する。排ガスとは、原動機より排出される排ガス、バイオマス燃料及び産業廃棄物(汚泥、廃プラスチック等)等の燃焼により発生する廃ガスを含むものとする。
【0014】
最初に、第1実施形態の熱交換装置1について、図1図5を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る熱交換装置1を示す斜視図である。本実施形態の熱交換装置1は、伝熱管において排ガスの熱を回収して水を加熱し蒸気の生成を行う熱交換装置であり、負荷機器(図示せず)に蒸気を供給する。以降は、第1実施形態に係る熱交換装置1の伝熱管を水管と記載する。なお、図2及び図3は、図1に記載されている水管21の図示を省略している。
【0015】
図1に示されるように、この熱交換装置1は、ケーシング10と熱交換部20と、複数の流路形成部材30と、を備える。
【0016】
ケーシング10は、熱交換装置1の外形を構成する。第1実施形態では、ケーシング10は、円筒形状に形成され、円筒形状の軸方向が上下方向に沿って配置され、一端(上端)が開口し、他端(下端)が閉鎖されている。ケーシング10は、排ガス入口11と、排ガス出口12と、を備える。
【0017】
排ガス入口11は、ケーシング10の長さ方向の一端側に配置される。本実施形態では、排ガス入口11は、ケーシング10の一端側を開口することにより構成される。排ガス出口12は、ケーシング10の長さ方向における中央部よりも一端(上端)側の側面に配置される。
【0018】
熱交換部20は、ケーシング10の内部に収容される。熱交換部20は、水管21と、壁部材23と、を備える。本実施形態の熱交換部20は四角柱状である。
【0019】
水管21は、複数の直管部211と、複数の屈曲部212と、を備え、内部に水を流通させる。複数の直管部211は、水平方向に並列して配置され、さらに上下方向に複数段配置される。複数の直管部211のうち最下段の複数の直管部211の一端側及び最上段の直管部211の一端側は、ケーシング10を貫通してケーシング10の外部に延びる。本実施形態では、複数の直管部211は、円筒形状のケーシング10において、ケーシング10の中心と排ガス出口12が形成された位置とを結ぶ直線に対して直交する方向に延びて配置される。また、排ガス入口11に最も近い水管21は、高さ方向において排ガス出口12より高い位置に配置される。
【0020】
複数の屈曲部212は、上下方向に隣り合う2本の直管部211の端部を連結する。具体的には、屈曲部212は、最下段の複数の直管部211の端部側と、最下段の直管部211の上方に隣り合う複数の直管部211の他端部と、を連結する。また、これら上方に隣り合う複数の直管部211の一端部と、これら複数の直管部211の上方に隣り合う複数の直管部211の一端部と、を連結する。このようにして、上下方向に複数段配置された直管部211は直列に連結される。
【0021】
壁部材23は、ケーシング10の内部空間を隔離し、また、水管21を保持する。本実施形態では、壁部材23は、一対の端面が開口した四角柱状に構成される。壁部材23は、開口した端面が上下方向に沿うようにケーシング10の内部に配置され、ケーシング10に連結部材(図示せず)を介して溶接等により接合される。壁部材23の平面視における対角線の長さは、ケーシング10の内周面の直径よりも若干小さく設定される。これにより、壁部材23の平面視における角部とケーシング10の内面との間には隙間が形成される。
【0022】
壁部材23における一対の側面には、それぞれ、水管21の直管部211が貫通する複数の貫通孔が形成され、これら複数の貫通孔に直管部211の両端部近傍が挿通される。これにより、複数の屈曲部212は、ケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間に配置される。
【0023】
複数の流路形成部材30は、第1流路形成部材31と、第2流路形成部材32と、第3流路形成部材33と、を備える。
【0024】
第1流路形成部材31は、図2及び図3に示すように、熱交換部20(壁部材23)の上端部に配置され、ケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成される隙間を塞ぐ。より詳細には、第1流路形成部材31は、平面視矩形形状の壁部材23の上端側の辺に溶接又はボルト等により接合される。これにより、第1流路形成部材31が、ケーシング10の内周面に対応した円弧辺に近接することで、ケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間を塞ぐ。
以上の第1流路形成部材31によれば、排ガス入口11から導入された排ガスは、ケーシング10の内面と熱交換部20(壁部材23)の外面との間に形成された隙間に侵入しにくくなり、熱交換部20の内部に導入される。
【0025】
第2流路形成部材32は、図2及び図4に示すように、熱交換部20(壁部材23)の下端側に配置され、ケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成される隙間の一部を塞ぐ。本実施形態では、第2流路形成部材32は、熱交換部20の下端部においてケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間の半分を塞ぐ。より詳細には、第2流路形成部材32は、第1流路形成部材31と同様に、円弧辺及び弦辺を有する複数の板状部材及びこの板状部材が半分に分割された板状部材により構成される。そして、第2流路形成部材32は、円弧辺がケーシング10の内周面に、弦辺が壁部材23に、溶接又はボルト等により接合される。これにより、第2流路形成部材32が、ケーシング10の内周面に対応した円弧辺と壁部材23に対応した弦辺に近接することでケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間の一部を塞ぐ。
本実施形態では、第2流路形成部材32は、ケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間のうち、排ガス出口12が形成された側と反対側の半分の隙間を塞ぐ。
【0026】
以上の第2流路形成部材32によれば、熱交換部20に導入された排ガスは、熱交換部20(壁部材23)の下端部から下方に向けて導入された後、ケーシング10の下面で方向転換し、第2流路形成部材32により塞がれていないケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間に導入されて上昇する。即ち、第2流路形成部材32は、ケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間のうちの一部を塞ぐことで、熱交換部20(壁部材23)の内部を通過した排ガスをケーシング10の内面と熱交換部20(壁部材23)の外面との間に形成された隙間に導入する排ガス導入部41を形成する。
【0027】
第3流路形成部材33は、図2及び図5に示すように、排ガス出口12よりも下方、かつ、第2流路形成部材32よりも上方に配置され、ケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成される隙間の一部を塞ぐ。本実施形態では、第3流路形成部材33は、排ガス出口12と第2流路形成部材32との間においてケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間の半分を塞ぐ。より詳細には、第3流路形成部材33は、第1流路形成部材31及び第2流路形成部材32と同様に、円弧辺及び弦辺を有する複数の板状部材及びこの板状部材が半分に分割された板状部材により構成される。そして、第3流路形成部材33は、円弧辺がケーシング10の内周面に、弦辺が壁部材23に、溶接又はボルト等により接合される。これにより、第3流路形成部材33が、ケーシング10の内周面に対応した円弧辺と壁部材23に対応した弦辺に近接することでケーシング10に内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間の一部を塞ぐ。
【0028】
本実施形態では、第3流路形成部材33は、ケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間のうち、排ガス出口12が形成された側の半分の隙間を塞ぐ。
以上の第3流路形成部材33によれば、第2流路形成部材32により塞がれていないケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間に導入されて上昇した排ガスは、第3流路形成部材33により塞がれていないケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間を流通して上昇する。第3流路形成部材33により形成された流通部を上昇した排ガスは、熱交換部20(壁部材23)の上端部に配置された第1流路形成部材31で方向転換し、排ガス入口11側へ流通することなく、排ガス出口12から排出される。即ち、第3流路形成部材33は、ケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間のうち一部を塞ぐことで、排ガス導入部41により導入された排ガスをケーシング10の内面と熱交換部20(壁部材23)の外面との間に形成された隙間に流通する排ガス流通部42を形成する。
【0029】
熱交換部20(壁部材23)の内部を流通する排ガス流れ方向に垂直な断面において、四角柱状の熱交換部20(壁部材23)の内面により形成される矩形の面積は、円筒形状のケーシング10の内面により形成される円形の面積の40%以上60%以下であることが好ましい。
【0030】
次に、第1実施形態の熱交換装置1における排ガスの流れ及び水管21に供給された水の流れを説明する。
第1実施形態の熱交換装置1において、排ガスは排ガス入口11から導入され、ケーシング10及び熱交換部20を通過し、排ガス出口12から排出される。また、水は、水管21の下端側から供給され、熱交換部20において排ガスによって加熱されて蒸気となり上端側から排出される。
【0031】
排ガス入口11から導入された排ガスは、四角柱状の熱交換部20の内側を通過し、ケーシング10の下面に到達する。
ケーシング10の下面に到達した排ガスは、方向転換をして、上昇流を形成する。上昇流を形成した排ガスは、第2流路形成部材32に上昇を妨げられるとともに、ケーシング10と壁部材23との隙間に配置されている排ガス導入部41を通過する。
【0032】
排ガス導入部41を通過した排ガスは、ケーシング10と壁部材23との隙間を通過し、第3流路形成部材33に上昇を妨げられるとともに排ガス流通部42を通過する。
排ガス流通部42を通過した排ガスは、ケーシング10と壁部材23との隙間を通過し、第1流路形成部材31に上昇を妨げられるとともに、排ガス出口12へ向かう流れが形成され、排ガス出口12から排出される。
【0033】
上記の排ガスの流れにより、ケーシング10と壁部材23との隙間を通過する排ガスは、排ガス出口12への偏流を発生させることなく、ケーシング10と壁部材23の隙間を旋回するように通過する。
ケーシング10と壁部材23との隙間に配置された水管21の屈曲部212は、熱交換部20においてどの位置に配置されたとしても、ケーシング10と壁部材23の隙間を旋回するように通過した排ガスによって加熱される。
【0034】
以上説明した、第1実施形態の熱交換装置1によれば、以下のような効果を奏する。
【0035】
(1)熱交換装置1を、排ガスが流通する熱交換部20と、熱交換部20を収容するケーシング10と、ケーシング10内に配置され、熱交換部20とケーシング10の隙間の少なくとも一部を塞ぐ複数の流路形成部材30と、を含んで構成し、熱交換部20を、水管21と、壁部材23と、を含んで構成した。そして、流路形成部材30を、熱交換部20の一端側に配置され、ケーシング10と熱交換部20の壁部材23との隙間の全面を塞ぐ第1流路形成部材31と、熱交換部20の他端側に配置され排ガスをケーシング10と壁部材23との間に導入する排ガス導入部41を形成する第2流路形成部材32と、熱交換部20の他端側とケーシング10の排ガス出口12の間に配置され排ガス導入部41から導入された排ガスが流通する排ガス流通部42を形成する第3流路形成部材33と、を含んで構成し、第2流路形成部材32の排ガス導入部41と、第3流路形成部材33の排ガス流通部42と、を異なる位置に配置した。
これにより、熱交換装置1の上側の排ガス入口11から流入した排ガスが、排ガス出口12に偏流することで発生していた水管21の表面の低温領域を、熱交換装置1の熱交換部20の水管21の表面に低温領域が発生しないように流路形成部材30を配置することで、腐食成分を含む排ガスの結露を抑制することができる。
【0036】
(2)上記(1)の熱交換装置1において、前記壁部材23は、筒状であり、前記水管21は屈曲部212を有し、前記水管21の屈曲部212は、筒状の前記壁部材23の外側に配置されていてもよい。
これにより、熱交換部20の壁部材23の外側に水管21の屈曲部212が配置された場合でも、水管21の屈曲部212の表面に低温領域が発生しないように流路形成部材30を配置することで、腐食成分を含む排ガスの結露の発生を抑制することができる。
【0037】
(3)上記(1)又は(2)の熱交換装置1において、前記ケーシング10は、円筒形状であり、前記熱交換部20は、四角柱状であってもよい。
これにより、熱交換装置1のケーシング10に円筒形状を採用することにより、さらに高い排ガス圧力に対応することができる。また、円筒形状のケーシング10と四角柱状の熱交換部20を採用することにより、ケーシング10と熱交換部20の隙間に十分なスペースを確保できる。
【0038】
(4)上記(1)から(3)のいずれかの熱交換装置1は、熱交換部20(壁部材23)の内部を流通する排ガス流れ方向に垂直な断面において、壁部材23の内面により形成される面積は、ケーシング10の内面により形成される面積の40%以上60%以下である。
排ガスは、排ガス入口11から熱交換部20内に流入し、水を流通させている複数の直管部211により流路断面積が制限される壁部材23の内側を流れる。これにより、排ガス温度は低下する。温度の低下した排ガスは、熱交換部20の底部で流れ方向を反転し、第2流路形成部材32及び第3流路形成部材33により流れ方向を変えられケーシング10の周方向への移動を伴いながら、排ガス流通部42を流れて排ガス出口12へと導かれる。壁部材23の内面により形成される面積をケーシング10の内面により形成される面積の40%以上60%以下とすることで、熱交換装置1の熱交換を効果的に行うとともに、壁部材23の内側及び排ガス流通部42での排ガスの流路を確保し圧力損失が過度に上昇することを抑制できる。
【0039】
次に、第2実施形態の熱交換装置1Aについて、図6図10を参照しながら説明する。なお、図6及び図7は、図1に記載されている水管21の図示を省略している。
【0040】
図6は、本発明の第2実施形態に係る熱交換装置1Aを示す図である。
【0041】
図6に示されるように、この熱交換装置1Aは、ケーシング10と、熱交換部20と、複数の流路形成部材30と、を備える。本実施形態においては、第1実施形態のケーシング10及び熱交換部20は同一の構成であるため、同様の符号を付して説明を省略する。
【0042】
複数の流路形成部材30は、第1流路形成部材31と、第2流路形成部材32と、第3流路形成部材33Aと第3流路形成部材33Bと、を備える。本実施形態においては、第1実施形態の第1流路形成部材31は同一の構成であるため、同様の符号を付して説明を省略する。
【0043】
第2流路形成部材32は、図6及び図8に示すように、熱交換部20(壁部材23)の下端側に配置され、ケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成される隙間の一部を塞ぐ。本実施形態では、第2流路形成部材32は、ケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間のうち、排ガス出口12が形成された側の半分の隙間を塞ぐ。より詳細には、第2流路形成部材32は、円弧辺及び弦辺を有する複数の板状部材及びこの板状部材が半分に分割された板状部材により構成される。そして、第2流路形成部材32は、円弧辺がケーシング10の内周面に、弦辺が壁部材23に、溶接又はボルト等により接合される。これにより、第2流路形成部材32が、ケーシング10の内周面に対応した円弧辺と壁部材23に対応した弦辺に近接することでケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間の一部を塞ぐ。
【0044】
本実施形態では、第2流路形成部材32は、ケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間のうち、排ガス出口12が形成された側の半分の隙間を塞ぐ。
以上の第2流路形成部材32によれば、熱交換部20に導入された排ガスは、熱交換部20(壁部材23)の下端部から下方に向けて導入された後、ケーシング10の下面で方向転換し、第2流路形成部材32により塞がれていないケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間に導入されて上昇する。即ち、第2流路形成部材32は、ケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間のうちの一部を塞ぐことで、壁部材23を通過した排ガスをケーシング10の内面と熱交換部20(壁部材23)の外面との間に形成された隙間に導入する排ガス導入部41を形成する。
【0045】
第3流路形成部材33Aは、図6及び図9に示すように、排ガス出口12よりも下方、かつ、第2流路形成部材32よりも上方に配置され、ケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成される隙間の一部を塞ぐ。本実施形態では、第3流路形成部材33Aは、排ガス出口12と第2流路形成部材32との間においてケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間の半分を塞ぐ。より詳細には、第3流路形成部材33Aは、第2流路形成部材32と同様に、円弧辺及び弦辺を有する複数の板状部材及びこの板状部材が半分に分割された板状部材により構成される。そして、第3流路形成部材33Aは、円弧辺がケーシング10の内周面に、弦辺が壁部材23に、溶接又はボルト等により接合される。これにより、第3流路形成部材33Aが、ケーシング10の内周面に対応した円弧辺と壁部材23に対応した弦辺に近接することでケーシング10に内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間の一部を塞ぐ。
本実施形態では、第3流路形成部材33Aは、ケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間のうち、排ガス出口12が形成された側の半分の隙間を塞ぐ。
【0046】
第3流路形成部材33Bは、図6及び図10に示すように、第3流路形成部材33Aよりも下方、かつ、第2流路形成部材32よりも上方に配置され、ケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成される隙間の一部を塞ぐ。本実施形態では、第3流路形成部材33Bは、排ガス出口12と第2流路形成部材32との間においてケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間の半分を塞ぐ。より詳細には、第3流路形成部材33Bは、第2流路形成部材32及び第3流路形成部材33Aと同様に、円弧辺及び弦辺を有する複数の板状部材及びこの板状部材が半分に分割された板状部材により構成される。そして、第3流路形成部材33Bは、円弧辺がケーシング10の内周面に、弦辺が壁部材23に、溶接又はボルト等により接合される。これにより、第3流路形成部材33Bが、ケーシング10の内周面に対応した円弧辺と壁部材23に対応した弦辺に近接することでケーシング10に内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間の一部を塞ぐ。
本実施形態では、第3流路形成部材33Bは、ケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間のうち、排ガス出口12が形成された側と反対側の半分の隙間を塞ぐ。
【0047】
以上の第3流路形成部材33A及び第3流路形成部材33Bによれば、第2流路形成部材32により塞がれていないケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間に導入されて上昇した排ガスは、第3流路形成部材33Aにより塞がれていないケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間を流通して上昇する。上昇した排ガスは、第3流路形成部材33Aにより塞がれていないケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間を流通してさらに上昇する。第3流路形成部材33Aにより形成された流通部をさらに上昇した排ガスは、熱交換部20(壁部材23)の上端部に配置された第1流路形成部材31で方向転換し、排ガス入口11側へ流通することなく、排ガス出口12から排出される。即ち、第3流路形成部材33Aは、ケーシング10の内面と壁部材23の外面との間に形成された隙間のうち一部を塞ぐことで、排ガス導入部41により導入された排ガスをケーシング10の内面と熱交換部20(壁部材23)の外面との間に形成された隙間に流通する排ガス流通部42Aを形成し、第3流路形成部材33Bは、排ガス流通部42Aを流通した排ガスをケーシング10の内面と熱交換部20(壁部材23)の外面との間に形成された隙間に流通する排ガス流通部42Bを形成する。
【0048】
複数の流路形成部材30を、図6図10に示すように配置することによって、排ガス入口11から導入された排ガスは、排ガス出口12への偏流を発生させることなく、ケーシング10と壁部材23の隙間を旋回するように通過する。
ケーシング10と壁部材23との隙間に配置された水管21の屈曲部212は、熱交換部20においてどの位置に配置されたとしても、ケーシング10と壁部材23の隙間を旋回するように通過した排ガスによって加熱される。
【0049】
なお、第3流路形成部材33が3つ以上設けられた場合は、複数の排ガス流通部42は、熱交換部20の内側を通過した排ガスの流通方向で見たときに、それぞれ異なる位置に配置される。
【0050】
次に、上述の熱交換装置1Aを備える排ガスボイラシステム100について、図11を参照しながら説明する。
排ガスボイラシステム100は、汚泥等を燃焼させた場合に生じる排ガスを熱源として水を加熱し蒸気を生成するシステムである。実施形態の排ガスボイラシステム100は、図11に示すように、直列に配置された複数(4台)の熱交換装置を含んで構成される。排ガスボイラシステム100を直列に配置された複数の熱交換装置を含んで構成した場合、下流側に配置される熱交換装置に導入される排ガスの温度は、上流側に配置される熱交換装置に導入される排ガスの温度よりも低くなる。そのため、腐食成分を含む排ガスを排ガスボイラシステム100に利用した場合、下流側に配置される熱交換装置において、排ガス温度の低下により腐食成分が結露してしまう可能性がある。そこで、実施形態の排ガスボイラシステム100は、4台の熱交換装置のうち、最も下流側に配置される熱交換装置として実施形態の熱交換装置1Aを用い、上流側に配置される3台の熱交換装置として流路形成部材30を備えない熱交換装置101を用いている。
【0051】
排ガスボイラシステム100を、実施形態の熱交換装置1Aを排ガスボイラシステム100の最下流に配置して構成することにより、排ガスボイラシステムの上流側で熱交換が実施され温度が下がった排ガスであっても、熱交換部20の壁部材23の外側に配置される水管21の屈曲部212を加熱するのに十分な流路が形成できるので、屈曲部212の表面での排ガスの結露を防止する。
【0052】
以上説明した、排ガスボイラシステム100によれば、以下のような効果を奏する。
【0053】
(5)排ガスボイラシステム100は、複数台の熱交換装置101と、前記複数台の熱交換装置101の最下流に配置されている、上記(1)から(4)のいずれかの熱交換装置1又は熱交換装置1Aと、を備える。
【0054】
これにより、複数台の熱交換装置101を含む排ガスボイラシステム100おいては、排ガスの温度が低下している最下流に、上記(1)から(4)のいずれかの熱交換装置1又は熱交換装置1Aを設けることで、熱交換装置1又は熱交換装置1Aを構成する水管21の屈曲部212の表面で発生する結露を効果的に抑制することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく、種々の変更、変形及び組み合わせが可能である。
【0056】
例えば、第2流路形成部材32は排ガス導入部41を1つ形成しているが、排ガス導入部41は第2流路形成部材32に2つ以上形成されてもよい。また、第3流路形成部材33は排ガス流通部42を1つ形成しているが、排ガス流通部42は第3流路形成部材33に2つ以上形成されてもよい。
【0057】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、円筒形状のケーシング10を備える熱交換装置1、1Aについて説明したが、これに限らない。即ち、ケーシングを断面楕円形状の筒状に構成してもよく、角筒状に構成してもよい。
【0058】
第1実施形態として、熱交換装置の入口と出口における排ガス温度差が大きく(熱交換量大)結露が発生しやすい、水を加熱し蒸気の生成を行う熱交換装置について示したがこれに限らない。水を加熱して温水とする、或いは蒸気を流通し過熱する熱交換装置であってもよい。また、伝熱管内を流通する被加熱媒体は熱媒油であってもよく、加熱された熱媒油は乾燥機や発電機に供給することができる。
【0059】
また、排ガスボイラシステム100において、直列に配置された複数の熱交換装置を含んで構成したシステムについて説明したが、これに限らない。例えば、焼却炉と、熱交換装置1と、を備え、前記焼却炉で発生した排ガスを熱交換装置1に導入する焼却設備であってもよい。
これにより、熱交換装置1を構成する水管21の屈曲部212の表面で発生する結露を効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0060】
1、1A 熱交換装置
10 ケーシング
11 排ガス入口
12 排ガス出口
20 熱交換部
21 水管
212 屈曲部
23 壁部材
30 流路形成部材
31 第1流路形成部材
32 第2流路形成部材
33(33A、33B) 第3流路形成部材
41 排ガス導入部
42 排ガス流通部
100 排ガスボイラシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11